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放射性セシウムの除去方法および処理施設

阅读:424发布:2024-02-28

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処理対象物から放射性セシウムを除去する放射性セシウムの除去方法であって、 2種類以上の塩化物の組み合わせからなり、かつそれぞれ単独の塩化物よりも融点が低下された混合物または複塩を含む、セシウムの分離促進剤を上記処理対象物に添加して、含有カルシウム量が酸化カルシウム濃度に換算して1〜2.5(wt%)である、上記分離促進剤と上記処理対象物の混合物を得る添加工程と、 上記混合物を900℃以上1000℃以下で加熱して、当該処理対象物から放射性セシウムを揮発させる加熱工程と、を含み、 上記加熱工程後の処理物に残存する放射性セシウムのうち、上記処理対象物中の溶性の放射性セシウムの量が、当該処理対象物中の全放射性セシウムの量の1/5以下となるように、上記添加工程における上記分離促進剤の添加量が、上記処理対象物と上記分離促進剤を混合した混合物におけるCl濃度が0.9〜1.5(wt%)となるように設定され、上記加熱工程における加熱時間が2〜4時間に設定されており、 上記加熱工程後の処理物の放射性セシウム濃度が所定の基準値以下であれば、当該加熱工程後の処理物からの放射性セシウムの除去を終了し、 上記加熱工程後の処理物の放射性セシウム濃度が上記所定の基準値を超えていれば、当該加熱工程後の処理物を水洗浄することなく溶融処理する、ことを特徴とする放射性セシウムの除去方法。上記加熱工程後の処理物に残存する放射性セシウムのうち、水溶性の放射性セシウムが1500Bq/kg以下となるように、上記添加工程における上記分離促進剤の添加量と、上記加熱工程における加熱時間とが設定されていることを特徴とする請求項1に記載の放射性セシウムの除去方法。上記分離促進剤は、NaClとCaCl2とを含む、融点が600℃以下の混合物または複塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の放射性セシウムの除去方法。上記加熱工程で上記処理対象物から揮発した放射性セシウムを含む飛灰を洗浄液で洗浄して該飛灰から放射性セシウムを除去する洗浄工程をさらに含み、 洗浄後の上記飛灰の放射性セシウム濃度が所定の基準値以下であれば、当該飛灰からの放射性セシウムの除去を終了し、 洗浄後の上記飛灰の放射性セシウム濃度が所定の基準値を超えていれば、当該飛灰を溶融処理し、 上記加熱工程後の処理物は、焼却主灰であり、 上記飛灰は、上記加熱工程で発生した排ガス中の固形物である、ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の放射性セシウムの除去方法。上記加熱工程で上記処理対象物から揮発した放射性セシウムを含む飛灰を洗浄液で洗浄して該飛灰から放射性セシウムを除去する洗浄工程と、 上記洗浄工程で使用した洗浄液にフェロシアン化カリウムおよび硫酸第二鉄を供給して、放射性セシウムを含んだプルシアンブルーを生成する共沈工程と、 放射性セシウムを含んだ上記プルシアンブルーをアルカリ分解した溶液とゼオライトとを接触させ、該溶液中の放射性セシウムをゼオライトに吸着させる吸着工程と、 放射性セシウムを吸着した上記ゼオライトを加熱して放射性セシウムを焼成固定する焼成固定工程と、を含み、 上記加熱工程後の処理物は、焼却主灰であり、 上記飛灰は、上記加熱工程で発生した排ガス中の固形物である、ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の放射性セシウムの除去方法。上記溶液を電気透析に供して放射性セシウムの濃度を高める濃縮工程をさらに含み、 上記吸着工程では、上記濃縮工程で放射性セシウムの濃度が高まった上記溶液から放射性セシウムをゼオライトに吸着させることを特徴とする請求項5に記載の放射性セシウムの除去方法。上記吸着工程で放射性セシウムがゼオライトに吸着された後の上記溶液をろ過した上で、上記加熱工程で発生した排出ガスの冷却に用いる冷却水として用いることを特徴とする請求項5または6に記載の放射性セシウムの除去方法。処理対象物から放射性セシウムを除去する処理施設であって、 2種類以上の塩化物の組み合わせからなり、かつそれぞれ単独の塩化物よりも融点が低下された混合物または複塩を含む、セシウムの分離促進剤を上記処理対象物に添加して、含有カルシウム量が酸化カルシウム濃度に換算して1〜2.5(wt%)である、上記分離促進剤と上記処理対象物の混合物を得る添加装置と、 上記混合物を900℃以上1000℃以下で加熱して、当該処理対象物から放射性セシウムを揮発させる加熱炉と、を含み、 上記加熱炉での加熱後の処理物に残存する放射性セシウムのうち、上記処理物中の水溶性の放射性セシウムの量が、当該処理物中の全放射性セシウムの量の1/5以下となるように、上記添加装置が添加する上記分離促進剤の添加量が、上記処理対象物と上記分離促進剤を混合した混合物におけるCl濃度が0.9〜1.5(wt%)となるように設定され、上記加熱炉における加熱工程における加熱時間が2〜4時間に設定されており、 上記加熱工程後の処理物の放射性セシウム濃度が所定の基準値以下であれば、当該加熱工程後の処理物からの放射性セシウムの除去を終了し、 上記加熱工程後の処理物の放射性セシウム濃度が上記所定の基準値を超えていれば、当該加熱工程後の処理物を水洗浄することなく溶融処理する、ことを特徴とする処理施設。

说明书全文

本発明は、加熱処理により処理対象物から放射性セシウムを除去する放射性セシウムの除去方法等に関する。

従来、放射性セシウムを含む処理対象物に放射性セシウムの分離促進剤を添加して加熱処理することにより放射性セシウムを塩化揮発させる技術が知られている。例えば、下記の特許文献1には、特定の組成の分離促進剤を用いることにより、比較的低温の加熱により、高い除去率で廃棄物から放射性セシウムを除去する技術が開示されている。

特開2016−8963号公報(2016年1月18日公開)

特許文献1の技術では、1100℃の焼却温度では高い除去率となっている。しかし、それより低い温度では、900℃を超えるような焼却温度であっても、溶性の放射性セシウムが焼却灰や土壌等の処理物中に残るため、焼却後に処理物の水洗浄が必要になる場合があるという問題がある。

そこで、本発明の一態様は、そのような比較的低い温度で処理対象物中の放射性セシウムの多くを加熱揮発させることができる放射性セシウムの除去方法等を実現することを目的とする。

上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、処理対象物から放射性セシウムを除去する放射性セシウムの除去方法であって、2種類以上の塩化物の組み合わせからなり、かつそれぞれ単独の塩化物よりも融点が低下された混合物または複塩を含む、セシウムの分離促進剤を上記処理対象物に添加して、含有カルシウム量が酸化カルシウム濃度に換算して5重量%以下である、上記分離促進剤と上記処理対象物の混合物を得る添加工程と、上記混合物を900℃以上1000℃以下で加熱して、当該処理対象物から放射性セシウムを揮発させる加熱工程と、を含み、上記加熱工程後の処理物に残存する放射性セシウムのうち、上記処理物中の水溶性の放射性セシウムの量が、当該処理物中の全放射性セシウムの量の1/5以下となるように、上記添加工程における上記分離促進剤の添加量と、上記加熱工程における加熱時間とが設定されている。

また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る処理施設は、処理対象物から放射性セシウムを除去する処理施設であって、2種類以上の塩化物の組み合わせからなり、かつそれぞれ単独の塩化物よりも融点が低下された混合物または複塩を含む、セシウムの分離促進剤を上記処理対象物に添加して、含有カルシウム量が酸化カルシウム濃度に換算して5重量%以下である、上記分離促進剤と上記処理対象物の混合物を得る添加装置と、上記混合物を900℃以上1000℃以下で加熱して、当該処理対象物から放射性セシウムを揮発させる加熱炉と、を含み、上記加熱炉での加熱後の処理物に残存する放射性セシウムのうち、上記処理物中の水溶性の放射性セシウムの量が、当該処理物中の全放射性セシウムの量の1/5以下となるように、上記添加装置が添加する上記分離促進剤の添加量と、上記加熱炉の加熱時間とが設定されている。

本発明の一態様によれば、900℃以上1000℃以下という比較的低い温度で処理対象物中の放射性セシウムの多くを加熱揮発させることができるという効果を奏する。

本発明の一実施形態に係る処理施設における処理の流れを示す図である。

処理施設の概略構成を示す図である。

低融点塩化物の組成と融点とを示す図である。

NaCl−CaCl

2の相平衡図である。

本発明の実施例および比較例における処理対象物である廃棄物の組成を示す図である。

試験条件と試験結果とを示す図である。

本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、処理対象物から放射性セシウムを除去する放射性セシウムの除去方法であって、2種類以上の塩化物の組み合わせからなり、かつそれぞれ単独の塩化物よりも融点が低下された混合物または複塩を含む、セシウムの分離促進剤(以下、単に分離促進剤と呼ぶ)を上記処理対象物に添加して、含有カルシウム量が酸化カルシウム濃度に換算して5重量%以下である、上記分離促進剤と上記処理対象物の混合物を得る添加工程と、上記混合物を900℃以上1000℃以下で加熱して、当該処理対象物から放射性セシウムを揮発させる加熱工程と、を含む。なお、本発明の一態様においては、加熱工程および添加工程の他に、必要に応じて、洗浄工程、共沈工程、吸着工程、濃縮工程、除去工程、捕集工程を含んでもよい。各工程については後述する。

以下、本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法の一実施形態について説明する。本実施形態に係る処理施設100は、放射性のセシウム(Cs)を含む処理対象物に分離促進剤を添加して加熱処理することにより、処理対象物の放射性セシウム含量を低下させ、また処理対象物を減容化する施設である。放射性セシウム含量を低下させた処理物は、再生資源として利用することも可能である。

〔処理施設における処理の流れ〕 図1を参照して、処理施設100における処理の流れを説明する。図1は、処理施設100における処理例を示す図である。

(S1:破砕工程) 本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、破砕工程を含んでもよい。放射性セシウムを含む、除染廃棄物、片付けごみ、災害廃棄物等の処理対象物が、例えばフレキシブルコンテナ等の荷姿で処理施設100に搬送される。処理施設100では、まず、破砕処理を行ない、これらの処理対象物を破砕する。本実施形態では、処理対象物が可燃物であり、これを焼却することを想定しているから、処理対象物は焼却対象物とも言える。

なお、上記処理対象物は、放射性セシウムを含む、土壌、下水汚泥、あるいは別工程で発生した焼却主灰や焼却飛灰等であってもよい。また、上記処理対象物は、放射性セシウムをほとんど含まない部分(例えば、土壌の場合、砂、石)を予め取り除いて得られる、放射性セシウムが濃縮された中間処理物であってもよい。

(S2:添加工程) 本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は添加工程を含む。添加工程では、2種類以上の塩化物を含み、かつそれぞれ単独の塩化物よりも融点が低下された混合物または複塩を含む分離促進剤を処理対象物に添加する。添加工程では、後述する加熱工程後の処理物に残存する放射性セシウムが、ほぼ非水溶性の放射性セシウムとなるように、分離促進剤の添加量が設定されていることが好ましい。なお、処理物中に残存する放射性セシウムが、ほぼ非水溶性の放射性セシウムとなる、とは、例えば処理物中に残存する全放射性セシウムのうち、水溶性の放射性セシウムが1/5以下であることを指す。分離促進剤の添加量が少なすぎても多すぎても、残存する放射性セシウムが、ほぼ非水溶性の放射性セシウムとはならない。このため、例えば、分離促進剤の添加量が異なる各条件下で処理対象物を加熱し、加熱工程後の処理物に残存する放射性セシウムに占める非水溶性の放射性セシウムの割合を算出して、適切な分離促進剤の添加量を決めればよい。

分離促進剤とは、放射性セシウムを含む処理対象物からの放射性セシウムの加熱分離を促進するものである。本発明の一態様で用いる分離促進剤は、2種類以上の塩化物を用いて調製した、融点が600℃以下である低融点塩化物を含む。分離促進剤には、塩素源としての上記低融点塩化物が少なくとも含まれていればよい。また、処理対象物からの放射性セシウムの除去率を向上させるという観点から、分離促進剤にはカルシウム源がさらに含まれていることが好ましい。より詳細には、分離促進剤は、該分離促進剤を添加した後の処理対象物中のカルシウム濃度が、CaO換算で5wt%(重量%)以下になるように調製されている。また、カルシウム濃度は、CaO換算で1〜2.5wt%になるように調製されていることが好ましい。カルシウム源としては、例えば、塩化カルシウム、消石灰(水酸化カルシウム)、生石灰(酸化カルシウム)、および炭酸カルシウムの少なくとも何れかを用いることができる。

また、分離促進剤は、該分離促進剤を添加した後の処理対象物中のCl濃度が0.9wt%以上となるように塩素源の量が設定されていることが好ましく、0.9〜1.5wt%になるように塩素源の量が設定されていることがさらに好ましい。塩素源としては、例えば塩化カルシウムおよび塩化ナトリウム等の塩化物を含む低融点塩化物が好適である。例えば、NaClとCaCl2とを含む、融点が600℃以下の混合物または複塩を分離促進剤として用いてもよい。この場合、融点は600℃以下で低いほど好ましく、例えば500℃程度の融点のものを用いることが好ましい。本実施形態の添加工程では、破砕した処理対象物に分離促進剤を添加する。

(S3:焼却工程) 本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は加熱工程を含む。加熱工程は、分離促進剤が添加された処理対象物を加熱して、当該処理対象物から放射性セシウムを揮発させる工程である。加熱工程では、900℃以上1000℃以下の温度で処理対象物と分離促進剤の混合物を加熱する。また、加熱工程では、加熱工程後の処理物に残存する放射性セシウムがほぼ非水溶性の放射性セシウムとなるように加熱時間が設定されていることが好ましい。具体的には、加熱時間は2時間以上4時間以下とすることが好ましい。

本実施形態では上記加熱工程を焼却工程と称する。焼却工程では、分離促進剤を添加した処理対象物を焼却する。焼却により、処理対象物に含まれる放射性セシウムが、加熱工程後の処理物である焼却主灰中に水溶性の塩化セシウム(CsCl)として取り込まれる。焼却主灰中に、水溶性のCsClとして取り込まれた放射性セシウムの多くは、焼却主灰から塩化揮発して、排ガス中に含まれる。残りの放射性セシウムは、焼却主灰中に一部水溶性のCsClとして残留する。

処理対象物に含まれる放射性セシウムの大部分が揮発すると共に、焼却主灰中に残留する放射性セシウムがほぼ非水溶性の放射性セシウムになるように、S2における分離促進剤の添加量と、S3における焼却温度および焼却時間が設定されていることが好ましい。これにより、焼却工程で生じる焼却主灰を、水洗浄処理することなくそのまま処分したり、あるいは水洗浄処理することなく溶融処理によって放射性セシウム濃度を低減した上で再資源化したりすることが可能になる。水洗浄処理が不要であることにより、水洗浄処理後の乾燥処理も不要になり、工程数および処理対象物の処理費用が削減される。また、分離促進剤の添加量と焼却時間は、加熱工程後の処理物に残存する放射性セシウムのうち、水溶性の放射性セシウムが1500Bq/kg以下となるように設定されていることが好ましい。本発明の発明者らの研究の結果、分離促進剤の添加量が多すぎると残存する水溶性の放射性セシウムの量が増え、焼却時間を長くすると残存する水溶性の放射性セシウムの量が減ることが分かっている。このため、例えば処理対象物を加熱し、加熱工程後の処理物に残存する水溶性の放射性セシウム量を測定して、1500Bq/kg超であれば、分離促進剤の添加量を減らす、および焼却時間を長くする、の少なくとも何れかを適用することを繰り返してもよい。これにより、加熱工程後の処理物に残存する水溶性の放射性セシウム量が1500Bq/kg以下となるように分離促進剤の添加量と焼却時間を設定することができる。

(S4:冷却工程) 本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、冷却工程を含んでもよい。冷却工程では、処理対象物を焼却することによって排出された排ガスを冷却する。排ガスの冷却は、冷却水により行われる構成であってもよいし、冷却空気により行われる構成であってもよいし、冷却水と冷却空気とを併用して行われる構成であってもよい。排ガスを冷却することにより、排ガスに含まれていたCsCl等のガス状の塩類が、固形の塩類となる。

(S5:剥離剤添加工程) 本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、剥離剤添加工程を含んでもよい。剥離剤添加工程では、冷却により発生した固形の塩類を含む排ガスに剥離剤(ろ過助剤)を添加する。この剥離剤により、後述する除じん工程において、圧損失の低減や除じん飛灰の剥離が容易になる。

(S6:第1除じん工程) 本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、第1除じん工程を含んでもよい。第1除じん工程では、排ガス中から塵状の固形物を除じんする。ここでは、排ガスに含まれていたばい塵やセシウム塩(CsCl)などの固形物が除じん飛灰として捕集される。

(S7:飛灰洗浄工程) 本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、加熱により処理対象物から揮発した放射性セシウムを含む加熱処理物を洗浄液で洗浄して該加熱処理物から放射性セシウムを除去する洗浄工程を含んでもよい。

本実施形態における上記加熱処理物は除じん飛灰であるから、本実施形態では上記洗浄工程を飛灰洗浄工程と称する。飛灰洗浄工程では、S6で捕集した除じん飛灰を洗浄液(例えば水)で洗浄する。この除じん飛灰には、セシウムが高濃度で含まれている。洗浄には、例えば洗浄槽を用いることができる。洗浄により、除じん飛灰中の放射性セシウムのうち、水溶性であり高溶出の放射性セシウム(主にCsCl)が水相に移行し、これにより除じん飛灰における放射性セシウム量を低減する。なお、水洗浄により8〜9割あるいはそれ以上の放射性セシウムを除じん飛灰から除去することができることが知られている。

ここで、洗浄後の放射性セシウム濃度が、放射性物質汚染対処特措法に定められた埋め立て処分する廃棄物におけるセシウム濃度の基準値である8,000(Bq/kg)以下であれば、洗浄後の除じん飛灰はそのまま処分可能である。一方、洗浄後の放射性セシウム濃度が基準値を超えていれば、溶融処理により減容化すると共に、放射性セシウム濃度をさらに低下させる。なお、基準値は、上記の例に限られず、法令等や処分の方法等に応じた基準値を用いて、そのまま処分するか溶融処理に供するかを判定してもよい。例えば、廃棄物を安全に再利用できる基準として、原子力等規制法に基づくクリアランス基準に定められた100(Bq/kg)のような低い値の基準値を用いてもよい。

(S8:共沈工程) 本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、除じん飛灰等の洗浄で使用した洗浄液にフェロシアン化カリウムおよび硫酸第二鉄を供給して、放射性セシウムを含んだプルシアンブルー(PB)を生成する共沈工程を含んでもよい。共沈工程では、S7で生じた放射性セシウムを含む洗浄液から、PB液中における合成化学共沈反応により、放射性セシウムを含むPBを得る。具体的には、S7で生じた放射性セシウムを含む洗浄液を原水槽に送り、その原水槽にフェロシアン化カリウムと硫酸第二鉄を供給することによりPBを生成する。そして、PBは放射性セシウムを吸着して凝集し、沈殿するので、これにより洗浄液から放射性セシウムを含むPBが分離される。この際、無機あるいは有機の凝集沈殿材を添加してもよい。これにより、放射性セシウムを含んだPBの分離効率をさらに向上させることができる。

(S9:濃縮・吸着工程) 本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、放射性セシウムを含んだ溶液を電気透析に供して放射性セシウムの濃度を高める濃縮工程を含んでもよい。また、本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、放射性セシウムを含んだPBをアルカリ分解した溶液とゼオライトとを接触させ、該溶液中の放射性セシウムをゼオライトに吸着させる吸着工程を含んでもよい。濃縮工程は、例えば下記(i)〜(iii)の処理を繰り返すものであってもよい。

(i)放射性セシウムを含んだPBをアルカリ分解する。例えば、放射性セシウムを含んだPBをアルカリ分解槽に供給し、そのアルカリ分解槽にアルカリを添加して、放射性セシウムを含んだPBをフェロシアン化鉄イオンと放射性セシウムイオンに分解する。

(ii)上記(i)で得られた溶液をフェロシアン化鉄イオンとセシウムイオンを分離する。この分離には、例えば、陰極室と陽極室とが陽イオン交換膜で仕切られた電気透析槽を用いることができる。

(iii)上記(ii)で得られた、セシウムイオンを含む溶液をS8の原水槽に戻す。セシウムイオンは、陽イオンであり、陽イオン交換膜を透過して電気透析槽の陰極室に集まるから、電気透析槽の陰極側の溶液を原水槽に戻す。

上記(i)〜(iii)のステップを繰り返すことにより、セシウムイオンを高濃度に含む溶液が得られる。所定の濃度まで濃縮された溶液が得られた段階で、その溶液を吸着工程に供する。吸着工程では、例えばゼオライトの吸着槽に上記溶液を供給し、該吸着槽内のゼオライトに放射性セシウムを吸着させる。これにより、上記溶液からは放射性セシウムが除去される。

(S10:焼成固定工程) 本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、放射性セシウムを吸着したゼオライトを加熱して放射性セシウムを焼成固定する焼成固定工程を含んでもよい。焼成固定工程では、S9で得られた、放射性セシウムを吸着したゼオライトを焼成固定する。焼成温度は例えば1000℃以上である。これにより、放射性セシウムが溶出し難い状態となり、焼成固定後のゼオライトは、安定な最終廃棄体として最終処分が可能となる。

(S11:処理剤添加工程) 本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、塩化水素と反応する排ガス処理用薬剤である処理剤(以下、単に処理剤と呼ぶ)を、処理対象物の加熱で発生した排出ガスに供給して、該排出ガスから少なくとも塩化水素を除去する除去工程を含んでもよい。本実施形態では上記除去工程を処理剤添加工程と称する。

処理剤添加工程では、S6で除じん飛灰を取り除いた後の排ガスに処理剤を添加する。除じん飛灰を取り除いた後の排ガスには、塩化水素(HCl)や二酸化硫黄(SO2)などの酸性ガスが含まれている。また、ダイオキシン等の有毒物質が含まれていることもある。処理剤は、排ガスから上述の酸性ガスや有毒物質を除去するために添加されるものであり、例えば、消石灰、重曹、および活性炭などを含むものであってもよい。処理剤は、排ガス中に含まれたHClなどの酸性ガスと反応して固体の塩となる。また、ダイオキシン等は活性炭に吸着される。

(S12:第2除じん工程) 本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、塩化水素等と反応した処理剤を少なくとも含む脱塩飛灰を捕集する捕集工程を含んでもよい。本実施形態では上記除去工程を第2除じん工程と称する。

第2除じん工程では、HClなどの酸性ガスと反応することによって生じた処理剤の反応生成物と、未反応の処理剤とを含む脱塩飛灰を排ガス中から除じんする。除じんによって捕集された脱塩飛灰は、塩化物を含む。例えば、処理剤に消石灰が含まれている場合、消石灰とHClが反応して塩化カルシウムが生成される。塩化カルシウムは、分離促進剤として機能するので、塩化カルシウムを含む脱塩飛灰は、S2で添加する分離促進剤として利用することができる。脱塩飛灰は、分離促進剤の少なくとも一部として利用すればよく、例えば脱塩飛灰に他の塩化物を加えて組成を調整した上で利用してもよい。なお、S6で除じん飛灰が捕集され、S12で脱塩飛灰が捕集された後の浄化された排ガスは、空気中に排出される。

(S13:溶融工程) 本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、溶融工程を含んでもよい。焼却工程(S3)で生じる焼却主灰は、放射性セシウム濃度が基準値以下であれば、そのまま処分することができる。つまり、焼却主灰の放射性セシウム濃度が基準値以下であれば放射性セシウムの除去を終了する。一方、放射性セシウム濃度が基準値を超えていれば、溶融工程における溶融処理により減容化すると共に、放射性セシウム濃度をさらに低下させる。溶融工程で生成される、放射性セシウム濃度が基準値以下となった溶融スラグは、土木資源などとして再資源化することができる。

以上説明した本実施形態に係る放射性セシウムの除去方法によれば、使用する分離促進剤と焼却条件を適切にコントロールして、処理対象物に含まれる放射性セシウムの大部分(例えば90%以上)を揮発させることができる。そして、これにより焼却主灰における放射性セシウムの含有量を低く抑えることができる。このため、焼却主灰を水洗浄する必要がなく、洗浄液の処理、洗浄後の焼却主灰の乾燥等にかかる各種コストが不要になる。

ここで、非特許文献である「溶融技術を用いたセシウム揮発分離におけるセシウム分離効率の向上に関する実験的検討」、釜田、西村、他、第1回環境放射能除染研究発表会、ポスターセッション、P-54、2012.5.20には、Cl濃度0.6%の実焼却灰を1450℃で溶融した場合には、セシウムの揮発率は約82%であるとの結果が示されている。

また、放射性セシウムを含む廃棄物を900℃程度で焼却した場合には、99%以上の放射性セシウムが焼却主灰中に残留するとの結果が出ている(後述の比較例3参照)。このため、上記廃棄物の放射性セシウム濃度が10,000Bq/kgであり、該廃棄物中の灰分が10wt%であると仮定すると、焼却主灰中の放射性セシウムは100,000Bq/kg程度になる。

このような焼却主灰を1450℃で溶融しても、焼却主灰中のCl濃度が0.6%程度であれば放射性セシウムの揮発率は82%(平衡状態では、ガス中のセシウム濃度は溶融スラグ中のセシウム濃度に正比例する)である。よって、溶融スラグの放射性セシウム濃度は、18,000Bq/kgとなる。このような溶融スラグは、放射性セシウム濃度が高すぎて、このままでは再生資材として利用することはできない。

これに対し、本実施形態に係る放射性セシウムの除去方法によれば、10,000Bq/kgの放射性セシウムを含む廃棄物を900℃程度で焼却した場合には、最大93.1%の放射性セシウムを揮発させることができる。この場合、廃棄物中の灰分を10wt%とすると、焼却主灰中の放射性セシウム濃度は約6,900Bq/kgになる。よって、この焼却主灰を1450℃で溶融することにより、溶融スラグ中の放射性セシウム濃度を1,242Bq/kgまで低減することができる。このような溶融スラグであれば、再生資材として利用可能である。このように、本実施形態に係る放射性セシウムの除去方法によれば、放射性セシウム濃度が1/10程度の資材を製造できる。なお、これらの試算には溶融時のスラグ化率は考慮していない。

また、上述のように、本実施形態に係る放射性セシウムの除去方法により、10,000Bq/kgの放射性セシウムを含む廃棄物を900℃程度で焼却した場合には、最大93.1%の放射性セシウムを揮発させることができる。焼却時の飛灰量を焼却量の1.5%と仮定(灰分10wt%、飛散による飛灰量を灰分の15%と仮定した)すると、飛灰中の放射性セシウム濃度は約620,700Bq/kgとなる。

ここで、処理対象物に低融点塩化物を含む分離促進剤を添加して焼却するため、排ガス中の塩化水素ガスは、1500〜2000ppmとなる。この濃度は、通常の都市ごみ焼却排ガスの4〜5倍程度になる。塩化セシウムは可溶性であり、塩化水素ガスの濃度が高いことは、放射性セシウムの溶出率を高めることに寄与すると考えられるため、上記飛灰中の放射性セシウムの溶出率は高くなると推定される。そこで、焼却飛灰の水洗浄によって95%の放射性セシウムが除去されると仮定すると、飛灰中の放射性セシウム濃度は約31,000Bq/kgとなる。また、焼却主灰と飛灰を7:3の割合で混合溶融する場合、溶融対象物中の放射性セシウムは14,130Bq/kgとなる。そして、1450℃で溶融した場合の溶融スラグ中の放射性セシウム濃度は2,543Bq/kgとなり、このような溶融スラグであれば、再生資材として利用可能である。また、さらなる放射性セシウムの低減が必要とされる場合には、溶融対象物にCaCl2と活性炭等を添加することで放射性セシウムの揮発率を99%以上にしてもよい。これにより、溶融スラグ中の放射性セシウム濃度を141Bq/kg程度まで減らすことが可能となる。この濃度は、原子力等規制法に基づくクリアランス基準に定められた100Bq/kgに近い値である。

〔処理施設の構成〕 次に図2を参照して、処理施設100の構成について説明する。処理施設100は、廃棄物を焼却処理する処理施設である。処理施設100は、破砕機2、廃棄物搬送装置3、廃棄物ピット4、クレーン5、焼却炉7、焼却主灰搬送装置9、ガス冷却塔10(10A、10B)、熱交換器11、集じん装置12(12A、12B、12C)、ホッパー15、溶融炉16、および冷却水槽17を備えている。さらに、処理施設100は、洗浄槽18、原水槽19、アルカリ分解槽22、陽極室26と陰極室27と、それらを仕切る陽イオン交換膜25とを備えた電気透析槽24、ゼオライト吸着槽28、ろ過装置30、および処理水槽31を備えている。

破砕機2は、処理対象物として受け入れた廃棄物1を破砕する機械である。図1の破砕工程(S1)は、破砕機2を用いて行うことができる。また、廃棄物搬送装置3は、破砕機2で破砕した廃棄物1を廃棄物ピット4に搬送するコンベヤ等の装置である。そして、廃棄物ピット4は、廃棄物搬送装置3によって搬送された破砕済みの廃棄物1を一時貯留する貯蔵所である。クレーン5は、廃棄物ピット4内に貯留された廃棄物1を、撹拌するとともに、焼却炉7に供給する機械である。

焼却炉7は、廃棄物1を焼却する設備である。焼却炉7は、例えば、ストーカ式焼却炉、ロータリーキルン型焼却炉、およびそれらを併用した焼却炉などであってもよい。図2の焼却炉7はストーカ式焼却炉である。図1の焼却工程(S3)は、焼却炉7を用いて行うことができる。なお、本実施形態の技術は、焼却炉7以外にも、焼成炉や、廃棄物または焼却灰(焼却主灰、焼却飛灰等の焼却によって生じる灰)用の溶融炉などにも適用可能な技術である。

なお、図1の添加工程(S2)は、廃棄物1を焼却炉7で焼却する焼却工程の前に行われる。例えば、分離促進剤6は、廃棄物ピット4内でクレーン5によって廃棄物1と混合撹拌されてもよい。また、例えば、分離促進剤6は、廃棄物1を焼却炉7に供給するための装置の前段にホッパーやシュートなどの装置を設けて、当該装置にコンベヤ等の搬送装置を用いて供給されてもよい。図2の例では、この方法で分離促進剤を添加している。さらに、例えば、分離促進剤6は、焼却炉7の温度域の比較的低いエリア、例えば、焼却炉7の廃棄物供給側に近いエリアである所謂乾燥段に直接供給されてもよい。

廃棄物1へ添加する分離促進剤6は、固形物、スラリー(懸濁体)、および、水溶液の少なくとも何れか1つである。どのようにして分離促進剤6を廃棄物1に添加するかに応じて、どのような形状・状態の分離促進剤6を用いるかを決めればよい。例えば、上述したように、廃棄物ピット4内で廃棄物1と分離促進剤6とを混合撹拌する場合には、分離促進剤6は固形物の形状であるのが望ましい。この場合に、スラリーまたは水溶液である分離促進剤6を用いると、分離促進剤6が廃棄物ピット4の底面に流下し、クレーン5での焼却炉7への搬送が困難になる可能性が考えられるためである。

また、焼却炉7の前段に搬送装置によって分離促進剤6を供給する場合には、分離促進剤6は、固形物またはスラリーとすることが望ましい。この場合に、水溶液である分離促進剤6を用いると、焼却炉の火格子間に分離促進剤6が流下して、分離促進剤6と廃棄物1とが混合できなくなる可能性が考えられるためである。

なお、焼却炉7に分離促進剤6を直接供給する場合には、分離促進剤6の形状に関わらず、焼却炉7からの輻射熱による設備の閉塞に注意をする必要がある。また、焼却炉7に水溶液の形状で分離促進剤6を噴霧して供給する場合には、焼却炉7の熱量低下による助燃使用量の増加に注意する必要がある。

焼却主灰搬送装置9は、分離促進剤6を含む廃棄物1を焼却炉7において焼却して捕集される焼却主灰8を搬送する装置である。焼却主灰搬送装置9は、例えばコンベア等であってもよい。焼却主灰搬送装置9は、焼却主灰8をホッパー15まで搬送する。なお、焼却主灰8の放射性セシウム濃度が基準値以下であれば、ホッパー15に搬送する必要はない。

ガス冷却塔10は、排ガスを冷却する設備である。処理施設100は、分離促進剤6を含む廃棄物1を焼却炉7において焼却することにより発生する排ガスを冷却するガス冷却塔10Aと、溶融炉16からの排ガスを冷却するガス冷却塔10Bを備えている。図1の冷却工程(S4)は、ガス冷却塔10Aを用いて行うことができる。ガス冷却塔10Aの内部には、処理水槽31内のろ液の一部が冷却水Bとして噴霧される。図示していないが、処理水槽31内のろ液は、ガス冷却塔10Bにおける冷却水として用いてもよい。

熱交換器11は、排ガスの排熱を回収する設備である。なお、図示は省略するが、熱交換器11によって回収された排熱を利用して、焼却炉で利用する燃焼空気の予熱、発電または給湯などを行うための排熱利用設備が、熱交換器11に連結されている構成であってもよい。

図示は省略するが、熱交換器11から排出された排ガスに剥離剤(ろ過助剤)13を供給する剥離剤供給装置が熱交換器11の下流に設けられている。図1の剥離剤添加工程(S5)は、ここで行われる。

集じん装置12は、排ガス中の固形物を捕集することにより、排ガスを除じんする装置である。処理施設100は、排ガス流路のより上流側に設置された1段目の集じん装置12Aと、その下流側に集じん装置12Aと直列に設置された2段目の集じん装置12Bを備えている。さらに、処理施設100は、溶融炉16からの排ガスの流路に設けられた集じん装置12Cを備えている。集じん装置12Cを通過した排ガスは、例えば、図2に示すように、集じん装置12Aを通過した排ガスと合せて処理剤で処理してもよい。これらの集じん装置12は、例えばバグフィルタであってもよい。

集じん装置12Aは、排ガス中に含まれるばい塵やセシウム塩(CsCl)などの固形物を集じんする。図1の第1除じん工程(S6)は、集じん装置12Aを用いて行うことができる。集じん装置12Aで捕集されたばい塵やセシウム塩(CsCl)などを含む除じん飛灰は、洗浄槽18に送られる。

図示は省略するが、集じん装置12Aと集じん装置12Bとの間には、集じん装置12Aを通過した排ガスに処理剤を供給する薬剤供給装置が設けられている。処理剤は、消石灰、重曹、活性炭などを含む薬剤である。処理剤の供給は噴霧によって行ってもよい。図1の処理剤添加工程(S11)は、この薬剤供給装置によって行われる。集じん装置12Aを通過した排ガス中に含まれる塩化水素などの酸性ガスやダイオキシンは、薬剤供給装置が供給する処理剤との化学反応や吸着によって除去される。

集じん装置12Bは、処理剤と反応あるいは吸着した反応生成物を含む脱塩飛灰を捕集する。図1の第2除じん工程(S12)は、集じん装置12Bを用いて行うことができる。上述のように、上記脱塩飛灰は、S2で添加する分離促進剤として利用することができる。よって、集じん装置12Bで捕集された脱塩飛灰を、分離促進剤6として処理対象物に添加してもよい。集じん装置12Bを通過した排ガスは、煙突から空気中に排出される。

ホッパー15は、焼却主灰搬送装置9により搬送された焼却主灰8を収容し、適時に溶融炉16に送り込むための装置である。溶融炉16は、焼却主灰8を溶融するための炉である。図1の溶融工程(S13)は、溶融炉16を用いて行うことができる。溶融炉16から排出される排ガスはガス冷却塔10に送られる。また、溶融炉16で溶融された焼却主灰8は冷却水槽17に送られる。冷却水槽17は、溶融された焼却主灰8を冷却するための冷却水を収容した水槽であり、溶融された焼却主灰8は、冷却水槽17で冷却され、溶融スラグとして回収される。この溶融スラグは、再生資材(例えば盛土や路盤材など)として利用可能である。

洗浄槽18は、除じん飛灰を洗浄液(例えば水)で洗浄するための水槽である。図1の飛灰洗浄工程(S7)は、洗浄槽18を用いて行うことができる。洗浄槽18では、集じん装置12Aで捕集された除じん飛灰の洗浄を行うことができると共に、溶融炉16の排ガス流路に設けられた集じん装置12で捕集された溶融飛灰の洗浄も行うことができる。洗浄槽18で洗浄後の飛灰は、放射性セシウム濃度が基準値以下であれば放射性セシウムの除去を終了して処分に回せばよく、基準値を超えていれば溶融処理に供せばよい。

原水槽19は、PB(プルシアンブルー)液中における合成化学共沈反応の反応槽である。図1の共沈工程(S8)は、原水槽19を用いて行うことができる。洗浄槽18から排出される、放射性セシウムを含む洗浄液が原水槽19に収容される。この洗浄液が収容された原水槽19にフェロシアン化カリウム20と硫酸第二鉄21を供給することにより、放射性セシウムを含むPBを分離することができる。

アルカリ分解槽22は、放射性セシウムを含むPBをアルカリ分解するための反応槽である。原水槽19における合成化学共沈反応により得られた放射性セシウムを含むPBをアルカリ分解槽22に収容し、ここにアルカリ23を供給することにより、放射性セシウムを含んだPBをフェロシアン化鉄イオンと放射性セシウムイオンに分解することができる。

電気透析槽24は、電気透析により放射性セシウムの濃度を高めるための反応槽である。アルカリ分解槽22でアルカリ分解された反応液を電気透析槽24で電気透析することにより、陰極室27から濃縮された放射性セシウム溶液を得ることができる。濃縮された放射性セシウム溶液は、更なる濃縮のために、再度原水槽19に戻して合成化学共沈反応に供してもよい。図1の濃縮・吸着工程(S9)のうちの濃縮は、これらの水槽(原水槽19、アルカリ分解槽22、電気透析槽24)を用いて行うことができる。

ゼオライト吸着槽28は、放射性セシウムをゼオライトに吸着させるための反応槽である。上述のようにして濃縮された放射性セシウム溶液をゼオライト吸着槽28に供給し、ゼオライト吸着槽28内のゼオライトに放射性セシウムを吸着させることができる。図1の濃縮・吸着工程(S9)のうちの吸着は、ゼオライト吸着槽28を用いて行うことができる。

ろ過装置30は、溶液から固形物をろ過する装置であり、ゼオライト吸着槽28でゼオライトに放射性セシウムを吸着させた後の溶液から固形物をろ過する。ろ液は処理水を収容する処理水槽31に送られる。処理水槽31内のろ液は、放射性セシウムを含んでいると考えられるため、処理施設100内で有効に利用することが好ましい。例えば、図2に示すように、焼却炉7の内部(例えば二次燃焼室)に噴霧して、焼却炉7内の排ガスの冷却水Aとして用いてもよい。また、例えば、図2に示すように、ガス冷却塔10の冷却水Bとして用いてもよい。

〔塩化物と融点について〕 次に、図3および図4を用いて分離促進剤6の組成について説明する。上述したように、処理対象物に添加される分離促進剤6には、2種類以上の塩化物を用いて調製した、融点が600℃以下である低融点塩化物が用いられる。

図3は、低融点塩化物の組成と融点とを示す図である。なお、図3に示す各融点は、吉葉正行著「先進型廃棄物処理プラントにおける高温化技術と材料イノベーション」、Sanyo Technical Report Vol.6(1999), No.1による。図3の低融点塩化物は、何れも2種類の塩化物の組み合わせからなり、かつそれぞれ単独の塩化物よりも融点が低下された混合物であるから、比較的低温の温度条件下での焼却においても有効な分離促進剤として利用できる。ただし、鉛などの有害重金属を含む低融点塩化物は、処理対象物に添加される分離促進剤6としては適さない。

図4は、NaClとCaCl2との相平衡図である。図4に示すように、NaCl単独の融点は801℃である。CaCl2の単独の融点は772℃である。また、NaClとCaCl2とからなる低融点塩化物は、モル比でNaCl:CaCl2=49:50となる場合に融点が最小値(504℃)となる。

融点が600℃以下の低融点塩化物を得るには、36〜59NaCl−41〜64CaCl2のモル当量範囲でNaClとCaCl2とを混合するのが望ましい。このように、融点が600℃以下となるモル当量範囲内でNaClとCaCl2とを混合した低融点塩化物を分離促進剤6として用いることが出来る。

なお、焼却時点までに所定の組成の分離促進剤と処理対象物が混合された状態となればよい。例えば、所定の組成の分離促進剤の構成要素である一部の塩化物と、他の塩化物とをそれぞれ個別に処理対象物に添加し、それらを混合して、混合後に分離促進剤が所定の組成となるようにしてもよい。また、2種類以上の塩化物を混合して加熱溶融することによって得られた複塩である低融点塩化物を分離促進剤6として用いることもできる。

ここで、上述のように、処理剤と反応あるいは吸着した反応生成物を含む脱塩飛灰は、分離促進剤6として利用することができる。また、この処理剤としては、消石灰や重曹を用いることができる。そして、消石灰は、排ガス中の塩化水素と反応してCaCl2を生じ、重曹は、排ガス中の塩化水素と反応してNaClを生じる。このため、消石灰あるいは重曹、またはその両方を含む処理剤を用いる場合、分離促進剤6はNaClあるいはCaCl2、またはその両方を含むものとすることが好ましい。これにより、脱塩飛灰を分離促進剤6として利用する場合に、最初に添加する分離促進剤6と、脱塩飛灰を利用した分離促進剤6との間での組成変化を抑え、安定した放射性セシウムの除去率等を維持することができる。なお、脱塩飛灰はそのまま分離促進剤として用いてもよいし、成分を調整した上で分離促進剤として用いてもよい。また、NaClとCaCl2を含む低融点塩化物の中でも、特に融点の低い49NaCl・50CaCl2等を用いることがより好ましい。

〔変形例〕 上記実施形態では、可燃物である処理対象物を燃焼させて放射性セシウムを揮発させる例を説明したが、処理対象物(典型的には放射性セシウムを含む不燃物)を燃焼させることなく加熱して放射性セシウムを揮発させる構成も本発明の範疇に含まれる。

また、上述した、分離促進剤の組成および添加量と焼却条件は一例である。処理施設100(特に焼却炉7)の構成等に応じ、処理対象物から多くの放射性セシウムを揮発させ、かつ焼却主灰に残存する放射性セシウムが、ほぼ非水溶性の放射性セシウムとなる範囲で適宜調整することが可能である。

本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。

〔付記事項〕 本発明の一態様に係る放射性セシウムの除去方法は、処理対象物から放射性セシウムを除去する放射性セシウムの除去方法であって、2種類以上の塩化物を含み、かつそれぞれ単独の塩化物よりも融点が低下された混合物または複塩を含む、セシウムの分離促進剤を上記処理対象物に添加して、含有カルシウム量が酸化カルシウム濃度に換算して5重量%以下である、上記分離促進剤と上記処理対象物の混合物を得る添加工程と、上記混合物を900℃以上1000℃以下で加熱して、当該処理対象物から放射性セシウムを揮発させる加熱工程と、を含み、上記加熱工程後の処理物に残存する放射性セシウムのうち、上記処理物中の水溶性の放射性セシウムの量が、当該処理物中の全放射性セシウムの量の1/5以下となるように、上記添加工程における上記分離促進剤の添加量と、上記加熱工程における加熱時間とが設定されている。

本願の発明者らによる研究の結果、分離促進剤と処理対象物の混合物における、含有カルシウム量が酸化カルシウム濃度に換算して5重量%以下となるようにすると、900℃以上1000℃以下という比較的低い温度で、首記の特許文献1の技術と比べてより高い割合で放射性セシウムを揮発させることができることが分かった。よって、上記の構成によれば、900℃以上1000℃以下という比較的低い温度で放射性セシウムの多くを揮発させることができる。これにより、加熱工程後の処理物を洗浄することなく処理することも可能になる。

また、上記の構成によれば、加熱工程後の処理物に残存する水溶性の放射性セシウムの量を少なく抑えることができる。これにより、加熱工程後の処理物を洗浄することなく処理しやすくなる。

また、上記加熱工程後の処理物に残存する放射性セシウムのうち、水溶性の放射性セシウムが1500Bq/kg以下となるように、上記添加工程における上記分離促進剤の添加量と、上記加熱工程における加熱時間とが設定されていてもよい。

水溶性の放射性セシウムが1500Bq/kg以下であれば、固液比1対10の条件下における水溶性の放射性セシウムの溶出量は150Bq/L以下となる。よって、上記の構成によれば、加熱工程後の処理物からの放射性セシウムの溶出量を、放射性廃棄物からの放射性セシウムの溶出基準値である150Bq/L以下とすることができる。これにより、加熱工程後の処理物を水洗浄することなく処理することが可能になる。

また、上記分離促進剤は、NaClとCaCl2とを含む、融点が600℃以下の混合物または複塩であり、上記加熱工程で加熱される、上記分離促進剤と上記処理対象物の混合物に含まれる塩素量は1〜2重量%であり、上記加熱工程の加熱時間は2時間以上であってもよい。

上記の構成によれば、処理対象物中の放射性セシウムの大部分を加熱揮発させることができ、かつ、加熱工程後の処理物における水溶性の放射性セシウムの量を極めて少なく抑えることができる。

さらに、上記の構成によれば、分離促進剤におけるカルシウム量および塩素量が、「背景技術」に記載した特許文献1に記載されているカルシウム量および塩素量よりも少ない。よって、特許文献1の技術よりも、分離促進剤の使用量を抑えつつ、処理対象物から放射性セシウムを効率よく除去することができる。また、分離促進剤の使用量を抑えることにより、加熱工程後に生じる加熱処理物(反応後あるいは未反応の分離促進剤を含む)の量も少なく抑えることができる。

また、上記放射性セシウムの除去方法では、上記加熱工程後の処理物の放射性セシウム濃度が所定の基準値以下であれば、当該加熱工程後の処理物からの放射性セシウムの除去を終了し、上記加熱工程後の処理物の放射性セシウム濃度が上記所定の基準値を超えていれば、当該加熱工程後の処理物を洗浄することなく溶融処理してもよい。ここで、「所定の基準値」は、例えば、前述の放射性物質汚染対処特措法に基づく基準値である8,000(Bq/kg)であってもよい。以下の「所定の基準値」についても同様である。

上記の構成によれば、加熱工程後の処理物の放射性セシウム濃度が所定の基準値以下であっても、基準値を超えていても、処理対象物を洗浄することがない。よって、洗浄にかかる設備、エネルギー、および時間等のコストが不要になる。

また、上記放射性セシウムの除去方法は、上記加熱工程で上記処理対象物から揮発した放射性セシウムを含む飛灰を洗浄液で洗浄して該飛灰から放射性セシウムを除去する洗浄工程をさらに含み、洗浄後の上記飛灰の放射性セシウム濃度が所定の基準値以下であれば、当該飛灰からの放射性セシウムの除去を終了し、洗浄後の上記飛灰の放射性セシウム濃度が所定の基準値を超えていれば、当該飛灰を溶融処理してもよい。

上記の構成によれば、加熱工程後の処理物の放射性セシウム濃度が所定の基準値以下であっても、基準値を超えていても、飛灰を再度洗浄することがない。よって、洗浄にかかる設備、エネルギー、および時間等のコストを最小限に抑えることができる。なお、上記飛灰には、溶融処理で発生する溶融飛灰が含まれていてもよい。

また、上記放射性セシウムの除去方法は、上記加熱工程で上記処理対象物から揮発した放射性セシウムを含む飛灰を洗浄液で洗浄して該飛灰から放射性セシウムを除去する洗浄工程と、上記洗浄工程で使用した洗浄液にフェロシアン化カリウムおよび硫酸第二鉄を供給して、放射性セシウムを含んだプルシアンブルーを生成する共沈工程と、放射性セシウムを含んだ上記プルシアンブルーをアルカリ分解した溶液とゼオライトとを接触させ、該溶液中の放射性セシウムをゼオライトに吸着させる吸着工程と、放射性セシウムを吸着した上記ゼオライトを加熱して放射性セシウムを焼成固定する焼成固定工程と、を含んでいてもよい。

上記の構成によれば、処理対象物から揮発した放射性セシウムを含む飛灰を洗浄液で洗浄する。放射性セシウムは、水溶性の塩化セシウムとして揮発するから、この洗浄により飛灰に含まれる放射性セシウムの大部分を洗浄液中に取り込むことができる。また、上記の構成によれば、プルシアンブルーにより洗浄液から放射性セシウムを分離し、アルカリ分解によって再度放射性セシウムの溶液を得た上で、該溶液中の放射性セシウムをゼオライトに吸着させる。これにより、高濃度の放射性セシウムをゼオライトに効率よく吸着させることができる。そして、上記の構成によれば、放射性セシウムを吸着したゼオライトを焼成する。これにより、放射性セシウムを溶出し難く搬送しやすい状態とすることができる。

また、上記放射性セシウムの除去方法は、上記溶液を電気透析に供して放射性セシウムの濃度を高める濃縮工程をさらに含み、上記吸着工程では、上記濃縮工程で放射性セシウムの濃度が高まった上記溶液から放射性セシウムをゼオライトに吸着させてもよい。

上記の構成によれば、放射性セシウムの濃度が高まった溶液から放射性セシウムをゼオライトに吸着させるので、ゼオライトによる放射性セシウムの吸着を効率よく行うことができる。

また、上記放射性セシウムの除去方法では、上記吸着工程で放射性セシウムがゼオライトに吸着された後の上記溶液をろ過した上で、上記加熱工程で発生した排出ガスの冷却に用いる冷却水として用いてもよい。

上記の構成によれば、放射性セシウムがゼオライトに吸着された後の溶液を有効に利用して、放射性セシウムの除去処理を進めることができる。また、ろ過を行っているため、溶液に含まれる微粒子が噴霧装置や配管などを詰まらせることを防ぐことができる。

また、上記放射性セシウムの除去方法は、塩化水素と反応する処理剤を上記加熱工程で発生した排出ガスに供給して、該排出ガスから少なくとも塩化水素を除去する除去工程と、上記除去工程で生じた、塩化水素と反応した上記処理剤を少なくとも含む脱塩飛灰を捕集する捕集工程と、を含み、上記加熱工程では、上記脱塩飛灰を利用して調製された上記分離促進剤が添加された上記処理対象物を加熱してもよい。

上記の構成によれば、該排出ガスから少なくとも塩化水素を除去する際に生じる脱塩飛灰を分離促進剤として利用するから、分離促進剤の使用量を抑えることができる。また、この脱塩飛灰は、2種類以上の塩化物の組み合わせからなり、かつそれぞれ単独の塩化物よりも融点が低下された混合物または複塩を含むものであることが好ましい。つまり、除去工程で添加する処理剤は、排出ガスと反応して、2種類以上の塩化物の組み合わせからなり、かつそれぞれ単独の塩化物よりも融点が低下された混合物または複塩を生じるものであることが好ましい。これにより、比較的低い加熱温度で処理対象物から放射性セシウムを分離することができる。

また、本発明の一態様に係る処理施設は、処理対象物から放射性セシウムを除去する処理施設であって、2種類以上の塩化物の組み合わせからなり、かつそれぞれ単独の塩化物よりも融点が低下された混合物または複塩を含む、セシウムの分離促進剤を上記処理対象物に添加して、含有カルシウム量が酸化カルシウム濃度に換算して5重量%以下である、上記分離促進剤と上記処理対象物の混合物を得る添加装置と、上記混合物を900℃以上1000℃以下で加熱して、当該処理対象物から放射性セシウムを揮発させる加熱炉と、を含み、上記加熱炉での加熱後の処理物に残存する放射性セシウムのうち、上記処理物中の水溶性の放射性セシウムの量が、当該処理物中の全放射性セシウムの量の1/5以下となるように、上記添加装置が添加する上記分離促進剤の添加量と、上記加熱炉の加熱時間とが設定されている。この処理施設によれば、上記放射性セシウムの除去方法と同様の効果を奏する。

本発明の実施例を図5および図6に基づいて説明する。なお、説明する実施例は一例であり、本発明は本実施例の構成には限定されない。

〔処理対象物〕 本実施例の処理対象物である廃棄物の組成を図5に示す。図5は、本発明の実施例および比較例における処理対象物である廃棄物の組成を示す図である。この処理対象物は、可燃分が45.5(wt%)である可燃性の廃棄物であり、2800Bq/kgの放射性セシウムを含む。塩素の含量は0.04(wt%)とわずかである。カルシウムは3800(mg/kg)含まれる。

〔試験条件〕 比較例1〜17および実施例1〜5について、所定の条件下で上記処理対象物を管状炉内で焼却し、焼却した後の焼却主灰を固液比1:10で6時間振とう・水洗浄した。焼却の際の空気比は1.5とした。また、分離促進剤を添加した後の処理対象物におけるCaO量およびCl量(何れも単位はwt%)を算出した。ただし、比較例1〜3については、分離促進剤を添加することなく焼却しているので、処理対象物自体のCaO量およびCl量を算出している。

そして、以下の式から、揮発放射性セシウム(揮発Cs)量、焼却主灰中の水溶性放射性セシウム(水溶性Cs)量、および焼却主灰中の非水溶性放射性セシウム(残留Cs)量(何れも単位はBq)を求め、(処理対象物中の全セシウム)量(単位はBq)に対する百分率(%)として図6に示した。また、焼却主灰中の非水溶性放射性セシウム(残留セシウム)量から、放射性セシウムの除去率(Cs除去率)を求めた(単位は%)。

処理対象物および焼却主灰中の放射性セシウム濃度は、ゲルマニウム半導体検出器を用いて測定を行い、下式でセシウム量を算出した。

{Cs量(Bq)}={Cs濃度(Bq/kg)}×{試料量(kg)} また、溶出セシウム濃度は、環境省発行「第五部 放射能濃度等測定ガイドライン」「第8章 溶出量」記載の「日本工業規格K〇〇五八−一」に定める方法に従って試料を作製し、同じくゲルマニウム半導体検出器を用いて測定を行った。

(揮発Cs)=(処理対象物中の全セシウム)−(焼却主灰中の全セシウム) (水溶性Cs)={溶出セシウム濃度(Bq/L)}×10(L/kg)×{焼却主灰重量(kg)} (残留Cs)=(焼却主灰中の全セシウム)−(水溶性セシウム) (Cs除去率)=100%−(残留セシウム)/(処理対象物中の全セシウム)×100 〔試験結果:比較例1〜3〕 比較例1〜3では、分離促進剤を添加せずに上記処理対象物を焼却した。700℃、800℃、および900℃の何れの焼却温度においても、放射性セシウムの揮発はなく、極わずかに水溶性セシウムを生成するのみで、ほぼ全ての放射性セシウムが焼却主灰中に残留した。

〔試験結果:比較例4〜6〕 比較例4〜6では、上記処理対象物に分離促進剤としてCaCl2を3.0(wt%)添加して、700℃、800℃、または900℃で2時間焼却した。

700℃の焼却温度である比較例4では揮発セシウムはゼロであるが、焼却温度が高くなるほど揮発セシウムの量が多くなり、900℃の焼却温度である比較例6では87.3(%)が揮発セシウムであった。また、残留セシウムは、焼却温度が高くなるほど少なくなり、900℃の焼却温度である比較例6で最小値の10.2(%)となった。比較例6において、2.5(%)の水溶性セシウムを洗浄して除去すれば、全体として89.8%の放射性セシウムが除去される。なお、水溶性セシウムは700℃の焼却温度の比較例4で最も多く65.8(%)であり、焼却温度が高くなるほど水溶性セシウムの量は少なくなった。

〔試験結果:比較例7〜10、実施例1〕 比較例7〜9では、上記処理対象物に分離促進剤として49NaCl・50CaCl2を3.0(wt%)添加して、700℃、800℃、または900℃で2時間焼却した。また、比較例10は、比較例8と焼却時間のみが異なる。比較例10の焼却時間は、比較例8より短い0.5時間である。

比較例7〜9の結果は、比較例4〜6と概ね同様の傾向であり、焼却温度が高くなるほど揮発セシウムの量が多くなり、900℃の焼却温度である実施例1では81.6(%)が揮発セシウムであった。また、残留セシウムは、焼却温度が高くなるほど少なくなり、900℃の焼却温度である比較例9で最小値の6.6(%)となった。比較例9において、11.8(%)の水溶性セシウムを水洗浄して除去すれば、全体として93.4%の放射性セシウムが除去される。比較例7〜9の結果は、比較例4〜6と比べて揮発セシウムの割合が少ないが、水溶性セシウムの割合が大きくなっている。このため、比較例7〜9の条件では、焼却主灰の洗浄により、全体としての放射性セシウムの除去率を高めることが可能である。

比較例10は、比較例8よりも焼却時間を短くしたことにより、比較例8と比べて揮発セシウム量が抑えられ、水溶性セシウムの割合が大きくなった。ただし、残留セシウム量が27.3(%)であるから、焼却主灰を洗浄したとしても、全体としての放射性セシウムの除去率は、比較例8を下回る。

〔試験結果:比較例11〜13〕 比較例11〜13では、上記処理対象物に分離促進剤として49NaCl・50CaCl2を1.5、4.5、または6.0(wt%)添加して、800℃で2時間焼却した。

分離促進剤の添加量が多くなるほど、揮発セシウムの割合が少なくなり、水溶性セシウムの割合が多くなった。残留セシウムは、分離促進剤の添加量が多くなるほど少なくなり、6.0(wt%)添加した比較例13で最小値の10.0(wt%)となった。これらの例では、分離促進剤添加後の上記処理対象物におけるCl濃度が3.0(wt%)程度になると水溶性セシウムが多くなった。よって、Cl濃度が3.0(wt%)程度となるように分離促進剤(より詳細にはCl源)を添加した場合、放射性セシウムの除去率を高くするには焼却主灰の洗浄が必要不可欠である。

〔試験結果:実施例1、比較例14〕 実施例1、比較例14では、比較例9と同じく、上記処理対象物に分離促進剤として49NaCl・50CaCl2を添加して900℃で2時間焼却した。実施例1、比較例14は、分離促進剤の添加量が比較例9と異なっている。具体的には、実施例1の添加量は比較例9より少ない1.5(wt%)とし、比較例14の添加量は比較例9より多い4.5(wt%)とした。

分離促進剤の添加量を比較例9よりも増やした比較例14では、比較例9よりも揮発セシウム量と残留セシウム量とが増加した。一方、分離促進剤の添加量を比較例9よりも減らして、分離促進剤添加後のCaOとCl濃度の両方が1.0(wt%)程度となった実施例1では、放射性セシウムの90%近くを揮発させることができた。実施例1では、焼却主灰中に残った放射性セシウムは、水溶性が0.7(%)、非水溶性が10.7(%)であった。

また、実施例1と比較例11は、焼却温度のみ相違しているが、残留セシウム量には大きい差異が生じていた。つまり、分離促進剤添加後のCaOとCl濃度の両方を1.0(wt%)程度とした場合であっても、800℃(比較例11)での焼却では、揮発セシウムが37.0(%)に留まった。そして、17.0(%)の水溶性セシウムを水洗浄して除去しても、放射性セシウムの除去率は54.0(%)に過ぎなかった。このことから、放射性セシウムの除去率を高めるには、分離促進剤添加後のCaOとCl濃度の両方を1.0(wt%)程度とした上で、900℃以上で焼却すればよいことが分かる。

ここで、放射性セシウム濃度10,000Bq/kg、灰分が10(wt%)である処理対象物を、実施例1の条件で焼却、すなわち1.5wt%の49NaCl・50CaCl2を添加して900度で2時間焼却したとする。

この場合、実施例1の結果によれば焼却主灰中の水溶性セシウムは0.7(%)であるから、上記処理対象物の焼却主灰中の水溶性セシウム濃度は、10,000Bq/kg×(100/10)×(0.7/100)=700Bq/kgと試算される。また、この焼却主灰について、固液比1:10で溶出試験を行った場合の放射性セシウムの溶出量は、70Bq/Lと試算される。さらに、焼却主灰中の放射性セシウム濃度(水溶性セシウムと非水溶性セシウムの合計)は、10,000Bq/kg×(100/10)×(0.7+10.7)/100=11,400Bq/kgと試算される。

上記の放射性セシウム濃度は、基準値(8,000Bq/kg)を超えているため、この焼却主灰は、このままでは処分することができない。しかし、この焼却主灰は、水洗浄処理することなく溶融処理に供して、さらに減容化し、かつセシウム濃度を低下させることができる。そして、このような溶融処理によって、放射性セシウム濃度が基準値未満となった溶融スラグを生成し、これを再資源化することも可能になる。

一方、上記処理対象物を、比較例3の条件で焼却、すなわち分離促進剤を添加せずに900度で2時間焼却したとすると、焼却主灰中の放射性セシウム濃度は、焼却前の10倍である100,000Bq/kgと試算される。この濃度と比較すると、実施例1に対応する試算結果である11,400Bq/kgは約1/10倍程度となっている。このため、溶融スラグ中の放射性セシウム濃度も1/10倍程度となると考えられる。

〔試験結果:実施例2〜4と比較例15、16〕 実施例2、3、比較例15、16では、分離促進剤として49NaCl・50CaCl2とCaCO3を重量比20:10で混合したものを3.0(wt%)添加した上記処理対象物を2時間焼却した。なお、上記分離促進剤添加後のCaOとCl濃度は、それぞれ約1.6(wt%)、約1.3(wt%)である。実施例2、3、比較例15、16では、焼却温度が異なっており、比較例15では700℃、比較例16では800℃、実施例2では900℃、実施例3では1000℃である。また、実施例4は、実施例2の焼却時間を4時間に変えたものである。

700℃の焼却温度である比較例15では揮発セシウムはゼロであったが、焼却温度が高くなるほど揮発セシウムの量が多くなり、900℃の焼却温度である実施例2では93.1(%)、1000℃の焼却温度である実施例3では96.3(%)が揮発セシウムであった。また、残留セシウムは、焼却温度が高くなるほど少なくなり、900℃の焼却温度である実施例2で5.6(%)、1000℃の焼却温度である実施例3では3.6(%)となった。さらに、実施例2、3では、水溶性セシウムの量もそれぞれ1.3(%)および0.1(%)と非常に少なくすることができた。また、実施例2よりも燃焼時間を長くした実施例4では、実施例2と比べて残留セシウム量が微減し、水溶性セシウム量が減少した。

比較例15、16では、水溶性セシウムを水洗浄して除去しても、放射性セシウムの除去率はそれぞれ66.6(%)、75.5(%)に過ぎない。このことから、分離促進剤として49NaCl・50CaCl2とCaCO3を重量比20:10で混合したものを用いる場合、放射性セシウムの除去率を高めるには、900℃以上で焼却すればよいことが分かる。

実施例2について、実施例1と同様の試算を行うと、処理対象物の焼却主灰中の水溶性セシウム濃度は、10,000Bq/kg×(100/10)×(1.3/100)=1,300Bq/kgとなる。また、この焼却主灰について、固液比1:10で溶出試験を行った場合の放射性セシウムの溶出量は、130Bq/Lと試算される。さらに、焼却主灰中の放射性セシウム濃度(水溶性セシウムと非水溶性セシウムの合計)は、10,000Bq/kg×(100/10)×(1.3+5.6)/100=6,900Bq/kgと試算される。

上記の放射性セシウム濃度は基準値未満であるから、上記焼却主灰は処分可能である。また、上記の放射性セシウム濃度は、比較例3の試算結果の約1/14.4である。上記焼却主灰について、溶融処理を行った場合には、実施例1よりもさらに放射性セシウム濃度が低い溶融スラグを生成できると考えられる。

〔試験結果:実施例5、比較例17〕 実施例5、比較例17では、分離促進剤として49NaCl・50CaCl2とCaCO3を重量比20:20で混合したものを添加した上記処理対象物を900℃で2時間焼却した。実施例5の薬剤(分離促進剤)添加量は4.0(wt%)であり、比較例17は6.0(wt%)である。

実施例2とCl濃度は同程度であるが、CaO量が実施例2よりも多い実施例5は、実施例2よりも水溶性セシウムの量が少なくなった。一方、実施例2よりもCl濃度が高く、具体的にはCl濃度が2(wt%)近くになっている比較例17では、実施例2よりも水溶性セシウムの量が多く、3.2(%)となった。

このため、比較例17の条件で処理対象物を処理する場合、処理対象物の放射性セシウム濃度によっては、焼却主灰の洗浄が必要になることもある。例えば、放射性セシウム濃度が10,000Bq/kgの廃棄物(灰分10wt%)が処理対象物である場合、焼却主灰中の水溶性セシウム濃度は3,200Bq/kgとなり、この焼却主灰の放射性セシウム溶出量は、基準値を超える320Bq/Lと推算される。

〔焼却主灰の水溶性セシウム量の少ない実施例について〕 実施例1〜5は、焼却主灰中の水溶性の放射性セシウムの量が、焼却主灰中の全放射性セシウムの量の1/5以下と非常に少なくなった。これらの実施例の条件から、処理対象物と分離促進剤を混合した混合物におけるCl濃度が0.9〜1.5(wt%)、CaO量が1〜2.5(wt%)となるように分離促進剤を添加して、900℃〜1000℃で2〜4時間加熱することが好ましいことが分かる。この条件で処理対象物を処理することにより、焼却主灰を洗浄することなく処理することが可能となる。

6 分離促進剤 7 焼却炉(加熱炉) 8 焼却主灰(加熱工程後の処理物) 100 処理施設

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