本発明は、樹脂製のコードを高速回転させることにより草を刈るコード式草刈機に関する。

金属刃に替わって樹脂製のコードを高速回転させるコード式草刈機においては、コードがリールによって巻き取られており、コードが摩耗や損傷により短くなった時には、リールを回転させてコードを繰り出し、所定の長さにする。ここで、コードを繰り出すための機構として、特許文献1に示すような叩き出し方式のものがあった。これは、草刈機の作動中に本体を地面に叩き付けることで、リールに係合する爪車がコイルバネの付勢力に抗して一コマだけ回転して、所定長さだけコードが繰り出されるもので、コードの巻き取りはリールを手で回転させて行うものである。また、別の機構として、特許文献2に示すような手動回転方式のものがあった。これは、草刈機の停止中に、リールを手で回転させてコードの繰り出しおよび巻き取りを行うものである。

特開平7−31249号公報

特開平9−238537号公報

特許文献1の叩き出し方式においては、草刈り作業中でも、草刈機を停止することなくコードを繰り出せるが、手動でリールを回転させてコードを繰り出すことができないので、草刈機の内部でコードが絡まった場合には、本体を分解して修正しなければならなかった。一方、特許文献2の手動回転方式においては、手動で自在にコードの繰り出しおよび巻き取りが可能であり、コードが絡まった場合にも修正しやすいが、草刈り作業中にコードを繰り出すためには草刈機を停止しなければならず、作業効率が悪くなっていた。

本発明は、上記事情を鑑みたものであり、コードの繰り出しを、叩き出しとリールの手動回転の両方式により行うことができるコード式草刈機を提供することを目的とする。

本発明は、ボディと、リールと、爪車と、リングと、上部キャップを備え、ボディは、略円筒形で上側が開口していて、底面中心に柱部を設けてあり、リールは、コードを巻き付けるものであって、略円環状で、柱部に外挿しかつボディ内に回動可能に納めてあり、爪車は、略円環状で、柱部に外挿しかつリールの内側に納めてあって、リールと同方向に回転するように係合しており、リングは、リールの上側に取り付けてあって、ボディの上端部に覆い被さっており、上部キャップは、略円盤形で、リングの上側から柱部の上端に固定してあり、上部キャップの下面には、柱部の周囲に逆止突起を列設してあり、爪車は、外周部に送り爪を有しており、柱部に外挿したコイルバネにより上部キャップに向けて押圧してあって、爪車の送り爪がコードの繰出方向に向けて逆止突起に係止しており、外部からの衝撃により、爪車がコイルバネの付勢力に抗して落下すると、送り爪と逆止突起の係止が解除され、リールがコードの繰出方向に回転可能となるものであり、リングは、リールに対して所定角度のみ回動可能であって、上部キャップの逆止突起の外周側位置に、解除突起を設けてあり、リングをコードの巻取方向に回転させると、コイルバネの付勢力に抗して爪車の送り爪が逆止突起を乗り越え、リールがコードの巻取方向に回転するものであり、リングをコードの繰出方向に回転させると、リングの解除突起が爪車の送り爪に当接し、コイルバネの付勢力に抗して爪車を下方に押し込むことで、送り爪と逆止突起の係止が解除され、リールがコードの繰出方向に回転可能となるものであることを特徴とする。

本発明によれば、コードの繰り出しを、叩き出しとリールの手動回転の両方式により行うことができる。すなわち、草刈機の作動中に本体を地面に叩き付けることで、リールがコードの繰出方向に回転可能となり、遠心力によりコードが繰り出されるので、草刈り作業を中断する必要がない。そして、リングを巻取方向に回転させることで、リールが回転して手動でコードを巻き取ることができ、さらにリングを繰出方向に回転させることで、リールがコードの繰出方向に回転可能となり、コードを手で引っ張ることでリールが回転してコードを繰り出すことができるので、コードが絡まった場合にも容易に修正できる。

(a)は、草刈機の本体の斜視図であり(上部キャップを外した状態)、(b)は、(a)の上面部分の拡大図である。

草刈機の本体の斜視図である(上部キャップを取り付けた状態)。

本体の平面図である。

本体の側面図である。

(a)は、図3のA−A線断面図であり、(b)は、(a)において柱部に外挿した部品を切断せずに描いたものである。

本体の分解斜視図である。

(a)〜(c)は、図3のB−B線断面図であり、叩き出しによる繰り出しの説明図である。

図3のC−C線断面図であり、手動回転による巻き取りの説明図である。

(a)、(b)は、図3のC−C線断面図であり、手動回転による繰り出しの説明図である。

本発明のコード式草刈機の具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。このコード式草刈機は、図4に示すように、柄200の先端に本体100を取り付けたものである。そして、図1〜図6に示すように、本体100は、ボディ1と、リール2と、爪車3と、リング4と、上部キャップ5と、ガイド盤7と、下部キャップ8を備える。

ボディ1は、略円筒形で上側が開口していて、下端部の外周側には鍔部13を形成してあり、底面中心に、略円柱形状の柱部11を設けてある。そして、底面の柱部11の周囲には、柱部11と隙間を隔てた円周上に、略二等辺三角形の山形突起12を、間隔をおきながら列設してある。また、ガイド盤7は、略円盤状で上面に二つの略円柱形状部を形成してあり、その間の隙間が、コード9の先端が引き出されるアイレット71となっており、ボディ1の下面にワッシャ72を介して、二本のボルト73によりボルト止めしてある。さらに、下部キャップ8は、略椀形で金属製であり、ガイド盤7の下面に一本のボルト81によりボルト止めしてある。なお、ボディ1の側面には、コード9を通す引出口14を形成してあり、また、鍔部13の引出口14の近傍に、上下に貫通する抜孔15を形成してある。

リール2は、コード9の基端部を固定して巻き付けるものであって、略円環状で、上端部と下端部に、外周側に突出する鍔を設けてある。コード9は時計周りに巻き付けてあり、リール2を反時計回りに回転させるとコード9が巻き取られ、時計回りに回転させるとコード9が繰り出されることになる(以下、反時計回り方向を巻取方向α、時計回り方向を繰出方向βとする)。また、内周側面の上端部には、四箇所に係合突起21を設けてある。さらに、上面の内周側縁部には、円周上に立設壁面22を設けてあり、この立設壁面22に四箇所の切欠部23を設けてある。切欠部23は、巻取方向α側が垂直面23aとなっており、繰出方向β側が傾斜面23bとなっていて、各切欠部23の傾斜面23bが、隣接する係合突起21同士の中間に位置している。このように構成したリール2を、柱部11に外挿し、かつボディ1内に回動可能に納めてある。リール2に巻き付けられたコード9は、先端が引出口14から引き出され、抜孔15を通ってボディ1の下側に回り込み、アイレット71を通って本体100から外周側に突出している。

爪車3は、略円環状で、上端の外周部に四つの送り爪31を設けてある。送り爪31は、上側の巻取方向α側に傾斜面31aを有し、繰出方向β側に垂直面31bを有している。また、下側には垂下片32を有していて、垂下片32の下端は、巻取方向α側、繰出方向β側の両側が傾斜していて尖った形状となっている。このように構成した爪車3は、柱部11に外挿し、かつリール2の内側に納めてあるが、この際、柱部11には、まず下から順にベアリング61、ワッシャ状のバネ受け62およびコイルバネ6を外挿する。これらは何れも柱部11と山形突起12の間に納まる。そして、その上から爪車3を外挿するが、コイルバネ6は送り爪31の垂下片32の内側に納まり、送り爪31の下端は山形突起12に対向する。また、リール2の内周側面に設けた係合突起21が、爪車3の隣接する送り爪31同士の間に嵌まる。よって、爪車3は、リール2と同方向に回転するように係合しており(送り爪31と係合突起21の間にクリアランスがあるので、10度程度は相互に回転する)、上下方向には可動な状態となる。そして、コイルバネ6がベアリング61により支持されているので、爪車3およびリール2はボディ1内で回動自在であって、かつ爪車3は上向きに付勢される。

リング4は、略円環状で、リール2の上側に取り付けてあって、リール2の立設壁面22が内周側に納まり、ボディの上端部に覆い被さる形状となっている。外周側面には凹凸を形成してあり、手で回転させやすくなっている。また、内周側面の上端部には、四箇所に解除突起41を設けてある。解除突起41は、リール2の立設壁面22の切欠部23に嵌まるものであり、切欠部23の形状に対応して、巻取方向α側が垂直面41aとなっており、繰出方向β側が傾斜面41bとなっている。そして、解除突起41は切欠部23よりも円周方向に短くなっていて隙間が形成されており、この隙間の分(所定角度)だけ、リール2に対してリング4が回動可能となっている。

上部キャップ5は、略円盤形で、リング4の上側から柱部11の上端に固定してあり、ボディ1と一体になっている。図5および図7に示すように、上部キャップ5の下面には、山形突起12に対向して、円周上に、略直角三角形の逆止突起51を、間隔をおきながら列設してある。ただし、逆止突起51は山形突起12に対して内周側にずれた位置に設けてあり、逆止突起51の外周側に、リング4の解除突起41が位置する。逆止突起51は、繰出方向β側が傾斜面51aとなっており、巻取方向α側が垂直面51bとなっている。また、逆止突起51は山形突起12と同数だけ設けてあり、逆止突起51の垂直面51bが、隣接する山形突起12の中間位置の直上に位置している。そして、このように構成した上部キャップ5に対して、爪車3をコイルバネ6により押圧してある。これにより、爪車3の送り爪31の上端は、リング4の解除突起41と上部キャップ5の逆止突起51の両方に対向する。

続いて、このように構成した草刈機における、コード9の繰り出しおよび巻き取りについて説明する。コード9の繰り出しおよび巻き取りにはリール2を回転させる必要があるが、リール2は爪車3と回転方向に連動しており、爪車3は、送り爪31が、上部キャップ5の逆止突起51、ボディ1の山形突起12およびリング4の解除突起41と係合離隔することにより、回転が制御されている。よって、各場合における、爪車3と各突起の関係を示す。

まず、叩き出しによりコード9を繰り出す場合について説明する。通常時においては、爪車3は、コイルバネ6の付勢力により、上部キャップ5に押圧されており、図7(a)に示すように、爪車3の送り爪31の垂直面31bが逆止突起51の垂直面51bに当接し、送り爪31が繰出方向βに向けて逆止突起51に係止している。そして、送り爪31の垂下片32の下端部は、隣接する山形突起12同士の間の谷間に対向している。この状態では、爪車3およびリール2は繰出方向βに回転することはできないので、草刈りのために本体100を高速回転させても、コード9が勝手に繰り出されることはない。そして、コード9が摩耗や損傷により短くなった時には、草刈機を作動させたまま、本体100の下部キャップ8を地面に叩き付ける。すると、その衝撃により、爪車3がコイルバネ6の付勢力に抗して落下する。これにより、図7(b)に示すように、送り爪31と逆止突起51の係止が解除され、送り爪31の垂下片32の下端部が、山形突起12同士の間の谷間に落ち込む。この際、本体100が回転しておりコード9には遠心力が働いているから、コード9の引っ張り作用によりリール2および爪車3が繰出方向βに回転する。そして、回転に伴ってコイルバネ6の付勢力により爪車3が上昇し、図7(c)に示すように、送り爪31の上端の傾斜面31aが、逆止突起51の傾斜面51aを滑って、さらに繰出方向βに回転し、送り爪31の垂直面31bが、繰出方向βに隣接する次の逆止突起51の垂直面51bに係止する。こうして、リール2および爪車3が、逆止突起51の一コマ分だけ繰出方向βに回転し、コード9が所定長さだけ繰り出される。

次に、コード9を巻き取る場合について説明する。この場合、リング4を手で巻取方向αに回転させると、図8に示すように、リング4の解除突起41の垂直面41aがリール2(一点鎖線)の切欠部23の垂直面23aに当接して、リング4とリール2が一体となって回転し、さらに爪車3もリール2と同方向(巻取方向α)に回転する。すると、爪車3の送り爪31の上端の傾斜面31aが、上部キャップ5(破線)の逆止突起51の傾斜面51aを滑り、爪車3がコイルバネ6の付勢力に抗して押し下げられ、送り爪31が逆止突起51を乗り越える。なお、爪車3が押し下げられた時、送り爪31の垂下片32の下端部は、山形突起12同士の間の谷間に落ち込むので、山形突起12は回転の妨げにならない。よって、リング4、リール2および爪車3は巻取方向αに回転自在であり、リング4を回転させた分だけ、コード9が巻き取られる。

次に、手動回転によりコード9を繰り出す場合について説明する。この場合、草刈機の停止中において、リング4を手で繰出方向βに回転させると、図9(a)に示すように、リング4の解除突起41の傾斜面41bが爪車3の送り爪31の上端の傾斜面31aに当接して、コイルバネ6の付勢力に抗して爪車3を押し下げ、かつ傾斜面41bがリール2の切欠部23の傾斜面23bに当接する。爪車3の状態は、本体100を地面に叩き付けてその衝撃により落下した瞬間の状態と同じであり、送り爪31と逆止突起51の係止が解除され、送り爪31の垂下片32の下端部が、山形突起12同士の間の谷間に落ち込んでいる。この状態で、コード9の端部を掴んで引っ張ると、リール2および爪車3が繰出方向βに回転する。そして、回転に伴ってコイルバネ6の付勢力により爪車3が上昇し、図9(b)に示すように、送り爪31の上端の傾斜面31aが、逆止突起51の傾斜面51aを滑って、さらに繰出方向βに回転し、送り爪31の垂直面31bが、繰出方向βに隣接する次の逆止突起51の垂直面51bに係止する。この際、爪車3の送り爪31の上端の傾斜面31aがリング4の解除突起41の傾斜面41bを押して、リング4がリール2に対して巻取方向αに押し戻される。こうして、リール2および爪車3が、逆止突起51の一コマ分だけ繰出方向βに回転し、コード9が所定長さだけ繰り出される。さらにコード9を繰り出したい場合には、リング4を繰出方向βに回転させてからコード9を引っ張る動作を繰り返す。なお、リング4はボディ1の鍔部13より径が小さいので、草刈り作業中にリング4を壁などにぶつける可能性は小さいこと、また、本体100の動作中は、コード9に働く遠心力により爪車3が動きにくくなることから、草刈り作業中に、リング4が意図せず繰出方向βに回転してコード9が繰り出されることはない。

このように、本発明の草刈機によれば、コードの繰り出しを、叩き出しとリールの手動回転の両方式により行うことができる。叩き出し方式によれば、草刈り作業を中断することなく、コードを繰り出すことができるので、作業効率がよい。そして、手動回転方式によれば、手動で自在にコードの繰り出しおよび巻き取りが可能であり、コードが絡まった場合にも、本体を分解などする必要はなく、修正しやすい。

本発明は、上記の実施形態に限定されない。コードの繰り出しおよび巻き取りに関する部分について、必要な要件を満たし同様の作用効果を奏するものであれば、各部の形状や構造は適宜変更可能であるし、それ以外の部分について、一部を省いたり、別の機能を追加したりしたものであってもよい。

1 ボディ 2 リール 3 爪車 4 リング 5 上部キャップ 6 コイルバネ 9 コード 11 柱部 31 送り爪 41 解除突起 51 逆止突起