【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、貴金属錯体を担持させたピリジン環を有する多孔質架橋構造をもつ樹脂からなるカルボニル化反応用固体触媒を用い、アルコール類、エーテル類およびオレフィン類のなかから選ばれる被カルボニル化原料と、一酸化炭素とを反応させてカルボニル化合物を製造する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、貴金属錯体を担持させたピリジン環を有する多孔質架橋構造をもつ樹脂からなるカルボニル化反応用固定触媒を用い、アルコール類およびエーテル類およびオレフィン類から選ばれる被カルボニル化原料と一酸化炭素とを反応させてカルボニル化合物を製造する方法は知られている。 例えば、メタノールのカルボニル化による酢酸の製造方法(特開平6−3156 37号)、酢酸メチルのカルボニル化による無水酢酸の製造方法(特願平7−303449号)、オレフィン類のヒドロホルミル化によるアルデヒド類の製造方法(特願平7−306735号、特願平7−306736号) などがその代表的なものとして挙げられる。 【0003】さらに、たとえば、酢酸を製造するために、多孔質架橋構造を有するビニルピリジン系樹脂に担持させたロジウム錯体をカルボニル化反応用の触媒として用い、ヨウ化アルキルの存在下、有機溶媒中でメタノールと一酸化炭素とをカルボニル化反応させることも知られている(例えば、特開平6−315637号)。 【0004】このメタノールのカルボニル化反応工程においては、反応生成液と反応生成ガスが得られ、反応生成液は、メタノールのカルボニル化反応により生成した酢酸の他、未反応のメタノール;酢酸メチル、プロピオン酸、水、ヨウ化水素等の副生物;反応に際して用いた有機溶媒およびヨウ化メチルなどを含有する。 一方、反応生成ガスは、未反応の一酸化炭素の他、CO 2 、H 2 、CH 4等の副生物;反応に際して用いたヨウ化メチル等を含有する。 【0005】ところで、反応生成液は、反応器より抜き出され、一旦脱圧された後、反応生成液に含まれる酢酸を分離回収するために、分離塔(蒸留塔)に送られここで蒸留処理され、残液は反応器に循環される。 【0006】ところが、ビニルピリジン系樹脂に触媒として担持されているロジウム錯体は、液体中のロジウム錯体と樹脂上に固定されたロジウム錯体との平衡関係により、ビニルピリジン系樹脂からわずかではあるが脱離し、この脱離したロジウム錯体は反応生成液中にごく微量濃度で存在する。 従来の均一ロジウム錯体を用いるプロセスにおいては、ロジウム錯体を全量、分離系へ送り、ここでロジウム錯体を分離し反応系へ循環させるが、分離回収の際、ロジウム錯体は高沸点留分へ濃縮されるので、ロジウム錯体の溶解度以下にロジウム濃度を制御し、ロジウムの析出と損失を防ぐ必要があった。 【0007】従って、大量の反応液を分離系へ送り循環し、高沸点留分においてロジウムが高濃度に濃縮するのをおさえ、反応系でのロジウム濃度と循環される液のロジウム濃度は大きな差がないものとして行わざるを得なかった。 【0008】一方、固定化触媒を用いる方法においては、反応液中に存在するロジウム濃度が極めて微量であることから、ロジウムは反応液濃度の通常、1.5倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは10倍以上に分離工程で高沸点留分に濃縮し、反応系に循環させる。 しかしながら、濃縮率を高くして効率化した場合、ロジウム錯体は、例えば減圧された後に行われる蒸留工程や反応器までの返送工程途中においてヨウ化ロジウムの形態として析出してしまい、反応器まで循環して回収することができず損失となる場合がある。 また、このようなロジウム錯体の損失が起こった場合、反応器中におけるロジウム固液平衡の関係上、さらにロジウム錯体の脱離(剥離)を促し、時間の経過とともに、固定化されたロジウム錯体の量は徐々に減少し触媒活性の低下をまねく。 このような損失はプロセスの経済性の点からも好ましいものではない。 【0009】従って、ロジウム錯体固定化触媒においても、反応生成液中に含まれる微量のロジウム錯体といえども、反応生成液を蒸留する以前に、析出させることなく反応工程に循環させて戻すようにすることが好ましい。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】このような実状のもとに、本発明は創案されたものであって、その目的は、ロジウム錯体などの貴金属錯体を含む反応生成液からカルボニル化合物を分離回収するために反応生成液を一旦反応器より抜き出した後、貴金属錯体を析出させることなく、反応器に回収することができるカルボニル化合物の製造方法を提供することにある。 さらに、このカルボニル化合物の製造方法はプロセス全体を考慮にいれ効率良く行う必要がある。 【0011】 【課題を解決するための手段】このような課題を解決するために、本発明は、貴金属錯体を担持させたピリジン環を有する多孔質架橋構造をもつ樹脂からなるカルボニル化反応用固体触媒を用い、アルコール類、エーテル類およびオレフィン類のなかから選ばれる被カルボニル化原料と、一酸化炭素とを反応させてカルボニル化合物を製造する方法において、反応器から抜き出された反応生成物を脱圧する工程と、脱圧後、分離塔への供給ラインに一酸化炭素を含むガスを供給する工程とを備えるように構成される。 【0012】また、本発明は、ロジウム錯体を担持させたピリジン環を有する多孔質架橋構造をもつ樹脂からなるカルボニル化反応用固体触媒を用い、ヨウ化アルキルの存在下、反応溶媒中でメタノールおよびジアルキルエーテルのなかから選ばれる被カルボニル化原料と、一酸化炭素とを反応させて酢酸であるカルボニル化合物を製造する方法において、反応器から抜き出された反応生成物を脱圧する工程と、脱圧後、分離塔への供給ラインに一酸化炭素を含むガスを供給する工程とを備えるように構成される。 【0013】また、好ましい態様として、前記分離塔への供給ラインに供給される一酸化炭素を含むガスは、反応器の頂部から排出された一酸化炭素を含むガスを循環させたものであるよう構成される。 【0014】また、好ましい態様として、前記反応器の頂部から排出された一酸化炭素を含むガスは、反応器の頂部から排出されたガスをメタノールで向流接触させた一酸化炭素を含むガスであるよう構成される。 【0015】また、好ましい態様として、前記脱圧工程後、分離塔への供給ライン中には蒸発槽が介在され、この蒸発槽の底部へ前記一酸化炭素を含むガスを供給してなるよう構成される。 【0016】また、好ましい態様として、前記脱圧工程後、分離塔への供給ライン中には加熱器が介在され、加熱器の上流側に前記一酸化炭素を含むガスを供給してなるよう構成される。 【0017】また、好ましい態様として、前記脱圧工程後、分離塔への供給ライン中には加熱器および蒸発槽が順次介在され、加熱器の上流側に前記一酸化炭素を含むガスを供給してなるよう構成される。 【0018】また、本発明は、貴金属錯体を担持させたピリジン環を有する多孔質架橋構造をもつ樹脂からなるカルボニル化反応用固体触媒を用い、アルコール類、エーテル類およびオレフィン類のなかから選ばれる被カルボニル化原料と、一酸化炭素とを反応させてカルボニル化合物を製造する方法において、反応器から抜き出された反応生成物を脱圧する工程と、脱圧後、分離塔の底部に一酸化炭素を含むガスを供給する工程とを備えるように構成される。 【0019】また、本発明は、ロジウム錯体を担持させたピリジン環を有する多孔質架橋構造をもつ樹脂からなるカルボニル化反応用固体触媒を用い、ヨウ化アルキルの存在下、反応溶媒中でメタノールおよびジアルキルエーテルのなかから選ばれる被カルボニル化原料と、一酸化炭素とを反応させて酢酸であるカルボニル化合物を製造する方法において、反応器から抜き出された反応生成物を脱圧する工程と、脱圧後、分離塔の底部に一酸化炭素を含むガスを供給する工程とを備えるように構成される。 【0020】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。 【0021】本発明のカルボニル化合物の製造反応は、 いわゆる不均一反応系で行われる。 すなわち、貴金属錯体を担持させたピリジン環を有する多孔質架橋構造をもつ樹脂からなるカルボニル化反応用固体触媒を用いて、 被カルボニル化原料と、一酸化炭素とを反応させて酢酸、無水酢酸などのカルボニル化合物が製造される。 【0022】貴金属錯体としては、ロジウム錯体、コバルト錯体、ルテニウム錯体、イリジウム錯体等が用いられ、特に、酢酸の製造にあっては、ロジウム錯体が好適に用いられる。 【0023】被カルボニル化原料としては、アルコール類、エーテル類(例えば、ジアルキルエーテル)およびオレフィン類などが好適に用いられる。 特に、酢酸の製造にあっては、例えば、ヨウ化メチルの存在下、反応溶媒中でメタノールおよびジメチルエーテルのなかから選ばれる被カルボニル化原料と、一酸化炭素とを反応させて酢酸が製造される。 【0024】本発明において貴金属錯体を担持するために用いられる担体は、多孔質架橋構造を有するビニルピリジン系樹脂(以下、単に『VP樹脂』と称する)である。 【0025】本発明の触媒の担体に用いられるVP樹脂は、ビニルピリジン系単量体と、架橋剤としての2個のビニル基を持つ化合物を共重合させることによって製造される。 VP樹脂を得るための共重合方法は、従来すでに公知となっている方法を用いればよく、例えば、 (1)沈殿剤添加法、(2)線状重合体添加法、(3) 膨潤剤・沈殿剤添加法、(4)希釈剤・線重合体添加法等が使用される。 【0026】本発明で用いられるVP樹脂は、架橋度が、10〜70%、好ましくは30〜60%に規定される。 触媒を高温、例えば、50〜250℃で用いる場合には、そのVP樹脂の架橋度を30%以上、好ましくは50〜60%に規定するのがよい。 VP樹脂の架橋度が10%未満となると、触媒の耐久性及び耐摩耗性が低下して好ましくない。 すなわち、VP樹脂のピリジン環の脱離による触媒寿命の短命化および樹脂表面の摩耗が起こりやすくなり好ましくない。 この一方で、VP樹脂の架橋度が70%を超えると、触媒活性が低下するという問題が生じてしまう。 【0027】さらに、本発明で用いられるVP樹脂は、 多孔質架橋構造を有し、その表面積は、5〜80m 2 / g、好ましくは、10〜40m 2 /gであり、その細孔容積は、0.15〜0.5cc/g、好ましくは0.2 〜0.4cc/gであり、その平均細孔径は、20〜1 00nm、好ましくは30〜90nmとなるように形成される。 VP樹脂の細孔容積が小さくなりすぎて0.1 5cc/g未満となると、触媒活性が低下するという問題が生じ、この一方で、細孔容積が大きくなりすぎて0.5cc/gを超えると、耐摩耗性が低下するという不都合が生じる。 さらに、VP樹脂の平均細孔径が20 nm未満となると、触媒活性が低下するという問題を生じ、一方、この値が100nmを超えると、耐摩耗性が低下するという不都合が生じる。 【0028】本発明において、VP樹脂に関する架橋度とは以下のように定義される。 また、VP樹脂に関する細孔容積及び表面積は以下のようにして測定されたものである。 さらに、VP樹脂に関する平均細孔径は以下のようにして算出される。 【0029】(架橋度) 架橋度(%)=A/B×100 A:樹脂中に含まれる架橋剤の重量 B:樹脂中に含まれるビニルピリジン系モノマーの重量 (細孔容積)マーキュリー・プレッシャー・ポロシーメーター・モデル70(イタリア国ミラノ市のカルロ・エルバ社製)を用いる方法(いわゆる水銀圧入法)により測定した。 この場合、水銀の表面張力は25℃で474 dyne/cmとし、使用接触角は140度とし、絶対水銀圧力を1〜200Kg/cm 2まで変化させて測定する。 【0030】(表面積)いわゆるB. E. T法により測定する。 【0031】(平均細孔径)前記のようにして測定された細孔容積及び表面積の各測定値を用い、以下の式により算出する。 【0032】 平均細孔径(nm)=4(C/D)×10 3 C:細孔容積(cc/g) D:表面積(m 2 /g) 本発明で用いられるVP樹脂の好ましい製造方法については、特公昭61−25731号公報に詳細に記載されている。 すなわち、この公報記載の方法によると、VP 樹脂は、ビニルピリジン系単量体と、2個のビニル基を持つ架橋剤と、必要に応じて用いられるビニル単量体との混合物を、ラジカル重合反応触媒の存在下で重合反応させることによって製造される。 この場合、重合反応は、水を媒体とする水系懸濁重合が採用される。 また、 重合反応系には、懸濁安定剤及び沈殿剤が添加される。 懸濁安定剤としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、澱粉、ゼラチン、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアンモニウム塩等の水溶性高分子、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ベントナイト、ケイ酸マグネシウム等の無機塩が用いられる。 また、反応系には、塩化ナトリウムや、亜硝酸ナトリウムを添加することができる。 沈殿剤としては、単量体に対しては溶剤として作用するが、生成ポリマーに対しては貧溶媒として作用する有機溶媒、例えば、イソオクタン等の炭素数5〜10の炭化水素の他、アルコール、エステル等が用いられる。 【0033】このようなVP樹脂の製造方法において、 その架橋度は架橋剤の添加量でコントロールすることができ、その細孔容積及び平均細孔径は、沈殿剤の種類とその添加量によって主にコントロールすることができる。 さらには、懸濁安定剤の種類とその添加量及び反応温度等によりコントロールすることもできる。 【0034】VP樹脂を得るために用いられるビニルピリジン系単量体としては、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ピリジン環にメチル基やエチル基等の低級アルキル基を有する4−ビニルピリジン誘導体または2−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。 また、このようなビニルピリジン系単量体には、他のビニル単量体、例えば、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族系ビニル単量体またはアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの脂肪族系ビニル単量体を混入させることができる。 これらのビニル単量体の混入量は、全単量体中、3 0モル%以下、特に、1〜30モル%、好ましくは20 モル%以下、特に、5〜20モル%にするのがよい。 【0035】前記ビニルピリジン系単量体を共重合させる架橋剤は、2個のビニル基を有する化合物である。 このようなものとしては、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族化合物の他、ジアクリル酸エチレングリコール、ブタジエン等の脂肪族化合物を挙げることができる。 工業的に用いられるジビニルベンゼンは通常約50モル%のエチルビニルベンゼンを含んでいるが、本発明では、このようなジビニルベンゼンを用いることもできる。 このような架橋剤の使用量は、所望するVP樹脂の架橋度に応じで適宜、定めればよい。 【0036】本発明で用いられるVP樹脂の粒径は、 0.01〜4mm、好ましくは0.1〜2mm、より好ましくは0.4〜2mmの粒状体として用いられ、その好ましい形状は球状体である。 【0037】本発明で用いる触媒は、VP樹脂に担持させたロジウム錯体などの貴金属錯体を含んでなるものである。 貴金属錯体の担持量は、VP樹脂に対して、貴金属換算量で、0.2〜5.0重量%、好ましくは0.5 〜3.0重量%の範囲である。 【0038】本発明で用いられる好適な触媒の一例は、 VP樹脂中に含まれるピリジン環の少なくとも一つに下記式(1)で表されるロジウム錯体陰イオンが結合し、 形成されたものである。 【0039】 【化1】 上記式(1)中、Rは水素または低級アルキル基を示す。 【0040】本発明で好適な触媒として用いられるロジウム錯体陰イオンが結合したピリジン環を有するVP樹脂は、以下の方法で得ることができる。 【0041】(1)VP樹脂のピリジン環の窒素原子に水溶液中でロジウムイオンを担持させた後、有機溶媒中でヨウ化アルキルと一酸化炭素の存在化にてロジウム錯体に変化させる方法。 【0042】この方法におけるピリジン環とロジウムとの反応は、下記式(2)で表される。 【0043】 【化2】 (2)VP樹脂を、一酸化炭素加圧下において、ヨウ化アルキルを含む溶媒中でロジウム塩と接触させる方法。 【0044】この方法の場合、一般的には、メタノールのカルボニル化反応条件下で、ロジウム塩とVP樹脂を接触させればよい。 この場合の接触反応においては、V P樹脂に含まれるピリジン環がヨウ化アルキルによって4級化されてピリジウム塩となり、このピリジウム塩にロジウム塩とヨウ化アルキルと一酸化炭素との反応により生成したロジウムカルボニル錯体[Rh(CO) 2 I 2 ] -がイオン的に結合する。 【0045】前記ロジウム塩としては、塩化ロジウムや、臭化ロジウム、ヨウ化ロジウム等のハロゲン化ロジウム;酢酸ロジウムやプロピオン酸ロジウム等のカルボン酸ロジウム塩が挙げられる。 また、ヨウ化アルキルとしては、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル等の炭素数1〜5の低級アルキル基を有するものが挙げられる。 中でも、特に、ヨウ化メチルの使用が好ましい。 ロジウム塩に対するヨウ化アルキルの使用割合は、 ロジウム塩1モル当たり、ヨウ化アルキル2〜2000 モル、好ましくは、50〜500モルの割合である。 また、ロジウム塩とヨウ化アルキルを接触させる際の一酸化炭素圧は、7〜30kg/cm 2 G、好ましくは、1 0〜20kg/cm 2 Gである。 【0046】本発明における好適な一例である酢酸の製造方法において、被カルボニル化原料と一酸化炭素を反応させるカルボニル化工程は、前述したVP樹脂に担持させたロジウム錯体触媒を用い、ヨウ化アルキルの存在下、有機溶媒中でメタノールと一酸化炭素とを反応させることにより行われる。 被カルボニル化原料としては、 メタノールおよびジアルキルエーテル(例えば、ジメチルエーテル)の中から適宜選定される。 カルボニル化反応は、種々の反応器を用いて実施することができる。 このような反応器の形式としては、例えば、固定床、混合槽、膨張床などが挙げられる。 【0047】反応器内における触媒充填量は、一般には、反応器内溶液に対して2〜40wt%であるが、混合槽反応器の場合、2〜25wt%に選ぶのがよい。 【0048】反応溶媒(有機溶媒)としては、従来公知の各種のものが用いられるが、一般には、炭素数が2以上のカルボニル基含有有機溶媒を含むものが用いられる。 このような反応溶媒としては、酢酸、酢酸メチル等のカルボン酸やカルボン酸エステル等が挙げられる。 中でも、酢酸を用いるのが好ましい。 また、有機溶媒は、 水を含有することができる。 この場合、有機溶媒中の水の含有率は、反応生成液中の水分濃度が、0.05〜5 0wt%、好ましくは、0.1〜20wt%、さらに好ましくは、0.5〜10wt%となるような量とされる。 ヨウ化アルキルとしては、炭素数1〜5のヨウ化アルキルが用いられる。 中でも特にヨウ化メチルを使用することが好ましい。 【0049】反応器内における反応溶媒の量は、上記被カルボニル化原料1重量部に対し、0.30重量部以上に規定することがよい。 好ましい有機溶媒量は、被カルボニル化原料1重量部に対し2.40重量部以上である。 反応溶液中の有機溶媒量を上記の範囲内に保持することにより、触媒の活性中心であるロジウム錯体(貴金属錯体)の反応活性が高められるとともに、ロジウム錯体(貴金属錯体)とVP樹脂との結合安定性も向上し、 高い反応速度でかつVP樹脂からのロジウム(貴金属) の離脱を効果的に防止して、被カルボニル化原料のカルボニル化反応を円滑に進行させることができる。 さらに重要なことは、反応器内の有機溶媒量を前記の範囲内に保持することによって、7kg/cm 2という極めて低いCO分圧条件下においてもロジウム錯体(貴金属錯体)が安定に存在し、高い反応速度で被カルボニル化原料のカルボニル化反応を進行させることができる。 このことは、反応器として特別の耐圧容器を使用する必要がなくなり、反応器コストを大幅に節約でき、実用性ある経済的カルボニル化合物(酢酸)製造プロセスが得られることを意味する。 【0050】被カルボニル化原料のカルボニル化反応を行う際のCO分圧(一酸化炭素分圧)は、7kg/cm 2以上あればよく、好ましくは10kg/cm 2以上である。 このCO分圧を特に高くしても反応速度はあまり向上せず、格別の反応上の利点は得られない。 従って、 経済的観点からはそのCO分圧は、7〜30kg/cm 2 、好ましくは、10〜20kg/cm 2の範囲に規定するのがよい。 CO分圧をこのような範囲に保持することによって、全反応圧力を経済的な15〜60kg/c m 2 G、さらに好ましくは15〜30kg/cm 2 G以下という低圧に保持することができる。 【0051】カルボニル化反応における反応温度は14 0〜250℃、好ましくは160〜230℃であるが、 その上限は、使用するVP樹脂の耐熱性に応じて適当に選定すればよい。 また、反応系におけるヨウ化アルキルの存在量は、反応器内溶液中、1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%である。 さらに、反応系におけるロジウム(貴金属)濃度は、反応器内溶液中、50wtp pm以上、好ましく300wtppm以上、より好ましくは400wtppm以上である。 なお、ここで言うロジウム(貴金属)濃度は、反応器内からVP樹脂を除いた溶液に対するロジウム(貴金属)量のwt%である。 【0052】反応器内における有機溶媒の量は、反応器の形式により、次のように規定する。 バッチ式反応器では反応器に仕込んだ原料液中の被カルボニル化原料に対する有機溶媒の量とする。 この場合、反応の進行に伴い被カルボニル化原料濃度は減少するので反応器内の有機溶媒の濃度は仕込み原料以上となる。 【0053】混合槽流通式反応器において、反応器内の溶液は均一に混合され定常状態になっているから、反応器内の有機溶媒の量は、反応器出口から抜出される反応生成液の組成に実質上等しい。 即ち、この場合、反応器内有機溶媒の量の規定としては、実質上、反応器出口から抜出される反応生成物中の被カルボニル化原料に対する有機反応溶媒の量である。 【0054】ピストンフロー式反応器では、反応器に供給される全供給液中の被カルボニル化原料に対する有機溶媒の量として定められる。 この場合、反応器入口から出口にいくに従って、被カルボニル化原料濃度は減少し、有機溶媒の量は増加するので、被カルボニル化原料に対する有機溶媒の量は反応器出口にいくに従って増加する。 従って、有機溶媒量としては反応器入口に供給される全供給液中の被カルボニル化原料に対する有機溶媒の量と規定される。 【0055】被カルボニル化原料としてメタノールを用いる場合(酢酸の製造の場合)のカルボニル化反応においては、下記反応式(I)の主反応とともに、下記反応式(II)、(III )の副反応が起る。 【0056】 CH 3 OH+CO →CH 3 COOH (I) CH 3 COOH+CH 3 OH⇔CH 3 COOCH 3 +H 2 O (II) 2CH 3 OH ⇔CH 3 OCH 3 +H 2 O (III ) 本発明において、酢酸を収率よく製造するには、前記副反応(II)、(III )を抑え、被カルボニル化原料のカルボニル化反応(I)を選択的に進行させることが必要になる。 このためには、有機溶媒として、酢酸メチルや水を含むものを用いるのが有効である。 【0057】酢酸メチルを反応系に存在させて酢酸収率を高める場合、酢酸メチルは、これをあらかじめ被カルボニル化原料に添加して反応系に供給するのが好ましい。 酢酸メチルは、被カルボニル化原料1重量部に対して、1.5重量部以上、好ましくは3重量部以上の割合で添加するのがよく、これにより酢酸メチルの副生を抑制して酢酸収率を高めることができる。 また、添加水を反応系に存在させて酢酸収率を高める場合、添加水は、 これをあらかじめ被カルボニル化原料に添加して反応系に供給するのが好ましい。 添加水は、被カルボニル化原料1重量部に対して、0.3重量部以上、好ましくは0.5重量部以上の割合で添加するのがよく、これにより、酢酸メチルの副生を抑制して酢酸収率を高めることができる。 【0058】被カルボニル化原料のカルボニル化に用いる反応器の具体例としては、反応液を撹拌翼で撹拌する撹拌混合式反応器や、反応液を気泡で撹拌する気泡塔型反応器等の反応器が好適に用いられる。 これらの反応器を含む反応装置の例を図1〜図3に示す。 【0059】図1は、撹拌混合式反応器からなる反応装置の説明図である。 この図において、1は反応器である。 2は撹拌翼を示し、4は冷却器を示す。 【0060】図1に示した反応装置を用いて被カルボニル化原料のカルボニル化反応を行うには、先ず、反応器1に触媒を充填した後、ライン5を通して被カルボニル化原料、反応溶媒(有機溶媒)及びヨウ化アルキルからなる混合液を充填する。 次いで撹拌翼2を回転させるとともに、ライン5から被カルボニル化原料、反応溶媒及びヨウ化アルキルからなる混合液を反応器内に供給し、 ライン6を通して一酸化炭素を含む反応性ガスを反応器内に導入し、ガス噴出ノズル7を介して液中に噴出させる。 反応液はライン8を介して反応器から抜出す。 また、未反応ガス(CO)及び気化した反応液はライン1 2、冷却器4及びライン13を通して反応器外へ抜出すが、この場合、気化した反応液の少なくとも一部は冷却器4で凝縮され、反応器内に戻される。 【0061】図2は外部循環形式の気泡塔型反応器からなる反応装置の説明図である。 図2において、21は縦型反応筒、22は第1ガス分離槽、23は第2ガス分離槽を示し、49は冷却器を示す。 【0062】縦型反応筒21は中空筒体からなる。 この反応筒21下部には、反応筒内下部からガスを噴出させるためのガス噴出ノズル(ガス噴出口)38が配設され、このガス噴出孔には、ガス導入管28が連結されている。 【0063】反応筒21の上端には、逆円錐台形状の短管26を介して第1ガス分離槽22が連結されている。 この第1ガス分離槽22は、反応筒21の水平断面積と同じもしくはそれよりも大きな断面積を有する密閉筒体からなり、その天版25には、その槽内で分離されたガスを槽外に抜出すためのガス抜出し管30が連結され、 このガス抜出し管30には、冷却器49が連結されている。 【0064】第2ガス分離槽23内の下部と反応筒21 内の下部とは、配管35によって連絡されている。 配管35の上端は逆円錐台形状の短管34を介して第2ガス分離槽23の下端と連結し、その配管35の下端は反応筒21底部に連結している。 配管35には、反応筒内下部に液体を供給するための液体供給管37が連結されている。 この液体供給管37は、必ずしも配管35に連結させる必要はなく、反応筒21の底部又は下部に連結させることもできる。 【0065】反応筒21内の上部と第2ガス分離槽23 内とは配管31で連絡されている。 配管31の一端は、 反応筒21上部の周壁に連結され、その他端は第2ガス分離槽23の周壁に連結されている。 第2ガス分離槽2 3は、密閉筒体からなり、その天板33には、その槽内で分離されたガスを槽外へ抜出すためのガス抜出し管3 2が連結され、その周壁には、槽内の液体を槽外へ抜出すための液体抜出し管29が連結されている。 また、その第2ガス分離槽23には、液体抜出しガス巻込み防止板36が配設されている。 このものは、液体中にガスが巻込まれて液体の抜出しが行われることを防止するためのもので、平板であっても湾曲板であってもよく、その形状は特に制約されない。 ガス抜出し管32は、第1ガス分離槽の上部又はガス抜出し管30に連結させることができる。 【0066】第1ガス分離槽22の水平断面積S(2) と反応筒21の水平断面積S(1)との比S(2)/S (1)は、1〜10、好ましくは2〜5の範囲である。 また、第2ガス分離槽23の水平断面積S(3)と反応筒21の水平断面積S(1)との比S(3)/S(1) は、0.5〜5、好ましくは1〜3の範囲である。 反応筒21におけるその内径R(1)とその高さH(1)との比H(1)/R(1)は、5〜100、好ましくは1 0〜20である。 【0067】図2に示した反応装置において、ガス噴出ノズル38は単管ノズルであってもよいが、リング状の管体の周壁に多数のガス噴出孔を有する環状ノズルであることができる。 【0068】図2に示した構造の反応装置は種々の変更が可能であり、例えば、配管31は、その傾斜が第2ガス分離槽23に向かって降下するように配設することができるし、反応筒21の上端及び下端にそれぞれ連結する短管26及び短管27に代えて、中央部に開口を有する板体を用いることもできる。 【0069】図2に示した構造の反応装置を用いて被カルボニル化原料のカルボニル化反応を行うには、先ず、 反応筒21内に触媒を充填した後、液体供給管37から原料混合液を反応装置内に充填する。 【0070】次に、液体供給管37から原料混合液を反応筒21内に供給するとともに、ガス導入管28から一酸化炭素を含む反応性ガスをガス噴出ノズル38を介して液体中に噴出させる。 ノズル38から液体中に噴出された反応性ガスは気泡となって液体中を上昇し、その際のガスリフト効果により、触媒は液体とともに反応筒内を上昇する。 このような触媒の上昇により、反応筒内の液体中への触媒の分散が達成され、反応筒内においては、被カルボニル化原料とCOとの円滑なカルボニル化反応が行われる。 【0071】反応筒内でのカルボニル化反応により得られる反応液は、未反応ガス(CO)と触媒を含み、反応筒の上方に配設されている第1ガス分離槽22内に流入し、この第1ガス分離槽内に保持される。 図2において、Sは反応液の液面を示す。 この第1ガス分離槽22 においては、反応液中に含まれていたガス成分及び気化した反応液が液面から上部空間に放散され、ガス抜出し管30及び冷却器49を通して槽外へ抜出される。 この場合、気化した反応液の少なくとも一部は冷却器49で凝縮され、第1ガス分離槽22に戻される。 【0072】反応筒21内を液体とともに上昇した触媒は、未反応ガスを含む反応液とともに、反応筒上部から配管31を通って第2ガス分離槽23内に流入し、ここで反応液中に含まれていたガス成分が分離され、分離されたガス成分及び気化した反応液は、配管32を通って抜出される。 一方、反応液は、液体抜出し管29を通して抜出される。 第2ガス分離槽23内には、ガス巻込み防止板36が配設されているため、抜出される反応液へのガスの混入が防止され、反応液を静置状態で液抜出し管29を通して抜出すことができる。 ガス成分が分離された反応液と触媒はその自重により、第2ガス分離槽2 3から配管35を通って反応筒21内下部に循環される。 反応筒21内下部に反応液とともに循環された触媒は、再び、反応筒21内を上昇する。 【0073】触媒を上方向に移動させる力は、液体の上方向への線速度に関係し、液体の線速度が大きいほど触媒を上方に移動させる力も大きくなる。 従って、液体の線速度を、液体中に存在する触媒を落下させる重力よりも大きくなるように調節することにより、触媒粒子を上方に移動させることができる。 しかし、図2に示した反応装置の場合、第1ガス分離槽22の水平断面積S (2)が反応筒21の水平断面積S(1)よりも大きくなっているため、液体の線速度は第1ガス分離槽内に入ると急激に小さくなり、触媒の第1ガス分離槽内への移動は防止され、反応筒21内上部から配管31を通って第2ガス分離槽23に選択的に流入する。 【0074】前記のようにして、図2に示した装置においては、反応筒21内を上昇する液体流と、反応筒21 の上部から、配管31、第2ガス分離槽23、配管35 を通って反応筒21内下部へ循環する循環流が形成される。 【0075】図3は内部循環形式の気泡塔型反応器からなる反応装置の説明図である。 この図において、1は反応器を示し、このものは、反応筒52とその上端に連結されたガス分離槽54からなる。 ガス分離槽54の水平断面積は、反応筒52の水平断面積よりも大きくなっている。 53は内筒を示す。 【0076】この反応装置を用いて被カルボニル化原料のカルボニル化反応を行うには、先ず、反応器内に触媒を充填した後、ライン56から原料混合液を充填する。 【0077】次に、ライン56から原料混合液を反応器内へ供給するとともに、ライン57から一酸化炭素を含む反応性ガスを内筒53の底部のガス噴出ノズル58を介して液中へ気泡状態で噴出させる。 【0078】この混合ガスの液中への噴出により、内筒53内には、液体と混合ガスの気泡との混合物からなる上昇流が形成され、また、この上昇流の形成にともなって、内筒53と反応筒52との間の環状間隙部に下降流が生じ、反応器内には循環流が形成される。 液体中に分散する触媒はその上昇液体流に同伴されて内筒53内を上昇する。 そして、これらの被カルボニル化原料、一酸化炭素及び触媒は、その上昇間に相互に接触し、被カルボニル化原料のカルボニル化反応が達成される。 【0079】内筒53を上昇する気液混合物は、反応筒52の上端に連結されたガス分離槽54内に流入し、反応液から未反応ガス(CO)等のガス成分の分離が行われる。 一方、触媒は液体に分散された状態で内筒53と反応筒52との間の環状間隙部内を下降し、反応筒52 の底部に循環される。 【0080】ガス分離槽54において分離されたガス成分は気化した反応液とともに、ライン60、冷却器55 及びライン61を通って排出されるが、この場合、気化した反応液の少なくとも一部は冷却器55で凝縮され、 反応器内に戻される。 反応液はライン59を通って反応器から抜出される。 【0081】次に、このような反応器(反応装置)を用いた本発明のカルボニル化合物の製造方法として、酢酸の製造方法を好適例な一例として取り挙げ、図4〜図7 を参照しつつ詳細に説明する。 【0082】図4は、本発明の酢酸の製造方法の一例を示すフローシート(特に発明の要部を示す)である。 この図において、反応器1の中には、前述したようにロジウム錯体を担持させたピリジン環を有する多孔質架橋構造からなるカルボニル化反応用固体触媒が投入されている。 そして、この反応器1の中で、ヨウ化メチルの存在下、反応溶媒中でメタノールおよびジメチルエーテルのなかから選ばれる被カルボニル化原料と、一酸化炭素を反応させて酢酸が製造される。 このような酢酸を含む液体反応生成物は、反応器1に連結される反応生成物抜き出しライン71より抜き出される。 なお、反応生成物(液)には、酢酸、酢酸メチル、ジメチルエーテル、プロピオン酸、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、ロジウム錯体、メタノール等が含有されており、ロジウム錯体の含有量は、金属ロジウム換算で、0.02〜20wtpp m、通常、0.2〜5wtppm程度である。 【0083】反応生成物抜き出しライン71には、脱圧装置73が介在されており、これにより反応生成物の脱圧(通常、脱圧は5気圧以下にされる)が行なわれ、次工程での分離操作を可能にしている。 すなわち、脱圧された反応生成物は、ライン71を経て蒸発槽75(フラッシャー)に導入され、ここで気−液分離が行われ、反応生成液蒸発物(気相成分)はライン77を介して分離塔としての蒸留塔90に導入される。 さらに、蒸発槽7 5(フラッシャー)の底部からは、反応生成液の蒸発残液がライン79を介して抜き出され、反応器1の底部に戻される(ライン79b)。 この一方で、ライン79を介して抜き出された蒸発残液の一部は図示のごとくライン79aとこのライン79aに介在された加熱器72 (熱交換器)を介して蒸発槽75(フラッシャー)に戻される。 【0084】一方、反応器1の上部からライン81を介して抜き出される反応生成ガスは、主成分として一酸化炭素を含み、さらに、水素、メタン、CO 2 、ヨウ化メチルを含み、これらはスクラバー80に導入され、ここで塔頂側から導入されたメタノールにより向流接触させられ、反応系から同伴したヨウ化メチル、酢酸メチルなどの軽質分が回収される。 向流接触させられた後の気体は、塔頂より抜き出され、ライン85を介して圧力コントロール弁86にて脱圧後の分離塔への供給ライン、すなわち、蒸発槽75(フラッシャー)の下部循環ライン79に供給される。 分離器としての蒸発槽75(フラッシャー)では、ロジウム錯体は高沸点留分へ分離濃縮され、ライン79から反応器1へ循環される。 従って、ライン79におけるロジウム錯体の濃度は、0.03〜2 00wtppm(ロジウムとして)、通常、0.3〜5 0wtppm程度である。 【0085】前記反応器1の上部からのライン81における圧力は、例えば、42.0Kg/cm 2 G程度と高圧であり、温度は、例えば40℃程度である。 従って、 スクラバー80より抜き出される気体は高圧を維持した状態にあり、しかも主成分は未反応の一酸化炭素(C O)である。 それゆえ、スクラバー80より抜き出される気体を脱圧後の分離塔への供給ライン(厳密には、下部循環ライン79)に供給することにより、脱圧後の反応生成液中の一酸化炭素分圧を上げることができ、反応生成液の蒸発残液中にわずかに遊離しているロジウム錯体を析出(例えば、ヨウ化ロジウム(RhI 3 )として析出)させることなく、ライン79,79bを介して反応器1に再循環させることができる。 これにより、ロジウム錯体の損失を防止することができる。 脱圧後の反応生成液中に付加する一酸化炭素分圧は、上記のロジウム錯体の析出を防止できる範囲で行えばよい。 一酸化炭素分圧は、0.02〜3atm、通常、0.1〜1.5a tmの範囲で制御される。 【0086】この一方で、スクラバー80の底部より抜き出されたスクラバー抜出液混合物は、通常、ライン8 6によって、メタノール供給ライン82に戻される。 【0087】フラッシュ後のライン77を介して分離塔としての蒸留塔90に導入された反応生成液蒸発物中の酢酸は、蒸留塔90によって精製され、プロダクトライン99から抜き出される。 なお、蒸留塔90を低沸点成分除去用の低沸塔(第一の蒸留塔)とし、さらに、製品溶液中の水を分離するための脱水塔(第二の蒸留塔)、 および高沸点成分除去用の高沸塔(第三の蒸留塔)を順次連結してもよい。 【0088】蒸留塔90の塔頂から抜き出される低沸点成分は、ライン93を介してスクラバー100に導入され、ここで前記スクラバー80と同様にメタノールによりスクラバー処理される。 ライン93における圧力は、 例えば、0.3Kg/cm 2 G程度と比較的低圧であり、温度は例えば15℃程度である。 【0089】この一方で、蒸留塔90の底部から抜き出される液成分は、ライン95を介して反応器1に戻される。 【0090】なお、図4に示される実施例では、好適な実施態様として、スクラバー80より抜き出される気体(特に、一酸化炭素)を回収し、このものを脱圧後の分離塔への供給ラインに供給し、脱圧後の反応生成液中の一酸化炭素分圧を高くする構成を採択している。 しかしながら、スクラバー80により反応生成ガスから一酸化炭素を回収するという概念を外れ、回収された一酸化炭素に変えて別途新たな一酸化炭素を用いることも可能である。 【0091】図5は、本発明の酢酸の製造方法の他の一例を示すフローシートである。 図5において、前記図4 と同一の符号のものは、実質的に同一の部材および装置を示している。 図5に示される酢酸の製造方法においても図4のそれと同様に、脱圧後、分離塔への供給ラインに一酸化炭素を含むガスを供給している点では同じである。 しかしながら、図5に示される方法は、減圧後、分離塔への供給ライン71中に加熱器72(熱交換器)および蒸発槽75(フラッシャー)が順次介在させ、加熱器72の上流側にスクラバー80から回収した一酸化炭素を含むガスをライン85を介して供給している点で異なる。 【0092】図6もまた、本発明の酢酸の製造方法の他の一例を示すフローシートである。 図6において、前記図4および図5と同一の符号のものは、実質的に同一の部材および装置を示している。 図6に示される酢酸の製造方法においても図4および図5のそれらと同様に、脱圧後、分離塔への供給ラインに一酸化炭素を含むガスを供給している点では同じである。 しかしながら、図6に示される方法は、減圧後、分離塔への供給ライン71中に蒸発槽(フラッシャー)は設けることなく、加熱器7 2(熱交換器)を介在させ、加熱器72の上流側にスクラバー80から回収した一酸化炭素を含むガスを、ライン85を介して供給している点で異なる。 この場合、蒸発槽(フラッシャー)を用いていないので、反応生成物は分離塔としての蒸留塔90の底部(最下段)に供給される。 この場合、ロジウム錯体の回収は蒸留塔90底部からの抜き出しライン95により行われる。 【0093】図7もまた、本発明の酢酸の製造方法の他の一例を示すフローシートである。 図7において、前記図4〜図6と同一の符号のものは、実質的に同一の部材および装置を示している。 図7に示される酢酸の製造方法においては、分離塔への供給ライン71に一酸化炭素を含むガスを供給しているのではなく、分離塔としての蒸留塔90の底部、特に、加熱器72(熱交換器)を含む蒸留塔90底部の循環ライン88に一酸化炭素を含むガスを(ライン85より)供給している。 この場合、ロジウム錯体の回収は蒸留塔90底部からの抜き出しライン95により行われる。 【0094】本発明においては、図4〜図7に示される好適な実施態様のうちいずれの方法を用いてもよい。 【0095】 【発明の効果】本発明は、貴金属錯体を担持させたピリジン環を有する多孔質架橋構造をもつ樹脂からなるカルボニル化反応用固体触媒を用い、アルコール類、エーテル類およびオレフィン類のなかから選ばれる被カルボニル化原料と、一酸化炭素とを反応させてカルボニル化合物を製造する方法において、反応器から抜き出された反応生成物を脱圧する工程と、脱圧後、分離塔への供給ラインに一酸化炭素を含むガスを供給する工程とを備えるように構成しているので、ロジウム錯体などの貴金属錯体を含む反応生成液から酢酸などのカルボニル化合物を分離回収するために反応生成液を一旦反応器より抜き出した後、貴金属錯体を析出させることなく、反応器に回収することができる。 従って、貴金属錯体の損失は極めて少ない。 また、反応器の塔頂より気相成分として抜き出される一酸化炭素を、分圧を高めるための供給ガスとして利用することにより、製造プロセスの効率化が有効に図られる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明で好適に用いられる反応器(反応装置) の一例として示された攪拌混合反応器の模式図である。 【図2】本発明で好適に用いられる反応器(反応装置) の一例として示された外部循環式の気泡塔型反応器の模式図である。 【図3】本発明で好適に用いられる反応器(反応装置) の一例として示された内部循環式の気泡塔型反応器の模式図である。 【図4】本発明のカルボニル化合物の製造方法の一例を示す(特に、発明の要部を示す)フローシートである。 【図5】本発明のカルボニル化合物の製造方法の一例を示す(特に、発明の要部を示す)フローシートである。 【図6】本発明のカルボニル化合物の製造方法の一例を示す(特に、発明の要部を示す)フローシートである。 【図7】本発明のカルボニル化合物の製造方法の一例を示す(特に、発明の要部を示す)フローシートである。 【符号の説明】 1…反応器(反応装置) 72…加熱器(熱交換器) 73…減圧装置 75…蒸発槽(フラッシャー) 80,100…スクラバー 90…分離塔(蒸留塔) ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中川 義広 神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央二丁目12番 1号 千代田化工建設株式会社内 (72)発明者 杉山 秀樹 神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央二丁目12番 1号 千代田化工建設株式会社内 |