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本発明は、避雷針を支持する避雷針用ポールの支持構造に関する。
風力発電設備用の風車においては、落雷による事故を回避するために風車とは別個に避雷針を設置するケースが増えている。 避雷針は風車の最頂部より高い位置に設置する必要があるため、その高さは50〜100mに達する。 そのような高さの避雷針用ポールを支持する構造としては、図3(a)、(b)に示されるように単柱からなる避雷針用ポールの場合は、避雷針用ポールの上部あるいは中途から、3本以上のワイヤーロープ等からなる支線を斜め下方に根開き状に張設して支持する支線支持タイプの支持構造と、図3(c)、(d)に示されるような塔体を形鋼材や鋼管をトラス状に組立てたトラスタイプの支持構造、及び前記トラスタイプ支持構造と前記支線支持タイプの支持構造を組み合わせたものが知られている。
前記の従来技術は、支線支持タイプの支持構造では、支線の端部を支持する地面支点が広くなり、大きな設置面積が必要となるため、狭い場所には建設できないという問題が生じる。
また、トラスタイプの支持構造は、受風面積が大きくなるため、鋼材を多く必要とし高コストになる。
本発明は、前記の従来技術の問題点を解消する耐風圧性が高く、設置面積の少ない、低コストの避雷針用ポールの支持構造を提供することを目的とする。
前記の課題を解決するために本発明は次のように構成される。
本第1発明は、避雷針用ポールの支持構造において、前記避雷針用ポールを中心として横方向に水平に適宜な長さ延出する束材を避雷針用ポールの外周に固定し、前記束材を前記避雷針用ポールの上下方向に所定間隔をおいて複数段設置し、前記避雷針用ポールの上端、複数段の束材の自由端部、地面に設けたアンカーとの間に張弦材を初期導入張力を付与して設置し、前記避雷針用ポールの上下方向に複数段設置される束材間の各セクションに設置される張弦材の初期導入張力が上方から下方へ行くに従い大きくなるように制御されていることを特徴とする。
本第2発明は、本第1発明の避雷針用ポールの支持構造において、前記避雷針用ポールを中心として横方向に水平に適宜な長さ延出する束材を少なくとも3方向に放射状に延出することを特徴とする。
本第3発明は、本第1または第2発明の避雷針用ポールの支持構造において、前記避雷針用ポールの上部に、少なくとも1つ以上の制振装置が設けられて、共振を抑制するようにしたことを特徴とする。
本発明の構成である、地面に設置したアンカーと避雷針用ポールに固定した束材間に支線としての張弦材が初期導入張力を付与して設置されるので、束材の上方向の変形が抑制され、束材の上方向の変形を抑制することで、避雷針用ポールの接合部に風による避雷針用ポールの変形に抵抗する曲げモーメントを生じさせ、その結果として、避雷針用ポールが風を受けた時の変形を抑制する拘束効果が発揮でき、高い耐風性を有するという効果を奏する。
また、支線としての張弦材は束材の自由端部と地面に設置したアンカーとの間にほぼ垂直に設置されるため、従来技術の支線の自重によるたわみを防止でき、支線の根開きを小さくできるので設置面積を少なくすることができる。
避雷針用ポールに束材を固定し、束材の端部と地面に設置したアンカーとの間に張弦材を設置するだけの構成なので、低コストで構築が可能となる。
避雷針用ポールの上下方向に複数段設置される束材間の各セクションに設置される張弦材の初期導入張力が上方から下方に行くに従い大きくなるように制御されているので、避雷針用ポールの変形抑制効果が増大し、最下段の束材と地面に設置されたアンカーとの間に設置される張弦材に付与される初期導入張力も過大になることがなく、アンカーの強度を大きなものとする必要がないという効果を奏する。
また、前記避雷針用ポールの上部に、少なくとも1つ以上の制振装置が設けられて、共振を抑制するようにしたので、避雷針用ポールの高さが高くなっても、避雷針用ポールの共振時の振幅を著しく低減することができるので、ポール頂部の変形を小さく抑制することができる。
本発明の実施形態を図により説明する。
図1に示されるように、避雷針を支持する避雷針用ポール1は、高さが50〜100mに達するため、複数の鋼管等を接続して構成される。 複数の鋼管等の接合部の近傍に、鋼管を中心として横方向に水平に適宜な長さ延出する束材2がその端部を鋼管の外周に固定して設置される。 図1に示されるものは、等間隔で4本の束材2が固定されている。 束材2は、避雷針用ポール1を構成する鋼管等の接合部の近傍に固定されるので、複数段の束材2が避雷針用ポール1の上下方向にほぼ等間隔で設置されることになる。 束材2の水平方向の延出長さは、避雷針用ポール1の上方向の数段の束材2は若干短くされ、避雷針用ポール1の下部の束材2の水平方向の延出長さはそれより長く、避雷針用ポール1の下部の複数段の束材2の水平方向の延出長さをほぼ同一とする。 地面に設置されるアンカーの設置位置は、最下段の束材2の自由端部のほぼ真下とされる。 そのため、避雷針用ポール1の上端、束材の自由端部、地面に設置したアンカーとの間に設置されるワイヤーロープ等の張弦材3は、根開きの小さい状態で設置される。
避雷針用ポール1の上端と最上段の束材2との間、最上段の束材2と上から2段目の束材との間、・・・、下から2段目の束材2と最下段の束材2との各セクションに設置される張弦材3には、上方から下方に行くに従い大きくなる初期導入張力が付加される。 複数の鋼管を接続して避雷針用ポール1を組立てる前に、各セクションごとに束材2と束材2との間の張弦材3に所定の初期導入張力を付与しながら複数の鋼管を接続して避雷針用ポール1を組立て、避雷針用ポール1を地面の基礎上に立設し、最下段の束材2と地面に設置したアンカーとの間の張弦材3に所定の初期導入張力を付加して避雷針用ポール1の設置が完了する。 このような施工手順とすることにより各セクションに付与される初期導入張力の制御が容易となる。
本発明の避雷針用ポールの支持構造は、図2(b)に示されるように、避雷針用ポール1の複数段の束材間の各セクションに上方から下方に行くに従い大きくなる初期導入張力を付与されて張弦材3が設置されているので、避雷針用ポール1に風が当たると、風上側の束材2の自由端部は上方向に変形しようとするが、束材2間に設置された張弦材3が束材2の上方向の変形を抑制し、避雷針用ポール1を構成する鋼管の接合部に避雷針用ポール1の変形に抵抗する矢印のような曲げモーメントが発生し、風による避雷針用ポール1の変形を小さくすることができる。
ところで、通常、高さの高い避雷針ポールの風による横方向の変形、特に頂部についての横方向の変形は、図4に点線(A)で示すように、ポールの高さの1/100以下に抑え込むようにするのを設計の目安とされているが、避雷針用ポール1の高さが80mを越えると、振動時の共振の影響により、前記の避雷針用ポール1の頂部の変形が大きくなる。 例えば、図4に示すように、張弦材3がない場合は×印の折れ線(イ)のようになり、張弦材があり共振を生じる場合は黒丸印の折れ線(ロ)のようになり、避雷針用ポール1の上部に、制振装置があり共振を生じない場合は黒三角印の線図(ハ)のようになる。
図4からわかるように、制振装置を避雷針用ポール1の上部に設けると、避雷針用ポール1が風により振動しても、ポール頂部の変形を著しく小さく抑制することができるため、共振により避雷針用ポール1が損傷するのを防止できる共に、避雷針用ポール1の耐久性を向上させることができる。 制振装置を避雷針用ポール1の上部に1つ、または上下または左右方向に複数設ける形態でもよい。
避雷針用ポール1の上部に、少なくとも1つ以上の制振装置を取り付ける場合、図5(a)に示すように、避雷針用ポール1の上端部に制振装置4を設ける外付け式のようにしてもよく、図5(b)に示すように、避雷針用ポール1を構成する鋼管内部に制振装置4を設ける内蔵式のようにすることもできる。
避雷針用ポール1に取り付ける制振装置4本体の構成の一形態としては、例えば、図6に示すように、内部が密閉された収納容器5内に、粘性減衰液6と、第1,第2の圧縮コイルスプリング7,8と、この第1,第2の圧縮コイルスプリング7,8の中間に配設されて係合され、前記粘性減衰液6内を移動する重り9とからなる構成としてもよい。 前記の第1,第2の圧縮コイルスプリング7,8の基端側は、それぞれ底板11上面に固定される環状支持部または蓋材となっている頂板10下面に固定されている環状支持部内に位置して位置決め配置されている。 前記重り9は中央部に環状の張り出し鍔部を有すると共にこれに一体に上下に截頭円錐状体を備えて嵌合設置が容易とされている。 なお、前記頂板10は収納容器5の本体上部フランジにボルト・ナット16により着脱自在に固定されて収納容器5内を密閉している。
図5(a)および図6では、避雷針用ポール1の上端部に、制振装置支持用の鋼製頂板15を固定し、収納容器5の底板11を、前記頂板15に複数のボルト・ナット12により着脱可能に取り付けている形態が示されている。 なお、制振装置4に雷撃を受けた時に、制振装置4内の重り9や粘性減衰液6に影響がないようにするために、収納容器5の筒部を鋼管とし、その上下の頂板10ならびに底板11を鋼板とするとよい。
図5(b)および図7では、収納容器5の外周面に雌ねじ孔を有する被支持部13が周方向に等角度間隔で設けられ、避雷針用ポール1を構成する上部の鋼管の外周面にボルト支持用孔が周方向に等角度間隔で設けられ、前記ボルト支持用孔に挿通されると共に前記被支持部13にねじ込まれるボルト14により、制振装置4を所定の位置に設置する形態が示されている。
前記のような制振装置4では、制振装置4の第1,第2圧縮コイルスプリング7,8および重り9の固有振動数は、避雷針用ポール1の固有振動数と一致させるようにするとよい。
このようにすると、ポール1が風による共振により、固有振動数で揺れだすと、制振装置の中の重り9が逆位相で揺れ、ポール1の動きを抑制する力を生み出し、ポール1の振動を抑制することができ、例えば、制振装置がない場合に比べて共振時の振幅を1/10程度に抑制することもできる。 なお、減衰係数比は、粘性減衰液6の粘度,量および重り9の質量により定まるので、これらを変化させることにより、避雷針用ポール1の受ける振動に対して、所望の減衰比が得られるように設定すればよい。 なお、図示の制振装置4を横向き配置にする形態でもよく(ただし、蓋は上部側になるようにする)、また他の公知の制振装置を使用してもよい。
(作用)
前記のように本発明においては、地面に設置したアンカーと束材間に支線としての張弦材を初期導入張力を付与して設置されているので、束材の上方向の変形が抑制され、束材の上方向の変形を抑制することで、避雷針用ポールの接合部に風による避雷針用ポールの変形に抵抗する曲げモーメントを生じさせ、その結果として、避雷針用ポールが風を受けた時の変形を抑制する拘束効果が発揮でき、高い耐風性を有する。
また、支線としての張弦材は束材の自由端部と地面に設置したアンカーとの間にほぼ垂直に設置されるため、従来技術の支線の自重によるたわみを防止でき、支線の根開きを小さくできるので設置面積を少なくすることができる。
避雷針用ポールに束材を固定し、束材の端部と地面に設置したアンカーとの間に張弦材を設置するだけの構成なので、低コストの避雷針用ポールの支持構造となる。
避雷針用ポールの上下方向に複数段設置される束材間の各セクションに設置される張弦材の初期導入張力が上方から下方に行くに従い大きくなるように制御されているので、避雷針用ポールの変形抑制効果が増大し、最下段の束材と地面に設置されたアンカーとの間に設置される張弦材に付与される初期導入張力も過大になることがない。
また、前記避雷針用ポールの上部に、少なくとも1つ以上の制振装置が設けられて、共振を抑制するようにしたので、避雷針用ポールの高さが高くなっても、避雷針用ポールの共振時の振幅を著しく低減することができるので、ポール頂部の変形を小さく抑制することができる。
1:避雷針用ポール2:束材3:張弦材4:制振装置5:収納容器6:粘性減衰液7:第1圧縮スプリング8:重り9:重り10:頂板11:底板12:ボルト・ナット13:被支持部14:ボルト15:頂板16:ボルト・ナット
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