Photosensitive conductive paste, a circuit board and a method of manufacturing a ceramic multilayer substrate using the same

申请号 JP2002122029 申请日 2002-04-24 公开(公告)号 JP3614152B2 公开(公告)日 2005-01-26
申请人 株式会社村田製作所; 发明人 正博 久保田;
摘要 Provided is a photosensitive conductive paste that is unlikely to gel, has superior storage stability and adhesion to a substrate, and can be formed into a fine and thick pattern. In a photosensitive conductive paste containing a powdered base metal, an organic binder having acidic groups and a photosensitive organic component, a powdered base metal processed by surface oxidation treatment and a material such as a polyvalent alcohol having at least four hydroxyls, which forms microgels by reaction with metal hydroxides present on the surface of the powdered base metal, is used.
权利要求
  • (a)表面酸化処理が施された卑金属粉末と、
    (b)酸性官能基を有する有機バインダと、
    (c)感光性有機成分と、
    (d)前記卑金属粉末表面に存在する金属水酸化物と反応してミクロゲルを形成する物質とを含有することを特徴とする感光性導電ペースト。
  • 前記卑金属粉末表面に存在する金属水酸化物と反応してミクロゲルを形成する物質は、1分子中にヒドロキシル基を4つ以上有する多価アルコールであることを特徴とする請求項1に記載の感光性導電ペースト。
  • 前記卑金属粉末表面に存在する金属水酸化物と反応してミクロゲルを形成する物質は、ポリエーテルエステル型界面活性剤であることを特徴とする請求項1に記載の感光性導電ペースト。
  • 前記ポリエーテルエステル型界面活性剤は、前記卑金属粉末100重量部に対して0.05重量部〜2重量部含有されていることを特徴とする請求項3に記載の感光性導電ペースト。
  • 前記卑金属粉末が、Cu、Mo、Ni、W及びそれらの少なくとも1種を含有する合金からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性導電ペースト。
  • 前記卑金属粉末として、卑金属粉末を酸素含有雰囲気中で室温以上の温度に加熱することにより表面酸化処理が施された卑金属粉末が用いられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感光性導電ペースト。
  • 前記卑金属粉末中の酸素含有量が0.4重量%〜1.2重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の感光性導電ペースト。
  • 前記酸性官能基を有する有機バインダが、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の感光性導電ペースト。
  • 前記酸性官能基を有する有機バインダが、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体であって、さらに該カルボキシル基に不飽和グリシジル化合物を付加反応させることにより不飽和結合が導入されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の感光性導電ペースト。
  • ジオール化合物がさらに添加されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の感光性導電ペースト。
  • アニオン吸着性物質がさらに添加されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の感光性導電ペースト。
  • 前記アニオン吸着性物質が、ハイドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、りん酸ジルコニウム及び含水酸化アンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項11に記載の感光性導電ペースト。
  • 請求項1〜12のいずれかに記載の感光性導電ペーストを用いて導体パターンを形成する工程を備えていることを特徴とする回路基板の製造方法。
  • 請求項1〜12のいずれかに記載の感光性導電性ペーストを支持体上に塗布する工程と、
    前記感光性導電ペーストを露光、現像して前記支持体上に所定のパターンを形成する工程と、
    前記支持体上に形成された前記パターンを基板上に転写する工程と、
    前記パターンを焼成する工程と、
    を具備することを特徴とする回路基板の製造方法。
  • 請求項13又は請求項14に記載の回路基板の製造方法により製造されたものであることを特徴とする回路基板。
  • 請求項1〜12のいずれかに記載の感光性導電ペーストを用いて導体パターンを形成する工程を備えていることを特徴とするセラミック多層基板の製造方法。
  • 請求項1〜12のいずれかに記載の感光性導電ペーストを支持体上に塗布する工程と、
    前記感光性導電ペーストを露光、現像して前記支持体上に所定のパターンを形成する工程と、
    前記支持体上に形成された前記パターンをセラミックグリーンシート上に転写する工程と、
    前記パターンが転写されたセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成する工程と、
    前記積層体を焼成する工程と、
    を具備することを特徴とするセラミック多層基板の製造方法。
  • 说明书全文

    【0001】
    【発明の属する技術分野】
    本願発明は、例えば、回路基板や多層基板などを製造する場合において、基板表面や、多層基板を構成する各基板上に所望の導体パターン(回路や電極など)を形成する際に用いられる感光性導電ペースト及びそれを用いた回路基板及びセラミック多層基板の製造方法などに関する。
    【0002】
    【従来の技術】
    近年、移動体通信機器、衛星放送受信機器、コンピュータなどの小型化に伴い、それらに用いられる高周波電子部品についても、小型化、高性能化が進められており、高周波電子部品の配線パターンについても、高密度化及び信号伝送の高速化への対応が強く求められるに至っている。
    そして、高周波電子部品の配線パターンの高密度化や信号伝送の高速化を達成するためには、配線パターンを微細化し、膜厚を大きく(厚膜化)することが必要になる。
    【0003】
    従来より、高周波電子部品の配線パターンの形成には、銅などの多価金属からなる導電性金属粉末と有機バインダや有機溶媒からなる有機ビヒクルとを混合した導電ペーストを用いて絶縁性基板上にパターンを形成し、次いで、これを乾燥した後、焼成することにより所定の配線パターンを形成する方法が一般的に用いられている。
    【0004】
    ところで、配線パターンを形成するにあたっては、スクリーン印刷法が一般的に用いられるが、この方法で配線パターンを微細化しようとした場合、配線パターンの配線幅や、配線と配線の間隔(配線間ピッチ)を50μm以下にすることは困難であり、一般的には、50μmの配線幅及び配線間ピッチがスクリーン印刷法による微細化の限界であると認識されている。
    【0005】
    これに対して、特開平5−287221号公報、特開平8−227153号公報などには、感光性導電ペーストを用いたフォトリソグラフィ法による微細で、膜厚の大きい配線を形成する方法が提案されている。 これらの方法は、導電性金属粉末、側鎖にカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応性化合物、光重合開始剤などからなる感光性導電ペーストを、絶縁性基板上に塗布して乾燥した後、フォトリソグラフィ法によりパターニングを行う方法である。
    【0006】
    また、特開平6−224538号公報、特開平8−335757号公報などには、ガラス粉末を含有する感光性導電ペーストを用いたフォトリソグラフィ法による微細で、膜厚の大きい配線を形成する方法が提案されている。 これらの方法は、感光性導電ペースト中にガラス粉末を含有させ、導体パターンとセラミック基板との接着性を向上させようとするものである。
    【0007】
    【発明が解決しようとする課題】
    近年、感光性導電ペーストを用いたフォトリソグラフィ法においては、環境への配慮から、もしくはアルカリ水溶液による現像が可能であることが望まれており、そのために、カルボキシル基などのプロトンを遊離する性質のある酸性官能基が有機バインダ中に導入されている。
    【0008】
    しかしながら、そのような有機バインダを用いた場合、感光性導電ペースト中の導体として、多価金属、とくに銅を選択すると、溶液中に溶出した銅のイオンと、プロトン遊離後に生成される有機バインダのアニオンとが反応して、イオン架橋による3次元ネットワークが形成されてゲル化が生じる。 感光性導電ペーストがゲル化すると、塗布することが困難になるばかりでなく、塗布することができたとしても現像が不安定になるという問題点がある。
    【0009】
    また、上述の、側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体を配合した感光性導電ペーストを用いると、露光に対する感度は上昇するものの、側鎖にエチレン性不飽和基を付加するにあたって不飽和グリシジル化合物を使用した場合には、ゲル化を促進するヒドロキシル基が生じるため、一層ゲル化が生じやすくなるという問題点がある。
    【0010】
    ゲル化を防止する方法として、例えば特開平9−218509号公報ではリン酸などのリン含有化合物を、特開平9−218508号公報ではベンゾトリアゾールなどのアゾール構造を持つ化合物を、特開平9−222723号公報では酢酸などのカルボキシル基を有する有機化合物を、それぞれゲル化抑制剤として含有させた感光性導電ペーストが開示されている。 しかしながら、これらのゲル化抑制剤を含有させる方法は、感光性導電ペーストがゲル化するまでの時間をいくらか延ばすことができるに過ぎず、これらのゲル化抑制剤を含有させたとしても、感光性導電ペーストの使用の困難性を解消することはできていないのが実情である。
    【0011】
    また、特開平10−171107号公報では、有機溶剤として、3−メチル−3−メトキシブタノールを使用することによってゲル化の防止を図っている。 しかしながら、乾燥状態のペースト中でもゲル化と似たような現象、すなわちイオン架橋による3次元ネットワークが形成されて実質的な分子量が高くなるという現象が起こって、未露光部が現像液に溶出しなくなるというような問題が生じる場合がある。
    【0012】
    本願発明は、上記課題を解決するものであり、ゲル化が生じにくく、保存安定性に優れており、かつ、基板との密着が高く、微細かつ膜厚の大きいパターンを形成することが可能な感光性導電ペースト、及びそれを用いた回路基板及びセラミック多層基板の製造方法などを提供することを目的とする。
    【0013】
    【課題を解決するための手段】
    上記目的を達成するため、本願発明(請求項1)の感光性導電ペーストは、
    (a)表面酸化処理が施された卑金属粉末と、
    (b)酸性官能基を有する有機バインダと、
    (c)感光性有機成分と、
    (d)前記卑金属粉末表面に存在する金属水酸化物と反応してミクロゲルを形成する物質とを含有することを特徴としている。
    【0014】
    本願発明の感光性導電ペーストは、表面酸化処理が施された卑金属粉末とともに、卑金属粉末表面に存在する金属水酸化物と反応してミクロゲルを形成する物質を含有しているため、塗布前のペースト状態、及び塗布・乾燥後の塗膜状態のいずれにおいてもゲル化の発生を十分に抑制することが可能になる。 したがって、本願発明の感光性導電ペーストを用いることにより、微細で膜厚の大きい導体パターン(例えば回路や電極など)を効率よく形成することが可能になる。
    【0015】
    本願発明の感光性導電ペーストにおいて、ゲル化の発生が抑制されるのは、
    (1)卑金属粉末が表面酸化処理されており、卑金属粉末表面に存在する金属水酸化物の活性が低いこと、
    (2)卑金属粉末表面に存在する金属水酸化物と反応してミクロゲルを形成する物質が、卑金属粉末表面に存在する金属水酸化物と錯形成してミクロゲルを形成し、このミクロゲルが立体障害となり、卑金属水酸化物と有機バインダ中の酸性官能基が結合することを妨げることによるものと推測される。
    【0016】
    なお、本願発明の感光性導電ペーストにおいて、酸性官能基を有する有機バインダとは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基などのプロトンを遊離する性質のある官能基を有する物質からなる有機バインダ又は該官能基を有する物質を含む有機バインダを意味する広い概念であり、酸性官能基の具体的な種類に特別の制約はない。
    【0017】
    また、本願発明の感光性導電ペーストにおいて用いられている感光性有機成分とは、従来から公知の光重合性、もしくは光変性化合物のことであって、例えば、
    (1)不飽和基などの反応性官能基を有するモノマーやオリゴマーと、芳香族カルボニル化合物などの光ラジカル発生剤の混合物、
    (2)芳香族ビスアジドとホルムアルデヒドの縮合体などのいわゆるジアゾ樹脂、
    (3)エポキシ化合物などの付加重合性化合物とジアリルヨウドニウム塩などの光酸発生剤の混合物、
    (4)ナフトキノンジアジド系化合物、
    などが例示される。
    これらの感光性有機成分のうち、特に好ましいのは、不飽和基などの反応性官能基を有するモノマーやオリゴマーと、芳香族カルボニル化合物などの光ラジカル発生剤との混合物である。
    【0018】
    上記の光ラジカル発生剤としては、ベンジル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルジメチルケタール、2−n−ブトキシ−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3、3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2、4−ジメチルチオキサントン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2、2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−オン、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォルメート、1−フェニル−1、2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、ビス(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2、4、4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
    【0019】
    また、上記の反応性官能基含有モノマー及びオリゴマーとしては、ヘキサンジオールトリアクリレート、トリプロピレングリコールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート、1、3−ブタンジオールジアクリレート、1、4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化グリセリルトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1、4−ブタンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1、6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1、3−ブチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが例示される。
    【0020】
    また、本願発明による感光性導電ペーストにおいては、さらに紫外線吸収剤が含まれていることが望ましい。 紫外線吸収剤を含むことによって、光散乱による露光不良を最小限に抑えることが可能になる。 なお、紫外線吸収剤としては、アゾ系赤色顔料、アミン系赤色染料などが例示される。
    【0021】
    また、本願発明の感光性導電ペーストにおいては、基板との密着性を向上させる目的で、ガラス粉末やセラミック粉末などの無機成分を添加してもよい。 ガラス粉末としては、ホウ珪酸系ガラスなどの公知のガラス粉末を使用することが可能であり、また、セラミック粉末としては、アルミナやジルコニアなどをはじめ、結晶化ガラス系セラミック、ガラス複合系セラミック、非ガラス系セラミックなどの公知の低温焼結セラミック粉末を使用することが可能である。
    【0022】
    なお、本願発明の感光性導電ペーストには、さらに必要に応じて、重合禁止剤などの保存安定剤、酸化防止剤、染料、顔料、消泡剤、界面活性剤などを適宜、添加することも可能である。
    【0023】
    また、請求項2の感光性導電ペーストは、前記卑金属粉末表面に存在する金属水酸化物と反応してミクロゲルを形成する物質が、1分子中にヒドロキシル基を4つ以上有する多価アルコールであることを特徴としている。
    【0024】
    このような多価アルコールが含有されることにより、ミクロゲルの形成が促進され、感光性導電ペーストのゲル化が抑制、防止される。
    上記多価アルコールとしては、トレイトール、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、アドニトール、グルシトール、マンニトール、イジトール、タリトール、ガラクチトール、マリトール、ベルセイトール、ボレミトールなどが挙げられる。
    【0025】
    また、請求項3の感光性導電ペーストは、前記卑金属粉未表面に存在する金属水酸化物と反応してミクロゲルを形成する物質が、ポリエーテルエステル型界面活性剤であることを特徴としている。
    【0026】
    ポリエーテルエステル型界面活性剤が含有されることにより、ミクロゲルの形成が促進され、感光性導電ペーストのゲル化が抑制、防止される。
    【0027】
    また、請求項4の感光牲導電ペーストは、前記ポリエーテルエステル型界面活性剤が、前記卑金属粉末100重量部に対して0.05重量部〜2重量部含有されていることを特徴としている。
    【0028】
    ポリエーテルエステル型界面活性剤の含有量が0.05重量部未満であると、ゲル化防止の効果がそれほど期待できない。 一方、含有量が2重量部を超えると、ミクロゲルが大きくなり、かえって感光性導電ペーストがゲル化することがある。
    なお、感光性導電ペースト中に、上述した1分子中にヒドロキシル基を4つ以上有する多価アルコール、及び上述したポリエーテルエステル型界面活性剤を同時に添加すれば、さらに効果的にゲル化を防止できる。
    【0029】
    また、請求項5の感光性導電ペーストは、前記卑金属粉末が、Cu、Mo、Ni、W及びそれらの少なくとも1種を含有する合金からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴としている。
    【0030】
    本願発明の感光性導電ペーストにおいては、卑金属粉末として、種々のものを用いることが可能であるが、その中でも、Cu、Mo、Ni、W及びそれらの少なくとも1種を含有する合金を用いることにより、ゲル化の発生を十分に抑制して、微細で膜厚の大きい導体パターンを形成することが可能な感光性導電ペーストを確実に得ることが可能になる。
    上記卑金属粉末は球状であることが好ましく、平均粒径d 50が1μm〜5μm、比表面積が0.1〜2.0m /gであることが好ましい。 平均粒径、及び比表面積が上記範囲を外れると、パターン形成が困難になることがある。
    【0031】
    また、請求項6の感光性導電ペーストは、前記卑金属粉末として、卑金属粉末を酸素含有雰囲気中で室温以上の温度に加熱することにより表面酸化処理が施された卑金属粉末が用いられていることを特徴としている。
    【0032】
    卑金属粉末を酸素含有雰囲気中で室温以上の温度に加熱することにより、表面が酸化処理された卑金属粉末を効率よく得ることが可能になり、本願発明を実効あらしめることができる。
    卑金属粉末を表面酸化処理する方法として、酸素含有雰囲気中で加熱する方法が望ましいのは、この方法では、卑金属粉末表面の卑金属酸化物の状態を制御しやすく、卑金属粉末の表面に緻密な卑金属酸化物膜を形成することができることによる。
    【0033】
    また、請求項7の感光性導電ペーストは、前記卑金属粉末中の酸素含有量が0.4重量%〜1.2重量%であることを特徴としている。
    【0034】
    酸素含有量が0.4重量%未満であると、十分に卑金属粉末表面が酸化物で被覆されず、ゲル化防止の効果があまり得られないことがある。 一方、酸素含有量が1.2重量%を超えると、卑金属酸化物膜がもろくなり、ゲル化防止の効果があまり得られないことがある。
    【0035】
    また、請求項8の感光性導電ペーストは、前記酸性官能基を有する有機バインダが、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体であることを特徴としている。
    【0036】
    有機バインダとして、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体を用いることにより、ゲル化の発生を抑制しつつ、水もしくはアルカリ水溶液による現像を可能ならしめることができる。 また、このような有機バインダは感光性有機バインダとしても有用である。
    【0037】
    なお、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(有機バインダ)は、例えば、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物を共重合させることにより製造することができる。 不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸及びこれらの無水物などが挙げられる。 一方、エチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル、フマル酸モノエチルなどのフマル酸エステルなどが挙げられる。
    【0038】
    また、アクリル系共重合体としては、以下のような形態の不飽和結合を導入したものを使用してもよい。
    (1)前記アクリル系共重合体の側鎖のカルボキシル基に、これと反応可能な、例えばエポキシ基などの官能基を有するアクリル系モノマーを付加したもの。
    (2)側鎖のカルボキシル基の代わりにエポキシ基が導入されてなる前記アクリル系共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させた後、さらに飽和又は不飽和多価カルボン酸無水物を導入したもの。
    【0039】
    また、請求項9の感光性導電ペーストは、前記酸性官能基を有する有機バインダが、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体であって、さらに該カルボキシル基に不飽和グリシジル化合物を付加反応させることにより不飽和結合が導入されたものであることを特徴としている。
    【0040】
    カルボキシル基を有するアクリル系共重合体の、該カルボキシル基に不飽和グリシジル化合物を付加反応させることにより不飽和結合を導入した有機バインダを用いた場合、露光に対する感度を上昇させることが可能になり、本願発明をより実効あらしめることができるようになる。
    従来の感光性導電ペーストにおいては、不飽和グリシジル化合物を使用した場合、ゲル化を促進するヒドロキシル基が生じるため、一層ゲル化が発生しやすくなり、保存安定性が低下するという問題点があるが、本願発明の感光性導電ペーストにおいては、卑金属粉末として表面酸化処理が施されたものを用いるとともに、4価以上の多価アルコールを配合するようにしているので、ゲル化が抑制され、十分な保存安定性を確保することが可能で、上述のような保存安定性の低下が問題となることはない。
    したがって、本願発明の感光性導電ペーストにおいては、アクリル共重合体に付加することが可能な不飽和基含有グリシジル化合物の量に特別の制約はなく、アクリル共重合体がアルカリ可溶(すなわち、現像液に可溶)である程度に、付加反応後にカルボキシル基が残存していればよい。
    【0041】
    なお、カルボキシル基に不飽和グリシジル化合物を付加反応させることにより、不飽和結合を導入するにあたっては、不飽和グリシジル化合物として、特開2000−204130号公報に記載されているように、不飽和基含有脂環式グリシジル化合物などを用いることが可能である。 不飽和基含有脂環式グリシジル化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、又は、それらのカプロラクトン変性物が好ましく、中でも、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートが最も好ましい。
    【0042】
    また、請求項10の感光性導電ペーストは、ジオール化合物がさらに添加されていることを特徴としている。
    【0043】
    ジオール化合物を添加した場合、ジオール化合物が卑金属粉末表面に存在する金属水酸化物と水素結合を形成して、金属水酸化物と有機バインダ中の酸性官能基が結合することを抑制するため、さらに確実にゲル化の発生を抑制することが可能になる。
    また、好ましいジオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ブテンジオール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどが例示される。
    【0044】
    また、請求項11の感光性導電ペーストは、アニオン吸着性物質がさらに添加されていることを特徴としている。
    【0045】
    感光性導電ペーストに多価金属成分が含まれる場合には、有機バインダ中の酸性官能基と反応してゲル化を生じることがあるが、アニオン吸着性物質は、有機バインダ中の酸性官能基と結合して、金属水酸化物と有機バインダ中の酸性官能基が結合することを妨げるため、ゲル化の発生をさらに確実に抑制することが可能になる。
    【0046】
    なお、アニオン吸着性物質は、無機微粒子や有機微粒子の形態をとるものであってよい。 無機微粒子としては、ハイドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、リン酸ジルコニウム、含水酸化アンチモンなどが好適である。 また、有機微粒子としては、アニオン交換性樹脂などを用いることが可能で、例えば、
    (1)ジビニルベンゼンと、アクリレート、メタクリレート又はアクリロニトリルとの共重合体を母体に、1級、2級、3級又は4級アミノ基をイオン交換基として導入したもの、
    (2)ビニルベンゼンと、アクリレート、メタクリレート又はアクリロニトリルとの共重合体を母体に、1級、2級、3級又は4級アミノ基をイオン交換基として導入したもの、
    (3)トリメチロールプロパントリメタクリル酸エステルと、アクリレート、メタクリレート又はアクリロニトリルとの共重合体を母体に、1級、2級、3級又は4級アミノ基をイオン交換基として導入したもの、
    (4)エチレングリコールジメタクリル酸エステルと、アクリレート、メタクリレート又はアクリロニトリルとの共重合体を母体に、1級、2級、3級又は4級アミノ基をイオン交換基として導入したものなどが挙げられる。
    【0047】
    また、請求項12の感光性導電ペーストは、前記アニオン吸着性物質が、ハイドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、りん酸ジルコニウム及び含水酸化アンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴としている。
    【0048】
    上述のように、アニオン吸着性物質としては種々のものを用いることが可能であるが、ハイドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、りん酸ジルコニウム及び含水酸化アンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることにより、多価金属成分と有機バインダ中の酸性官能基との反応を効率よく抑制して、ゲル化をさらに確実に抑制することが可能になる。
    【0049】
    また、本願発明(請求項13)の回路基板の製造方法は、請求項1〜12のいずれかに記載の感光性導電ペーストを用いて導体パターンを形成する工程を備えていることを特徴としている。
    【0050】
    本願発明(請求項1〜12)の、ゲル化の生じにくい感光性導電ペーストを用いて導体パターンを形成する(通常は、感光性導電ペーストを塗布し、露光、現像を行う工程を経て形成したパターンを焼成することにより形成する)ことにより、従来の感光性導電ペーストを用いた場合には実現することができなかったような高精度、高密度の導体パターン(例えば回路や電極など)を備えた回路基板を得ることが可能になる。
    なお、本願発明において、導体パターンとは、回路や電極などを含む広い概念であり、その具体的な形状や機能などに特別の制約はない。
    【0051】
    また、本願発明(請求項14)の回路基板の製造方法は、
    請求項1〜12のいずれかに記載の感光性導電ペーストを支持体上に塗布する工程と、
    前記感光性導電ペーストを露光、現像して前記支持体上に所定のパターンを形成する工程と、
    前記支持体上に形成された前記パターンを基板上に転写する工程と、
    前記パターンを焼成する工程とを具備することを特徴としている。
    【0052】
    本願発明(請求項14)の回路基板の製造方法においては、請求項1〜12の感光性導電ペーストが用いられているので、感光性導電ペーストのゲル化及び塗布・乾燥後の塗膜のゲル化を抑制して、転写法により所望のパターンを基板上に形成することが可能になり、従来の感光性導電ペーストを用いた場合には実現することができなかったような高精度、高密度の導体パターン(例えば回路や電極など)を備えた回路基板を効率よく製造することが可能になる。
    【0053】
    また、請求項15の回路基板は、請求項13又は14記載の回路基板の製造方法により製造されたものであることを特徴としている。
    【0054】
    請求項13又は14の方法により製造された回路基板は、形状精度及び寸法精度が高く、膜厚の大きいパターンを備えており、小型、高性能の回路基板を提供することが可能になる。
    【0055】
    また、本願発明(請求項16)のセラミック多層基板の製造方法は、請求項1〜12のいずれかに記載の感光性導電ペーストを用いて導体パターンを形成する工程を備えていることを特徴としている。
    【0056】
    基板上に、本願発明(請求項1〜12)の、ゲル化の生じにくい感光性導電ペーストを用いて導体パターンを形成する(通常は、感光性導電ペーストを塗布し、露光、現像を行う工程を経て形成したパターンを焼成することにより形成する)ことにより、従来の感光性導電ペーストを用いた場合には実現することができなかったような高精度、高密度の導体パターン(例えば回路や電極など)を備えたセラミック多層基板を効率よく製造することが可能になる。
    【0057】
    本願発明(請求項17)のセラミック多層基板の製造方法は、
    請求項1〜12のいずれかに記載の感光性導電ペーストを支持体上に塗布する工程と、
    前記感光性導電ペーストを露光、現像して前記支持体上に所定のパターンを形成する工程と、
    前記支持体上に形成された前記パターンをセラミックグリーンシート上に転写する工程と、
    前記パターンが転写されたセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成する工程と、
    前記積層体を焼成する工程とを具備することを特徴としている。
    【0058】
    本願発明(請求項17)のセラミック多層基板の製造方法においては、請求項1〜12の感光性導電ペーストが用いられているので、感光性導電ペーストのゲル化及び塗布・乾燥後の塗膜のゲル化を抑制して、転写法により所望のパターンをセラミックグリーンシート上に形成することが可能になり、このセラミックグリーンシートを積層して形成した積層体を焼成することにより、従来の感光性導電ペーストを用いた場合には実現することができなかったような高精度、高密度の導体パターン(例えば回路や電極など)を備えたセラミック多層基板を効率よく製造することが可能になる。
    【0059】
    【発明の実施の形態】
    以下、本願発明の実施の形態を示して、その特徴とするところをさらに詳しく説明する。
    【0060】
    [実施形態1]
    卑金属粉末(銅粉末)、有機バインダ、反応性官能基含有モノマー、光重合開始剤、有機溶剤、多価アルコール、紫外線吸収剤、及びアニオン吸着性微粒子として、以下のものを準備した。
    【0061】
    <卑金属粉末>
    (a)銅粉末A:銅粉末を空気中、200℃・70RH%の条件下で10時間放置し、表面を酸化処理したもの(酸素含有量0.5重量%、平均粒径3μm、球状)
    (b)銅粉末B:粒径0.1μm以下のCuO粉末を表面に吹き付けることにより、CuOで被覆したもの(酸素含有量0.5重量%、平均粒径3μm、球状)
    (c)銅粉末C:酸化処理を行っていないもの(酸素含有量0.2重量%、平均粒径3μm、球状)
    (d)銅粉末D:銅粉末を酸素含有雰囲気中、200℃・70RH%の条件下で放置し、表面を酸化処理したもの(酸素含有量0.3重量%、平均粒径3μm、球状)
    (e)銅粉末E:銅粉末Cと同じ条件で表面を酸化処理したもの(酸素含有量1.0重量%、平均粒径3μm、球状)
    (f)銅粉末F:銅粉末Cと同じ条件で表面を酸化処理したもの(酸素含有量1.5重量%、平均粒径3μm、球状)
    <有機バインダ>
    ポリマー:メタクリル酸及びメタクリル酸メチルを、共重合割合が重量基準で25/75(メタクリル酸/メタクリル酸メチル)となるように共重合させた後、メタクリル酸に対して、0.2倍モル量のエポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートを付加反応させたアクリル系共重合体(重量平均分子量M =20000、酸価=118)
    <反応性官能基含有モノマー>
    モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート<光重合開始剤>
    開始剤A:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン開始剤B:2,4−ジエチルチオキサントン<有機溶剤>
    有機溶剤A:ペンタメチレングリコール(ジオール化合物)
    有機溶剤B:エチルカルビトールアセテート<多価アルコール>
    多価アルコールA:グルシトール(1分子中にヒドロキシル基6つ)
    多価アルコールB:トレイトール(1分子中にヒドロキシル基4つ)
    多価アルコールC:グリセリン (1分子中にヒドロキシル基3つ)
    <紫外線吸収剤>
    紫外線吸収剤:アゾ系赤色顔料<アニオン吸着性微粒子>
    ハイドロキシアパタイト【0062】
    上記各材料を下記の表1に示す組成となるように、秤量、混合し、3本ロールミルによる混練を行い、感光性導電ペーストの試料1〜12を作製した。
    次に、感光性導電ペーストの試料1〜12を、アルミナ基板上にスピンコーターによって塗布し、これを100℃にて1時間乾燥して、20μmの厚の塗膜を形成した。
    【0063】
    それから、得られた塗膜を24時間放置した後、露光処理を行った。 なお、この実施形態1では、ラインとスペースの比(ライン/スペース(L/S))=20/20(μm)のパターンが描画されたマスクを通して、高圧水銀灯の光線を250mJ/cm の露光量で照射した。
    【0064】
    その後、炭酸ナトリウム水溶液による現像処理を行うことにより、L/S=20/20(μm)のパターンを得た。
    そして、脱脂処理を施した後、900℃、N 雰囲気中で焼成して、L/S=10/30(μm)の導体パターン(銅パターン)を形成した。
    【0065】
    ここで、上記各試料について、温度20℃の空気中における、作製直後、1日後、3日後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後の各時点における保存状態(ゲル化の発生の有無)を観察した。 そして、各試料においてゲル化が生じるまでの日数(ゲル化日数)を測定した。 その結果を表1に示す。 なお、表1において、試料番号に*印を付したものは、本願発明の範囲外である。
    【0066】
    【表1】

    【0067】


    表1に示すように、試料1〜5,8,10〜12では、表面酸化処理が施された鋼粉末(卑金属粉末)を用いるとともに、1分子中にヒドロキシル基を4つ以上有する多価アルコールを添加するようにしてため、ペースト寿命が長くなっている。


    特に、試料1は、作製直後から6週間が経過するまでのいずれの時点においても、絶縁性基板上にスピンコーターによる塗布を行い、かつ、フォトリソグラフィ法によるパターン形成を行うことが可能であった。 但し、6週間を超えると、ゲル化の発生が認められるようになった。


    これに対して、試料6,7では1分子中にヒドロキシル基を4つ以上有する多価アルコールが含まれておらず、試料9では表面酸化処理が施された鋼粉末(卑金属粉末)が含まれていないため、ペースト寿命が大幅に短くなっている。


    試料2,4,5は、ジオール化合物を含まないため、試料1に比べてペースト寿命が短くなっている。 試料3は、アニオン吸着性微粒子を含まないため、試料1に比べてペースト寿命が短くなっている。


    また、試料1,10〜12と試料8とを比較すると、銅粉末を酸素含有雰囲気中で室温以上の温度に加熱した方が、ゲル化防止の効果が高いことがわかる。 また、試料1,11と試料10,12とを比較すると、銅粉末中の酸素含有量が0.4重量%〜1.2重量%の範囲において、ゲル化防止の効果が高いことがわかる。


    また、試料4と試料7との比較、及び試料2と試料5との比較から、1分子中にヒドロキシル基が3つしかない多価アルコールでは、ゲル化を防止する効果が期待できないことがわかる。


    【0068】


    [実施形態2]


    卑金属粉末(銅粉末)、有機バインダ、反応性官能基含有モノマー、光重合開始剤、有機溶剤、多価アルコール、紫外線吸収剤、及びアニオン吸着性徴粒子として、実施形態1と同じものを準備し、さらに、ガラス粉末、有機溶剤、分散剤、及び有機系チクソトロピック剤として、以下のものを準備した。


    ガラス粉末:SiO

    −Bi

    −B

    ガラス(平均粒径3μm、球状)


    有機溶剤C:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル分散剤 :フローレンG600(共栄社化学製)


    チクソトロピック剤A:ポリエーテルエステル型界面活性剤(楠本化成製、ディスパロン3600N)


    チクソトロピック剤B:脂肪酸アミドワックス(楠本化成製、ディスパロン6900−20X)


    【0069】


    上記各材料を下記の表2及び表3に示す組成となるように、秤量、混合し、3本ロールミルによる混練を行い、感光性導電ペ一ストの試料13〜33を作製した。


    【0070】


    次に、各試料について実施形態1と同様の評価を行った。 その結果を表2及び表3に示す。 なお、表2及び表3において、試料番号に*印を付したものは、本願発明の範囲外である。


    【0071】


    【表2】


    【0072】


    【表3】


    【0073】


    表2,3に示すように、試料13,15〜20,22,24〜33においては、表面酸化処理が施された銅粉末(卑金属粉末)を用いるとともに、ポリエーテルエステル型界面活性剤を添加しているため、ペースト寿命が長くなっている。 特に、試料32は、ポリエーテルエステル型界面活性剤に加えて、さらに、ジオール化合物、及び1分子中にヒドロキシル基を4つ以上有する多価アルコールを添加しているため、最もペースト寿命が長くなっている。


    これに対して、試料14,21ではポリエーテルエステル型界面活性剤が含まれておらず、試料23では表面酸化処理が施きれた銅粉末(卑金属粉末)が含まれていないため、ペースト寿命が大幅に短くなっている。


    試料15,20は、銅粉末100重量部に対して、ポリエーテルエステル型界面活性剤の含有量が0.05重量部未満であるか、又は2重量部を超えているため、試料13,16〜19に比べてペーストの寿命が短くなっている。


    また、試料13,24〜26と試料22とを比較すると、銅粉末を酸素含有雰囲気中で室温以上の温度に加熱した方が、ゲル化防止の効果が高いことがわかる。


    また、試料13,25と試料24,26とを比較すると、銅粉末中の酸素含有量は0.3重量%〜1.5重量%の範囲が好ましく、さらには、銅粉末中の酸素含有量が0.4重量%〜1.2重量%の範囲において、高いゲル化防止効果が得られることがわかる。


    また、試料28と試料30との比較、及び試料28と試料31との比較から、1分子中にヒドロキシル基が3つしかない多価アルコールでは、ゲル化を防止する効果が期待できないことがわかる。


    なお、試料27と試料33とを比較すると、アニオン吸着性微粒子が含まれることによりゲル化防止の効果が高まることがわかる。


    【0074】


    [実施形態3(回路基板)]


    次に、本願発明の感光性導電ペーストを用いて、所定のパターンを形成する工程を経て製造された回路基板について説明する。 ここでは、回路基板としてチップコイルを例にとって、図1及び図2を参照しつつ説明する。


    【0075】


    このチップコイル1(図1)は、図2に示すように、内部電極4a、4b、4c及び4dがそれぞれ形成されたアルミナなどからなる絶縁体層2a,2b、2c、2d及び2eが順次積層された積層体(積層基板)2(図1)の側面に、外部電極3a、3b(図1)が配設された構造を有している。


    【0076】


    すなわち、積層基板2の内部には、コイルパターンを形成する内部電極4a、4b、4c及び4dが、絶縁体層2a−絶縁体層2b間、絶縁体層2b−絶縁体層2c間、絶縁体層2c−絶縁体層2d間、絶縁体層2d−絶縁体層2e間にそれぞれ設けられており、絶縁体層2a−絶縁体層2b間に設けられる内部電極4aは外部電極3a(図1)に、絶縁体層2d−絶縁体層2e間に設けられる内部電極4dは外部電極3b(図1)にそれぞれ接続されている。


    【0077】


    さらに、絶縁体層2a−絶縁体層2b間に設けられる内部電極4aは、絶縁体層2bに形成されたビアホール(図示せず)を介して、絶縁体層2b−絶縁体層2c間に設けられた内部電極4bと電気的に接続されており、同様に、内部電極4bと内部電極4c、及び内部電極4cと内部電極4dとが、それぞれ絶縁体層2c、2dに形成されたビアホール(図示せず)を介して電気的に接続されている。


    【0078】


    次に、このチップコイル1の製造方法について説明する。


    (1)まず、本願発明の感光性導体ペースト(例えば上記実施例1の感光性導電ペースト)を用い、感光性ペースト法により、アルミナなどの絶縁体層(絶縁性基板)2a上に所望の導体パターンを形成する。


    次いで、脱脂処理後、例えば空気中、850℃で1時間程度焼成して、スパイラル状の内部電極4aを形成する。


    【0079】


    (2)次いで、無機粉末としてガラス粉末を使用した感光性絶縁体ペーストを用い、感光性ペースト法により、内部電極4aの形成された絶縁性基板2a上に絶縁体ペースト層を形成する。 この絶縁体ペースト層には、感光性ペースト法によって、例えば直径50μmのビアホール用パターンを形成しておく。 さらに、大気中、所定温度で焼成して、ビアホール用貫通孔(図示省略)を有する絶縁体層2bを形成する。


    【0080】


    (3)それから、ビアホール用貫通孔に導体ペーストを充填、乾燥し、内部電極4aの一端と内部電極4bの一端とを接続するためのビアホール(図示省略)を形成した後、上記(1)において内部電極4aを形成した手法と同様の手法で、スパイラル状の内部電極4bを形成する。


    【0081】


    (4)次いで、同様にして、絶縁体層2c、内部電極4c、絶縁体層2d、内部電極4dを形成する。 そして、保護用の絶縁体層2eを形成し、さらに、外部電極3a及び3bを設けることによって、図1に示すような、内部電極と絶縁体層が積層された構造を有するチップコイル1が得られる。


    【0082】


    本願発明の感光性導電ペーストは、ゲル化が生じにくく、露光に対する感度が良好であるため、上述のように、本願発明の感光性導電ペーストを用いて導体パターンを形成することにより、形状精度に優れた、緻密な導体パターン(例えば回路や電極など)を形成することが可能になり、小型、高性能の回路基板を効率よく製造することが可能になる。


    【0083】


    なお、本願発明は、チップコイルに限らず、チップコンデンサ、チップLCフィルタなどの高周波回路用電子部品、あるいは、高周波モジュール(例えば、VCO(Voltage Controlled Oscillator)やPLL(Phase Locked Loop)など)のような高周波回路基板などにも適用することが可能である。


    【0084】


    [実施形態4(セラミック多層基板)]


    次に、本願発明の感光性導電ペーストを用いて形成されたセラミック多層基板について図3を参照しつつ説明する。


    【0085】


    図3に示すセラミック多層基板11は、絶縁体層12a、12b、12c、12d、及び12eと、誘電体層13a及び13bを積層してなる多層回路基板である。 また、セラミック多層基板11の内部には、内層導体パターン14a,14b,14cやビアホール15によって、コンデンサパターン、コイルパターン、ストリップラインなどが形成されている。 さらに、セラミック多層基板11の一方主面上には、半導体IC17、チップコンデンサなどのチップ部品18、厚膜抵抗体19などが設けられており、表層導体パターン16や内層導体パターン14a,14b,14cなどにそれぞれ接続されている。


    【0086】


    次に、このセラミック多層基板11を製造する方法について説明する。


    【0087】


    (1)にあたっては、まず、無機粉末として導電性粉末を使用した感光性導体ペーストによる感光性ペースト法により、所望のパターンが形成された絶縁体セラミックグリーンシート及び誘電体セラミックグリーンシートを作製する。


    【0088】


    (2)それから、導体パターンやビアホールが形成されたセラミックグリーンシートを積み重ね、圧着した後、所定温度にて焼成する。


    【0089】


    (3)次いで、上記(1)の場合と同様に、感光性ペースト法により、表層導体パターン16を形成した後、チップ部品18、半導体IC17を搭載し、厚膜抵抗体19を印刷する。


    これにより、図3に示すような構造を有するセラミック多層基板11が得られる。


    【0090】


    上述の製造方法によれば、内層導体パターン14a,14b,14cや表層導体パターン16を形成するのに、感光性ペースト法を使用した、本願発明のパターン形成方法を用いているので、均一かつ微細な導体パターンを形成することができる。


    【0091】


    なお、セラミック多層基板は、チップコンデンサ、チップLCフィルタなどの高周波回路用電子部品に限らず、高周波モジュール(例えば、VCO(Voltage Controlled Oscillator)やPLL(Phase Locked Loop)など)のような高周波回路基板にも適用することが可能である。


    【0092】


    なお、本願発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。


    【0093】


    【発明の効果】


    上述のように、本願発明(請求項1)の感光性導電ペーストは、表面酸化処理が施された卑金属粉末とともに、卑金属粉末表面に存在する金属水酸化物と反応してミクロゲルを形成する物質を含有しているため、塗布前のペースト状態、及び塗布・乾燥後の塗膜状態のいずれにおいてもゲル化の発生を十分に抑制することが可能になる。 したがって、本願発明の感光性導電ペーストを用いることにより、微細で膜厚の大きい導体パターン(例えば回路や電極など)を効率よく形成することが可能になる。


    【0094】


    また、請求項2の感光性導電ペーストにおいては、卑金属粉末表面に存在する金属水酸化物と反応してミクロゲルを形成する物質として、1分子中にヒドロキシル基を4つ以上有する多価アルコールを用いた場合、ミクロゲルの形成を促進して、感光性導電ペーストのゲル化を防止することができるようになる。


    【0095】


    また、請求項3の感光性導電ペーストのように、卑金属粉末表面に存在する金属水酸化物と反応してミクロゲルを形成する物質として、ポリエーテルエステル型界面活性剤を用いた場合、ミクロゲルの形成を促進して、感光性導電ペーストのゲル化を防止することが可能になる。


    【0096】


    また、請求項4の感光性導電ペーストのように、ポリエーテルエステル型界面活性剤の含有量を、0.05重量部〜2重量部の範囲とした場合、ミクロゲルが大きくなり、かえって感光性導電ペーストがゲル化しやすくなることを防止しつつ、十分なゲル化防止の効果を得ることが可能になる。


    【0097】


    また、本願発明においては、卑金属粉末として、種々のものを用いることが可能であるが、その中でも、請求項5の感光性導電ペーストのように、Cu、Mo、Ni、W及びそれらの少なくとも1種を含有する合金を用いることにより、ゲル化の発生を十分に抑制して、微細で膜厚の大きい導体パターンを形成することが可能な感光性導電ペーストを確実に得ることができるようになる。


    【0098】


    また、請求項6の感光性導電ペーストのように、酸素含有雰囲気中で室温以上の温度に加熱処理した卑金属粉末を用いることにより、表面が確実に酸化処理されたを卑金属粉末を含有し、所望の特性を有する感光性導電ペーストを得ることが可能になり、本願発明を実効あらしめることができる。


    卑金属粉末を表面酸化処理する方法として、酸素含有雰囲気中で加熱する方法が望ましいのは、卑金属粉末表面の卑金属酸化物の状態を制御しやすく、卑金属粉末の表面に緻密な卑金属酸化物膜を形成することができることによる。


    【0099】


    また、請求項7の感光性導電ペーストのように、卑金属粉末中の酸素含有量を、0.4重量%〜1.2重量%の範囲とすることにより、酸素含有量が多くなりすぎることによる卑金属酸化物膜の脆弱化を招くことなく、卑金属粉末表面を十分に酸化物で被覆して、確実にゲル化防止の効果を得ることが可能になる。


    【0100】


    また、請求項8の感光性導電ペーストのように、有機バインダとして、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体を用いることにより、ゲル化の発生を抑制しつつ、水もしくはアルカリ水溶液による現像を可能ならしめることができる。 また、このような有機バインダは感光性有機バインダとしても有用である。


    【0101】


    また、請求項9の感光性導電ペーストのように、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体の、該カルボキシル基に不飽和グリシジル化合物を付加反応させることにより不飽和結合を導入した有機バインダを用いた場合、露光に対する感度を上昇させることが可能になり、本願発明をより実効あらしめることができるようになる。


    【0102】


    また、請求項10の感光性導電性ペーストのように、ジオール化合物を添加した場合、ジオール化合物が卑金属粉末表面に存在する金属水酸化物と水素結合を形成して、金属水酸化物と有機バインダ中の酸性官能基が結合することを抑制するため、さらに確実にゲル化の発生を抑制することが可能になる。


    【0103】


    また、請求項11の感光性導電ペーストのように、感光性導電ペーストに多価金属成分が含まれる場合には、有機バインダ中の酸性官能基と反応してゲル化を生じることがあるが、アニオン吸着性物質は、有機バインダ中の酸性官能基と結合して、金属水酸化物と有機バインダ中の酸性官能基が結合することを妨げるため、ゲル化の発生をさらに確実に抑制することが可能になる。


    【0104】


    また、請求項12の感光性導電ペーストのように、アニオン吸着性物質として、ハイドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、りん酸ジルコニウム及び含水酸化アンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いた場合、多価金属成分と有機バインダ中の酸性官能基との反応を効率よく抑制して、ゲル化をさらに確実に抑制することが可能になる。


    【0105】


    また、本願発明(請求項13)の回路基板の製造方法は、本願発明(請求項1〜12)の、ゲル化の生じにくい感光性導電ペーストを用いて導体パターンを形成する(通常は、感光性導電ペーストを塗布し、露光、現像を行う工程を経て形成したパターンを焼成することにより形成する)ようにしているので、従来の感光性導電ペーストを用いた場合には実現することができなかったような高精度、高密度の導体パターン(例えば回路や電極など)を備えた回路基板を得ることが可能になる。


    【0106】


    また、本願発明(請求項14)の回路基板の製造方法は、請求項1〜12の感光性導電ペーストを用いるようにしているので、感光性導電ペーストのゲル化及び塗布・乾燥後の塗膜のゲル化を抑制して、転写法により所望のパターンを基板上に形成することが可能になり、従来の感光性導電ペーストを用いた場合には実現することができなかったような高精度、高密度の導体パターン(例えば回路や電極など)を備えた回路基板を効率よく製造することが可能になる。


    【0107】


    また、本願発明(請求項15)の回路基板は、請求項13又は14記載の方法により製造されたものであって、形状精度及び寸法精度が高く、膜厚の大きいパターンを備えており、小型、高性能の回路基板を提供することが可能になる。


    【0108】


    また、本願発明(請求項16)のセラミック多層基板の製造方法は、基板上に、本願発明(請求項1〜12)の、ゲル化の生じにくい感光性導電ペーストを用いて導体パターンを形成する(通常は、感光性導電ペーストを塗布し、露光、現像を行う工程を経て形成したパターンを焼成することにより形成する)ようにしているので、従来の感光性導電ペーストを用いた場合には実現することができなかったような高精度、高密度の導体パターン(例えば回路や電極など)を備えたセラミック多層基板を効率よく製造することができる。


    【0109】


    本願発明(請求項17)のセラミック多層基板の製造方法は、請求項1〜12の感光性導電ペーストを用いるようにしているので、感光性導電ペーストのゲル化及び塗布・乾燥後の塗膜のゲル化を抑制して、転写法により所望のパターンをセラミックグリーンシート上に形成することが可能になり、このセラミックグリーンシートを積層した積層体を焼成することにより、従来の感光性導電ペーストを用いた場合には実現することができなかったような高精度、高密度の導体パターン(例えば回路や電極など)を備えたセラミック多層基板を効率よく製造することができる。


    【0110】


    【図面の簡単な説明】


    【図1】本願発明の一実施形態にかかる回路基板(チップコイル)を示す概略図である。


    【図2】本願発明の一実施形態にかかる回路基板(チップコイル)の構成を示す分解斜視図である。


    【図3】本願発明の一実施形態にかかるセラミック多層基板を示す概略断面図である。


    【符号の説明】


    1 チップコイル2 積層体(積層基板)


    2a,2b、2c、2d,2e 絶縁体層3a、3b 外部電極4a、4b、4c,4d 内部電極11 セラミック多層基板12a、12b、12c、12d、12e 絶縁体層13a,13b 誘電体層14a,14b,14c 内層導体パターン15 ビアホール16 表層導体パターン17 半導体IC


    18 チップ部品19 厚膜抵抗体

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