透光性セラミックを用いたハイブリッドレンズ

申请号 JP2006539177 申请日 2005-08-11 公开(公告)号 JPWO2006038378A1 公开(公告)日 2008-05-15
申请人 株式会社村田製作所; 发明人 金高 祐仁; 祐仁 金高; 呉竹 悟志; 悟志 呉竹; 田中 伸彦; 伸彦 田中;
摘要 透光性セラミックからなるレンズ 母材 (1)の表面に、紫外線硬化樹脂からなる樹脂層(2)が形成された構造を有する、ハイブリッドレンズ(3)。レンズ母材(1)を、A{M,(B1,B2)}O3(Aは、Ba、SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種、B1は、In、Y、ZnおよびMgから選ばれる少なくとも1種、B2は、TaおよびNbの少なくとも一方、ならびに、Mは、Ti、Zr、HfおよびSnから選ばれる少なくとも1種である。)で表されるペロブスカイト構造を有する 酸化 物を主成分とし、かつ副成分として少なくともFeおよびCuを含む、透光性セラミックから構成する。透光性セラミック中のFeおよびCuの含有量を、それぞれ、xおよびyとするとき、3x+yが40重量ppm以下になるようにすることによって、光学特性の均一性に優れ、かつクラック不良のない、ハイブリッドレンズ(3)が得られる。
权利要求
  • A{M,(B1,B2)}O (Aは、Ba、SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種、B1は、In、Y、ZnおよびMgから選ばれる少なくとも1種、B2は、TaおよびNbの少なくとも一方、ならびに、Mは、Ti、Zr、HfおよびSnから選ばれる少なくとも1種である。)で表されるペロブスカイト構造を有する酸化物を主成分とし、かつ副成分として少なくともFeおよびCuを含む、透光性セラミックからなるレンズ母材と、
    前記レンズ母材の表面に形成される紫外線硬化樹脂からなる樹脂膜とを備え、
    前記透光性セラミック中のFeの含有量をxとし、同じくCuの含有量をyとするとき、3x+yが40重量ppm以下であり、
    前記透光性セラミックが、波長633nmの可視光の、試料厚み0.6mmにおける内部透過率が90%以上であり、かつ波長365nmの紫外線の、試料厚み0.6mmにおける内部透過率が60%以上であり、
    さらに、前記透光性セラミックが、可視光のd線(波長が587.56nm)における屈折率が2.01以上であることを特徴とする、ハイブリッドレンズ。
  • 前記樹脂膜を構成する前記紫外線硬化樹脂中に、平均粒径50nm以下のセラミック粒子が分散されている、請求項1に記載のハイブリッドレンズ。
  • 前記紫外線硬化樹脂中に分散される前記セラミック粒子は、その主成分組成が、A{M,(B1,B2)}O 系、チタン酸バリウム系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸カルシウム系および酸化チタン系から選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載のハイブリッドレンズ。
  • 厚み30μmの前記樹脂膜を平板状の前記透光性セラミックの表面上に形成した、厚みが0.6mmの平板状試料について、波長633nmの可視光の内部透過率は90%以上であり、可視光のd線(波長が587.56nm)における屈折率は2.01以上である、請求項3に記載のハイブリッドレンズ。
  • 前記レンズ母材は、球面レンズ形状を有する、請求項1ないし4のいずれかに記載のハイブリッドレンズ。
  • 当該ハイブリッドレンズは、非球面レンズを構成する、請求項5に記載のハイブリッドレンズ。
  • 说明书全文

    本発明は、透光性セラミックと透光性を有する樹脂との接合により構成されるハイブリッドレンズに関するものである。

    従来より、カメラ等に用いられる光学部品であるレンズには、ガラス材料、樹脂材料、単結晶、透光性セラミック等の材料が用いられている。 特に、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等の用途においては、光学系の小型化が急務であり、レンズの小型化もしくはレンズ枚数の削減が求められている。

    レンズ枚数を削減するための手段として、レンズ形状を非球面にすることが挙げられる。 これは、非球面レンズは、球面レンズと比較して、そのレンズ材料の特性値を生かしながら球面収差等の種々の収差補正が可能となるからである。 さらに、レンズ材料の屈折率を高くすることにより、レンズ自体を小型化することができる。

    非球面レンズを作製するには、ガラス材料、透光性セラミック等を用いたレンズ母材となる球面レンズ上に、非球面形状の透光性樹脂膜を積層、接合させると良い。 この方法を用いれば、たとえレンズ母材の材料がモールド成形による非球面加工が不可能なものであっても、非球面レンズを作製することが可能である。 この方法にて作製したレンズをハイブリッドレンズと言う。

    ここで、非球面のハイブリッドレンズを作製する一般的な方法について説明する。 所望の非球面形状に対応する転写層を備える非球面金型に、一定量の紫外線硬化樹脂液を流し込み、その上に、レンズ母材の非球面にしようとする面を、金型との間隔を一定に保つように金型面に向けて固定し、レンズ母材側から紫外線を照射し、樹脂を硬化させる。 この場合、紫外線はレンズ母材を透過して樹脂に照射されることになる。 従来例として、特許文献1には、ガラス材料からなる球面レンズ上に非球面形状の紫外線硬化樹脂膜を積層した複合非球面レンズが開示されている。

    紫外線硬化樹脂以外の樹脂としては熱硬化樹脂があるが、この場合には、形成した非球面の寸法精度が比較的悪いという問題がある。 また、加熱−冷却条件の精密な管理を必要とするため、量産性の観点からも好ましくない。 したがって、前述の紫外線硬化樹脂が一般的に用いられる。

    また、レンズ母材および紫外線硬化樹脂の屈折率を高くすることができれば、ハイブリッドレンズの小型化が可能となり、光学系の小型化が促進される。 特許文献2には、屈折率が2.0以上と高い、Ba{Sn,Zr(Mg,Ta)}O 3系ペロブスカイト型酸化物からなる透光性セラミックが開示されている。 なお、本明細書に記載の「屈折率」は、特に断りがない限り、可視光d線(波長が587.56nm)における屈折率のことを言う。

    しかしながら、特許文献1に代表されるようなガラスからなるレンズ材料は、一般に屈折率が2未満と低く、レンズの小型化に不利である。 屈折率が2.00程度の高屈折率ガラス材料も存在するが、これらはレンズ母材として用いた場合、紫外線の透過率が悪いという問題がある。

    すなわち、紫外線硬化樹脂に向けて紫外線を照射する際、レンズ母材は場所によって肉厚が異なるため、樹脂液に到達する紫外線の強度が場所によって異なることになり、樹脂硬化度の場所依存性が生じる。 これにより、硬化後の樹脂は均質性に欠けるものとなり、完成品となるハイブリッドレンズの光学特性、すなわち屈折率および透過率に場所依存性が生じるため、望ましくない。 また、不均一な応が発生し、クラックが生じることがある。

    一方、仮にレンズ母材の紫外線の透過率が十分高い場合は、レンズ母材の場所による肉厚差が多少あっても、樹脂の硬化にはほとんど影響しない。

    特公平6−93043号公報

    特開2004−75512号公報

    本発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、レンズ母材の材料として、屈折率が2.01以上と高く、かつ紫外線の透過率の高い透光性セラミックを用いながら、光学特性の均質性に優れ、かつクラックの生じにくい、ハイブリッドレンズを提供することである。

    本発明に係るハイブリッドレンズは、A{M,(B1,B2)}O (Aは、Ba、SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種、B1は、In、Y、ZnおよびMgから選ばれる少なくとも1種、B2は、TaおよびNbの少なくとも一方、ならびに、Mは、Ti、Zr、HfおよびSnから選ばれる少なくとも1種である。)で表されるペロブスカイト構造を有する酸化物を主成分とし、かつ副成分として少なくともFeおよびCuを含む、透光性セラミックからなるレンズ母材と、このレンズ母材の表面に形成される紫外線硬化樹脂からなる樹脂膜とを備え、上記透光性セラミック中のFeの含有量をxとし、同じくCuの含有量をyとするとき、3x+yが40重量ppm以下であり、また、透光性セラミックが、波長633nmの可 視光の、試料厚み0.6mmにおける内部透過率が90%以上であり、かつ波長365nmの紫外線の、試料厚み0.6mmにおける内部透過率が60%以上であり、さらに、透光性セラミックが、可視光のd線(波長が587.56nm)における屈折率が2.01以上であることを特徴としている。

    本発明に係るハイブリッドレンズに備える樹脂膜は、これを構成する紫外線硬化樹脂中に、平均粒径50nm以下のセラミック粒子が分散されているものであることが好ましい。

    上記紫外線硬化樹脂中に分散されるセラミック粒子は、その主成分組成が、A{M,(B1,B2)}O 系(Aは、Ba、SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種、B1は、In、Y、ZnおよびMgから選ばれる少なくとも1種、B2は、TaおよびNbの少なくとも一方、ならびに、Mは、Ti、Zr、HfおよびSnから選ばれる少なくとも1種である。)、チタン酸バリウム系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸カルシウム系および酸化チタン系から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。

    上述の場合、厚み30μmの上記樹脂膜を平板状の上記透光性セラミックの表面上に形成した、厚みが0.6mmの平板状試料について、波長633nmの可視光の内部透過率は90%以上であり、可視光のd線(波長が587.56nm)における屈折率は2.01以上であることが好ましい。

    本発明に係るハイブリッドレンズにおいて、レンズ母材は、球面レンズ形状を有していることが好ましい。

    また、本発明に係るハイブリッドレンズは、好ましくは、非球面レンズを構成する。

    本発明によれば、透光性セラミックからなるレンズ母材において、屈折率を2.01以上と高く、かつ紫外線の透過率を高くすることができるので、光学特性の均質性に優れ、かつクラックの生じにくいハイブリッドレンズを得ることができる。

    したがって、本発明に係るハイブリッドレンズは、デジタルスチルカメラなどの光学装置において、レンズの小型化あるいはレンズ枚数の削減を可能とし、そのため、光学装置の小型化に寄与することができる。

    本発明に係るハイブリッドレンズに備える樹脂膜を構成する紫外線硬化樹脂中に、平均粒径50nm以下のセラミック粒子が分散されていると、屈折率を効果的に向上させることができる。

    図1は、本発明の一実施形態によるハイブリッドレンズに備えるレンズ母材を構成する、透光性セラミックからなる球面レンズの一例を示す断面図である。

    図2は、図1に示した球面レンズをレンズ母材として用いて構成したハイブリッドレンズを示す断面図である。

    符号の説明

    1 球面レンズ 2 樹脂膜 3 ハイブリッドレンズ

    まず、本発明に係るハイブリッドレンズに備えるレンズ母材を構成する透光性セラミックの組成について説明する。

    透光性セラミックは、A{M,(B1,B2)}O (Aは、Ba、SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種、B1は、In、Y、ZnおよびMgから選ばれる少なくとも1種、B2は、TaおよびNbの少なくとも一方、ならびに、Mは、Ti、Zr、HfおよびSnから選ばれる少なくとも1種である。)で表されるペロブスカイト構造を有する酸化物を主成分とし、かつ副成分として少なくともFeおよびCuを含んでいる。 この透光性セラミック中のFeの含有量をxとし、同じくCuの含有量をyとするとき、3x+yが40重量ppm以下である。 また、この透光性セラミックは、波長633nmの可視光の、試料厚み0.6mmにおける内部透過率が90%以上である。

    ここで、内部透過率とは、試料の理論透過率、および試料の実測値である直線透過率より、以下の式(1)〜(3)に従って求められるものである。

    内部透過率[%]=直線透過率/理論透過率×100 …(1)
    理論透過率[%]=(1−R) /(1−R )×100 …(2)
    R=(n−1) /(n+1) …(3)
    ただし、式(3)において、Rは反射率を表し、nは屈折率を表す。

    すなわち、屈折率の大きい試料に大気中から光が侵入する際、界面にて屈折率の違いによる反射が必ず生じるため、実測値である直線透過率が100%になることはない。 理論透過率とは、このような屈折率の違いによる反射の影響を除去し、試料内部のみにおける透過率を100%と仮定したときの透過率である。 ここで、実測値である直線透過率の理論透過率に対する比をとることで、反射の影響を取り除いた試料内部の透過率のみを評価することができる。 これらの反射は、必要に応じて反射防止膜の形成などにより大部分を除去することができる。 したがって、試料の透過率については、反射の影響のない内部透過率で評価することが望ましい。

    また、本発明に係るハイブリッドレンズにおけるレンズ母材の材料として用いられる透光性セラミックは、波長365nmの紫外線の、試料厚み0.6mmにおける内部透過率が60%以上である。

    一般に、透光性材料は、波長が短くなるに従い、内部透過率が低下する傾向にある。 しかし、上述のように、FeとCuの含有量3x+yを40重量ppm以下に抑えるよう制御することにより、紫外線のような短波長の光の透過率も向上させることができる。

    ただし、Feの含有量を限りなく0に近くしても、Cuの含有量が多いと、紫外線の内部透過率は悪くなる。 FeとCuとの関係が逆の場合もまた同じである。 つまり、FeとCuとの両方の含有量を同時に制御する必要がある。 本発明では、透光性セラミックの紫外線の透過率の向上には、Fe含有量を3倍したものとCu含有量の和を一定値以下に制御することが最も効果的であることを見出したのである。

    前述の3x+yを20重量ppm以下に制御した場合、波長が365nmである紫外線の試料厚み0.6mmにおける内部透過率が80%以上となり、より好ましい。

    透光性セラミック中にFeやCuが存在すると、紫外線の内部透過率が悪くなる理由としては、結晶中の原子の一部を置換したFeイオンおよびCuイオンの固有吸収ピークのエネルギーが、紫外線のエネルギーにほぼ相当するためと考えられる。 上述のように、CuよりFeの方が紫外線に与える影響が3倍大きいわけであるが、この理由は定かではない。

    本発明では、透光性セラミックの主成分が、A{M,(B1,B2)}O (Aは、Ba、SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種、B1は、In、Y、ZnおよびMgから選ばれる少なくとも1種、B2は、TaおよびNbの少なくとも一方、ならびに、Mは、Ti、Zr、HfおよびSnから選ばれる少なくとも1種である。)で表されるペロブスカイト型酸化物であるため、紫外線の透過率と3x+yの相関がより強くなり、3x+yの制御の効果がより顕著になるものと考えられる。

    また、上述のようなペロブスカイト型酸化物を主成分とする透光性セラミックは、可視光のd線(波長が587.56nm)における屈折率が2.01以上と高い値を示す。 このことはレンズを小型化するのに非常に有利である。

    次に、本発明に係るハイブリッドレンズにおけるレンズ母材を構成する透光性セラミックの製造方法について説明する。

    透光性セラミックの主成分としてのA{M,(B1,B2)}O で表されるペロブスカイト型酸化物については、特許文献2と実質的に同じ製造方法によって製造することができる。

    セラミック中に、FeおよびCuは、通常、不純物として含まれている。 セラミック中のFe量およびCu量を制御するためには、主として、A{M,(B1,B2)}O を合成するためのBaCO 、MgCO 、Ta 等の素原料に含まれるFe量とCu量とを、精製を繰り返す等して、予め抑えておくことが有効である。 また、Fe量およびCu量の異なる複数種類の素原料を用意し、これらを混合して用いることで、セラミック中のFe量およびCu量のばらつきを抑えることができる。

    また、セラミックの製造工程においてFeやCuの混入を防ぐことも重要である。 たとえば、粉砕機の羽根などにFeやCuからなる材質を用いている場合などにおいては、羽根の摩耗によりFeやCuが混入しないよう、粉砕を強くしすぎない等の措置が重要である。

    次に、上述したような透光性セラミックを用いたハイブリッドレンズの構成および製造方法について説明する。

    本発明に係るハイブリッドレンズは、上述した透光性セラミックからなるレンズ母材の表面に、紫外線硬化樹脂からなる樹脂膜を形成することによって構成される。

    特に球面収差等の種々の収差補正に有利な非球面レンズを作製する場合は、球面加工した透光性セラミックをもってレンズ母材と構成し、その球面上に透光性の紫外線硬化樹脂からなる樹脂膜を形成し、非球面を形成する。 セラミックは非球面加工が困難であるが、樹脂ならば金型に硬化前の樹脂液を流し込んでモールド成形することができるため、非球面加工が容易である。 この透光性セラミックからなるレンズ母材とその上に形成された非球面の樹脂膜との複合体がハイブリッドレンズを形成する。

    樹脂に紫外線硬化樹脂を用いるため、熱硬化樹脂に特有の加熱−冷却工程が不要である。 当然、温度管理の必要もなく、また熱膨張・収縮による応力発生によって生じるクラックおよび/または寸法誤差の問題もない。

    ただし、紫外線硬化樹脂の場合は、紫外線がレンズ母材を透過して樹脂液に照射されるため、前述のようにレンズ母材の紫外線の内部透過率が高いことが要求される。 これは、レンズ母材の形状が、光軸付近と外周付近とで肉厚差がかなりある場合が多いためである。 紫外線の内部透過率が低いと、レンズの光軸付近と外周付近とで樹脂の硬化速度がかなり異なってくるため、硬化後の樹脂膜が光学特性の均質性に乏しいものとなり、また樹脂膜にクラック不良が生じる。 0.6mm厚のレンズ母材における波長365nmの紫外線の内部透過率が60%以上であると、レンズ母材が一般的な球面形状である場合、ほとんど前述のようなクラック不良の問題は生じない。 特に、前記内部透過率が80%以上であると、レンズ母材がたとえば曲率半径の小さい両凸レンズなどの特殊な形状であっても、樹脂膜のクラック不良を確実に防ぐことができる。

    また、紫外線硬化樹脂としては、主として、アクリレートモノマー、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、シリコーンアクリレート、ポリブタジエンアクリレートなどといったアクリル系モノマーやオリゴマーを適宜組み合わせて作製したものが用いられる。 また、ポリエチレン−チオール系オリゴマーやビニルエーテル系といったものも使用可能である。 さらに、ラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤といった光重合開始剤を添加することにより、紫外線照射による硬化効率が向上される。

    ハイブリッドレンズは、光学特性の均一性を考慮すると、レンズ母材と樹脂膜の屈折率が同じであることが好ましい。 本発明に係るハイブリッドレンズに備えるレンズ母材を構成する透光性セラミックは、前述のように、屈折率が2.01以上と高い。 このため、紫外線硬化樹脂膜の屈折率も2.01以上とすることが望ましい。

    しかし、紫外線硬化樹脂膜単体では、屈折率は2未満であることが多い。 このため、樹脂中に平均粒径50nm以下のセラミック粒子(以下、「ナノ粒子」と言う。)を分散させることにより、樹脂膜の屈折率を向上させることができる。

    特に、レンズ母材を構成する透光性セラミックが、前述したように、A{M,(B1,B2)O で表されるペロブスカイト酸化物を主成分とする場合、ナノ粒子のセラミック主成分組成は、A{M,(B1,B2)O 系、チタン酸バリウム系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸カルシウム系または酸化チタン系であることが望ましい。 また、ナノ粒子は、これらの組成からなる複数種のナノ粒子の混合物であってもよい。

    ナノ粒子の平均粒径は50nm以下であることが好ましい。 平均粒径が50nmを超える場合、樹脂膜の可視光の透過率が低下するため、好ましくない。 すなわち、平板状の透光性セラミック上に樹脂膜を形成した厚さ0.6mmの平板状複合体(うち樹脂膜の厚さ30μm)における、波長633nmの可視光の内部透過率が90%未満となる。 この場合、当然、ハイブリッドレンズの可視光透過率も低くなる。

    また、ナノ粒子を構成する組成の種類によって樹脂膜の屈折率が異なるが、ナノ粒子の添加量が増加するに従い、樹脂膜の屈折率が向上する傾向にある。

    ただし、ナノ粒子の樹脂膜中における均一性が悪化すると、内部透過率が低下することがある。 このため、ナノ粒子の平均粒径を小さくしたり、添加量を増加させたりする際は、できる限り均一に分散させるよう工夫が必要である。 ナノ粒子を樹脂液に混合する際、分散方法はボールミル等の一般的な方法でもよいが、できる限り分散剤を併用することが望ましい。 分散剤としては、例えばヘキサメタリン酸塩、ポリオールといったノニオン系の分散剤が適用可能であり、また、ポリカルボン酸、ポリマレイン酸、ポリスルホン酸といった高分子タイプのアニオン系分散剤も使用可能である。

    また、レンズ母材の球面と樹脂膜との界面における接着性を向上させるために、シランカップリング剤を用いることも可能である。

    また、上記の説明では、樹脂膜表面を非球面形状としたが、本発明はこれに限られるものではなく、通常の球面形状にしてもよい。
    [実験例1]
    本実験例は、特定の主成分からなる透光性セラミック中のFeおよびCuの各含有量と、ハイブリッドレンズにおけるクラックの有無との関係を調査するために実施したものである。

    素原料として、2N(99%以上)〜5N(99.999%以上)の様々な純度をもつBaCO 3 、MgCO 3 、Ta 25 、SnO 2 、ZrO 2を準備した。 これら各素原料は、予めFeとCuの含有量をICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)により分析したものである。 そして、Ba{(Sn 0.67 Zr 0.330.16 Mg 0.29 Ta 0.551.023で表される組成になるよう、またFeおよびCuの各含有量が表1に示す数値になるよう各素原料を秤量し、ボールミルで16時間湿式混合した。 この混合物を乾燥させた後、1300℃で3時間仮焼し、ペロブスカイト構造を示す合成物からなる原料粉末を得た。

    この原料粉末をおよびエチルセルロースからなるバインダとともにボールミルに入れ、16時間湿式粉砕した。 この粉砕した原料粉末を含むスラリーを乾燥させた後、50メッシュの網(篩)を通して造粒し、得られた粉末を196MPaの圧力で押圧することにより、直径30mm、厚さ2mmの円板状の成形体を得た。

    次に、上記成形体を、これと同組成の粉末中に埋め込んだ。 この同組成粉末は、上記成形体と同じ組成となるように調製した原料を仮焼し、粉砕して得られたものである。

    上記同組成粉末中に埋め込んだ成形体を焼成炉に入れ、大気雰囲気中で加熱し、300〜500℃の温度にて脱バインダを行った。 引き続き、昇温しながら炉内に酸素を注入し、最高温度域の1600℃または1650℃において、焼成雰囲気の酸素濃度を約98%まで上昇させた。 この焼成温度および酸素濃度を維持し、上記成形物を20時間焼成して焼結体を得た。 こうして得られた焼結体を鏡面加工し、厚さ0.6mmの円板状に仕上げて、透光性セラミックの試料とした。

    これらの試料について、厚さ0.6mmにおける、波長633nmの可視光および波長365nmの紫外線の内部透過率を、島津製作所製分光光度計(UV−200S)を用いて測定した。 その結果を表1に示す。

    試料番号5、9、11、14、23、27、29および32のように、3x+yが40を超えるものは、紫外線の内部透過率が60%未満となり、本発明の範囲外である。

    次に、ナノ粒子として平均粒径20nmのTiO 2粒子、およびBaTiO 3粒子を共沈法により作製した。 また、ポリメタクリル酸メチル樹脂にベンゾインエーテル誘導体からなる光重合開始剤を添加することで、アクリル系の紫外線硬化樹脂液を用意した。 これらのナノ粒子を表1に示す量だけ秤量し、前記樹脂液にヘキサメタリン酸塩からなる分散剤とともに混合させ、ボールミルにより均一に分散させた。 これらのナノ粒子の分散した紫外線硬化樹脂の屈折率をMetricon社製プリズムカプラー(MODEL2010)により測定した。 結果を表1に示す。 すべての試料において、屈折率が2.01以上と良好な値を示した。

    これらのナノ粒子が分散した硬化前の紫外線硬化樹脂液を、前述のように作製した表1の透光性セラミック試料(厚さ0.6mm)上にスピンコート法によって成膜し、波長365nmの紫外線を照射して硬化させた。 硬化後の樹脂膜は厚さが30μmであった。 この樹脂膜を形成した平板状の複合体試料の波長633nmの可視光における内部透過率を測定した。 その結果を表1に示す。 すべての試料において、内部透過率が90%以上と良好な値を示した。

    次に、表1に示す透光性セラミック試料およびナノ粒子を分散させた紫外線硬化樹脂を用いて、ハイブリッドレンズを以下の方法により作製した。

    すなわち、表1に示した透光性セラミック試料を、研磨加工により、すべて図1に示すような球面レンズ1に加工した。 なお、この球面レンズ1の直径は5mm、凸面の曲率半径は7.5mm、凹面の曲率半径は3.4mm、最薄部の肉厚は0.27mm、レンズ有効径における最厚部の肉厚は0.74mmであった。 すなわち、最厚部の厚みは最薄部の厚みの2.7倍であった。

    この透光性セラミック製球面レンズと表1に示すナノ粒子を分散させた紫外線硬化樹脂を用いて、複合非球面レンズの作製法として一般的なよく知られた下記の製法によって、非球面のハイブリッドレンズを作製した。

    すなわち、所望の非球面形状に対応する転写層を備える非球面金型に、所定量のナノ粒子を分散させた紫外線硬化樹脂液を流し込み、その上に、レンズ母材となる球面レンズ1の凸面を、金型との間隔を一定に保つように金型面に向けて固定し、レンズ母材側から波長365nmの紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させ、非球面の紫外線硬化樹脂膜2を形成した。 得られた非球面のハイブリッドレンズ3を図2に示す。 樹脂膜の表面は、図2のように光軸に対して軸対称となる非球面形状である。

    上述のようにして作製したハイブリッドレンズ3の硬化後の樹脂膜2の表面状態を光学顕微鏡にて観察した。 樹脂膜2のクラックの有無を確認した結果を表1に示す。

    前述のように、レンズ母材である透光性セラミックの3x+yが40重量ppmを超えるもの、すなわち波長365nmでの紫外線の内部透過率が60%未満である、試料番号5、9、11、14、23、27、29および32の試料では、樹脂膜にクラックが発生した。
    [実験例2]
    本実験例は、透光性セラミックの主成分、紫外線硬化樹脂の種類、またナノ粒子の主成分、粒径もしくは添加量について、種々に変更したときの光学特性を評価したものである。

    表2に示す種々の材料系の透光性セラミックを、実験例1の場合と同様の作製方法により作製した。 すべての試料は、FeおよびCuの各含有量をともに1〜2ppmと低くなるよう制御してある。 これらの試料の屈折率を実験例1の場合と同様の方法にて測定した。 結果を表4および表5に示す。 いずれの試料も屈折率は2.01以上と高い値を示した。

    また、表3に示す物質を主成分とする、種々の平均粒径をもったナノ粒子を用意した。 これを表4および表5に示すアクリル系あるいはエポキシ系の紫外線硬化樹脂材料に、所定の含有量にて分散させた。 アクリル系の樹脂材料は実験例1の場合と同じであり、エポキシ系の樹脂材料は、ビスフェノールA型樹脂に芳香族スルホニウム塩からなる光重合開始剤が添加されたものである。 これらの屈折率を実験例1の場合と同様に測定した。 結果を表4および表5に示す。 いずれの試料も屈折率は2.01以上と高い値を示した。

    さらに、実験例1の場合と同様に、表4および表5の厚み0.6mmの透光性セラミック試料に表4および表5の紫外線硬化樹脂膜を形成し、平板状の複合体試料を作製した。 実験例1の場合と同様に波長633nmの可視光における内部透過率を測定した。 その結果を表4および表5に示す。 試料番号53、57、61、64、67、70、73、76、79、83、86、90および93のように、ナノ粒子の平均粒径が50nmを超えるものは、内部透過率が90%未満であった。

    次いで、表4および表5に示す透光性セラミックと紫外線硬化樹脂とを用いて、実験例1の場合と同様の非球面形状のハイブリッドレンズを同様の製法にて作製した。 すべての試料において、クラックの発生はなかった。

    以上、実験例2より種々の組成の透光性セラミック、紫外線硬化樹脂およびナノ粒子材料を用いて、優れた光学特性を示すハイブリッドレンズが得られた。 このことから、本発明を実施するにあたっては、実験例の条件のみに限定されるものではないことが理解される。

    QQ群二维码
    意见反馈