【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、加工されたワークの寸法をフィードバックすることによって次に加工されるべきワークの加工条件を補正するフィードバック式加工条件補正装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】上記フィードバック式加工条件補正装置は例えば、本出願人の特開平6−198542号公報に記載されているように、(a) 複数のワークを順に加工する加工機と、(b) 外部から供給された補正値に基づいて前記加工機の加工条件を補正し、その補正した加工条件に従って前記加工機を制御する加工機制御装置と、(c) 前記加工機により加工された複数のワークの寸法を順に測定する測定機とを備え、それら加工機と測定機との間にその測定機による測定を待つワークが少なくとも1個存在する加工システムにおいて使用するために、前記測定機により複数の測定値が取得されたときにその複数の測定値に基づいて前記加工条件の補正値を決定し、その決定した補正値を前記加工機制御装置に供給する補正値決定手段を含むように構成される。 【0003】加工機と測定機との間にその測定機による測定を待つ待機ワークが全く存在せず、加工機により加工されたワークが直ちに測定機によって測定される形式の加工システムにおいては、最新の補正値の影響を受けた加工条件に従って加工されたワークが直ちに測定機によって測定され、最新の補正値の影響が直ちに測定値に反映される。 したがって、この形式の加工システムにおいては、加工条件の補正精度を比較的簡単に向上させることができる。 しかし、上記公報に記載されているように、加工機と測定機との間にその測定機による測定を待つワークが少なくとも1個存在する形式の加工システムも存在し、この形式の加工システムにおいては、最新の補正値の影響を受けたワークが直ちに測定機によって測定されず、最新の補正値の影響がむだ時間の経過後にはじめて測定値に反映されるため、加工条件の補正精度を向上させることが比較的困難である。 なお、ここに「むだ時間」は本来「時間」の概念であり、「待機ワーク数」と厳密には一致しないが、制御システムの特性を定義するパラメータとしては等価であるため、以下、「むだ時間」と「待機ワーク数」とをそれぞれ互いに対応する概念として使用することとする。 【0004】そのため、このむだ時間存在式の加工システムと共に使用されるべきフィードバック式加工条件補正装置は、上記公報に記載されているように、順に加工された複数のワークの各々について測定された複数の測定値に基づいて1個の補正値が決定され、これにより、 1個の補正値が例えば、過去の複数の測定値から過去の測定値の変化傾向を取得し、その過去の測定値の変化傾向から将来の測定値の変化傾向を予測した上で決定されることとなる。 したがって、この公報に記載されたフィードバック式加工条件補正装置には、むだ時間が存在する加工システムにおいて使用されるにもかかわらず、加工条件を比較的高精度で補正することができるという利点がある。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この従来のフィードバック式加工条件補正装置(以下「従来装置」という)には、加工条件の補正精度を優先し、1個の補正値を決定するのに比較的多数の測定値を使用するため、加工条件を迅速に補正することが必要である時期に加工条件を迅速に補正することができないという欠点がある。 以下、この欠点を具体的に説明する。 【0006】図37には、この従来装置において一連の加工が開始された後に測定値が取得される様子の一例がグラフで示されている。 この従来装置が使用される加工システムにはむだ時間が存在するため、加工開始直後には測定値が存在せず、むだ時間の経過後にはじめて測定値が取得されることになる。 このときから測定値の蓄積が開始され、蓄積された測定値の数が設定複数個となったときに、その設定複数個の測定値に基づいて最初の補正値が決定される。 この補正値は加工条件制御装置に供給され、そこで加工条件が補正されるが、その補正後の加工条件に従って加工されたワークが直ちに測定機によって測定されるわけではないから、その最初の補正値の影響は、むだ時間の経過後にはじめて測定値に反映されることとなる。 そのため、この従来装置では、一連の加工の開始時期から最初の補正値が決定されてそれが測定値に反映されるまでに、最初のむだ時間,測定値の蓄積段階および二回目のむだ時間を経過しなければならない。 このように、この従来装置では、一連の加工の開始時期から最初の補正値が決定されてそれが測定値に反映されるまでに時間がかかる。 【0007】一方、一連の加工開始当初にあっては、加工機の状態,測定機の状態等が変化し易いため、比較的頻繁に加工条件を補正しないと、最初の補正値が測定値に反映されるまでの間に精度不良ワーク、すなわち、寸法誤差がワークに対して予め設定された公差範囲を超えるワークが多発してしまうおそれがある。 【0008】したがって、この従来装置には、加工条件を迅速に補正することが必要である時期に加工条件を迅速に補正することができないという欠点があるのである。 【0009】そのため、作業者は、少なくとも加工条件が最初に自動的に補正されるまでの間は、精度不良ワークが多発することを防止するため、測定値を監視し、適宜加工条件を手動で補正しなければならない場合もあり、作業者にかかる負担が大きかった。 【0010】図38には、作業者が手動で補正を行う場合の一例がグラフで表されている。 作業者は、一般に、 ワークの加工誤差が公差範囲を超えた場合に、加工条件を早急に補正する必要であると判断し、そのときの測定値に基づき、作業者の勘と経験によって補正値を決定する。 しかし、作業者は、測定値の変化傾向を前記補正値決定手段によるほどには正確に予測することができないのが普通であるため、作業者による補正値すなわち手動補正値の影響が測定値に反映されても、その測定値が十分に目標値に一致しない場合もある。 そして、この場合には、作業者による手動補正後、前記補正値決定手段による自動補正が行われ、その自動補正によって先の手動補正が是正されることになるが、前記のように、手動補正後から早期に自動補正値を決定することができないため、手動補正の是正を迅速に行うことができない。 そのため、加工条件が最初に自動的に補正されるまでの間にたとえ作業者が手動で加工条件を補正しても、精度不良ワークの発生を十分に抑制することができない場合もあった。 【0011】以上要するに、この従来装置には、精度を優先した補正規則しか採用しないため、迅速な補正が必要である時期に迅速な補正ができないという問題があるのであり、このような事情に鑑み、本発明は、補正値決定所要時間が長いが補正精度が高い補正規則と補正精度が低いが補正値決定所要時間が短い補正規則とを併用することにより、加工条件の補正に対する要求により柔軟に対応し得るフィードバック式加工条件補正装置を提供することを課題としてなされたものである。 【0012】 【課題を解決するための手段,作用および効果】 そし て、本発明に従えば、以下の各態様のフィードバック式 加工条件補正装置が得られる。 (1)(a) 複数のワークを順に加工する加工機と、(b) 外 部から供給された補正値に基づいて前記加工機の加工条 件を補正し、その補正した加工条件に従って前記加工機 を制御する加工機制御装置と、(c) 前記加工機により加 工された複数のワークの寸法を順に測定する測定機とを備え、それら加工機と測定機との間にその測定機による測定を待つワークが少なくとも1個存在する加工システムと共に使用され、 前記測定機により複数の測定値が取 得されたときにその複数の測定値に基づいて前記加工条 件の第1補正値を決定し、その決定した第1補正値を前 記加工機制御装置に供給する第1補正値決定手段を含むフィードバック式加工条件補正装置において、前記測定機により前記第1補正値決定手段が1個の前記第1補正値を決定するのに必要な測定値の数より少数の測定値が取得され、かつ、予め設定された第2補正実行条件が成 立した場合に、前記少数の測定値に基づいて前記加工条件の第2補正値を決定し、その決定した第2補正値を前記加工機制御装置に供給する第2補正値決定手段を設け るとともに、前記第2補正実行条件を、少なくともワー クの加工誤差がそれに対して設定された設定範囲を超え る場合に成立するものとしたことを特徴とするフィード バック式加工条件補正装置(請求項1)。 【0013】なお、ここに「 第1補正値決定手段」は例えば、設定数個の測定値が取得されて補正値を決定した後、改めて測定値の取得を開始し、再度、設定数個の測定値が取得されたときに新たな補正値を決定する態様としたり、設定数個の測定値が取得されて補正値を決定した後、新たな測定値が1個ずつ取得される毎に、最新の設定数個の測定値に基づいて新たな補正値を決定する態様とすることができる。 このことは「 第2補正値決定手段」についても同様である。 また、「ワークの加工誤 差」はワークの測定機による測定値の目標値からの誤差 値である。 【0014】 本項のフィードバック式加工条件補正装置 においては、第1補正値決定手段が1個の前記第1補正 値を決定するのに必要な測定値の数より少数の測定値が 測定機により取得され、かつ、予め設定された第2補正 実行条件が成立した場合に、第2補正値決定手段が実質 的に作動する。 上記少数の測定値に基づいて加工条件の 第2補正値を決定し、その決定した第2補正値を加工機 制御装置に供給するのである。 そして、上記第2補正実 行条件は、少なくともワークの加工誤差がそれに対して 設定された設定範囲を超える場合に成立する。 ここにお いて、「少なくとも」とは、例えば、請求項3に係る発 明におけるように、ワークの加工誤差が設定範囲を超え るのみでは、第2補正実行条件が成立せず、さらに、一 連の加工の開始後であって作業者が手動補正をした時期 から一定個数のワークについての測定が終了する前であ る等、別の条件が満たされた場合に、はじめて第2補正 実行条件が成立する態様もあり得ることを意味する。 い ずれにしても、補正後の請求項1の発明に係るフィード バック式加工条件補正装置においては、ワークの加工誤 差が設定範囲を超え、加工機の加工条件を補正した方が よい場合には、第2補正値が決定され、加工機の加工条 件が補正される。 したがって、 第2補正値決定手段が実質的に作動すれば、それと同時に第1補正値決定手段の作動を開始させた場合のその第1補正値決定手段より先に新たな補正値を決定するから、補正において精度より迅速さを優先すべき時期に第2補正値決定手段が実質的に作動するように設計すれば、補正の迅速さが要求される時期に迅速な補正が行われることとなる。 【0015】このように、本発明によれば、精度を優先した補正規則と迅速さを優先した補正規則とが併用さ れ、後者の補正規則によれば加工条件に対して迅速な補正が要求される時期に迅速な補正が可能となる。 したがって、本発明によれば、精度を優先した補正規則により新たな補正値が決定されるまでの間において、作業者の手動補正の頻度が減少し、作業者にかかる負担が軽減されたり、ワークの加工品質が向上し、精度不良ワークの発生が抑制されたりする効果が得られる。 【0016】 (2) (1)の発明であって、前記第2補正値決定手段が、予め設定された第2補正実行条件が成立するか否かを問わず、設定数個の測定値に基づいて第2補正値を決定するが、第2補正実行条件が成立した場合に限り、その決定した第2補正値を前記加工機制御装置に供給するもの。 (3) (1) または(2) の発明であって、前記第2補正実行条件が、加工時期に関するもの。 (4) (3) の発明であって、前記第2補正実行条件が、一連の加工の開始時期から一定個数のワークについての測定が終了するまで(または一定時間が経過するまで)の期間に該当するか、または、一連の加工の開始時期から 第1補正値決定手段により最初に補正値(以下「第1補正値」という)が決定されるまでの期間に該当する場合に成立するもの(請求項2) 。 (5) (3) の発明であって、前記第2補正実行条件が、一連の加工の開始後であって作業者が手動補正をした時期から一定個数のワークについての測定が終了するまで(または、一定時間が経過するまで)の期間に該当するか、または、その手動補正時期から第1補正値決定手段により最初に第1補正値が決定されるまでの期間に該当する場合に成立するもの。 なお、作業者による手動補正後に第2補正値を加工機制御装置に供給する理由は、作業者による手動補正値の精度が十分に高くない場合があり、このような場合にはその後早期に自動補正を行うことが望ましいからである。 また、後に実施例の項におい て説明するように、本項の条件のみならず、ワークの加 工誤差が設定範囲を超えるという条件も成立した場合 に、はじめて第2補正実行条件が成立したとすることも 可能である(請求項3)。 (6) (3) の発明であって、前記第2補正実行条件が、一連の加工の開始後であって前記第1補正値決定手段の内部パラメータの設定が変更された後から一定時間が経過するまでの期間に該当するか、または、その設定変更時期から第1補正値決定手段により最初に第1補正値が決定されるまでの期間に該当する場合に成立するもの。 なお、 第1補正値決定手段の内部パラメータの設定が変更された後に第2補正値を加工機制御装置に供給する理由は、その設定変更に時間がかかり、その間に加工機の状態,測定機の状態等が変化し、ワークの加工寸法のこれからの変化傾向がこれまでの変化傾向と異なってしまう可能性があり、それにもかかわらず第1補正値決定手段が第1補正値を決定するのを待ってその決定した第1補正値を加工機制御装置に供給するときには、その第1補正値が決定されてそれが測定値に反映されるまでに時間がかかり、その間に精度不良ワークが多発するおそれがあるからである。 また、後に実施例の項において説明す るように、本項の条件のみならず、ワークの加工誤差が 設定範囲を超えるという条件も成立した場合に、はじめ て第2補正実行条件が成立したとすることも可能である (請求項4)。 (7) (1) または(2) の発明であって、前記第2補正実行条件が、ワークの加工誤差に関するもの。 (8) (7) の発明であって、前記第2補正実行条件が、ワークの加工誤差がそれに対して設定された設定範囲を超えた場合に成立するもの。 なお、ここに「設定範囲」 は、例えば、ワークの公差範囲と同じに設定することができるが、例えば、公差範囲内に設定すれば、ワークの加工誤差が公差範囲から外れる事態を未然に防止することが容易となるという効果が得られる。 また、ここに「ワークの公差範囲」とは例えば、ワークの寸法に関し、製品としてのワークの寸法精度の合否を判断する際に基準となるものをいう。 (9) (1) 〜(8) の発明であって、前記第2補正実行条件が、加工時期に関する第1部分条件とワークの加工誤差に関する第2部分条件との組合せで構成されているもの。 (10)(9) の発明であって、前記第2補正実行条件が、前記第1部分条件が成立する場合には、前記第2部分条件の成否を問わず、成立するものであり、第1部分条件が成立しない場合には、第2部分条件が成立する場合にのみ、成立するもの。 なお、第2補正実行条件が、第1部分条件が満たされる場合には第2部分条件の成否を問わず成立するとした理由は、一連の加工当初にあっては、 加工機の状態,測定機の状態等が変化し易いのが一般的であり、たとえ測定値が現在公差範囲内にあってもその後公差範囲から外れる傾向が強いと考えられるからである。 (11)(1) 〜(10)の発明であって、前記第2補正値決定手段が、前記第2補正実行条件が成立して1個の補正値を決定したときに一回の作動を終了するもの。 なお、この実施態様は、視点をかえると、第2補正実行条件が、互いに異なる成立条件と解除条件とを有し、かつ、成立条件は、前述の加工時期またはワークの加工誤差に関する条件が成立することであるのに対し、解除条件は、 第2 補正値決定手段が1個の補正値を決定することである態様であると考えることができる。 (12)(1) 〜(10)の発明であって、前記第2補正値決定手段が、前記第2補正実行条件が成立して設定複数個の補正値を決定したときに一回の作動を終了するもの。 (13)(1) 〜(10)の発明であって、前記第2補正値決定手段が、前記第2補正実行条件が成立している間、補正値を決定し続けるもの。 (14)(1) 〜 (13)の発明であって、前記第1補正値決定手段が、最新の加工条件(すなわち、最初の補正値決定前にあっては、加工条件の初期値、最初の補正値決定後にあっては、先に自身が決定した最新の補正値または先に前記第2補正値決定手段が決定した最新の補正値の影響を受けた加工条件)に従って最初に加工されたワークである先頭補正ワークが前記測定機により測定されたときから、測定機による測定値を逐次蓄積し始め、蓄積した測定値の数が設定数個となった場合に、それら設定数個の測定値に基づいて新たな第1補正値を決定するもの。 (15)(1) 〜 (13)の発明であって、前記第1補正値決定手段が、測定機による測定値を逐次蓄積し、蓄積した複数の測定値に基づき、前記第1補正値を逐次決定するとともに、各補正値の決定時期から、その各補正値の影響を受けた加工条件に従って最初に加工されたワークである先頭補正ワークが測定機によって測定される時期までの間に測定機によって測定される複数の測定値を、その各補正値と同じ量だけシフトさせて蓄積するもの。 すなわち、この実施態様は、先頭補正ワークが測定機によって測定されることを待つことなく新たな補正値を決定可能とするため、補正値はそのまま測定値に反映されると仮定した上で、補正値の決定時期からその補正値に係る先頭補正ワーク(以下「前回補正ワーク群」という)の複数の測定値をそれぞれその補正値と同じ量だけずつシフトさせて蓄積することにより、前回補正ワーク群に属する各ワークがさらにその補正値の影響を受けた加工条件にも従って加工され、かつ、直ちに測定機によって測定されたと仮定した場合に取得されることとなる測定値を予測し、その予測後の測定値に基づいて新たな補正値を決定するのである。 (16)(1) 〜 (15)の発明であって、前記第1補正値決定手段が、設定数個の測定値に基づいて1個の移動平均値を算出し、その算出した移動平均値を今回の測定値とみなし、そのみなした今回の測定値の、目標値からの誤差値とその誤差値の微分値または移動平均値の微分値との双方に基づき、今回の補正値を決定するもの(請求項 5) 。 なお、微分値は例えば、互いに連続的に取得された複数個の生の測定値,移動平均値または誤差値を1本の直線で近似した場合のその直線の勾配として決定することができる。 その1本の直線は例えば、1次回帰直線とすることができる。 (17)(1) 〜 (16)の発明であって、前記第1補正値決定手段が、今回の誤差値と微分値とのうちの少なくとも誤差値に基づき、ファジィルールに従って今回の補正値を決定するファジィ演算型であるもの(請求項6) 。 (18)(17)の発明であって、前記第2補正値決定手段が、 今回の誤差値と微分値とのうちの少なくとも誤差値に基づき、ファジィルールに従って今回の補正値を決定するファジィ演算型であるとともに、 第2補正値決定手段におけるファジィルールが、前記第1補正値決定手段におけるファジィルールとは異なるもの。 (19)(18)の発明であって、前記第2補正値決定手段が、 それのファジィルールが、前記第1補正値決定手段におけるファジィルールに対し、 第 1補正値決定手段と第2 補正値決定手段とにそれぞれ同じ入力値を与えた場合に、それら入力値が出力値である補正値に与える影響が、 第2補正値決定手段において第1補正値決定手段におけるより小さくなるように設定されているもの。 第1 補正値決定手段においては、比較的多数の測定値に基づいて今回の誤差値と微分値とをそれぞれ決定することが可能であり、それら誤差値および微分値の精度が比較的高いのに対し、 第2補正値決定手段においては、比較的少数の測定値に基づいて今回の誤差値と微分値とをそれぞれ決定しなければならず、それら誤差値および微分値の精度が比較的低くなってしまい、 第1補正値決定手段におけるファジィルールと同じ特性としたのでは、 第2 補正値決定手段により決定される補正値の精度も低くなってしまうからである。 (20)(1) 〜 (17)の発明であって、前記第2補正値決定手段が、今回の測定値の、目標値からの誤差値に比例した大きさで今回の補正値を決定する比例制御型(P制御型)であるもの(請求項7 )。 例えば、今回の測定値をX i 、目標値をA 0 、今回の誤差値をR i 、今回の補正値をU iとして、 U i =K P・(X i −A 0 ) =K P・R iなる式を用いて今回の補正値U iを算出することができる。 ここに、「K P 」は比例ゲインである。 比例ゲインK Pは1以上の値とすることは可能であるが、1より小さい値とすることが望ましい。 上記式を用いた補正値決定は、測定値の変化傾向を考慮しないで行うものであり、比例ゲインK Pを1以上の値としたのでは補正値が急変する傾向があるからである。 なお、この実施態様は、 第2補正値決定手段を、誤差値と微分値とに基づいて補正値を決定する実施態様に比較し、1個の補正値を決定するのに必要な測定値の数が少なくて済み、補正の迅速性が向上するという効果が得られる。 1個の誤差値を取得するには少なくとも1個の測定値が存在すれば足りるのに対し、1個の微分値を取得するには少なくとも2個の測定値が存在しなければならないからである。 また、この実施態様では、「測定値」は必ずしも生の測定値とする必要はなく、例えば、前記移動平均値とすることができる。 (21)(1) 〜 (17)の発明であって、前記第2補正値決定手段が、今回の測定値の、目標値からの誤差値の時間積分値に比例した大きさで今回の補正値を決定する積分制御型(I制御型)であるもの(請求項8) 。 例えば、今回の生の測定値をX i 、目標値をA 0 、今回の誤差値をR i 、今回の補正値をU iとして、 U i =K I・(1/T I )・∫(X i −A 0 )dt =K I・(1/T I )・∫R i dt なる式を用いて今回の補正値U iを算出することができる。 ここに、「K I 」は積分ゲイン、「T I 」は積分時間である。 この積分ゲインK Iの値も、前記比例ゲインK Pと同様にして決定することができる。 なお、各測定値Xが取得される時間間隔が一定であると仮定すれば、 上記式において、 (1/T I )・∫X i dt なる項は、 (1/n)・ΣX iなる式で表される今回の平均値XM iを意味することになる。 なお、ここに「n」は、1個の平均値XMを取得するのに用いられる過去の測定値Xの数を意味する。 したがって、今回の補正値U iは例えば、 U i =K I・((1/n)・ΣX i −A 0 ) =K I・(XM i −A 0 ) なる式を用いて算出することもできる。 なお、この実施態様も、 第2補正値決定手段を、誤差値と微分値とに基づいて補正値を決定する実施態様に比較し、1個の補正値を決定するのに必要な測定値の数が少なくて済み、補正の迅速性が向上するという効果が得られる。 1個の積分値を取得するには少なくとも2個の測定値が存在すれば足りるのに対し、1個の微分値を十分に信頼性ある値として取得するには比較的多数の測定値を使用しなければならないからである。 (22)(1) 〜( 21)の発明であって、前記第2補正値決定手段が、(20)の比例制御型と(21)の積分制御型とを併用する比例−積分制御型(PI制御型)であるもの。 この場合、例えば、 U i =K P・R i +K I・(1/T I )∫R i dt なる式を用いて補正値Uを決定することができる。 ここに「K P 」は比例ゲイン、「K I 」は積分ゲインである。 それら各ゲインの値も、前記比例ゲインK Pおよび積分ゲインK Iと同様にして決定することができる。 なお、 (1)の発明における「 第2補正値決定手段」は、その他にも、比例制御型と微分制御型とを併用する比例− 微分制御型(PD制御型)としたり、比例制御型と積分制御型と微分制御型とを併用する比例−積分−微分制御型(PID制御型)とすることもできる。 また、 第2補正値決定手段は、微分制御型のみを採用して実施することは可能である。 この場合、微分制御型は、誤差の将来を予見する効果を持つから、その点においては補正値の精度を向上させ得る。 しかし、微分値を精度よく取得するには比較的多数の測定値が必要であるのに対し、比較的少数の測定値によって微分値を取得せざるを得ない場合もあり、このような場合には、取得された微分値の信頼性が低下し、ひいては、それを用いて決定された補正値の信頼性も低下するおそれがある。 (23)(18)〜 (22)の発明であって、前記第2補正値決定手段が、最新の加工条件(すなわち、最初の補正値決定前にあっては、加工条件の初期値、最初の補正値決定後にあっては、先に自身が決定した最新の補正値または先に前記第1補正値決定手段が決定した最新の補正値の影響を受けた加工条件)に従って最初に加工されたワークである先頭補正ワークが前記測定機により測定されたときから、測定機による測定値を逐次蓄積し始め、蓄積した測定値の数が設定数個となった場合に、それら設定数個の測定値に基づいて新たな第2補正値を決定するもの。 (24) (1)の発明であって、さらに、前記第1補正値決定手段と前記第2補正値決定手段とが並行的に作動し、 (1) ないし(10)の第2補正実行条件が成立した場合には、 第2補正値決定手段が第2補正値を決定し、その決定した第2補正値を前記加工機制御装置に供給するもの。 (25) ( 1)の発明であって、さらに、(1) ないし(10)の第2補正実行条件が成立しない場合には、前記第1補正値決定手段と前記第2補正値決定手段とのうち第1補正値決定手段のみが作動し、第2補正実行条件が成立した場合には、 第2補正値決定手段のみが作動するもの。 【0017】 【実施例】以下、本発明を図示の実施例であるフィードバック式の定寸点補正装置に基づいて具体的に説明する。 【0018】この定寸点補正装置は、自動車のエンジンのクランクシャフトを加工すべきワークとし、それに予め形成されている複数のジャーナル面の各々を加工部位として円筒研削する加工システムと共に使用される。 ここにクランクシャフトとは、図1に示すように、互いに同軸的に並んだ7個の外周円筒面(以下単に「円筒面」 という)であるジャーナル面を有するワークである。 【0019】加工システムは、図2に示すように、加工ライン,加工機10,2個のインプロセス測定機12 (図には1個として示す),定寸装置14,モータコントローラ15,ポストプロセス測定機16,制御装置2 0,補助記憶装置22等から構成されている。 すなわち、加工機10が本発明における「加工機」の一例であり、定寸装置14およびモータコントローラ15が「加工機制御装置」の一例であり、ポストプロセス測定機1 6が「測定機」の一例であり、制御装置20が「フィードバック式加工条件補正装置」の一例なのである。 以下、それら各要素について具体的に説明する。 【0020】加工ラインは、図において矢印付きの太い実線で表されており、複数のワークが一列に並んで上流側から下流側に向かって(図において左側から右側に向かって)搬送されるものである。 【0021】加工機10は、クランクシャフトの7個のジャーナル面の各々に対し、加工具としての円形状の砥石により、円筒研削を行うものである。 具体的には、図3に示すように、複数の砥石が同軸的に並んだ砥石群3 0とクランクシャフトとを接触回転させることにより、 7個のジャーナル面すべてに対して同時に円筒研削を行うマルチ研削盤である。 以下、その構成を簡単に説明する。 【0022】加工機10は、ワークのためのワークテーブル32を備えている。 このワークテーブル32は加工機10の図示しない主フレームに取り付けられている。 ワークテーブル32には、ワークをそれの軸線回りに回転可能に保持する保持装置(図示しない)とその保持されたワークを回転させるワークモータ34とが設けられている。 【0023】加工機10はさらに、砥石群30のための前進・後退テーブル36とスイングテーブル38とを備えている。 前進・後退テーブル36は前記主フレームに、前記ワークテーブル32に保持されているワークに対する直角な方向における往復運動が可能な状態で取り付けられている。 一方、スイングテーブル38は、その前進・後退テーブル36に、砥石軸線(図において一点鎖線で示す)上にそれに直交する状態で設定されたスイング軸線(図において紙面に直角な方向に延びる直線) を中心としたスイングが可能(右回転も左回転も可能) な状態で取り付けられている。 前進・後退テーブル36 の前進・後退は主フレームに固定の前進・後退モータ4 0により、スイングテーブル38のスイングは前進・後退テーブル36に固定のスイングモータ42によりそれぞれ実現される。 すなわち、この加工機10においては、砥石軸線とワークの回転軸線との成す角度(以下「切込み角」という)がスイングモータ42により調整可能なのである。 【0024】前記2個のインプロセス測定機12はこの加工機10に取り付けられている。 それらインプロセス測定機12はそれぞれ、図1に示すように、1個の円筒面を外周両側から挟む一対の測定子を有し、電気マイクロメータ方式によりその円筒面の直径を測定するものである。 それらインプロセス測定機12は、7個のジャーナル面について個々に用意されているわけではなく、同図に示すように、両端のジャーナル面、すなわち第1ジャーナル面と第7ジャーナル面(以下「2個の端円筒面」ともいう)についてのみ用意されている。 【0025】前記定寸装置14は、図3に示すように、 それらインプロセス測定機12にそれぞれ接続されている。 定寸装置14は、CPU,ROM,RAMおよびバスを含むコンピュータを主体として構成されていて、図4に機能ブロック図で概念的に示すように、加工機10 による研削中、2個の端円筒面のそれぞれの直径を各インプロセス測定機12を介して監視し、それら各端円筒面における残存切込み量(最終寸法に到達するまでに切り込むことが必要な量)が各設定量(各端円筒面ごとに存在する)に到達したときにはその旨の信号(以下「設定量到達信号」という)を、各最終寸法すなわち各定寸点(各端円筒面ごとに存在する)に到達したときにはその旨の信号(以下「定寸点到達信号」という)を前記モータコントローラ15に各端円筒面に関連付けてそれぞれ出力する。 【0026】定寸装置14はまた、各定寸点の補正が可能に設計されている。 具体的には、前記制御装置20から各補正値U(各端円筒面ごとに存在する)が供給されれば、現在の各定寸点にその各補正値Uを加算することによって現在の各定寸点を変更し、供給されなければ現在の各定寸点をそのままに維持するように設計されている。 すなわち、定寸装置14は、制御装置20により定寸点が自動補正されるようになっているのである。 定寸装置14はまた、図2に示すように、キーボード50により作業者からの指令,情報等が入力されるようにも設計されている。 【0027】前記モータコントローラ15は図3に示すように、それら定寸装置14,前進・後退モータ40等に接続されている。 モータコントローラ15は、作業者からの指令や定寸装置14からの信号等に基づき、前進・後退モータ40等を制御する。 【0028】ところで、加工機10は、粗研,精研,スパークアウト等のいくつかの段階を順に経て一回の円筒研削を終了する。 粗研は、前記残存切込み量が前記設定量に達するまで実行され、精研は、直径が前記定寸点に達するまで実行される。 定寸装置14から各端円筒面ごとに供給されるべき2個の設定量到達信号はその供給時期が一致しないのが普通であり、モータコントローラ1 5は、粗研段階では、信号供給時期の不一致量に応じて前進・後退モータ40およびスイングモータ42を制御し、これにより、前記切込み角を適正に制御する。 また、精研においては、それに先立つ粗研において切込み角が適正となっているはずであるから、モータコントローラ15は、前進・後退モータ40のみを運転させることにより、砥石群30のワークへの切込みを続行し、2 個の端円筒面のいずれかについてでも定寸点到達信号が供給されれば、前進・後退モータ40を停止させ、スパークアウトを行った後に、前進・後退モータ40を逆回転させることにより砥石群30をワークから後退させる。 【0029】前記ポストプロセス測定機16は、図2に示すように、加工ラインの、加工機10の下流側に配置されている。 ポストプロセス測定機16は、1個のワークにおける円筒面の数と同数設けられており、前記インプロセス測定機12と同じ方式により、加工機10から搬出されたワークすべてについて順に、円筒面すべてについて個々に直径を測定する。 このポストプロセス測定機16が前記制御装置20の入力側に接続されている。 【0030】前記制御装置20は、CPU,ROM,R AMおよびバスを含むコンピュータを主体として構成されており、そのROMにおいて定寸点補正ルーチンおよび手動補正ルーチンを始めとする各種プログラムを予め記憶させられている。 定寸点補正ルーチンは図5〜10 にフローチャートで表されており、測定値Xに基づいて定寸点を自動的に補正するルーチンであり、これに対し、手動補正ルーチンは図示を省略されているが、作業者からの手動補正指令に応じて起動する割込みルーチであって、作業者の操作に基づいて定寸点を補正するルーチンである。 また、制御装置20は、前記補助記憶装置22にも接続されていて、ポストプロセス測定機16から入力された測定値X,それに基づいて決定した補正値U等をすべて保存するように設計されている。 一連の加工の終了後に作業者がその加工状況を診断する際などに使用するためである。 なお、RAMには、後述の補正値演算用メモリ,補正反映情報演算用メモリ,積分制御用メモリ等の各種メモリや、後述の補正反映前フラグ等の各種フラグが設けられている。 【0031】制御装置20は、定寸点補正ルーチンの実行により、図4に機能ブロック図で概念的に示すように、ポストプロセス測定機16による測定値Xをフィードバックすることにより、加工機10により次に加工されるべきワークについての定寸点の補正値Uを決定する。 補正値Uは、定寸点の変更量を表す相対的な物理量であって、現在の定寸点との和によって次の定寸点を表す。 前記加工システムにおいては、加工機10とポストプロセス測定機16との間にそのポストプロセス測定機16による寸法測定を待つワークが少なくとも1個存在する。 そのため、制御装置20は、補正値Uが入力信号、寸法情報が出力信号であるとともにそれら入力信号と出力信号との間にむだ時間MSが存在する制御システムを想定し、フィードバック式で定寸点を補正する。 すなわち、本実施例においては、定寸点が本発明における「加工条件」の一態様なのである。 【0032】この制御装置20における処理の流れを簡単に説明すれば、図11に示すようになる。 【0033】まず、第1ステップST1として、ポストプロセス測定機16から測定値Xが入力され、続いて、 第2ステップST2として、その入力された測定値Xに基づいて補正値Uが決定され、さらに、第3ステップS T3として、その決定された補正値Uが定寸装置14に対して送信される。 【0034】なお、この制御装置20には、ワークの7 個のジャーナル面すべてについて個々に測定値Xが入力されるが、基本的には、第1ジャーナル面および第7ジャーナル面のそれぞれの測定値X、すなわち、各端円筒面の測定値Xに基づいて、前記定寸装置14における各端円筒面に対応する補正値Uがそれぞれ決定される。 【0035】第2ステップST2においては、補正値U を決定するための制御方式として主制御としてのファジィ制御FCと補助制御としての積分制御ICとが併用され、原則的には主制御としてのファジィ制御FCによって補正値Uが決定され、積分制御実行条件が成立した場合に限り、積分制御ICによって補正値Uが決定される。 以下、それらファジィ制御FCおよび積分制御IC の内容を説明する。 【0036】まず、ファジィ制御FCについて説明する。 ファジィ制御FCは、図11に示すように、隣接間ばらつき除去FC1,両端直径補正FC2,寸法情報取得FC3,ファジィ演算FC4および連続性考慮FC5 を含む複数の処理を順に実行することによって行われる。 以下、それら各処理の内容を説明する。 まず、隣接間ばらつき除去FC1について説明する。 この隣接間ばらつき除去FC1においては、入力された測定値Xから隣接間ばらつきを除去するために、今回までに取得された測定値Xに対して移動平均値Pが算出される。 測定値Xからポストプロセス測定機16から出力される毎に測定値Xが前記補正値演算用メモリに蓄積され、それに蓄積された複数の測定値Xに基づいて移動平均値Pが算出されるのである。 移動平均値Pも補正値演算用メモリに蓄積される。 【0037】具体的に説明すれば、測定値Xはポストプロセス測定機16により時系列データとして取得され、 多くの隣接間ばらつきを含んでいる。 そこで、本実施例においては、隣接間ばらつきを除去してワークの真の寸法を推定するために、今回の測定値Xおよび前回までに取得された最新の少なくとも1個の測定値Xにつき、重み付きの移動平均値Pが算出され、それが測定値Xの真の値として使用される。 【0038】この移動平均値Pは、次のようにして算出される。 すなわち、今回までに取得された最新のK(2 以上の固定値)個の測定値Xに基づき、次式(K=5の場合)で表される如き計算式を用いて今回の移動平均値P iが算出されるのである。 【0039】 【数1】 【0040】ここに「i」は、ポストプロセス測定機1 6により測定されたワークの数(以下「測定ワーク数」 という)を表す。 【0041】また、「b i-4 」〜「b i 」が、今回の移動平均値P iの算出に必要な測定値Xの数(=K)と同数の重み係数である。 【0042】次に、両端直径補正FC2について説明する。 この制御装置20が接続される加工システムにおいては、前述のように、ワークの全円筒面のうちの2個の端円筒面の直径にのみ基づいて砥石群30が作動させられる。 そのため、2個の端円筒面の測定値Xのみを考慮し、それ以外の円筒面の測定値Xを考慮しないで定寸点を補正する場合には、各円筒面の加工精度がそれの全体において十分に均一にならない場合がある。 【0043】そこで、本実施例においては、この問題を解決するために次のような技術が採用されている。 すなわち、図12にグラフで概念的に示すように、ワークにおける各円筒面の軸方向位置(図に「1J」〜「7J」 で表す)と各円筒面の直径(すなわち、移動平均値P) とが比例関係にあると仮定し、2個の端円筒面の測定値Xをそれぞれ補正するという両端直径補正FC2という処理が採用されているのである。 【0044】この両端直径補正FC2の一具体例は、次のようである。 すなわち、両端直径補正計算式として、 【0045】 【数2】 【0046】なる式、すなわち、1次回帰線を表す式が採用され、これを用いることにより、各端円筒面の移動平均値P iの修正値P' iが算出されるのである。 ただし、 j :ジャーナル面の番号(第1ジャーナル面から第7ジャーナル面に向かって1から7まで付されている) jM :7個のjの値の平均値 P' ij :i番目のワークのj番目のジャーナル面の移動平均値Pの修正値 P ij :i番目のワークのj番目のジャーナル面の移動平均値Pの計算値 PM i :i番目のワークの、7個の移動平均値Pの計算値の平均値 【0047】具体的には、第1ジャーナル面については、上記式の「j」に1を代入することによって、移動平均値P i1の修正値P' i1が取得され、また、第7ジャーナル面については、「j」に7を代入することによって、移動平均値P i7の修正値P' i7が取得される。 【0048】なお、本実施例においては、この両端直径補正FC2の実行の許否が作業者によって指令されるようになっている。 【0049】次に、寸法情報取得FC3について説明する。 この寸法情報取得FC3においては、1個の補正値Uを決定する際に用いられる寸法情報として、移動平均値Pとワークの加工寸法の目標値A 0との差である誤差値Rとその誤差値Rの微分値Tとがそれぞれ算出される。 なお、正確には、微分値Tは移動平均値Pの微分値として算出される。 このように誤差値R以外のパラメータにも基づいて補正値Uを決定することとしたのは、誤差値Rのみに基づいて補正値Uを決定する場合より、それの微分値Tにも基づいて補正値Uを決定する場合の方が、加工機10,測定値12,16等の実際の状態をより正確に推定することができ、定寸点の補正精度が向上するからである。 【0050】微分値Tは次のようにして算出される。 微分値Tは、図13にグラフで概念的に示すように、原則として、今回取得された移動平均値Pおよび前回までに取得された最新の少なくとも1個の移動平均値P(ただし、両端直径補正指令が出されている場合には両端直径補正の影響が加えられたもの)から成るL(2以上の固定値)個の移動平均値Pが測定ワーク数iの増加に対してほぼ比例すると仮定し、それらL個の移動平均値Pが適合する1次回帰線を特定し、それの勾配を微分値T (1次回帰線の傾きをθラジアンとした場合のtan θに一致する)として取得される。 具体的には、1次回帰線の式として、例えば、 【0051】 【数3】 【0052】なる式が採用される。 ただし、 iM :L個のiの値の平均値 P' i :i番目のワークの移動平均値Pの修正値 P i :i番目のワークの移動平均値Pの計算値(ただし、両端直径補正指令が出されている場合には両端直径補正の影響が加えられたもの) PM i :L個の移動平均値Pの計算値の平均値 そして、 【0053】 【数4】 【0054】の値が、微分値Tとなる。 【0055】次に、ファジィ演算FC4について説明する。 このファジィ演算FC4においては、上記の寸法情報に基づき、ファジィ推論を用いて補正値Uを演算するファジィ演算が行われる。 本実施例においては、誤差値Rおよび微分値Tをそれぞれ入力変数としたファジィ推論が採用されている。 そのため、制御装置20のROM にはファジィ推論のためのデータも予め記憶させられている。 ファジィ推論のためのデータとは具体的に、(a) 推論プログラム,(b) 誤差値R,微分値Tおよび補正値Uの各々に関する複数のメンバーシップ関数,(c) それら誤差値R,微分値Tおよび補正値U相互の関係を規定する複数のファジィルール等である。 【0056】誤差値Rについては、それが負から正に向かって増加するにつれて『NB』,『NM』,『N S』,『ZO』,『PS』,『PM』および『PB』に順に変化する7個のファジィラベルが用意されており、 それぞれのメンバーシップ関数は図14にグラフで表されるようになっている。 【0057】微分値Tについては、それが負から正に向かって増加するにつれて『NB』,『NS』,『Z O』,『PS』および『PB』に順に変化する5個のファジィラベルが用意されており、それぞれのメンバーシップ関数は図15にグラフで表されるようになっている。 【0058】補正値Uについては、それが負から正に向かって増加するにつれて『NB』,『NM』,『N S』,『ZO』,『PS』,『PM』および『PB』に順に変化する7個のファジィラベルが用意されており、 それぞれのメンバーシップ関数は図16にグラフで表されるようになっている。 なお、補正値Uが増加すれば定寸点が高くなってクランクシャフトのジャーナル部が大径化され、逆に、補正値Uが減少すれば定寸点が低くなってジャーナル部が小径化されることになる。 ファジィルール群の内容を表1に示す。 【0059】 【表1】 【0060】ファジィルールの一例は、表1から明らかなように、 If R=NB and T=NS then U=PB である。 このファジィルール群の設計思想について説明する。 このファジィルール群は、誤差値Rのファジィラベルが増加する(以下「誤差値Rが増加する」という。 他のファジィ変数についても同じとする)につれて補正値Uが減少するのは勿論、微分値Tが増加するにつれて補正値Uが減少するように設計されている。 【0061】そして、このことは具体的に、例えば表1 のファジィルール表において次のように現れている。 すなわち、例えば、微分値Tが『NS』である場合には、 誤差値Rが増加するにつれて補正値Uが『PB』,『P M』,『PS』,『ZO』,『ZO』,『NS』および『NM』の順に減少し、また、誤差値Rが『NM』である場合には、微分値Tが『NS』,『ZO』および『P S』の順に増加するにつれて補正値Uが『PM』,『P M』,『PS』と減少するのである。 【0062】インプロセス測定機12は何らかの事情で故障することがあり、この場合にはそれの測定精度が急にかつ大きく低下し、ワークの寸法精度も急に大きく低下することになる。 それにもかかわらずインプロセス測定機12が正常であるとして補正値Uを決定すると、ワークの実際の寸法精度が許容公差範囲から逸脱してしまう恐れがある。 【0063】このような事情に鑑み、各ファジィルール群は、ポストプロセス測定機16による測定値Xが急に減少してかなり小さくなった場合と、急に増加してかなり大きくなった場合とにはそれぞれ、補正量Uが十分に0に近づくようにも設計されている。 このようにすれば、インプロセス測定機12が故障した場合には、それからの出力信号が無視されて前回までの定寸点が今回も適当であるとして加工が行われるから、インプロセス測定機12の故障の影響をそれほど強く受けることなくワークの寸法精度を高く維持することが可能となる。 【0064】このことは具体的に、例えば表1のファジィルール表において次のように現れている。 すなわち、 誤差値Rが『NB』または『NM』であり、かつ、微分値Tが『NB』である場合と、誤差値Rが『PM』または『PB』であり、かつ、微分値Tが『PB』である場合とにはそれぞれ、補正値Uが『ZO』となっているのである。 【0065】また、このファジィ演算FC4においては、むだ時間MSの存在にもかかわらず補正値Uを精度よく決定するために、補正値決定の方式として第1の補正値決定方式と第2の補正値決定方式とが採用されている。 【0066】第1の補正値決定方式においては、図17 に示すように、ポストプロセス測定機16による測定値Xが逐次蓄積され、蓄積された測定値Xの数が設定数個以上になったときに、それら蓄積された設定数個の測定値Xに基づき、加工機10により次に加工されるべきワークの定寸点の補正値Uが決定される。 さらに、この方式においては、決定された最新の補正値Uの影響を受けた定寸点に従って最初に加工されたワークである先頭補正ワークがポストプロセス測定機16により測定される毎に、その測定開始時から測定値Xの蓄積が無蓄積状態から再開され、蓄積された設定数個の測定値Xに基づいて新たな補正値Uが決定される。 【0067】また、本実施例においては、作業者からの指令に応じ、上記の補正である主補正に後続して補助補正を行うことが可能とされている。 本来であれば互いに隣接した2回の主補正の間には全く補正が行われないはずであるが、主補正の精度を向上させる意味において、 ある回の主補正の直後に一定期間に限り、補正値演算用メモリをクリアすることなく補正値決定が続行されるのである。 【0068】ここにおいて、「主補正」は、測定値Xを逐次蓄積し、蓄積された測定値Xの数が設定数個となったときに、蓄積された設定数個の測定値Xに基づいて今回の暫定補正値U Pを決定し、それをそのまま最終補正値U Fとするものである。 【0069】これに対し、「補助補正」は、その主補正の終了後にも測定値Xの蓄積を続行し、新たな測定値X が取得される毎に、補正値演算用メモリに蓄積されている複数の測定値Xのうち最新の設定数個の測定値Xに基づき、主補正におけると同じ規則に従って各回の暫定補正値U Pを決定し、その決定した各回の暫定補正値U P から前回の暫定補正値U Pを引いたものを各回の最終補正値U Fに決定するものである。 この補助補正においては、主補正におけると同様な規則に従って決定された補正値Uである暫定補正値U Pがそのまま定寸装置14に送信されず、前回の暫定補正値U Pからの差として供給されるようになっているが、以下、この理由を説明する。 【0070】補助補正においては、本来であれば、それに先立って行われる主補正の影響を受けたワークの測定値Xに基づいて最終補正値U Fが決定されるべきである。 しかし、主補正の影響を受けたワークが、加工直後にポストプロセス測定機16により測定されるとは限らず、いくつか別のワークの測定を経た後にはじめて測定される場合もある。 そこで、本実施例においては、主補正の影響が重複して、次に加工されるべきワークに対応する定寸点に反映されてしまわないように、主補正に係る先頭補正ワークより1回だけ先に加工されたワークについて測定が終了する時期以前まで、各回の測定値Xに基づいて主補正におけると同じ規則に従って決定した補正値Uが暫定補正値U Pとされ、それから主補正の最終補正値U Fの影響が除去されたものが最終補正値U Fとされている。 以上、主補正と補助補正との関係について説明したが、補助補正におけるある回とその次の回との関係についても同様である。 【0071】また、本実施例においては、ある回の主補正に後続する補助補正の実行回数が制限されている。 すなわち、一連の補助補正における最終補正値U Fの決定回数が測定され、その測定された決定回数が設定値に達したときにその一連の補助補正が終了するようにされているのである。 【0072】しかし、このようにしただけでは、主補正および補助補正の実行時期が測定値Xの変動時期に十分には合致せず、主補正および補助補正が本当に必要な時期に実行されないことがある。 このような事態を回避するため、本実施例においては、作業者からの指令に応じ、一連の補助補正における最終補正値U Fの決定回数が設定値に達したときに、主補正およびその一連の補助補正のうち少なくともその一連の補助補正において決定された複数の最終補正値U Fの和が実質的に0でない場合には、その一連の補助補正を終了するが、実質的に0 である場合には、少なくとも今回の補助補正の実行時期が適当ではなかったと推定されるから、今回の補助補正を続行するとともに最終補正値U Fの決定回数の測定を0から再開するようにされている。 【0073】そして、本実施例においては、補正値決定の方式として、主補正のみで補助補正を行わない方式と主補正のみならず補助補正をも行う方式とのいずれかが作業者の指令に応じて選択されるようになっている。 すなわち、補助補正指令が出されれば後者の方式が選択され、出されなければ前者の方式が選択されるようになっているのである。 また、その補助補正の方式として、補助補正の続行を行う方式と行わない方式とのいずれかが作業者の指令に応じて選択されるようにもなっている。 【0074】次に、第2の補正値決定方式について説明する。 この第2の補正値決定方式においては、第1の方式におけると同様に、測定値Xが逐次蓄積され、蓄積された測定値Xの数が設定数個となったときに、それら蓄積された設定数個の測定値Xに基づいて新たな補正値が決定される。 ただし、この方式においては、各補正値U の決定時期から、測定値Xの蓄積が無蓄積状態から再開され、その再開時期から、各補正値Uの影響を受けた先頭補正ワークがポストプロセス測定機16により測定される時期までの間は、新たな測定値Xが取得される毎に、各測定値Xと各補正値Uとに基づき、それら各ワークがその各補正値Uの影響を受けた定点寸に従って加工されたと仮定した場合にそれら各ワークについて測定される値が予測され、その予測後の測定値Xを実際の測定値Xとみなして蓄積され、蓄積された設定数個の測定値Xに基づいて今回の補正値が決定される。 【0075】具体的には、図18にグラフで示すように、むだ時間の経過中にもデータ蓄積が行われ、そのデータ蓄積段階においては、測定値Xがそのまま蓄積されるのではなく、グラフにおいて破線で示すようにシフトさせられて蓄積される。 データシフト処理が行われるのである。 そのシフト量は、それ以前に決定された補正値Uのうち未だ測定値Xに反映されていないものの和に暫定的に決定される。 図の例では、補正値Uの決定時期からその補正値Uが測定値Xに反映される時期までに別の補正値Uが決定されないため、その暫定的なシフト量は補正値Uに一致する。 しかし、図23や図24に示すように、ある補正値U 1が決定されてからそれが測定値X に現れるまでの間に別の補正値U 2が決定される場合には、その別の補正値U 2の決定時期以後にあっては、補正値U 1とU 2との和が暫定的なシフト量とされる。 【0076】さらに、この第2の補正値決定方式においては、各補正値Uの影響を受けた先頭補正ワークがポストプロセス測定機16によって測定される時期が判明した後には、以前に予測された測定値Xの各々から前記暫定的なシフト量を引くことにより、もとの測定値Xに復元され、さらに、その復元されたもとの各測定値Xに最終的なシフト量を加算することにより、測定値予測の修正が行われる。 すなわち、実質的には、予測前の測定値Xすなわちもとの測定値Xに直ちに最終的なシフト量を加算したのと同じになるのである。 最終的なシフト量の決定については後に詳述する。 【0077】なお、この第2の補正値決定方式もまた、 前記第1の補正値決定方式の場合と同様に、作業者からの指令に応じて各種の方式が選択可能とされている。 【0078】次に、連続性考慮FC5について説明する。 この連続性考慮FC5においては、演算された補正値Uが、それの連続性が考慮されることによって補正される。 前述のように、測定ワーク数iの増加につれてワークの寸法誤差がほぼ比例的に増加するのが一般的であるため、定寸点の補正値Uに連続性を持たせること、すなわち、加工の進行につれて滑らかに変化させることがワークの寸法ばらつきを抑制するのに望ましい。 【0079】そこで、本実施例においては、その事実に着目し、図19にグラフで概念的に示すように、まず、 連続性を無視して補正値Uが決定され、それが暫定値(以下「暫定補正値U」という。なお、後述の暫定補正値U Pとは異なる)とされ、今回までに取得された最新のM(2以上の固定値)個の暫定補正値Uが測定ワーク数iの増加に対してほぼ比例すると仮定され、それらM 個の暫定補正値Uについて前記の場合と同様な1次回帰線の式が特定される。 そして、その式を用いて現在の補正値Uの真の値が推定され、それが補正値Uの最終値(以下「最終補正値U * 」という。なお、後述の最終補正値U Fとは異なる)とされる。 具体的には、1次回帰線の式として、例えば、 【0080】 【数5】 【0081】なる式が採用される。 ただし、 iM :M個のiの値の平均値 U * i :i番目のワークの暫定補正値Uの修正値である最終補正値U * U i :i番目のワークの暫定補正値Uの計算値 UM i :M個の暫定補正値Uの計算値の平均値 そして、上記式の「i」に今回の測定ワーク数iの値を代入すれば、今回の最終補正値U * iが取得されることになる。 【0082】なお、本実施例においては、この連続性考慮FC5の実行の許否も作業者によって指令されるようになっている。 【0083】また、作業者からその連続性考慮型補正指令が出された場合に測定値Xから最終補正値U *が取得されるまでの過程を代表的に、図19に概念的に図示する。 この図は、それの左側から右側に向かうにつれて、 測定ワーク数iの値が増加することとして表されている。 図から明らかなように、補正値演算用メモリへの測定値Xの蓄積を無蓄積状態から開始する場合には、(K +L+M−2)個の測定値Xが蓄積されたときに初めて1個の最終補正値U *が取得される。 本実施例においては、最終補正値U *が本発明における「第1の補正値決定手段」により決定された補正値に該当するから、結局、第1の補正値決定手段が1個の補正値を決定するのに必要な測定値Xの数は、(K+L+M−2)個となるのである。 【0084】以上、ファジィ制御FCについて説明したが、次に、積分制御ICについて説明する。 積分制御I Cとは、ファジィ制御FCによって1個の補正値Uを決定するのに必要な測定値Xの数より少数の測定値Xによって1個の補正値Uを迅速に決定することにより、ファジィ制御FCを補助する制御である。 ファジィ制御FC による補正値Uは精度は高いがその決定に長い時間がかかり、常に次の補正値Uが決定されるのを待っているとその間に加工誤差が公差範囲を超えた精度不良ワークが多発するおそれがあるから、積分制御実行条件が成立した場合には積分制御ICを実行し、精度は高くはないが迅速に補正値Uを決定することにより、精度不良ワークの多発を防止するものである。 【0085】この積分制御ICにおいては、図27に示すように、むだ時間が経過した直後から、測定値Xが蓄積され、その蓄積数が設定数nに達したときに、その設定数nの測定値Xに基づいて今回の補正値Uが決定される。 その補正値Uの影響は直ちに測定値Xに現れず、むだ時間の経過後にはじめて測定値Xに現れ、測定値Xが公差範囲内に収められる。 【0086】この積分制御ICは、ファジィ制御FCによって1個の補正値Uを決定するのに必要な測定値Xの数より少数nの測定値Xによって1個の補正値Uを迅速に決定するものであるため、ファジィ制御FCに比較すれば、過去の測定値Xの変化傾向をより正確に考慮して新たな補正値Uを決定することや、過去の複数の測定値X間におけるばらつきをより完全に除去して新たな補正値Uを決定することは困難である。 例えば、積分制御I Cを連続して何回も行い、測定値Xが公差範囲内に収まった後にも積分制御ICを続行すると、例えば図28にグラフで示すように、ワークの加工寸法が大きく変動し、不安定となり、精度不良ワークが発生する可能性が増加するおそれがある。 そのため、積分制御ICは特に必要なときに限って実行させるべきである。 【0087】そこで、本実施例においては、積分制御I Cは、図29に表で表す積分制御実行条件が成立した場合にのみ実行される。 その積分制御実行条件は、加工時期に関する条件と測定値Xに関する条件との組合せによって構成されている。 具体的には、一連の加工が開始された直後には、測定値Xが設定範囲の内側にあるか外側にあるかを問わず、積分制御ICが実行される。 また、 一連の加工が開始された後においては、作業者によって補正値Uが手動で補正された後と、作業者によってファジィ制御FCが使用する内部パラメータの設定が変更された後とのそれぞれにおいて、測定値Xが設定範囲外となることを条件に、積分制御ICが実行される。 そして、それ以外のときには、積分制御ICは実行されず、 原則通り、ファジィ制御FCが実行される。 なお、本実施例においては、設定範囲が公差範囲とほぼ等しく設定されているが、例えば、公差範囲より狭く決定し、加工誤差が公差範囲を超えないうちに事前に積分制御ICが行われるようにすることも可能である。 すなわち、本実施例においては、「積分制御実行条件」が前記「第2補正実行条件」の一例なのである。 【0088】したがって、例えば、一連の加工が開始された当初においては、図30に示すように、最初に加工されたワークが測定されるまでは測定値Xが存在せず、 むだ時間となり、最初に加工されたワークが測定されて最初の測定値Xが取得されたときから、積分制御ICのための蓄積が開始される。 そして、その蓄積された測定値Xの数が設定数nとなったときに、最初の補正値Uが決定され、定寸装置14に送信される。 その最初の補正値Uの影響はむだ時間の経過後に測定値Xに現れ、測定値Xが急変し、ワークの加工誤差が公差範囲内に収められる。 【0089】また、図31にグラフで示すように、一連の加工が開始された後に、測定値Xが公差範囲を超えたため、作業者が補正値Uを早急に手動で補正すべきと判断した場合には、作業者が加工を一時的に中断し、補正値Uを手動で補正する。 その後、作業者は加工を再開するが、手動補正値の影響はむだ時間の経過後に測定値X に現れ、測定値Xが公差範囲内に収められる。 その後、 積分制御ICのために測定値Xが蓄積され、その蓄積数が設定数nとなったときに新たな補正値Uが決定され、 その補正値Uの影響はむだ時間の経過後に測定値Xに現れることになる。 【0090】なお、本実施例においては、積分制御IC において、今回までに取得された設定数nの測定値Xの各々の目標値A 0からの誤差値Rの和を積分時間T Iで割り算した値、すなわち、過去の設定数nの測定値Xの平均値XM iの目標値A 0からの差に比例した量で今回の補正値U iが決定され、具体的には、 U i =K I・(XM i −A 0 ) なる式を用いて補正値U iが決定される。 ここに、「K I 」は積分ゲインを表す。 本実施例においては、積分制御ICにおいて1個の補正値Uを決定するのに必要な測定値Xの数である設定数nすなわち所要測定値数が、ファジィ制御FCにおいて1個の補正値Uを決定するのに必要な測定値Xの数(K+L+M−2)より少なく設定されている。 したがって、本実施例においては、積分制御ICにおいて1個の補正値Uを決定するのに必要な時間が前記ファジィ制御FCにおけるより短縮される。 【0091】なお、積分制御ICにおいて所要測定値数nの値が1である場合には比例制御となり、狭義の積分制御というためには、所要測定値数nの値が2以上であることが必要であるが、本実施例においては、nの値が1である場合も含め、比例制御も広義の積分制御に含めて扱うことにする。 【0092】また、積分ゲインK Iは、補正値Uを測定値Xの変化に対して敏感に変化させたい場合には、例えば1以上の値とすることは可能である。 しかし、前述のように、積分制御ICは、ファジィ制御FCほどには正確に補正値Uを決定することができない。 したがって、 本実施例においては、積分ゲインK Iの値が1より小さい値に設定され、これにより、補正値Uが測定値Xの変化に対して敏感に変化することを抑制し、精度不良ワークの発生を未然に防止する。 【0093】なお、本実施例においては、作業者からの指令に応じて積分制御ICの許否が決定され、かつ、作業者から積分制御指令が1回出された場合には、その後に積分制御ICにより決定された1個の補正値Uが定寸装置14に送信されたときに、積分制御指令が自動的に解除されるようになっている。 積分制御ICはあくまで暫定的な制御であり、実行回数を極力少数に抑えることが定寸点制御の安定性を向上させるために望ましいと考えられるからであるが、そのようにすることは不可欠ではなく、作業者が積分制御指令を解除しない限り、積分制御実行条件が成立する毎に積分制御ICが行われるように変更することは可能である。 【0094】ここで、積分制御ICとファジィ制御FC との関係を図32および図33に基づいて概念的に説明する。 ファジィ制御FCの方式は、前記のように、第1 の補正値決定方式、すなわち、測定値Xをそのまま蓄積してデータシフト処理を行わない単純蓄積方式(図17 参照)と、第2の補正値決定方式、すなわち、測定値X をシフト量でシフトさせて蓄積するデータシフト方式(図18参照)とに大別することができる。 ファジィ制御FCと積分制御ICとの関係は、ファジィ制御FCが単純蓄積方式をとる場合とデータシフト方式をとる場合とで異なるため、場合に分けて説明する。 【0095】まず、ファジィ制御FCが単純蓄積方式をとる場合を説明する。 この場合、図32にグラフで示すように、むだ時間が経過した直後から、ファジィ制御F Cと積分制御ICとにそれぞれにおいて、測定値Xが逐次蓄積される。 測定値Xの蓄積がファジィ制御FCと積分制御ICとについて並行的に実行されるのである。 前記のように、1個の補正値Uを決定するのに必要な測定値Xの数はファジィ制御FCにおいて積分制御ICおけるより多数であるから、最初に積分制御ICにおいて1 個の補正値Uが決定される。 このとき、その補正値Uを定寸装置14に送信すべきか否か、すなわち、積分制御実行条件が成立するか否かが判定される。 今回は成立すると仮定すれば、積分制御ICにより決定された補正値Uが定寸装置14に送信され、むだ時間の経過後に、その補正値Uの影響が測定値Xに反映されることになる。 ファジィ制御FCにより補正値Uが決定されるより先に暫定的な補正値Uを決定して定寸点を補正することが可能とされているのである。 積分制御ICにより決定された補正値Uが定寸装置14に送信されると、ファジィ制御FCにおいてそれまでに蓄積された測定値Xがすべてクリアされ、新たに測定値Xの蓄積が再開され、その蓄積数が設定数に達したときに、ファジィ制御FCによって1個の補正値が決定される。 これに対し、積分制御実行条件が成立しないと仮定すれば、積分制御ICによる補正値Uの決定は行われず、ファジィ制御FCにより補正値Uが決定されるのを待つことになる。 【0096】次に、ファジィ制御FCがデータシフト方式をとる場合を説明する。 この場合、図33にグラフで示すように、むだ時間が経過した直後から、積分制御I Cとファジィ制御FC(図の例では「ファジィ制御1」)とにおいてそれぞれ、測定値Xが逐次蓄積され、 最初に積分制御ICにおいて1個の補正値Uが決定される。 このとき、積分制御実行条件が成立するか否かが判定され、今回は成立すると仮定すれば、積分制御ICにより決定された補正値Uが定寸装置14に送信され、むだ時間の経過後に、その補正値Uの影響が測定値Xに反映されることになる。 一方、ファジィ制御FCにおいては、上記のように、積分制御ICと並行的に測定値Xが逐次蓄積されるが、積分制御実行条件が成立したときに、測定値Xを蓄積する補正値演算用メモリがクリアされるとともに、新たなファジィ制御(図の例では「ファジィ制御2」)が開始され、測定値Xの蓄積が無蓄積状態から再開される。 ただし、取得された測定値X(または移動平均値P)がそのまま蓄積されるのではなく、積分制御ICにより決定された補正値Uが直ちに測定値X に反映されたと仮定した場合に取得されることとなる測定値Xが予測され、その予測された測定値Xが蓄積される。 具体的には、積分制御ICにより決定された補正値Uがそのまま測定値Xに反映されると仮定し、測定値X にその補正値Uを加えた値が予測値として蓄積される。 そして、ファジィ制御FCにおいては、測定値Xの蓄積数が設定数(=K+L+M−2)に達したときに、補正値Uが決定され、定寸装置14に送信される。 その送信後、補正値演算用メモリがクリアされるとともに、新たなファジィ制御FC(図の例では「ファジィ制御3」) が開始され、無蓄積状態から測定値Xの蓄積が再開される。 【0097】以上、制御装置20による自動補正の内容を概略的に説明したが、以下、定寸点補正ルーチンを表す図5〜10のフローチャートに基づき、具体的に説明する。 【0098】まず、図5のステップS1(以下単に「S 1」で表す。 他のステップについても同じとする)において、キーボード50や補助記憶装置22から数値や指令がパラメータとして入力される。 次に、S2において、ポストプロセス測定機16から新たな測定値Xが入力される。 測定値Xは、7個のジャーナル面すべてについて個々に入力される。 測定値Xは、積分制御用メモリと補正値演算用メモリと補正反映情報演算用メモリとにそれぞれ蓄積される。 【0099】次に、S2aにおいて、作業者から積分制御指令が出されているか否かが判定される。 作業者は例えば、一連の加工を開始する時や、ファジィ制御用のパラメータ等の設定変更を行って本ルーチンを再起動させる時や、前記手動補正ルーチンの割込みによって手動補正をした時などに、積分制御指令を制御装置20に対して出す。 作業者から積分制御指令が出された場合には、 積分制御指令フラグがONとなり、S2aの判定がYE Sとなり、S2bないしS2jが実行されて図6のS3 に移行するが、出されていない場合には判定がNOとなり、直ちにS3に移行する。 以下、積分制御指令が出されていると仮定して本ルーチンの内容を説明する。 【0100】上記仮定から、S2aの判定がYESとなり、まず、S2bにおいて、補正反映前フラグがOFF であるか否かが判定される。 補正反映前フラグは、最新の定寸点に従って加工された少なくとも1個のワークのうち先頭のものである先頭補正ワークがポストプロセス測定機16により測定され、その測定値Xに定寸点の最新値が反映されたか否かを示すフラグである。 最新の定寸点とは、最初の補正値Uの決定前にあっては、定寸点の初期値であり、これに対し、最初の補正値Uの決定後にあっては、補正値Uの影響を受けた定寸点である。 この補正反映前フラグは、OFFでその先頭補正ワークが測定を終了したこと、すなわち補正反映後であることを示し、一方、ONで先頭補正ワークが測定を終了しないこと、すなわち補正反映前であることを示す。 したがって、このS2bにおいては、最新の定寸点に従って最初に加工されたワークがポストプロセス測定機16により測定されたか否かが判定されることになる。 今回は一連の加工の開始当初であって、未だ最新の定寸点すなわち定寸点の初期値に従って最初に加工されたワークがポストプロセス測定機16に到達しておらず、補正反映前フラグがONであると仮定すれば、判定がNOとなり、直ちに図6のS3に移行する。 【0101】その後、本ルーチンの実行が何回か繰り返されるうちに、最新の定寸点に従って最初に加工されたワークがポストプロセス測定機16に到達したため、補正反映前フラグがOFFとなったと仮定すれば、S2c において、前記積分制御用メモリに蓄積されている測定値Xの数が設定数nに達したか否かが判定される。 今回は設定数nに達しないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちに図6のS3に移行する。 【0102】その後、本ルーチンの実行が何回か繰り返されるうちに、積分制御用メモリに蓄積されている測定値Xの数が設定数nに達したと仮定すれば、S2cの判定がYESとなり、S2dにおいて、それらn個の測定値Xの平均値XMが算出される。 その算出された平均値XMも積分制御用メモリに蓄積される。 ただし、積分制御用メモリには測定値Xがn個以上蓄積される場合があり、この場合には、それらn個以上の測定値Xのうち最新のn個の測定値Xについて平均値XMが算出される。 【0103】続いて、S2eにおいて、積分制御実行条件が成立するか否かが判定される。 今回は一連の加工の開始直後であると仮定されているから、積分制御実行条件が成立し、判定がYESとなる。 なお、これに対し、 積分制御実行条件が成立しない場合には、判定がNOとなり、直ちに図6のS3に移行する。 【0104】その後、S2fにおいて、積分制御によって補正値Uが算出される。 すなわち、 U=K I・(XM−A 0 ) なる式を用いて今回の補正値Uが算出されるのである。 その後、S2g において、算出された補正値Uが定寸装置14に送信される。 これにより、ファジィ制御による補正値算出を待つことなく、早期に自動補正値Uを算出して定寸点を補正することができる。 【0105】なお、算出した補正値Uを必ず送信するのではなく、不感帯を設定し、その不感帯内にある場合には、補正値Uの送信を禁止して直ちにS3に移行し、不感帯を逸脱した場合にはじめて補正値Uの送信を行うようにすることができる。 【0106】その後、S2h において、積分制御指令フラグがOFFされることにより、積分制御指令が解除される。 本実施例においては、積分制御によって1個の補正値Uが定寸装置14に送信されたならば、積分制御指令が自動的に解除され、再び作業者による積分制御指令を待つことになるのである。 続いて、S2i において、 補正値演算用メモリがクリアされる。 すなわち、作業者からデータシフト処理指令が出されているか否かを問わず、次のファジィ制御によって補正値Uを算出する際に使用されるデータがクリアされるのである。 その後、S 2jにおいて、補正反映前フラグがONされる。 積分制御による補正値Uが測定値Xに反映されるのを待つ状態となったからである。 その後、図6のS3に移行する。 【0107】S3においては、補正反映前フラグがON であるか否かが判定される。 現在補正反映前フラグがO Nであるから、S3の判定がYESとなり、S4以下のステップに移行する。 S4〜6のステップ群においては、先頭補正ワークがポストプロセス測定機16によって測定されたか否かが判定される。 【0108】先頭補正ワークがポストプロセス測定機1 6によって測定されたか否かの判定は、新たな測定値X が測定されるごとに測定値前後差変動状態判定を行うことによって行われる。 【0109】各回の測定値前後差変動状態判定においては、そのとき以前に順に取得された複数の測定値Xが、 先に取得された設定個数の測定値Xから成る先の測定値群と後に取得された設定個数の測定値Xから成る後の測定値群であって最新の測定値Xを含むものとに分けられる。 次に、先の測定値群を代表する代表値として移動平均値H F 、後の測定値群を代表する代表値として移動平均値H Rがそれぞれ算出される。 各移動平均値H F ,H Rの算出は、各測定値群に属する複数の測定値Xに対し、前記移動平均値Pの算出と同様にして行われる。 【0110】さらに、各回の測定値前後差変動状態判定においては、先の移動平均値H Fから後の移動平均値H Rを差し引いた値が測定値前後差ΔHとして算出される。 続いて、今回の測定値前後差ΔH iの絶対値が前回の測定値前後差ΔH i-1の絶対値より小さく、かつ、その前回の測定値前後差ΔH i-1の絶対値が前々回の測定値前後差ΔH i-2の絶対値より大きいか否か、すなわち、前回の測定値前後差ΔH i-1が測定ワーク数iの増加に対して極値を示すか否かが判定される(図34の (b) 参照)。 極値を示すと判定した場合には、さらに、 極値を示す前回の測定値前後差ΔH i-1の絶対値が設定値以上であるか否かが判定される。 すなわち、測定値前後差ΔHが一時的に大きく変動したか否かが判定されるのであり、一時的に大きく変動した場合には、測定値前後差ΔHの変動状態が設定状態を超えたと判定される。 【0111】また、本実施例においては、図25にグラフで示すように、加工機10とポストプロセス測定機1 6との間に存在する待機ワークの数について最大値と最小値とが予め設定されている。 そして、例えば図35に示すように、待機ワーク数が最小値であると仮定した場合の先頭補正ワークがポストプロセス測定機16によって測定された測定値Xが後の測定値群に最初に含まれることとなった時期に一連の測定値前後差変動状態判定が開始され、また、例えば図36に示すように、待機ワーク数が最大値であると仮定した場合の先頭補正ワークがポストプロセス測定機16によって測定された測定値X が先の測定値群に最後に含まれることとなったときに一連の測定値前後差変動状態判定が終了するように設計されている。 【0112】さらに、本実施例においては、一連の測定前後値差変動状態判定において一度も、測定値前後差Δ Hの変動状態が設定状態を超えたと判定されなかった場合には、待機ワーク数が最大値であると仮定した場合の先頭補正ワークがポストプロセス測定機16によって測定されることとなる時期が先頭補正ワークが実際にポストプロセス測定機16によって測定された時期であると判定されるようにも設計されている。 【0113】なお、この測定値前後差変動状態判定について付言すれば、各測定値群に属する測定値Xの数が多いほど、すなわち、移動平均値Hの算出範囲が広いほど、例えば図26にグラフで表すように、測定値前後差ΔHが測定値Xの変化に対して敏感に変化しなくなる。 しかし、各測定値群に属する測定値Xの数を余りに少なくしたのでは、移動平均値Hの精度が低下し、ひいては変動状態判定の信頼性も低下する。 したがって、各測定値群に属する測定値Xの数は、応答性と正確性とができる限り両立するように設定すべきであり、場合によっては、可変値とすることが望ましい。 【0114】測定値前後差変動状態判定は具体的には、 まず、図6のS4において、補正反映情報演算用メモリから、先の測定値群に属する複数の測定値Xが読み出され、それら測定値Xについて先の移動平均値H Fが算出される。 算出された先の移動平均値H Fは補正反映情報用演算メモリに保存される。 次に、S5において、S4 におけると同様にして、後の測定値群についての後の移動平均値H Rが算出される。 算出された後の移動平均値H Rも補正反映情報演算用メモリに保存される。 【0115】その後、S6において、それら移動平均値H Fと移動平均値H Rとの測定値前後差ΔHが算出される。 さらに、同ステップにおいて、補正反映情報演算用メモリから前回の測定値前後差ΔH i-1と前々回の測定値前後差ΔH i-2とがそれぞれ読み出され、前回の測定値前後差ΔH i-1が極値を示し、かつ、そのときの値が設定値以上であるか否か、すなわち、測定値前後差ΔH が大きく変動したか否かが判定される。 今回は、測定値前後差ΔHが大きく変動しなかったと仮定すれば、このS6の判定がNOとなり、今回は、先頭補正ワークがポストプロセス測定機16に到達した後ではないと判定される。 続いて、S11aにおいて、待機ワーク数が最大値であると仮定した場合の先頭補正ワークがポストプロセス測定機16に到達した時期以後であるか否かが判定され、今回はその時期より前であると仮定すれば、判定がNOとなり、図7のS7に移行する。 【0116】このS7においては、作業者からデータシフト処理指令が出されているか否かが判定される。 今回は出されていないと仮定すれば、判定がNOとなり、S 8において、補正反映前フラグがONであるか否かが判定される。 今回はONであるから判定がYESとなり、 S9において、補正値演算用メモリのみがクリアされる。 その後、S2に戻る。 【0117】その後、S2〜9のステップ群が何回も繰り返されるうちに、測定値前後差ΔHが大きく変動するに至ったと仮定すれば、図6のS6の判定がYESとなり、今回は、先頭補正ワークがポストプロセス測定機1 6に到達した後であると判定され、S10において、補正反映前フラグがOFFされる。 その後、S11において、測定値前後差ΔHの前回値ΔH i-1が補正値Uが測定値Xに反映された補正反映量ΔUとして補正反映情報演算用メモリに記憶される。 その後、図7のS7に移行する。 【0118】なお、S6の判定がYESとならなくても、待機ワーク数が最大値であると仮定した場合の先頭補正ワークがポストプロセス測定機16に到達した時期以後となり、S11aの判定がYESとなった場合には、S10に移行し、補正反映前フラグがOFFされる。 すなわち、この場合には、待機ワーク数が最大値であると仮定した場合の先頭補正ワークがポストプロセス測定機16に到達した時期が先頭補正ワークが実際にポストプロセス測定機16に到達した時期であると判定されるのである。 【0119】図7のS7の判定がNOとなり、S8において、補正反映前フラグがONであるか否かが判定されれば、今回はOFFであるから、判定がNOとなり、S 12に移行する。 したがって、今回は、S9において補正値演算用メモリがクリアされることはなく、今回の測定値Xが蓄積されたままとなる。 【0120】S12においては、その補正値演算用メモリから過去の測定値X(すなわち、既に蓄積されている測定値X)が入力され、S13において、移動平均値P を算出することができるか否か、すなわち、補正値演算用メモリに蓄積されている測定値Xの数がK個以上であるか否かが判定される。 今回は、蓄積されている測定値Xの数がK個以上ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S2に戻る。 【0121】その後、このS2において新たな測定値X が入力され、S3において補正反映前フラグがONであるか否かが判定される。 今回はOFFであるから判定がNOとなり、直ちに図7のS7に移行する。 S7の判定はNOとなり、S8の判定もNOとなり、S12において、再び補正値演算用メモリから過去の測定値Xが入力され、S13において、移動平均値Pを算出することができるか否かが判定される。 今回は算出することができると仮定すれば判定がYESとなり、S14において、 前述のようにして移動平均値Pが算出され、補正値演算用メモリに蓄積される。 【0122】その後、S15において、作業者から両端直径補正指令が出されているか否かが判定され、出されていなければ判定がNOとなり、直ちにS16に移行するが、出されていれば判定がYESとなり、S17において、前記2個の端円筒面の移動平均値Pについて前記両端直径補正が行われ、その結果に応じて、補正値演算用メモリの内容が変更される。 その後、S16に移行する。 【0123】S16においては、今回の移動平均値Pからワークの寸法の目標値A 0を引いた値が今回の誤差値Rとされ、補正値演算用メモリに蓄積される。 その後、 S18において、微分値Tを算出することができるか否かが判定される。 補正値演算用メモリに蓄積されている移動平均値Pの数がL個以上であるか否かが判定されるのである。 今回は、移動平均値Pの数が不足していると仮定すれば、判定がNOとなり、図5のS2に移行する。 その後、S2,3,7,8,12〜18のステップ群の実行が何回も繰り返された結果、補正値演算用メモリに蓄積されている移動平均値Pの数がL個以上となったと仮定すれば、S18の判定がYESとなり、S19 において、前述のようにして微分値Tが算出され、補正値演算用メモリに蓄積される。 その後、図8のS20に移行する。 【0124】このS20においては、誤差値Rと微分値Tとに基づき、前述のファジィ推定によって暫定補正値Uが算出される。 続いて、S21において、作業者から連続性考慮型補正指令が出されているか否かが判定され、出されていなければ判定がNOとなり、S22において、暫定暫定値Uがそのまま最終補正値U *とされ、 その後、S25に移行する。 これに対して、作業者から連続性考慮型補正指令が出されていれば、S21の判定がYESとなり、S23において、連続性考慮型補正を考慮することができるか否かが判定される。 補正値演算用メモリに蓄積されている暫定補正値Uの数がM個以上であるか否かが判定されるのである。 今回は、蓄積されている暫定補正値Uの数がM個以上ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちにS2に戻る。 その後、本ルーチンの実行が何回も繰り返されるうちに、補正値演算用メモリに蓄積されている暫定補正値Uの数がM個以上となったと仮定すれば、S23の判定がYESとなり、S24において、補正値演算用メモリに蓄積されているM個の暫定補正値Uに基づき、前述のようにして最終補正値U *が算出され、補正値演算用メモリに蓄積される。 その後、図9のS25に移行する。 【0125】このS25においては、作業者から補助補正指令が出されているか否かが判定される。 今回は出されていないと仮定すれば判定がNOとなり、S27において、今回の最終補正値U *が定寸装置14に送信される。 その後、S28において、作業者から補助補正指令が出されているか否かが判定され、今回は出されていないと仮定されているから、判定がNOとなり、S29に移行する。 【0126】このS29においては、再び、作業者から補助補正指令が出されているか否かが判定されるが、今回は出されていないと仮定されているため、判定がNO となり、S30に移行する。 このS30において、補正反映前フラグがONされる。 補正値Uが定寸装置14に送信され、その補正値Uの影響を受けた先頭補正ワークがポストプロセス測定機16に到達してその補正値Uが測定値Xに反映されることを待つ状態に移行したからである。 その後、S31において、補正値演算用メモリがクリアされる。 その後、S2に戻る。 【0127】以上、データシフト処理指令も補助補正指令も出されていない場合について説明したが、次に、データシフト処理指令は出されないが補助補正指令は出された場合について説明する。 【0128】この場合、図9のS25において、作業者から補助補正指令が出されているか否かが判定されれば、判定がYESとなり、S50において、補助補正の実行中であるか否かが判定される。 補助補正の実行回数を表す補助補正カウンタの値が1以上であるか否かが判定されるのである。 今回は0であると仮定すれば、判定がNOとなり、前記S27以下のステップ群に移行して前記主補正が行われる。 このステップ群のうちS28においては、作業者から補助補正指令が出されているか否かが判定され、今回は出されていると仮定されているから、判定がYESとなり、S51において、補助補正カウンタの値が1だけインクリメントされる。 その後、S 29以下のステップに移行する。 【0129】その後、再び同図のS50が実行されれば、今回は補助補正カウンタの値が0ではないから、判定がYESとなり、S52以下のステップ群に移行して補助補正が行われる。 まず、S52において、最終補正値U *の今回値から前回値を引くことにより、今回の送信値が算出される。 【0130】なお、ここにおいて「最終補正値U *の今回値」は前記今回の暫定補正値U Pに、「最終補正値U *の前回値」は前記前回の暫定補正値U Pに、「今回の送信値」は前記今回の最終補正値U Fにそれぞれ相当する。 また、「今回の送信値」は、最終補正値U *の今回値から、主補正から前回までに定寸装置14に対して送信した少なくとも1個の送信値の合計値(以下「前回までの合計値」という)を引くことによって算出することもできる。 なお、本実施例においては、決定された送信値の大小にかかわらず、決定された送信値が必ず定寸装置14に送信されるようになっているため、この手法によって今回の送信値を算出しても、上記のように、最終補正値U *の今回値から前回値を引くことによって算出しても、同じ値となる。 しかし、送信値に対して不感帯が設定され、決定された送信値が必ずしも定寸装置14 に送信されるとは限らない場合には、同じ値とならず、 この場合には、最終補正値U *の今回値から前回値までの合計値を引くことによってのみ、今回の送信値を算出することが望ましい。 【0131】その後、S53において、その算出された送信値が定寸装置14に送信され、補助補正が行われる。 その後、S54において、補助補正カウンタが1だけインクリメントされ、その後、S29に移行する。 このS29においては、作業者から補助補正指令が出されているか否かが判定され、今回は出されているから、判定がYESとなり、図10のS55に移行する。 【0132】このS55においては、今回の補助補正を終了させるべきであるか否かが判定される。 具体的には、補助補正カウンタの現在値が設定値(図5のS1において補助記憶装置22から入力される)以上となったか否かが判定される。 今回はそうではないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちにS2に戻る。 【0133】その後、本ルーチンの実行が何回も繰り返されるうちに、補助補正カウンタの現在値が設定値以上となったと仮定すれば、S55の判定がYESとなり、 S56において、今回の補助補正において定寸装置14 に送信された補正値すべての和(以下「合計補正値」という)が算出される。 その後、S57において、その合計補正値が0であるか否か、すなわち、今回の補助補正が本当に必要な時期に行われなかったと推定されるから今回の補助補正を続行する必要があるか否かが判定される。 今回はその必要がないと仮定すれば、判定がNOとなり、S58において、補正反映前フラグがONされ、 S59において、補正値演算用メモリがクリアされ、その後、S2に戻る。 これに対して、今回の補助補正を続行する必要があると仮定すれば、S57の判定がYES となり、直ちにS2に戻る。 【0134】以上、データシフト処理指令が出されていない場合について説明したが、次に、データシフト処理指令が出された場合について説明する。 ただし、データシフト処理の内容は、ある補正値U 1が決定されてからその補正値U 1が測定値Xに反映されるまでの間に別の補正値U 2が決定されない場合と決定される場合とで異なる。 しかも、ある補正値U 1が決定されてからその補正値U 1が測定値Xに反映されるまでの間に別の補正値U 2が決定される場合におけるデータシフト処理の内容は、作業者から補助補正指令が出されている場合と出されていない場合とで異なる。 したがって、それぞれの場合に分けて説明する。 【0135】まず、ある補正値U 1が決定されてからその補正値U 1が測定値Xに反映されるまでの間に別の補正値U 2が決定されず、補正値U 1が測定値Xに反映された後に補正値U 2が決定される場合を図22の例を参照して説明する。 【0136】現在、補正反映前フラグがON、すなわち、最新の補正値U 1を定寸装置14に送信した後、その補正値U 1の影響を受けた先頭補正ワークがポストプロセス測定機16に到達するのを待っている状態にあると仮定する。 したがって、図5のS3の判定がYESとなり、前記の場合と同様にして、S4〜6が実行される。 今回は測定値前後差ΔHが大きく変動しなかったと仮定すれば、S6の判定がNOとなり、図6のS7に移行する。 このS7においては、データシフト処理指令が出されているか否かが判定され、今回は出されているから、判定がYESとなり、S70において、データシフト処理が行われる。 【0137】データシフト処理の詳細は図21にフローチャートで表されている。 まず、S200において、補正反映前フラグがONであるか否かが判定される。 今回はONであるから、判定がYESとなり、S201において、補正値演算用メモリから今回の測定値Xが読み込まれ、その測定値Xに暫定的なシフト量が加算されることにより、測定値予測が行われる。 暫定的なシフト量は、現時点までに決定された補正値Uであって未だ測定値Xに現れていないものの和(=ΣU i )に決定される。 図22の例では、未だ測定値Xに現れていない補正値UはU 1のみであるため、結局、暫定的なシフト量はU 1とされることになる。 その後、S202において、 RAMに設けられている修正済フラグがOFFされる。 修正済フラグの機能については後に説明する。 以上でS 70の一回の実行が終了する。 【0138】その後、このS70は測定値Xが取得されるごとに実行され、その結果、図22において破線で示すように、データシフト処理すなわち測定値予測が行われることになる。 【0139】その後、図6のS10において補正反映前フラグがOFFされれば、図21のS200の判定がN Oとなり、S203において修正済フラグがONであるか否かが判定される。 今回はOFFであるから、判定がNOとなり、S204に移行する。 このS204においては、補正反映情報演算用メモリから補正反映量ΔUが読み込まれ、その補正反映量ΔUと先に決定した補正値Uとの関係に基づき、前記測定値予測が十分に正確ではなかったか否かが判定される。 具体的には、補正反映前フラグがOFFにされたときの測定値Xに対応する補正値Uとその補正値Uが測定値Xに反映された補正反映量ΔUとが設定値以上異なっているか否かが判定される。 測定値予測は、前記のように、補正値Uがそのまま測定値Xに現れると仮定し、補正値Uそのものを暫定的なシフト量に決定して行われるからである。 【0140】なお、ここにおいて「補正反映前フラグがOFFにされたときの測定値Xに対応する補正値U」 は、必ずしも最新の補正値Uには一致しない。 ある補正値U 1の決定時期からその補正値U 1が測定値Xに反映される時期までの間に別の補正値U 2が決定される場合があるからである。 したがって、「補正反映前フラグがOFFにされたときの測定値Xに対応する補正値U」とは、補正反映前フラグがOFFにされる前に未だ測定値Xに反映されていなかった補正値Uのうち最も先に決定されたものを意味することとなる。 【0141】今回は測定値予測が十分に正確であったと仮定すれば、このS204の判定がNOとなり、直ちにS70の実行が終了するが、十分に正確ではなかったと仮定すれば、S204の判定がYESとなり、S205 に移行する。 このS205においては、補正反映情報演算用メモリから補正反映量ΔUが読み込まれ、また、補正値演算用メモリからそれに蓄積されている測定値X (予測後の値)がすべて読み込まれる。 さらに、同ステップにおいては、それら各測定値Xから前記暫定的なシフト量が減算されてもとの測定値X(予測前の値)に復元された後、そのもとの測定値Xに最終的なシフト量としての補正反映量ΔUが加算される。 これにより、図2 2において二点鎖線で示すように、測定値予測の修正が行われることになる。 その後、S206において修正済フラグがONされる。 すなわち、修正済フラグはONで測定値予測の修正が行われたことを示し、OFFで行われていないことを示すフラグなのである。 【0142】その後、新たに測定値Xが取得され、再びS70が実行されれば、現在補正反映前フラグがOFF であるから、S200の判定がNOとなり、S203において、修正済フラグがONであるか否かが判定されれば、現在ONであるから、判定がYESとなり、S20 4〜206がスキップされて直ちにS70の実行が終了する。 したがって、補正反映前フラグがOFFである間は、測定値Xがそのまま補正値演算用メモリに蓄積され、図22に示すように、測定値予測もそれの修正も行われない。 【0143】その後、補正値演算用メモリに蓄積されている測定値Xの数が設定数個になったならば、S20において別の補正値U 2が決定される。 補正値U 2は結局、図22にハッチングした領域で示すように、過去の複数の測定値Xに基づいて決定されることとなる。 【0144】次に、ある補正値U 1が決定されてからそれが測定値Xに反映されるまでの間に別の補正値U 2が決定される場合について説明する。 ただし、補助補正指令が出されていない場合と出されている場合とに分けてそれぞれ説明する。 【0145】まず、補助補正指令が出されていない場合を図23の例を参照して説明する。 この場合、補正値U 1が決定されて定寸装置14に送信された後、図9のS 29の判定が行われれば、今回は補助補正指令が出されていないから、判定がNOとなり、S30において、補正反映前フラグがONされ、S31において、補正値演算用メモリがクリアされる。 その後、図5のS2に戻る。 【0146】その後、S2において、新たな測定値Xが補正値演算用メモリに蓄積され、続いて、S7において、データシフト処理指令が出されているか否かが判定される。 今回は出されているから、判定がYESとなり、S9がスキップされる。 すなわち、データシフト処理指令が出されていない場合と異なり、補正反映前フラグがONであっても補正値演算用メモリがクリアされず、測定値Xが順に蓄積されることになる。 【0147】各測定値Xが蓄積される毎に図7のS7の判定がYESとなり、S70が実行される。 S70においてはまず、図21のS200において、補正反映前フラグがONであるか否かが判定され、現在ONであるから、判定がYESとなり、S201において、補正値演算用メモリから今回の測定値Xが読み込まれ、その今回の測定値Xに暫定的なシフト量が加算される。 今回は、 未だ測定値Xに現れていない補正値UとしてU 1のみ存在するから、結局、今回の暫定的なシフト量はU 1とされる。 これにより、図23の(a) に破線で示すように、 測定値予測が行われることになる。 その後、S202において修正済フラグがOFFされる。 以上でS70の実行が終了する。 【0148】その後、ポストプロセス測定機16からの測定値Xの入力と測定値予測とがそれぞれ繰り返され、 その結果、補正値演算用メモリに蓄積されている測定値Xの数が設定数個に達したときに、図23の(b) に示すように、S20において補正値U 2が決定される。 図においてハッチングした領域は、補正値U 2を決定するために利用された予測後の測定値Xを示している。 【0149】補正値U 2が決定されれば、今回は補助補正指令が出されていないから、図9のS29の判定がN Oとなり、S30において補正反映前フラグがONにされ(ただし、現在ONであるから、補正反映前フラグに変化はない)、S31において、補正値演算用メモリがクリアされる。 したがって、その後、測定値Xが入力されれば、無蓄積状態で補正値演算用メモリに蓄積されることとなる。 【0150】その後、S70が実行されれば、現在補正反映前フラグがONであるから、図21のS200の判定がYESとなり、S201において、補正値演算用メモリから今回の測定値Xが読み込まれ、その今回の測定値Xに暫定的なシフト量が加算される。 今回は、未だ測定値Xに現れていない補正値UとしてU 1とU 2とが存在するから、結局、今回の暫定的なシフト量は(U 1 + U 2 )とされる。 これにより、図23の(c) に破線で示すように、測定値予測が行われることになる。 その後、 S202において修正済フラグがOFFされる。 以上でS70の実行が終了する。 【0151】その後、補正値U 1が測定値Xに反映され、補正反映前フラグがOFFされたと仮定すれば、S 200の判定がNOとなり、S203において、修正済フラグがONであるか否かが判定される。 今回はOFF であるから、判定がNOとなり、S204において、測定値予測が十分に正確ではなかった否かが判定される。 今回は十分に正確ではなかったと判定すれば、判定がY ESとなり、S205において、前記の場合と同様にして測定値予測の修正が行われる。 その結果、予測後の測定値Xは、図23の(d) に太い実線で示すように、修正されることになる。 【0152】その後、新たに測定値Xが取得され、S7 0が実行されれば、現在補正反映前フラグがONであるから、S200の判定がYESとなり、S201において、図23の(e) に破線で示すように、測定値予測が行われる。 測定値Xに暫定的なシフト量として補正値U 2 が加算されるのである。 その後、補正値演算用メモリに蓄積されている測定値Xの数が設定数個に達したときに、図23の(f) に示すように、S20において補正値U 3が決定される。 図においてハッチングした領域は、 補正値U 3を決定するために利用された予測後の測定値Xを示している。 【0153】次に、補助補正指令が出されている場合を図24の例を参照して説明する。 補正値U 1についても補助補正(図において補助補正用の補正値を「USB」 で表す)が行われ、現在その補助補正が図24の(a) に示すように終了したと仮定する。 したがって、図10のS55の判定がYESとなり、S57の判定もYESとなり、S58において、補正反映前フラグがONされ(直前にONであるから、変化なし)、S59において、補正値演算用メモリがクリアされ、S2に戻る。 【0154】その後、新たに測定値Xが取得され、図7 のS7の判定が実行されれば、今回はデータシフト処理指令が出されているから、判定がYESとなり、S70 が実行される。 S70においては、現在補正反映前フラグがONであるから、図21のS200の判定がYES となり、S201において、補正値演算用メモリから今回の測定値Xが読み込まれ、その今回の測定値Xに暫定的なシフト量が加算される。 今回は、未だ測定値Xに現れていない補正値UとしてU 1のみが存在するから、結局、今回の暫定的なシフト量はU 1とされる。 これにより、図24の(b) に破線で示すように、測定値予測が行われることになる。 その後、S202において修正済フラグがOFFされる。 以上でS70の実行が終了する。 【0155】その後、ポストプロセス測定機16からの測定値Xの入力と測定値予測とがそれぞれ繰り返され、 その結果、補正値演算用メモリに蓄積されている測定値Xの数が設定数個に達したときに、図24の(c) に示すように、S20において補正値U 2が決定される。 図においてハッチングした領域は、補正値U 2を決定するために利用された予測後の測定値Xを示している。 【0156】補正値U 2が決定されれば、今回は補助補正指令が出されているから、図9のS29の判定がYE Sとなり、図9のS55において、補助補正を終了させるべきであるか否かが判定される。 今回は終了させるべきではと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちにS2に戻る。 【0157】その後、S2において、新たな測定値Xが取得され、続いて、S70が実行されれば、現在補正反映前フラグがONであるから、図21のS200の判定がNOとなり、S201において、測定値予測が行われる。 今回は、未だ測定値Xに現れていない補正値UとしてU 1とU 2があるため、今回の暫定的なシフト量は(U 1 +U 2 )とされる。 その後、S20が実行されれば、図24の(d) に示すように、補助補正用の補正値U SBが決定される。 今回もその補助補正を終了させるべきではないと仮定すれば、図10のS55の判定がNO となり、直ちにS2に戻り、新たな測定値Xが取得される。 その後、S70が実行されれば、現在補正反映前フラグがONであるから、S200の判定がNOとなり、 S201において、前回の場合と同様に、測定値予測が行われる。 【0158】その後、補助補正が終了しないうちに、先頭補正ワークがポストプロセス測定機16に到達し、補正反映前フラグがOFFになったと仮定する。 この場合、S70においては、現在補正反映前フラグがOFF であるから、S200の判定がNOとなり、S203において、修正済フラグがONであるか否かが判定される。 現在OFFであるから、判定がNOとなり、S20 4において、測定値予測が十分に正確ではなかったか否かが判定される。 今回は十分に正確ではなかったと仮定すれば判定がYESとなり、S205において、測定値予測の修正が行われる。 図24の(e) に示すように、前回の補助補正の終了時から補正値U 2の決定時までに取得された測定値Xと、補正値U 2の決定時から補正反映前フラグがOFFになるまでに取得された測定値Xとのそれぞれが、図において太い実線で示すように、修正される。 【0159】なお、本実施例においては、補助補正の実行時には、図24の(e) に示すように、測定値予測の修正が行われるべき複数の測定値Xの中に、補正値U 2の決定前であって暫定的なシフト量が補正値U 1であるものと、補正値U 2の決定後であって暫定的なシフト量が(U 1 +U 2 )であるものとが混在し、その結果、測定値予測の修正が行われても、次の補正値U 3の決定に際して使用される予測後の測定値Xが十分に一様なものとならない。 そこで、それら測定値Xを十分に一様なものとする必要がある場合には、例えば、同図の(f) に示すように、補正値U 2が測定値Xに現れた時点で、その補正値U 2の決定前に既に補正値演算用メモリに蓄積されていた測定値Xであって既に暫定的なシフト量U 1でシフトされているものを、さらに、暫定的なシフト量U 2 でシフトさせることにより、再度測定値予測を行えばよい。 【0160】また、本実施例においては、ファジィ制御がデータシフト方式をとる場合には、図33にグラフで示すように、積分制御実行条件が成立し、積分制御により補正値Uが決定されたときに、補正値演算用メモリがクリアされるとともに、測定値Xの蓄積が無蓄積状態から再開され、かつ、そのまま蓄積されるのではなく、積分制御ICにより決定された補正値Uが直ちに測定値X に反映されたと仮定した場合に取得されることとなる測定値Xを予測し、その予測した測定値Xが蓄積されるようになっている。 すなわち、データシフトは、積分制御において測定値Xが蓄積された時期と同じ時期にファジィ制御において蓄積された測定値Xは対象とせず、それ以後に蓄積された測定値Xのみを対象として行われるようになっているのである。 しかし、データシフトは例えば、図40に示すように、積分制御において測定値Xが蓄積された時期と同じ時期にファジィ制御において蓄積された測定値Xをも対象として行うことが可能である。 例えば、積分制御の開始から終了までは測定値Xをそのまま補正値演算用メモリに蓄積するが、積分制御により補正値Uが決定されたときに、それまでに蓄積された測定値Xにつき、積分制御による補正値Uを加算することにより、過去に遡ってデータシフトを行うことが可能なのである。 【0161】このようなデータシフト処理を実行するための定寸点補正ルーチンの一部が図39にフローチャートで表されている。 なお、このフローチャートは、図5 のフローチャートと共通する部分が多いため、異なる部分についてのみ説明し、共通する部分については同一の符号を使用することによって説明を省略する。 【0162】積分制御実行条件が成立したと仮定すると、S2eの判定がYESとなり、S2fにおいて、積分制御によって補正値Uが算出され、S2gにおいて、 その算出された補正値Uが定寸装置14に送信される。 その後、S2hにおいて、積分制御指令フラグがOFF される。 続いて、S2iにおいて、データシフト処理指令があるか否かが判定される。 今回はその指令があると仮定すれば、判定がYESとなり、S2jにおいて、補正値演算用メモリに蓄積された測定値Xのうち、積分制御において測定値Xが蓄積された時期と同じ時期に蓄積された測定値Xの各々に対し、積分制御による補正値U をシフト量としてデータシフト処理が行われる。 その後、図6のS3に移行する。 これにより、図40に示すように、積分制御による補正値Uに基づくデータシフト処理が、積分制御の開始時期まで遡って行われることになる。 その後、S2kにおいて、補正反映前フラグがO Nされ、図6のS3に移行する。 これに対し、今回はデータシフト処理指令がないと仮定すれば、S2iの判定がNOとなり、直ちにS2kに移行する。 【0163】以上の説明から明らかなように、本実施例においては、制御装置20のうち図20のファジィ制御FCを実行する部分が本発明における「第1の補正値決定手段」の一例を構成し、制御装置20のうち同図の積分制御ICを実行する部分が本発明における「第2の補正値決定手段」の一例を構成しているのである。 【0164】なお、本実施例は、クランクシャフトをワークとし、それの複数のジャーナル面(外周円筒面)をそれぞれ加工部位として円筒研削する加工システムと共に使用される定寸点補正装置に本発明を適用した場合の一例であったが、他の加工システムと共に使用される定寸点補正装置に本発明を適用することができるのはもちろんである。 他の加工システムには例えば、自動車のエンジンのシリンダブロックを加工すべきワークとし、それに予め形成された複数のシリンダボア(内周円筒面) をそれぞれ加工部位としてホーニングする加工システムを選ぶことができる。 【0165】以上、本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明したが、この他にも特許請求の範囲を逸脱することなく、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した態様で本発明を実施することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例であるフィードバック式の定寸点補正装置が使用される加工システムにおいてクランクシャフトが砥石により研削される状態を示す斜視図である。 【図2】上記加工システム全体を示すシステム図である。 【図3】上記加工システムにおける加工機の構成を示す図である。 【図4】上記定寸点補正装置を概念的に示す機能ブロック図である。 【図5】図2における制御装置20のコンピュータにより実行される定寸点補正ルーチンの一部を示すフローチャートである。 【図6】その定寸点補正ルーチンの別の一部を示すフローチャートである。 【図7】その定寸点補正ルーチンのさらに別の一部を示すフローチャートである。 【図8】その定寸点補正ルーチンのさらにまた別の一部を示すフローチャートである。 【図9】その定寸点補正ルーチンのさらにまた別の一部を示すフローチャートである。 【図10】その定寸点補正ルーチンのさらにまた別の一部を示すフローチャートである。 【図11】その定寸点補正ルーチンの処理全体の流れを概念的に示す図である。 【図12】図11における両端直径補正の原理を概念的に示すグラフである。 【図13】図11における寸法情報取得において誤差値Rから微分値Tが算出される過程を概念的に示すグラフである。 【図14】図11におけるファジィ演算において誤差値Rについて用いられるメンバーシップ関数を示すグラフである。 【図15】そのファジィ演算において微分値Tについて用いられるメンバーシップ関数を示すグラフである。 【図16】そのファジィ演算において補正値Uについて用いられるメンバーシップ関数を示すグラフである。 【図17】上記実施例において、補正値が測定値に反映される毎に新たな補正値が決定される様子を概念的に説明するためのグラフである。 【図18】上記実施例において、補正値が測定値に反映されるまでの間にそれ以前に存在する測定値をその補正値の分だけシフトさせるデータシフト処理の内容を概念的に説明するためのグラフである。 【図19】図11における連続性考慮の内容を概念的に示すグラフである。 【図20】図5〜10の定寸点補正ルーチンにおいて測定値Xから最終補正値U *が誘導される過程の一例を説明するための図である。 【図21】図7のS70の詳細を示すフローチャートである。 【図22】上記実施例において、ある回の補正値U 1が測定値Xに現れた後に次の補正値U 2が決定される場合に、データシフト処理により予測された測定値Xが修正される様子を概念的に説明するためのグラフである。 【図23】上記実施例において、ある回の補正値U 1が測定値Xに現れる前に別の補正値U 2が決定される場合であって補助補正が行われない場合に、データシフト処理により予測された測定値Xが修正される様子を概念的に説明するためのグラフである。 【図24】上記実施例において、ある回の補正値U 1が測定値Xに現れる前に別の補正値U 2が決定される場合であって補助補正が行われる場合に、データシフト処理により予測された測定値Xが修正される様子を概念的に説明するためのグラフである。 【図25】上記実施例における測定値前後差変動状態判定の実行期間と待機ワーク数の最小値および最大値との関係を説明するためのグラフである。 【図26】上記実施例における測定ワーク数と測定値前後差とその測定値前後差の算出に用いたサンプル値の数との関係を概念的に説明するためのグラフである。 【図27】図11における積分制御ICの内容を概念的に示すグラフである。 【図28】積分制御を何回も連続して行った場合における問題を説明するためのグラフである。 【図29】前記定寸点補正ルーチンにおける積分制御実行条件を表形式で示す図である。 【図30】前記定寸点補正ルーチンが一連の加工の開始当初において実行される様子を説明するためのグラフである。 【図31】前記定寸点補正ルーチンが作業者による手動補正後に実行される様子を説明するためのグラフである。 【図32】前記定寸点補正ルーチンにおける積分制御と単純蓄積方式のファジィ制御相互の関係を説明するためのグラフである。 【図33】前記定寸点補正ルーチンにおける積分制御とシフト蓄積方式のファジィ制御相互の関係を説明するためのグラフである。 【図34】前記加工システムにおいて測定値Xが測定値数iの増加に対して変化する様子を概念的に説明するためのグラフである。 【図35】前記定寸点補正ルーチンにおける測定値前後差変動状態判定の開始条件の内容を概念的に説明するための図である。 【図36】前記定寸点補正ルーチンにおける測定値前後差変動状態判定の終了条件の内容を概念的に説明するための図である。 【図37】本出願人が本発明に先立って開発したフィードバック式加工条件補正装置において補正値が自動的に決定される様子を説明するためのグラフである。 【図38】本出願人が本発明に先立って開発したフィードバック式加工条件補正装置において最初の補正値が自動的に決定されのに先立って作業者により加工条件が手動で補正される様子を説明するためのグラフである。 【図39】本発明の別の実施例であるフィードバック式の定寸点補正装置における制御装置20のコンピュータにより実行される定寸点補正ルーチンの一部を示すフローチャートである。 【図40】図39のフローチャートにより実行される定寸点補正の様子を説明するためのグラフである。 【符号の説明】 10 加工機 12 インプロセス測定機 14 定寸装置 15 モータコントローラ 16 ポストプロセス測定機 20 制御装置 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−198543(JP,A) 特開 平6−106455(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl. 7 ,DB名) G05B 19/18 - 19/46 B23Q 15/00 - 15/28 |