首页 / 专利库 / 生物学 / 真菌 / 虫生真菌 / 免疫応答を刺激するための方法及び組成物

免疫応答を刺激するための方法及び組成物

阅读:305发布:2020-05-11

专利汇可以提供免疫応答を刺激するための方法及び組成物专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且本発明は、免疫応答を刺激するための方法及び組成物に関する。特に、本発明は、アジュバント及び/又は免疫賦活剤として作用して作用して宿主の免疫応答を増強する、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列を含む免疫賦活性RNA分子に関する。 【選択図】図1,下面是免疫応答を刺激するための方法及び組成物专利的具体信息内容。

対象における免疫応答を刺激するための方法であって、対象に少なくとも一つの抗原を提供し、かつ免疫賦活性RNA分子を提供することを含み、免疫賦活性RNA分子がインフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列を含む、方法。インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列が、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子の少なくとも一つの断片、又はそのバリアントを含む、請求項1に記載の方法。対象における免疫応答を刺激するための方法であって、対象に少なくとも一つの抗原を提供し、かつ免疫賦活性RNA分子を提供することを含み、免疫賦活性RNA分子が配列番号:1の配列又はそのバリアントを含む、方法。免疫賦活性RNA分子が配列番号:2の配列又はそのバリアントを含む、請求項3に記載の方法。免疫賦活性RNA分子が配列番号:3の配列又はそのバリアントを更に含む、請求項3又は4に記載の方法。免疫賦活性RNA分子が配列番号:4の配列又はそのバリアントを更に含む、請求項3又は4に記載の方法。免疫賦活性RNA分子が配列番号:5の配列又はそのバリアントを含む、請求項3又は4に記載の方法。免疫賦活性RNA分子が配列番号:6の配列又はそのバリアントを含む、請求項3又は5に記載の方法。免疫賦活性RNA分子が配列番号:7の配列又はそのバリアントを含む、請求項3、5及び8の何れか一項に記載の方法。免疫賦活性RNA分子が配列番号:8の配列又はそのバリアントを含む、請求項3から6の何れか一項に記載の方法。免疫賦活性RNA分子が配列番号:9の配列又はそのバリアントを含む、請求項3から6及び10の何れか一項に記載の方法。免疫賦活性RNA分子が配列番号:10の配列又はそのバリアントを含む、請求項3から6の何れか一項に記載の方法。免疫賦活性RNA分子が配列番号:11の配列又はそのバリアントを含む、請求項3から6及び12の何れか一項に記載の方法。免疫賦活性RNA分子が、対象において抗原特異的免疫応答を誘導することができる、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。免疫応答がB細胞応答を含む、請求項1から14の何れか一項に記載の方法。免疫応答が、Th1様応答に関連するIgG抗体の産生を含む、請求項1から15の何れか一項に記載の方法。免疫賦活性RNA分子がトール様受容体(TLR)アゴニストである、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。TLRがTLR7である、請求項17に記載の方法。免疫賦活性RNA分子がインターフェロンアルファの分泌を誘導することができる、請求項1から18の何れか一項に記載の方法。インターフェロンアルファの分泌には形質細胞様樹状細胞が関与する、請求項19に記載の方法。免疫賦活性RNA分子が、腫瘍壊死因子アルファ、インターフェロンガンマ及びインターロイキン10の一又は複数の分泌を実質的に誘導しない、請求項1から20の何れか一項に記載の方法。前記少なくとも一つの抗原が、がん、ウイルス、細菌、真菌、又は寄生虫抗原からなる群から選択される、請求項1から21の何れか一項に記載の方法。対象が哺乳動物である、請求項1から22の何れか一項に記載の方法。対象がヒトである、請求項1から23の何れか一項に記載の方法。免疫賦活性RNA分子、少なくとも一つの抗原、及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であって、免疫賦活性RNA分子がインフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列を含む、薬学的組成物。インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列が、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子の少なくとも一つの断片、又はそのバリアントを含む、請求項25に記載の薬学的組成物。免疫賦活性RNA分子、少なくとも一つの抗原、及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であって、免疫賦活性RNA分子が配列番号:1の配列又はそのバリアントを含む、薬学的組成物。免疫賦活性RNA分子が配列番号:2の配列又はそのバリアントを含む、請求項27に記載の薬学的組成物。免疫賦活性RNA分子が配列番号:3の配列又はそのバリアントを更に含む、請求項27又は28に記載の薬学的組成物。免疫賦活性RNA分子が配列番号:4の配列又はそのバリアントを更に含む、請求項27又は28に記載の薬学的組成物。免疫賦活性RNA分子が配列番号:5の配列又はそのバリアントを含む、請求項27又は28に記載の薬学的組成物。免疫賦活性RNA分子が配列番号:6の配列又はそのバリアントを含む、請求項27又は29に記載の薬学的組成物。免疫賦活性RNA分子が配列番号:7の配列又はそのバリアントを含む、請求項27、29及び32の何れか一項に記載の薬学的組成物。免疫賦活性RNA分子が配列番号:8の配列又はそのバリアントを含む、請求項27から30の何れか一項に記載の薬学的組成物。免疫賦活性RNA分子が配列番号:9の配列又はそのバリアントを含む、請求項27から30及び34の何れか一項に記載の薬学的組成物。免疫賦活性RNA分子が配列番号:10の配列又はそのバリアントを含む、請求項27から30の何れか一項に記載の薬学的組成物。免疫賦活性RNA分子が配列番号:11の配列又はそのバリアントを含む、請求項27から30及び36の何れか一項に記載の薬学的組成物。免疫賦活性RNA分子がトール様受容体(TLR)アゴニストである、請求項25から37の何れか一項に記載の薬学的組成物。TLRがTLR7である、請求項38に記載の薬学的組成物。前記少なくとも一つの抗原が、がん、ウイルス、細菌、真菌、又は寄生虫抗原からなる群から選択される、請求項25から39の何れか一項に記載の薬学的組成物。インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列を含む単離されたRNA分子であって、免疫賦活活性を有する単離されたRNA分子。インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列が、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子の少なくとも一つの断片、又はそのバリアントを含む、請求項41に記載の単離されたRNA分子。配列番号:1の配列又はそのバリアントを含む単離されたRNA分子であって、免疫賦活活性を有する単離されたRNA分子。配列番号:2の配列又はそのバリアントを含む、請求項43に記載の単離されたRNA分子。配列番号:3の配列又はそのバリアントを更に含む、請求項43又は44に記載の単離されたRNA分子。配列番号:4の配列又はそのバリアントを更に含む、請求項43又は44に記載の単離されたRNA分子。配列番号:5の配列又はそのバリアントを含む、請求項43又は44に記載の単離されたRNA分子。配列番号:6の配列又はそのバリアントを含む、請求項43又は45に記載の単離されたRNA分子。配列番号:7の配列又はそのバリアントを含む、請求項43、45及び48の何れか一項に記載の単離されたRNA分子。配列番号:8の配列又はそのバリアントを含む、請求項43から46の何れか一項に記載の単離されたRNA分子。配列番号:9の配列又はそのバリアントを含む、請求項43から46及び50の何れか一項に記載の単離されたRNA分子。配列番号:10の配列又はそのバリアントを含む、請求項43から46の何れか一項に記載の単離されたRNA分子。配列番号:11の配列又はそのバリアントを含む、請求項43から46及び52の何れか一項に記載の単離されたRNA分子。トール様受容体(TLR)アゴニストである、請求項41から53の何れか一項に記載の単離されたRNA分子。TLRがTLR7である、請求項54に記載の単離されたRNA分子。

说明书全文

本発明は、免疫応答を刺激するための方法及び組成物に関する。特に、本発明は、アジュバント及び/又は免疫賦活剤として作用して宿主の免疫応答を増強する、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列を含む免疫賦活性RNA分子に関する。

免疫系は、ウイルス、真菌、細菌などの生物に対する防御において、並びに悪性細胞(腫瘍細胞)の認識と忌避において重要な役割を担う。免疫系の進化により、自然免疫と適応免疫という二種類の防御に基づく高度に効果的なネットワークが生じた。病原体に関連する共通の分子パターンを認識するインバリアントな受容体に依存する進化的に古代の自然免疫系とは対照的に、適応免疫はB細胞(Bリンパ球)及びT細胞(Tリンパ球)上の高度に特異的な抗原受容体及びクローン選択に基づく。B細胞は抗体の分泌により液性免疫応答を生じさせるが、T細胞は認識された細胞の破壊につながる細胞性免疫応答を媒介する。

抗原特異的免疫療法は、感染性又は悪性疾患を制御するために患者において特定の免疫応答を増強又は誘導することを目的とする。増加する病原体関連及び腫瘍関連抗原の同定により、免疫療法に適した標的の幅広い収集に至った。ワクチン接種と免疫は、非毒性抗原を対象に導入することであり、抗原が対象の免疫系を誘発して免疫応答を開始させる。多くの場合、ワクチン抗原は、疾患を引き起こす微生物の不活化又は弱毒化形態である。全罹患細胞、タンパク質、ペプチド又は免疫化ベクター、例えばRNA、DNA、又は患者への移入後にDCのパルス適用によってインビトロ又はインビボで直接的に適用されうるウイルスベクターを含む様々な抗原形態をワクチン接種に使用することができる。しかし、抗原はそれ自体では十分な免疫原性を持たないことが多く、十分な免疫応答を引き起こさない。

抗原の免疫原性は、一又は複数のアジュバントと組み合わせて抗原を投与することにより高めることができる。アジュバントは、免疫系に直接作用するか又は抗原の薬物動態特性を変更することにより、抗原に対する応答を増加させ、抗原と免疫系の間の相互作用時間を増加させる。加えて、アジュバントの添加は、より少ない用量の抗原を使用して同様の免疫応答を刺激することを可能にし、それによりワクチンの製造コストが削減される。

アジュバント活性を示す多くの化合物が記載されている。これらアジュバントは有効性が異なり、時には所望の強度の免疫応答を誘導するには強さが十分でなく、また幾つかのものはその毒性効果によりヒトでの使用が制限されている。

従って、既存及び将来のワクチンの有効性と安全性を改善するための効果的なアジュバント系が必要とされる。

本発明は、アジュバント又は免疫賦活剤として作用して宿主免疫応答を増強する、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列を含む免疫賦活性RNA分子の同定に少なくとも部分的に基づいている。これらの免疫賦活性RNA分子は、インビボで免疫賦活薬として使用できる。

ここに記載されるように、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列を含む免疫賦活性RNA分子は、インビトロ並びにインビボでの高レベルのIFN−α発現とインビボでの強い特異的B及びT細胞応答を誘導することが示された。従って、これらの免疫賦活性RNA分子は、ワクチン接種のための強なアジュバントであり、対象における免疫応答を刺激するための方法及び組成物において有用である。本発明の一実施態様は、ここに記載の免疫賦活性RNA分子を、一又は複数の抗原、例えばワクチンに含まれる抗原と一緒に、対象に投与して、抗原特異的免疫応答を増強し又は促進することを含む。

従って、一態様では、本発明は、対象における免疫応答を刺激するための方法であって、対象に少なくとも一つの抗原を提供し、かつ免疫賦活性RNA分子を提供することを含み、免疫賦活性RNA分子がインフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列を含む、方法を提供する。

一実施態様では、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列は、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子の少なくとも一つの断片又はそのバリアントを含む。

異なる実施態様では、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子又はインフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子の少なくとも一つの断片、又はそのバリアントに由来する配列は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、及び配列番号:11からなる群から選択される。

更なる態様では、本発明は、対象における免疫応答を刺激するための方法であって、対象に少なくとも一つの抗原を提供し、かつ免疫賦活性RNA分子を提供することを含み、免疫賦活性RNA分子が配列番号:1の配列又はそのバリアントを含む、方法を提供する。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:2の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:3の配列又はそのバリアントを更に含む。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:4の配列又はそのバリアントを更に含む。

一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:5の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:6の配列又はそのバリアントを含む。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:7の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:8の配列又はそのバリアントを含む。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:9の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:10の配列又はそのバリアントを含む。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:11の配列又はそのバリアントを含む。

本発明の全ての態様の一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、対象において抗原特異的免疫応答を誘導することができる。

本発明の全ての態様の一実施態様では、免疫応答はB細胞応答を含む。

本発明の全ての態様の一実施態様では、免疫応答は、Th1様応答に関連するIgG抗体の産生を含む。

本発明の全ての態様の一実施態様では、免疫賦活性RNA分子はトール様受容体(TLR)アゴニストである。一実施態様では、TLRはTLR7である。

本発明の全ての態様の一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、インターフェロンアルファの分泌を誘導することができる。一実施態様では、インターフェロンアルファの分泌には形質細胞様樹状細胞が関与する。

本発明の全ての態様の一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、腫瘍壊死因子アルファ、インターフェロンガンマ及びインターロイキン10のうちの一又は複数の分泌を実質的に誘導しない。

本発明の全ての態様の一実施態様では、前記少なくとも一つの抗原は、がん、ウイルス、細菌、真菌、又は寄生虫抗原からなる群から選択される。

本発明の全ての態様の一実施態様では、対象は哺乳動物である。本発明の全ての態様の一実施態様では、対象はヒトである。

更なる態様では、本発明は、免疫賦活性RNA分子、少なくとも一つの抗原、及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であって、免疫賦活性RNA分子がインフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列を含む、薬学的組成物を提供する。

一実施態様では、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列が、インフルエンザAウイルス核タンパク質をコードするRNA分子の少なくとも一つの断片又はそのバリアントを含む。

異なる実施態様では、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子又はインフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子の少なくとも一つの断片、又はそのバリアントに由来する配列は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、及び配列番号:11からなる群から選択される。

更なる態様では、本発明は、免疫賦活性RNA分子、少なくとも一つの抗原、及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であって、免疫賦活性RNA分子が配列番号:1の配列又はそのバリアントを含む薬学的組成物を提供する。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:2の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:3の配列又はそのバリアントを更に含む。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:4の配列又はそのバリアントを更に含む。

一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:5の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:6の配列又はそのバリアントを含む。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:7の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:8の配列又はそのバリアントを含む。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:9の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:10の配列又はそのバリアントを含む。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:11の配列又はそのバリアントを含む。

本発明の全ての態様の薬学的組成物の一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、トール様受容体(TLR)アゴニストである。一実施態様では、TLRはTLR7である。

本発明の全ての態様の薬学的組成物の一実施態様では、前記少なくとも一つの抗原は、がん、ウイルス、細菌、真菌、又は寄生虫抗原からなる群から選択される。

ここに記載される薬学的組成物は、治療用又は予防用ワクチンでありうるワクチンの形態でありうる。

更なる態様では、本発明は、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列を含む単離されたRNA分子であって、免疫賦活活性を有する単離されたRNA分子を提供する。

一実施態様では、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列は、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子の少なくとも一つの断片又はそのバリアントを含む。

異なる実施態様では、インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子又はインフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子の少なくとも一つの断片、又はそのバリアントに由来する配列は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、及び配列番号:11からなる群から選択される。

更なる態様では、本発明は、配列番号:1の配列又はそのバリアントを含む単離されたRNA分子であって、免疫賦活活性を有する単離されたRNA分子を提供する。一実施態様では、単離されたRNA分子は、配列番号:2の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、単離されたRNA分子は、配列番号:3の配列又はそのバリアントを更に含む。一実施態様では、単離されたRNA分子は、配列番号:4の配列又はそのバリアントを更に含む。

一実施態様では、単離されたRNA分子は、配列番号:5の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、単離されたRNA分子は、配列番号:6の配列又はそのバリアントを含む。一実施態様では、単離されたRNA分子は、配列番号:7の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、単離されたRNA分子は、配列番号:8の配列又はそのバリアントを含む。一実施態様では、単離されたRNA分子は、配列番号:9の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、単離されたRNA分子は、配列番号:10の配列又はそのバリアントを含む。一実施態様では、単離されたRNA分子は、配列番号:11の配列又はそのバリアントを含む。

本発明の全ての態様の単離されたRNA分子の一実施態様では、単離されたRNA分子はトール様受容体(TLR)アゴニストである。一実施態様では、TLRはTLR7である。

本発明の一実施態様では、ここに記載の免疫賦活性RNA分子又は単離されたRNA分子は翻訳可能ではない、すなわち、ペプチド又はタンパク質を産生するための鋳型ではない。

別の態様は、本発明に従って提供される薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象において免疫応答を刺激するための方法に関する。

更なる態様では、本発明は、特に免疫応答を刺激するための、ここに記載の治療方法における使用のためのここに記載の薬剤及び組成物を提供する。

本発明の他の特徴及び利点は、次の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。

インフルエンザNPをコードするRNA(2−2−8,NP1−1565)を開始配列として使用して適用された逐次断片化戦略の概略図

インビトロ転写によるisRNAの合成、isRNAの組成と配列、並びに精製後の品質管理

同上

製剤化isRNAによるヒトPBMCにおけるサイトカイン誘導

同上

pDCは、isRNAでの刺激によるIFN−α分泌の主要なエフェクター細胞である

エンドソームに位置するTLRへのヒトPBMCにおけるisRNA NP71−Seq45を介したIFN−α誘導の依存性

NP71−Seq45によって活性化されるヌクレオチド感知エンドソームTLRの決定

製剤化isRNAによってヒトPBMCに誘導されるサイトカインプロファイルの分析

製剤化isRNAによるマウス細胞でのサイトカイン誘導

製剤化isRNAによるインビボでのIFN−αの時間及び用量依存的誘導

製剤化isRNAの頻繁な間隔での反復的な静脈内投与は、適応免疫化レジームによって克服できる全身性TLR応答耐性を生じさせる

HBcAg−#A79VLPと組み合わせた製剤化isRNAは、インビボで抗原特異的なB及びT細胞応答を誘導する

同上

HBcAg−#A79VLPと組み合わせた製剤化isRNAを使用した免疫による抗原特異的B及びT細胞応答の用量依存的誘導

同上

製剤化isRNAとHBcAg−#A79VLPによる免疫によって誘発された抗原特異的抗体は、CDCによって標的陽性細胞を死滅させる

HBcAg−#A79VLPと組み合わせた製剤化isRNAの免疫により、バランスの取れた抗原特異的IgG2a/IgG1応答が得られる

同上

HBcAg−#A79VLPと組み合わせた製剤化isRNAによって誘導される抗原特異的抗体応答のpDCへの依存性

インビボでのF12製剤化isRNAによるサイトカイン誘導

本発明を以下に詳細に説明するが、この発明は、ここに記載の特定の方法論、プロトコル及び試薬に限定されない(これらは変わりうるので)ことを理解されたい。また、ここで使用される用語は、特定の実施態様のみを説明するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定するものではないこともまた理解されたい。別に定義されない限り、ここで使用される全ての技術及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。

次に本発明の要素を説明する。これらの要素は特定の実施態様と共に列挙されるが、追加の実施態様を作成するために、それらを任意の方法及び任意の数で組み合わせることができることを理解されたい。様々に説明された実施例及び好ましい実施態様は、明示的に説明された実施態様のみに本発明を限定するように解釈されるべきではない。この説明は、明示的に説明された実施態様を任意の数の開示された及び/又は好ましい要素と組み合わせる実施態様をサポートし包含すると理解されるべきである。更に、この出願における全ての記載要素の任意の並び替え及び組み合わせは、文脈がそうでないことを示さない限り、本出願の説明により開示されているとみなされるべきである。

好ましくは、ここで使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)", H.G.W. Leuenberger, B. Nagel,及びH. Kolbl編, (1995) Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerlandに記載された通りに定義される。

本発明の実施は、特に明記しない限り、当該分野の文献において説明されている生化学、細胞生物学、免疫学、及び組換えDNA技術の一般的な方法を用いる(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2版, J. Sambrook等編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989を参照)。

この明細書及び以下の特許請求の範囲を通して、文脈が特に必要としない限り、「含む(comprise)」という単語、及び「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形語は、述べられたメンバー、整数もしくは工程又はメンバー、整数もしくは工程の群を包含することを意味し、任意の他のメンバー、整数もしくは工程又はメンバー、整数もしくは工程の群を排除すること意味しないと理解されるが、幾つかの実施態様では、そのような他のメンバー、整数もしくは工程又はメンバー、整数もしくは工程の群は除外されうる、すなわち、主題は、述べられたメンバー、整数もしくは工程又はメンバー、整数もしくは工程の群を含めることで構成される。本発明を説明する文脈で(特に特許請求の範囲の文脈で)使用される「a」及び「an」及び「the」という用語及び類似の言及は、ここで特に明記しない限り又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方をカバーすると解釈される。ここでの値の範囲の記載は、単に、その範囲内に入る各別個の値に個々に言及する簡単な方法となることを意図している。ここで特に明記しない限り、各個々の値は、あたかもここで個々に記載されているかのように明細書に組み込まれている。

ここに記載される全ての方法は、ここで特に指示がない限り、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。ここで提供される任意の全ての例又は例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良く説明することを単に意図しており、請求項に記載等された発明の範囲を限定するものではない。明細書中の言葉は、本発明の実施に不可欠な請求項に記載されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。

幾つかの文書がこの明細書の本文全体に引用されている。ここに引用された各文書(全ての特許、特許出願、科学刊行物、製造業者の仕様書、説明書などを含む)は、上記か下記かにかかわらず、その全体が出典明示によりここに援用される。ここでの如何なるものも、本発明が先行発明の理由でそのような開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。

本発明は、疾患又は障害に関連する抗原に対する免疫応答を刺激することにより、疾患又は障害の治療又は予防を想定している。抗原に対する免疫応答は、アジュバントとして作用するここに記載の一又は複数の免疫賦活性RNA分子と共にワクチン抗原又はワクチン抗原をコードする核酸を投与することにより増強される。

「アジュバント」という用語は、個体に抗原と組み合わせて投与されたときに、免疫応答を延長し又は増強し又は促進する化合物に関する。アジュバントは、抗原の表面の増加、体内での抗原の保持の延長、抗原放出の遅延、マクロファージへの抗原のターゲティング、抗原の取り込みの増加、抗原処理の亢進、サイトカイン放出の刺激、B細胞、マクロファージ、樹状細胞、T細胞などの免疫細胞の刺激と活性化、及び免疫細胞の非特異的活性化を含む、一又は複数の機序によってその生物活性を発揮すると想定される。

本発明は、宿主免疫応答を増強するアジュバント及び/又は免疫賦活剤として作用するインフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子に由来する配列を含む免疫賦活性RNA分子を記載する。

「インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子」という用語は、インフルエンザA型ウイルスの核タンパク質(NP)又はヌクレオカプシドタンパク質をコードするRNA分子に関する。

インフルエンザA型ウイルスは、10の同定されたポリペプチドをコードするRNAの8つのセグメントを含むゲノムを有している。これらのポリペプチドのうち9つがビリオンに組み込まれている。3つのウイルスポリペプチドが脂質エンベロープに挿入されている:細胞の出入りにそれぞれ関与する赤血球凝集素(HA)及びノイラミニダーゼ糖タンパク質と、アンコーティングとHA成熟に関与する低含量イオンチャネルであるM2。膜の下にあるのは、脂質エンベロープと内部RNP粒子の間のアダプターとして作用すると考えられ、おそらくウイルス出芽の原動力となるビリオンの主要構造成分であるマトリックス又はM1タンパク質である。M1のシェルの内部にはRNPがある:これらは、三量体RNAポリメラーゼ(PB1、PB2、PAサブユニット)に関連するゲノムRNAセグメント及び化学量論量のNPを含む。また、ビリオンには、少量のNEP/NS2ポリペプチドが見出されている。

一実施態様では、「インフルエンザA型ウイルス核タンパク質をコードするRNA分子」という用語は、配列表の配列番号:12の核酸配列又はそのバリアントに関する。

一実施態様では、ここに記載の免疫賦活性RNA分子は、配列番号:1の配列又はそのバリアントを含む。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:2の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:3の配列又はそのバリアントを更に含む。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:4の配列又はそのバリアントを更に含む。

一実施態様では、ここに記載の免疫賦活性RNA分子は、配列番号:5の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、ここに記載の免疫賦活性RNA分子は、配列番号:6の配列又はそのバリアントを含む。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:7の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、ここに記載の免疫賦活性RNA分子は、配列番号:8の配列又はそのバリアントを含む。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:9の配列又はそのバリアントを含む。

一実施態様では、ここに記載の免疫賦活性RNA分子は、配列番号:10の配列又はそのバリアントを含む。一実施態様では、免疫賦活性RNA分子は、配列番号:11の配列又はそのバリアントを含む。

ここに記載される免疫賦活性RNA分子は、これらの抗原と組み合わせて投与される場合、抗原に対する免疫応答を誘導する。一実施態様では、免疫応答はB細胞応答を含む。一実施態様では、免疫応答はIgG抗体の産生を含む。

一実施態様では、ここに記載の免疫賦活性RNA分子は、インターフェロンアルファの分泌を誘導することができる。一実施態様では、インターフェロンアルファの分泌には、形質細胞様樹状細胞が関与する。

一実施態様では、ここに記載の免疫賦活性RNA分子は、腫瘍壊死因子アルファ、インターフェロンガンマ及びインターロイキン10のうちの一又は複数の分泌を実質的に誘導しない。

一実施態様では、ここに記載の免疫賦活性RNA分子は組換え分子である。一実施態様では、ここに記載の免疫賦活性RNA分子は、インビトロ転写により得られる。

様々な実施態様において、ここに記載の免疫賦活性RNA分子は、20〜400ヌクレオチド、20〜200ヌクレオチド、20〜100ヌクレオチド、特に30〜200ヌクレオチド又は30〜100ヌクレオチドの長さを有する。

本発明によれば、ナノ粒子製剤、特にリポプレックス製剤などの担体又は送達ビヒクルに製剤化されたここに記載の免疫賦活性RNA分子を投与することが好ましい。従って、ここに記載の免疫賦活性RNA分子は、ここに記載のナノ粒子又はナノ粒子製剤、特にリポプレックス製剤などの担体又は送達ビヒクルに製剤化されて存在しうる。

一実施態様では、全身投与後に脾臓中の樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞に免疫賦活性RNA分子を送達する送達ビヒクルが使用されうる。例えば、粒子の正味電荷がゼロ又は負に近い定まった粒子サイズのナノ粒子RNA製剤、例えばRNA及びリポソーム由来の電気中性又は負に荷電したリポプレックス、例えばDOTMAとDOPE又はDOTMAとコレステロールを含むリポプレックスが、全身投与後に脾臓DCへのRNAの実質的な送達をもたらす。本発明において特に好ましいのは、ナノ粒子中の正電荷と負電荷の電荷比が1.4:1以下及び/又はナノ粒子のゼータ電位が0以下であるナノ粒子RNA製剤である。一実施態様では、ナノ粒子中の正電荷と負電荷の電荷比は、1.4:1から1:8の間、好ましくは1.2:1から1:4の間、例えば1:1から1:3、例えば1:1.2から1:2、1:1.2から1:1.8、1:1.3から1:1.7、特に1:1.4から1:1.6、例えば約1:1.5である。一実施態様では、ナノ粒子のゼータ電位は、−5以下、−10以下、−15以下、−20以下又は−25以下である。様々な実施態様において、ナノ粒子のゼータ電位は、−35以上、−30以上、又は−25以上である。一実施態様では、ナノ粒子は、0mVから−50mV、好ましくは0mVから−40mV又は−10mVから−30mVのゼータ電位を有する。一実施態様では、正電荷には、ナノ粒子中に存在する少なくとも一種のカチオン性脂質が寄与し、負電荷にはRNAが寄与する。一実施態様では、ナノ粒子は少なくとも一種のヘルパー脂質を含む。ヘルパー脂質は、中性又は陰イオン性脂質でありうる。

一実施態様では、ナノ粒子は、10:0から1:9、好ましくは8:2から3:7、より好ましくは7:3から5:5のモル比でDOTMAとDOPEを含むリポプレックスであり、DOTMAの正電荷とRNAの負電荷の電荷比は1.8:2から0.8:2、より好ましくは1.6:2から1:2、更により好ましくは1.4:2から1.1:2、更により好ましくは約1.2:2である。

一実施態様では、ナノ粒子は、10:0から1:9、好ましくは8:2から3:7、より好ましくは7:3から5:5のモル比でDOTMAとコレステロールを含むリポプレックスであり、DOTMAの正電荷とRNAの負電荷の電荷比は1.8:2から0.8:2、より好ましくは1.6:2から1:2、更により好ましくは1.4:2から1.1:2、更により好ましくは約1.2:2である。

一実施態様では、ナノ粒子は、10:0から1:9、好ましくは8:2から3:7、より好ましくは7:3から5:5のモル比でDOTAPとDOPEを含むリポプレックスであり、DOTMAの正電荷とRNAの負電荷の電荷比は1.8:2から0.8:2、より好ましくは1.6:2から1:2、更により好ましくは1.4:2から1.1:2、更により好ましくは約1.2:2である。

一実施態様では、ナノ粒子は、DOTMAとDOPEを2:1から1:2、好ましくは2:1から1:1のモル比で含むリポプレックスであり、DOTMAの正電荷とRNAの負電荷の電荷比は1.4:1以下である。

一実施態様では、ナノ粒子は、DOTMAとコレステロールを2:1から1:2、好ましくは2:1から1:1のモル比で含むリポプレックスであり、DOTMAの正電荷とRNAの負電荷の電荷比が1.4:1以下である。

一実施態様では、ナノ粒子は、DOTAPとDOPEを2:1から1:2、好ましくは2:1から1:1のモル比で含むリポプレックスであり、DOTAPの正電荷とRNAの負電荷の電荷比が1.4:1以下である。

本発明によれば、「F12」という用語は、DOTMAとDOPEを2:1のモル比で含むリポソームで、そのようなリポソームを使用して形成されるRNAを含むリポプレックスを示す。

本発明によれば、「F5」という用語は、DOTMAとコレステロールを1:1のモル比で含むリポソームで、そのようなリポソームを使用して形成されるRNAを含むリポプレックスを示す。

ここで使用される場合、「ナノ粒子」という用語は、粒子を特に核酸の全身投与、特に非経口投与に適したものにする直径、典型的には1000ナノメートル(nm)未満の直径を有する任意の粒子を指す。幾つかの実施態様では、ナノ粒子は600nm未満の直径を有する。幾つかの実施態様では、ナノ粒子は400nm未満の直径を有する。幾つかの実施態様では、ナノ粒子は、約50nmから約1000nm、好ましくは約50nmから約400nm、好ましくは約100nmから約300nm、例えば約150nmから約200nmの範囲の平均直径を有する。幾つかの実施態様では、ナノ粒子は、約200から約700nm、約200から約600nm、好ましくは約250から約550nm、特に約300から約500nm又は約200から約400nmの範囲の直径を有する。

ここで使用される場合、「ナノ粒子製剤」という用語又は類似の用語は、少なくとも一つのナノ粒子を含む任意の物質を指す。幾つかの実施態様では、ナノ粒子製剤は、ナノ粒子の均一な集合体である。幾つかの実施態様では、ナノ粒子製剤は分散液又はエマルジョンである。一般に、少なくとも二種の非混和性材料が組み合わされると、分散液又はエマルジョンが形成される。

「リポプレックス」又は「核酸リポプレックス」、特に「RNAリポプレックス」という用語は、脂質と核酸、特にRNAの複合体を指す。しばしば中性の「ヘルパー」脂質をまた含むカチオン性リポソームが核酸と混合されると、リポプレックスが自発的に形成される。

本発明が正電荷、負電荷又は中性電荷のような電荷又はカチオン性化合物、負化合物又は中性化合物に言及する場合、これは一般に、言及された電荷が生理学的pHなどの選択されたpHで存在することを意味する。例えば、「カチオン性脂質」という用語は、生理学的pHなどの選択されたpHで正味の正電荷を有する脂質を意味する。「中性脂質」という用語は、正味の正又は負の電荷を持たない脂質を意味し、生理学的pHなどの選択されたpHで非電荷又は中性の両性イオンの形態で存在しうる。ここでの「生理学的pH」とは、約7.5のpHを意味する。

本発明での使用が企図される脂質担体などのナノ粒子担体には、RNAなどの核酸を、例えば核酸と複合体を形成するか又は核酸が封入もしくはカプセル化された小胞体を形成することにより、関連付けることができる任意の物質又はビヒクルが含まれる。これにより、ネイキッド核酸と比較して核酸の安定性が向上する場合がある。特に、血液中の核酸の安定性が向上する場合がある。

カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、及び正電荷を持つ他の物質は、負電荷を持つ核酸と複合体を形成しうる。これらのカチオン性分子は、核酸を複合化するために使用でき、それにより、例えばそれぞれいわゆるリポプレックス又はポリプレックスが形成され、これらの複合体は核酸を細胞に送達することが示されている。

本発明において使用されるナノ粒子核酸調製物は、様々なプロトコルにより、また様々な核酸複合体化化合物から得ることができる。脂質、ポリマー、オリゴマー、又は両親媒性物質は、典型的な複合体化剤である。一実施態様では、複合体化化合物は、プロタミン、ポリエチレンイミン、ポリ−L−リジン、ポリ−L−アルギニン又はヒストンからなる群から選択される少なくとも一つの薬剤を含む。

本発明によれば、プロタミンはカチオン性担体剤として有用である。「プロタミン」という用語は、アルギニンが豊富で、様々な動物(魚など)の精子細胞において体細胞ヒストンの代わりに特にDNAに関連していることが見出されている比較的低分子量の様々な強塩基性タンパク質の任意のものを指す。特に、「プロタミン」という用語は、強塩基性で、に可溶性で、熱によって凝固せず、加水分解時に主にアルギニンを生成する、魚の精子に見出されるタンパク質を指す。精製された形態では、それらはインスリンの長時間作用型製剤においてヘパリンの抗凝固効果を中和するために使用される。本発明によれば、ここで使用される「プロタミン」という用語は、その断片及びアミノ酸配列又はその断片の多量体型を含む天然又は生物学的供給源から得られ又はそれに由来する任意のプロタミンアミノ酸配列を含むことを意味する。更に、この用語は、人工的であり、特定の目的のために特にデザインされ、天然又は生物学的供給源から単離できない(合成された)ポリペプチドを包含する。本発明に従って使用されるプロタミンは、硫酸化プロタミン又は塩酸塩プロタミンでありうる。好ましい実施態様では、ここに記載のナノ粒子の製造に使用されるプロタミン源は、等張塩溶液中に10mg/ml(1ml当たり5000ヘパリン中和単位)を超えるプロタミンを含むプロタミン5000である。

リポソームは、多くの場合、リン脂質などの小胞形成脂質の一又は複数の二重層を有する微視的脂質小胞であり、薬物をカプセル化することができる。限定されないが、多重膜小胞(MLV)、小さな単膜小胞(SUV)、大きな単膜小胞(LUV)、立体的に安定化されたリポソーム(SSL)、多胞小胞(MV)、及び大きな多胞小胞(LMV)、並びに当該技術分野で知られている他の二重層形態を含む様々なタイプのリポソームを本発明のコンテクストにおいて用いることができる。リポソームのサイズと層状性は、調製方法に依存し、使用される小胞タイプの選択は、好ましい投与態様に依存する。ラメラ相、六方相及び逆六方相、立方相、ミセル、単層からなる逆ミセルを含む、水性媒体中に脂質が存在しうる他の幾つかの超分子組織形態がある。これらの相はまたDNA又はRNAと組み合わせて得ることができ、RNA及びDNAとの相互作用が相状態に実質的に影響を及ぼしうる。記載された相は、本発明のナノ粒子状核酸製剤中に存在しうる。

核酸とリポソームからの核酸リポプレックスの形成では、それが想定される核酸リポプレックスを提供する限り、リポソームを形成する任意の適切な方法を使用することができる。リポソームは、逆蒸発法(REV)、エタノール注入法、脱水−再水和法(DRV)、超音波処理又は他の適切な方法などの標準的な方法を使用して形成することができる。

リポソーム形成後、実質的に均一なサイズ範囲を有するリポソームの集団を得るために、リポソームをサイズ分類することができる。

二重層形成脂質は、典型的には、2つの炭化水素鎖、特にアシル鎖と、極性又は非極性の頭部基を有している。二重層形成脂質は、天然に生じる脂質からなるか又は合成由来であり、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチド酸、ホスファチジルイノシトール、及びスフィンゴミエリンなどのリン脂質を含み、2つの炭化水素鎖は典型的には約14〜22炭素原子長であり、異なる不飽和度を有する。本発明の組成物での使用に適した他の脂質には、糖脂質及びステロール、例えばコレステロール、並びにリポソーム中でまた使用されうるその様々な類似体が含まれる。

カチオン性脂質は、典型的には、ステロール、アシル又はジアシル鎖などの親油性部分を有し、全体として正味の正電荷を持つ。脂質の頭部基は、典型的には正電荷を帯びている。カチオン性脂質は、好ましくは1〜10価の正電荷、より好ましくは1〜3価の正電荷、より好ましくは1価の正電荷を有する。カチオン性脂質の例には、限定されるものではないが、1,2−ジ−O−オクタデセニル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA);ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP);1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(DODAP);1,2−ジアシルオキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン;1,2−ジアルキルオキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン;塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODAC)、1,2−ジミリストイルオキシプロピル−1,3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(DMRIE)、及び2,3−ジオレオイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパナミウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)が含まれる。好ましいものはDOTMA、DOTAP、DODAC、及びDOSPAである。最も好ましいものはDOTMAである。

加えて、ここに記載のナノ粒子は、構造安定性などの観点から中性脂質を更に含むことが好ましい。中性脂質は、核酸−脂質複合体の送達効率を考慮して適切に選択することができる。中性脂質の例には、限定されるものではないが、1,2−ジ−(9Z−オクタデセノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン(sphingoemyelin)、セファリン、ステロール、及びセレブロシドが含まれる。好ましいものはDOPE及び/又はDOPCである。最も好ましいものはDOPEである。カチオン性リポソームがカチオン性脂質と中性脂質の双方を含む場合、カチオン性脂質と中性脂質のモル比は、リポソームの安定性などを考慮して適切に決定することができる。

一実施態様によれば、ここに記載されるナノ粒子はリン脂質を含みうる。リン脂質はグリセロリン脂質でありうる。グリセロリン脂質の例には、限定されるものではないが、3種類の脂質が含まれる:(i)双性イオン性リン脂質、例えば、ホスファチジルコリン(PC)、卵黄ホスファチジルコリン、天然、部分水素添加又は完全水素添加形態の大豆由来PC、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)スフィンゴミエリン(SM);(ii)負に荷電したリン脂質、例えば、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)ジパルミポイル(dipalmipoyl)PG、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG);メトキシ−ポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(mPEG−DSPE)の場合のようにコンジュゲートが双性イオン性リン脂質を負に荷電させる合成誘導体;及び(iii)カチオン性リン脂質、例えば、カチオン性脂質を形成するためにそのホスホモノエステルがO−メチル化されたホスファチジルコリン又はスフィンゴミエリン。

核酸の脂質担体への結合は、例えば、担体が物理的に核酸を捕捉するように、担体の間隙空間を満たす核酸により、又は共有結合、イオン結合、もしくは水素結合により、又は非特異的結合による吸着により、起こりうる。

「免疫応答」という用語は、好ましくは抗原に対する、免疫系の反応に関するものであり、好ましくは細胞性免疫応答、体液性免疫応答、又はその両方を指す。免疫応答は、保護的/予防的(preventive)/予防的(prophylactic)及び/又は治療的でありうる。本発明によれば、抗原、細胞又は組織などの標的に関する「に対する(to)免疫応答」又は「に対する(against)免疫応答」という用語は、標的に対して向けられた免疫応答に関する。

「免疫応答を刺激する」とは、免疫応答を刺激する前に標的抗原などの特定の標的に対する免疫応答がなかったことを意味しうるが、免疫を刺激する前に特定の標的に対して所定のレベルの免疫応答があり、免疫応答を刺激した後、前記免疫応答が増強されることを意味する場合もある。従って、「免疫応答を刺激する」には「免疫応答を誘導する」及び「免疫応答を増強する」が含まれる。好ましくは、対象の免疫応答を刺激した後、前記対象はがん疾患などの疾患の発症から保護されるか、又は免疫応答を刺激することにより疾患状態が寛解される。例えば、腫瘍抗原に対する免疫応答は、がん疾患を有する患者、又はがん疾患を発症するリスクがある対象において刺激されうる。この場合の免疫応答の刺激は、対象の疾患状態が寛解されること、対象が転移を発症しないこと、又はがん疾患を発症するリスクのある対象ががん疾患を発症しないことを意味しうる。

「細胞性免疫応答」、「細胞性応答」、「細胞性免疫」という用語又は類似の用語は、クラスI又はクラスII MHCを伴う抗原の発現及び/又は抗原の提示によって特徴付けられる細胞に対する細胞性応答を含むことを意味する。細胞性応答は、「ヘルパー」又は「キラー」として作用するT細胞又はTリンパ球と呼ばれる細胞に関連する。ヘルパーT細胞(CD4+T細胞とも呼ばれる)は免疫応答を調節することで中心的な役割を果たし、キラー細胞(細胞傷害性T細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+T細胞又はCTLとも呼ばれる)は罹患細胞などの細胞を死滅させる。

「体液性免疫応答」という用語は、最終的に中和及び/又は排除される、薬剤及び生物に応答して抗体が産生される、生物におけるプロセスを指す。抗体応答の特異性は、単一の特異性の抗原に結合する膜結合受容体を介してT及び/又はB細胞によって媒介される。適切な抗原の結合と様々な他の活性化シグナルの受け取りに続いて、Bリンパ球が分裂し、メモリーB細胞並びに抗体分泌形質細胞クローンを生成し、それぞれがその抗原受容体によって認識されたものと同一の抗原エピトープを認識する抗体を産生する。メモリーBリンパ球は、その特異的抗原によって続いて活性化されるまで休止状態のままである。これらのリンパ球は、特異的抗原に再暴露された場合に、記憶の細胞学的根拠と結果として生じる抗体応答の増大をもたらす。

ここで使用される「抗体」という用語は、抗原上のエピトープに特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を指す。特に、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合により相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質を指す。「抗体」という用語には、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び前述の何れかの組み合わせが含まれる。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)で構成される。可変領域と定常領域は、ここではそれぞれ可変ドメインと定常ドメインとも呼ばれる。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分できる。各VH及びVLは、次の順でアミノ末端からカルボキシ末端に向かって配置された3つのCDRと4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。VHのCDRはHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と呼ばれ、VLのCDRはLCDR1、LCDR2、及びLCDR3と呼ばれる。重鎖と軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれる。抗体の定常領域は、重鎖定常領域(CH)と軽鎖定常領域(CL)を含み、CHは更に定常ドメインCH1、ヒンジ領域、及び定常ドメインCH2及びCH3に更に細分されうる(アミノ末端からカルボキシ末端へ次の順序で配置される:CH1、CH2、CH3)。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第一成分(Clq)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介しうる。抗体は、天然源又は組換え源に由来するインタクトな免疫グロブリンであり得、インタクトな免疫グロブリンの免疫活性部分でありうる。抗体は、典型的には免疫グロブリン分子の四量体である。抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、Fab及びF(ab)2、並びに単鎖抗体及びヒト化抗体を含む様々な形態で存在しうる。

ここに記載の抗体には、IgA、例えばIgA1又はIgA2、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgM、及びIgD抗体が含まれる。様々な実施態様では、抗体はIgG1抗体、より具体的にはIgG1、カッパ又はIgG1、ラムダアイソタイプ(すなわちIgG1、κ、λ)、IgG2a抗体(例えばIgG2a、κ、λ)、IgG2b抗体(例えばIgG2b、κ、λ)、IgG3抗体(例えばIgG3、κ、λ)又はIgG4抗体(例えばIgG4、κ、λ)である。

「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリンスーパーファミリーのタンパク質、好ましくは抗原受容体、例えば抗体又はB細胞受容体(BCR)に関する。免疫グロブリンは、特徴的な免疫グロブリン(Ig)フォールドを有する構造ドメイン、すなわち免疫グロブリンドメインによって特徴付けられる。この用語には、膜結合免疫グロブリン並びに可溶性免疫グロブリンが含まれる。膜結合免疫グロブリンは、表面免疫グロブリン又は膜免疫グロブリンとも呼ばれ、一般にBCRの一部である。可溶性免疫グロブリンは一般的に抗体と呼ばれる。免疫グロブリンは、一般に、幾つかの鎖、典型的にはジスルフィド結合を介して連結された2つの同一の重鎖と2つの同一の軽鎖を含む。これらの鎖は、VL(可変軽鎖)ドメイン、CL(定常軽鎖)ドメイン、VH(可変重鎖)ドメイン、及びCH(定常重鎖)ドメインCH1、CH2、CH3、及びCH4などの免疫グロブリンドメインで主に構成される。哺乳類の免疫グロブリン重鎖には5つのタイプ、すなわちα、δ、ε、γ、及びμがあり、これらは抗体の異なるクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMを構成する。可溶性免疫グロブリンの重鎖とは対照的に、膜又は表面免疫グロブリンの重鎖は、膜貫通ドメインと短い細胞質ドメインをそのカルボキシ末端に含む。哺乳動物には、2種類の軽鎖、すなわちラムダとカッパがある。免疫グロブリン鎖は、可変領域と定常領域を含む。定常領域は、免疫グロブリンの異なるアイソタイプ内で本質的に保存されており、可変部は非常に多様であり、抗原認識の主要因である。

本発明によれば、「抗原」又は「免疫原」という用語は、免疫応答の標的である及び/又は免疫応答を誘発する任意の物質、好ましくはペプチド又はタンパク質を包含する。特に、「抗原」は、抗体又はTリンパ球(T細胞)と特異的に反応する任意の物質に関する。本発明によれば、「抗原」という用語は、ワクチン接種に適したB細胞又はT細胞エピトープなどの少なくとも一つのエピトープを含む任意の分子を含む。好ましくは、本発明のコンテクストにおける抗原は、場合によっては処理後に、好ましくは抗原又は抗原を発現する細胞に特異的な免疫反応を誘導する分子である。本発明によれば、免疫反応の候補である任意の適切な抗原が使用されうる。抗原は、好ましくは、天然に生じる抗原に対応するか又は由来する産物である。そのような天然に生じる抗原は、アレルゲン、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、及び他の感染性因子及び病原体を含みうるか又はそれらに由来し得、あるいは抗原はまた腫瘍抗原でありうる。好ましい実施態様では、抗原は、表面ポリペプチド、すなわち、細胞、病原体、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、アレルゲン、又は腫瘍の表面に天然に提示されるポリペプチドであるか又はそれに由来する。抗原は、細胞、病原体、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、アレルゲン、又は腫瘍に対する免疫応答を誘発しうる。

本発明によれば、抗原は、細菌抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、アレルゲン又は寄生虫抗原などの自己抗原及び非自己抗原を含む群から選択されうる。

好ましい実施態様では、抗原は疾患又は障害に関連している、すなわち、抗原は疾患関連抗原である。「疾患関連抗原」という用語は、病理学的に重要な全ての抗原を指す。特に好ましい一実施態様では、疾患関連抗原は罹患細胞、組織及び/又は器官に存在するが、健康な細胞、組織及び/又は器官には存在しないか又は減少した量で存在し、従って、罹患細胞、組織及び/又は器官を標的とするために使用されうる。一実施態様では、疾患関連抗原は、罹患細胞の表面に存在する。一実施態様では、疾患関連抗原は、宿主の免疫系を刺激して疾患に対する体液性及び/又は細胞性免疫応答を引き起こす少なくとも一つのエピトープを含む分子である。従って、疾患関連抗原は治療目的に使用されうる。疾患関連抗原は、好ましくは微生物、典型的には微生物抗原による感染に関連しているか、又はがん、典型的には腫瘍に関連している。

幾つかの実施態様では、抗原は細菌抗原であるか又は細菌抗原に由来する。幾つかの実施態様では、抗原は、鳥、魚及び家畜化動物を含む哺乳動物を含む動物に感染する細菌に対する免疫応答を誘発する。好ましくは、免疫応答が誘発される細菌は病原性細菌である。

幾つかの実施態様では、抗原はウイルス抗原であるか又はウイルス抗原に由来する。ウイルス抗原は、例えば、ウイルス表面タンパク質由来のペプチド、例えばカプシドポリペプチド又はスパイクポリペプチドでありうる。幾つかの実施態様では、抗原は、鳥、魚、及び家畜化動物を含む哺乳動物を含む動物に感染するウイルスに対する免疫応答を誘発する。好ましくは、免疫応答が誘発されるウイルスは病原性ウイルスである。

幾つかの実施態様では、抗原は真菌由来のペプチド又はタンパク質であるか又はそれに由来する。幾つかの実施態様では、抗原は、鳥、魚、及び家畜化動物を含む哺乳動物を含む動物に感染する真菌に対する免疫応答を誘発する。好ましくは、免疫応答が誘発される真菌は病原性真菌である。

幾つかの実施態様では、抗原は、単細胞真核寄生虫由来のペプチド又はタンパク質であるか又はそれに由来する。幾つかの実施態様では、抗原は、単細胞真核寄生虫、好ましくは病原性単細胞真核寄生虫に対する免疫応答を誘発する。病原性単細胞真核寄生虫は、例えばプラスモジウム属、例えば、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)又は卵形マラリア原虫(P. ovale)、リーシュマニア属、又はトリパノソーマ属、例えばクルーズトリパノソーマ(T. cruzi)又はブルセイトリパノソーマ(T. brucei)由来でありうる。

幾つかの実施態様では、抗原はアレルゲン性ペプチド又はアレルゲン性タンパク質であるか又はそれに由来する。アレルゲン性ペプチド又はアレルゲン性タンパク質は、減感作としても知られるアレルゲン免疫療法に適している。

好ましい実施態様では、抗原は、腫瘍抗原又は腫瘍関連抗原、すなわち、細胞質、細胞表面及び細胞核に由来しうるがん細胞の構成物、特に、がん細胞上の表面抗原として、好ましくは多量に、産生される抗原である。

本発明のコンテクストにおいて、「腫瘍抗原」又は「腫瘍関連抗原」という用語は、正常な条件下で限られた数の組織及び/又は器官においてあるいは特定の発達段階で特異的に発現されるタンパク質に関し、例えば腫瘍抗原は、正常な条件下で胃組織、好ましくは胃粘膜、生殖器官、例えば精巣、絨毛性組織、例えば胎盤、又は生殖系細胞で特異的に発現され得、一又は複数の腫瘍又はがん組織において発現され又は異常発現される。このコンテクストにおいて、「限られた数」とは、好ましくは3以下、より好ましくは2以下を意味する。本発明のコンテクストにおける腫瘍抗原には、例えば、分化抗原、好ましくは細胞型特異的分化抗原、すなわち所定の分化段階で所定の細胞型において正常な条件下で特異的に発現されるタンパク質、がん/精巣抗原、すなわち正常条件下で精巣において、時には胎盤において特異的に発現されるタンパク質、及び生殖系列特異的抗原が含まれる。本発明のコンテクストにおいて、腫瘍抗原は、好ましくはがん細胞の細胞表面と関連しており、好ましくは正常組織では発現されないか、希にしか発現されない。好ましくは、腫瘍抗原又は腫瘍抗原の異常な発現により、がん細胞が特定される。本発明のコンテクストにおいて、対象、例えばがん疾患に罹患している患者においてがん細胞により発現される腫瘍抗原は、好ましくは前記対象の自己タンパク質である。好ましい実施態様では、本発明のコンテクストにおける腫瘍抗原は、特に非必須の組織又は器官において、すなわち、免疫系によって損傷された場合に対象の死に至らない組織又は器官において、又は免疫系がアクセスできないか又は殆どアクセスできない身体の器官又は構造において、正常条件下で発現される。好ましくは、腫瘍抗原のアミノ酸配列は、正常組織において発現される腫瘍抗原とがん組織において発現される腫瘍抗原との間で同一である。

本発明において有用でありうる腫瘍抗原の例は、p53、ART−4、BAGE、β−カテニン/m、Bcr−abL CAMEL、CAP−1、CASP−8、CDC27/m、CDK4/m、CEA、クローディンファミリーの細胞表面タンパク質、例えばCLAUDIN−6、CLAUDIN−18.2及びCLAUDIN−12、c−MYC、CT、Cyp−B、DAM、ELF2M、ETV6−AML1、G250、GAGE、GnT−V、Gap100、HAGE、HER−2/neu、HPV−E7、HPV−E6、HAST−2、hTERT(又はhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE−A、好ましくはMAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、又はMAGE−A12、MAGE−B、MAGE−C、MART−1/メラン−A、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM−1、−2、−3、NA88−A、NF1、NY−ESO−1、NY−BR−1、p190マイナーBCR−abL、Pm1/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RU1又はRU2、SAGE、SART−1又はSART−3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、SURVIVIN、TEL/AML1、TPI/m、TRP−1、TRP−2、TRP−2/INT2、TPTE及びWTである。特に好ましい腫瘍抗原には、CLAUDIN−18.2(CLDN18.2)及びCLAUDIN−6(CLDN6)が含まれる。

抗原又は抗原をコードする核酸を投与することにより、本発明に従って対象に提供される抗原、すなわちワクチン抗原は、B細胞応答及び/又はT細胞応答をもたらすはずである。抗体及び/又はT細胞は、標的抗原、特に罹患細胞、組織及び/又は器官によって又はその中で発現される標的抗原、すなわち疾患関連抗原に対して向けられるべきである。従って、ワクチン抗原は、疾患関連抗原に対応するかもしくはそれを含み得、又はそのバリアントでありうる。一実施態様では、そのようなバリアントは、疾患関連抗原と免疫学的に等価である。本発明のコンテクストにおいて、「抗原のバリアント」という用語は、特に罹患細胞、組織及び/又は器官、あるいは抗原を発現し場合によってはMHC分子のコンテクストで抗原を提示する細胞において発現される場合、抗原、すなわち疾患関連抗原を標的とするB細胞応答及び/又はT細胞応答をもたらす薬剤を意味する。従って、ワクチン抗原は、疾患関連抗原と同一であり得、疾患関連抗原又はその一部を含み得、又は疾患関連抗原又はその一部と相同の抗原を含みうる。ワクチン抗原が疾患関連抗原の一部又は疾患関連抗原に相同な抗原の一部を含む場合、前記一部はB細胞応答及び/又はT細胞が標的とされる疾患関連抗原のエピトープを含みうる。従って、本発明によれば、抗原は、疾患関連抗原のペプチド断片などの疾患関連抗原の免疫原性断片を含みうる。本発明に係る「抗原の免疫原性断片」は、好ましくは、B細胞応答及び/又はT細胞応答を刺激することができる抗原の一部又は断片に関する。本発明に従って投与されるワクチン抗原又はワクチン抗原をコードする核酸は、組換え抗原又は組換え核酸でありうる。

「免疫学的に等価」という用語は、免疫学的に等価なアミノ酸配列などの免疫学的に等価な分子が同じ又は本質的に同じ免疫学的特性を示し、及び/又は例えば免疫学的効果のタイプに対して、同じ又は本質的に同じ免疫学的効果を発揮することを意味する。本発明のコンテクストにおいて、「免疫学的に等価」という用語は、好ましくは、免疫化に使用される抗原又は抗原バリアントの免疫学的効果又は特性に関して使用される。例えば、アミノ酸配列は、対象の免疫系にさらされたときに前記アミノ酸配列が参照アミノ酸配列と反応するという特異性を有する免疫反応を誘導する場合、参照アミノ酸配列と免疫学的に等価である。

「エピトープ」という用語は、抗原などの分子中の抗原決定基、すなわち、例えば抗体又はT細胞受容体によって認識される免疫系によって認識され、すなわち結合される分子の一部又は断片を指す。例えば、エピトープは、免疫系によって認識される、抗原上の別々の三次元部位である。エピトープは通常、アミノ酸や糖側鎖などの化学的に活性な表面分子グループで構成され、通常は特定の三次元構造特性と特定の電荷特性を有している。立体構造エピトープと非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合が失われ、後者への結合は失われないという点で区別される。好ましくは、エピトープは、抗原又は抗原を発現する細胞に対して免疫応答を誘発することができる。好ましくは、この用語は、エピトープを含む抗原の免疫原性部分に関する。腫瘍抗原などのタンパク質のエピトープは、好ましくは前記タンパク質の連続部分又は不連続部分を含み、好ましくは5から100、好ましくは5から50、より好ましくは8から30、最も好ましくは10から25アミノ酸長であり、例えば、エピトープは、好ましくは、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25アミノ酸長でありうる。本発明のコンテクストにおけるエピトープはB細胞エピトープ又はT細胞エピトープであることが好ましい。

ここで使用される場合、「T細胞エピトープ」という用語は、T細胞受容体により認識される立体配置でのMHC分子に結合するペプチドを指す。典型的には、T細胞エピトープは抗原提示細胞の表面上に提示される。本発明に係る「T細胞エピトープ」は、好ましくは、免疫応答、好ましくは抗原の発現、好ましくは抗原の提示により特徴付けられる細胞又は抗原に対する細胞性応答を刺激することができる抗原の一部又は断片に関する。好ましくは、T細胞エピトープは、抗原の提示を特徴とする細胞に対する細胞性応答を刺激することができる。好ましくは、T細胞エピトープはMHCクラスI及び/又はクラスII提示ペプチドである。好ましくは、T細胞エピトープは、抗原の断片のアミノ酸配列に実質的に対応するアミノ酸配列を含む。好ましくは、抗原の前記断片は、MHCクラスI及び/又はクラスII提示ペプチドである。MHC分子、特にクラスI MHC分子への結合に適したペプチドは、好ましくは長さが7〜20アミノ酸、より好ましくは長さが7〜12アミノ酸、より好ましくは長さが8〜11アミノ酸、特に9又は10アミノ酸長である。一実施態様では、抗原提示細胞のMHCなどのMHCのコンテクストで提示される場合のT細胞エピトープはT細胞受容体によって認識される。T細胞受容体によって認識される場合、T細胞エピトープは、適切な共刺激シグナルの存在下で、T細胞エピトープを特異的に認識するT細胞受容体を運ぶT細胞のクローン増殖を誘導することができる場合がある。好ましくは、特にMHC分子のコンテクストで提示される場合、T細胞エピトープは、免疫応答、好ましくはそれらが由来する抗原に対する、又は抗原の発現により特徴付けられ、好ましくは抗原の提示により特徴付けられる細胞に対する細胞性応答を刺激することができる。

本発明によれば、T細胞エピトープは、ワクチン配列及び/又は1を超えるT細胞エピトープを含むポリペプチドなどのより大きな物質の一部としてワクチン抗原中に存在しうる。提示されたペプチド又はT細胞エピトープは、適切なプロセシング後に産生される。また、T細胞エピトープは、TCR認識又はMHCへの結合に必須ではない一又は複数の残基で修飾されうる。そのような修飾されたT細胞エピトープは免疫学的に等価であると考えられうる。

ここに記載の抗原を使用する本発明によるワクチン接種は、好ましくは、疾患関連抗原又はそのエピトープに対する免疫応答をもたらす。好ましくは、そのような疾患関連抗原又はそのエピトープは、一又は複数の疾患特異的アミノ酸修飾を含み、例えばそれらは、疾患関連のネオ抗原又はネオエピトープを含むか又はネオ抗原又はネオエピトープである。好ましくは、疾患特異的アミノ酸修飾は、一又は複数の疾患特異的体細胞変異によるものである。特に好ましい一実施態様では、疾患特異的アミノ酸修飾はがん特異的アミノ酸修飾であり、疾患特異的体細胞変異はがん特異的体細胞変異である。従って、一実施態様では、ワクチン抗原は、好ましくは患者の疾患特異的アミノ酸修飾/疾患特異的体細胞変異を特徴とし、好ましくは投与時に一又は複数の変異に基づくネオエピトープを提供する。従って、ワクチン抗原は、一又は複数の変異に基づくネオエピトープを含むペプチド又はポリペプチドを含みうる。一実施態様では、疾患特異的体細胞変異を同定することにより、例えば罹患組織又は一又は複数の罹患細胞のゲノムDNA及び/又はRNAを配列決定することにより、疾患特異的アミノ酸修飾が同定される。

ここで使用される場合、「ネオエピトープ」という用語は、正常な非罹患(例えば非がん性)又は生殖系細胞などの参照には存在しないが、罹患細胞(例えば、がん細胞)に見出されるエピトープを指す。これには、特に、正常な非罹患又は生殖細胞において対応するエピトープが見出されるが、罹患細胞の一又は複数の変異により、エピトープの配列がネオエピトープを生じるように変化している状況が含まれる。

本発明によれば、「ワクチン」という用語は、投与時に病原体又はがん細胞などの罹患細胞を認識して攻撃する免疫応答を誘導する薬学的製剤(薬学的組成物)又は製品に関する。ワクチンは、疾患の予防又は治療のために使用できる。特に、「ワクチン」という用語は、ここで定義される、抗原を含む組成物を指す。

一実施態様では、本発明により提供されるワクチンは、治療的又は予防的に有用な免疫応答を刺激するためのここに記載の、ここでは単に「抗原」とも呼ばれる、ワクチン抗原、又はペプチド又はタンパク質抗原をコードする核酸、好ましくはRNAを含む。

ここに記載される抗原は、対象に投与される場合、好ましくは、疾患特異的免疫応答を刺激するのに適した一又は複数のエピトープをもたらす。一実施態様では、疾患特異的免疫応答は、好ましくは疾患関連抗原に対する抗原特異的免疫応答である。例えば罹患細胞又は病原体によるこれらのエピトープの提示は、免疫応答によるターゲティングのラベルとして機能する。

本発明の一実施態様では、ここに記載の抗原は、ウイルス様粒子(VLP)であるか又はウイルス様粒子(VLP)の形態で提供される。ウイルス様粒子はウイルスに似ているが、ウイルス遺伝物質を含まないため、非感染性である。エンベロープやカプシドなどのウイルス構造タンパク質の発現は、ウイルス様粒子の自己組織化を引き起こす場合がある。ウイルス様粒子は、パルボウイルス科(例えば、アデノ随伴ウイルス)、レトロウイルス科(例えば、HIV)、フラビウイルス科(例えば、C型肝炎ウイルス)及びバクテリオファージ(例えば、Qβ、AP205)を含む多種多様なウイルス科の成分から生成されている。ウイルス様粒子は、細菌、哺乳動物細胞株、昆虫細胞株、酵母及び植物細胞を含む複数の細胞培養系において生成できる。ウイルス様粒子はワクチンとして有用である。ウイルス様粒子は、強力なT細胞及びB細胞の免疫応答を誘発できる立体構造ウイルスエピトープを提示するウイルス表面タンパク質の反復的な高密度ディスプレイを含む。ウイルス様粒子は複製できないため、弱毒化ウイルスに対してより安全な代替物を提供する。

B型肝炎ウイルスコア抗原(HBcAg)に由来するウイルス様粒子などのウイルス様粒子は外来免疫エピトープの非感染性キャリアとしてまた有用である。B型肝炎ウイルスコア抗原(HBcAg)は、微粒子状正二十面体ヌクレオカプシドに自然に集合する。組換えHBcAg粒子などのウイルス様粒子を使用して、ウイルスタンパク質のエピトープ、細菌及び原生動物タンパク質エピトープ、並びに腫瘍抗原エピトープを表示することができる。挿入されたエピトープの高度に反復的な高密度表示と間隔は、B細胞受容体の架橋に最適であると思われる。

本発明による免疫療法アプローチには、ペプチド又はタンパク質抗原(天然又は改変)、ペプチド又はタンパク質抗原をコードする核酸、ペプチド又はタンパク質抗原をコードする組換え細胞、ペプチド又はタンパク質抗原をコードする組換えウイルス、及びペプチド又はタンパク質抗原(天然又は改変)がパルスされ、又はペプチド又はタンパク質抗原をコードする核酸でトランスフェクトされた抗原提示細胞による免疫化が含まれる。

一実施態様では、目的は、腫瘍抗原を発現するがん細胞に対する免疫応答を提供し、腫瘍抗原を発現する細胞が関与するがん疾患を治療することである。腫瘍抗原を発現する前記がん細胞は、前記がん細胞の表面上に腫瘍抗原を発現し得、及び/又はMHC分子のコンテクストにおいて細胞表面上に腫瘍抗原を提示しうる。細胞表面上に腫瘍抗原を発現するがん細胞は、腫瘍抗原、特に腫瘍抗原の細胞外部分に向けられた抗体によって標的化されうる。MHC分子のコンテクストにおいて細胞表面に腫瘍抗原を提示するがん細胞は、腫瘍抗原のT細胞エピトープに向けられたT細胞により標的化されうる。

「細胞表面」は、当該技術分野におけるその通常の意味に従って使用され、従って、タンパク質及び他の分子による結合にアクセス可能な細胞の外側を含む。抗原は、それが細胞の表面に位置し、例えば細胞に加えられた抗原特異的抗体による結合にアクセス可能である場合、細胞の表面上に発現される。一実施態様では、細胞の表面上に発現される抗原は、細胞外部分を有する膜内在性タンパク質である。

本発明のコンテクストにおける「細胞外部分」又は「エキソドメイン」という用語は、細胞の細胞外空間に面し、例えば細胞外にある抗体などの分子に結合することにより、好ましくは前記細胞の外側からアクセス可能であるタンパク質などの分子の一部を指す。好ましくは、この用語は、一又は複数の細胞外ループ又はドメイン又はその断片を指す。

「一部」又は「部分」という用語は、ここでは互換的に使用され、アミノ酸配列などの構造の連続的又は不連続的要素を指す。「断片」という用語は、アミノ酸配列などの構造の連続した要素を指す。構造の一部、部分又は断片は、好ましくは、前記構造の一又は複数の機能的特性、例えば抗原性、免疫学的及び/又は結合特性を含む。タンパク質配列の部分又は一部は、好ましくは、タンパク質配列の少なくとも6個、特に少なくとも8個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、又は少なくとも100個の連続及び/又は非連続アミノ酸を含む。タンパク質配列の断片は、好ましくは、タンパク質配列の少なくとも6個、特に少なくとも8個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、又は少なくとも100個の連続アミノ酸を含む。

「免疫原性」という用語は、免疫反応を誘導する抗原の相対的有効性に関する。

「免疫賦活性」という用語は、ここでは全体的な免疫応答の増加を指すために使用される。

「標的」という用語は、免疫応答の標的である細胞、特にがん細胞などの薬剤を意味するものとする。標的には、抗原又は抗原エピトープ、すなわち抗原に由来するペプチド断片を提示する細胞が含まれる。一実施態様では、標的細胞は、好ましくは細胞表面に存在する標的抗原を発現する細胞である。

「抗原プロセシング」とは、抗原の断片であるプロセシング生成物への抗原の分解(例えば、タンパク質のペプチドへの分解)と、細胞、好ましくは特異的T細胞に対する抗原提示細胞による提示のためのMHC分子とのこれらの断片の一又は複数の(例えば、結合による)会合である。

抗原提示細胞(APC)は、その表面に主要組織適合遺伝子複合体(MHC)のコンテクストで抗原を表示する細胞である。T細胞は、そのT細胞受容体(TCR)を使用してこの複合体を認識しうる。抗原提示細胞は抗原を処理し、それらをT細胞に提示する。抗原提示細胞には、限定されるものではないが、単球/マクロファージ、B細胞及び樹状細胞(DC)が含まれる。本発明によれば、「抗原提示細胞」という用語には、プロフェッショナル抗原提示細胞及び非プロフェッショナル抗原提示細胞が含まれる。

プロフェッショナル抗原提示細胞は、貪食作用又は受容体依存性エンドサイトーシスの何れかによって抗原を内部移行し、ついでクラスII MHC分子に結合した抗原の断片をその膜上に表示するのに非常に効率的である。T細胞は、抗原提示細胞の膜上の抗原−クラスII MHC分子複合体を認識し、それと相互作用する。次に、抗原提示細胞によって追加の共刺激シグナルが生成され、T細胞の活性化につながる。共刺激分子の発現は、プロフェッショナル抗原提示細胞を定義する特徴である。

プロフェッショナル抗原提示細胞の主な種類は樹状細胞であり、それは最も広範囲の抗原提示を持ち、おそらく最も重要な抗原提示細胞、マクロファージ、B細胞、及び所定の活性化上皮細胞である。

非プロフェッショナル抗原提示細胞は、ナイーブT細胞との相互作用に必要なMHCクラスIIタンパク質を構成的に発現しない;これらは、IFNγなどの所定のサイトカインによる非プロフェッショナル抗原提示細胞の刺激によってのみ発現される。

樹状細胞(DC)は、MHCクラスII及びIの両方の抗原提示経路を介してT細胞に末梢組織で捕捉された抗原を提示する白血球集団である。樹状細胞が免疫応答の強力な誘導因子であり、これらの細胞の活性化が免疫誘導の重要な工程であることはよく知られている。

樹状細胞は、「未熟」細胞と「成熟」細胞に簡便に分類され、これは二つのよく特徴付けられた表現型を区別する単純な方法として使用できる。しかし、この命名法は、分化の全ての可能な中間段階を除外すると解釈されるべきではない。

未熟樹状細胞は、Fcγ受容体及びマンノース受容体の高発現と相関する、抗原の取り込み及びプロセシングの能力が高い抗原提示細胞として特徴付けられる。成熟表現型は、典型的には、これらのマーカーの低発現と、しかしクラスI及びクラスII MHC、接着分子(例えばCD54及びCD11)及び共刺激分子(例えばCD40、CD80、CD86及び4−1BB)のようなT細胞活性化の原因となる細胞表面分子の高発現によって特徴付けられる。

樹状細胞成熟は、そのような抗原提示樹状細胞がT細胞プライミングを引き起こすが、未熟樹状細胞による提示が耐性をもたらす樹状細胞活性化の状態と呼ばれる。樹状細胞成熟は、主に、自然受容体よって検出される微生物の特徴を持つ生体分子(細菌DNA、ウイルスRNA、エンドトキシン等々)、炎症誘発性サイトカイン(TNF、IL−1、IFN)、CD40Lによる樹状細胞表面上のCD40のライゲーション、及びストレスの多い細胞死を被っている細胞から放出される物質によって引き起こされる。樹状細胞は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)や腫瘍壊死因子αなどのサイトカインと共にインビトロで骨髄細胞を培養することにより誘導することができる。

「形質細胞様樹状細胞」又は「pDC」という用語は、血液中を循環し、末梢リンパ器官に見出される自然免疫細胞に関連している。それらは骨髄造血幹細胞から発生し、末梢血単核細胞(PBMC)の<0.4%を構成する。ヒトにおいて、形質細胞様樹状細胞は形質細胞の形態を示し、CD4、HLA−DR、CD123、血液由来樹状細胞抗原−2(BDCA−2)、トール様受容体(TLR)7及びTLR9をエンドソーム区画内に発現するが、高レベルのCD11c又はCD14は発現せず、これがそれらを一般的な樹状細胞又は単球とそれぞれ区別する。自然免疫系の成分として、形質細胞様樹状細胞は、ssRNA及び非メチル化CpG DNA配列をそれぞれ検出する細胞内トール様受容体7及び9を発現する。刺激とその後の活性化により、これらの細胞は多量(他の細胞型の最大1000倍)のI型インターフェロン(主にIFN−α(アルファ)及びIFN−β(ベータ))を産生する。

「抗原の提示によって特徴付けられる細胞」又は「抗原を提示する細胞」又は類似の表現とは、例えばMHC分子、特にMHCクラスI分子とのコンテクストにおいて、抗原のプロセシングにより、抗原又は前記抗原に由来する断片を提示する、罹患細胞などの細胞、例えばがん細胞、又は抗原提示細胞を意味する。同様に、「抗原の提示によって特徴付けられる疾患」という用語は、特にクラスI MHCを伴う抗原の提示によって特徴付けられる細胞が関与する疾患を示す。

本発明のコンテクストにおける「免疫反応性細胞」又は「エフェクター細胞」という用語は、免疫反応中にエフェクター機能を発揮する細胞に関する。「免疫反応性細胞」は、好ましくは、抗原又はエピトープの発現及び/又は提示によって特徴付けられ、免疫応答を媒介する細胞又は抗原に結合することができる。例えば、そのような細胞は、サイトカイン及び/又はケモカインを分泌し、微生物を死滅させ、抗体を分泌し、感染細胞又はがん性細胞を認識し、場合によってはそのような細胞を排除する。例えば、免疫反応性細胞は、T細胞(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ、及び樹状細胞を含む。

好ましくは、「免疫反応性細胞」は、特に抗原提示細胞又は腫瘍細胞などの罹患細胞の表面などのMHC分子のコンテクストで提示される場合、ある程度の特異性で抗原又はエピトープを認識する。好ましくは、前記認識が、抗原又はエピトープを認識する細胞が応答性又は反応性になることを可能にする。細胞がMHCクラスII分子のコンテクストで抗原又はエピトープを認識する受容体を担持するヘルパーT細胞(CD4+T細胞)である場合、そのような応答性又は反応性は、サイトカインの放出及び/又はCD8+リンパ球(CTL)及び/又はB細胞の活性化を含みうる。細胞がCTLである場合、そのような応答性又は反応性は、MHCクラスI分子のコンテクストで提示される細胞、すなわち、例えばアポトーシス又はパーフォリン媒介細胞溶解を介したクラスI MHCによる抗原の提示により特徴付けられる細胞の除去を含みうる。本発明によれば、CTL応答性は、持続的なカルシウム流、細胞分裂、IFN−γ及びTNF−αなどのサイトカインの産生、CD44及びCD69などの活性化マーカーのアップレギュレーション、及び抗原発現標的細胞の特異的な細胞溶解性死滅を含みうる。CTL応答性はまたCTL応答性を精確に示す人工レポーターを使用して決定することもできる。抗原又はエピトープを認識し、応答性又は反応性であるそのようなCTLは、ここでは「抗原応答性CTL」とも呼ばれる。細胞がB細胞である場合、そのような応答性は免疫グロブリンの放出を含みうる。

「T細胞」又は「Tリンパ球」という用語は、様々な細胞性免疫反応に関与する胸腺由来細胞に関連し、Tヘルパー細胞(CD4+T細胞)と細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+T細胞)とを含む。

T細胞はリンパ球として知られる白血球のグループに属し、細胞性免疫において中心的な役割を果たす。それらは、T細胞受容体(TCR)と呼ばれる細胞表面上の特別な受容体の存在により、B細胞やナチュラルキラー細胞などの他のリンパ球と区別できる。胸腺は、T細胞の成熟に関与する主要な器官である。T細胞の幾つかの異なるサブセットが発見されており、それぞれが異なる機能を有している。

Tヘルパー細胞は、他の機能の中でも、B細胞の形質細胞への成熟、細胞傷害性T細胞及びマクロファージの活性化を含む、免疫プロセスにおいて他の白血球を支援する。これらの細胞は、その表面にCD4タンパク質を発現するため、CD4+T細胞としても知られている。ヘルパーT細胞は、それらが抗原提示細胞(APC)の表面に発現されるMHCクラスII分子によってペプチド抗原と共に提示されると、活性化される。活性化されると、それらは急速に分裂し、能動的免疫応答を調節又は支援するサイトカインと呼ばれる低分子タンパク質を分泌する。

細胞傷害性T細胞は、ウイルス感染細胞と腫瘍細胞を破壊し、移植片拒絶反応にも関与している。これらの細胞は、表面にCD8糖タンパク質を発現するため、CD8+T細胞としても知られている。これらの細胞は、体のほぼ全ての細胞の表面に存在するMHCクラスIに関連する抗原に結合することにより、その標的を認識する。

T細胞の大部分は、幾つかのタンパク質の複合体として存在するT細胞受容体(TCR)を有している。実際のT細胞受容体は、独立したT細胞受容体アルファ及びベータ(TCRα及びTCRβ)遺伝子から生成され、α−及びβ−TCR鎖と呼ばれる2つの別々のペプチド鎖で構成されている。γδT細胞(ガンマデルタT細胞)は、その表面に別個のT細胞受容体(TCR)を持つT細胞の小サブセットを表す。しかし、γδT細胞では、TCRは一つのγ鎖と一つのδ鎖で構成されている。T細胞のこのグループは、αβT細胞ほど一般的ではない(全T細胞の2%)。

T細胞受容体の構造は、抗体アームの軽鎖と重鎖の組み合わせとして定義される領域である免疫グロブリンFab断片に非常に類似している。TCRの各鎖は免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、一つのN末端免疫グロブリン(Ig)可変(V)ドメイン、一つのIg定常(C)ドメイン、膜貫通/細胞膜貫通領域、及びC末端の短い細胞質側末端を有する。TCRα鎖及びβ鎖双方の可変ドメインには、3つの超可変又は相補性決定領域(CDR)があるが、β鎖の可変領域には、通常は抗原と接触せず、よってCDRとは見なされない追加の超可変性領域(HV4)がある。α鎖のCDR1もまた抗原性ペプチドのN末端部分と相互作用することが示されてるが、CDR3はプロセシングされた抗原の認識に関与する主要なCDRであり、β鎖のCDR1はペプチドのC末端部分と相互作用する。CDR2はMHCを認識すると考えられている。β鎖のCDR4は抗原認識に関与するとは考えられていないが、スーパー抗原と相互作用することが示されている。TCRドメインの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、2つの鎖の間に連結を形成する短い連結配列で構成されている。

「B細胞」又は「Bリンパ球」という用語は、抗体を分泌することにより体液性免疫において機能するリンパ球サブタイプの白血球のタイプに関する。加えて、B細胞は抗原を提示し、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)として分類され、サイトカインを分泌する。B細胞は、その細胞膜上にB細胞受容体(BCR)を発現する。BCRは、B細胞が特異的抗原に結合することを可能にし、それに対して抗体応答を開始する。B細胞受容体は、2つの部分、つまり、内在性膜ドメインの存在を除き、その分泌型と同一である一つのアイソタイプ(IgD、IgM、IgA、IgG、又はIgE)の膜結合免疫グロブリン分子と、シグナル伝達部分:ジスルフィド架橋により結合されたIg−α/Ig−β(CD79)と呼ばれるヘテロ二量体とから構成されている。二量体の各メンバーは原形質膜にまたがっており、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を持つ細胞質側末端を有している。

B細胞の活性化は、脾臓やリンパ節などの二次リンパ器官で起こる。B細胞は骨髄で成熟した後、血液を介して二次リンパ器官に移動し、循環リンパを通して抗原の絶えない供給を受ける。B細胞がそのBCRを介して抗原に結合すると、B細胞の活性化が始まる。異なるB細胞サブセットが、T細胞依存性活性化又はT細胞非依存性活性化を受ける。

「末梢血単核細胞」又は「PBMC」という用語は、丸い核を有する末梢血細胞に関する。これらの細胞はリンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)と単球で構成されているが、赤血球と血小板には核がなく、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)には多葉の核がある。これらの細胞は、フィコール及びグラジエント遠心分離を使用して全血から抽出でき、これにより、血液が、血漿の最上層と、続くPBMCの層と多形核細胞(好中球や好酸球など)及び赤血球の底部画分に分離される。

「主要組織適合遺伝子複合体」という用語と「MHC」という略語は、MHCクラスI及びMHCクラスII分子を含み、全ての脊椎動物で生じる遺伝子の複合体に関連する。MHCタンパク質又は分子は、免疫反応においてリンパ球と抗原提示細胞又は罹患細胞との間のシグナル伝達に重要であり、MHCタンパク質又は分子はペプチドに結合し、T細胞受容体による認識のためにそれらを提示する。MHCによってコードされるタンパク質は、細胞の表面に発現され、T細胞に対して自己抗原(細胞自体からのペプチド断片)と非自己抗原(例えば、侵入微生物の断片)双方を表示する。

MHC領域は、クラスI、クラスII、及びクラスIIIの3つのサブグループに分けられる。MHCクラスIタンパク質は、α鎖とβ2ミクログロブリン(15番染色体にコードされるMHCの部分ではない)を含む。それらは細胞傷害性T細胞に抗原断片を提示する。殆どの免疫系細胞、特に抗原提示細胞では、MHCクラスIIタンパク質はα鎖とβ鎖を含み、それらはTヘルパー細胞に抗原断片を提示する。MHCクラスIII領域は、補体成分やサイトカインをコードする幾つかなど、他の免疫成分をコードする。

ヒトにおいて、細胞表面上の抗原提示タンパク質をコードするMHC領域の遺伝子は、ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子と呼ばれる。しかし、MHCという略語が、HLA遺伝子産物を指すためによく使用される。HLA遺伝子には、9つのいわゆる古典的MHC遺伝子:HLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−DPA1、HLA−DPB1、HLA−DQA1、HLA−DQB1、HLA−DRA、及びHLA−DRB1が含まれる。

本発明の全ての態様の好ましい一実施態様では、MHC分子はHLA分子である。

本発明のコンテクストにおける「免疫エフェクター機能」又は「エフェクター機能」という用語は、例えば細胞の死滅をもたらす免疫系の成分により媒介される任意の機能を含む。好ましくは、本発明のコンテクストにおける免疫エフェクター機能は、T細胞媒介エフェクター機能である。そのような機能は、ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)の場合、T細胞受容体によるMHCクラスII分子のコンテクストにおける抗原又は抗原由来の抗原ペプチドの認識、サイトカインの放出、及び/又はCD8+リンパ球(CTL)及び/又はB細胞の活性化と、CTLの場合、T細胞受容体によるMHCクラスI分子のコンテクストにおける抗原又は抗原由来の抗原ペプチドの認識、例えばアポトーシス又はパーフォリン媒介細胞溶解、IFN−γやTNF−αなどのサイトカインの産生、及び抗原発現標的細胞の特異的な細胞溶解性死滅による、MHCクラスI分子のコンテクストにおいて提示された細胞、すなわち、クラスI MHCを伴う抗原の提示により特徴付けられた細胞の除去を含む。

「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」又は「ADCC」は、ここに記載のエフェクター細胞、特にリンパ球の細胞死滅能力を記述し、これは好ましくは標的細胞が抗体で標識されることを必要とする。ADCCは、抗体が腫瘍細胞上の抗原に結合し、抗体Fcドメインが免疫エフェクター細胞の表面上のFc受容体(FcR)に結合すると生じることが好ましい。Fc受容体の幾つかのファミリーが同定されており、特定の細胞集団が定義されたFc受容体を特徴的に発現する。ADCCは、抗原提示と腫瘍指向性T細胞応答の誘導につながる様々な度合いの即時腫瘍破壊を直接誘導する機序とみなすことができる。好ましくは、ADCCのインビボ誘導は、腫瘍指向性T細胞応答と宿主由来の抗体応答をもたらすであろう。

「補体依存性細胞傷害性」又は「CDC」は、抗体によって指向されうる別の細胞死滅法である。IgMは補体活性化に最も効果的なアイソタイプである。IgG1とIgG3の双方とも、古典的補体活性化経路を介してCDCを誘導するのに非常に効果的である。好ましくは、このカスケードでは、抗原抗体複合体の形成により、IgG分子などの関与する抗体分子のCH2ドメイン上の近接する複数のC1q結合部位のアンクローキングが生じる(C1qは補体C1の3つのサブコンポーネントの一つである)。好ましくは、これらのアンクローキングC1q結合部位が、以前は低親和性のC1q−IgG相互作用を高結合活性のものに変換し、これが一連の他の補体タンパク質が関与するイベントのカスケードをトリガーし、エフェクター細胞走化性/活性化剤C3a及びC5aのタンパク質分解放出を引き起こす。好ましくは、補体カスケードは膜侵襲複合体の形成で終わり、これが、細胞へのかつ細胞からの水と溶質の自由な通過を促進する孔を細胞膜につくる。

「トール様受容体」又は「TLR」という用語は、自然免疫系で重要な役割を果たすタンパク質のクラスに関係する。それらは、微生物由来の構造的に保存された分子を認識する、マクロファージや樹状細胞などのセンチネル細胞で通常発現される単一の膜貫通型非触媒受容体である。これらの微生物が皮膚や腸管粘膜などの物理的障壁を突破すると、それらは免疫細胞応答を活性化するTLRによって認識される。

本発明の一実施態様では、抗原をコードするRNAなどの核酸が対象に投与される。核酸の抗原翻訳産物が対象の細胞内で形成され得、その産物が免疫応答の刺激のために免疫系に提示されうる。

あるいは、本発明は、ここに記載される抗原を発現する核酸がエクスビボで抗原提示細胞などの細胞に導入され、例えば患者から採取された抗原提示細胞と、場合によってはエクスビボでクローン増殖された細胞が、同じ患者に移植される実施態様を想定する。トランスフェクトされた細胞は、当該分野で知られている任意の手段を使用して、好ましくは静脈内、腔内、腹腔内又は腫瘍内投与により滅菌形態で、患者に再導入されうる。

ここで使用される「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)、例えばcDNA、mRNA、組換えにより生成され、化学合成された分子を含むものとする。核酸は一本鎖でも二本鎖でもよい。本発明によれば、RNAには、インビトロ転写RNA(IVT RNA)又は合成RNAが含まれる。本発明によれば、核酸は好ましくは単離された核酸である。更に、ここに記載の核酸は組換え分子でありうる。

「単離された核酸」という用語は、本発明によれば、核酸が(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりインビトロで増幅されたこと、(ii)クローニングにより組換えにより産生されたこと、(iii)例えばゲル電気泳動による切断及び分離により、精製されたこと、又は(iv)例えば化学合成により合成されたことを意味する。核酸は、例えば、DNA鋳型からのインビトロ転写により調製されうるRNAの形態で、細胞への導入、すなわち細胞のトランスフェクションに使用されうる。更に、配列の安定化、キャッピング、及びポリアデニル化により、適用前にRNAを修飾できる。

本発明のコンテクストにおいて、「DNA」という用語は、デオキシリボヌクレオチド残基を含み、好ましくは完全に又は実質的にデオキシリボヌクレオチド残基から構成される分子に関する。「デオキシリボヌクレオチド」は、β−D−リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を欠くヌクレオチドに関する。「DNA」という用語は、部分的又は完全に精製されたDNA、本質的に純粋なDNA、合成DNA、及び組換え生成DNAなどの単離されたDNAを含み、一又は複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は変更により天然に生じるDNAとは異なる修飾されたDNAを含む。そのような修飾は、例えばDNAの末端への、又は例えばDNAの一又は複数のヌクレオチドにおける内部的な、非ヌクレオチド材料の付加を含みうる。DNA分子中のヌクレオチドは、非天然発生ヌクレオチド又は化学的に合成されたヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドをまた含みうる。これらの改変されたDNAは、アナログ又は天然に生じるDNAのアナログと呼ばれることがある。

本発明のコンテクストにおいて、「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含み、好ましくは完全に又は実質的にリボヌクレオチド残基から構成される分子に関する。「リボヌクレオチド」は、β−D−リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドに関する。この用語には、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離されたRNA、例えば部分的又は完全に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNA、並びに一又は複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は変更によって天然に生じるRNAとは異なる修飾されたRNAが含まれる。そのような修飾は、例えばRNAの端部への、又は例えばRNAの一又は複数のヌクレオチドにおける内部的な、非ヌクレオチド材料の付加を含みうる。RNA分子中のヌクレオチドは、非天然発生ヌクレオチド又は化学的に合成されたヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドをまた含みうる。これらの改変されたRNAは、アナログ又は天然に生じるRNAのアナログと呼ばれることがある。本発明によれば、「RNA」という用語は、「メッセンジャーRNA」を意味する「mRNA」を含み、好ましくはこれに関係し、鋳型としてDNAを使用して生成され得、ペプチド又はタンパク質をコードする転写物に関する。mRNAは、典型的には、5’非翻訳領域(5’−UTR)、タンパク質又はペプチドコード領域、及び3’非翻訳領域(3’−UTR)を含む。mRNAは細胞内及びインビボで限られた半減期を有する。好ましくは、mRNAは、DNA鋳型を使用したインビトロ転写により生成される。本発明の一実施態様では、RNAは、インビトロ転写又は化学合成により得られる。インビトロ転写方法は当業者に知られている。例えば、市販されている様々なインビトロ転写キットがある。

本発明によれば、RNAの安定性及び翻訳効率は、必要に応じて改変されうる。例えば、RNAは、安定化効果を有し及び/又はRNAの翻訳効率を増加させる一又は複数の修飾により安定化され、その翻訳が増加されうる。本発明に従って使用されるRNAの発現を増加させるために、それは、GC含量を増加させてmRNA安定性を高め、コドン最適化を実施し、よって細胞における翻訳を増強するように、好ましくは発現されたペプチド又はタンパク質の配列を変更することなく、コード領域内、つまり発現されたペプチド又はタンパク質をコードする配列内で修飾されうる。

本発明において使用されるRNAのコンテクストにおける「修飾」という用語は、前記RNAに天然には存在しないRNAの任意の修飾を含む。

本発明の一実施態様では、本発明に従って使用されるRNAは、キャップのない5’−三リン酸を有さない。そのようなキャップのない5’−三リン酸の除去は、RNAをホスファターゼで処理することにより達成できる。

本発明に係るRNAは、その安定性を高め、及び/又は細胞傷害性を低下させるために、修飾されたリボヌクレオチドを有していてもよい。例えば、一実施態様では、本発明によって使用されるRNAにおいて、5−メチルシチジンが、シチジンに部分的又は完全に、好ましくは完全に置換される。代替的又は追加的に、一実施態様では、本発明によって使用されるRNAにおいて、プソイドウリジンが、ウリジンに部分的又は完全に、好ましくは完全に置換される。

一実施態様では、「修飾」という用語は、RNAに5’キャップ又は5’キャップアナログを提供することに関する。「5’キャップ」という用語は、mRNA分子の5’末端に見出されるキャップ構造を指し、一般に、普通でない5’対5’三リン酸結合を介してmRNAに連結されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施態様では、このグアノシンは7位でメチル化されている。「一般的な5’キャップ」という用語は、天然に生じるRNA5’キャップ、好ましくは7−メチルグアノシンキャップ(m7G)を指す。本発明のコンテクストにおいて、「5’キャップ」という用語は、RNAキャップ構造に類似し、RNAを安定化する能力を有するように修飾され、及び/又はそれに付着した場合、好ましくはインビボで及び/又は細胞内でRNAの翻訳を増強する5’キャップアナログを含む。

RNAは更なる修飾を含みうる。例えば、本発明において使用されるRNAの更なる修飾は、天然に生じるポリ(A)テールの伸長又は切断、又は5’−又は3’−非翻訳領域(UTR)の改変、例えば、前記RNAのコード領域に関係していないUTRの導入、例えば、グロビン遺伝子、例えばアルファ2−グロビン、アルファ1−グロビン、ベータ−グロビン、好ましくはベータ−グロビン、より好ましくはヒトベータ−グロビンに由来する3’−UTRの一又は複数、好ましくは2つのコピーの挿入又はこれらとの既存の3’−UTRの交換でありうる。

アンマスクのポリA配列を有するRNAは、マスクされたポリA配列を有するRNAよりも効率的に翻訳される。「ポリ(A)テール」又は「ポリA配列」という用語は、典型的にはRNA分子の3’末端に位置するアデニル(A)残基の配列に関し、「アンマスクのポリA配列」とは、RNA分子の3’末端のポリA配列がポリA配列のAで終わり、ポリA配列の3’末端、すなわち下流に位置するA以外のヌクレオチドが後に続かないことを意味する。更に、約120塩基対の長いポリA配列により、RNAの最適な転写物安定性と翻訳効率が得られる。

従って、本発明によって使用されるRNAの安定性及び/又は発現を増加させるために、それは、好ましくは10〜500、より好ましくは30〜300、更により好ましくは65〜200、特に100〜150のアデノシン残基長を有するポリA配列と共に存在するように修飾されうる。特に好ましい実施態様では、ポリA配列は約120個のアデノシン残基の長さを有する。本発明によって使用されるRNAの安定性及び/又は発現を更に増加させるために、ポリA配列をアンマスクすることができる。

RNAの「安定性」という用語は、RNAの「半減期」に関係する。「半減期」は、分子の活性、量、又は数の半分を排除するために必要な期間に関係する。本発明のコンテクストにおいて、RNAの半減期は、前記RNAの安定性の指標である。RNAの半減期は、RNAの「発現の持続時間」に影響を与えうる。長い半減期を有するRNAは長い期間発現されることが期待されうる。

もちろん、本発明によってRNAの安定性及び/又は翻訳効率を低下させることが望ましい場合、RNAの安定性及び/又は翻訳効率を高める上述の要素の機能を妨害するようにRNAを修飾することができる。

ここに記載の核酸は、細胞の内部に核酸を送達するために使用できるベクターに含められうる。ここで使用される「ベクター」という用語には、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、例えばラムダファージ、ウイルスベクター、例えばアデノウイルス又はバキュロウイルスベクター、レトロ又はレンチウイルスベクター、トランスポゾン又は人工染色体ベクター、例えばバクテリア人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、又はP1人工染色体(PAC)を含む当業者に知られた任意のベクターが含まれる。前記ベクターには、発現並びにクローニングベクターが含まれる。発現ベクターは、プラスミド並びにウイルスベクターを含み、一般に、特定の宿主生物(例えば、細菌、酵母、植物、昆虫、又は哺乳動物)における又はインビトロ発現系における作用可能に連結されたコード配列の発現に必要な所望のコード配列及び適切なDNA配列を含む。クローニングベクターは一般に所定の望ましいDNA断片を操作し増幅するために使用され、望ましいDNA断片の発現に必要な機能的配列を欠く場合がある。

分子生物学の当業者であれば、一般に、タンパク質発現のためにプロモーター、エンハンサー、及び細胞型の組み合わせを如何に使用するかを知っている。用いられるプロモーターは、導入された核酸セグメントの高レベルの発現を方向付けるために適切な条件下で構成的、組織特異的、誘導性、及び/又は有用でありうる。プロモーターは異種性又は内因性でありうる。本発明によって使用されうる構成的プロモーター配列には、限定されるものではないが、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)末端反復配列(LTR)プロモーター、モロニーウイルスプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、並びにヒト遺伝子プロモーター、例えば限定するものではないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及び筋肉クレアチンプロモーターが含まれる。更に、本発明は構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターもまた本発明の一部として考慮される。本発明における誘導性プロモーターの使用は、そのような発現が望まれる場合に作用可能に連結されるポリヌクレオチド配列の発現をオンにするか、又は発現が望まれない場合に発現をオフにすることができる分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例には、限定されるものではないが、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリンプロモーターが含まれる。更に、本発明は、組織特異的プロモーターの使用を含み、このプロモーターは所望の組織でのみ活性である。組織特異的プロモーターは当該技術分野で周知であり、限定されるものではないが、HER−2プロモーター及びPSA関連プロモーター配列が含まれる。

核酸は、物理的、化学的、又は生物学的手段によって宿主細胞中に移入することができる。

核酸を宿主細胞中に導入する物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが含まれる。

目的の核酸を宿主細胞中に導入する生物学的方法には、DNA及びRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えばヒト細胞中に遺伝子を挿入するための最も広く使用される方法になった。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスなどに由来しうる。

核酸を宿主細胞中に導入する化学的手段には、コロイド分散系、例えば高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベース系が含まれる。インビトロ及びインビボでの送達ビヒクルとして使用するための好ましいコロイド系はリポソーム(すなわち、人工膜小胞)である。そのような系の調製と使用は当該技術分野で周知である。

「コード化」とは、定まったヌクレオチド配列又は定まったアミノ酸配列を有する生物学的プロセスにおける他のポリマー及び高分子の合成のための鋳型として機能する、核酸中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。従って、核酸の発現(翻訳及び場合により転写)が細胞又は他の生物系でタンパク質を産生する場合、核酸がタンパク質をコードする。

「発現」という用語は、その最も一般的な意味で本発明によって使用され、RNA及び/又は例えば転写及び/又は翻訳によるペプチド又はポリペプチドの産生を含む。RNAに関して、「発現」又は「翻訳」という用語は、特にペプチド又はポリペプチドの産生に関する。また核酸の部分発現も含む。更に、発現は一過性又は安定的でありうる。

本発明のコンテクストにおいて、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写されるプロセスに関する。その後、RNAはタンパク質に翻訳されうる。本発明によれば、「転写」という用語は「インビトロ転写」を含み、ここで「インビトロ転写」という用語は、RNA、特にmRNAが無細胞系において好ましくは適切な細胞抽出物を使用してインビトロで合成されるプロセスに関する。好ましくは、クローニングベクターは転写物の生成に適用される。これらのクローニングベクターは一般に転写ベクターと呼ばれ、本発明によれば「ベクター」という用語に含まれる。本発明によれば、本発明において使用されるRNAは、好ましくはインビトロ転写RNA(IVT−RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写により得ることができる。転写を制御するためのプロモーターは、任意のRNAポリメラーゼに対する任意のプロモーターでありうる。RNAポリメラーゼの特定の例は、T7、T3、及びSP6 RNAポリメラーゼである。好ましくは、本発明によるインビトロ転写は、T7又はSP6プロモーターによって制御される。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAをクローニングし、それをインビトロ転写のための適切なベクター中に導入することにより得ることができる。cDNAは、RNAの逆転写により得ることができる。

本発明による「翻訳」という用語は、メッセンジャーRNAのストランドがアミノ酸配列のアセンブリを方向付けてペプチド又はポリペプチドを作製する細胞のリボソームにおけるプロセスに関する。

本発明によって核酸と機能的に連結されうる発現制御配列又は調節配列は、核酸に関して相同的又は異種性でありうる。コード配列と調節配列は、それらが共有結合している場合、「機能的に」連結されており、コード配列の転写又は翻訳が調節配列の制御下又は影響下にある。コード配列が機能的タンパク質に翻訳され、調節配列がコード配列と機能的に連結されている場合、調節配列の導入は、コード配列における読み枠シフトを引き起こさずに又は所望のタンパク質もしくはペプチドへコード配列を翻訳できないようにすることなくコード配列の転写を導く。

「発現制御配列」又は「調節配列」という用語は、本発明によれば、プロモーター、リボソーム結合配列、及び核酸の転写又は誘導RNAの翻訳を制御する他の調節エレメントを含む。本発明の所定の実施態様では、調節配列は制御することができる。調節配列の正確な構造は、種や細胞型によって異なりうるが、一般に、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等、転写又は翻訳の開始に関与する5’非転写配列及び5’及び3’非翻訳配列を含む。特に、5’非転写調節配列は、機能的に結合した遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。調節配列は、エンハンサー配列又は上流アクチベーター配列をまた含むことができる。

本発明によれば、インビトロで又は対象に存在しうる細胞に取り込まれ又は導入された、すなわちトランスフェクト又は形質導入された、ペプチド又はタンパク質をコードするRNAなどの核酸が、前記ペプチド又はタンパク質の発現をもたらすことが好ましい。細胞は、コード化されたペプチド又はタンパク質を細胞内で(例えば、細胞質及び/又は核内で)発現し得、コード化されたペプチド又はタンパク質を分泌し得、又は表面にそれを発現しうる。

本発明によれば、「核酸を発現する」及び「核酸をコードする」などの用語又は類似の用語は、ここでは互換的に使用され、特定のペプチド又はポリペプチドに関して、適切な環境に、好ましくは細胞内に存在する場合、核酸を発現させて前記ペプチド又はポリペプチドを生成することができることを意味する。

「移入する」、「導入する」、「トランスフェクトする」又は「形質導入する」などの用語は、ここでは互換的に使用され、核酸、特にRNAなどの外因性又は異種性核酸の細胞への導入に関する。本発明によれば、細胞は、インビトロ又はインビボで存在し得、例えば細胞は器官、組織及び/又は生物の一部を形成しうる。本発明によれば、トランスフェクションは一過性又は安定でありうる。トランスフェクションの幾つかの適用では、トランスフェクトされた遺伝物質が一過性にのみ発現されれば十分である。通常、トランスフェクションプロセスで導入された核酸は核ゲノム中に組み込まれないため、外来核酸は有糸分裂によって希釈され又は分解される。核酸のエピソーム増幅を可能にする細胞株は、希釈率を大幅に低下させる。トランスフェクトされた核酸が実際に細胞及びその娘細胞のゲノムに残ることが望ましい場合、安定したトランスフェクションが行われなければならない。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードされたタンパク質を一過性に発現させることができる。

核酸配列に関する「断片」は、核酸配列の一部、すなわち5’及び/又は3’末端で短縮された核酸配列を表す配列に関する。核酸配列の断片は、好ましくは、核酸配列の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、又は少なくとも100の連続ヌクレオチドを含む。

本発明はまたここに記載の免疫賦活性RNA分子などの核酸又は核酸配列の「バリアント」を含む。

本発明によれば、核酸バリアントは、参照核酸と比較して、単一又は複数のヌクレオチド欠失、付加、変異、及び/又は挿入を含む。欠失は、参照核酸からの一又は複数のヌクレオチドの除去を含む。付加バリアントは、1、2、3、5、10、20、30、50、又はそれ以上のヌクレオチドなど、一又は複数のヌクレオチドの5’及び/又は3’末端融合を含む。変異は、限定されないが、配列内の少なくとも一つのヌクレオチドが除去され、別のヌクレオチドがその場所(トランスバージョン及びトランジションなど)、脱塩基部位、架橋部位、及び化学的に改変又は修飾された塩基に挿入される置換を含みうる。挿入は、参照核酸への少なくとも一つのヌクレオチドの付加を含む。

好ましくは、与えられた核酸配列と該与えられた核酸配列のバリアントである核酸配列との間の同一性の度合は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であろう。同一性の度合は、好ましくは参照核酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は約100%である核酸領域に対して与えられる。例えば、参照核酸配列が200ヌクレオチドからなる場合、同一性の度合は、好ましくは少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、又は約200ヌクレオチド、好ましくは連続ヌクレオチドに対して与えられる。同一性の度合は、好ましくは、少なくとも80、少なくとも100、少なくとも120、少なくとも150、少なくとも180、少なくとも200又は少なくとも250ヌクレオチドのセグメントに対して与えられる。好ましい実施態様では、同一性の度合は、参照核酸配列の全長に対して与えられる。

2つの核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるヌクレオチドの割合を示す。

「同一性%」という用語は、特に、比較される2つの配列間の最適なアライメントにおいて同一であるヌクレオチドの割合を指し、前記割合は純粋に統計的であり、2つの配列間の差は配列の全長にわたってランダムに分布し得、比較される配列は、2つの配列間の最適なアライメントを得るために、参照配列と比較して付加又は欠失を含んでもよい。通常、2つの配列の比較は、対応する配列の局所領域を識別するために、セグメント又は「比較ウィンドウ」に関して最適なアラインメントの後、前記配列を比較することにより実行される。比較のための最適なアライメントは、手作業で実行するか、又はSmith及びWaterman, 1981, Ads App. Math. 2, 482のローカルホモロジーアルゴリズムを用いて、Neddleman及びWunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48, 443のローカルホモロジーアルゴリズムを用いて、及びPearson及びLipman, 1988, Proc. Natl Acad. Sci. USA 85, 2444による類似性検索アルゴリズムを用いて、又は前記アルゴリズムを使用するコンピュータープログラム(GAP, BESTFIT, FASTA, BLAST P, BLAST N and TFASTA in Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wis)を用いて実行できる。

同一性の割合は、比較される配列が対応する同一の位置の数を決定し、この数を比較される位置の数で除算し、この結果に100を掛けることにより得られる。

特定の核酸配列又は特定の核酸配列と特定の同一性度合を有する核酸配列のバリアントは、好ましくは前記特定の配列の少なくとも一つの機能特性を有し、好ましくは前記特定の配列と機能的に同等であり、例えば核酸配列は特定の核酸配列の特性と同一又は類似の特性を示す。

一つの重要な特性には、特に抗原又は抗原をコードする核酸と組み合わせて投与された場合に、アジュバント又は免疫賦活剤として作用する能力が含まれる。

本発明によれば、「ペプチド」という用語は、ペプチド結合により共有結合した2つ以上、好ましくは3つ以上、好ましくは4つ以上、好ましくは6つ以上、好ましくは8つ以上、好ましくは10以上、好ましくは13以上、好ましくは16以上、好ましくは21以上、好ましくは8、10、20、30、40又は50まで、特に100までのアミノ酸を含む物質を指す。

「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、すなわちポリペプチド、好ましくは100個を超えるアミノ酸残基を有するペプチドを指すが、一般に「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は同義語であり、ここでは互換的に使用される。

本発明は、ここに記載のペプチド、タンパク質、又はアミノ酸配列の「バリアント」をまた含む。

本発明の目的では、アミノ酸配列の「バリアント」は、アミノ酸挿入バリアント、アミノ酸付加バリアント、アミノ酸欠失バリアント及び/又はアミノ酸置換バリアントを含む。

アミノ酸挿入バリアントは、特定のアミノ酸配列内の単一又は2つ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列バリアントの場合、一又は複数のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されるが、結果として生じる産物の適切なスクリーニングを伴うランダム挿入も可能である。

アミノ酸付加バリアントは、1、2、3、5、10、20、30、50、又はそれ以上のアミノ酸など、一又は複数のアミノ酸のアミノ及び/又はカルボキシ末端融合を含む。

アミノ酸欠失バリアントは、1、2、3、5、10、20、30、50、又はそれ以上のアミノ酸の除去など、配列からの一又は複数のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失はタンパク質の何れの位置であってもよい。タンパク質のN末端及び/又はC末端に欠失を含むアミノ酸欠失バリアントは、N末端及び/又はC末端トランケーションバリアントとも呼ばれる。

アミノ酸置換バリアントは、配列内の少なくとも一つの残基が除去され、その場所に別の残基が挿入されることを特徴とする。修飾が相同タンパク質又はペプチド間で保存されていないアミノ酸配列の位置にあり、及び/又はアミノ酸を類似の特性を有する他のものと置換することが好ましい。好ましくは、タンパク質バリアントにおけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち、同様に荷電した又は非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化には、その側鎖において関連するアミノ酸のファミリーの一つの置換が含まれる。天然に生じるアミノ酸は、一般に4つのファミリーに分類される:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、及び非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)アミノ酸。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、芳香族アミノ酸としてまとめて分類される場合がある。

好ましくは、与えられたアミノ酸配列と該与えられたアミノ酸配列のバリアントであるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは同一性の度合は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であろう。類似性又は同一性の度合は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は約100%であるアミノ酸領域に対して与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200アミノ酸からなる場合、類似性又は同一性の度合は、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、又は約200アミノ酸、好ましくは連続アミノ酸に対して与えられる。類似性又は同一性の度合は、好ましくは、少なくとも80、少なくとも100、少なくとも120、少なくとも150、少なくとも180、少なくとも200又は少なくとも250のアミノ酸のセグメントに対して与えられる。好ましい実施態様では、類似性又は同一性の度合は、参照アミノ酸配列の全長に対して与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアライメントは、好ましくは最良の配列アライメントを使用し、例えばAlignを使用し、標準設定、好ましくはEMBOSS::needle,Matrix:Blosum62,Gap Open 10.0,Gap Extend0.5を使用して、当該分野で既知のツールを用いて実行できる。

「配列類似性」は、同一であるか、保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸の割合を示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸の割合を示す。

「同一性%」という用語は、特に、比較される2つの配列間の最適なアライメントにおいて同一であるアミノ酸残基の割合を指すことを意図し、前記割合は純粋に統計的であり、2つの配列間の差は配列の全長にわたってランダムに分布し得、比較される配列は、2つの配列間の最適なアライメントを得るために、参照配列と比較して付加又は欠失を含んでもよい。通常、2つの配列の比較は、対応する配列の局所領域を識別するために、セグメント又は「比較ウィンドウ」に関して最適なアラインメントの後、前記配列を比較することにより実行される。比較のための最適なアライメントは、手作業で実行するか、又はSmith及びWaterman, 1981, Ads App. Math. 2, 482のローカルホモロジーアルゴリズムを用いて、Neddleman及びWunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48, 443のローカルホモロジーアルゴリズムを用いて、及びPearson及びLipman, 1988, Proc. Natl Acad. Sci. USA 85, 2444による類似性検索アルゴリズムを用いて、又は前記アルゴリズムを使用するコンピュータープログラム(GAP, BESTFIT, FASTA, BLAST P, BLAST N and TFASTA in Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wis)を用いて実行できる。

同一性パーセントは、比較される配列が対応する同一の位置の数を決定し、この数を比較される位置の数で除算し、この結果に100を掛けることにより得られる。

本発明によれば、相同アミノ酸配列は、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98又は少なくとも99%の同一性を示す。

本発明によれば、アミノ酸配列、ペプチド又はタンパク質のバリアント、断片、部分又は一部は、好ましくはそれぞれ由来するアミノ酸配列、ペプチド又はタンパク質の機能的特性を有し、すなわち、機能的に等価である。一実施態様では、アミノ酸配列、ペプチド又はタンパク質のバリアント、断片、部分又は一部は、それが由来するアミノ酸配列、ペプチド又はタンパク質とそれぞれ免疫学的に等価である。一実施態様では、機能的特性は免疫学的特性である。

本発明は、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語に含まれるここに記載のペプチド又はタンパク質の誘導体を含む。本発明によれば、タンパク質及びペプチドの「誘導体」は、タンパク質及びペプチドの修飾形態である。そのような修飾は任意の化学修飾を含み、タンパク質又はペプチドに関連する任意の分子、例えば炭水化物、脂質及び/又はタンパク質の単一又は複数の置換、欠失及び/又は付加を含む。一実施態様では、タンパク質又はペプチドの「誘導体」は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、パルミトイル化、ミリストイル化、イソプレニル化、脂質化、アルキル化、誘導体化、保護/ブロッキング基の導入、タンパク質分解性切断又は抗体もしくは別の細胞リガンドへの結合から生じる修飾アナログを含む。「誘導体」という用語はまた前記タンパク質及びペプチドの全ての機能的な化学的均等物にも拡張される。好ましくは、修飾されたペプチドは、増加した安定性及び/又は増加した免疫原性を有する。

「由来する」という用語は、本発明によれば、特定の実体、特に特定の配列が、それが由来する物体、特に生物又は分子に存在することを意味する。アミノ酸又は核酸配列、特に特定の配列領域の場合、「由来する」とは、関連するアミノ酸配列又は核酸配列が、それが存在するアミノ酸配列又は核酸配列に由来することを特に意味する。

「細胞」又は「宿主細胞」という用語は、好ましくはインタクトな細胞、すなわち酵素、細胞小器官、又は遺伝物質などのその正常な細胞内成分を放出していないインタクトな膜を有する細胞である。インタクトな細胞は、好ましくは、生存細胞、すなわち、その通常の代謝機能を実行できる生細胞である。好ましくは、前記用語は、本発明によれば、外因性核酸で形質転換又はトランスフェクトできる任意の細胞に関する。「細胞」という用語は、本発明によれば、原核細胞(例えば、大腸菌)又は真核細胞(例えば、樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、HEK293細胞、HELA細胞、酵母細胞、及び昆虫細胞)を含む。外因性核酸は、(i)そのように自由に分散され、(ii)組換えベクターに組み込まれ、又は(iii)宿主細胞ゲノム又はミトコンドリアDNAに組み込まれている細胞内に見出すことができる。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、及び霊長類由来の細胞など、哺乳動物細胞が特に好ましい。細胞は、多数の組織型に由来し、初代細胞及び細胞株を含みうる。

核酸を含む細胞、例えば、核酸でトランスフェクトされた細胞は、好ましくは、核酸によってコードされるペプチド又はタンパク質を発現する。

「増殖」という用語は、特定のエンティティが増殖されるプロセスを指す。本発明の一実施態様では、この用語は、リンパ球が抗原によって刺激され、増殖し、前記抗原を認識する特定のリンパ球が増殖される免疫学的応答のコンテクストで使用される。好ましくは、クローン増殖はリンパ球の分化をもたらす。

ここで使用される「単離された」は、他の細胞物質などの他の分子を実質的に含まない分子を指すことが意図される。

本発明のコンテクストにおける「組換え」という用語は、「遺伝子工学を通してなされた」ことを意味する。好ましくは、本発明のコンテクストにおける組換え細胞又は核酸などの「組換え体」は天然には生じない。

ここで使用される「天然に生じる」という用語は、物質が天然に見出されうるという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在し、天然の供給源から単離することができ、実験室において人によって意図的に修飾されていないペプチド又は核酸は天然に生じる。

「低減する」、「阻害する」又は「減少する」などの用語は、レベルにおいて好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上の全体的な減少を引き起こす能力に関する。これらの用語には、完全又は本質的に完全な阻害、すなわちゼロ又は本質的にゼロへの低減が含まれる。

「増加する」、「増強する」、「促進する」、又は「刺激する」などの用語は、レベルにおいて好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、50%以上、75%以上、100%以上、200%以上、又は500%以上の全体的な増加を引き起こす能力に関する。これらの用語は、ゼロ又は測定不能又は検出不可能なレベルからゼロを超えるレベル又は測定可能又は検出可能なレベルへの増加、増強、促進、又は刺激に関しうる。あるいは、これらの用語は、増加、増強、促進、又は刺激の前に所定のレベルがあり、増加、増強、促進、又は刺激の後にそのレベルがより高いことをまた意味しうる。

ここに記載の薬剤及び組成物は、疾患、例えば、抗原又は抗原を発現する罹患細胞の存在によって特徴付けられる疾患を有する対象を治療するために使用することができる。特に好ましい疾患はがん疾患である。ここに記載の薬剤及び組成物は、ここに記載の疾患を予防するための免疫又はワクチン接種にもまた使用されうる。

「疾患(disease)」という用語は、個体の身体に影響を及ぼす異常な状態を指す。疾患は多くの場合、特定の症状や徴候に関連する病状として解釈される。疾患は、感染性疾患などの外因に起因する要因によって引き起こされ得、又は自己免疫疾患などの内部機能障害によって引き起こされうる。ヒトでは、「疾患」は、より広くは、苦しむ個体に疼痛、機能障害、苦痛、社会的問題、又は死を引き起こすか、あるいは個体と接触している者に同様の問題を引き起こす任意の状態を指すためにしばしば使用される。この広い意味では、疾患は、傷害、障害(disabilities)、障害(disorders)、症候群、感染、単発症状、逸脱行動、及び構造と機能の非定型変動をしばしば含むが、他のコンテクストや他の目的では、これらは区別可能なカテゴリーと考えられうる。多くの疾患に罹患して生活することは、人生や人格に対する見方を変える可能性があるため、疾患は通常、身体的にだけでなく感情的にも個体に影響を与える。本発明によれば、「疾患」という用語には、感染性疾患とがん疾患が含まれる。ここでのがん又はがんの特定の形態への言及には、そのがん転移も含まれる。

本発明によって治療される疾患は、好ましくは、抗原が関与するか抗原に関連する疾患である。

「抗原に関連する疾患」又は「抗原が関与する疾患」とは、抗原に関係する任意の疾患、例えば、抗原又は抗原を発現する細胞の存在を特徴とする疾患を指す。抗原が関与する疾患は、感染性疾患、又はがん疾患、又は単にがんでありうる。上述のように、抗原は、疾患関連抗原、例えば腫瘍関連抗原、ウイルス抗原、又は細菌抗原でありうる。

「感染性疾患」という用語は、個体から個体へ、又は生物から生物へ伝染する可能性があり、微生物因子によって引き起こされる任意の疾患を指す。感染性疾患は当該技術分野で知られており、例えば、ウイルス性疾患、細菌性疾患、又は寄生虫性疾患が含まれ、これらの疾患はそれぞれウイルス、細菌、及び寄生虫によって引き起こされる。これに関して、感染性疾患は、例えば、肝炎、性感染症(例えば、クラミジア又は淋病)、結核、HIV/後天性免疫不全症候群(AIDS)、ジフテリア、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ、及びインフルエンザでありうる。

「がん疾患」又は「がん」という用語は、典型的には未制御の細胞増殖を特徴とする個体における生理学的状態を指すか記述する。がんの例には、限定されるものではないが、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。より具体的には、そのようながんの例には、骨がん、血液がん、がん、肝臓がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、結腸がん、乳がん、前立腺がん、子宮がん、性器及び生殖器のがん腫、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、膀胱がん、腎臓がん、腎細胞がん、腎盂腎がん、中枢神経系(CNS)新生物、神経外胚葉がん、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、及び下垂体腺腫が含まれる。本発明による「がん」という用語はがん転移をまた含む。好ましくは、「がん疾患」は、腫瘍抗原を発現する細胞によって特徴付けられ、がん細胞は腫瘍抗原を発現する。

一実施態様では、がん疾患は、退形成、侵襲性、及び転移の特性を特徴とする悪性疾患である。悪性腫瘍は、悪性腫瘍はその増殖において自己限定的ではなく、隣接組織に侵入することができ、遠位組織に広がることができる(転移する)可能性があるという点で非がん性の良性腫瘍とは対照的である一方、良性腫瘍にはこれらの特性はない。

本発明によれば、「腫瘍」又は「腫瘍疾患」という用語は、好ましくは腫脹又は病変を形成する細胞(新生細胞、腫瘍性細胞又は腫瘍細胞と呼ばれる)の異常増殖を指す。「腫瘍細胞」とは、急速な制御されない細胞増殖によって成長し、新しい成長を開始した刺激が止まった後も成長し続ける異常細胞を意味する。腫瘍は、構造的組織と正常組織との機能的協調の部分的又は完全な欠如を示し、良性、前悪性又は悪性でありうる組織の明確な塊を通常は形成する。

「転移」とは、がん細胞がその元の部位から身体の別の部位に広がることを意味する。転移の形成は非常に複雑なプロセスであり、原発腫瘍からの悪性細胞の脱離、細胞外マトリックスの浸潤、内皮基底膜の貫入による体腔及び血管への進入、ついで血液による輸送後の標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位での新しい腫瘍、すなわち二次腫瘍又は転移性腫瘍の増殖は、血管新生に依存する。腫瘍細胞又は成分が残って転移能を発現する可能性があるため、原発腫瘍を除去した後でさえも腫瘍転移がしばしば起こる。一実施態様では、本発明に係る「転移」という用語は、原発腫瘍及び所属リンパ節系から離れた転移に関する「遠隔転移」に関する。一実施態様では、本発明に係る「転移」という用語はリンパ節転移に関する。

過去にその人が罹患した状態に人が再び罹患した場合、再燃(relapse)又は再発(recurrence)が発生する。例えば、患者が腫瘍疾患に罹患しており、前記疾患の治療に成功し、再び前記疾患を発症した場合、前記新たに発症した疾患は再燃又は再発とみなされうる。しかし、本発明によれば、腫瘍疾患の再燃又は再発は、必ずしも元の腫瘍疾患の部位で起こるとは限らない。従って、例えば、患者が卵巣腫瘍に罹患しており、成功した治療を受けた場合、再燃又は再発は、卵巣腫瘍の発生又は卵巣とは異なる部位での腫瘍の発生でありうる。腫瘍の再燃又は再発は、腫瘍が元の腫瘍の部位とは異なる部位、並びに元の腫瘍の部位で発生する状況をまた含む。好ましくは、患者が治療を受けた元の腫瘍は原発腫瘍であり、元の腫瘍の部位とは異なる部位の腫瘍は続発性又は転移性腫瘍である。

「治療」又は「治療的処置」という用語は、健康状態を改善し、及び/又は個体の寿命を延ばす(増加させる)任意の治療に関する。前記治療は、個体の疾患を除去し、個体の疾患の発症を停止又は遅延させ、個体の疾患の発症を阻害又は遅延させ、個体の症状の頻度もしくは重症度を減少させ、及び/又は現在疾患に罹患しているかもしくは以前に罹患した個体における再発を減少させうる。

「予防的(prophylactic)治療」又は「予防的(preventive)治療」という用語は、個体、特に疾患のリスクがある個体において疾患が発生するのを防ぐことを意図する任意の治療に関する。「予防的(prophylactic)治療」又は「予防的(preventive)治療」という用語は、ここでは互換的に使用される。

「リスクがある」とは、一般集団と比較して、疾患、特にがんを発症する可能性が通常よりも高いと特定された対象、すなわち患者を意味する。加えて、疾患、特にがんに罹患した、又は現在罹患している対象は、疾患を継続して発症する可能性があるため、疾患を発症するリスクが高い対象である。現在がんに罹患しているか又は罹患したことがある対象はまたがん転移のリスクが高い。

「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導し、又は増強することによる疾患又は症状の治療に関する。「免疫療法」という用語には、抗原免疫もしくは抗原ワクチン接種、又は腫瘍免疫もしくは腫瘍ワクチン接種が含まれる。

「免疫化」又は「ワクチン接種」という用語は、例えば治療上又は予防上の理由で、免疫応答を誘導する目的で個体に抗原を提供するプロセスを記述する。

「インビボ」という用語は、対象における状況に関する。

「個体」又は「対象」という用語は、脊椎動物、特に哺乳動物に関係する。例えば、本発明のコンテクストにおける哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、家畜化哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマ等、実験動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット等、並びに動物園の動物のような飼育下の動物である。「対象」という用語は、鳥(特に鶏、アヒル、ガチョウ、七面鳥などの家畜化鳥)などの非哺乳類脊椎動物、及び魚(特にサケ又はナマズなどの養殖魚)にまた関連する。ここで使用される「動物」という用語にはヒトもまた含まれる。好ましくは、「患者」という用語は、罹患した個体に関する。

「自己」という用語は、同じ対象に由来するものを記述するために使用される。例えば、「自己移植片」とは、同じ対象に由来する組織又は器官の移植片を指す。そのような手順は、そうでなければ拒絶をもたらす免疫学的障壁を克服するため、有利である。

「同種異系」という用語は、同じ種の異なる個体に由来するものを記述するために使用される。二人以上の個体は、一又は複数の遺伝子座の遺伝子が同一でない場合、互いに同種異系であると言われる。

「同系」という用語は、同一の遺伝子型を有する個体又は組織、すなわち、同一の近交系の同一の双子又は動物、又はそれらの組織に由来するものを記述するために使用される。

「異種性」という用語は、複数の異なるエレメントからなるものを記述するために使用される。一例として、ある個体の骨髄を別の個体に移植することは、異種移植を構成する。異種遺伝子は、対象以外の供給源に由来する遺伝子である。

ここに記載される薬剤は、任意の適切な薬学的組成物の形態で投与されうる。「薬学的組成物」という用語は、治療的に有効な薬剤又はその塩を、好ましくはバッファー、保存料及び浸透圧調整剤などの薬学的賦形剤と共に含有する製剤に関する。前記薬学的組成物は、前記薬学的組成物を個体に投与することにより疾患又は障害を治療又は予防するのに有用である。薬学的組成物は、薬学的製剤としても当該技術分野で知られている。薬学的組成物は局所的又は全身的に投与されうる。

「全身投与」という用語は、薬剤が個体の体内に有意な量で広く分布するようになり、生物学的効果を発現するような治療的に有効な薬剤の投与を指す。本発明によれば、投与は非経口投与によるのが好ましい。

「非経口投与」という用語は、薬剤が腸を通過しないような治療的に有効な薬剤の投与を指す。「非経口投与」という用語には、静脈内投与、皮下投与、皮内投与又は動脈内投与が含まれるが、これらに限定されない。

特定の実施態様では、抗原又は抗原をコードする核酸は、ここに記載の免疫賦活性RNA分子の投与前、投与と同時、及び/又は投与後に投与される。抗原又は抗原をコードする核酸と免疫賦活性RNA分子は、共通の組成物中に存在しうる、すなわち一緒に混合されうる。更に、抗原又は抗原をコードする核酸と免疫賦活性RNA分子が一緒に存在するが、同じ組成物には存在しない実施態様もまた本発明によって想定される。前記実施態様は、特に少なくとも2つの容器を備えたキットに関し、1つの容器は抗原又は抗原をコードする核酸を含む組成物を含み、別の容器は免疫賦活性RNA分子を含む組成物を含む。

本発明の薬学的組成物は、ここに記載の免疫賦活性RNA分子以外のアジュバントを含んでいてもよい。そのようなアジュバントには、油乳剤(フロイントアジュバントなど)、無機化合物(ミョウバンなど)、細菌産物(百日咳菌毒素など)、又は免疫賦活複合体などの異種性化合物群が含まれる。アジュバントの例には、サポニン、不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、トコフェロール又はミョウバンが含まれるが、これらに限定されない。

本発明に係る薬学的組成物は、一般に「薬学的に有効な量」及び「薬学的に許容される製剤」で適用される。

「薬学的に有効な量」という用語は、単独で又は更なる用量と一緒に、所望の反応又は所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患の治療の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を遅くすること、特に、疾患の進行を中断又は逆転させることを含む。疾患の治療における所望の反応はまた前記疾患又は前記状態の発症の遅延又は発症の予防でありうる。ここに記載の組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、年齢、生理学的状態、サイズ及び体重を含む患者の個々のパラメーター、治療の期間、付随する治療(存在する場合)のタイプ、特定の投与経路及び類似の要因に依存するであろう。従って、ここに記載の組成物の投与される用量は、様々なそのようなパラメーターに依存しうる。患者の反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(又は異なる、より局所的な投与経路により達成される効果的により高い用量)が使用されうる。

「薬学的に許容される」という用語は、薬学的組成物の活性成分の作用と相互作用しない材料の非毒性を指す。

本発明の薬学的組成物は、塩、バッファー、保存剤、担体及び場合によっては他の治療薬を含んでもよい。好ましくは、本発明の薬学的組成物は、一又は複数の薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含む。

「賦形剤」という用語は、結合剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、保存料、乳化剤、バッファー、香味剤、又は着色料などの活性成分ではない薬学的組成物中の全ての物質を示すものとする。

「希釈剤」という用語は、希釈する及び/又は希釈性の薬剤に関する。更に、「希釈剤」という用語には、流体、液体又は固体懸濁液及び/又は混合媒体の何れか一又は複数が含まれる。

「担体」という用語は、ヒトへの投与に適した一又は複数の適合性の固体又は液体の充填剤又は希釈剤に関する。「担体」という用語は、活性成分の適用を容易にするために活性成分と組み合わされる天然又は合成の有機又は無機成分に関する。好ましくは、担体成分は、鉱油、動物、又は落花生油大豆油、ゴマ油、ヒマワリ油などの植物に由来するものを含む水又は油などの無菌液体である。塩溶液及び水性デキストロース及びグリセリン溶液もまた水性担体化合物として使用されうる。

治療用途のための薬学的に許容される担体又は希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R Gennaro編 1985)に記載されている。適切な担体の例には、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどが含まれる。適切な希釈剤の例には、エタノール、グリセロール、及び水が含まれる。

薬学的担体、賦形剤又は希釈剤は、意図される投与経路及び標準的な薬務に関して選択することができる。本発明の薬学的組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤として、又はそれらに加えて、任意の適切な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、及び/又は可溶化剤を含みうる。適切な結合剤の例には、デンプン、ゼラチン、グルコースなどの天然糖、無水乳糖、自由流動性乳糖、ベータ乳糖、コーン甘味料、天然及び合成ガム、例えばアカシア、トラガカント又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース及びポリエチレングリコールが含まれる。適切な潤滑剤の例には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。保存料、安定剤、色素、更には香味剤を薬学的組成物に提供してもよい。保存料の例には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが含まれる。酸化防止剤と懸濁剤もまた使用されうる。

一実施態様では、組成物は水性組成物である。水性組成物は、場合によっては溶質、例えば塩を含んでもよい。一実施態様では、組成物は凍結乾燥組成物の形態である。凍結乾燥組成物は、それぞれの水性組成物を凍結乾燥することにより得ることができる。

ここで提供される薬剤及び組成物は、単独で、又は外科手術、放射線、化学療法及び/又は骨髄移植(自己、同系、同種異系又は無関係)などの他の治療レジメンと組み合わせて使用されうる。

本発明は、発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない次の実施例によって更に例証される。

ここで使用される技術及び方法は、ここに記載されるか、又はそれ自体既知の方法で、また例えばSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2版 (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載のようにして実施される。キット及び試薬の使用を含む全ての方法が、特に示されていない限り、製造業者の情報に従って実施される。

[材料及び方法] [対照アジュバントと合成RNAオリゴヌクレオチド] TLR3アゴニストのポリ(I:C)、TLR7/8リガンドCL097、イミダゾキノリン化合物誘導体R848、カチオン性脂質(LyoVec)と複合化したヒトTLR8アゴニストssRNA40、ヒト/マウスTLR9アゴニストC型CpG ODN2395及びヒトTLR9アゴニストD型CpG ODN2216をInvivogenから購入し、様々な実験で対照アジュバントとして使用した。バフィロマイシンA1(Invivogen)を、TLR活性化を遮断するエンドソーム酸性化阻害剤として使用した。完全及び不完全フロイントアジュバント(CFA/IFA)を、製造者(Sigma−Aldrich)の説明書に従って皮下対照免疫に使用した。化学合成されたisRNA NP71−Seq4(Chem.Synth.)と対照としてのポリ(A)RNAをBiomersから購入した。

[キメラB型肝炎ウイルスコア抗原(HBcAg)由来のウイルス様粒子(VLP)] 腫瘍関連抗原(TAA)クローディン−6(CLDN6)の選択されたエピトープ(#A79)を表面に提示するHBcAg−VLPを、Klamp, T.等; Cancer Res 71(2), 1-12 (2011)に記載されているようにして産生した。

[isRNAのインビトロ転写及び精製] isRNAのインビトロ転写(IVT)のためのプラスミド鋳型は、Kuhn, A.等; Gene Ther 17(8), 961-971 (2010)に記載されているpST1−A120ベクターに基づいた。選択したインフルエンザNP断片を、標準的な分子生物学の方法を使用して、SpeI及びXhoI制限部位間にクローン化した。得られたプラスミドをXhoI(Fermentas,ThermoFisher)で線状化し、Dynabeads MyOneカルボン酸(Invitrogen)を使用して磁気分離により精製した。次のIVT反応を、Kreiter, S.等; Cancer Immunol Immunother 56, 1577-1587 (2007) に以前に記載されたプロトコルに従って実施した。IVT RNAの小規模精製を、RNeasy Miniキット(QIAGEN)を使用し、製造者の説明書に従って、シリカベース膜で実施した。IVT RNAの大規模精製では、弱陰イオン交換カラム(HiTrap DEAE Sepharose FF,GE Healthcare)を使用するFPLCベース法を適用した(Easton, LE.等, RNA 16(3), 647-653 (2010))。

[isRNA製剤] インビトロ又はインビボ実験での使用に応じて、精製したインフルエンザNP由来isRNAを、その脂質/ヘルパー−脂質組成と表面電荷が異なるカチオン性脂質で製剤化した(Kranz, LM.等; Nature 534, 396-401 (2016))。インビトロ実験での最適な細胞取り込みを確保するために、isRNAをリポソーム組成物F5で製剤化する一方、インビボ実験には組成物F12を使用した。F12製剤は、静脈内投与後のisRNAの高い血清安定性とisRNAリポプレックスの脾臓ターゲティングを可能にした。

[マウス] 雌Balb/cJRj及びC57BL/6マウスを、Janvier Laboratories(仏国)から入手した。C57BL/6バックグラウンドで飼育したBDCA2−DTRトランスジェニックマウスは、形質細胞様樹状細胞(pDC)において特異的にサルジフテリア毒素受容体(DTR)を発現するが、Jackson Laboratory(米国)から購入した。マウスは実験開始時に6〜10週齢であった。全ての動物を病原体除去条件下に維持した。

[ヒトPBMC及びpDCの単離] ヒトPBMCは、Lin, Z.等; Nature protocols 9, 1563-1577 (2014)に記載されているようにして、Ficoll密度勾配遠心分離により健康な男性又は女性ドナーの血液から新鮮に単離した。形質細胞様樹状細胞(pDC)は、MACS分離技術とCD304マイクロビーズキット(Miltenyi Biotec)を使用してヒトPBMCから単離した。

[マウス骨髄細胞、脾細胞、pDC及びcDCの単離] 標準的プロトコルを使用して、マウス骨髄細胞(BMC)をマウス大腿骨及び脛骨から採取した。赤血球を、5mlの冷赤血球(RBC)溶解バッファー(Sigma−Aldrich)と共に5分間インキュベートして溶解し、続いて20mlの1×PBS(Gibco)を添加して溶解反応を停止させた。BMCを遠心分離によりペレット化し、細胞培養培地に再懸濁した。マウス脾細胞は、Kreiter, S.等; Cancer Immunol Immunother 56, 1577-1587 (2007)に記載されているようにして調製した。pDCは、マウスpDC単離キットII(Miltenyi Biotec)を使用してMACS分離によって脾細胞から単離した。一般的なDC(cDC;CD11c高、B220低)は、20ng/mlのGM−CSF及び20ng/mlのIL4(両方ともPeprotech製)の存在下で6日間培養することにより、マウスBMCから作製した。

[細胞培養] 初代ヒト及びマウス細胞を、10%(v/v)の熱失活FBS、1%(v/v)の非必須アミノ酸(NEAA)、1%(v/v)のピルビン酸ナトリウム及び0.5%(v/v)のペニシリン/ストレプトマイシン溶液を補充したRPMI1640で培養した。ヒトCLDN6又はヒトCLDN9を安定してトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)K1細胞をTRON gGmbH(Mainz, Germany)から取得し、10%(v/v)の熱失活FBS、1mg/mlのG418及び0.5%(v/v)のペニシリン/ストレプトマイシン溶液を補充したDMEMで培養した。NF−κB誘導性ルシフェラーゼレポーター遺伝子とヒトTLR3、TLR7又はTLR8を安定して共発現する野生型ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞又はHEK293細胞をInvivogenから入手し、10%(v/v)の熱失活FBS、1%(v/v)のNEAA、1%(v/v)のピルビン酸ナトリウム及び0.5%(v/v)のペニシリン/ストレプトマイシン溶液を補充したDMEMで培養した。使用されるHEK293トランスフェクタントに応じて、培地に、全てInvivogen製のブラスティシジン(10μg/ml)、ゼオシン(100μg/ml)又はジェネティシン(250μg/ml)を追加的に補充した。FBSはBiochromから、他の全ての細胞培養試薬はGibcoから購入した。

[isRNAによる細胞のインビトロ刺激] isRNA又は対照による細胞刺激を、総容量200μlで96ウェルプレート(Corning)において3組、実施した。特に明記しない限り、ウェルあたり5×105の細胞を使用し、0.167μg/ウェルの濃度のF5製剤化isRNA又は実施例において示された濃度を使用しての対照試薬を用いて、37℃、5%CO2において12〜16時間刺激した。

[サイトカイン検出] IFN−αと他の選択されたサイトカインは、市販のELISAキット(PBL Assay Science)を使用して又はBio−Plex ProキットIII及びサイトカイン特異的Bio−Plex結合磁気ビーズ(BioRad)を使用して製造者の説明書に従って、ヒトもしくはマウス細胞の上清又はマウス血清において検出した。

[インビボ刺激と免疫実験] インビボ刺激実験では、Balb/cマウスの眼球後静脈叢に、異なる量のF12製剤化isRNAを静脈内注射した。実験セットアップに応じて、血清調製用の血液試料を、実施例に示されているように、注射後の様々な時点で収集した。標準的プロトコルを使用する遠心分離により凝固後、血清を調製し、更に使用するまで−20℃で保存した。免疫実験は、50μgの精製HBcAg−#A79VLPと混合した20μgのF12製剤化isRNA(総量100μl)の眼球後静脈叢への静脈内注射によって実施した。特に示していない限り、3回の注射を2週間間隔で行い、最後の免疫の10日後に最終血液試料を採取した。血清の調製は前述のように実施した。

[フローサイトメトリー] アジュバント化又は非アジュバント化HBcAg−#A79VLPによる免疫後の天然CLDN6タンパク質に対する特異的抗体の誘導をフローサイトメトリーにより分析した。ウェル当たり2×105のCHO−K1 CLDN6又はCLDN9細胞を、FACSバッファー(1×PBS、5%(v/v)のFBS、5mMのEDTA)で1:100に希釈したポリクローナルマウス抗血清と共に4℃において1時間インキュベートした。3回の洗浄工程後、細胞を、FACSバッファーで1:600に希釈したAlexaFluor647コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(H+L)二次抗体(ThermoFisher)で4℃において30分間染色した。未結合抗体を追加の洗浄工程により除去し、7−AAD(Sigma)を使用して生存率を定量した。生細胞の蛍光シグナルは、FACS CantoIIシステム(BD Biosciences)によって検出した。

[IFN−γELISpot分析] 5×105の新鮮に単離されたマウス脾細胞を、5μg/mlの#A79又は無関係なペプチド(JPT Peptide Technologies)の存在下で37℃において18時間、抗IFN−γモノクローナル抗体(10μg/mlのAN18,Mabtech)でコーティングされた96ウェルプレート(Merck Millipore)においてインキュベートした。プレートを、ビオチンコンジュゲート二次抗IFN−γモノクローナル抗体(R4−6A2,Mabtech)及びExtrAvidin−アルカリホスファターゼ(Sigma−Aldrich)と共に逐次インキュベートした後、BCIP/NBT基質(Sigma−Aldrich)の添加によりサイトカイン分泌を検出した。各群に対して技術的な3組を実施した。ImmunoSpot S5 Versa ELISpotアナライザー、ImmunoCaptureソフトウェア6.3及びImmunoSpotソフトウェア5.0.3(全てCellular Technology社)を使用して、プレートをスキャンし、解析した。

[補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイ] 抗体を介した細胞破壊的エフェクター機能を分析するため、補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイを実施した。ヒトCLDN6を安定して発現するCHO−K1細胞を、96ウェルプレート(Corning Costar,Sigma−Aldrich)において1×104細胞/ウェルの濃度で17.5時間、37℃、7.5%CO2でインキュベートした。続いて、細胞を、32μlの培養培地に希釈した5μlのポリクローナルマウス抗血清及び補体源としての13μlのヒト血清補体(Quidel Corporation)と共に総体積50μl/ウェルで80分間インキュベートした。マウス血清は、異なってアジュバント化されたHBcAg−#A79VLPによる免疫実験から得た。600又は150ng/mlの濃度のCLDN6特異的モノクローナル抗体(Ganymed Pharmaceuticals AG,Mainz)を陽性対照として使用した。熱失活ヒト血清補体は、補体依存性抗体媒介細胞溶解効果の確認のための陰性対照となった。未処理細胞とTriton X−100(Applichem)で溶解した細胞を、それぞれ0%及び100%細胞溶解のベンチマークとして使用した。製造者の説明書に従って、XTTアッセイベースの細胞増殖キットII(Roche Diagnostics)で細胞生存率を分析した。480nmでの吸収を、Infinite M200 Proリーダー(Tecan)で測定した。抗体を介した細胞溶解活性は次式によって計算した: 細胞溶解%=100%−((シグナル抗血清−シグナル100%溶解/シグナル未処理細胞)×100)

[マウス免疫グロブリンアイソタイピングELISA] ストレプトアビジン結合96ウェルプレート(Nunc,ThermoFisher)を、100ng/ウェルのビオチン化#A79−ペプチド(JPT Peptide Technologies)で1時間コーティングした後、コーティングされていない表面を300μl/ウェルの1×PBS、2%(v/v)のFBSで1時間ブロッキングし、HydroSpeedプレートウォッシャー(Tecan)を使用して1×PBS、0.05%のTween20(Sigma−Aldrich)で洗浄した。ポリクローナルマウス抗血清を、1×カゼインブロッキングバッファー(Sigma−Aldrich)で10倍連続希釈し、ウェル当たり100μlの希釈血清を加え、振とう台(Infors)で僅かに撹拌しながら1時間インキュベートした。追加の洗浄工程後、1:5000希釈のHRPコンジュゲート,ヤギ抗マウスIgGアイソタイプ特異的二次抗体(ThermoFisher)と共に1時間インキュベートし、最終洗浄工程と製造者の説明書に従ってのTMB基質(Sigma−Aldrich)の添加によって、結合抗体を検出した。450nmでの吸収をInfinite M200 Proリーダー(Tecan)で測定した。全ての工程は室温において実施し、抗血清希釈は3組測定した。

[統計解析] 全ての結果は、平均+/−平均の標準誤差(SEM)として表される。GraphPad Prismソフトウェアバージョン6を使用して統計計算を実施した。2つの群を比較するためにT検定を使用した。3つ以上の群では、一元配置ANOVAを使用した。群間の差は、P<0.05で統計的に有意であるとみなされた。

実施例1:インフルエンザ核タンパク質(NP)をコードするRNAの逐次断片化により、明確なTLR特異性及びサイトカイン誘導プロファイルを有する低分子免疫賦活性RNA分子(isRNA)の同定と選択が可能になる 全インフルエンザAゲノムRNAが、トール様受容体7(TLR7)刺激によって形質細胞様樹状細胞(pDC)に高レベルのインターフェロンアルファ(IFN−α)を誘導したという知見(Diebold SS.等; Science 303(5663), 1529-1531 (2004))に基づいて、我々は、TLR7依存性IFN−α誘導活性に関与している明確な低分子免疫賦活性一本鎖RNA分子(isRNA)を同定するための逐次断片化戦略を確立するために親配列としてインフルエンザA核タンパク質(NP)をコードするRNA(1565nt)を選択した。全インフルエンザAゲノムRNA又は他のウイルス由来の全RNAとは対照的に、明確なサイトカイン誘導プロファイルと特異的適応免疫応答調節を誘導する低分子isRNA分子は、化学合成又はインビトロ転写によりGMP条件下で大規模に生産することができ、組換えタンパク質ベースのワクチンのアジュバントとしてのその臨床応用を可能にする。 図1は、インフルエンザNPをコードするRNA(2−2−8、NP1−1565)を開始配列として使用して適用された逐次断片化戦略の概要を示す。断片化は反復サイクルで実施し、選択された断片はインビトロでRNAに転写し、精製後、その免疫賦活活性とTLR特異性についてインビトロでスクリーニングした。更なる断片化サイクルのために、最も高いTLR7特異性、IFN−α誘導能、及び好ましいサイトカイン誘導プロファイルを持つ断片を選択した。逐次実施される断片化戦略により、最終的にNP71−Seq4、Inno71−5A、NP71−Seq44及びNP71−Seq45と命名した38〜60ヌクレオチド長の低分子isRNAを同定し選択した。

実施例2:インビトロ転写によるisRNAの合成、isRNAの組成及び配列、並びに精製後の品質管理 選択されたインフルエンザNP断片をコードするDNA配列を、バクテリオファージT7RNAポリメラーゼプロモーターの下流で、SpeI及びXhoI制限部位を使用してプラスミドpST1中にクローニングした。XhoI直線化プラスミドが、次のインビトロ転写(IVT)のためのDNA鋳型となった。T7 RNAポリメラーゼによって合成したIVT RNAは、pST1プラスミド鋳型に由来する短いストレッチが両側に隣接した、選択されたインフルエンザNP RNA断片で構成されていた(図2A)。 最終的に選択されたisRNA NP71−Seq4、Inno71−5A、NP71−Seq44、及びNP71−Seq45の配列と、pST1由来配列部分を含むそれらの全体サイズ(ヌクレオチド、nt)を図2Bに示す。pST1鋳型由来の配列には下線を付した。isRNAの5’末端は、T7 RNAポリメラーゼの転写開始部位を表すトリプルグアノシンによって特徴付けられる(Imburgio, D.等; Biochemistry 39(34), 10419-10430 (2000))。 シリカベース膜又は弱陰イオン交換カラムで精製した後、isRNAを、様々な分析方法を使用してデフォルトで品質管理した。精製されたisRNAのサイズ、均一性、及び完全性を、変性10%ポリアクリルアミド(PAA)ゲル電気泳動(図2C)及びBioanalyzer 2100システム(Agilent)を使用したオンチップキャピラリー電気泳動(図2D)によって分析した。結果は、IVTによって産生されたか又は完全に化学合成(Chem.Synth.)されたisRNA NP71−Seq4に対する例である。NP71−Seq4(IVT)は、PAAゲル中における予想されたサイズの明確な単一バンドと、RNA完全性損失の兆候なしに均一な集団を示すキャピラリー電気泳動でのシャープなピークによって特徴付けられた。対照的に、化学合成されたNP71−Seq4 isRNAでは、より不均一なRNA集団を指す、キャピラリー電気泳動後のピークショルダーと2番目のマイナーピークが明らかになった。従って、IVT RNAを、続く全ての実験において使用した。

実施例3:製剤化isRNAはヒトPBMCにおいて高レベルのIFN−αを誘導する 逐次断片化によって誘導した潜在的isRNA候補を、精製と品質管理後に細胞インビトロアッセイにおけるその免疫賦活能についてスクリーニングした。導出サイトカインIFN−α(強力な誘導)対TNF−α(弱い誘導又は誘導欠如)を誘導するその能力の差次的挙動を、候補選択及び更なる断片化工程のための最初の重要な基準として定義した。強力な炎症誘発性サイトカインTNF−αのisRNAを介した誘導は、有害な全身性副作用を引き起こし、ワクチンアジュバントとして使用した場合に同定されたisRNAの安全性プロファイルに悪影響を及ぼす可能性があるため、最小限に抑えるべきである。 ウェル当たり1×106の新鮮に単離されたヒトPBMCを、F5製剤化NP71 IVT RNA又はそれに由来する断片(NP71−Seq1−NP71−Seq4;図1も参照)で刺激し、刺激時の細胞培養上清に分泌されたIFN−α及びTNF−αのレベルをELISAにより分析した。isRNA試験候補を、より大きな親NP71 RNA断片と同等の量又は同等のモル濃度を反映する2つの異なる濃度(0.167及び0.041μg/ウェル)で使用した。F5製剤化ポリ(I:C)(0.167μg/ウェル)及び未製剤化CL097(0.2μg/ウェル)をそれぞれIFN−α及びTNF−α誘導の陽性対照として使用した。培地又は空のF5−リポソームとの細胞のインキュベーションが陰性対照となった。試験したIVT RNAの免疫賦活活性は、NP71 RNA断片のリポソーム製剤(0.167μg/ウェル)により図3Aに示されるように、適切な送達方法に依存した。親NP71 RNA断片は高レベルのIFN−αとTNF−αの双方を誘導した。NP71とは対照的に、ELISAアッセイでは、isRNA NP71−Seq4でのヒトPBMCの刺激により、細胞上清中に高IFN−α及び低TNF−α量が分泌された好都合なサイトカイン誘導プロファイルが得られることが明らかになった。他の全ての試験候補では、特に高RNA濃度(0.167μg/ウェル)を使用した場合に顕著になる両サイトカインのよりバランスの取れた誘導が引き起こされ、更なる断片化工程については無視した。この結果は、適用された逐次断片化戦略により実際に所望の免疫賦活活性を持つ明確なRNA断片を同定し選択することができることを示している。 NP71−Seq4を更なる断片化のために選択し、観察されたIFN−α誘導効果の原因となる更に短いコア配列モチーフを特定した。得られた低分子isRNA断片Inno71−5A、NP71−Seq44及びNP71−Seq45(図1及び図2Bも参照)にF5−リポソームを配合し、ウェル当たり1×106のヒトPBMCの刺激に0.167μg/ウェルの濃度で使用した(図3B)。空のF5−リポソーム又は培地のみとのインキュベーションが陰性対照となった。未製剤化CpG ODN2395(5μg/ml)を、ELISAで分析されるIFN−α誘導の陽性対照として使用した。NP71−Seq4の最短配列ストレッチを表すInno71−5A isRNAは、その親NP71−Seq4と同等のIFN−αレベルを誘導した。この結果は、Inno71−5AがNP71−Seq4の観察された免疫賦活効果に必要な主要な認識配列モチーフを含んでいることを示している。予想外に、F5製剤化NP71−Seq44、特にNP71−Seq45 isRNAは、親NP71−Seq4よりも更に高いIFN−αレベルを誘導することができた。NP71−Seq4の5’配列部分を代表するInno71−5Aとは対照的に、NP71−Seq44及びNP71−Seq45はNP71−Seq4の元の5’及び3’末端配列を含んでおり、NP71−Seq4 RNA配列部分の内部枯渇によって特徴付けられた(図1を参照)。

実施例4:pDCはF5製剤化isRNAによりインビトロで標的化することができ、isRNAによる刺激時のIFN−α分泌の主要なエフェクター細胞である ヒト及びマウスpDCは、一本鎖(ss)ウイルスRNA又は特定の配列モチーフを含むssRNAで刺激すると、IFN−αの主要な細胞性産生体であることがよく知られている。インフルエンザNPに由来するF5製剤化低分子isRNAがpDCを標的とし、IFN−α産生を活性化できるかどうかを調べるため、ヒトpDCを、MACS技法を使用してPBMCから分離し、インビトロ刺激アッセイに使用した。空のF5−リポソーム及び培地のみで処理した細胞が陰性対照となった。未製剤化CpG ODN2216(5μg/ml)はIFN−α誘導の陽性対照となった(図4)。ELISAの結果は、pDCがリポソーム製剤化isRNAによって標的化でき、刺激時に多量のIFN−αを産生できることを示した。pDCが枯渇したPBMCは、全PBMCと比較して強く減少したIFN−α誘導を示しており、pDCがリポソーム製剤化isRNAが標的とする主要なIFN−α産生体である可能性が高いことを示している。全PBMCを使用した以前の結果と一致して、最短isRNA配列を表すisRNA Inno71−5AによるpDC刺激が、親isRNA NP71−Seq4によって誘導されたレベルと非常に類似したIFN−αレベルをもたらした。F5製剤化isRNA NP71−Seq45によるpDCの刺激は、NP71−Seq4よりも多量のIFN−αを誘導し、全PBMCを使用した以前の実験を確認した(図3Bを参照)。これらの結果に基づいて、isRNA NP71−Seq45をリード候補として選択し、更なる実験において主に使用した。

実施例5:ヒトPBMCにおけるisRNA NP71−Seq45媒介IFN−α誘導はエンドソームに位置するTLRに依存している 全インフルエンザAゲノムRNAによるpDC中でのIFN−αの誘導は、エンドソームに位置するTLR7の活性化に依存している(Diebold SS.等; Science 303(5663), 1529-1531 (2004))。F5製剤化isRNAによる刺激時のIFN−α誘導が核酸感受性のエンドソームTLRに依存していることを評価するために、新鮮に単離された全ヒトPBMCを250nMのバフィロマイシンA1で1時間、前処理し、その後NP71−Seq45と共に14時間インキュベートした(図5)。バフィロマイシンA1は、液胞型H+ATPaseを阻害することによりエンドソーム酸性化を防ぎ、TLR3、TLR7/8又はTLR9のようなエンドソームに位置する核酸感受性TLRを遮断する。空のF5リポソームと培地のみと共にインキュベートした細胞を陰性対照とする一方、未製剤化CpG ODN2216(TLR9リガンド)をバフィロマイシンA1処理の陽性対照とした。予想通り、バフィロマイシンA1前処理はCpG ODN216によるIFN−αの誘導を強く減少させたが、細胞生存率は使用されたバフィロマイシンA1濃度に影響されなかった(データは示さず)。IFN−α分泌の同様の強力な減少が、PBMCをバフィロマイシンA1と共にインキュベートしNP71−Seq45刺激を続けた場合に観察され、isRNAがエンドソームTLRによって認識されることを示している。

実施例6:isRNA NP71−Seq45はTLR7の特異的アゴニストである どのヌクレオチド感受性エンドソームTLRがNP71−Seq45によって活性化されるかを分析するために、NF−κB誘導性ルシフェラーゼレポーター遺伝子に加えてヒトTLR3、TLR7又はTLR8を安定して共発現するHEK293細胞を、F5製剤化isRNA NP71−Seq45と共にインキュベートし、ルシフェラーゼシグナルを未処理(培地のみ)細胞と比較した(図6)。TLR9は特異的DNA分子を専ら認識するので、TLK9を発現するHEK293細胞は除外した。陽性対照は、TLR3に対してはF5製剤化ポリ(I:C)、TLR7及びTLR8に対しては非製剤化CL097、TLR8に対してはカチオン性脂質と複合したssRNA40であった。空のF5−リポソーム処理細胞は陰性対照となった。F5製剤化NP71−Seq45 isRNAを添加すると、ヒトTLR7を共発現するHEK293細胞においてのみレポーター遺伝子が活性化されたが、他のTLR発現細胞ではルシフェラーゼシグナルは得られなかった。この結果は、NP71−Seq45がヒトTLR7の特異的リガンドとして作用することを示している。 これらの結果を総合すると、リポソーム製剤化isRNAはインビトロでpDCにおいてIFN−α産生を誘導することができ、免疫賦活活性が主にエンドソームにあるTLR7によって媒介されることが明らかになった。

実施例7:F5製剤化isRNAはヒトPBMCにおいて高レベルのIFN−αを誘導するが、IFN−γ、TNF−α及びIL10は僅かなレベルのみ誘導する ワクチンアジュバントとしてisRNAを選択するための重要なパラメーターは、高レベルのIFN−αを誘導し、ワクチン接種時に有害な全身性副作用を引き起こすかもしれないTNF−αやIFN−γのような強い炎症誘発性サイトカインがないか最小レベルだけ誘導する能力であった。更に、isRNAベースのアジュバントは、Th1細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びマクロファージの活性を阻害し、それによって免疫応答のTh2表現型を促進する、IL10のような抗炎症性サイトカインの強力な誘導をもたらすべきではない。 isRNA NP71−Seq45及びその親断片NP71−Seq4によって誘導されるサイトカインプロファイルを分析するために、マルチプレックスビーズイムノアッセイを実施した。ウェルあたり1×106の新鮮に単離されたヒトPBMCを、F5製剤化isRNA(0.167μg/ウェル)又は陽性対照としての非製剤化CpG ODN2216(1μg/ウェル)及び陰性対照としての空のF5−リポソームと共にインキュベートした。細胞上清中の分析されたサイトカイン濃度は、IFN−α、IL6、IFN−γ、TNF−α、及びIL10を含んでいた(図7)。両方のisRNAは高IFN−αレベルを誘導し、NP71−Seq45は優れた効果を示し、以前の結果を確認した。検出されたIFN−α量は、強いpDCIFN−α分泌を誘導することが知られているD型CpG ODN2216に対して観察された範囲と同様であった。TNF−α、IFN−γ、及びIL10では僅かなレベルのみが検出可能であったのに対し、コンテクスト依存的な炎症誘発性及び抗炎症特性を持ち、B細胞活性化及び成熟に関与するサイトカインであるIL6は、isRNA又はCpG ODN2216によって中程度に誘導された。 インビトロでのヒトPBMCにおけるisRNAによって誘導されたサイトカインプロファイルは、同定したisRNAが、潜在的に有害な主な炎症誘発性サイトカインの誘導を最小限に抑えながら体液性及び細胞性抗原特異的免疫応答の発生を増強する可能性を持つTh1サイトカインの産生を特徴とする自然免疫応答を開始することを示している。

実施例8:F5製剤化isRNAでのマウス細胞のインビトロ刺激は、IFN−αの強いpDC依存性誘導と僅かなTNF−α分泌のみをもたらす 新鮮に調製したヒトPBMCを使用した以前のインビトロ結果は、高いIFN−α誘導及び僅かなTNF−α誘導のみを示す同定されたisRNAの強力な免疫賦活能を明確に示すことができた。その後の実験においてマウスモデルを使用して意味のあるインビボ前臨床試験を実施するために、原因となる主要標的細胞を含む免疫賦活効果をインビトロで確認しなければならなかった。 従って、Balb/c骨髄由来細胞と脾細胞を単離し、F5製剤化isRNA NP71−Seq4又はNP71−Seq45、未製剤化CpG ODN2359(0.5μg/ウェル)又は空のF5リポソームと共にインキュベートした(図8A)。未処理細胞(細胞のみ)が陰性対照となった。加えて、pDCが枯渇した脾細胞、濃縮pDC、及び濃縮された一般的な樹状細胞(cDC)を前述のように刺激した(図8B)。細胞上清中のサイトカイン濃度をELISAにより分析した。 ヒトPBMCで得られた結果を確認し、マウス脾細胞又は骨髄由来細胞をisRNAで刺激すると、強力なIFN−αと僅かなTNF−α誘導のみが生じる。対照的に、TLR9アゴニストクラスC CpG ODN2359とのインキュベーションは、試験した両方のサイトカインの強い誘導を誘発した。更に、ヒトPBMCインビトロ結果(図3Bも参照)により、NP71−Seq45は、その親RNA断片NP71−Seq4よりも強い免疫賦活能を明らかにした。isRNA刺激によるIFN−αの誘導は、ヒト細胞を使用して既に観察されているようにpDCに厳密に依存していた。 新鮮に調製されたマウス細胞を使用したインビトロ結果は、同定されたisRNAの幅広い適用性を示し、モデル系としてマウスを使用した更なるインビボ実験を可能にした。

実施例9:インビボでのF12製剤化isRNA刺激は、IFN−αの時間及び用量依存的誘導をもたらす isRNAアジュバントを適用する際の時間及び用量応答関係は、安全性評価と最適な免疫法の開発のための重要なパラメーターである。従って、Balb/cマウスに、増大用量の製剤化NP71−Seq4 isRNAを1回静脈内注射した。インビトロ実験で使用したリポソーム製剤F5とは対照的に、インビボ研究で使用されるリポソーム製剤F12を、静脈内投与時の免疫活性化の主要側である脾臓中へのisRNAの最適な送達に適応させた。ELISAで測定したIFN−αの用量及び時間依存性誘導に関するisRNAのインビボ刺激効果を分析するために、マウス血清試料を注射の1、3、5、8及び24時間後に採取した(図9)。 投与された投薬量に関係なく、インビボでの最大のIFN−α誘導が免疫の5時間後に既に達成され、その後低下して正常レベルに戻った。10μgのNP71−Seq4 isRNAの静脈内投与は、最大の刺激効果のために既に十分であり、より高い用量では増加させることはできなかった。40μgのisRNAを注入した後でも、副作用は見られず、全身投与後のisRNAの良好な忍容性が示された。

実施例10:頻繁な間隔でのF12製剤化isRNAの反復的静脈内投与により、適応免疫化レジームによって克服できる全身性TLR応答耐性がもたらされる TLR応答耐性はよく知られた効果であり、TLRアゴニストへの反復暴露によりサイトカイン放出応答が減少する(Broad, A.等; Curr Med Chem 13(21), 2487-2502 (2006))。結果として、多すぎる頻度でのisRNAアジュバントの同時投与を伴うワクチン接種は、全体的な免疫応答に有害な影響を与えるため、避けるべきである。従って、TLR応答耐性に至ることなくisRNAを投与できる時間間隔を分析することが重要であった。 F12製剤化NP71−Seq4 isRNAを5日(第一群)又は7日(第二群)の間隔でBalb/cマウスに2回、静脈内注射した(図10)。両群に20μgのisRNA/マウスを注射し、各注射の4時間後に血液試料を採取した。使用したisRNA濃度と注射後の血液採取の時間は、以前の実験で最適であることが示された(図9を参照)。IFN−αの血清レベルをELISAによって検出した。5日の時間間隔でのF12製剤化NP71−Seq4 isRNAの投与は、2回目の注射後のIFN−α分泌の強い減少を伴う顕著なTLR応答耐性効果をもたらした。しかし、TLR応答性は、7日間の注射間隔でほぼ完全に回復することができた。従って、モデル抗原とisRNAアジュバントを組み合わせた続くワクチン接種実験を、最大のisRNAアジュバント効果を確保するために、各注射後10〜14日の最小時間間隔で複数の免疫を使用して実施した。

実施例11:HBcAg−#A79 VLPと組み合わせたF12製剤化isRNAはインビボで抗原特異的B細胞及びT細胞応答を誘導する 以前の実験において、我々は、同定したisRNAが自然免疫系、特にpDCを非常に効率的かつ大きくTLR7依存的に刺激し、多量のIFN−αを放出できることを実証できた。その後のインビボ免疫研究において、我々は、isRNAによる自然免疫系のトリガーが、B細胞とT細胞両方の効率的かつ抗原特異的な適応免疫応答に変換できるかどうかの分析を望んだ。 この目的のために、我々は、選択したisRNAをウイルス様粒子(VLP)ベースのモデル抗原HBcAg−#A79と組み合わせた。VLPは、高分子構造に自己集合する固有の能力を持つウイルス構造タンパク質で構成されている。VLPは、由来するウイルスに似ているが、ウイルス遺伝物質を含んでいない。従って、VLPは非感染性であり、一般に安全なワクチン型と考えられる。VLPの高い内因性免疫原性は、VLPの表面に繰り返し提示される異種性エピトープに伝達されうる。使用されたモデル抗原HBcAg−#A79は、B型肝炎ウイルスコア抗原(HBcAg)に由来する組換え生産されたキメラVLPに基づいており、細胞表面に位置する腫瘍関連抗原(TAA)CLDN6の遺伝的に挿入されたエピトープをその表面に提示する。CLDN6エピトープ#A79は免疫化研究の理想的な候補であったが、それは、B細胞とT細胞の複合エピトープとして機能し、後者が、Balb/c近交系マウスによって発現されるMHCクラスIH−2Kdに制限されるためである。 Balb/cマウスを、F12製剤化isRNA NP71−Seq4又はNP71−Seq45と組み合わせたHBcAg−#A79 VLPを用いて2週間間隔で4回静脈内で免疫した。未処置マウス又は空のF12リポソーム、F12製剤化ポリ(A)RNA、又はCFA/IFA(皮下で免疫)でアジュバント化したHBcAg−#A79−VLPで免疫したマウスを対照とした。3回目の免疫の10日後、フローサイトメトリーによる抗原特異的体液性免疫応答の分析のために血液試料を採取した(図11A)。4回目の免疫の5日後に動物を屠殺し、脾細胞を単離して、酵素免疫スポット(ELISpot)アッセイにより特異的T細胞応答の誘導を分析した(図11B)。

フローサイトメトリー分析を、標的TAA CLDN6又は特異性対照のためのその密接な相同体CLDN9で安定にトランスフェクトされた生存CHO−K1細胞を使用して実施した。結合抗体の検出は、免疫血清のMFIを各出血前血清のMFI(最初の免疫前)で除算することにより計算された平均蛍光強度(MFI)シフトにより表した。2倍を超えるMFIシフトが、陽性の抗原特異的抗体応答と見なされた。アジュバントを添加せずに免疫したHBcAg−#A79 VLPは、少数の動物のみが陽性反応を示す弱い抗原特異的免疫応答を誘導する。抗原特異的免疫応答は、ポリ(A)RNA、CFA/IFA、又は空のF12リポソームによるアジュバント化により僅かに増加した。しかし、この効果は非アジュバント化HBcAg−#A79VLPと比較した場合、有意(ns)ではなかった。isRNA NP71−Seq4又はNP71−Seq45の同時投与は、CLDN9への抗体の非特異的結合を増加させることなく、HBcAg−#A79VLPで免疫した際のCLDN6抗原特異的抗体応答を強くかつ非常に有意に増加させた。NP71−Seq45 isRNAをアジュバントとして使用した動物の免疫は、一般にNP71−Seq4よりも高い抗体MFIシフトをもたらした。 ELISpot分析により、ポリ(A)RNA又はCFA/IFAでアジュバント化したHBcAg−#A79VLPを使用した免疫、及び空のF12リポソームの添加により、検出可能なT細胞応答が完全に欠如することが明らかになった。対照的に、isRNAの同時投与は、NP71−Seq4と比較した場合、NP71−Seq4がIFN−γスポットの数を増加させる非常に有意な#A79ペプチド特異的T細胞応答を誘導した。 HBcAg−#A79VLPをリポソーム製剤化isRNAアジュバントと組み合わせてマウスを免疫して得られた結果は、生細胞上のその本来の高次構造の標的TAAを検出できる高力価及び抗原特異的抗体応答の効率的な誘導が、使用したisRNAアジュバントに強く依存していたことを明確に示している。更に、モデル抗原と製剤化isRNAの組み合わせのみが、多数のIFN−γスポットによって反映されるTAAペプチド特異的T細胞応答を同時に誘導することができた。従って、リポソーム製剤で静脈内投与された同定したisRNAは、組換えタンパク質ベースのワクチンと組み合わせた場合、インビボで体液性及び細胞性抗原特異的免疫応答の発生をブーストするアジュバントとして作用しうる。

実施例12:HBcAg−#A79VLPと組み合わせたF12製剤化isRNAの免疫により誘導される抗原特異的B及びT細胞応答は用量依存的である 以前の実験(図9を参照)において、我々は、製剤化isRNAによるIFN−αのインビボ誘導が時間と用量に依存し、10μgのisRNAを1回注入した後に最大の効果がもう達成されていることを示すことができた。この用量依存性と、抗原特異的複合B及びT細胞応答のインビボ誘導との相関関係を、漸増用量(5、10、20、40μg/注射)のF12製剤化NP71−Seq45 isRNAでアジュバント化したHBcAg−#A79VLPをマウスに静脈内免疫して分析した。免疫スケジュールと実験セットアップは、実施例11に記載のものと同一であった。 F12製剤化NP71−Seq45 isRNAの5μg/注射が、フローサイトメトリーによって示されるように、明らかに増強された抗体応答を示すのに既に十分であった(図12A)。加えて、40μg/注射を適用した場合に更に増加することなく、20μg/注射のisRNA濃度までの用量依存性抗原特異的抗体応答が検出可能であった。この用量依存性は、F12製剤化isRNAのアジュバント活性におけるIFN−αの重要な役割に向けられたIFN−α分泌の用量依存的過程に類似していた。少なくとも10μg/注射のisRNAを適用すると、IFN−γELISpotにより#A79ペプチド特異的T細胞応答の有意な増強が検出可能であった(図12B)。更に、isRNAトリガーB細胞応答に対して観察された結果とは対照的に、isRNAアジュバント投薬量を最大40μg/注射のNP71−Seq45まで増加させることにより、ペプチド特異的T細胞応答が更に増強された。TAA CLDN18.2に由来する無関係なペプチドに対する非特異的なT細胞反応性は、最高NP71−Seq45用量でさえも見られなかった。 これらの結果は、isRNA誘導性B及びT細胞免疫応答の差次的な用量依存性挙動が、適用されるisRNA用量を適応させることによりそれらの調節を可能にすることを示した。

実施例13:F12製剤化isRNA及びHBcAg−#A79VLPによる免疫により誘発された抗原特異的抗体はCDCにより標的陽性細胞を死滅させる 成功裡のワクチン接種策略は、その天然の立体構造でその標的タンパク質に結合し、続いて免疫エフェクター機構を介して標的陽性細胞の死滅化を媒介することができる抗原特異的抗体の誘導に依存するかも知れない。抗体のFc部分によって媒介される主要な細胞溶解性エフェクター機能の一つは、実施例11に記載されている免疫実験に由来する1:10希釈の未精製血清を使用して分析された補体依存性細胞傷害性(CDC)である。 CDCアッセイにより、HBcAg−#A79VLP及びF12製剤化isRNAで免疫したマウスの血清が効率的な細胞破壊的エフェクター機能を発揮することが明らかになった(図13)。熱不活化補体(1:10hi)が細胞死滅を強く減少させるため、細胞溶解活性は厳密に活性な補体に依存していた。空のF12リポソーム、CFA/IFAと組み合わせた、又はF12製剤化ポリ(A)RNAでアジュバント化したHBcAg−#A79VLPでの免疫から得られた血清は、同等のエフェクター機能を発揮することができなかった。誘導された抗体の細胞破壊的エフェクター機能は、その計算されたMFIシフトと大部分相関していた。 マウスでは、アイソタイプIgG3が最良の補体活性化因子であり、IgG2aとIgG2bがそれに続く。従って、CDCアッセイの結果は、isRNAアジュバントが免疫グロブリンクラススイッチを促進するインビボサイトカイン環境を誘導し、誘発された抗原特異的抗体がCDCによって標的陽性細胞を死滅させることができることを示した。

実施例14:HBcAg−#A79VLPと組み合わせたF12製剤化isRNAの免疫は、バランスの取れた抗原特異的IgG2a/IgG1応答をもたらした モデル抗原HBcAg−#A79VLPと組み合わせた同定したisRNAのアジュバント特性のより良い理解のために、免疫グロブリン(Ig)アイソタイプスイッチの決定が、ワクチン組成が免疫応答のTh1又はTh2プロファイル間のバランスに影響するかどうかの洞察を提供することができる。マウス系では、IgG2aアイソタイプレベルの上昇の存在が、Th1を介した免疫応答の指標となる一方、IgG1抗体の高レベルが、Th2を介した免疫応答の特徴である。 Igアイソタイプレベルの分析のために、実施例11に記載のように免疫したマウスの血清を使用し、線状#A79−ペプチドに対して特異的に反応するIgG1又はIgG2a抗体の力価をELISAにより分析した(図14A及び14B)。抗体価最大半量を計算し、IgG2a対IgG1の比として表した(図14C)。非アジュバント化HBcAg−#A79VLP又は空のF12リポソームと組み合わせたVLPによる免疫は、主にTh2駆動免疫応答に関して、高いIgG1及び非常に低いIgG2a抗体力価をもたらした。対照的に、F12製剤化NP71−Seq45でアジュバント化されたHBcAg−#A79VLPでの免疫により生じた抗体は、中程度に高いIgG1を誘発し、#A79−ペプチド特異的IgG2a抗体力価を強く増強し、バランスのとれたTh1/Th2免疫応答をもたらした。

実施例15:HBcAg−#A79VLPと組み合わせたF12製剤化isRNAにより誘導される抗原特異的抗体応答は主にpDCに依存する 以前のインビトロ実験では、同定したisRNAが主にpDCでのエンドソームTLR活性化によりその免疫賦活効果を発揮し、高IFN−α量の分泌をもたらすことが示された(図4及び図8参照)。 これらの結果をインビボで確認するために、pDCの枯渇をもたらすジフテリア毒素(DT)で処置されたBDAC2−DTRマウスと未処置のC57BL/6野生型マウスを、20μg/注射のF12製剤化NP71−Seq45isRNAと組み合わせた50μg/注射のHBcAg−#A79VLPで14日の間隔で3回静脈内で免疫した。対照は、単独又は空のF12−リポソームと組み合わせてのHBcAg−#A79VLPで免疫したC57BL/6野生型マウスと、DT単独で処置したが抗原プラスisRNAアジュバントを投与していないBDAC2−DTRマウスであった。ELISA(図15A)によるIFN−αの誘導を分析するために最初の免疫の4時間後に血清試料を採取し、CHO−K1細胞を使用してフローサイトメトリーにより誘導された抗原特異的抗体応答を決定するために最後の免疫の10日後に標的TAA CLDN6又はその密接な相同体CLDN9でトランスフェクトした(図14B)。ジフテリア毒素処理によるpDC除去により、HBcAg−#A79VLPと組み合わせたF12製剤化NP71−Seq45の静脈内投与時にIFN−α血清レベルが強く低減された。検出可能なレベルは、DT単独で処置されたBDAC2−DTRマウスに対して観察されたものと同様の範囲にあった。非アジュバント化HBcAg−#A79VLP又は空のF12リポソームでアジュバント化されたHBcAg−#A79VLPの注射は、検出可能なIFN−α血清レベルをもたらさなかった。フローサイトメトリーによるCLDN6特異的抗体の分析は、DTを介したpDCの枯渇により、C67BL/6野生型マウスと比較してHBcAg−#A79VLPと組み合わせたF12製剤化NP71−Seq45isRNAでの免疫時に、抗原特異的抗体応答が非常に有意に減少することが明らかになった。しかしながら、非アジュバント化HBcAg−#A79VLPで免疫したC57BL/6マウスと比較した場合、BDAC2−DTRマウスで観察された抗体応答はまだ僅かに上昇していた。 結果は、インビボでの製剤化isRNAの静脈内投与時に、pDCが主な標的であり、IFN−α産生体であることを示し、以前のインビトロ研究を確認した。加えて、IFN−α誘導の欠如により、抗原特異的体液性免疫応答が大幅に減少した。

実施例16:F12製剤化isRNA刺激はインビボで実質的なIFN−α誘導とほんの僅かなTNF−α誘導をもたらす マウス又はヒト免疫細胞を使用した以前のインビトロデータでは、高レベルのI型インターフェロン(IFN−α)とほんの僅かなレベルの強い炎症誘発性サイトカインTNF−αを誘導する同定したisRNA、特に配列NP71−Seq45の能力が実証された。製剤化isRNAがインビボで同様のサイトカインプロファイルを誘導できるかどうかを調べるために、Balb/cマウスにF12製剤化NP71−Seq45isRNAを1回静脈内投与した。その後、様々な時点(注射後4、8、及び24時間)で血清を採取し、血清中のIFN−α又はTNF−αレベルを市販のELISAキット(Thermo Fischer)で分析した。以前に得られたインビトロデータと一致して、我々は、F12製剤化NP71−Seq45 isRNAの静脈内投与が、IFN−αの非常に高いが一過性の分泌をもたらしたが、TNF−αレベルは非常に低いままであったことを明確に証明することができた(図16)。

ここで言及した配列は次の通りである: 配列番号:1 aacuucugga gggguga 配列番号:2 aacuucugga ggggugagaa u 配列番号:3 uugcuu 配列番号:4 aagaauugcu u 配列番号:5 gggcgaacua guaacuucug gaggggugag aaucucga 配列番号:6 aacuucugga ggggugauug cuu 配列番号:7 gggcgaacua guaacuucug gaggggugau ugcuucucga 配列番号:8 aacuucugga ggggugagaa uggacgaaaa acaagaauug cuu 配列番号:9 gggcgaacua guaacuucug gaggggugag aauggacgaa aaacaagaau ugcuucucga 配列番号:10 aacuucugga ggggugagaa uaagaauugc uu 配列番号:11 gggcgaacua guaacuucug gaggggugag aauaagaauu gcuucucga 配列番号:12 agcaaaagca ggguagauaa ucacucacug agugacauca aaaucauggc gucucaaggc accaaacgau cuuacgaaca gauggagacu gauggagaac gccagaaugc cacugaaauc agagcauccg ucggaaaaau gauuggugga auuggacgau ucuacaucca aaugugcacc gaacucaaac ucagugauua ugagggacgg uugauccaaa acagcuuaac aauagagaga auggugcucu cugcuuuuga cgaaaggaga aauaaauacc uugaagaaca ucccagugcg gggaaagauc cuaagaaaac uggaggaccu auauacagga gaguaaacgg aaaguggaug agagaacuca uccuuuauga caaagaagaa auaaggcgaa ucuggcgcca agcuaauaau ggugacgaug caacggcugg ucugacucac augaugaucu ggcauuccaa uuugaaugau gcaacuuauc agaggacaag agcucuuguu cgcaccggaa uggaucccag gaugugcucu cugaugcaag guucaacucu cccuaggagg ucuggagccg caggugcugc agucaaagga guuggaacaa uggugaugga auuggucaga augaucaaac gugggaucaa ugaucggaac uucuggaggg gugagaaugg acgaaaaaca agaauugcuu augaaagaau gugcaacauu cucaaaggga aauuucaaac ugcugcacaa aaagcaauga uggaucaagu gagagagagc cggaacccag ggaaugcuga guucgaagau cucacuuuuc uagcacgguc ugcacucaua uugagagggu cgguugcuca caaguccugc cugccugccu guguguaugg accugccgua gccagugggu acgacuuuga aagggaggga uacucucuag ucggaauaga cccuuucaga cugcuucaaa acagccaagu guacagccua aucagaccaa augagaaucc agcacacaag agucaacugg uguggauggc augccauucu gccgcauuug aagaucuaag aguauuaagc uucaucaaag ggacgaaggu gcucccaaga gggaagcuuu ccacuagagg aguucaaauu gcuuccaaug aaaauaugga gacuauggaa ucaaguacac uugaacugag aagcagguac ugggccauaa ggaccagaag uggaggaaac accaaucaac agagggcauc ugcgggccaa aucagcauac aaccuacguu cucaguacag agaaaucucc cuuuugacag aacaaccguu auggcagcau ucagugggaa uacagagggg agaacaucug acaugaggac cgaaaucaua aggaugaugg aaagugcaag accagaagau gugucuuucc aggggcgggg agucuucgag cucucggacg aaaaggcagc gagcccgauc gugccuuccu uugacaugag uaaugaagga ucuuauuucu ucggagacaa ugcagaggaa uacgauaauu aaagaaaaau acccuuguuu cuacu

高效检索全球专利

专利汇是专利免费检索,专利查询,专利分析-国家发明专利查询检索分析平台,是提供专利分析,专利查询,专利检索等数据服务功能的知识产权数据服务商。

我们的产品包含105个国家的1.26亿组数据,免费查、免费专利分析。

申请试用

分析报告

专利汇分析报告产品可以对行业情报数据进行梳理分析,涉及维度包括行业专利基本状况分析、地域分析、技术分析、发明人分析、申请人分析、专利权人分析、失效分析、核心专利分析、法律分析、研发重点分析、企业专利处境分析、技术处境分析、专利寿命分析、企业定位分析、引证分析等超过60个分析角度,系统通过AI智能系统对图表进行解读,只需1分钟,一键生成行业专利分析报告。

申请试用

QQ群二维码
意见反馈