トルク検出装置

阅读:1017发布:2020-09-04

专利汇可以提供トルク検出装置专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且第1レゾルバ110における一方の検出コイル112の出 力 部と第2レゾルバ120における一方の検出コイル122の出力部とを第1コイル間抵抗素子150で接続し、第1レゾルバ110における他方の検出コイル113の出力部と第2レゾルバ120における他方の検出コイル123の出力部とを第2コイル間抵抗素子160で接続する。第1励磁コイルまたは第2励磁コイルの一方に励磁用sin波 信号 を供給し、他方に前記励磁用sin波信号と同一の周 波数 で位相が90°遅れた励磁用cos波信号を供給する。これにより、検出ラインが1本断線しても両レゾルバの回転 角 を計算することができる。,下面是トルク検出装置专利的具体信息内容。

第1励磁コイルに励磁用交流信号が供給されてシャフトの第1軸方向位置における回転のsin値に応じた振幅の電圧信号を出する第1sin相検出コイルと前記回転角のcos値に応じた振幅の電圧信号を出力する第1cos相検出コイルを有する第1レゾルバと、第2励磁コイルに励磁用交流信号が供給されて前記シャフトの第2軸方向位置における回転角のsin値に応じた振幅の電圧信号を出力する第2sin相検出コイルと前記回転角のcos値に応じた振幅の電圧信号を出力する第2cos相検出コイルとを有する第2レゾルバを備えたレゾルバユニットと、 前記第1励磁コイルの励磁用交流信号入力部と前記第2励磁コイルの励磁用交流信号入力部とに対してそれぞれ独立した励磁ラインを介して励磁用交流信号を供給するとともに、前記第1sin相検出コイルの信号出力部と前記第1cos相検出コイルの信号出力部と前記第2sin相検出コイルの信号出力部と前記第2cos相検出コイルの信号出力部とからそれぞれ独立した検出ラインを介して前記電圧信号を入力して、前記電圧信号に基づいて前記シャフトの第1軸方向位置における第1回転角および第2軸方向位置における第2回転角を計算し、前記計算した第1回転角と第2回転角とに基づいて前記シャフトの軸回り方向に働くトルクを計算により求めるトルク演算部と を備えたトルク検出装置において、 前記レゾルバユニットは、 前記第1レゾルバにおける前記第1sin相検出コイルと前記第1cos相検出コイルとのいずれか一方の信号出力部と、前記第2レゾルバにおける前記第2sin相検出コイルと前記第2cos相検出コイルとのいずれか一方の信号出力部とを電気的に接続する第1コイル間抵抗素子と、前記第1レゾルバにおける前記第1sin相検出コイルと前記第1cos相検出コイルとのいずれか他方の信号出力部と、前記第2レゾルバにおける前記第2sin相検出コイルと前記第2cos相検出コイルとのいずれか他方の信号出力部とを電気的に接続する第2コイル間抵抗素子とを備え、 前記トルク演算部は、 前記第1励磁コイルと前記第2励磁コイルとのいずれか一方に励磁用sin波信号を供給し、前記第1励磁コイルと前記第2励磁コイルとのいずれか他方に前記励磁用sin波信号と同一の周波数で位相が90°遅れた励磁用cos波信号を供給するコイル駆動回路と、 前記各検出ラインを介して入力される前記第1レゾルバと前記第2レゾルバの出力する電圧信号が合成された合成信号から、前記励磁用sin波信号成分と前記励磁用cos波信号成分とを分離する分離手段と を備えたことを特徴とするトルク検出装置。車両用電動パワーステアリング装置に設けられ、ステアリングシャフトに入力される操トルクを検出することを特徴とする請求項1記載のトルク検出装置。前記第1レゾルバと前記第2レゾルバは、前記シャフトにトルクが働いていない状態における前記第1レゾルバと前記第2レゾルバとの相対位置が電気角で90°位相がずれるように前記シャフトに組み付けられていることを特徴とする請求項1または2記載のトルク検出装置。前記レゾルバユニットには、前記第1sin相検出コイルの信号出力部と前記第1cos相検出コイルの信号出力部と前記第2sin相検出コイルの信号出力部と前記第2cos相検出コイルの信号出力部に、前記第1コイル間抵抗素子あるいは前記第2コイル間抵抗素子との接続点よりも検出ライン側に、それぞれ地絡対応用抵抗素子が介装されていること特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項記載のトルク検出装置。前記分離手段は、前記第1コイル間抵抗素子あるいは前記第2コイル間抵抗素子を介して互いに電気的に接続されている2つの信号出力部から出力される前記合成信号の電圧値を加算し、前記加算された電圧値から前記励磁用sin波信号成分における検出コイルの出力電圧振幅相当値と前記励磁用cos波信号成分における検出コイルの出力電圧振幅相当値とを算出することを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一項記載のトルク検出装置。前記トルク演算部は、前記各検出コイルにおける内部抵抗の温度特性と、前記各コイル間抵抗素子の温度特性との相違による回転角計算値に及ぼす影響を補償する温度補償手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか一項記載のトルク検出装置。前記温度補償手段は、前記各コイル間抵抗素子の材質を、前記各検出コイルの材質と同一にしたことにより、前記温度特性による回転角計算値に及ぼす影響を補償することを特徴とする請求項6記載のトルク検出装置。前記分離手段は、前記第1レゾルバあるいは前記第2レゾルバが前記トルク演算部に出力する2つの合成信号から、前記第1sin相検出コイルと前記第1cos相検出コイルと前記第2sin相検出コイルと前記第2cos相検出コイルの出力する各電圧信号成分を分離して抽出することにより前記温度特性の相違による回転角計算値に及ぼす影響を補償することを特徴とする請求項6記載のトルク検出装置。前記トルク演算部は、前記各検出コイルで発生する電圧信号と、前記トルク演算部に入力される合成信号との位相ずれを補償する位相ずれ補償手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項8の何れか一項記載のトルク検出装置。前記位相ずれ補償手段は、前記第1コイル間抵抗素子と前記第2コイル間抵抗素子に、それぞれインダクタを直列に接続したことにより前記位相ずれを補償することを特徴とする請求項9記載のトルク検出装置。前記トルク演算部は、 前記検出ラインを介して入力した合成信号に基づいて前記各コイル間抵抗素子の抵抗値を算出する抵抗値算出手段と、 前記算出された抵抗値が正常範囲から外れている場合に、異常処理を行う異常処理手段と を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項10の何れか一項記載のトルク検出装置。前記異常処理手段は、前記算出された抵抗値が正常範囲から外れた警告レベル範囲に入る場合に警告装置を作動させ、前記抵抗値が前記警告レベルよりも更に外れた検出不能レベルに入る場合にトルク検出不能信号を出力することを特徴とする請求項11記載のトルク検出装置。前記レゾルバユニットは、前記第1励磁コイルの励磁用交流信号入力部と前記第2励磁コイルの励磁用交流信号入力部とを電気的に接続する励磁コイル間抵抗素子を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項12の何れか一項記載のトルク検出装置。

说明书全文

本発明は、2つのレゾルバを備え、各レゾルバで検出した回転に基づいてシャフトに働くトルクを検出するトルク検出装置に関する。

従来から、運転者の操操作に対して操舵アシストトルクを付与する電動パワーステアリング装置が知られている。電動パワーステアリング装置は、ステアリングシャフトに働いた操舵トルクをトルク検出装置で検出し、操舵トルクが大きくなるにしたがって増加する目標アシストトルクを算出し、算出した目標アシストトルクが得られるように、電動モータの通電量をフィードバック制御する。従って、電動パワーステアリング装置においては、特に、トルク検出装置の信頼性が要求される。

操舵トルク検出装置は、ステアリングシャフトに設けたトーションバーの捩れ角度を検出することにより、この捩れ角度に比例した操舵トルクを算出する。例えば、特許文献1にて公開されているトルク検出装置は、2つのレゾルバを用いてトーションバーの捻れ角度を検出する構成を採用している。このトルク検出装置においては、トーションバーの一端側に第1レゾルバを、他端側に第2レゾルバを設け、第1レゾルバにて検出される回転角(θ1)と第2レゾルバにて検出される回転角(θ2)との差から、操舵トルクを検出する。

各レゾルバは、励磁用交流信号が供給されてロータコイルに通電する励磁コイルと、トーションバーの周囲に固定されるsin相検出コイルおよびcos相検出コイルとを備えている。sin相検出コイルとcos相検出コイルとは、互いに電気角で90°(π/2)ずらして組み付けられる。sin相検出コイルは、ロータの回転角のsin値に応じた振幅となる交流信号を出し、cos相検出コイルは、ロータの回転角のcos値に応じた振幅となる交流信号を出力する。

2つのレゾルバは、トルク演算部を構成するECUに接続される。ECUは、第1レゾルバの励磁コイルと第2レゾルバの励磁コイルに共通の励磁ラインを介して励磁用交流信号を供給する。また、ECUは、第1レゾルバと第2レゾルバの各検出コイルの出力信号を、それぞれ独立した検出ラインを介して入力する。

ECUは、各レゾルバにおけるsin相検出コイルとcos相検出コイルの出力信号から、各レゾルバの設けられた位置におけるトーションバーの回転角をそれぞれ演算する。そして、2つの回転角の差からトーションバーに働く操舵トルクを検出する。

特許文献1にて公開されているトルク検出装置においては、一方のレゾルバにおける検出ラインの一つが断線した場合でも、検出ラインが断線していない側のレゾルバで検出された回転角が所定角度範囲に入っている場合には、検出ラインが断線しているレゾルバの正常な検出ラインの出力信号のみを使って回転角を推定する。例えば、第1レゾルバのsin相検出ライン(sin相検出コイルが接続される検出ライン)が断線した場合には、第2レゾルバで検出された回転角が所定角度範囲に入っているという状況において、第1レゾルバのcos相検出ライン(cos相検出コイルが接続される検出ライン)から入力した出力信号のみ使って回転角を推定する。これは、第1レゾルバにて検出される第1回転角(θ1)と第2レゾルバにて検出される第2回転角(θ2)との機械的な角度差が、常に一定値以下に制限されているという前提に基づくものである。従って、検出ラインの一つが断線した場合でも、検出ラインが断線していない側のレゾルバで検出された回転角が所定角度範囲に入っている状況においては、第1回転角θ1と第2回転角θ2との差から操舵トルクを検出することができる。

特開2003−315182号

しかしながら、第1回転角θ1と第2回転角θ2との機械的な角度差が一定値以下に制限されているという条件に基づいて、一本の検出ラインの出力信号から回転角を求める構成においては、一義的に回転角が求められる状況が限定される。この従来装置のものでは、レゾルバの回転角度範囲における約半分程度において、回転角を検出することができない。このため、正確な操舵トルクの検出値に基づいた操舵アシストを継続することができず、操舵フィーリングが低下してしまう。また、検出ラインの断線時の冗長性を確保するために配線を2重化するとワイヤハーネスの構成が複雑になってしまう。

本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、ECU(トルク演算部)と、第1レゾルバおよび第2レゾルバを接続する配線を複雑にすることなく、検出ラインの断線に対する冗長性を向上させることを目的とする。

上記目的を達成するために、本発明のトルク検出装置の特徴は、第1励磁コイル(111)に励磁用交流信号が供給されてシャフト(12)の第1軸方向位置における回転角のsin値に応じた振幅の電圧信号を出力する第1sin相検出コイル(112)と前記回転角のcos値に応じた振幅の電圧信号を出力する第1cos相検出コイル(113)を有する第1レゾルバ(110)と、第2励磁コイル(121)に励磁用交流信号が供給されて前記シャフトの第2軸方向位置における回転角のsin値に応じた振幅の電圧信号を出力する第2sin相検出コイル(122)と前記回転角のcos値に応じた振幅の電圧信号を出力する第2cos相検出コイル(123)とを有する第2レゾルバ(120)を備えたレゾルバユニット(100)と、前記第1励磁コイルの励磁用交流信号入力部と前記第2励磁コイルの励磁用交流信号入力部とに対してそれぞれ独立した励磁ライン(210b,220b)を介して励磁用交流信号を供給するとともに、前記第1sin相検出コイルの信号出力部(100ps1,212a)と前記第1cos相検出コイルの信号出力部(100pc1,213a)と前記第2sin相検出コイルの信号出力部(100ps2,222a)と前記第2cos相検出コイルの信号出力部(100pc2,223a)とからそれぞれ独立した検出ライン(212b、213b、222b、223b)を介して前記電圧信号を入力して、前記電圧信号に基づいて前記シャフトの第1軸方向位置における第1回転角(θ1)および第2軸方向位置における第2回転角(θ2)を計算し、前記計算した第1回転角と第2回転角とに基づいて前記シャフトの軸回り方向に働くトルクを計算により求めるトルク演算部(32)とを備えたトルク検出装置において、 前記レゾルバユニットは、前記第1レゾルバにおける前記第1sin相検出コイルと前記第1cos相検出コイルとのいずれか一方の信号出力部と、前記第2レゾルバにおける前記第2sin相検出コイルと前記第2cos相検出コイルとのいずれか一方の信号出力部とを電気的に接続する第1コイル間抵抗素子(150)と、前記第1レゾルバにおける前記第1sin相検出コイルと前記第1cos相検出コイルとのいずれか他方の信号出力部と、前記第2レゾルバにおける前記第2sin相検出コイルと前記第2cos相検出コイルとのいずれか他方の信号出力部とを電気的に接続する第2コイル間抵抗素子(160)とを備え、 前記トルク演算部は、前記第1励磁コイルと前記第2励磁コイルとのいずれか一方に励磁用sin波信号を供給し、前記第1励磁コイルと前記第2励磁コイルとのいずれか他方に前記励磁用sin波信号と同一の周波数で位相が90°遅れた励磁用cos波信号を供給するコイル駆動回路(52)と、前記各検出ラインを介して入力される前記第1レゾルバと前記第2レゾルバの出力する電圧信号が合成された合成信号(Es1,Ec1,Es2,Ec2)から、前記励磁用sin波信号成分(Ss1,Sc1)と前記励磁用cos波信号成分(Ss2,Sc2)とを分離する分離手段(S12,S32,S36,S39,S42)とを備えたことにある。

本発明のトルク検出装置は、レゾルバユニットと、レゾルバユニットと電気配線により接続されるトルク演算部とを備える。レゾルバユニットは、シャフトの第1軸方向位置における回転角(第1回転角)を検出するための第1レゾルバと、シャフトの第2軸方向位置における回転角(第2回転角)を検出するための第2レゾルバとを備えている。

第1レゾルバは、第1励磁コイルと第1sin相検出コイルと第1cos相検出コイルとを備えている。第1励磁コイルには、トルク演算部から出力される励磁用交流信号が励磁ラインを介して供給される。これにより第1sin相検出コイルは、第1回転角のsin値に応じた振幅の電圧信号を出力し、第1cos相検出コイルは、第1回転角のcos値に応じた振幅の電圧信号を出力する。

第2レゾルバは、第2励磁コイルと第2sin相検出コイルと第2cos相検出コイルとを備えている。第2励磁コイルには、トルク演算部から出力される励磁用交流信号が励磁ラインを介して供給される。これにより第2sin相検出コイルは、第2回転角のsin値に応じた振幅の電圧信号を出力し、第2cos相検出コイルは、第2回転角のcos値に応じた振幅の電圧信号を出力する。

トルク演算部は、各コイルの信号出力部からそれぞれ検出ラインを介して電圧信号を入力し、入力した電圧信号に基づいてシャフトの第1回転角および第2回転角を計算し、その第1回転角と第2回転角とに基づいてシャフトの軸回り方向に働くトルクを計算により求める。回転角は、例えば、sin相検出コイルの出力する信号の電圧振幅相当値をcos相検出コイルの出力する信号の電圧振幅相当値で除算した値の逆正接値に基づいて計算することができる。

このように構成されるトルク検出装置においては、検出ラインが1本でも断線した場合には、断線した検出ラインに対応する検出コイルの電圧信号がトルク演算部に入力されなくなるため、そのままでは、トルクを検出することができない。そこで、本発明においては、レゾルバユニットに第1コイル間抵抗素子と第2コイル間抵抗素子とが設けられている。第1コイル間抵抗素子は、第1レゾルバにおける第1sin相検出コイルと第1cos相検出コイルとのいずれか一方の信号出力部と、第2レゾルバにおける第2sin相検出コイルと第2cos相検出コイルとのいずれか一方の信号出力部とを電気的に接続する。第2コイル間抵抗素子は、第1レゾルバにおける第1sin相検出コイルと第1cos相検出コイルとのいずれか他方の信号出力部と、第2レゾルバにおける第2sin相検出コイルと第2cos相検出コイルとのいずれか他方の信号出力部とを電気的に接続する。

従って、第1レゾルバの一方の検出コイルの電圧信号と第2レゾルバの一方の検出コイルの電圧信号とが合成された合成信号が2本の検出ラインを介してトルク演算部に入力され、第1レゾルバの他方の検出コイルの電圧信号と第2レゾルバの他方の検出コイルの電圧信号とが合成された合成信号が別の2本の検出ラインを介してトルク演算部に入力される。

トルク演算部は、第1励磁コイルおよび第2励磁コイルを独立して駆動するためのコイル駆動回路と、合成信号から各検出コイルの出力する電圧信号の電圧振幅相当値を取得するための分離手段とを備えている。コイル駆動回路は、第1励磁コイルと第2励磁コイルとのいずれか一方に励磁用sin波信号を供給し、第1励磁コイルと第2励磁コイルとのいずれか他方に励磁用sin波信号と同一の周波数で位相が90°遅れた励磁用cos波信号を供給する。従って、各検出ラインを介してトルク演算部に入力される合成信号は、励磁用sin波信号により検出コイルで発生した信号成分である励磁用sin波信号成分と、励磁用cos波信号により検出コイルで発生した信号成分である励磁用cos波信号成分とが合成されたものとなる。

分離手段は、第1レゾルバと第2レゾルバの出力する合成信号を各検出ラインを介して入力し、合成信号から励磁用sin波信号成分と励磁用cos波信号成分とを分離する。例えば、合成信号に対して、位相遅れ分を加味したsin波信号で変調することにより励磁用sin波信号成分を取り出すことができ、逆に、位相遅れ分を加味したcos波信号で変調することにより励磁用cos波信号成分を取り出すことができる。これにより、各検出ラインから、それぞれ2つの検出コイル(第1レゾルバの一方の検出コイルと第2レゾルバの一方の検出コイル、あるいは、第1レゾルバの他方の検出コイルと第2レゾルバの他方の検出コイル)の出力する信号成分を抽出することができる。以下、互いにコイル間抵抗素子で電気的に接続されている検出ラインをペアとなる関係の検出ラインと呼ぶ。

このため、トルク演算部は、任意の検出ラインが断線した場合であっても、ペアとなる他方の検出ラインから出力される合成信号を使って、断線した検出ラインに対応する検出コイルの出力信号成分を抽出することができる。

従って、本発明によれば、検出ラインが1本断線した場合であっても、第1レゾルバの回転角と第2レゾルバの回転角の計算が可能となりトルクを検出することができる。これにより、検出ラインの断線に対する信頼性を向上させることができる。また、検出ラインを二重化する必要がないため、レゾルバユニットとトルク演算部を接続する配線も複雑にならず、低コストにて実施することができる。

尚、断線した検出ラインが2本の場合でも、その検出ラインがペアとなる関係(コイル間抵抗素子で接続される関係)でなければ、正常な2本の検出ラインから出力される合成信号を使って、4つの検出コイルの出力する信号成分を分離して抽出することができる。従って、そうした場合においても、第1レゾルバの回転角と第2レゾルバの回転角を計算するようにしてもよい。

本発明の他の特徴は、車両用電動パワーステアリング装置に設けられ、ステアリングシャフト(12)に入力される操舵トルクを検出することにある。

車両用電動パワーステアリング装置においては、ステアリングシャフトにレゾルバユニットが設けられ、ワイヤハーネスを介してレゾルバユニットとトルク演算部が相互に接続される。本発明によれば、ワイヤハーネスの一部を構成する検出ラインが断線した場合であっても、操舵トルクを検出することができる。このため、電動パワーステアリング装置による操舵アシストを継続することができる。従って、電動パワーステアリング装置の断線に対する冗長性を向上させることができる。

本発明の他の特徴は、前記第1レゾルバと前記第2レゾルバは、前記シャフトにトルクが働いていない状態における前記第1レゾルバと前記第2レゾルバとの相対位置が電気角で90°位相がずれるように前記シャフトに組み付けられていることにある。

本発明によれば、第1レゾルバと第2レゾルバとを同位相にて組み付けた場合に比べて、検出ラインを介してトルク演算部に入力される合成信号の最大電圧が小さくなるため、トルク演算部におけるA/D変換時の分解能を上げることができる。これにより、精度の高いトルク検出を行うことができる。

本発明の他の特徴は、前記レゾルバユニットには、前記第1sin相検出コイルの信号出力部と前記第1cos相検出コイルの信号出力部と前記第2sin相検出コイルの信号出力部と前記第2cos相検出コイルの信号出力部に、前記第1コイル間抵抗素子あるいは前記第2コイル間抵抗素子との接続点(151,152,161,162)よりも検出ライン(212b,213b,222b,223b)側に、それぞれ地絡対応用抵抗素子(171,172,173,174)が介装されていることにある。

本発明によれば、検出ラインが地絡した場合であっても、地絡した検出ラインに対応する検出コイル(地絡した検出ラインとコイル間抵抗を介さずに直接繋がっていた検出コイル)の出力信号部とコイル間抵抗素子との接続点における電位がゼロにならない。このため、ペアの関係となるもう一方の検出ラインからは、2つの検出コイルの電圧信号を合成した合成信号が出力される。従って、トルク演算部は、この検出ラインから出力される合成信号を使って、地絡した検出ラインに対応する検出コイルの信号成分を抽出することができる。これにより、本発明によれば、検出ラインの断線だけでなく地絡に対しても第1レゾルバの回転角と第2レゾルバの回転角の計算が可能となりトルクを検出することができる。従って、トルク検出装置のハーネス断線に対する冗長性を更に向上させることができる。

本発明の他の特徴は、前記分離手段は、前記第1コイル間抵抗素子あるいは前記第2コイル間抵抗素子を介して互いに電気的に接続されている2つの信号出力部から出力される前記合成信号の電圧値を加算し、前記加算された電圧値((Es1+Es2),(Ec1+Ec2))から前記励磁用sin波信号成分における検出コイルの出力電圧振幅相当値(Ss1,Sc1)と前記励磁用cos波信号成分における検出コイルの出力電圧振幅相当値(Ss2,Sc2)とを算出することにある。

第1レゾルバと第2レゾルバとをコイル間抵抗素子で接続した場合には、各検出ラインから入力した合成信号に基づいて各検出コイルの出力信号の電圧振幅相当値を計算すると、コイル間抵抗素子を設けないものに比べて、電圧振幅相当値が低下する。このため、トルク演算部における分解能が低下する。そこで、本発明では、分離手段が、ペアの関係となる検出ラインから出力される合成信号の電圧値を加算し、その加算された電圧値から励磁用sin波信号成分における検出コイルの出力電圧振幅相当値と励磁用cos波信号成分における検出コイルの出力電圧振幅相当値とを算出する。このため、合成信号の電圧値を加算しない場合に比べて、算出された出力電圧振幅相当値、つまり、検出コイルの出力する信号の電圧振幅相当値が高くなるため、トルク演算部における分解能が向上して、良好なトルク検出精度が得られる。

本発明の他の特徴は、前記トルク演算部は、前記各検出コイルにおける内部抵抗の温度特性と、前記各コイル間抵抗素子の温度特性との相違による回転角計算値に及ぼす影響を補償する温度補償手段を備えたことにある。

検出コイルの内部抵抗の温度特性とコイル間抵抗素子の温度特性とが異なると、検出ラインが断線している状況においては、レゾルバユニット内の温度変化により、回転角の計算値が正確でなくなることがある。そこで、本発明では、温度補償手段が、各検出コイルにおける内部抵抗の温度特性と、各コイル間抵抗素子の温度特性との相違による回転角計算値に及ぼす影響を補償する。これにより、本発明によれば、レゾルバユニット内の温度変化に関わらず正確な回転角を計算することができる。

本発明の他の特徴は、前記温度補償手段は、前記各コイル間抵抗素子の材質を、前記各検出コイルの材質と同一にしたことにより、前記温度特性による回転角計算値に及ぼす影響を補償することにある。

本発明によれば、検出コイルの内部抵抗の温度特性とコイル間抵抗素子の温度特性とが同じになるため、レゾルバユニット内の温度変化に関わらず正確な回転角を計算することができる。

本発明の他の特徴は、前記分離手段は、前記第1レゾルバあるいは前記第2レゾルバが前記トルク演算部に出力する2つの合成信号から、前記第1sin相検出コイルと前記第1cos相検出コイルと前記第2sin相検出コイルと前記第2cos相検出コイルの出力する各電圧信号成分を分離して抽出すること(S11,S12,S82,S83,S86,S87,S89,S90,S91,S92)により前記温度特性の相違による回転角計算値に及ぼす影響を補償することにある。

本発明によれば、検出ラインが断線した場合には、検出ラインが断線していない方のレゾルバの出力する2つの合成信号から、第1sin相検出コイルと第1cos相検出コイルと第2sin相検出コイルと第2cos相検出コイルの各出力信号成分を分離して抽出する。このようにすることで、回転角の計算には、検出コイルの内部抵抗(Ra)とコイル間抵抗素子の抵抗(R0)とが影響しなくなる。従って、レゾルバユニット内の温度変化に関わらず正確な回転角を計算することができる。

本発明の他の特徴は、前記トルク演算部は、前記各検出コイルで発生する電圧信号と、前記トルク演算部に入力される合成信号との位相ずれを補償する位相ずれ補償手段を備えたことにある。

レゾルバユニットにおいては、検出コイルのインダクタンスの影響により検出コイルで発生する電圧信号とトルク演算部に入力される合成信号との位相ずれを生じる場合があり、その場合には、回転角の計算値が正確でなくなる。そこで、本発明では、位相ずれ補償手段が、各検出コイルで発生する電圧信号と、トルク演算部に入力される合成信号との位相ずれを補償する。これにより、本発明によれば、正確な回転角を計算することができる。

本発明の他の特徴は、前記位相ずれ補償手段は、前記第1コイル間抵抗素子と前記第2コイル間抵抗素子に、それぞれインダクタ(180,190)を直列に接続したことにより前記位相ずれを補償することにある。

本発明においては、各コイル間抵抗素子に、インダクタが直列に接続されている。このため、インダクタのインダクタンスを位相ずれ補償用の値に設定しておくことで、位相ずれを抑制することができる。これにより、正確な回転角を計算することができる。

本発明の他の特徴は、前記トルク演算部は、前記検出ラインを介して入力した合成信号に基づいて前記各コイル間抵抗素子の抵抗値を算出する抵抗値算出手段(S111)と、前記算出された抵抗値が正常範囲から外れている場合に、異常処理を行う異常処理手段(S112,S113,S114,S115)とを備えたことにある。

この場合、前記異常処理手段は、前記算出された抵抗値が正常範囲から外れた警告レベル範囲に入る場合に警告装置を作動させ(S114)、前記抵抗値が前記警告レベルよりも更に外れた検出不能レベルに入る場合にトルク検出不能信号を出力する(S115)とよい。

コイル間抵抗素子が断線や劣化等により抵抗値が変動すると、合成信号に基づいて正確な回転角を計算することができなくなる。そこで、本発明においては、抵抗値算出手段が、検出ラインを介して入力した合成信号に基づいて各コイル間抵抗素子の抵抗値を算出する。そして、算出された抵抗値が正常範囲から外れている場合に、異常処理手段が異常処理を行う。例えば、異常処理手段は、算出された抵抗値が正常範囲から外れた警告レベル範囲に入る場合に警告装置を作動させ、抵抗値が警告レベルよりも更に外れた検出不能レベルに入る場合にトルク検出不能信号を出力する。

これにより、経年によるコイル間抵抗素子の抵抗値の変化に対しては、早い段階で使用者に部品交換を促すことができる。また、突然発生したコイル間抵抗素子の断線や短絡といった異常に対しては、トルク検出が不能であることを表す信号を出力するため、検出トルクに基づいて作動する機器を速やかに停止させることができる。

本発明の他の特徴は、前記レゾルバユニットは、前記第1励磁コイルの励磁用交流信号入力部と前記第2励磁コイルの励磁用交流信号入力部とを電気的に接続する励磁コイル間抵抗素子(230)を備えたことにある。

本発明においては、コイル駆動回路から2本の励磁ラインを介してレゾルバユニットの2つの励磁コイルにそれぞれ励磁用交流信号が供給される。励磁ラインの片方が断線した場合には、断線した励磁ラインに対応する励磁コイルには、励磁コイル間抵抗素子を介して励磁用交流信号が供給される。従って、励磁ラインの片方が断線した場合であっても、2つの励磁コイルに励磁用交流信号が供給される。

これにより、本発明によれば、励磁ラインの片方が断線しても、各レゾルバにおいて回転角を計算することができトルク検出が可能となる。尚、励磁ラインの片方が断線している状況においては、2つの励磁コイルには共通の励磁用交流信号が供給されることになるため、その状況から更に検出ラインの断線異常が発生した場合には、トルク検出ができなくなる。そのため、例えば、トルク演算部に、励磁ラインの断線を検出する励磁ライン断線検出手段と、励磁ラインの断線が検出された場合に警告装置を作動させる警告手段とを設けて、検出ラインの断線異常が発生する前に使用者に部品交換を促すようにするとよい。

尚、上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件を前記符号によって規定される実施形態に限定させるものではない。

実施形態に係るトルク検出装置を備えた電動パワーステアリング装置の概略構成図である。

レゾルバユニット、および、レゾルバユニットとアシストECUとの接続を表す概略構成図である。

レゾルバユニットの電気回路図である。

サンプリングタイミングを説明するグラフである。

ユニット外第1sin相検出ラインが断線した場合の検出信号の流れを説明する図である。

操舵トルク検出ルーチンを表すフローチャートである。

断線時回転角計算ルーチンを表すフローチャートである。

2線断線時回転角計算ルーチンを表すフローチャートである。

第1レゾルバと第2レゾルバとの組み付けを表す説明図である(第1変形例)。

第1レゾルバと第2レゾルバとの組み付け位相を同一にした場合における、検出信号の取り得る範囲を表すグラフである(第1変形例)。

第1レゾルバと第2レゾルバとの組み付け位相を90°ずらした場合における、検出信号の取り得る範囲を表すグラフである(第1変形例)。

レゾルバユニット、および、レゾルバユニットとアシストECUとの接続を表す概略構成図である(第2変形例)。

レゾルバユニットの電気回路図である(第2変形例)。

ユニット外第2sin相検出ラインが地絡した状態を表す図である。

レゾルバユニット、および、レゾルバユニットとアシストECUとの接続を表す概略構成図である(第3変形例)。

レゾルバユニットの電気回路図である(第3変形例)。

操舵トルク検出ルーチンを表すフローチャートである(第3変形例)。

地絡時回転角計算ルーチンを表すフローチャートである(第3変形例)。

断線時回転角計算ルーチンを表すフローチャートである(第5変形例2)。

位相ずれ量を説明するグラフである(第6変形例1)。

レゾルバユニットの電気回路図である(第6変形例2)。

操舵トルク検出ルーチンを表すフローチャートである(第7変形例)。

レゾルバユニット、および、レゾルバユニットとアシストECUとの接続を表す概略構成図である(第8変形例)。

レゾルバユニットの電気回路図である(第8変形例)。

第1励磁ラインが断線した場合の励磁信号の流れを説明する図である。

第2励磁ラインが断線した場合の励磁信号の流れを説明する図である。

以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、実施形態としてのトルク検出装置を備えた車両用電動パワーステアリング装置の概略構成図である。

車両用電動パワーステアリング装置は、操舵ハンドル11の操舵により転舵輪である左右前輪FW1,FWを転舵する転舵機構10と、転舵機構10に設けられ操舵アシストトルクを発生するパワーアシスト部20と、パワーアシスト部20の電動モータ21を駆動制御するアシスト制御装置50(以下、アシストECU50と呼ぶ)と、車速センサ60と、レゾルバユニット100とを備えている。

転舵機構10は、操舵ハンドル11に上端を一体回転するように接続したステアリングシャフト12を備え、ステアリングシャフト12の下端にはピニオンギヤ13が一体回転するように接続されている。ピニオンギヤ13は、ラックバー14に形成されたラック歯と噛み合ってラックアンドピニオン機構を構成する。ラックバー14の両端には、図示しないタイロッドおよびナックルアームを介して左右前輪FW1,FW2が転舵可能に接続されている。左右前輪FW1,FW2は、ステアリングシャフト12の軸線回りの回転に伴うラックバー14の軸線方向の変位に応じて左右に転舵される。

ラックバー14には、パワーアシスト部20が組み付けられている。パワーアシスト部20は、操舵アシスト用の電動モータ21(例えば、3相DCブラシレスモータ)とボールねじ機構22とからなる。電動モータ21の回転軸は、ボールねじ機構22を介してラックバー14に動力伝達可能に接続されていて、その回転により左右前輪FW1,FW2の転舵をアシストする。ボールねじ機構22は、減速器および回転−直線変換器として機能するもので、電動モータ21の回転を減速するとともに直線運動に変換してラックバー14に伝達する。

電動モータ21には、その回転軸の回転角を検出するための回転角センサ61が設けられている。回転角センサ61は、アシストECU50に接続されている。

ステアリングシャフト12は、その軸方向の中間位置にトーションバー12aが設けられる。ステアリングシャフト12において、トーションバー12aの上端と操舵ハンドル11とを連結する部分を入力シャフト12inと呼び、トーションバー12aの下端とピニオンギヤ13とを連結する部分を出力シャフト12outと呼ぶ。

ステアリングシャフト12には、レゾルバユニット100が設けられる。レゾルバユニット100は、トーションバー12aと、入力シャフト12inに組み付けられた第1レゾルバ110と、出力シャフト12outに組み付けられた第2レゾルバ120とから構成される。第1レゾルバ110は、入力シャフト12inの回転角(トーションバー12aの一方端位置における回転角であって本発明の第1軸方向位置における第1回転角に相当する)に応じた信号を出力し、第2レゾルバ120は、出力シャフト12outの回転角(トーションバー12aの他方端位置における回転角であって本発明の第2軸方向位置における第2回転角に相当する)に応じた信号を出力する。操舵ハンドル11が回動操作されると、ステアリングシャフト12にトルクが働いてトーションバー12aが捩れる。トーションバー12aの捩れ角度は、ステアリングシャフト12に働く操舵トルクに比例する。従って、第1レゾルバ110で検出される回転角θ1と、第2レゾルバ120で検出される回転角θ2との差を求めることでステアリングシャフト12に働く操舵トルクを検出することができる。第1レゾルバ110、第2レゾルバ120は、アシストECU50に接続されている。

アシストECU50は、マイクロコンピュータおよび信号処理回路等を備えた演算部30と、スイッチング回路で構成されるモータ駆動回路40(例えば、3相インバータ回路)とを備えている。演算部30は、アシスト演算部31と、トルク演算部32とから構成される。トルク演算部32は、レゾルバユニット100と接続されて、ステアリングシャフト12に働く操舵トルクを演算により検出する。レゾルバユニット100とトルク演算部32からなる構成が本発明のトルク検出装置に相当する。レゾルバユニット100とトルク演算部32については後述する。

モータ駆動回路40は、アシスト演算部31からのPWM制御信号を入力して、内部のスイッチング素子のデューティ比を制御することにより電動モータ21への通電量を調整する。モータ駆動回路40には、電動モータ21に流れる電流を検出する電流センサ41が設けられる。

アシスト演算部31は、電流センサ41、車速センサ60、回転角センサ61を接続している。車速センサ60は、車速vxを表す車速検出信号を出力する。また、アシスト演算部31は、トルク演算部32により算出した操舵トルクの計算結果を入力する。また、トルク演算部32は、運転者に異常を報知するための警告ランプ65を接続しており、断線等の異常検出時に警告ランプ65を点灯する。

次に、アシスト演算部31の実施する操舵アシスト制御について簡単に説明する。アシスト演算部31は、車速センサ60により検出される車速vxと、トルク演算部32により算出された操舵トルクTrとを取得し、取得した車速vxと操舵トルクTrに基づいて、目標アシストトルクを算出する。目標アシストトルクは、図示しないアシストマップ等を参照して、操舵トルクTrが大きくなるにしたがって増加し、かつ、車速vxが増加するにしたがって減少するように設定される。アシスト演算部31、この目標アシストトルクを発生させるために必要な目標電流を計算し、電流センサ41により検出された実電流と目標電流との偏差に基づいてPI制御(比例積分制御)式等を使って目標指令電圧を計算し、目標指令電圧に応じたPWM制御信号をモータ駆動回路40に出力する。アシスト演算部31は、回転角センサ61により検出される電動モータ21の回転角(電気角)を取得して、回転角に応じた3相(U相、V相,W相)のPWM制御信号を生成することにより、電動モータ21に3相駆動電圧を印加する。こうして、電動モータ21には、電流フィードバック制御により運転者の操舵方向と同じ方向に回転する向きの目標電流が流れる。これにより、運転者の操舵操作が、電動モータ21で発生するトルクにより適切にアシストされる。

こうした操舵アシスト制御を適切に実施するためには、信頼性の高い操舵トルクTrの検出を行う必要がある。そこで、本実施形態においては、以下の構成にて操舵トルクTrを検出する。

まず、レゾルバユニット100から説明する。図2は、レゾルバユニット100の概略回路構成を表す。第1レゾルバ110は、入力シャフト12inをロータとして備える。入力シャフト12inの外周側のステータには、ロータの周方向に沿って巻かれた第1励磁コイル111が固定して設けられている。ロータとなる入力シャフト12inには、第1ロータコイル114が固定して設けられている。第1ロータコイル114は、ロータの回転に伴って回転する。第1ロータコイル114は、ロータ内に設けた変圧器(図示略)を介して第1励磁コイル111と非接触にて電気的に接続され、第1励磁コイル111に印加される交流電圧によって通電される。

第1レゾルバ110は、入力シャフト12inの外周側のステータに第1sin相検出コイル112および第1cos相検出コイル113とを備えている。第1sin相検出コイル112と第1cos相検出コイル113とは、互いに電気角が90°ずれる位置に配置される。

第1sin相検出コイル112および第1cos相検出コイル113は、第1ロータコイル114の回転平面上に配置され、第1ロータコイル114で発生する磁束により交流電圧信号を出力する。第1sin相検出コイル112および第1cos相検出コイル113で発生する交流電圧信号の振幅値は、第1ロータコイル114に対する第1sin相検出コイル112および第1cos相検出コイル113の回転位置に応じて変化する。つまり、第1sin相検出コイル112は、入力シャフト12inの回転角のsin値に応じた振幅となる交流電圧信号を出力し、第1cos相検出コイル113は、入力シャフト12inの回転角のcos値に応じた振幅となる交流電圧信号を出力する。

第1励磁コイル111の一端は、第1励磁ライン210を介してアシストECU50の第1励磁信号出力ポート50pe1に接続されている。尚、第1励磁ライン210に関して、レゾルバユニット100内に設けられる部分と、レゾルバユニット100とアシストECU50との間に配線されるハーネス部分とに区別して説明するには、レゾルバユニット100内に設けられる部分をユニット内第1励磁ライン210aと呼び、レゾルバユニット100とアシストECU50との間に設けられるハーネス部分をユニット外第1励磁ライン210bと呼ぶ。ユニット内第1励磁ライン210aとユニット外第1励磁ライン210bとは、第1励磁信号入力ポート100pe1にて接続される。

第1sin相検出コイル112の一端は、第1sin相検出ライン212を介してアシストECU50の第1sin相信号入力ポート50ps1に接続されている。また、第1cos相検出コイル113の一端は、第1cos相検出ライン213を介してアシストECU50の第1cos相信号入力ポート50pc1に接続されている。尚、第1sin相検出ライン212,第1cos相検出ライン213に関して、レゾルバユニット100内に設けられる部分と、レゾルバユニット100とアシストECU50との間に配線されるハーネス部分とに区別して説明するには、レゾルバユニット100内に設けられる部分をユニット内第1sin相検出ライン212a,ユニット内第1cos相検出ライン213aと呼び、レゾルバユニット100とアシストECU50との間に設けられるハーネス部分をユニット外第1sin相検出ライン212b,ユニット外第1cos相検出ライン213bと呼ぶ。ユニット内第1sin相検出ライン212aとユニット外第1sin相検出ライン212bとは、第1sin相信号出力ポート100ps1にて接続される。また、ユニット内第1cos相検出ライン213aとユニット外第1cos相検出ライン213bとは、第1cos相信号出力ポート100pc1にて接続される。

第2レゾルバ120は、出力シャフト12outをロータとして備える。出力シャフト12outの外周側のステータには、ロータの周方向に沿って巻かれた第2励磁コイル121が固定して設けられている。ロータとなる出力シャフト12outには、第2ロータコイル124が固定して設けられている。第2ロータコイル124は、ロータの回転に伴って回転する。第2ロータコイル124は、ロータ内に設けた変圧器(図示略)を介して第2励磁コイル121と非接触にて電気的に接続され、第2励磁コイル121に印加される交流電圧によって通電される。

第2レゾルバ120は、出力シャフト12outの外周側のステータに第2sin相検出コイル122および第2cos相検出コイル123とを備えている。第2sin相検出コイル122と第2cos相検出コイル123とは、互いに電気角が90°ずれる位置に配置される。

第2sin相検出コイル122および第2cos相検出コイル123は、第2ロータコイル124の回転平面上に配置され、第2ロータコイル124で発生する磁束により交流電圧信号を出力する。第2sin相検出コイル122および第2cos相検出コイル123で発生する交流電圧信号の振幅値は、第2ロータコイル124に対する第2sin相検出コイル122および第2cos相検出コイル123の回転位置に応じて変化する。つまり、第2sin相検出コイル122は、出力シャフト12outの回転角のsin値に応じた振幅となる交流電圧信号を出力し、第2cos相検出コイル123は、出力シャフト12outの回転角のcos値に応じた振幅となる交流電圧信号を出力する。

第2励磁コイル121の一端は、第2励磁ライン220を介してアシストECU50の第2励磁信号出力ポート50pe2に接続されている。尚、第2励磁ライン220に関して、レゾルバユニット100内に設けられる部分と、レゾルバユニット100とアシストECU50との間に配線されるハーネス部分とに区別して説明するには、レゾルバユニット100内に設けられる部分をユニット内第2励磁ライン220aと呼び、レゾルバユニット100とアシストECU50との間に設けられるハーネス部分をユニット外第2励磁ライン220bと呼ぶ。ユニット内第2励磁ライン220aとユニット外第2励磁ライン220bとは、第2励磁信号入力ポート100pe2にて接続される。

第2sin相検出コイル122の一端は、第2sin相検出ライン222を介してアシストECU50の第2sin相信号入力ポート50ps2に接続されている。また、第2cos相検出コイル123の一端は、第2cos相検出ライン223を介してアシストECU50の第2cos相信号入力ポート50pc2に接続されている。尚、第2sin相検出ライン222,第2cos相検出ライン223に関して、レゾルバユニット100内に設けられる部分と、レゾルバユニット100とアシストECU50との間に配線されるハーネス部分とに区別して説明するには、レゾルバユニット100内に設けられる部分をユニット内第2sin相検出ライン222a,ユニット内第2cos相検出ライン223aと呼び、レゾルバユニット100とアシストECU50との間に設けられるハーネス部分をユニット外第2sin相検出ライン222b,ユニット外第2cos相検出ライン223bと呼ぶ。ユニット内第2sin相検出ライン222aとユニット外第2sin相検出ライン222bとは、第2sin相信号出力ポート100ps2にて接続される。また、ユニット内第2cos相検出ライン223aとユニット外第2cos相検出ライン223bとは、第2cos相信号出力ポート100pc2にて接続される。

また、ユニット内第1sin相検出ライン212aとユニット内第2sin相検出ライン222aとは、電気抵抗素子150を介して電気的に接続されている。つまり、第1sin相検出コイル112の一端(信号出力側)と第2sin相検出コイル122の一端(信号出力側)とがレゾルバユニット100のケーシング内において電気抵抗素子150により電気的に接続されている。以下、電気抵抗素子150をコイル間抵抗150と呼ぶ。また、ユニット内第1sin相検出ライン212aとコイル間抵抗150との接続点を接続点151と呼び、ユニット内第2sin相検出ライン222aとコイル間抵抗150との接続点を接続点152と呼ぶ。

また、ユニット内第1cos相検出ライン213aとユニット内第2cos相検出ライン223aとは、電気抵抗素子160を介して電気的に接続されている。つまり、第1cos相検出コイル113の一端(信号出力側)と第2cos相検出コイル123の一端(信号出力側)とがレゾルバユニット100のケーシング内において電気抵抗素子160により電気的に接続されている。以下、電気抵抗素子160をコイル間抵抗160と呼ぶ。また、ユニット内第1cos相検出ライン213aとコイル間抵抗160との接続点を接続点161と呼び、ユニット内第2cos相検出ライン223aとコイル間抵抗160との接続点を接続点162と呼ぶ。

尚、コイル間抵抗150,160の一方が本発明の第1コイル間抵抗に相当し、他方が本発明の第2コイル間抵抗に相当する。

また、第1励磁コイル111の他端、第2励磁コイル121の他端、第1sin相検出コイル112の他端、第1cos相検出コイル113の他端、第2sin相検出コイル122の他端、第2cos相検出コイル123の他端は、共通のグランドライン240を介してアシストECU50のグランドポート50pgに接続される。尚、グランドライン240に関して、レゾルバユニット100内に設けられる部分と、レゾルバユニット100とアシストECU50との間に配線されるハーネス部分とに区別して説明するには、レゾルバユニット100内に設けられる部分をユニット内グランドライン240aと呼び、レゾルバユニット100とアシストECU50との間に設けられるハーネス部分をユニット外グランドライン240bと呼ぶ。ユニット内グランドライン240aとユニット外グランドライン240bとは、グランドポート100pgにて接続される。

レゾルバユニット100とアシストECU50との間に配線されるユニット外第1励磁ライン210b、ユニット外第1sin相検出ライン212b、ユニット外第1cos相検出ライン213b、ユニット外第2励磁ライン220b、ユニット外第2sin相検出ライン222b、ユニット外第2cos相検出ライン223b、ユニット外グランドライン240bは、束ねられてワイヤハーネスを構成する。

トルク演算部32は、コイル駆動回路52を備えている。このコイル駆動回路52は、第1励磁コイル駆動回路521と第2励磁コイル駆動回路522とを備えている。第1励磁コイル駆動回路521は、一定の周期、振幅の励磁用交流電圧を第1励磁信号出力ポート50pe1から出力する。以下、第1励磁信号出力ポート50pe1から出力される励磁用交流電圧を第1励磁信号と呼び、第1励磁信号の電圧値を第1励磁電圧V1と呼ぶ。第1励磁電圧V1は、振幅をA1とすると、次式(1)にて表される。 V1=A1sin(ωt) ・・・(1)

また、第2励磁コイル駆動回路522は、第1励磁コイル駆動回路521から出力される励磁用交流電圧と同じ周波数であって、かつ、位相が90°遅れた励磁用交流電圧を第2励磁信号出力ポート50pe2から出力する。以下、第2励磁信号出力ポート50pe2から出力される励磁用交流電圧を第2励磁信号と呼び、第2励磁信号の電圧値を第2励磁電圧V2と呼ぶ。第2励磁電圧V2は、振幅をA2とすると、次式(2)にて表される。 V2=A2cos(ωt) ・・・(2) 尚、第1励磁電圧V1および第2励磁電圧V2の振幅A1,A2は、第1レゾルバ110,第2レゾルバ120の特性に合わせて設定される。

2つの励磁信号を生成するにあたって、例えば、アシストECU50は、正弦波信号をデジタル形式で記憶し、この正弦波信号を第1励磁コイル駆動回路521に出力するとともに、正弦波信号に対して位相が90°遅れた正弦波信号(つまり余弦波信号)を第2励磁コイル駆動回路522に出力する。各駆動回路521,522は、入力したデジタル信号をアナログ電圧信号に変換するD/A変換器(図示略)と、D/A変換器の出力信号を増幅するアンプ(図示略)とを備え、アンプから上記式で表される励磁信号を出力する。尚、励磁信号は、その他色々な方法で生成することができる。例えば、パルス列信号を第1励磁コイル駆動回路521に供給するとともに、このパルス列信号に対して位相が90°遅れたパルス列信号を第2励磁コイル駆動回路522に供給する。そして、各駆動回路521,522にて、パルス列信号に対して波形成形処理を施して、互いに位相が90°ずれた2種類の正弦波電圧を出力するようにしてもよい。

尚、第1励磁コイル駆動回路521と第2励磁コイル駆動回路522は、アシストECU50内のマイクロコンピュータからの指令により独立して制御される。従って、アシストECU50は、第1励磁信号と第2励磁信号とを独立して出力可能となっている。

第1励磁信号は、第1励磁ライン210を介して第1レゾルバ110の第1励磁コイル111に供給される。また、第2励磁信号は、第2励磁ライン220を介して第2レゾルバ120の第2励磁コイル121に供給される。

第1励磁信号により第1レゾルバ110の第1励磁コイル111が励磁されると、第1sin相検出コイル112および第1cos相検出コイル113で交流電圧が発生する。また、第2励磁信号により第2レゾルバ120の第2励磁コイル121が励磁されると、第2sin相検出コイル122および第2cos相検出コイル123で交流電圧が発生する。

第1sin相検出コイル112から出力される交流電圧信号の電圧値を第1sin相コイル電圧es1と呼び、第1cos相検出コイル113から出力される交流電圧信号の電圧値を第1cos相コイル電圧ec1と呼ぶ。また、第2sin相検出コイル122から出力される交流電圧信号の電圧値を第2sin相コイル電圧es2と呼び、第2cos相検出コイル123から出力される交流電圧信号の電圧値を第2cos相コイル電圧ec2と呼ぶ。

第1sin相コイル電圧es1、第1cos相コイル電圧ec1、第2sin相コイル電圧es2、第2cos相コイル電圧ec2は、次式(3)〜(6)にて表される。 es1=αA1sin(kθ1)・sin(ωt+φ) ・・・(3) ec1=αA1cos(kθ1)・sin(ωt+φ) ・・・(4) es2=αA2sin(kθ2)・cos(ωt+φ) ・・・(5) ec2=αA2cos(kθ2)・cos(ωt+φ) ・・・(6) ここで、θ1は入力シャフト12inに直結した第1レゾルバ110のロータの角度、θ2は出力シャフト12outに直結した第2レゾルバ120のロータの角度、αは第1レゾルバ110および第2レゾルバ120の変圧比、kは第1レゾルバ110および第2レゾルバ120の軸倍角、φは位相遅れ量、ωは角周波数、tは時間を表す。

図3は、この第1sin相コイル電圧es1、第1cos相コイル電圧ec1、第2sin相コイル電圧es2、第2cos相コイル電圧ec2を使って表したレゾルバユニット100の電気回路図である。各検出コイル112,113,122,123の内部抵抗の値(出力インピーダンス)は全てRaであり、コイル間抵抗150,160の抵抗値は全てR0である。

ここで、レゾルバユニット100の第1sin相信号出力ポート100ps1から出力される信号、つまり、アシストECU50の第1sin相信号入力ポート50ps1に入力される信号を第1sin相検出信号と呼び、その電圧値を第1sin相検出電圧Es1と呼ぶ。また、レゾルバユニット100の第1cos相信号出力ポート100pc1から出力される信号、つまり、アシストECU50の第1cos相信号入力ポート50pc1に入力される信号を第1cos相検出信号と呼び、その電圧値を第1cos相検出電圧Ec1と呼ぶ。レゾルバユニット100の第2sin相信号出力ポート100ps2から出力される信号、つまり、アシストECU50の第2sin相信号入力ポート50ps2に入力される信号を第2sin相検出信号と呼び、その電圧値を第2sin相検出電圧Es2と呼ぶ。また、レゾルバユニット100の第2cos相信号出力ポート100pc2から出力される信号、つまり、アシストECU50の第2cos相信号入力ポート50pc2に入力される信号を第2cos相検出信号と呼び、その電圧値を第2cos相検出電圧Ec2と呼ぶ。

尚、第1sin相検出信号、第1cos相検出信号、第2sin相検出信号、第2cos相検出信号は、本発明における合成信号に相当する。

第1sin相検出電圧Es1,第2sin相検出電圧Es2,第1cos相検出電圧Ec1,第2cos相検出電圧Ec2は次式(7)〜(10)にて表される。

また、各検出コイル112,113,122,123の抵抗値Raとコイル間抵抗150,160の抵抗値R0とを等しいとすると(Ra=R0)、第1sin相検出電圧Es1,第2sin相検出電圧Es2,第1cos相検出電圧Ec1,第2sin相検出電圧Ec2は次式(11)〜(14)にて表される。

アシストECU50は、第1sin相検出信号,第1cos相検出信号,第2sin相検出信号,第2cos相検出信号を、それぞれ第1sin相検出ライン212,第1cos相検出ライン213,第2sin相検出ライン222,第2cos相検出ライン223を介して入力する。アシストECU50は、第1sin相検出信号,第1cos相検出信号,第2sin相検出信号,第2cos相検出信号をアンプ51s1,51c1,51s2,51c2に入力してグランド電位に対する各検出信号の電圧を増幅し、増幅した電圧信号を図示しないA/D変換器によりデジタル値に変換し、このデジタル値をマイコンに入力してトルク計算処理を行う。

アシストECU50におけるトルク演算部32は、第1sin相検出信号,第1cos相検出信号,第2sin相検出信号,第2cos相検出信号を増幅しデジタル信号に変換してマイコンに入力する回路と、コイル駆動回路52と、マイコンによりトルク計算処理を行う機能部とから構成される。

次に、操舵トルクを計算する方法について説明する。操舵トルクは、第1レゾルバ110の回転角θ1(入力シャフト12inの回転角)と第2レゾルバ回転角θ2(出力シャフト12outの回転角)が分かれば算出することができる。また、回転角θ1は、sin(kθ1)の値とcos(kθ1)の値とが分かれば求めることができるが、トルク演算部32に入力される4つの検出信号には、それぞれ、第1励磁信号(A1sin(ωt))にかかる電圧成分と、第2励磁信号(A2cos(ωt))にかかる電圧成分が合成されているため、そのままでは、回転角θ12にかかる電圧値を別々に求められない。そこで、以下のようにして、第1励磁信号(A1sin(ωt))にかかる電圧成分と、第2励磁信号(A2cos(ωt))に係る電圧成分とを分離する。

トルク演算部32は、第1sin相検出信号,第1cos相検出信号,第2sin相検出信号,第2cos相検出信号の検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2を、T/N周期でサンプリングする。ここで、Tは、第1励磁信号,第2励磁信号の周期(T=2π/ω)であり、Nは1周期あたりのサンプリング回数(整数)である。トルク演算部32は、各サンプリングデータに、sin(ωt(k)+φ)なる値、あるいは、cos(ωt(k)+φ)なる値を乗じて、1周期にわたって積算する。この場合、t(k)は、次式(15)のように表される。 t(k)=t0+kT/N ・・・(15) (k=0,1,・・・,N−1) 図4は、一例として、N=4とした場合におけるサンプリングタイミングを表す。尚、Nは、3以上とする。

次式(16)に示すように、sin(ωt(k)+φ)に対して、sin(ωt(k)+φ)なる値を乗じ、その乗算された値を1周期にわたって積算すると、その計算値は、N/2となり、次式(17)に示すように、cos(ωt(k)+φ)に対して、sin(ωt(k)+φ)なる値を乗じ、その乗算された値を1周期にわたって積算すると、その計算値は、ゼロになるという性質がある。これは、sin関数とcos関数の直交性により説明される。

この性質を使えば、第1sin相検出信号,第1cos相検出信号,第2sin相検出信号,第2cos相検出信号を、sin信号で変調することにより、第1励磁信号(A1sin(ωt))成分と第2励磁信号(A2cos(ωt))成分とが合成されている信号から、第2励磁信号(A2cos(ωt))成分を除去することができる。また、同様にして、第1sin相検出信号,第1cos相検出信号,第2sin相検出信号,第2cos相検出信号を、cos信号で変調することにより、第1励磁信号(A2sin(ωt))成分を除去することができる。

トルク演算部32は、第1sin相検出信号,第1cos相検出信号,第2sin相検出信号,第2cos相検出信号の検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2をサンプリングし、その検出電圧Es1,Ec1に対してsin(ωt(k)+φ)なる値を乗じ、その乗算された値を1周期にわたって積算する。また、検出電圧Es2,Ec2に対してcos(ωt(k)+φ)なる値を乗じ、その乗算された値を1周期にわたって積算する。以下、検出信号の電圧サンプリング値にsin(ωt(k)+φ)なる値、あるいは、cos(ωt(k)+φ)なる値を乗じ、その乗算された値を1周期にわたって積算することを積和計算と呼ぶ。

第1sin相検出電圧Es1をsin信号で積和計算した値をSs1とし、第1cos相検出電圧Ec1をsin信号で積和計算した値をSc1とし、第2sin相検出電圧Es2をcos信号で積和計算した値をSs2とし、第2cos相検出電圧Ec2をcos信号で積和計算した値をSc2とすると、Ss1,Sc1,Ss2,Sc2は次式(18)〜(21)のように表される。

このSs1,Sc1,Ss2,Sc2は、第1sin相コイル電圧es1,第1cos相コイル電圧ec1,第2sin相コイル電圧es2,第2cos相コイル電圧ec2の振幅に応じた値となるため、以下、Ss1を第1sin相振幅と呼び、Sc1を第1cos相振幅と呼び、Ss2を第2sin相振幅と呼び、Sc2を第2cos相振幅と呼び、それらを総称する場合には、単に振幅Ss1,Sc1,Ss2,Sc2と呼ぶ。

従って、第1sin相振幅Ss1と第1cos相振幅Sc1とから、次式(22)のように第1レゾルバ110の回転角θ1を算出することができる。

また、第2sin相振幅Ss2と第2cos相振幅Sc2とから、次式(23)のように第2レゾルバ120の回転角θ2を算出することができる。

トルク演算部32は、このように、第1sin相検出電圧Es1,第1cos相検出電圧Ec1,第2sin相検出電圧Es2,第2sin相検出電圧Ec2をサンプリングして積和計算することにより、2つの励磁信号が合成された合成信号から一方の励磁信号成分を除去して、第1sin相振幅Ss1,第1cos相振幅Sc1,第2sin相振幅Ss2,第2cos相振幅Sc2を算出する。つまり、2つの励磁信号が合成された合成信号を積和計算によりフィルタ処理して任意の一方の信号を抽出して振幅Ss1,Sc1,Ss2,Sc2を算出する。そして、これらの振幅Ss1,Sc1,Ss2,Sc2を使って逆正接関数を計算することで回転角θ1および回転角θ2を算出する。

トルク演算部32は、算出した回転角θ1と回転角θ2とに基づいて、操舵トルクTrを次式(24)にて計算する。 Tr=Kb・(θ1−θ2) ・・・(24) ここでKbは、トーションバー12aの捩り特性に応じて決まる比例定数であり、予めマイコン内に記憶されている。

次に、レゾルバユニット100とアシストECU50とを電気的に接続する検出ライン212b,213b,222b,223bの1本が断線した時における回転角θ12の計算方法について説明する。こうした断線は、ワイヤハーネスの断線、あるいは、ワイヤハーネスをアシストECU50およびレゾルバユニット100に接続するコネクタの接触不良により発生する。従って、ここでは、レゾルバユニット100内における検出ライン212a,213a,222a,223aには断線が発生しないものとしている。

まず、ユニット外第1sin相検出ライン212bが断線した場合について説明する。例えば、図5に示すように、ユニット外第1sin相検出ライン212bが断線した場合、アシストECU50の第1sin相信号入力ポート50ps1には、第1sin相検出信号が入力されない。しかし、第2sin相信号入力ポート50ps2に入力される第2sin相検出信号には、第2sin相検出コイル122から出力される交流電圧信号(第2励磁信号(A2cos(ωt))成分)に加えて、第1sin相検出コイル112から出力される交流電圧信号(第1励磁信号(A1sin(ωt))成分)が含まれている。従って、第2sin相検出信号を使って、第1sin相検出コイル112から出力される交流電圧信号成分を抽出することができる。この場合、第2sin相検出電圧Es2をsin(ωt+φ)で積和計算することにより、次式(25)のように、回転角θ1のsin値に比例した値となる第1sin相振幅Ss1を算出することができる。

このように算出された第1sin相振幅Ss1は、断線前の値と比較すると、電気抵抗の分圧比の影響で小さくなるが、補正値mを予め記憶しておいて、この補正値mを乗じることにより回転角θ1を次式(26)のように計算することができる。

上記式において、分母のSc1は、上述したように第1cos相検出電圧Ec1をsin(ωt+φ)で積和計算した値である。また、補正値mは、分圧比から算出できるもので、次式(27)にて表される。

同様にして、ユニット外第1cos相検出ライン213bが断線した場合には、第2cos相検出電圧Ec2をsin(ωt+φ)で積和計算することにより、次式(28)のように、回転角θ1のcos値に比例した値となる第1cos相振幅Sc1を算出することができる。

従って、回転角θ1を次式(29)のように計算することができる。

同様にして、ユニット外第2sin相検出ライン222bが断線した場合には、第1sin相検出電圧Es1をcos(ωt+φ)で積和計算することにより、次式(30)のように、回転角θ2のsin値に比例した値となる第2sin相振幅Ss2を算出することができる。

従って、回転角θ2を次式(31)のように計算することができる。

同様にして、ユニット外第2cos相検出ライン223bが断線した場合には、第1cos相検出電圧Ec1をcos(ωt+φ)で積和計算することにより、次式(32)のように、回転角θ2のcos値に比例した値となる第2cos相振幅Sc2を算出することができる。

従って、回転角θ2を次式(33)のように計算することができる。

トルク演算部32は、このように検出ライン212b,213b,222b,223bの1本が断線した場合には、その断線した検出ラインとコイル間抵抗150,160により接続されている検出ラインから出力される検出信号に基づいて、断線した検出ライン側の振幅を算出する。つまり、コイル間抵抗150,160により接続されている検出ラインの一方が断線しても、断線していない側の検出ラインから、第1励磁信号(A1sin(ωt))成分と第2励磁信号(A2cos(ωt))成分とを分離して取り出して、それぞれの振幅を算出する。これにより、検出ライン212b,213b,222b,223bの1本が断線した場合においても、回転角θ1と回転角θ2とを算出することができ、最終的に操舵トルクTrを算出することができる。以下、コイル間抵抗150,160により互いに接続されている検出ラインをペアの関係となる検出ラインと呼ぶ。

尚、上述した手法を使えば、検出ラインが2本断線した場合においても、その断線した検出ラインがペアの関係でなければ、回転角θ12を算出することができる。つまり、図2に示す例においては、検出ライン212b,213bがともに断線している場合、あるいは、検出ライン222b,223bがともに断線している場合であれば、断線していない側の2本の検出ラインから回転角θ12を算出することができる。

また、本実施形態では、第1sin相検出ライン212と第2sin相検出ライン222とをコイル間抵抗150で接続し、第1cos相検出ライン213と第2cos相検出ライン223とをコイル間抵抗160で接続しているが、そうした構成に代えて、第1sin相検出ライン212と第2cos相検出ライン223とをコイル間抵抗150で接続し、第1cos相検出ライン213と第2sin相検出ライン222とをコイル間抵抗160で接続した構成であってもよい。要するに、第1レゾルバ110の2つの検出ラインの任意の一方と第2レゾルバの2つの検出ラインの任意の一方とをコイル間抵抗150で接続し、第1レゾルバ110の検出ラインの他方と第2レゾルバの検出ラインの他方とをコイル間抵抗160で接続するようにすればよい。

次に、トルク演算部32の実行する操舵トルク検出処理について説明する。図6は、操舵トルク検出ルーチンを表すフローチャートである。操舵トルク検出ルーチンは、マイコンのROM内に制御プログラムとして記憶されている。操舵トルク検出ルーチンは、イグニッションキーがオン状態となっている期間において、所定の短い周期で繰り返し実行される。尚、トルク演算部32は、操舵トルク検出ルーチンの起動とともに、コイル駆動回路52を作動させて、第1励磁信号出力ポート50pe1から第1励磁信号の出力を開始し、第2励磁信号出力ポート50pe2から第2励磁信号の出力を開始する。

トルク演算部32は、ステップS11において、検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2を読み込む。トルク演算部32は、操舵トルク検出ルーチンとは別のサンプリングルーチンで、励磁信号の1周期当たりに3回以上となるサンプリング周期で検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2の瞬時値をサンプリングしている。このステップS13の処理は、サンプリングルーチンでサンプリングした1周期分(あるいは、複数周期分でもよい)の検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2を読み込む処理である。続いて、トルク演算部32は、ステップS12において、検出電圧Es1,Ec1を上述したようにsin(ωt+φ)で積和計算し、検出電圧Es2,Ec2をcos(ωt+φ)で積和計算することにより、振幅Ss1,Sc1,Ss2,Sc2を算出する。

続いて、トルク演算部32は、ステップS13において、検出ライン212b,213b,222b,223bが断線しているか否かについて判定する。本実施形態においては、トルク演算部32は、振幅Ss1,Sc1の二乗和の値(Ss12+Sc12)が基準値Se未満となる場合に、ユニット外第1sin相検出ライン212bとユニット外第1cos相検出ライン213bの少なくとも一方が断線していると判断し、振幅Ss2,Sc2の二乗和の値(Ss22+Sc22)が基準値Se未満となるときに、ユニット外第2sin相検出ライン222bとユニット外第2cos相検出ライン223bの少なくとも一方が断線していると判断する。

検出ライン212b,213b,222b,223bが断線していない場合は、次式(34)が成立する。 (Ss12+Sc12)=(Ss22+Sc22)=(NαA/3)2=Ao2 ・・・(34) 尚、検出コイル112,113,122,123の内部抵抗の値Raとコイル間抵抗150,160の抵抗値R0とは等しく設定されている(Ra=R0)。また、第1励磁電圧V1,第2励磁電圧V2の振幅A1,A2は、等しい値Aに設定されている(A1=A2=A)。

ユニット外第1sin相検出ライン212bあるいはユニット外第1cos相検出ライン213bが断線した場合には、(Ss22+Sc22)=Ao2,(Ss12+Sc12)≦Ao2となり、ユニット外第2sin相検出ライン222bあるいはユニット外第2cos相検出ライン223bが断線した場合には、(Ss12+Sc12)=Ao2,(Ss22+Sc22)≦Ao2となる。基準値Seは、こうした性質を利用して、検出ライン212b,213b,222b,223bの断線の有無を判定するために予め設定された設定値である。

また、トルク演算部32は、(Ss12+Sc12)が基準値Se未満となる場合、あるいは、(Ss22+Sc22)が基準値Se未満となる場合に、さらに、検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2に基づいて、断線している検出ラインを特定する。(Ss12+Sc12)が基準値Se未満となる場合には、検出電圧Es1が0Vに維持されている状態であれば、ユニット外第1sin相検出ライン212bが断線していると判定し、検出電圧Ec1が0Vに維持されている状態であれば、ユニット外第1cos相検出ライン213bが断線していると判定する。また、(Ss22+Sc22)が基準値Se未満となる場合には、検出電圧Es2が0Vに維持されている状態であれば、ユニット外第2sin相検出ライン222bが断線していると判定し、検出電圧Ec2が0Vに維持されている状態であれば、ユニット外第2cos相検出ライン223bが断線していると判定する。このステップS13の処理は、4本の検出ラインのうち断線している検出ラインを特定して検出する断線検出手段に相当する。

トルク演算部32は、続くステップS14において、検出ライン212b,213b,222b,223bの断線が検出されたか否かを判断し、断線が検出されていない場合には、その処理をステップS15に進め、断線が検出されている場合には、その処理をステップS18に進める。

トルク演算部32は、ステップS15において、上述した式(22)、(23)に振幅Ss1,Sc1,Ss2,Sc2を代入して、第1レゾルバ110の回転角θ1と第2レゾルバ120の回転角θ2を計算する。続いて、ステップS16において、上述した式(24)を用いて操舵トルクTrを計算する。

続いて、トルク演算部32は、ステップS17において、計算された操舵トルクTrを表す操舵トルク検出信号をアシスト演算部31に出力する。アシスト演算部31は、この操舵トルクTrを使って目標アシストトルクを計算し、この目標アシストトルクに対応した目標電流が電動モータ21に流れるようにモータ駆動回路40にPWM制御信号を出力する。これにより、電動モータ21から適正な操舵アシストトルクが発生する。

一方、検出ライン212b,213b,222b,223bの何れかに断線が検出された場合(S14:No)、トルク演算部32は、ステップS18において、車両の警告ランプ65を点灯させる。これにより、ドライバーに対して異常が生じていることを認識させることができる。

続いて、トルク演算部32は、ステップS30において、断線時回転角計算処理を実行する。図7は、図6の操舵トルク検出ルーチンにおけるステップS30として組み込まれた断線時回転角計算ルーチン(サブルーチン)を表すフローチャートである。本ルーチンが起動すると、トルク演算部32は、ステップS31において、断線した検出ラインがユニット外第1sin相検出ライン212bであるか否かを判断し、ユニット外第1sin相検出ライン212bであると判断した場合には、ステップS32において、第2sin相検出電圧Es2をsin(ωt+φ)で積和計算して、上記式(25)で表される第1sin相振幅Ss1を算出する。続いて、ステップS33において、ステップS12で計算した振幅Sc1とステップS32で計算した振幅Ss1を上記式(26)に代入して回転角θ1を計算する。続いて、ステップS34において、ステップS12で計算した振幅Ss2と振幅Sc2を上記式(23)に代入して回転角θ2を計算して、断線時回転角計算ルーチンを抜けて、その処理を操舵トルク検出ルーチンのステップS16に進める。

また、ステップS35において、断線した検出ラインがユニット外第1cos相検出ライン213bであると判断した場合には、ステップS36において、第2cos相検出電圧Ec2をsin(ωt+φ)で積和計算して、上記式(28)で表される第1cos相振幅Sc1を計算する。続いて、ステップS37において、ステップS12で計算した振幅Ss1とステップS36で計算した振幅Sc1を上記式(29)に代入して回転角θ1を計算する。続いて、ステップS34において上述したように回転角θ2の計算を行う。

また、ステップS38において、断線した検出ラインがユニット外第2sin相検出ライン222bであると判断した場合には、ステップS39において、第1sin相検出電圧Es1をcos(ωt+φ)で積和計算して、上記式(30)で表される第2sin相振幅Ss2を計算する。続いて、ステップS40において、ステップS12で計算した振幅Sc2とステップS39で計算した振幅Ss2を上記式(31)に代入して回転角θ2を計算する。続いて、ステップS41において、ステップS12で計算した振幅Ss1と振幅Sc1とを上記式(22)に代入して回転角θ1を計算して、断線時回転角計算ルーチンを抜けて、その処理を操舵トルク検出ルーチンのステップS16に進める。

また、ステップS38において「No」と判断した場合、つまり、断線した検出ラインがユニット外第2cos相検出ライン223bであると判断した場合には、ステップS42において、第1cos相検出電圧Ec1をcos(ωt+φ)で積和計算して、上記式(32)で表される第2cos相振幅Sc2を計算する。続いて、ステップS43において、ステップS12で計算した振幅Ss2とステップS42で計算した振幅Sc2を上記式(33)に代入して回転角θ2を計算する。続いて、ステップS41において上述したように回転角θ1の計算を行い、その処理を操舵トルク検出ルーチンのステップS16に進める。

トルク演算部32は、ステップS17において、操舵トルク検出信号をアシスト演算部31に出力すると、操舵トルク検出ルーチンを終了する。そして、所定の短い周期にて操舵トルク検出ルーチンを繰り返す。

尚、本操舵トルク検出ルーチンにおいては、ステップS13にて検出ライン212b,213b,222b,223bのうち複数本が断線していることが検出された場合には、回転角の計算処理を行わずに、アシスト演算部31に対してトルク検出不能信号を出力する。これにより、アシスト演算部31は、操舵アシストを停止する。

但し、断線が検出された検出ラインが2本である場合であっても、その組み合わせによっては、回転角の計算が可能となるため、回転角の計算が可能な状態か否かを判断した後に、回転角の計算が可能な状態であれば、回転角を計算するようにしてもよい。つまり、断線した2本の検出ラインがペアとなる関係である場合(互いにコイル間抵抗により接続されている場合)においては、回転角を計算することができないが、そうでない場合には回転角を計算するようにしてもよい。

ここで、検出ラインが2本断線していると判断された場合の処理について説明する。図8は、2線断線時回転角計算ルーチンを表すフローチャートであり、例えば、図6の操舵トルク検出ルーチンのステップS13において、2本の検出ラインの断線が検出されたときに起動する。本ルーチンが起動すると、トルク演算部32は、ステップS51において、断線が検出された検出ラインの組み合わせに基づいて、回転角の計算が可能か否かを判断する。検出ライン212b,222bがともに断線している場合、あるいは、検出ライン213b,223bがともに断線している場合においては、回転角の計算が不能な状態となり、検出ライン212b,213bがともに断線している場合、あるいは、検出ライン222b,223bがともに断線している場合においては、回転角の計算が可能な状態となる。

トルク演算部32は、回転角の検出が可能な状態であると判断した場合(S51:Yes)には、続くステップS52において、断線した検出ラインがユニット外第1sin相検出ライン212bとユニット外第1cos相検出ライン213bとの2本であるか否かを判断する。

トルク演算部32は、断線した検出ラインがユニット外第1sin相検出ライン212bとユニット外第1cos相検出ライン213bとであると判断した場合(S52:Yes)、ステップS53において、第2sin相検出電圧Es2をsin(ωt+φ)で積和計算して第1sin相振幅Ss1を計算するとともに、第2sin相検出電圧Es2をcos(ωt+φ)で積和計算して第2sin相振幅Ss2を計算する。また、第2cos相検出電圧Ec2をsin(ωt+φ)で積和計算して第1cos相振幅Sc1を計算するとともに、第2cos相検出電圧Ec2をcos(ωt+φ)で積和計算して第2cos相振幅Sc2を計算する。

一方、断線した検出ラインがユニット外第2sin相検出ライン222bとユニット外第2cos相検出ライン223bとであると判断した場合(S52:No)、ステップS54において、第1sin相検出電圧Es1をsin(ωt+φ)で積和計算して第1sin相振幅Ss1を計算するとともに、第1sin相検出電圧Es1をcos(ωt+φ)で積和計算して第2sin相振幅Ss2を計算する。また、第1cos相検出電圧Ec1をsin(ωt+φ)で積和計算して第1cos相振幅Sc1を計算するとともに、第1cos相検出電圧Ec1をcos(ωt+φ)で積和計算して第2cos相振幅Sc2を計算する。

トルク演算部32は、ステップS53あるいはステップS54において、振幅Ss1,Sc1,Ss2,Sc2を計算すると、続くステップS55において、振幅Ss1,Sc1を上記式(22)に代入して回転角θ1を計算し、振幅Ss2,Sc2を上記式(23)に代入して回転角θ2を計算する。続いて、ステップS56において、上述した式(24)を用いて操舵トルクTrを計算し、ステップS57において、計算された操舵トルクTrを表す操舵トルク検出信号をアシスト演算部31に出力する。

また、ステップS51において、回転角の計算が不可能であると判断された場合(S51:No)には、ステップS58において、アシスト演算部31に対してトルク検出不能信号を出力する。これにより、アシスト演算部31は、操舵アシストを停止する。

以上説明した本実施形態のトルク検出装置においては、第1レゾルバ110の一方の検出コイル112の出力部と第2レゾルバ120一方の検出コイル122の出力部とがコイル間抵抗150を介して接続され、第1レゾルバ110の他方の検出コイル113の出力部と第2レゾルバ120の他方の検出コイル123の出力部とがコイル間抵抗160を介して接続される。そして、第1レゾルバ110に励磁信号を供給するための第1励磁ライン210と第2レゾルバ120に励磁信号を供給する第2励磁ライン220とが独立して設けられ、第1励磁ライン210に励磁用sin波信号が供給され、第2励磁ライン220に励磁用cos波信号が供給される。これにより、各検出ライン212,213,222,223からは、それぞれ2つの検出コイルから発生した電圧信号の合成された合成信号が出力される。従って、1本の検出ラインが断線しても、その断線した検出ラインとペアの関係となる検出ラインの合成信号から、励磁用sin波信号成分と励磁用cos波信号成分とを分離して抽出することにより、断線した検出ラインに直接繋がっていた検出コイルの振幅を算出することができる。

これにより、本実施形態のトルク検出装置によれば、1本の検出ラインが断線した場合であっても、第1レゾルバ110の回転角と第2レゾルバ120の回転角の計算が可能となり、操舵トルクを検出することができる。このため、電動パワーステアリング装置による操舵アシストを継続することができる。従って、電動パワーステアリング装置の信頼性が向上する。

また、2本の検出ラインが断線した場合でも、2つの回転角が計算可能な状況において操舵トルクを検出するように構成したものでは、断線に対する冗長性が得られる。

また、例えば、従来のトルク検出装置で検出ラインの断線に対する信頼性を向上させようとした場合には、検出ライン212b,213b,222b,223bをそれぞれ2本にして冗長構成にすることが考えられる。しかし、その場合には、検出ラインが4本増えて合計8本となる。これに対して、本実施形態においては、検出ラインの本数を増やすことなく実施できるためワイヤハーネスの構成が複雑にならない。また、各レゾルバ110,120の構成が従来のものとほとんど変わらないため、容易に実施することができる。

次に、いくつかの変形例について説明する。尚、上記実施形態と異なる構成について説明し、実施形態と共通する構成については説明を省略する。以下、上述した実施形態を基本実施形態と呼ぶ。まず、第1変形例について説明する。

<第1変形例> この第1変形例は、上記基本実施形態において、レゾルバユニット100における第1レゾルバ110と第2レゾルバ120との組み付け位相を電気角で90°ずらしたものである。一般に、トーションバーの両端にそれぞれレゾルバを組み付ける場合、各レゾルバは同位相で組み付けられる。つまり、トーションバーが捩れていない状態で、軸方向にそって各レゾルバのsin相検出コイルを見たとき(あるいはcos相検出コイルを見たとき)、それらが一致する位置に組み付けられる。

これに対して、第1変形例のレゾルバユニット100は、図9に示すように、トーションバー12aが捩れていない状態において、第1レゾルバ110と第2レゾルバ120との相対位置が、電気角で90°(機械角で90°/k)位相がずれるように組み付けられている。これにより、アシストECU50のアンプ51s1,51c1,51s2,51c2に入力される検出信号の最大電圧が、同位相で組み付けた場合に比べて小さくなり、アシストECU50におけるA/D変換時の分解能を上げることができる。つまり、アンプ51s1,51c1,51s2,51c2のゲインを大きくして、1分解単位あたりの電圧を小さくすることができる。これにより、精度の高い検出を行うことができる。

ここで、第1レゾルバ110と第2レゾルバ120とを互いに90°位相をずらした場合に、アシストECU50のアンプ51s1,51c1,51s2,51c2に入力される検出信号の最大電圧が小さくなる理由について説明する。

例えば、第1sin相検出電圧Es1は、次式(35)のように変換することができる。

ここで、φcは、θ12などで決まる位相である。

従って、アシストECU50に入力される最大電圧は、次式(36)にて表すことができる。尚、A1=A2=Aとする。

ここで、平方根の中を次式(37)のようにXとする。

Xは、kθ1=90°±180°×N、かつ、kθ2=90°±180°×Nの時に最大値5(X=5)となる。逆に、Xは、kθ1=±180°×N、かつ、kθ2=±180°×Nの時に最小値0(X=0)となる(N=0,1,2,3・・・)。図10は、kθ2−kθ1座標において、Xが最大値をとるときの角度を黒丸で表し、Xが最小値をとるときの角度を白丸で表している。

レゾルバユニット100は、第1レゾルバ110と第2レゾルバ120との捩れ角度(トーションバー12aの捩れ角度)が機械的に制限されており、kθ1とkθ2のとり得る範囲は制限されている。例えば、第1レゾルバ110と第2レゾルバ120とが同位相(トーションバー12aが捩れていない状態で、各レゾルバ110,120のsin相検出コイルが軸方向に見て一致する位置)に組み付けられている場合、トーションバー12aの最大捩れ角度を±θd(機械角)とすると、kθ1とkθ2のとり得る範囲を表す制約式は、次式(38)にて表すことができる。

この制約範囲を、図10のグラフに表すと、ハッチングを施した帯状範囲となる。この帯状範囲は、傾き1で一定幅となる。この範囲には、Xが最大値となるポイント(黒丸)と最小値となるポイント(白丸)との両方が含まれる。

次に、レゾルバユニット100における第1レゾルバ110と第2レゾルバ120との組み付け位相を電気角で90°(機械角で90°/k)ずらした場合を考える。この場合、kθ1とkθ2のとり得る範囲を表す制約式は、次式(39)にて表すことができる。

この制約範囲をkθ2—kθ1座標に表したものが図11である。この図から分かるように、kθ1とkθ2のとり得る帯状範囲には、Xが最大値となるポイント(黒丸)が含まれていない。従って、第1レゾルバ110と第2レゾルバ120とを同位相にて組み付けた場合(図10)に比べて、アシストECU50に入力される検出電圧の最大値を小さくすることができる。これにより、アシストECU50において検出電圧の分解能を上げることができ、精度の高い検出を行うことができる。

尚、トーションバー12aの中立時における第1レゾルバ110と第2レゾルバ120との位相ずれ角をθs(機械角)とすると、上記のような最大電圧抑制効果を発揮できる範囲は、次式(40)で表される範囲となる(N=0,1,2,3・・・)。

例えば、トーションバー12aの最大捩れ角度θdを電気角で50°に制限している電動パワーステアリング装置においては、第1レゾルバ110と第2レゾルバ120とのずれ角を、電気角で40°〜130°にしておけば最大電圧抑制効果を発揮することができるが、最も最大電圧を抑制できるのは、ずれ角が電気角で90°の場合である。そのため、この変形例1においては、ずれ角を電気角で90°としている。

この変形例1においては、最大電圧抑制効果に加えて、検出ライン212b,213b,222b,223bの故障(断線や地絡)検出がより確実になるという効果も奏する。上述した基本実施形態においては、第1レゾルバ110の回転角と第2レゾルバ120の回転角がともに0°である場合、検出電圧Es1と検出電圧Es2は、ともに出力されないため、検出ライン212b,213b,222b,223bが故障していることを判定するのに時間を要する。つまり、ステアリングシャフト12が回転して一方の検出電圧が得られるまで待つ必要がある。これに対して、この第1変形例では、検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2の振幅が0Vになることが無いため、常に、検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2から故障検出を行うことができる。

例えば、トルク検出装置の設計段階でわかっている検出電圧Es1の最低電圧をVminとすれば、検出電圧Es1の電圧を一定時間だけピークホールドし、ホールドした電圧値がVmin未満であれば検出ライン212b,213b,222b,223bの故障であると判定するとよい。ピークホールドする時間は、故障検出に必要な時間を設定すればよい。

<第2変形例> 上述した変形例1においては、第1レゾルバ110と第2レゾルバ120とを位相が90°ずれるように組み付けているが、第2変形例においては、それに代えて、図12、図13に示すように、ユニット内第1sin相検出ライン212aとユニット内第2cos相検出ライン223aとを、コイル間抵抗150を介して電気的に接続し、ユニット内第1cos相検出ライン213aとユニット内第2sin相検出ライン222aとを、コイル間抵抗160を介して電気的に接続する。この場合、第1レゾルバ110と第2レゾルバ120とは、互いに同位相となるように組み付けられている。

この第2変形例においては、例えば、第1sin相検出電圧Es1は、次式(41)のように変換することができる。

従って、アシストECU50に入力される最大電圧は、次式(42)にて表すことができる。尚、A1=A2とする。

この場合、平方根の中の値X(=(2sin(kθ1))2+(cos(kθ2))2)の最大値は、トーションバー12aの最大捩れ角度が電気角で50°に制限されているため、5より小さな値となる(X<5)。従って、第2変形例においても、第1変形例と同様に、アシストECU50に入力される検出電圧の最大値を小さくすることができる。これにより、アシストECU50において検出電圧の分解能を上げることができ、精度の良い検出を行うことができる。また、第1変形例と同様に、検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2の振幅が0Vになることが無いため、常に、検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2から検出ライン212b,213b,222b,223bの故障検出を行うことができる。

<第3変形例> 上述した基本実施形態においては、検出ライン212b,213b,222b,223bの断線に対しては対応することができるが、検出ライン212b,213b,222b,223bの地絡(例えば、グランドライン240とのシュートによる地絡、ケーシングとのショートによる地絡)に対しては対応することができない。例えば、図14に示すように、ユニット外第2sin相検出ライン222bが地絡した場合、P点(ユニット内第2sin相検出ライン222aとコイル間抵抗150との接続点152)の電位が0Vになる。このため、アシストECU50の第1sin相信号入力ポート50ps1に入力される検出信号Es1は、第1励磁信号(A1sin(ωt))にかかる電圧成分のみの信号となってしまう。

そこで、この第3変形例においては、図15に示すように、レゾルバユニット100内に地絡対応抵抗ユニット170を備えている。この地絡対応抵抗ユニット170は、第1sin相検出ライン212におけるコイル間抵抗150との接続点151と第1sin相信号出力ポート100ps1との間に電気抵抗素子171を設け、第1cos相検出ライン213におけるコイル間抵抗160との接続点161と第1cos相信号出力ポート100pc1との間に電気抵抗素子172を設け、第2sin相検出ライン222におけるコイル間抵抗150との接続点152と第2sin相信号出力ポート100ps2との間に電気抵抗素子173を設け、第2cos相検出ライン223におけるコイル間抵抗160との接続点162と第2cos相信号出力ポート100pc2との間に電気抵抗素子174を設けたものである。尚、各電気抵抗素子171、172,173,174の電気抵抗値は、全て同一の値Rbに設定されている。

この地絡対応抵抗ユニット170を設けることで、検出ライン212b,213b,222b,223bの1本が地絡した場合であっても、その地絡した検出ラインにおけるコイル間抵抗との接続点の電位が0Vになってしまうことがない。従って、地絡した検出ラインとペアの関係となる検出ライン(地絡した検出ラインとコイル間抵抗で接続される検出ライン)から出力される信号は、第1励磁信号(A1sin(ωt))にかかる電圧成分と、第2励磁信号(A2cos(ωt))にかかる電圧成分が合成されているため、上述した積和計算を使って、各検出コイルの振幅Ss1,Sc1,Ss2,Sc2を求めることができる。

この場合、アシストECU50に入力される信号の検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2が、断線時における検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2と相違するため、回転角θ12の計算に必要な振幅Ss1,Sc1,Ss2,Sc2の補正が必要となる。ここで、例として、図15,図16に示すように、、ユニット外第2sin相検出ライン222bが地絡した場合における、回転角θ12の計算方法について説明する。

第1sin相検出電圧Es1は、次式(43)のように表される。

ここで、C1,C2は次式(44),(45)のように表される定数である。

この第1sin相検出電圧Es1をsin(ωt+φ)で積和計算して得られる第1sin相振幅Ss1、および、第1sin相検出電圧Es1をcos(ωt+φ)で積和計算して得られる第2sin相振幅Ss2は、次式(46),(47)にて表される。

従って、回転角θ12は、補正値m1,m2を使って次式(48),(49)のように計算することができる。

この補正値m1,m2は、次式(50),(51)にて計算される定数である。

同様にして、ユニット外第1sin相検出ライン212bが地絡した場合においては、その検出ライン212bとペアの関係となるユニット外第2sin相検出ライン222bからアシストECU50に入力される第2sin相検出電圧Es2から、第1sin相振幅Ss1、および、第2sin相振幅Ss2を計算する。

第2sin相検出電圧Es2は、次式(52)のように表される。

この第2sin相検出電圧Es2をsin(ωt+φ)で積和計算して得られる第1sin相振幅Ss1、および、第2sin相検出電圧Es2をcos(ωt+φ)で積和計算して得られる第2sin相振幅Ss2は、次式(53),(54)にて表される。

従って、回転角θ12は、次式(55),(56)のように計算することができる。

同様にして、ユニット外第1cos相検出ライン213bが地絡した場合においては、その検出ライン213bとペアの関係となるユニット外第2cos相検出ライン223bからアシストECU50に入力される第2cos相検出電圧Ec2から、第1cos相振幅Sc1、および、第2cos相振幅Sc2を計算する。

第2cos相検出電圧Ec2は、次式(57)のように表される。

この第2cos相検出電圧Ec2をsin(ωt+φ)で積和計算して得られる第1cos相振幅Sc1、および、第2cos相検出電圧Ec2をcos(ωt+φ)で積和計算して得られる第2cos相振幅Sc2は、次式(58),(59)にて表される。

従って、回転角θ12は、次式(60),(61)のように計算することができる。

同様にして、ユニット外第2cos相検出ライン223bが地絡した場合においては、その検出ライン223bとペアの関係となるユニット外第1cos相検出ライン213bからアシストECU50に入力される第1cos相検出電圧Ec1から、第1cos相振幅Sc1、および、第2cos相振幅Sc2を計算する。

第1cos相検出電圧Ec1は、次式(62)のように表される。

この第1cos相検出電圧Ec1をsin(ωt+φ)で積和計算して得られる第1cos相振幅Sc1、および、第1cos相検出電圧Ec1をcos(ωt+φ)で積和計算して得られる第2cos相振幅Sc2は、次式(63),(64)にて表される。

従って、回転角θ12は、次式(65),(66)のように計算することができる。

ここで、第3変形例におけるトルク演算部32の処理について説明する。図17は、トルク演算部32の実行する操舵トルク検出ルーチンを表すフローチャートである。図中において、基本実施形態と同一の処理については、共通のステップ番号を用いて破線にて表されている。この操舵トルク検出ルーチンは、基本実施形態の操舵トルク検出ルーチンにステップS101,S102,S103,S60を追加したものである。

トルク演算部32は、ステップS13の処理後、ステップS101において、検出ライン212b,213b,222b,223bが地絡しているか否かを判断する。検出ライン212b,213b,222b,223bの何れかが地絡している場合には、振幅Ss1,Sc1の二乗和の値(Ss12+Sc12)、および、振幅Ss2,Sc2の二乗和の値(Ss22+Sc22)は、何れも正常時の値Ao2よりも小さな値となる((Ss12+Sc12)

2,(S

s2

2+S

c2

2)

2)。従って、第3変形例においては、トルク演算部32は、振幅S

s1,S

c1の二乗和の値(S

s1

2+S

c1

2)が予め設定した地絡判定用の基準値Sg未満となり、かつ、振幅S

s2,S

c2の二乗和の値(S

s2

2+S

c2

2)が基準値Sg未満となるか否かについて判断する。

そして、この判断により、検出ライン212b,213b,222b,223bの何れかが地絡していると判定された場合には、さらに、検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2に基づいて、地絡している検出ラインを特定する。この場合、検出電圧Es1が0Vに維持されている状態であれば、ユニット外第1sin相検出ライン212bが地絡していると判定し、検出電圧Ec1が0Vに維持されている状態であれば、ユニット外第1cos相検出ライン213bが地絡していると判定する。検出電圧Es2が0Vに維持されている状態であれば、ユニット外第2sin相検出ライン222bが地絡していると判定し、検出電圧Ec2が0Vに維持されている状態であれば、ユニット外第2cos相検出ライン223bが地絡していると判定する。このステップS101の処理は、4本の検出ラインのうち地絡している検出ラインを特定して検出する地絡検出手段に相当する。

尚、トルク演算部32は、検出ライン212b,213b,222b,223bのうち複数本が地絡していることが検出された場合には、回転角の計算処理を行わずにアシスト演算部31に対してトルク検出不能信号を出力する。これにより、アシスト演算部31は、操舵アシストを停止する。

トルク演算部32は、ステップS102において、地絡の有無を判断し、検出ライン212b,213b,222b,223bの何れかが地絡している場合には、ステップS103において、車両の警告ランプ65を点灯させ、続いて、ステップS60の地絡時回転角計算処理を実行する。図18は、図17の操舵トルク検出ルーチンにおけるステップS60として組み込まれた地絡時回転角計算ルーチン(サブルーチン)を表すフローチャートである。本ルーチンが起動すると、トルク演算部32は、ステップS61において、地絡した検出ラインがユニット外第1sin相検出ライン212bであるか否かを判断し、ユニット外第1sin相検出ライン212bであると判断した場合には、ステップS62において、第2sin相検出電圧Es2をsin(ωt+φ)で積和計算して第1sin相振幅Ss1を算出し、第2sin相検出電圧Es2をcos(ωt+φ)で積和計算して第2sin相振幅Ss2を算出する。続いて、ステップS63において、ステップS12で計算した振幅Sc1,Sc2と、ステップS62で計算した振幅Ss1,Ss2を上記式(55),(56)に代入して回転角θ12を計算して、地絡時回転角計算ルーチンを抜けて、その処理を操舵トルク検出ルーチンのステップS16に進める。

また、ステップS64において、地絡した検出ラインがユニット外第1cos相検出ライン213bであると判断した場合には、ステップS65において、第2cos相検出電圧Ec2をsin(ωt+φ)で積和計算して第1cos相振幅Sc1を算出し、第2cos相検出電圧Ec2をcos(ωt+φ)で積和計算して第2cos相振幅Sc2を算出する。続いて、ステップS66において、ステップS12で計算した振幅Ss1,Ss2と、ステップS65で計算した振幅Sc1,Sc2を上記式(60),(61)に代入して回転角θ12を計算して、地絡時回転角計算ルーチンを抜けて、その処理を操舵トルク検出ルーチンのステップS16に進める。

また、ステップS67において、地絡した検出ラインがユニット外第2sin相検出ライン222bであると判断した場合には、ステップS68において、第1sin相検出電圧Es1をsin(ωt+φ)で積和計算して第1sin相振幅Ss1を算出し、第1sin相検出電圧Es1をcos(ωt+φ)で積和計算して第2sin相振幅Ss2を算出する。続いて、ステップS69において、ステップS12で計算した振幅Sc1,Sc2と、ステップS68で計算した振幅Ss1,Ss2を上記式(48),(49)に代入して回転角θ12を計算して、地絡時回転角計算ルーチンを抜けて、その処理を操舵トルク検出ルーチンのステップS16に進める。

また、ステップS67において「No」と判断した場合、つまり、地絡した検出ラインがユニット外第2cos相検出ライン223bであると判断した場合には、ステップS70において、第1cos相検出電圧Ec1をsin(ωt+φ)で積和計算し第1cos相振幅Sc1を算出し、第1cos相検出電圧Ec1をcos(ωt+φ)で積和計算して第2cos相振幅Sc2を算出する。続いて、ステップS71において、ステップS12で計算した振幅Ss1,Ss2と、ステップS70で計算した振幅Sc1,Sc2を上記式(65),(66)に代入して回転角θ12を計算して、地絡時回転角計算ルーチンを抜けて、その処理を操舵トルク検出ルーチンのステップS16に進める。

以上説明した第3変形例によれば、基本実施形態の効果に加えて、検出ライン212b,213b,222b,223bの何れかが地絡した場合であっても、操舵トルクを検出することができる。これにより、電動パワーステアリング装置の信頼性が一層向上する。

<第4変形例> 第1レゾルバ110と第2レゾルバ120とをコイル間抵抗150,160で接続した構成においては、コイル間抵抗150,160で接続しない構成に比べて、アシストECU50に入力される第1sin相検出信号,第1cos相検出信号,第2sin相検出信号,第2cos相検出信号の検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2の振幅が低下する。例えば、Ra=Rbとした場合には、検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2の振幅が2/3程度に低下する。このため、アシストECU50における分解能低下が課題となる。

そこで、第4変形例においては、アシストECU50(トルク演算部32)は、コイル間抵抗で互いに接続されている検出ラインの検出信号の検出電圧をそれぞれA/D変換した後、その検出電圧値を加算してから積和計算を行う。つまり、ペアとなる関係の検出ラインの検出電圧値同士を加算してから、その加算値に対して積和計算を行う。例えば、図2に示す構成においては、第1sin相検出信号の検出電圧Es1と第2sin相検出信号の検出電圧Es2をそれぞれA/D変換した後、検出電圧Es1,Es2を表すデジタル値を加算する。従って、加算された値は、次式(67)に示すように、第1sin相コイル電圧es1と第2sin相コイル電圧es2とを加算した値となる。

そして、この加算値をsin(ωt+φ)で積和計算することにより、次式(68)のように、第1sin相振幅Ss1を算出することができ、cos(ωt+φ)で積和計算することにより、次式(69)のように、第2sin相振幅Ss2を算出することができる。

同様に、第1cos相検出信号の検出電圧Ec1と第2cos相検出信号の検出電圧Ec2をそれぞれA/D変換した後、検出電圧Ec1,Ec2を表すデジタル値を加算すると、次式(70)に示すように、第1cos相コイル電圧ec1と第2cos相コイル電圧ec2とを加算した値となる。

そして、この加算値をsin(ωt+φ)で積和計算することにより、次式(71)に示すように、第1cos相振幅Sc1を算出することができ、cos(ωt+φ)で積和計算することにより、次式(72)に示すように、第2cos相振幅Sc2を算出することができる。

従って、補正値mを用いることなく、上記式(22),(23)を使って回転角θ12を計算することができる。

このように、第4変形例によれば、A/D変換器への入力レンジを変えることなく、計算後の振幅Ss1,Ss2,Sc1,Sc2を1.5倍にすることができるため、分解能向上により精度の高い計算が可能になる。尚、上記計算処理に代えて、励磁信号の1周期あたりのサンプリング回数を1.5倍にすれば同等の計算精度を確保することができるが、その場合には、操舵トルクの演算周期が長くなるため応答が遅れてしまいあまり好ましくない。

この第4変形例においては、図6のトルク検出ルーチンのステップS12において、上記のように検出電圧の加算値を使って振幅Ss1,Sc1,Ss2,Sc2を計算するようにすればよい。但し、検出ラインの何れかに断線等の故障が検出された場合には、こうした方法により分解能を向上できない。従って、トルク演算部32は、検出ラインの断線が検出されていない間は、こうした演算処理を行い、検出ラインの断線が検出された場合には、上述した基本実施形態の演算処理に戻す。

<第5変形例> 上述した基本実施形態においては、検出コイル112,113,122,123の内部抵抗(出力インピーダンス)Raの温度特性と、コイル間抵抗150,160の抵抗R0の温度特性が異なると、レゾルバユニット100内の温度変化によって、補正値m(=1+R0/Ra)が適正から外れてしまい、正確な回転角θ12を計算できなくなるという課題を生じる。

第5変形例は、この課題を解決するものである。以下、2つの変形例(第5変形例1,第5変形例2)について説明する。

<第5変形例1> 第5変形例1におけるレゾルバユニット100は、検出コイル112,113,122,123と同じ材料で作った巻線を、コイル間抵抗150,160として組み込んだものである。この場合、コイル間抵抗150,160と検出コイル112,113,122,123とは、レゾルバユニット100の共通のケーシング内に設けられるため、コイル間抵抗150,160の抵抗R0の温度特性と、検出コイル112,113,122,123の内部抵抗Raの温度特性とが同じになる。これにより、レゾルバユニット100内の温度が変化しても補正値mは変化しない。従って、第5変形例1によれば、レゾルバユニット100内の温度変化に関わらず、正確な回転角θ12を計算することができ、その結果、トルク検出精度が向上する。

<第5変形例2> 第5変形例2は、上述した課題をアシストECU50における計算手法を変えて解決するものである。例えば、ユニット外第1sin相検出ライン212bが断線した場合には、第2sin相検出電圧Es2をsin(ωt+φ)で積和計算して第1sin相振幅Ss1を計算するとともに、第2cos相検出電圧Ec2をcos(ωt+φ)で積和計算して第1cos相振幅Sc1を計算する。このようにすると、回転角θ1の計算に際して、次式(73)に示すように、第1sin相振幅Ss1と第1cos相振幅Sc1の両方に補正値mが乗算されるため、補正値mが相殺され、温度による影響を補償することができる。

他の検出ラインが断線した場合においても、同様に計算することで、温度による影響を補償することができる。

ここで、第5変形例2における操舵トルク検出処理について説明する。図19は、第5変形例2における断線時回転角計算ルーチンを表す。この断線時回転角計算ルーチンは、基本実施形態の操舵トルク検出ルーチンにおけるステップS30に代えて実行される処理である。

本ルーチンが起動すると、トルク演算部32は、ステップS81において、断線した検出ラインがユニット外第1sin相検出ライン212bであるか否かを判断し、ユニット外第1sin相検出ライン212bであると判断した場合には、ステップS82において、第2sin相検出電圧Es2をsin(ωt+φ)で積和計算して、上記式(25)で表される第1sin相振幅Ss1を算出する。続いて、ステップS83において、第2cos相検出電圧Ec2をsin(ωt+φ)で積和計算して、上記式(28)で表される第1cos相振幅Sc1を算出する。続いて、ステップS84において、ステップS82,83で計算された振幅Ss1,Sc1を上記式(22)に代入して回転角θ1を計算し、ステップS12で計算した振幅Ss2,Sc2を上記式(23)に代入して回転角θ2を計算する。トルク演算部32は、2つの回転角θ12の計算が完了すると、断線時回転角計算ルーチンを抜けて、その処理を操舵トルク検出ルーチンのステップS16に進める。

また、ステップS85において、断線した検出ラインがユニット外第1cos相検出ライン213bであると判断した場合には、ステップS86において、第2cos相検出電圧Ec2をsin(ωt+φ)で積和計算して、上記式(28)で表される第1cos相振幅Sc1を算出する。続いて、ステップS87において、第2sin相検出電圧Es2をsin(ωt+φ)で積和計算して、上記式(25)で表される第1sin相振幅Ss1を算出する。続いて、ステップS84において、ステップS86,87で計算された振幅Sc1,Ss1を上記式(22)に代入して回転角θ1を計算し、ステップS12で計算した振幅Ss2,Sc2を上記式(23)に代入して回転角θ2を計算する。トルク演算部32は、2つの回転角θ12の計算が完了すると、断線時回転角計算ルーチンを抜けて、その処理を操舵トルク検出ルーチンのステップS16に進める。

また、ステップS88において、断線した検出ラインがユニット外第2sin相検出ライン222bであると判断した場合には、ステップS89において、第1sin相検出電圧Es1をcos(ωt+φ)で積和計算して、上記式(30)で表される第2sin相振幅Ss2を算出する。続いて、ステップS90において、第1cos相検出電圧Ec1をcos(ωt+φ)で積和計算して、上記式(32)で表される第2cos相振幅Sc2を算出する。続いて、ステップS84において、ステップS12で計算した振幅Ss1,Sc1を上記式(22)に代入して回転角θ1を計算し、ステップS89,90で計算された振幅Ss2,Sc2を上記式(23)に代入して回転角θ2を計算する。トルク演算部32は、2つの回転角θ12の計算が完了すると、断線時回転角計算ルーチンを抜けて、その処理を操舵トルク検出ルーチンのステップS16に進める。

また、ステップS88において「No」と判断した場合、つまり、断線した検出ラインがユニット外第2cos相検出ライン223bであると判断した場合には、ステップS91において、第1cos相検出電圧Ec1をcos(ωt+φ)で積和計算して、上記式(32)で表される第2cos相振幅Sc2を算出する。続いて、ステップS92において、第1sin相検出電圧Es1をcos(ωt+φ)で積和計算して、上記式(30)で表される第2sin相振幅Ss2を算出する。続いて、ステップS84において、ステップS12で計算した振幅Ss1,Sc1を上記式(22)に代入して回転角θ1を計算し、ステップS91,92で計算された振幅Sc2,Ss2を上記式(23)に代入して回転角θ2を計算する。トルク演算部32は、2つの回転角θ12の計算が完了すると、断線時回転角計算ルーチンを抜けて、その処理を操舵トルク検出ルーチンのステップS16に進める。

このように第5変形例2においては、1本の検出ラインの断線が検出された場合には、検出ラインの断線が検出されていない方のレゾルバの出力する2つの検出信号から4つの検出コイルの出力成分である振幅Ss1,Sc1,Sc2,Ss2を分離して計算する。従って、レゾルバユニット100内の温度変化に関わらず、正確な回転角θ12を計算することができ、トルク検出精度が向上する。

<第6変形例> 上述した基本実施形態においては、検出コイル112,113,122,123の有するインダクタンスの影響で、検出コイル112,113,122,123の出力する交流信号の位相、つまり、コイル電圧es1,ec1,es2,ec2の励磁信号成分(sin(ωt+φ),cos(ωt+φ))の位相と、アシストECU50に入力される検出信号の位相、つまり、検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2の励磁信号成分(sin(ωt+φ),cos(ωt+φ))の位相がずれる場合がある。位相がずれた状態で積和計算を行うと、正確な振幅Ss1,Sc1,Ss2,Sc2を算出することができないという課題が生じる。従って、検出コイル112,113,122,123の有するインダクタンスの影響が大きい場合には、その対策が必要となる。

第6変形例は、この課題を解決するものである。以下、2つの変形例(第6変形例1,第6変形例2)について説明する。

<第6変形例1> 位相ずれ量は、インダクタンスや抵抗で決まる。そこで、第6変形例1においては、設計段階で予め位相ずれ量ψを計算や実験により求めておき、この位相ずれ量ψをアシストECU50のメモリに記憶しておく。図20は、位相ずれ量ψを説明するもので、実線で表すsin(ωt+φ)に対してψだけ位相のずれたsin(ωt+φ+ψ)の波形を破線にて表している。この第6変形例1におけるアシストECU50は、上記基本実施形態あるいは上記各変形例において行う積和計算時に、sin(ωt+φ)あるいはcos(ωt+φ)に代えて、sin(ωt+φ+ψ)あるいはcos(ωt+φ+ψ)を乗算する。これにより、位相ずれが生じている状態であっても、正確な振幅Ss1,Sc1,Ss2,Sc2を算出することができ、その結果、トルク検出精度が向上する。

<第6変形例2> 第6変形例2は、図21に示すように、コイル間抵抗150,160に直列にインダクタ180,190を接続してレゾルバユニット100を構成したものである。このインダクタ180,190のインダクタンスL0は、設計段階で計算や実験により適切な値(位相ずれが発生しない値)に設定される。これによれば、検出コイル112,113,122,123の出力インピーダンスと、コイル間抵抗150,160のインピーダンスを等しくすることができ、コイル電圧es1,ec1,es2,ec2と検出電圧Es1,Ec1,Es2,Ec2の位相ずれを解消することができる。従って、正確な振幅Ss1,Sc1,Ss2,Sc2を算出することができ、トルク検出精度が向上する。

<第7変形例> 上述した基本実施形態のように、第1レゾルバ110と第2レゾルバ120とをコイル間抵抗150,160で接続した構成においては、コイル間抵抗150,160が断線したり劣化等によりその抵抗値R0が大幅に変動したりすると、レゾルバユニット100からアシストECU50に適正な電圧信号を出力することができなくなる。これにより、正確な回転角の検出を行うことができなくなる。

そこで、第7変形例においては、コイル間抵抗150,160の抵抗値R0を常時監視し、抵抗値R0が正常範囲から外れている場合には、その異常レベルに応じて、ドライバーへの警告、あるいは、アシスト演算部31に対してアシスト停止指令を出力するようにしたものである。

まず、抵抗値R0の計算方法について説明する。第1sin相検出信号の検出電圧Es1、および、第1sin相検出信号の検出電圧Es1と第2sin相検出信号の検出電圧Es2との和は、次式(74),(75)のように表される。

この検出電圧Es1と加算値(Es1+Es2)についてsin(ωt+φ)で積和計算して得られる値をSs1,Ss12とすると、Ss1,Ss12は次式(76),(77)のように表される。

Ss1とSs12との比をaとすると、aは次式(78)にように表される。

この式から、抵抗値R0は次式(79)のように表される。

ここで、Raは既知であり、aは検出電圧のサンプリング値の積和計算により求められるものである。従って、抵抗値R0は、計算により求めることができる。

この抵抗値R0は、コイル間抵抗150の抵抗値であるが、コイル間抵抗160の抵抗値R0についても同様にして計算することができる。この場合、第1cos相検出信号の検出電圧Ec1、および、第1cos相検出信号の検出電圧Ec1と第2cos相検出信号の検出電圧Ec2との和(Ec1+Ec2)を、cos(ωt+φ)で積和計算し、得られた値をSc1,Sc12とすれば、その比a(=Sc1/Sc12)は、コイル間抵抗150の抵抗値の計算用のものと同じ式で表される。これにより、コイル間抵抗160の抵抗値R0を計算することができる。

ここで、第7変形例におけるトルク演算部32の処理について説明する。図22は、トルク演算部32の実行する操舵トルク検出ルーチンを表すフローチャートである。図中において、基本実施形態と同一の処理については、共通のステップ番号を用いて破線にて表されている。この操舵トルク検出ルーチンは、基本実施形態の操舵トルク検出ルーチンにステップS111,S112,S113,S114,S115を追加したものである。

トルク演算部32は、ステップS13の処理後、ステップS111において、コイル間抵抗150およびコイル間抵抗160の抵抗値R0を上述した式を使ってそれぞれ計算する。トルク演算部32は、続いて、ステップS112において、コイル間抵抗150およびコイル間抵抗160の抵抗値R0が適正範囲に入っているか否かについて判断する。この場合、トルク演算部32は、基準抵抗値R00と、コイル間抵抗150およびコイル間抵抗160の抵抗値R0との差の大きさ(|R00−R0|)を計算し、その値(抵抗値差|ΔR|と呼ぶ)が許容判定値W1以下であるか否かを判断する。この基準抵抗値R00は、設計上の適正値であり、予め設定されている。トルク演算部32は、コイル間抵抗150の抵抗値R0およびコイル間抵抗160の抵抗値R0が、ともに基準抵抗値R00を中心とした±W1の範囲に入る場合には、コイル間抵抗150およびコイル間抵抗160の抵抗値R0が適正であると判定して、上述したステップS14からの処理を実行する。

一方、コイル間抵抗150の抵抗値R0とコイル間抵抗160の抵抗値R0とのいずれかでも適正範囲に入らない場合には、ステップS113において、当該コイル間抵抗の抵抗値R0が警告範囲に入っているか否かについて判断する。この場合、トルク演算部32は、基準抵抗値R00と当該コイル間抵抗の抵抗値R0との抵抗値差|ΔR|が警告判定値W2以下であるか否かを判断する。この警告判定値W2は、警告範囲の境界を設定するもので、許容判定値W1よりも大きな値に予め設定されている。トルク演算部32は、ステップS113において、当該コイル間抵抗の抵抗値R0が警告範囲に入っていると判定した場合には、ステップS114において、車両の警告ランプ65を点灯させ、その処理を上述したステップS14に進める。

一方、コイル間抵抗150の抵抗値R0とコイル間抵抗160の抵抗値R0とのいずれかでも警告範囲から外れる場合には、トルク演算部32は、ステップS115において、アシスト演算部31に対してトルク検出不能信号を出力する。これにより、アシスト演算部31は、操舵アシストを停止する。

コイル間抵抗150,160の抵抗値R0は、コイル間抵抗150,160が断線した場合には非常に大きな値(例えば、無限大)となり、コイル間抵抗150,160が短絡(検出ライン212aと検出ライン222aとの短絡、検出ライン213aと検出ライン223aとの短絡)した場合には、非常に小さな値(例えばゼロ)となる。このため、基準抵抗値R00と当該コイル間抵抗の抵抗値R0との抵抗値差ΔR(=R00−R0)の符号(正負)およびその大きさにより断線と短絡とを判別することができる。

以上説明した第7変形例の操舵トルク検出ルーチンによれば、コイル間抵抗150,160の抵抗値異常が発生した場合には、その異常レベルが警告レベルであれば、ドライバーに対して異常である旨を知らせることができる。また、異常レベルが警告レベルを超える場合には、操舵アシストを停止させることができる。このため、経年によるコイル間抵抗150,160の抵抗値R0の変化に対しては、操舵アシストを突然停止させることなく、安全性が維持される期間においてドライバーに部品交換を促すことができる。また、突然発生したコイル間抵抗150,160の断線や短絡に対しては、速やかに操舵アシストを停止させるため、安全性が高い。

尚、上記説明は、検出コイル112,113,122,123の抵抗値Raを既知として抵抗値R0を計算しているが、検出コイル112,113,122,123の何れかが故障して抵抗値Raが変化した場合には、Ss1とSs12との比であるaの値が変化するため、結果として、抵抗値Raの変化が抵抗値R0の変化として表れる。従って、抵抗値R0の計算による故障診断を行っていれば、検出コイル112,113,122,123の異常も検出することができる。

また、上述した操舵トルク検出ルーチンにおいては、コイル間抵抗150,160の抵抗値R0と基準抵抗値R00との抵抗値差|ΔR|の大きさに基づいて、異常レベルを判断しているが、それに代えて、Ss1とSs12との比であるaの値と、基準値a0との差の大きさ(|a0−a|)に基づいて、異常レベルを判断するようにしてもよい。例えば、ステップS112においては、|a0−a|が許容判定値W1以下であるか否かを判定し、ステップS113において、|a0−a|が警告判定値W2以下であるか否かを判定するようにすればよい。この構成であっても、上記構成と同様に、コイル間抵抗150,160の抵抗値異常および検出コイル112,113,122,123の抵抗値異常を検出することができる。

ところで、上述した操舵トルク検出ルーチンにおいては、コイル間抵抗150,160の何れか一方でも断線した場合には、操舵アシストを停止させるようにしているが、コイル間抵抗150,160が断線した場合であっても、検出ライン212b,213b,222b,223bがいずれも断線していない状況であれば、操舵アシストを停止させないようにすることもできる。この場合、ステップS15の回転角θ12の計算に当たっては、第4変形例で示した方法を用いればよい。つまり、検出電圧Es1,Es2の加算値(Es1+Es2)をsin(ωt+φ)で積和計算して得られた第1sin相振幅Ss1とcos(ωt+φ)で積和計算して得られた第2sin相振幅Ss2、および、検出電圧Ec1,Ec2の加算値(Ec1+Ec2)をsin(ωt+φ)で積和計算して得られた第1cos相振幅Sc1とcos(ωt+φ)で積和計算して得られた第2cos相振幅Sc2を使って回転角θ12を計算する。こうすることにより、回転角θ12の計算値にコイル間抵抗150,160の断線の影響が表れない。このため、操舵アシストを継続して実行することができ、電動パワーステアリング装置の冗長性を確保することができる。

尚、このようなコイル間抵抗150,160が断線した場合でも操舵アシストを継続する方法は、検出ラインライン212b,213b,222b,223bがいずれも断線していない状況においてのみ実施できるものである。従って、トルク演算部32は、操舵トルク検出ルーチンにおいて、コイル間抵抗150,160の断線の有無および検出ライン212b,213b,222b,223bの断線の有無を繰り返し判断し、コイル間抵抗150,160が断線している状況から更に検出ライン212b,213b,222b,223bの少なくとも一本が断線したことを検出した場合には、アシスト演算部31に対してトルク検出不能信号を出力して操舵アシストを停止させる。

<第8変形例> 上述した基本実施形態および変形例においては、第1励磁ライン210あるいは第2励磁ライン220が断線した場合には、回転角θ12を計算することができず、操舵アシストを停止する必要がある。そこで、第8変形例においては、ワイヤハーネス部となるユニット外第1励磁ライン210bあるいユニット外第2励磁ライン220bが断線した場合でも、回転角θ12を計算できるようにしたものである。

図23は、第8変形例に係るレゾルバユニット100の構成を表す。このレゾルバユニット100は、基本実施形態のレゾルバユニット100において、ユニット内第1励磁ライン210aとユニット内第2励磁ライン220aとを電気抵抗素子230で接続したものである。以下、電気抵抗素子230を励磁ライン間抵抗230と呼び、その抵抗値をReとする。図24は、このレゾルバユニット100の電気回路図である。

まず、回転角θ12の計算方法について説明する。 a=(R0+Ra)/(R0+2Ra)とすると、第1sin相検出電圧Es1,第2sin相検出電圧Es2は次式(80),(81)にて表される。

この方程式を解くと、第1sin相コイル電圧es1と第2sin相コイル電圧es2は、次式(82),(83)にて表される。

同様にして、第1cos相検出電圧Ec1,第2cos相検出電圧Ec2は次式(84),(85)にて表される。

この方程式を解くと、第1cos相コイル電圧ec1と第2cos相コイル電圧ec2は、次式(86),(87)にて表される。

従って、この計算によりコイル電圧es1,es2,ec1,ec2を求める事ができる。

トルク演算部32は、このようにしてコイル電圧es1,es2,ec1,ec2を計算し、さらに、コイル電圧es1,es2,ec1,ec2を積和計算することにより振幅Ss1,Ss2,Sc1,Sc2を求める。例えば、第1レゾルバ110のコイル電圧es1,ec1をsin(ωt+φ)で積和計算して振幅Ss1,Sc1を算出し、第2レゾルバ120のコイル電圧es2,ec2をcos(ωt+φ)で積和計算して振幅Ss2,Sc2を算出する。そして、この振幅Ss1,Sc1を上記式(22)に代入することにより第1回転角θ1を算出し、振幅Ss2,Sc2を上記式(23)に代入することにより第2回転角θ2を算出する。

次に、ユニット外第1励磁ライン210bあるいはユニット外第2励磁ライン220bが断線した場合の回転角θ12の計算方法について説明する。レゾルバユニット100では、図25に示すように、ユニット外第1励磁ライン210bが断線した場合でも、励磁ライン間抵抗230を介して第1レゾルバ110に励磁信号が供給される。また、図26に示すように、ユニット外第2励磁ライン220bが断線した場合でも、励磁ライン間抵抗230を介して第2レゾルバ120に励磁信号が供給される。

そこで、トルク演算部32は、ユニット外第1励磁ライン210bが断線した場合には、第1レゾルバ110および第2レゾルバ120に第2励磁信号(A2cos(ωt))が供給されることになるため、コイル電圧es1,es2,ec1,ec2をcos(ωt+φ)で積和計算することにより振幅Ss1,Ss2,Sc1,Sc2を算出する。この場合、コイル電圧es1,es2,ec1,ec2を求める上記の計算式は、ユニット外第1励磁ライン210bの断線に関わらず変化しないため、トルク演算部32は、上記式を使ってコイル電圧es1,es2,ec1,ec2を計算し、そのコイル電圧es1,es2,ec1,ec2をcos(ωt+φ)で積和計算して振幅Ss1,Ss2,Sc1,Sc2を算出する。そして、振幅Ss1,Sc1を上記式(22)に代入することにより第1回転角θ1を算出し、振幅Ss2,Sc2を上記式(23)に代入することにより第2回転角θ2を算出する。

ユニット外第1励磁ライン210bが断線した場合には、第1励磁コイル111に流れる電流は、励磁ライン間抵抗230の影響で通常時に比べて小さくなる。従って、コイル電圧es1,ec1は低下するが、コイル電圧es1とコイル電圧ec1との比は通常時と同じであるため、回転角θ1の算出には影響しない。

同様に、トルク演算部32は、ユニット外第2励磁ライン220bが断線した場合には、第1レゾルバ110および第2レゾルバ120に第1励磁信号(A1sin(ωt))が供給されることになるため、コイル電圧es1,es2,ec1,ec2をsin(ωt+φ)で積和計算することにより振幅Ss1,Ss2,Sc1,Sc2を算出する。この場合、コイル電圧es1,es2,ec1,ec2を求める上記の計算式は、ユニット外第2励磁ライン220bの断線に関わらず変化しないため、トルク演算部32は、上記式を使ってコイル電圧es1,es2,ec1,ec2を計算し、そのコイル電圧es1,es2,ec1,ec2をsin(ωt+φ)で積和計算して振幅Ss1,Ss2,Sc1,Sc2を算出する。そして、振幅Ss1,Sc1を上記式(22)に代入することにより第1回転角θ1を算出し、振幅Ss2,Sc2を上記式(23)に代入することにより第2回転角θ2を算出する。

尚、第8変形例の構成においては、ユニット外第1励磁ライン210bあるいはユニット外第2励磁ライン220bが断線している状態で、更に、検出ライン212b,213b,222b,223bの何れかが断線した状況においては、回転角を計算することができない。従って、トルク演算部32は、操舵トルク検出ルーチンにおいて、励磁ライン210b、220bの断線の有無および検出ライン212b,213b,222b,223bの断線の有無を繰り返し判断し、励磁ライン210b、220bの少なくとも一本が断線し、かつ、検出ライン212b,213b,222b,223bの少なくとも一本が断線している状況であることを検出した場合には、アシスト演算部31に対してトルク検出不能信号を出力して操舵アシストを停止させる。

また、ユニット外第1励磁ライン210bとユニット外第2励磁ライン220bとの両方とも断線していない状態で、検出ライン212b,213b,222b,223bの何れかが断線した場合には、上述した方法では回転角θ12を算出することができない。従って、トルク演算部32は、検出ライン212b,213b,222b,223bの何れかの断線を検出した場合には、基本実施形態の計算方法(図6のステップS30)に切り替える。

尚、トルク演算部32は、励磁ライン210b,220bの断線検出を行う断線検出手段を備えている。この断線検出については、例えば、以下のように行うことができる。ユニット外第1励磁ライン210bが断線した場合には、振幅Ss1,Sc1の二乗和の値(Ss12+Sc12)と振幅Ss2,Sc2の二乗和の値(Ss22+Sc22)の比((Ss12+Sc12)/(Ss22+Sc22))が、通常時における比に対して、予め設定された割合だけ低下する。

同様に、ユニット外第2励磁ライン220bが断線した場合には、振幅Ss1,Sc1の二乗和の値(Ss12+Sc12)と振幅Ss2,Sc2の二乗和の値(Ss22+Sc22)の比((Ss12+Sc12)/(Ss22+Sc22))が、通常時における比に対して、予め設定された割合だけ増加する。

そこで、トルク演算部32は、操舵トルク検出ルーチンにおいて、振幅Ss1,Sc1の二乗和の値(Ss12+Sc12)と振幅Ss2,Sc2の二乗和の値(Ss22+Sc22)の比Z(=(Ss12+Sc12)/(Ss22+Sc22))を計算し、その比Zが第1基準値Z1(<1)の近傍範囲である場合には、ユニット外第1励磁ライン210bが断線していると判定し、比Zが第2基準値Z2(>1)の近傍範囲である場合には、ユニット外第2励磁ライン220bが断線していると判定する。この第1基準値Z1、第2基準値Z2は、ユニット外第1励磁ライン210b、ユニット外第2励磁ライン220bが断線したときの比Zの想定値であり、予め実験あるいは計算により設定されてアシストECU50のメモリに記憶されている。

また、比Zによる断線判定に代えて、例えば、振幅Ss1,Sc1の二乗和の値(Ss12+Sc12)が、通常値よりも低い基準値Sf1の近傍範囲である場合に、ユニット外第1励磁ライン210bが断線していると判定し、振幅Ss2,Sc2の二乗和の値(Ss22+Sc22)が、通常値よりも低い基準値Sf2の近傍範囲である場合に、ユニット外第2励磁ライン220bが断線していると判定するようにしてもよい。この基準値Sf1,Sf2は、ユニット外第1励磁ライン210b、ユニット外第2励磁ライン220bが断線したときの振幅の二乗和の想定値であり、予め実験あるいは計算により設定されてアシストECU50のメモリに記憶されている。

尚、トルク演算部32は、励磁ライン210,220、検出ライン212b,213b,222b,223bの何れかが断線したことを検出した場合には、警告ランプ65を点灯させてドライバーに異常を知らせる。

以上説明した第8変形例によれば、第1励磁ライン210あるいは第2励磁ライン220の何れかが断線した場合であっても、回転角θ12を算出することができるため、電動パワーステアリング装置による操舵アシストを継続することができる。また、第1励磁ライン210あるいは第2励磁ライン220の何れかが断線し、かつ、検出ライン212b,213b,222b,223bの何れかが断線した場合には、操舵アシストを停止するため安全である。

また、励磁ライン210,220、検出ライン212b,213b,222b,223bの何れかが断線した場合には、警告ランプ65が点灯するため、ドライバーに部品交換を促すことができる。これにより、ワイヤハーネスにおいて2本が断線するという二重故障の発生を抑制することができ、操舵アシストが停止される不具合を抑制することができる。

以上、本実施形態および変形例について説明したが、本発明は上記実施形態および変形例に限定されることなく、本発明の範囲内において他の種々の変形例を採用することができる。例えば、上述した変形例を複数組み合わせるようにしてもよい。また、トルク検出装置は、車両用電動パワーステアリング装置に設けられて操舵トルクを検出するものに限らず、他の装置に設けられるものであってもよい。

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