cnt-based resistance heating in order to de-ice the composite material structure

申请号 JP2012508572 申请日 2010-04-26 公开(公告)号 JP2012525476A 公开(公告)日 2012-10-22
申请人 アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニーApplied Nanostructured Solutions, Llc; 发明人 アドコック,ダニエル,ジェイコブ; シャー,ツァシャー,ケー.; マレキー,ハリー,シー.;
摘要 複合材料構造体は、マトリックス材と、繊維材料に 浸出 した複数のカーボン・ナノチューブを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料と、を含む。 カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、マトリックス材の一部の全体にわたって配置される。 複合材料構造体は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を介した電流の印加に適合して、これにより複合材料構造体を加熱する。 加熱要素は、繊維材料に浸出した複数のカーボン・ナノチューブを包含するカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む。 カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、構造体に必要とする熱を与えるのに十分な割合である。
【選択図】図1
权利要求
  • マトリックス材と、
    繊維材料に浸出した複数のカーボン・ナノチューブを含んで構成され、前記マトリックス材の一部の全体にわたって配置されるカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料と、
    を含んで構成され、
    前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を介した電流の印加に適合して前記マトリックス材を加熱し、これにより加熱される複合材料構造体。
  • 前記マトリックス材が、航空機の主翼の一部である複合材料構造体に形成された請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記マトリックス材が、ヘリコプターのブレードの一部である複合材料構造体に形成された請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記マトリックス材が、航空機エンジンの推進器翼の一部である複合材料構造体に形成された請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記マトリックス材が、エポキシ、フェノール樹脂、セメント、ガラス、熱可塑性物質、及び熱硬化性物質からなる群より選択される請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維の繊維がガラスを含んで構成された請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維の繊維が炭素を含んで構成された請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維の繊維がセラミックを含んで構成された請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記複数のカーボン・ナノチューブが、単層カーボン・ナノチューブ、2層カーボン・ナノチューブ、多層カーボン・ナノチューブ、及びこれらを混合したものからなる群より選択される請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記複数のカーボン・ナノチューブは、長さが均一であり、かつ、分布が均一である請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記複数のカーボン・ナノチューブが、約1ミクロンから約500ミクロンの長さを備えている請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記複数のカーボン・ナノチューブが、約1ミクロンから約10ミクロンの長さを備えている請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記複数のカーボン・ナノチューブが、約10ミクロンから約100ミクロンの長さを備えている請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記複数のカーボン・ナノチューブが、約100ミクロンから約500ミクロンの長さを備えている請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記複数のカーボン・ナノチューブの分布の均一性が、1μm 2当たり最大約15,000のナノチューブの密度を特徴とする請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記繊維材料は、フィラメント、トウ、ヤーン、テープ、一方向テープ、繊維ブレイド、織物、不織繊維マット、繊維プライ、及び3次元織物構造体から選択される請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、前記複合材料構造体の表面付近に配置された請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、前記複合材料構造体の全体にわたって配置された請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記繊維材料に浸出することなく前記マトリックス材の全体にわたって分散した複数のカーボン・ナノチューブを更に含んで構成された請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記電流が、約1ボルトから約24ボルトの電圧における直流電流を含んで構成された請求項1に記載の複合材料構造体。
  • 前記電流が、約60ボルトから約480ボルトの電圧における交流電流を含んで構成された請求項1に記載の複合材料構造体。
  • マトリックスに組み込まれた複数のカーボン・ナノチューブ浸出繊維を含んで構成され、これにより、複合材料を形成し、前記複合材料が、電流を受けるように適合され、前記電流に反応して抵抗過熱要素として作用する除氷用製品。
  • 前記マトリックスがカーボン・ナノチューブでドープされた請求項22に記載の除氷用製品。
  • 繊維材料に浸出した複数のカーボン・ナノチューブを含んで構成されたカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含んで構成され、前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が加熱に十分な割合である加熱要素。
  • マトリックス材を更に含んで構成され、前記CNT浸出繊維材料が前記マトリックス材の一部の全体にわたって配置された請求項24に記載の加熱要素。
  • 前記繊維材料が、トウ、ヤーン、テープ、リボン、マット、プライ、3次元織物、及び3次元不織材料からなる群より選択される繊維状構造体である請求項24に記載の加熱要素。
  • 前記繊維材料が、炭素、ガラス、セラミック、及び有機体からなる群より選択された材料を含んで構成される請求項24に記載の加熱要素。
  • 複合材料構造体の表面において除氷又は氷形成を抑制する方法であって、
    a)請求項1の複合材料構造体を提供することと、
    b)前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維に電流を印加し、これにより、前記複合材料構造体を加熱することと、
    を含んで構成された方法。
  • 前記電流が、約1ボルトから約24ボルトの電圧における直流電流を含んで構成された請求項28に記載の方法。
  • 前記電流が、約60ボルトから約480ボルトの電圧における交流電流を含んで構成された請求項28に記載の方法。
  • 说明书全文

    本願発明は、複合材料に関し、より具体的には、カーボン・ナノチューブで改良された複合材料に関する。

    (関連出願の記載)
    本願は、2009年4月27日出願の米国仮特許出願第61/173,027号に基づいて優先権を主張するものであり、参照により全体が本明細書に組み込まれる。

    広範な環境条件に対して複合材料の露出が増加したことにより、複合材料に課せられる要求が増えている。 このような要求の1つには、複合材料構造体の除氷が含まれる。 例えば、航空機の空気学的表面(例えば、主翼(wing)、尾翼、エンジンナセル)の先端などの構造体における氷の形成は、重大な技術上及び安全上の問題をもたらす。 わずか1ミリメートル(mm)程度の薄い氷層でも飛行中の航空機の安定性を損なう。

    氷の形成を防止するために、あるいは、既に形成された氷を除去するために、このような空気力学的表面の先端は、航空機の少なくとも1つのエンジンから取り出された高圧高温空気を高圧高温空気循環回路により先端の内部に運んで加温することにより除氷されることが示されている。 高温空気の作用により、氷と表面との結合を弱めて氷を不安定にし、これにより、航空機の後方のスリップストリーム(slipstream)が表面(例えば、主翼)から氷を除去するとともにその除去を促進する。

    除氷の別の試みには、氷が堆積しやすい表面の真下に配設された加熱コイルが含まれる。 しかし、内蔵された加熱要素の使用には、加熱要素により生成された熱が氷を溶かすために構造体の表面に効率的に伝導されることが求められる。 この点において、内蔵された加熱装置から周囲の複合材料への熱伝達が悪いため、複合材料の外面を効率的に加熱することは困難である。 航空機の主翼などの構造体に複合材料を用いることは、その良好な強度重量比のために望ましいが、このような材料は、マトリックス(通常は樹脂マトリックス)が存在するため一般的に断熱材である。 それ故、抵抗加熱は、複合材料の低伝導性のために制限されてしまっている。

    抵抗加熱を提供するための別の試みは、複合材料構造体の表面全体に金属スプレー・コーティングを適用することである。 電流を金属コーティングに印加し、これにより、抵抗加熱を提供して析出したあらゆる氷を除去する。 しかし、このような金属コーティングは、コーティング適用に用いられる特別な製造プロセスのために、コストの上昇とともに複雑化を招く。 さらに、構造体全体の重量の増加は、複合材料構造体によってもたらされる利点を損なう。 最終的に、このような金属コーティングは、繰り返し使用した後に構造の破壊を招きがちな電解腐食の影響を受けやすくなる。

    除氷を必要とする用途のためには、新たな複合材料構造体を開発することが有益である。 本願発明は、このニーズを満たすとともに関連する利点をも提供するものである。

    ある態様において、本明細書に開示された実施形態は、マトリックス材と、繊維材料に浸出した複数のカーボン・ナノチューブ(CNTs)を含むカーボン・ナノチューブ(CNT)浸出繊維材料と、が含まれる複合材料構造体に関する。 CNT浸出繊維材料は、マトリックス材の一部の全体にわたって配置される。 複合材料構造体は、CNT浸出繊維材料への電流の印加に適合しており、マトリックス材を加熱して複合材料構造体を加熱する。

    ある態様において、本明細書に開示された実施形態は、除氷用製品に関し、その製品は、マトリックス材に組み込まれた複数のカーボン・ナノチューブ浸出繊維を含み、これにより複合材料を形成する。 複合材料は、電流を受けるように適合され電流に反応して抵抗加熱要素として作用する。

    ある態様において、本明細書に開示された実施形態は、繊維材料に浸出した複数のCNTsを包含するCNT浸出繊維材料が含まれた加熱要素に関し、CNT浸出繊維材料は、構造体に必要とする熱を与えるのに十分な割合である。

    ある態様において、本明細書に開示された実施形態は、複合材料構造体の表面に形成される氷の除氷又は防止方法に関し、これには、a)CNT浸出繊維材料を有する複合材料構造体を提供すること、及び、b)CNT浸出繊維に電流を印加し、これにより、複合材料構造体を加熱すること、が含まれる。

    除氷用のカーボン・ナノチューブ浸出繊維複合材料を例示する図。

    ドープされたマトリックスを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維複合材料を例示する図。

    除氷用の複合材料上に適用されたカーボン・ナノチューブ浸出繊維複合材料コーティングを例示する図。

    本願発明の実施形態に準じた、抵抗加熱要素として作用するように適合されたカーボン・ナノチューブ浸出繊維複合材料を例示する図。

    本願発明の実施形態に準じた、抵抗加熱要素として作用するように適合された伝導帯に構成されたカーボン・ナノチューブ浸出繊維複合材料を例示する図。

    連続的なCVD処理を介してAS4炭素繊維上に成長した多層CNT(MWNT)の透過型電子顕微鏡(TEM)画像。

    連続的なCVD処理を介してAS4炭素繊維上に成長した2層CNT(DWNT)のTEM画像。

    CNT形成ナノ粒子触媒が炭素繊維材料表面に機械的に浸出したバリア・コーティング(barrier coating)内から成長したCNTsの走査型電子顕微鏡(SEM)画像。

    炭素繊維材料上で目標長さ約40ミクロンの20%以内まで成長したCNTsの長さ分布の一貫性を明示するSEM画像。

    CNT成長におけるバリア・コーティングの効果を明示するSEM画像。 バリア・コーティングが適用された(applied)部位では、高密度かつ良好な配列のCNTsが成長し、バリア・コーティングがない部位ではCNTsは成長しなかった。

    約10%以内の繊維にわたってCNT密度の均一性を明示する炭素繊維上のCNTsの低倍率SEM画像。

    本願発明の例示的な実施形態によるCNT浸出炭素繊維材料の生成処理を示す図。

    連続処理において炭素繊維材料をCNTsで浸出して熱的及び電気的伝導性を向上させる方法を示す図。

    本願発明は、1つには、マトリックス材及びカーボン・ナノチューブ(CNT)浸出繊維材料を含む、除氷用途に用いられる複合材料構造体を対象とするものである。 CNT浸出繊維材料は、繊維材料に浸出した複数のカーボン・ナノチューブ(CNTs)を含む。 CNT浸出繊維材料は、マトリックス材の一部の全てに配置され、複合材料構造体はCNT浸出繊維材料を介した電流の印加に適合し、これにより、マトリックス材を加熱して複合材料構造体の表面上における氷を除氷するか、その形成を防止する。

    理論に拘束されるものではないが、CNT浸出繊維のCNTsは、パーコレーション伝導を提供することにより、バルク・マトリックス(bulk matrix)材の伝導性を変化させる。 CNT高分子複合材料におけるパーコレーション伝導は既にモデル化されている(Du et al. Phys. Rev. B72:121404-1-121404-4, (2005))。 本願発明において、複合材料構造体のパーコレーション伝導は、図1〜4に図示されるように、CNT間の点接触、CNTの相互嵌合(interdigitation)/重複(overlap)、あるいは、これらの組み合わせによるものである。 CNTsはパーコレーション伝導路を提供するのに対し、CNTsが結合する繊維担体は、1)CNTの配向性及び異方度(degree of anisotropy)、2)CNT濃度、及び3)バルク・マトリックス内のCNTの配置を制御する。

    複合材料内の繊維に対しCNTsを導入することにより、複合材料構造体自体を抵抗加熱要素として使用することが可能となる。 このように、当該複合材料から形成される、例えば、航空機(またはヘリコプター)の主翼、機体、尾部(tail)組立部品(assembly)などの構造体の除氷には、加熱装置を追加する必要はない。 CNTsは、3%よりも大きい質量百分率を達成する繊維レベル(at the fiber level)で導入される。 この場合、CNT浸出繊維材料は、従来のマトリックスとともに用いられ、繊維に浸出しない追加的なCNTsで任意にドープ(dope)され複合材料構造体を形成する。 その時点の(present)CNTの質量百分率を調整することにより、構造体の抵抗率が調節又は制御され、材料を抵抗加熱要素として用いるのに適した熱/伝導特性を提供できる。 CNTベースの複合材料は、構造体(例えば、主翼、機体、及び尾部組立部品)の対象領域の表面層として、又は複合材料構造体の全体を覆う表面層としてのいずれかで用いられ、ここでは、除氷用途で用いるあらゆる物を生産するために用いられる。 CNT浸出繊維複合材料は、それ自体で抵抗加熱要素となる複合材料である。 CNT浸出繊維複合材料は、例えば、炭素、ガラス、アルミナ、炭化ケイ素、又はケブラー(登録商標)などのあらゆる種類の繊維基材を使用し得る。 さらに、多くの繊維種は、機械的強化用途に用いられるので、浸出したCNTsは、機械的強度の強化という更なる役割を果たす。

    当該技術分野で除氷用途に用いられている、金属スプレー・コーティングによる「加熱マット(heater mat)」の試みは、コスト及び複雑性が増す製造プロセスを用い、また、複合材料構造体の広い表面積にわたって用いられる金属スプレー・コーティングは構造体全体の重量を増加させる。 加えて、金属を抵抗加熱要素として用いると、電解腐食(これは、構造体内の脆弱な界面にガラス層を用いることにより対処される)の危険性をもたらし、そして、反復利用の結果、構造体破壊の危険性がもたらされる。 最終的に、金属コーティングは複合材料構造体内の材料と同種ではないので、それは、複合材料構造体内の脆弱点となる。 これら諸問題は、複合材料構造体におけるCNTsの組み込みにより、低減されるか、又は取り除かれる。 従来の複合材料はCNTsとともに用いられるので、複合材料構造体の製造方法は実質的に変わらない。 また、複合材料の繊維上にCNTsを組み込むために用いられ、低コスト材料の解決策となる方法も開発されているが、これは、同様の製造性と相まって、結果的に単純な低コスト解決策をもたらす(重量の増加を伴わない解決策であり、実際に、CNT/繊維材料が構造体の構成要素としても用いられる場合には重量は低減する)。 電路を提供するために金属が用いられていないので、電解腐食はCNTsを用いて回避される。 最終的には、その材料は繊維にCNTsを組み込むために用いられているので、抵抗加熱層として用いられる場合に、構造体全体を脆弱化させることにはならない。

    本明細書では、用語「繊維材料」とは、構造体の基本的な構成要素として繊維を有するいかなる材料も指す。 その用語には、繊維、フィラメント、ヤーン(yarn)、トウ(tow)、テープ(tape)、織物及び不織布、パイル(pile)、マット(mat)、及び、織物及び不織布となり得る3次元織物構造体が包含される。

    本明細書では、用語「巻き取り可能な寸法」とは、炭素繊維材料をスプール(spool)又はマンドレル(mandrel)に巻き取っておくことが可能な、長さの限定されない、炭素繊維材料の有する少なくとも1つの寸法をいう。 「巻き取り可能な寸法」の炭素繊維材料は、本明細書に記載されるように、CNT浸出のための1回分の処理又は連続処理のいずれかの使用を示す少なくとも1つの寸法を有する。 市販の巻き取り可能な寸法の炭素繊維材料の1つが、800テックス(1テックス=1g/1,000m)又は620ヤード/ポンドの寸法を有するAS4 12k炭素繊維のトウ(Grafil, Inc., Sacramento, CA)で例示される。 特に、工業用の炭素繊維のトウは、例えば、5、10、20、50及び100ポンド(高重量のスプール用で、通常、3k/12Kのトウ)のスプールで入手されるが、より大きなスプールには特注を必要とする。 本願発明の処理は、5〜20ポンドのスプールで容易に行われるが、より大きなスプールの使用も可能である。 さらに、例えば、100ポンド以上の極めて長大な巻き取り可能長を、取り扱いが容易な寸法、例えば、50ポンドのスプールで2つに分割する前処理工程を組み込むこともできる。

    本明細書では、用語「カーボン・ナノチューブ」(単数ではCNT、複数ではCNTs)とは、単層カーボン・ナノチューブ(SWNTs)、2層カーボン・ナノチューブ(DWNTs)、多層カーボン・ナノチューブ(MWNTs)などのフラーレン群からなる多数の円筒形状の炭素同素体のうちのすべてをいう。 CNTsは、フラーレン様構造により閉塞されるか、又は開口端を有していてもよい。 CNTsには、他の物質を封入するものが含まれる。

    本明細書で、「長さが均一」という場合、反応器において成長するCNTsの長さについて言及するものである。 「均一な長さ」は、約1ミクロンから約500ミクロンの間における様々なCNT長さに対して、全てのCNTの長さが±約20%以内の許容誤差となるような長さをCNTsが有していることを意味する。 極めて短い長さ、例えば、1〜4ミクロンなどでは、この誤差は、全てのCNTの長さの±約20%から最大で±約1ミクロンまでの範囲内、すなわち、CNTの全長の約20%よりも若干大きくなる。

    本明細書で、「分布が均一」とは、炭素繊維材料上におけるCNTsの密度が不変であることをいう。 「均一な分布」は、CNTsで覆われる繊維の表面積の割合として定義される被覆率の誤差が±約10%となる場合の炭素繊維材料上の密度をCNTsが備えていることを意味する。 これは、直径8nmの5層CNTでは、1平方マイクロメートル当たり±1500のCNTsに相当する。 この形状ではCNTsの内部空間を充填可能と仮定している。

    本明細書では、用語「浸出する」とは結合することを意味し、用語「浸出」とは結合処理を意味する。 このような結合には、直接共有結合、イオン結合、π−π相互作用、及び/又はファンデルワールス力の介在による物理吸着などが含まれ得る。 例えば、ある実施形態において、CNTsは、炭素繊維材料に直接的に結合される。 結合は、例えば、CNTが、バリア・コーティング、及び/又はCNTs及び炭素繊維材料間にはさまれて配設された遷移金属ナノ粒子を介して炭素繊維材料へ浸出するなど、間接的であってもよい。 本明細書に開示されたCNT浸出炭素繊維材料において、カーボン・ナノチューブは、前述のように、直接的又は間接的に炭素繊維材料に「浸出する」ことが可能である。 CNTが繊維材料に「浸出する」具体的な方法は、「結合モチーフ(bonding motif)」と呼ばれる。

    本明細書では、用語「遷移金属」とは、周期表のdブロックにおけるあらゆる元素又はその合金をいう。 また、用語「遷移金属」には、遷移金属元素ベースの塩形態(例えば、酸化物、炭化物、窒化物など)も含まれる。

    本明細書では、用語「ナノ粒子」若しくはNP(複数ではNPs)、又はその文法的な同等物とは、NPsは球形である必要はないが、球の等価直径が約0.1〜約100ナノメートルの大きさに形成された粒子をいう。 遷移金属NPsは、特に、炭素繊維材料上においてCNTを成長させる触媒として機能する。

    本明細書では、用語「サイジング剤(sizing agent)」、「繊維サイジング剤(fiber sizing agent)」、又は単に「サイジング(sizing)」とは、炭素繊維を完全な状態で保護し、複合材料における炭素繊維及びマトリックス材間の界面相互作用を強化し、及び/又は、炭素繊維の特定の物理的性質を変更及び/又は高めるためのコーティングとして炭素繊維の製造において用いられる材料を総称するものである。 ある実施形態では、炭素繊維材料に浸出するCNTsが、サイジング剤として作用する。

    本明細書では、用語「マトリックス材」とは、サイジングされたCNT浸出炭素繊維材料をランダム配向などの特定の配向性で組織化する機能を果たすバルク材をいう。 マトリックス材に対してCNT浸出炭素繊維材料の有する物理的及び/又は化学的性質のある部分が付与されることにより、マトリックス材にとってCNT浸出炭素繊維材料の存在は有益となる。

    本明細書では、用語「材料滞留時間」とは、巻き取り可能な寸法のガラス繊維材料に沿った各ポイントが、本明細書に記載されるCNT浸出処理の間、CNTの成長状態にさらされる時間をいう。 この定義には、複数のCNTの成長チャンバーを用いる場合の材料残留時間が含まれる。

    本願発明の複合材料構造体は、バルク・マトリックス材を介して数々の構造体にモールド(mold)され成形される。 例えば、マトリックス材は、航空機の主翼の一部、ヘリコプターのブレードの一部、航空機エンジンの推進器翼である複合材料構造体へと形成される。 他の用途には、道路/滑走路、他の航空機、航空宇宙、自動車部品、風力タービン・ブレード、レーダー構造体、及び寒冷環境において用いられる海上システム構造物における使用が含まれる。 また、寒冷環境において表面高感度特性(surface sensitive features)を有する可動部品を備えた構造体も本願発明の複合材料を使用し得る。 実際、本願発明の複合材料を、除氷が重要な懸案事項でない場合であっても用いることができる。 例えば、本願発明の複合材料は、高運転温度を維持するために用いられる。

    本願発明の複合材料構造体には、エポキシ、フェノール樹脂、セメント、及びガラスからなる群より選択されたマトリックス材が含まれる。 マトリックス材自体が伝導性又は絶縁性があるかどうかは重要ではなく、CNT浸出繊維材料が抵抗加熱を提供する。 他のマトリックス材には、例えば、ポリエステル、ビニルエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、及びビスマレイミドが含まれる。 本願発明に有用なマトリックス材には、既知のマトリックス材(Mel M.Schwartz, Composite Materials Handbook (2d ed. 1992)参照)のいかなるものも含まれる。 さらに一般的には、マトリックス材には、樹脂(ポリマー)、熱硬化性及び熱可塑性の両プラスチック、金属、セラミック、並びにセメントが含まれる。

    マトリックス材として有用な熱硬化性樹脂には、フタル酸/マレイン酸型のポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール類、シアン酸塩、ビスマレイミド、及びナディック・エンド・キャップド・ポリイミド(nadic end-capped polyimides)(例えば、PMR−15)が含まれる。 熱可塑性樹脂には、ポリスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレン酸化物、ポリ硫化物、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、及び液晶ポリエステルが含まれる。

    マトリックス材として有用な金属には、例えば、アルミニウム6061、アルミニウム2024、及び713アルミニウム・ブレーズ(aluminium braze)などのアルミニウム合金が含まれる。 マトリックス材として有用なセラミックには、炭素セラミック(例えば、リチウムアルミノケイ酸塩など)、酸化物(例えば、アルミナやムライトなど)、窒化物(例えば、窒化ケイ素など)、及び炭化物(例えば、炭化ケイ素)が含まれる。 マトリックス材として有用なセメントには、炭化物ベースのサーメット(炭化タングステン、炭化クロム及び炭化チタン)、耐火セメント(タングステントリア(tungsten-thoria)及び炭酸バリウム−ニッケル(barium-carbonate-nickel))、クロム−アルミニナ、ニッケル−マグネシア、及び鉄−炭化ジルコニウムが含まれる。 他の有用なセメント材には、例えば、コンクリート構造物などに用いられるポルトランドセメントが含まれる。 セメントマトリックスは、例えば、道路の除氷用途に有用である。 このような実施形態の中には、CNT浸出繊維材料が、例えば、街路照明システムと一体化した電気システムに供給されるものもある。

    特に、エポキシ及びフェノール樹脂は、前述した除氷のための数々の部品の製造に容易に用いられる。 本願発明の複合材料に用いられるエポキシ樹脂の例示的な2つの群には、グリシジル・エポキシ樹脂と非グリシジル・エポキシ樹脂が含まれる。 グリシジル・エポキシ樹脂には、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、又はグリシジルアミンに基づく樹脂系が含まれる。 非グリシジル・エポキシ樹脂は、脂肪族又は脂環式のエポキシ樹脂でもよい。 グリシジル・エポキシは、ジヒドロキシ化合物、二塩基酸又はジアミンと、エピクロルヒドリンとの縮合反応を介して作られる。 非グリシジル・エポキシ樹脂はオレフィン二重結合の過酸化により形成される。 グリシジルエーテル・エポキシには、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)及びノボラックエポキシ樹脂が含まれる。 DGEBAは典型的な市販エポキシであり、塩基性触媒の存在下、ビスフェノールAをエピクロルヒドリンと反応させて合成される。 ノボラックエポキシ樹脂は、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテルであり、例示的なフェノール樹脂である。 酸性触媒の存在下、フェノールをホルムアルデヒドと過度に反応させることにより、フェノールノボラック樹脂が生成される。 ノボラックエポキシ樹脂は、触媒としての酸化ナトリウムの存在下、フェノールノボラック樹脂をエピクロルヒドリンと反応させることにより合成される。

    本願発明の複合材料構造体には、ガラス、炭素、セラミック、金属、及び有機材料(例えば、アラミドなど)に基づくCNT浸出繊維材料が含まれる。 マトリックス材と同様に、ベースとなる繊維材料は、絶縁性又は伝導性があってもよく、CNTsが、必要不可欠な抵抗加熱を提供する。 しかしながら、繊維材料の役割は、複合材料構造体の全体にわたるCNTsの組織化に不可欠である。

    ある実施形態において、CNT浸出繊維材料にはガラス繊維材料が含まれる。 CNT浸出繊維材料を任意に用いることができるが、前述のようにバリア・コーティングを組み込む必要はない。 ガラス繊維材料に用いられるガラスの種類は、例えば、Eガラス、Aガラス、E−CRガラス、Cガラス、Dガラス、Rガラス、及びSガラスなどの、いかなる種類のものであってもよい。 Eガラスは、1重量%未満のアルカリ酸化物を有するアルミノホウケイ酸塩ガラスを含有し、主としてガラス強化プラスチックに用いられる。 Aガラスには、酸化ボロンを殆ど又は全く有さないアルカリ石灰ガラスが含まれる。 E−CRガラスは、1重量%未満のアルカリ酸化物を有する石灰アルミノケイ酸塩(alumino-lime silicate)を含有し、高い耐酸性を有する。 Cガラスは、酸化ボロンの含有量が高いアルカリ石灰ガラスを含有し、例えば、ガラス・ステープル・ファイバー(glass staple fiber)に用いられる。 Dガラスは、ホウケイ酸塩ガラスを含有し、高い絶縁定数を有する。 Rガラスは、MgO及びCaoを含まないアルミノケイ酸塩ガラスを含有し、高い機械的強度を有する。 Sガラスは、Caoは含まないがMgOの含有量が高いアルミノケイ酸塩ガラスを含有し、高い引張強度を有する。 これら1以上の種類のガラスが処理されて前述のガラス繊維材料になる。 特定の実施形態においては、ガラスはEガラスである。 他の実施形態においては、ガラスはSガラスである。

    炭素繊維は、その繊維の生成に用いられる前駆体(そのいずれもが本願発明に使用可能である)、すなわち、レーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)及びピッチ(pitch)に基づいて3種類に分類される。 セルロース系材料であるレーヨン前駆体から生成される炭素繊維は、炭素含有量が比較的低い約20%であり、繊維の強度及び剛性が低くなりがちである。 ポリアクリロニトリル(PAN)前駆体は、約55%の炭素含有量をもつ炭素繊維を提供する。 PAN前駆体に基づく炭素繊維は、表面欠陥が最小であるため、他の炭素繊維前駆体に基づく炭素繊維よりも概して高い引張強度を有する。

    石油アスファルト、コールタール及びポリ塩化ビニルに基づくピッチ前駆体もまた、炭素繊維を生成するために用いられる。 ピッチは、比較的低コストで炭素収率が高いが、既知のバッチ処理では不均一性という問題がある。

    ある実施形態において、CNT浸出繊維材料がセラミック繊維材料を含む場合、セラミック繊維材料に用いられるセラミックは、いかなる種類のものであってもよく、例えば、酸化物(アルミナ及びジルコニアなど)、炭化物(炭化ホウ素、炭化ケイ素及び炭化タングステンなど)、並びに、窒化物(窒化ホウ素及び窒化ケイ素など)などがある。 他のセラミック繊維材料には、例えば、ホウ化物及びケイ化物が含まれる。 また、セラミック繊維には、玄武岩繊維も含まれる。 セラミック繊維材料は他の繊維種を備えた複合材料として存在してもよい。 例えば、ガラス繊維も組み込む織物状のセラミック繊維材料が一般的である。

    本願発明の複合材料は、トウ、ロービング(roving)、テープ、ヤーン、ブレイド(braid)、織物及び他の3次元織物構造体の形態で繊維材料を組み込む。 様々なマット、織物及び不織布などは、本明細書に記載した処理により機能化されるが、元となるトウ、ヤーンなどから、これら母材をCNTで機能化した後に高規則構造を生み出すことも可能である。 例えば、CNTが浸出した織物は、CNT浸出繊維トウから生成することができる。

    炭素繊維材料への浸出に有用なCNTsには、単層CNTs、2層CNTs、多層CNTs、及びこれらを混合したものが含まれる。 用いるべきCNTsは、正確には、CNT浸出炭素繊維の用途によって決まる。 CNTsは、熱的及び/又は電気的伝導の用途に、あるいは、絶縁体として用いられる。 ある実施形態において、浸出したカーボン・ナノチューブは、単層ナノチューブである。 ある実施形態において、浸出したカーボン・ナノチューブは、多層ナノチューブである。 ある実施形態において、浸出したカーボン・ナノチューブは、単層ナノチューブと多層ナノチューブの組み合わせである。 単層及び多層ナノチューブに特有の性質には、繊維の最終用途のために、どちらのナノチューブの合成にするかを決定付ける相違がある。 例えば、単層ナノチューブは半導体的又は金属的である一方、多層ナノチューブは金属的である。

    CNT浸出繊維材料を有する複合材料はCNTsが略均一な長さで提供される。 本明細書で後述される連続処理の場合、CNT成長チャンバーにおける繊維材料の滞留時間は調節されて、CNTの成長、及び最終的にはCNTの長さを制御する。 これにより、成長したCNTsの特定の性質を制御する手段が提供される。 また、CNTの長さは、炭素原料ガス及びキャリアガスの流量並びに反応温度の調節によっても制御される。 CNTの性質は、例えば、CNTsを作製するために用いられる触媒のサイズを制御することにより、更なる制御が可能となる。 例えば、1nmの遷移金属ナノ粒子触媒は、特にSWNTsを提供するために用いられる。 より大きな触媒は、主にMWNTsを作製するために用いられる。

    さらに、後述のCNT成長処理は、前もって形成されたCNTsを溶媒溶液中に懸濁又は拡散して繊維材料に手作業で塗布する処理において発生し得るCNTsの束化(bundling)及び/又は凝集を回避しつつ、繊維材料に均一に分布したCNTsを有するCNT浸出繊維材料を提供する上で有用である。 このように凝集したCNTsは、繊維材料に弱く結合する傾向にあり、特徴的なCNTの性質は、仮に結合したとしても、かすかにしか現れない。 ある実施形態において、パーセント被覆率(percent coverage)、すなわち被覆された繊維の表面積として表される最大分布密度は、直径約8nmの5層CNTsを想定すると、約55%もの高率となる。 この被覆率は、CNTsの内部空間を「充填可能な(fillable)」空間とみなして算出される。 様々な分布/密度の値は、表面における触媒の拡散を変化させるとともにガス組成及び処理速度を制御することにより達成できる。 一般的に、一定のパラメータに関しては、全繊維表面で約10%以内のパーセント被覆率が達成される。 密度が高くなりCNTsが短くなると、機械的性質の向上に有用となるのに対し、密度の増大が好ましいことに変わりはないが、密度が低くなりCNTsが長くなると、熱的性質及び電気的性質の向上にとって有用となる。 密度が低くなるのは、より長いCNTsが成長したときであるが、これは、触媒の粒子収量を低下させる高温かつ急速な成長によるものである。

    CNTsは、例えば、機械的強度、低〜中程度の電気抵抗率、高熱伝導性などの特有の性質をCNT浸出繊維材料に与える。 例えば、ある実施形態において、カーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維材料の電気抵抗率は、母材の炭素繊維材料の電気抵抗率よりも低い。 より一般的に言えば、得られたCNT浸出繊維がこれらの特徴を示す程度は、カーボン・ナノチューブによる炭素繊維被覆の程度及び密度の関数となる。 直径8nmの5層MWNTを想定すると、0〜55%の繊維のあらゆる繊維表面積が被覆される(この場合も、この計算はCNTsの内部空間を充填可能とみなしている)。 この数字は、CNTsの直径が小さくなると低くなり、CNTsの直径が大きくなると高くなる。 55%の表面積被覆率は、1μm 2当たり約15,000のCNTsに相当する。 さらに、CNTの性質は、前述のように、CNTの長さに依存する形で繊維材料に付与される。 浸出したCNTsの長さは、約1ミクロンから約500ミクロンの範囲(1ミクロン、2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、6ミクロン、7ミクロン、8ミクロン、9ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、30ミクロン、35ミクロン、40ミクロン、45ミクロン、50ミクロン、60ミクロン、70ミクロン、80ミクロン、90ミクロン、100ミクロン、150ミクロン、200ミクロン、250ミクロン、300ミクロン、350ミクロン、400ミクロン、450ミクロン、500ミクロン、及びこれらの中間の全ての値など)において様々である。 また、CNTsは、例えば、約0.5ミクロンなど、長さが約1ミクロン未満でも可能である。 また、CNTsは、例えば、510ミクロン、520ミクロン、550ミクロン、600ミクロン、700ミクロン及びこれらの中間の全ての値など、500ミクロンよりも長くてもよい。

    本願発明の複合材料は、約1ミクロンから約10ミクロンの長さを有するCNTsをCNT浸出繊維に組み込むことができる。 このようなCNTの長さはせん断強度を向上する用途に有用である。 CNTsは、約5ミクロンから約70ミクロンの長さを有してもよい。 このようなCNT長さは、CNTsが繊維芳方向に配列されている場合には、引張強度を向上する用途に有用である。 CNTsは、約10ミクロンから約100ミクロンの長さを有してもよい。 このようなCNTの長さは電気的/熱的性質に加え機械的性質を向上するのに有用である。 また、本願発明に用いられる処理は、約100ミクロンから約500ミクロンの長さを有するCNTsを提供できるが、これは、電気的及び熱的性質の向上にも有益である。 このようなCNT長さの制御は、様々なラインスピード及び成長温度と相まって、炭素原料ガス及び不活性ガスの流量を変化させることで容易に達成される。

    ある実施形態において、巻き取り可能な長さのCNT浸出炭素繊維材料を含有する組成物には、CNTsの長さが異なる様々な均一領域がある。 例えば、せん断強度特性を高めるためには、CNT浸出炭素繊維材料のうちの均一に短いCNT長を備えた第1の領域を、そして、電気的又は熱的性質を高めるために、同一の巻き取り可能な材料のうちの均一に長いCNT長を備えた第2の領域を有することが好ましい。 このように、複合材料構造体は、機械的強度の向上のために短いCNTsを備えた本体を有しつつ、除氷用途のための表面構造を有するように構成される。 巻き取り可能な繊維材料の連続的なCNT合成は、複合材料の設計を容易にし、処理を効率的にする。

    ある実施形態において、本願発明の複合材料構造体には、マトリックス材の全体にわたって分散した複数の「遊離した(loose)」CNTsが更に含まれる。 「遊離した」ということは、CNTsが、繊維材料に浸出することなくマトリックス材に導入されることを意味する。 これは、例えば、パーコレーション経路(percolation pathway)を更に増やすのに有用である。 「遊離した」CNTsは、得られたナノ複合材料構造体の電気伝導性を高めるか、あるいは微調整するために用いられる。 マトリックス材に大量の遊離CNTsをドープすることによりパーコレーション経路が増加し、これにより複合材料の伝導性が更に向上する。 遊離CNTsが殆どなければパーコレーション経路が減少し、これにより伝導性が低下する。 ナノ複合材料構造体の伝導性は遊離CNTsで正確に制御することが可能であり、これによって除氷システムなどのシステムが目標とする加熱電力に応じて調整可能な固有抵抗をもたらす。

    ある実施形態において、様々な抵抗率は、CNT浸出繊維を単体で、あるいは遊離CNTsと組み合わせて使用することにより達せられる。 例えば、CNT浸出炭素繊維は、10Ωm未満(限定するものではないが、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5又は0.1Ωm、及びこれらの中間値などの各値未満)の抵抗率をもたらす。 ガラス繊維は、10 5 Ωm〜わずか0.1Ωm未満程度(限定するものではないが、10 5 、10 4 、10 3 、100、50、20、10、5、4、3、2、1、0.5、又は0.1Ωm、及びこれらの中間値など)の幅広い抵抗率を提供する。 抵抗率は、一定サイズの構造体に求められる抵抗に応じて調整される。 抵抗率の調整は、少なくとも以下の因子により達せられる。 1)CNT浸出繊維種の選択(前記に示したガラス繊維と炭素繊維との違いにより例示される通り)、2)各CNT浸出繊維の量、3)繊維に浸出したCNTsの密度、4)遊離CNTs(例えば、金属的なSWNTs、MWNTsなどを含む)の任意的な使用。

    本願発明の複合材料構造体は、前記CNT浸出繊維材料を通して電流を印加するように容易に適合され、これにより、マトリックス材を加熱して複合材料構造体の表面上で除氷する、あるいは氷の形成を防止する。 ある実施形態においては、供給される電流は、約1ボルト未満〜約24ボルトの電圧における直流電流である。 他の実施形態においては、供給される電流は、約60ボルト〜約480ボルトの電圧における交流電流である。 複合材料のCNT浸出繊維材料は、どちらか一方の種類の電流を供給するリード線(lead)に接続される。 ある実施形態において、電源との接続部は、例えば、航空機における既存の電気システムと一体化され得る。

    ある実施形態において、本願発明は、繊維材料に浸出した複数のCNTsを有するCNT浸出繊維材料が含まれた加熱要素を提供し、これによりCNT浸出繊維材料は抵抗加熱を提供する。 このような実施形態において、加熱するCNT浸出繊維材料は、マトリックス材の一部の全域にわたって配置される。 加熱要素としての繊維材料は、トウ、ヤーン、テープ、リボン(ribbon)からなる群より選択された繊維状構造として供給され、本明細書で前述したような炭素、ガラス、セラミック、有機体からなる群より選択された物質で作られている。

    ある実施形態において、加熱要素は、マトリックス材を含む必要がない。 例えば、CNT浸出繊維材料自体が露出した加熱要素として用いられる。 このような加熱要素は、ジュール熱により電気を熱に変換する。 加熱要素を通る電流は抵抗に入り、その結果、加熱要素を加熱する。 本願発明の加熱要素は、例えば、ニクロムワイヤ(nichrome wire)、ニクロムリボン(nichrome ribbon)、ニクロムストリップ(nichrome strip)などの既知の加熱要素と同様の方法で機能する。 CNT浸出繊維を用いる加熱要素は、直線状又はコイル状のワイヤ又はリボンである。 本願発明の加熱要素は、例えば、トースター、ヘアドライヤー、工業用加熱炉、床暖房、天井暖房(roof heating)、融のための道路加熱、及び乾燥機(dryer)などの数々の市販製品に用いられる。

    前述した本願発明の複合材料及び加熱要素は、複合材料構造体の表面上で除氷する、あるいは氷の形成を防止する方法に用いられる。 このような方法には、前述のように、複合材料構造体又は加熱要素を提供すること、及びCNT浸出繊維に電流を印加することが含まれ、これにより、抵抗加熱を発生させる。 前述のように、電流は直流か交流の形で印加される。

    ある実施形態において、本願発明は、除氷用製品を提供し、その製品は、マトリックス中に組み込まれた複数のカーボン・ナノチューブ浸出繊維を含み、これにより、複合材料を形成する。 複合材料は、電流を受けるように適合され、電流に反応して抵抗加熱要素として作用する。 製品は、マトリックスの全体にわたって遊離したカーボン・ナノチューブで任意的にドープされる。

    製品の例示的な実施形態には、CNT浸出繊維複合材料を有する航空機の表面が含まれる。 カーボン・ナノチューブは、少なくともカーボン・ナノチューブの軸に沿った熱の良導体であり、このような用途に適していることが示されている。 カーボン・ナノチューブは、理論的には、室温で最大約6000W/mKの伝達が可能であると予測されるが、これは、例えば、銅などの金属の熱伝達能力に対して15倍以上高い。 また、カーボン・ナノチューブ、特に単層カーボン・ナノチューブは、ナノチューブの構造に応じて、電気の良導体となり得ることが示されている。 例えば、カイラルベクトル(n,m)(ここではn=m)を有する「アームチェア」型のナノチューブは金属的であり、理論的には、1平方センチメートル当たり約4×10 9アンペアの電流密度(A/cm 2 )を有するが、これは、例えば、銅などの金属の通電容量に比べて1000倍以上の大きさである。 また、多層カーボン・ナノチューブも良導体として知られている。

    1つの構成において、製品には、マトリックス内に含浸されたCNT浸出繊維を有するCNT浸出繊維複合材料が含まれる。 このようなCNT浸出繊維は、本明細書に記載され後述される1以上の技術を用いて成長する。 最大で約12,000の繊維を含む繊維トウは、繊維を広げる開繊ステーション(fiber spreader station)へ供給される。 そして、繊維は、繊維の表面を「粗面化(roughing)」するための繊維表面改質ステーションに入り、これにより、触媒の配置を容易にする。 表面改質後、触媒が繊維に適用される。 カーボン・ナノチューブの合成は、CNT成長チャンバー内で起こり、ここでは、触媒含有繊維が最初に加熱される。 加熱後、例示的な化学蒸着処理では、繊維は炭素供給ガスを受ける状態にある。 触媒を炭素供給ガスにさらした結果、カーボン・ナノチューブが繊維上に成長又は「浸出」する。

    次に、図1に関して、本願発明の第1実施形態による、複合材料100の横断面図が模式的に図示されている。 複合材料100は、例えば、航空機(ヘリコプターを含む)の主翼、機体、及び尾部組立部品を含む空気力学的表面構造体などの組立構造体(fabricating structure)に適しており、好ましい熱的及び電気的特性を有する。 複合材料100の電気伝導性を高めることにより、抵抗加熱用途に用いられる電流の効率的な伝導を確実にする。 同様に、複合材料100の熱伝導性を高めることにより、電流の通過により生じた熱が、確実に、複合材料100の表面へ効率的に伝達されるようにする。 複合材料100は、マトリックス140内に複数の繊維又はフィラメント110を含む。 繊維110にはカーボン・ナノチューブ120が浸出する。 例示的な実施形態において、繊維110は、ガラス(例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス)繊維でもよい。 別の実施形態において、繊維110は、炭素(グラファイト)繊維でもよい。 他には、例えば、ポリアミド(芳香族ポリアミド、アラミド)(例えば、ケブラー(登録商標)29、ケブラー(登録商標)49)、金属繊維(例えば、鋼、アルミニウム、モリブデン、タンタル、チタン、及びタングステン)、炭化タングステン(tungsten monocarbide)、セラミック繊維、金属−セラミック繊維(例えば、アルミニウム・シリカ(aluminum silica))、セルロース系繊維、ポリエステル、石英、及び炭化ケイ素などの繊維を用いてもよい。

    例示的な実施形態において、カーボン・ナノチューブ120は繊維110の概して外面上に成長する。 カーボン・ナノチューブ120は、繊維110上の原位置で成長する。 例えば、ガラス繊維110は、約500℃から750℃の一定温度に維持された成長チャンバーに送り込まれる。 その後、炭素含有供給ガスは成長チャンバーに導入され、ここで、炭素ラジカルが解離し、触媒ナノ粒子の存在下、ガラス繊維上においてカーボン・ナノチューブの形成を始める。

    1つの構成において、複合材料100を形成するために、CNT浸出繊維110が樹脂槽に供給される。 別の構成において、織物はCNT浸出繊維110から織られ、その織物は樹脂槽へ供給される。 樹脂槽は、CNT浸出繊維110とマトリックス140とを含んで構成された複合材料100を生成するための樹脂を収容する。 1つの構成において、マトリックス140は、エポキシ樹脂マトリックスの形態をとる。 別の構成において、マトリックス140は、汎用ポリエステル(例えば、オルトフタル酸ポリエステル(orthophthalic polyester))、改質ポリエステル(例えば、イソフタル酸ポリエステル(isophthalic polyester))、フェノール樹脂、ポリウレタン、及びビニルエステルのうちの1つであってよい。 また、マトリックス140は、より高い運転温度での性能が求められる用途(例えば、航空機及び/又は軍事関連用途)に有用な非樹脂系マトリックス(例えば、セラミックマトリックス)の形態もとり得る。

    CNT浸出繊維110又はこれから織られた織物に樹脂マトリックスを含浸させるための既知の複合材料製造方法(例えば、真空補助樹脂浸出法(vacuum assisted resin infusion method)及び樹脂押出法(resin extrusion method)など)が利用されてもよい。 例えば、CNT浸出繊維110又はこれから織られた織物が型内に置かれて、樹脂がその中に注入される。 別の構成において、CNT浸出繊維110又はこれから織られた織物は型内に置かれ、その後、この型は真空排気されて樹脂を引き出す。 別の構成において、CNT浸出繊維110は、ワインディング(winding)により「0/90」の方向に織られる、すなわち、CNT浸出繊維100の第1の層又はパネル(panel)は一方向(例えば、約0°)に巻かれ、CNT浸出繊維100の第2の層又はパネルは、第1の層又はパネルに直交する別の方向(すなわち、約90°)に巻かれる。 複合材料100は、「0/90」方向で、カーボン・ナノチューブ120の相互嵌合が向上し、その結果、複合材料100の熱伝導性が向上すると考えられる。

    カーボン・ナノチューブ120が浸出した繊維110は、熱硬化性樹脂マトリックス(例えば、エポキシ樹脂マトリックス)140に組み込まれ、これにより、複合材料100が形成される。 マトリックスに繊維を組み込む方法は当該技術分野において周知であり、このため、更なる詳細については説明しない。 1つの構成において、CNT浸出繊維110は、高圧硬化法(high pressure curing method)を用いてマトリックス140内に組み込まれる。 複合材料のCNT担持量(CNT loading)は所定の複合材料におけるカーボン・ナノチューブの重量百分率を意味することが示されている。 CNTベースの複合材料を生成するための殆どの処理には、カーボン・ナノチューブを発生期の(nascent)複合材料の樹脂/マトリックスに直接混合することが含まれる。 このような処理によって生じる複合材料では、完成した複合材料内のカーボン・ナノチューブが最大で約5重量%と限られている。 一方、複合材料100は25重量%を超えるCNT担持量を有する。 CNT浸出繊維110を用いて、60重量%ものCNT担持量を有する複合材料が実証されている。 抵抗加熱による材料の熱生成能力は、その電気伝導性によって決まる。 複合材料100の全体的な電気伝導性は、少なくとも1つには、複合材料100のCNT担持量の関数である。 したがって、複合材料100の熱生成能力は、少なくとも1つには、複合材料100のCNT担持量の関数である。 さらに、材料の熱伝達効果はその熱伝導性によって決まる。 複合材料100の全体的な熱伝導性は、少なくとも1つには、複合材料100のCNT担持量の関数である。 したがって、複合材料100の熱伝達効果は、少なくとも1つには、複合材料100のCNT担持量の関数である。 このため、複合材料100のCNT担持量が多いと、複合材料100の抵抗加熱による熱生成能力に加え熱伝達効果をも高める。 複合材料100の伝導性は、複合材料100のCNTの重量百分率を調節することにより、所定の要求に合せて調整されてもよい。

    CNT浸出繊維が組み込まれた前述の複合材料100は、例えば、除氷用途にとって好ましい電気的及び熱的特性を備えた組立構造体に適している。 複合材料100は、航空機の主翼構造体又はその構成部品、レーダー構造体、及び、環境に露出し、好ましくない氷の堆積によりその動作に悪影響がある他の構造体を組み立てるために用いられる。

    例えば、その重量及び強度特性に関して有用な複合材料構造体は、相対的に熱伝導性が低いため、除氷用途には適さない場合がある。 このような複合材料は、金属スプレーでコーティングされ、これにより、その熱伝導性を改善してもよい。 しかしながら、このような手段は、重量を増加させ、複雑さを高め、コストを上昇させる(例えば、金属強化複合材料)とともに、電解腐食による損傷に対する感受性を増大させる。 CNT浸出繊維110を備えた複合材料100は、複合材料の有用な特性を保持しつつ、金属スプレーの必要性を除去する。 さらに、複合材料100は、複合材料100自体が抵抗加熱要素として作用するように構成されるので、別体の加熱要素の必要性が排除される。

    次に、図2に関して、本願発明の別の実施形態による複合材料200の横断面図が模式的に図示されている。 CNT浸出繊維複合材料200は、複合材料100にほぼ類似し、複数の繊維210及びマトリックス140を含む。 このような実施形態の中には、マトリックス140にカーボン・ナノチューブ220をドープしたものがある。 1つの構成において、マトリックス140は樹脂マトリックスである。 また、本明細書に記載されるように他のマトリックス材も用いられる。 マトリックス140にカーボン・ナノチューブ220をドープすることにより、マトリックス140、そして結果的に複合材料200全体の熱伝導性及び電気伝導性を更に高める。

    次に、図3に関して、複合材料350の上面355に配置されたCNT浸出繊維複合材料100のコーティング層が模式的に図示されている。 1つの構成において、複合材料350は、従来の複合ガラス又はガラス強化プラスチックの形態をとる。 別の構成において、複合材料350は、炭素繊維複合材料構造体又は炭素繊維強化プラスチック構造体の形態をとる。 複合材料350自体は、良好な電気及び熱伝導性を用いる除氷用途での使用には一般的に適していない。 しかしながら、複合材料350の表面355上においてCNT浸出繊維210を含むコーティング又は層100を適用することにより、この組み合わせ(すなわち、複合材料350とCNT浸出繊維複合材料100の組み合わせ)は、著しく増進した電気及び熱伝導性を示す。

    1つの構成において、CNT浸出繊維210は織られて織物を形成する。 1つの構成において、繊維210のコーティングは、約20ナノメートル(nm)から約12.5ミリメートル(mm)に及ぶ厚さを有する。 図示された実施形態は、便宜上、単層の繊維210を示しているが、当然のことながら、多層の繊維210を用いて複合材料350上にコーティングを形成することもできる。 さらに、除氷用途の従来の複合材料構造体と併せて、CNT浸出繊維複合材料200のコーティング又は層(カーボン・ナノチューブをドープしたマトリックス140を備える)も用いることができるのは当然のことである。

    別の複合材料上のコーティングとしてCNT浸出繊維複合材料100を用いる利点は、CNT浸出繊維複合材料100のコーティングにより、重量及び強度における利点、並びに他の好ましい特性を保持しつつ、除氷用途に用いるには乏しい熱及び/又は電気伝導性を有する材料が使用可能になることである。

    次に、図4に関して、除氷用途のために構成されたCNT浸出繊維複合材料100が図示されている。 電圧源450は、CNT浸出繊維電極540a及び540bを介して複合材料100に電気的に連結され、これにより、複合材料100を通る電流を発生させる。 CNT浸出繊維110及び結合したカーボン・ナノチューブ130を通って流れる電流は、抵抗加熱によって熱を生成する。 生成された熱は、CNT浸出繊維110の真上の個々の位置でCNT浸出繊維110により複合材料100の表面に効率的に伝達される。 CNT浸出繊維110の間隔は、様々なレベルの加熱を提供するように調節される。 CNT浸出繊維110間の距離は、0.25インチ〜2インチ以上に及ぶ。 複合材料100は別体の抵抗加熱要素の必要性を除去する。

    次に、図5に関して、除氷用途のために構成されたCNT浸出繊維複合材料100が図示されている。 当然のことながら、複合材料200も除氷用途のために同様に構成される。 電圧源450は複合材料100に電気的に連結され、複合材料100を通る電流を発生させる。 CNT浸出繊維110及び結合したカーボン・ナノチューブ130を通って流れる電流は、抵抗加熱のために熱を生成する。 生成された熱は、CNT浸出繊維110及び結合したカーボン・ナノチューブ130(複合材料200の場合にはカーボン・ナノチューブ220も)により、複合材料100の表面に効率的に伝達される。 複合材料100、200は、別体の抵抗加熱要素の必要性を除去する。

    例示的なCNT浸出繊維材料は、カーボン・ナノチューブ浸出(「CNT浸出」)炭素繊維材料である。 炭素繊維材料に関する以下の考察は単なる例示にすぎない。 炭素繊維材料に関して本明細書で提供される教示及び指針を所与として、当業者は、本明細書に記載された処理を利用することにより、ガラス繊維材料、セラミック繊維材料、金属繊維材料、及び有機繊維材料(限定するものではないが、アラミド繊維、セルロース系繊維材料、並びに他の天然及び合成有機繊維など)を含む他のCNT浸出繊維材料を製造できることを認識するであろう。

    炭素繊維材料上に浸出したCNTsは、炭素繊維材料の様々な性質(例えば、熱及び/又は電気伝導性、及び/又は引張強度など)を変更し得る。 CNT浸出炭素繊維材料を製造するために用いられる処理により、CNTsには略均一な長さ及び分布が付与され、これにより、改質される炭素繊維材料一面に有用な性質を与える。 また、本明細書に開示された処理は巻き取り可能な寸法のCNT浸出炭素繊維材料の生成に適している。

    本開示は、CNT浸出炭素繊維材料を製造するための処理を説明する。 本明細書に開示された処理は、炭素繊維材料に対して標準的なサイジング溶液を適用する前に、又はその代わりに、新たに生成される発生期の炭素繊維材料に適用される。 あるいは、本明細書に開示された処理は、既に表面にサイジング剤が適用された工業用の炭素繊維材料(例えば、炭素トウ)を利用することができる。 このような実施形態において、サイジング剤は、炭素繊維材料及び合成CNTs間を直接接触させるために除去されるが、バリア・コーティング及び/又は遷移金属粒子は、以下に更に説明されるように、間接的な浸出をもたらす中間層として機能する。 CNTの合成後、所望により、更なるサイジング剤を炭素繊維材料に適用することができる。

    ある実施形態において、本願発明は、カーボン・ナノチューブ(CNT)が浸出した炭素繊維材料を含む複合材料を提供する。 CNT浸出炭素繊維材料には、巻き取り可能な寸法の炭素繊維材料、炭素繊維材料の周囲に等的に(conformally)配置されたバリア・コーティング、及び炭素繊維材料に浸出したカーボン・ナノチューブ(CNTs)が含まれる。 炭素繊維材料へのCNTsの浸出には、炭素繊維材料に対する個々のCNTsの直接結合、又は、遷移金属NP、バリア・コーティング、若しくはその両方を介した間接結合の結合モチーフが含まれる。

    理論に拘束されるものではないが、CNT形成触媒として機能する遷移金属NPsは、CNT成長の種晶構造(seed structure)を形成することにより、CNT成長に触媒作用を及ぼす。 1つの実施形態において、CNT形成触媒は、バリア・コーティングにより固定されて炭素繊維材料の基部に留まって、炭素繊維材料の表面に浸出する。 このような場合、遷移金属ナノ粒子触媒により当初形成された種晶構造は、当該技術分野でよく観察されるように、その触媒をCNT成長の前縁(leading edge)に沿って移動させなくても、触媒作用を受けない(non-catalyzed)連続的なCNTの種結晶成長(seeded CNT growth)には十分である。 このような場合、NPsは、炭素繊維材料にCNTが付着する付着点として機能する。 また、バリア・コーティングの存在は、更なる間接的な結合モチーフももたらす。 例えば、CNT形成触媒は、前述のようにバリア・コーティング内に固定されるが、炭素繊維材料と表面接触しない。 このような場合、CNT形成触媒と炭素繊維材料間にバリア・コーティングが配置された積層構造となる。 いずれにしても、形成されるCNTsは、炭素繊維材料に浸出する。 ある実施形態では、CNT形成触媒を、成長するナノチューブの前縁になお追随させるバリア・コーティングもあり得る。 このような場合、これは、炭素繊維材料、又は、任意的にバリア・コーティングに対するCNTsの直接的な結合となる。 カーボン・ナノチューブと炭素繊維材料間に形成される実際の結合モチーフの性質にかかわらず、浸出したCNTは強固であり、これによりCNT浸出炭素繊維材料がカーボン・ナノチューブの性質及び/又は特性を示すことが可能となる。

    かさねて理論に拘束されるものではないが、CNTsが繊維材料上で成長するとき、反応チャンバー内に存在する高温及び/又は残留酸素及び/又は水分は、炭素繊維材料に損傷を与える。 さらに、炭素繊維材料自体は、CNT形成触媒自体との反応により損傷を受ける。 すなわち、炭素繊維材料は、CNT合成のために用いられる反応温度での触媒に対する炭素原料として機能する。 このような過量の炭素は、炭素原料ガスの管理導入を阻害するとともに、炭素を過度に担持させることにより触媒を被毒化する働きさえする。 本願発明に用いられるバリア・コーティングは、炭素繊維材料上のCNT合成を容易にするように意図されている。 理論に拘束されるものではないが、コーティングは、熱分解に対する遮熱層を提供したり、繊維材料を高温環境にさらすことを防止する物理的障壁となる。 選択的又は追加的に、コーティングは、CNT形成触媒と炭素繊維材料間の接触表面積を最小化したり、CNT成長温度で炭素繊維材料をCNT形成触媒にさらすことを抑制する。

    CNT浸出炭素繊維材料を有する本願発明の組成物には、例えば、炭素フィラメント、炭素繊維ヤーン、炭素繊維トウ、炭素テープ、炭素繊維ブレイド(fiber braid)、炭素織物、不織炭素繊維マット、炭素繊維プライ(fiber ply)、及び他の3次元織物構造体などの炭素繊維材料が含まれる。 炭素フィラメントには、大きさが約1ミクロンから約100ミクロンまでの直径を有する高アスペクト比の炭素繊維が含まれる。 炭素繊維トウは、一般的にフィラメントを密に結合した束(bundle)であり、通常は撚り合わされてヤーンとなる。

    ヤーンには、撚り合わされたフィラメントを密に結合した束が含まれる。 ヤーンにおける各フィラメントの直径は、比較的均一である。 ヤーンは、1000リニアメーターのグラム重量として示される「テックス(tex)」、又は10,000ヤードのポンド重量として示されるデニール(denier)により、通常は、約200テックスから約2000テックスまでの標準的なテックス範囲で表される様々な重量を有する。

    トウには、撚り合わされていないフィラメントを緩く結合した束が含まれる。 ヤーンと同様に、トウにおけるフィラメントの直径は概して均一である。 また、トウも様々な重量を有し、テックス範囲は、通常、200テックスから2000テックスの間となる。 それらは、しばしば、例えば、12Kトウ、24Kトウ、48Kトウなどのトウ内にある数千のフィラメントの数で特徴付けられる。

    炭素テープは、織物構造体(weave)として組まれるか、又は、不織の扁平なトウを示す材料である。 炭素テープは、様々な幅をもち、通常リボンに類似する両面構造体である。 本願発明の処理では、テープの一面又は両面におけるCNTの浸出が可能である。 CNT浸出テープは、平らな基材表面上の「カーペット(carpet)」あるいは「樹木林(forest)」に似ている。 さらに、本願発明の処理は、テープの巻き取りを機能させるために、連続的なモードで実施できる。

    炭素繊維ブレードは、炭素繊維が高密度に詰め込まれたロープ状構造体を示す。 このような構造体は、例えば、炭素ヤーンから組まれる。 編み上げ構造体は中空部分を含んでもよく、あるいは、別のコア材料の周囲に組まれてもよい。

    ある実施形態において、多数の基礎的な炭素繊維材料の構造体は、織物又はシート状構造体に組織化される。 これらには、前述のテープに加えて、例えば、炭素織物、不織炭素繊維マット及び炭素繊維プライが含まれる。 このような高規則構造体は、元となるトウ、ヤーン、フィラメントなどから、これら元となる繊維にCNTsが既に浸出した状態で組まれる。 あるいは、このような構造体は、本明細書に記載されたCNT浸出処理のための基材として機能する。

    炭素繊維材料にCNTを浸出させるための本願発明の処理により、CNTの長さを均一に、かつ、連続処理で制御することが可能となり、これによって、巻き取り可能な炭素繊維材料を、CNTsにより高速に機能化することが可能となる。 5秒から300秒の材料滞留時間で、長さ3フィートのシステムの連続処理におけるラインスピードを、毎分約0.5フィートから毎分約36フィート以上のあらゆる範囲とすることが可能である。 選択されるラインスピードは、以下でさらに説明されるように、様々なパラメータにより決まる。

    ある実施形態において、約5秒から約30秒の材料滞留時間により、約1ミクロンから約10ミクロンの長さを有するCNTsが生成される。 また、ある実施形態では、約30秒から約180秒の材料滞留時間により、約10ミクロンから約100ミクロンの長さを有するCNTsが生成される。 また更なる実施形態では、約180秒から約300秒の材料滞留時間により、約100ミクロンから約500ミクロンの長さを有するCNTsが生成される。 当業者であれば、これらの範囲がおおよそのものであり、また、CNTの長さが、反応温度、並びに、キャリア及び炭素原料の濃度及び流量により調節可能であることを認識できるであろう。

    本願発明のCNT浸出炭素繊維材料にはバリア・コーティングが含まれる。 バリア・コーティングには、例えば、アルコキシシラン、メチルシロキサン、アルモキサン、アルミナナノ粒子、スピンオンガラス(spin on glass)、ガラスナノ粒子が含まれる。 後述されるように、CNT形成触媒は、未硬化のバリア・コーティング材に加えられて、その後、共に炭素繊維材料に適用される。 他の実施形態において、バリア・コーティング材は、CNT形成触媒の配置前に炭素繊維材料に加えられる。 バリア・コーティング材は、この後のCVD成長のために炭素原料へCNT形成触媒をさらすのに十分な薄さである。 ある実施形態では、その厚さは、CNT形成触媒の有効直径未満か、あるいは、それとほぼ等しい。 ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、約10nmから約100nmの範囲にある。 また、バリア・コーティングは、10nm未満であってよく、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm及びこれらの中間の全ての値を含む。

    理論に拘束されるものではないが、バリア・コーティングは、炭素繊維材料とCNTsの中間層として機能し、CNTsを炭素繊維材料に機械的に浸出させる働きをする。 このような機械的な浸出は、炭素繊維材料にCNTsの性質をなお付与しつつ、炭素繊維材料がCNTsを組織化するための基盤として機能する強固な機構をさらに提供する。 また、バリア・コーティングを含むことの利点は、水分にさらされることに起因した化学的損傷、及び/又は、CNT成長を促進するために用いられる温度で繊維材料を加熱することに起因したあらゆる熱的損傷から、繊維材料を直接保護するという点にある。

    本明細書に開示された浸出CNTsは従来の炭素繊維の「サイジング剤(sizing)」の代替品として有効に機能する。 浸出CNTsは、従来のサイジング材料よりも一層強固であり、複合材料中の繊維−マトリックス間界面を改善し、より一般的には、繊維間界面を改善することができる。 実際には、CNT浸出炭素繊維材料の性質が、炭素繊維材料の性質に加えて浸出CNTsの性質を組み合わせたものであるという点で、本明細書に開示されたCNT浸出繊維材料は、それ自体が複合材料である。 したがって、本願発明の実施形態は、炭素繊維材料に所望の性質を与える手段を提供するが、これによらなければ、炭素繊維材料は、このような性質を欠如しているか、又は不十分にしか有していない。 炭素繊維材料は、特定用途の要求を満たすために調整又は設計される。 サイジング剤として作用するCNTsは、疎水性のCNT構造により水分の吸収から炭素繊維材料を保護する。 また、疎水性のマトリックス材は、以下でさらに例示されるように、疎水性のCNTsと良好に相互作用して繊維−マトリックス間の相互作用を向上させる。

    前述の浸出CNTsを有する炭素繊維材料が有益な性質を付与されるにもかかわらず、本願発明の組成物は「従来の」サイジング剤を更に含むことができる。 このようなサイジング剤は、種類及び機能が大きく異なり、例えば、界面活性剤、静電気防止剤、潤滑剤、シロキサン、アルコキシシラン、アミノシラン、シラン、シラノール、ポリビニルアルコール、でんぷん、及びこれらの組み合わせを含む。 このような補助的なサイジング剤は、CNTs自体を保護するために、又は浸出CNTsの存在により繊維へ付与することができない更なる性質を提供するために用いられる。

    図6〜11は、前述の処理により作製される炭素繊維材料のTEM及びSEM画像を示す。 これらの材料を作製するための手順は、以下及び実施例I〜IIIに更に詳述される。 図6及び図7は、夫々、連続処理においてAS4炭素繊維上に作製された多層カーボン・ナノチューブ及び2層カーボン・ナノチューブのTEM画像を示す。 図8は、CNT形成ナノ粒子触媒が機械的に炭素繊維材料の表面に浸出した後に、バリア・コーティング内から成長するCNTsの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。 図9は、炭素繊維材料上で目標長さ約40ミクロンの20%以内まで成長したCNTsの長さ分布の一貫性を明示するSEM画像を示す。 図10は、CNT成長におけるバリア・コーティングの効果を明示するSEM画像を示す。 バリア・コーティングが適用された部位では、高密度かつ良好な配列のCNTsが成長し、バリア・コーティングがない部位ではCNTsは成長しなかった。 図11は、約10%以内の繊維にわたってCNT密度の均一性を明示する炭素繊維上のCNTsの低倍率SEM画像を示す。

    CNT浸出炭素繊維材料は、多種多様な用途に用いられる。 例えば、CNT浸出炭素短(chopped)繊維は推進剤の用途に用いられる。 米国特許第4,072,546号には、推進剤の燃焼率を増加させるためのグラファイト繊維の使用が記載されている。 炭素短繊維上に浸出したCNTsの存在により、当該燃焼率を更に高めることができる。 また、CNT浸出炭素繊維材料は難燃剤用途にも用いられる。 例えば、CNTsは、CNT浸出炭素繊維材料の層でコーティングされた材料の燃焼を遅延させる保護炭化層を形成する。

    CNTの浸出した伝導性の炭素繊維は超伝導用電極の製造に用いられる。 超伝導繊維の生成では、繊維材料と超伝導層の熱膨張係数が異なることが1つの原因となり、担体繊維への超伝導層の十分な接着性を実現することは困難となり得る。 当該技術分野における別の問題はCVD処理による繊維のコーティング中に発生する。 例えば、反応ガス(例えば、水素ガス又はアンモニアなど)は、繊維表面を攻撃し、及び/又は繊維表面上に好ましくない炭化水素化合物を形成して、超伝導層の良好な接着をより困難にする。 バリア・コーティングが施されたCNT浸出炭素繊維材料は、当該技術分野におけるこれらの課題を克服する。

    ある実施形態において、本願発明はCNT浸出の連続処理を提供するが、この処理には、(a)巻き取り可能な寸法の炭素繊維材料の表面上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を配置すること、及び(b)炭素繊維材料上にカーボン・ナノチューブを直接合成して、これにより、カーボン・ナノチューブが浸出した炭素繊維材料を形成すること、が含まれる。 長さ9フィートのシステムに関して、処理のラインスピードは毎分約1.5フィートから毎分約108フィートの範囲となる。 本明細書に記載された処理により達成されるラインスピードは、商業的に適量のCNT浸出炭素繊維材料を短い製造時間で形成可能にする。 例えば、毎分36フィートのラインスピードでは、独立した5つのトウ(1トウ当たり20ポンド)を同時に処理するように設計されたシステムにおいて、1日に生成されるCNT浸出炭素繊維の量(繊維上に浸出するCNTsが5重量%超)は100ポンドを上回る。 このシステムは、成長ゾーンを繰り返すことにより、一度に、又はより高速に大量のトウを製造するように構成されている。 また、CNTsの製造工程の中には、当該技術分野で知られているように、連続運転モードを阻む極低速なものがある。 例えば、当該技術分野で知られている標準的な処理において、CNT形成触媒の還元工程を実施するのに1〜12時間かかる。 また、CNT成長自体も時間がかかり、例えば、CNT成長に数十分を必要とし、本願発明において実現される高速のラインスピードを不可能にしている。 本明細書に記載された処理は、このような律速工程を取り除く。

    本願発明のCNT浸出炭素繊維材料の形成処理は、事前に形成されたカーボン・ナノチューブの懸濁液を繊維材料に適用しようとする場合に生じるCNTの絡み合い(entanglement)を回避できる。 すなわち、事前に形成されたCNTsは炭素繊維材料に結合しないため、CNTsは束になって絡みやすくなる。 その結果、炭素繊維材料に弱く付着するCNTsが低均一に分布する。 しかし、本願発明の処理は、必要に応じて、成長密度を低減することにより、炭素繊維材料の表面上で高均一に絡み合ったCNTマットを提供できる。 低密度で成長したCNTsは、最初に炭素繊維材料に浸出する。 このような実施形態において、繊維は、垂直配列を生じさせるほどには高密度に成長しない。 その結果、炭素繊維材料の表面上で絡み合ったマットとなる。 これとは対照的に、事前に形成されたCNTsを手作業で塗布する場合、繊維材料上のCNTマットの分布及び密度を確実に均一にすることはできない。

    図12は、本願発明の具体例に従ってCNT浸出炭素繊維材料を生成する処理700のフローチャートを示す。

    処理700には、少なくとも以下の工程が含まれる。

    工程701:炭素繊維材料の官能化。

    工程702:官能化された炭素繊維材料へのバリア・コーティング及びCNT形成触媒の適用。

    工程704:カーボン・ナノチューブの合成に十分な温度までの炭素繊維材料の加熱。

    工程706:触媒を含んだ炭素繊維上におけるCVDを介したCNT成長の促進。

    工程701において、炭素繊維材料は官能化され、繊維の表面湿潤を促進するとともに、バリア・コーティングの付着性を向上させる。

    炭素繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出させるために、カーボン・ナノチューブは、バリア・コーティングで等角的にコーティングされた炭素繊維材料上に合成される。 1つの実施形態において、これは、工程702のように、まず炭素繊維材料をバリア・コーティングで等角的にコーティングし、その後、バリア・コーティング上にナノチューブ形成触媒を配置することにより達成される。 ある実施形態において、バリア・コーティングは、触媒配置前に、部分的に硬化されていてもよい。 これにより、CNT形成触媒と炭素繊維材料との表面接触が可能となるなど、触媒を受け入れてバリア・コーティング内へ埋め込むことのできる表面がもたらされる。 このような実施形態では、バリア・コーティングは、触媒を埋め込んだ後、十分に硬化される。 ある実施形態において、バリア・コーティングは、CNT形成触媒の配置と同時に炭素繊維材料全体に等角的にコーティングされる。 CNT形成触媒及びバリア・コーティングが適切に配置されると、バリア・コーティングは十分に硬化される。

    ある実施形態において、バリア・コーティングは、触媒の配置前に十分に硬化される。 このような実施形態では、十分に硬化したバリア・コーティングを施した炭素繊維材料はプラズマで処理され、これにより触媒を受容するために表面を作製する。 例えば、硬化したバリア・コーティングを有するプラズマ処理された炭素繊維材料は、CNT形成触媒の配置が可能な粗面化した(roughened)表面を提供する。 このように、バリア・コーティングの表面を「粗面化(roughing)」するプラズマ処理は、触媒の配置を容易にする。 粗度は、通常、ナノメートルのスケール(scale)である。 プラズマ処理工程において、深さ及び直径が数ナノメートル単位のクレーター(crater)又はくぼみが形成される。 このような表面改質は、限定するものではないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素及び水素など、種々異なる1以上のガスのプラズマを用いて達成される。 ある実施形態では、プラズマによる粗面化は炭素繊維材料自体にも直接行われる。 これにより、炭素繊維材料へのバリア・コーティングの接着が容易になる。

    さらに図12を併用して後述されるように、触媒は、遷移金属ナノ粒子を含んで構成されるCNT形成触媒を含有する溶液として作製される。 合成されたナノチューブの直径は、前述のように、金属粒子のサイズと関連している。 ある実施形態では、CNT形成遷移金属ナノ粒子触媒を含有する工業用の分散液を利用して希釈せずに使用されるが、他の実施形態では、触媒を含有する工業用の分散液は希釈される。 このように溶液を希釈するかどうかは、前述のように、成長すべきCNTの所望の密度及び長さによって決まる。

    図12の具体例に関して、カーボン・ナノチューブの合成は、化学蒸着(CVD)処理に基づいて示されており、高温で生じる。 具体的な温度は触媒の選択に依存するが、通常は、約500℃〜約1000℃の範囲である。 したがって、工程704には、カーボン・ナノチューブの合成を補助するために前記範囲の温度まで、バリア・コーティングが施された炭素繊維材料を加熱することが含まれる。

    次に、工程706において、触媒を含んだ炭素繊維材料上でCVDにより促進されるナノチューブ成長が行われる。 CVD処理は、例えば、炭素含有原料ガス(例えば、アセチレン、エチレン、及び/又はエタノール)により進められる。 CNT合成処理では、主要なキャリアガスとして、通常、不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム)が用いられる。 炭素原料は、混合物全体の約0%から約15%の範囲で供給される。 CVD成長のための略不活性環境は、成長チャンバーから水分及び酸素を除去して用意される。

    CNTの合成処理において、CNTsは、CNT形成遷移金属ナノ粒子触媒の部位で成長する。 強プラズマ励起電界の存在を任意に用いて、ナノチューブの成長に影響を与えることができる。 すなわち、成長は、電界方向に従う傾向がある。 プラズマ・スプレーの配置及び電界を適切に調節することにより、垂直配列の(すなわち、炭素繊維材料に対して垂直な)CNTsを合成できる。 一定の条件下では、プラズマがない場合であっても、密集したナノチューブは、成長方向を垂直に維持して、結果として、カーペット(carpet)又はフォレスト(forest)に似た高密度配列のCNTsになる。 また、バリア・コーティングの存在はCNT成長の方向性にも影響を与える。

    炭素繊維材料上に触媒を配置する工程は、溶液のスプレー、若しくは溶液の浸漬コーティングにより、又は、例えば、プラズマ処理を用いた気相蒸着により可能である。 手法の選択は、バリア・コーティングが適用される方法と連係してなされる。 このように、ある実施形態では、溶媒に含まれた触媒の溶液を形成した後、その溶液を用いて、バリア・コーティングが施された炭素繊維材料にスプレー若しくは浸漬コーティングすることにより、又はスプレー及び浸漬コーティングの組み合わせにより、触媒が適用される。 単独か、又は組み合わせて用いられるいずれかの手法は、1回、2回、3回、4回、あるいは何回でも使用され、それによってCNT形成触媒で十分均一にコーティングされた炭素繊維材料を提供する。 浸漬コーティングが使用される場合、例えば、炭素繊維材料は、第1の浸漬槽において、第1の滞留時間、第1の浸漬槽内に置かれる。 第2の浸漬槽を使用する場合、炭素繊維材料は、第2の滞留時間、第2の浸漬槽内に置かれる。 例えば、炭素繊維材料は、浸漬の形態及びラインスピードに応じて約3秒〜約90秒の間、CNT形成触媒の溶液にさらされる。 スプレー又は浸漬コーティングを用いることにより、触媒の表面密度が約5%未満から約80%もの表面被覆率で炭素繊維材料(ここでは、CNT形成触媒ナノ粒子がほぼ単分子層となる)を処理する。 ある実施形態では、炭素繊維材料上におけるCNT形成触媒のコーティング処理は、単分子層だけを生成すべきである。 例えば、CNT形成触媒の積層上におけるCNT成長は、CNTの炭素繊維材料への浸出度を損なうことがある。 他の実施形態では、蒸着技術、電解析出技術、及び当業者に知られている他の処理(例えば、遷移金属触媒を、有機金属、金属塩又は気相輸送を促進する他の組成物として、プラズマ原料ガスへ添加することなど)を用いて、遷移金属触媒を炭素繊維材料上に配置する。

    本願発明の処理は連続的となるように構成されるため、巻き取り可能な炭素繊維材料は、浸漬コーティング槽が空間的に分離されている一連の槽で浸漬コーティングを施すことが可能である。 発生期の炭素繊維が新たに生成されている連続処理において、CNT形成触媒の浸漬又はスプレーは、炭素繊維材料にバリア・コーティングを適用して硬化又は部分的に硬化させた後の第1段階となる。 バリア・コーティング及びCNT形成触媒の適用は、新たに形成された炭素繊維材料のために、サイジング剤の適用に代えて行われる。 他の実施形態では、CNT形成触媒は、バリア・コーティングの後、他のサイジング剤の存在下で、新たに形成された炭素繊維に適用される。 このようなCNT形成触媒及び他のサイジング剤の同時適用であっても、CNT形成触媒を炭素繊維材料のバリア・コーティングと表面接触させて供給し、確実にCNTを浸出できる。

    使用される触媒溶液は、遷移金属ナノ粒子であるが、これは、前述したように、dブロックの遷移金属であればいかなるものでもよい。 加えて、ナノ粒子には、元素形態又は塩形態のdブロック金属からなる合金や非合金の混合物、及びそれらの混合物が含まれる。 このような塩形態には、限定するものではないが、酸化物、炭化物及び窒化物が含まれる。 限定されない例示的な遷移金属NPsには、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au、Ag、及びそれらの塩と、その混合物が含まれる。 ある実施形態において、バリア・コーティングの配置と同時に、CNT形成触媒を直接炭素繊維材料に適用あるいは浸出させることにより、このようなCNT形成触媒は炭素繊維上に配置される。 この遷移金属触媒の多くは、例えば、Ferrotec Corporation(Beford, NH)などの様々なサプライヤーから市販されており容易に入手できる。

    炭素繊維材料にCNT形成触媒を適用するために用いられる触媒溶液は、CNT形成触媒の全域にわたって均一な分散を可能とするいかなる共通溶媒であってもよい。 このような溶媒には、限定するものではないが、水、アセトン、ヘキサン、イソプロピルアルコール、トルエン、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサン、又はCNT形成触媒ナノ粒子の適切な分散系を形成するために極性が制御された他のいかなる溶媒も含まれる。 CNT形成触媒の濃度は、触媒対溶媒で、およそ1:1から1:10000の範囲内である。 このような濃度は、バリア・コーティング及びCNT形成触媒が同時に適用されるときにも用いられる。

    ある実施形態において、炭素繊維材料は、CNT形成触媒の配置後、約500℃〜1000℃の温度で加熱されて、これによりカーボン・ナノチューブを合成する。 この温度での加熱は、CNT成長のための炭素原料の導入前に、又は略同時に行われる。

    ある実施形態において、本願発明により提供される処理には、炭素繊維材料からサイジング剤を除去すること、炭素繊維材料全体に等角的にバリア・コーティングを適用すること、炭素繊維材料にCNT形成触媒を適用すること、炭素繊維材料を少なくとも500℃まで加熱すること、そして、炭素繊維材料上にカーボン・ナノチューブを合成することが含まれる。 ある実施形態において、CNT浸出処理の工程には、炭素繊維材料からのサイジング剤の除去、炭素繊維材料へのバリア・コーティングの適用、炭素繊維へのCNT形成触媒の適用、CNT合成温度までへの繊維の加熱、及び触媒含有炭素繊維材料におけるCVD促進のCNT成長が含まれる。 このように、工業用の炭素繊維材料が使用される場合、CNT浸出炭素繊維を構成するための処理には、炭素繊維材料上にバリア・コーティング及び触媒を配置する前に、炭素繊維材料からサイジング剤を除去する個別の工程が含まれる。

    カーボン・ナノチューブの合成工程には、参照により本明細書に組み込まれている同時係属の米国特許出願第2004/0245088号に開示されているものなど、カーボン・ナノチューブを形成するための多数の手法が含まれる。 本願発明の繊維上で成長するCNTsは、限定するものではないが、マイクロキャビティ(micro-cavity)、熱又はプラズマ助長CVD法、レーザー・アブレーション、アーク放電、高圧一酸化炭素(HiPCO)などの、当該技術分野において知られている手法により可能である。 CVDの間、特に、CNT形成触媒が配置された、バリア・コーティングの施された炭素繊維材料が直接用いられる。 ある実施形態において、従来のいかなるサイジング剤もCNT合成前に除去可能である。 ある実施形態において、アセチレンガスはイオン化されて、CNT合成のための低温炭素プラズマジェットを形成する。 プラズマは触媒を有する炭素繊維材料に向けられる。 このように、ある実施形態では、炭素繊維材料上におけるCNTsの合成には、(a)炭素プラズマを形成すること、及び(b)炭素繊維材料上に配置された触媒に炭素プラズマを向けること、が含まれる。 成長したCNTsの直径は、前述のように、CNT形成触媒のサイズにより決定される。 ある実施形態において、サイジングされた繊維基材は約550℃〜約800℃に加熱され、CNTの合成を容易にする。 CNTsの成長を開始するために、プロセスガス(例えば、アルゴン、ヘリウム又は窒素)及び炭素含有ガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノール又はメタン)の2つのガスが反応器(reactor)に流される。 CNTsは、CNT形成触媒の部位で成長する。

    ある実施形態において、CVD成長はプラズマで助長される。 プラズマは、成長処理中に電界を与えることにより生成される。 この条件下で成長したCNTsは電界の方向に従う。 したがって、反応器の配置を調節することにより、垂直配向のカーボン・ナノチューブが、円筒状の繊維の周囲から放射状に成長する。 ある実施形態では、繊維の周囲に放射状に成長させるために、プラズマは必要とされない。 明確な面を有する炭素繊維材料(例えば、テープ、マット、織物、パイルなど)に対して、触媒は一面又は両面に配置され、それに対応して、CNTsもまた一面又は両面で成長する。

    前述のように、CNT合成は、巻き取り可能な炭素繊維材料を機能化する連続処理を提供するのに十分な速度で行われる。 以下に例示されるように、このような連続的な合成は、多くの装置構成により容易になる。

    ある実施形態において、CNT浸出炭素繊維材料は、「オール・プラズマ(all plasma)」処理で構成される。 オール・プラズマ処理は、前述のように、プラズマによる炭素繊維材料の粗面化を伴って、これにより、繊維表面の湿潤特性を向上させ、より等角的なバリア・コーティングをもたらすとともに、アルゴン又はヘリウムをベースとしたプラズマ中に、例えば、酸素、窒素、水素など特定の反応ガス種を用いた炭素繊維材料の機能化を利用して、機械的連結あるいは化学的接着を介したコーティングの接着性を向上させる。

    バリア・コーティングの施された炭素繊維材料は、更なる多数のプラズマ介在工程を通って、最終的なCNT浸出製品を形成する。 ある実施形態において、オール・プラズマ処理には、バリア・コーティングが硬化した後の第2の表面改質が含まれる。 これは、炭素繊維材料上のバリア・コーティング表面を「粗面化」して、触媒の配置を容易にするプラズマ処理である。 前述のように、表面改質は、限定するものではないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、水素、及び窒素などの種々異なる1以上のガスからなるプラズマを用いて実現できる。

    表面改質後、バリア・コーティングが施された炭素繊維材料は触媒の適用へと進む。 これは、繊維上にCNT形成触媒を配置するためのプラズマ処理である。 CNT形成触媒は、前述のように、通常、遷移金属である。 遷移金属触媒は、磁性流体、有機金属、金属塩、又は気相輸送を促進する他の組成物の形態で、前駆体としてプラズマ原料ガスに添加される。 触媒は、真空及び不活性雰囲気のいずれをも必要とはせず、周囲環境の室温で適用可能である。 ある実施形態では、炭素繊維材料が触媒の適用前に冷却される。

    オール・プラズマ処理を継続すると、カーボン・ナノチューブの合成がCNT成長反応器で生じる。 これは、プラズマ助長化学蒸着を用いて実現されるが、ここでは、炭素プラズマが、触媒を含む繊維にスプレーされる。 カーボン・ナノチューブの成長は高温(触媒にもよるが、通常は約500℃〜1000℃の範囲)で発生するので、触媒を含む繊維は炭素プラズマにさらされる前に加熱される。 浸出処理のために、炭素繊維材料は、それが軟化するまで任意に加熱されてもよい。 加熱後、炭素繊維材料は炭素プラズマを受けられる状態になっている。 炭素プラズマは、例えば、炭素を含むガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノールなど)を、ガスのイオン化が可能な電界中に通すことにより生成される。 この低温炭素プラズマは、スプレーノズルにより炭素繊維材料に向けられる。 炭素繊維材料は、プラズマを受けるために、例えば、スプレーノズルから約1センチメートル以内など、スプレーノズルにごく近接している。 ある実施形態においては、加熱器は、炭素繊維材料の上側のプラズマ・スプレーに配設され、これにより炭素繊維材料を高温に維持する。

    連続的なカーボン・ナノチューブ合成の別の構成には、カーボン・ナノチューブを炭素繊維材料上に直接合成・成長させるための専用の矩形反応器が含まれる。 その反応器は、カーボン・ナノチューブを含む繊維を生成するための連続的なインライン処理用に考案されている。 ある実施形態において、CNTsは、化学蒸着(「CVD」)処理により、大気圧下かつ約550℃から約800℃の範囲の高温で、マルチゾーン反応器(multi-zone reactor)内で成長する。 合成が大気圧下で生じるということは、繊維上にCNTを合成するための連続処理ラインに反応器を組み込むことを容易にする一因である。 このようなゾーン反応器を用いた連続的なインライン処理に合致する別の利点は、CNTの成長が数秒単位で発生するということであり、当該技術分野で標準的な他の手段及び装置構成における数分単位(又はもっと長い)とは対照的である。

    様々な実施形態によるCNT合成反応器には、以下の特徴が含まれる。

    (矩形に構成された合成反応器)
    当該技術分野で知られている標準的なCNT合成反応器は横断面が円形である。 これには、例えば、歴史的理由(研究所では円筒状の反応器がよく用いられる)及び利便性(流体力学は円筒状の反応器にモデル化すると容易であり、また、加熱器システムは円管チューブ(石英など)に容易に対応する)、並びに製造の容易性などの多くの理由がある。 本願発明は、従来の円筒形状と一線を画して、矩形横断面を有するCNT合成反応器を提供する。 脱却した理由は以下の通りである。 1. 反応器により処理される多数の炭素繊維材料は、例えば、形状が薄いテープやシート状など相対的に平面的であるので、円形横断面では反応器の容積を効率的に使用していない。 この非効率性は、円筒状のCNT合成反応器にとって、例えば、以下のa)ないしc)に挙げるような、いくつかの欠点となる。 a)十分なシステムパージの維持;反応器の容積が増大すれば、同レベルのガスパージを維持するためにガス流量の増大が必要になる。 これは、開放環境におけるCNTsの大量生産には非効率なシステムとなる。 b)炭素原料ガス流量の増大;前記a)のように、不活性ガス流を相対的に増大させると、炭素原料ガス流量を増大させる必要がある。 12Kの炭素繊維トウは、矩形横断面を有する合成反応器の全容積に対して2000分の1の容積であることを考慮されたい。 同等の円筒状の成長反応器(すなわち、矩形横断面の反応器と同じ平坦化された炭素繊維材料を収容できるだけの幅を有する円筒状の反応器)では、炭素繊維材料は、チャンバー容積の17,500分の1の容積である。 CVDなどのガス蒸着処理(gas deposition processes)は、通常、圧力及び温度だけで制御されるが、容積は蒸着の効率に顕著な影響を与える。 矩形反応器の場合、それでもなお過剰な容積が存在する。 この過剰容積は無用の反応を促進してしまうが、円筒状反応器は、その容積が約8倍もある。 このように競合する反応が発生する機会が増加することにより、所望の反応が有効に生じるには、円筒状反応器チャンバーでは遅くなってしまう。 このようなCNT成長の減速は連続処理の進行には問題となる。 矩形反応器の構成の利点の1つは、矩形チャンバーの高さを低くすることで反応器の容積が低減され、これにより容積比が改善され反応がより効率的になるという点である。 本願発明のある実施形態において、矩形合成反応器の全容積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全容積に対して僅か約3000倍にしかすぎない。 またある実施形態では、矩形合成反応器の全容積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全容積に対して僅か約4000倍にしかすぎない。 また更なる実施形態では、矩形合成反応器の全容積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全容積に対して約10,000倍以下である。 加えて、円筒状反応器を使用した場合、矩形横断面を有する反応器と比較すると、同じ流量比を供給するためには、より大量の炭素原料が必要である点に注目されたい。 当然のことながら、実施形態の中には、合成反応器が、矩形ではないが比較的矩形に類似する多角形状で表される横断面を有し、円形横断面を有する反応器に対して反応器の容積を同様に低減するものがある。 c)問題のある温度分布;相対的に小径の反応器が用いられた場合、チャンバー中心からその壁面までの温度勾配はごく僅かである。 しかし、例えば、工業規模の生産に用いられるなど、サイズの増大に伴い、温度勾配は増加する。 このような温度勾配により、炭素繊維材料基材の全域で製品品質がばらつく結果となる(すなわち、製品品質が半径位置の関数として変化する)。 この問題は、矩形横断面を有する反応器を用いた場合に殆ど回避される。 特に、平面的な基材が用いられる場合、基材のサイズが大きくなったときに、反応器の高さを一定に維持することができる。 反応器の頂部と底部間の温度勾配は基本的にごく僅かであり、結果的に、生じる熱的な問題や製品品質のばらつきは回避される。 2. ガス導入:当該技術分野では、通常、管状炉が使用されているので、一般的なCNT合成反応器は、ガスを一端に導入し、それを反応器に通して他端から引き出している。 本明細書に開示された実施形態の中には、ガスが、反応器の両側面又は反応器の頂面及び底面のいずれかを通して対称的に、反応器の中心又は対象とする成長ゾーン内に導入されるものがある。 これにより、流入する原料ガスがシステムの最も高温の部分(CNT成長が最も活発な場所)に連続的に補充されるので、全体的なCNT成長速度が向上する。 このような一定のガス補充は、矩形のCNT反応器により示される成長速度の向上にとって重要な側面である。

    (ゾーン分け)
    比較的低温のパージゾーンを提供するチャンバーが矩形合成反応器の両端に従属する。 出願人は、仮に高温ガスが外部環境(すなわち、反応器の外部)と接触したならば、炭素繊維材料の分解が増加するだろうと判断した。 低温パージゾーンは、内部システムと外部環境間の緩衝となる。 当該技術分野で知られている標準的なCNT合成反応器の構成では、通常、基材を慎重に(かつ緩やかに)冷却することが求められる。 本願の矩形CNT成長反応器の出口における低温パージゾーンは、連続的なインライン処理に必要とされるような短時間の冷却を実現する。

    (非接触、ホットウォール型、金属製反応器)
    ある実施形態において、金属製、特にステンレス鋼のホットウォール型(hot-walled)反応器が使用される。 このことは、金属、特にステンレス鋼は炭素を析出(すなわち、すす及び副生成物の形成)しやすいため、常識に反するようにも考えられる。 このように、大部分のCNT反応器の構造には、炭素の析出が少なく、また、石英は洗浄しやすく、試料の観察が容易であることから、石英反応器が使用されている。 しかしながら、出願人は、ステンレス鋼上にすす及び炭素析出物が増加することにより、より着実、高速、効率的かつ安定的なCNT成長がもたらされるという点に着眼した。 理論に拘束されるものではないが、大気圧運転(atmospheric operation)と連動して、反応器内で生じるCVD処理では拡散が制限されることが示されている。 すなわち、触媒に「過度に供給される(overfed)」、つまり、過量の炭素が(反応器が不完全真空下で運転している場合よりも)その相対的に高い分圧により反応器システム内で得られる。 結果として、開放システム(特に清浄なもの)では、過量の炭素が触媒粒子に付着してCNTsの合成能力を低下させる。 ある実施形態において、金属反応器壁にすすが析出して反応器に「汚れが付いて(dirty)」いる場合に、矩形反応器を意図的に運転する。 炭素が反応器壁上の単分子層に一度析出すると、炭素は、それ自体を覆って析出しやすくなる。 得られる炭素の中には、この機構により「回収される(withdrawn)」ものがあるので、ラジカルの形で残っている炭素原料が、触媒を被毒させない速度で触媒と反応する。 既存のシステムが「清浄に」運転しても、連続処理のために開放状態であれば、成長速度が低下してCNTsの生産量は著しく低下する。

    CNT合成を、前述のように「汚れが付いて」いる状態で実施するのは概して有益であるが、それでも、装置のある部位(例えば、ガスマニフォールド及びガス入口)は、すすが閉塞状態を引き起こした場合、CNTの成長処理に悪影響を与える。 この問題に対処するために、CNT成長反応チャンバーの当該部位を、例えば、シリカ、アルミナ又はMgOなどのすす抑制コーティングで保護してもよい。 実際には、装置のこれらの部位は、すす抑制コーティングで浸漬コーティングが施される。 INVAR(商標名)は、高温におけるコーティングの接着性を確実なものにする同様のCTE(熱膨張係数)を有し、重要なゾーンにおけるすすの著しい堆積を抑制するので、例えば、INVARなどの金属がこれらのコーティングに用いられる。

    (触媒還元及びCNT合成の組み合わせ)
    本明細書に開示されたCNT合成反応器において、触媒還元及びCNT成長のいずれもが反応器内で生じる。 還元工程は、個別の工程として実施されると、連続処理に用いるものとして十分タイムリーには行われなくなるため、このことは重要である。 当該技術分野において知られている標準的な処理において、還元工程の実施には、通常1〜12時間かかる。 本願発明によれば、両工程は1つの反応器内で生じるが、これは、少なくとも1つには、炭素原料ガスを導入するのが、円筒状反応器を用いる当該技術分野では標準的となっている反応器の端部ではなく、中心部であることによる。 還元処理は、繊維が加熱ゾーンに入ったときに行われる;この時点に至るまでに、ガスには、触媒と反応して(水素ラジカルの相互作用により)酸化還元を引き起こす前に反応器壁と反応して冷える時間があるということである。 還元が起こるのは、この移行領域である。 システム内で最も高温の等温ゾーンでCNTの成長は起こり、反応器の中心近傍におけるガス入口の近位で最速の成長速度が生じる。

    ある実施形態において、緩くまとまった(loosely affiliated)炭素繊維材料(例えば、炭素トウ)が使用される場合、連続処理には、トウのストランド(strand)及び/又はフィラメントを広げる工程が含まれる。 トウは巻き取られていないので、例えば、真空ベースの開繊システム(vacuum-based fiber spreading system)を用いて開繊される(spread)。 サイジングされた比較的堅い炭素繊維を使用する場合、トウを「軟化」して開繊しやすくするために、更に加熱することができる。 個々のフィラメントを含んで構成される開繊繊維(spread fiber)は、フィラメントの全表面積をさらせるよう十分開いて広がり、これにより、トウが、次の処理工程でより効率的に反応できるようにする。 このような開繊により、3kトウの直径を約4インチ〜約6インチに近づけることができる。 開繊された炭素トウは、前述のようにプラズマシステムで構成される表面処理工程を経る。 バリア・コーティングが適用され粗面化された後、次に、開繊繊維はCNT形成触媒の浸漬槽を通過する。 その結果、繊維表面で放射状に分布した触媒粒子を有する炭素トウ繊維となる。 触媒を含んだトウ繊維は、その後、前述のように、例えば、矩形チャンバーなどの適切なCNT成長チャンバーに入るが、ここでは、大気圧CVD又はPE−CVD処理を通る流れを用いて、毎秒数ミクロンの速度でCNTsを合成する。 トウ繊維は、こうして放射状に配列されたCNTsを備えて、CNT成長反応器を出る。

    ある実施形態において、CNT浸出炭素繊維材料は更に別の処理工程を経ることもできるが、それは、ある実施形態においては、CNTsを機能化するために用いられるプラズマ処理である。 CNTsの更なる機能化は、特定の樹脂への接着力を促進するために用いられる。 このように、ある実施形態では、本願発明が機能化されたCNTsを有するCNT浸出炭素繊維材料を提供する。

    巻き取り可能な炭素繊維材料の連続処理の一部として、最終製品にとって利点となる追加的なサイジング剤を適用するために、CNT浸出炭素繊維材料がサイジング剤の浸漬槽を更に通過してもよい。 最終的に湿潤ワインディング(wet winding)が求められる場合、CNT浸出炭素繊維材料は、樹脂槽を経てマンドレル又はスプールに巻かれる。 その結果得られた炭素繊維材料/樹脂の組み合わせは、CNTsを炭素繊維材料上に固着し、これにより、取り扱い及び複合材料の製造をよりたやすくする。 ある実施形態において、CNT浸出は、改善されたフィラメント・ワインディング(filament winding)を提供するために用いられる。 このように、例えば、炭素トウなどの炭素繊維上に形成されるCNTsは、樹脂槽を経て、樹脂含浸処理されたCNT浸出炭素トウが生成される。 樹脂含浸後、炭素トウは、デリバリー・ヘッド(delivery head)により、回転するマンドレルの表面上に位置を合わされる。 そして、トウは、既知の方法による正確な幾何学的パターンでマンドレルに巻かれる。

    前述のワインディング処理により、パイプ、チューブ、又は雄型を介して特徴的に製造される他の形態がもたらされる。 しかし、本明細書に開示されるワインディング処理から形成される形態は、従来のフィラメント・ワインディング処理から作られるものとは異なる。 具体的には、本明細書に開示される処理において、その形態は、CNT浸出トウを含む複合材料から形成される。 このため、このような形態にとって、CNT浸出トウによりもたらされる強度の向上などは有益となるであろう。

    ある実施形態において、巻き取り可能な炭素繊維材料上にCNTsを浸出させる連続処理は、毎分約0.5フィート〜毎分約36フィートのラインスピードを達成できる。 CNT成長チャンバーが、長さ3フィートで、750℃の成長温度で稼動するこの実施形態において、例えば、長さが約1ミクロン〜約10ミクロンのCNTsを製造するために、毎分約6フィート〜毎分約36フィートのラインスピードで処理が行われる。 また、例えば、長さが約10ミクロン〜約100ミクロンのCNTsを製造するために、毎分約1フィート〜毎分約6フィートのラインスピードで処理が行われる。 長さが約100ミクロン〜約200ミクロンのCNTsを製造するためには、毎分約0.5フィート〜毎分約1フィートのラインスピードで処理が行われる。 CNTの長さは、ラインスピード及び成長温度のみに関係しているだけでなく、炭素原料ガス及び不活性ガスのいずれの流量もまたCNTの長さに影響を与える。 例えば、高速のラインスピード(毎分6フィート〜毎分36フィート)で、不活性ガス中の炭素原料が1%未満からなる流量により、長さが1ミクロン〜約5ミクロンのCNTsが得られる。 高速のラインスピード(毎分6フィート〜毎分約36フィート)で、不活性ガス中の炭素原料が約1%を上回る流量の場合には、5ミクロン〜約10ミクロンの長さを有するCNTsが得られる。

    ある実施形態においては、複数の炭素材料は同時に処理過程を通過する。 例えば、複数のテープ、トウ、フィラメント、ストランドなどが並行して処理過程を通過する。 こうして、炭素繊維材料の既製スプールはいくつでも並行に処理過程を通過して、処理が終わると再度巻き取られる。 並行して通過して巻き取られる炭素繊維材料の数には、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は、最大でCNT成長反応チャンバーの幅に収まるいかなる数も含まれる。 さらに、複数の炭素繊維材料が処理過程を通過する場合、回収スプール数は、処理開始時のスプール数よりも少なくなり得る。 このような実施形態において、炭素ストランド、トウなどは、当該炭素繊維材料を高規則構造の炭素繊維材料(例えば、織物など)に結合する更なる処理を経て送り出される。 また、連続処理には、例えば、CNT浸出短繊維マットの形成を容易にする後処理チョッパー(post processing chopper)を組み込みこむことができる。

    ある実施形態において、本願発明の処理により、炭素繊維材料上に第1の量の第1種カーボン・ナノチューブを合成することが可能となるが、この場合、第1種カーボン・ナノチューブは、炭素繊維材料の少なくとも1つの性質(第1性質)を変化させるために選択される。 次に、本願発明の処理により、炭素繊維材料上において、第2の量の第2種カーボン・ナノチューブを合成することが可能となるが、この場合、第2種カーボン・ナノチューブは、炭素繊維材料の少なくとも1つの性質(第2性質)を変化させるために選択される。

    ある実施形態において、CNTsの第1の量及び第2の量は異なる。 この場合、CNTの種類の変化を伴うこともあり、伴わないこともある。 このように、CNTの種類がたとえ変化しないままであっても、CNTsの密度を変化させて用いることにより、元の炭素繊維材料の性質を変化させることができる。 CNTの種類には、例えば、CNTの長さ及び層数が含まれる。 ある実施形態において、第1の量及び第2の量は同一である。 この場合に、巻き取り可能な材料の2つの異なる区間(stretch)に沿って異なる性質が求められれば、例えば、CNTの長さなど、CNTの種類を変化させることができる。 例えば、より長いCNTsは電気的/熱的な用途に有用であるのに対し、より短いCNTsは機械的強化の用途に有用である。

    炭素繊維材料の性質の変化に関する前述の考察を踏まえると、第1種カーボン・ナノチューブ及び第2種カーボン・ナノチューブが、ある実施形態においては同一であるのに対し、第1種カーボン・ナノチューブ及び第2種カーボン・ナノチューブは、他の実施形態においては異なるということもあり得る。 同様に、第1性質及び第2性質が、ある実施形態では同一となり得る。 例えば、EMI遮蔽特性は、第1の量の第1種CNTs、及び第2の量の第2種CNTsが関与する有益な性質であるが、この性質の変化の割合は、異なる量、及び/又は異なる種類のCNTsが使用された場合、それを反映して異なることもあり得る。 最後に、ある実施形態において、第1性質及び第2性質が異なることもある。 これもCNTの種類における変化を反映する。 例えば、第1性質が、短いCNTsによりもたらされる機械的強度である一方、第2性質が、長いCNTsによりもたらされる電気的/熱的性質である。 当業者であれば、異なるCNT密度、異なるCNT長さ、及び異なるCNTsの層数(例えば、単層、2層及び多層など)を利用することで、炭素繊維材料の性質を調整できることを認識するであろう。

    ある実施形態において、本願発明の処理により、炭素繊維材料上に第1の量のカーボン・ナノチューブが合成され、これにより、この第1の量により、カーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維材料は、炭素繊維材料自体が示す第1群の性質とは異なる第2群の性質を示すことが可能となる。 すなわち、炭素繊維材料の1以上の性質(例えば、引張強度など)を変化させることができる量の選択である。 第1群の性質及び第2群の性質には少なくとも同一の性質が含まれているが、これは、炭素繊維材料の既存の性質がこのように強化されたものだということを意味するものである。 ある実施形態においては、CNTの浸出により、炭素繊維材料自体が示す第1群の性質の中には含まれない第2群の性質がカーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維に与えられる。

    ある実施形態において、第1の量のカーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維材料の引張強度、ヤング率、せん断強度、剛性率、じん性(toughness)、圧縮強度、圧縮係数、密度、EM波吸収率/反射率、音響透過率、電気伝導度、及び熱伝導度からなる群より選択される少なくとも1つの性質の値が、炭素繊維材料自体の同じ性質の値と異なるように選択される。

    引張強度には、3つの異なる測定値、すなわち、1)材料のひずみが弾性変形から塑性変形(その結果、材料の不可逆的な変形が生じる)に変化する応力を評価する降伏強度、2)引張荷重、圧縮荷重又はせん断荷重を受けたとき、材料が耐え得る最大応力を評価する終局強度、及び3)破断点における応力−ひずみ線図上での応力の座標を評価する破壊強度、が含まれる。 複合材料のせん断強度は、繊維方向に対して垂直に荷重がかけられた場合に材料が破壊する応力を評価する。 圧縮強度は、圧縮荷重がかけられた場合に材料が破壊する応力を評価する。

    多層カーボン・ナノチューブは、特に、63GPaの引張強度を達成しており、今までに測定された材料の中で最も高い引張強度を有する。 さらに、理論計算によれば、CNTsには約300GPaの引張強度も可能であることが示されている。 したがって、CNT浸出炭素繊維材料は、元になる炭素繊維材料と比較して大幅に上回る終局強度を有することが見込まれる。 前述のように、引張強度の増大は、用いられるCNTsの的確な性質に加え、炭素繊維材料におけるCNTsの密度及び分布によって決まる。 CNT浸出炭素繊維材料では、例えば、引張特性において2〜3倍増加することが示されている。 例示的なCNT浸出炭素繊維材料は、機能化されていない元となる炭素繊維材料の3倍ものせん断強度と、2.5倍もの圧縮強度を有する。

    ヤング率は等方性弾性材料の剛性の1つの尺度である。 それは、フックの法則が有効な応力範囲において、1軸ひずみに対する1軸応力の比率として定義される。 これは、実験的に、材料サンプルについて行われる引張試験中に形成される応力−ひずみ線図の傾きから決定される。

    電気伝導度又は特定の伝導性は、電流を伝導する材料の性能についての1つの尺度である。 CNTのキラリティに関連している、例えば、撚度(degree of twist)などの特定の構造的なパラメータを有するCNTsは、伝導性が高く、したがって金属特性を示す。 CNTのキラリティに関して、広く認められている命名方式(MSDresselhaus, et al. Science of Fullerences and Carbon Nanotubes, Academic Press, San Diego, CA pp.750-760, (1996))が、当業者により形式化され承認されている。 このように、例えば、CNTsは、2つのインデックス(n,m)で相互に識別される(ここで、nとmは、六方晶のグラファイトが円筒の表面上で巻かれて端部同士を接合した場合にチューブとなるように、六方晶のグラファイトの切断及び巻き方を表す整数である)。 2つのインデックスが同じである場合(m=n)、得られるチューブは、「アームチェア」(又はn−n)型であるといわれているが、これは、チューブがCNT軸に対して垂直に切断されたときに、六角形の辺のみが露出し、そのチューブ端部の周辺に沿ったパターンが、n回繰り返されるアームチェアのアームと座部に似ているからである。 アームチェアCNTs、特にSWNTsは、金属的であり、非常に高い電気的及び熱的伝導性を有している。 さらに、このようなSWNTsは非常に高い引張強度を有している。

    撚度に加えて、CNTの直径もまた電気的伝導性に影響を与える。 前述のように、CNTの直径は、サイズ制御されたCNT形成触媒ナノ粒子の使用により制御可能である。 また、CNTsは、半導体材料としても形成される。 多層CNTs(MWNTs)における伝導性はより複雑である。 MWNTs内の層間反応は、個々のチューブ一面に、電流を不均一に再分布させる。 対照的に、金属的な単層ナノチューブ(SWNTs)の様々な部位においては電流に変化はない。 また、カーボン・ナノチューブは、ダイヤモンド結晶及び面内の(in-plane)グラファイトシートと比較して、非常に高い熱伝導性を有する。

    CNT浸出炭素繊維材料は、CNTsの存在により前述の性質の点で利益を得るだけでなく、本処理でより軽量な材料も提供できる。 このように低密度かつ高強度の材料は、換言すれば、強度重量比がより高いということができる。 当然のことながら、本願発明の様々な実施形態の働きに実質的に影響を与えない変更も、本明細書で提供された本願発明の定義内に含まれる。 したがって、以下の実施例は、本願発明を例示するものであって限定するものではない。

    本実施例は、除氷用途に用いるために、熱的及び電気的伝導性の向上を目的とする連続処理において、炭素繊維材料に、どのようにしてCNTsを浸出させるかを示す。

    本実施例では、繊維へのCNTsの担持量を最大にすることが目的である。 炭素繊維基材として、テックス値800である34〜700の12k炭素繊維トウ(Grafil Inc., Sacramento, CA)が導入される。 この炭素繊維トウにおける個々のフィラメントは、直径が約7μmである。

    図13は、本願発明の例示的な実施形態によるCNT浸出繊維材料を生成するためのシステム800を表している。 システム800には、炭素繊維材料の繰り出し及びテンショナー(tensioner)ステーション805、サイジング剤除去及び繊維開繊器(fiber spreader)ステーション810、プラズマ処理ステーション815、バリア・コーティング適用ステーション820、空気乾燥ステーション825、触媒適用ステーション830、溶媒フラッシュオフ(flash-off)ステーション835、CNT浸出ステーション840、繊維束化ステーション845、及び炭素繊維巻き取りボビン850が、図示のように相互に関連して含まれる。

    繰り出し及びテンショナーステーション805には、繰り出しボビン806及びテンショナー807が含まれる。 繰り出しボビンは、炭素繊維材料860を処理工程へ送る。 すなわち、テンショナー807により繊維に張力がかけられる。 本実施例に関して、炭素繊維は毎分2フィートのラインスピードで処理される。

    繊維材料860は、サイジング剤除去加熱器865及び繊維開繊器870を含むサイジング剤除去及び繊維開繊器ステーション810に送られる。 このステーションで、繊維860上のいかなるサイジング剤も除去される。 通常、繊維のうちサイジング剤を燃焼させて除去がなされる。 この目的のために、例えば、赤外線ヒーター、マッフル炉、及び他の非接触加熱処理など、様々な加熱手段のいずれのものも用いられる。 また、サイジング剤の除去は、化学的に達成することもできる。 繊維開繊器は繊維を個々のフィラメントに開繊する。 開繊繊維には、例えば、水平な均一直径のバー(flat, uniform-bar)の上下で、あるいは、可変の直径のバーの上下で、あるいは、放射状に広がる溝及び混練(kneading)ローラーを備えたバーの上、振動を生じるバーの上などで、繊維を引き出すといった、様々な技術及び装置が用いられる。 開繊は、より多くの繊維表面積をさらすことにより、例えば、プラズマの適用、バリア・コーティングの適用、触媒の適用といった下流の工程の効果を高める。

    多数のサイジング剤除去過熱器865が、段階的、同時的なサイジング除去及び開繊を可能にする繊維開繊器870全体にわたって配置される。 繰り出し及びテンショナーステーション805、並びに、サイジング剤除去及び繊維開繊器ステーション810は、繊維産業で一般的に使用されており、当業者であれば、それらの設計及び使用に熟知しているであろう。

    サイジング剤を燃焼させるために必要な温度及び時間は、(1)サイジング剤、及び(2)炭素繊維材料860の商業的供給源/特性に応じて変化する。 炭素繊維材料上の従来のサイジング剤は、約650℃で除去される。 この温度で、サイジング剤を確実に完全燃焼させるため15分間を要する。 温度をこの燃焼温度以上に上昇させることで、燃焼時間を短縮することができる。 特定の市販製品のサイジング剤を燃焼させるための最低温度は、熱重量分析を用いて決定される。

    サイジング剤除去に必要なタイミングによっては、サイジング剤除去の加熱器を、必ずしも、CNT浸出の固有の処理に含めなくてもよく、むしろ、除去は独立して(例えば、並行して)行われる。 このようにして、サイジング剤を含まない炭素繊維材料の貯蔵品(inventory)は、サイジング剤除去の加熱器を含まないCNT浸出繊維製造ラインで使用するために集積されて巻き取られる。 サイジング剤を含まない繊維は、その後、繰り出し及びテンショナーステーション805で巻き取られる。 この製造ラインは、サイジング剤除去を含むものよりも高速に運転される。

    サイジングされていない繊維880は、プラズマ処理ステーション815へ送られる。 本実施例に関して、大気中プラズマ処理が、開繊した炭素繊維材料より1mm離れた距離から「流れに沿った」形で利用される。 ガス状の原料はヘリウム100%で構成される。

    プラズマで強化された繊維885は、バリア・コーティング適用ステーション820へ送られる。 例示的な本実施例に関して、シロキサンベースのバリア・コーティング溶液が、浸漬コーティングの構成に用いられる。 その溶液は、体積で40倍の希釈率により「Accuglass(登録商標)T-11スピンオンガラス」(Honeywell International Inc., Morristown, NJ)をイソプロピルアルコールで希釈したものである。 炭素繊維材料上のバリア・コーティングの厚さは約40nmである。 バリア・コーティングは、周囲環境の室温で適用される。

    バリア・コーティングが施された炭素繊維890は、ナノスケールのバリア・コーティングを部分硬化させるために、空気乾燥ステーション825に送られる。 空気乾燥ステーションは、開繊した炭素繊維全体に加熱した空気の流れを送る。 用いられる温度は、100℃〜約500℃の範囲である。

    空気乾燥後、バリア・コーティングが施された炭素繊維890は、触媒適用ステーション830に送られる。 本実施例において、酸化鉄ベースのCNT形成触媒溶液が、浸漬コーティングの構成に用いられる。 その溶液は、体積で200倍の希釈率により「EEH−1」(Ferrotec Corporation, Bedford, NH)をヘキサンで希釈したものである。 炭素繊維材料上には、触媒コーティングの単分子層が得られる。 希釈する前の「EEH−1」は、3〜15容量%の範囲のナノ粒子濃度を有する。 酸化鉄ナノ粒子はFe 23とFe 34の組成物からなり、直径が約8nmである。

    触媒含有炭素繊維材料895は、溶媒フラッシュオフステーション835へ送られる。 溶媒フラッシュオフステーションは、開繊した炭素繊維全体に空気の流れを送る。 本実施例では、触媒含有炭素繊維材料に残った全てのヘキサンをフラッシュオフするために、室温の空気が用いられる。

    溶媒フラッシュオフの後、触媒含有繊維895は、最後にCNT浸出ステーション840に送られる。 本実施例では、12インチの成長ゾーンを備えた矩形反応器を用いて、大気圧でのCVD成長を利用する。 全ガス流の98.0%は不活性ガス(窒素)であり、その他の2.0%は、炭素原料(アセチレン)である。 成長ゾーンは、750℃に保持される。 前述の矩形反応器に関して、750℃は、相対的に高い成長温度であり、成長速度を考えられる最速のものにする。

    CNTの浸出後、CNT浸出繊維897は、繊維束化ステーション845で再び束化される。 この工程は、ステーション810で行われた開繊工程を実質的に逆転することで、繊維の個々のストランドを再結合する。

    束化されたCNT浸出繊維897は、貯蔵のために、巻き取り繊維ボビン850の周囲に巻き付けられる。 CNT浸出繊維897は、長さ約50μmのCNTsを担持しており、その後、熱的及び電気的伝導性が高められた複合材料に使用される状態となる。

    その後、CNT浸出繊維897は、図3で明示されるように既存の複合材料構造体に表面層として適用されて巻き付けられ、これにより、図4に示されるように一体化した電気回路を用いて除氷機能を提供する。 得られた抵抗加熱要素は、5Ωm未満の抵抗率を有する。

    前述の工程には、環境隔離のために、不活性雰囲気あるいは真空中で行われるものがあることに注目されたい。 例えば、炭素繊維材料のサイジング剤を燃焼している場合、繊維は環境隔離されて、ガス放出を阻止するとともに、水分からダメージを受けることを抑制する。 便宜上、システム800において、環境隔離は、製造ラインの先頭における炭素繊維材料の繰り出し及び張力調整、及び、製造ラインの末端における繊維巻き取りを除いて、全ての工程に提供される。

    当然のことながら、前述の実施形態は単に本願発明の具体例にすぎず、当業者であれば、本願発明の範囲から逸脱することなく、前述の実施形態の多くの変形例を考え出すことができる。 例えば、本明細書において、数々の具体的詳細が、本願発明の例示的な実施形態の説明及び理解を完全にするために与えられている。 しかしながら、当業者であれば、本願発明の1以上の詳細がなくても、又は他の処理、材料、構成要素などで本願発明を実施でき得ることを認識するであろう。

    また、例示的な実施形態の態様を分かり難くすることを避けるため、場合によっては、周知の構造、材料、又は工程を詳細に図示又は説明しない。 当然のことながら、図面に図示された様々な実施形態は例示であり、必ずしも一定の縮尺で描かれたものではない。 本明細書全体にわたって「1つの実施形態」又は「一実施形態」又は「ある実施形態」に言及しているのは、特定の機能、構造、材料、又は(複数の)実施形態と関連して記載した特徴が、本願発明の少なくとも1つの実施形態には含まれるが、必ずしも全ての実施形態に含まれるものではない、ことを意味する。 したがって、本明細書の全体にわたって様々な箇所で現れる表現「1つの実施形態において」、「一実施形態において」又は「ある実施形態において」は、必ずしも全て同じ実施形態について言及しているものものとは限らない。 さらに、特定の機能、構造、材料、又は特徴を、1以上の実施形態で適切な方法により組み合わせることができる。 このため、このように変形したものは、以下の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内に含まれる。

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