【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は，移動エージェント技術に関し，より詳しくは，エージェントを用いた仮想マーケットにおいて，エージェント間の対話をモニターする機構に関する。

【０００２】

【従来の技術】移動エージェントは，処理を実行するプログラム・コードの部分と，処理の結果等，エージェントの状態を表すデータとから構成される。 そして，移動エージェントは，コンピュータ・ネットワークに接続されたコンピュータに設けられた，エージェントの実行環境上で，他の移動エージェントとメッセージの交換等で，他のエージェントと対話を行い，必要な処理を実行する。 また，必要があれば自ら他のコンピュータ内の実行環境に移動する。

【０００３】このエージェント間の対話は，メッセージ・オブジェクトのやり取りや，メソッド・コールによって行われている。 このエージェント間の対話は，従来，
他のエージェントには公開されておらず，第３のエージェントが他のエージェントの対話内容をモニターする機構は何ら提案されていなかった。

【０００４】対話が公開されるとプライバシの問題が生ずる場合があるが，一方で対話を公開することにより利益を得る場合も考えられる。 例えば，商品の売手（店舗エージェント）と買手（顧客エージェント）が商品情報の交換や売買を行う仮想マーケットについて考えてみる。 店舗エージェントは，商品データを有しており，顧客エージェントからの検索要求に対して商品候補を返す。 従来，このような対話は非公開で行われるが，例えば，購入対象の検索内容を公開すると，単純な商品検索に割り込むような様々なエージェントを実現することができるようになる。 付随的な情報を提供するエージェントとして，例えば，宣伝エージェントは，検索対象商品に関連する商品を顧客エージェントに紹介する。 また，
類似品を提供するエージェントが，検索対象商品に類似の商品を提供する旨伝えたり，統計エージェントが，仮想マーケットにおける商品検索の統計をモニターして，
顧客エージェントに伝えたりすることが考えられる。 顧客エージェントは，そのような情報を元に，さらなる商品情報の取得，そして，最適な商品の購入等の処理が実施できるようになる。

【０００５】なお，移動エージェントについては，例えば米国特許５６０３０３１号（特開平７−１８２１７４
号公報）に詳しく記載されているが，本特許においては，メッセージの公開については何らの記載もない。 また，この米国特許の移動エージェントと本願発明における移動エージェントは様々な点において差異がある。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】よって，本発明は，エージェント間の対話を公開するための機構を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために，エージェントの実行環境は，エージェントからのメッセージをモニターするモニター機構を含むようにする。 このモニター機構は，マネージャー・エージェントによって実行されるようにすることもできる。 実行環境内にモニター機構を含めることも可能である。

【０００８】また，マネージャー・エージェントは，送信元エージェントからメッセージを受信し，当該メッセージの宛先エージェントへ転送する機能を有する。 マネージャー・エージェントはメッセージの仲介を行うものである。 また，マネージャー・エージェントは，あるエージェントからのメッセージを，当該メッセージの宛先エージェント以外のエージェントに送信する機能を有する。

【０００９】さらに，マネージャー・エージェントは，
エージェントの実行環境で活動を開始したエージェントからの登録メッセージに応答して，当該登録メッセージ送信元を登録する機能を有するようにすることも可能である。

【００１０】この登録メッセージには，当該登録メッセージ送信元のエージェントの種類が含まれ，マネージャー・エージェントの登録機能が，当該エージェントの種類に応じて，登録処理を実施するようば構成も可能である。

【００１１】また，マネージャー・エージェントは，エージェントの実行環境で活動を開始したエージェントから，当該エージェントに転送すべき，他のエージェントが発したメッセージの条件を含むモニター登録メッセージを受信したことに応答して，当該モニター登録メッセージの送信元エージェントと先の条件を登録する機能を有するようにすることも考えられる。

【００１２】この登録する機能は，モニタ登録メッセージの条件が既にマネージャー・エージェントに登録されているか否か判断する手段と，既に登録されていると判断された時には，既に登録されている条件に対応して送信元エージェントを記憶する手段とを含むようにすることも考えられる。

【００１３】また，先に示した転送する機能は，あるエージェントからメッセージを受信したことに応答して，
メッセージの内容で登録された条件を検索し，合致する条件が存在する場合には，当該合致する条件の登録元エージェントにメッセージを送信するような構成も考えられる。

【００１４】エージェントの実行環境は一例として仮想マーケットとすることができる。 他の種類の実行環境であってもよい。 また，仮想マーケットでは，エージェントの種類は，顧客エージェントと店舗エージェントとなる。

【００１５】以上は，マネージャー・エージェントの側から本発明を示したが，エージェントが，マネージャー・エージェントに，自らの登録を要求する登録メッセージを送信する手段を有するように構成することも可能である。

【００１６】さらに，エージェントが，マネージャー・
エージェントに転送させる，他のエージェントが発したメッセージの条件を記憶したデータ記憶部と，この条件を，マネージャー・エージェントにモニター登録メッセージとして送信する手段とを有するようにすることも可能である。

【００１７】さらに，エージェントが，他のエージェントからのメッセージを受信する受信手段と，受信したメッセージが他エージェント宛てのメッセージである場合には，当該メッセージの内容に関連する内容を含む関連内容メッセージを作成する手段と，他エージェントを宛先として関連内容メッセージを送信する手段とをさらに含むようにすることもできる。 これは例えば店舗エージェントである。

【００１８】また，この関連内容メッセージを作成する手段が，受信したメッセージの内容を検査し，当該内容に関連する，自己が保持する情報を取り出す手段と，自己が保持する情報をメッセージの形式に変換する手段とを含むようにすることも考えられる。

【００１９】以上述べた本発明は，処理のフローとして把握することも可能である。 また，当該処理を実施するコンピュータ・プログラムとして実施することも可能である。 この際，コンピュータ・プログラムを，ＣＤ−Ｒ
ＯＭ，フロッピー・ディスクなどの記憶媒体に格納することは当業者が通常実施することである。

【００２０】

【発明の実施の形態】以下，この発明の一実施例を図面に基づいて説明する。 図１は，本発明のモニター機構を有する仮想マーケットのブロック図である。 この中で，
店舗エージェントならびに顧客エージェントは，それぞれの端末において生成され，仮想マーケットにネットワークを介して送信される様子が示されている。 仮想マーケット１は，エージェントを活動可能とするような環境，すなわちエージェントの実行環境の１つである。 これらのエージェントのユーザは，自己のエージェントの発話が，他エージェントによりモニターされることを了解した上で，エージェントをこのマーケットに参加させる。 なお，エージェントの実行環境は，通常のコンピュータ上で構築することができる。 このコンピュータは，
１又は複数のプロセッサと，メインメモリ，ハードディスク装置のような記憶装置を有しており，様々なプログラムを実行できる。 ネットワーク３を介して通信を実施するので，通信用のアダプタなども備えている。

【００２１】図１において，端末２は店舗の経営者や従業員によって操作される店舗端末であり，店舗エージェント２ａを生成する機能を有する。 店舗エージェント５
ａはユーザからの商品情報の入力等を支援するためのユーザインタフェース手段６と，商品情報を保存する商品データ７と，商品情報を顧客エージェント９に提供する手段８から構成される。 一方，端末３は顧客によって操作される顧客端末であり，顧客エージェント９ａを生成する機能を有する。 顧客エージェント９ａはユーザが欲しい商品の条件を入力するためのユーザインタフェース手段１０と，検索要求（検索条件）を保持する機構１１
と，当該検索要求を店舗エージェント２に送信する情報取得手段１２から構成される。 なお，エージェント５ａ
と５ｂ，ならびにエージェント９ａと９ｂはそれぞれ同一のものであり，送信１３及び１４によって仮想マーケットに送信されてきたものである。 仮想マーケット１
は，エージェント間の対話を管理するマネージャー４を含んでいる。 エージェントからの検索要求１５や商品提供１６等のメッセージは，マネージャー４を経由して他のエージェントに送信される。 顧客端末及び店舗端末も通常のコンピュータにて構築することができ，エージェントの生成及びエージェントへの入力，エージェントからの出力をユーザに示すことなできるような設定がなされている。

【００２２】図１における処理の流れについて説明する。 まず，店舗端末２において，店舗エージェント５が生成され，ユーザはユーザインタフェース手段６を使って商品情報を入力する。 商品情報は商品データ７に保存され，その後店舗エージェント５ａは送信１３のように仮想マーケット１に送信される。 次に，顧客端末３において，顧客エージェント９ａが生成され，ユーザはユーザインタフェース手段１０を使って検索条件（検索要求）１１を入力する。 そして，顧客エージェント９ａ
は，送信１４で仮想マーケット１に送信される。 送信された顧客エージェント９ｂは，検索条件１１を基にしてメッセージ１５を生成し，店舗エージェント５ｂに送信するが，この際，メッセージ１５は一旦マネージャー４
に送信され，マネージャー４がこれを店舗エージェント５ｂに送信する。 店舗エージェント９ｂは，送信されてきたメッセージ１５の中から，検索要求１１を抽出し，
この条件に基づいて，自分の持つ商品データ７の中から条件を満たす商品を見つけ出す。 そして，店舗エージェント５ａは商品リストを含むメッセージ１６を生成し，
これを顧客エージェント９ｂに送信する。 この際，メッセージ１６は一旦マネージャー４に送信され，マネージャー４がこれを顧客エージェント９ｂに送信する。

【００２３】図１のような商品検索が行われている時に，別のエージェントがその対話をモニターし，割り込む様子を図２に示す。 図２において，マネージャー４，
店舗エージェント５，顧客エージェント９は図１のものと同一のものであり，店舗エージェント１７は店舗エージェント５とは別のものであり，対話をモニターし割り込みをかけるエージェントである。 まず，顧客エージェント９は検索要求１５ａをマネージャー４に送信し，マネージャー４は検索要求１５ｂを店舗エージェント５に送信する。 これに対し，店舗エージェント５は商品情報提供１６ａをマネージャー４に送信する。 マネージャー４は商品情報提供１６ｂを顧客エージェント９に送信し，さらに商品情報提供１６ｃを店舗エージェント１７
にも送信する。 店舗エージェント１７は，このようにしてモニターした商品情報提供１６ｃに基づいて，関連情報提供１８ａを生成し，これをマネージャー４に送信する。 マネージャー４は，この関連情報提供１８ｂを顧客エージェント９に送信する。

【００２４】仮想マーケット１における全体の処理をまとめると，図３，図４，図５のようになる。 図３において，店舗エージェント５は店舗端末２で生成されると，
まず，ユーザからの商品データの入力を受け付け (1
9)，入力された商品データを持って仮想マーケットに移動する (20)。 仮想マーケット１に到着すると，マネージャー４への登録を実行し (21)，登録要求 (22)がマネージャー４に通知され，マネージャー４は店舗エージェント５を登録する。 一方，顧客エージェント９は顧客端末３で生成されると，まず，ユーザからの検索条件の入力を受け付け (23)，入力された検索要求を持って仮想マーケット１に移動する (24)。 仮想マーケット１に到着すると，顧客エージェント９はマネージャー４への登録を実行し (25)，登録要求 (26)がマネージャー４に通知され，マネージャー４は顧客エージェント９を登録する。

【００２５】図４において，店舗エージェント５がモニター条件の登録（27）を実行することによりモニター条件（28）がマネージャー４に送信される。 この後この店舗エージェント５は，メッセージの送信（29）を実行することによりメッセージ（30）がマネージャー４に送信され，他のエージェントからのメッセージ（32）がマネージャー４から送信されてくるとメッセージの受け取り（31）を実行する。 以上のメッセージの送信（29）とメッセージの受け取り（31）は繰り返される(33)。 一方，
顧客エージェント９がモニター条件の登録（34）を実行することによりモニター条件（35）がマネージャー４に送信される。 この後，顧客エージェント９は，メッセージの送信（36）を実行することによりメッセージ（37）
がマネージャー４に送信され，他のエージェントからのメッセージ（39）がマネージャー４から送信されてくるとメッセージの受け取り（38）を実行する。 以上のメッセージの送信（36）とメッセージの受け取り（38）は繰り返される(40)。

【００２６】図５において，店舗エージェント５は退去通知（41）を実行する事により抹消要求（42）がマネージャー４に送信され，店舗端末２に移動（43）を実行することにより仮想マーケット１から店舗端末２に実際に移動する。 この後店舗エージェント５は，店舗端末２において実行結果を表示する(44)。 顧客エージェント９は退去通知（45）を実行する事により抹消要求（41）がマネージャー４に送信され，顧客端末に移動（47）を実行することにより仮想マーケット１から顧客端末３に実際に移動する。 その後，顧客エージェント９は，顧客端末３において実行結果を表示する(48)。

【００２７】次に，顧客エージェント９の構成を示す。
図６に示すように，顧客エージェント９はユーザインタフェース手段９，データ５１，手続き５９から構成される。 ユーザインタフェース手段９は顧客が検索要求を入力する検索条件入力画面４９と検索結果を表示する検索結果出力画面５０から構成される。 データ５１は，エージェントが生成された場所すなわち顧客端末３の場所を示すホームアドレス５２，行き先である仮想マーケット１の場所を示す行き先アドレス５３，マネージャー４を特定するマネージャーid (54)，検索を依頼する店舗エージェントを特定する店舗id (55)，顧客によって入力された検索要求を保持する検索条件５６，検索の結果得られた情報を蓄えるための商品リスト５７，関連する商品に関する情報を格納する関連情報５８から構成される。 なお，全てのデータが格納される又は用いられなくともよい。 手続き５９は，検索条件入力画面４９を表示するための入力画面表示手続き６０，入力された検索条件を格納する入力データ格納手続き６１，検索結果出力画面５０を表示する出力画面表示手続き６２，自分が別の場所に移動するための移動手続き６３，仮想マーケット１に到着した際に自分をマネージャー４に登録するためのマネージャー４への登録手続き６４，マーケット１
から退去することをマネージャー４に知らせる退去通知手続き６５，検索要求をマネージャー４に送信する検索要求の発行手続き６５，提供された商品情報を受け取るための商品情報受け取り手続き６７，提供された関連情報を受け取るための関連情報受け取り手続き６８，モニターしたい内容を登録するモニター登録手続き６９を含む。

【００２８】さらに，店舗エージェント９の構成を図７
に示す。 店舗エージェント５はユーザインタフェース手段６，データ７３，手続き７８から構成される。 ユーザインタフェース手段６は店舗ユーザが商品情報を入力する商品情報入力画面７０と統計情報を表示する統計情報出力画面７１から構成される。 データ７２は，エージェントが生成された場所すなわち店舗端末２の場所を示すホームアドレス７３，行き先である仮想マーケット1の場所を示す行き先アドレス７４，マネージャー４を特定するマネージャーid (75)，入力された商品情報を蓄えるための商品リスト７６から構成される。 これらデータは，場合によっては用いられない又は格納されない。 手続き７９は，商品情報入力画面７０を表示するための入力画面表示手続き８０，入力された商品情報を格納する入力データ格納手続き８１，統計情報出力画面７１を表示する出力画面表示手続き８２，自分が別の場所に移動するための移動手続き８３，仮想マーケット１に到着した際に自分をマネージャー４に登録するためのマネージャー４への登録手続き８４，マーケット１から退去することをマネージャー４に知らせる退去通知手続き８５，
検索要求をマネージャー４から受け取る検索条件受け取り手続き８６，受け取った検索条件から商品情報を検索する商品データ検索手続き８７，検索した商品情報をマネージャー４に送信する商品情報送信手続き８８，モニターしたい内容を登録するモニター登録手続き８９，提供された商品情報を受け取るための商品情報受け取り手続き９０，受け取った商品情報から関連情報を生成する関連情報生成手続き９１，関連情報をマネージャー４に送信する関連情報送信手続き９２を含む。

【００２９】また，マネージャー４の構成を図８に示す。 マネージャー４はデータ９３と手続き９７から構成される。 データ９３は，仮想マーケット１に参加している顧客エージェント９を示す顧客リスト９４，参加している店舗エージェントを示す店舗リスト９５，エージェントによって登録されたモニター条件を格納するモニター条件テーブル９６から構成される。 手続き９７は，エージェントが仮想マーケットにやってきた際に，これを登録するエージェント登録手続き９８，エージェントが仮想マーケット１から退去する際にこれを抹消する登録抹消手続き９９，エージェントからのメッセージを受け付けるメッセージ受け取り手続き１００，受け取ったメッセージを目的のエージェントに送信するためのメッセージ転送手続き１０１，エージェントからのモニターの登録を受け付けるためのモニター登録受付手続き１０
２，受け取ったメッセージとモニター条件テーブル９６
を比較し，これらが一致していた場合に第三者エージェントにメッセージを転送する他エージェントへのメッセージ転送手続き１０３を含む。

【００３０】図９は店舗エージェントが持つ商品に関するデータの記述例を示したものであり，商品リスト７７
は，このようにして表現された商品のリストとして表現される。 図９はあるノートブックパソコンを表現したものであり，CATEGORY=NOTEBOOK (104) はこの商品のカテゴリーがノートブックであることを示している。 MAKER=
SHARP (105) はメーカーがSharpであること，BRAND=Meb
iusNote (106) はブランド名がメビウスノートであること（メビウスはシャープ社の商標），NAME=MebiusNote
7350 (107) は商品名を，MODEL=MN-7350 (108) はモデル名を，PRICE=418000 (109) は価格を，ID=#0 (110)
は商品のidを，CPU=Pentium 150 (111) はCPUを（Penti
umはIntel社の商標)，MEMORY=32 (112) はメモリーのサイズを，それぞれ示している。

【００３１】図１０は顧客が入力した検索要求の内部表現の例であり，このようにして表現されたものが顧客エージェント９の検索条件５６の中に格納されている。 ここでは，CATEGORY=NOTEBOOK (113) はカテゴリーがノートブックであること，MAKER=SHARP (114) はメーカーがシャープであること，PRICE＜500000 (115) は価格が５
０万円以下であることを，それぞれ示している。

【００３２】図１１はモニター条件の記述例であり，このようにして表現されたものが，店舗エージェント５のモニター登録手続き８９によってマネージャー４に登録され，モニターテーブル９６に格納されている。 この図１１において，CATEGORY=NOTEBOOK (116) はカテゴリーがノートブックであることを示し，PRICE＜500000 (11
7) は価格が５０万円以下である商品を提供するようなメッセージが来た場合に，これをモニターしているエージェントに知らせることを意味している。

【００３３】以下，図６から図８までに示された顧客エージェント９，店舗エージェント５，マネージャー４内のデータや手続きが，実際の処理においてどのように使われるのかを詳細に説明していく。 図１２は顧客エージェント９が顧客からの検索要求を受け付け，仮想マーケット１へ移動していくところまでの処理を示している。
入力画面表示手続き６０の実行により（図３の２３），
検索条件入力画面４９が表示される。 この画面において，Home Address is customer.ibm.com (118)は顧客端末３のアドレスを表示したものであり，CATEGORY (119)
は商品カテゴリーの入力フィールド，MAKER (120) はメーカーの入力フィールド，PRICE (121) は価格の入力フィールド，DESTINATION ADDRESS (122) は行き先，つまり仮想マーケット１のアドレスの入力フィールドであり，ディスパッチ（Dispatch）ボタン (123) は入力された条件を基にして顧客エージェント９を仮想マーケット１に送信するためのボタンであり，キャンセル（Canc
el）ボタン (124) は入力を取り消すためのボタンである。 画面４９においてDispatch(123)または Cancel(12
4)ボタンが押されると，押されたボタンに応じて条件分岐する(125)。 Dispatchボタンが押された場合(126)，入力データ格納手続き６１が呼ばれ，入力されたデータは図６における検索条件５６や，行き先アドレス５３に格納され，エージェント９は仮想マーケット１に移動（6
3）する（図３の２４）。 一方，Cancelボタンが押された場合 (127)，処理を終了（128）する。

【００３４】図１３は店舗エージェント５が店舗ユーザからの商品データ入力を受け付け，仮想マーケット１へ移動していくところまでの処理を示している。 入力画面表示手続き８０の実行により（図３の１９），商品情報入力画面７０が表示される。 この画面において，Home A
ddress is shop.ibm.com (129) は店舗端末のアドレスを表示したものであり，CATEGORY (130) は商品カテゴリーの入力フィールド，スプレッドシート（131）は商品のメーカー (MAKER)，ブランド名 (BRAND),価格 (PRI
CE) 等の属性を特定しながら商品情報を入力するためのものであり，DESTINATION ADDRESS (132) は行き先，つまり仮想マーケット１のアドレスの入力フィールドであり，ディスパッチ（Dispatch）ボタン (133) は入力された情報を基にして店舗エージェントを仮想マーケットに送信するためのボタンであり，キャンセル（Cancel）
ボタン (134) は入力を取り消すためのボタンである。
画面７０においてDispatch(133)または Cancel (134)
ボタンが押されると，押されたボタンに応じて条件分岐する (135)。 Dispatch ボタンが押された場合(136)，入力データ格納手続き８１が呼ばれ，入力されたデータは図７における商品リスト７６や，行き先アドレス７４に格納され，エージェント５は仮想マーケット１に移動（83）する（図３の２０）。 一方，Cancel ボタンが押された場合 (137)，処理を終了（138）する。

【００３５】顧客エージェント９ならびに店舗エージェント５が仮想マーケット１に移動してくると，図１４に示すように，これらのエージェントはマネージャー４に登録される。 顧客エージェント９はマネージャー４への登録手続き６４を実行する（図３の２５）。 店舗エージェント５はマネージャー４への登録手続き８４を実行する（図３の２１）。 そして，それぞれマネージャー４に対して登録要求を発行する。 マネージャー４はこのような要求を受け付けると，エージェントの登録手続き９８
を呼び出し，エージェントの種類に応じた分岐条件１３
９を通して，エージェントが顧客である場合 (140) には顧客リスト (94) に追加する処理（141）を実行し，
エージェントが店舗である場合 (142) には店舗リスト
(95) に追加する処理（143）を実行する。

【００３６】マネージャー４へのエージェントの登録が終わると，店舗エージェント５と顧客エージェント９は図１５のようにしてモニター条件の登録を行う。 店舗エージェント５はモニター登録手続き８９を実行し（図４
の２７），顧客エージェント９はモニター登録手続き６
９を実行し（図４の３４），マネージャー４へのモニター条件の登録を依頼する。 マネージャー４はモニター条件の登録依頼がくると，モニター登録受け付け手続き１
０２を実行する。 この手続き１０２では，依頼された条件と同一のものがモニター条件テーブル９６にないかを探し(144)，一致するものがあるかどうかによって条件分岐し(145)，もしあれば (146)，エントリーの値フィールドに依頼したエージェントのidを追加する (147)。
一方，ない場合には(148)，キーをモニター条件とし，
値を依頼したエージェントのidとする新たなエントリーを生成し，モニター条件テーブル９６に追加する。 なお，顧客エージェント９は，必ずモニター登録しなければならないわけではない。 しかし，モニター登録することにより，有用な情報を別途得ることができる場合もある。

【００３７】図１６はマネージャー４によるメッセージの流れの制御を示したものである。 マネージャー４は，
店舗エージェント５ならびに顧客エージェント９から，
商品情報の送信８８，関連情報の送信９２，検索要求の発行６６（８８，９２，６６は手続きであるが，ここではそれらの発行するメッセージを指す）などをメッセージ受け取り１００において受け取る。 そして，メッセージの転送１０１において，これらのメッセージに含まれている送信先のエージェントidを読みとり，検索要求の受け取り手続き８６，商品情報の受け取り手続き６７，
関連情報の受け取り６８等へと送信する。 さらに，他エージェントへのメッセージ転送１０３において，送信されてきたメッセージとモニター条件テーブルとを比較して一致するものがあれば，そのメッセージを商品情報の受け取り手続き９０へと転送する。 以上の３つの処理は繰り返される (150)。

【００３８】図１６におけるメッセージの流れを具体的にするために，図２のメッセージを用いて説明する。 まず，顧客エージェント９は検索要求の発行手続き６６を実行し，検索要求１５ａがマネージャー４に送信される。 マネージャー４はこれをメッセージ受け取り手続き１００にて受け取り，メッセージの転送手続き１０１において検索要求１５ｂを店舗エージェント５に送信する。 マネージャー４は，さらに他エージェントへのメッセージ転送手続き１０３において，検索要求１５ａとモニター条件テーブルとを比較する。 但し，ここでは一致するものがないので他のエージェントには転送せず，メッセージの受け取り手続き１００にて次のメッセージを待つ。 店舗エージェント５は検索要求１５ｂを検索要求の受け取り手続き８６において受け取り，この条件を基にして検索された商品情報を基にして商品情報の送信手続き８８を実行し，商品情報提供１６ａをマネージャー４に送信する。

【００３９】マネージャー４はこれをメッセージ受け取り手続き１００において受け取り，メッセージの転送手続き１０１において商品情報提供１６ｂを顧客エージェント９に送信する。 マネージャー４は，さらに他エージェントへのメッセージ転送手続き１０３にて，商品情報提供１６ｃとモニター条件テーブルとを比較する。 ここでは一致するものがあるので，このようなモニター条件を依頼した店舗エージェント１７に，他エージェントへのメッセージ転送手続き１０３にてこれを転送する。 店舗エージェント１７は，商品情報受け取り手続き９０においてこれを受け取り，関連情報を生成し，関連情報の送信手続き９２において関連情報提供１８ａをマネージャー４に送信する。 マネージャー４は，これをメッセージ受け取り手続き１００において受け取り，メッセージの転送手続き１０１において関連情報の提供１８ｂを顧客エージェント９に送信する。 マネージャー４は，さらに他エージェントへのメッセージ転送手続き１０３において，関連情報の提供１８ａとモニター条件テーブルとを比較する。 ここでは一致するものがないので，他のエージェントには転送せず，メッセージの受け取り手続き１００において次のメッセージを待つ。

【００４０】図１６における他エージェントへのメッセージ転送手続き１０３の処理内容を詳細にしたものを図１７に示す。 図１７において，入力メッセージ１５１はマネージャー４に送信されてきたメッセージであり，これに応答してこのメッセージとモニター条件テーブル９
６とをマッチングする手続き１５２を実行する。 ここで手続き１５２に対する条件分岐（１５３）を実行し，マッチした場合(154) にメッセージの転送（155）において他エージェントにメッセージを転送し，そうでない場合 (157) には何もせずに終了する (157)。 たとえば，
図２において，店舗エージェント１７が図１１のようなモニター条件を登録しており，かつ商品情報提供１６ａ
が図９のような商品を含んでいた場合，条件分岐１５３
が真となり，商品情報提供１６ｃが店舗エージェント１
７へと転送される。

【００４１】店舗エージェント１７が商品情報の提供１
６ｃを受け取った場合に，関連情報を作るためのフローチャートの一例を図１８に示す。 メッセージが入力されると（158），メッセージ中から商品情報を抜き出す手続き（159）。 そして，メッセージ中の商品情報と自分の持っている商品を比較する（160)。 さらに，自分の商品が安い場合（161）や魅力的なセット商品がある場合（162）等は，関連商品に関するメッセージを生成し送信する手続き１６３が呼び出され，そうでない場合（16
4）は何もせずに終了（165）する。 安い場合，魅力的な場合などは，店舗エージェントごとに設定できる。 また，他の条件，例えば，パソコン関連の商品がメッセージ中に含まれている場合にはその周辺機器の情報を定義しておき，それを送るように設定することもできる。

【００４２】図１９は関連商品の記述例を示したものである。 この関連商品は，店舗エージェント１７が競合商品として持っているノートブックパソコンを表現したものである。 CATEGORY=NOTEBOOK (166) はこの商品のカテゴリーがノートブックであること，MAKER=IBM (167) はメーカーがIBMであること，BRAND=ThinkPad (168)はブランド名がThinkPadであること（ThinkPadはインターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレイションの商標），NAME=ThinkPad365X (169) は商品名を，MODEL=
2625-BJ9 (170) はモデル名を，PRICE=338000 (171) は価格を，ID=#0(172) は商品のidを，CPU=Pentium 150
(173) はCPUを，MEMORY=8 (174) はメモリーのサイズを，それぞれ示している。 図２において，商品情報の提供１６ｃの中に図９のような商品情報が含まれている場合，図１８の入力メッセージ１５８は商品情報の提供１
６ｃに対応し，商品情報１５９では図９のような商品情報が抽出され，比較１６０において図９のような商品と図１９に示した自分の商品とを比較し，自分の商品の方が安いことから (161)，手続き１６３において図１９を含むようなメッセージ１８ａを生成し，送信することができる．

【００４３】顧客エージェント９ならびに店舗エージェント５が仮想マーケット４での処理を終了すると，図２
０のように各端末に帰っていく。 顧客エージェント９は退去通知手続き６５を，店舗エージェント５は退去通知手続き８５を実行し，それぞれマネージャー４に対して抹消要求を発行する。 マネージャー４はこのような要求を受け付けると，登録抹消手続き９９を呼び出し，エージェントの種類に応じた分岐条件１７５を通して，エージェントが顧客である場合 (176) には顧客リスト (94)
から削除する処理１７７を実行し，エージェントが店舗である場合 (178) には店舗リスト (95) から削除する処理１７９を実行する。 このような処理が終了すると，店舗エージェント５は移動手続き８３によって店舗端末２に帰り，顧客エージェント９は移動手続き６３によって顧客端末３に帰る。

【００４４】図２１において，顧客エージェント９は仮想マーケット１から顧客端末３に移動（63）し，出力画面表示手続き６３を実行している。 検索結果出力画面５
０において，検索結果はテーブル１８０のような形式で表示されており，IBM社の ThinkPad 560 が検索されたことなどが表示されている。

【００４５】図２２において，店舗エージェント５は仮想マーケット１から店舗端末２に移動（83）し，出力画面表示手続き８２を実行している。 統計情報出力画面７
１において，統計情報はテーブル１８１のような形式で表示されており，ThinkPad 560 が 1309 回検索されたことなどが表示されている。 なお，このような統計を表示するようにするには，店舗エージェント５が，カウンタを有しているか，カウンタを有する他のエージェントから情報を得るような構成でなければならない。

【００４６】以上述べた実施例は一例であって，本発明はこれに限定されない。 例えば，エージェントの実行環境は，仮想マーケットを前提に説明したが，仮想マーケットでなくとも，モニターする機構，すなわち，マネージャー・エージェントを設けることによりエージェントの対話を公開し，他のエージェントの活動に役立てることができる。 当然，仮想マーケットでなければ，そこにくるエージェントは上で述べたような顧客エージェント，店舗エージェントと同様な機能を有していない場合もあるが，主なモニターのための機能はそのまま有していなければならない。

【００４７】また，上で述べた顧客エージェント及び店舗エージェントの機能は，これらに限定されるものではなく，他の機能，例えば，人間が行う，ねぎりの機能を有していたり，売買に必要な決済機能を有していたりする場合もある。

【００４８】また，各エージェントに含まれるプログラム内の手続きは，以上述べたように分けなくとも，同様な機能を有するように，まとめること，及び分けることができる。

【００４９】さらに，実行環境を提供するためのプログラムは，ディスク装置に格納されたり，フロップー・ディスク，ＣＤ−ＲＯＭ，その他の記憶媒体に格納されて流通される場合がある。 また，エージェントも送信又は保管のため，ビット列の形式で記憶媒体に格納される場合がある。

【００５０】

【効果】以上述べたように，エージェント間のメッセージを公開する機構を設けることができた。

【図面の簡単な説明】

【図１】仮想マーケットの概要を示す図である。

【図２】モニタリングを含む対話の具体例を示す図である。

【図３】店舗エージェント，マネージャー・エージェント，顧客エージェントの三者の処理の流れを示す図である。

【図４】店舗エージェント，マネージャー・エージェント，顧客エージェントの三者の処理の流れを示す図である。

【図５】店舗エージェント，マネージャー・エージェント，顧客エージェントの三者の処理の流れを示す図である。

【図６】顧客エージェントの詳細を示すための図である。

【図７】店舗エージェントの詳細を示すための図である。

【図８】マネージャー・エージェントの詳細を示すための図である。

【図９】商品の記述例を示す図である。

【図１０】検索条件の記述例を示す図である。

【図１１】モニター条件の記述例を示す図である。

【図１２】顧客端末における検索条件の入力例を示す図である。

【図１３】店舗端末における商品情報の入力例を示す図である。

【図１４】マネージャー・エージェントへの登録の処理のフローを示す図である。

【図１５】モニター条件のマネージャー・エージェントへの登録の処理のフローを示す図である。

【図１６】顧客エージェント，店舗エージェント，マネージャー・エージェント間のメッセージの流れを示す図である。

【図１７】マネージャー・エージェントにおいて，第３
のエージェントへメッセージを転送するためのフローを示す図である。

【図１８】店舗エージェントにおける関連情報の生成並びに送信のフローを示す図である。

【図１９】関連商品の記述例を示す図である。

【図２０】仮想マーケットからエージェントが退去する際に必要な処理のフローを示す図である。

【図２１】顧客端末に戻ってきたエージェントにおける結果表示の一例を示すための図である。

【図２２】店舗端末に戻ってきたエージェントにおける結果表示の一例を示すための図である。

【符号の説明】

１ 仮想マーケット ２ 店舗端末 ３ 顧客端末 ４ マネージャー・エージェント ５ 店舗エージェント ６ ユーザインターフェース手段 ７ 商品データ ８ 情報提供手段 ９ 顧客エージェント １０ ユーザインターフェース手段 １１ 検索要求 １２ 情報取得手段

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【手続補正書】

【提出日】平成９年１１月１３日

【手続補正１】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】請求項２２

【補正方法】変更

【補正内容】

【手続補正２】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００１０

【補正方法】変更

【補正内容】

【００１０】この登録メッセージには，当該登録メッセージ送信元のエージェントの種類が含まれ，マネージャー・エージェントの登録機能が，当該エージェントの種類に応じて，登録処理を実施するような構成も可能である。

【手続補正３】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００２１

【補正方法】変更

【補正内容】

【００２１】図１において，端末２は店舗の経営者や従業員によって操作される店舗端末であり，店舗エージェント２ａを生成する機能を有する。 店舗エージェント５
ａはユーザからの商品情報の入力等を支援するためのユーザインタフェース手段６と，商品情報を保存する商品データ７と，商品情報を顧客エージェント９に提供する手段８から構成される。 一方，端末３は顧客によって操作される顧客端末であり，顧客エージェント９ａを生成する機能を有する。 顧客エージェント９ａはユーザが欲しい商品の条件を入力するためのユーザインタフェース手段１０と，検索要求（検索条件）を保持する機構１１
と，当該検索要求を店舗エージェント２に送信する情報取得手段１２から構成される。 なお，エージェント５ａ
と５ｂ，ならびにエージェント９ａと９ｂはそれぞれ同一のものであり，送信１３及び１４によって仮想マーケットに送信されてきたものである。 仮想マーケット１
は，エージェント間の対話を管理するマネージャー４を含んでいる。 エージェントからの検索要求１５や商品提供１６等のメッセージは，マネージャー４を経由して他のエージェントに送信される。 顧客端末及び店舗端末も通常のコンピュータにて構築することができ，エージェントの生成及びエージェントへの入力，エージェントからの出力をユーザに示すことができるような設定がなされている。

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