ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体

申请号 JP2016510554 申请日 2015-03-27 公开(公告)号 JPWO2015147271A1 公开(公告)日 2017-04-13
申请人 旭化成株式会社; 发明人 高橋 洋介; 洋介 高橋; 三好 貴章; 貴章 三好;
摘要 本発明の目的は、高い耐久性、摺動性及び耐摩耗性を有する成形体を、生産性を高く製造することが可能な樹脂組成物を提供することである。本発明は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)ガラス系充填材10質量部以上100質量部以下と、を含むポリアセタール樹脂組成物であって、該ポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体を引張破断した場合に、破断した成形体の破断面から突出した(B)ガラス系充填材の表面が平均厚み0.2μm以上3.0μm以下の(A)ポリアセタール樹脂を含む成分で覆われている、ポリアセタール樹脂組成物を提供する。
权利要求

(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)ガラス系充填材10質量部以上100質量部以下と、を含むポリアセタール樹脂組成物であって、 該ポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体を引張破断した場合に、破断した成形体の破断面から突出した(B)ガラス系充填材の表面が平均厚み0.2μm以上3.0μm以下の(A)ポリアセタール樹脂を含む成分で覆われている、ポリアセタール樹脂組成物。(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)ガラス系充填材10質量部以上100質量部以下と、を含むポリアセタール樹脂組成物であって、 該ポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体のISO527−1に準拠した引張破壊応が135MPa以上であり、 該成形体のISO178に準拠した曲げ弾性率が7500MPa以上であり、及び (引張破壊応力−65)(MPa)/ガラス系充填材比率(質量%)が2.90以上である、ポリアセタール樹脂組成物。前記ポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体を引張破断した場合に、破断した成形体の破断面から突出した(B)ガラス系充填材の表面が平均厚み0.2μm以上3.0μm以下の(A)ポリアセタール樹脂を含む成分で覆われている、請求項2に記載のポリアセタール樹脂組成物。前記(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して(C)重量平均分子量が50万以下であるポリエチレン樹脂0.5質量部以上8質量部以下をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。前記(C)重量平均分子量が50万以下であるポリエチレン樹脂の融点が115℃以下である、請求項4に記載のポリアセタール樹脂組成物。前記(B)ガラス系充填材のガラス系充填材の表面を変性する機能を有する物質として、少なくとも1種の酸を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。前記酸がカルボン酸である、請求項6に記載のポリアセタール樹脂組成物。前記(A)ポリアセタール樹脂がブロック成分を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。前記ブロック成分が素添加ポリブタジエン成分である、請求項8に記載のポリアセタール樹脂組成物。請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体。(C)重量平均分子量が50万以下であるポリエチレン樹脂を含み、成形体の表層における(C)重量平均分子量50万以下のポリエチレン樹脂の存在量が、成形体の表層から1,000μmより深層を切り出した面の表層における(C)重量平均分子量が50万以下である重量平均分子量50万以下のポリエチレン樹脂の存在量よりも多い、請求項10に記載の成形体。少なくとも1種の酸を含み、(B)ガラス系充填材の表面を変性する機能を有する物質で(B)ガラス系充填材の表面を変性する工程と、 前記変性されたガラス系充填材と(A)ポリアセタール樹脂とを混合する工程と、を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。

说明书全文

本発明は、ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体に関する。

ポリアセタール樹脂は、例えば、曲げ弾性率及び引張破壊応等の機械的強度、耐薬品性、摺動性、並びに耐摩耗性のバランスに優れ、かつ加工が容易である。そのため、ポリアセタール樹脂は、代表的なエンジニアリングプラスチックスとして、電気機器の機構部品及び自動車用部品等、広範囲にわたって使用されている。 特に、耐久性が要求される自動車用部品には、無機充填剤で強化されたポリアセタール樹脂組成物が用いられる。耐久性とは、例えば、一定応力下での破断寿命が長いことを意味し、耐クリープ性ともいう。

無機充填剤を含む強化されたポリアセタール樹脂組成物においては、耐久性を向上させるために、ポリアセタール樹脂の高分子量化やポリアセタール樹脂の末端基の制御が行われている。 特許文献1には、耐クリープ性を改善する目的で、ポリアセタール樹脂と、繊維状無機充填材とを含むポリアセタール樹脂組成物が開示されている。また、特許文献1には、ポリアセタール樹脂の分子量が大きいほど耐クリープ性が向上することが開示されている。 特許文献2には、ガラス系無機充填材とポリアセタール樹脂とを含むポリアセタール樹脂組成物において、ガラス系無機充填材とポリアセタール樹脂の界面の密着性を改善するため、末端酸基の含有量が異なる複数のポリアセタール樹脂を併用する方法が開示されている。 特許文献3には、ポリアセタール骨格を含むABA型ブロックコポリマーを用いることで、ガラス繊維等との密着性が向上することが開示されている。

また、ポリアセタール樹脂の利用分野の拡大に応じ、耐摩耗性の改善が求められている。超高分子量ポリエチレンを樹脂組成物に添加することで、耐摩耗性を向上させることが検討されている。 特許文献4には、ガラス繊維を含むポリアセタール樹脂組成物の耐摩耗性を向上するために、潤滑剤を配合することが開示されている。また、特許文献4には、潤滑剤として超高分子量ポリエチレンが好ましいことが開示されている。 特許文献5には、機械的強度、耐摩耗性及び摺動性を改善する目的で、ガラス繊維を含むポリアセタール樹脂組成物に、トライボロジー改質剤を配合することが開示されている。特に、トライボロジー改質剤は平均分子量が1.0×106g/モル超である超高分子量ポリエチレンが好ましいことが開示されている。

特開平11−181231号公報

特開2004−359791号公報

国際公開第2001/009213号

特開平9−272802号公報

特表2014−534301号公報

近年、ポリアセタール樹脂を用いた機構部品や自動車用部品等において、さらなる高性能化及び高品質化が求められている。 高性能化としては、具体的には、機械的強度、耐久性及び耐摩耗性の向上が挙げられる。高品質化としては、具体的には、外観不良の抑制が挙げられる。 しかし、耐久性の向上のためにポリアセタール樹脂を高分子量化すると、流動性が低下し成形が困難となるため、外観不良といった品質低下の原因となる。 また、ポリアセタール樹脂の末端水酸基が増加すると、熱安定性が低下するため、成形時の外観不良(シルバーストリークス)といった品質低下の原因となる。 さらに、耐摩耗性の向上のため超高分子量ポリエチレンを添加した場合、超高分子量ポリエチレンの脱落等により切粉が発生しやすくなる。また、切粉の増加により、成形機へのフィード不良が起こりやすく成形サイクルが長くなるため、生産性の低下をまねくおそれもある。 特許文献1〜5に開示されるような、従来のポリアセタール樹脂組成物では、耐久性に優れ、高い耐摩耗性及び機械的強度を有し、そして、さらに外観に優れる成形体を製造することはできなかった。 本発明が解決しようとする課題は、高い耐久性、摺動性及び耐摩耗性を有する成形体を、生産性を高く製造することが可能な樹脂組成物を提供することである。

本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果驚くべきことに、所定量のガラス系充填材を含み、特定の特性を有する成形体とし得るポリアセタール樹脂組成物とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。

すなわち、本発明は下記のとおりである。 [1] (A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)ガラス系充填材10質量部以上100質量部以下と、を含むポリアセタール樹脂組成物であって、 該ポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体を引張破断した場合に、破断した成形体の破断面から突出した(B)ガラス系充填材の表面が平均厚み0.2μm以上3.0μm以下の(A)ポリアセタール樹脂を含む成分で覆われている、ポリアセタール樹脂組成物。 [2] (A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)ガラス系充填材10質量部以上100質量部以下と、を含むポリアセタール樹脂組成物であって、 該ポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体のISO527−1に準拠した引張破壊応力が135MPa以上であり、 該成形体のISO178に準拠した曲げ弾性率が7500MPa以上であり、及び (引張破壊応力−65)(MPa)/ガラス系充填材比率(質量%)が2.90以上である、ポリアセタール樹脂組成物。 [3] 前記ポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体を引張破断した場合に、破断した成形体の破断面から突出した(B)ガラス系充填材の表面が平均厚み0.2μm以上3.0μm以下の(A)ポリアセタール樹脂を含む成分で覆われている、[2]に記載のポリアセタール樹脂組成物。 [4] 前記(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して(C)重量平均分子量が50万以下であるポリエチレン樹脂0.5質量部以上8質量部以下をさらに含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。 [5] 前記(C)重量平均分子量が50万以下であるポリエチレン樹脂の融点が115℃以下である、[4]に記載のポリアセタール樹脂組成物。 [6] 前記(B)ガラス系充填材のガラス系充填材の表面を変性する機能を有する物質として、少なくとも1種の酸を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。 [7] 前記酸がカルボン酸である、[6]に記載のポリアセタール樹脂組成物。 [8] 前記(A)ポリアセタール樹脂がブロック成分を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。 [9] 前記ブロック成分が水素添加ポリブタジエン成分である、[8]に記載のポリアセタール樹脂組成物。 [10] [1]〜[9]のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体。 [11] (C)重量平均分子量が50万以下であるポリエチレン樹脂を含み、成形体の表層における(C)重量平均分子量50万以下のポリエチレン樹脂の存在量が、成形体の表層から1,000μmより深層を切り出した面の表層における(C)重量平均分子量が50万以下である重量平均分子量50万以下のポリエチレン樹脂の存在量よりも多い、[10]に記載の成形体。 [12] 少なくとも1種の酸を含み、(B)ガラス系充填材の表面を変性する機能を有する物質で(B)ガラス系充填材の表面を変性する工程と、 前記変性されたガラス系充填材と(A)ポリアセタール樹脂とを混合する工程と、を含む、[1]〜[9]のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。

本発明によれば、高い耐久性、摺動性及び耐摩耗性を有する成形体を、生産性を高く製造することが可能な樹脂組成物を提供することができる。

引張破壊応力(MPa)とガラス系充填材比率(質量%)の関係を示す。

以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)について、詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。

[ポリアセタール樹脂組成物] 本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)ガラス系充填材10質量部以上100質量部以下と、を含むポリアセタール樹脂組成物であって、該ポリアセタール樹脂組成物からなる成形体を引張破断した場合に、破断した成形体の破断面から突出した(B)ガラス系充填材の表面が平均厚み0.2μm以上3.0μm以下の(A)ポリアセタール樹脂を含む成分で覆われているポリアセタール樹脂組成物である。

本実施形態における(B)ガラス系充填材の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、10質量部以上100質量部以下である。 該含有量が10質量部以上であることにより、機械的強度や耐クリープ性が向上する。 また、該含有量が100質量部以下であることにより、成形時においてガラス系充填材同士の接触によるガラス系充填材の破壊を抑制することができる。このため、機械的強度や耐クリープ性が向上する。さらに、該含有量が100質量部以下であることにより、安定した押出成形を行うことができ、成形体の外観不良を抑制することができる。 該含有量の下限値は、好ましくは12質量部であり、より好ましくは15質量部であり、さらに好ましくは20質量部であり、よりさらに好ましくは25質量部である。 該含有量の上限値は、好ましくは90質量部であり、より好ましくは80質量部であり、さらに好ましくは75質量部であり、よりさらに好ましくは70質量部である。

本実施形態においては、ポリアセタール樹脂組成物からなる成形体を引張破断した場合に、破断した成形体の破断面から突出した(B)ガラス系充填材の表面を覆うポリアセタール樹脂組成物を含む成分の平均厚みが0.2μm以上3.0μm以下である。 該平均厚みが0.2μm以上であることにより、耐クリープ性や機械的強度が向上する。また、切粉を抑制し、かつ得られる成形体の外観不良を抑制できるため、品質が向上する。さらに、成形サイクルが短縮されるため生産性が向上する。 また、該平均厚みが3.0μm以下であることにより、ポリアセタール樹脂組成物の流動性の低下を抑制し、成形体の外観不良を抑制することができる。 該平均厚みの下限値は、好ましくは0.3μmであり、より好ましくは0.4μmである。 該平均厚みの上限値は、好ましくは2.5μmであり、より好ましくは2.0μmである。

本実施形態において、成形体の引張破断は、ポリアセタール樹脂組成物を射出成形して得られる、ISO294−1に準拠した小型引張試験片形状の成形体を用い、引張速度50mm/minで行う。 本実施形態において、任意の形状を有する成形体に対して(B)ガラス系充填材の表面を覆うポリアセタール樹脂組成物を含む成分の平均厚みを求める場合には、任意の形状を有する成形体を、熱プレスにより小型引張試験片形状に再加工した成形体を用いて行ってもよい。 小型引張試験片形状に再加工する際の熱プレスは、220℃以下の温度にて5分以内で行うことで、(B)ガラス系充填材の表面を覆うポリアセタール樹脂組成物を含む成分の平均厚みには影響を与えずに、再加工した成形体を得ることができる。 任意の形状を有する成形体の大きさや形状等によって熱プレスにより小型引張試験片形状に再加工することができない場合は、任意の形状を有する成形体をそのまま用いて引張破断を行ってもよい。

本実施形態において、引張破断した成形体の破断面から突出した(B)ガラス系充填材の表面を覆うポリアセタール樹脂組成物を含む成分の平均厚みは、引張破断した成形体の破断面を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察することにより求めることができる。 特に限定されるものではないが、(B)ガラス系充填材としてガラス繊維を例にとり、以下、該平均厚みの測定方法について、具体的に説明する。 本実施形態においては、ガラス繊維の表面を覆うポリアセタール樹脂組成物を含む成分の平均厚みを測定する際は、測定するガラス繊維として、引張破断した成形体の破断面の中央付近に存在するガラス繊維を選択することが好ましい。 まず、破断面より突出しているガラス繊維を無作為に少なくとも50個選択する。次に、該ガラス繊維の表面を覆う層を観察し、層の厚みを測定する。層の厚みが均一でない場合には、最大値を該層の厚みとして採用する。そして50個の層の厚みを加算平均することで平均厚みを算出する。 ガラス繊維の表面を均一に樹脂成分が覆っている場合、ガラス繊維と表面を覆う層との境界が明瞭でない場合がある。このような場合は、厚みを算出する際にガラス繊維単独の直径を用いてもよい。例えば、断面が円形であるガラス繊維の表面を均一に樹脂成分が覆っている場合、表面を覆う層の厚みは下記式により求められる。 表面を覆う層の厚み=(層を含めた直径−ガラス繊維単独の直径)/2 ガラス繊維単独の直径は、成形体から樹脂成分を除去した残渣を計測して求めることができる。 成形体から樹脂成分を除去する方法としては、例えば、十分に高い温度(400℃以上)で成形体中の樹脂成分を焼却する方法、(A)ポリアセタール樹脂を溶解する溶剤に浸漬して成形体中の樹脂成分を除去する方法等が挙げられる。 本実施形態において、(B)ガラス系充填材の表面は、面積比率として、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、よりさらに好ましくは90%以上が(A)ポリアセタール樹脂を含む成分に覆われていることが好ましい。 面積比率が50%以上であることによって、成形体の耐クリープ性がより向上する。

(B)ガラス系充填材の表面が平均厚み0.2μm以上3.0μm以下のポリアセタール樹脂組成物を含む成分で覆われるようにするためには、例えば、(A)ポリアセタール樹脂として後述するブロックコポリマーを用いること、及び(B)ガラス系充填剤の表面を変性する機能を有する物質(以下、被膜形成剤と記載することがある。)として後述する酸を含むものを使用すること等が挙げられる。 中でも、ブロックコポリマー及び酸を含む被膜形成剤を併用すると、(A)ポリアセタール樹脂と(B)ガラス系充填材との界面の接着性が飛躍的に向上し、(B)ガラス系充填材の表面を覆うポリアセタール樹脂組成物を含む成分の平均厚みが増大する。 該平均厚みを上記範囲内とするためには、ポリアセタール樹脂組成物を溶融混練により製造する際に、(B)ガラス系充填材を(A)ポリアセタール樹脂と、より長時間混練することも有効である。一般的には、樹脂組成物の溶融混練時に、ガラス系充填材はより短時間で混練することが望ましいと考えられているが、本実施形態においては逆の傾向となる。具体的には、押出混練時において(B)ガラス系充填材をサイドフィーダーから供給する場合、より上流側から供給することが挙げられる。

本実施形態において、(B)ガラス系充填材の表面を覆う層を構成するポリアセタール樹脂組成物を含む成分は、(A)ポリアセタール樹脂が主成分であり、後述する(C)重量平均分子量50万以下であるポリエチレン樹脂及び/又は安定剤等を含む樹脂成分であってもよい。

本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)ガラス系充填材10質量部以上100質量部以下と、を含むポリアセタール樹脂組成物であって、該ポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体のISO527−1に準拠した引張破壊応力が135MPa以上であり、該成形体のISO178に準拠した曲げ弾性率が7500MPa以上であり、及び(引張破壊応力−65)(MPa)/ガラス系充填材比率(質量%)の値が2.90以上であるポリアセタール樹脂組成物である。

本実施形態における(B)ガラス系充填材の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、10質量部以上100質量部以下である。 該含有量が10質量部以上であることにより、機械的強度や耐クリープ性が向上する。 また、該含有量が100質量部以下であることにより、成形時においてガラス系充填材同士の接触によるガラス系充填材の破壊を抑制することができる。このため、機械的強度や耐クリープ性が向上する。さらに流動性が向上するため、安定した押出成形を行うことができ、成形体の外観不良を抑制することができる。 該含有量の下限値は、好ましくは12質量部であり、より好ましくは15質量部であり、さらに好ましくは20質量部であり、よりさらに好ましくは25質量部である。 該含有量の上限値は、好ましくは90質量部であり、より好ましくは80質量部であり、さらに好ましくは75質量部であり、よりさらに好ましくは70質量部である。

本実施形態において、ポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体のISO527−1に準拠した引張破壊応力が135MPa以上である。 該引張破壊応力は、好ましくは140MPa以上であり、より好ましくは145MPa以上であり、さらに好ましくは150MPa以上であり、よりさらに好ましくは155MPa以上である。 本実施形態において、ポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体のISO178に準拠した曲げ弾性率が7500MPa以上である。 該曲げ弾性率は、好ましくは8000MPa以上であり、より好ましくは8500MPa以上であり、さらに好ましくは9000MPa以上であり、よりさらに好ましくは9500MPa以上である。 引張破壊応力が135MPa以上であり、曲げ弾性率が7500MPa以上であることにより、より機械的強度の要求が高い用途への展開ができる。 また、曲げ弾性率が7500MPa以上であることにより、成形体の薄肉化が可能となり、部品の小型化や軽量化が可能となる。

本実施形態において、成形体の引張破壊応力及び曲げ弾性率の測定は、ポリアセタール樹脂組成物を射出成形して得られる、ISO294−1に準拠した小型引張試験片形状の成形体を用いて行う。 本実施形態において、任意の形状を有する成形体に対して引張破壊応力及び曲げ弾性率を求める場合には、任意の形状を有する成形体を、熱プレスにより小型引張試験片形状に再加工した成形体を用いて行ってもよい。 小型引張試験片形状に再加工する際の熱プレスは、220℃以下の温度にて5分以内で行うことで、再加工した成形体を得ることができる。 任意の形状を有する成形体の大きさや形状等によって熱プレスにより小型引張試験片形状に再加工することができない場合は、任意の形状を有する成形体をそのまま用いて引張破壊応力及び曲げ弾性率の測定を行ってもよい。 成形体の引張破壊応力は、ISO527−1に準拠して、引張速度5mm/minで引張試験を行って測定する。 また、成形体の曲げ弾性率は、ISO178に準拠して、曲げ試験を行って測定する。

本実施形態において、(引張破壊応力−65)(MPa)/ガラス系充填材比率(質量%)が2.90以上であり、好ましくは2.95以上であり、より好ましくは3.00以上、さらに好ましくは3.05以上である。 (引張破壊応力−65)(MPa)/ガラス系充填材比率(質量%)の上限値は特に限定されるものではないが、好ましくは4.00以下であり、より好ましくは3.75以下である。

(引張破壊応力−65)(MPa)/ガラス系充填材比率(質量%)の値は、ポリアセタール樹脂組成物に配合した(B)ガラス系充填材の単位配合比率あたりの引張破壊応力向上への寄与を示す。 (引張破壊応力−65(MPa))/ガラス系充填材比率(質量%)が2.90以上であるということは、図1に示すとおり、ガラス系充填材比率を横軸に、引張破壊応力を縦軸にプロットした際に、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物においては、ガラス系充填材比率と引張破壊応力の関係が、切片65MPa、傾きが2.90である直線(1)上にあるか、直線(1)よりも上に存在することを意味する。 式中、65MPaは、(B)ガラス系充填材を配合しない状態の(A)ポリアセタール樹脂の引張破壊応力の値である。本実施形態においては、65MPaの該値は(A)ポリアセタール樹脂の分子量や構造などが変化しても、(B)ガラス系充填材を配合しない状態の(A)ポリアセタール樹脂の引張破壊応力の値として変動はほとんどない。 従来、ガラス系充填材を含むポリアセタール樹脂の成形体においては、ガラス系充填材の配合量を高めることで曲げ弾性率が向上した。一方、引張破壊応力は、ガラス系充填材比率がおよそ30質量%を超える量でガラス系充填材を配合すると、ほとんど向上しなくなる傾向にあった(図1中の曲線(3))。このため、引張破壊応力が135MPa以上である成形体を得ることは困難であった。この原因は定かではないが、ポリアセタール樹脂とガラス系充填材との接着性が低く、引張応力下ではこれらの界面が破壊の起点となっていたためと考えられる。 曲げ弾性率に対して引張破壊応力が低い、従来のポリアセタール樹脂の成形体は、耐久性が不十分であるという問題があった。また、ポリアセタール樹脂組成物の溶融混練時において目ヤニ、ペレットの割れ及び切粉の増加が起こり、外観の良好な成形体を得ることが困難であるなど、製造時においても問題があった。 本実施形態のポリアセタール樹脂組成物では、ポリアセタール樹脂とガラス系充填材との接着性を飛躍的に高めることができる。このため、ガラス系充填材の配合量を高くしても、成形体の引張破壊応力が頭打ちになる(図1中の曲線(3))ことなく向上する(図1中の曲線(2))。(引張破壊応力−65)(MPa)/ガラス系充填材比率(質量%)の値が2.90以上であると、繰り返しの応力に対する成形体の脆化を抑制し、耐久性が大幅に向上する。 また、(引張破壊応力−65)(MPa)/ガラス系充填材比率(質量%)の値が2.90以上であるポリアセタール樹脂組成物は、驚くべきことに、ポリアセタール樹脂組成物の溶融混練時に目ヤニ(ダイス周辺に堆積した樹脂やガラス系充填材)の発生が少なく、かつペレットの割れ及び切粉の量も低減する。これにより、成形サイクルを高めることができるとともに、成形体の外観の向上につながる。さらに、成形体の摺動性を改善する効果も得られる。

ガラス系充填材比率はポリアセタール樹脂組成物の重量に対する(B)ガラス系充填材の重量比率であり、質量%での値を用いる。 ガラス系充填材比率は、ポリアセタール樹脂組成物又は成形体を十分に高い温度(400℃以上)で焼却して樹脂成分を除去したのち、得られた残渣の重量を、焼却前のポリアセタール樹脂組成物又は成形体の重量で割り、100倍することで求めることができる。

本実施形態において、成形体の引張破壊応力を135MPa以上、成形体の曲げ弾性率を7500MPa以上、及び(引張破壊応力−65)(MPa)/ガラス系充填材比率(質量%)を2.90以上とするためには、例えば、(A)ポリアセタール樹脂として後述するブロックコポリマーを用いること及び(B)ガラス系充填剤に対する被膜形成剤として後述する酸を含むものを使用すること等が挙げられる。 中でも、ブロックコポリマー及び酸を含む被膜形成剤を併用すると、(A)ポリアセタール樹脂と(B)ガラス系充填材との界面の接着性が飛躍的に向上し、特に引張破壊応力及び(引張破壊応力−65MPa)(MPa)/ガラス系充填材比率(質量%)の値が増大する。 また、ポリアセタール樹脂組成物を溶融混練により製造する際に、(B)ガラス系充填材をより長時間、(A)ポリアセタール樹脂と混練することも、(引張破壊応力(MPa)−65MPa)/ガラス系充填材比率(質量%)の値が増大するため有効である。一般的には、樹脂組成物の溶融混練時に、ガラス系充填材はより短時間で混練することが望ましいと考えられているが、本実施形態では逆の傾向となる。(引張破壊応力−65(MPa))/ガラス系充填材比率(質量%)の値を増大させる上で、具体的には、押出混練時において(B)ガラス系充填材をサイドフィーダーから供給する場合、より上流側から供給することが挙げられる。

本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)ガラス系充填材10質量部以上100質量部以下と、を含むポリアセタール樹脂組成物であって、該ポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体のISO527−1に準拠した引張破壊応力が135MPa以上であり、該成形体のISO178に準拠した曲げ弾性率が7500MPa以上であり、(引張破壊応力−65)(MPa)/ガラス系充填材比率(質量%)の値が2.90以上であり、さらに、該ポリアセタール樹脂組成物からなる成形体を引張破断した場合に、破断した成形体の破断面から突出した(B)ガラス系充填材の表面が平均厚み0.2μm以上3.0μm以下の(A)ポリアセタール樹脂を含む成分で覆われているポリアセタール樹脂組成物であることが好ましい。

ポリアセタール樹脂組成物からなる成形体を引張破断した場合に、破断した成形体の破断面から突出した(B)ガラス系充填材の表面を覆うポリアセタール樹脂組成物を含む成分の平均厚みが0.2μm以上3.0μm以下である。 該平均厚みが0.2μm以上であることにより、耐クリープ性や機械的強度が向上する。また、切粉を抑制し、かつ得られる成形体の外観不良を抑制できるため、品質が向上する。さらに、成形サイクルが短縮されるため生産性が向上する。 また、該平均厚みが3.0μm以下であることにより、ポリアセタール樹脂組成物の流動性の低下を抑制し、成形体の外観不良を抑制することができる。 該平均厚みの下限値は、好ましくは0.3μmであり、より好ましくは0.4μmである。 該平均厚みの上限値は、好ましくは2.5μmであり、より好ましくは2.0μmである。

<(A)ポリアセタール樹脂> 本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において使用することができる(A)ポリアセタール樹脂(以下、(A)成分と記載することがある。)について、以下、詳細に説明する。 本実施形態において使用可能な(A)ポリアセタール樹脂としては、ポリアセタールホモポリマー、ポリアセタールコポリマー、架橋構造を有するポリアセタールコポリマー、ブロック成分を有するホモポリマーベースのブロックコポリマー、及びブロック成分を有するコポリマーベースのブロックコポリマーが挙げられる。 (A)ポリアセタール樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 (A)ポリアセタール樹脂として、例えば、分子量の異なる組み合わせや、コモノマー量の異なるポリアセタールコポリマーの組み合わせ等も適宜使用可能である。 本実施形態においては、(A)ポリアセタール樹脂として、ブロックコポリマーを含むことが好ましい。

(A)ポリアセタール樹脂として、具体的には、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる実質上オキシメチレン単位のみからなるポリアセタールホモポリマーや、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソランや1,4−ブタンジオールホルマール等のグリコールやジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル若しくは環状ホルマールを、共重合させて得られるポリアセタールコポリマーが挙げられる。 ポリアセタールコポリマーとして、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルとを、共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー、並びに、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーを用いることもできる。 ポリアセタールコポリマーは、ポリアセタールの繰り返し構造単位とは異なる異種のブロックを有するブロックコポリマーであってもよい。

本実施形態において、ブロックコポリマーとしては、下記式(1)、(2)若しくは(3)のいずれかで表されるブロック成分を少なくとも有するアセタールホモポリマー又はアセタールコポリマー(以下、両者をあわせてブロックコポリマーと記載することがある。)が好ましい。

式(1)及び(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基及び置換アリール基からなる群より選ばれる1種を示し、複数のR1及びR2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。 R3は、アルキル基、置換アルキル基、アリール基及び置換アリール基からなる群より選ばれる1種を示す。 mは1〜6の整数を示し、1〜4の整数が好ましい。 nは1〜10000の整数を示し、10〜2500の整数が好ましい。 上記式(1)で表されるブロック成分は、アルコールのアルキレンオキシド付加物から水素原子を脱離した残基であり、上記式(2)で表されるブロック成分は、カルボン酸のアルキレンオキシド付加物から水素原子を脱離した残基である。 式(1)又は(2)で表されるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマーは、例えば、特開昭57−31918号公報に記載の方法で調製できる。

式(3)中、R4は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基及び置換アリール基からなる群より選ばれる1種を示し、複数のR4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。 pは2〜6の整数を示し、2つのpは各々同一であっても異なっていてもよい。 q及びrはそれぞれ正の数を示し、qとrとの合計を100モル%とする場合に、qは2〜100モル%、rは0〜98モル%であり、−(CH(CH2CH3)CH2)−単位及び−(CH2CH2CH2CH2)−単位はそれぞれランダム又はブロックで存在する。

下記式(1)、(2)又は(3)のいずれかで表されるブロック成分は、両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有するブロック成分を構成する化合物を、ポリアセタールの重合過程でポリアセタールの末端部分と反応させることによりポリアセタール樹脂内に挿入することができる。 ブロックコポリマー中における式(1)、(2)又は(3)で表されるブロック成分の挿入量は特に限定されないが、ブロックコポリマーを100質量%としたとき、例えば、0.001質量%以上30質量%以下である。 成形体の曲げ弾性率を低下させない観点から、該ブロック成分の挿入量は30質量%以下とすることが好ましく、成形体の引張強度の観点から該ブロック成分の挿入量は0.001質量%以上であることが好ましい。 該ブロック成分の挿入量の下限値は、より好ましくは0.01質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%であり、よりさらに好ましくは1質量%である。 該ブロック成分の挿入量の上限値は、より好ましくは15質量%であり、さらに好ましくは10質量%であり、よりさらに好ましくは8質量%である。

ブロックコポリマー中のブロック成分の分子量は、10000以下であることが、成形体の曲げ弾性率を低下させない観点から好ましく、より好ましくは8000以下であり、さらに好ましくは5000以下である。 該ブロック成分の分子量の下限値は特に限定されないが、100以上であることが、安定した摺動性を維持し続ける観点から好ましい。

ブロックコポリマー中のブロック成分を形成する化合物は特に限定されないが、具体的には、C18H37O(CH2CH2O)40C18H37、C11H23CO2(CH2CH2O)30H、C18H37O(CH2CH2O)70H、C18H37O(CH2CH2O)40Hや、両末端ヒドロキシアルキル化水素添加ポリブタジエンなどが挙げられる。

ブロックコポリマーは、結合形式として、ABA型ブロックコポリマーであることが好ましい。 ABA型ブロックコポリマーとは、式(3)で表されるブロック成分を有するブロックコポリマーであり、具体的には、ポリアセタールセグメントA(以下、Aと記す。)と、両末端がヒドロキシアルキル化された水素添加ポリブタジエンセグメントB(以下、Bと記す。)を、A−B−Aの順で構成させたブロックコポリマーのことを意味する。

式(1)、式(2)又は式(3)で表されるブロック成分は、ヨウ素価20g−I2/100g以下の不飽和結合を有してもよい。不飽和結合としては、特に限定されないが、例えば炭素−炭素二重結合が挙げられる。 式(1)、式(2)又は式(3)で表されるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーは、例えば、国際公開第2001/09213号に開示されたポリアセタールブロックコポリマーが挙げられ、該公報に記載の方法により調製できる。 ブロックコポリマーとしてABA型ブロックコポリマーを用いることで、(B)ガラス系充填材の表面との接着性が向上する傾向にある。その結果、成形体の引張破壊応力及び曲げ弾性率を増大させることが可能となる傾向にある。

(A)ポリアセタール樹脂中のブロックコポリマーの比率は、(A)ポリアセタール樹脂全体を100質量%としたとき、好ましくは5質量%以上95質量%以下である。 該ブロックコポリマーの比率の下限値は、より好ましくは10質量%であり、さらに好ましくは20質量%であり、よりさらに好ましくは、25質量%である。 該ブロックコポリマーの比率の上限値は、より好ましくは90質量%であり、さらに好ましくは80質量%であり、よりさらに好ましくは75質量%である。 本実施形態の樹脂組成物における、当該ブロックコポリマーの比率は、1H−NMRや13C−NMR等により測定することができる。

<(B)ガラス系充填材> 本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において使用することができる(B)ガラス系充填材(以下、(B)成分と記載することがある。)としては、特に限定されないが、ガラス繊維、ガラスビーズ、及びガラスフレーク等が挙げられる。 ガラス繊維としては、例えば、チョップドストランドガラス繊維、ミルドガラス繊維、ガラス繊維ロービング等が挙げられる。中でも、チョップドストランドガラス繊維が、取扱い性及び成形体の機械的強度の観点から好ましい。 (B)ガラス系充填材は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

(B)ガラス系充填材の粒径、繊維径及び繊維長等は特に限定されず、何れの形態のガラス系充填材を用いてもよいが、表面積が広い方が、(A)ポリアセタール樹脂との接触面積が増え、成形体の耐クリープ性が向上するため好ましい。 チョップドストランドガラス繊維の場合、平均繊維径は、例えば、7μm以上15μm以下である。 該平均繊維径が上記範囲内にあることで、成形体の表面が平滑となり、摺動性の低下を抑制することができる。また、成形体の耐クリープ性を高めることができるとともに、成形時の金型表面の削れ等を防止することができる。 該平均繊維径の下限値は、好ましくは8μmであり、より好ましくは9μmである。 該平均繊維径の上限値は、好ましくは14μmであり、より好ましくは12μmである。

本実施形態において、平均繊維径は、成形体を充分に高い温度(400℃以上)で焼却して樹脂成分を除去したのち、得られた灰分を走査型電子顕微鏡で観察し、直径を測定することにより容易に測定できる。誤差をなくすため、少なくとも100本以上のチョップドストランドガラス繊維の直径を測定して、繊維径の平均値を算出する。 ガラス繊維は、繊維径の異なるガラス繊維を2種以上ブレンドして用いてもよい。

(B)ガラス系充填材は、被膜形成剤にて処理され、表面が変性されたものであることが好ましい。被膜形成剤は、収束剤と称される場合もある。 被覆形成剤としては、具体的には、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、少なくとも1種の酸成分を有する共重合体樹脂等が挙げられる。中でも、少なくとも1種の酸成分を有する共重合体樹脂を含む被膜形成剤が好ましい。 少なくとも1種の酸成分を有する共重合体樹脂としては、例えば、カルボン酸含有不飽和ビニル単量体及び該カルボン酸含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体及び該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体等が挙げられる。中でも、カルボン酸含有不飽和ビニル単量体及び該カルボン酸含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体を用いることがより好ましい。 被膜形成剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

カルボン酸含有不飽和ビニル単量体として、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられ、アクリル酸が好ましい。 カルボン酸含有不飽和ビニル単量体は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体として、具体的には、マレイン酸又はイタコン酸の無水物等が挙げられる。 カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体は、1種を単独でも用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

(B)ガラス系充填材の表面を被膜形成剤によって変性することにより、(A)ポリアセタール樹脂との界面の接着強度を高めることができ、ガラス系充填材の表面を覆う層の平均厚みが増大する。これにより耐クリープ性及び引張破壊応力が向上する。さらに摺動時の摩耗を抑制できることができる。 中でも、ブロック成分を含むポリアセタール樹脂と、被膜形成剤により変性されたガラス系充填材を組み合わせることで、耐クリープ性及び引張破壊応力が飛躍的に向上する。

本実施形態において(B)ガラス系充填材は、カップリング剤によって表面変性されていてもよい。 カップリング剤は特に限定されず、公知のものを用いることができる。 カップリング剤としては、具体的には、有機シラン化合物、有機チタネート化合物、有機アルミネート化合物等が挙げられる。 カップリング剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

有機シラン化合物として、具体的には、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス−(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタアクリロキシプロピルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。 中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス−(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタアクリロキシプロピルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、及びγ−グリシドキシプロピルメトキシシランが好ましい。ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン及びγ−アミノプロピルトリエトキシシランが、経済性と樹脂組成物の熱安定性の観点より好ましい。

有機チタネート化合物として、具体的には、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラステアリルチタネート、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタニウムラクチート、オクチレンブリコールチタネート、イソプロピル(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート等が挙げられる。

有機アルミネート化合物として、具体的には、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。

カップリング剤で表面処理されているガラス系充填材を用いることで、成形体の耐クリープ性がより高まる傾向にあるとともに、成形体の熱安定性がより向上する傾向にある。

<(C)重量平均分子量50万以下のポリエチレン樹脂> 本実施形態の樹脂組成物においては、(C)重量平均分子量50万以下のポリエチレン樹脂(以下、(C)ポリエチレン樹脂又は(C)成分と記載することがある。)を含むことが好ましい。 (C)ポリエチレン樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 重量平均分子量が50万以下であることにより、切粉の発生を抑制することができるとともに、成形体と金属との摺動において、摩擦係数が低くかつ非常に安定した値となる。 (C)ポリエチレン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1万以上40万以下であり、より好ましくは1.5万以上30万以下であり、さらに好ましくは2万以上20万以下であり、よりさらに好ましくは3万以上15万以下である。

重量平均分子量は以下の方法で測定することができる。ポリアセタール樹脂組成物の試料、又は成形体の一部を切出し、ヘキサフルオロイソプロパノール(以下、HFIPと略す。)中に浸漬し、溶解したポリアセタール樹脂成分をろ別する。なお、HFIPに溶解しない場合は、塩酸分解等でポリアセタール樹脂成分を除去してもよい。 次に、未溶融残渣分をトリクロロベンゼン(以下、TCBと略す。)に140℃で溶解させ、ろ過することでガラス系充填材をろ別する。得られたろ液を用い、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略す。)で測定する。用いるカラムとしては、昭和電工(株)製UT−807(1本)と東ソー(株)製GMHHR−H(S)HT(2本)を直列に接続する。移動相としてTCBを用い、試料濃度は20〜30mg(ポリエチレン樹脂)/20ml(TCB)とする。カラム温度を140℃、流量は1.0ml/分とし、示差屈折計を検出器として用い、測定を行う。 重量平均分子量の算出は、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと略す。)を標準物質として用いて算出する。この際のPMMA標準物質は数平均分子量として、2,000程度から1,000,000程度の範囲で、少なくとも4サンプルを用いる。

(C)ポリエチレン樹脂の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上8質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上6質量部以下であり、さらに好ましくは1.5質量部以下5質量部以下である。 該含有量を0.5質量部以上とすることにより、摺動性が良好で、かつ長期間にわたり安定となる。また耐摩耗性も向上する。 該含有量を8質量部以下とすることで、機械的強度の低下、樹脂組成物の溶融混練時における切粉、及び成形体における剥離((C)ポリエチレン樹脂成分の脱離)を抑制できる。

(C)ポリエチレン樹脂の含有量は、例えば下記の方法で確認することができる。ポリアセタール樹脂組成物又は成形体を充分に高い温度(400℃以上)で焼却し、樹脂成分を除去する。得られた灰分の重量により、(B)ガラス繊維の含有量が求められる。 次に、ポリアセタール樹脂組成物又は成形体に含まれるポリアセタール樹脂を塩酸分解し、残渣から先に求めた(B)ガラス繊維の配合比を引いたものが(C)ポリエチレン樹脂の含有量である。なお、状況に応じ、IR等で他の成分の有無を確認し、追加除去操作をしてもよい。

本実施形態で用いることのできる(C)ポリエチレン樹脂として具体的には、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。また、5質量%以下のプロピレン、ブテン、オクテン等のコモノマーを含有するエチレン系共重合体等を用いてもよい。 中でも、金属との摺動における摩擦係数の観点から、低密度ポリエチレンが好ましい。

本実施形態で用いることのできる(C)ポリエチレン樹脂は、融点(以下、Tmと略す。)が115℃以下であるものを少なくとも1種の含むことが好ましい。より好ましくはTmが110℃以下である。 Tmが115℃以下であることにより、金属との摺動において、摩擦係数が低く非常に安定したものとなる。また、ポリアセタール樹脂組成物を溶融混練により製造する際に、押出機のトルクを大幅に低減できる効果も奏する。これにより、従来ポリアセタール樹脂とガラス系充填材の複合材では困難であった、吐出量の増加を達成することができる。 本実施形態において、Tmは、ポリアセタール樹脂組成物の試料、又は成形体から切り出した試料4〜6mgを用い(プレス等で薄片化することが好ましい)、示差走査熱量測定(DSC)で、10℃/minの昇温した際に得られる吸熱のピーク値を用いる。

<安定剤> 本実施形態のポリアセタール樹枝組成物の成形体は、本発明の目的を損なわない範囲で、通常ポリアセタール樹脂組成物に使用されている各種安定剤を含んでもよい。 安定剤としては特に限定されないが、具体的には、酸化防止剤、ホルムアルデヒド、ギ酸の捕捉剤等が挙げられる。 安定剤は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 酸化防止剤としては、成形体の熱安定性向上の観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものが適宜使用可能である。 酸化防止剤の添加量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して0.1質量部以上2質量部以下が好ましい。

ホルムアルデヒド、ギ酸の捕捉剤として、具体的には、メラミン、ポリアミド系樹脂等のホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及びその重合体;アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩等が挙げられる。 より具体的には、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、酸カルシウム、脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)等が挙げられる。これらの脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。 捕捉剤の添加量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、ホルムアルデヒド、ギ酸の捕捉剤であるホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体が0.1質量部以上3質量部以下、アルカリ土類金属の脂肪酸塩が0.1質量部以上1質量部以下の範囲であると好ましい。

<その他の成分> 本実施形態のポリアセタール樹脂の成形体は、本発明の目的を損なわない範囲で、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている公知の、ガラス系充填剤以外の充填材(タルク、ウォラストナイト、マイカ、炭酸カルシウム等)、導電性付与剤(カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ等)、着色剤(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、有機染料等)、摺動付与剤(各種エステル系化合物、有機酸の金属塩等)、紫外線吸収剤、光安定剤、滑材等の各種安定剤も含有することができる。 その他の成分の添加量は、ガラス繊維以外の充填材、導電性付与剤、着色剤については、ポリアセタール樹脂を100質量%とした場合に、好ましくは30質量%以下であり、摺動付与剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑材については、ポリアセタール樹脂100質量%に対して、好ましくは5質量%以下である。 その他の成分は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

<成形体の製造方法> 本実施形態の成形体は、公知の方法による製造することができる。具体的には、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等により、以下のように原料成分を混合及び溶融混練し、成形することにより製造することができる。中でも、減圧装置・サイドフィーダー設備を装備した2軸押出機が好ましく使用できる。 原料成分を混合及び溶融混練する方法としては、特に限定されず、当業者が周知の方法を利用できる。具体的には、(A)成分及び(B)成分を、予めスーパーミキサー、タンブラー、V字型ブレンダー等で混合し、二軸押出機で一括溶融混練する方法、(A)成分を二軸押出機メインスロート部に供給し溶融混練しつつ、押出機の途中から(B)成分を添加する方法等が挙げられる。これらはいずれも利用できるが、本実施形態の成形体の機械的物性を高めるためには、(A)成分を二軸押出機メインスロート部に供給し溶融混練しつつ、押出機の途中から(B)成分を添加する方法が好ましい。最適な条件は、押出機の大きさによって変動するため、当業者の調整可能な範囲で適宜調整することが好ましい。より好ましくは、押出機のスクリューデザインに関しても、当業者に調整可能な範囲で種々調整する。 (C)成分を配合する場合には、押出機の途中から添加することもできるが、メインスロート部から供給することが好ましい。このような製法を取ることで、驚くべきことに押出機のトルクを大幅に低下する効果も得られることを見出した。これにより、大幅に生産性を改善することができる。

本実施形態における成形体を得るための成形方法については、特に限定されず、公知の成形方法を利用できる。具体的には、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法のいずれかによって成形することができる。

<成形体の表層における(C)ポリエチレン樹脂の存在量> 本実施形態の成形体は、成形体の表層における(C)重量平均分子量50万以下のポリエチレン樹脂の存在量が、成形体の表層から1,000μmより深層を切り出した面の表層における(C)重量平均分子量が50万以下である重量平均分子量50万以下のポリエチレン樹脂の存在量よりも多いことが好ましい。 (C)ポリエチレン樹脂の存在量は、X線光電子分光法(XPS)を用いて計測した炭素Cの相対元素濃度(atomic%)から算出する。測定装置としては、例えば、フィッシャーサイエンティフィック(株)製のESCALAB250等が挙げられる。 測定時の励起源としては、monoAlKα等を用いる。また、成形体表面に付着した付着汚染成分の影響を除くため、成形体表面を、洗浄剤(例えば、VALTRON DP97031の水溶液)で超音波洗浄し、純水で洗浄し、オーブン等で乾燥する。光電子取出は0°(成形体に対し垂直)とし、取込領域は、Surbey Scanを0〜1100eV、Narrow Scan 炭素Cは1sの領域とする。また、Pass EnergyはSurvey scanが100eV、Narrow scanが20eVとする。XPS測定では、Binding Energy 286〜288eVがポリアセタール樹脂由来の炭素であり、284〜286eVがポリエチレン等のオレフィン由来の炭素であるため、ピークが分離できる場合にはポリエチレン由来成分の炭素だけを用いる。ピークが分離できない場合は、284〜288eVの範囲のピーク面積を用いてもよい。 成形体の表層における炭素濃度をC1と、成形体の中心部(成形体の1,000μmより深層部)を切り出した面における表層の炭素濃度C2を用いたとき、[C1]/[C2]>1という関係式が成り立つとき、成形体の表層における(C)重量平均分子量50万以下のポリエチレン樹脂の存在量が、成形体の表層から1,000μmより深層を切り出した面の表層における(C)重量平均分子量が50万以下である重量平均分子量50万以下のポリエチレン樹脂の存在量よりも多いといえる。 なお、本実施形態ではC2を測定する箇所を成形体の1,000μmより深層部としているが、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体においては、その表層から100μmより深層部であれば、箇所によらず(C)ポリエチレン樹脂の存在量は仕込み比とほぼ同一の値となる。 好ましくは、1.01≦[C1]/[C2]≦1.20であり、より好ましくは1.02≦[C1]/[C2]≦1.18であり、さらに好ましくは、1.05≦[C1]/[C2]≦1.15である。

なお、ポリアセタール樹脂として、上記式(3)で表されるブロック成分を有するブロックコポリマーを用いた場合、ポリアセタール樹脂の炭素濃度自体が多くなる。しかし、表層及び1,000μmより深層部においてポリアセタール樹脂に由来する炭素濃度に差はないことから、上記の式が成り立つとき、表層に(C)ポリエチレン樹脂が多く存在すると言える。

(C)ポリエチレン樹脂が、成形体の表層に、成形体の1,000μmより深層部よりも多く存在することで、特に摺動初期における摺動性が向上する。また、少量のポリエチレン配合で摺動性の効果を飛躍的に向上させることができるため、曲げ弾性率等の機械的強度の低下を抑制することができる。更には、樹脂組成物の溶融混練時に切粉を抑制するという驚くべき効果も得ることができる。 なお、厚みが2,000μm未満である成形体の場合、1,000μmより深層部における炭素濃度に代えて、成形体の深さ方向の中心部における炭素濃度を用いることができる。 成形体の表層における(C)ポリエチレン樹脂が、成形体の1,000μmより深層部よりも多く存在するようにするためには、配合する(C)ポリエチレン樹脂の重量平均分子量を50万以下とすることで達成できる。さらに、(C)ポリエチレン樹脂のTmを115℃以下とすることで、成形体の表層における(C)ポリエチレン樹脂の存在量を、成形体の1,000μmより深層部よりも多くすることができる。

[用途] 本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、耐久性、機械的強度及び耐摩耗性が要求される成形体の原料として使用することができる。 本実施形態の成形体は自動車用部品として好適に使用でき、特に他の部材と接触するギアやプーリーとしての役割を担う部品に好適に使用できる。 これら以外にも、ポリアセタール樹脂の用途として公知の用途に適用できる。具体的には、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、戸車、ガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、自動車部品として、ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、ウインドウレギュレータワイヤードラム、スピーカーグリル、ガラスホルダー等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類、クリップ類等の部品ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品、プリンター、及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品;デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ等の映像機器用部品;CD、DVD、Blu−ray Disc、その他光デイスクのドライブ;ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器、携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品;電子機器用部品等に適用できる。また、その他用品として筆記具のペン先、芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、排水栓開閉機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、ボタン;散水用のノズル、散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、及び床材の支持具である建築用品;玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機(開閉部ロック機構、商品排出機構部品)、家具、楽器、住宅設備機器部品等が挙げられる。

以下、実施例及び比較例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、これらの実施例及び比較例に限定されるものではない。 実施例及び比較例で用いたポリアセタール樹脂組成物及び成形体の製造条件と評価項目は以下のとおりである。

(1)押出 スクリュー径Dに対するスクリュー長さLの比(L/D)=48(バレル数12)であり、第6バレルと第8バレルにサイドフィーダーを有し、第11バレルに真空ベントを備えた同方向回転二軸押出機(東芝機械(株)製TEM−48SS押出機)を用いた。第1バレルを水冷し、第2〜5バレルを210℃、第6〜12バレルを180℃に設定した。 押出に用いたスクリューは以下のデザインとした。第1〜4バレルの位置にフライトスクリュー(以下、FSと略す。)を配し、第5バレルの位置に送り能力を有するニーディングディスク(以下、RKDと略す。)2枚、送り能力のないニーディングディスク(以下、NKDと略す。)2枚、及び逆方向への送り能力を有するニーディングディスク(以下、LKDと略す。)1枚をこの順に配した。第6〜第8バレルの位置にFSを配し、第9バレルの位置にRKDとNKDを1枚ずつこの順に配し、第10〜第11バレルの位置にFSを配した。 (製法1) ガラス系充填材を第6バレルのサイドフィーダーより供給し、スクリュー回転数150rpmとし、総押出量を70kg/hとして押出を行った。 (製法2) ガラス系充填材を第8バレルのサイドフィーダーより供給し、スクリュー回転数150rpmとし、総押出量を70kg/hとして押出を行った。

(2)押出生産性 上記押出時のトルクを押出生産性の評価に用いた。 トルクの数値が小さいほど押出が容易であり、吐出速度を上げる余裕があり、押出生産性が高いと判断した。

(3)目ヤニ量 上記押出時にダイス付近で発生する目ヤニを回収し、単位時間当たりの目ヤニ量を計測した。 目ヤニ量が少ない方が、生産性や品質が良好である。

(4)切粉量 上記押出後に、7/1000のクリアランスのストランドカッターに、80℃のストランドを投入しペレタイズを行った。ペレット選別機は通さなかった。 得られたペレット1kg±0.1kgを14メッシュの篩に3回に分けてかけ、メッシュを通過した重量を、篩がけに使用したペレット重量で割ることで切粉の量とした。値が小さいほど切粉は少なく、品質が良好である。

(5)小型引張試験片形状の成形体の作成 射出成形機(EC−75NII、東芝機械(株)製)を用いて、シリンダー温度設定を205℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で成形することにより、ISO294−2に準拠した小型引張試験片形状の成形体を得た。金型温度は90℃とした。ISO294−2に準拠した小型引張試験片形状の成形体を下記(6)〜(8)、(10)、(12)及び(14)の各測定において用いた。 下記(9)クリープ破断時間の測定に用いる耐クリープ試験用試験片としては、JIS K7139−5Aに準拠した小型引張試験片形状の成形体を得た。金型温度は90℃とした。

(6)引張破壊応力 上記(5)で得られた成形体を用い、ISO527−1に準拠して、引張速度5mm/minで引張試験を行い、引張破壊応力を測定した。

(7)曲げ弾性率 上記(5)で得られた成形体を用い、ISO178に準拠して、曲げ試験を行い、曲げ弾性率を測定した。

(8)ガラス系充填材の表面を覆う成分の平均厚み 上記(5)で得られた成形体を用い、引張速度50mm/minで引張試験にて成形体を破断させた。成形体の破断面に白金を蒸着することで観察用試験片を作製した。観察用試験片を用い、走査電子顕微鏡(SEM)で観察することにより計測した。観察倍率は5,000倍で行った。 観察部位としては、観察用試験片の破断面中央部を観察できるように調整を行った。破断面より突出しているガラス繊維のうち任意の50本を選出した。全てのガラス繊維において、断面が円形であるガラス繊維の表面を均一に樹脂成分が覆っていることが確認された。次に、樹脂成分で覆われているガラス繊維の直径を計測した。別途、予め試験片を450℃で3時間焼却して樹脂成分を除去して求めておいたガラス繊維の直径(100本の平均値)との差から、表面に付着した樹脂成分の厚みを求めた。50本について加算平均し、ガラス系充填材の表面を覆う成分の平均厚みとした。

(9)クリープ破断時間 上記(5)で得られた耐クリープ試験用試験片である成形体を用いて、クリープ試験機(東洋精機製作所(株)製)を用いて、80℃環境下で、25MPaの荷重をかけクリープ試験を行い、破断するまでの時間を測定した。測定を3回行い、その平均をクリープ破断時間とした。数値が大きい方が耐クリープ性に優れる。

(10)対SUS304ボール耐摩耗深さ及び対SUS304ボール動摩擦係数 上記(5)で得られた成形体を用いて、ボールオンディスク型往復動摩擦摩耗試験機(AFT−15MS型、東洋精密(株)製)を用いた。23℃、湿度50%の環境下で、荷重19.6N、線速度30mm/sec、往復距離20mm、往復回数5,000回の条件で、摺動試験を行った。ボール材料は、SUS304ボール(直径5mmの球)を用いた。摺動試験後のサンプルの摩耗量(摩耗深さ)を、共焦点顕微鏡(OPTELICS(登録商標)H1200、レーザーテック(株)社製)を用いて測定した。対SUS304ボール摩耗深さはn=5で測定した数値の平均値とした。数値が低い方が耐摩耗性に優れる。 また、摺動試験において、1,000回摺動した時点の動摩擦係数を対SUS304ボール動摩擦係数(初期摺動性)とし、5,000回摺動した時点の動摩擦係数を成形体の対SUS304ボール動摩擦係数とした。数値が低い方が摺動性に優れる。

(11)対SS400平板動摩擦係数 射出成形機(Ti30G2、東洋機械金属(株)製)を用い、金型温度90℃、シリンダー設定温度を200℃に設定し、射出速度40%、射出時間3秒の射出条件で成形することにより、先端が5mmの球状となった樹脂製ピンを作製した。 ボールオンディスク型往復動摩擦摩耗試験機(AFT−15MS型、東洋精密(株)製)を用いた。23℃、湿度50%の環境下で、荷重39.2N、線速度30mm/sec、往復距離20mm、往復回数10,000回の条件で、ディスク材としてSS400製金属平板を用い、ボール材としては、上記先端が直径5mmの球状となった樹脂製ピンを用いて評価を行った。10,000回摺動した時点の動摩擦係数を成形体の対SS400平板動摩擦係数とした。数値が低い方が摺動性に優れる。

(12)対自材同士動摩擦係数 ボールオンディスク型往復動摩擦摩耗試験機(AFT−15MS型、東洋精密(株)製)を用いた。23℃、湿度50%の環境下で、荷重19.6N、線速度30mm/sec、往復距離20mm、往復回数5,000回の条件で、ディスク材として上記(5)で得られた成形体を用いて、ボール材としては、上記(11)で得られた先端が直径5mmの球状となった樹脂製ピンを用いて評価を行った。5,000回摺動した時点の動摩擦係数を成形体の対自材同士動摩擦係数とした。数値が低い方が摺動性に優れる。

(13)成形サイクル 射出成形機(α50i−A、ファナック(株)製)を用いて、シリンダー温度190℃、金型温度80℃、射出圧力120MPaに設定し、モジュール0.8、歯数50、歯幅5mmの平歯車(1個取り)の成形を行った。この際、射出時間は5秒、冷却時間は15秒を下限とし、樹脂の計量に要する時間が15秒を超える場合は、計量時のスクリュー回転数を上げて、計量時間を短縮するように調整した。スクリュー回転数を上げても計量に要する時間が15秒を超える場合は、冷却時間を計量時間+3秒とした。この条件で20分間の連続成形を行った。 この時のサンプルごとの冷却時間の長さ及び20分間当たりの連続成形されたギアの個数を計測し、成形生産性の評価基準とした。この時、計量に時間を要する(場合によっては冷却時間も長くなる)と、1ショットに要する時間が長くなるため、成形サイクルが長くなり、生産性が低下する。

(14)成形体の表層におけるポリエチレン樹脂の存在比(表面ポリエチレン比) サーモフィシャーサイエンティフィック(株)製のX線光電子分光法(XPS)ESCALAB250を用い、励起源としてmonoALKα(15kV×10mA)を用いた。分析サイズを1mm四方とした。成形体の表層の付着物を除去する為、市販の精密機器用洗浄剤(VALTRON DP97031)の1.5%水溶液を用いて、50℃の条件で3分間超音波洗浄を行い表面の有機物を除去したのち、高速液体クロマトグラフィー用蒸留水で室温条件下にて15分超音波処理を行い、洗浄を実施した。次いで洗浄後の試料を、乾燥オーブンで80℃、1時間乾燥処理を行い、測定に供した。当該測定において、光電子取出角は0°(成形体に対し垂直)とし、取込領域は、Surbey Scanを0〜1100eV、Narrow Scan 炭素Cは1sの領域とした。また、Pass EnergyはSurvey scanが100eV、Narrow scanが20eVで実施した。このときのC濃度は284eVから288eVの範囲のピーク面積比とした。面積比から相対元素濃度を算出し、四捨五入して1atomic%以上のものは有効数字2桁で、1atomic%未満のものは有効数字1桁で算出した。測定サンプルとしては、上記(5)で得られた成形体を用いた。該成形体の表層における炭素濃度を[C1]とした。続いて、成形体の厚み方向の中央をミクロトームにて削り出し、同様の測定で厚み方向の中央部付近における炭素濃度[C2]を測定した。

(15)片持ち曲げ振動疲労 試験片としては、射出成形機(EC−75NII、東芝機械(株)製)を用いて、シリンダー温度設定を200℃、金型温度80℃に設定し、冷却時間10秒で、長さ12cm×幅8cm×厚み0.3cmの平板を成形した。成形時の樹脂の充填方向に対し平行方向が測定方向となるように、ASTM D671 TYPE1に準拠した形状に切削加工を行い、試験片を得た。該試験片を、東洋精機(株)製繰返し振動疲労試験機にて、ASTM D671−B法に準拠した方法で、繰り返し回数1800回/min、温度23℃で測定し、曲げ試験の繰り返し回数が106回で破断、もしくは試験片の最大たわみが破断前の±8mmを超えた応力(kgf/m2)を片持ち曲げ振動疲労の値とした。値は、104〜107回程度となる点を最低5点得たグラフから106回の値を読み取った。値が大きいほど、耐久性に優れる。

(16)SFD(Spiral Flow Distance) 射出成形機(ファナック(株)製 ROBOSHOT α−50iA)を用いて、シリンダー温度設定を200℃、金型温度80℃とし、2mm厚のSFD金型を用いて射出圧力80MPaの各組成のSFDを評価した。SFDの値が長いほど、流動性に優れる。

実施例及び比較例に用いたポリアセタール樹脂組成物及び成形体の原料成分を以下に説明する。 (A1)製品名:テナック(登録商標)−C 4520(旭化成ケミカルズ(株)製)、メルトフローレート(MFR)=9.0g/10分、数平均分子量Mn=約7万 (A2)製品名:テナック(登録商標)−C 7520(旭化成ケミカルズ(株)製)、 メルトフローレート(MFR)=45.0g/10分、数平均分子量Mn=2.5万 (A3)ポリアセタールブロックコポリマーは、次のようにして調製した。熱媒を通すことのできるジャケット付きの2軸パドル型連続重合機を80℃に調整した。トリオキサンを40モル/時間、環状ホルマールとして1,3−ジオキソランを2モル/時間、重合触媒としてシクロヘキサンに溶解させた三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1モルに対し5×10−5モルとなる量、連鎖移動剤として下記式(5)で表される両末端ヒドロキシル基水素添加ポリブタジエン(数平均分子量Mn=2,330)をトリオキサン1モルに対し1×10−3モルになる量で、上記重合機に連続的に供給し重合を行った。

次に、上記重合機から排出されたポリマーを、トリエチルアミン1%水溶液中に投入し、重合触媒の失活を完全に行った後、ポリマーを濾過、洗浄して、粗ポリアセタールブロックコポリマーを得た。 得られた粗ポリアセタールブロックコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物(日本国特許第3087912号公報に記載)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した。第4級アンモニウム化合物の添加量は、窒素量に換算して20質量ppmとした。これをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールブロックコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加した。押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で、ポリアセタールブロックコポリマーの不安定末端部分の分解除去を行った。 不安定末端部分の分解されたポリアセタールブロックコポリマーに、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付き押出機で真空度20Torrの条件下で脱揮しながら、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズした。 このようにして得られたポリアセタールブロックコポリマーを、(A3)ポリアセタールブロックコポリマーとした。このブロックコポリマーは、ABA型ブロックコポリマーであり、メルトフローレートが15g/10分(ISO−1133 条件D)であった。メルトフローレートから算出した数平均分子量Mnは約5万であった。

(B)ガラス系充填材は、以下のものを用いた。 (B1)日本国特許第4060831号公報の製造例1記載の被膜形成剤(アクリル酸とアクリル酸メチルの共重合体を含有する)等で処理したガラス繊維。 (B2)日本国特開2012−136385号公報の実施例1記載の被膜形成剤(アクリル酸を含む共重合体を含有する)等で処理したガラス繊維。 (B3)日本国特開2009−7179号公報の試料No.1記載の被膜形成剤(酸を含有しない)で処理したガラス繊維。

(C)ポリエチレン樹脂は、以下のものを用いた。 (C1)旭化成ケミカルズ(株)製 サンテック(登録商標)LD L1850A 重量平均分子量13.2万、Tm=107℃、密度918kg/m3 (C2)旭化成ケミカルズ(株)製、サンテック(登録商標)HD J240 重量平均分子量7.3万、Tm=127℃、密度966kg/m3 (C3)旭化成ケミカルズ(株)製 サンファイン(登録商標) BM840 重量平均分子量32.4万、Tm=126℃、密度931kg/m3 (C4)旭化成ケミカルズ(株)製 サンファイン(登録商標) UH901 分子量(粘度法) 330万、Tm=136℃、密度940kg/m3 重量平均分子量の測定は、(C)ポリエチレン樹脂をTCBに140℃で溶解させて得られた溶液を用い、以下のとおりGPCで測定した。用いるカラムとしては、昭和電工(株)製UT−807(1本)と東ソー(株)製GMHHR−H(S)HT(2本)を直列に接続した。移動相としてTCBを用い、試料濃度は20〜30mg((C)ポリエチレン樹脂)/20ml(TCB)とした。カラム温度を140℃、流量は1.0ml/分とし、示差屈折計を検出器として用い、測定を行った。 重量平均分子量の算出は、PMMAを標準物質として用いて算出した。 なお、(C4)は分子量が高く、トリクロロベンゼンに溶けない成分が含まれており、GPCによる分子量測定ができなかっため、JIS K7367−3に準拠した粘度法により分子量を測定した。

[実施例1〜13、比較例1〜6] 各成分がそれぞれ表1又は表2に記載の割合となるよう、表1又は表2に記載の条件にて押出を行って樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を用い、上記条件にて成形を行って成形体を製造した。各物性を評価した結果を表1、表2及び表5に示す。

実施例1〜13では、(B)ガラス系充填材の表面を覆う樹脂の平均厚みが0.2μm〜3.0μmの範囲となった。これにより、耐クリープ性、耐摩耗性、摺動性及び成形生産性が良好となった。 中でも、実施例1〜8及び実施例13のように、(A)ポリアセタール樹脂としてブロック成分を有するもの(A3)を用い、かつ(B)ガラス系充填材として酸を含む被膜形成剤で変性されているもの(B1又はB2)を用いた場合、(B)ガラス系充填材の表面を覆う成分の平均厚みが0.8μm以上と大きくなった。これにより、耐クリープ性及び摺動性がさらに向上しただけでなく、製造時における目ヤニや切粉の量を低減することができた。 一方、比較例1〜5では、(B)ガラス系充填材の表面を覆う成分の平均厚みが0.2μmを下回った。 中でも、比較例1〜3のように、(A)ポリアセタール樹脂としてブロック成分を有するもの(A3)を用いず、かつ(B)ガラス系充填材として酸を含む被膜形成剤で変性されているもの(B1又はB2)を用いなかった場合、(B)ガラス系充填剤の表面に樹脂の被覆は全く見られなかった。この場合、耐クリープ性、耐摩耗性、摺動性及び成形生産性が低下したのみならず、製造時における目ヤニや切粉の量も多くなった。 実施例9と比較例4を対比すると、(B)ガラス系充填材を導入後の混練時間が長い製法1を用いることで、(B)ガラス系充填材の表面を覆う樹脂の平均厚みが増加する傾向があることが分かった。 実施例1と比較例6とを対比すると、(B)ガラス系充填材の配合量が少ない比較例6では、(B)ガラス系充填材の表面を覆う樹脂の平均厚みが1.2μmと十分であっても、耐クリープ性が向上するほどの効果は得られないことが分かった。

[実施例14〜26、比較例7〜9] 各成分がそれぞれ表3又は表4に記載の割合となるよう、表3又は表4に記載の条件にて押出を行って樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を用い、上記条件にて成形を行って成形体を製造した。各物性を評価した結果を表3〜表5に示す。

実施例14〜26では、(B)ガラス系充填材の表面を覆う樹脂の平均厚みが0.2μm〜3.0μmの範囲となり、耐クリープ性、耐摩耗性、摺動性及び成形生産性が良好となった。また(C)ポリエチレンを含有するこれら実施例では、耐摩耗性や摺動性がより向上した。 実施例14、15の対比、及び実施例17、22、23、24の対比からは、重量平均分子量が50万以下であるポリエチレン(C1、C2又はC3)を用いた場合、成形体表面にポリエチレンが偏在しやすく、摺動性や耐摩耗性をより高めることができることが分かった。 一方、比較例7〜9では、(A)ポリアセタール樹脂としてブロック成分を有するもの(A3)を用いず、かつ(B)ガラス系充填材として酸を含む被膜形成剤で変性されているもの(B1又はB2)を用いていないため、(B)ガラス系充填剤の表面に樹脂の被覆は全く見られなかった。この場合、耐クリープ性の低下、及び製造時における目ヤニや切粉の量の増加がみられた。

本出願は、2014年3月28日出願の日本特許出願(特願2014−070201号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

本発明のポリアセタール樹脂組成物および成形体は、ポリアセタール樹脂が好適に使用される種々の分野、特に耐久性と摺動性が要求される自動車機構部品の分野において産業上の利用可能性を有する。

QQ群二维码
意见反馈