【0001】 (技術分野) 本発明は、液状コーティング剤を放射線重合することにより、多孔性および/または吸収性材料上にコーティングを製造する方法に関する。 【0002】 (背景技術) 放射線により硬化できる低粘度の(メタ)アクリレートに基づくコーティング剤は、例えばDE−A−3706355から知られている。 典型的には、1000mPaより低い動力学粘度を有するコーティング剤が、例えばローリングなどの種々の方法で、溶剤を使用することなく、且つ光開始剤および場合により添加剤を添加して、コーティングすべき基材に適用され、UV照射の作用により硬化される。 【0003】 コーティングされる基材が多孔性および/または吸収性の特性を有する材料である場合、薄層塗布にとって重要であるコーティング剤の低い粘度は不利である。 更に、低粘度の液状コーティング剤は基材に浸透し、続いて照射した場合、浸透したコーティング剤の一部には、放射線が全くまたは完全には到達しないので、全くまたは完全には硬化しない。 未硬化で液体のままの成分は、コーティングの品質に悪影響を与える。 とりわけ「汗かき」として当業者に知られている現象が生じる。 この現象では、液体成分が硬化フィルムを通ってしみ出し、コーティングの表面で目視されるようになる。 このような効果は、非常に短時間、例えば数時間後に、またはより長い期間、例えば数ヶ月後に、生じることがある。 【0004】 (発明の開示) 本発明の目的は、多孔性または吸収性材料上にコーティング剤を塗布して、その後UV照射により硬化することにより、未硬化成分の汗かきを抑制するコーティングの製造方法を提供することである。 【0005】 この目的は、チキソトロープ剤として通常用いられ、ポリアミド若しくはオリゴマー状またはポリマー状脂肪酸アミドの群に属するある種の添加剤により達成することができることを見出した。 【0006】 本発明は、(メタ)アクリロイル基を有し、2000mPas未満の動力学粘度を持つ少なくとも一つの成分を含む液状コーティング剤を塗布し、次いで放射線重合することからなる、多孔性および/または吸収性材料上でのコーティングの製造方法であって、コーティング剤が、ポリアミドおよび/若しくはオリゴマー状またはポリマー状脂肪酸アミドからなる群から選ばれる添加剤を、不揮発性含料に対して0.1〜10質量%含むことを特徴とする製造方法に関する。 【0007】 照射により硬化できる液体コーティング剤は既知であり、例えば、P. K. T. Oldring 編、Chemistry & Technology of UV and EB Formulations for Coatings, Inks and Paints, 第2巻, 1991, SITA Technology, London, 31−235頁に記載されている。 エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート並びにアミン変性および未変性ポリエーテルアクリレートが、例として示されている。 そのような生成物は市販されており、組成に依存して約100mPas〜約100000mPasの間で変化する粘度を有する。 それらは、単独またはブレンドとして使用される。 【0008】 通常、高粘度のコーティング剤は、UV硬化の間に(共)重合する希釈剤と混合される。 そのような希釈剤は、P. K. T. Oldring 編、Chemistry & Technology of UV and EB Formulations for Coatings, Inks and Paints, 第2巻, 1991, SITA Technology, London, 237−285頁に記載されている。 アクリル酸またはメタクリル酸のエステルが、例として示され、下記のアルコールのアクリル酸エステルが好ましい。 一価アルコールは、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノールおよびデカノール(これらの異性体を含む)、さらに、イソボルノール、シクロヘキサノールおよびアルキル化シクロヘキサノール、ジシクロペンタノールなどの脂環式アルコール、並びにフェノキシエタノールおよびノニルフェニルエタノールなどのアリール脂肪族アルコール、加えてテトラヒドロフルフリルアルコールである。 これらのアルコールのアルコキシル化誘導体も用いることができる。 二価アルコールは、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール,ジプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチルヘキサンジオールおよびトリプロピレングリコール或いはこれらのアルコールのアルコキシル化誘導体である。 好ましい二価アルコールは、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールである。 三価アルコールは、グリセリンまたはトリメチロールプロパンまたはこれらのアルコキシル化誘導体である。 プロポキシル化グリセリンが好ましい。 多価アルコールとして、ペンタエリトリットまたはジメチロールプロパンまたはそれらのアルコキシル化誘導体などのアルコールを使用できる。 【0009】 本発明の方法に用いるコーティング剤は、2000mPas未満、好ましくは1000mPas未満、特に好ましくは500mPas未満の動力学粘度を持つ、(メタ)アクリロイル基を有する成分を少なくとも一つ含む。 【0010】 本発明の方法に用いられるコーティング剤は、例えばUVなどの高エネルギー放射線による照射後にラジカル重合を開始することができる既知の開始剤を含む。 そのような光開始剤は、例えば、P. K. T. Oldring 編、Chemistry & Technology of UV and EB Formulations for Coatings, Inks and Paints, 第3巻, 1991, SITA Technology, London, 61−325頁に記載されている。 それらは、液状コーティング剤に対して0.1〜10質量部、好ましくは2〜7質量部、特に好ましくは3〜4質量部の量で用いられる。 【0011】 コーティング剤は、ポリアミド或いはオリゴマー状またはポリマー状脂肪酸アミドからなるの群から選ばれる添加剤を、不揮発成分に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜5質量%、特に好ましくは0.5〜2質量%の量で含む。 例えば、本発明に用いるポリアミドは、例えば Crayvallac Super (登録商標) (Lubrizol Coating Additives GmbH, Ritterhude, ドイツ)、または Disparlon (登録商標) 6200, 6500または6600 (C. H. Erbsloeh, Krefeld, ドイツ)の名称で入手可能であるワックス状ポリアミドポリマーおよび/または脂肪酸変性ポリアミドである。 脂肪酸アミドは、例えばDE−A3135183に記載されている。 オリゴマー状またはポリマー状の脂肪酸アミド、例えばCrayvallac(登録商標)MTおよびCrayvallac(登録商標)SF(アミド変性、水素化ヒマシ油生成物、Lubrizol Coating Additives GmbH, Ritterhude,ドイツ)も市販されている。 他の多くのチキソトロープ剤が本発明の方法において効果は無く適していないことから、本発明により達成されるこれら生成物の効果は驚くべきものである。 【0012】 本発明により調製されるコーティング剤は、殆どの多様な助剤および添加剤と混合することもできる。 これら助剤および添加剤には、充填剤、顔料、染料、滑剤、艶消剤および均展剤が含まれ、通常の量で用いられる。 ラジカル重合に不活性である溶剤も用いられてよい。 本発明の方法は、コーティングおよび硬化工程の間に、液状コーティングからの溶剤の排出または蒸発を含む。 【0013】 本発明の方法は、例えば、紙、ボール紙、皮革、布、木材、例えばファイバーボードなどの木製材料、セラミックまたは無機材料などの、吸収性および/または多孔性材料上で、また多孔性プラスチック上で、高品質コーティングを製造するのに適している。 【0014】 コーティング剤は、スプレー、ドクターブレード塗布、ローリング、フローコーティング、浸漬、回転および噴霧(Vakumat)などのラッカー技術で用いられる通常の既知方法により、コーティングすべき材料に塗布する。 液状コーティング剤を、紫外線照射により硬化する。 この目的のために、コーティングされた材料を、中圧水銀照射体の下で移動させる。 UV照射による硬化は、既知の方法で行われ、P. K. T. Oldring 編、Chemistry & Technology of UV and EB Formulations for Coatings, Inks & Paints, 第1巻, 1991, SITA Technology, London, 167−269頁に記載されている。 【0015】 (実施例) 以下の表(数値は質量部)に従ってコーティング剤を処方し、分散により均質化した。 コーティング剤を、手動ドクターブレードを用いて約30μmの層厚で、オーク薄板に塗布した。 次いで、薄板をランプ長1cmあたり80Wの出力を有する高圧水銀照射体の下で移動させた。 各々の場合、硬い耐溶剤性の膜が形成された(酢酸ブチルを含浸させた綿棒を50回往復させる試験)。 汗かき挙動を試験するために、膜を摩擦し、研磨ダストを膜または板上に一夜放置した。 翌朝、研磨ダストの湿分を、汗かきの尺度として評価した。 完全に乾いた研磨ダストを0とし、非常に湿った研磨ダストを5として記録した。 【0016】 【表1】
【0017】 処方:数値は質量部Roskydal(登録商標) UA VP LS 2299 (Bayer AG, Luverkusen,ドイツ) − アミン変性ポリエーテルアクリレート、粘度約800mPas
Laromer(商標) PO84F (BASF AG, Ludwigshafen,ドイツ) − アミン変性オリゴエーテルアクリレート、粘度約1000mPas
TPGDA − トリプロピレングリコールジアクリレートDPGDA − ジプロピレングリコールジアクリレートEsacure (登録商標) TZT (Lamberti, Aldizzate, イタリア), 光開始剤(変性ベンゾフェノン)
Byk(登録商標) 410 (Byk−Chemie, Wesel,ドイツ) − 変性尿素溶液Aerosil(登録商標) 300 (Degussa−Huels, Frankfurt,ドイツ) − 熱分解ケイ酸Crayvallac(登録商標) MTおよびCrayvallac(登録商標) SF (Lubrizol Coating Additives, Ritterhude,ドイツ) − アミン変性水素化ひまし油Crayvallac(登録商標) Super (Lubrizol Coating Additives, Ritterhude,ドイツ) − ポリアミドワックスDisparlon(登録商標) 6500 (C. H. Erbsloeh, Krefeld,ドイツ) − 脂肪酸変性ポリアミド各板を異なるベルト速度(10, 20, 30, 40 m/min)で硬化し、汗かき挙動を試験した:0 = 最良評点、5 = 最悪評点【0018】
本発明の方法(実施例5〜10)が比較例(実施例1〜4)の方法と比べて汗かきを抑制し、しばしば完全に汗かきを防止することを、実施例は明確に示している。
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