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Therapeutic agent targeting ncca-atp channel and method of use thereof

阅读:1010发布:2020-07-31

专利汇可以提供Therapeutic agent targeting ncca-atp channel and method of use thereof专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且PROBLEM TO BE SOLVED: To provide therapeutic agents targeting the NCchannel and methods of use thereof.SOLUTION: The invention relates to therapeutic compositions targeting the NCCchannel of an astrocyte, neuron or capillary endothelial cell and methods for using the same. More specifically, agonists and antagonists of the NCchannel are contemplated. The therapeutic compositions are used to treat cancer, more specifically, a metastatic brain tumor, wherein a tumor-brain barrier is present. Such treatments are contemplated in combination with conventional anti-cancer therapies. Alternatively, the compositions are used to prevent cell death and to treat cerebral edema that result from ischemia, due to interruption of blood flow, to tissue trauma or to increased tissue pressure.,下面是Therapeutic agent targeting ncca-atp channel and method of use thereof专利的具体信息内容。

  • 明細書中に記載の発明。
  • 说明书全文

    関連出願の相互参照 本出願は、その全体が参考として本明細書に援用される、2004年9月18日付出願の米国仮出願第60/610,758号の優先権を主張するものである。

    連邦政府による後援を受けた研究または開発に関する説明 本発明は、国立衛生研究所から交付された助成金番号:NS048260による政府からの支援、および米国復員軍人援護局からのメリットレビュー助成金を一部受けて行われたものである。 米国政府は、本発明において一定の権利を保有しうる。

    技術分野 本発明は、細胞生物学、生理学、および医学という分野を対象とする。 より詳細には、本発明は、細胞内カルシウムによって活性化され、細胞内ATPによって遮断されるユニークな非選択的陽イオンチャネル(NC Ca−ATPチャネル)を標的とする治療用化合物を投与する工程を包含する、患者を治療する新規の方法に取り組んでいる。 具体的な実施形態において、治療用化合物はアゴニストであり、それを、神経細胞が死滅することが有効な、癌治療などの療法に用いる。 別の具体的な実施形態において、治療用化合物はアンタゴニストであり、NC Ca−ATPチャネルの遮断および/または阻害が有効である、脳の虚血または浮腫の治療などの療法に用いる。 NC Ca−ATPチャネルのアゴニストおよび/またはアンタゴニストを含む組成物も企図されている。

    発明の背景 I. NC Ca−ATPチャネル ユニークで非選択な1価の陽イオン性ATP感受性チャネル(NC Ca−ATPチャネル)は、天然の反応性星状細胞(NRA)で初めて同定され、後に、本明細書に記載されているように、脳卒中後または外傷性脳損傷後の神経細胞および毛細血管内皮細胞で同定された(Simardらに対する特許文献1、および非特許文献1参照、各々それらの全体が参考として本明細書に援用される)。 NC Ca−ATPチャネルは、膵β細胞のK ATPチャネル(非特許文献2)と同じように、I型スルホニル尿素受容体(SUR1)の調節サブユニットおよび膜孔形成サブユニットからなるヘテロ多量体構造体であると考えられている。 NC Ca−ATPチャネルの膜孔形成サブユニットは未同定のままである。

    SURは、グリベンクラミドおよびトルブタミドなどの抗糖尿病性スルホニル尿素に対する感受性を付与し、ジアゾキシド、ピナシジル、およびクロマカリンなどの「K チャネル開口薬」と呼ばれる化学的に多様な薬剤群による活性化に関与する(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。 さまざまな組織において、分子的に異なったSURが、異なった膜孔形成サブユニットに結合して、識別可能な生理学的および薬理学的特性をもつK ATPチャネルを形成する。 膵β細胞中のK ATPチャネルは、Kir6.2と連結したSUR1から形成されるが、心筋および平滑筋のK ATPチャネルは、それぞれKir6.2およびKir6.1と連結したSUR2AおよびSUR2Bから形成される(非特許文献8)。 明らかに異なった膜孔形成サブユニットで構成されているにもかかわらず、NC Ca−ATPチャネルも、スルホニル尿素化合物に対して感受性である。

    また、K ATPチャネルとは異なって、NC Ca−ATPチャネルは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、およびその他の1価陽イオンをほぼ同じような容易さで伝導する(非特許文献1)が、このことは、NC Ca−ATPチャネルの特徴、ひいては一定の化合物に対するアフィニティーが、K ATPチャネルとは異なることを示唆している。

    細胞内のCa 2+によって活性化され、かつ、細胞内ATPによって抑制される別の非選択的陽イオンチャネルが同定されているが、星状細胞の中ではない。 さらに、星状細胞で発現され見出されるNC Ca−ATPチャネルは、その他のチャネルと、カルシウム感受性およびアデニンヌクレオチド感受性について生理学的に異なっている(Chen et al.,2001)。

    II. 神経膠症カプセル(Gliotic Capsule)
    脳内の「異物」の回りに形成される神経膠症カプセルは、重要であるが、それにも拘わらず顧みられることのなかった生体システムである。 一方において、神経膠症カプセルは、有害な刺激に対する脳の反応、すなわち、異物を囲い込み、単離し、廃棄し、さもなければ異物から自身を防御しようとする脳の試みを表すものである。 他方で、神経膠症カプセルは、脳腫脹の一因となる浮腫液を発生させ、かつ、その構成細胞が細胞毒性浮腫を起して、さらに脳腫脹を増大させる有害な可能性のある組織塊を形成する。 また、神経膠症カプセルは、免疫監視機構から外来細胞を保護する。

    神経膠症カプセルの形成に関与する主要な要素は、外傷性移植異物であれ、転移性腫瘍、脳膿瘍、脳卒中後の梗塞性壊死組織であっても、多くのタイプのCNS疾患で同一であると考えられている。 まず、小膠細胞および星状細胞が、傷害部位近辺で活性化され、大型で星形のGFAP陽性反応性星状細胞が、反応の最も顕著な細胞成分を形成する。 次に、物体の異物性を認識して、それを取り囲んで取り込む反応が開始する。 「異物」の概念は非常に多様な病理状態を包含するが、ほとんどの場合、反応は互いに非常に類似している。

    異物と神経膠症カプセルの間の界面は、神経膠症カプセルの内部域と呼ばれ、傷害に対する全体的な反応を決定する上で非常に重要であると考えられている。

    総合的には有益であるにもかかわらず、神経膠症カプセルは、脳腫脹および腫瘤効果に関与する有害になる可能性があり、かつ、免疫系による監視から外来細胞を遮蔽する可能性のある組織塊を形成する。 本出願人は、ラットおよびヒトのさまざまな病状において、神経膠症カプセルの内部域の反応性星状細胞(R1星状細胞)が、新規のSUR1調節型陽イオンチャネルであるNC Ca−ATPチャネルを発現すること、およびこのチャネルが細胞の生存可能性を直接調節していること、すなわち、チャネルの開口は壊死性細胞死に伴い、また、チャネルの閉鎖は、エネルギー(ATP)枯渇によって誘導される細胞死からの保護に伴うことを初めて見つけ出そうとするものである。

    III. 癌 脳転移は、癌患者の病的状態および死亡の重要な原因である。 これらの患者のほとんどは全身性疾患で死ぬため、しばしば、主な治療目的は単に生活の質を高めるということになる。 脳転移に対する通常の治療法は、通常、全脳照射である。 化学療法は、化学的感受性腫瘍において脳転移の退縮をもたらすこともあるが、総体的に、化学療法および免疫療法などの補助的療法の結果は期待外れである。

    脳転移を隔離する「障壁」で最も広く知られているのは血液脳関門(BBB)である。 また、転移の回りに形成される神経膠症カプセルは、転移性腫瘍を隔離および防御する「腫瘍脳関門(tumor−brain barrier)」(TBB)を形成する。 グリア芽腫などの原発性CNS由来腫瘍とは異なり、脳の転移性癌は、顕著な星状細胞反応を誘発して、神経膠症カプセルの形成をもたらす。 転移性腫瘍の回りにできる神経膠症カプセルは、傷害刺激に対する脳の反応、すなわち、脳が、転移性腫瘍の回りを囲み、隔離し、退治するか、それ以外の方法でそれ自体を保護しようとする試みを代表するものである。 しかし、重要なことには、神経膠症カプセルは、転移性腫瘍を免疫監視および治療標的から保護する障壁としても機能するのである。
    転移性脳腫瘍に対する良好な免疫療法および化学療法は把握できないままである。 一般的に、これらの腫瘍を治療することの難しさは、脳に存在する腫瘍に化学療法剤および免疫細胞が接触するのを妨げると考えられている血液脳関門(BBB)が存在するせいである。 しかし、脳にある転移性腫瘍への血液供給の多くは、腫瘍を取り囲む神経膠症カプセルの中に位置する血管および毛細血管から発生しており、これらの毛細血管は、脳自体に存在するものとは異なって有窓になっている。 腫瘍を取り囲む神経膠症カプセルそれ自体は、密着結合タンパク質を発現するR1星状細胞が存在する内部域をもち、この内部域は、腫瘍と脳の間で障壁を形成していると考えられている。 R1星状細胞によって形成される障壁は脳腫瘍関門(TBB)と名付けられている。
    化学療法剤による単剤療法は、主に血液脳関門(BBB)があるために、通常の化学療法剤では有効量がCNSの部位にまで到達できない傾向にあるため、たいして有効ではないという傾向にある。 例えば、エトポシドおよびアクチノマイシンDは、2つとも広く使用されている、トポイソメラーゼIIを阻害する腫瘍学用薬剤であるが、血液脳関門を有用な量で通過することができない。

    国際公開第03/079987号パンフレット

    Chen M,Simard JM. J Neurosci. 2001;21:6512−6521 Chen Mら、J Neurosci. 2003;23:8568−8577 Aguilar−Bryan Lら、Science. 1995;268:423−426 Inagaki Nら、Neuron. 1996;16:1011−1017 Isomoto Sら、J Biol Chem. 1996;271:24321−24324 Nichols CGら、Science. 1996;272:1785−1787 Shyng Sら、J Gen Physiol. 1997;110:643−654 Fujita Aら、Pharmacol Ther. 2000;85:39−53

    本明細書に記載したように、本出願人が、神経膠症カプセルの内部域にNC Ca−ATPチャネルを発現するR1星状細胞が存在して、NC Ca−ATPチャネルを発現する星状細胞を選択的に死滅させることでTBBを破壊し、白血球がTBBを通過して移動できるようにしていることを初めて見つけ出そうとしている。

    その他のさらなる目的、特徴、および利点は、開示目的で記載されている、本発明の好適な実施形態に関する以下の説明から明らかになる。

    発明の要旨 本発明は、細胞内カルシウムによって活性化され、細胞内ATPによって遮断されるユニークな非選択的陽イオンチャネル(NC Ca−ATPチャネル)であって、例えば、急性ニューロン損傷(例えば、低酸素症、虚血、脳浮腫、または細胞膨張)などの外傷性損傷、毒性の化合物または代謝物、急性傷害、癌、脳膿瘍などに暴露されたか、されている神経細胞、神経膠細胞(例えば、星状細胞、上衣細胞、乏突起膠細胞、および小膠細胞)、または神経内皮細胞(例えば、毛細血管内皮細胞)の中で発現されうる陽イオンチャネルに関する。 より具体的には、本発明は、このNC Ca−ATPチャネルの制御および/または調節、およびどのようにして、その調節を用いて、例えば、過剰増殖性疾患、および急性ニューロン損傷(例えば、脳卒中、虚血性/低酸素性損傷)など、さまざまな病気および/または状態を治療することができるのかに関する。 さらに、本発明は、このNC Ca−ATPチャネルの制御および/または調節、および神経膠症カプセルの完全性の維持または破壊におけるその役割について関する。 このチャネルの調節および/または制御は、チャネルの活性因子もしくはアゴニスト、またはチャネルのアンタゴニストまたは阻害剤を投与した結果起こる。 このように、病気に応じて、細胞死を防止するため、例えば、組織外傷または組織圧の上昇による虚血によって生じた脳浮腫を治療するために、組成物(アンタゴニストまたは阻害剤)を投与して、チャネルを遮断または阻害する。 これらの例では、チャネルは、細胞の脱分極を防止、低下、または調節するために遮断される。 癌またはその他の過剰増殖性疾患の場合には、癌細胞または過剰増殖性細胞の細胞死をもたらす細胞の脱分極を引き起こすためのアゴニストまたは活性化化合物を投与してチャネルを開口または活性化することが望ましい。

    本発明に係る組成物は、消化的(alimentary)または非経口的に送達することができる。 消化的投与(alimentary administration)の例は、経口、口腔内、直腸、または舌下によるものがあるが、これらに限定されない。 非経口投与は、筋肉内、皮下、腹腔内、静脈内、腫瘍内、動脈内、脳室内、腔内、嚢内、くも膜下腔内、または胸膜内によるものがあるが、これらに限定されない。 その他の投与法としては、局所、粘膜、経皮、脳実質への直接注入も可能である。

    細胞に投与することができるNC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはアンタゴニストの有効量は、約0.0001nMから約2000μMという用量である。 より詳細には、投与されるアゴニストの用量は、約0.01nMから約2000μM;約0.01μMから約0.05μM;約0.05μMから約1.0μM;約1.0μMから約1.5μM;約1.5μMから約2.0μM;約2.0μMから約3.0μM;約3.0μMから約4.0μM;約4.0μMから約5.0μM;約5.0μMから約10μM;約10μMから約50μM;約50μMから約100μM;約100μMから約200μM;約200μMから約300μM;約300μMから約500μM;約500μMから約1000μM;約1000μMから約1500μM、および約1500μMから約2000μMである。 当然ながら、これらの量はすべて例示であり、これらの数値の中間にある量もすべて本発明で使用されうる。

    治療としてのNC Ca−ATPチャネルのアゴニストおよび/またはアンタゴニストあるいはそれに関連した化合物の有効量は、治療の対象となる宿主、および具体的な投与法によって変わる。 本発明の一つの実施形態において、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストおよび/またはアンタゴニストあるいはそれに関連した化合物の用量範囲は、約0.01μg/kg(体重)から約20,000μg/kg(体重)である。 「体重」という用語は、動物を処理している場合に使用可能である。 単離された細胞を処理している場合、本明細書で使用される「体重」は、「全細胞体重」を意味すると解すべきである。 「全体重」という用語は、単離細胞と動物のどちらを処理する場合にも使用可能である。 すべての濃度および治療レベルを、本願では「体重」または単に「kg」で表すが、それらは、同様に「全細胞体重」および「全体重」の濃度も含むものとする。 しかし、当業者には、さまざまな投薬量範囲、例えば、0.01μg/kg(体重)から20,000μg/kg(体重)、0.02μg/kg(体重)から15,000μg/kg(体重)、0.03μg/kg(体重)から10,000μg/kg(体重)、0.04μg/kg(体重)から5,000μg/kg(体重)、0.05μg/kg(体重)から2,500μg/kg(体重)、0.06μg/kg(体重)から1,000μg/kg(体重)、0.07μg/kg(体重)から500μg/kg(体重)、0.08μg/kg(体重)から400μg/kg(体重)、0.09μg/kg(体重)から200μg/kg(体重)、または0.1μg/kg(体重)から100μg/kg(体重)を利用できることが分かろう。 さらに、当業者には、例えば、0.0001μg/kg、0.0002μg/kg、0.0003μg/kg、0.0004μg/kg、0.005μg/kg、0.0007μg/kg、0.001μg/kg、0.1μg/kg、1.0μg/kg、1.5μg/kg、2.0μg/kg、5.0μg/kg、10.0μg/kg、15.0μg/kg、30.0μg/kg、50μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、120μg/kg、140μg/kg、150μg/kg、160μg/kg、180μg/kg、200μg/kg、225μg/kg、250μg/kg、275μg/kg、300μg/kg、325μg/kg、350μg/kg、375μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、および/または30mg/kgなど、さまざまな異なった投薬量レベルを使用できることが分かろう。 当然ながら、これらの投薬量はすべて例示であり、これらの数値の中間にある投薬量もすべて本発明で使用されうる。 上記投薬量範囲または投薬量レベルのいずれも、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストおよび/またはアンタゴニストあるいはそれに関連した化合物に用いることができる。

    NC Ca−ATPチャネルは、I型スルホニル尿素受容体(SUR1)のアンタゴニストによって遮断され、SUR1活性化因子によって開口される。 より詳細には、I型スルホニル尿素受容体(SUR1)のアンタゴニストは、K ATPチャネルの遮断因子を含み、SUR1活性化因子は、K ATPチャネルの活性化因子を含む。 より具体的には、本発明に係るNC Ca−ATPチャネルは、20から50pSの間でカリウムイオン(K )に対する単一チャネルコンダクタンスを有する。 また、NC Ca−ATPチャネルは、生理学的濃度範囲、すなわち、10 −8から10 −5 Mの濃度範囲で、細胞膜の細胞質側にあるCa 2+によって刺激も受ける。 また、NC Ca−ATPチャネルは、生理学的濃度範囲、すなわち、10 −1から10Mの濃度範囲で、細胞質ATPによって阻害も受ける。 また、NC Ca−ATPチャネルは、以下の陽イオン:K 、Cs 、Li 、Na に対し、いずれか2種類の陽イオン間の透過率が0.5よりも大きく、かつ2よりも小さいという程度まで透過性ももつ。

    本発明の特定の実施形態は、神経細胞、または神経膠細胞、または神経内皮細胞、またはこれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATPチャネルを活性化するのに有効な化合物の一定量を被験体に投与して、過剰増殖性疾患を治療する方法を含む。 チャネルの活性化によって、細胞の脱分極化を引き起こすナトリウムイオン(Na )の流入をもたらす。 Na の流入は浸透圧勾配を変化させて、細胞へのの流入をもたらし、最終的には壊死細胞死をもたらす細胞毒性浮腫を引き起こす。

    過剰増殖性疾患は腫瘍、例えば、良性または悪性の腫瘍である。 より具体的には、腫瘍は神経腫または神経膠腫である。 さらに、腫瘍は、原発性脳腫瘍または転移性脳腫瘍から発生しうる。 神経膠腫は、星状細胞腫、脳幹膠腫、上衣腫、視神経膠腫、および希突起膠腫を含むが、これらに限定されない。 また、腫瘍は、グリア芽腫、髄芽腫、脈絡叢乳頭腫、腫瘍転移、髄膜腫、下垂体腺腫、シュワン細胞腫、リンパ腫、先天性腫瘍、神経肉腫、神経線維腫症、神経芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、松果体部腫瘍、および未分化神経外胚葉性腫瘍でもよい。

    活性化化合物またはアゴニストは、I型スルホニル尿素受容体のアゴニストでもよい。 例えば、本発明で使用できるアゴニストは、例えば、ジアゾキシド、ピナシジル、P1075、およびクロマカリンである、SUR1のアゴニストを含むが、これらに限定されない。 その他のアゴニストは、例えば、3−イソプロピルアミノ−7−メトキシ−4H−1,2,4−ベンゾチアジアジン1,1−ジオキシド(NNC55−9216)、6,7−ジクロロ−3−イソプロピルアミノ−4H−1,2,4−ベンゾチアジアジン1,1−ジオキシド(BPDZ154)、7−クロロ−3−イソプロピルアミノ−4H−1,2,4−ベンゾチアジアジン1,1−ジオキシド(BPDZ73)、6−クロロ−3−イソプロピルアミノ−4H−チエノ[3,2−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド(NNC55−0118)4,6−クロロ−3−(1−メチルシクロプロピル)アミノ−4H−チエノ[3,2−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド(NN414)、3−(3−メチル−2−ブチルアミノ)−4H−ピリド[4,3−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド(BPDZ44)、3−(1',2',2'−トリメチルプロピル)アミノ−4H−ピリド(4,3−e)−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド(BPDZ62)、3−(1',2',2'−トリメチルプロピル)アミン−4H−ピリド(2,3−e)−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド(BPDZ79)、2−アルキル−3−アルキルアミノ−2H−ベンゾ−および2−アルキル−3−アルキルアミノ−2H−ピリド[4,3−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド、6−クロロ−3−アルキルアミノ−4H−チエノ[3,2−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド誘導体、4−N−置換型および−非置換型の3−アルキル−および3−(アルキルアミノ)−4H−ピリド[4,3−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシドである、ジアゾキシド誘導体を含むが、これらに限定されない。 また、6−クロロ−2−メチルキノリン−4(1H)−オン(HEI713)およびLN533021など、その他の化合物、ならびにアリールシアノグアニジン薬物群がSUR1の活性化因子またはアゴニストとして知られている。 その他の使用可能な化合物は、K ATPチャネルを活性化することが知られている化合物などである。

    更なる実施形態では、本方法は、NC Ca−ATPチャネルを活性化し、刺激し、または開口させる活性化化合物と組み合わせて、被験体に抗癌治療を施すことを含む。 抗癌療法または抗腫瘍療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、外科手術、またはこれらの組み合わせである。

    本発明の別の実施形態は、被験体の脳内の腫瘍の周囲にある腫瘍脳関門の完全性を破壊する方法であって、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはこれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATPチャネルを活性化するのに有効な化合物を被験体に投与する工程を包含する方法を含む。 この方法は、さらに、抗癌療法または抗腫瘍療法が、化学療法、放射線療法、免疫療法、外科手術、またはこれらの組み合わせである抗癌療法を被験体に施す工程を包含する。

    さらに、本発明の別の実施形態は、神経細胞または神経膠細胞または神経内皮細胞の細胞死を誘導する方法であって、細胞の中でNC Ca−ATPチャネルを活性化するのに有効な化合物を細胞に投与する工程を包含する方法を含む。 NC Ca−ATPチャネルの活性化は、細胞の脱分極を引き起こすナトリウムイオン(Na )の流入をもたらす。 Na の流入は、浸透圧勾配を変化させて、細胞内への水の流入を引き起こし、究極的には壊死性細胞死をもたらす細胞毒性浮腫へと至る。

    さらに、本発明の別の実施形態は、血栓溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アニストレプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ)、抗凝固剤または抗血小板剤(例えば、アスピリン、ワルファリンまたはクマディン)、スタチン、利尿剤、血管拡張剤、マンニトール、ジアゾキシド、または、虚血プレコンディションを刺激または促進する類似化合物、または薬学的に受容可能なその塩、およびNC Ca−ATPチャネルを阻害する化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物を含む。 この薬学的組成物は神経保護剤であると考えることができる。 例えば、血栓溶解剤とNC Ca−ATPチャネルを阻害する化合物とを合わせて含む薬学的組成物は神経保護作用がある。 なぜなら、血栓溶解剤の投与についての治療濃度域を数時間増加させる、例えば、血栓溶解剤の投与についての治療濃度域を、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストを同時投与することによって数時間(4〜8時間)増加させることができるからである。

    このチャネルは、NC Ca−ATPチャネル阻害剤、NC Ca−ATPチャネル遮断剤、I型スルホニル尿素受容体(SUR1)アンタゴニスト、SUR1阻害剤、またはチャネルを通る膜電流の規模を低下させることができる化合物によって阻害することができる。 より詳細には、SUR1アンタゴニストは、グリベンクラミド、トルブタミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、エストロゲン、およびエストロゲン関連化合物(エストラジオール、エストロン、エストリオール、ゲニステイン、非ステロイド型エストロゲン(例えば、ジエチスチルベストール(diethylstilbestrol)、植物性エストロゲン(例えばクメストロール)、ゼラレノンなど)、およびK ATPチャネルを阻害または遮断することが知られている化合物からなる群から選択される。また、MgADPを用いてチャネルを阻害することもできる。K ATPチャネルを阻害または遮断するために使用できるその他の化合物は、トルブタミド、グリブリド(l[p−2[5−クロロ−O−アニサミド)エチル]フェニル]スルホニル]−3−シクロへキシル−3−ウレア);クロプロパミド(l−[[(p−クロロフェニル)スルホニル]−3−プロピルウレア;グリピジド(l−シクロへキシル−3[[p−[2(5−メチルピラジンカルボキサミド)エチル]フェニル]スルホニル]ウレア);またはトラザミド(ベンゼンスルホンアミド−N−[[(ヘキサヒドロ−lH−アゼピン−lイル)アミノ]カルボニル]−4−メチル)などであるが、これらに限定されない。

    本発明の別の実施形態は、NC Ca−ATPチャネルを発現する神経内皮細胞に由来する膜調製物を含む組成物を含むが、ここで、チャネルはI型スルホニル尿素受容体(SUR1)のアンタゴニストによって遮断され、SUR1活性化因子によって開口される。 より具体的には、チャネルは以下の性質を有する:(a)35pS型チャネルである、(b)約10 −8から約10 −5 Mの濃度範囲にある細胞質Ca 2+によって刺激される;(c)細胞質ATPが約0.8μMよりも低いときに開口する;そして、(d)一価陽イオンのK 、Cs 、Li 、およびNa に対して透過性である。

    さらなる実施形態において、NC Ca−ATPチャネルを阻害する化合物は、血栓溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アニストレプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ)、抗凝固剤または抗血小板剤(例えば、アスピリン、ワルファリンまたはクマディン)、スタチン、利尿剤、血管拡張剤(例えば、ニトログリセリン)、マンニトール、ジアゾキシド、または、虚血プレコンディションを刺激または促進する類似化合物と併用して投与することができる。

    さらに、別の実施形態は、被験体における急性脳虚血を治療する方法であって、一定量の血栓溶解剤またはその薬学的に受容可能なその塩と、NC Ca−ATPチャネルを阻害する化合物またはその薬学的に受容可能な塩の一定量とを組み合わせて被験体に投与する工程を包含する方法を含む。 特定の実施形態では、血栓溶解剤は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アニストレプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、またはそれらを組み合わせたものである。 SUR1アンタゴニストは、標準的な非経口または消化による経路で投与することができ、例えば、SUR1アンタゴニストは、ボーラス注入液(bolus injection)として、または輸液(infusion)として、またはそれらを併用して投与することができる。

    チャネルは、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせの上で発現される。 阻害剤は、細胞内へのNa の流入を遮断して、細胞が脱分極化するのを防止する。 それによって、細胞内へのNa の流入の阻害は、細胞毒性浮腫を予防し、出血性転換を低減する。 したがって、この治療は、神経細胞および/または神経内皮細胞の細胞死または壊死を低減する。

    特定の実施形態において、被験体に投与されるSUR1アンタゴニストの量は、約0.0001μg/kg/日から約20mg/kg/日、約0.01μg/kg/日から約100μg/kg/日、または約100μg/kg/日から約20mg/kg/日までの範囲内にある。 さらに、SUR1アンタゴニストは、治療が、一日当り(1、2、3、4など)、一週当り(1、2、3、4、5など)、一月当り(1、2、3、4、5など)で投与されるSUR1アンタゴニストの量またはSUR1アンタゴニストの用量を含む形で被験体に投与することができる。 治療は、被験体に投与されるSUR1アンタゴニストの量が、一回の治療あたり約0.0001μg/kgから約20mg/kg、約0.01μg/kgから約100μg/kg、または約100μg/kgから約20mg/kgまでの範囲内になるよう投与することができる。

    本発明の別の実施形態は、脳卒中を患う被験体の死亡率を低下させる方法であって、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATPチャネルを阻害するのに有効な化合物を被験体に投与する工程を包含する方法を含む。 本化合物は、脳卒中のサイズを減少させ、梗塞周囲組織に存在する浮腫を縮小させる。 本化合物は、消化的(例えば、経口、口腔内、直腸内、または舌下)、または非経口(例えば、静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、皮下、腹腔内、または脳室内)、および/または局所的(例えば、経皮)、粘膜、または、脳実質への直接注入によって投与することができる。

    さらに、別の実施形態は、被験体の梗塞周囲組織領域に存在する浮腫を低減する方法であって、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATPチャネルを阻害するのに有効な化合物を被験体に投与する工程を包含する方法を含む。

    さらなる実施形態は、脳卒中を発症するリスクを有する被験体を治療する方法であって、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATPチャネルを阻害するのに有効な化合物を被験体に投与する工程を包含する方法を含む。

    特定の実施形態において、被験体は心臓疾患の治療を受けており、そのため、この疾患は、被験体が脳卒中を発症するリスクを高める。 この治療は、例えば、心筋梗塞を治療するために血栓溶解剤を使用することを含むことが可能である。 さらに、被験体は、心房細動または凝固障害を患っているために、脳卒中の発症リスクを有する可能性がある。 その他脳卒中を発症するリスクを有する被験体には、塞栓を発症するリスクを有するもの、外科手術を受けているもの(例えば、血管手術または神経外科手術)、または、脳卒中を起すリスクを高める治療、例えば、脳/血管内治療、血管造影、またはステント留置術を受けているものなどである。

    本発明の別の実施形態は、脳浮腫を発症するリスクを有する被験体を治療する方法であって、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATPチャネルを阻害するのに有効な化合物を被験体に投与する工程を包含する方法を含む。 リスクを有する被験体は、動静脈奇形または腫瘤占拠性病変(mass−occupying lesion)(例えば、血腫)を患っているか、または、脳外傷のリスクを高める活動に関与しているかもしれない。

    さらに、本発明の別の実施形態は、被験体の脳膿瘍周囲にある神経膠症カプセルの完全性を維持する方法であって、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATPチャネルを阻害および/または遮断するのに有効な化合物を被験体に投与する工程を包含する方法を含む。

    さらに、本発明の別の方法は、脳における神経細胞浮腫および/または細胞毒性損傷を診断する方法であって、SUR1のアンタゴニストを標識すること、標識されたSUR1のアンタゴニストを被験体に投与すること、被験体の脳において標識されたSUR1のアンタゴニストのレベルを測定することを含み、標識されたSUR1のアンタゴニストが存在することが、脳内に神経細胞浮腫および/または細胞毒性損傷があることを示す。

    本発明の別の方法は、被験体における脳腫瘍の境界を決定することを含み、SUR1のアンタゴニストを標識すること、標識されたSUR1のアンタゴニストを被験体に投与すること、被験体の脳における標識されたSUR1のアンタゴニストを視覚化することを含み、標識されたSUR1のアンタゴニストが存在することが、脳腫瘍、例えば、転移性腫瘍の境界を示す。 特定の実施形態において、視覚化工程は、ポジトロン放出断層撮影法(PET)を用いて行われる。

    さらなる実施形態において、本方法は、脳卒中後の周辺部を決定する方法を含み得、SUR1のアンタゴニストを標識すること、標識されたSUR1のアンタゴニストを被験体に投与すること、被験体の脳における標識されたSUR1のアンタゴニストを視覚化することを含み、標識されたSUR1のアンタゴニストが存在することが、脳卒中後の周辺部を示す。

    さらに、本発明は、脳卒中神経疾患をモニタリングする方法であって、SUR1のアンタゴニストを標識すること、標識されたSUR1のアンタゴニストを被験体に投与すること、被験体の脳における標識されたSUR1のアンタゴニストを視覚化することを含み、標識されたSUR1のアンタゴニストが存在することが、病気の進行を示すものである方法を含む。 特定の実施形態において、この視覚化工程は、脳卒中の進行をモニタリングするために毎日行われる。

    別の実施形態は、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATPチャネルを阻害する化合物、およびIV溶液を含む神経保護剤注入キットを含む。 この化合物および溶液は、同一の容器内に含まれるか、異なった容器内に含まれる。 より詳細には、化合物は、溶液の容器の中に含まれる。

    キットは、さらに、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATPチャネルを阻害する化合物が予め充填されている注射器を含む神経保護剤ボーラスキットを含むことができる。

    さらに、別の実施形態は、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATPチャネルを阻害する化合物、および血栓溶解剤(例えば、tPA)、抗凝固剤(例えば、ワルファリンまたはクマディン)、抗血小板剤(例えば、アスピリン)、利尿剤(例えば、マンニトール)、スタチン、または血管拡張剤(例えば、ニトログリセリン)を含む神経保護剤キットを含む。

    以上で、以下の発明の詳細な説明をより理解しやすいものとするために、本発明の特徴および技術的利点を幾分広範に概観した。 本発明の請求の範囲の対象を形成する本発明のさらなる特徴と利点を以下に説明する。 当業者は、開示された概念および具体的な実施形態は、本発明と同じ目的を実施するために別の構造に改変したり、設計したりする基礎として利用することができると解すべきである。 また、当業者は、そのような同等の構成を、添付の請求の範囲に示されている発明の趣旨および範囲から外れるものと認識してはならない。 以下の説明を添付の図面と一緒に考慮すると、本発明の特徴と考えられる新規の特徴が、その構成および操作法に関して、さらなる目的および利点とともに明らかになろう。 しかし、各図面は、例示および説明のためのみに提示されたものであり、本発明の限界を規定するためのものではないことを明確に理解されたい。
    本発明は例えば、以下の項目を提供する:
    (項目1)
    被験体における過剰増殖性疾患を治療する方法であって、神経細胞、神経膠細胞、または神経内皮細胞においてNC Ca−ATP チャネルを活性化するのに有効な化合物の一定量を被験体に投与する工程を包含する、方法。
    (項目2)
    前記チャネルの活性化が、細胞の脱分極を引き起こすナトリウムイオン(Na )の流入をもたらす、項目1に記載の方法。
    (項目3)
    前記Na の流入が、細胞内への水の流入を引き起こす浸透圧勾配を変化させる、項目2に記載の方法。
    (項目4)
    前記細胞内への水の流入が細胞毒性浮腫をもたらす、項目3に記載の方法。
    (項目5)
    細胞毒性浮腫が壊死性細胞死をもたらす、項目4に記載の方法。
    (項目6)
    前記神経膠細胞が、星状細胞、上衣細胞、乏突起膠細胞、および小膠細胞からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
    (項目7)
    前記過剰増殖性疾患が腫瘍である、項目1に記載の方法。
    (項目8)
    前記腫瘍が良性または悪性の腫瘍である、項目7に記載の方法。
    (項目9)
    前記腫瘍が神経腫である、項目7に記載の方法。
    (項目10)
    前記腫瘍が、原発性脳腫瘍または転移性脳腫瘍に由来する、項目7に記載の方法。
    (項目11)
    前記腫瘍が神経膠腫である、項目7に記載の方法。
    (項目12)
    前記神経膠腫が、星状細胞腫、脳幹膠腫、上衣腫、視神経膠腫、および希突起膠腫からなる群から選択される、項目12に記載の方法。
    (項目13)
    前記腫瘍が、グリア芽腫、髄芽腫、脈絡叢乳頭腫、腫瘍転移、髄膜腫、下垂体腺腫、シュワン細胞腫、リンパ腫、先天性腫瘍、神経肉腫、神経線維腫症、神経芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、松果体部腫瘍、および未分化神経外胚葉性腫瘍からなる群から選択される、項目7に記載の方法。
    (項目14)
    チャネルが以下の特徴を有する、項目1に記載の方法:(a)35pS型チャネルである;(b)約10 −8 から約10 −5 Mの濃度範囲にある細胞質Ca 2+ によって促進される;(c)細胞質ATPが約0.8μMよりも低いときに開口する;そして、(d)一価陽イオンのK 、Cs 、Li 、およびNa に対して透過性である。
    (項目15)
    前記活性化化合物が、ジアゾキシド、ピナシジル、およびクロマカリンからなる群から選択される1型スルホニル尿素受容体アゴニストである、項目1に記載の方法。
    (項目16)
    前記活性化化合物が、3−イソプロピルアミノ−7−メトキシ−4H−1,2,4−ベンゾチアジアジン1,1−ジオキシド(NNC55−9216);6,7−ジクロロ−3−イソプロピルアミノ−4H−1,2,4−ベンゾチアジアジン1,1−ジオキシド(BPDZ154);7−クロロ−3−イソプロピルアミノ−4H−1,2,4−ベンゾチアジアジン1,1−ジオキシド(BPDZ73);6−クロロ−3−イソプロピルアミノ−4H−チエノ[3,2−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド(NNC55−0118);6−クロロ−3−(1−メチルシクロプロピル)アミノ−4H−チエノ[3,2−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド(NN414);3−(3−メチル−2−ブチルアミノ)−4H−ピリド[4,3−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド(BPDZ44);3−(1',2',2'−トリメチルプロピル)アミノ−4H−ピリド(4,3−e)−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド(BPDZ62);および3−(1',2',2'−トリメチルプロピル)アミン−4H−ピリド(2,3−e)−1,2,4−チアジアジン,1,1−ジオキシド(BPDZ79)からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
    (項目17)
    被験体に抗癌治療を施す工程をさらに含む、項目1に記載の方法。
    (項目18)
    前記抗癌治療が、化学療法、放射線療法、免疫療法、外科手術、またはこれらの組み合わせである、項目17に記載の方法。
    (項目19)
    神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATP チャネルを活性化するのに有効な化合物を被験体に投与する工程を包含する、被験体の脳内の腫瘍の周囲にある腫瘍脳関門の完全性を破壊する方法。
    (項目20)
    被験体に抗癌治療を施す工程をさらに含む、項目19に記載の方法。
    (項目21)
    抗癌治療が、化学療法、放射線療法、免疫療法、外科手術、またはこれらの組み合わせである、項目20に記載の方法。
    (項目22)
    前記活性化化合物が、ジアゾキシド、ピナシジル、およびクロマカリンからなる群から選択される1型スルホニル尿素受容体アゴニストである、項目19に記載の方法。
    (項目23)
    神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせの細胞死を誘導する方法であって、該細胞においてNC Ca−ATP チャネルを活性化するのに有効な化合物を該細胞に投与する工程を包含する、方法。
    (項目24)
    前記神経膠細胞が、星状細胞、上衣細胞、乏突起膠細胞、および小膠細胞からなる群から選択される、項目23に記載の方法。
    (項目25)
    前記チャネルの活性化がNa の流入を生じ、それにより細胞毒性浮腫の原因となる細胞内への水の流入を引き起こす浸透圧勾配を変化させる、項目23に記載の方法。
    (項目26)
    前記細胞毒性浮腫が細胞死をもたらす、項目25に記載の方法。
    (項目27)
    血栓溶解剤、抗凝固剤、抗血小板剤、スタチン、利尿剤、血管拡張剤または薬学的に受容可能なその塩、およびNC Ca−ATP チャネルを阻害する化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む、薬学的組成物。
    (項目28)
    前記チャネルが、1型スルホニル尿素受容体(SUR1)アンタゴニストによって阻害される、項目27に記載の薬学的組成物。
    (項目29)
    前記SUR1アンタゴニストが、グリベンクラミド、トルブタミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、エストロゲン、およびエストロゲン関連化合物からなる群から選択される、項目28に記載の薬学的組成物。
    (項目30)
    前記血栓溶解剤が、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アニストレプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、またはこれらの組み合わせである、項目27に記載の薬学的組成物。
    (項目31)
    前記抗血小板剤がアスピリンである、項目27に記載の薬学的組成物。
    (項目32)
    前記抗凝血剤がワルファリンまたはクマディンである、項目27に記載の薬学的組成物。
    (項目33)
    前記血管拡張剤がニトログリセリンである、項目27に記載の薬学的組成物。
    (項目34)
    前記薬学的組成物が神経保護剤である、項目27に記載の薬学的組成物。
    (項目35)
    NC Ca−ATP チャネルを発現する内皮細胞に由来する膜調製物を含む組成物であって、チャネルがI型スルホニル尿素受容体(SUR1)のアンタゴニストによって遮断される組成物。
    (項目36)
    チャネルが以下の特徴を有する、項目35に記載の組成物:(a)35pS型チャネルである;(b)約10 −8 から約10 −5 Mの濃度範囲にある細胞質Ca 2+ によって促進される;(c)細胞質ATPが約0.8μMよりも低いときに開口する;そして、(d)一価陽イオンのK 、Cs 、Li 、およびNa に対して透過性である。
    (項目37)
    前記SUR1アンタゴニストが、グリベンクラミド、トルブタミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、エストロゲン、およびエストロゲン関連化合物からなる群から選択される、項目35に記載の組成物。
    (項目38)
    前記SUR1アンタゴニストが、血栓溶解剤を投与することができる治療濃度域を増加させる、項目35に記載の組成物。
    (項目39)
    血栓溶解剤またはその薬学的に受容可能な塩の一定量を、NC Ca−ATP チャネルを阻害する化合物またはその薬学的に受容可能な塩と組み合わせて被験体に投与する工程を包含する、被験体における急性脳虚血を治療する方法。
    (項目40)
    前記チャネルが、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせに発現される、項目39に記載の方法。
    (項目41)
    前記チャネルが1型スルホニル尿素受容体(SUR1)のアンタゴニストによって遮断される、項目39に記載の方法。
    (項目42)
    前記SUR1アンタゴニストが、グリベンクラミド、トルブタミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、エストロゲン、およびエストロゲン関連化合物からなる群から選択される、項目41に記載の方法。
    (項目43)
    前記被験体に投与されるSUR1アンタゴニストの量が、約0.0001μg/kg/日から約20mg/kg/日までの範囲内にある、項目42に記載の方法。
    (項目44)
    前記被験体に投与されるSUR1アンタゴニストの量が、約0.01μg/kg/日から約100μg/kg/日までの範囲内にある、項目43に記載の方法。
    (項目45)
    前記被験体に投与されるSUR1アンタゴニストの量が、約100μg/kg/日から約20mg/kg/日までの範囲内にある、項目43に記載の方法。
    (項目46)
    前記SUR1アンタゴニストがボーラス注入液として投与される、項目43に記載の方法。
    (項目47)
    前記SUR1アンタゴニストが輸液として投与される、項目43に記載の方法。
    (項目48)
    前記SUR1アンタゴニストがボーラス注入液として、輸液と組み合わせて投与される、項目43に記載の方法。
    (項目49)
    前記被験体に投与されるSUR1アンタゴニストの量が、約0.0001μg/kg/処置から約20mg/kg/処置までの範囲内にある、項目42に記載の方法。
    (項目50)
    前記被験体に投与されるSUR1アンタゴニストの量が、約0.01μg/kg/処置から約100μg/kg/処置までの範囲内にある、項目49に記載の方法。
    (項目51)
    前記被験体に投与されるSUR1アンタゴニストの量が、約100μg/kg/処置から約20mg/kg/処置までの範囲内にある、項目49に記載の方法。
    (項目52)
    前記血栓溶解剤が、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アニストレプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、またはこれらの組み合わせである、項目39に記載の方法。
    (項目53)
    前記SUR1アンタゴニストが、細胞の中へのNa の流入を遮断して、それにより細胞の脱分極を防止する、項目41に記載の方法。
    (項目54)
    前記SUR1アンタゴニストが、細胞の中へのNa の流入を遮断して、それにより細胞毒性浮腫を防止する、項目41に記載の方法。
    (項目55)
    前記治療によって出血性変化が低下する、項目39に記載の方法。
    (項目56)
    前記NC Ca−ATP チャネルを阻害する化合物が、血栓溶解剤の投与のための治療濃度域を増加させる、項目39に記載の方法。
    (項目57)
    前記治療によって神経細胞および/または内皮細胞の細胞死が低下する、項目39に記載の方法。
    (項目58)
    神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATP チャネルを阻害するのに有効な化合物を被験体に投与することを含む、脳梗塞を患う被験体の死亡率を低下させる方法。
    (項目59)
    前記化合物が、脳梗塞の大きさを減少させる、項目58に記載の方法。
    (項目60)
    前記化合物が、梗塞周辺組織に位置する浮腫を抑制する、項目58に記載の方法。
    (項目61)
    前記被験体に血栓溶解剤を投与する工程をさらに包含する、項目58に記載の方法。
    (項目62)
    前記被験体に抗凝固剤または抗血小板剤を投与する工程をさらに包含する、項目58に記載の方法。
    (項目63)
    前記抗凝固剤または抗血小板剤がアスピリン、ワルファリン、またはクマディンである、項目62に記載の方法。
    (項目64)
    前記被験体にスタチン、利尿剤、または血管拡張剤を投与する工程をさらに包含する、項目58に記載の方法。
    (項目65)
    前記被験体にマンニトールを投与する工程をさらに包含する、項目58に記載の方法。
    (項目66)
    前記化合物を消化的または非経口的に投与する、項目58に記載の方法。
    (項目67)
    消化的が、経口、口腔内、直腸、または舌下を含む、項目66に記載の方法。
    (項目68)
    非経口的が、静脈内、皮内、筋内、動脈内、くも膜下、皮下、腹腔内、または脳室内を含む、項目66に記載の方法。
    (項目69)
    非経口的が脳実質内への注入を含む、項目66に記載の方法。
    (項目70)
    化合物を局所的または粘膜に投与する工程を包含する、項目58に記載の方法。
    (項目71)
    局所的が経皮を含む、項目70に記載の方法。
    (項目72)
    神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATP チャネルを阻害するのに有効な化合物を被験体に投与する工程を包含する、被験体の梗塞周辺領域における浮腫を抑制する方法。
    (項目73)
    神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATP チャネルを阻害するのに有効な化合物を被験体に投与する工程を包含する、被験体における脳膿瘍周囲にある神経膠症カプセルの完全性を維持する方法。
    (項目74)
    神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATP チャネルを阻害するのに有効な化合物を被験体に投与する工程を包含する、脳梗塞を発症するリスクを有する被験体を治療する方法。
    (項目75)
    前記被験体が心臓状態の治療を受けている、項目74に記載の方法。
    (項目76)
    前記心臓状態が心筋梗塞である、項目75に記載の方法。
    (項目77)
    前記治療が血栓溶解剤である、項目76に記載の方法。
    (項目78)
    前記被験体が、心房細動または凝固障害を患っている、項目74に記載の方法。
    (項目79)
    抗凝固剤を、NC Ca−ATP チャネルを阻害するのに有効な化合物と組み合わせて投与する工程をさらに包含する、項目78に記載の方法。
    (項目80)
    前記抗凝固剤が、ワルファリンまたはクマディンである、項目79に記載の方法。
    (項目81)
    前記被験体が肺塞栓を発症するリスクを有する、項目74に記載の方法。
    (項目82)
    前記被験体が、被験体の脳梗塞のリスクを高める治療を受けている、項目74に記載の方法。
    (項目83)
    前記治療が外科手術である、項目82に記載の方法。
    (項目84)
    前記外科手術が血管手術または神経外科手術である、項目83に記載の方法。
    (項目85)
    前記治療が、脳/血管内治療、血管造影法、またはステント留置である、項目82に記載の方法。
    (項目86)
    神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATP チャネルを阻害するのに有効な化合物を被験体に投与する工程を包含する、脳浮腫を発症するリスクを有する被験体を治療する方法。
    (項目87)
    前記被験体が動静脈奇形または腫瘤占拠性病変を患っている、項目86に記載の方法。
    (項目88)
    前記被験体が、脳損傷の危険が高い活動に関与している、項目86に記載の方法。
    (項目89)
    被験体の脳における神経細胞浮腫および/または細胞毒性損傷を診断する方法であって、
    SUR1のアンタゴニストを標識する工程、
    標識されたSUR1のアンタゴニストを被験体に投与する工程、
    被験体の脳における標識されたSUR1のアンタゴニストのレベルを測定する工程
    を包含し、
    標識されたSUR1のアンタゴニストが該被験体の脳内に存在することが、脳内に神経細胞浮腫および/または細胞毒性損傷があることを示す、方法。
    (項目90)
    被験体における脳腫瘍の境界を決定する方法であって、
    SUR1のアンタゴニストを標識する工程、
    標識されたSUR1のアンタゴニストを被験体に投与する工程、
    被験体の脳における標識されたSUR1のアンタゴニストを視覚化する工程
    を包含し、
    標識されたSUR1のアンタゴニストが被験体の脳内に存在することが、該脳腫瘍の境界を示す、方法。
    (項目91)
    前記脳腫瘍が転移性腫瘍である、項目90に記載の方法。
    (項目92)
    視覚化する工程が、陽電子放出断層撮影法(PET)による、項目90に記載の方法。
    (項目93)
    被験体における脳梗塞後の周辺部を決定する方法であって、
    SUR1のアンタゴニストを標識する工程、
    標識されたSUR1のアンタゴニストを被験体に投与する工程、
    標識されたSUR1のアンタゴニストを被験体の脳において視覚化する工程
    を包含し、
    標識されたSUR1のアンタゴニストが被験体の脳内に存在することが、該脳梗塞後の周辺部を示す、方法。
    (項目94)
    被験体における脳梗塞神経疾患をモニタリングする方法であって、
    SUR1のアンタゴニストを標識する工程、
    標識されたSUR1のアンタゴニストを被験体に投与する工程、
    標識されたSUR1のアンタゴニストを被験体の脳において視覚化する工程
    を包含し、
    標識されたSUR1のアンタゴニストが該被験体の脳内に存在することが、該疾患の進行を示す、方法。
    (項目95)
    視覚化する工程が毎日行われる、項目92に記載の方法。
    (項目96)
    神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATP チャネルを阻害するのに有効な化合物、およびIV溶液を含む、神経保護剤輸液キット。
    (項目97)
    前記化合物および溶液が同一の容器内に含まれる、項目96に記載のキット。
    (項目98)
    前記化合物および溶液が異なった容器内に含まれる、項目96に記載のキット。
    (項目99)
    前記化合物を含む容器が、溶液の容器内に含まれる、項目98に記載のキット。
    (項目100)
    神経保護剤ボーラス用キットをさらに含む、項目96に記載のキットであって、該ボーラス用キットが、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATP チャネルを阻害するのに有効な化合物が予め入っている注射器を含む、キット。
    (項目101)
    神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおいてNC Ca−ATP チャネルを阻害するのに有効な化合物、および血栓溶解剤、抗凝固剤、抗血小板剤、利尿剤、スタチン、または血管拡張剤を含む、神経保護剤キット。
    (項目102)
    前記血栓溶解剤がtPAである、項目101に記載のキット。
    (項目103)
    前記抗凝固剤がワルファリンまたはクマディンである、項目101に記載のキット。
    (項目104)
    前記抗血小板剤がアスピリンである、項目101に記載のキット。
    (項目105)
    前記血管拡張剤がニトログリセリンである、項目101に記載のキット。
    (項目106)
    前記利尿剤がマンニトールである、項目101に記載のキット。

    本発明をより完全に理解するため、ここで、添付の図面とともに以下の説明に言及する。

    外部からホスファチジルイノシトール−4,5−ビスホスフェート(PIP

    )を加えると、バス溶液(bath solution)中にATPが存在するにもかかわらず、NC

    Ca−ATPチャネルの活性化をもたらすことが示されている。 まず、チャネル活性を遮断するのに十分である、1μM Ca

    2+および10μM ATPを含むバス溶液を用いて、R1星状細胞由来の膜のインサイドアウトパッチにおけるチャネル活性を記録した。 50μMのPIP

    を加えるとチャネル活性化が起こり、これは、ATPに対するチャネルのアフィニティーの見かけの低下を反映する。

    R1星状細胞の中のNC

    Ca−ATPチャネルがエストロゲンによって阻害されることを示す。 記録の最初の部分は、メスから得られたR1星状細胞由来の膜の細胞付着性パッチに記録された、いくつかの多層構造(superimposed)チャネルに由来する活発な活性を示す。 バスに10nMのエストロゲンを添加すると、チャネル活性の強な阻害が直ちにもたらされた。 関与する機構は、エストロゲン受容体が介在するホスホリパーゼC(PLC)の活性化に関連し、膜からのPIP

    の枯渇をもたらし、ATPに対するアフィニティーの見かけの増加を反映していると考えられる。

    図3A〜3Bは、オスおよびメス由来のR1星状細胞が、エストロゲン受容体およびNC

    Ca−ATPチャネルのマーカーであるSUR1を発現することを実証するウエスタンブロットを示している。 細胞溶解物はオス(M)およびメス(F)由来のゼラチンスポンジ移植物から得たものであり、コントロールとして使用した子宮由来の溶解物を用いて、2つの希釈度(4×および1×)で実験を行った。 図3Aはエストロゲン受容体(ER)に対する抗体を使用して作成したものであり、ERαおよびERβの両方が両方の性別由来の星状細胞で発現されていることを実証している。 膵臓組織をコントロールとして用いたウエスタンブロットによって、SUR1も両方の性別由来の細胞により発現されていることが示された(図3B)。

    オス由来のR1星状細胞では、NC

    Ca−ATPチャネルがエストロゲンによって阻害されることを示している。 記録の最初の部分は、オスから得られたR1星状細胞由来の膜の細胞付着性パッチに記録された、いくつかの多層構造チャネルに由来する活発な活性を示す。 バスに10nMのエストロゲンを添加すると、チャネル活性の強力な阻害が直ちにもたらされた。

    図5A〜5Dは神経膠症カプセルを示す。 図5Aは、大きなゼラチンスポンジの移植部位を通して切片にされたラットの脳の冠状切片を示す。 すなわち、スポンジ(最深部の暗色領域)が神経膠症カプセル(明色領域)によって包まれており、その外側には、メチレンブルーを殺処理前に投与して確認した血管原性浮腫(外側の暗色領域)が見える。 図5Bおよび5Cはそれぞれ、GFAPについて免疫標識した神経膠症カプセルの低倍率像および高倍率像を示す。 図5Dは、ゼラチンスポンジ移植物の内部にあるGFAP標識された細胞の高倍率像を示す。

    図6A〜6Hは免疫標識された星状細胞を示す。 図6A、6C、6Eは、GFAP(図6C)およびビメンチン(図6E)について免疫標識された、新鮮に単離された大型の明位相のR1星状細胞を示す。 図6B、D、Fは、GFAP(図6D)およびビメンチン(図6F)について免疫標識された、新鮮に単離された小型の暗位相のR2星状細胞を示す。 図6Gは、神経膠症カプセルから単離した星状細胞の初代培養を示すが、R1星状細胞は大きな多形性細胞となり(図6Gb)、R2星状細胞が小さな双極細胞となっている(図6Ga)。 図6Hは、R1星状細胞ではなくR2星状細胞が、サソリ、レイウルス・キンケストリアトゥス(Leiurus quinquestriatus)由来の、フルオレセインでタグ付けされたクロロトキシン(Chlorotoxin)で標識されることを示す。

    図7A〜7Dは、神経膠症カプセルの内部域がSUR2ではなくSUR1を発現することを示す。 SUR1に対する免疫標識(図7A)は、ゼラチンスポンジ(gf)に隣接した細胞における顕著な発現を示したが、SUR2に対する免疫標識は発現を示さなかった(図7B)。 ゼラチンスポンジ移植物から酵素的に単離され、SUR1について免疫標識された単一の細胞を示す(図7C)。 図7Dは、コントロールインスリノーマ細胞(レーン2)、単離R1星状細胞(レーン3)におけるSUR1に対するRT−PCR、ならびにコントロール心臓細胞(レーン4)におけるSUR2に対するRT−PCRを示すが、単離R1星状細胞(レーン5)では見られない。

    図8A〜8Iは、神経膠症カプセルのさまざまな特徴を示す。 神経膠症カプセルは、数細胞層の厚さがあるGFAP陽性細胞によって特徴づけられるものである(図8A)。 神経膠症カプセルの内部域のみが、ピモニドゾール(pimonidozole)標識(図8B)、およびHIF1αに対する免疫標識(図8C)によって示されるように低酸素状態である。 また、内部域のみが、SUR1に対して(図8D)、また、密着結合タンパク質であるZO−1(図8E)、およびオクルディン(occluden)(図8F)に対して免疫標識される。 図8G〜Iは、ピモニダゾール、HIF1α、およびオクルディンがすべて、神経膠症カプセルの内部域を形成するGFAP陽性星状細胞に局在することを示している。

    図9A〜Bは、神経膠症カプセルに対するNC

    Ca−ATPチャネル阻害(図9A)およびNC

    Ca−ATPチャネル活性化(図9B)の効果を示す。 ゼラチンスポンジ移植物を有する動物を、化合物をゼラチンスポンジ領域に直接送達する浸透圧ミニポンプを介してグリベンクラミド注入(図9A)またはジアゾキシド注入(図9B)によって処理した。 GFAPに対する免疫標識は、グリベンクラミドによるチャネル阻害の結果、明確な神経膠症カプセルの形成をもたらす(図9A)が、ジアゾキシドによるチャネル活性化は、内部域の細胞のジアゾキシドに誘導された壊死によって、より広範で、境界が不鮮明なカプセル(図9B)の形成をもたらすことを明らかにした。

    図10A〜Bは、ゼラチンスポンジ周囲の領域へのジアゾキシド注入により、多形核白血球(PMN)の重度の浸潤が生じたことを示す。 DAPIによる核標識は、高密度に充填された小細胞がゼラチンスポンジの近くにあることを示し(図10A)、PMN特異的マーカーであるMMP−8を用いた免疫標識は、これらの細胞がPMNであることを示した(図10B)。 浸潤PMNによって示される強い炎症反応は、通常は神経膠症カプセルによって形成される、脳と異物(ゼラチンスポンジ)との間の障壁が破壊されたことによるものと考えられる。

    図11A〜11Lは、神経膠症カプセルの内部域にあるR1星状細胞が、NC

    Ca−ATPのマーカーであるSUR1を一般的に発現することを示す。 ゼラチンスポンジ移植物を有するラット(図11A〜11C)、脳膿瘍を有するラット(図11D〜11F)、および転移性腫瘍を有するヒト(図11J〜11L)の神経膠症カプセルの内部域を示す。 また、中大脳動脈の閉塞によって生じたラットの脳卒中(図11G〜11I)に隣接した反応性光沢部も示されている。 すべての例において、細胞野は、図のようにGFAPについて標識され、また、SUR1について同時標識されている。 高倍率での単一細胞の例も、それぞれの状態について示している。

    図12A〜12Cは、脳卒中の縁部付近にある星形星状細胞が、NC

    Ca−ATPチャネルのマーカーであるSUR1(図12A)を上方制御することを示している。 脳卒中の中央部では、小疱形成などの形態変化を示す細胞も、SUR1に対して免疫標識される(図12B、12C)。

    図13A〜13Cは、グリベンクラミドが、アジ化ナトリウムに誘導されるチャネル開口、および壊死性細胞死から防御することを示している。 図13Aは、新鮮に単離した4つの異なるR1星状細胞を、それぞれ30分にわたって観察した位相差画像を示す。 媒体溶液のみに曝露された細胞は、病的増悪が見られず明位相のままであった(コントロール)。 アジ化ナトリウム(1mM)への曝露によりATPが枯渇した細胞は、細胞毒性浮腫と一致する進行性の小疱形成を発生させた。 同様に、NC

    Ca−ATP開口薬、ジアゾキシドに曝露された細胞も、細胞毒性浮腫と一致する進行性の小疱形成を発生させた。 グリベンクラミドの存在下でアジ化ナトリウムに曝露された細胞は、病的増悪が見られない明位相のままであった。 図13Bおよび13Cは、インビトロでのATP枯渇によって誘導された、単離されたR1星状細胞の細胞死を示している。 新鮮に単離したR1星状細胞を、コントロール条件下、アジ化ナトリウム(1mM)に曝露後、または、グリベンクラミド(1μM)存在下でアジ化ナトリウムに曝露した後、壊死についてはヨウ化プロピジウム(PI)で(図13B)、またはアポトーシス死についてはアネキシンVで(図13C)標識した。 アジ化ナトリウムに曝露したところ、大部分が、グリベンクラミドによってそのほとんどが阻止される壊死を起した。

    図14A〜14Lは、SUR1が、MCA脳卒中で上方制御されることを示す。 MCA脳卒中の8〜16時間後の3種類の異なった動物におけるMCA−ACA間の分水界領域を、殺処理前のエバンスブルー投与および殺処理後の墨汁による灌流(図14A)によって、TTC染色(図14B)によって、およびSUR1に対する免疫蛍光画像化(図14C)によって同定した。 免疫蛍光画像は、脳卒中の中心部の3時間目の細胞におけるSUR1(図14D)、ニューロンマーカーであるNeuNに対して二重標識したもの(図14E)を示し、また、8時間目の梗塞周辺領域における細胞中のSUR1(図14G、14J)、星状細胞マーカーであるGFAP(図14H)、および内皮細胞マーカーであるフォンウィルブランド因子(図14K)に対して二重標識したものを示す。 二重標識された視野を重ね合わせた画像を示す(図14F、14I、および14L)。

    図15A〜15Gは、Kir6.1でもKir6.2でもなくSUR1が、MCA脳卒中において転写的に上方制御されることを示す。 MCA脳卒中後のさまざまな時点(図15A)、およびさまざまな場所(図15B)におけるSUR1(ほぼ180kDa)のウエスタンブロットである。 (図15A)では、溶解物はすべて、病変のある半球のTTC(+)梗塞周辺領域からのもので、表示された時点で採取したものである。 (図15B)では、溶解物はすべて、MCA脳卒中の8時間後に表示された領域から採取されたものである。 aおよびbの各レーンはそれぞれ単一の動物に由来している。 Kir6.1およびKir6.2に関する比較データと組み合わせた(図15A)および(図15B)からのデータの定量;各個別のブロットについて、β−アクチンの値に対して、およびそのブロットに対するコントロールデータに対してデータを正規化し、分析した;**、p<0.01。 SUR1に関するインサイチュハイブリダイゼーションにおいて、MCA脳卒中の3時間後、パラフィン切片は、虚血域における大型のニューロン様細胞(図15E)および毛細血管(図15F)が標識されたことを示したが、コントロール側にある同じ領域由来の組織は標識されなかった(図15G)。

    図16A〜16Dは、脳卒中の中のニューロン様細胞のNC

    Ca−ATPチャネルのパッチクランプ記録を示す。 図16Aは、MCAOの3時間後、虚血領域から酵素的に単離した大型のニューロン様細胞の位相差画像を示す。 図16Bは、電荷担体としてCs

    を用いたインサイドアウトパッチの記録を示すが、チャネル活性は、表示(矢印)の通り投与されたグリベンクラミドによって阻害され、aおよびbは表示した部分の拡大された記録を示す。 図16Cは、電荷担体としてK

    を用いたインサイドアウトパッチの表示された電位での記録を示すが、チャネル活性はグリベンクラミドにより遮断された。 図16Dは、34pSの単一チャネル傾斜コンダクタンスを示す、さまざまな電圧での単一チャネルの振幅のプロットを示す。

    図17A〜17Eは、グリベンクラミドが、MCA脳卒中の死亡率、浮腫および脳卒中のサイズを低下させることを示す。 図17Aでは、生理食塩水(白抜きの記号)またはグリベンクラミド(黒塗りの記号)で処理された、それぞれ19匹のメスおよび10匹のオスのラットからなる2つの処理群で、MCA脳卒中[悪性脳浮腫(MCE)を有する二重閉塞モデル]後7日間死亡率を評価したが、7日目の死亡率は有意に異なっていた。 オスおよびメスについてのサブ群解析も同様の結果を示した。 図17Bでは、生理食塩水またはグリベンクラミドで処理した、それぞれ6匹のオスのラットからなる2つの処理群において、MCA脳卒中(MCEモデル)の8時間後に浮腫を評価したが、湿/乾燥重量を測定する前に、まず組織をTTCで処理して、病変のある半球および対側半球を、TTC(+)およびTTC(−)部分に分けたところ、TTC(+)領域における値が統計学的に異なっていた。 図17C〜17Eでは、生理食塩水またはグリベンクラミドで処理した、それぞれ10匹のオスのラットからなる2つの処理群において、MCA脳卒中[血栓塞栓(TE)モデル]の48時間後、脳卒中のサイズを評価したが、生理食塩水で処理した動物(図17C)およびグリベンクラミドで処理した別の動物(図17D)において、MCA脳卒中(TEモデル)後にTTC染色された冠状切片の画像は、皮質節約(cortical sparing)がしばしばグリベンクラミド処理と関連していることを示している。 脳卒中のサイズの値は、半球容積の割合(百分率)で表示した(図17E)。

    図18A〜18Dは、MCA脳卒中におけるBODIPY−グリベンクラミドの組織内分布を示す。 a〜c、MCA脳卒中(MCEモデル)およびBODIPY−グリベンクラミド投与後6時間の動物の脳切片の蛍光画像;蛍光標識は、虚血領域由来の細胞、微小血管(図18A)および毛細血管(図18C)において明白であったが、対側半球においては明白ではなかった(図18B)。 (図18A、18B)の画像は、同じ動物を同じ露光時間で撮影したものである。 (図18C)において、BODIPY−グリベンクラミドで明るく標識された構造体は毛細血管であることが、単層の核によって確認できる。 図18Dでは、抗SUR1抗体で標識された、MCA脳卒中(MCEモデル)後6時間の動物の脳切片の免疫蛍光画像であって、毛細血管、および隣接するニューロン様細胞において強い標識化を示している。

    図19A〜19Hは、グリベンクラミドが出血性転換を低減することを示す。 図19A〜19Dは生理食塩水で同時処理した動物のものであり、図19E〜19Hはグリベンクラミドで同時処理した動物のものである。 左欄の冠状切片の写真は、1〜2列のみが、脳室内出血、に加えて皮質/皮下虚血領域(写真の右側にある赤い領域;矢印部分)における広範な出血性転換を示している。 同じ動物に由来する、写真の右欄のTTC処理切片は梗塞領域を示す。

    図20A〜20Bは、脳卒中における基質メタロプロテイナーゼ(MMP)のゼラチナーゼ活性、およびグリベンクラミドによる直接のMMP阻害がないことを示す酵素電気泳動を示す。 図20Aは、コントロールと比較した脳卒中組織におけるMMP−9およびMMP−2の活性化を示し、左側に組換えMMP−9およびMMP−2の活性を示す。 図20Bは、コントロール条件(CTR)下、グリベンクラミド(10μM)の存在下、およびMMP阻害薬Π(300nM、Calbiochem)の存在下で、組換え酵素のゼラチナーゼ活性、および脳卒中組織を示している。

    パッチクランプ用の調製物で酵素クリーニング後に、正常脳から新鮮に単離した大脳毛細血管の位相差顕微鏡写真を示す。

    図22A〜22Fは、新鮮に単離した脳内皮細胞および平滑筋細胞が電気生理学的に容易に識別されることを示す。 図22Aおよび22Bは、内皮細胞中(図22A)、および伸長した平滑筋細胞中(図22B)において、−120mVから+120mVまで20mVずつ200msの脱分極パルスをかける間に記録された巨視的電流を重ね合わせたものを示すが、ここで、保持電位、−60mV;ナイスタチン穿孔パッチ技術;バス溶液、2mMのCa

    2+を含む標準的なクレブス液;ピペット溶液、145mMのK

    。 図22Cおよび22Dは、9つの内皮細胞(図22C)および7つの平滑筋細胞(図22D)で記録された200−msテストパルスの終端における平均(平均±SE)電流からコンピュータ計算された電流・電圧曲線を示すが、ここで、保持電位、技術および溶液は、図22Aおよび22Bと同じである。 図22Eおよび22Fは、内皮細胞中(図22E)および平滑筋細胞中(図22F)におけるランプパルス(0.45mV/ms、保持電位−60mV)の間に記録された電流・電圧曲線を示すが、ここで、図22Aおよび22Bと同じ保持電位、技術およびバス溶液を用いるが、K

    の代わりに145mMのCs

    を含むピペット溶液を用いる。

    脳卒中におけるSUR1−mRNAの上方制御を示すリアルタイムRT−PCRを示す。

    図24A〜24Eは、R1星状細胞におけるSUR1ノックダウン(SUR1KD)が、ATP枯渇誘導型脱分極から防御することを示す。 図24Aおよび24Bは、R1細胞溶解物のウエスタンブロット(図24A)およびウエスタンブロットの定量化(図24B)によって、アンチセンスによるSUR1発現のノックダウンが確認されたことを示す。 図24C〜24Eは、アジ化ナトリウムが、SCR−ODNに曝露された細胞において大規模な脱分極化が起こる(図24C、24E)が、AS−ODNに曝露した細胞では脱分極がほとんどか全く起こらなかったこと(図24D、24E)を示す。

    図25A〜25Fは脳卒中における転写因子を示す。 MCAO後8時間の同側の梗塞周辺組織(図25A〜D)および対側のコントロール組織(図25E、25F)に由来する、ACA領域とMCA領域の間にある皮質下分水界領域の免疫蛍光画像。 梗塞周辺領域は、ニューロン様細胞および毛細血管における、転写因子Sp1(図25A、25C)およびHIF1α(図25B)の両方の、ならびに毛細血管におけるSUR1(図25D)の上方制御を示した。 コントロール組織は、Sp1はほとんど、また、HIF1αは全く示さなかった(図25Eおよび25F)。

    図26A〜26Cは、脳卒中において、転写因子SP1の核局在、およびSP1のSUR1との共局在が増加することを示している。 免疫蛍光画像は、対側部位(図26A)と比較して、MCAO後3時間の虚血領域で核SP1の標識化が増加することを示している(図26B)。 図26Cは、同一の細胞において、核SP1(緑色)および細胞質/細胞膜SUR1(赤色)を示す大型のニューロン様細胞の二重標識。

    図27A〜27Dは、転写因子HIF1αによるSUR1発現の制御を示す。 図27Aおよび27Cは、コントロール(CTR)およびHIF1αノックダウン(KD)のゲルフォーム移植モデルに由来するR1星状細胞の中にあるHIF1αタンパク質のウエスタンブロット解析を示す。 図27Bおよび27Cは、同一の細胞溶解物の中のSUR1タンパク質を示す。

    発明の詳細な説明 本出願で開示する発明に、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、さまざまな実施形態および改変を加えることができることは、当業者にとって容易に明らかである。

    I. 定義 本請求項および/または本明細書の中で「含む」という用語とともに使用される場合、「a」または「an」という語の使用は、「1つ」を意味するが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」および「1つ以上」という意味とも矛盾しない。 請求項の中で「または」という語の使用は、二者択一のみを意味すると明示されているか、あるいは選択肢が互いに排他的である場合を除いては、「および/または」を意味するように使用される、ただし、本開示は二者択一のみ、および「および/または」を意味する定義を支持する。

    本明細書において使用する「急性」という用語は、健康への影響の開始を意味するものであり、通常、その影響は、短期であって長くは続かないと考えられる急激な発生である。

    本明細書において使用する「急性脳虚血」という用語は、急激に発生し、長くは続かない脳虚血現象を意味する。 「急性脳虚血」および「脳卒中」という用語は互換的に使用することができる。

    本明細書において使用する「抗癌治療」または「抗腫瘍」という用語は、癌細胞および/または腫瘍細胞を破壊するか、あるいは癌細胞および/または腫瘍細胞の増殖を遅らせるか、停止させるか、または逆転させる、いずれかの治療法を意味する。 抗癌または抗腫瘍治療法は、非限定例として、放射線治療法(放射線療法)、化学療法、またはこれらの治療法の組み合わせたものなどがある。

    本明細書において使用する「アゴニスト」という用語は、細胞の上で受容体と結合して、内因性物質が結合して生じるのと同一または同等の反応または活性を開始させる生物剤または化学剤を意味する。 本発明において、アゴニストは、神経細胞、神経膠細胞、または神経内皮細胞のNC Ca−ATPチャネルと組み合わせになり、結合し、および/または会合して、NC Ca−ATPチャネルを開口する(活性化させる)。 特定の実施形態において、アゴニストは、NC Ca−ATPチャネルの調節サブユニット、具体的にはSUR1と組み合わせになり、結合し、および/または会合する。 あるいは、アゴニストは、NC Ca−ATPの膜孔形成サブユニットと組み合わせになり、結合し、および/または会合して、NC Ca−ATPチャネルを開口する(活性化させる)。 アゴニストおよび/または活性化因子という用語は互換的に使用することができる。

    本明細書において使用する「アンタゴニスト」という用語は、体内で作用して、別の化学物質または生物学的物質の生理学的な活性を低下させる生物剤または化学剤を意味する。 本発明において、アンタゴニストは、神経細胞、神経膠細胞、または神経内皮細胞(例えば、毛細血管内皮細胞)のNC Ca−ATPチャネルの活性を遮断、阻害、低下および/または減少させる。 本発明において、アンタゴニストは、神経細胞、神経膠細胞、または神経内皮細胞(例えば、毛細血管内皮細胞)のNC Ca−ATPチャネルと組み合わせになり、結合し、および/または会合して、NC Ca−ATPチャネルを閉じさせ(非活性化させ)る、すなわち、病的状態における生物学的活性に関して、生物学的活性を低下させることを意味する。 特定の実施形態において、アンタゴニストは、NC Ca−ATPチャネルの調節サブユニット、具体的にはSUR1と組み合わせになり、結合し、および/または会合する。 あるいは、アンタゴニストは、NC Ca−ATPチャネルの膜孔形成サブユニットと組み合わせになり、結合し、および/または会合して、NC Ca−ATPチャネルを閉じさせる(非活性化させる)。 アンタゴニストまたは阻害剤は互換的に使用することができる。

    本明細書において使用する「大脳膿瘍」または「脳膿瘍」という用語は、腫脹と一般的には関連する化膿性滲出液の限局的な塊を意味する。

    本明細書において使用する「血液脳関門」または「BBB」という用語は、血液から脳へと通過する可能性のあるものを制限する効果をもつ、脳血管と脳組織の間にある障壁を意味する。

    本明細書において使用する「癌」という用語は、正常な制御の消失というユニークな形質によって、無秩序な増殖、分化の欠如、局部的組織浸潤、および転移がもたらされる細胞の過剰増殖を意味する。 癌は、腫瘍細胞からなる腫瘍も含む。 当業者は、例えば、白血病が腫瘍細胞を含まないように、全ての癌が腫瘍細胞を含むわけではないことを理解している。

    本明細書において使用する「脳虚血」という用語は、ある領域への十分な血流の欠如、例えば、脳への十分な血流の欠如を意味するが、それは、血餅、血管収縮、出血、または膨張する塊による組織圧迫から生じうる。

    本明細書において使用する「脱分極」という用語は、細胞膜の電位差が減少または消失する、ナトリウムイオンに対する細胞膜の透過性の増加を意味する。

    本明細書において使用する「有効量」または「治療有効量」という用語は互換的であり、病気または状態の症状を改善または治療をもたらす量を意味する。 当業者は、有効量によって患者または被験体の状態が改善されるかもしれないが、その病気および/または状態の完治には至らないこともあると理解している。

    本明細書において使用する「内皮」という用語は、体腔、血管、およびリンパ管の内側表面を裏打ちする細胞層、または毛細血管を形成する細胞層を意味する。

    本明細書において使用する「内皮細胞」という用語は、内皮の細胞、または、体腔、例えば、血管またはリンパ管あるいは毛細血管を裏打ちする細胞を意味する。 特定の実施形態において、内皮細胞という用語は、神経内皮細胞、または神経系、例えば、中枢神経系または脳の一部である内皮細胞を意味する。

    本明細書において使用する「過剰増殖性疾患」という用語は、細胞の過剰増殖に起因する病気を意味する。 過剰増殖性疾患の例は、癌、腫瘍または新生物などであるが、これらに限定されない。

    本明細書において使用する「神経膠症カプセル」という用語は、転移性腫瘍、脳膿瘍、またはその他、病的状態にある場合以外は脳に通常存在しない塊などの異物の回りを全体的または部分的に取り囲む物理的障壁を意味する。 特定の実施形態において、神経膠症カプセルは、神経細胞、神経膠細胞(例えば、星状細胞)、および/またはNC Ca−ATPチャネルを発現する内皮細胞を含む内部域を含む。

    本明細書において使用する「病的状態」という用語は、病気である状態である。 さらに、病的状態は、罹患率、すなわち一定の集団に占める病人や病例の比率を意味することも可能である。

    本明細書において使用する「死亡」という用語は、死に至るか、死をもたらす状態である。 さらに、死亡は、死亡率、すなわち一定の集団に占める死亡者数の比率を意味することも可能である。

    本明細書において使用する「神経細胞」という用語は、神経系の形態学的および機能的な単位である細胞を意味する。 この細胞は、神経細胞本体、樹状突起、および軸索を含む。 ニューロン、神経細胞、神経単位の、神経単位、およびニューロサイトという用語は互換的に使用することが可能である。 神経細胞型は、大脳皮質の(カハール)水平細胞、マルチノティック(Martinottic)細胞、双極細胞、単極細胞、プルキニエ細胞、大脳皮質の運動野の錐体細胞を含むことができ、内部構造を示す典型的な神経細胞本体に限定されるものではない。

    本明細書において使用する「神経性」という用語は、神経系に関するものを意味する。

    本明細書において使用する「神経グリア」または「神経膠細胞」という用語は、神経系の非神経細胞要素である細胞を意味する。 神経グリア、ニューログリアサイト、および神経膠細胞は互換的に使用することができる。 神経膠細胞は、上衣細胞、星状細胞、乏突起膠細胞、または小膠細胞を含むが、これらに限定されない。

    本明細書において使用する「防止する」という用語は、病状を進行させるリスク、あるいは病状もしくは進行、またはその他の異常もしくは有害な状態に関するパラメーターを最小化させるか、減少させるか、もしくは抑制することを意味する。

    本明細書において使用する「脳卒中」という用語は、脳循環の機能障害に関連した急性の臨床事象を意味する。 「急性脳虚血」および[脳卒中]という用語は、互換的に使用することができる。

    本明細書において使用する「腫瘍」という用語は、いずれかの膨張性の腫脹を意味する。 腫瘍は、組織の異常増殖である「新生物」という用語と互換性がある。 腫瘍は悪性であっても良性であってもよい。

    本明細書において使用する「腫瘍脳関門(tumor−brain barrier)」という用語は、脳内の異物と脳の周囲組織との間にある生化学的障壁を意味する。 腫瘍脳関門は、本明細書において互換的にTBBと称される。

    本明細書において使用する「治療すること」および[治療]という用語は、被験体の病気または状態に改善が見られるよう、被験体に治療有効量の組成物を投与することを意味する。 改善とは、観察可能であるか、または測定可能な改善である。 従って、当業者は、治療により患者の状態を改善されるかもしれないが、病気の完治にはならないかもしれないことを理解している。 治療は、病気および/または状態を生じさせるリスクを有する被験体を治療することも含んでもよい。

    II. 本願発明 本発明は、治療用組成物およびそれらを使用する方法を対象とするものである。 一つの実施形態において、治療用組成物は、神経細胞、神経膠細胞、または神経内皮細胞のNC Ca−ATPチャネルのアゴニストおよび/またはアンタゴニストである。

    特定の実施形態において、本発明は、NC Ca−ATPチャネルを活性化させる、星状細胞のNC Ca−ATPチャネルのアゴニストを投与することを含む、癌治療を必要とする癌患者を治療する方法を目的とする。 具体的な実施形態において、本アゴニストはNC Ca−ATPチャネルのSUR1を標的とする。 特定の実施形態において、癌は脳にあるが、より具体的には、脳にある転移性腫瘍を含む。

    特定の実施形態において、本発明のアゴニストは、癌の周囲の腫瘍脳関門の完全性を破壊して、それがなければ閉め出される薬剤に、腫瘍脳関門を通って接触することが可能となる。 特定の実施形態において、アゴニストは、化学療法、放射線療法および/または免疫療法などの抗癌療法と組み合わせて施される。

    あるいは、本発明は、NC Ca−ATPチャネルを活性化させる、星状細胞のNC Ca−ATPチャネルのアゴニストを投与することを含む、腫瘍脳関門を破壊する方法を目的とするものである。

    NC Ca−ATPチャネルのアゴニストを含む方法は、NC Ca−ATPチャネルのアゴニスト、例えば、ジアゾキシドを星状細胞に注入して、NC Ca−ATPチャネルを発現する神経細胞、神経膠細胞(例えば、星状細胞)および/または神経内皮細胞を選択に殺傷することを目的とする。 この注入は直接的なものでも間接的なものでもよい。 転移性脳腫瘍のように、神経膠症カプセルが関与する病態を治療する場合には、神経細胞、神経膠細胞(例えば、星状細胞)、または神経内皮細胞を選択的に殺傷することが望ましい。 アゴニストは、免疫反応を開始させやすくするか、あるいは、化学療法剤に対する透過性を高める。

    本明細書に記載したように、I型スルホニル尿素受容体(SUR1)は、脳転移で腫瘍脳関門(TBB)を構成するR1星状細胞の中でNC Ca−ATPチャネルの一部として発現される。 R1星状細胞のSUR1を、そのアゴニストを用いて標的にすると、TBBの完全性を損なうため、脳における転移性腫瘍を治療するメカニズムが提供される。 特定の実施形態において、本発明のアゴニストは、異物の周囲にある神経膠症カプセルの完全性を破壊して、それがなければ排除される生物学的および/または内因性の化合物、例えば白血球を神経膠症カプセルの中に侵入させることが可能になる。

    特定の実施形態において、アゴニストは、例えば、NC Ca−ATPチャネルを発現する神経細胞、神経膠細胞(例えば、星状細胞)および/または神経内皮細胞の活性を開き、活性化させ、および/または上昇させることができる化合物などである。 具体的には、アゴニストは、例えばジアゾキシドのようなSUR1活性化因子であり、それらは、当技術分野においてKチャネルを開口させる(活性化する)ことが知られている。

    本発明は、化学療法、免疫療法および/または放射線療法と組み合わせて使用することを想定している。 固形腫瘍(例えば、肺、結腸、乳房、および脳の腫瘍)の治療では、抗癌剤を腫瘤に浸透させることが困難であるために効率的な治療が妨げられている(Jain,1994)。 治療薬を癌部位に送達することを容易にする手段を同定して、現行の抗癌療法の有効性を高めることが必要である。 この必要性に対処するために、別の実施形態において、本出願者らは本明細書において、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストを投与することによって抗癌療法を促進、改善および/または増強する方法を提供する。

    インビトロでの研究には、さまざまな固形腫瘍モデル、例えば、周知の誘導型乳癌モデルを使用することができ、それから腫瘍細胞を採取して脳に再移植して、自家「転移性」腫瘍を生じさせることができる。

    R1星状細胞の中でNC Ca−ATPチャネルの一部として発現されているI型スルホニル尿素受容体(SUR1)に加え、本発明は、さらに、虚血の後、このチャネルのSUR1調節サブユニットがニューロンおよび毛細血管内皮細胞の中で上方制御され、この受容体を遮断すると、脳卒中のサイズ、脳浮腫および死亡率が低下することを説明する。 したがって、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストは、細胞毒性浮腫およびイオン性浮腫の形成を防止、緩和、阻害および/または抑制する上で重要な役割を果たしている可能性がある。

    別の実施形態において、本発明の治療用化合物は、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞またはそれらの組み合わせのNC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストを含む。 アンタゴニストは、頭蓋内圧の増加および/または中枢神経系の細胞毒性浮腫をもたらす、低酸素状態および/または虚血に付随する有害な状態の治療に使用されることを想定している。 このような状態には、外傷、虚血性脳損傷、すなわち二次的ニューロン損傷、および出血性梗塞などがある。 アンタゴニストは、NC Ca−ATPチャネルを発現する細胞を保護するが、これは、神経膠症カプセルの完全性が重要であって、例えば、脳膿瘍などによる感染の広がりを防ぐためにそれを維持する必要がある臨床治療にとっては望ましいことである。 NC Ca−ATPチャネルの阻害による防御は、脳浮腫の縮小に関連する。

    一つの態様において、NC Ca−ATPチャネルの活性を遮断、阻害、さもなければ低下させる。 そのような例では、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストを投与および/または適用する。 このアンタゴニストは、チャネルを通過する流動が低下、中断、減少および/または停止するように、NC Ca−ATPチャネルを調節する。 このアンタゴニストは、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞またはそれらの組み合わせのNC Ca−ATPチャネルの活性に関して可逆的または非可逆的な活性をもつかもしれない。 このアンタゴニストは、細胞の脱分極化を防止または低下させることができ、それによって、細胞の脱分極化によって生じうる浸透圧変化が原因で起きる細胞腫脹を減少させることができる。 したがって、NC Ca−ATPチャネルの阻害は細胞傷害性の浮腫および内皮細胞死を減少させることができる。

    本発明の治療用化合物によって治療可能な被験体は、頭蓋内圧の増加をもたらす低酸素状態および/または虚血に関連する状態を患っているか、それを発症するリスクをもつ被験体、および/または中枢神経系(CNS)の細胞毒性浮腫を有する被験体を含むが、これらに限定されない。 このような状態には、外傷(例えば、外傷性脳損傷(TBI)、脳震盪)、虚血性脳損傷、出血性梗塞、脳卒中、心房細動、凝固障害、肺血栓症、動静脈奇形、腫瘤状病変(例えば、血腫)があるが、これらに限定されない。 このような状態を発症するリスクをもつ、さらに別の被験体には、脳卒中の危険を高める治療、例えば、(血管または神経)外科手術、血栓溶解剤による心筋梗塞の治療、脳/血管内治療、ステント留置、血管造影などを受けている被験体などがある。

    本発明の別の態様は、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストを血栓溶解剤と同時投与することを含む。 これら2つの化合物の同時投与は、出血性転換を減少させて血栓溶解剤の治療濃度域を増加させる。 血栓溶解剤の治療濃度域は、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストを同時投与することで、数時間(4〜8時間)まで増加する可能性がある。

    血栓溶解剤に加えて、他の薬剤、例えば、抗血小板剤、抗凝固剤、血管拡張剤、スタチン、利尿薬であるが、これらに限定されない薬剤を本発明のアンタゴニストと併用することができる。

    本発明の別の態様は、標識したSUR1アンタゴニストを使用して、脳卒中、脳浮腫の段階を診断、測定またはモニタリングするか、あるいは腫瘍および/または脳卒中のサイズ/境界/境界を視覚化することを含む。 例えば、脳卒中後の周辺部を、標識したSUR1アンタゴニストを用いてモニタリングまたは視覚化することができる。

    さらに、本発明の組成物を利用して、細胞傷害性脳浮腫に関連する状態のリスクがあるか、それらを患っている被験体を治療するために使用する神経保護剤キットを製造することができる。

    III. NC Ca−ATPチャネル 本発明は、一部、その全体が参考として本明細書に援用される米国特許出願公開第20030215889号において星状細胞上のチャネルとして定義された特定のチャネルであるNC Ca−ATPチャネルの発見に基づくものである。 より具体的には、本発明は、このチャネルが星状細胞で発現されるだけでなく、脳損傷、例えば、低酸素事象、虚血事象、または、これらの事象に関連する他の二次的ニューロン損傷の後、神経細胞、神経膠細胞、および/または神経内皮細胞上で発現されることをさらに明確にしている。

    NC Ca−ATPチャネルはカルシウムイオン(Ca 2+ )により活性化され、ATPに対して感受性である。 従って、このチャネルは、細胞内Ca 2+によって活性化され、細胞内ATPによって遮断される非選択性陽イオンチャネルである。 このチャネルは、細胞内ATP枯渇によって開口されると、Cl に対する電気的勾配、およびH Oに対する浸透圧勾配を作り出して細胞毒性浮腫および細胞死をもたらす大量のNa 流入に起因する完全な脱分極化に関与する。 このチャネルを遮断または阻害すると、大量のNa は発生せず、細胞毒性浮腫を防止できる。

    一定の機能的特徴によって、NC Ca−ATPチャネルは、他の既知のイオンチャネルと区別される。 これらの特徴には、1)Na 、K およびその他の一価陽イオンを容易に通過させる非選択性陽イオンチャネルであること、2)細胞内カルシウムの増加、および/または細胞内ATPの減少によって活性化されること、3)例えば、膵β細胞に存在するようなK ATPチャネルのみと関連しているとこれまで考えられてきたI型スルホニル尿素受容体(SUR1)によって調節されることなどがあるが、これらに限定されない。

    より具体的には、本発明のNC Ca−ATPチャネルは、カルシウムイオン(K )に対して20〜50pSの間の単一チャネルコンダクタンスを有する。 また、NC Ca−ATPチャネルは、濃度域が10 −8 〜10 −5 Mである生理学的濃度域において、細胞膜の細胞質側上にあるCa 2+によっても刺激を受ける。 また、NC Ca−ATPチャネルは、生理学的濃度範囲、すなわち、10 −1から10Mの濃度範囲で、細胞質ATPによって阻害も受ける。 また、NC Ca−ATPチャネルは、陽イオンであるK 、Cs 、Li 、Na に対し、これらのいずれか2種類の陽イオン間の透過率が0.5よりも大きく、かつ2よりも小さいという程度まで透過性ももつ。

    IV. NC Ca-ATPチャネルの調節因子 本発明はチャネルの調節因子、例えば、チャネルのアゴニストおよびアンタゴニストを含む。 本発明のアンタゴニストまたはアゴニストの例は、その全体が参考として本明細書に援用される米国公開出願第20030215889号において同定されたアゴニストおよび/またはアンタゴニストを含むことができる。 当業者は、NC Ca−ATPチャネルが、調節サブユニットSUR1および膜孔形成サブユニットという2つのサブユニットからなることを認識している。

    A. SUR1の調節因子 特定の実施形態において、I型スルホニル尿素受容体(SUR1)に対するアンタゴニストはチャネルを遮断するのに適している。 適当なSUR1アンタゴニストの例は、グリベンクラミド、トルブタミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、エストロゲン、およびエストロゲン関連化合物(エストラジオール、エストロン、エストリオール、ゲニステイン、非ステロイド型エストロゲン(例えば、ジエチスチルベストール(diethylstilbestrol)、植物性エストロゲン(例えばクメストロール)、ゼラレノンなど)、およびこれらを組み合わせたものであるが、それらに限定されない。本発明の好ましい実施形態において、SUR1アンタゴニストは、グリベンクラミドおよびトルブタミドからなる群から選択される。さらに、別のアンタゴニストはMgADPであってもよい。その他のアンタゴニストは、K ATPチャネルの遮断剤、例えば、トルブタミド、グリブリド(l[p−2[5−クロロ−O−アニサミド)エチル]フェニル]スルホニル]−3−シクロへキシル−3−ウレア);クロプロパミド(l−[[(p−クロロフェニル)スルホニル]−3−プロピルウレア;グリピジド(l−シクロへキシル−3[[p−[2(5−メチルピラジンカルボキサミド)エチル]フェニル]スルホニル]ウレア);またはトラザミド(ベンゼンスルホンアミド−N−[[(ヘキサヒドロ−lH−アゼピン−1イル)アミノ]カルボニル]−4−メチル)などであるが、これらに限定されない。

    本発明において使用することができるアゴニストは、例えば、ジアゾキシド、ピナシジル、P1075、およびクロマカリン、またはK ATPチャネルの活性化因子である、SUR1のアゴニストを含むが、これらに限定されない。 その他のアゴニストは、例えば、3−イソプロピルアミノ−7−メトキシ−4H−1,2,4−ベンゾチアジアジン1,1−ジオキシド(NNC55−9216)、6,7−ジクロロ−3−イソプロピルアミノ−4H−1,2,4−ベンゾチアジアジン1,1−ジオキシド(BPDZ154)、7−クロロ−3−イソプロピルアミノ−4H−1,2,4−ベンゾチアジアジン1,1−ジオキシド(BPDZ73)、6−クロロ−3−イソプロピルアミノ−4H−チエノ[3,2−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド(NNC55−0118)4,6−クロロ−3−(1−メチルシクロプロピル)アミノ−4H−チエノ[3,2−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド(NN414)、3−(3−メチル−2−ブチルアミノ)−4H−ピリド[4,3−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド(BPDZ44)、3−(1',2',2'−トリメチルプロピル)アミノ−4H−ピリド(4,3−e)−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド(BPDZ62)、3−(1',2',2'−トリメチルプロピル)アミン−4H−ピリド(2,3−e)−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド(BPDZ79)、2−アルキル−3−アルキルアミノ−2H−ベンゾ−および2−アルキル−3−アルキルアミノ−2H−ピリド[4,3−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド、6−クロロ−3−アルキルアミノ−4H−チエノ[3,2−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシド誘導体、4−N−置換型および−非置換型の3−アルキル−および3−(アルキルアミノ)−4H−ピリド[4,3−e]−1,2,4−チアジアジン1,1−ジオキシドである、ジアゾキシド誘導体を含むが、これらに限定されない。 また、6−クロロ−2−メチルキノリン−4(1H)−オン(HEI713)およびLN533021など、その他の化合物、ならびに薬品群である、アリールシアノグアニジンがSUR1の公知の活性化因子またはアゴニストである。

    B. SUR1の転写および/または翻訳の調節因子 特定の実施形態において、調節因子は、SUR1(調節サブユニット)の転写および/または翻訳を調節する化合物(タンパク質、核酸、siRNAなど)および/または膜孔形成サブユニットを含む調節因子実体であってよい。

    1. 転写因子 転写因子は、特定のDNA配列(例えば、プロモーターおよびエンハンサー)に結合して、コードされたDNA領域の転写を調節する調節タンパク質である。 したがって、転写因子を利用して、SUR1の発現を調節することができる。 典型的には、転写因子は、DNAに結合する結合ドメイン(DNA結合ドメイン)、および転写を調節する調節ドメインを含む。 調節ドメインが転写を活性化させる場合、その調節ドメインは活性化ドメインと呼ばれる。 その調節ドメインが転写を阻害する場合には、その調節ドメインは抑制ドメインと呼ばれる。 より詳細には、Sp1およびHIF1αなどの転写因子を用いて、SUR1の発現を調節することができる。

    2. アンチセンスおよびリボザイム 翻訳または転写の開始部位、またはスプライス部位に結合するアンチセンス分子は理想的な阻害剤である。 アンチセンス、リボザイム、および二本鎖RNA分子は、特定の配列を標的にして、SUR1などの特定のポリペプチドの減少または除去を達成する。 従って、SUR1を調節するために、アンチセンス、リボザイム、および二本鎖RNA、ならびにRNA干渉分子を構築して使用することが想定される。

    a)アンチセンス分子 アンチセンス法は、核酸が相補配列と対合しようとする事実を利用する。 相補性は、ポリヌクレオチドが標準的なワトソン・クリック相補性ルールに従って塩基対を形成する能力をもつものであることを意味する。 すなわち、より大きいプリンは、より小さいピリミジンと対合して、シトシンと対合したグアニン(G−C)、およびDNAの場合は、チミンと対合したアデニン(A−T)、またRNAの場合には、ウラシルと対合したアデニン(A−U)の組み合わせを形成する。 ハイブリダイズする配列の中に、あまり一般的でない塩基、例えば、イノシン、5−メチルシトシン、6−メチルアデニン、ヒポキサンチンなどが含まれても、対合を妨げることはない。

    ポリヌクレオチドにより二本鎖(ds)DNAを標的にすると3重らせんが形成され、RNAを標的にすると2重らせんが形成されるはずである。 アンチセンスポリヌクレオチドは、標的細胞に導入されると、その標的ポリヌクレオチドに特異的に結合して、転写、RNAプロセシング、輸送、翻訳、および/または安定性を妨げる。 アンチセンスRNA構築物、またはそのようなアンチセンスRNAをコードするDNAを用いて、ヒト被験体などの宿主動物の体内など、宿主細胞の中での遺伝子の転写または翻訳あるいはその両方を、インビトロまたはインビボで阻害する。

    アンチセンス構築物は、遺伝子のプロモーターおよびその他の調節領域、エクソン、イントロン、またはエクソン・イントロン境界域にも結合するように設計される。 最も効果的なアンチセンス構築物は、イントロン/エクソンスプライス部位に相補的な領域を含むと考えられる。 従って、イントロン/エクソンスプライス部位の50〜200塩基の中にある領域に相補性を有するアンチセンス構築物を使用する。 エクソン配列には、その標的選択性に重大な影響を与えることなく、構築物の中に組み込むことができるものがあることが観察されている。 組み込まれるエクソン材料の量は、使用する具体的なエクソンおよびイントロン配列に応じて変化するであろう。 インビトロで構築物をテストして、通常の細胞機能が影響を受けるか否か、または相補配列を有する関連遺伝子の発現が影響を受けるか否かを測定するだけで、エクソンDNAが過剰に含まれていないかを簡単に調べることができる。

    ゲノムDNAの部分をcDNAまたは合成配列と組み合わせて、特異的な構築物を作成できるのが利点である。 例えば、最終構築物の中にイントロンがあるのが所望であれば、ゲノムクローンを使用する必要があろう。 cDNAまたは合成ポリヌクレオチドは構築物の残余部分により便利な制限酵素認識部位を提供することができるため、配列の残りで利用することができる。

    b)RNA干渉 本発明において、二本鎖RNAを干渉分子、例えば、RNA干渉(RNAi)として使用することも想定されている。 RNA干渉は、対象とする生物に二本鎖RNA分子を単に注射する、浸す、または給餌して、対象とする特定の遺伝子を「ノックダウン」または阻害するために利用される。 この技術は、トランスフェクションまたは組換え技術を必要とせずに、遺伝子の機能を選択的に「ノックダウン」する(Giet,2001;Hammond,2001;Stein P,et al,2002;Svoboda P,et al,2001;Svoboda P,et al,2000)。

    別のタイプのRNAiはしばしば小型干渉RNA(siRNA)と呼ばれ、SUR1を阻害するために利用することもできる。 siRNAは二本鎖構造または一本鎖構造を含み、その配列は、少なくとも標的遺伝子の一部と「実質的に同一」である(WO04/046320号参照、これはその全体が参考として本明細書に援用される)。 当技術分野において知られているように、「同一性」とは、配列同士を比較して決定される、2つ以上のポリヌクレオチド(またはポリペプチド)配列の間の関係である。 当技術分野において、同一性は、ポリヌクレオチド配列間のヌクレオチドの順序の一致によって決定される、その配列間の配列の関係性の程度も意味する。 同一性は容易に計算可能である。 例えば、Computational Molecular Biology,Lesk,A. M. ,ed. Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D. W. ,ea. ,Academic Press,New York,1993、ならびにWO99/32619、WO01/68836、WO00/44914、およびWO01/36646に開示されている方法を参照、これらは参考として本明細書に援用される。 2つのヌクレオチド配列間の同一性を測定する方法はいくつか存在するが、この用語は当技術分野において周知されている。 同一性を測定する方法は典型的には、ヌクレオチド配列の一致の程度が最大になるように設計されており、また典型的には、コンピュータープログラムに具体化されている。 このようなプログラムは、関連分野の当業者には容易に利用可能である。 例えば、GCGプログラムパッケージ(Devereux et al.)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Atschul et al.,)ならびにCLUSTAL(Higgins et al,1992;Thompson,et al,1994)などがある。

    このように、siRNAは、標的遺伝子、例えばSUR1、または、膜孔形成サブユニットのように、NC Ca−ATPチャネルに関連する、その他いずれかの分子的実体の少なくとも一部と本質的に同一であるヌクレオチド配列を含む。 当業者は、SUR1の核酸配列はGenBankにおいて、例えば、その全体が参考として本明細書に援用されるGenBank登録番号L40624として容易に利用可能であることを知っている。 好ましくは、siRNAは、標的遺伝子の少なくとも一部と完全に同一であるヌクレオチド配列を含む。 もちろん、RNA配列をDNA配列と比較するときには、DNA配列はデオキシリボヌクレオチドを含むが、「同一」のRNA配列はリボヌクレオチドを含み、さらに、RNA配列は、DNA配列がチミジンを含む位置に、一般的にはウラシルを含む。

    当業者は、長さの異なる2つのポリヌクレオチドを、長い方の断片の全長にわたり比較することができることを理解している。 あるいは、小さな領域を比較することも可能である。 通常は、本発明を実施する際の有用性を最終的に評価するためには、長さの等しい配列を比較する。 siRNAとして使用するには、dsRNA間で100%の同一性があり、標的遺伝子(例えば、SUR1)の少なくとも15個の連続したヌクレオチドがあることが好ましいが、70%、75%、80%、85%、90%、または95%もしくはそれ以上のdsRNAも、本発明において使用することができる。 標的遺伝子の少なくとも一部と本質的に同一であるsiRNAは、2つの相補鎖の一方(または、自己相補的なRNAの場合、2つの自己相補的な部分のうちの一方)が、その一部の配列または標的遺伝子の配列と同一であるか、または標的遺伝子のその一部のヌクレオチド配列に対して1つ以上の挿入、欠失、または単一点突然変異を含むdsRNAであってもよい。 このように、siRNA技術には、遺伝的変異、系統多型性、または進化的分岐に起因すると期待することができる配列変異を許容することができるという特性がある。

    例えば、化学合成法、インビトロ転写、siRNA発現ベクター、およびPCR発現カセットなど、siRNAを調製する方法はいくつかある。 どの方法を使用するかに関わりなく、siRNA分子の設計の第一段階はsiRNA標的部位の選択であるが、これは標的遺伝子のいずれの部位であってよい。 特定の実施形態において、当業者は遺伝子の標的選択領域を手作業で選ぶことができるが、それは標的選択領域としてのORF(読み取り枠)であって、「ATG」開始コドンの下流にある50〜100ヌクレオチドであるかもしれない。 しかし、siRNA分子の設計を補助するために可能なすぐに使用できるプログラムがあり、例えば、PromegaのsiRNA Target Designer、GenScript Corp. のsiRNA Target Finder、Imgenex Corp. のsiRNA Retriever Program、EMBOSS siRNAアルゴリズム、QiagenのsiRNAプログラム、Ambion siRNAプレディクター、Whitehead siRNAプレディクション、およびSfoldなどがある。 従って、上記プログラムのいずれかを利用しても、本発明で使用可能なsiRNA分子を作成することができると考えられる。

    c)リボザイム リボザイムは、部位特異的に核酸を切断するRNA−タンパク質複合体である。 リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を持つ特異的な触媒ドメインを有する(Kim and Cech,1987;Forster and Symons,1987)。 例えば、非常に多数のリボザイムが、高度な特異性をもってリン酸エステル転移反応を促進して、しばしば、あるオリゴヌクレオチド基質の中にいくつかあるリン酸エステルの1つだけを切断する(Cech et al,1981;Reinhold−Hurek and Shub,1992)。 このような特異性は、化学反応に先立ち、基質が、特定の塩基対合の相互作用を介してリボザイムの内部ガイド配列(「IGS」)に結合するという必要性によるものである。

    リボザイム触媒作用は、主に、核酸が関与する配列特異的な切断/ライゲーション反応の一部として観察されてきた(Joyce,1989;Cech et al,1981)。 例えば、米国特許第5,354,855号により、一定のリボザイムは、既知のリボヌクレアーゼの配列特異性よりも高い、DNA制限酵素の配列特異性に匹敵する配列特異性をもったエンドヌクレアーゼとして働くことが報告されている。 従って、配列特異的リボザイム介在型の遺伝子発現阻害法が治療用途に特に適している(Scanlon et al,1991;Sarver et al,1990;Sioud et al,1992)。 本研究のほとんどは、特異的なリボザイムによって切断される特異的な変異コドンに基づいて、標的mRNAを改変することを含んでいた。 本明細書に含まれる情報および当業者の知識に照らせば、所定の遺伝子を特異的に標的にする更なるリボザイムを調製および使用することが今後容易になるであろう。

    その他の適当なリボザイムは、RNA開裂活性を有するRNasePに由来する配列(Yuan et al,1992;Yuan and Altman,1994)、ヘアピン型リボザイム構造(Berzal−Herranz et al,1992;Chowrira et al,1993)、および肝炎δウイルスから作られるリボザイム(Perrotta and Been,1992)などである。 RNA開列活性に向けられたリボザイムの一般設計および最適化について詳細に論じられている(Haseloff and Gerlach,1988;Symons,1992;Chowrira,et al,1994;and Thompson,et al,1995)。

    リボザイム設計のその他の変数は、所定の標的RNA上にある切断部位を選択することである。 リボザイムは、相補的な塩基対合相互作用によってある部位にアニーリングすることにより、所定の配列を標的にする。 このようなターゲティングには2つの相同性のストレッチが必要である。 このような相同な配列のストレッチが、上記で定義した触媒リボゾーム構造に隣接する。 相同な配列のストレッチはそれぞれ、7から15ヌクレオチドまでさまざまな長さにすることができる。 相同配列を画定するのに必要なことは、ただ、標的RNA上で、それらが、切断部位となる特異的配列によって分離されているということだけである。 ハンマーヘッド型リボザイムでは、切断部位は、標的RNAの上のジヌクレオチド配列であり、ウラシル(U)の後にアデニン、シトシンまたはウラシルが続く(A,C or U;Perriman,et al,1992;Thompson,et al,1995)。 このジヌクレオチド配列がいずれか所定のRNAに存在する頻度は、統計的には16回に3回である。

    標的RNAを効率的に切断するようにリボザイムを設計して試験することは、当業者によく知られている手順である。 リボザイムを設計して試験する科学的方法の例は、Chowrira et al. (1994)およびLieber and Straus(1995)に記載されており、それぞれが参考として援用される。 SUR1を標的とするリボザイムに使用する効果的で好ましい配列を同定するのは、単に所定の配列を調製して試験するという問題にすぎず、当業者に周知の日常的に行われているスクリーニング法である。

    C. 調節因子をスクリーニングする方法 本発明のさらなる実施形態は、活性および/または発現を改変するNC Ca−ATPチャネルの調節因子、例えば、アゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法を含むことができる。 これらのアッセイ法は、候補物質の大きなライブラリーをランダムにスクリーニングすることを含んでもよいし、あるいは、これらのアッセイ法を用いて、NC Ca−ATPチャネルの機能または活性または発現を調節する可能性がより高くなると考えられる構造上の特性を考慮して選択した特定の化合物群に集中的に取り組むことも可能である。

    機能という用語は、mRNA発現、タンパク質発現、タンパク質活性、またはチャネル活性を測定しうること、より具体的には、調節因子がNC Ca−ATPチャネルを開口または抑制または遮断する能力を測定しうることを意味する。 本発明に従ってスクリーニングされる化合物は、NC Ca−ATPチャネルに結合して、そのチャネルを開口するか(例えば、アゴニスト)、またはそのチャネルを遮断する(例えば、アンタゴニスト)、天然または合成の有機化合物、ペプチド、抗体およびその断片、ペプチド模倣体であるが、これらに限定されない。 神経細胞膨張または脳腫脹の治療に使用するには、チャネルを遮断する化合物が好ましい。 チャネルを開口するか開口状態に保つアゴニストは、ペプチド、抗体またはその断片、およびNC Ca−ATPチャネル(またはその一部)のSUR1サブユニットを含み、かつSUR1に対する循環リガンドに結合してこれを「中和」する、その他の有機化合物などである。

    NC Ca−ATPチャネルに影響を与える化合物のスクリーニングに関しては、例えば、天然産物または合成化学物質、ならびに、タンパク質などの生物学的に活性な物質を含む既知の化合物のライブラリーを、阻害剤または活性化因子となる化合物についてスクリーニングすることができる。 好ましくは、このような化合物はNC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストであって、NC Ca−ATPチャネル阻害剤、NC Ca−ATPチャネル遮断剤、SUR1アンタゴニスト、SUR1阻害剤、および/またはチャネルを通る膜電流の大きさを低下させることができる化合物などである。

    化合物には、小さな有機または無機の分子、化合物ライブラリーで利用可能な化合物、ペプチド、例えば、可溶性ペプチドなど、ランダムペプチドライブラリーのメンバーを含むがそれらに限定されないペプチドなど(例えば、Lam,K.S.et al,1991,Nature 354:82−84;Houghten,R.et al,1991,Nature 354:84− 86参照)、ならびに、D型および/またはL型の立体配座アミノ酸で構成される、コンビナトリアル化学法で得られる分子ライブラリー、ホスホペプチド(ランダムに、または部分的に縮重した誘導されたホスホペプチドライブラリーのメンバーを含むが、それらに限定されない;例えば、Songyang,Z.,et al.,1993,Cell 72:767−778参照)、抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、抗イディオタイプ抗体、キメラ抗体、または単鎖抗体、およびFAb、F(ab') 、およびFAbの発現ライブラリー断片、ならびにそれらのエピトープ結合断片)などがある。

    本発明に従ってスクリーニングすることができるその他の化合物は、血液脳関門を通過し、適当な神経細胞に侵入して、NC Ca−ATPチャネル遺伝子の発現、またはNC Ca−ATPチャネル活性に関与する他の遺伝子の発現に(例えば、遺伝子発現に関与する調節領域または転写因子と相互作用して)影響を与えることができる小さな有機分子、あるいはNC Ca−ATPチャネルの活性、またはNC Ca−ATPチャネル活性に関与する他の細胞内因子の活性に影響を与えるような化合物であるが、これらに限定されない。

    調節因子を同定、作成、生成、提供、製造、または取得するために、通常、NC Ca−ATPチャネルの活性を、候補物質の存在下、不在下、またはその両方で測定するが、ここで、阻害剤またはアンタゴニストは、NC Ca−ATPチャネルの発現または活性を下方制御、低下、阻害、遮断、または減少させるいずれかの物質と定義され、また、活性化因子すなわちアゴニストは、NC Ca−ATPチャネルを上方制御、促進、活性化、増加、または開口させるいずれかの物質と定義される。 例えば、方法は以下の工程を通常含む:
    (a)インビトロまたはインビボにおいて、NC Ca−ATPチャネルの発現または活性を活性化するか阻害すると思われる候補物質を提供すること;
    (b)インビトロまたはインビボにおけるNC Ca−ATPチャネルの発現または活性を活性化するか阻害する候補物質の能力を評価すること;
    (c)調節因子を選択すること;および (d)この調節因子を製造すること。

    特定の実施形態において、代わりとなる評価工程は、候補物質が、インビトロまたはインビボにおいてNC Ca−ATPチャネルに特異的に結合する能力を評価する工程であってもよい。

    さらなる実施形態において、NC Ca−ATPチャネルを細胞または無細胞系の中で提供して、NC Ca−ATPチャネルを候補物質と接触させることができる。 次に、NC Ca−ATPチャネルの活性または発現に関する候補物質の効果を評価して調節因子を選択する。 調節因子が同定されれば、この方法は、その調節因子の製造をさらに提供することもできる。

    V. 癌治療の方法 A. アゴニストによる治療 特定の実施形態において、本発明は、NC Ca−ATPチャネルを活性化する、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストを神経細胞または神経膠細胞または神経内皮細胞に投与することを含む治療を必要とする癌患者を治療する方法を目的とするものである。 特定の実施形態において、アゴニストはNC Ca−ATPチャネルのSUR1を標的とする。 特定の実施形態において、癌は脳に存在しており、より具体的には、脳内に存在する転移性腫瘍を含む。

    あるいは、本発明は、星状細胞のNC Ca−ATPチャネルのアゴニストを投与することを含む腫瘍脳関門を破壊する方法であって、該アゴニストが該NC Ca−ATPチャネルを活性化する方法を目的とするものである。

    NC Ca−ATPチャネルのアゴニストを投与することによって、NC Ca−ATPチャネルが開くため、細胞増殖が抑止、遅延、低下、または阻害される。 NC Ca−ATPチャネルのアゴニストを投与することができる神経細胞には、SUR1を発現するあらゆる細胞が含まれ得る。

    細胞に投与することができるNC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはアンタゴニストの有効量は、約0.0001nMから約2000μMという用量である。 より詳細には、投与されるアゴニストの用量は、約0.01nMから約2000μM;約0.01μMから約0.05μM;約0.05μMから約1.0μM;約1.0μMから約1.5μM;約1.5μMから約2.0μM;約2.0μMから約3.0μM;約3.0μMから約4.0μM;約4.0μMから約5.0μM;約5.0μMから約10μM;約10μMから約50μM;約50μMから約100μM;約100μMから約200μM;約200μMから約300μM;約300μMから約500μM;約500μMから約1000μM;約1000μMから約1500μM、および約1500μMから約2000μMである。 当然ながら、これらの量はすべて例示であり、これらの数値の中間にある量もすべて本発明で使用されうる。

    NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物は、インビトロまたはインビボにおいて細胞、または新生物、または新生細胞の増殖速度を計測可能な程度に遅延、停止、または逆転させることによって、直接的または間接的に細胞の増殖または新生物の成長を阻害すると考えられる。 望ましくは、増殖速度は、細胞増殖速度を測定するのに適したアッセイ法を用いて測定したときに、20%、30%、50%、または70%あるいはそれ以上遅くなる。

    さらに、本発明は、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストを投与して癌を治療する方法を提供する。 このアゴニストまたはその関連化合物は、非経口的または消化的に投与することができる。 非経口投与には、静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、脳室内、腫瘍内、皮下、または腹腔内があるが、これらに限定されない(米国特許第6,613,308号、第5,466,468号、第5,543,158号、第5,641,515号、および5,399,363号、これらは、その全体が参考として本明細書に援用される)。 消化的投与は、経口、口腔内、直腸内、または舌下であるが、これらに限定されない。

    本発明の治療用化合物、および/または治療法の投与は、全身性、局所性および/または局部性の投与を含むが、また経口、静脈内、および筋肉内でもよい。 あるいは、その他の投与経路、例えば、動脈への灌流、腔内、腹腔内、胸膜内、脳室内、腫瘍内、実質内、および/またはくも膜下腔内への投与も想定している。 所望であれば、治療用化合物は、たとえ治療用化合物と化学療法剤を同時に投与しなくても、化学療法剤と同じ経路で投与することが可能である。 当業者は、標準的な方法および手順を用いて、適当な投与経路を決定できることを知っている。 一つの例において、化学療法に対する反応を評価する場合には、末梢的および中心的に投与することが望ましく、医療専門家は全身的投与法を用いるかもしれない。

    治療法は、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物を含む有効量の組成物で個体を治療することを含む。 有効量は、一般的に、病気およびその症状の程度を検出可能な程度に、また反復して回復、低減、最小化、または制限するのに十分な量であると説明される。 より具体的には、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストおよびその関連化合物による治療は、細胞を殺傷し、細胞の成長を阻害し、細胞増殖を阻害し、転移を抑え、腫瘍サイズを減じ、さもなければ、腫瘍細胞の悪性の表現型を直接的または間接的に逆転または抑制すると考えられる。

    使用されるNC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物の「治療有効量」にいう有効量とは、レシピエントである動物または患者において、有益な結果を、特に癌治療について生じるのに効果的な量である。 このような量は、まず、公表文献をレビューすることによって、インビトロ試験を行うことによって、または、健康な実験動物において代謝研究を行うことによって決定することができる。 臨床場面で使用する前に、動物モデル、好ましくは、広く認められている、治療すべき特定の病気の動物モデルで確認試験を行うことが有益かもしれない。 特定の実施形態で使用するのに好適な動物モデルは齧歯動物モデルであるが、その理由は、それらを使用するのが経済的であり、かつ、特に、得られる結果が臨床的価値を予測するものとして広く受け入れられているからである。

    当技術分野においてよく知られているように、任意の特定の患者に対する活性化合物、例えば、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物などの具体的な用量レベルは、用いる具体的な化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与時期、投与経路、排泄速度、薬剤の併用、および治療を受けている具体的な病気の重症度など、多様な要因に応じて決まる。 投与を担当する者が、個々の被験体にとって適当な用量を決定する。 さらに、ヒトに投与するには、調製物は、FDAの生物学的製剤基準(FDA Office of Biologics)が要求する無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度の基準を満たさなければならない。

    治療としてのNC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物の治療有効量は、治療を受ける宿主、および具体的な投与方式に応じて決まる。 本発明の一つの実施形態において、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物の用量範囲は、0.0001μg/kg(体重)〜約500mg/kg(体重)であろう。 用語「体重」は、動物が処置されている場合に適用可能である。 単離された細胞を処理している場合、本明細書で使用される「体重」は、「全細胞体重」を意味すると解すべきである。 「全体重」という用語は、単離細胞と動物のどちらを処理する場合にも使用可能である。 すべての濃度および治療レベルを、本願では「体重」または単に「kg」で表すが、それらは、同様に「全細胞体重」および「全体重」の濃度も含むものとする。 しかし、当業者には、さまざまな投薬量範囲、例えば、0.0001μg/kg(体重)〜450mg/kg(体重)、0.0002μg/kg(体重)〜400mg/kg(体重)、0.0003μg/kg(体重)〜350mg/kg(体重)、0.0004μg/kg(体重)〜300mg/kg(体重)、0.0005μg/kg(体重)〜250mg/kg(体重)、5.0μg/kg(体重)〜200mg/kg(体重)、10.0μg/kg(体重)〜150mg/kg(体重)、100.0μg/kg(体重)〜100mg/kg(体重)、または1000μg/kg(体重)〜50mg/kg(体重)の有用性を理解している。 さらに、当業者には、さまざまな投薬量レベル、例えば、0.0001μg/kg、0.0002μg/kg、0.0003μg/kg、0.0004μg/kg、0.005μg/kg、0.0007μg/kg、0.001μg/kg、0.1μg/kg、1.0μg/kg、1.5μg/kg、2.0μg/kg、5.0μg/kg、10.0μg/kg、15.0μg/kg、30.0μg/kg、50μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、120μg/kg、140μg/kg、150μg/kg、160μg/kg、180μg/kg、200μg/kg、225μg/kg、250μg/kg、275μg/kg、300μg/kg、325μg/kg、350μg/kg、375μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、および/または30mg/kgを使用できることが分かろう。 当然ながら、これらの投薬量はすべて例示であり、これらの数値の中間にある投薬量もすべて本発明で使用されうる。 上記投薬量範囲または投薬量レベルのいずれも、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはそれに関連した化合物に用いることができる。

    患者または被験体への本発明のNC Ca−ATPチャネルの治療用アゴニストの組成物の投与は、もしあるとすればNC Ca−ATPチャネルのアゴニストの毒性を考慮した上で、化学療法剤の投与に関する一般的なプロトコールに従う。 治療周期は必要に応じて繰り返されることが期待される。 さまざまな標準的な治療法、また外科的介入を、上記の治療法と併用して適用することが可能である。

    治療は、さまざまな「単位用量」を含むことが可能である。 単位用量とは、その投与、例えば、適当な経路および治療計画と関連して所望の反応を生じるよう計算された所定量の治療用組成物(NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物)を含むことと定義される。 投与すべき量、ならびに具体的な経路および処方は、医療分野の当業者が適宜決めうることである。 また、治療すべき被験体、具体的には、被験体の状態、および所望の防御も重要である。 単位用量は1回の注射で投与する必要はなく、一定期間にわたる持続注入を含むことも可能である。

    本発明に従って、腫瘍にNC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物の組成物を直接注射することにより、癌を治療することができる。 あるいは、いずれかの適当な輸送媒体を用いて、腫瘍に組成物を注入または灌流することができる。 腫瘍に関しては、局所的または局部的投与も考えられる。 より好ましくは、全身投与または経口投与を行うことができる。 また、適当な場合、例えば、腫瘍を切除し、腫瘍床を治療して、残留する微細な疾患を除去する場合には、連続投与を適用してもよい。 シリンジを介した輸送、またはカテーテル法が好ましい。 そのような連続灌流は、治療の開始後、約1〜2時間から、約2〜6時間まで、約6〜12時間まで、約12〜24時間まで、約1〜2日まで、約1〜2週間まで、またはこれ以上の期間にわたって行ってもよい。 通常、連続灌流による治療組成物の用量は、灌流を行う期間にわたって調整され、1回または多数回の注射により投与する用量に等しい。 4cmよりも大きい腫瘍については、投与すべき容量は約4〜10mL(好ましくは10mL)であり、4cmより小さい腫瘍については、約1〜3mL(好ましくは3mL)という容量が用いられる。 単一用量として送達される複数回注射は約0.1〜約1mLの容量を含む。

    特定の実施形態において、治療を受けている腫瘍は、少なくともはじめは切除可能なものでなくてもよい。 NC Ca−ATPチャネルの治療用アゴニストの組成物による治療によって、直接的または間接的に、周縁部での収縮によって、または、一定の特に侵襲的な部位の除去によって、腫瘍の切除可能性が増す可能性がある。 治療後、切除が可能になり得る。 切除後さらに治療すれば、腫瘍部位における微細な残留疾患を取り除くのに役に立つであろう。

    B. NC Ca−ATPチャネルのアゴニストおよび/または他の抗癌剤との併用癌治療 本発明との関連で、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物を別の治療薬剤と併用して、癌をより効果的に治療することが想定されている。 抗癌剤は、癌/腫瘍細胞を標的とする放射線療法、化学療法、遺伝子治療、ホルモン療法、または免疫療法であるが、これらに限定されない。

    別の治療薬剤を投与する場合、この別の治療薬剤の用量が予め見積られた毒性レベルを超えない限り、この別の治療薬剤の有効量は、単に、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物と併用して動物に投与されると、癌増殖を阻害および/または減少させるのに効果のある量であると定義することができる。 これは、動物または患者をモニタリングし、行った治療の成功を示す健康および病気の物理学的および生化学的なパラメーターを測定して簡単に決定することができる。 このような方法は、動物実験および臨床上の実施において日常的なものである。

    直接的にせよ間接的にせよ、本発明の方法および組成物を用いて、細胞を死滅させ、細胞周期停止を誘導し、細胞増殖を阻害し、転移を阻害し、血管形成を阻害し、または、さもなければ、癌細胞の悪性の表現型を逆転させるか低減するためには、通常、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物を別の治療薬剤と一緒に細胞に接触させることになる。 これらの組成物は、細胞増殖を阻害し、および/または細胞の中でアポトーシスを誘導するのに効果のある合計量の形で提供されるであろう。 この方法は、細胞を、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物に、別の治療用の薬剤または因子と併用して同時に接触させることを含むことができる。 細胞を、両方の薬剤を含む単一の組成物または薬学的製剤と接触させること、または、細胞を2つの別々の組成物または製剤(ここでは、一方の組成物がNC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその誘導体を含み、もう一方が別の薬剤を含む)と同時に接触させることによって行うことができる。

    あるいは、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物による治療は、数分から数週間に及ぶ間隔で、別の薬剤による治療に先行するか、後に続いてもよい。 別の薬剤を別々に細胞に適用する実施形態において、一般的に、各送達の時間の間に著しい期間が経過しないことを確実にして、薬剤が細胞に有利な複合効果を依然として及ぼすことができるようにするであろう。 そのような例では、細胞を両方のモダリティーに、互いの送達の約12〜24時間以内、より好ましくは互いの送達の約6〜12時間以内に接触させるが、僅か約12時間の遅延時間が最も好ましいと考えられる。 しかし、場合によっては、各投与の間に数日(2、3、4、5、6、または7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8週間)が経過する場合、治療期間を著しく延ばすことが望ましいかもしれない。

    NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物のいずれかを、例えば、抗癌剤などの別の治療薬剤と併用して1回より多く投与することが望ましいとも考えられる。 NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物を「A」、別の治療薬剤を「B」とすると、以下に例示するように、さまざまな組み合わせを用いることができる。

    1. 化学療法剤 本発明のいくつかの実施形態において、化学療法は、典型的には、定期的な周期で施すことができる。 1周期が1用量を含むことができ、その後、正常組織が薬剤の副作用から回復できるよう、数日または数週間治療を行わない。 数日間連続してか、隔日で数日間投与を行うことができるが、その後に休止期間が続く。 1つより多い薬剤を使用する場合には、治療計画は各薬剤の投与回数および正確な投与時間を特定することになる。 ある者が受ける周期の回数は、治療の開始前に(癌の型および段階に応じて)決めるか、または腫瘍がどれくらい速く縮むかを考慮するために、流動的にすることもできる。 ある深刻な副作用のため、医師たちは化学療法計画を調整して、患者に回復する時間を与える必要があるかもしれない。

    癌治療において本発明のアゴニストおよびその関連化合物と併用して使用することができる化学療法剤は、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン(mechlorethamine)、シクロホスファミド、カンプトセシン(camptothecin)、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、ミトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合因子、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害因子、トランスプラチン(transplantium)、5−フルオロウラシルおよびメトトレキサート、あるいは、前記のものの関連化合物または派生変異体であるが、これらに限定されない。

    2. 放射線療法薬剤 放射線療法薬剤も、癌を治療する際に、本発明の化合物と併用して使用することができる。 DNA損傷を引き起こし、かつ広範に使用されてきた因子は、γ線、X線として一般に知られているもの、および/または腫瘍細胞への放射性同位体の指向的送達などである。 他の形態のDNA損傷因子、例えば、マイクロ波および紫外線照射なども考えられる。 これらの因子はすべて、DNA、DNA前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に対して広範な損傷を与える可能性が最も高い。 X線の線量範囲は、長期間(3〜4週間)になるときは50から200レントゲンの一日線量から、2000レントゲンから6000レントゲンのまでの単一線量までの範囲にわたる。 放射性同位体の線量範囲は大幅に変化し、同位元素の半減期、放射される照射の強度および型、ならびに新生細胞による取り込みに依存する。

    3. 免疫療法薬剤 免疫療法薬剤も、癌を治療する際に、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物と併用して、本発明において使用することができる。 免疫療法薬剤は、通常、癌細胞を標的として破壊する免疫エフェクター細胞および分子の使用に依存する。 免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のあるマーカーに対して特異的な抗体であるかもしれない。 抗体は単独で治療のエフェクターとして働くかもしれないし、他の細胞を動員して、実際に細胞の殺傷をもたらすかもしれない。 また、抗体は、薬剤または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)に結合して、単に標的剤として働くだけかもしれない。 あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接または間接に相互作用を行う表面分子を担持するリンパ球かもしれない。 さまざまなエフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞およびNK細胞などである。

    通常、腫瘍細胞には、ターゲティングを受け入れる、例えば、他の大多数の細胞には存在しないマーカーがなければならない。 多くの腫瘍マーカーが存在し、それらのいずれかは、本発明に関連して、ターゲティングに適しているかもしれない。 一般的な腫瘍マーカーは、癌胎児性抗原、前立腺特異抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG−72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erbBおよびp155などである。

    4. 細胞増殖阻害剤 腫瘍抑制遺伝子は、過剰な細胞増殖を阻害するように機能する。 これらの遺伝子の不活性化により、阻害活性が破壊され、無秩序な増殖がもたらされる。 腫瘍抑制因子であるp53、p16、およびC−CAMを以下で説明する。

    高レベルのp53変異体が、化学発癌現象、紫外線照射、およびいくつかのウイルスによって形質転換された細胞の多くで発見されている。 p53遺伝子は、しばしば、多様なヒト腫瘍における突然変異による不活性化の標的となり、通常のヒト癌の中で最も高頻度で突然変異する遺伝子であることがすでに記録されている。 ヒトNSCLCの50%超で変異しており(Hollstein et al,1991)、広範な他の腫瘍においても変異している。

    p53遺伝子は、例えば、ラージT抗原およびE1Bなどの宿主タンパク質と複合体を形成することができる、393アミノ酸のリンタンパク質をコードする。 このタンパク質は、正常な組織および細胞の中に存在するが、形質転換された細胞または腫瘍組織と比較すると極めて低濃度で存在する。

    野生型p53は、多くの細胞型において重要な成長調節因子として認識されている。 ミスセンス突然変異は、p53遺伝子ではありふれた現象であり、癌遺伝子の形質転換能力に必須である。 点突然変異に促された単一の遺伝的変異によって発癌型p53が生じることがある。 しかし、他の癌遺伝子とは異なり、p53の点突然変異は、少なくとも30個の異なったコドンの中で起き、しばしば、ホモ接合になるのを待たずに細胞の表現型に変化を生じさせる優性対立遺伝子を生じさせることが知られている。 さらに、これらのドミナントネガティブな対立遺伝子の多くは、生物体に許容され、生殖系列の中で継代されると考えられている。 さまざまな変異対立遺伝子は、最小限の機能障害をもつドミナントネガティブな対立遺伝子から強い浸透性をもつドミナントネガティブな対立遺伝子にまで及ぶと考えられる(Winberg,1991)。

    別の細胞増殖阻害因子はp16である。 真核細胞周期の主な遷移は、サイクリン依存性キナーゼ、すなわちCDKによって開始される。 CDKの一つである、サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)はG1を通して進行を調節する。 この酵素の活性は、G1後期にRbをリン酸化することかもしれない。 CDK4の活性は、活性化サブユニットであるD型サイクリン、およびCDK4に特異的に結合して、これを阻害するタンパク質であると生化学的に特徴づけられている阻害サブユニットp16INK4による調節を受けるため、Rbリン酸化を調節することができる(Serrano et al,1993;Serrano et al,1995)。 p16INK4タンパク質はCDK4阻害因子であるため(Serrano,1993)、この遺伝子の欠失はCDK4の活性を増大させ、その結果、Rbタンパク質の過剰リン酸化をもたらす。 p16も、CDK6の機能を調節することが知られている。

    p16INK4は、p16B、p19、p21WAF1、およびp27KIP1を含む、新たに記述されたCDK阻害タンパク質のクラスに属する。 p16INK4遺伝子は9p21にマップされるが、これは、多くの腫瘍型において高頻度で欠失している染色体領域である。 p16INK4遺伝子のホモ接合的欠失および突然変異は、ヒト腫瘍細胞株の中にも高頻度で存在する。 この証拠は、p16INK4遺伝子が腫瘍抑制遺伝子であることを示唆するものである。 しかしながら、この解釈は、p16INK4遺伝子の変化の頻度が、培養細胞株よりも初代の無培養腫瘍における方がずっと低いという観察結果により疑問が提起されている(Caldas et al,1994;Cheng et al,1994;Hussussian et al,1994;Kamb et al,1994;Okamoto et al,1994;Arap et al,1995)。 プラスミド発現ベクターを用いたトランスフェクションによって野生型p16INK4の機能を回復すると、いくつかのヒト癌細胞株によるコロニー形成が低減した(Okamoto et al.,1994;Arap et al.,1995)。

    本発明に従って使用できる他の遺伝子は、Rb、mda−7、APC、DCC、NF−1、NF−2、WT−1、MEN−I、MEN−II、zac1、p73、VHL、MMAC1/PTEN、DBCCR−1、FCC、rsk−3、p27、p27/p16融合物、p21/p27融合物、抗血栓遺伝子(例えば、COX−1、TFPI)、PGS、Dp、E2F、ras、myc、neu、raf、erb、fms、trk、ret、gsp、hst、ab1、E1A、p300、血管形成関与遺伝子(例えば、VEGF、FGF、トロンボスポンジン、BAI−1、GDAIE、またはそれらの受容体)およびMCCなどである。

    5. プログラムされた細胞死の調節因子 アポトーシス、すなわちプログラムされた細胞死は癌療法において必須の過程である(Kerr et al.,1972)。 Bcl−2ファミリーのタンパク質およびICE様プロテアーゼは、他の系においてアポトーシスの重要な調節因子およびエフェクターであることが証明されている。 Bcl−2タンパク質は、濾胞性リンパ腫に付随して発見され、アポトーシスを調節し、さまざまなアポトーシス刺激に反応して細胞生存を高めるのに顕著な役割を果たしている(Bakhshi et al,1985;Cleary and Sklar,1985;Cleary et al,1986;Tsujimoto et al,1985;Tsujimoto and Croce,1986)。 進化的に保存されているBcl−2タンパク質は、現在、関連タンパク質のファミリーのメンバーであると認められており、死アゴニスト(death agonist)または死アンタゴニストとして分類することができる。

    細胞死を促すように機能するBcl−2のメンバー、例えば、Bax、Bak、BikBim、BidおよびHarakiriなどを、癌を治療する際に、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物と併用して使用することが考えられている。

    6. 外科手術 さらに、本発明において外科手術を利用することも想定される。 約60%の癌患者が、予防的手術、診断的手術または病期判定のための手術、治療的手術、および対症的手術など、何らかの種類の手術を受ける。 治療的手術は、癌組織の全部または一部を物理的に取り除き、切除し、および/または破壊する切除を含む。 腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部を物理的に除去することを意味する。 腫瘍切除以外に、外科手術による治療には、レーザー外科手術、冷凍外科手術、電気外科手術および顕微鏡手術(モース手術(Mohs's surgery))などがある。 さらに、本発明は、表在癌、前癌状態、または偶発的な量の通常組織の除去と組み合わせて用いられることも考えられる。

    癌性細胞の全部、組織、または腫瘍の部分の切除時に、体の中に空洞が形成されることがある。 治療は、さらに別の抗癌療法を用いて、領域の灌流、直接注入、局所適用によって行うことができる。 このような治療は、例えば、1、2、3、4、5、6、または7日毎、あるいは1、2、3、4、および5週毎、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月毎に繰り返してもよい。 これらの治療は、投薬量を変えてもよい。

    7. 他の薬剤 他の薬剤を本発明と併用して治療効率を改善することができることが考えられる。 これらの付加的薬剤は、免疫調節薬、細胞表面受容体およびGAP結合の上方制御に影響を与える薬剤、細胞分裂停止剤および分化剤、細胞接着阻害剤、またはアポトーシス誘導物質に対する過剰増殖性細胞の感受性を増大させる薬剤などである。 免疫調節薬は、腫瘍壊死因子;インターフェロンα、β、およびγ;IL−2およびその他のサイトカイン;F42Kおよびその他のサイトカイン関連化合物;またはMIP−1、MIP−1β、MCP−1、RANTES、およびその他のケモカインなどである。 さらに、細胞表面受容体またはそのリガンド、例えば、Fas/Fasリガンド、DR4またはDR5/TRAILなどの上方制御は、過剰増殖性細胞に対する自己分泌または傍分泌効果を確立させることによって、本発明のアポトーシス誘導能力を増強すると考えられる。 GAP結合の数を増加させて細胞間のシグナル伝達を増やすと、隣接する過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖効果が高まる。 他の実施形態において、細胞分裂停止剤または分化剤は、本発明と併用して、治療の抗過剰増殖効果を改善させることができる。 細胞接着阻害剤は、本発明の効能を改善すると考えられる。 細胞接着阻害剤の例は、局所接着キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。 さらに、過剰増殖性細胞のアポトーシスに対する感受性を増大させる他の薬剤、例えばc225抗体などを本発明と併用すると、治療効率を改善することができると考えられる。

    VI. 脳虚血治療の方法 A. アンタゴニストによる治療 他の実施形態において、本発明の治療用化合物は、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせのNC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストを含む。 アンタゴニストは、頭蓋内圧および/または中枢神経系の細胞毒性浮腫に付随する有害状態を治療する際に使用できると考えられる。 このような状態は、外傷(例えば、外傷性脳損傷(TBI))、虚血性脳損傷、一次的および二次的なニューロン損傷、脳卒中、動静脈奇形(AVM)、腫瘤状病変(例えば、血腫)、および出血性梗塞などである。 アンタゴニストは、NC Ca−ATPチャネルを発現する細胞を保護するが、これは、イオン性および細胞毒性浮腫が形成される場合、虚血に続いて毛細血管の完全性が失われる場合、および脳膿瘍などの感染の拡大を防止するために、神経膠症カプセルの完全性が重要であって、それを維持する必要がある場合における臨床治療にとって望ましいことである。 当業者は、脳膿瘍が完全に封入されると、脳腫脹が起きることに気づいている。 NC Ca−ATPチャネルの阻害による防御は、イオン性および細胞傷害性の脳浮腫の低減に関連する。 従って、NC Ca−ATPチャネルを阻害する化合物は神経保護剤である。

    一つの態様において、NC Ca−ATPチャネルを遮断、阻害するか、さもなければ、活性を低下させる。 このような例では、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストを投与および/または適用する。 このアンタゴニストはNC Ca−ATPチャネルを調節して、このチャネルを通過する(イオンおよび/または水の)流動を低下、中断、減少および/または停止させる。 このアンタゴニストは、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせのNC Ca−ATPチャネルの活性に関して、可逆的または不可逆的な活性を有する可能性がある。 したがって、NC Ca−ATPチャネルを阻害すると、イオン性浮腫の形成、および出血性転換を伴う細胞毒性浮腫および内皮細胞の死滅を低減することができる。

    従って、本発明は、急性脳虚血を治療および軽減するのに有用である。 本発明の具体的な実施形態によれば、有効量の活性化合物を投与するとチャネルを遮断することができるが、それが開いたままであれば、神経細胞の腫脹および細胞死滅が起こる。 SUR1に対する多様なアンタゴニストが、チャネルを遮断するのに適している。 適当なSUR1アンタゴニストの例は、グリベンクラミド、トルブタミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリニチニド、ミダグリゾール、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、エストロゲン、エストロゲン関連化合物、およびそれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。 本発明の好ましい実施形態において、SUR1のアンタゴニストは、グリベンクラミドおよびトルブタミドからなる群から選択する。 使用することができる別のアンタゴニストはMgADPである。 神経細胞腫脹および細胞死滅を防ぐために、さらに他の治療「戦略」を採用することもでき、神経細胞を分極状態で維持する方法、および強い脱分極化を抑える方法などが含まれるが、これらに限定されない。

    さらなる実施形態において、NC Ca−ATPチャネルの阻害剤またはアンタゴニストを用いて、出血性転換を低下、または軽減、または抑制することができる。 虚血後に毛細血管の中で起こる病理学的一連の事象は、血管内の区画から脳実質の中に移動する主な成分に基づいて、3段階に分けることができる(Ayata 2002;Betz,1996;Betz 1989)。 第1段階は、電解質(Na 、Cl )と水の脳実質への移動を伴う、「イオン性」浮腫の形成を特徴とするが、その間、BBBは損なわれない。 第2段階は、BBBの崩壊による、「血管原性」浮腫の形成を特徴とし、その間、高分子と水が脳実質の中に入ってゆく。 第3段階は、毛細血管の破局的な機能不全による出血性転換を特徴とするが、その間、血液の全成分が血管外に遊出して脳実質の中に入る。 スターリングの法則に従えば、これらの相を理解するには、次の2つのものを同定する必要がある。 (i)実質の中に物を「押し込む」駆動力;および(ii)これらのものを実質の中に通過させる透過孔。

    このように、アンタゴニストまたはその関連化合物を使用することによって、脳卒中を患っている被験体の死亡率を低下させ、および/または周辺領域を救うか、不可逆的損傷となる危険のある組織領域を含む周辺領域における損傷を防ぐことができる。

    NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストの投与によって、NC Ca−ATPチャネルの開口により、内皮細胞の脱分極化が抑制、遅延、低下または阻害される。 したがって、細胞の脱分極化を抑制すると、Na 流入の抑制または阻害がもたらされて、浸透圧勾配の変化を防止するため、水が内皮細胞に流入するのを防止し、細胞腫脹、小疱形成および細胞毒性浮腫を停止させる。 このように、内皮細胞の脱分極化を防止、または阻害、または減衰させると、出血性転換を防止または抑制することができる。

    NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストを投与することができる神経細胞は、SUR1を発現する細胞などであり、例えば、神経細胞、神経膠細胞、または神経内皮細胞である。

    アンタゴニストまたはその関連化合物で治療することができる被験体は、外傷(例えば、外傷性脳損傷(TBI))、虚血性脳損傷、一次的および二次的なニューロン損傷、脳卒中、動静脈奇形(AVM)、脳膿瘍、腫瘤状病変、出血性梗塞、あるいは、その他、脳浮腫および/または頭蓋内圧の増加をもたらす脳低酸素症または脳虚血を伴う他のいずれかの状態、例えば、脳腫瘤、脳浮腫、血腫、末期脳浮腫、脳症などを患っているか、発症するリスクのある被験体である。 従って、アンタゴニストは、治療的処置が、予防または予防的処置を含む治療的処置でもよい。 アンタゴニストまたはその関連化合物は神経保護剤である。

    本発明のアンタゴニストで治療することができる他の被験体は、脳卒中を発症するリスクがあるか、素因を有する被験体などである。 このような被験体は、心房細動、凝固障害を患い、および/または肺血栓症のリスクを有する被験体であり得るが、それらに限定されない。

    特定の実施形態において、脳卒中のリスクを有する被験体は、例えば、大脳/血管内治療、外科手術(例えば、開頭術、頭蓋内手術、脳腫瘍(例えば、血腫)の除去、冠動脈バイパス手術(CABG)、血管造影、ステント交換、その他の血管手術、および/または他のCNSまたは神経外科手術)、ならびに血栓溶解剤による心筋梗塞(MI)の治療などを受けている被験体を含むことができる。 このような場合、被験体は、実際の治療に先立って、本発明のアンタゴニストまたは関連化合物による治療を受けることができる。 予備治療は、実際の治療または手術の(1、2、3)ヶ月前、(1、2、3)週間前、(1、2、3)日前、(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12)時間前または(15、30、60、90)分前にアンタゴニストおよび/または関連化合物を投与することを含むことができる。 アンタゴニストおよび/または関連化合物による治療は、治療および/または手術の間、ならびに治療および/または手術の後、被験体の中で脳卒中を起こすリスクが低下、縮小、または軽減するまで続けることができる。

    さらなる実施形態において、本発明のアンタゴニストは、頭部/頸部の外傷を負う危険のある被験体、例えば、頭部/頸部の外傷の危険を増大させるスポーツまたはその他の活動に関与する被験体などに投与することができる。

    細胞に投与することができるNC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストの有効量は、約0.0001nMから約2000μMという用量である。 より具体的には、投与されるアゴニストの用量は、約0.01nMから約2000μM;約0.01μMから約0.05μM;約0.05μMから約1.0μM;約1.0μMから約1.5μM;約1.5μMから約2.0μM;約2.0μMから約3.0μM;約3.0μMから約4.0μM;約4.0μMから約5.0μM;約5.0μMから約10μM;約10μMから約50μM;約50μMから約100μM;約100μMから約200μM;約200μMから約300μM;約300μMから約500μM;約500μMから約1000μM;約1000μMから約1500μM、および約1500μMから約2000μMである。 当然ながら、これらの量はすべて例示であり、これらの数値の中間にある量もすべて本発明で使用されうる。

    アンタゴニストまたはその関連化合物は、非経口的または消化的に投与することができる。 非経口投与は、静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、皮下、または腹腔内であるが、これらに限定されない(米国特許第6,613,308号、第5,466,468号、第5,543,158号、第5,641,515号、および第5,399,363号(これらはそれぞれ全体が参考として、本明細書に特に援用される)。消化的投与は、経口、口腔、直腸内、または舌下であるが、これらに限定されない。

    本発明の治療用化合物および/または療法の投与は、全身投与、局所および/または局部的投与、例えば、カテーテル、移植可能なポンプなどを介する、局所的(皮膚、経皮的)によるものなどがある。 あるいは、例えば、動脈灌流、腔内灌流、腹腔内灌流、脳室内灌流および/またはくも膜下腔内灌流などの他の投与経路も考えられる。 当業者は、標準的な方法および手順を用いて適当な投与経路を決定できることを知っている。 その他の投与経路は、本明細書の他所で検討されており、参考として本明細書に援用される。

    治療方法は、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物を含む、有効量の組成物で患者を治療することを含む。 有効量は、一般的に、病気およびその症状の程度を検出可能な程度に、また反復して回復、低減、最小化、または制限するのに十分な量であると説明される。 より具体的には、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストおよびその関連化合物による治療は、細胞脱分極化を抑え、Na 流入を阻止し、浸透圧勾配の変化を抑え、細胞の中への水の流入を阻止し、細胞傷害性細胞浮腫を抑え、脳卒中サイズを減少させ、出血性転換を抑制させ、そして、被験体の死亡率を低下させる。

    使用されるNC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物の有効量とは、レシピエントである動物または患者において、特に脳卒中治療に関して、有益な結果を起こすのに有効な量である。 そのような量は、まず、公表文献をレビューすることによって、インビトロ試験を行うことによって、または、健康な実験動物において代謝研究を行うことによって決定することができる。 臨床場面で使用する前に、動物モデル、好ましくは、広く認められている、治療すべき特定の病気の動物モデルで確認試験を行うことが有益かもしれない。 特定の実施形態で使用するのに好適な動物モデルは齧歯動物モデルであるが、その理由は、それらを使用するのが経済的であり、かつ、特に、得られる結果が臨床的価値を予測するものとして広く受け入れられているからである。

    当技術分野においてよく知られているように、特定の患者に対する活性化合物、例えば、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物などの具体的な用量レベルは、用いる具体的な化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与時期、投与経路、排泄速度、薬剤の併用、および治療を受けている具体的な病気の重症度など、多様な要因に応じて決まる。 投与を担当する者が、個々の被験体にとって適当な用量を決定する。 さらに、ヒトに投与するには、調製物は、FDAの生物学的製剤基準が要求する無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度の基準を満たさなければならない。

    当業者は、アンタゴニストまたはその関連化合物の有効量が、脳卒中の危険の低下、頭蓋内圧の低下、細胞死の減少、脳卒中サイズの減少など、所望の結果を達成するのに必要な量であり得ることを認識している。 また、この量は、患者において合理的な血糖レベルを維持する量でもあり、例えば、アンタゴニストの量は、血糖レベルを少なくとも60mmol/Lに維持し、より好ましくは、血糖レベルを約60mmol/L〜約150mmol/Lの範囲に維持する。 したがって、これらの量は、被験体が低血糖症になるのを予防する。 グルコースレベルが正常でなければ、当業者は、患者が低血糖か高血糖であるかに応じてインスリンまたはグルコースを投与するであろう。

    治療としてのNC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物の有効量は、治療を受ける宿主、および具体的な投与方式に応じて決まる。 本発明の一つの実施形態において、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物の用量範囲は、約0.01μg/kg(体重)〜約20,000μg/kg(体重)であろう。 「体重」という用語は、動物が処理される場合に使用可能である。 単離された細胞を処理している場合、本明細書で使用される「体重」は、「全細胞体重」を意味すると解すべきである。 「全体重」という用語は、単離細胞と動物のどちらを処理する場合にも使用可能である。 すべての濃度および治療レベルを、本願では「体重」または単に「kg」で表すが、それらは、同様に「全細胞体重」および「全体重」の濃度も含むものとする。 しかし、当業者には、さまざまな投薬量範囲、例えば、0.01μg/kg(体重)〜20,000μg/kg(体重)、0.02μg/kg(体重)〜15,000μg/kg(体重)、0.03μg/kg(体重)〜10,000μg/kg(体重)、0.04μg/kg(体重)〜5,000μg/kg(体重)、0.05μg/kg(体重)〜2,500μg/kg(体重)、0.06μg/kg(体重)〜1,000μg/kg(体重)、0.07μg/kg(体重)〜500μg/kg(体重)、0.08μg/kg(体重)〜400μg/kg(体重)、0.09μg/kg(体重)〜200μg/kg(体重)、または0.1μg/kg(体重)〜100μg/kg(体重)を利用できることが分かろう。 さらに、当業者には、例えば0.0001μg/kg、0.0002μg/kg、0.0003μg/kg、0.0004μg/kg、0.005μg/kg、0.0007μg/kg、0.001μg/kg、0.1μg/kg、1.0μg/kg、1.5μg/kg、2.0μg/kg、5.0μg/kg、10.0μg/kg、15.0μg/kg、30.0μg/kg、50μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、120μg/kg、140μg/kg、150μg/kg、160μg/kg、180μg/kg、200μg/kg、225μg/kg、250μg/kg、275μg/kg、300μg/kg、325μg/kg、350μg/kg、375μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、および/または30mg/kgなど、さまざまな異なった投薬量レベルを使用できることが分かろう。 当然ながら、これらの投薬量はすべて例示であり、これらの数値の中間にある投薬量もすべて本発明で使用されうる。 上記投薬量範囲または投薬量レベルのいずれも、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストまたはそれに関連した化合物に用いることができる。

    患者または被験体への本発明のNC Ca−ATPチャネルの治療用アンタゴニストの組成物の投与は、もしあるとすればNC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストの毒性を考慮した上で、血栓溶解剤など、脳卒中の治療に使用される療法剤の投与に関する一般的なプロトコールに従う。 治療周期は必要に応じて繰り返されることが期待される。 さまざまな標準的な治療法、また外科的介入を、上記の治療法と併用して適用することが可能である。

    治療は、さまざまな「単位用量」を含むことが可能である。 単位用量とは、その投与、例えば、適当な経路および治療計画と関連して所望の反応を生じるよう計算された所定量の治療用組成物(NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物)を含むことと定義される。 投与すべき量、ならびに具体的な経路および処方は、医療分野の当業者が適宜決めうることである。 また、治療すべき被験体、具体的には、被験体の状態、および所望の防御も重要である。 単位用量は1回の注射で投与する必要はなく、一定期間の持続注入を含むことも可能である。

    B. 併用療法 本発明との関連で、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物を別の治療薬剤と併用して、脳虚血事象をより効果的に治療し、および/または頭蓋内圧を低下させる別の治療薬剤と併用して使用することが考えられる。 いくつかの実施形態において、薬理学的治療薬を含むが、それに限定されない通常の療法および薬剤を、本発明のアンタゴニストまたはその関連化合物と併用することができると考えられる。

    薬理学的治療薬、および投与法、投薬量などが当業者によく知られており(例えば、the “Physicians Desk Reference”,Goodman&Gilman's “The Pharmacological Basis of Therapeutics”,“Remington's Pharmaceutical Sciences”,and “The Merck Index,Eleventh Edition”参照。これらは関連部分が参考として本明細書に援用される)、本明細書の開示内容に照らして、本発明と組み合わせることができる。 投薬量の多少の差異は、治療を受けている被験体の状態に応じて、必ず生じるものである。 いずれの場合でも、投与を担当する者が、個々の被験体のための適当な用量を決め、そのような個別の決定は当業者が適宜なしうることである。

    本発明において使用することができる薬理学的治療薬の非限定的な例は、抗高リポタンパク血症薬、抗動脈硬化薬、抗コレステロール薬、抗炎症薬、抗血栓/線維素溶解薬、抗凝固薬、抗血小板薬、血管拡張剤、および/または利尿薬などである。 使用される血栓溶解剤は、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、および組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)であるが、これらに限定されない。 抗コレステロール剤は、HMG−CoA還元酵素阻害剤、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸金属イオン封鎖剤、ニコチン酸およびその誘導体、フィブリン酸およびその誘導体などであるが、これらに限定されない。 HMG−CoA還元酵素阻害剤は、例えば、アトルバスタチンカルシウム(Lipitor(登録商標))、セリバスタチンナトリウム(Baycol(登録商標))、フルバスタチンナトリウム(Lescol(登録商標))、ロバスタチン(Advicor(登録商標))、プラバスタチンナトリウム(Pravachol(登録商標))、およびシンバスタチン(Zocor(登録商標))などのスタチンを含むが、これらに限定されない。 摂取コレステロールの吸収を低下させることが知られている薬剤は、例えば、登録商標Zetiaなどがある。 胆汁酸金属イオン封鎖剤は、コレスチラミン、コレスチポルおよびコレセバラム(colesevalam)などであるが、これらに限定されない。 その他の抗コレステロール剤は、フィブリン酸およびその誘導体(例えば、ゲムフィブロジル、フェノフィブラートおよびクロフィブラート);ニコチン酸およびその誘導体(例えば、ニシアン、ロバスタチン)、ならびにニコチン酸、の放出を持続させる薬剤、例えば、ニアスパン(niaspan)などである。 抗炎症薬は、非ステロイド系抗炎症剤(例えば、ナプロキセン、イブプロフェン、セレオキシブ(celeoxib))、およびステロイド系抗炎症薬(例えば、グルココルチコイド)などがあるが、これらに限定されない。 抗凝固薬は、ヘパリン、ワルファリン、およびクマディンなどであるが、これらに限定されない。 抗血小板薬は、アスピリン、およびアスピリン関連化合物、例えば、アセトアミノフェンなどであるが、これらに限定されない。 利尿薬は、例えば、フロセミド(Lasix(登録商標))、ブメタニド(Bumex(登録商標))、トルセミド(Demadex(登録商標))、チアジドおよびチアジド様利尿薬(例えば、クロロチアジン(Diuril(登録商標))、ならびにヒドロクロロチアジド(Esidrix(登録商標))、ベンズチアジド、シクロチアジド、インダパミド、クロルサリドン、ベンドロフルメチアジド、メトラゾン)、アミロリド、トリアムテレン、およびスピロノラクトンなどであるが、これらに限定されない。 血管拡張薬はニトログリセリンなどであるが、これに限定されない。

    従って、特定の実施形態において、本発明は、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストを血栓溶解薬と同時投与することを含む。 これら2つの化合物の同時投与は、血栓溶解剤の治療濃度域を増加させることができる。 本発明の方法および薬学的組成物において使用することができる適当な血栓溶解剤の例はプロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、および組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)である。

    特定の実施形態において、本発明は、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストを、グルコースまたは関連炭水化物と同時投与して、血清グルコースの適当なレベルを維持することを含む。 血糖の適当なレベルは、約60mmol/L〜約150mmol/Lの範囲内である。 このように、血清グルコースをこの範囲内に維持するためには、グルコースまたは関連炭水化物を一緒に投与する。

    別の治療薬剤を投与する場合、この別の治療薬剤の投与量が予め見積られた毒性レベルを超えない限り、この別の治療薬剤の有効量は、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物と併用して動物に投与されると、脳浮腫を縮小させるのに効果的な量であると簡単に定義することができる。 これは、動物または患者をモニタリングし、行った治療の成功を示す健康および病気の物理学的および生化学的なパラメーターを測定して簡単に決定することができる。 このような方法は、動物実験および臨床上の実施において日常的なものである。

    直接的にせよ間接的にせよ、本発明の方法および組成物を用いて、出血性転換を抑え、細胞腫脹を減らすなどするためには、通常、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物を、別の治療薬剤、例えば、tPA、アスピリン、スタチン、利尿薬、ワルファリン、クマディン、マンニトールなどと併用して、細胞に接触させることになる。 これらの組成物は、出血性転換、細胞腫脹および浮腫を抑えるのに効果のある合計量の形で提供されるであろう。 この方法は、細胞を、NC Ca−ATPチャネルのアゴニストまたはその関連化合物に、別の治療用の薬剤または因子と併用して同時に接触させることを含むことができる。 これは、細胞を、両方の薬剤を含む単一の組成物または薬学的製剤と接触させること、または、細胞を2つの別々の組成物または製剤(ここでは、一方の組成物がNC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその誘導体を含み、もう一方が別の薬剤を含む)と同時に接触させることによって行うことができる。

    あるいは、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物による治療は、数分から数週間、数ヶ月に及ぶ間隔で、別の薬剤による治療に先行するか、後に続いてもよい。 別の薬剤を別々に細胞に適用する実施形態において、通常、各送達の時間の間に著しい期間が経過しないよう、薬剤が細胞に有利な複合効果を依然として及ぼせるようにするであろう。 そのような例では、細胞を両方のモダリティーに、互いの送達の約1〜24時間以内、より好ましくは互いの送達の約6〜12時間以内に接触させることが想定される。

    一般的には、血栓溶解剤の最大限の利益を得るためには、脳卒中の症状が発生してから3時間以内に治療を開始して、迅速な診察、脳卒中、および脳卒中型の判別を行うことが重要である。 しかし、本発明では、NC Ca−ATPチャネルを血栓溶解剤とともに投与することで、治療濃度域が増加する。 血栓溶解剤の治療濃度域を、NC Ca−ATPチャネルのアンタゴニストの同時投与により、数時間(4〜8時間)増加させることが可能になる。

    さらに、アンタゴニストとtPAを併用することで、再灌流後の出血性転換の減少または予防がもたらされる。 出血性転換は、循環の回復後に無菌性梗塞が出血性梗塞に変容したものである。 脳卒中と再灌流のこのような合併症は、虚血の進行とともに悪化する毛細血管内皮細胞の機能障害のせいであると一般に認められている。 従って、本発明は、虚血が生じた結果として起きる内皮細胞機能障害の保護薬である。

    内皮細胞機能障害は3つの相を含む。 第1の相は、血液脳関門が無傷のままで、イオン性浮腫が形成されることを特徴とする。 第2の相は、血液脳関門がもはや無傷ではない血管原性浮腫が形成されることを特徴とする。 第3の相は、毛細血管の完全性が失われ、その過程で、赤血球など、血液の全成分が血管外に遊離して脳実質の中に入ることで起きる出血性転換を特徴とする。 BBBの崩壊は、MMP、特にMMP−2(ゼラチナーゼA)およびMMP−9(ゼラチナーゼB)の発現および放出をもたらす、虚血誘発性の内皮細胞活性化を含む。

    出血性転換が患者の死亡率を増加させるため、このような患者は急いで治療を受けることが必須である。 例えば、血栓性脳卒中後、再灌流およびtPA治療が3時間を超えて遅れると、一般的に、患者に出血性転換が起こることが知られている。 従って、本発明のアンタゴニストを投与することによって、虚血性内皮細胞の壊死が低減されて、tPAの治療域が広がり、患者の死亡率が低下させることができる。

    VII. 診断学 アンタゴニストまたは関連化合物を、虚血またはニューロン、膠細胞への損傷の診断、モニタリング、または予後に、あるいは脳浮腫、転移性腫瘍などの帯域の中にある神経細胞をモニタリングする際に使用することができる。

    A. 遺伝子診断 本発明の一つの実施形態は、NC Ca−ATPチャネルのいずれかの部分の発現、例えば、調節ユニットであるSUR1の発現、および/または膜孔形成サブユニットの発現を検出する方法を含む。 これは発現したSUR1のレベル、および/または発現した膜孔形成サブユニットのレベルを測定することを含むことができる。 本発明によって、NC Ca−ATPチャネルの上方制御または発現増加はSUR1の増大したレベルと関連し、それは、例えば、脳浮腫などのニューロン損傷の増加と相関することが理解される。

    第一に、生体試料は被験体から得る。 この生体試料は、組織または液体であろう。 特定の実施形態において、この生体試料は、脳、および/または脳の内皮細胞または微小血管、および/または神経膠症カプセルに由来する細胞を含む。 例えば、転移性腫瘍では、膠細胞が活性化されて腫瘍の周囲にカプセルを形成する。

    使用する核酸は、標準的な方法に従って、生体試料に含まれる細胞から単離する(Sambrook et al,1989)。 この核酸は、ゲノムDNAであっても、あるいは、分画された細胞のRNA、または全細胞RNAであってもよい。 RNAを使用する場合には、RNAを相補鎖DNA(cDNA)に変換することが望ましいかもしれない。 一つの実施形態において、このRNAは全細胞RNAであるが、別の態様においてはポリARNAである。 通常、核酸を増幅する。

    方式によっては、特定の目的とする核酸を、増幅法を直接用いて、または増幅後、既知の第2の核酸を用いて、試料の中で同定する。 次に、同定した産物を検出する。 一定の用途においては、検出を視覚的手段(例えば、ゲルのエチジウムブロマイド染色法)によって行うことができる。 あるいは、この検出法は、化学発光、放射性標識または蛍光標識の放射活性シンチグラフィー、さらには電気または熱のインパルスシグナルを利用した装置によって間接的に産物を同定することを含むことができる(Affymax Technology;Bellus,1994)。

    検出に続いて、所定の被験体で見られた結果を、正常な被験体の統計的に有意な参照群、および脳卒中、癌、脳浮腫などと診断された被験体と比較することができる。

    さらに、チップに基づくDNA技術、例えば、Hacia et al,(1996)およびShoemaker et al. ,(1996)に記載されているようなものを診断に利用することが考えられる。 要するに、これらの技術は、多数の遺伝子をすばやく正確に解析するための定量的手法を含む。 オリゴヌクレオチドで遺伝子にタグ付をするか、あるいは、固定プローブのアレイを用いて、標的分子を高密度配列として分離し、これらの分子をハイブリダイゼーションに基づいてスクリーニングするために、チップ技術を利用することができる。 Pease et al,(1994);Fodor et al,(1991)も参照。

    B. 他の型の診断 分子、例えば、化合物および/またはタンパク質および/または抗体の、診断薬としての有効性を増大させるためには、少なくとも一つの所望の分子または成分を連結または共有結合または複合体化させるのが常法である。

    結合体の一定の例は、分子(例えば、タンパク質、抗体、および/または化合物)が検出可能な標識に連結している結合体である。 「検出可能な標識」は、その特異的な機能特性および/または化学的特徴により検出することができる化合物および/または要素であり、これらを使用して、これらが付着する抗体を検出することが可能になり、および/または、所望であれば、さらに定量可能となる。

    結合体は、通常、診断薬として使用するに好適である。 診断薬は、通常、2つのクラス、すなわち、例えば、さまざまな免疫測定法などのインビトロ診断薬に使用されるもの、および/または、通常、「分子指向型イメージング」として知られている、インビボでの診断プロトコールにおいて使用されるものに含まれる。

    多くの適当な造影剤が、これらを、例えば抗体などの分子に付着させる方法と同じように当技術分野において知られている(例えば、米国特許第5,021,236号、第4,938,948号、および第4,472,509号を参照。これらはそれぞれ参考として本明細書に援用される)。 使用されるイメージング成分は、常磁性イオン、放射性同位体、蛍光色素、NMRにより検出可能な物質、X線画像化などでもよい。

    常磁性イオンの場合には、例として、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)および/またはエルビウム(III)を挙げることができるかもしれないが、ガドリニウムが特に好適である。 その他の関係で、例えば、X線画像化などに有用なイオンは、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、および特にビスマス(III)などがあるが、これらに限定されない。

    治療および/または診断に応用される放射性同位元素の場合は、アスタチン21111炭素、 14炭素、 51クロム、 36塩素、 57コバルト、 58コバルト、銅67152 Eu、ガリウム67水素、ヨウ素123 、ヨウ素125 、ヨウ素131 、インジウム11159鉄、 32リン、レニウム186 、レニウム18875セレン、 35硫黄、テクニシウム99mおよび/またはイットリウム90が挙げられるかもしれない。 125 Iはしばしば、特定の実施形態において使用するのに好適であり、また、テクニシウム99mおよび/またはインジウム111はエネルギーが低く、長期間の検出に適しているため、しばしば好適である。

    結合体としての使用が考えられる蛍光標識には、Alexa350、Alexa430、AMCA、BODIPY630/650、BODIPY650/665、BODIPY−FL、BODIPY−R6G、BODIPY−TMR、BODIPY−TRX、Cascade Blue、Cy3、Cy5、6−FAM、フルオレセイン、イソチオシアネート、HEX、6−JOE、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、REG、ローダミングリーン、ローダミンレッド、レノグラフィン、ROX、TAMRA、TET、テトラメチルローダミン、および/またはテキサスレッドなどがある。

    本発明において想定される別の型の結合体は、主にインビトロで使用することを意図されたものであるが、ここで、分子は、色素原性基質に接触すると有色産物を生成する二次的結合リガンドおよび/または酵素(酵素タグ)に連結している。 適当な酵素の例は、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(セイヨウワサビ)水素ペルオキシダーゼ、またはグルコースオキシダーゼなどである。 好ましい二次的結合リガンドはビオチンおよび/またはアビジンおよびストレプトアビジン化合物である。 このような標識の使用は当業者によく知られていて、例えば、米国特許第3,817,837号、第3,850,752号、第3,939,350号、第3,996,345号、第4,277,437号、第4,275,149号および第4,366,241号に記載されており、これらはそれぞれ参考として本明細書に援用される。

    他のさまざまな免疫検出法の工程が、科学文献、例えば、Nakamura et al. ,(1987)などに記載されている。 最も単純で直接的な意味で、免疫測定法は結合実験である。 一定の好適な免疫測定法は、さまざまなタイプの放射免疫測定法(RIA)および免疫ビーズ捕捉測定法である。 また、組織切片を用いる免疫組織化学的検出法も、特に有用である。 しかし、検出法がこのような技術に限定されないことは容易に理解でき、ウエスタンブロッティング、ドットブロッティング、FACS解析法なども、本発明に関連して使用することができる。

    ウエスタンブロッティングとともに使用する免疫学を利用した検出法は、SUR1、またはNC Ca−ATPチャネルの調節サブユニットに対する、酵素、放射標識、または蛍光的にタグ付けされた二次的分子/抗体などがあり、この点について特に有用だと考えられる。 このような標識の使用に関する米国特許は、第3,817,837号、第3,850,752号、第3,939,350号、第3,996,345号、第4,277,437号、第4,275,149号および第4,366,241号などであり、これらは参考として本明細書に援用される。 当然ながら、当技術分野において知られているように、例えば、二次抗体またはビオチン/アビジンリガンド結合構成などの二次的結合リガンドの利用によって、さらなる利点も見出されるかもしれない。

    上記したイメージング技術以外にも、当業者は、ポジトロン放出断層撮影、PET造影、PETスキャンも診断検査として使用できることを知っている。 PETスキャンは、ポジトロン放出からの放射線を検出することを利用して生理学的画像を得ることを含む。 ポジトロンは、被験体に投与された放射活性物質から放射される微粒子である。

    このように、本発明の特定の実施形態において、アンタゴニストまたはその関連化合物を、上記したように酵素、放射標識、蛍光的にタグ付けして、脳浮腫によるニューロン損傷を診断、モニター、および/または段階付けする。 例えば、酵素、放射標識、蛍光的にタグ付けしたアンタゴニストまたはその関連化合物を用いて、腫瘍のサイズ、限界、および/または境界を決定することができる。 一定の腫瘍、例えば、転移性腫瘍の境界を定めることは困難である。 転移性腫瘍においては、膠細胞が活性化されて、腫瘍の周囲にカプセルまたは神経膠症カプセルを形成する。 従って、標識したアンタゴニストまたはその関連化合物は腫瘍の境界を定めるために使用することができ、外科医によってそれを除去する効率を向上させることができる。 さらに、標識したアンタゴニストまたはその関連化合物を使用して、脳卒中後の将来の梗塞または損傷を受ける危険性のある周辺部または領域を決定または規定することができる。

    VIII. 化合物の処方および投与経路 本発明の薬学的組成物は、薬学的に受容可能な担体に溶解または分散された、有効量の一つ以上のNC Ca−ATPチャネルの調節因子(アンタゴニストおよび/またはアゴニスト)またはその関連化合物または付加的薬剤を含む。 「薬学的、または薬理学的に許容される」という語句は、動物、例えば、ヒトなどに必要に応じて投与したときに、不都合、アレルギー性、または他の有害な反応を生じることのない分子的実体および組成物を意味する。 少なくとも一つのNC Ca−ATPチャネルの調節因子(アンタゴニストおよび/またはアゴニスト)、またはその関連化合物、または付加的な活性成分を含む薬学的組成物の調製物は、参照されて本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences,18th Ed. Mack Printing Company,1990に例示されているように、本願の開示を踏まえれば、当業者に分かるはずである。 さらに、動物(例えばヒト)に投与するには、当然ながら、調製物は、FDAの生物学的製剤基準が要求する無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度の基準を満たさなければならない。

    本明細書において使用される「薬学的に受容可能な担体」は、当業者に知られているように(例えば、参照されて本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Sciences,18th Ed. Mack Printing Company,1990,pp.1289−1329参照)、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗細菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩類、保存剤、薬剤、薬剤安定剤、ゲル剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、色素などの物質、およびそれらの組み合わせを含む。 通常の担体が活性成分と不適合でない限り、薬学的組成物にそれを使用することが想定されている。

    NC Ca−ATPチャネルの調節因子(アンタゴニストおよび/またはアゴニスト)、またはその関連化合物は、それが個体、液体、またはエアロゾルのいずれの形で投与されるか、および注射のように、投与経路によって滅菌を必要とするか否かによって、さまざまなタイプの担体を含む可能性がある。 本発明は、静脈内、皮内、経皮、くも膜下腔内、脳室内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、局所的、筋肉内、皮下、粘膜、経口、局所、局部、吸入(例えば、エアロゾル吸入)、注射、注入、持続注入、標的細胞を直接浸す局所的灌流、カテーテルを介した、洗浄を介した、クリームで、脂質組成物(例えば、リポソーム)で、または、当業者に知られているような(例えば、参照されて本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990参照)その他の方法、もしくは、前記の経路を組み合わせたものによって投与することができる。

    NC Ca−ATPチャネルの調節因子(アンタゴニストおよび/またはアゴニスト)、またはその関連化合物は、遊離塩基、中性、または塩の形の組成物に処方することができる。 薬学的に受容可能な塩は、例えば、タンパク質性組成物の遊離アミノ基によって形成されるもの、または、例えば、塩酸またはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、またはマンデル酸などの有機酸によって形成されるものなどの酸付加塩を含む。 遊離したカルボキシル基によって形成される塩類も、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、またはプロカインなどの有機塩基から得ることもできる。 処方に当たっては、投薬処方に適合した形で、また、治療有効量にして溶液を投与する。 処方剤は、注射液などの非経口投与用に、または肺に送達するためのエアロゾルに処方されたもの、または、薬剤放出カプセルなど、消化的に投与するために処方されたものなど、さまざまな投薬形態にして簡単に投与される。

    さらに、本発明によって、投与に適した本発明の組成物が、薬学的に受容可能な担体に入って、場合によっては不活性希釈剤とともに提供される。 この担体は、同化可能でなければならず、液体、半固体すなわちペースト状、または固体の担体を含む。 通常の媒体、薬剤、希釈剤、または担体がレシピエントに対して有害、またはそれに含まれる組成物の治療的有効性にとって有害でない限り、それを、本発明の方法を実施する際に使用するための投与可能な組成物にして使用するのが適当である。 担体または希釈剤の例は、脂肪、油、水、生理食塩水、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、充てん剤など、またはこれらの組み合わせなどである。 また、この組成物は、一つ以上の成分の酸化を遅らせるために、さまざまな抗酸化剤を含むことが可能である。 さらに、微生物の作用の防止は、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、またはこれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない、さまざまな抗細菌剤および抗真菌剤などの保存剤によってもたらすことができる。

    本発明によれば、組成物は、適宜実用的な方法、すなわち、溶液、懸濁液、乳化、混合、カプセル封入、吸収などによって担体と組み合わされる。 このような手順は、当業者にとって日常行われていることである。

    本発明の具体的な実施形態において、組成物を、半固体または固体の担体と組み合わせて充分に混合する。 混合は、粉砕など便利な方法で行えばよい。 また、組成物が治療活性を失うこと、すなわち、胃の中で変性することから保護するために、安定化剤を混合過程で加えることもできる。 組成物に使用する安定化剤の例には、バッファー、グリシンやリジンなどのアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、ショ糖、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどの炭水化物が含まれる。

    さらなる実施形態において、本発明は、NC Ca−ATPチャネルの調節因子(アンタゴニストおよび/またはアゴニスト)、またはその関連化合物、1種類以上の脂質、および水性溶媒を含む、薬学的脂質媒体(vehicle)の使用に関する。 本明細書で使用する「脂質」という用語は、特徴として水に不溶性で、有機溶媒によって抽出可能な広範囲の物質を含むものと定義される。 この広範な種類の化合物は、当業者には周知のものであり、本明細書において「脂質」という用語が使用される際、任意の特定の構造に限定されるわけではない。 例えば、長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含む化合物などである。 脂質は、天然のものでも、合成(すなわち、人間によって設計または製造されたもの)でもよい。 しかし、脂質は、普通、生物学的物質である。 生物学的脂質は、当技術分野において周知されており、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、スフィンゴ糖脂質、糖脂質、スルファチド、エーテル結合型およびエステル結合型の脂肪酸を有する脂質、および重合性脂質、ならびにこれらを組み合わせたものを含む。 当然ながら、本明細書に具体的に記載したもの以外の化合物で、当業者によって脂質であると理解されているものも、本発明の組成物および方法に含まれる。

    当業者は、組成物を脂質媒体中に組成物を分散させるために用いることのできる技術範囲を熟知していよう。 例えば、NC Ca−ATPチャネルの調節因子(アンタゴニストおよび/またはアゴニスト)、またはその関連化合物を、当業者に既知の手段によって、脂質を含む溶液に分散させ、脂質で溶解し、脂質で乳化し、脂質と混合し、脂質に共有結合させ、脂質中に懸濁液として含ませ、ミセルまたはリポソームを含むか、もしくはそれらと複合体を形成させ、さもなければ、脂質または脂質構造物と結合させることができる。 分散によって、リポソームの形成がもたらされても、もたらされなくてもよい。

    動物患者に投与される、本発明の組成物の実際の投薬量は、体重、状態の重症度、治療中の病気のタイプ、既往または同時に行われる治療的および/または予防的な介入、患者の特発性疾患、および投与経路などの物理学的および生理学的な因子によって決定することができる。 投薬量および投与経路に応じて、好適な投薬量の投与回数、および/または有効量は、被験体の反応によって変えることができる。 いずれにしても、投与に関与する施術者が、組成物中の活性成分の濃度、および各被験体に対する適当な用量を決める。

    特定の実施形態において、薬学的組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含むことができる。 別の実施形態では、活性化合物は、例えば、1単位の重量の約2%から約75%、または約25%から約60%、およびそれから導き出せる範囲を構成することができる。 当然ながら、治療上有用な各組成物における活性化合物の量を、適切な投薬量が化合物の所定の単位用量で得られるような方法で調製することができる。 可溶性、生物利用可能性、生物学的半減期、投与経路、製品の貯蔵寿命、およびその他の薬理学的な考慮事項などの要因が、そのような医薬処方剤を調製する分野の当業者によって検討されるのであるから、多様な投薬量および治療計画が望ましいかもしれない。

    A. 消化的な組成物および処方剤 本発明の好適な実施形態において、NC Ca−ATPチャネルの調節因子(アンタゴニストおよび/またはアゴニスト)、またはその関連化合物を、消化的経路を介して投与するように処方する。 消化的な経路は、組成物が消化管と直接接触する、すべての可能な投与経路を含む。 具体的には、本明細書に開示された薬学的組成物は、経口、口腔内、直腸内、または舌下に投与することができる。 そのため、これらの組成物は、不活性希釈剤とともに、または同化可能な可食担体とともに処方することができ、あるいは、硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセルに封入することもでき、あるいは、錠剤に圧縮することもでき、あるいは、食事用の食物に直接取り込むこともできる。

    特定の実施形態において、活性化合物は、賦形剤とともに取り込んで、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ、ウエハース、などの形で使用することができる(Mathiowitz et al, 1997;Hwang et al,1998;米国特許第5,641,515号;第5,580,579号;および第5,792, 451号。これらはそれぞれ参考として、その全体が本明細書に援用される)。 また、錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセルなどは、以下のものを含み得む:結合剤、例えば、トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ、ゼラチン、またはこれらの組み合わせなど;賦形剤、例えば、第二リン酸カルシウム、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、またはこれらの組み合わせなど;崩壊剤、例えば、コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸、またはこれらの組み合わせなど;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムなど;甘味剤、例えば、ショ糖、ラクトース、サッカリン、またはこれらの組み合わせなど;香味剤、例えば、ペパーミント、ウィンターグリーン油、チェリー風味剤、オレンジ風味剤など。 投薬単位形態がカプセルの場合、上記タイプの材料に加えて、脂質担体を含むことができる。 その他さまざまな材料を、コーティングとして、または、それ以外に、投薬単位の物理的な形状を改変するために存在させることができる。 例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルを、セラック、糖、またはその両方でコートすることができる。 投薬形態がカプセルの場合には、上記タイプの材料に加えて、液体担体などの担体を含むことができる。 ゼラチンカプセル、錠剤、または丸剤を経腸用にコートすることができる。 腸溶コーティングは、組成物が、pHが酸性の胃や腸の上部で変性するのを防止する。 例えば、米国特許第5,629,001号参照。 小腸に到達したところで、そこの塩基性pHが、コーティングを溶かして、組成物を放出させて、指定された細胞、例えば、上皮腸細胞およびパイエル板M細胞に吸収させる。 エリキシルのシロップは、活性化合物のショ糖を甘味剤として、メチルパラベンおよびプロピルパラベンを保存剤として、チェリー風味剤またはオレンジ風味剤などの着色剤および香味剤を含むことができる。 当然ながら、すべての投薬単位形態を調製する際に使用する材料はすべて、医薬的に純粋で、かつ使用する量では実質的に非毒性であることが必要である。 さらに、活性化合物を、徐放性の調製物および処方剤に取り込むことも可能である。

    経口投与については、代わりの方法として、本発明の組成物を、一つ以上の賦形剤とともに、うがい薬、歯磨剤、口腔錠、経口スプレー、または舌下用の経口的に投与される処方剤の形にして取り込むことができる。 例えば、うがい薬は、必要量の活性成分を、ホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液)など適当な溶媒に取り込ませて調製することができる。 あるいは、活性成分を、ホウ酸ナトリウム、グリセリン、および重炭酸カリウムを含む経口溶液などの経口用溶液の中に取り込むか、または歯磨剤に分散させるか、または治療有効量を、水、結合剤、研磨剤、香味剤、発泡剤、および保湿剤を含み得る組成物に加えることができる。 あるいは、組成物は、舌下に置くことができるか、口内で溶けるような錠剤または溶液の形にすることもできる。

    その他の消化的な投与方式に適した別の処方剤には坐薬などがある。 坐薬は、さまざまな重さと形の固体の投薬形態であり、通常、直腸に挿入するように薬が入っている。 挿入後、坐薬は体腔液の中で軟化、融解、または溶解する。 通常、坐薬には、伝統的な担体、例えば、ポリアルキレングリコール、トリグリセリド、またはこれらの組み合わせを含むことができる。 特定の実施形態では、坐薬は、例えば、活性成分を、約0.5%から約10%の範囲で、好ましくは、約1%から約2%含む混合物から形成することができる。

    B. 非経口用の組成物および処方剤 さらなる実施形態において、NC Ca−ATPチャネルの調節因子(アンタゴニストおよび/またはアゴニスト)、またはその関連化合物を非経口経路によって投与することができる。 本明細書において使用する「非経口」という用語は、消化管を迂回する経路を含む。 詳細には、本明細書で開示されている薬学的組成物を、例えば、静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、脳室内、くも膜下腔内、皮下、または腹腔内に投与することができるが、これらに限定されない。 米国特許第6,7537,514号、第6,613,308号、第5,466,468号、第5,543,158号;第5,641,515号;および第5,399,363号(各々、その全体が参考として具体的に本明細書に援用される)。

    遊離型塩基、または薬学的に受容可能な塩としての活性化合物の溶液を、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適当に混合した水の中で調製することができる。 分散剤も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物の中で、および油の中で調製することができる。 通常の保存および使用条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を阻止するために保存剤を含む。 注射可能な使用に適した医薬形態は、滅菌水性溶液または分散剤、および滅菌注射溶液または分散剤を即時調製するための滅菌粉剤などである(米国特許第5,466,468号、その全体が参考として具体的に本明細書に援用される)。 すべての場合において、形態は滅菌されていなければならず、また、簡単に注射できる程度に流動的でなければならない。 製造および保存の条件下で安定していなければならず、また、細菌や真菌類などの微生物による汚染作用から保護しなければならない。 担体は、例えば、水、エタノール、DMSO、ポリオール(すなわち、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適当な混合物、および/または植物油を含む溶媒または分散媒体でもよい。 例えば、レシチンなどのコーティングを利用して、分散剤の場合には、必要とされる粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、適正な流動性を維持することができる。 微生物の作用を阻止することは、さまざまな抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。 多くの場合、等張剤、例えば、糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。 注射用組成物の持続的吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど、吸収を遅らせる薬剤を組成物に使用することによって引き起こすことができる。

    例えば、水性溶液での非経口投与のために、その溶液を、必要であれば、適当に緩衝しなければならず、液体希釈剤は、最初に十分な生理食塩水またはグルコースで等張にされる。 これら特定の水性溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内に投与するのに特に適している。 これに関連して、使用することができる滅菌水性媒体は、本開示に照らせば、当業者に分かるはずである。 例えば、1投薬量を1mLの等張NaCl溶液に溶解して、1000mLの皮下注入液に加えるか、提案された注入部位に注射する(例えば、“Remington's Pharmaceutical Sciences”15th Edition,pages 1035−1038 and 1570−1580参照)。 投薬量の多少の変化は、治療されている被験体の状態によって必ず起こる。 いずれにしても、投与に関与する者が、各被験体について適当な用量を決定する。 さらに、ヒトに投与するには、調製物は、FDAの生物学的製剤基準が要求する無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度の基準を満たさなければならない。

    滅菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、上記に列挙されているさまざまな他の成分とともに適当な溶媒に取り込んで、必要であれば、引き続き濾過滅菌を行なうことによって調製される。 通常、分散剤は、さまざまな滅菌済み活性成分を、基剤である分散媒体、および上記に列挙されている成分から必要とされる他の成分を含む滅菌された媒体の中に取り込むことによって調製される。 滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合には、好適な調製法は、活性成分に、既に滅菌濾過されたその溶液からの付加的な所望の成分を加えたものの粉末が得られる真空乾燥技術および凍結乾燥技術である。 粉末化された組成物を、安定化剤とともにかまたはそれを伴わずに、例えば、水または生理食塩水などの液体担体と混合する。

    C. 種々の薬学的組成物および処方剤 本発明の別の好適な実施形態において、NC Ca−ATPチャネルの調節因子(アンタゴニストおよび/またはアゴニスト)、またはその関連化合物を、さまざまな種々雑多な経路、例えば、局所(すなわち、経皮)投与、粘膜投与(鼻腔内、膣内など)、および/または吸入によって投与するために処方することができる。

    局所投与するための薬学的組成物は、軟膏、ペースト、クリーム、または粉末など、薬用に適用するために処方された活性化合物を含むことができる。 軟膏は、あらゆる油性の吸着性エマルジョン、および水溶性の局所適用用組成物を含むが、一方、クリームおよびローションは、エマルジョンベースのものだけを含む組成物である。 局所的に投与された薬剤は、皮膚を通して活性成分が吸着されるのを促進するために浸透促進剤を含むことができる。 適当な浸透促進剤は、グリセリン、アルコール、アルキルメチルスルホキシド、ピロリドン、およびルアロカプラム(luarocapram)などである。 局所に適用するための組成物の基剤となる可能性があるものは、ポリエチレングリコール、ラノリン、コールドクリーム、およびペトロラタム、およびその他適当な吸収性エマルジョンまたは水溶性の軟膏基剤などである。 また、局所用調製物は、活性成分を保存し、均一な混合物を提供するために必要であれば、乳化剤、ゲル化剤、および抗微生物性保存剤も含むことが可能である。 また、本発明の経皮投与は、「パッチ」を使用することを含み得る。 例えば、パッチは、1種類以上の活性物質を、所定の速度で、決められた期間にわたって連続して供給することができる。

    特定の実施形態において、薬学的組成物は、点眼薬、鼻腔内スプレー、吸入、および/またはその他のエアロゾル送達媒体によって送達することができる。 鼻エアロゾルスプレーによって肺に直接組成物を送達する方法が、例えば、米国特許第5,756,353号、および第5,804,212号(それぞれ、その全体が参考として具体的に本明細書に援用される)に記載されている。 同様に、鼻腔内微粒子樹脂(Takenaga et al.,1998)、およびリゾホスファチジル−グリセロール化合物(米国特許第5,725,871号、その全体が参考として具体的に本明細書に援用される)を用いる薬剤の送達も薬学分野において知られている。 同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリックスの形状での経粘膜による薬剤送達が、米国特許第5,780,045号(その全体が参考として具体的に本明細書に援用される)に記載されている。

    エアロゾルという用語は、液状化または加圧されたガス推進剤中に分散された、細かな粒子に分割された固体または液体の粒子のコロイド系を意味する。 本発明の典型的な吸入用のエアロゾルは、液体推進剤、または液体推進剤と適当な溶媒の混合物における活性成分の懸濁液からなる。 適当な容器は、推進剤の圧力要件に応じて変化する。 エアロゾルの投与は、被験体の年齢、体重、および症状の重篤度および反応に応じて変動する。

    IX. 診断または治療用のキット 本明細書に記載した組成物の任意のものをキットに入れることができる。 非限定的な例では、SUR1に選択的に結合するか、それを同定する化合物を診断キットに含ませることができる。 このような化合物を「SUR1マーカー」と呼ぶことができ、抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)、SUR1オリゴヌクレオチド、SUR1ポリペプチド、低分子、またはこれらの組み合わせ、アンタゴニスト、アゴニストなどであるが、これらに限定されない。 迅速に測定するために、これらのSUR1マーカーの任意のものを、放射性物質および/または蛍光マーカー、および/または酵素タグに連結することができることが企画される。 また、このキットは、脂質、および/または付加的薬剤、例えば、放射性マーカー、または酵素マーカー、または蛍光マーカーを適当な容器手段の中に含むこともできる。

    このキットは、検出アッセイ用の標準曲線を作成するのに使用することができるため、適当に等分されたSUR1マーカー、脂質、および/または標識または未標識の本発明の付加的薬剤組成物を含むことが可能である。 キットの成分は、水性媒体の中、または凍結乾燥した形にパッケージすることができる。 キットの容器手段は、通常、少なくとも1個のバイアル、試験管、フラスコ、ビン、注射器、またはその他の容器手段を含み、その中に成分を入れて、好ましくは、適当に等分することができる。 一つより多い成分がキットの中にある場合、キットも、通常、その中に別の成分が別々に入れられている第二、第三、または他の追加の容器を含んでいる。 しかし、さまざまな組み合わせの成分をバイアルの中に含ませることができる。 また、本発明のキットは、一般的に、SUR1マーカー、脂質、付加的薬剤、およびその他の試薬容器を、販売のために厳重に密封して含むための手段も含む。 そのような容器は、その中に所望のバイアルが保持されている、射出成形または吹き込み成形されたプラスチック製の容器を含むことができる。

    本発明の治療用キットは、アンタゴニスト、アゴニスト、またはその関連化合物を含むキットである。 治療中の状態および/または病気に応じて、キットは、NC Ca−ATPチャネルを遮断および/または阻害するために、SUR1アンタゴニスト、またはその関連化合物を含むことができる。 または、キットは、NC Ca−ATPチャネルを開口させるために、SUR1アゴニスト、またはその関連化合物を含むことができる。 このようなキットは、通常、適当な容器手段の中に、SUR1のアンタゴニスト、アゴニスト、またはその関連化合物の薬学的に受容可能な処方剤を含む。 このキットは、単一の容器手段を有するものでも、および/または各化合物に対し別々の容器手段を有するものであってもよい。

    キットの成分が、一つおよび/またはそれよりも多い溶液で提供される場合には、この溶液は水性溶液であって、滅菌された水性溶液が特に好ましい。 SUR1のアンタゴニスト、アゴニスト、またはその関連化合物は、注射針を通過する組成物に処方することも可能である。 そのような場合には、容器手段それ自体が、注射器、ピペット、および/またはその他の同様の装置であってもよく、そこから処方剤を身体の感染部位に適用し、動物に注射し、および/または、さらにキットの別の成分に適用および/またはそれと混合することも可能である。

    水性溶液の例は、エタノール、DMSO、および/またはリンゲル液などであるが、これらに限定されない。 特定の実施形態において、DMSOまたはエタノールの使用濃度は、0.1%または(1mL/1000L)を超えない。

    しかし、キットの成分を乾燥粉末として提供することが可能である。 試薬および/または成分を乾燥粉末として提供するときは、適当な溶媒を加えて粉末を再構成することができる。 溶媒を別の容器手段に入れて提供することも想定される。

    容器手段は、通常、少なくとも1個のバイアル、試験管、フラスコ、ビン、注射器、および/またはその他の容器手段であり、その中にSUR1のアンタゴニスト、アゴニスト、またはその関連化合物が適当に配分されている。 また、キットは、滅菌した薬学的に受容可能なバッファーおよび/またはその他の希釈剤を収容するために別の容器手段を含むことも可能である。

    また、本発明のキットは、一般的に、販売のために厳重に密封したバイアルを収容するための手段、例えば、所望のバイアルを保持している、射出成形および/または吹き込み成形されたプラスチック製の容器なども含む。

    容器の数および/またはタイプとは無関係に、本発明のキットは、SUR1のアンタゴニスト、アゴニスト、またはその関連化合物を動物の体内に注射/投与、および/または配置を補助するための器具を含むか、および/またはそれとともに同梱することもできる。 そのような器具は、注射器、ピペット、鉗子、および/または任意のそのような医学的に認可される送達媒体であろう。

    SUR1のアンタゴニスト、アゴニスト、またはその関連化合物以外に、キットは、第二の活性成分を含むこともできる。 第二の活性成分の例は、低血糖症を予防するための物質(例えば、グルコース、D5W、グルカゴンなど)、血栓溶解剤、抗凝固剤、抗血小板剤、スタチン、利尿剤、血管拡張剤などである。 これら第二の活性成分を、SUR1のアンタゴニスト、アゴニスト、またはその関連化合物と同じバイアルに入れることもできるが、別々のバイアルに収容することもできる。

    さらに、本発明のキットは、グルコース試験キットを含むこともできる。 すなわち、グルコース試験キットを用いて患者の血糖を測定してから、SUR1のアンタゴニスト、アゴニスト、またはその関連化合物を被験体に投与し、その後、患者の血糖を測定することができる。

    上記のキット以外に、IVバッグが、開口または破壊して化合物をIVバッグの中に放出することができる隔壁またはチャンバーを含むように、本発明の治療用キットを組み立てることができる。 別のタイプのキットは、ボーラス用キットが、予め充てんされている注射器、または同じように簡易に使用でき、迅速に投与できる装置を含むボーラス用キットを含むこともできる。 注入用キットは、バイアルまたはアンプル、および注入前にバイアルまたはアンプルに添加するためのIV溶液(例えば、リンゲル液)を含むことができる。 注入用キットは、注入の前、最中、または後に被験体にボーラス/負荷量を投与するためのボーラス用キットも含む。

    X. 実施例 以下の実施例は、本発明の好適な実施形態を示すために含まれている。 当業者は、以下の実施例に開示されている技術は、本発明者によって、本発明を実施する際に十分に機能することが発見され、それゆえ、その実施にとって好適なモードを構成すると考えられる技術を代表するものであると理解すべきである。 しかし、当業者は、本開示を踏まえて、開示されている具体的な実施形態に多くの変化を加えても、なお、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、同様または類似の結果を得ることができることを理解できるはずである。

    実施例1
    エストロゲンによる調節 K ATPチャネル(Kir6.1、Kir6.2)の特徴は、ATPに対するチャネルアフィニティーが、膜脂質であるPIP の存在によって調節を受けることである。 膜の細胞質側にPIP を適用すると、K ATPチャネルの開口状態での安定性が高まる(Ashcroft,1998;Baukrowitz et al,1998;Rohacs et al,1999)。 開口状態での安定性の増加は、ATPがない状態でチャネルが開口する確率が高まることで示され、また、これに対応してATPによる阻害に対する感受性が低下する結果になる(Enkvetchakul et al,2000;Haruna et al,2000;Koster et al,1999;Larsson et al,2000)。

    ATPチャネルとNC Ca−ATPチャネルには数多くの類似点があることから、本願発明者らは、NC Ca−ATPチャネルのATP感受性も、同じようにPIP に反応するだろうと考えた。 このことを、Cs を電荷担体とし、バス(bath)中1μMのCa 2+および10μMのATP(後者がチャネルを完全に遮断すると予想された)を用いたインサイドアウトパッチでNC Ca−ATPチャネルを調べることによって試験した。 これらの条件下では、NC Ca−ATPチャネルのみがR1星状細胞内で記録された。 バスにPIP (50μM)を加えると、K ATPチャネルに対するPIP の作用との類似性から予想されたとおり、チャネルの活性が顕著になった(図1)。 このチャネル活性はグリベンクラミドによって遮断されたことから、チャネルの同一性が確認された。

    受容体が介在するメカニズムが、NC Ca−ATPチャネル活性の調節に関係したか否かを決定するために、周知のホスホリパーゼC(PLC)を用いて、PLC活性化がPIP の分解と消費をもたらし、それによってATPに対するアフィニティーを増加させる、例えば、チャネルの開口を低下させるか否かを調べた。 エストロゲンは、脳、およびその他の部位における周知のPLC活性化因子である(Beyer et al,2002;Le Mellay et al,1999;Qui et al,2003)。 この実験では、細胞内シグナル伝達機構が変わるのを防ぐために、細胞が付着したパッチを調べた。 アジ化ナトリウムに暴露して細胞のATPの枯渇をもたらすことによって、NC Ca−ATPチャネル活性が生じた(図2、記録結果の最初の部分)。

    エストロゲン(E2;10nM)をバスに適用すると、NC Ca−ATPチャネルに起因する活性が速やかに終了した(図2)。 このことは、エストロゲンが、NC Ca−ATPチャネルに対して調節制御を行ったことを示唆しており、また、シグナル伝達カスケードを迅速に(非ゲノム的に)活性化することができるエストロゲン受容体がこれらの細胞上に存在していたことを示唆している。

    次に、雄および雌から得たR1星状細胞においてエストロゲン受容体を検出できるか否かを決定するために。 ゼラチンスポンジ移植物を、3匹の雌ラット(F)の群および3匹の雄ラット(M)の別群で移植後7日目に回収した。 各群から集めたタンパク質を、ウエスタンブロッティング法により、子宮由来のタンパク質をコントロールとして用いて、2種類の希釈率((4x=50μgの全タンパク質;1x=12.5μgの全タンパク質)で解析した(図3A)。膜を、αエストロゲン受容体およびβエストロゲン受容体の両方を認識した抗体によってブロットした。雌雄とも、α受容体(66kDa)およびβ受容体(55kDa)に相当する分子量のところに顕著なバンドを示した(図3)(Hiroi et al.,1999)。また、雌雄由来のタンパク質の同一試料を用い、膵臓由来のタンパク質をポジティブコントロールとして用いて、SUR1の存在を確認した(図3B)。明らかに、エストロゲン受容体は、雄および雌に由来する星状細胞で既に報告されている(Choi et al.,2001)。大脳皮質では、ウエスタンブロットによって示唆されているように、βアイソフォームの方が豊富に存在すると報告されている(Guo et al.,2001)。

    次に、図2の電気生理学的実験を、雄のラットから回収したR1星状細胞を用いて反復した。 上記したように、アジ化ナトリウムに暴露した後、細胞内ATPを枯渇させてNC Ca−ATPチャネル活性を活性化させる細胞付着パッチを調べた(図4A)。 より高い時間分解能における記録を調べることによって、NC Ca−ATPチャネルに適したコンダクタンスをもつ明確なチャネルの活性を確認した(図4B)。 エストロゲンをバスに適用すると(図4、E2、10nM、矢印)、NC Ca−ATPチャネルによる活性は速やかに終了した(図4)。 これらのデータは、エストロゲンが、NC Ca−ATPチャネルに対して調節制御を行ったことをさらに証明し、また加えて、この反応が、雄および雌のR1星状細胞において同等に強固であることを示唆した。

    エストロゲンの作用から類推して、PIP を枯渇させる他のメカニズム、例えば、他の受容体介在メカニズムや、Gタンパク質などのような、より直接的なPLCの活性化因子は、NC Ca−ATPチャネルの活性に対して同じような阻害作用をもち、防御効果を発揮するものと期待できよう。

    実施例2
    神経膠症カプセル 標準的なモデルは、麻酔したラットの頭頂葉に刺傷を与えること、および滅菌した異物(ゼラチンスポンジ:Gelfoam(登録商標))を刺傷内に移植することを含んでいた。 標準モデルの変種は、スポンジに物質(例えば、リポ多糖、LPS)を染み込ませるか、スポンジに直接差し込まれた輸送用カテーテルをもつ浸透圧ミニポンプを用いて物質をインビボで連続的に注入することを含んでいた。 この傷害手順は、十分に動物によって許容され、実質的に有病率および死亡率はゼロで、最小限の痛みを伴うものであった。 インビボでは適当な時間を置いた後、組織切片を組織学的または免疫組織化学的に調べるために全脳を回収した。 あるいは、スポンジ自体を脳からそっと取り出した場合には、神経膠症カプセルの内部域はスポンジに接着しているので、それに沿って切り出した。 こうして、タンパク質(例えば、ウエスタン法)またはmRNA(RT−PCR)についてスポンジをアッセイするか、または、酵素的に解離させて、電気生理学的測定またはその他の単一細胞測定を行うために構成細胞を回収した。

    神経膠症カプセルは、傷害後7〜10日で十分に発達した。 脳の灌流固定を行う前にエバンスブルーで動物を灌流して、神経膠症カプセルを冠状切片内で視覚化した(図5A)。 浮腫の領域(暗部)が、ゼラチンスポンジ(暗部)を囲む無血管性神経膠症カプセル(明部)の輪郭を描くように見えた。 抗GFAP抗体による免疫組織化学的試験によって、スポンジ近辺にある脳実質が多くのGFAP陽性の反応性星状細胞を含んでいることが示された(図5B;矢印はゼラチンスポンジの在処を示している)。 出力を上げると、これらの実質内GFAP陽性細胞が大型で、数多くの顕著な細胞突起を担持していることが明らかになった(図5C、矢印)。 ゼラチンスポンジ自体を調べたところ、スポンジの隙間に移動したGFAP陽性の反応性星状細胞が示された(図5D、矢印)。

    実施例3
    神経膠症カプセルからの細胞単離 神経膠症カプセルおよびゼラチンスポンジの内部領域をパパイン消化して新しく単離した細胞の位相差顕微鏡検査によって3種類の細胞が明らかになった。 ほとんどの細胞(>90%)は大きくて丸く、細胞突起を持っておらず、位相が明るかった(図6A)。 いくつかの細胞(3〜5%)は、小さくて丸く、細胞突起を持っておらず、位相が暗かった(図6B)。 時折、中ぐらいの大きさで、位相が明るく、1個の細胞の直径よりも大きな長さの多数の突起を持つ細胞が見られた(Chen et al.,2003)。 免疫蛍光実験によって、これらの細胞のすべてが、GFAP(図6C、D)およびビメンチン(図6E、F)などの代表的な星状細胞マーカーに対して強い陽性を示した。 OX−42に対する低密度標識(sparse labeling)によって示されたところによると、小膠細胞は、神経膠症カプセルそれ自体の内部域では顕著でなかった。 神経膠症カプセルの内部域にある細胞は、O2A前駆細胞マーカーであるA2B5、および線維芽細胞マーカーであるプロリル4−ヒドロキシラーゼ(Dalton et al.,2003)に対して陰性であった。

    新たに単離された細胞と同じように、初代培養物でも3種類の形態学的に異なる型の細胞が観察された。 ほとんどの細胞(>90%)が大型の多角形性細胞で(図6Gb)、一部(3〜5%)が小型の双極細胞であり(図6Ga)、ごくまれに突起を持つ星形の細胞が観察された(Perillan et al.,2000)。 これらの細胞はすべて、抗GFAP抗体で強く標識された(図6H)。 酵素消化によって得られた細胞をその後個別に初代培養する実験によって、大きな明位相の細胞は大型の多角形性細胞になり(図6Gb)、小さな暗位相の細胞は小型の双極細胞になる(図6Ga)ことが分かった(Dalton et al.,2003)。

    神経膠症カプセルの内部域由来の3種類の形態学的に判別可能なGFAP陽性星状細胞は、以下のように非常に異なった巨視に見た全細胞の電気生理学的特徴を示した:
    (i)星形の星状細胞に関する電気生理学的実験では、それらがKir2.3およびKir4.1の内向き整流性チャネルを発現することが明らかになり、また、免疫標識実験によって、それらが、SUR1サブユニットおよびKir6.1サブユニットからなるK ATPチャネルも発現することが示唆された(Chen et al.,2003;Perillan et al.,2000);
    (ii)R2星状細胞に関する電気生理学的実験では、それらが、サソリ(レイウルス・キンケストリアトゥス)に由来するポリペプチド毒素(Dalton et al.,2003)に対して感受性をもつ新規のCa 2+活性化型Cl−チャネルを発現することが明らかになった。 R2星状細胞のみが、このチャネルを発現した;
    (iii)R1星状細胞に関する電気生理学的実験では、それらが、PKCδを介してTGFβ1によって調節されるKir2.3内向き整流性チャネルを発現することが明らかになった(Perillan et al.,2002;Perillan et al.,2000)。 培養後ではなく、新しく単離された場合、R1星状細胞は、新規のSUR1制御型K ATPチャネルも発現した(Chen et al.,2003;Chen et al.,2001)。

    実施例4
    SUR1の発現 グリベンクラミドは、スルホニル尿素受容体であるSUR1およびSUR2に結合し、SUR1に対するアフィニティーの方が高い。 抗SURx抗体を用いて免疫蛍光実験を行った。 ゼラチンスポンジのすぐ外側にある神経膠症カプセルの内部域(図7のgf)は、抗SUR1抗体によって強く標識された(図8A)が、抗SUR2抗体では標識されなかった(図7B)。 低倍率では各細胞を識別することができなかったが、高倍率にすると、単離後、SUR1標識が各細胞の中に均一に分布していることが分かった(図7C)。

    SUR2ではなくSUR1が転写される証拠が、移植してから7日後に単離したゼラチンスポンジから得たmRNAに対して行ったRT−PCR実験でも見られた。 星状細胞で見られるシグナル(図7D、レーン3)は、コントロールであるインスリノーマRIN−m5f細胞(図7D、レーン2)と同じ、ゲル上の適正な位置に現れた。 それに対し、SUR2に対するmRNAは、反応性星状細胞では転写されなかった(図7D、レーン5)が、コントロールとして用いた心筋細胞の中で転写された(図7D、レーン4)。

    実施例5
    神経膠症カプセルの内部域の特徴づけ 神経膠症カプセル中のGFAP陽性反応性星状細胞がすべてSUR1陽性であるか否かを調べるために、1週間前にゼラチンスポンジを移植し、その後、PBS中40%ショ糖で2日間灌流固定および平衡したラットの脳を調べた。 凍結切片を抗GFAP抗体および抗SUR1抗体で二重標識して免疫蛍光法で調べた。 このおよびその他の免疫標識実験で、標準的なコントロールとなるプロトコールは、利用可能であれば適当な免疫原性ペプチドを使用するか、または一次抗体を省略することを含んでいた。

    5匹の動物を切片化して、低倍率画像で画像化した。 画像は、ゼラチンスポンジの縁からのGFAP反応の深さ(厚さ)は、SUR1反応の深さの数倍になることを一貫して示していた。 GFAP反応の深さを測定すると、約400〜500μmの値が得られた(図8A;図8A〜8Iで、ゼラチンスポンジ移植物の位置が常に左側になっている;図8Fのバーは100μmに等しい)。 これに対し、SUR1反応が明らかな部分は、25〜50μmの深さまでにしか広がっていなかった(図8D)。 SUR1陽性領域の外側は、そのほとんどがSUR1陰性である、GFAP陽性の反応性星状細胞からなる広い領域になっていた。 SUR1反応は、常に、神経膠症カプセルの最深部域にある、異物との界面に正確に位置していた。 SUR1陽性の細胞は、常にGFAP陽性であった。 この実験から、ゼラチンスポンジに密着して、それと一緒に回収される細胞が、SUR1を発現する可能性が最も高いことが明白である。 また、R1星状細胞が、この最深領域で、反応性星状細胞のユニークなサブ集団を構成することも明らかになった。 この観察結果から、神経膠症カプセルの「内部域」が、神経膠症カプセルの残部とは異なるユニークな実体であるという概念が浮上してきた。

    実施例6
    神経膠症カプセルの内部域のその他の特徴 神経膠症カプセルの内部域をさらに詳しく評価するために別の実験を行った。 以前の実験では、通常酸素培養条件下でR1星状細胞を初代培養すると、3日後にSUR1制御型NC Ca−ATPチャネルの消失が起きるが、低酸素条件で培養すると、このチャネルの継続的な発現が得られることが分かった(Chen et al.,2003)。 このように、チャネルの発現には低酸素条件が必要であること、したがって、SUR1を発現するR1星状細胞が存在する神経膠症カプセルの内部域も低酸素状態であると判断された。 このことを評価するために、pO <10mmHgで、免疫組織化学的に検出することができる細胞タンパク質と不可逆的な共有結合付加体を形成する組織化学的マーカーであるピモニダゾールを用いた(Arteel et al.,1998;Hale et al.,2002;Kennedy et al,1997)。

    要するに、刺傷をもち、ゼラチンスポンジを移植されたラットを用意した。 ラットを1週間生かしておいた。 殺す前にピモニダゾールを投与し、凍結切片を、ピモニダゾール付加物を検出するのに適した抗体を用いて、免疫蛍光実験用に処理した。 GFAP用に凍結切片を二重標識した。 この実験によって、もっとも顕著なピモニダゾール標識が僅か20〜50μmの深さにしか広がっていない、神経膠症カプセルのSUR1陽性内部域に限定された低酸素状態の存在が確認された(図8B;GFAPは示されていないが、GFAP反応の深さは図8Aに示された深さに似ている)。 高解像度画像化によって、ピモニダゾール標識(図8G、右上図)が、大型のGFAP陽性星状細胞の中に存在することが示された(図8G、左下図)。

    これは、内部域の低酸素状態が、低酸素反応性の転写因子HIF−1の上方制御/活性化をもたらしたせいであろうと説明された。 このことを調べるために、切片の抗HIF−1α抗体による免疫標識を、GFAPを調べるための同時標識とともに実施した。 この実験によって、HIF−1α標識は、僅か20〜50μmの深さにしか広がっておらず(図8C;GFAPは示されていないが、GFAP反応の深さは図8Aに示された深さに似ている)、神経膠症カプセルのSUR1陽性内部域にほとんど限定されていることが確認された。 高解像度画像化によって、HIF−1α標識(図8H、右上図)が、大型のGFAP陽性星状細胞の中に存在することが示された(図8H、左下図)。

    密着結合タンパク質の発現も調べた。 2つの密着結合タンパク質、ZO−1およびオクルディン−5を、これらのタンパク質に対する抗体で別々の凍結切片を標識して調べた。 切片をGFAPについて二重標識した。 ここでも、20〜50μmの深さの最深層のみが、ZO−1またはオクルディン−5のいずれかで標識された(図8Eおよび8F;GFAPは示されていないが、GFAP反応の深さは図8Aに示された深さに似ている)。 高解像度画像によって、オクルディン−5標識(図8I、右上図)が、大型のGFAP陽性星状細胞の中に存在することが示された(図8I、左下図)。

    このように、神経膠症カプセルの内部域は、SUR1制御型NC Ca−ATPチャネルおよび密着結合タンパク質を発現する、そのR1星状細胞とともに、異物と脳の間にある重要な障壁、例えば異物−脳関門(FbBB)として働いている可能性がある。 その通りであるならば、この障壁を破ると、傷害に対する全体的な応答にかなりの影響を与えることが予想されよう。

    実施例7
    内部域の操作 本発明者らの通常のプロトコールに従って、刺傷をもち、ゼラチンスポンジを移植されたラットを用意して、1週間生かしておいた。 手術の際に、ラットには、脳の傷害部位に設置された輸送用カテーテルとともに浸透圧ポンプも皮下に移植した。 動物には、グリベンクラミド(1μMを0.5μL/時間で7日間)またはジアゾキシド(10μMを0.5μL/時間で7日間)によるポンプを受けさせた。 全身毒性は見られず、神経学的挙動は悪化せず、動物は健康そうに見え、発熱もなかった。

    損傷を受けた脳の凍結切片をGFAPについて調べた。 グリベンクラミドを投与された動物では、周囲の脳からはっきりと区分される明確な神経膠症カプセルが視覚化され、内部域は、GFAP陽性細胞が密集しているように見えた(図9A;ゼラチンスポンジは右側になる)。 これに対して、ジアゾキシドを投与された動物は、異物から離れたところにまで広がった拡張したGFAP陽性反応を示し、区分しにくい外部領域、およびゆるく密集していない内部域をもっていた(図9B;ゼラチンスポンジは右側になる)。

    凍結切片を、核標識であるDAPIによっても調べた。 グリベンクラミドで処理された動物の切片では、ほとんどの標識がGFAP陽性星状細胞から生じたものであった。 しかし、ジアゾキシドで処理された動物の切片では、DAPI標識によって、小さな有核細胞の「シート」が示された(図10Aのぼんやりしたスポット)。 調べてみると、これらの細胞シートは、多形核白血球(PMS、好中球)であると思われた。 このことを、PMN特異的マーカーであるMMP−8で標識して確認した(図10B)。 感染の証拠はなく、外植された材料の微小な生物学的培養は、有酸素培養でも無酸素培養でも細菌の増殖は見られなかったことに留意することが重要であり、このことは、この炎症反応が感染によるものでないことを示している。

    このように、グリベンクラミドによって内部域のR1星状細胞を保護したことが、傷害に対するGFAP反応全体を抑制したが、その一方で、ジアゾキシドによって内部域のR1星状細胞を殺傷したことが、GFAP反応全体を拡張させて、膨大な数の好中球の動員をもたらしたものと考えられる。 これらの観察結果は、神経膠症カプセルの「内部域」が、傷害に対する全体反応を決定する上で決定的な機能をもつユニークな実体であるという概念を強力に裏付けていた。

    実施例8
    複数の脳病理におけるSUR1
    3種類のラットモデル(外傷、膿瘍、および脳卒中)、およびヒトの転移性腫瘍から組織を採取して、GFAPおよびSUR1に対する抗体による二重免疫標識を行った。 低倍率図は、GFAPに対して陽性の免疫標識を示し、同時にSUR1に対しても陽性免疫標識も示す、ゼラチンスポンジ移植物に隣接する組織の層を明らかにした(図11A、B)。 各細胞を高倍率で調べたところ、SUR1免疫標識は、大型で星形の星状細胞に存在することが明らかとなり、異物である移植片を取り囲む神経膠症カプセルの内部域にSUR1陽性のR1星状細胞が存在することが確認された(図11C)。

    ラットにおける脳膿瘍モデルを調べた。 全身麻酔下で皮質下に自家糞石を移植して膿瘍を生じさせた。 これらの動物は良好に生き延びたが、軽度の体重減少の証拠を示した。 手術後1週間で殺処理したところ、化膿した空洞が神経膠症カプセルに囲まれているのが見られた。 この膿の領域に隣接した神経膠症カプセルを低倍率で見ると、GFAPに対して陽性の免疫標識を示し、かつ、同時にSUR1に対しても陽性の免疫標識を示す細胞が見られた(図11D、E)。 各細胞を高倍率で調べたところ、SUR1免疫標識が、大型の星形星状細胞に存在することが分かり、脳膿瘍の回りにある神経膠症カプセルの内部域にはSUR1陽性のR1星状細胞が存在することが確認された(図11F)。

    ラットにおける標準的な脳卒中モデルを調べた。 全身麻酔下で、内頸動脈の分岐点まで糸を頸動脈内に挿入して脳卒中を起こさせた。 脳卒中を生き延びた動物を1週間目に殺処理して脳を調べた。 脳卒中の領域に隣接した組織を低倍率で見ると、GFAPに対して陽性の免疫標識を示し、かつ、同時にSUR1に対しても陽性の免疫標識を示す細胞が見られた(図11G、H)。 各細胞を高倍率で調べたところ、SUR1免疫標識が、大型の星形星状細胞に存在することが分かり、脳卒中の回りにある神経膠症カプセルにはSUR1陽性のR1星状細胞が存在することが確認された(図11I)。

    転移性脳腫瘍を切除するための手術を受けているヒトから組織を採取した。 手術の際、転移部の回りにある神経膠症カプセルは、腫瘍自体および浮腫性の白質から容易に区別できる。 転移部に隣接する神経膠症カプセルを低倍率で見ると、GFAPに対して陽性の免疫標識を示し、かつ、同時にSUR1に対しても陽性の免疫標識を示す細胞が見られた(図11J、K)。 各細胞を高倍率で調べたところ、SUR1免疫標識が、多数の十分に成長した突起をもつ大型の星形星状細胞に存在することが分かり、ヒトの転移性脳腫瘍の回りにある神経膠症カプセルには、SUR1陽性のR1星状細胞が存在することが確認された(図11L)。

    これらのデータは、神経膠症カプセルを形成する部位にある反応性星状細胞でSUR1上方制御が、R1星状細胞におけるSUR1に制御されるNC Ca−ATPチャネルの発現と一致して起きることを初めて示すものである。 データは、神経膠症カプセルでのR1星状細胞におけるSUR1発現は、脳に影響を及ぼす数々の病態において共通する現象であると示している。 これらのデータは、SUR1に作用し、そうすることでこれらの細胞の生死を決定し得る薬理学的な因子を利用することによって内部域におけるR1星状細胞を選択的に操作する極めて稀な機会を強調している。

    全体的にみて、これらの観察結果は、神経膠症カプセルの「内部域」が、神経膠症カプセルの残部とは異なるユニークな実体であるという概念を強力に裏付けていた。

    実施例9
    NC Ca−ATPチャネルおよび壊死 脳卒中の齧歯動物モデルでNC Ca−ATPチャネルを調べた。 周辺部において、SUR1標識が、GFAP陽性でもある星形の細胞中に見られた(図12A)。 脳卒中の中央部には星形の細胞は見られなかったが、GFAP陽性でもある(図示せず)、小疱様の外観を示す丸い細胞の中でSUR1標識が見られた(図12B、C)。 生体内原位置で小疱をもつ、この丸い細胞は、インビトロでアジ化ナトリウムへの暴露後に壊死してゆく反応性星状細胞に類似していた。 グリベンクラミドと生理食塩水の効果を測定した。 グリベンクラミドまたは生理食塩水は、皮下埋め込み型浸透圧ミニポンプを介して投与した(1μMを0.5μL/時間で)。 生理食塩水で処理されたラットでは、脳卒中後3日目の死亡率は68%であったが、グリベンクラミドで処理されたラットでは、3日死亡率は28%に低下していた(各群につき、n=29;p<0.001、χ による)。 別の動物において、グリベンクラミドで処理されたラットの脳卒中を起した半球は、生理食塩水処理されたラットの僅か半量の過剰水しか含んでいなかった(各群につき、n=5;p<0.01、t−検定による)ことから、浮腫形成におけるNC Ca−ATPチャネルの重要な役割が確認された。

    外傷の齧歯動物モデルでSUR1も調べた。 外傷部位に薬剤を直接注入したときの効果を、埋め込み型浸透圧ミニポンプを用いて試験した。 チャネル阻害剤であるグリベンクラミドを用いて、反応性星状細胞が死滅するのを低減し、チャネル活性化剤のジアゾキシドを用いて、星状細胞の死滅を促進した。 グリベンクラミドを注入すると、全体的な傷害反応が低減され、異物移植片の回りにある神経膠症カプセルが安定し、また、コントロールよりも炎症反応が最小化された。

    逆に、ジアゾキシドは、本質的に、神経膠症カプセルを破壊して、大量の多形核白血球(PMN)の流入を特徴とする強大な炎症反応を誘発した(図10A、B)。 これらのデータは、NC Ca−ATPチャネルが傷害反応において重要な役割を果たしていることを示唆しており、また、炎症が、NC Ca−ATPチャネルの活性および反応星状細胞の壊死と密接に関連しているという仮説を強力に裏付けている。

    実施例10
    永続的MCAモデル オスまたはメスの成獣ウィスターラット(275〜350gm)を一晩絶食させてから麻酔した(ケタミン60mg/kg+キシラジン7.5mg/kg、i.p.)。 右の大腿動脈にカニューレを挿入して、温度、pH、pO 、pCO 、およびグルコースなどの生理学的パラメーターをモニタリングした。 腹側頸部切開法を用いて、右外頸動脈および翼突口蓋動脈を結紮した。 総頸動脈は近位で結紮し、カテーテルを挿入して、内頸動脈の塞栓を形成させた。

    血栓塞栓性(TE)脳卒中には、1.5mmの長さの、7〜8個の同種異系血餅で塞栓形成した。 同種異系でトロンビン誘発性のフィブリンに富む血餅を調製した(Toomy et al.,2002)。

    悪性脳浮腫(MCE)による大きなMCA脳卒中には、本発明者らは、まず、微粒子(Nakabayashi et al.,1997)[ポリビニルアルコール(PVA)粒子;Target Therapeutics,Fermont CA;直径150〜250μm、1.5mLのヘパリン加生理食塩水に600μg]で塞栓形成し、モノフィラメント縫合糸(4−0ナイロン、先端が丸く、ポリ−L−リシンでコートされている)を、ICA分岐点まで進め、結紮糸で定位置に固定したものを用いて、標準的な永続的管腔内縫合糸閉塞(Kawamura et al.,1991)を起させた。

    脳卒中後、動物に10mLのグルコースを含まない通常の生理食塩水を経皮注入法(dermoclysis)によって投与した。 動物が麻酔から覚めるまで、サーボ制御式加温毛布を用いて直腸温度を約37℃に維持した。 脳卒中時の血液ガスおよび血清グルコースは、コントロールでは、pO 、94±5mmHg;pCO 、36±5mmHg;pH、7.33±0.01;グルコース、142±6mg/dlであり、グリベンクラミドで処理された動物では、pO 、93±3mmHg;pCO 、38±2mmHg;pH、7.34±0.01;グルコース、152±7mg/dlであった。

    どちらのモデルでも、動物はすぐに麻酔から目覚めて動き回り、通常、異常な神経学的機能、典型的には、旋回行動および片側不全麻痺を示した。 血栓塞栓(TE)モデルでの死亡率はごく僅かであったが、悪性脳浮腫(MCE)モデルでは、動物は遅延性の増悪を示し、しばしば死に至った。 死亡例のほとんどは、MCA閉塞の12〜24時間後に生じ、死体を解剖によって、無菌性梗塞が原因となって死亡したことが確認された。 まれに、脳卒中から6時間以内に動物が死亡したが、死亡後解剖でくも膜下出血を起していたこと判明したが、この場合には、その動物を実験から除いた。 MCEおよび無菌性梗塞をもつ無処理動物における死亡率は65%で、大きなMCA脳卒中をもつヒトにおける死亡率と同程度であった(Ayata&Ropper,2002)。

    実施例11
    脳卒中サイズ、死亡率、組織液、および薬剤の局在性に関する実験 MCA閉塞後(TEおよびMCEの両モデル)、生理食塩水またはグリベンクラミド(Sigma,St.Louis,MO;300μMまたは148μg/mL、0.5μL/時間で皮下に、負荷量なし)を送達するミニ浸透圧ポンプ(Alzet 2002,Durect Corporation,Cupertino,CA)を皮下に埋め込んだ。 脳卒中のサイズ(TEモデル)を、連続した2mm厚の切片におけるTTC(−)組織の容量として測定し、半球の容量に対する百分率で表し、脳卒中の48時間後に、生理食塩水またはグリベンクラミドのいずれかで処理された、それぞれ10匹のオスのラットからなる2つの群の間で比較した。 死亡率(MCEモデル)を、生理食塩水またはグリベンクラミドのいずれかで処理された、それぞれ29匹のラット(メス19匹にオス10匹)からなる2つの処理群間で、脳卒中後最初の1週間比較した。 浮腫(MCEモデル)を、生理食塩水またはグリベンクラミドのいずれかで処理された、それぞれ11匹のオスのラットからなる2つの処理群間で、脳卒中後8時間目に比較した。 これらの2つの群の各々のラットをそれぞれ2つのサブ群に分け、これらのうちの最初のものを、病変のある半球全体における液を解析するために用い(TTC処理なし)、第二のものを、病変のある半球のTTC(+)部分対TTC(−)部分における液を解析するために用いた。 蛍光標識した薬剤の局在を見るために、20匹のオスのラットにMCA脳卒中を生じさせ(MCEモデル)、BODIPY結合グリベンクラミド(BODIPY−FL−グリブリド、Molecular Probes,Eugene,OR;300μMまたは235μg/mL、0.5μL/時間で皮下に、負荷量なし)を送達するミニ浸透圧ポンプを埋め込んだ。 これらのうち、15匹のラットを、薬剤の作用(死亡率、組織液、およびグルコース)を確認するために使用し、5匹のラットを、薬剤の分布を決定するために使用した。

    実施例12
    免疫標識 脳を灌流固定(4%パラホルムアルデヒド)し、凍結保護した(30%ショ糖)。 凍結切片(10μm)を調製し、標準的な技術(Chen et al.,2003)を用いて免疫標識した。 透過処理(0.3%TritonX−100で10分間)した後、切片をブロックし(2%ロバ血清で1時間;Sigma D−9663)、その後SUR1に対する一次抗体とインキュベートした(1:300;室温に1時間、その後4℃で48時間;SC−5789;Santa Cruz Biotechnology)。 洗浄後、切片を蛍光二次抗体とインキュベートした(1:400;ロバ抗ヤギAlexa Fluor 555;Molecular Probes,OR)。 同時標識するために、NeuNに対する一次抗体(1:100;MAB377;Chemicon,CA);GFAPに対する一次抗体(1:500;CY3結合体;C−9205;Sigma St.Louis,MO)、およびvWfに対する一次抗体(1:200;F3520、Sigma)を用い、製造業者の推奨に従って組織を処理した。 種に適合した蛍光二次抗体を必要に応じて使用した。 落射蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse El000)を用いて蛍光シグナルを視覚化した。

    実施例13
    TTC染色、脳卒中サイズ 新たに回収した脳を2mm厚の冠状切片に切り、切片を、37℃で30分間TTC(62.5mM Tris−HCl、13mM MgCl 、1.5%ジメチルホルムアミド中0.125%w/v)に暴露した。 脳卒中のサイズのために、染色した切片の写真を撮って画像を解析(Scion Image)して、TTC(−)組織で占められた病変のある半球の割合を決定したが、浮腫に関する補正は行わなかった。 液またはSUR1タンパク質の含有量を測定するために、各冠状切片を拡大下で以下の3つの部分に分けた:(i)病変のないコントロール半球;(ii)病変のある半球のTTC(+)部分;(iii)病変のある半球のTTC(−)部分。 そして、各動物について、この3つの部分から集めた組織を、組織液を測定するか、ウエスタンブロットを行うために処理した。

    実施例14
    組織液含量 湿/乾重量法(wet/dry weight method)で組織液を定量した(Hua et al.,2003)。 組織サンプルをブロットして、少量の吸着流体を取り除いた。 精密スケールでサンプルの重量を計って湿重量(WW)を得、80℃および低真空で一定の重量になるまで乾燥させてから、重量を再計量して、乾燥重量(WD)を得た。 各組織サンプルのH Oのパーセントを、(WW−WD)×100/WWとして計算した。

    実施例15
    免疫ブロット 組織溶解物およびゲルを調製した(Perillan et al.,2002)。 SUR1(SC−5789;Santa Cruz Biotechnology)、Kir6. l(Santa Cruz)またはKir6.2(Santa Cruz)について膜を作成した。 膜をストリップして、β−アクチンについて再ブロットして(1:5000;Sigma St.Louis,MO)、一次データを正規化するのに用いた。 検出は、ECLシステム(Amersham Biosciences,Inc.)を用いて、通常の画像化法および定量法(Fuji LAS−3000)により行った。

    実施例16
    インサイチュハイブリダイゼーション 非放射性ジゴキシゲニン標識プローブを、製造業者のプロトコール(Roche)に従って、SP6またはT7のRNAポリメラーゼを用いて作成した。 RNAのdig−標識プローブ(センス鎖およびアンチセンス鎖)を、以下のプライマーに隣接するSUR1インサート(613bp)をもつpGEM−T easyプラスミド(Promega)から作成した:5'AAGCACGTCAACGCCCT3'(フォワード)(配列番号:1);5'GAAGCTTTTCCGGCTTGTC3'(リバース)(配列番号:2)。 ラット脳(MCA脳卒中後3、6、8時間後のもの)の新鮮凍結切片(10μm)またはパラフィン包埋切片(4μm)をインサイチュハイブリダイゼーションに用いた(Anisimov et al.,2002)。

    実施例17
    神経膠症カプセルの内部域 低酸素症の別の原因、例えば動脈の閉塞などがSUR1の上方制御をもたらしたか否かを評価するために、実施例10に記載した永続的局所脳虚血の2つの齧歯動物モデルを用いた。

    MCEモデルを用いて、SUR1タンパク質およびmRNAを評価し、浮腫および生存へのSUR1阻害の影響を評価した。 一方、TEモデルを用いて、脳卒中サイズへのSUR1阻害の影響を測定した。 灌流なし(図14A)、TTC染色(Mathews et al.,2000)(図14B)、およびGFAP免疫標識を用いて、梗塞と梗塞周囲領域とを区別した。

    SUR1発現によって、梗塞の中心部が一時的に増加した。 ここで、SUR1の増加は、MCA閉塞の2〜3時間後という早さで明らかになった(図14D)が、これは、壊死が開始するよりもかなり前であり、後に壊死が開始すると消失した(図14C、図の右側)。 壊死が起こる前のこのような早期には、NeuNで同時標識されたニューロン内でSUR1は非常に顕著であった(図14D〜F)。

    前大脳動脈(ACA)領域とMCA領域の間にある古典的な虚血「分水界」領域などの梗塞周囲領域では、SUR1発現が中心部におけるよりも遅くなるが持続性である。 6〜12時間まで、SUR1発現によって梗塞領域と梗塞周辺領域とがはっきりと区別された(図14C)。 ここで、NeuN、GFAP(図14G〜I)、およびフォン・ヴィレブランド因子(図14J〜L)それぞれとの同時標識によって明らかなように、SUR1発現は、ニューロン、星状細胞、および毛細血管内皮細胞で見られた。 反対側にある組織から明らかなように(図14C、図の左側)、SUR1は、普通、これらの皮質領域および皮質下領域でこのように大量に発現されることはない(Treherne&Ashford,1991;Karschin et al.,1997)。

    ウエスタンブロットによって、SUR1タンパク質の発現増加は、梗塞周囲領域で最も顕著であることが示された(図15A〜D)。 しかし、K ATPチャネルの膜孔形成サブユニットであるKir6.1またはKir6.2は上方制御されなかった(図15C〜D)。 インサイチュハイブリダイゼーションによって、虚血領域からのニューロンおよび毛細血管の中には、コントロール組織には存在しないSUR1転写産物が存在することが明らかになり(図15E〜G)、脳虚血ではK ATPチャネルではなくSUR1が転写において上方制御されることが示唆された。

    このように、これらのデータは、脳虚血では、Kir6.1またはKir6.2ではなくSUR1が、まず、壊死を起すことが運命付けられている領域で、次に、梗塞周辺領域で転写段階での上方制御を受けることを示唆する。

    実施例18
    SUR1の上方制御 図15A〜Gは、SUR1が脳卒中で顕著に上方制御されることを示した。 また、膜孔形成サブユニットであるKir6.1およびKir6.2は、脳卒中では上方制御されないことが示され、K ATPチャネルが関係していないことを示唆した。 SUR1の上方制御は、NC Ca−ATPチャネルによるものであって、K ATPチャネルは無関係であることを証明するために、虚血領域由来のニューロンおよび内皮細胞にパッチクランプ記録法を行った。 大型のニューロン様細胞を、脳卒中後3時間後(図16A)および6時間後に酵素を用いて単離した。 パッチクランプ実験は、K ATPチャネルを含む、すべてのK チャネルを遮断するために、バスおよびピペット内でCs を用いて行った。 これらの実験によって、NC Ca−ATPチャネルについて予測されていたように、グリベンクラミドによって遮断される、強い陽イオンチャネル活性が示された(図16B)。 さらに、チャネル活性をK によって記録すると、新鮮に単離されたR1星状細胞で既に報告されているように、傾斜コンダクタンスは34pSであり(図16C、D)、KATPチャネルについて報告されている70〜75pSよりもずっと小さかった。

    実施例19
    脳虚血におけるSUR1の機能 脳虚血において新たに発現されたSUR1の機能を決定するために、SUR1の高度に選択的な阻害剤であるグリベンクラミドの効果を調べた。 死亡率(MCEモデル)に対するグリベンクラミドの効果を調べた。 オスおよびメスを含む、動物の大きな群においては、グリベンクラミドで処理すると、生理食塩水の場合と比較して、死亡率が65%から24%へと劇的に低下する結果となった。 (p<0.002;図17A)。

    グリベンクラミドは、エネルギー枯渇によって誘導された星状細胞の細胞毒性浮腫を改善することが示されている(Chen et al.,2003)ため、この死亡率に対する有益な効果は浮腫に関係があると推論された。 脳卒中を誘導してから8時間後の浮腫形成に対するグリベンクラミドの効果(MCEモデル)を調べた。 これは、死亡率実験で任意の動物が死ぬ前までの時間である。 2つの実験のうち最初の実験では、病変のある半球および病変のない半球における含水量を、実施例14に記載した方法を用いて測定した。 コントロールとなる半球では、水は77.9±0.2%であった。 病変のある半球では、生理食塩水で処理した群で、水は3.4%増加して、81.3%±0.5%になったが、グリベンクラミドで処理した群では、水は2.0%増加して、79.9%±0.3%になった。 これらの数値は有意に異なり(p<0.05)、浮腫形成におけるSUR1の重要な役割と整合していた。

    次に、浮腫の位置をより詳しく特徴づけるために、冠状脳切片を生存可能なTTC(+)部分と生存不能なTTC(−)部分とに分割してから含水量を調べた。 病変のない半球における水は78.0±0.1%で(図17B)、以前の数値77.9±0.2%と同程度で、TTC処理によって含水量は変化しないことを示した。 病変のある半球では、TTC(+)組織における水が、生理食塩水で処理した群で5.4%増加して83.4±1.1%になったが、グリベンクラミドで処理した群では2.5%増加したのみで、80.5±0.3%になった(図17B)。 これらの数値は有意に異なった(p<0.05)。 これに対して、TTC(−)組織の水についての数値は、生理食塩水およびグリベンクラミドで処理したものそれぞれについて78.7±1.0%および78.6±0.4%となって、差はなく(p=0.97)、病変のない半球についての数値(78.0%)よりも僅かに高いだけで、組織液を増加させるには血流の継続が必要であることを反映した(図17B)(Ayata & Ropper,2002)。

    これらの動物において、浮腫を測定した8時間目の血清グルコースは、虚血によって引き起こされた損傷に対する効果をもつ可能性のない範囲に止まっていた(Li et al.,1994;Wass & Lanier,1996)(それぞれ生理食塩水およびグリベンクラミドで処理した動物について122±4対93±3mg/dl;ラット11匹/群)。 同時に、これらのデータは、浮腫が、ほぼ完全に脳卒中の初期中心部に隣接する生存可能な梗塞周囲(周辺部)組織に位置すること、およびそれを低減するのにグリベンクラミドが非常に有効で、浮腫形成におけるSUR1の重要な役割と整合することを示した。

    このように、SUR1に対して高度に選択的な(Gribble & Reimann,2003;Meyer et al.,1999)低用量グリベンクラミドによるデータによって、脳浮腫形成におけるSUR1の重要な役割を示す有力な証拠が提示された。

    実施例20
    脳卒中の大きさの効果 非致死性の血栓塞栓(TE)モデルを用いて、脳卒中を引き起こしてから48時間後の脳卒中の大きさを評価した。

    TEモデルでは、グリベンクラミド処理によって、生理食塩水コントロールよりも極めて大きな脳卒中容量の減少がもたらされた(32.5±4.9%対15.5±2.3%;p<0.01)(図17C〜E)。 本質的にすべての動物は、処理群とは関係なく、終末レンズ核線条体細動脈から供給された、大脳基底核を含む梗塞を患っていた。 しかし、グリベンクラミド群で減少した脳卒中容量は、既に減圧式頭蓋骨切除術で報告されている現象である、大脳皮質の顕著な節約をしばしば伴っていた(図17C〜D)(Doerfler et al.,2001)。 グリベンクラミドによって、皮質の節約が起こるのは、脳浮腫の減少および頭蓋内圧の低下によって軟髄膜の側副血流が改善されたことを反映しているのかもしれない。

    実施例21
    脳卒中後のMCEモデル 蛍光誘導体であるBODIPY−グリベンクラミドを用いて、脳卒中後にインビボで組織を標識した(MCEモデル)。

    蛍光誘導体は、親化合物と同じ態様で送達されると、同様の防御効果を示したが、効能は低く[7日死亡率、40%(n=10);病変のある半球のTTC(+)部分の8時間目における水、82.7±1.4%(n=5);血清グルコース、109±4mg/dl]、標識された薬剤の効能が低下したことと整合していた(Zunkler et al.,2004)。 使用される薬剤の全身投与量が低いと、病変のない半球(図18B)および膵臓では最低限の標識が得られ、灌流されない脳卒中の中心部では標識が見られなかった。 しかし、梗塞周囲領域の細胞は明確に標識され、SUR1の顕著な発現を示す、大型のニューロン様細胞、および毛細血管(図18C)など、微小血管(図18A)をはっきりと画定する標識を伴っていた(図18D)。 虚血脳における選択的な細胞標識は、グリベンクラミド結合部位の増加だけでなく、おそらく血液脳関門の変化による取り込み量の増加も反映している可能性が高い。

    したがって、これらのデータは、既述された星状細胞におけるNC Ca−ATPチャネルの存在(Chen et al.,2001;Chen et al.,2003)に加えて、毛細血管内皮およびニューロンの中にもNC Ca−ATPチャネルが存在することを示していた。 MCA閉塞(MCEモデル)の1〜6時間後の虚血皮質から単離したニューロンおよび微小血管にさらにパッチクランプ実験を行って、NC Ca−ATPチャネルが存在することを確認し、電荷担体としてCs を用いて簡単に記録され、かつグリベンクラミドによって遮断された、約30〜35pSコンダクタンスの非選択的陽イオンチャネルを明らかにした。 このチャネルは、非虚血性脳組織由来の細胞には存在しなかった。

    以上より、ATP枯渇によって開口し、かつ、虚血性のニューロン、星状細胞、および内皮細胞において新たに発現されるSUR1制御型NC Ca−ATPチャネルが、重要でこれまで未同定だった、細胞傷害性でイオン性の浮腫を形成するため必要とされるNa 流動のための経路を構成することが示唆されている。 同時に、これらの知見は、脳虚血後の浮腫形成を決定する新規の経路におけるSUR1の決定的な関与も示唆している。 SUR1を対象とする分子療法が、虚血に関連する多くのタイプのCNS損傷を治療するための重要で新しい方途を提供するかもしれない。

    実施例22
    グリベンクラミドおよびtPAの同時投与 血栓塞栓性脳卒中の齧歯動物モデルを用いた(Aoki et al.,2002;Kijkhuizen et al.,2001;Kano et al.,2000;Sumii et al.,2002;Tejima et al.,2001)。 要するに、一晩絶食させたオスの自然発生高血圧ラットを、ハロタン(N O/O の70/30混合物中に1〜1.5%)を用いて自発呼吸によって麻酔する(Lee et al,2004;Sumii et al,2002)。 サーモスタット調節型加温パッドで直腸温度を約37℃に維持した。 右側大腿動脈にカニューレを挿入し、温度、平均血圧、pH、pO 、およびpCO 、グルコースなどの生理学的パラメーターをモニタリングした。 MCAを閉塞するため同種異系血餅を用いた塞栓モデルで一時的な局所的虚血を得た。 同種異系で、トロンビン誘導性で、フィブリンに富む血餅を、Niessen et al. による方法(Asahi et al,2000;Niessen et al,2003;Sumii et al,2002)を用いて調製した。 1.5mmの長さの7個の血餅を塞栓形成に用いた。

    腹側頸部切開法を用いて、内頸動脈および外頸動脈を露出させた。 外頸動脈と翼突口蓋動脈を結紮した。 外科用可撤性クリップを総頸動脈および内頸動脈に適用した。 血餅を含む改変型PE−50カテーテルを外頸動脈に逆行性挿入して、内頸動脈まで前進させた。 一時的クリップを取り外して血餅を注入した。 切開部を閉じた。

    脳卒中の後、動物にグルコースを含まない通常の生理食塩水を経皮注入によって全部で10mL投与した。 動物が覚醒して動き回るまで温度を維持した。

    治療(再灌流)を行う時間の直前に、動物を再麻酔して大腿静脈にカニューレを挿入した。 治療時に、生理食塩水、または負荷量のグリベンクラミド(1.5μg/kg、i.v.、Sigma,St.Louis)を最初に投与した。 次に、rtPA(10mg/kg、アルテプラーゼ、Genetech;2mLの蒸留水に溶かして30分間にわたって投与した)(Buesseb et al,2002)のi. v. 投与によって再灌流を行った。 そして、胸背切開法を用いて、生理食塩水またはグリベンクラミド(300μMまたは148μg/mL、0.5μL/時間s.q.)を送達するミニ浸透圧ポンプ(Alzet 2002,Durect Corporation,Cupertino,CA)を皮下に埋め込んだ。 温度、平均血圧(テイルカフプレチスモグラフィー(tail cuff plethysmography)、血液ガス、およびグルコースなどの生理学的パラメーターをモニタリングした。

    6時間目になると同時に、動物を生理食塩水またはグリベンクラミドで同時処理した(負荷量1.5μg/kgi.v.、および148μg・mL=300μMを含み、1/2μL/時間で送達するミニ浸透圧ポンプの埋め込み)。 脳卒中後24時間目に動物を安楽死させ、脳を灌流して血管内コンパートメントから血液を除去した。 新鮮な脳の冠状切片を調製して写真を撮った後、切片をTTC染色して梗塞領域を同定するために処理した。

    生理食塩水で同時処理されたすべての動物(5/5)は、脳室内出血の証拠とともに、梗塞を起した皮質領域および皮質下実質領域で出血性転換の大きな領域を示した(図19A〜D)。 これに対して、グリベンクラミドで同時処理された動物では1/5のみが出血性転換を示し、4/5は出血の証拠を示さなかった(図19E〜H)。

    これらのデータは、グリベンクラミドの投与によって、脳卒中サイズ、イオン性浮腫、および血管原性浮腫が低減されるだけでなく、出血性転換からも保護されることを示唆している。

    実施例23
    脳の毛細血管および内皮細胞の単離 本方法は、一部、既に報告されているような変更(Seidal,1991)を施したHarder et al. (1994)の方法によるものであった。 要するに、ラットに深い麻酔をかけて、下行大動脈を結紮し、右心房を切開し、左心室にカニューレを挿入して、酸化鉄粒子(粒子サイズ、10μm;Aldrich Chmemical Co.)の1%懸濁液を含む生理学的溶液を50mL灌流させた。 脳を取り出し、軟膜および軟膜血管をはぎ取って、カミソリの刃で皮質被膜を1〜2mm の細片に切り刻む。 組織片をトリプシン+DNAseとインキュベートしてから、ナイロンメッシュ(210μm)のふるいにかける。 保持された微小血管をコラゲナーゼに再懸濁し、さらに10分間37℃で振とうしながらインキュベートした。 消化を停止させるために、磁石によって容器の側面に微小血管を接着させ、洗浄を繰り返して酵素および細胞残滓を取り除いた。

    これらの方法を用いて、さらなる実験のための単一細胞(図21)を得るためにさらに消化するのに適した、正常な外観をもつ微小血管構造物を回収した。

    新鮮に単離された内皮細胞を用い、ナイスタチン穿孔パッチ技術を用いて、単離された内皮細胞を調べた。 生理学的溶液では、この細胞は、負電位では明らかに強い内向整流性電流を、正電位では軽度の外向電流を示し(図22A)、中間の電位では0に近い電流をもつ(図22C)、特徴的な電流−電圧曲線が得られ、新鮮に単離された内皮細胞で以前観察された結果と同様であった(Hogg et al.,2002)。 ピペット溶液内のK がCs に置き換わると、K チャネルの電流は完全に遮断された。 この場合、内皮細胞では、直線的な電流−電圧曲線が得られた(図22E)。 これらのデータによって、新鮮に単離された内皮細胞における電圧依存的チャネルは、専ら、Na を運搬しないK チャネルであることが実証された。

    実施例24
    ニューロンの単離 ビブラトーム切片からニューロンを単離した。 免疫標識実験によって、虚血性NeuN−陽性ニューロンが、まだ壊死が明らかにならない、MCAO後2〜3時間以内にSUR1を発現することが示された。 したがって、MCAOの2〜3時間後に組織を調製した。 脳をブレグマの位置で冠状に分割し、凍結切片を半分から調製して、ビブラトーム切片を残りの半分から調製した。 凍結切片(10μm)は、TTC染色(Mathews et al.,2000)、あるいは、高コントラスト銀梗塞染色法(SIS)、(Vogel et al.,1999)で虚血領域を同定するため、および免疫標識して、NeuNについて二重標識したニューロンにおけるSUR1の上方制御を確認するために用いた。 ビブラトーム切片(300μm)を処理して(Hainsworth et al,2000;Kay et al, 1986;Moyer et al,1998)、パッチクランプ実験のための単一のニューロンを得た。 冠状切片の選択部分を、空気で泡立てたHBSS中、35℃でインキュベートした。 30分以上経過した後、断片を1.5mg/mLのプロテアーゼXIV(Sigma)を含むHBSSに移した。 プロテアーゼ処理を30〜40分間行った後、断片を、酵素を含まないHBSSで濯いでから機械的に粉砕した。 コントロールには、病変のない半球の鏡像皮質領域由来の細胞を用いた。 細胞を、倒立顕微鏡の台上に載せたプラスチック製のペトリ皿の中に、10〜12分間HBSSの中で定着させた。 大型および中型のピラミッド型のニューロンを記録するために選択した。 2〜3時間というこの早い時期には、星状細胞ではなくニューロンと毛細血管細胞のみがSUR1の上方制御を示す。

    細胞が単離されたら、全細胞パッチ、インサイドアウトパッチ、アウトサイドアウトパッチ、および穿孔パッチなど周知の方法を用いたパッチクランプ実験を使用した(Chen et al,2003;Chen et al,2001;Perillan et al,2002;Perillan et al,2000;Perillan et al,1999)。

    実施例25
    グリベンクラミドによるMMP阻害 脳卒中組織におけるMMP−9およびMMP−2の活性化をコントロールと比較した。 要するに、グリベンクラミド(10μM)が存在する場合、およびMMP−阻害剤II(300nM;Calbiochem)が存在する場合における、コントロール条件下(CTR)での組換え型酵素のゼラチナーゼ活性および脳卒中組織。

    次に、ゼラチン−セファロース4B(Pharmacia)を用いて、上清にゼラチナーゼ精製処理を行い、精製した上清に対して、ゼラチンを含むドデシル硫酸ナトリウムゲルで酵素電気泳動法を行った(Rosenberg,1994)。 乾燥させたゲルを透明度(Transparency)走査装置でスキャンし、デンシトメトリーによって画像を解析した。 各サンプルの相対的溶解を、そのバンドの積分密度値として表示し、そのサンプルのタンパク質含量で割った。

    酵素電気泳動法によって、ゼラチナーゼ活性は脳卒中後に上昇することが確認され(図20A)、また、グリベンクラミド存在下でアッセイしたゼラチナーゼ活性(図20B、グリベンクラミド)は、不在下でアッセイされたゼラチナーゼ活性(図20B、CTR)と同じであることが分かったが、ゼラチナーゼ活性は、市販のMMP阻害剤II(図20B、MMP−2/MMP−9阻害剤)によって強く阻害された。 これらのデータは、グリベンクラミドがゼラチナーゼ活性を直接阻害するのではないことを明らかにし、グリベンクラミドで観察される出血性転換の低下は、グリベンクラミドの虚血性内皮細胞に対する有益な防御作用によって生じることを示唆した。

    実施例26
    脳卒中におけるSUR1−mRNAの上方制御 脳卒中にSUR1が関与することのさらなる分子的証拠が、定量的RT−PCRを用いて得られた。

    MCAO(脳卒中)の対側(CTR)および同側にあるホモジナイズした脳組織のサンプルから、グアニジンイソチオシアネートを用いて全RNAを抽出および精製した。 50μLの反応混合液あたり4μgの全RNAで、TaqMan RTキット(Applied Biosystems)を用いてcDNAを合成した。 H1f0(ヒストン1メンバー0)に対して正規化して、SUR1−mRNAの相対値を得た。 以下のプローブを用いた:SUR1フォワード:GAGTCGGACTTCTCGCCCT(配列番号:3);SURlリバース:CCTTGACAGTGGCCGAACC(配列番号:4);SURl TaqManプローブ:6−FAM−TTCCACATCCTGGTCACACCGCTGTTAMRA(配列番号:5);H1f0フォワード:CGGACCACCCCAAGTATTCA(配列番号:6);H1f0リバース:GCCGGCACGGTTCTTCT(配列番号:7);H1f0TaqManプローブ:6−FAM−CATGATCGTGGCTGCTA TCCAGGCA−TAMRA(配列番号:8)。

    これらのデータは、MCAOの3時間後にSUR1のmRNAが中心部で顕著に増加したことを示していた(図23)。

    実施例27
    SUR1ノックダウン(SUR1KD)は防御的である SUR1の関与をさらに調べるために、他には本発明者らがR1星状細胞の単離に使用した標準的なモデルにおいて、脳のゲルフォーム移植部位に設置された輸送用カテーテルとともにミニ浸透圧ポンプを用いて、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を14日間注入して、SUR1発現をインサイチュで「ノックダウン」させた(Perillan et al,1980,Perillan et al,2002,Perillan et al,2000,Perillan et al, 1999)。 SUR1発現のノックダウン(SURlKD)は、アンチセンス(AS;5'−GGCCGAGTGGTTCTCGGT−3';配列番号:9)(Yokoshiki et al,1999)オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を、コントロールとして使用されるスクランブル(SCR;5'−TGCCTGAGGCGTGGCTGT−3';配列番号:10)ODNとともに用いて行った。

    神経膠症カプセルの免疫ブロットによって、スクランブル配列ODNを与えたコントロールと比較すると、SUR1ノックダウン(SUR1KD)組織においてSUR1発現が顕著に低下することが示された(図24Aおよび24B)。

    本発明者らは、アジ化ナトリウムによって誘導されるATP枯渇に対する機能的な反応を評価するために、上記した標準的な細胞単離用プロトコール(Chen et al,2003)を用いて、SUR1KDおよびコントロールから単一細胞を酵素的に単離した。 コントロール組織からのR1星状細胞において、アジ化ナトリウム(1mM)は、NC Ca−ATPチャネルの活性化の原因となるNa 流入によって速やかな脱分極が起きた(図24C)。 特に、この脱分極反応は、K ATPチャネルが活性化されたときに観察される過分極反応とは反対であった。 しかし、SUR1KDのR1星状細胞では、アジ化ナトリウムは、静止膜電位に対してほとんど効果がなかった(図24D)。 コントロールでは、アジ化ナトリウムの適用は、64±3.7mVの脱分極をもたらしたが、SUR1KDの細胞では、脱分極は僅かに8.7±1.7mVであった(図24E)。

    さらに、アジ化ナトリウムに暴露した後に一般的に起きる膜の小疱形成は、SUR1KDの細胞では見られず、R1星状細胞の細胞毒性浮腫におけるSUR1の役割が確認された。

    実施例28
    SUR1発現を調節する分子的要因 膵臓β細胞における実験に基づいて、SUR1の転写活性を活性化させる上で重要だと考えられているSUR1プロモーター領域付近で、いくつかのSP1転写因子結合部位が同定されている(Ashfield et al,1998;Hilali et al,2004)。 特に、SP1は実質的に脳卒中では調べられたことがない(Salminen et al.,1995)。

    要するに、虚血性梗塞周囲組織を、SUR1発現に重要なSP1、脳虚血において上方制御されることが広く知られているHIF1α(Semenza 2001;Sharp et al.,2000)、およびSUR1自身について免疫標識した。 SP1は、HIF1αの発現のせいで虚血であると確認された領域(図25B)の中にある大型のニューロン様細胞および毛細血管において顕著に発現された(図25A、25C)。 特に、SP1を発現した毛細血管は、SUR1の顕著な発現も示した(図25C、25D)。 対側のコントロール組織は、SP1についてほとんど免疫標識を示さず、HIF1αについては全く示さなかった(図25E、25F)。

    脳卒中の初期にSP1の核における局在が顕著に増加し(図26A、26B)、核SP1は、MCAO後SUR1を発現する大型のニューロン様細胞内に存在していた(図26C)。

    ゲルフォーム移植部位にアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドを注入してHIF1αノックダウン動物を得た。 図27では、HIF1αノックダウン動物でSUR1発現の顕著な減少がもたらされることが確認され(図27B、27D)、SP1のみでなく、HIF1αも、SUR1発現の重要な調節因子である可能性が高いことの強い証拠を提示している。

    参考文献 本明細書に記載されている全ての特許および刊行物は、本発明が属する技術分野における当業者の水準を示すものである。 全ての特許および刊行物は、各個別の刊行物が参考として援用されると具体的かつ個別に示されているのと同じ範囲で参考として本明細書に援用される。

    本発明とその利点を詳細に説明してきたが、当然のことながら、添付の請求の範囲に規定されている本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本明細書において、さまざまな変更、置換、および改変を行うことができる。 さらに、本出願の範囲を、本明細書に記載された特定の態様の過程、装置、製品、組成物、手段、方法、および工程に限定しようとするものではない。 本発明の開示内容から当業者が容易に理解できるように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同一の機能を果たすか、または実質的に同一の結果を達成する、既存または後に開発される過程、装置、製品、組成物、手段、方法、または工程を、本発明に従って利用することも可能である。 したがって、添付した請求の範囲は、そのような過程、装置、製品、組成物、手段、方法、または工程も、その範囲内に含むことを意図するものである。

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