Drying of ceramic articles at the time of manufacture

申请号 JP2004513207 申请日 2002-06-18 公开(公告)号 JP2005529831A 公开(公告)日 2005-10-06
申请人 ザ・モーガン・クルーシブル・カンパニー・ピーエルシーThe Morgan Crucible Company Plc; 发明人 イマーム、ナシム; ウィン、アンドリュー・マーク;
摘要 セラミック材料又はセラミック体の形成方法であって、i)原料の 水 分含有混合物を提供する工程と、ii)前記混合物を成形する工程と、iii)前記成形体から水分を除去する工程と、iv)前記成形体を、原料の焼結及び/又は反応を行なうのに充分な 温度 で焼成し、それにより、セラミック材料又はセラミック体を形成する工程とを含み、前記原料が、水の沸点より高い温度範囲にわたって混合物中の水分を保持できる吸湿性高分子物質を含む前記方法。 前記吸湿性高分子物質は、いわゆる高吸収性物質であり、原料は炭化ケイ素、黒鉛、糖及びデンプンを含有してもよい。
权利要求
  • セラミック材料又はセラミック体の形成方法であって、
    i)原料の水分含有混合物を提供する工程と、
    ii)前記混合物を成形する工程と、
    iii)前記成形体から水分を除去する工程と、
    iv)前記成形体を、前記原料の焼結及び/又は反応を行なうのに充分な温度で焼成し、それにより、セラミック材料又はセラミック体を形成する工程とを含み、前記原料が、水の沸点より高い温度範囲にわたって前記混合物中の水分を保持できる吸湿性高分子物質を含む前記方法。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記混合物中に、乾燥成分の5重量%未満の量で存在する請求項1に記載の方法。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記混合物中に、乾燥成分の1重量%未満の量で存在する請求項2に記載の方法。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記物質1グラムあたり5グラムより多い水分吸収度を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記物質1グラムあたり10グラムより多い水分吸収度を有する請求項4に記載の方法。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記物質1グラムあたり100グラムより多い水分吸収度を有する請求項5に記載の方法。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記物質1グラムあたり200グラムより多い水分吸収度を有する請求項6に記載の方法。
  • 前記吸湿性高分子物質が、ポリアクリル酸塩である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  • 前記吸湿性高分子物質は、75重量%以上が150μm未満の大きさの微粉体を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  • 前記原料が、炭素化可能なバインダーを含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  • 前記炭素化可能なバインダーが、糖系バインダーである請求項10に記載の方法。
  • 前記糖系バインダーが、シロップとデンプンとの混合物を含有する請求項11に記載の方法。
  • 前記原料が、炭化ケイ素及び黒鉛を含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  • 前記セラミック体が、坩堝である請求項13に記載の方法。
  • 水の沸点より高い温度範囲にわたって混合物中の水分を保持するための、セラミックの製造に使用される原料混合物の成分としての吸湿性高分子物質の使用。
  • 水の沸点より高い温度範囲で混合物中の水分を保持できる吸湿性高分子物質を含むセラミックの製造に使用される原料混合物。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記混合物中に、乾燥成分の5重量%未満の量で存在する請求項16に記載の原料混合物。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記混合物中に、乾燥成分の1重量%未満の量で存在する請求項17に記載の原料混合物。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記物質1グラムあたり5グラムより多い水分吸収度を有する請求項16〜18のいずれか1項に記載の原料混合物。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記物質1グラムあたり10グラムより多い水分吸収度を有する請求項19に記載の原料混合物。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記物質1グラムあたり100グラムより多い水分吸収度を有する請求項20に記載の原料混合物。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記物質1グラムあたり200グラムより多い水分吸収度を有する請求項21に記載の原料混合物。
  • 前記吸湿性高分子物質が、ポリアクリル酸塩である請求項16〜22のいずれか1項に記載の原料混合物。
  • 前記吸湿性高分子物質は、75重量%以上が150μm未満の大きさの微粉体を含有する請求項16〜23のいずれか1項に記載の原料混合物。
  • 炭素化可能なバインダーを含む請求項16〜24のいずれか1項に記載の原料混合物。
  • 前記炭素化可能なバインダーが、糖系バインダーである請求項25に記載の原料混合物。
  • 前記糖系バインダーが、シロップとデンプンとの混合物を含有する請求項26に記載の原料混合物。
  • 炭化ケイ素及び黒鉛を含む請求項16〜27のいずれか1項に記載の原料混合物。
  • セラミックに焼成による結合をもたらすための1種類以上の反応性成分、及び吸湿性高分子物質を含有するセラミック用バインダー。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記物質1グラムあたり5グラムより多い水分吸収度を有する請求項29に記載のバインダー。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記物質1グラムあたり10グラムより多い水分吸収度を有する請求項30に記載のバインダー。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記物質1グラムあたり100グラムより多い水分吸収度を有する請求項31に記載のバインダー。
  • 前記吸湿性高分子物質が、前記物質1グラムあたり200グラムより多い水分吸収度を有する請求項32に記載のバインダー。
  • 前記吸湿性高分子物質が、ポリアクリル酸塩を含有する請求項29〜33のいずれか1項に記載のバインダー。
  • 前記反応成分が、炭素化可能な物質を含む請求項29〜34のいずれか1項に記載のバインダー。
  • 前記炭素化可能なバインダーが、糖系バインダーである請求項35に記載のバインダー。
  • 前記糖系バインダーが、糖シロップとデンプンとの混合物を含有する請求項36に記載のバインダー。
  • 前記糖シロップが、70%より多い固形分を有する請求項37に記載のバインダー。
  • 前記糖シロップが、TGAで評価したとき10重量%より多い炭素含量を有する請求項38に記載のバインダー。
  • 前記糖シロップが、TGAで評価したとき15重量%より多い炭素含量を有する請求項39に記載のバインダー。
  • 炭素化されると20%より多い炭素生成率をもたらす請求項35〜40のいずれか1項に記載のバインダー。
  • グリーン体を形成し、前記グリーン体中の炭素化可能なバインダーを炭素化するのに充分な温度で前記グリーン体を焼成する工程によるセラミック物品の形成方法であって、前記炭素化可能なバインダーが、糖シロップと、焼成時に前記バインダーの炭素生成率を増加させる炭素質添加剤とを含有する前記セラミック物品の形成方法。
  • 前記炭素質添加剤が、デンプンである請求項42に記載の方法。
  • 前記炭素化可能なバインダーが、20%より多い炭素生成率を有する請求項42又は43に記載の方法。
  • 前記糖シロップが、70%より多い固形分を有する請求項42〜44のいずれか1項に記載の方法。
  • 前記糖シロップの灰分が、5%未満である請求項42〜45のいずれか1項に記載の方法。
  • 前記糖シロップの灰分が、1%未満である請求項46に記載の方法。
  • 说明书全文

    本発明は、製造時のセラミック物品の乾燥方法に関するものであり、特に、排他的ではないが、炭素及び炭素/炭化ケイ素複合材料の製造に適用可能なものである。 本発明はまた、かかる材料に使用されるバインダー系に拡張される。

    用語「セラミック」は、本文中では、焼結又は反応によって結合した任意の非金属性多結晶物質を意味することを広義に解釈されたい。 本発明は、炭化物、窒化物、酸化物、黒鉛、炭素、リン化物、ホウ化物及び、さらには、分除去が製造の一工程である方法を用いて形成されるいかなるセラミックをも包含する。

    セラミックは、最も古くからある技術の1つであり、伝統的な陶器から目的に合った複合材料にまで及ぶ。 セラミック物品又はセラミック材料の製造技術のほとんどは、
    i)望ましい形成技術に適切なコンシステンシーを有する原料の水分含有混合物を提供する工程と、
    ii)前記混合物を成形する工程と、
    iii)前記成形体から水分を除去する工程と、
    iv)前記成形体を、混合物の原料の焼結及び/又は反応を行なうのに充分な温度で焼成し、それにより、セラミック物品又はセラミック材料を形成する工程とを一般に含む。

    一例として、材料のスリップ鋳造では、
    a)原料の流動性分散液(「泥漿」)を多孔性鋳型に注入し、
    b)鋳型の壁面を通じて泥漿から水分を抜き、「グリーン」成形体を製造し、
    c)グリーン成形体を乾燥して水分を除去し、
    e)次いで、グリーン成形体を、原料の反応及び/又は焼結を引き起こすのに適切な温度で焼成し、セラミック焼成体を製造する。

    グリーン体を形成するための他のセラミック製造技術としては(とりわけ)、
    加圧成形、ろくろ成形、押し出し成形及び圧延成形が挙げられる。 本発明は、グリーン体の形成方法のいずれか1つに限定されるものではない。

    かかる技術によりセラミックを形成する際に生じる問題は水分の除去である。 これは、一般に、水分が蒸発するようにグリーン体を加熱することにより行なわれる。 蒸発の際、水分は、グリーン体内の孔から出て行く。 蒸発が起こるのが早すぎると、水蒸気はグリーン体内の孔から容易に出て行くことができず、グリーン体の亀裂及び/又はブローティング(bloating)によりグリーン体に損傷を引き起こし得る。 従って、セラミックの形成における製造時間の大部分は乾燥工程であり得る。

    乾燥時間を減少する既知の方法及び/又は乾燥による損傷の影響を減少する既知の方法としては、蒸気が容易に出て行く逃げ道を提供するために、藁状物質(straw-like material)をグリーン体内に組み入れることが挙げられる。 例えば、伝統的には、容易に水分が除去されるように多孔性を付与するため、及びある程度のグリーン強度をレンガの材料に付与するために馬糞などをレンガに組み入れる。 近年では、古くからの馬糞に代わって現代的なポリプロピレン繊維が使用されているが、この技術は、
    i)藁状物質を均一に分散させることが課題となる場合があり、従って、不均一な水分損失がもたらされ、グリーン体の変形の可能性を伴う ii)セラミックの焼成後、藁状物質は、孔がつながってできた通路を残し、これが用途によっては問題となり得るという欠点を依然として有する。

    これらの乾燥方法は、水が100℃で(大気圧で)沸騰するという基本的な事実及び湿った物品が水の沸点を過ぎると、この水分はすべて放出されるという基本的な事実には影響を及ぼさない。 本発明出願人らは、高分子の吸湿性物質(高吸収性物質)の使用により、水分の放出を遅延させることが可能であり、その結果、通常の水の沸点より高い温度範囲にわたって水の放出が起こることを見出した。

    従って、本発明は、セラミック材料又はセラミック体の形成方法であって、
    i)原料の水分含有混合物を提供する工程と、
    ii)前記混合物を成形する工程と、
    iii)前記成形体から水分を除去する工程と、
    iv)前記成形体を、原料の焼結及び/又は反応を行なうのに充分な温度で焼成し、それにより、セラミック材料又はセラミック体を形成する工程とを含み、前記原料が、水の沸点より高い温度範囲にわたって混合物中の水分を保持できる吸湿性高分子物質を含む前記方法を提供する。

    本発明は、水の沸点より高い温度範囲にわたって混合物中の水分を保持するための、セラミックの製造に使用される原料混合物の成分としての吸湿性高分子物質の使用をさらに含む。

    本発明のさらなる態様は、水の沸点より高い温度範囲で混合物中の水分を保持できる吸湿性高分子物質を含むセラミックの製造に使用される原料混合物を含む。

    さらに別の態様において、本発明は、グリーン体を形成し、前記グリーン体中の炭素化可能なバインダーを炭素化するのに充分な温度で前記グリーン体を焼成する工程によるセラミック物品の形成方法であって、前記炭素化可能なバインダーが、糖シロップと、焼成時に前記バインダーの炭素生成率を増加させる炭素質添加剤とを含有する前記セラミック物品の形成方法に拡張される。

    本発明のさらなる特徴は、炭化ケイ素/黒鉛坩堝におけるバインダーとして、糖を炭素源として使用する方法に関する特許請求の範囲及び本発明の実施形態を説明する以下の説明において明らかとなる。 本発明は、かかる製品に限定されるものではなく、記載した技術的特徴は、他のセラミック体に関連し得る。

    本発明を、図面を参照しながら以下に例示する。

    使用時において、黒鉛及び炭化ケイ素から製造された坩堝は、1400℃もの高温で溶融物質を保持することが予測され得、従って、これらには多くの物性が要求される。 これらの物性としては、曲げ強度、熱伝導率、耐酸化性及び耐腐食性が挙げられる。

    炭化ケイ素系坩堝は、炭化ケイ素粉末及び黒鉛フレークが、バインダー化合物、例えば樹脂、ピッチ又はタールの炭素化した残留物により互いに結合した混合物から伝統的に形成されたものである。 製造工程は、以下の:
    ・炭化ケイ素、黒鉛及びバインダーの混合物を加圧形成し、グリーン体を形成する工程と、
    ・グリーン体を「鋳仕上げ(fettling)」する工程(例えば、グリーン体を機械加工して最終グリーン成形体にし、注ぎ口(spout)又は取っ手(handling lug)を付ける)と、
    ・グリーン体を硬化させ、バインダーから揮発成分を除去する、及び/又はバインダーを固化(set)させる工程と、
    ・グリーン体を、バインダーを炭素化させるのに充分な温度及び時間で焼成する工程と、
    ・坩堝本体を酸化から保護するために、完成品坩堝に上薬を適用する工程とのいくつかを典型的に含む。

    典型的には、前記加圧形成する工程は、静水圧加圧形成又はローラー加圧形成(この場合、ローラーが鋳型内面に対して混合物を押し付ける)のいずれかによるものである。

    焼成前、バインダーは、「グリーン」坩堝に一緒に保持され、取り扱い及び鋳仕上げに充分な機械的強度をもたらす。 いったん硬化して焼成されると、バインダーは炭素化され、坩堝の構造を提供する残留炭素骨格が残る。

    坩堝の製造における樹脂、ピッチ及びタール系の炭素前駆物質の使用は、環境、健康及び安全性に関する懸念により、圧がかかり始めている。 過去において、これらの問題に関連する法制定により、ノボラック(novalac)樹脂などのフェノール系樹脂に伴うピッチ及びタールが別のものに置き換えられつつある。 今では、フェノール系バインダーの使用に伴う健康への懸念が高まりつつあり、これらの使用は、ゆくゆくは法制定によって非経済的なものとなろう。

    坩堝産業において使用されている既存のピッチ、タール又はフェノールホルムアルデヒド樹脂の代わりにバインダーを使用するためには、一連の要件を満たさなければならない。 バインダーは、
    a)焼成された坩堝が良好な熱伝導性及び耐熱衝撃性の両方を有するための、焼成後のかなりの炭素生成率 b)焼成前に取り扱い及び/又は成形(「鋳仕上げ」)できるような乾燥/「硬化」時の強度 c)成形段階中の良好な成形性(例えば、ローラー成形工程により形成される場合は充分な粘性)
    d)坩堝が使用される用途に適合する化学的性質を有するべきである。

    これらの要件を満たすため、本出願人らは、
    ・いったん硬化させ、焼成すると、フェノール系樹脂バインダー系を用いて製造されるものに匹敵する特性を有する坩堝をもたらし、
    ・(本発明以外の場合は、糖系の系を用いると見られる)ブリスタリング及びブローティングの問題を伴わずに、硬化及び焼成工程に耐えることができ、
    ・フェノール系樹脂バインダー系を用いて製造される坩堝と同等な硬化及び焼成時間を有する坩堝用ミックスを提供するための試行において、糖系結合用配合物を使用することを検討した。

    (バインダー)
    取り組む第1の問題点は、炭素化したとき適切なレベルの炭素を生じ得る、糖系の系を特定することであった。

    糖蜜をブリティッシュ・シュガー(British Sugar)社から入手し、これは、主に生重量組成物中50%の糖を含有するビート糖蜜であった。 主成分の糖はスクロースC 122211であり、これは、42%の理論炭素含量を有する。 糖蜜の灰分のばらつきが大きいため、純粋な糖シロップも考慮に入れた。

    ともに小麦由来の2種類の糖シロップを使用した。 これらが純粋な糖シロップであること、ならびにその理論炭素含量及び強熱減量(loss of ignition)(LOI)により、これらの糖を選択した。 選択した糖は、Sallow Road, Corby, Northamptonshire(英国)のRoquette UK Ltd.(以前のABR Foods Limited)から入手できるAdeptose B51(登録商標)及びAbrasol(登録商標)であった。

    Adeptose B51(登録商標)は純粋な糖シロップであり、100%の強熱減量(LOI)を有する。 Abrasol(登録商標)もまた純粋な糖シロップであり、99.8%のLOI(強熱減量)を有する。

    表1は、TGA(熱重量分析)により測定した種々の糖及びフェノール系樹脂の炭素含量を示す。 表1では、これらの糖及び樹脂の相対分子量から導いた理論炭素含量との比較もなされている。 TGAによる炭素含量は、加熱中の重量変化から算出する。 揮発成分と炭素の酸化に関連する物質とを区別するのが困難であったため、TGAを、アルゴン雰囲気下、10℃/分の立ち上げ時間で室温から800℃まで行い、すべての揮発成分を除去した後、空気中で反復し、残留炭素を酸化した。 TGAにより測定される炭素含量は、坩堝の場合で見られるような実際的な値であり得る。

    200℃近くの温度での揮発により炭素の大部分が失われる。 文献には、存在し得る主な揮発成分は、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、酢酸及びメタノールであると述べられている。 揮発成分の比率、及びこれらすべてが存在するか否か(例えば、酢酸)は、使用する条件に依存する。

    Abrasol(登録商標)は、Adeptose B51(登録商標)又は糖蜜よりも高い炭素含量を有した(これは、グルコース(C 12 )よりも高い炭素含量を有する少量のタンパク質のためと考えられ得る)が、なお微量の灰分が存在する。 このため、純粋な糖シロップであるAdeptose B51(登録商標)が、ミックスの試作に好ましいとした。 しかしながら、本発明は、Adeptoseの使用に限定されるものではなく、Abrasol(登録商標)又は糖蜜も有用であり得る。 しかしながら、糖シロップの固形分は、排除されるべき水分量を低下させるために70%より多いのが好ましい。 より好ましくは、使用する糖シロップの炭素含量(TGAにより評価)は10重量%より多く、より好ましくは15重量%より多い。 また、望ましくは、糖シロップの灰分は5重量%である。 より望ましくは、灰分は1%未満である。

    Adeptose B51(登録商標)(ならびに、さらにAbrasol(登録商標)及び糖蜜)の炭素含量は、樹脂よりもずっと少ない。 糖シロップの炭素含量を増加させるため、他の炭素質物質をバインダーに添加し、その炭素生成率を高め、炭素結合系に寄与させた。 シロップに添加した安価な原料物質源の一例は、グルコースなどの1種類の単糖とは対照的に長鎖の多糖であるデンプン、デキストリンである。 バインダーに添加し得るデキストリンの量は、典型的な坩堝用ミックスの乾燥原料粉末での糖シロップのぬれ性に影響される。 典型的には、約12%のフェノールホルムアルデヒド樹脂が坩堝用ミックスに添加される。 試行錯誤により、この乾燥粉末をぬらすために、典型的には15%の糖シロップが必要であり、この乾燥粉末に、典型的には2%のデキストリン粉末を添加すると炭素生成率を高められることが示された。

    以下に、さらに充分に述べるように、バインダーは、炭素化反応の架橋及び/又は触媒作用の恩恵を受け得る。

    (乾燥及び硬化方式)
    水分は糖シロップに固有のものであるので、炭素化率は、乾燥/「硬化」段階後のバインダーの含水量に影響される。 従って、乾燥/「硬化」段階は、坩堝において充分な炭素生成率及び結合系の製造において重要な工程の1つである。

    乾燥/「硬化」段階を行なう主な理由は、シロップから水分を除去するため、及び取り扱い、鋳仕上げ及び艶出しのためにグリーン体を強化するのに強固な糖結合を形成するためである。 結合体(bond)中の残留水分又は結合水は、糖系バインダーの揮発及び/又は炭素の酸化を助長し得るため、乾燥/「硬化」段階は、充分な炭素結合を得るための最も重要な工程である。

    乾燥/「硬化」段階は、オーブン温度及び滞留時間に影響される。 Adeptose B51(登録商標)を構成するグルコース及びフルクトースの両方がかなり吸湿性であることは、「硬化」段階が充分に行なわれていなければ、結合は、特に夏期の湿気のある条件では大気由来の水分を再吸収し得ることを意味し得る。 このことは、本体のグリーン強度が低下し得、焼成段階中の炭素結合の酸化が助長され得る。 従って、より低い炭素生成率がもたらされ得る。 (類推によって、木材の炭素化に関する文献[エムリヒ(Emrich), W.及びブース(Booth), H.「工業的木炭製造(的ndustrial Charcoal Makingj」 Forestry Paper 63, 国連食糧農業機関、ローマ、イタリア, 1985])により、木材は、実質的に完全に乾燥するまで炭素化しないこと、及び木材の含水量が過剰な場合は木炭生成率のかなりの低下があり得ることが明らかにされている。

    糖は、加熱中、最終的には褐変する。 3つの基本的な非酵素的褐色化反応がある[エドワーズ(Edwards), WP「砂糖菓子の科学(The Science of Sugar Confectionery)」Royal Society of Chemistry (RS.C) Publication 2000ならびにシャレンバーガー(Shallenberger), RS 及びバーチ (Birch), GG「糖化学(Sugar Chemistry)」] Avi. Publishing Co., Inc. ウェストポイント・コネティカット(Westpoint Connecticut), 1975]。 これらは、
    ・熱分解 ・カラメル化(caramelisation)
    ・メイラード反応である。

    熱分解は、単に焼け焦げることであり、糖分子からの全水分の損失及び炭素−炭素結合の切断、すなわち糖分子の破壊を伴う。

    カラメル化は、還元糖の熱誘導性形態変化である。 古典的なカラメル化反応は、スクロースが熱に供されたときに示す現象であるが、市販のカラメルは糖シロップから作られている。 スクロースを160℃で融解させ、その温度で維持すると、グルコース/フルクトース無水物(レブロサンC 10 )が生じる。

    200℃において、シューメイカー(Shumaker)及びブキャナン(Buchanan)[シューメイカー, J. B及びブキャナン, JH 「カラメル着色の研究(A study of Caramel Color)」 Iowa State Journal Sci. 第6巻、 第367〜379頁、 1932]は、スクロースのカラメル化の際に3種の異なる吸熱事象を観察した。 スクロースを融解した後、気泡形成が始まり、その35分後に停止した。 重量減少は4.5%であり、これはスクロース1分子あたり水1分子の損失に相当し、従って、イソサクロサン(isosacchrosan)などの無水物の形成に類似する。 第2の気泡形成段階がすぐに始まり、これは55分間持続した。 この系の重量減少は9%であり、これは、10.5%の重量減少を必要とする色素カラメランの平均分子式、すなわち
    2C 112211 −5H O=C 243618
    と充分に一致する。 55分後に始まった第3段階の気泡形成は、カラメラン形成を特徴とした。 この色素の平均分子量は、3分子のスクロースから8分子の水分の損失、
    3C 122211 −8H O=C 365025
    及び14%の重量減少に相当する。 加熱の継続により、高分子量の暗色の不溶解性塊であるフミンの形成がもたらされる。 ヤナーチェク(Janacek)[ヤナーチェク, O. 「加熱時のスクロースの挙動及び加熱で得られたカラメル物質の組成 (Behaviour of Sucrose on heating and composition of Caramel substances so obtained)」Centr. Zukerind, 第47巻、第647〜648頁. 1939]他では、平均分子式が約C 12518880とされている。 反応の継続により、より高分子量の生成物がもたらされ、水分除去の進行により炭素の比率が増加する。

    メイラード反応は、アミノ酸の存在下での糖の褐変を担うものである。 この反応は、食品中の化合物を風味付けするための重要な経路の1つである。 アミノ酸源は、乳汁、脂肪などのタンパク質に由来するものであり、キャラメル(toffee)の生成を担う。 坩堝用ミックスにアミノ酸が全く存在しないことは、糖の褐変にこの反応が関与し得ないことを意味し得る。

    坩堝用ミックス中の糖の褐変中に起こる主な反応は、熱分解である。 しかしながら、糖系の系の考えられ得る炭素化経路の複雑さは、炭素生成率が、使用する糖及び乾燥/「硬化」方式に高度に依存性であり得ることを示す。 例えば、アミノ酸の添加は、より高い炭素生成率がもたらされ得るメイラード反応をもたらし得る(表1においてAbrasol(登録商標)をAdeptose B51(登録商標)と比較)。

    本出願人らは、
    ・結合系単独を、制御された方法で架橋又はカラメル化すると、急速焼成時においてバインダーからの炭素生成率の改善がもたらされる ・制御された方法で架橋及びカラメル化すると、焼成時において坩堝用ミックスからの炭素生成率の改善がもたらされると考える。

    最終炭素生成率に対する全バインダー系の種々の「硬化」温度、「硬化」時間及び「硬化」立ち上げ時間の影響を調べた。 これらの試行で使用したバインダー系は、Adeptose B51(登録商標)シロップとデキストリン粉末との組み合わせとした。 坩堝のブローティングを抑制するため(以下に記載)、少量のポリアクリル酸塩物質Supersorp(登録商標)をバインダー系に添加した。 表2は、本炭素化の試行において使用したバインダー混合物を示す。

    「硬化」させたバインダーの炭素化は、すべての揮発性成分を除去するための、アルゴンなどの不活性雰囲気下での900℃までのバインダーの加熱、及び炭素に変換したと想定して最終炭素生成率(重量基準)の測定を伴った。 この原理は、TGAを用いて炭素含量を測定するのに使用される技術に類似する。 しかしながら、結果の正確性及びスピードを改善するため、数ミリグラムではなく、ずっと大きなサンプルサイズを用いた。

    予備混合したバインダーのサンプルを、アルミナ管炉に配置した小型アルミナボートに配置した。 アルミナ管は、バインダーの管炉内でのさらなる「硬化」を防ぐために低温ゾーンが両端に維持できるよう、充分長いものであった(1370mm)。 サンプルを管の低温末端部に配置し、密封し、管を連続的にアルゴンと接触させた。 低温ゾーン内で2時間後、サンプルを、900℃の高温ゾーン内に(ステンレス鋼製の棒を用いて)押し入れ、さらに2時間、浸した。

    次いで、サンプルを管の他端まで押し進め、冷却した。 いったん冷却したら、サンプルを管炉から取り出し、計量して重量変化を測定した。 900℃ですべての揮発性成分が除去されたと想定すると、残留した塊は炭素である。 このことを、SEM及びXRD解析の両方により確認した。

    「硬化」温度[150℃〜250℃の範囲にわたる]、立ち上げ時間[10℃/時〜190℃/時の範囲にわたる]及び滞留時間[4時間〜16時間の範囲にわたる]の影響を調べるため、21の実験の組み合わせを行なった。

    管炉内で900℃まで焼成する前のグリーン坩堝の中壁から切り出し、「硬化」させたグリーン坩堝片(2cm×2cm×2cm)を用いて同様の試験を行なった。 バインダーの試行及びグリーン坩堝の試行の両方において、焼成の前後でサンプル重量を記録した。

    また、坩堝片の密度よび多孔率の両方を測定した。 「硬化」させたAdeptose B51(登録商標)バインダーの水への溶解性により、「硬化」させた坩堝片の密度及び多孔率の値は、ホワイトスピリット中に浸漬させて測定した。

    炭素生成率に影響を及ぼし得る他の変量を調べ、標準的な樹脂サンプルとの比較を行なった。 他の変量は、
    1. 湿度の影響 2. 焼成前にサンプルを「硬化」させない影響 3. 濃硫酸を用いてバインダーを脱水してカラメル化させる影響

    湿度の影響を試験するため、濃縮塩溶液を用いて密封チャンバ内に約80%相対湿度の雰囲気を生成した。 ミックスの吸湿性の程度を、水分吸収による重量増加により、及び結果として得られる硬度(Hampden Hardness Tester(デュロメータB101型)を使用)により測定した。

    図1は、バインダーサンプルに関する焼成炭素生成率対「硬化」率の比較を示す。 この図は、「硬化」温度がより高い結果として「硬化」率がより低いほど、焼成炭素生成率がより大きいことを明白に示す。 250℃の「硬化」温度は、最も高い約23%の炭素生成率が得られた。

    焼成炭素生成率対100℃/時の一定立ち上げ時間での「硬化」条件(滞留時間及び温度)に関して、図2に示される曲線プロットから、同様に結論づけることができる。 このプロットは、理想的な条件が、高い「硬化」温度(約230℃〜250℃)及び短い滞留時間(約4〜6時間)であろうことを示す。

    図3に示す残留炭素生成率に対する「硬化」条件の影響のまとめは、立ち上げ時間及び滞留時間の両方と比べ、「硬化」温度が、より顕著に影響を及ぼすことを示す。 もちろん、最適硬化条件及び最適焼成条件は結合系によって異なり、上記のことは、開示した特定の結合系にのみ当てはまる。 ある特定の結合系の最適条件を見出すことは、通常の実験に関わる問題である。

    かかる実験において、最良の炭素生成率を達成する条件が、焼成坩堝における最良生成率を達成する条件と一致しない場合があることに注意されたい。 例えば、図4に示すように、坩堝中壁からの坩堝片中のバインダーの炭素含量は、温度が最も大きな影響を及ぼすが、最も高い炭素生成率は250℃未満の温度で得られることも示す。 望ましくは、炭素生成率は20%より大きい。

    すべての重量減少がミックス中の15%のバインダーによるものであったと仮定し、坩堝片における炭素生成率を焼成時の重量減少から導いた。 これは、バインダー単独の炭素生成率とは反対の影響を及ぼし、バインダー以外の坩堝用ミックスにおける他の重量減少/増加によるものであろう。 図4によれば、滞留時間もまた、炭素含量に対する影響を示す。 短い滞留時間は、長い滞留時間より好ましいようである。

    坩堝の密度及び多孔率に関し、図5に、異なる「硬化」温度での「硬化」多孔率のプロットを示す。 予想され得るように、「硬化」多孔率は、「硬化」温度の上昇に伴って増加する。

    図6に示す、異なる「硬化」温度での焼成多孔率のプロットは、焼成多孔率が200℃の「硬化」温度で最小に達することを示す。

    このことは、坩堝の炭素含量に対する焼成多孔率のプロットによりさらに説明される(図7参照)。 200℃の「硬化」温度と関連する一般に高炭素含量である点の集団は、不可避的に、低多孔率となる。 図8は、炭素含量に対する坩堝焼成密度のプロットであり、炭素含量の増加に伴って密度が増加する傾向を示す。 図8は、それぞれ勾配が異なる2つの傾向を示す。 これは、製造の特徴により、坩堝の上部から底部までで密度が異なることから、坩堝中壁のサンプルの位置によるものであろう。 坩堝の上部は、約2.1g/cm の高グリーン密度であるのに対し、底部は、1.75g/cm の低グリーン密度であることがわかる。

    また、「硬化」温度は、ミックスの吸湿性の程度に対して有意な影響を及ぼす。 糖系バインダーの吸湿性の程度は、「硬化」後のバインダー中になお存在する水分量に依存するため、等式(1)を用いて湿度の影響を示した。
    重量増加(%)=加湿チャンバ内での重量増加/硬化後の重量減少×100 (1)

    図9は、加湿チャンバ内での日数に対する等式(1)により得られた重量増加のプロットを示す。 図9において、「硬化」温度が高いほど、物質の吸湿性が低いことが明白にわかる。 約150℃の低い温度で「硬化」させたサンプルは、結局、乾燥/「硬化」により失われた水分(通常、20%である)を再吸収する。 水分吸収は、「硬化」させた坩堝の強度に決定的な影響を及ぼす。 図10は、「硬化」温度の低下に伴って、どのように硬度が低下するかを示す。 200℃より高い「硬化」温度で最も良好な耐湿性が得られるようであり、これは、おそらく、糖分子の熱分解の程度に関連する。

    表3は、バインダーの炭素生成率に対する湿度の影響を示す。 「硬化」させずに、管炉内で即時焼成に供したバインダーのサンプルは、サンプルを焼成前に「硬化」させた場合よりも炭素含量がずっと低いという欠点がある。 湿度は、炭素生成率に対してやや有害な影響を及ぼす。 この影響は、より低い温度での「硬化」では、より顕著なようである。 また、加熱を必要としない、糖系バインダーの硫酸による脱水でカラメル状態にすることは、炭素生成率に正の影響を及ぼす。 これは、糖のカラメル化段階及び/又は架橋を助長する触媒又は添加剤の使用が、残留炭素生成率の上昇を助長し得ることを示す。

    湿度の影響は坩堝片においてもわかる。 図11は、加湿チャンバ内に8日間供し、次いで管炉内で900℃まで焼成した坩堝サンプルに対する湿度の影響を示す。 図において、200℃以下の温度で「硬化」させた坩堝片は、焼成するとブローティングの問題が生じたことが明白にわかる。 しかしながら、250℃まで「硬化」させたサンプルは、管炉内で急速に焼成してもブローティング問題は生じなかった。

    ローラーにより形成される坩堝の典型的な硬化/乾燥サイクルは、
    100℃/時で90℃まで 15℃/時で130℃まで 7.5時間保持 100℃/時で200℃まで 7.5時間保持であり、フェノール系バインダーで予想される15時間と比べ、20時間未満の合計時間を要するが、他の場合での水性系で予想される日数よりはかなり少ない。

    図12及び図13に示す浸炭(carburised)樹脂及び糖のTGAは、糖由来の炭素が樹脂由来の炭素より低い温度で酸化することを示す(649℃に対して530℃)。 従って、糖系バインダーを用いた坩堝結合は、酸化に対してより影響を受けやすい。 従って、坩堝の外面の上薬が500℃付近の温度で軟化し、焼成時及び商業用途において、バインダーの酸化に対する保護を提供するはずである。

    以下の表5における図15の製法により製造したサンプル坩堝は、乾燥/150℃まで「硬化」し、艶出しし、次いで最終的に製造窯炉内で1325℃まで焼成した。 フェノール系樹脂系坩堝で使用される標準的な上薬は、糖系坩堝でほとんど問題がなかった。 焼成後の仕上げの艶出しは適当であり、かつ焼成した樹脂系坩堝と同様であった。 焼成坩堝の性質を測定し、同一の成分を有するが、Adeptose B51(登録商標)の代わりにバインダーとして12%のフェノール系樹脂、デキストリン及びポリアクリル酸塩バインダー系を含有する樹脂で結合させた坩堝と比較した。 比較した特性を表4に示す。

    表4によれば、糖結合坩堝の性質は、従来の樹脂結合坩堝に非常に類似する。 熱衝撃パラメータであるRst値が高いことは、焼成した糖結合坩堝の高多孔率及び低密度にある程度関連し、これは、おそらく、糖から形成された微細な多孔性無定形炭素のためかもしれない。 これらの坩堝は、150℃まで「硬化」させたため、「硬化」温度を200℃に上げることにより、多孔率のさらなる改善が可能となり得る。

    糖結合坩堝に固有に見られる高多孔性は、この種の坩堝が腐食の問題を有し得ることを意味し得た。 しかしながら、糖結合坩堝と樹脂結合坩堝との腐食性の比較を示す図17によれば、坩堝中壁から採取したサンプルについて、1200℃での溶融銅の腐食度は、糖結合坩堝と樹脂結合坩堝間でほとんど差がないことが明白にわかる。

    糖系バインダーを、炭化ケイ素(silicon carbine)/黒鉛粉末と混合するのに適切な粘度を得るためには、糖系バインダーの粘度が低下するように、混合前にこの糖系バインダーを加熱するのが好ましいことがわかった。 50℃より高い温度が好ましかった。

    (乾燥用添加剤)
    鋳仕上げで効果的に取り扱えるようにするため、糖、例えば、糖蜜で結合させた物品を乾燥するには、2日を超える極めて長い乾燥時間を典型的に要する。 それでもなお、これによって物品に欠陥がないことは保証されない。 フェノール系樹脂での全「硬化」時間は約15時間である。 効果的なフェノール系樹脂代用品とするためには、乾燥時間を短縮するための手段を見出さなければならなかった。

    本出願人らは、糖のブローティングの主な理由は、圧力下での水蒸気の急速な揮散ではないかと考えた。 糖シロップは、その表面上に自然に皮膜を形成する。 圧力が上昇するにつれて水蒸気が揮散するためには、この皮膜を破壊する必要がある。 ブリスタリング及びブローティングを引き起こさずに糖結合坩堝の乾燥時間を短縮するためは、水蒸気を吸収し、いったん皮膜内に気体の通路が形成されたら、ずっと高温でこの水蒸気を放出する手段が必要であった。

    本発明者らは、高吸収性物質を添加剤として使用することにした。 高吸収性物質は、非常に強力な吸湿性高分子物質であり、赤ちゃん用おむつ及び他の吸水性生理用ナプキンに一般に使用されているものである(例えば、国際公開第9415651号パンフレット、国際公開第9701003号パンフレット及び米国特許第2001047060号明細書を参照のこと)。 高吸収性物質は、従来、粒状物質又は織布もしくは不織布などの用途に使用されているものである。

    微粉末として糖シロップに添加する場合、典型的には1%未満のレベルであり、本出願人らは、高吸収性物質が、乾燥段階中にシロップから水分を吸収し、ずっと高い温度でこれを放出することを見出した。 本出願人らが試験において使用した物質は、ポリアクリル酸ナトリウム/カリウムであり、これは無毒性の白色粉末である。 この物質は、Huvec Klimaatbeheersing(Postbus 5426, 3299 ZG MAASDAM, ベルギー)製の商品名Supersorp(登録商標)でバルク状態で購入した。

    典型的には、高吸収性物質は、粒状で提供される。 本出願人らが使用した粉末は、75%が75〜150μmである微粉末であった。 好ましい物質は、その75重量%以上が150μm未満の粒径である。

    ポリアクリル酸ナトリウム(式を以下に示す)などの高吸収性物質は、水と結合できる多数の親水性基を有する高分子物質である。 本発明は、大量の水分を吸収することができ、かつ、ある温度範囲でその水分を放出できる高吸収性物質などの任意の吸湿性高分子物質に拡張される。 典型的には、高吸収性物質は、物質1グラムあたり5グラムより多い水分を吸収することができ、>10g/g、>15g/g及び>20g/gの吸収度は珍しくなく(米国特許第5610220号明細書参照)、さらに、>100g/gの吸収度が、蒸留水(400〜500g/g)や、やや低いが塩溶液(例えば、0.9%NaCl溶液において30〜70g/g)で知られている。 本発明に好ましい物質は、蒸留水で100g/gより大きい、より好ましくは200g/gより大きい吸収度を有する。

    ポリアクリル酸ナトリウムの式

    図14は、ポリアクリル酸ナトリウムを含まない糖シロップバインダーと、純粋な糖シロップとこのシロップ中にポリアクリル酸ナトリウム結晶を含む混合物のTGAプロットを示す。 ポリアクリル酸塩の存在は、100℃及び200℃付近で揮発成分の急激な損失の顕著な低下を示すが、温度上昇にともなって重量減少はより緩徐になる。

    図15及び図16は、バインダーとして、約13%のAdeptose B51(登録商標)及び2%のデキストリンを含有する、糖系ミックスをもとに製造した2種類の炭化ケイ素/黒鉛坩堝を示す。 これらの坩堝を、90℃の開始温度から15℃/時の速度で150℃まで「硬化」させた。 図15に示す坩堝は、ポリアクリル酸塩を含有しないが、図16に示すものは、0.38%のポリアクリル酸塩を含有する。 微量のポリアクリル酸塩の存在が、このような短い乾燥サイクルにおいて、ブリスタリング及びブローティングの問題を解決したことは明らかである。

    沸点以上で水分を保持するほかに、高吸収性物質は、水分を吸収すると大きく膨潤する。 水分が失われるにつれて、高吸収性物質は収縮するので、高吸収性物質の周りは多孔性となり、これが水蒸気の揮散を助長する。

    本出願人らはまた、他の糖が、Adeptose B51(登録商標)の代用品として有効であるかを調べ、Tate & Lyleの一部門であるAmylum Group(グリニッジ、ロンドン)のミロース(mylose)を使用すると良好であった。

    (架橋剤及び炭素化の触媒作用)
    上記に示した結果は、硬化条件を変えることにより、糖系バインダーから多様な焼成炭素生成率がもたらされ得ることを示す。 バインダーは、有利に触媒作用を受けることがあり、本発明は、架橋された糖バインダーの使用を包含する。

    上記の記載は、セラミックの乾燥助剤としての高吸収性物質の有効性を、糖系バインダー系の場合において示したものである。 本発明は、乾燥が課題となる多くのセラミック系に、より広範に使用することができる。 本発明は、糖系バインダー系に限定されず、また坩堝の製造にも限定されない。 本発明は、乾燥が製法の一工程である、あらゆるセラミック系に有用であり得る。 製造において吸湿性高分子物質の使用の恩恵を被り得るセラミック物品の例としては、レンガ、タイル、成形された断熱用耐火物、耐火セメント、溶融金属と接触する耐火物(例えば、坩堝、桶(launder)及び鋳型)、炉の部品、及びバーナー部品が挙げられる。

    図1は、炭素生成率対糖系バインダーの「硬化」率を示すプロットである。

    図2は、焼成炭素生成率対糖系バインダーの「硬化」条件を示すプロットである。

    図3は、糖系バインダーに関する残留炭素生成率に対する「硬化」条件の影響を示すプロットである。

    図4は、坩堝サンプル中の糖系バインダーの炭素含量を示すプロットである。

    図5は、糖系バインダーに関する異なる「硬化」温度での「硬化」多孔率のプロットである。

    図6は、糖系バインダーに関する異なる「硬化」温度での焼成多孔率のプロットである。

    図7は、糖系バインダーに関する坩堝の炭素含量に対する焼成多孔率のプロットである。

    図8は、糖系バインダーに関する炭素含量に対する坩堝焼成密度のプロットである。

    図9は、糖系バインダーを用いた坩堝サンプルに関する加湿チャンバ内での日数に対する重量増加のプロットである。

    図10は、糖系バインダーを用いた坩堝サンプルに関する「硬化」温度に対する硬度のプロットである。

    図11は、加湿チャンバ内に8日間供した、糖系バインダーを用いた坩堝サンプルに対する湿度の影響を示す写真である。

    図12は、従来の坩堝製造に使用されるフェノール系樹脂バインダーの炭素化の熱重量分析のプロット(TGA)である。

    図13は、坩堝製造に使用した糖系バインダーの炭素化の熱重量分析のプロット(TGA)である。

    図14は、高吸収性物質を添加した坩堝用ミックス及び添加していない坩堝用ミックスの炭素化の熱重量分析のプロット(TGA)である。

    図15は、高吸収性物質を添加していない糖系バインダーを用いて形成した坩堝の写真である。

    図16は、高吸収性物質を添加した糖系バインダーを用いて形成した坩堝の写真である。

    図17は、フェノール系樹脂バインダーを用いて形成した坩堝材料と比較したときの糖系バインダーを用いて形成した坩堝材料の腐食を示すプロットである。

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