ガラス積層体

阅读:18发布:2024-01-15

专利汇可以提供ガラス積層体专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且【課題】高い紫外線遮蔽機能を有する、車両用のガラス積層体を提供する。 【解決手段】本発明のガラス積層体は、車両に取り付けられるガラス積層体であって、少なくとも1つのガラス板を含む、ガラス体と、少なくとも1つの前記ガラス板に配置された紫外線遮蔽膜と、を備え、前記ガラス体は、Tuv400≦50%を充足し、前記ガラス積層体は、波長が400nmの光の透過率が10%以下であり、さらに、前記ガラス積層体は、Tuv400≦2.0%を充足する。 【選択図】図1,下面是ガラス積層体专利的具体信息内容。

車両に取り付けられるガラス積層体であって、 少なくとも1つのガラス板を含む、ガラス体と、 少なくとも1つの前記ガラス板に配置された紫外線遮蔽膜と、 を備え、 前記ガラス体は、Tuv400≦50%を充足し、 前記ガラス積層体は、波長が400nmの光の透過率が10%以下であり、 さらに、前記ガラス積層体は、Tuv400≦2.0%を充足する、ガラス積層体。前記ガラス積層体は、波長420nmの光の透過率が20%以上である、請求項1に記載のガラス積層体。前記ガラス体における、波長が420〜800nmの光の透過率の平均値がTavgとしたとき、 前記ガラス体において、透過率がTavg*0.9である光の波長と、 前記ガラス体において、透過率がTavg*0.1である光の波長と、 の差が20〜50nmである、請求項1または2に記載のガラス積層体。前記ガラス積層体における、波長が420〜800nmの光の透過率の平均値がTavgとしたとき、 前記ガラス積層体において、透過率がTavg*0.9である光の波長と、 前記ガラス積層体において、透過率がTavg*0.1である光の波長と、 の差が22nm以下である、請求項3に記載のガラス積層体。前記ガラス積層体は、JIS T7330:2000に基づくブルーライトカット率が35%以上である、請求項1から4のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス体は、JIS K7373:2006に基づく黄色度YIが、5以下である、請求項1から5のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス積層体は、JIS K7373:2006に基づく黄色度YIが、10以下である、請求項1から6のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス積層体は、波長が420nmの光の透過率が85%以下である、請求項1から7のいずれかに記載のガラス積層体。車両のドアに昇降窓として取り付けられる、請求項1から8のいずれかに記載のガラス積層体。ウインドシールドとして用いられる、請求項1から8のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス体は、 第1ガラス板と、 第2ガラス板と、 前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に配置される中間膜と、 を備えている、請求項1から10のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス体は、 基材シートと、 前記ガラス板の一つと前記基材シートとの間に配置され、当該基材シートを前記ガラス板に貼り付ける粘着剤と、 をさらに備え、 前記基材シートにおいて、前記粘着剤とは反対の面に,前記紫外線遮蔽膜が形成されている、請求項1から11のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス体の厚みが、2mm以上である、請求項1から12のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス体の単位面積あたりに含まれる3価酸化鉄の量が、Fe2O3に換算して1〜10mg/cm2である、請求項1から13のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス体は、CIE標準のA光源を用いて測定する可視光透過率YAが、70%以上である、請求項1から13のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス体の単位面積あたりに含まれる3価酸化鉄の量が、Fe2O3に換算して4〜15mg/cm2である、請求項1から13のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス体は、CIE標準のA光源を用いて測定する可視光透過率YAが、15〜60%である、請求項1から13のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス体に含まれる前記ガラス板の少なくとも1つは、表面圧縮応が20MPa未満である、請求項1から17のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス体に含まれる前記ガラス板の少なくとも1つは、表面圧縮応力が80MPa以上である、請求項1から18のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス体に含まれる全ての前記ガラス板は、表面圧縮応力が80MPa以上である、請求項1から18のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス積層体において、前記紫外線遮蔽膜が形成された面に対して、JIS R3221に準拠し、500g荷重で1000回のテーバー摩耗試験を行った後、前記紫外線遮蔽膜が剥離せず、且つ前記試験後の前記ガラス積層体のヘイズ率が5%以下である、請求項1から20のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス積層体において、前記紫外線遮蔽膜が形成された面とは反対側の面から、波長が295〜450nm、照度76mW/cm2の紫外線を100時間照射した後のTuv400と、前記紫外線の照射前のTuv400との差が、2%以下である、請求項1から20のいずれかに記載のガラス積層体。前記紫外線遮蔽膜の周縁から幅20mmの範囲を除いた領域における当該紫外線遮蔽膜の膜厚について、前記車両の下部側の膜厚が前記車両の上部側の膜厚よりも厚く、且つ前記膜厚の最大値が、0.5〜10μmである、請求項1から22に記載のガラス積層体。前記紫外線遮蔽膜の周縁から幅20mmの範囲を除いた領域における当該紫外線遮蔽膜の膜厚について、当該膜厚が最大となる位置が、当該膜厚の周縁から10cm以上離れており、且つ当該膜厚の最大値が0.5〜10μmである、請求項1から23に記載のガラス積層体。前記紫外線遮蔽膜の厚さの均一性が、70%以下である、請求項23または24に記載のガラス積層体。前記ガラス体に含まれる前記ガラス板の少なくとも1つは、当該ガラス板の第1主面及び第2主面にスズ成分を含み、前記第1主面及び前記第2主面に含まれるスズ成分の濃度が相違する、請求項1から25のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス積層体において、外部に露出する前記ガラス板の表面には、マークが形成されており、 前記マークは、表面粗さRaが1.5μmである粗面部により構成されている、請求項1から26のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス体に含まれる前記ガラス板の端面は、外部に向かって凸の円弧状に形成されている、請求項1から27のいずれかに記載のガラス積層体。前記ガラス体に含まれる前記ガラス板の端面は、3以上の平坦面を連結することで形成され、 隣接する前記平坦面同士のなすが、鈍角である、請求項1から27のいずれかに記載のガラス積層体。前記紫外線遮蔽膜が、防曇性能をさらに有する、請求項1から29のいずれかに記載のガラス積層体。前記紫外線遮蔽膜が、吸性能をさらに有する、請求項30に記載のガラス積層体。前記紫外線遮蔽膜の表面が、親水性である、請求項30に記載のガラス積層体。前記紫外線遮蔽膜が、視認性確保性能をさらに有する、請求項30に記載のガラス積層体。前記紫外線遮蔽膜の表面が、撥水性である、請求項33に記載のガラス積層体。視認性確保膜をさらに備えている、請求項1から29のいずれかに記載のガラス積層体。前記視認性確保膜は、前記紫外線遮蔽膜において前記ガラス体側とは反対の面に配置されている、請求項35に記載のガラス積層体。前記ガラス体は、 第1ガラス板と、 第2ガラス板と、 前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に配置される中間膜と、 を備え、 前記紫外線遮蔽膜は、前記第1ガラス板及び第2ガラス板の少なくとも一方に配置され、 前記視認性確保膜は、前記第1ガラス体及び第2ガラス体において、前記紫外線遮蔽膜が配置されている面とは反対側に配置されている、請求項35に記載のガラス積層体。低反射膜をさらに備えている、請求項1から37のいずれかに記載のガラス積層体。

说明书全文

本発明は、車両に取付けられるガラス積層体に関する。

車両用に取り付けられウインドシールド、サイドガラスには、可視光を透過させながら、日焼け防止の観点から、紫外線を遮蔽する機能が求められている。このようなガラスとしては、例えば、特許文献1に記載のように、ガラス板に、紫外線遮蔽膜を積層し、紫外線の遮蔽機能を高めている。

特許第5396265号公報

しかしながら、紫外線遮蔽機能には改善の余地があり、さらに高い紫外線遮蔽機能を有するガラスが要望されていた。本発明は、高い紫外線遮蔽機能を有する、車両用のガラス積層体を提供することを目的とする。

項1.車両に取り付けられるガラス積層体であって、 少なくとも1つのガラス板を含む、ガラス体と、 少なくとも1つの前記ガラス板に配置された紫外線遮蔽膜と、 を備え、 前記ガラス体は、Tuv400≦50%を充足し、 前記ガラス積層体は、波長が400nmの光の透過率が10%以下であり、 さらに、前記ガラス積層体は、Tuv400≦2.0%を充足する、ガラス積層体。

項2.前記ガラス積層体は、波長420nmの光の透過率が20%以上である、項1に記載のガラス積層体。

項3.前記ガラス体における、波長が420〜800nmの光の透過率の平均値がTavgとしたとき、 前記ガラス体において、透過率がTavg*0.9である光の波長と、 前記ガラス体において、透過率がTavg*0.1である光の波長と、 の差が20〜50nmである、項1または2に記載のガラス積層体。

項4.前記ガラス積層体における、波長が420〜800nmの光の透過率の平均値がTavgとしたとき、 前記ガラス積層体において、透過率がTavg*0.9である光の波長と、 前記ガラス積層体において、透過率がTavg*0.1である光の波長と、 の差が22nm以下である、項3に記載のガラス積層体。

項5.前記ガラス積層体は、JIS T7330:2000に基づくブルーライトカット率が35%以上である、項1から4のいずれかに記載のガラス積層体。

項6.前記ガラス体は、JIS K7373:2006に基づく黄色度YIが、5以下である、項1から5のいずれかに記載のガラス積層体。

項7.前記ガラス積層体は、JIS K7373:2006に基づく黄色度YIが、10以下である、項1から6のいずれかに記載のガラス積層体。

項8.前記ガラス積層体は、波長が420nmの光の透過率が85%以下である、項1から7のいずれかに記載のガラス積層体。

項9.車両のドアに昇降窓として取り付けられる、項1から8のいずれかに記載のガラス積層体。

項10.ウインドシールドとして用いられる、項1から8のいずれかに記載のガラス積層体。

項11.前記ガラス体は、 第1ガラス板と、 第2ガラス板と、 前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に配置される中間膜と、 を備えている、項1から10のいずれかに記載のガラス積層体。

項12.前記ガラス体は、 基材シートと、 前記ガラス板の一つと前記基材シートとの間に配置され、当該基材シートを前記ガラス板に貼り付ける粘着剤と、 をさらに備え、 前記基材シートにおいて、前記粘着剤とは反対の面に,前記紫外線遮蔽膜が形成されている、項1から11のいずれかに記載のガラス積層体。

項13.前記ガラス体の厚みが、2mm以上である、項1から12のいずれかに記載のガラス積層体。

項14.前記ガラス体の単位面積あたりに含まれる3価酸化鉄の量が、Fe2O3に換算して1〜10mg/cm2である、項1から13のいずれかに記載のガラス積層体。

項15.前記ガラス体は、CIE標準のA光源を用いて測定する可視光透過率YAが、70%以上である、項1から13のいずれかに記載のガラス積層体。

項16.前記ガラス体の単位面積あたりに含まれる3価酸化鉄の量が、Fe2O3に換算して4〜15mg/cm2である、項1から13のいずれかに記載のガラス積層体。

項17.前記ガラス体は、CIE標準のA光源を用いて測定する可視光透過率YAが、15〜60%である、項1から13のいずれかに記載のガラス積層体。

項18.前記ガラス体に含まれる前記ガラス板の少なくとも1つは、表面圧縮応が20MPa未満である、項1から17のいずれかに記載のガラス積層体。

項19.前記ガラス体に含まれる前記ガラス板の少なくとも1つは、表面圧縮応力が80MPa以上である、項1から18のいずれかに記載のガラス積層体。

項20.前記ガラス体に含まれる全ての前記ガラス板は、表面圧縮応力が80MPa以上である、項1から18のいずれかに記載のガラス積層体。

項21.前記ガラス積層体において、前記紫外線遮蔽膜が形成された面に対して、JIS R3221に準拠し、500g荷重で1000回のテーバー摩耗試験を行った後、前記紫外線遮蔽膜が剥離せず、且つ前記試験後の前記ガラス積層体のヘイズ率が5%以下である、項1から20のいずれかに記載のガラス積層体。

項22.前記ガラス積層体において、前記紫外線遮蔽膜が形成された面とは反対側の面から、波長が295〜450nm、照度76mW/cm2の紫外線を100時間照射した後のTuv400と、前記紫外線の照射前のTuv400との差が、2%以下である、項1から20のいずれかに記載のガラス積層体。

項23.前記紫外線遮蔽膜の周縁から幅20mmの範囲を除いた領域における当該紫外線遮蔽膜の膜厚について、前記車両の下部側の膜厚が前記車両の上部側の膜厚よりも厚く、且つ前記膜厚の最大値が、0.5〜10μmである、項1から22のいずれかに記載のガラス積層体。

項24.前記紫外線遮蔽膜の周縁から幅1mmの範囲を除いた領域における当該紫外線遮蔽膜の膜厚について、当該膜厚が最大となる位置が、当該膜厚の周縁から10cm以上離れており、且つ当該膜厚の最大値が0.5〜10μmである、項1から23のいずれかに記載のガラス積層体。

項25.前記紫外線遮蔽膜の厚さの均一性が、70%以下である、項23または24に記載のガラス積層体。

項26.前記ガラス体に含まれる前記ガラス板の少なくとも1つは、当該ガラス板の第1主面及び第2主面にスズ成分を含み、前記第1主面及び前記第2主面に含まれるスズ成分の濃度が相違する、項1から25のいずれかに記載のガラス積層体。

項27.前記ガラス積層体において、外部に露出する前記ガラス板の表面には、マークが形成されており、 前記マークは、表面粗さRaが1.5μmである粗面部により構成されている、項1から26のいずれかに記載のガラス積層体。

項28.前記ガラス体に含まれる前記ガラス板の端面は、外部に向かって凸の円弧状に形成されている、項1から27のいずれかに記載のガラス積層体。

項29.前記ガラス体に含まれる前記ガラス板の端面は、3以上の平坦面を連結することで形成され、 隣接する前記平坦面同士のなすが、鈍角である、項1から27のいずれかに記載のガラス積層体。

項30.前記紫外線遮蔽膜が、防曇性能をさらに有する、項1から29のいずれかに記載のガラス積層体。

項31.前記紫外線遮蔽膜が、吸性能をさらに有する、項30に記載のガラス積層体。

項32.前記紫外線遮蔽膜の表面が、親水性である、項30に記載のガラス積層体。

項33.前記紫外線遮蔽膜が、視認性確保性能をさらに有する、項30に記載のガラス積層体。

項34.前記紫外線遮蔽膜の表面が、撥水性である、項33に記載のガラス積層体。

項35.視認性確保膜をさらに備えている、項1から29のいずれかに記載のガラス積層体。

項36.前記視認性確保膜は、前記紫外線遮蔽膜において前記ガラス体側とは反対の面に配置されている、項35に記載のガラス積層体。

項37.前記ガラス体は、 第1ガラス板と、 第2ガラス板と、 前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に配置される中間膜と、 を備え、 前記紫外線遮蔽膜は、前記第1ガラス板及び第2ガラス板の少なくとも一方に配置され、 前記視認性確保膜は、前記第1ガラス体及び第2ガラス体において、前記紫外線遮蔽膜が配置されている面とは反対側に配置されている、項35に記載のガラス積層体。

項38.低反射膜をさらに備えている、項1から37のいずれかに記載のガラス積層体。

本発明によれば、高い紫外線遮蔽機能を実現することができる。

本発明に係るガラス積層体の断面図である。

シャープカットを説明する図である。

ガラス体の端面の形状を説明する断面図である。

ガラス体の端面の形状を説明する断面図である。

合わせガラスの断面図である。

合わせガラスの他の例の断面図である。

ガラス体における波長ごとの光の透過率を示すグラフである。

ガラス積層体における波長ごとの光の透過率を示すグラフである。

以下、本発明に係る車両に取り付けられるガラス積層体について、図面を参照しつつ説明する。このガラス積層体は、図1に示すように、ガラス体1と、その表面の全面に亘って形成された紫外線遮蔽膜2と、を備えている。そして、このガラス積層体は、車両において、例えば、フロントガラス(ウインドシールド)、前部ドアの昇降ガラス、後部ドアの昇降ガラス、リアガラス、固定されたサイドガラスなどに用いられる。このうち、フロントガラス、前部ドアガラス等の、運転者が外部を見るためのガラスは、高い透明性が求められる。一方、これ以外のガラスは、フロントガラスほどの高い透明性は求められないため、着色されることもある。以下、これらガラス体及び紫外線遮蔽膜について、詳細に説明する。

<1.ガラス体> ガラス体は、一枚のガラス板で構成されるほか、2枚のガラス板を中間膜を介して貼り合わせた合わせガラスで構成することもできる。なお、以下で、ガラス体と称する場合、例えば、一枚のガラス板でガラス体が構成される場合には、一枚のガラス板の物性等が示され、ガラス体が合わせガラスである場合には、合わせガラスとしての物性等が示される。フロントガラスは、合わせガラスによって形成され、その他のサイドガラス等は一枚のガラス板で形成されることが多い。但し、フロントガラス以外の他のガラスも合わせガラスによって形成することもできる。また、ガラス体を構成するガラス板は、公知のガラス板を用いることができ、プライバシーガラス、クリアガラス、グリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することができる。以下、ガラス体に用いられるガラス板について説明する。

<1−1.厚み> ガラス体を合わせガラスで構成する場合には、外側ガラス板と内側ガラス板の厚みを同じにしてもよいし、相違させてもよい。外側ガラス板は、主として、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性が必要であるため、その厚みを、1.8mm以上、1.9mm以上、2.0mm以上、2.1mm以上、2.2mm以上の順で好ましい。また、外側ガラス板の厚みの上限は、5.0mm以下、4.0mm以下、3.1mm以下、2.5mm以下、2.4mm以下の順で好ましい。この中で、2.1mmより大きく2.5mm以下、特に、2.2mm以上2.4mm以下が好ましい。

一方、内側ガラス板の厚みは、合わせガラス1の軽量化のため、外側ガラス板11よりも厚みを小さくすることが好ましい。具体的には、内側ガラス板12の厚みは、0.6mm以上、0.8mm以上、1.0mm以上、1.3mm以上の順で好ましい。また、内側ガラス板12の厚みの上限は、1.8mm以下、1.6mm以下、1.4mm以下、1.3mm以下、1.1mm未満の順で好ましい。この中で、例えば、0.6mm以上1.1mm未満が好ましい。

また、ガラス体を一枚のガラス板で構成する場合には、その厚みを0.6〜5.0mmにすることができるが、上述した外側ガラス板及び内側ガラス板で示した厚みの範囲を適宜採用することができる。

<1−2.組成> ガラス板の組成は、特に制限されないが、Fe2O3の濃度を高め、必要に応じてTiO2、CeO2などその他の紫外線吸収成分を添加した組成を有するソーダ石灰珪酸塩ガラス板を用いることが好ましい。これにより、紫外線遮蔽性能を向上することができる。

フロントガラス(ウインドシールド)や前部ドアなどに用いられるガラス板は、透明性が求められるため、単位面積あたりに含まれる3価酸化鉄の量は、Fe2O3に換算表示して1〜10g/cm2とすることができる。特に、下限値は、2mgであることが好ましく、3mgであることがさらに好ましい。一方、上限値は、8mgであることが好ましく、6mgであることがさらに好ましく、5mgであることが特に好ましい。

これに対して、リアガラスや後部ドアなどに用いられるガラス板は、上述したフロントガラスほどには透明性が求められない。また、車内から車外への視認性を確保しつつ、車外から車内の様子をのぞき込まれ難いプラスバシー性を要求されることがある。そのため、このような用途のガラス板は、単位面積あたりに含まれる3価酸化鉄の量が、Fe2O3に換算表示して4〜15g/cm2とすることができる。特に、下限値は、6mgであることが好ましく、8mgであることがさらに好ましい。一方、上限値は、12mgであることが好ましく、10mgであることがさらに好ましい。以上の3価酸化鉄の量は、単位面積あたりの量であり、合わせガラスにおいても同じである。

ガラス板は、公知のフロート法で形成することができる。この方法では、溶融スズなどの溶融金属の上に溶融ガラスを連続的に供給し、供給した溶融ガラスを溶融金属の上で流動させることにより帯板状に成形する。このように成形されたガラスをガラスリボンと称する。そして、ガラスリボンは、下流側に向かうにつれて冷却され、冷却固化された上で溶融金属から引き上げられる。そして、徐冷された後、切断される。こうして、ガラス板が得られる。ここで、フロートガラス板において、溶融金属と接触していた面をボトム面と称し、それとは反対の面をトップ面と称することとする。ボトム面及びトップ面は、未研磨であってよい。そして、ボトム面は、溶融金属と接していたため、溶融金属がスズである場合には、ボトム面に含有される酸化スズの濃度が、トップ面に含有される酸化スズの濃度よりも大きくなる。

<1−3.光学特性> ガラス体の光学特性は、以下の通りである。 (1-3-1)紫外線透過率 本発明のガラス体の紫外線透過率は、以下の通りである。 Tuv400≦50% (1) 但し、Tuv400はISO13837:2008 convention Aに定める紫外線透過率である。紫外線透過率は、いずれも公知の分光光度計、たとえば「UV−3100PC」(島津製作所製)で測定することができる。また、上記式(1)におけるTuv400については、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることが特に好ましい。

(1-3-2)可視光透過率1 本発明のガラス体は、波長420〜800nmの光に対する透過率の平均をTavgとしたとき、ガラス体の透過率がTavg*0.9である波長W1と、ガラス体の透過率がTavg*0.1である波長W2との差が20〜50nmであることが好ましい。なお、Tavgは、波長1nmごとの透過率の算術平均として算出することができる。この点は、後述するガラス積層体のTavgにおいても同じである。

なお、ガラス体の透過率がTavg*0.9になる波長が2つ以上ある場合、そのうち最も短い波長をW1とする。同様に、Tavg*0.1が2以上ある場合は、最も長い波長をW2とする。

波長420〜800nmの光(可視光)の透過率は概ね高く、例えば、500nmを超えると、ある程度の透過性を保つ。したがって、Tavg*0.9となる波長W1と、Tavg*0.1となる波長W2との差が小さいということは、例えば、図2に示すように、紫外線域から可視光域に入ったときの透過率が急激に上昇することを意味する。特に、本発明においては、この波長の差(以下、シャープカットという)が、20〜50nmと低いため、紫外線域での透過率は低く、十分な紫外線遮蔽機能を果たす一方、可視光域に入ると、透過率が急激に上昇するため、ガラス体において視野を妨げるような着色等が少なくすることができる。

(1-3-3)可視光透過率2 本発明に係るガラス体のうち、上述したフロントガラスなど、透明性の高いガラスに用いられるガラス体においては、CIE標準のA光源を用いて測定する可視光透過率YAが70%以上であることが好ましい。

一方、上述した後部ドアの昇降ガラスなど、高い透明性が求められないガラスに用いられるガラス板においては、CIE標準のA光源を用いて測定する可視光透過率YAが15〜60%であることが好ましい。

(1-3-4)近赤外線透過率 本発明のガラス体は、波長が1500nmの光の透過率が35%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、25%以下であることが特に好ましい。

波長が1500nmの光は、近赤外線領域、特に日射光の近赤外線領域の光を示している。このような光の透過率が上記のように35%以下であれば、日射光の近赤外線を適度に遮蔽し、自動車の窓ガラスとして、このガラス体が用いられると、車内の温度が高くなりすぎるのを和らげることができる。

(1-3-5)黄色度 本発明のガラス板は、CIE標準のC光源における透過光に基づく、JIS K7373:2006で規定された黄色度YIについて、以下の式(2)を充足することが好ましい。これにより、ガラス板の黄色度が低減でき、視認性を向上することができる。 YI≦5 (2)

<1−4.強度> 本発明のガラス板の強度については、以下のように設定されることが好ましい。例えば、熱強化処理や化学強化処理等の強化が行われていない未強化ガラスとしては、表面圧縮応力が20MPa未満のガラス板を用いることが好ましい。一方、強化が行われている強化ガラスとしては、表面圧縮応力が80MPa以上であるガラス板を用いることが好ましい。なお、複数のガラス板を有する合わせガラスでは、少なくとも一枚のガラス板の表面圧縮応力が80MPa以上であることが好ましいが、すべてのガラス板の表面圧縮応力が80MPa以上とすることができる。また、一枚のガラス板の表面圧縮応力を20MPa未満とし、もう一枚のガラス板の表面圧縮応力が80MPa以上とすることもできる。

強化ガラスは、一般的に、未強化ガラスと比べて、紫外線遮蔽機能が向上する。したがって、強化ガラスにおいては、例えば、後述する紫外線遮蔽膜の厚みを薄くするなどして膜により紫外線遮蔽機能を低下することができる。これにより、コストの低減に寄与する。一方、未強化ガラスであっても、紫外線遮蔽膜を厚くするなどの調整を行えば、紫外線遮蔽機能は向上する。

<1−5.マーク> 本発明のガラス板の表面には、製造元、製造番号、製品名、規格などを示すマークを施すことができる。マークは、種々の方法により形成することができるが、例えば、ガラス板の表面、あるいは紫外線遮蔽膜の表面に形成された粗面部によりマークを構成することができる。すなわち、ショットブラスト法、ウェットエッチングなどにより、ガラス板あるいは紫外線遮蔽膜の表面の一部の表面粗さを大きくすることで、所定の形状の粗面部を形成することができる。このような粗面部の表面粗さRaは、例えば、1.5μm以上とすることができる。なお、表面粗さRaは、JIS B 0601:2001に準拠して求められる算術平均粗さである。

あるいは、不透明材料による薄膜で、マークを形成することができる。不透明材料は、着色セラミックカラー、導電性ペースト、ガラスへの印刷に適した各種市販品を用いることができ、これらをスクリーン印刷などで、ガラス板の表面に薄膜状に印刷し、所定の形状のマークを形成することができる。

<1−6.ガラス板の端面の形状> ガラス板の端面の形状は、特には限定されないが、例えば、図3に示すように、断面が、外部に凸となる円弧状の湾曲面13とすることができる。このような端面の形状は、単板に適している。

あるいは、図4に示すように、端面を3以上の平坦面で形成することもできる。例えば、第1主面11に連結される第1側面111と、第2主面12に連結される第2側面121と、これら第1側面111と第2側面121とを連結する主端面131と、で端面13を形成することができる。このとき、隣接する第1側面111と主端面131、及び隣接する主端面131と第2側面121とのなす角α、βが鈍角であることが好ましい。このような端面の形状は、合わせガラスに用いるガラス板に適している。

<1−7.合わせガラスの中間膜> 合わせガラスは、図5に示すように、外側ガラス板101と内側ガラス板102との間に、樹脂製の中間膜103を配置したものである。中間膜103の材料は、熱可塑性樹脂であり、合わせガラスとした際のガラス板との接着度の観点より、ポリビニルアセタール系またはエチレン−酢酸ビニル共重合体系の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。中でもポリビニルブチラール系(PVB系)の熱可塑性樹脂が好ましい。上記熱可塑性樹脂と公知の可塑剤とからなる熱可塑性樹脂組成物を、例えば混練して成形することで、中間膜103が得られる。なお、中間膜103は、市販される熱可塑性樹脂フィルムをそのまま使用することもできる。

可塑剤としては、通常中間膜用に使用されているものを用いることができるが、例えば、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−カプリエート等を挙げることができる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。

中間膜103の膜厚は、特に規定されないが、0.3〜6.0mmであることが好ましく、0.5〜4.0mmであることがさらに好ましく、0.6〜2.0mmであることが特に好ましい。

また、中間膜103は、複数の層で形成することもできる。例えば、図6に示すように、軟質のコア層1031を、これよりも硬質のアウター層1032で挟持した3層で中間膜103を構成することができる。但し、この構成に限定されるものではなく、軟質のコア層1031を有する複数層で形成されていればよい。例えば、コア層1031を含む2層(コア層が1層と、アウター層が1層)、またはコア層1031を中心に配置した5層以上の奇数の層(コア層が1層と、アウター層が4層)、あるいはコア層1031を内側に含む偶数の層(コア層が1層と、他の層がアウター層)で形成することもできる。あるいは、一層で中間膜103を構成することもできる。

コア層1031はアウター層1032よりも軟質であるが、この点については、ヤング率を基準として材料を選択することができる。具体的には、周波数100Hz,温度20度において、1〜20MPaであることが好ましく、1〜16MPaであることがさらに好ましい。更には、1〜10MPaであることが好ましい。測定方法としては、例えば、Metravib社製固体粘弾性測定装置DMA 50を用い、ひずみ量0.05%にて周波数分散測定を行うことができる。以下、本明細書においては、特に断りのない限り、ヤング率は上記方法での測定値とする。但し、周波数が200Hz以下の場合の測定は実測値を用いるが、200Hzより大きい場合には実測値に基づく算出値を用いる。この算出値とは、実測値からWLF法を用いることで算出されるマスターカーブに基づくものである。

一方、アウター層1032のヤング率は、特には限定されず、コア層1031より大きければよい。例えば、周波数100Hz,温度20度において560MPa以上、650MPa以上、1300MPa以上、1764MPa以上の順で好ましい。一方、アウター層1032のヤング率の上限は特には限定されないが、例えば、加工性の観点から設定することができる。例えば、1750MPa以上となると、加工性、特に切断が困難になることが経験的に知られている。また、コア層1031を挟む一対のアウター層1032を設ける場合、外側ガラス板11側のアウター層1032のヤング率を、内側ガラス板102側のアウター層1032のヤング率よりも大きくすることが好ましい。これにより、車外や屋外からの外力に対する耐破損性能が向上する。

また、各層1031,1032を構成する材料は、特には限定されないが、少なくともヤング率が上記のような範囲とすることができる材料であることが必要である。例えば、アウター層1032は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)によって構成することができる。ポリビニルブチラール樹脂は、各ガラス板との接着性や耐貫通性に優れるので好ましい。一方、コア層1031は、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)、またはアウター層1032を構成するポリビニルブチラール樹脂よりも軟質なポリビニルアセタール樹脂によって構成することができる。軟質なコア層1031を間に挟むことにより、単層の樹脂中間膜103と同等の接着性や耐貫通性を保持しながら、遮音性能を大きく向上させることができる。

一般に、ポリビニルアセタール樹脂の硬度は、(a)出発物質であるポリビニルアルコールの重合度、(b)アセタール化度、(c)可塑剤の種類、(d)可塑剤の添加割合などにより制御することができる。したがって、それらの条件から選ばれる少なくとも1つを適切に調整することにより、同じポリビニルブチラール樹脂であっても、アウター層1032に用いる硬質なポリビニルブチラール樹脂と、コア層1031に用いる軟質なポリビニルブチラール樹脂との作り分けが可能である。さらに、アセタール化に用いるアルデヒドの種類、複数種類のアルデヒドによる共アセタール化か単種のアルデヒドによる純アセタール化かによっても、ポリビニルアセタール樹脂の硬度を制御することができる。一概には言えないが、炭素数の多いアルデヒドを用いて得られるポリビニルアセタール樹脂ほど、軟質となる傾向がある。したがって、例えば、アウター層1032がポリビニルブチラール樹脂で構成されている場合、コア層には、炭素数が5以上のアルデヒド(例えばn−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−へプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド)、をポリビニルアルコールでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。なお、所定のヤング率が得られる場合は、上記樹脂等に限定されることはい。

また、中間膜103の総厚は、上述した膜厚と同じである。このうち、コア層1031の厚みは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜0.6mmであることがさらに好ましい。0.1mmよりも小さくなると、軟質なコア層1031の影響が及びにくくなり、また、2.0mmや0.6mmより大きくなると総厚があがりコストアップとなるからである。一方、アウター層1032の厚みは特に限定されないが、例えば、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることがさらに好ましい。その他、中間膜103の総厚を一定とし、この中でコア層1031の厚みを調整することもできる。

コア層1031の厚みは、例えば、以下のように測定することができる。まず、マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VH−5500)によって合わせガラスの断面を175倍に拡大して表示する。そして、コア層1031の厚みを目視により特定し、これを測定する。このとき、目視によるばらつきを排除するため、測定回数を5回とし、その平均値をコア層1031の厚みとする。例えば、合わせガラスの拡大写真を撮影し、このなかでコア層1031を特定して厚みを測定することができる。

なお、中間膜103の厚みは全面に亘って一定である必要はなく、例えば、ヘッドアップディスプレイに用いられる合わせガラス用に楔形にすることもできる。この場合、中間膜103の厚みは、最も厚みの小さい箇所、つまり合わせガラスの最下辺部を測定する。

図6に示す中間膜103の製造方法は特には限定されないが、例えば、上述したポリビニルアセタール樹脂等の樹脂成分、可塑剤及び必要に応じて他の添加剤を配合し、均一に混練りした後、各層を一括で押出し成型する方法、この方法により作成した2つ以上の樹脂膜をプレス法、ラミネート法等により積層する方法が挙げられる。プレス法、ラミネート法等により積層する方法に用いる積層前の樹脂膜は単層構造でも多層構造でもよい。

<2.紫外線遮蔽膜> 紫外線遮蔽膜は、紫外線を吸収する成分(紫外線吸収剤)を含む膜である。紫外線吸収剤は、膜を構成するマトリクス成分に溶解して存在していてもよく、紫外線吸収剤が微粒子形状でマトリクス成分中に分散されて存在してもよい。マトリクス成分は、膜としての透明性を保ちつつ、紫外線吸収剤を保持できればよい。したがって、例えば、シリカ、アルミナ、チタンのような無機成分が主成分であってもよく、あるいは、ポリエステル樹脂、ウレタンアクレリート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂など有機成分が主成分であってもよい。この膜の製造方法は、特には限定されないが、紫外線吸収剤とマトリクス成分とを含む膜形成溶液をガラス体に塗布し、乾燥、あるいは必要に応じて加熱乾燥を経ることで、紫外線遮蔽膜を形成することができる。以下、詳細に説明する。

まず、紫外線遮蔽膜を形成するための膜形成溶液を構成する3種類の各構成成分について説明し、その後、膜形成溶液の調製方法について、以下に説明する。

<2−1.膜形成溶液1> (シリコン化合物A) シリコン化合物Aは、式(3)で示される化合物である。 SiX14 (3) 式(3)において、X1は加水分解性官能基又はハロゲン原子である。加水分解性官能基は、加水分解触媒により加水分解される官能基であって、例えば、アルコキシル基、アセトキシ基及びアルケニルオキシ基から選ばれる少なくとも1種である。例示した加水分解性官能基は、いずれも加水分解によりヒドロキシル基へと変化する。好ましい加水分解性官能基はアルコキシル基である。アルコキシル基としては、炭素数1〜4のアルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基)を例示できる。ハロゲン原子は、例えば塩素及び臭素、好ましくは塩素である。

好ましいシリコン化合物Aとしては、テトラアルコキシシラン、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシランを例示できる。シリコン化合物Aに代えて、あるいはこれと共に、予めシリコン化合物Aを少なくとも部分的に加水分解した化合物、又はシリコン化合物を少なくとも部分的に加水分解し、さらに重縮合した化合物を用いることもできる。シリコン化合物Aの加水分解物等は市販品として入手可能である。

(シリコン化合物B) シリコン化合物Bは、式(4)で示される化合物である。 R1mR2nSiX24-m-n (4) 式(4)において、R1は反応性官能基を有する有機基であり、R2は反応性官能基を有しない有機基であり、X2は加水分解性官能基又はハロゲン原子であり、mは0以上2以下の整数であり、nは0以上2以下の整数であり、m+nは1以上2以下である。

反応性官能基は、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基、エポキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種である。エポキシ基は、グリシジル基、特にオキシグリシジル基の一部であってもよい。アミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれであってもよい。好ましい反応性官能基は、エポキシ基及びアミノ基、特にエポキシ基である。反応性官能基を有する有機基は、例えば有機基自体が反応性官能基(例えばビニル基)であってもよく、また例えば反応性官能基により少なくとも1つの水素原子が置換された脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖アルキル基及び炭素数3〜10の分岐を有するアルキル基を例示できる。芳香族炭化水素基としてはフェニル基を例示できる。

反応性官能基を有しない有機基は、例えば、脂肪族又は芳香族の炭化水素基である。脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖アルキル基及び炭素数3〜10の分岐を有するアルキル基を例示できる。芳香族炭化水素基としてはフェニル基を例示できる。

X2は加水分解性官能基又はハロゲン原子であり、X2の具体例はX1の具体例に同じである。

mは1又は2であってもよく、好ましいnは0又は1であってもよく、m+nは1又は2であってもよい。

シリコン化合物Bは、式(4)におけるmが1又は2であってnが0又は1であるシリコン化合物B1を含んでいてもよい。シリコン化合物B1としては、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを例示できる。シリコン化合物B1は、いわゆるシランカップリング剤である。シリコン化合物B1は、R1に含まれる反応性官能基として、エポキシ基を有することが好ましい。

シリコン化合物Bは、式(4)におけるmが0であって(反応性官能基を有する有機基R1を含まない)、nが1又は2であるシリコン化合物B2を含んでいてもよい。好ましいシリコン化合物B2としては、フェニル基を有するシリコンアルコキシド、具体的には、フェニルトリエトキシシランを例示できる。

(紫外線吸収剤) 紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]、ベンゾフェノン化合物[2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等]、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物[2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−s−トリアジン等]及びシアノアクリレート化合物[エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等]等を使用できる。また、紫外線吸収剤は、ポリメチン化合物、イミダゾリン化合物、クマリン化合物、ナフタルイミド化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物、イソインドリノン化合物、キノフタロン化合物及びキノリン化合物、チオフェン化合物、スチルベンゼン化合物、ナフタレン化合物及びベンズイミダゾール化合物から選ばれる少なくとも1種の有機色素であってもよい。紫外線吸収剤のうち好ましいのは、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物及びシアノアクリレート化合物から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましいのは、ベンゾフェノン化合物である。紫外線吸収剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。

紫外線吸収剤は、アミノ基及びヒドロキシル基から選ばれる少なくとも1種、特にヒドロキシル基、を分子内に有することが好ましく、特に2以上のヒドロキシル基を1つの分子内に有していることが好ましい。ここでも、アミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれであってもよい。紫外線吸収剤は、ヒドロキシル基が2個以上結合したベンゼン骨格を有していてもよい。

紫外線吸収剤は、予めシリコン化合物B1等のシリコン化合物と反応させてシリル化しておく必要はなく、市販されている製品をそのまま使用すればよい。このため、本実施形態では、分子内にケイ素原子を含まない紫外線吸収剤をそのまま膜形成溶液の調製に用いることができる。紫外線吸収剤のシリル化は、紫外線吸収剤のブリードアウトの抑制に有効であるが、そのためだけの予備工程を要する。本実施形態では、紫外線吸収剤は、膜形成溶液において、通常、紫外線吸収剤との反応又は分子間相互作用が可能なその他の成分、具体的にはシリコン化合物A、シリコン化合物B、有機ポリマー等と反応したり、分子間相互作用する。この反応又は分子間相互作用は競争的に生じる。ここで、反応の例としては、共有結合やイオン結合が形成される反応を挙げることができる。分子間相互作用の例としては、水素結合やπ−π相互作用を挙げることができる。したがって、膜形成溶液がシリコン化合物B1(シランカップリング剤)を含んでいたとしても、紫外線吸収剤は、その全量がシリコン化合物B1と反応したり分子間相互作用することはなく、通常、その少なくとも一部がシリコン化合物A、シリコン化合物B(ただしシリコン化合物B1を除く)及び有機ポリマーから選ばれる少なくとも1つと反応したり分子間相互作用する。この反応又は分子間相互作用は、シリコン化合物B1との反応と同様、紫外線吸収剤を膜中に固定することによってブリードアウトの抑制に寄与する。

(有機ポリマー) 有機ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステルポリオール、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリカプロラクトンポリオール、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアルキレングリコール系樹脂等が知られている。本実施形態において好ましい有機ポリマーは、分子内にエポキシ基を有する有機ポリマーである。ただし、この有機ポリマーは、膜形成溶液又は紫外線遮蔽膜中において、少なくとも一部の、場合によってはすべてのエポキシ基が開環して生成した有機ポリマーとして存在しうる。別の好ましい有機ポリマーとしては、シラノール基やフェノール性ヒドロキシル基と水素結合が可能な極性基(カルボニル基、ヒドロキシル基、フェノール性ヒドロキシル基等)を含む有機ポリマーが例示できる。この中でも特に好ましい有機ポリマーは、ポリアルキレングリコール系樹脂である。ポリアルキレングリコール系樹脂としては、グリコール類であるポリエーテルや、ポリエーテルの誘導体が例示でき、これらのポリマーの例として、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールジメタクリレートを挙げることができる。ポリアルキレングリコール系樹脂を用いると、紫外線遮蔽膜中に異物が発生することを効果的に抑制することができ、また膜形成溶液塗布後の乾燥温度が低い場合にも耐摩耗性の高い膜を得ることができる。さらに別の好ましい有機ポリマーとして、紫外線吸収剤の芳香環とπ−π相互作用することができる有機基(フェニル基、共役二重結合を有するアルケニル基等)を含む有機ポリマーが例示でき、このポリマーの例として、ビスフェノールポリオールを挙げることができる。有機ポリマーは、エタノール及び/又は水に溶解する有機ポリマーが好ましい。なお、エタノール(水)に溶解するか否かは、25℃のエタノール(水)100gに、有機ポリマーが1g以上溶解するか否かによって判断する。有機ポリマーには、紫外線吸収能が要求されないため、有機ポリマーは、紫外線吸収剤に該当しない化合物、具体的には上記に列挙したベンゾトリアゾール化合物からシアノアクリレート化合物までの化合物及び有機色素には該当しないものを用いるとよい。エポキシ基を有する有機ポリマーの分子中平均エポキシ基数は2〜10であってもよい。

エポキシ基を有する有機ポリマーとしては、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルエステル化合物、ポリグリシジルアミン化合物等のポリグリシジル化合物を例示できる。エポキシ基を有する有機ポリマーは、脂肪族ポリエポキシド、芳香族ポリエポキシドのいずれであってもよいが、脂肪族ポリエポキシドが好ましい。好ましいエポキシ基を有する有機ポリマーは、ポリグリシジルエーテル化合物、特に脂肪族ポリグリシジルエーテル化合物である。ポリグリシジルエーテル化合物は、ヒドロキシル基を2個以上有するアルコールのグリシジルエーテルが好ましい。なお、アルコールは、脂肪族アルコール、脂環式アルコール又は糖アルコールが好ましい。

ヒドロキシル基を2個以上有するアルコールのグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、及びペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルを例示できる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

これらのうちでも、紫外線遮蔽膜の耐摩耗性の点から、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の3個以上のヒドロキシル基を有する脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(1分子あたり平均のグリシジル基(エポキシ基)数が2を超えるもの)が好ましい。

有機ポリマーは、同じく有機物である紫外線吸収剤との高い親和性を通じて紫外線吸収剤の分散性の向上に寄与してブリードアウトを抑制する成分であり、膜の柔軟性が向上し、膜厚が厚い場合であっても膜にクラックを生じにくくすると共に、膜の耐摩耗性の向上にも寄与する成分である。また、特にエポキシ基を有する有機ポリマーは、透明基体(ガラス体)の反応性が低い表面に形成された膜の密着性の向上にも寄与する成分である。

(酸) 酸は、酸解離定数が1未満でありかつ沸点が130℃以下であり、無機酸であっても有機酸であってもよい。無機酸としては、塩酸、硝酸、臭化水素酸及びヨウ化水素酸から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、好ましくは塩酸及び硝酸である。これらの揮発性の酸は、硫酸、リン酸に代表される不揮発性の無機酸と比較して、加熱による除去が容易である。

有機酸としては、例えばトリフルオロ酢酸(pKa:0.23、沸点:72.4℃)が挙げられる。沸点が低い有機酸は、揮発性の無機酸と同様、加熱による除去が容易である。無機酸、有機酸のいずれであっても、本実施形態においては、乾燥工程において除去が容易な酸が加水分解触媒として用いられる。膜に残存する加水分解触媒由来の成分は、長期使用後の膜の透明性を損なう要因となりうる。

よく知られているとおり、酸の化学式を[HA]とすると、酸のpKaは、以下の式から算出される。 pKa=−log{[H3O+][A-]/[HA]} 式中、[H3O+]は酸の水溶液中の水素イオン濃度(mol/L)、[A-]は酸の水溶液中の塩基濃度(mol/L)、[HA]はHAの水溶液中の濃度(mol/L)を表す。なお、HAの酸性基から酸が多段階に解離する場合、pKaは第一段目の酸解離定数を意味する。

pKaが1未満である酸を用いると、pKaが相対的に高い酸を加水分解触媒として用いた場合よりも、より緻密な紫外線遮蔽膜を得ることが容易となる。膜の緻密性の向上により膜の耐摩耗性は向上する。

酸の沸点は、好ましくは100℃以下であり、80℃以下であってもよい。

酸は、塩酸、硝酸及びトリフルオロ酢酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。

膜形成溶液は、赤外線吸収剤を含んでいてもよい。赤外線吸収剤としては、例えば、ポリメチン化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ナフトキノン化合物、アントラキノン化合物、ジチオール化合物、インモニウム化合物、ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、ピリリウム化合物、セリリウム化合物、スクワリリウム化合物、ベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン色素カチオンとの対イオン結合体等の有機系赤外線吸収剤;酸化タングステン、酸化錫、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化タングステン、インジウム錫酸化物、アンチモン錫酸化物、フッ素ドープ酸化錫等の無機系赤外線吸収剤;等が挙げられる。赤外線吸収剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。赤外線吸収剤は、好ましくはインジウム錫酸化物、アンチモン錫酸化物及びフッ素ドープ酸化錫から選ばれる少なくとも1種である。

膜形成溶液は、無機酸化物微粒子を含んでいてもよい。無機酸化物微粒子を構成する無機酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、好ましくはシリカ微粒子である。シリカ微粒子は、例えば、コロイダルシリカを添加することにより膜形成溶液に導入できる。無機酸化物微粒子は、紫外線遮蔽膜に加えられた応力を、紫外線遮蔽膜を支持する基体に伝達する作用に優れ、硬度も高い。したがって、無機酸化物微粒子の添加は、紫外線遮蔽膜の耐摩耗性を向上させる観点から有利である。

膜形成溶液には、構成成分中の有機物の溶解性を高めるために有機溶媒を加えることが好ましい。有機溶媒としては、水と任意の比率で混合する溶媒が好ましく、特に炭素数が1〜3の低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール)が好適である。

膜形成溶液には、その他の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、紫外線遮蔽膜の外観や紫外線吸収剤の分散性を改善する機能を有する界面活性剤が挙げられる。添加剤として、レベリング剤、消泡剤、防腐剤等を加えてもよい。

式(3)により示されるシリコン化合物Aの加水分解物が縮重合することにより生成する成分CAはSiO2である。式(4)により示されるシリコン化合物Bの加水分解物が縮重合することにより生成する成分CBは、[R1mR2nSiO(4-m-n)/2]により示すことができる。成分CBには、シリコン化合物B1の加水分解物が縮重合することにより生成する成分CB1と、シリコン化合物B2の加水分解物が縮重合することにより生成する成分CB2が含まれる。ここで、R1、R2、m及びnは、上記で述べたとおりである。

成分CAと成分CBとの合計質量rに対する成分CAの合計質量pの比(p/r)は、0.1以上0.8未満が好ましく、0.35以上0.48以下がより好ましく、0.40以上0.48以下であってもよい。成分CAと成分CBとの合計質量rに対する成分CBの合計質量qの比(q/r)は、0.2を超え0.9以下が好ましく、0.52以上0.65以下がより好ましく、0.52以上0.60以下であってもよい。また、成分CAと成分CBとの合計質量rに対する成分CB1の質量cの比(c/r)は、0以上0.9以下であってもよい。また、成分CAと成分CBとの合計質量rに対する成分CB2の質量dの比(d/r)は、0以上0.4以下であってもよい。

また、成分CAと成分CBとの合計質量rに対する有機ポリマーの質量sの比(s/r)は、0.001以上1以下が好ましく、0.001以上0.8以下がより好ましく、0.001以上0.6以下であってもよい。

以上の比(p/r)、(q/r)、(c/r)、(d/r)及び(s/r)がすべて望ましい範囲となるように、膜形成溶液を調製することが好ましい。また、紫外線吸収剤は、形成された紫外線遮蔽膜における含有率が0.5〜40質量%となるように、膜形成溶液に含ませることが好ましく、さらに好ましいのは、10〜40質量%である。また、成分CAと成分CBとの合計質量rに対する紫外線吸収剤の質量eの比(e/r)は、0.005以上0.7以下であってもよい。

膜形成溶液中の酸の好ましい含有率は、膜形成溶液の質量に対して、0.001〜1質量%、より好ましくは0.001〜0.6質量%である。

膜形成溶液中の水のモル数は、膜形成溶液に含まれるシリコン原子の総モル数に対して、好ましくは15倍以下、より好ましくは4〜12倍、例えば4〜10倍である。水のモル数を過大とせず上記程度に抑えると、透明な膜を得ることが容易となる。また、水のモル数を過少とせず少なくとも上記程度を確保すると、より緻密で高い耐摩耗性を有する膜を得ることが容易になる。

膜形成溶液を調製する方法は、特に制限はないが、1つの容器、例えば撹拌装置を備えた混合槽に、上述した各構成成分を順序に制限なく順次供給し、撹拌することによって実施するとよい。容器内には、紫外線吸収剤として、シリコン化合物A、シリコン化合物Bのいずれとも反応していない紫外線吸収剤のみが供給される。言い換えると、紫外線吸収剤は、その全量が、シリコン化合物A及びシリコン化合物Bを用いたシリル化処理を受けることなく容器に供給される。また、本実施形態では、好ましくは、容器内に、加水分解触媒として、酸解離定数が1未満でありかつ沸点が130℃以下である酸のみが供給される。

<2−2.膜形成溶液2> ゾルゲル法に基づく膜形成溶液の好ましい態様について説明する。

ゾルゲル法に用いる有機溶媒は、シリコンアルコキシドや水との相溶性が高く、ゾルゲル反応を進行させることができる溶媒であることが必要であり、炭素数が1〜3の低級アルコールが適している。シリコンアルコキシドとしては、特に制限はないが、シリコンテトラメトキシド、シリコンテトラエトキシド(TEOS)、シリコンテトライソプロポキシドなどを用いればよい。シリコンアルコキシドの加水分解物をシリコン原料として用いてもよい。ゾルゲル法による形成溶液におけるシリコンアルコキシドの濃度は、シリコンアルコキシドをSiO2換算したときのSiO2濃度により表示して、3〜15質量%、特に3〜13質量%が好ましい。この濃度が高すぎると、膜にクラックが発生することがある。

水は、シリコンアルコキシドに対し、モル比により表示して、4倍以上、具体的には4〜40倍、好ましくは4〜35倍が好適である。加水分解触媒としては、酸触媒、特に塩酸、硝酸、硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などの強酸を用いることが好ましい。酸触媒に由来する有機物は膜硬度を低下させることがあるため、酸触媒としては無機酸が好ましい。塩酸は、揮発性が高く、膜に残存しにくいため、最も好ましい酸触媒である。酸触媒の濃度は、酸からプロトンが完全に解離したと仮定したときのプロトンの質量モル濃度により表示して0.001〜2mol/kgの範囲とすることが好ましい。

上記程度に水を過剰に加え、上記程度の濃度となるように酸触媒を加えると、例えば、国際公開第2005/095101号公報に解説されているように、ゾルゲル法により、有機物の分解を防ぐことができる温度域で比較的厚い膜を容易に形成できる。

上記に挙げた成分を含むゾルゲル法による膜の形成溶液を、紫外線吸収剤の微粒子を分散させた分散液と混合し、さらに必要に応じて有機ポリマーなどを添加すれば、紫外線遮蔽膜の形成溶液を準備できる。ただし、紫外線遮蔽膜の形成溶液の調製方法がこれに限られるわけではなく、微粒子分散液にゾルゲル法による成膜に必要な成分を順次添加してもよいし、ゾルゲル法以外の方法により膜を形成することとして紫外線吸収剤の微粒子とともにその方法に必要な成分(例えばポリシラザン)を含む形成溶液を調製しても構わない。

(紫外線吸収剤) 紫外線吸収剤は、常温で固体であるとともに分子量が5000以下であり、平均粒径が150nm以下となるように粉砕できるものであれば特に制限はなく、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ポリメチン系、イミダゾリン系など従来から公知の紫外線吸収剤を用いることができる。また、紫外線遮蔽能を有する限り、後述するベンゼンチオール銅錯体誘導体のように、従来は他の用途で用いられてきた有機化合物を使用してもよい。

紫外線吸収剤の分子量は、3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1500以下がさらに好ましく、場合によっては1300以下、さらに1200以下、特に900以下、とりわけ800以下であってもよい。ただし、紫外線吸収剤の分子量が低すぎると常温で固体を維持することが困難となる。したがって、紫外線吸収剤の分子量は、200以上が好ましく、300以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。

また、紫外線吸収剤は、分子中に、重合可能な炭素−炭素二重結合を含まないことが好ましい。重合可能な炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基などの重合性官能基に含まれる二重結合が挙げられる。紫外線吸収剤は、分子中にこれらの官能基を含まないことが好ましい。

紫外線吸収剤の好ましい一例は、下記式(5)により示される官能基を2つ以上、例えば2〜8個、好ましくは2〜4個を、分子中に有する有機化合物αである。

ここで、A1〜A5は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、直鎖のもしくは分岐を有する炭素数1〜20、好ましくは炭素数5〜15、より好ましくは炭素数7〜13のアルキル基、または下記式(6)により示される官能基である。ただし、A1〜A5の少なくとも1つは、下記式(6)により示される官能基である。

有機化合物αは、分子中に少なくとも2つのベンゾトリアゾール構造(式(6)参照)を含むベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。1分子中に少なくとも2つ存在するベンゾトリアゾール構造は、有機化合物αによる紫外線遮蔽効果に貢献し、有機化合物αが常温で固体状態となる程度に分子量を大きく保つことにも寄与する。周知のとおり、化合物の融点は分子量のみによって定まるわけではないが、分子量は融点を大きく左右する因子である。有機化合物αは、紫外線遮蔽効果の持続性に優れ、ガラス積層体の場合には特に重視される特性であるヘイズ率が低い紫外線遮蔽膜の形成に適した化合物である。

式(5)により示される官能基は、例えば、A1〜A5のうち、1つが水酸基であり、1つが上記で規定したアルキル基であり、1つが式(6)により示される官能基であり、残り2つが水素原子であってもよい。具体的には、有機化合物αは、以下の式(7)で示される官能基を2つ以上分子中に有することが好ましい。式(7)において、R1は、直鎖のもしくは分岐を有する炭素数1〜20、好ましくは炭素数5〜15、より好ましくは炭素数7〜13のアルキル基である。

なお、有機化合物αに含まれるアルキル基の炭素数は、多いほど分子全体の疎水性が高くなる傾向があるため、分散媒を水とする分散液から作製する膜において、微粒子として存在させることが容易となる。ただし、炭素数が多くなりすぎると、立体障害などの影響によって有機化合物αの融点が下がる傾向がある。

本発明の好ましい一形態において、有機化合物αは、式(7)により示される2つの官能基がアルキレン基により結合されている構造単位を有する。アルキレン基を構成する炭素数は、好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。

有機化合物αは、以下の式(8)で示される化合物であってもよい。

ここで、R1およびR2は、互いに独立して、直鎖のもしくは分岐を有する炭素数1〜20、好ましくは炭素数5〜15、より好ましくは炭素数7〜13のアルキル基である。

紫外線吸収剤の別の好ましい一例は、下記式(8)により示される構造単位を分子中に有する有機化合物βである。有機化合物βは、ベンゼンチオール銅錯体誘導体である。

ベンゼンジチオール銅錯体は、式(9)に示された構造に由来する共鳴効果により、波長400nm程度の光線の吸収に寄与する。共鳴効果により吸収される波長はCuが他の金属原子に置換すればシフトする(例えば、CuをZnやAlに置換すればより短い波長域において共鳴効果が得られる)。波長400nm程度の光線の吸収能を重視すべき場合は、金属原子としてはCuが最適である。

ガラス板の紫外線遮蔽特性への要求の高まりにより、その遮蔽の程度のみならず、紫外域の光線をより長波長側に至るまで遮蔽することが期待されるようになっている。近年では、紫外域というよりは可視域の短波長域(400nm程度の波長域)の波長を有する光線まで遮蔽することが要求されることもある。式(9)に示す構造を有する有機化合物βの使用は、紫外域のみならず、400nm程度の波長域における光線の遮蔽にも効果がある。

有機化合物βは、以下の式(10)で示される構造を有することが好ましく、式(11)で示される構造を有することがさらに好ましく、例えば式(15)の化合物であってよい。

ここで、LおよびMは、それぞれ独立に、以下の式(12)、(13)、(14)のいずれかにより示される基である。また、Aは第四級アンモニウム塩である。第四級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトライソプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩を例示できる。

ここで、R3、R4は、それぞれ独立に、炭素数が1〜4の直鎖のまたは分岐を有するアルキル基を指す。

ここで、nは3〜5の整数である。

ここで、Buは直鎖のまたは分岐を有するブチル基である。

紫外線吸収剤は常温において固体である。本明細書において、「常温」は25℃を意味する用語として使用する。上述のとおり、従来、溶液から形成される紫外線遮蔽膜には常温で液体である紫外線吸収剤が用いられてきた。このような紫外線吸収剤をエマルション化して得た溶液を用いて形成された紫外線遮蔽膜には、紫外線吸収剤が微細な液体として分散している。また、従来、膜に均質に分布させるために、常温で固体である有機化合物は、溶媒に溶かしてから膜に導入するのが通常であった。ガラス板上に形成される膜に固形のまま導入された有機化合物は、ガラス積層体の透明性を損なうことが多いためである。これに対し、本発明では、紫外線遮蔽膜中に、平均粒径が150nm以下の微粒子として紫外線吸収剤が分散している。平均粒径が150nm以下となる程度にまで紫外線吸収剤を細かく砕いてから膜に導入することにより、その膜は、透明性を損なうことなく紫外線遮蔽能の持続性に優れたものとなり得る。このようにして膜中に導入された紫外線吸収剤は、好ましくは、膜中においても結晶状態を保持している。膜中の紫外線吸収剤が結晶状態を保持していることはX線回折により確認できる。

紫外線吸収剤が粉砕されて所定の平均粒径に到達する時間は、粉砕装置の種類、投入量、さらには回転数などの粉砕条件に依存する。このため、量産に際しては、予め、粉砕装置による粉砕を適宜中断してサンプリングした粉砕物の平均粒径を確認することを繰り返しながら、所定の平均粒径が得られるまでの時間を定めておくとよい。なお、粉砕に際しては、粉砕するべき紫外線吸収剤に、界面活性剤、水溶性樹脂などを適宜添加してもよい。

紫外線吸収剤は、平均粒径が150nm以下、好ましくは10〜150nm、より好ましくは50〜140nm、特に好ましくは70〜140nm、の微粒子として膜に分散させるとよい。微粒子分散液(微粒子分散組成物)の調製においても、この範囲の平均粒径を有するように紫外線吸収剤を粉砕しておくことが好ましい。微粒子の平均粒径は、大きすぎると膜の透明性を低下させるが、小さすぎると紫外線吸収能が劣化したり、その持続性が低下したりおそれがある。なお、上記「平均粒径」は、後述する実施例の欄における測定値も含め、光子相関法の一種である動的光散乱法による測定値に基づく数値であり、具体的には、球相当径の体積基準による分布において累積頻度が50%となる粒子径である。「平均粒径」は、例えば、日機装社製「マイクロトラック超微粒子粒度分布計9340−UPA150」を用いて測定することができる。

紫外線吸収剤は、膜中の酸化ケイ素(SiO2換算)に対しては、質量%により表示して、1〜80%、さらには5〜60%、特に5〜50%、とりわけ7〜30%の範囲で含まれていることが好ましい。これを考慮すると、紫外線吸収剤は、膜の形成溶液の液量に対しては、同じく質量%により表示して、0.5〜25%、より好ましくは0.5〜15%となるように添加することが好ましい。

(有機ポリマー) 有機ポリマーは、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)との相互作用によって、紫外線吸収剤の膜中における分散性の向上に寄与し、この化合物による光線遮蔽能を高め、さらにはこの化合物の劣化を抑制する成分である。紫外線遮蔽膜をゾルゲル法などの液相成膜により比較的厚く(例えば300nmを超える厚さ、さらには500nm以上の厚さ)形成する際には、膜の形成溶液に含まれる液体成分の蒸発に伴ってクラックが発生することがある。有機ポリマーは、クラックの発生を抑制しながら厚膜の形成を可能にする成分でもある。

有機ポリマーは、好ましくはポリエーテル化合物、ポリオール化合物、ポリビニルピロリドン類およびポリビニルカプロラクタム類から選ばれる少なくとも1種である。有機ポリマーは、ポリエーテル型の界面活性剤などのポリエーテル化合物であってもよいし、ポリカプロラクトンポリオール、ビスフェノールAポリオールなどのポリオール化合物であってもよい。有機ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどであっても構わない。ポリエーテル化合物は2以上のエーテル結合を含む化合物、ポリオール化合物はジオール、トリオールを含む多価アルコールをそれぞれ意味する。ポリビニルピロリドン類は、具体的には、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体を指し、ポリビニルカプロラクタム類は、具体的には、ポリビニルカプロラクタムおよびその誘導体を指す。

有機ポリマーは、膜中の酸化ケイ素(SiO2換算)に対し、質量%で表示して、0〜75%、さらには0.05〜50%、特に0.1〜40%、とりわけ1〜30%、場合によっては10%以下、必要に応じて7%以下となるように、膜に添加することが好ましい。なお、紫外線吸収剤が多い場合は、その量に応じて有機ポリマーを減らしてもよい。

シランカップリング剤は、その種類が特に制限されるものではないが、RSiX3(Rは、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基、アミノ基およびメルカプト基から選ばれる少なくとも1種を含む有機官能基であり、Xは、ハロゲン元素またはアルコキシル基である)で示される有機化合物が好ましい。シランカップリング剤は、そのR基が有機物とX基が無機物とそれぞれ反応する。この反応を通じて、シランカップリング剤は、紫外線吸収剤の膜中における分散性の向上に寄与し、クラックの発生を抑制しながら厚膜の形成を可能にする効果を奏する。シランカップリング剤は、膜中の酸化ケイ素(SiO2換算)に対し、モル%で表示して、0〜40%、好ましくは0.1〜20%、より好ましくは1〜10%となるように、膜に添加することが好ましい。

本発明による紫外線遮蔽膜には、紫外線吸収剤、有機ポリマーおよびシランカップリング剤以外の機能性成分を含んでいてもよい。例えば、近赤外線の吸収剤として知られているインジウム錫酸化物(ITO)微粒子は紫外線遮蔽膜への添加が好ましい成分の一つである。

ITO微粒子は、平均粒径が200nm以下、好ましくは5〜150nm、の微粒子として膜に分散させるとよい。紫外線吸収剤の微粒子と同様、粒径が大きすぎると膜の透明性を低下させ、小さすぎると添加による効果が十分得られない。ITO微粒子も予め分散液を調製しておいて、これを膜の形成溶液に添加するとよい。

紫外線遮蔽膜は、無機成分として酸化ケイ素を含む。ただし、紫外線遮蔽膜は、酸化ケイ素以外の無機成分を含んでいてもよい。酸化ケイ素以外の無機成分としては、上記ITO微粒子に加え、ゾルゲル法で用いた酸触媒に由来する成分(例えば、塩素、窒素、硫黄原子)などが挙げられる。紫外線遮蔽膜に含まれる酸化ケイ素は、シリコンアルコキシドなどのシリコン含有化合物(シリコン化合物)として膜の形成溶液に添加される。

紫外線遮蔽膜中の酸化ケイ素は、膜全体の30質量%以上、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上(この場合は酸化ケイ素が膜の主成分となる)、場合によっては70質量%以上、を占めるようにするとよい。紫外線遮蔽膜は、好ましくは、酸化ケイ素を主成分とし、Si−O結合のネットワーク中に紫外線吸収剤の微粒子やその他の成分が分散している形態を有する。このような形態を有する膜は、窓ガラスなどとしての屋外での使用に適している。

<2−3.膜形成溶液3>

膜形成溶液は、有機物及び無機酸化物を含む。有機物は吸水性樹脂を含み、無機酸化物はシリカを含む。膜形成溶液は、紫外線吸収剤及び/又は赤外線吸収剤を含む。以下、各成分について説明する。

(吸水性樹脂) 吸水性樹脂としては特に制限はなく、ポリエチレングリコール、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステルポリオール、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル、エポキシ系樹脂及びポリウレタン樹脂であり、より好ましいのは、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ系樹脂及びポリウレタン樹脂であり、特に好ましいのは、ポリビニルアセタール樹脂である。

ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールにアルデヒドを縮合反応させてアセタール化することにより得ることができる。ポリビニルアルコールのアセタール化は、酸触媒の存在下で水媒体を用いる沈澱法、アルコール等の溶媒を用いる溶解法等公知の方法を用いて実施すればよい。アセタール化は、ポリ酢酸ビニルのケン化と並行して実施することもできる。アセタール化度は、2〜40モル%、さらには3〜30モル%、特に5〜20モル%、場合によっては5〜15モル%が好ましい。アセタール化度は、例えば13C核磁気共鳴スペクトル法に基づいて測定することができる。アセタール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂は、吸水性及び耐水性が良好である膜形成溶液の形成に適している。

ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200〜4500であり、より好ましくは500〜4500である。高い平均重合度は、吸水性及び耐水性が良好である膜形成溶液の形成に有利であるが、平均重合度が高すぎると溶液の粘度が高くなり過ぎて膜の形成に支障をきたすことがある。ポリビニルアルコールのケン化度は、75〜99.8モル%が好ましい。

ポリビニルアルコールに縮合反応させるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルカルバルデヒド、オクチルカルバルデヒド、デシルカルバルデヒド等の脂肪族アルデヒドを挙げることができる。また、ベンズアルデヒド;2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、その他のアルキル基置換ベンズアルデヒド;クロロベンズアルデヒド、その他のハロゲン原子置換ベンズアルデヒド;ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基等のアルキル基を除く官能基により水素原子が置換された置換ベンズアルデヒド;ナフトアルデヒド、アントラアルデヒド等の縮合芳香環アルデヒド等の芳香族アルデヒドを挙げることができる。疎水性が強い芳香族アルデヒドは、低アセタール化度で耐水性に優れた膜形成溶液を形成する上で有利である。芳香族アルデヒドの使用は、水酸基を多く残存させながら吸水性が高い膜を形成する上でも有利である。ポリビニルアセタール樹脂は、芳香族アルデヒド、特にベンズアルデヒドに由来するアセタール構造を含むことが好ましい。

エポキシ系樹脂としては、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、環式脂肪族エポキシ樹脂である。

ポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネートとポリオールとで構成されるポリウレタン樹脂が挙げられる。ポリオールとしては、アクリルポリオール及びポリオキシアルキレン系ポリオールが好ましい。

膜形成溶液は、吸水性樹脂を主成分とする。本発明において、「主成分」とは、質量基準で含有率が最も高い成分を意味する。膜形成溶液の重量に基づく吸水性樹脂の含有率は、膜硬度、吸水性及び防曇性の観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは65重量%以上であり、95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下である。

(無機酸化物) 無機酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、少なくとも、Siの酸化物(シリカ)を含む。膜形成溶液は、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.01重量部以上であり、より好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは1重量部以上、最も好ましくは5重量部以上、場合によっては10重量部以上、必要であれば20重量部以上、また、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、さらに好ましくは40重量部以下、特に好ましくは35重量部以下、最も好ましくは33重量部以下、場合によっては30重量部以下となるように、無機酸化物を含むことが好ましい。無機酸化物は、膜形成溶液の強度、特に耐摩耗性を確保するために必要な成分であるが、その含有量が多くなると、膜形成溶液の防曇性が低下する。

(無機酸化物微粒子) 膜形成溶液は、無機酸化物の少なくとも一部として、無機酸化物微粒子をさらに含んでいてもよい。無機酸化物微粒子を構成する無機酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、好ましくはシリカ微粒子である。シリカ微粒子は、例えば、コロイダルシリカを添加することにより膜形成溶液に導入できる。無機酸化物微粒子は、膜形成溶液に加えられた応力を、膜形成溶液を支持する物品に伝達する作用に優れ、硬度も高い。したがって、無機酸化物微粒子の添加は、膜形成溶液の耐摩耗性を向上させる観点から有利である。また、膜形成溶液に無機酸化物微粒子を添加すると、微粒子が接触又は近接している部位に微細な空隙が形成され、この空隙から膜中に水蒸気が取り込まれやすくなる。このため、無機酸化物微粒子の添加は、防曇性の向上に有利に作用することもある。無機酸化物微粒子は、膜形成溶液を形成するための塗工液に、予め形成した無機酸化物微粒子を添加することにより、膜形成溶液に供給することができる。

無機酸化物微粒子の平均粒径が大きすぎると、膜形成溶液が白濁することがあり、小さすぎると凝集して均一に分散させることが困難となる。この観点から、無機酸化物微粒子の平均粒径は、好ましくは1〜20nmであり、より好ましくは5〜20nmである。なお、ここでは、無機酸化物微粒子の平均粒径を、一次粒子の状態で記述している。また、無機酸化物微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により任意に選択した50個の微粒子の粒径を測定し、その平均値を採用して定めることとする。無機酸化物微粒子は、その含有量が多くなると、膜形成溶液全体の吸水量が低下し、膜形成溶液が白濁するおそれがある。無機酸化物微粒子は、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0〜50重量部であり、より好ましくは2〜30重量部、さらに好ましくは5〜25重量部、特に好ましくは10〜20重量部となるように添加するとよい。

(加水分解性金属化合物) 無機酸化物を膜形成溶液に配合するためには、加水分解性基を有する金属化合物(加水分解性金属化合物)又はその加水分解物を、膜形成溶液を形成するための塗工液に添加するとよい。加水分解性金属化合物としては、以下の式(I)で表される、加水分解性基を有するシリコン化合物が好ましい。無機酸化物に含まれるシリカは、加水分解性基を有するシリコン化合物又はその加水分解物由来のシリカを含むことが好ましい。式(I)で表される加水分解性基を有するシリコン化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、シロキサン結合で結合したシリコン化合物において、そのシリコンの一部に有機金属が直接結合しているものもシリカに含める。

RmSiX4-m (I) 式(I)におけるRは、水素原子が反応性官能基に置換されていてもよい炭素数1〜3の炭化水素基である。炭素数1〜3の炭化水素基としては、炭素数1〜3のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)及び炭素数2〜3のアルケニル基(ビニル基、アリル基、プロペニル基)等が挙げられる。

反応性官能基は、好ましくはオキシグリシジル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種である。反応性官能基を有する加水分解性金属化合物は、有機物である吸水性樹脂と無機酸化物であるシリカとを強固に結合し、膜形成溶液の耐摩耗性、硬度等の向上に寄与し得る。

式(I)におけるXは、加水分解性基又はハロゲン原子である。加水分解性基としては、例えば、アルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。アルコキシル基としては、炭素数1〜4のアルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)等が挙げられる。加水分解性基のうち好ましいのは、アルコキシル基であり、より好ましいのは、炭素数1〜4のアルコキシル基である。ハロゲン原子としては、例えば塩素である。

式(I)におけるmは、0〜2の整数であり、好ましくは0〜1の整数である。

式(I)で表される加水分解性基を有するシリコン化合物の好ましい具体例は、式(I)におけるXがアルコキシル基であるシリコンアルコキシドである。また、シリコンアルコキシドは、式(I)においてm=0の化合物(SiX4)に相当する4官能シリコンアルコキシドを含むことがより好ましい。4官能シリコンアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが挙げられる。シリコンアルコキシドは、単独で用いても2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合には、シリコンアルコキシドの主成分が4官能シリコンアルコキシドであることがより好ましい。

シリコンアルコキシドは、4官能シリコンアルコキシドと、式(I)においてm=1の化合物(RSiX3)に相当する3官能シリコンアルコキシドとを含むことがより好ましい。反応性官能基を有しない3官能シリコンアルコキシドの具体例としては、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。反応性官能基を有する3官能シリコンアルコキシドの具体例としては、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、アミノアルキルトリアルコキシシラン(3−アミノプロピルトリエトキシシラン等)等が挙げられる。

反応性官能基を有するシリコンアルコキシドは、シランカップリング剤と呼ばれることがある。式(I)においてm=2の化合物(R2SiX2)に相当する2官能シリコンアルコキシドも、Rの少なくとも一方が反応性官能基である場合は、シランカップリング剤である。Rの少なくとも一方が反応性官能基を有する2官能シリコンアルコキシドの具体例としては、グリシドキシアルキルアルキルジアルコキシシラン(3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、アミノアルキルアルキルジアルコキシシラン[N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等]等が挙げられる。

紫外線吸収剤又は赤外線吸収剤が有機物である場合は、特に、シリコンアルコキシドは、シランカップリング剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤又は赤外線吸収剤による光遮蔽性(例えば紫外線遮蔽性)が向上するためである。シランカップリング剤によって膜形成溶液の光遮蔽性が向上する理由は、シランカップリング剤の添加によって、有機化合物である光吸収剤がシリカを含む吸水性樹脂中により均一に分散した状態になることにあると考えられる(後述する実施例1と3、又は実施例2と4との対比)。

式(I)で表される加水分解性基を有するシリコン化合物は、加水分解及び重縮合が完全に進行すると、以下の式(II)で表される成分を供給する。

RmSiO(4-m)/2 (II) 式(II)におけるR及びmは、上述したとおりである。加水分解及び重縮合の後、式(II)で表される化合物は、実際には、膜形成溶液中において、シリコン原子と酸素原子とが交互に接続し、かつ三次元的に広がるシロキサン結合(Si−O−Si)のネットワーク構造を形成する。

膜形成溶液中の4官能シリコンアルコキシド又は3官能シリコンアルコキシドに由来するシリカの含有量が多くなると、膜形成溶液の防曇性が低下することがある。これは、膜形成溶液の柔軟性が低下し、水分の吸収及び放出に伴う膜の膨潤及び収縮が制限されることが一因である。4官能シリコンアルコキシドに由来するシリカは、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは3〜10重量部の範囲で添加するとよい。3官能シリコンアルコキシドに由来するシリカは、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0〜30重量部、より好ましくは0.05〜15重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部の範囲で添加するとよい。

紫外線吸収剤及び赤外線吸収剤としては、上述した膜形成溶液1,2と同じでもよい。

(架橋構造) 膜形成溶液は、有機ホウ素化合物、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤に由来する架橋構造を含んでいてもよい。架橋構造の導入は、膜形成溶液の耐摩耗性、耐水性を向上させる。別の観点から述べると、架橋構造の導入は、膜形成溶液の防曇性能を低下させることなくその耐久性を改善することを容易にする。

架橋剤は、用いる吸水性樹脂を架橋できるものであれば、その種類は特に限定されない。ここでは、有機チタン化合物についてのみ例を挙げる。有機チタン化合物は、例えば、チタンアルコキシド、チタンキレート化合物及びチタンアシレートから選ばれる少なくとも1つである。チタンアルコキシドは、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラオクトキシドである。チタンキレ−ト化合物は、例えば、チタンアセチルアセトナート、チタンアセト酢酸エチル、チタンオクチレングリコール、チタントリエタノールアミン、チタンラクテートである。チタンラクテートは、アンモニウム塩(チタンラクテートアンモニウム)であってもよい。チタンアシレートは、例えばチタンステアレートである。好ましい有機チタン化合物は、チタンキレート化合物、特にチタンラクテートである。

吸水性樹脂がポリビニルアセタール樹脂である場合の好ましい架橋剤は、有機チタン化合物、特にチタンラクテートである。

(その他の任意成分) 膜形成溶液には、その他の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、防曇性を改善する機能を有するグリセリン、エチレングリコール等のグリコール類が挙げられる。添加剤は、界面活性剤、界面調整剤、スリップ性付与剤、レベリング剤、消泡剤、防腐剤等であってもよい。

<2−4.塗布工程及び乾燥工程> 膜形成溶液の塗布は、従来から知られている方法、例えば、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、メニスカスコート法、ダイコート法等を用いて実施することができる。

膜形成溶液を塗布する工程では、雰囲気の相対湿度(RH)を40%未満、さらには30%以下に保持することが好ましい。相対湿度を低く保持すると、塗布した膜が雰囲気から水分を過剰に吸収することを防止できる。雰囲気から水分が多量に吸収されると、膜のマトリックス内に入り込んで残存した水が、膜の強度を低下させるおそれがある。

膜形成溶液を塗布した後に透明基体を乾燥させる温度は、130℃以上であり、好ましくは160℃以上であり、より好ましくは170℃以上であり、場合によっては180℃以上であってもよい。また、この乾燥温度は、紫外線吸収剤、有機ポリマー等の分解を避ける観点から、300℃以下、特に250℃以下、場合によっては200℃以下が好ましい。

乾燥工程は、風乾工程と、加熱を伴う加熱乾燥工程とを含むことが好ましい。風乾工程は、相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持した雰囲気に膜形成溶液を曝すことにより、実施するとよい。風乾工程は、非加熱工程として室温で実施できる。加熱乾燥工程では、シリコン化合物A、シリコン化合物Bの加水分解物等に含まれるシラノール基と、透明基体上に存在する水酸基とが関与する脱水反応が進行し、シリコン原子と酸素原子とからなるマトリックス構造(Si−O結合のネットワーク)が発達することにより、ガラス体上に紫外線遮蔽膜が固定される。

<2−5.膜厚> 紫外線遮蔽膜の膜厚は、特には限定されないが、例えば、0.5〜10μmとすることができ、好ましくは1〜5μmとすることができる。紫外線遮蔽膜の膜厚が10μmを超えると、ガラス積層体が黄色くなり、さらに膜にクラックが生じるおそれがある。また、紫外線遮蔽機能を効果的に実現するには、膜厚は均一にすることが好ましく、膜厚分布の均一性が70%以下であることが好ましい。

膜厚分布の均一性とは、紫外線遮蔽膜の周縁から幅20mmの範囲を除いた領域において、膜厚の最大値と最小値との差を、最大値で除した値を百分率で表示した値である。例えば、膜厚の最小値が1.5μm、最大値が4μmであれば、均一性は、(4−1.5)/4*100=62.5%となる。このように、均一性は70%以下であることが好ましい。膜厚は、例えば、膜形成溶液を塗布した後、送風機などでガラス体に向かって送風することで調整できる。

また、紫外線遮蔽膜の膜厚は、紫外線遮蔽膜の周縁から幅20mmの範囲を除いた領域において、例えば、下部側の膜厚が上部側よりも厚くすることができる。これにより、特に、ガラス積層体の下部側に照射される紫外線を遮蔽することができる。なお、このような膜厚分布は、フローコート法により実現することができる。

さらに、紫外線遮蔽膜の膜厚は、紫外線遮蔽膜の周縁から幅20mmの範囲を除いた領域において、例えば、膜厚が最大(0.5〜10μm)となる位置が、この領域の縁部から10cm以上離れた位置とすることができる。なお、膜厚の最大値は、2〜4μmとすることが好ましい。このようにすることで、特に、ガラス積層体の中央付近の紫外線遮蔽機能を向上することができる。

<3.ガラス積層体の光学特性> 次に、ガラス体と紫外線遮蔽膜とを含むガラス積層体全体の光学特性(紫外線透過率)について説明する。

本発明のガラス積層体は、波長が400nmの光の透過率が10%以下であることが好ましく、8%以下であることがさらに好ましい。また、波長が390nmの光の透過率が1.5%未満であることが好ましい。

さらに、本発明のガラス積層体の紫外線透過率は、以下の通りであることが好ましい。 Tuv400≦2.0% (16) Tuv400は上述したとおりである。また、上記式(16)におけるTuv400については、1.0%以下であることがさらに好ましい。

<3−1.可視光透過率1> 本発明に係るガラス積層体においては、波長が420nmの光の透過率が、20%以上であることが好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。これは、上記のように紫外線の透過率を低くする一方、紫外線域を超えると、可視光域の光の透過率を急激に高くするためである。すなわち、ガラス板において視野を妨げるような着色等が少なくするためである。その一方で、波長が420nmの光の透過率は、85%以下であることが好ましい。これは、車内にいる人間への影響や、車内の内装の劣化防止のためである。

<3−2.可視光透過率2> 本発明のガラス積層体は、波長450〜800nmの光に対する透過率の平均をTavgとしたとき、ガラス積層体の透過率がTavg*0.9である波長W1と、ガラス板の透過率がTavg*0.1である波長W2との差(以下、シャープカットという)が22nm以下であることが好ましい。これは、上記のように、ガラス板において説明したとおりである。

<3−3.近赤外線透過率> 本発明のガラス積層体は、波長が1500nmの光の透過率が35%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、25%以下であることが特に好ましい。

波長が1500nmの光は、近赤外線領域、特に日射光の近赤外線領域の光を示している。このような光の透過率が上記のように35%以下であれば、日射光の近赤外線を適度に遮蔽し、自動車の窓ガラスとして、このガラス積層体が用いられると、車内の温度が高くなりすぎるのを和らげることができる。

<3−4.黄色度> 本発明のガラス積層体は、CIE標準のC光源における透過光に基づく、JIS K7373:2006で規定された黄色度YIについて、以下の式(17)を充足することが好ましい。 YI≦10 (17) 但し、YI≦5であることがさらに好ましい。これに対して、ガラス体の黄色度が大きいと、ガラス積層体の黄色度も大きくなり、車内にいる者が車外を見ていてイライラするなど、心理的な不快感を感じるおそれがある。

<3−5.ブルーライトカット効果> 本発明のガラス積層体においては、JIS T7330:2000の付属書Aの青色光障害関数に関する実効放射強度が、ガラス積層体を通過する際の実効放射強度の低減率として算出されるブルーライトカット率が35%以上であることが好ましい。

より詳細には、以下の通りである。ここでいうブルーライトカット率とは、太陽光の青色光による網膜損傷に関する実効放射強度(以下、太陽光の実効放射強度)に対する、ガラス積層体を透過させることにより減少した当該実効放射強度の比、を百分率で表示した値として定義する。具体的には、以下の方法で求める。

JIS T7330:2000の付属書Aの青色光障害関数に関する重み関数を用いる。この重み関数について波長380〜550nmまでの和を算出し、太陽光の実効放射強度を求める。次に、上記波長域の各波長におけるガラス積層体の分光透過率と重み関数の積の和を算出し、当該ガラス積層体を透過した光の当該実効放射強度(以下、透過光の実効放射強度)を求める。そして、透過光の実効放射強度の、太陽光の実効放射強度に対する比を算出し、その値を1から減算し、百分率に換算する。こうして算出された百分率をガラス積層体のブルーライトカット率とした。

このブルーライトカット率が高いと、ガラス積層体を通して外部を見たときに、ギラギラせず、まぶしくなるのを防止することができる。なお、上述した黄色度が高いと、ブルーライトカット率も大きくなる。

<4.ガラス積層体の耐久性能> 本発明のガラス積層体の耐久性能として、以下の耐摩耗性と耐光性(耐紫外線特性)を有することが好ましい。

<4−1.耐摩耗性> 本発明のガラス積層体の耐摩耗性として、JIS R3221に準拠した摩耗試験により評価することができる。すなわち、テーバー摩耗試験機(例えば、TABER INDUSTRIES社製5050 ABRA)により、紫外線遮蔽膜の表面に、500g荷重で1000回摩耗を行ったときに、紫外線遮蔽膜がガラス体から剥離せず、且つこの摩耗試験後のヘイズ率が5%以下であることが好ましい。なお、ヘイズ率の測定には、例えば、スガ試験機社製HZ−1Sを用いることができる。

<4−2.耐光性(耐紫外線特性)> 耐光性(耐紫外線特性)は、次のような試験により評価できる。すなわち、岩崎電気社製の紫外線照射装置(EYE SUPER UV TESTER SUV−W13)を用い、波長295〜450nm、照度76mW/cm2、ブラックパネル温度83℃、湿度50%RHの条件を適用し、100時間、紫外線を、ガラス積層体の紫外線遮蔽膜が形成されていない面に照射した。そして、照射前後のガラス積層体のTuv400の差が2%以下であることが好ましい。

<5.特徴> 本発明によれば、ガラス体及び紫外線遮蔽膜の両方に、紫外線遮蔽機能をもたせることで、ガラス積層体全体として、紫外線遮蔽機能を高めることができる。特に、本発明では、ガラス体のTuv400が50%以下であることから、ガラス積層体全体における波長400nmでの光の透過率を10%以下であり、且つTuv400を2.0%以下としている。したがって、紫外線域の上限付近の紫外線をも確実に遮蔽することができる。

<6.変形例> 以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。そして、以下に示す複数の変形例は適宜組合わせることが可能である。

<6−1> 上記実施形態では、膜形成溶液をガラス体に塗布することで、紫外線遮蔽膜を形成しているが、次のようにすることもできる。例えば、膜形成溶液を基材シートに塗布などして紫外線遮蔽膜を形成する。そして、その基材シートの反対面に粘着剤を塗布し、これをガラス体の表面に貼り付けることもできる。

具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの透明の樹脂製のシート材に上述した膜形成溶液を塗布し、紫外線遮蔽膜を形成する。そして、このシート材を例えば、アクリル系、シリコーン系の接着剤によりガラス体の表面に貼り付ける。これによっても、本発明のガラス積層体を形成することができる。

<6−2> 紫外線遮蔽膜は、ガラス体の全面に塗布しなくてもよく、必要な一部に塗布することもできる。例えば、サイドガラスとして用いられる昇降ガラスでは、上辺及び側辺に沿う部分の少なくとも一方に、紫外線遮蔽膜が形成されない部分を設けることができる。この部分は、例えば、ガラスランなどに収納される部分であるためである。

<6−3> 紫外線遮蔽膜には、防曇性能を持たせることもできる。これにより、紫外線遮蔽機能とともに、防曇性能を持たせることができる。したがって、雨天などの窓ガラスが曇りやすい状況下でも、結露などを防止することができ、窓ガラスを通した視界を確保することができる。

このような防曇性能は、紫外線遮蔽膜に吸水性能を持たせることで実現できる。これにより、水蒸気や水分を、吸収することができる。具体的には、例えば、紫外線遮蔽膜に吸水性樹脂を含有させることができる。吸水性樹脂としては特に制限はなく、ポリエチレングリコール、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステルポリオール、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル、エポキシ系樹脂及びポリウレタン樹脂であり、より好ましいのは、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ系樹脂及びポリウレタン樹脂であり、特に好ましいのは、ポリビニルアセタール樹脂である。

紫外線遮蔽膜の重量に基づく吸水性樹脂の含有率は、膜硬度、吸水性及び防曇性の観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは65重量%以上であり、95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下である。

また、紫外線遮蔽膜の表面を親水処理した親水性とすることができる。これにより、紫外線遮蔽膜の表面で凝結して生じた水が、膜表面を覆う連続した膜状になり、視界が妨げられるのを防止することができる。

<6−4> 紫外線遮蔽膜に、視認性確保性能を持たせることができる。視認性確保性能とは、結露により膜表面に水滴が生じた状態で、ガラス積層体のヘイズ率が低いことをいう。すなわち、結露が生じても白濁が小さいことをいう。この場合、結露によって生じる水滴が大きければ、白濁が小さくヘイズ率は小さくなる。一方、水滴が大きければ、ヘイズ率は大きくなる。

また、このような視認性確保性能を有する膜の表面は、疎水性にすることが好ましい。これにより、膜表面で凝結して生じた水による水滴によって、ガラス体が覆われる面積が小さくなるため、ヘイズ率を小さくすることができる。

視認性確保性能を持たせる手段の一つは、紫外線遮蔽膜がさらに撥水基を含むことである。好ましい撥水基は、炭素数3〜30の鎖状または環状のアルキル基、及び水素原子の一部をフッ素に置換した炭素数1〜30の鎖状または環状のアルキル基、特に好ましくは、炭素数4〜8の直鎖アルキル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ペプチル基、n−オクチル基である。例えば、膜形成溶液に撥水基と加水分解可能な官能基またはハロゲン原子を有する化合物を含有させ、その液をガラス体(または基材シート)に塗布することで、紫外線膜に撥水基を含ませることができる。

ガラス積層体に、視認性確保性能を持たせる別の手段は、例えば、紫外線遮蔽膜上にさらに視認性確保膜を形成することである。あるいは、この視認性確保膜は、ガラス体において紫外線遮蔽膜が形成されている面とは反対側に積層することもできる。例えば、ガラス体が合わせガラスである場合には、いずれかのガラス板において、紫外線遮蔽膜が積層されている面とは反対側に視認性確保膜を形成することができる。

視認性確保膜の具体例は、以下の通りである。視認性確保膜は、撥水基と金属酸化物成分とを含んでいる。視認性確保膜は、必要に応じ、その他の機能成分をさらに含んでいてもよく、例えば、樹脂をさらに含んでいてもよい。樹脂は、膜に柔軟性を与え、疎水性の均一性の向上に寄与する。ただし、樹脂は、その含有率が高すぎると、膜の強度を低下させることがある。したがって、視認性確保膜は、樹脂を含んでいないほうがよい場合がある。視認性確保膜は、特に、窓ガラスの開閉に伴って他の部材と摺動しうるガラス板の表面に形成する場合には樹脂を含まないことが好ましい。他の部材と摺動する代表的な窓ガラスとしては車両のドアガラスが挙げられる。

(撥水基) 撥水基は、視認性確保膜の表面を疎水性として、その表面を水蒸気が凝結しにくい表面とする。これに止まらず、撥水基は、その種類によっては、視認性確保膜の表面に水滴が形成されたとしても入射する光の直進性を確保することに貢献する。光の直進性の確保に適した撥水基は、炭素数が3〜9、好ましくは4〜8、特に5〜8、とりわけ5〜7の直鎖アルキル基である。

膜の表面に同量の水蒸気が凝結して形成された水滴が膜を覆う面積は、その表面の水の接触角が大きいほど小さくなる傾向を有する。水滴により覆われる面積が小さいほど、膜に入射する光が散乱する程度は小さくなる。撥水基の存在により水の接触角が大きくなった視認性確保膜は、その表面に水滴が形成されにくく、かつ水滴が形成された状態においても水滴により覆われる面積が相対的に小さいため、透過光の直進性を保持するうえで有利である。

しかし、透過光の直進性には、水の接触角で示される疎水性の強さと共に、疎水性の均一性も影響を及ぼす。膜の表面の疎水性が均一でなく、親水性のスポットが散在する表面では、親水性のスポットに吸着した水蒸気を起点として水滴が形成されることになるためである。したがって、膜の表面が均一な疎水性となるように、撥水基は膜表面に配向して存在していることが好ましい。同一方向に配列した配向性が高い状態で膜表面に存在することに適した撥水基は、炭素数が一定以上の直鎖アルキル基である。しかし、炭素数が多すぎる長い直鎖アルキル基は、直鎖アルキル基が途中で屈曲しやすいために高い配向性を実現しにくい。

パーフルオロアルキル基を用いれば、より強い疎水性を実現できる。しかし、パーフルオロアルキル基は、特に炭素数が多い場合には結晶性が顕著に増大する剛直な官能基であるために、膜表面では多結晶的に配向して存在する傾向がある。このため、疎水性が局所的に低い部分が膜表面に生じやすい。疎水性の均一性を確保する観点からは、パーフルオロアルキル基よりも上述した炭素数を有する直鎖アルキル基が適している。

(撥水基を有する加水分解性金属化合物) 撥水基を視認性確保膜に配合するためには、撥水基を有する金属化合物(撥水基含有金属化合物)、特に撥水基と加水分解可能な官能基又はハロゲン原子とを有する金属化合物(撥水基含有加水分解性金属化合物)又はその加水分解物を、膜を形成するための塗工液に添加するとよい。言い換えると、撥水基は、撥水基含有加水分解性金属化合物に由来するものであってもよい。撥水基含有加水分解性金属化合物としては、以下の式(I)に示す撥水基含有加水分解性シリコン化合物が好適である。 RmSiY4-m (I) ここで、Rは、撥水基、具体的には炭素数が3〜9の直鎖アルキル基であり、Yは加水分解可能な官能基又はハロゲン原子であり、mは1〜3の整数である。加水分解可能な官能基は、例えば、アルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくはアルコキシ基、特に炭素数1〜4のアルコキシ基である。アルケニルオキシ基は、例えばイソプロペノキシ基である。ハロゲン原子は、好ましくは塩素である。なお、ここに例示した官能基は、以降に述べる「加水分解可能な官能基」としても使用することができる。mは好ましくは1又は2である。

式(I)により示される化合物は、加水分解及び重縮合が完全に進行すると、以下の式(II)により表示される成分を供給する。 RmSiO(4-m)/2 (II) ここで、R及びmは、上述したとおりである。加水分解及び重縮合の後、式(II)により示される化合物は、実際には、視認性確保膜中において、シリコン原子が酸素原子を介して互いに結合したネットワーク構造を形成する。

このように、式(I)により示される化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらには少なくとも一部が重縮合して、シリコン原子と酸素原子とが交互に接続し、かつ三次元的に広がるシロキサン結合(Si−O−Si)のネットワーク構造を形成する。このネットワーク構造に含まれるシリコン原子には撥水基Rが接続している。言い換えると、撥水基Rは、結合R−Siを介してシロキサン結合のネットワーク構造に固定される。この構造は、撥水基Rを膜に均一に分散させる上で有利である。ネットワーク構造は、式(I)により示される撥水基含有加水分解性シリコン化合物以外のシリコン化合物(例えば、テトラアルコキシシラン、シランカップリング剤)から供給されるシリカ成分を含んでいてもよい。撥水基を有さず加水分解可能な官能基又はハロゲン原子を有するシリコン化合物(撥水基非含有加水分解性シリコン化合物)を撥水基含有加水分解性シリコン化合物と共に視認性確保膜を形成するための塗工液に配合すると、撥水基と結合したシリコン原子と撥水基と結合していないシリコン原子とを含むシロキサン結合のネットワーク構造を形成できる。このような構造とすれば、視認性確保膜中における撥水基の含有率と金属酸化物成分の含有率とを互いに独立して調整することが容易になる。

撥水基含有加水分解性シリコン化合物(式(I)参照)を用いて撥水基を視認性確保膜に導入すると、強固なシロキサン結合(Si−O−Si)のネットワーク構造が形成される。このネットワーク構造の形成は、耐摩耗性のみならず、硬度、耐水性等を向上させる観点からも有利である。

撥水基は、視認性確保膜の表面における水の接触角が85度以上、好ましくは90度以上、より好ましくは95度以上になる程度に添加するとよい。水の接触角は、4mgの水滴を膜の表面に滴下して測定した値を採用することとする。水の接触角は、その上限が特に制限されるわけではないが、例えば105度以下、さらには103度以下である。撥水基は、視認性確保膜の表面のすべての領域において上記水の接触角が上記の範囲となるように、視認性確保膜に均一に含有させることが好ましい。

視認性確保膜は、金属酸化物成分100質量部に対し、1質量部以上、好ましくは3質量部以上、より好ましくは4質量部以上の範囲内となるように、また、50質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、場合によっては15質量部以下、の範囲内となるように、撥水基を含むことが好ましい。

(金属酸化物成分) 視認性確保膜は、金属酸化物成分を含んでいる。金属酸化物成分は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物成分であり、好ましくはSiの酸化物成分(シリカ成分)である。

金属酸化物成分の少なくとも一部は、視認性確保膜を形成するための塗工液に添加された、加水分解性金属化合物又その加水分解物に由来する金属酸化物成分であってもよい。ここで、加水分解性金属化合物は、a)撥水基と加水分解可能な官能基又はハロゲン原子とを有する金属化合物(撥水基含有加水分解性金属化合物)及びb)撥水基を有さず加水分解可能な官能基又はハロゲン原子を有する金属化合物(撥水基非含有加水分解性金属化合物)から選ばれる少なくとも1つである。a)及び/又はb)に由来する金属酸化物成分は、加水分解性金属化合物を構成する金属原子の酸化物である。金属酸化物成分は、視認性確保膜を形成するための塗工液に添加された金属酸化物微粒子に由来する金属酸化物成分と、その塗工液に添加された、加水分解性金属化合物又その加水分解物に由来する金属酸化物成分とを含んでいてもよい。ここでも、加水分解性金属化合物は、上記a)及びb)から選ばれる少なくとも1つである。上記b)、すなわち撥水基を有しない加水分解性金属化合物は、テトラアルコキシシラン及びシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。以下、既に説明した上記a)を除き、金属酸化物微粒子と上記b)とについて説明する。

(金属酸化物微粒子) 視認性確保膜は、金属酸化物成分の少なくとも一部として金属酸化物微粒子をさらに含んでいてもよい。金属酸化物微粒子を構成する金属酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、好ましくはシリカ微粒子である。シリカ微粒子は、例えば、コロイダルシリカを添加することにより膜に導入できる。金属酸化物微粒子は、視認性確保膜に加えられた応力を膜を支持する透明物品(ガラス積層体)に伝達する作用に優れ、硬度も高い。したがって、金属酸化物微粒子の添加は、視認性確保膜の耐摩耗性及び耐擦傷性を向上させる観点から有利である。金属酸化物微粒子は、視認性確保膜を形成するための塗工液に予め形成した金属酸化物微粒子を添加することにより、視認性確保膜に供給することができる。ただし、金属酸化物微粒子は、膜の表面に親水性のスポットを形成する要因になり得るため、耐摩耗性等を改善するべき事情がない限り、膜に添加しないことが望ましい。すなわち、視認性確保膜は、耐摩耗性等を特に重視するべき事情がない限り、金属酸化物微粒子を含まない形態で用いることが好ましい。

金属酸化物微粒子の平均粒径は、大きすぎると膜が白濁することがあり、小さすぎると凝集して均一に分散させることが困難となる。この観点から、金属酸化物微粒子の好ましい平均粒径は、1〜20nm、特に5〜20nmである。なお、ここでは、金属酸化物微粒子の平均粒径を、一次粒子の状態で記述している。また、金属酸化物微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により任意に選択した50個の微粒子の粒径を測定し、その平均値を採用して定めることとする。金属酸化物微粒子は、その含有量が過大となると、膜が白濁するおそれがある。

(撥水基を有しない加水分解性金属化合物) 視認性確保膜は、撥水基を有しない加水分解性金属化合物(撥水基非含有加水分解性化合物)に由来する金属酸化物成分を含んでいてもよい。好ましい撥水基非含有加水分解性金属化合物は、撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物である。撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、例えば、シリコンアルコキシド、クロロシラン、アセトキシシラン、アルケニルオキシシラン及びアミノシランから選ばれる少なくとも1種のシリコン化合物(ただし、撥水基を有しない)であり、撥水基を有しないシリコンアルコキシドが好ましい。なお、アルケニルオキシシランとしては、イソプロペノキシシランを例示できる。

撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、以下の式(III)に示す化合物であってもよい。 SiY4 (III) 上述したとおり、Yは、加水分解可能な官能基であって、好ましくはアルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1つである。

撥水基非含有加水分解性金属化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらに、少なくともその一部が重縮合して、金属原子と酸素原子とが結合した金属酸化物成分を供給する。この成分は、金属酸化物微粒子と樹脂とを強固に接合し、視認性確保膜の耐摩耗性、硬度、耐水性等の向上に寄与しうる。

撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物の好ましい一例は、テトラアルコキシシラン、より具体的には炭素数が1〜4のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランである。テトラアルコキシシランは、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン及びテトラ−tert−ブトキシシランから選ばれる少なくとも1種である。

テトラアルコキシシランに由来する金属酸化物(シリカ)成分の含有量が過大となると、視認性確保膜の疎水性が低下することがある。

(樹脂) 視認性確保膜において樹脂は任意の成分であるが、添加する場合は、膜の耐摩耗性等が低下しないように、金属酸化物成分100質量部に対し、0質量部を超え50質量部以下の範囲で添加することが好ましい。樹脂の好ましい配合量は、金属酸化物成分100質量部に対し、例えば1質量部以上、さらに5質量部以上、特に10質量部以上であり、40質量部以下、さらに35質量部以下、特に30質量部以下である。樹脂の多量の添加は、膜の表面に親水性のスポットが形成される要因となるため、避けることが望ましい。樹脂の種類は特に限定されないが、親水性のスポットの形成を防ぐために、吸水性が高い樹脂は避けることが好ましい。例えば、樹脂としてポリビニルブチラール樹脂を用いる場合、そのブチラール化度(アセタール化度)は、50モル%以上、特に55モル%以上、さらには60モル%以上が好ましい。ブチラール化度の上限は、特に制限されないが、85モル%以下であってもよい。

(その他の任意成分) 視認性確保膜にはその他の添加剤を配合してもよい。添加剤は、グリコール類、界面活性剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、防腐剤等であってもよい。

(膜厚) 視認性確保膜の好ましい膜厚は、3〜70nm、好ましくは5〜50nm、より好ましくは7〜45m、特に10〜40nmである。

(成膜) 視認性確保膜は、塗工液を透明基板等のガラス積層体上に塗布し、塗布した塗工液を乾燥させることにより、成膜することができる。途工液の乾燥は加熱を伴ってもよい。塗工液の調製に用いる溶媒、塗工液の塗布方法は、従来から公知の材料及び方法を用いればよい。

塗工液の塗布工程では、雰囲気の相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持することが好ましい。相対湿度を低く保持すると、膜が雰囲気から水分を過剰に吸収することを防止できる。雰囲気から水分が多量に吸収されると、膜のマトリックス内に入り込んで残存した水が膜の強度を低下させるおそれがある。

塗工液の乾燥工程は、風乾工程と、加熱を伴う加熱乾燥工程とを含むことが好ましい。風乾工程は、相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持した雰囲気に塗工液を曝すことにより、実施するとよい。風乾工程は、非加熱工程として、言い換えると室温で実施できる。塗工液に加水分解性シリコン化合物が含まれている場合、加熱乾燥工程では、シリコン化合物の加水分解物等に含まれるシラノール基及びガラス積層体上に存在する水酸基が関与する脱水反応が進行し、シリコン原子と酸素原子とからなるマトリックス構造(Si−O結合のネットワーク)が発達する。

加熱乾燥工程における適切な加熱温度は、300℃以下、例えば100〜200℃であり、加熱時間は、1分〜1時間である。

ガラス積層体は、さらに低反射膜を備えることもできる。低反射膜は、紫外線遮蔽膜上に形成することもできるし、ガラス体において、紫外線遮蔽膜が形成されている面とは反対の面に形成することができる。また、ガラス体が合わせガラスの場合には、いずれかのガラス板における紫外線遮蔽膜が形成された面とは反対側の面に、低反射膜を形成することができる。低反射膜の具体例は以下の通りである。以下では、主としてガラス体上に低反射膜を形成する例を説明しているが、紫外線遮蔽膜上に形成する場合も概ね同じである。

例えば、低反射膜はシリカ微粒子とバインダーを重量比で60:40〜95:5の割合でそれぞれ含有している。そして、この低反射膜は、(1)平均粒径が40〜1000nmの非凝集シリカ微粒子および平均一次粒径が10〜100nmの鎖状凝集シリカ微粒子の少なくとも一方からなる原料微粒子、(2)加水分解可能な金属化合物、(3)水、および(4)溶媒を混合し、そして加水分解可能な金属化合物を前記原料微粒子の存在下で加水分解して調製されたコーティング液を、ガラス体や紫外線遮蔽膜に被覆し、加熱処理することにより形成されたものである。

ここで用いられるシリカ微粒子はいかなる製法で作られたものでも良く、ゾルゲル法によりシリコンアルコキシドをアンモニア等の塩基性触媒下で反応させて合成されたシリカ微粒子や、珪酸ソーダなどを原料としたコロイダルシリカ、気相で合成されるヒュームドシリカなどが例示される。シリカ微粒子の粒径により、得られる低反射膜の構造は大きく変化する。シリカ微粒子の粒径が小さ過ぎると、低反射膜内の粒子間に生成する空孔の大きさが小さくなって毛管力が増し、付着した汚れが取れにくくなったり、空気中の水分や有機物が徐々に前記空孔に入り込むため反射率が経時的に上昇する。またシリカ微粒子同士およびシリカ微粒子とガラス体との接着に用いられるバインダーの量は後述のようにその上限が定められいるので、シリカ微粒子の粒径が小さ過ぎると、微粒子の表面積が相対的に大きくなり、その表面と反応するバインダー量が不足することになり、結果として膜の密着力が弱くなる。また、シリカ微粒子径(一次粒径)が小さ過ぎると、形成される膜表面の凹凸粗さの値または膜内部空隙率(シリカ微粒子の間の空間でバインダーが埋められていない空間の、膜体積に対する割合)は小さくなり見かけの屈折率は上昇する。従って、(1)低反射膜の汚れが取れやすくするために、(2)膜強度を高めるために、そして(3)見かけの屈折率を、低反射膜が被覆されるガラス体の屈折率(約1.5)の平方根値(約1.22)に近くなるように、下げるために、シリカ微粒子(屈折率約1.45)の一次粒径の平均値が40nm以上であることが望ましく、50nm以上であることがより好ましい。またシリカ微粒子の粒径が大きすぎると、光の散乱が激しくなり、またガラス体との密着性も弱くなる。透視性が要求される用途、すなわち、ヘイズ率が低いこと、例えば1%以下のヘイズ率、が望まれる用途、例えば車両、建築の窓では、シリカ微粒子の平均粒径は500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。最も好ましいシリカ微粒子の平均粒径は、50〜200nmであり、さらには70〜160nmが最も良い。

原料微粒子としてのシリカ微粒子の平均粒径は、1万倍〜5万倍の透過電子顕微鏡により、その平面的視野の中で実際に一次粒子(凝集して鎖状二次粒子を形成している場合は個々の一次粒子)の直径(長径および短径の平均値)を実測し、下記数式(1)による微粒子個数(n=100)の数平均した値dとして定義する。従ってこの測定値は、コロイダルシリカなどで表示されているBET法による粒子径とは異なる。シリカ微粒子の真球度は各微粒子の長軸長さと短軸長さの比を100個平均した値で表す。また、微粒子の粒度分布を表す、微粒子粒径の標準偏差は上記直径から下記の数式(2)および(3)により求める。なお各式においてn=100である。

シリカ微粒子の真球度が1.0〜1.2であれば、微粒子の充填度を高めた低反射膜が形成されて膜の機械的強度が高くなるので好ましい。より好ましい真球度は1.0〜1.1である。また、粒径の揃ったシリカ微粒子を使用した方が、微粒子間の空隙を大きくすることができるので、膜の見かけの屈折率が下がり、反射率を低くできる。従ってシリカ微粒子の粒度分布を表すその粒径の標準偏差は1.0〜1.5であることが好ましく、より好ましくは1.0〜1.3、さらに好ましくは1.0〜1.1である。

平均粒径が40〜1000nmの非凝集シリカ微粒子としては、市販品、例えば日産化学製の「スノーテックスOL」、「スノーテックスYL」、「スノーテックスZL」や日本触媒製の「シーホスターKE−W10」、「シーホスターKE−W20」、「シーホスターKE−W30」「シーホスターKE−W50」、「シーホスターKE−E70」、「シーホスターKE−E90」などが好適である。シリカ微粒子は、溶媒に分散させたシリカ微粒子分散液が取り扱いやすく好適である。分散媒としては、水、アルコール類、セロソルブ類、グリコール類などがあり、これら分散媒に分散させたシリカ微粒子分散液が市販されている。また、シリカ微粒子粉末をこれら分散媒に分散させて使用しても良い。

微粒子が複数個凝集して凝集微粒子(二次微粒子)を形成する場合、その凝集微粒子を構成する個々の微粒子(一次微粒子)の平均粒径を平均一次粒径と定義する。 微粒子が枝分かれしない鎖状または枝分かれした鎖状に凝集した微粒子の集合体(鎖状凝集微粒子)であれば、膜形成時に各微粒子がその凝集状態を維持したまま固定されるので膜がかさ高くなり、形成される膜表面の凹凸粗さの値および膜内部空隙率は、その鎖状凝集微粒子の平均一次粒径と同一の平均粒径を有する非凝集シリカ微粒子の場合に比して、大きくなる。従って鎖状凝集シリカ微粒子としては、40nm未満の平均一次粒径を有するものであってもよく、10〜100nmの平均一次粒径dを有する鎖状凝集シリカ微粒子が使用される。そして鎖状凝集シリカ微粒子は60〜500nmの平均長さ(L)、および3〜20の平均一次粒径に対する平均長さの比(L/d)を有することが好ましい。この鎖状凝集シリカ微粒子の例としては、日産化学社製の「スノーテックスOUP」、「スノーテックスUP」がある。

低反射膜を形成するためのコーティング液の調製は、シリカ微粒子の存在下で加水分解可能な金属化合物の加水分解を行うことによりなされ、それにより得られる膜の機械的強度が格段に向上する。シリカ微粒子の存在下で前記金属化合物を加水分解する本発明の場合には、加水分解により生じた生成物と微粒子表面に存在するシラノールとの縮合反応が加水分解とほぼ同時に起こり、従って(1)微粒子の表面の反応性がバインダー成分との縮合反応により向上し、(2)さらにその縮合反応が進むことによりシリカ微粒子表面がバインダーで被覆されていくので、バインダーがシリカ微粒子とガラス体との接着性向上に有効に利用される。他方、微粒子が存在しない状態で前記金属化合物の加水分解を行うと、加水分解生成物同士での縮合反応によりバインダー成分は高分子化する。この高分子化したバインダー成分とシリカ微粒子を混合してコーティング液の調製を行った場合には、(1)バインダー成分とシリカ微粒子間の縮合反応はほとんど生じないので、微粒子表面の反応性は乏しく、そして(2)シリカ微粒子表面がほとんどバインダーで被覆されていない。従って、ガラスとシリカ微粒子との接着性を前者と同様に高めようとすると、より多くのバインダー成分を必要とする。

ここで用いるバインダーは、例えば、金属酸化物からなり、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物およびタンタル酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が好ましく用いられる。低反射膜を形成するシリカ微粒子とバインダーの重量比は60:40〜95:5の範囲である。バインダーの量がこの範囲よりも多いと、微粒子がバインダーに埋まり、微粒子による凹凸粗さ値または膜内の空隙率が小さくなるので反射防止効果が小さくなる。また、バインダー量がこれよりも少ないと、微粒子とガラス体間及び微粒子間の密着力が低下し、膜の機械的強度が弱くなる。反射率と膜強度とのバランスを考えれば、シリカ微粒子とバインダーの重量比は、より好ましくは65:35〜85:15である。バインダーはシリカ微粒子の全表面に被覆されていることが好ましく、その被覆厚みは1〜100nmでかつ前記シリカ微粒子の平均粒径の2〜9%であることが好ましい。

バインダー原料となる加水分解可能な金属化合物としては、Si、Al、Ti、Zr、Taの金属アルコキシドが膜の強度や化学的安定性などから好適である。これらの金属アルコキシドの中で、シリコンテトラアルコキシド、アルミニウムトリアルコキシド、チタンテトラアルコキシドおよびジルコニウムテトラアルコキシド、特にメトキシド、エトキシド、プロポキシドおよびブトキシドが好ましく用いられる。特にバインダー成分の含有量を多くした膜では、バインダー成分の屈折率が反射率に影響を与えることになるので、屈折率の小さいシリコンアルコキシド、特にシリコンテトラアルコキシドまたはそのオリゴマーが最も好適である。また、バインダー成分はこれら金属アルコキシドの中から複数混合したものを使用しても構わない。金属アルコキシド以外でも、加水分解によりM(OH)nの反応生成物が得られれば限定されず、例えば、金属のハロゲン化物や、イソシアネート基、アシルオキシ基、アミノキシ基などを有する金属化合物が例示される。また、例えば、シリコンアルコキシドの一種であるR1nM(OR2)4-nで表される化合物(Mはケイ素原子、R1はアルキル基、アミノ基、エポキシ基、フェニル基、メタクリロキシ基など有機官能基、R2 は例えばアルキル基、nは1〜3の整数)もバインダー原料として使用できる。上記のR1nM(OR2)4-nで表される化合物を用いると、コーティング後のゲル膜に有機残基が残るので、バインダー原料全てにこれを使用すれば、熱処理後、有機残基部がナノメートル程度の微細孔となり、この微細孔径が小さいことで毛管力が増し、付着した汚れが除去しにくくなったり、汚れや水などが微細孔に入り込み反射率の経時変化を引き起こすなど問題が生じ、また膜強度も弱くなるので、前記R1nM(OR2)4-nで表される化合物は、多量に使用しない方が好ましく、例えば金属酸化物に換算して、バインダー総量に対して50重量%以内に制限される。

低反射膜が被覆されたガラス積層体のヘイズ率は、ガラス体のヘイズ率と低反射膜のヘイズ率を総合したものとなるが、本発明におけるガラス体としては、ヘイズ率ができるだけ小さな、例えばヘイズ率が0.1%以下のガラス体を用いることができる。従って本発明のガラス積層体のヘイズ率は低反射膜のヘイズ率とほぼ等しい。低反射膜のヘイズ率は、用途によって異なる最適な範囲に調整することが好ましい。例えば、自動車用窓では、安全性の点からヘイズ率は低いものが好ましく、低反射ガラス積層体のヘイズ率としては1%以下、より好ましくは0.5%以下である。

低反射膜の構造としては、表面にバインダーが被覆されたシリカ微粒子(以下単に微粒子ということがある)がガラス体の表面をほぼ全て覆うような形状を有していることが膜の反射率を低減させるのに最も良い。全く同じ粒径の微粒子を最密充填してガラス体上に一層敷き詰めた場合、その微粒子の上部からみた占有面積は理論的には約90%である。微粒子を一層のみ形成させた低反射膜では、その占有面積は、50%以上、より好ましくは70%以上であることが低反射性能を得るのに好ましい。この占有面積が50%未満ではガラス体表面が露出していることによりそのガラスと空気の屈折率差による反射が強く出てくるので、反射の低減ができない。微粒子がガラス上面に一層のみ配列した低反射膜の構造でもよく、多段に微粒子が積層した構造でも良い。1層でも、多段に積層したものでも、微粒子径に応じた空孔が、ガラス体と微粒子との間隙または微粒子同士の間の隙間に形成され、この空孔が見かけ上の屈折率を低減させるのに有効となる。膜の真上から膜を電子顕微鏡で観察して、膜の最表面に平面的に並んでいる微粒子、及び、最表面の微粒子より下側に位置し、最表面の微粒子の隙間から僅かでも観察できる微粒子の総数は、原料微粒子として40〜500nmの平均粒径を有する非凝集シリカ微粒子を使用した場合、1μm×1μmの正方形の面積中に30〜3000個でありこれらの微粒子は40〜500nmの平均粒径を有することが好ましい。上記総数はより好ましくは100個以上1000個以下である。また、原料微粒子として100〜1000nmの平均粒径を有する非凝集シリカ微粒子を使用した場合、前記微粒子の総数は、10μm×10μmの正方形の面積の中に10〜50000個であり、これらの微粒子は100〜1000nmの平均粒径を有することが好ましい。上記総数はより好ましくは20個以上25000個以下である。この微粒子密度は微粒子の大きさに依存し、微粒子径が大きければ数は小さくなり、微粒子径が小さければ数は多くなる。微粒子が単独にガラス板上に担持されるよりも、微粒子が密に存在し互いにバインダーを介して接触し結合した構造が膜強度を高める点からも望ましい。例えば、微粒子の平均粒径がDnmである場合、10μm×10μmの正方形の膜に真上から電子顕微鏡で観察される微粒子の数は5,000,000/D2〜10,000,000/D2個が好ましい。

本発明の低反射膜の平均厚みについて以下に定義する。電子顕微鏡にて、5万倍に拡大して膜の横断面を観察した写真を用意する。電子顕微鏡写真の10cm(実質2μm)の長さを任意に取り、膜の最も大きい凸部から順に12カ所選び、最も大きい方から数えて3番目から12番目までの10カ所の凸部のガラス体表面からの高さの平均値を平均厚みとする。もし、使用する微粒子径が大きいかまたは微粒子がまばらに存在するために12カ所の凸部を選べないときは、電子顕微鏡の倍率を5万倍より順次小さくして、12カ所の凸部を選べるようにして上記方法で平均厚みを求める。この平均厚みが90nm以上180nm以下の範囲である膜が、最も可視光領域の反射率を低減する。光学厚み(n・d)で定義される物理厚みdの値は、この平均厚みよりも小さく、上記平均厚み90〜180nmに相当する物理厚みdとしては、80〜140nmである。これはガラス/膜の界面及び膜/空気界面間の反射光の干渉条件を満たすからである。この干渉条件は、先に述べた厚みの2n-1倍(nは自然数)でも成立するので、3倍厚み以上の厚みでも反射率が低減するが、膜の強度の低下があり好ましくない。

一方、反射率を小さくすべき領域として可視光(400〜780nm)および赤外光(780nm〜1.5μm)の両方にまたがる領域を考えると、低反射膜の平均厚みは90nm以上350nm以下であることが好ましい。これは、物理厚みdとしては80nm〜300nmに相当する。

特に、自動車用のウィンドシールドでは、その取り付け角(鉛直面からの傾斜角)が60度前後となるので、その使用方法に応じた膜設計が必要となる。屈折率が1.52のソーダライムガラスの表面反射率(裏面反射を含まない)は12度の入射角で4.2%であるが、60度の入射角、それは自動車に取り付けられたウィンドシールドに対して水平方向からの入射光の入射角に相当する、における表面反射率は9%以上にも達する。微粒子とバインダーからなる低反射膜は、空孔を含んだ平均屈折率からなる一層の膜と近似されるが、ガラス−低反射膜界面の反射光と低反射膜−空気界面の反射光の干渉作用を利用して互いの反射光の光路差を半波長ずらせることにより低反射性能が実現される。低反射膜付きガラスへの入射角を大きくした場合には、この光路差は、小さくなる方向に動くので、垂直入射の反射に比べて低反射膜の光学厚み(nd)を大きくする必要がある。60度入射での反射率を低減させるためには、光学厚みで140nm〜250nm程度に設計することが好ましい。60度の入射角での表面反射率は、低反射膜の見かけの屈折率や光学厚みに大きく依存するが、6%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは4%以下である。

本発明において、低反射膜のためのコーティング液は、シリカ微粒子、加水分解可能な金属化合物、加水分解のための触媒、水および溶媒を混合して、加水分解させる。例えば室温で1時間〜24時間攪拌して反応させるか、室温よりも高い温度、例えば40℃〜80℃で10分〜50分攪拌して反応させることができる。得られたコーティング液は、その後コーティング方法に応じて適当な溶媒で希釈しても構わない。

加水分解の触媒としては、酸触媒が最も有効であり、塩酸や硝酸などの鉱酸や酢酸などが例示される。酸触媒では、加水分解可能な金属化合物例えば金属アルコキシドの加水分解反応の速度に比して縮重合反応速度が小さく、加水分解反応生成物であるM(OH)nを多量に生成させるので、これがバインダーとして有効に作用するので好ましい。塩基性触媒では、加水分解反応の速度に比して縮重合反応速度が大きいので、金属アルコキシドは微粒子状の反応生成物となったり、もともと存在しているシリカ微粒子の粒径成長に使用され、その結果、金属アルコキシドのバインダーとしての作用が小さくなる。触媒の含有量はバインダーとなる金属化合物に対してモル比で0.001〜4であることが好ましい。

上記金属化合物の加水分解に必要な水の添加量は、金属化合物に対してモル比で0.1〜100が良い。水添加量がモル比で0.1より少ないと、金属化合物の加水分解の促進が充分でなく、またモル比で100より多いと、液の安定性が低下する傾向になり好ましくない。

なお、前記金属化合物として上記クロロ基含有化合物を用いる場合には、必ずしも触媒の添加は必要ではない。上記クロロ基含有化合物は触媒がなくても加水分解反応が可能である。しかし、付加的に酸を加えても何ら差し支えない。

上記溶媒は、実質的に上記金属化合物を溶解すれば基本的に何でも良いが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピルセロソルブ類などのセロソルブ類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類が最も好ましい。上記溶媒に溶解させる金属化合物の濃度があまり高すぎると、分散させるシリカ微粒子の量も関係するが、膜中の上記微粒子の間に十分な空隙を生じさせることができなくなるので、20重量%以下とすることが好ましく、1〜20重量%の濃度が好ましい。そしてコーティング液中の、シリカ微粒子の量と上記金属化合物の量(金属酸化物であるSiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、Ta2O5にそれぞれ換算)の割合は、重量比で、60:40〜95:5が好ましく、より好ましくは65:35〜85:15である。

本発明におけるコーティング液の好ましい原料配合比は、次の表1の通りである。

上記コーティング液をガラス体(または紫外線遮蔽膜、以下同じ)に塗布し、加熱することにより、前記金属化合物加水分解物の脱水縮合反応、揮発成分の気化・燃焼が行われて、ガラス基板上に低反射膜を形成する。

上記塗布の方法は、公知の技術を用いればよく特に限定されないが、スピンコーター、ロールコーター、スプレーコーター、カーテンコーター等の装置を用いる方法や、浸漬引き上げ法(ディップコーティング法)、流し塗り法(フローコーティング法)などの方法や、スクリーン印刷、グラビア印刷、曲面印刷などの各種印刷法が用いられる。特に高沸点溶媒を必要とするようなコーティング方法、例えばフレキソ印刷やグラビア印刷などの印刷法ではグリコール類は、有効な溶媒であり、理由は定かでないが、グリコール類は微粒子の凝集を抑制しヘイズの少ない低反射膜を作製するには好都合な溶媒である。コーティング液中に含まれるグリコールの重量比率は5%以上80%以下で添加すると良い。

ガラス体によっては、上記コーティング液をはじくなどして均一に塗布できない場合があるが、これは基板表面の洗浄や表面改質を行うことで改善できる。洗浄や表面改質の方法としては、アルコール、アセトン、ヘキサンなどの有機溶媒による脱脂洗浄、アルカリや酸による洗浄、研磨剤により表面を研磨する方法、超音波洗浄、紫外線照射処理、紫外線オゾン処理、プラズマ処理などが挙げられる。

塗布後の加熱処理は、シリカ微粒子およびバインダーからなる膜とガラス体の密着性を上げるのに有効な方法である。処理温度としては最高到達温度で200℃以上、好ましくは400℃以上、さらに好ましくは600℃以上、1800℃以下である。200℃以上でコーティング液の溶媒成分が蒸発、膜のゲル化が進み接着力が生じる。さらに400℃以上では膜に残存した有機成分がほぼ完全に燃焼により消失する。600℃以上では、残存した未反応のシラノール基や金属化合物の加水分解物の加水分解基の縮合反応がほぼ完了し、膜の緻密化が生じさらに膜強度が向上する。加熱時間は5秒から5時間が好ましく、30秒〜1時間がより好ましい。

以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されない。

実施例1〜11に係るガラス積層体と、比較例に係るガラス積層体とを、以下の表1の通り準備した。

より詳細には、以下の通り、比較例及び実施例1〜11について、紫外線吸収剤用の膜形成溶液を調製し、上記各ガラス体に塗布することで、紫外線遮蔽膜を形成した。

(比較例) 紫外線吸収剤として、 2,2',4,4'-テ卜ラヒド口キシベンゾフェノン(BASF社製、UVINUL 3050)6.500質量部、 テトラエトキシシラン(多摩化学工業製)17.622質量部、 3-グリシドキシプロピル卜リメトキシラン(信越化学工業製、KBM-403)13.312質量部、 インジウム錫酸化物からなる微粒子を40質量%含むITO微粒子分散液(三菱マテリアル電子化成製、) 2.5質量部と、 ポリプロピレングルコール(キシダ化学製、PPG700)0.218質量部、 濃硝酸(双葉化学製、濃度60質量%)0.025質量部、 溶媒として エタノール 42.028質量部、および 水 28.125質量部(ただしエタノールおよび水は微粒子分散液の分散媒や濃硝酸に含まれる水を含む) を混合・撹拌し、紫外線遮蔽膜の形成溶液を得た。

次いで、ガラス体として、60cm角に切断した通常の透明フロート板ガラス(日本板硝子製、厚さ3.1mm)を洗浄し、このガラス板に20℃、30%RHの環境下で、膜形成溶液をフローコート法により塗布した。同環境下で5分間乾燥させた後、膜形成溶液を塗布したガラス板の温度が180℃になるようにして乾燥を実施し、紫外線遮蔽膜を有するガラス積層体を作製した。

(実施例1) 比較例と同じ紫外線吸収剤を6.000質量部、としたことを除き比較例1と同様に膜形成溶液を得た。

比較例の透明フロート板ガラスの代わりに、UVカットグリーンガラス(日本板硝子製、厚さ3.4mm)を用いたことを除き比較例と同様にして紫外線遮蔽膜を有するガラス積層体を作製した。

(実施例2) 比較例1と同じ紫外線吸収剤を7.00質量部、としたことを除き比較例と同様に膜形成溶液を得た。

比較例の透明フロート板ガラスの代わりに、合わせガラス板(市販の通常の合わせガラス用中間膜(ソルーシアジャパン(株)製、Saflex、厚さ0.76mm)を、厚さ2.1mmの透明フロート板ガラス(日本板硝子製)で挟み、加熱圧着してなる合わせガラス板)を用いたことを除き、比較例と同様にして紫外線遮蔽膜を有するガラス積層体を作製した。

(実施例3) 比較例と同じ膜形成溶液を得た。

比較例の透明フロート板ガラスの代わりに、濃色フロート板ガラス(厚さ3.4mmの日本板硝子製 Legart 50)を用いたことを除き比較例と同様にして紫外線遮蔽膜を有するガラス積層体を作製した。

(実施例4) 式(8)において、R1およびR2がともに1,1,3,3−テトラメチルブチル基であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、TINUVIN360)を分散質として含み、水を分散媒とする分散液(固形分濃度10重量%、平均粒径110nm)を準備した。なお、上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、予め、上記平均粒径となるように、ペイントコンディショナーを用い、ジルコニアビーズとともに混合して粉砕したものを用いた。

この紫外線吸収剤分散液を40.0質量部、 テトラエトキシシラン 31.25質量部、 ADEKA製G−300(グリセリンにプロピレンオキシドが付加したトリオールであって、平均分子量300のもの) 0.50質量部、 濃塩酸(関東化学製、濃度35質量%) 0.05質量部、 溶媒として エタノール 17.64質量部および 水 30.56質量部(ただしエタノールおよび水は微粒子分散液の分散媒や濃塩酸に含まれる水を含む) を混合・撹拌し、紫外線遮蔽膜の形成溶液を得た。

比較例の透明フロート板ガラスの代わりに、濃色フロート板ガラス(厚さ3.1mmの日本板硝子製 Galaxsee)を用いたことを除き比較例と同様にして紫外線遮蔽膜を有するガラス積層体を作製した。

(実施例5) 実施例4の紫外線吸収剤分散液を30.0質量部、としたことを除き実施例4と同様に膜形成溶液を得た。そして、実施例4とは異なる濃色フロート板ガラス(厚さ3.1mmの日本板硝子製 Legart 20)を用いたことを除き実施例4と同様にして紫外線遮蔽膜を有するガラス積層体を作製した。

(実施例6) 実施例4の紫外線吸収剤分散液を25.0質量部、 テトラエトキシシラン 31.2質量部、 3-グリシドキシプロピル卜リメトキシラン 3.54質量部、 比較例のITO微粒子分散液 5質量部と、 日本ルーブリゾール製ソルスパース41000(ポリエーテルリン酸エステル系ポリマ 0.55質量部 実施例4の濃塩酸 0.071質量部 溶媒として エタノール 17.4質量部および 水 29.7質量部(ただしエタノールおよび水は微粒子分散液の分散媒や濃塩酸に含まれる水を含む) を混合・撹拌し、紫外線遮蔽膜の形成溶液を得た。

比較例の透明フロート板ガラスの代わりに、UVカットグリーン板ガラス(日本板硝子製、厚さ3.1mm)を用いたことを除き比較例1と同様にして紫外線遮蔽膜を有するガラス積層体を作製した。

(実施例7) 紫外線吸収剤として、式(15)においてBuがn−ブチル基である構造式を有する市販の酸化防止剤(ベンゼンチオール銅錯体誘導体;(ビス(4−モルホリノスルホニル−1,2ジチオフェラート)銅テトラ−n−ブチルアンモニウム);住友精化製EST−5)を分散質として含み、水を分散媒とする分散液(上記銅錯体含有率10重量%、平均粒径135nm)を、実施例4と同様にして準備した。

この紫外線吸収剤分散液を20質量部、 テトラエトキシシラン 13.9質量部、 インジウム錫酸化物からなる微粒子を40質量%含むITO微粒子分散液(三菱マテリアル電子化成製、) 5質量部、 3-グリシドキシプロピル卜リメトキシラン を含まず、 実施例6のソルスパース41000 0.1質量部 実施例4の濃塩酸 0.07質量部 溶媒として エタノール 22.6質量部および 水 38.4質量部(ただしエタノールおよび水は微粒子分散液の分散媒や濃塩酸に含まれる水を含む) を混合・撹拌し、紫外線遮蔽膜の形成溶液を得た。

比較例の透明フロート板ガラスの代わりに、グリーン板ガラス(日本板硝子製、厚さ3.1mm)を用いたことを除き比較例と同様にして紫外線遮蔽膜を有するガラス積層体を作製した。

(実施例8) 比較例と同じ紫外線吸収剤を1.0質量部 テトラエトキシシラン 0.69質量部 信越化学工業製エスレックKX-5(ポリビニルアセタール樹脂を固形分8質量%含有する溶液であって、ベンズアルデヒドに由来するアセタール度を含み、アセタール化度9mol%) 62.5質量部 硝酸 0.05質量部 溶媒として アルコール 18.62質量部および 水 17.63質量部 を混合・撹拌し、紫外線遮蔽膜の形成溶液を得た。

比較例の透明フロート板ガラスの代わりに、実施例6と同じUVカットグリーン板ガラスを用いたことを除き比較例と同様にして紫外線遮蔽膜を有するガラス積層体を作製した。

(実施例9) 実施例4と同じ紫外線吸収剤を30.0質量部 テトラエトキシシラン 1.04質量部 n−ヘキシルトリメトキシシラン(HTMS、信越シリコーン社製「KBM−3063」0.37質量部、 信越化学工業製エスレックKX-5(ポリビニルアセタール樹脂を固形分8質量%含有する溶液であって、ベンズアルデヒドに由来するアセタール度を含み、アセタール化度9mol%) 62.5質量部 硝酸 0.05質量部 溶媒として アルコール 10.82質量部および 水 10.22質量部 を混合・撹拌し、紫外線遮蔽膜の形成溶液を得た。 そして、比較例の透明フロート板ガラスの代わりに、実施例4と同じ濃色フロート板ガラス(厚さ3.1mmの日本板硝子製 Galaxsee)を用いたことを除き比較例と同様にして紫外線遮蔽膜を有するガラス積層体を作製した。

(実施例10) 実施例7の紫外線吸収剤分散液を20.0質量部、としたことを除き実施例8と同様に膜形成溶液を得た。そして、比較例の透明フロート板ガラスの代わりに、実施例2と同じ合わせガラス板を用いたことを除き比較例と同様にして紫外線遮蔽膜を有するガラス積層体を作製した。

(実施例11) 実施例1にさらに視認性確保膜を形成したものを実施例11とした。具体的には、以下のように作製した。n−ヘキシルトリメトキシシラン(HTMS、信越シリコーン社製「KBM−3063」0.03質量%、テトラエトキシシラン(TEOS、信越シリコーン社製「KBM−04」)0.3質量%、精製水0.15質量%、酸触媒として塩酸0.2質量%、残余がアルコール溶媒(日本アルコール工業社製「ソルミックスAP−7」)である視認性確保膜形成用塗工液を調整した。

次いで、実施例1の紫外線遮蔽膜上に、室温20℃、相対湿度30%の環境下で、上記塗工液をフローコート法により塗布した。同環境下で10分間乾燥させた後、120℃で20分間の加熱処理を実施し、実施例11を作製した。

<3.評価1> 上記のように準備した実施例1〜11、比較例に対し、以下の表3及び表4に示す評価を行った。評価方法は、実施形態で示したとおりである。

また、図7は、各ガラス体の波長ごとの光の透過率であり、比較例及び実施例1〜11で用いられているガラス体の中から代表的なものを抽出して示している。図8は、実施例1,2,4,6〜8の波長ごとの光の透過率である。なお、図7及び図8には、実施例及び比較例の一部のみ示しているが、すべての評価結果は、表3及び表4で示している。

図7によれば、比較例のガラス体で用いられているフロートガラスは、他のガラス体に比べ300〜400nmの波長域での光透過率が高く、ガラス体のTuv400が非常に高くなっている。これによって、ガラス積層体のTuv400も高くなっていると考えられる。例えば、図8に示すように、300〜350nmの波長域での光透過率が実施例ではほぼ0であるのに対し、比較例は、高くなっている。その他の実施例では、Tuv400がそれほど低くはないガラス体が使われているものもあるが、紫外線遮蔽膜により、ガラス積層体のTuv400がいずれも2.0%以下となっている。

また、いずれの実施例もガラス積層体のTuv400が2.0%以下であるにも関わらず、420nmの波長で光透過率は20%以上、特に、実施例2,10については70パーセント以上となっている。すなわち、本発明の実施例では、紫外線域の上限付近の光の透過をも十分に抑える一方、約400nm以上の波長の可視光については、十分に透過しており、高い視認性を有しているといえる。

<4.評価2> 次に、実施例8〜11のガラス積層体の紫外線遮蔽膜について、以下のように、吸水性に基づく防曇性、水の接触角、及び水滴凝集時の光の直進性(視認確保性)について評価した。

(防曇性) 実施例8〜11のガラス積層体を、室温20℃、相対湿度30%の環境下に1時間放置した。恒温水槽を用いて水温を35℃にした温水面上に実施例8〜11が水蒸気にさらされるように配置し、紫外線遮蔽膜に曇りが認められるまでの時間を設定し、下記の基準で評価した。 A:曇りが認められるまでに、50秒以上要し、十分な吸水性が認められた。 B:曇りが認められるまでに、30秒より長く要したが、50秒間未満で曇りが確認され、ある程度の吸水性が認められた。 C:30秒以下で曇りが確認され、吸水性は不十分だった。

(接触角) 実施例8〜11を、室温20℃、相対湿度30%の環境下に1時間放置した後、協和界面科学社製の接触角計(CA-A)を用いて約4μL(=4mg)の水滴を紫外線遮蔽膜の表面に滴下し、紫外線遮蔽膜におけるその水滴の接触角を測定した。そして、接触角が90°以上であれば撥水性があると判断し、60°以下であれば、親水性があると判断した。

(水滴凝結時の光の直進性) 実施例8〜11のガラス積層体を、室温20℃、相対湿度30%の環境下に1時間放置した。一方で、恒温水槽を用いて水温を40℃に保持した温水を収容し、その温水の上方に実施例8〜11を水蒸気にさらされるように配置し、水蒸気にさらされた面の前面に曇りが認められる、つまり水滴が凝結するまで保持した。その後、速やかにヘーズメータ(スガ試験機社製「HZ-1S」)を用いてヘイズ率を測定した。そして、水滴凝結時の光の直進性を下記の基準で評価した。 A:ヘイズ率が15%以下であり、十分な視認性確保性能を有する。 B:ヘイズ率が15%超35%以下であり、ある程度の視認性確保性能を有する。 C:ヘイズ率が35%超であり、視認性確保性能は不十分である。 上記のように評価される光の直進性は、視認確保性を表す。

結果は、表5に示すとおりである。

表5の結果からすると、比較例は防曇性が低く、短時間で曇りが発生した。したがって、視認確保性も悪かった。一方、実施例8〜10は、いずれも防曇性は高く、曇りが認められるまで、時間を要した。一方、実施例11は防曇性が低いが、接触角からすると撥水性を示しているため、視認確保性が高かった。また、実施例8,10は、防曇性は高いが、接触角からして親水性を示しており、視認確保性が低かった。これに対して、実施例9は撥水性を示し、視認確保性も高かった。

1 :ガラス体 2 :紫外線遮蔽膜

高效检索全球专利

专利汇是专利免费检索,专利查询,专利分析-国家发明专利查询检索分析平台,是提供专利分析,专利查询,专利检索等数据服务功能的知识产权数据服务商。

我们的产品包含105个国家的1.26亿组数据,免费查、免费专利分析。

申请试用

分析报告

专利汇分析报告产品可以对行业情报数据进行梳理分析,涉及维度包括行业专利基本状况分析、地域分析、技术分析、发明人分析、申请人分析、专利权人分析、失效分析、核心专利分析、法律分析、研发重点分析、企业专利处境分析、技术处境分析、专利寿命分析、企业定位分析、引证分析等超过60个分析角度,系统通过AI智能系统对图表进行解读,只需1分钟,一键生成行业专利分析报告。

申请试用

QQ群二维码
意见反馈