Cement type radio wave absorber

申请号 JP2004041928 申请日 2004-02-18 公开(公告)号 JP2005231931A 公开(公告)日 2005-09-02
申请人 Kobe Steel Ltd; 株式会社神戸製鋼所; 发明人 MIYAMOTO TAKASHI; HOSOI KOICHI; IMAOKA SUSUMU; KAJIMA YOSHIO;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a cement type radio wave absorber showing an absorption property stable in a high-frequency band of 1 GHz or higher, having workability with fluidity, and the like, and a strength and a radio wave absorption property together, being thin and light with a high dielectric constant and a dielectric loss, being durable in outdoor use for a long term because of nonflammability and no degradation with ultraviolet rays, being no need for a back metal, being inexpensive, excellent in reliability, able to relieve sizing accuracy, workable with direct adhesion on sprayed mortar like a usual tile and being excellent in workability and reliability with direct spraying or mortar coating, or the like, on an optional substrate. SOLUTION: A flat iron oxide powder whose mean thickness is 30 μm or less and where the weight ratio of particles having a shortest size in a face of more than 25 μm is 50% or more is mixed with a hydrated and solidified inorganic material to form the cement type radio wave absorber. COPYRIGHT: (C)2005,JPO&NCIPI
权利要求
  • 平均厚み≦30μm、面内最短部サイズ>25μmの粒子の重量比が50%以上である偏平状酸化鉄粉を水和固化無機材料と混合し、成形してなるセメント型電波吸収体。
  • 偏平状酸化鉄粉の体積率が5%以上40%以下であることを特徴とする請求項1記載のセメント型電波吸収体収体。
  • さらに、カーボンあるいは/および酸化チタンを体積率で0.5%以上10%以下混合してなることを特徴とする請求項2記載のセメント型電波吸収体。
  • 1層、または多層の板状に成形され、電波到来方向に対して反対側の面に電波反射体層を形成したことを特徴とする請求項1〜3記載のセメント型電波吸収体。
  • 1層、または多層の板状に成形され電波到来方向に対して反対側の面に電波反射体層、電波到来側の面に誘電材料からなる表面誘電体層を1層以上設けたことを特徴とする請求項4記載のセメント型電波吸収体。
  • 電波反射体層のない請求項5記載のセメント型電波吸収体。
  • 表面誘電体層の電波屈折率の実数部n R (n R =Real(√(εr・μr)、εr;複素比誘電率、μr;複素比透磁率、n R ;屈折率)と厚みtが対象電波周波数の電波波長(真空中での波長)、あるいは対象電波周波数領域の中心周波数の電波波長λに対して
    4n R ×t/λ≦1.1
    であり、屈折率n(n=√|εr・μr|、|A|は複素数Aの絶対値)が2.5以下であることを特徴とする請求項5、6記載のセメント型電波吸収体。
  • 表面誘電体層の吸水率が5%以下であることを特徴とする請求項5〜7記載のセメント型電波吸収体。
  • 表面の一部、もしくは全面に防水処理が施されたことを特徴とする請求項1〜8記載のセメント型電波吸収体。

  • 说明书全文

    本発明は、GHz以上の高周波数帯で安定した吸収特性を示す実用性に優れたセメント型電波吸収体に関する。

    従来より、地上波アナログテレビの受信障害対策、いわゆるゴースト対策として、ビル外壁でのテレビ電波反射防止用にフェライトタイル系、あるいはフェライトモルタル系の電波吸収体の施工が有効とされ一般的に使用されている。 一方1GHz以上の高周波領域で電磁波を利用する携帯用通信機器、無線LAN、或いはETC、DSRCなどのITS関連での無線利用が急速に普及しており、それに伴い、これら電子機器間での干渉や不要電磁波反射による通信障害、機器の誤作動等の問題がクローズアップしており対策が求められている。 これらの障害を回避する手法として電磁波シールド或いは電磁波吸収材の施工が有効であり、多用されつつある 代表的な電磁波吸収材料であるフェライトは、酸化鉄を主成分とし、鉄の一部をMn、Ni、Zn等で置き換えた強磁性酸化物であり、ゴムフェライトなどの形で一般的に用いられている。 フェライトタイルはフェライト粉末を圧縮成形の後焼成して形成した焼結体であり、モルタルフェライトはセメント中に数ミリメートル径の粉砕フェライトを骨材として混錬した電波吸収体でありいずれも1GHz以下のVHF〜UHFで優れた電波吸収特性を有する。 また金属と異なりある程度の電気的絶縁性を有していることから特に数μm〜サブミクロンの微粉末の状態ではGHz帯の吸収材料として有効で、ゴムにフェライト微粉末を混錬したゴムフェライトが高周波帯域でも活用可能な電波吸収材料として広く利用されている。

    このようなフェライトをセメント系の誘電体材料に含有させた電波吸収体としてはすでに数多くの報告例がある。

    まず、特許文献1、2及び3等にはフェライト粒子を骨材としてコンクリートに含有させたプレキャスト電波吸収体の報告がなされている。

    特許文献1では、コンクリートにフェライト粒子を含有させたプレキャスト電波吸収体の報告がある。 本報告では、0.1mm以上数mmの粒径を持つMnZn、MgZn、NiZnフェライト等の粒子を70重量%以上、さらにカーボン繊維をコンクリートに含有させ、2層に積層された吸収層で構成された吸収体がVHF帯で良好な電波吸収特性を示すことが報告されている。

    また特許文献2では、セメントに粒径0.5〜7mmの粗粒フェライト粒子75〜90wt%、およびエポキシ樹脂とカーボン繊維補強材を含有させた電波吸収体、およびそれを用いて構成されたカーテンウォールの報告がなされている。 本報告では、28mmの比較的薄型の電波吸収層を使用したカーテンウォールでUHF、VHFで20dB以上の優れた電波吸収特性が得られることが示されている。

    さらに特許文献3ではUHF帯全域で高い吸収性能を有するフェライト含有モルタル電波吸収体の報告がなされている。 本報告では、電波吸収材兼モルタル骨材として用いられるフェライト粒子のサイズとしてフェライトの50体積%以上を2mm以上の粒径を持つフェライト粒子とし、モルタル中のフェライト粒子の占める体積率を35%〜60%とするフェライトモルタルを吸収層とし表面に化粧板を設けたプレキャストコンクリート電波吸収体によりUHF帯全域でテレビ電波のゴースト障害に有効な15dB以上の吸収性能を有する広帯域吸収特性が報告されている。

    特許文献4には、磁性粉末を硬化性の無機バインダに含有させた吸収帯の報告がなされている。 水硬化性の無機バインダーとしてセメント、モルタル、珪酸カルシウム、石膏などが使用され、磁性粉末として金属酸化物系の磁性粉末の使用が報告されている。 磁性粉末として、粒径0.24mm〜1mmのNiZnフェライト、粒径0.3mm〜2mmのMnZnフェライトを用い焼石膏中に含有分散させた電波吸収体の例が示されており、このような電波吸収ボードを用いることにより10-1000MHz帯域の電磁波を効果的に吸収することが可能であることが示されている。

    これらの報告では対象としている電波帯域がテレビ電波であるVHF、UHF、または一般的なパソコン、AV、オーディオ機器からのノイズである1000MHz以下の電波帯域であり、使用するフェライトの粒子径もできるだけ大きなものが電波吸収特性の点からも有利である。 このような大きなフェライト粒子を含有させたコンクリートは使用するフェライト粒子自体がモルタルで使用されている一般的な細骨材のサイズに近く、比較的良好な強度を有するモルタル構造体を形成することが可能となっている。

    しかしながら、一方において、これらのセメント型電波吸収体が充分な吸収特性を得るためには多量のフェライトを含有させる必要があり、コンクリートの強度低下を防止するためにカーボンファイバー、ガラスファイバーなどの補強材で強化する必要も生じ、コストアップにつながっている。

    また、上記粗骨材、細骨材レベルの粒子径のフェライトを用いた場合、モルタルの骨材としては良好であるが、GHz以上の周波数帯、すなわち近年急速な普及を見ている携帯電話、無線LANに代表されるデジタル無線通信、ETCなどのITS関連双方向通信などに利用されているS帯、C帯でのGHz以上の周波数帯域では数mm程度の粗粒フェライトを用いた場合、フェライトの磁気損失の低下により充分な吸収特性を得にくい。

    このような高周波数帯域でフェライトを用いる場合、一般的には粉砕された数μm〜数10μmのフェライト、あるいは共沈法に代表される湿式プロセスで形成されたサブミクロンのフェライトをゴムに分散させたゴムフェライトが一般的に使用されている。 微粉末のフェライトを用いることにより高周波領域での磁気損失を大きくし有効な吸収材料としての活用を可能としている。 このような微粉末のフェライトを充分な量、たとえばゴムフェライトで用いられている50%程度の体積率でコンクリートに含有させることは極めて困難である。 バインダーとしてゴムあるいは樹脂を用いる場合、フェライトの充填率を上げるために極限までゴム、樹脂の部数を下げても少量でそれらがバインダーとしての機能を発揮しポリマーとフェライトを充分混練することにより均一にフェライト微粉末が分散し、引き続く押し出し、プレスなどによりシート状に成形することが可能である。 しかし、微粉末のフェライトをコンクリート中に分散させる場合、フェライトの充填率を上げるためにセメントの量を低下させると、ゴムなどの樹脂との混練と異なり、少量で微粉末フェライト粒子を取り囲みそれらをつなぎ合わせることが困難であるために、フェライトの充填率を充分に上げることは難しい。

    また、フェライト粉末を微細化すると、セメントの流動性を上げ、一定の作業性、いわゆるワーカビリティを得るためには、セメントに加える水の量を大幅に増加させる必要が生じる。 その結果、コンクリートに加える水の量、あるいは水と粉末成分の比である水粉体比が適正値を超えて大幅に増加することになり、得られるコンクリート成形体は、空隙が多く、強度、密度、緻密性が著しく低下する。 特に電波吸収体の場合、空隙が多いことは吸水率の増大につながり好ましくない。

    一方加えるフェライト微粉末の量を減らすと、このような作業性悪化、強度低下は回避できるが、必要な電波吸収特性が得られない。 前述のようにフェライトの粒径が粗いとコンクリートあるいはモルタルとしての作業性、強度は得られるが、やはり高周波領域での吸収特性維持に支障をきたす。

    GHz帯でコンクリートにフェライトを分散させた吸収体の例は、特許文献5及び6などに報告されている。

    特許文献5では、セメントに10-70wt%のフェライトを加えた電波吸収層の表面に珪酸カルシウム板を積層した電磁波吸収性耐火壁材が報告されている。 本報告では従来技術(珪酸カルシウム板を表面に積層した電波吸収体(特開平6−24077号公報、特開平7−74494号公報)に対して、電波吸収性能と製造効率を改善したものであり、表面に積層された珪酸カルシウム板とその下に形成されたフェライト含有電波吸収体をその構成としている。電波吸収体に用いる吸収材料としては0.1〜2mmのMnZnフェライトを固形分の60重量%とし、さらに黒鉛粉末を5%、また補強材としてパルプ、ポリプロピレン繊維を7重量%添加した吸収層とすることにより、高い機械強度と、1GHz近傍で20dB以上の電波吸収特性が得られることを示している。

    また特許文献6にはこの応用例として5.8GHZのETC用の電波吸収体の例が報告されている。 この例では上層の珪酸カルシウムの厚みと下層の吸収層の厚みを制御し、5.8GHzで50dBの高い吸収特性を実現している。 ただしこれらの例で使用されているフェライトはやはり粒径が0.1〜2mmの粗粒フェライトであり、そのためにそれ単独では高周波での特性を実現しにくく、グラファイトを加え、さらに吸収層の厚みを7mm以上とすることにより所定の電波吸収特性が得られるとしている。 また、強度低下を防ぐために有機、無機、ガラス、金属繊維などの補強材の添加が必要としている。

    以上の報告例すなわち従来技術では、吸収体の構成として裏面に電波反射体層の設置が不可欠であり、金属のメッシュ、金属箔、あるいは炭素繊維シートなどを埋め込み、あるいは接着などで貼り付けている。 このような金属反射層は電波吸収特性を高めるために必要であるが、腐食などの劣化の問題、はがれなどの信頼性の問題、あるいはコストアップ、生産性の低下など数々の問題があり、可能であれば使用しないことが望ましい。 また、特に、GHz帯用の電波吸収体の場合必然的に厚みの制御が厳しくなり精密な加工が要求される。 これは裏面に電波反射体層を有した共振器型電波吸収体の場合は特に高い精度が要求されるので、セメントの様に精密な寸法精度を得にくい部材を使用する場合には重大な問題となる。 しかも、充分な精度を得るためにはどうしても後加工が必要になり、コストアップにつながる。 したがって、セメント型吸収体の場合、製品の寸法制度にあまり特性が依存しないような設計が望ましい。

    フェライト粉末の製造方法としては焼結フェライトの粉砕、あるいは共沈法に代表される湿式プロセスが一般的であるが製造コストが高く、またNiなどの原料コストも高いことから吸収材料として用いられるフェライト粉末は高価なものとなっている。

    本発明者らはこのような高価なフェライトに代わる、安価で性能の優れる電磁波吸収材料として、既に出願済みである特願2000−203028号で扁平状酸化鉄粉(単に扁平酸化鉄粉という場合がある)を誘電体に含有させた電波吸収体が、従来のフェライトなどの原材料を用いる吸収体よりも優れた電波吸収性能を有することを開示した。 この偏平酸化鉄粉は、アスペクト比の大きな薄片状の酸化鉄粉であり、そのような形状を有する粉末をゴム、樹脂などの中に混錬し、シート状に成形することにより、優れた電波吸収特性を示すことを明らかにした。 ここで用いる偏平酸化鉄粉は、平均厚みが30μm以下、厚みと最大径との比である平均アスペクト比が5以上であることを特徴とした、鉄鋼線材の熱間加工工程で形成した2次スケールをメカニカルデスケール法により剥離することにより得られる薄片状の粉末であり、これを樹脂、ゴムに混錬して含有させ、成形されることを特徴とする電波吸収体を先に提案した。

    このような偏平形状の酸化鉄粉は、マグネタイトとウスタイトを主体とした導電性と磁性の両方を有し、誘電損失型の電波吸収体に用いられるカーボン等が有する適度の導電率と、磁気損失型のフェライトが有する磁気損失の両方を兼ね備えた優れた吸収材料であり、さらに偏平形状であることからシート型の吸収体のシート面に平行に粉末を配向させることにより高い誘電率と透磁率を得ることが可能で結果的に薄型にでき、さらに金属偏平粉末に比べて電気抵抗が高く高周波数でも電波が効果的に侵入し高い吸収性能を維持することができる優れた吸収材料である。

    ところで、かかる偏平酸化鉄粉をゴムあるいは樹脂に含有させた、先に提案した電波吸収体には以下のような問題点もあった。

    すなわち偏平形状のため、ゴムなどの誘電材料に分散させた場合、従来の球状(異形状)フェライト粉末を分散した場合よりコンパウンドとの密着性が悪く介在物として作用し、成形体の強度を著しく劣化させる場合があり、また偏平形状であるため誘電体中に分散させシート状に成形するために一般的に行われるロール混錬、圧延、押し出しにより粉末が加工方向に配向し面内で電波吸収特性に異方性が生じやすい。 さらに、ゴム、あるいは樹脂といった誘電率が低い材料の中に分散させていたために、偏平形状の粉末によってもたらされている高い誘電特性と、導電性を有する粉末が示す高い誘電損失が完全には発揮されない。 加えてゴム、樹脂といった可燃性の母材中に分散させる場合、難燃特性あるいは不燃特性が得られないという問題があり、改善が必要であった。

    特開平8−18273号公報

    特開平10−209667号公報

    特開2000−294900号公報

    特開2000−269680号公報

    特開2001−220198号公報

    特開2003−229693号公報

    本発明は、上記の現状に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、GHz以上の高周波数帯で安定した吸収特性を示すセメント型吸収体で、流動性などの作業性、および強度と電波吸収特性を兼ね備えたセメント型吸収体であり、また高い誘電率と誘電損失を有する薄型軽量のセメント型吸収体であって、不燃性で紫外線劣化がなく長期屋外使用にも充分耐え得る吸収体で、加えてバックメタルが不要で安価、信頼性に優れまた寸法精度を緩和でき、通常のタイルのように直接吹き付けモルタルの上に貼り付けて施工できる、あるいは任意の下地に直接吹き付けやモルタル塗りなどで施工できる施工性と信頼性に優れた電波吸収体を提供することにある。

    本発明はこのような課題の解決のために完成されたものであって、その要旨とする特徴は以下の通りである。
    (1)平均厚み≦30μm、面内最短部サイズ>25μmの粒子の重量比が50%以上である偏平状酸化鉄粉を水和固化無機材料と混合し、成形してなるセメント型電波吸収体(請求項1)。
    (2)偏平状酸化鉄粉の体積率が5%以上40%以下であることを特徴とする請求項1記載のセメント型電波吸収体収体(請求項2)。
    (3)さらに、カーボンあるいは/および酸化チタンを体積率で0.5%以上10%以下混合してなることを特徴とする請求項2記載のセメント型電波吸収体(請求項3)。
    (4)1層、または多層の板状に成形され、電波到来方向に対して反対側の面に電波反射体層を形成したことを特徴とする請求項1〜3記載のセメント型電波吸収体(請求項4)。
    (5)1層、または多層の板状に成形され電波到来方向に対して反対側の面に電波反射体層、電波到来側の面に誘電材料からなる表面誘電体層を1層以上設けたことを特徴とする請求項4記載のセメント型電波吸収体(請求項5)。
    (6)電波反射体層のない請求項5記載のセメント型電波吸収体(請求項6)。
    (7)表面誘電体層の電波屈折率の実数部n R (n R =Real(√(εr・μr)、εr;複素比誘電率、μr;複素比透磁率、n R ;屈折率)と厚みtが対象電波周波数の電波波長(真空中での波長)、あるいは対象電波周波数領域の中心周波数の電波波長λに対して
    4n R ×t/λ≦1.1
    であり、屈折率n(n=√|εr・μr|、|A|は複素数Aの絶対値)が2.5以下であることを特徴とする請求項5、6記載のセメント型電波吸収体(請求項7)。
    (8)表面誘電体層の吸水率が5%以下であることを特徴とする請求項5〜7記載のセメント型電波吸収体(請求項8)。
    (9)表面の一部、もしくは全面に防水処理が施されたことを特徴とする請求項1〜8記載のセメント型電波吸収体(請求項9)。

    (1)本件発明によれば、GHz以上の高周波数帯で安定した吸収特性を示すセメント型吸収体で、流動性などの作業性、および強度と電波吸収特性を兼ね備えたセメント型電波吸収体を提供することができる。
    (2)また、本件発明によれば、高い誘電率と誘電損失を有する薄型軽量のセメント型電波吸収体を提供することができる。
    (3)さらに、本件発明によれば、不燃性で紫外線劣化がなく長期屋外使用にも充分耐え得るセメント型電波吸収体を提供することができる。
    (4)加えて、本件発明によればバックメタルが不要で安価、信頼性に優れまた寸法精度を緩和でき、通常のタイルのように直接吹き付けモルタルの上に貼り付けて施工できる、あるいは任意の下地に直接吹き付けやモルタル塗りなどで施工できる施工性と信頼性に優れたセメント型電波吸収体を提供することができる。

    本発明の電磁波吸収体に利用する扁平状酸化鉄粉末スケール粉末は、鉄鋼の熱間加工で生じるスケールを採取適用したものであり、特に好ましくは、鉄鋼の線材加工で形成されたワイヤ表面の2次スケールである。 ここで本発明者らがいう2次スケールとは、熱間加工中や加工後の冷却中に線材表面に形成された酸化鉄スケールである。 これは、熱間加工前の加熱中に加熱炉で形成され加工前に剥離したいわゆる1次スケールとは異なるものである。 線材表面に形成された2次スケールは厚みが薄く、通常ワイヤ伸線などの2次加工の前に酸洗或いはメカニカルデスケール法などにより剥離除去される。

    線材表面に形成されメカニカルデスケールにより剥離されたスケールは厚み数10μmの薄片状の粉末で、薄く、かつ、扁平状であって、従来の電波吸収材料に用いられて来た酸化鉄粉の様に、球状、針状、あるいは棒状のものとは大いに形態が異なり、優れた電波吸収特性を有することを先に出願した特願2002-203028で示した。

    しかし、このような偏平酸化鉄粉はゴムなどの誘電材料に分散させた場合、偏平形状の粉末であるために従来の球状(異形状)フェライト粉末を分散した場合よりゴムコンパウンドとの密着性が悪く、介在物として作用し、成形体の強度を著しく劣化させる場合があることが判明した。 また、偏平形状であるため誘電体中に分散させシート状に成形するために一般的に行われるロール混錬、圧延、押し出しにより粉末が加工方向に配向し面内で電波吸収特性に異方性が生じやすい欠点を有することも判明した。

    さらに導電性を有する偏平酸化鉄粉の特徴である、高誘電率と導電損失に起因する大きな誘電損失は、ゴム、あるいは樹脂などの比較的誘電率の低い母体中に分散させた場合、母体の誘電率が低いために全体としての誘電率が大幅に低下してしまい、本来の偏平酸化鉄粉の特徴を十分発揮できないことも明らかになってきた。 母体の誘電率が低いことにより、母体中に分散させた導電性を有する偏平粉末間の容量結合が低下し、充分な導電損失も得にくいことになる。

    一方、母体としてコンクリートやモルタルセメントあるいは石膏を用いるものすなわちセメント(ポルトランドセメント、アルミナセメント、マグネシアセメントなど)、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、石灰などの水和固化無機材料(セメント系のバインダー)に骨材と水を混ぜて固化させたセメント型固化材料を用いた場合、ゴムあるいは樹脂の誘電率がGHz帯で3前後であるのに対して5以上のより高い値を有することから、導電性を有する偏平粉末を分散させた成形体の誘電率あるいは誘電損失を高めるには原理的に有利となる。 実は複合誘電体則によれば、吸収材料粉末の体積充填率が30%程度の場合母体の誘電率が3から5に増大することで成形体の誘電率は20から30程度まで高められることが理論的に予想できる。 また、母材の誘電率が高いことにより、特に偏平形状の粉末を分散させた場合、偏平粉末間で局所コンデンサを形成して強く容量結合し、このことにより入射電磁波を高周波の内部電流に効率的に変換し極めて大きな導電損失を得ることができる。 すなわち極めて大きな誘電損失材料となり、高い電波吸収性能を示すことが可能となる。 偏平酸化鉄粉は導電性のほかに磁性も有しており、偏平形状であることから透磁率も高くまた高い磁気損失を示し一層大きな電波吸収性能を発揮することになる。

    このように偏平酸化鉄粉を誘電率の高いセメント中に分散させることにより本来の性能が発揮され、薄型の吸収体を得ることが可能となる。 このような特性は既存のフェライト粉末を用いて得ることはできない。 一般的なフェライト粉末は偏平粉末ではなく異形状であるためそもそも形状効果による高い誘電特性は望めない。 また、酸化鉄粉のような適度の導電性がないために大きな導電損失を得ることも困難である。 さらにこのような形状の粉末をコンクリートに分散させた場合粉末間の容量結合も小さく、一層導電性の損失は期待できない。

    したがって、一般的なフェライトを用いる場合は、フェライトの充填率を充分高め、さらに不足分の誘電率を誘電率アップに効果的なカーボンなどの添加で補う必要が生じる。 またGHz以上の高周波数での特性を改善するためには数μm〜数10μmの微粉末が好ましいが、このような微粉末は極めて比表面積が大きくセメントを用いてモルタルなどの固化成形体を形成する場合に品質低下をもたらす。 すなわち、セメントに対して充分な量のフェライトを含有させようとすると混練時の流動性を上げ、一定のワーカビリティを確保するために必然的に水の量を多くする必要があり、その結果、成形体の密度低下、ひいては強度低下をもたらし大きな問題が生じる。

    こうした強度低下は成形体の中にカーボンファイバー、ガラスファイバーなどの補強材を加えることである程度改善されるが、一方で補強材の添加により吸収剤であるフェライト粉末の充填率がある程度制約をうけることとなり、また補強材の電磁波応答特性も加味した材料設計を行う必要もあり設計が複雑になるデメリットも発生する。 フェライトのサイズを大きくすることで、ワーカビリティやセメント固化体の機械強度などの品質は改善されるがこの場合には特に磁気損失の低下による電磁波吸収特性の劣化が起きることとなる。

    このようなトレードオフを打ち破る方法として偏平酸化鉄粉の使用は有効である。 我々が利用することのできる熱延線材のメカニカルデスケールによって得られる偏平酸化鉄粉は厚みが数10μmと薄いものの、サイズは数10μm〜100μmと大きく、水と粉体の比、いわゆる水粉体比が低い場合でも比較的容易にセメントと混練することが可能である。 その結果、成形体の密度、あるいは強度を損なうことなく、セメントに分散させて高い電波吸収特性を実現するのにうってつけの形態となっている。 面内のサイズは大きいが、最小部のサイズすなわち厚みが数10μm以下であることから電波吸収特性としては良好な値を示すことになる。

    このようにセメントに分散させるに適当な形態を有している偏平酸化鉄粉ではあるが、サイズがあまり細かいとやはりセメントとの混練での流動性の悪化、水粉体比の増大による固化成形体の強度低下をもたらし好ましくない。

    この品質劣化を回避する方法としては、使用する偏平酸化鉄粉原料の中の微粉末を取り除く、あるいは微粉末の割合の低い原料を使用する必要がある。 具体的には後述の実施例により立証するように、メッシュで篩って選別した場合、25μm以下の粒子の割合が50%を超える場合、流動性などのセメント混練での作業性が悪化することから、粉末の面内最短部サイズが25μmを超える粒子の重量比率を50%以上とする必要がある。 また先願で示したとおり、偏平酸化鉄粉末の平均厚みを30μm以下とすることにより良好な電波吸収特性を得ることができる。

    このようなセメント型の電波吸収体用に調整された偏平酸化鉄粉原料を用い、セメント、モルタル、石膏などの水和固化無機材料に分散させ、板状に成形し、さらに裏面に金属反射体を設けた標準的な共振器型吸収体にすることにより、従来のフェライトを用いた吸収体に比べて薄型化でき、加えて成形体の強度を大きく改善することが可能となる。

    成形体中の偏平酸化鉄粉の体積充填率は5%以上、40%以下とする。 体積充填率が5%を下回ると電波吸収体として充分な特性を得ることが困難になり、40%を上回ると著しく強度が低下するため好ましくない。

    また、従来のフェライトを用いる場合に比べて偏平酸化鉄粉を用いた場合、同等の特性を得るための充填率を大幅に下げられることから、誘電率改善に有効であることが知られているカーボンあるいは/およびチタニア粉末などをさらに加えることができる。 偏平酸化鉄粉末を単独で使用する場合に対してカーボンやチタニア粉末を添加することにより、全体の誘電率がアップし吸収体が薄型化できることのほかに、偏平酸化鉄粉単独の使用では誘電率の実部と虚部を独立して制御できないのに対してこれらの添加材を加えることにより独立して制御できるようになり、材料設計の自由度が増し、電磁波吸収特性を最適化しやすい場合がある。

    添加するカーボンあるいは/およびチタニアの量としては体積率で0.5%以上添加することで実質的な誘電率アップの効果が得られる。 充填率の最大値は体積率で10%までとする。

    電波吸収体の構成としては、一般的な単層型のほかに多層型とすることができる。 多層型としては、コンクリート、モルタル、石膏などに偏平酸化鉄粉を含有した吸収層で配合あるいは母材の異なるもの同士の積層の他に、他のタイプの吸収材料、たとえば一般的なフェライトやカーボンをゴムなどに含有させたものなど異なる母材、異なる吸収材料の電波吸収層との積層でも良い。 また、電波吸収材料ではない一般的な誘電材料(誘電率が1より大きい材料)で構成された誘電体層との積層でも良い。

    また、表面に塗装、樹脂板貼り付け、タイル貼り、ゴム接着、ガラス接着など意匠性や機能性を付与するための表面処理を施すことも可能である。

    これらの表面処理、あるいは表面積層体はそれが極めて薄い場合には電磁吸収特性に影響を与えないが、厚い場合には吸収特性に大きな影響を与えることから、表面処理、あるいは表面積層体にあわせて下層の電波吸収層の物性、すなわち複素誘電率と複素透磁率、および厚みを制御する必要が生じる。 吸収層の物性は主として吸収材料の配合を調整することによってなされるが、本発明の偏平酸化鉄粉を用いた場合、前述の様に誘電率、誘電損失が大きいためその充填率の変更により大幅に吸収体の誘電率を変えることが可能で制御領域が広い。 また、必要に応じてカーボン、酸化チタンなどの付加的添加材の添加により調整することが可能である。

    また、本発明の電波吸収材料、すなわちコンクリート、モルタルや石膏などのセメント系母材に所定の粒度に調整された偏平酸化鉄粉を含有させた誘電率、および誘電損失、さらに磁器損失の大きな電波吸収材料を用い、最上層に誘電体層を設けた積層体では、通常の共振器型電波吸収体に使用されている電波反射体層(以下、単に反射体あるいはバックメタルと言うことがある)を不要とすることができる。 電波反射体層は電波到来方向と反対側の面に設置され、通常電波が完全に反射するものであれば何でもよく、金属の板、金属のメッシュ、アルミフォイルなどの金属フォイル、導電ペースト、導電性炭素繊維などが用いられているが、コストアップにつながるばかりでなく、屋外の過酷な環境で使用される場合には、耐久性や信頼性などの点で課題が多く、また共振器型吸収体であることからそれらの反射体層を吸収体層に張り合わせる場合の接着剤の厚み管理や張り合わせ工程等の点で生産性を阻害し総じて電波吸収体のコストを押し上げ信頼性を低下させる要因になっている。

    通常の共振器型電波吸収体の場合、電波の吸収、すなわち表面からの電波の反射を抑制する機構は以下のようになる。 すなわち、電波が空気中より電波吸収体に入射する場合、電波吸収体の屈折率は空気の屈折率1とは異なるために境界面で屈折率の不連続が生じ必ず電波は反射する。 一方、表面で反射せずに内部に侵入した電波は一部電波吸収層に吸収されながら背面の電波反射体層に到達し、そこで逆向きに反射される。 電波反射体層に反射された電波は再び電波吸収層の中を進み一部は表面から外に透過し一部が再び表面で反射され内部に戻る。 入射電波はこの過程を繰り返しながら最終的には表面から入射方向と逆向きに反射され、他の部分は電波吸収層の中で上記多重反射を繰り返しながら吸収される。

    共振器型吸収体では、前者の吸収体表面から入射方向と逆向きに反射する電波強度を位相の打ち消し合いにより取り除くことにより無反射状態を実現している。 この場合、反射板がないと、表面で反射した電波に対してそれを打ち消す反射波が得られないため電波反射強度は必ず有限の値になり無反射条件は得られない。

    本発明の反射板のない吸収体は以下の方法で得ることができる。 つまり、本発明のセメント型電波吸収材料、すなわちコンクリート、モルタル、石膏などのセメント系母材に所定の粒度に調整された偏平酸化鉄粉を含有させた誘電率、および誘電損失、さらに磁器損失の大きな電波吸収材料を用い、最上層に誘電体層(表面誘電体層)を設けた積層体とする。 この誘電体層すなわち表面誘電体層としては塗装、樹脂、ゴム、陶器、磁器、セメント、ガラス、その他の有機、無機の各種誘電材料を用いることができる。

    このような構成にすることで、最表面で反射する電波と、第2の界面、すなわち上部誘電体層と下部電波吸収層との界面で反射する電波を打ち消しあわせ、表面からの電波反射を抑制することができる。

    さらに電波反射体層を不要とするには、吸収体の後ろの構造体、あるいは空気などの材質によらず常に同じ吸収特性とする必要がある。 さもなければ吸収体を施工する下地の材料によって吸収特性が変わってしまうし、それを避けようとすると下地ごとに吸収体を設計しなおす必要が生じ、反射体を取り除いた意味がなくなる。

    これを実現するために本発明の電波吸収材料を用いることができる。 つまり吸収体の下地材料にまったく影響をうけないようにするための唯一の手段は電波が吸収層に侵入し吸収体の裏面に到達する前に吸収層で完全に吸収されるようにすることであり、そのためには本発明の吸収体の大きな誘電損失と磁気損失が極めて有効となる。

    ここで、本発明の電波吸収材料を用い、上部誘電体層を設けた電波反射体層が不要の電波吸収体を作製するための諸条件を記載する。

    まず、上部誘電体層の物性に関する制約であるが、到来電磁波が表面で極めて強く反射されてしまう性質のものは好ましくない。 というのは、一定量の電波が表面より内部に侵入し、第2の界面(上部誘電体層と下部電波吸収層との界面)で反射しその反射波を表面で反射する反射波に重ねて反射電波の打消しを行っているからである。 表面での反射強度が大きくなるとこの条件が成り立たなくなる。 もちろん、下部吸収層の誘電率、あるいは透磁率を制御して第2の界面での反射係数を制御することにより上層誘電体層の誘電率の違いに対応した設計が可能になるわけであるが限界がある。 本発明の電波吸収材料を用いて対応できる範囲は上部誘電体層の屈折率の絶対値が2.5以下の場合に限られる。

    ここで屈折率nは、対象周波数での材料の複素比誘電率 εr、複素比透磁率μrを用いて n= √|εr・μr|とあらわされる。 屈折率nの絶対値が2.5を超えた場合、表面での1次反射の振幅が大きくなりすぎ、本発明の電波吸収材料を用いても第2界面からの反射とのキャンセルをなしえず対応不可能となる。

    次に上部誘電体層の厚みに関しての制約であるが、厚みが以下の式を満たさない場合、本発明の電波吸収材料を用いて反射体層のない吸収体とすることが困難となる。 n Rは上部誘電体層の電波屈折率の実数部を示している。

    4n R ×t/λ≦A
    ここで、Aは1.1、より好ましくは1.0となる。

    厚みがこの式を満足せず厚くなってしまった場合、入射電波が表面より入射し、第2の界面で反射して再度表面から放出されるまでに受ける位相シフトが大きくなりすぎ、本発明の電波吸収材料を用いた界面での反射波の位相制御の制御範囲を越えてしまい対応不可能となる。 位相が次の整合条件になるように上層誘電体層の厚みを誘電体中の半波長程度厚くする方法も考えられるが全体の厚みが厚くなり不利である。

    なお、前記n並びにAの条件は、上部誘電体層を設けた電波反射体層がない吸収体においては勿論であるが、上部誘電体層を設けた電波反射体層がある吸収体においてもその採用が好ましいものである。

    最上層に誘電体層を設けた電波反射体層のないセメント型電波吸収体は以下のようなメリットもある。 すなわち、コンクリート、モルタルや石膏などのセメント型の吸収体の場合、外部より吸収体に水が浸入しやすく誘電率が大きく変動するという欠点を有している。 この欠点を解決するためには最も簡単には表面に防水加工を施すことであるが長期信頼性、コストの面で必ずしも満足できる方法ではない。

    一方、本発明の最上層に誘電体層を設けた電波反射体層のないセメント型電波吸収体の場合、下層吸収体の誘電率の変動に対して充分大きなマージンを得ることができ水の浸入に対しても特性が変化しないようにすることができる。 これは、吸収自体が電波吸収層で完全に成される様に設計されているため水が浸入しても電波吸収が向上することはあっても悪化はしないからである。 単層型の吸収体の場合には水の侵入によって誘電率が変動することから吸収周波数がシフトしてしまうが、本方法の場合上層誘電体層の誘電率と厚みが吸収周波数を決定する支配的な要因であることから、これらの特性を変動させなければ基本的には吸収周波数が大きく変化することはない。 もちろん、上層誘電体層が吸水した場合には誘電率が大きくなり、吸収周波数が変動してしまうため、吸水率が小さな素材を用いる、あるいはそれ自体に防水処理をする必要がある。 だたし、セメントと異なり、吸水率の小さな誘電体材料は比較的容易に入手することができ、特別な防水処理を施す必要がない場合が多い。

    上層誘電体層の吸水率は5%以下、好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下とする必要がある。 5%を超えると、上層誘電体層として使用している素材の誘電率が本発明で用いる屈折率2.5以下のものの場合吸収周波数がC帯用吸収帯に設計されている場合20%程度以上シフトしてしまう。 吸水率が1%以下であれば変動は5%以下におさえられる。

    さらに、最上層に誘電体層を設けた電波反射体層のないセメント型電波吸収体は次のようなメリットもある。 すなわち下層のセメント型吸収層の厚みは、電波が裏面に到達するまでに充分吸収されるに必要な厚みを有しておればよくそれ以上の厚みになっても吸収特性に影響が出ない。 厚みを厳密に制御する必要がないということは厚みの精密制御が難しいセメント製製品にとっては特に有利となる。 一定の厚み以上とすればよいことから、たとえば吹き付けモルタルで既存の壁面に一定厚み以上吸収層を施工しておきその上に上部誘電体層の役割を果たし、吸水性のない所定厚みの磁器タイルを配するだけで必要な電波吸収壁を得ることも可能である。

    最後に本発明の吸収材料の製造方法について間単に記載する。
    まず本発明で使用する偏平酸化鉄粉の製造方法であるが、鉄鋼の線材を圧延し、冷却中に線材表面に形成された2次スケールを伸線などの2次加工前に行うメカニカルデスケール法などにより剥離したものを用いる。 得られた剥離スケールの厚み、大きさなどのサイズは線材の熱間加工とメカニカルデスケール方法によって制御することができ、加工温度が低く、冷却速度が速いほど薄く細かなデスケール粉末が得られる。 また、メカニカルデスケール方法の違い、すなわちリバースベンディング、あるいはトーションタイプメカニカルデスケール方式、それらの操業条件などによってもスケールサイズが異なってくる。

    本発明に使用する偏平酸化鉄粉は平均厚みが30μm以下であり、面内最短部サイズが25μm以上の粒子の重量比が50%以上の大型のものであり、上記圧延条件、デスケール条件を制御、あるいは最適な条件で操業されている圧延工場、鋼種から選別して採取し、必要に応じてふるいで微細分をふるいおとし粒度を調整して使用する。

    このような偏平酸化鉄粉をコンクリート、モルタル、あるいは石膏などのいわゆるセメント系母材に含有させる方法としてはコンクリートで一般に用いられている打設方法と同じく、偏平酸化鉄粉を水和固化無機材料であるセメントと乾式で混合し、必要量の水を加えて練り合わせ、型材に入れて固化成形する。 充分な流動性が得られない場合には振動打設、あるいはプレス成形、または押し出しなどの方法を取ることができる。 また、必要に応じて砂などの骨材を加えても良い。

    そして、固化の過程では、一般のセメント系材料の水和プロセス同様、常温固化、蒸気養生、オートクレープ養生などを用いることができる。 裏面に電波反射体層を取り付ける場合には、電波が反射する部材、たとえばアルミ箔、アルミ板、鉄板などの金属板あるいは金属メッシュ、その他の電波反射体層を裏面に接着材で貼り付けるか、またはメッシュなどの場合にはセメントにあらかじめ埋め込み一体で固化させても良い。

    多層構造とするときには一層ずつ配合を調整して混合、固化させ固化の後に接着剤で張り合わせる、あるいは一層毎に型に流し込み、界面が乱れないよう、またコールドジョイントを作らない様に半固化状態になってから次の層を流し込むなどの方法で一体化する。

    表層に誘電体層を設ける場合は、吸収層をまず作製し、その後誘電体層と接着する、あるいはタイルを施工する要領で固化前に誘電体層を張り合わせそのまま固化接合することもできる。

    最後に、必要に応じて表面の一部、あるいは前面を防水処理する。 防水処理としては、常温硬化樹脂、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂等の有機材料、水ガラス等の無機材料を表面に塗布、あるいは含侵させる方法を取る。

    さて、以下に本発明の優れた効果を明確にすべく多くの実施例を示す。
    (実施例1)
    低炭素鋼のφ5.5線材ワイヤに形成された2次スケールをメカニカルデスケール(リバースベンディング方法)により剥離し採取した。

    線材の組成は
    C;0.035、Si;0.71、Mn;1.35、Ti;0.03、S;0.009、Al;0.007、Cu;0.011、P;0.008、Zr;0.01
    であった。

    線材の熱間加工条件はビレット加熱温度;950℃
    仕上げ線径;φ5.5mm
    載置(巻き取り)温度;900℃
    コンベア速度;10m/sec
    冷却方法;カバー冷却とした。

    得られたスケールをまず樹脂に埋め込んで研磨し、SEM観察により粉末20点の厚みデータを得て平均値を出した。 厚みの平均値は8.5μmであった。

    また、得られたスケール粉末の磁性を測定するために、振動試料型磁計を用い、最大印加磁場10kOeをかけ磁化を測定したところ56.8emu/gを示した。 スケールは一般的にFeO、Fe3O4、Fe2O3の酸化鉄の混合体であり、このうちFe3O4が磁性を示しマグネタイトの磁化87.43emu/gに対して約65%の値を示すことから約65%がマグネタイトになっていると推定される。

    次に、採取したスケール粉末から粉末サイズが25μm以下の細かなものを部分的に取り除いたもの、あるいは25μm以下の粉末を意図的に加えた粒度の異なる7種類の電波吸収体用偏平酸化鉄粉末原料サンプルを得た。 得られた7種類の原料の、面内最短部サイズ>25μmの粒子の重量比をJISZ8801に準じた方法で篩い分けすることにより求めた。

    比較として、乾式で粉砕したMnZnフェライトの粗粉砕原料を用意した。 粉末の平均粒径は約5μmであった。

    これらの粉末を、一般的なポルトランドセメントと混合し、固化後の最終体積率が18%〜21%の強度試験用成形体(モルタル)を作製した。

    それぞれの原料ごとの水の配合は、セメントと原料粉末を混合後、水を加えていき流動性が得られまたブリージングが生じない最適な水配合を調査し、次にその配合で混合して強度測定用の成形体を作製した。

    成形体中の偏平酸化鉄粉、あるいはフェライトの体積率は、セメント、酸化鉄粉およびフェライト、水の配合比と成形体重量および成形体サイズ(体積)および粉末の真密度(偏平酸化鉄粉 5.26、MnZnフェライト5.1)より以下の計算により求めた。

    成形体の重量×(偏平鉄粉の重量/総重量)/偏平鉄粉の真比重/成形体体積×100
    セメント曲げ試験、および圧縮試験用のサンプルは、測定用の形状(40mm×40mm×160mm、φ100mm×200mml)の型枠に混合後のモルタルを充填、タッピングしながら打設し一晩乾燥させた後取り出してさらにオートクレープで10気圧24時間養生した。

    セメント曲げ試験、および圧縮試験はそれぞれJIS A1106中央載荷法、JIS A1108により求めた。

    これらの試験結果を表1、図1及び図2に示す。

    偏平酸化鉄粉を用いる場合、面内最短部サイズが25μm以上の粉末の重量比が50%以上の場合、高い圧縮強度を実現できる。 25μm以上の粉末の重量比が50%を下回り25μm以下の粉末の重量比が増大すると、所要のワーカビリテイを得るための水の量が増大し、その結果、圧縮強度が低下する。 比較で用いたMnZnフェライト粉末(表1サンプル番号8)はセメントと混合する場合のワーカビリテイが低く水粉体比を高くしたために圧縮強度が低くなった。

    また、偏平酸化鉄粉を用いる場合、面内最短部サイズが25μm以上の粉末の重量比が50%以上の場合、高い曲げ強度を実現できる。 25μm以上の粉末の重量比が50%を下回り25μm以下の粉末の重量比が増大すると、所要のワーカビリテイを得るための水の量が増大し、その結果曲げ強度が低下する。 比較で用いたMnZnフェライト粉末(表1サンプル番号8)はセメントと混合する場合のワーカビリテイが低く水粉体比を高くしたために曲げ強度も低くなった。
    (実施例2)
    (バックメタルつき単層材の特性)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルを背設した単層型吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は93.3%であった。

    セメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、200mm×200mm×3mmの型枠の中に充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出し30日間さらに常温で養生した。 その後、片面にアルミ性粘着シートを貼り付け、吸収周波数をETC用周波数である5.8GHzに最適化するためにもう一方の面を砥石で乾式研削し電波吸収特性を測定した。 電波吸収特性の測定はネットワークアナライザと誘電体レンズつきホーンアンテナを用い、ワンポートでの反射特性を基準の金属板からの反射特性を用いて校正する一般的な方法(フリースペース法)で行った。

    これらの条件及び測定結果を表2、図3に示す。

    セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は21.1%で、このとき厚み2.85mmで吸収量30dBの良好な吸収特性が得られた。
    (比較例1)
    (バックメタルつき単層材の特性)
    セメントにMnZnフェライトを含有させ、バックメタルを背設した単層型吸収体を作製した。 MnZnフェライトは粗粉砕された、平均粒径5μmのものを使用した。

    セメント、フェライト、水を表の配合で混合し、200mm×200mm×3mmの型枠の中に充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出し30日間さらに常温で養生した。 その後、片面にアルミ性粘着シートを貼り付け、実施例と同程度の厚みに調整するためにもう一方の面を砥石で乾式研削し電波吸収特性を測定した。 電波吸収特性の測定は実施例1と同様である。

    これらの条件及び測定結果を表3、図4に示す。

    セメント中のフェライトは実施例より配合を大幅に上げたが、ワーカビリティが悪く、水粉体比を上げざるを得なかった。 このため成形体での体積率は17.9%で、このときの吸収量特性としては8GHzで16dB程度であった。 吸収周波数を下げるためにはさらに吸収体の厚みを増大させ、また吸収量を改善するためにはさらにフェライト粉末の充填量を増大させる必要があるが困難である。
    (実施例3)
    (バックメタルつき単層材の特性)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルを背設した単層型吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は77.8%であった。

    セメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、200mm×200mm×6mmの型枠の中に充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出し30日間さらに常温で養生した。 その後、片面にアルミ性粘着シートを貼り付け、吸収周波数を無線LAN(IEEE802.11b)周波数である2.4GHzに最適化するためにもう一方の面を砥石で乾式研削し電波吸収特性を測定した。 電波吸収特性の測定はネットワークアナライザと誘電体レンズつきホーンアンテナを用い、ワンポートでの反射特性を基準の金属板からの反射特性を用いて校正する一般的な方法(フリースペース法)で行った。

    これらの条件及び測定結果を表4、図5に示す。

    セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は17.5%で、このとき厚み5.8mmで吸収量20dB以上の良好な吸収特性が得られた。
    (比較例2)
    (バックメタルつき単層材の特性)
    セメントにMnZnフェライトを含有させ、バックメタルを背設した単層型吸収体を作製した。 MnZnフェライトは粗粉砕された、平均粒径5μmの比較例1と同じものを使用した。

    セメント、フェライト、水の配合は、用いた原料フェライトが最大充填され、比較例1と同じ配合とし、混合後、200mm×200mm×6mmの型枠の中に充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出し30日間さらに常温で養生した。 その後、片面にアルミ性粘着シートを貼り付け、実施例と同程度の厚みに調整するためにもう一方の面を砥石で乾式研削し成形体の厚みを実施例3と同じ5.8mmに調整し、電波吸収特性を測定した。 電波吸収特性の測定は実施例1と同様である。

    これらの条件及び測定結果を表5、図6に示す。

    体積率は17.9%で、このときの吸収量特性としては3.2GHzで14dB程度であった。 比較例1と同様に吸収周波数を下げるためにはさらに吸収体の厚みを増大させ、また吸収量を改善するためにはさらにフェライト粉末の充填量を増大させる必要があるが困難である。
    (実施例4)
    (バックメタルつき単層材の特性)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルを背設した単層型吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は77.8%であった。

    セメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、200mm×200mm×3mmの型枠の中に充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出しさらにオートクレープ養生した。 オートクレープ処理の条件10気圧180℃24時間とした。 その後、片面にアルミ性粘着シートを貼り付け、電波吸収特性を測定した。

    これらの条件及び測定結果を表6、図7に示す。

    セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は17.5%で、このとき厚み2.96mmで吸収量25dBの良好な吸収特性が得られた。
    (実施例5)
    (バックメタルつき単層材の特性 グラファイト添加)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルを背設した単層型吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は77.8%であった。 また、誘電率をあげ、吸収体を薄型化する目的でグラファイトを添加した。 使用したグラファイトは平均粒径80μmの天然黒鉛を用いた。
    セメント、偏平酸化鉄粉、グラファイト水を表の配合で混合し、200mm×200mm×3mmの型枠の中に充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出しさらにオートクレープ養生した。 オートクレープ処理の条件は実施例4と同じとした。 その後、片面にアルミ性粘着シートを貼り付け、電波吸収特性を測定した。

    これらの条件及び測定結果を表7、図8に示す。

    セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は16.7%、グラファイトの体積率は4.6%で、このとき厚み2.93mmで4.8GHzで吸収量25dBの良好な吸収特性が得られた。 整合周波数は実施例4に比べて大幅に低下でき、この結果ETC用5.8GHzでは厚み2.4mm程度に薄型化できることがわかった。
    (実施例6)
    (バックメタルつき単層材の特性 酸化チタン添加)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルを背設した単層型吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は77.8%であった。 また、誘電率をあげ、吸収体を薄型化する目的で酸化チタンを添加した。 使用した酸化チタンの平均粒径は1μm以下であった。

    セメント、偏平酸化鉄粉、グラファイト水を表の配合で混合し、200mm×200mm×3mmの型枠の中に充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出しさらにオートクレープ養生した。 オートクレープ処理の条件は実施例4と同じとした。 その後、片面にアルミ性粘着シートを貼り付け、電波吸収特性を測定した。

    これらの条件及び測定結果を表8、図9に示す。

    セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は15.4%、酸化チタンの体積率は3.5%で、このとき厚み3mmで5.3GHzで吸収量30dBの良好な吸収特性が得られた。 整合周波数は実施例4に比べて大幅に低下でき、この結果ETC用5.8GHzでは厚み2.7mm程度に薄型化できることがわかった。
    (実施例7)
    (バックメタルつき単層材の特性、Xバンド)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルを背設した単層型吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は77.8%であった。

    セメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、200mm×200mm×2mmの型枠の中に充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出し30日間さらに常温で養生した。 その後、片面にアルミ性粘着シートを貼り付け電波吸収特性を測定した。

    これらの条件及び測定結果を表9、図10に示す。

    セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は11.4%で、このとき厚み1.95mmで周波数9.5GHzで吸収量35dBの良好な吸収特性が得られた。
    (実施例8)
    (バックメタルつき単層材の特性、石膏使用 Cバンド)
    石膏に偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルを背設した単層型吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は87.3%であった。
    石膏、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、200mm×200mm×8mmの型枠の中に充填し、原料が沈降しないようにさらに攪拌し、一定の粘性が得られたところで、こて、を用い表面を仕上げて室温で放置した。 24時間後に型枠から取り出し30日間さらに常温で養生した。 その後、片面にアルミ性粘着シートを貼り付け、吸収周波数を無線LAN用周波数である2.4GHzに最適化するためにもう一方の面を砥石で乾式研削し電波吸収特性を測定した これらの条件及び測定結果を表10、図11に示す。

    石膏中の偏平酸化鉄粉の体積率は13.1%で、このとき厚み6.2mmで吸収量30dBの良好な吸収特性が得られた。
    (実施例9)
    (バックメタルつき単層材の特性、表面誘電体層を接着、無線LAN用)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルを背設し、表面に誘電体層を設けた2層型吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は77.8%であった。 また誘電体層としては厚み6.5mmの市販の陶器製タイルを用いた。 タイルの誘電率はSパラメーター法による測定で3.9であった。

    セメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、152mm×152mm×5mmの型枠の中に充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出しさらにオートクレープで養生した。 その後、片面にアルミ性粘着シートを貼り付け、さらに表面、電波到来側にタイルを市販のタイル用のセメント接着剤で貼り付け電波吸収体とし電波吸収特性を測定した。

    これらの条件及び測定結果を表11、図12に示す。

    セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は24.4%で、このとき周波数2.4GHzで吸収量35dBの良好な吸収特性が得られた。
    (実施例10)
    (バックメタルつき単層材の特性、 表面誘電体層あり、ETC用)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルを背設し、表面に誘電体層を設けた2層型吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は59.3%であった。 また誘電体層としては実施例9と同じく厚み6.5mmの市販の陶器製タイルを用いた。 タイルの誘電率はSパラメーター法による測定で3.9であった。

    セメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、まず152mm×152mm×13mmの型枠の中に同サイズの陶器タイルを敷き、タイルを下敷きにして混合体を充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出しさらにオートクレープで養生し一体化した。 オートクレープの条件は10気圧180℃24時間とした。 その後、タイルと反対側の面にアルミ性粘着シートを貼り付け電波吸収特性を測定した。

    これらの条件及び測定結果を表12、図13に示す。

    セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は29.1%で、このとき周波数5.8GHz近傍で吸収量25dBの良好な吸収特性が得られた。 また、タイルを積層することで吸収特性が広帯域化し、良好な特性となっている。 セメントに偏平酸化鉄粉を含有させた吸収体材料は、充分高い誘電損失と磁気損失を兼ね備えており、それを他の誘電体と積層することにより、特性の優れた広帯域型の吸収体を設計できることが確認された。
    (実施例11)
    (バックメタルつき単層材の特性、 薄型表面誘電体層あり、ETC用)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルを背設し、表面に誘電体層を設けた2層型吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は77.8%であった。 また誘電体層としては実施例9と同じ材質で厚み4mmの市販の陶器製タイルを用いた。 タイルの誘電率はSパラメーター法による測定で3.9であった。

    セメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、200mm×200mm×10mmの型枠の中に混合体を充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出しさらにオートクレープで養生した。 オートクレープの条件は10気圧180℃24時間とした。 セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は11.4%で厚みは8.8mmであった。 表面に97mm×97mmのタイルを4枚タイル用の接着剤ではりつけ反対側の面にアルミ製粘着シートを貼り付け電波吸収特性を測定した。

    これらの条件及び測定結果を表13、図14に示す。

    吸収特性としては周波数5.8GHzで吸収量25dBの良好な吸収特性が得られた。 小型薄型の市販内装用陶器タイルを用いてETC用電波吸収体を作製できることがわかった。
    (実施例12)
    (バックメタルありなし単層材の特性、薄型表面誘電体層あり、ETC用、表面誘電体層の厚みが6.2mmの実施例)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルあり、なしで、表面に誘電体層を設けた吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は77.8%であった。 また誘電体層としては実施例8と同じでやや薄型の市販の陶器製タイルを用いた。 タイルの誘電率はSパラメーター法による測定で3.9であった。

    セメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、152mm×152mm×20mmの型枠の中に混合体を充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出しさらにオートクレープで養生した。 オートクレープの条件は10気圧180℃24時間とした。 セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は18.0%で厚みは約18mmであった。 表面に152mm×152mmのタイルをタイル用接着剤ではりつけ反対側の面にアルミ性粘着シートをまず貼り付けずに、次に貼り付けて電波吸収特性を測定した。

    これらの条件及び測定結果を表14、図15に示す。

    吸収特性としては周波数5.8GHzで吸収量35dBの極めて良好な吸収特性が得られた。 また裏面アルミ反射層がある場合とない場合で電波反射特性にほとんど差がなく、バックマテリアルによらない安定した電波吸収特性を示す電波吸収体が得られていることがわかる。 裏面反射層がない場合でもそれがある場合でも反射特性に差がないことから明らかに裏面まで電波が到達しておらず、その結果下地材質によらず安定した特性を実現することができる吸収体となっている。
    (実施例13)
    (バックメタルありなし2層型吸収体の特性、薄型表面誘電体層あり、ETC用、表面誘電体層の厚みが4mmの実施例)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルあり、なしで、表面に誘電体層を設けた吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は77.8%であった。 吸収層はセメントに偏平酸化鉄粉を異なる体積率で含有させた2層の積層とした。 また誘電体層としては実施例8と同じでさらに同材質で薄型にした品種の市販の陶器製タイルを用いた。 タイルの誘電率はSパラメーター法による測定で3.9であった。

    まず1層目(電波到来方向と反対側の層)をセメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、152mm×152mm×10mmの型枠の中に充填し24時間後に型枠から取り出しさらにオートクレープで養生した。 また2層目(電波到来方向の層)もセメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、152mm×152mm×3mmの型枠の中に充填し24時間後に型枠から取り出しさらにオートクレープで養生した。 オートクレープの条件は10気圧180℃24時間とした。 オートクレープ後に1層目と2層目の表面を乾式で研削し平面を出してから厚み4mmの陶器タイル、2層目、1層目の順番で接着剤で貼り付け、電波吸収体とした。 セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は1層目が29.7%で厚みは10.2mm、2層目が5.64%で厚みは2.5mmであった。 電波到来方向と反対側の面にアルミ製粘着シートをまず貼り付けずに、次に貼り付けて電波吸収特性を測定した。

    これらの条件及び測定結果を表15、図16に示す。

    吸収特性としては周波数5.8GHzで吸収量20dB以上の良好な吸収特性が得られた。 また裏面アルミ反射層がある場合とない場合で電波反射特性にほとんど差がなく、バックマテリアルによらない安定した電波吸収特性を示す電波吸収体が得られていることがわかる。
    (実施例14)
    (バックメタルありなし単層材の特性、 薄型表面誘電体層あり、ETC用、表面誘電体層の厚みが6.9mmの実施例)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルあり、なしで、実施例12と同様の材質の陶器性タイルの表面誘電体層を用いた吸収体を作製し特性を評価した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は77.8%であった。 誘電体層としては実施例8と同じでやや厚い6.9mmの陶器製タイルを用いた。 タイルの誘電率はSパラメーター法による測定で3.9であった。

    セメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、152mm×152mm×30mmの型枠の中に混合体を一部充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出しさらにオートクレープで養生した。 オートクレープの条件は10気圧180℃24時間とした。 セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は12.8%で厚みは約25mmであった。 表面に152mm×152mmのタイルをタイル用接着剤ではりつけ反対側の面にアルミ製粘着シートをまず貼り付けずに、次に貼り付けて電波吸収特性を測定した。

    これらの条件及び測定結果を表16、図17に示す。

    吸収特性としては周波数5.4GHzで吸収量40dB、周波数5.8GHzで吸収量20dBの良好な吸収特性が得られた。 また裏面アルミ反射層がある場合とない場合で電波反射特性にほとんど差がなく、バックマテリアルによらない安定した電波吸収特性を示す電波吸収体が得られている。

    次にサイズが152×152mmの同じ吸収体を4枚作製し、これを密着させて並べ5.8GHz円偏波で斜め入射での吸収特性を評価した。 評価結果を図18に示す。

    表面保護層の厚みが6.9mmで 4nt/λが1.05の表面誘電体層を用いることで吸収量が対象周波数で20dBを実現し、また斜入射特性も入射全域で20dB以上の値を示すことがわかった。
    (比較例3)
    (バックメタル有り無し単層材の特性,表面誘電体層を接着)
    一方、上記実施例と同様な条件下において、表面保護層の厚みが6.9mmで4nt/λが1.22とした表面誘電体層を用いた場合の条件および測定結果を表17、図19に示す。

    表面誘電体層の4nt/λが1.1を超えた値となったため、大幅に整合周波数が低下5.8GHzでの吸収量が20dBを下回る結果となった。
    (実施例15)
    (バックメタルありなし単層材の特性、 薄型表面誘電体層あり、ETC用、表面誘電体層が厚み5.5mmの磁器タイル実施例)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルあり、なしで、表面に誘電体層を設けた吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は77.8%であった。 また誘電体層としては市販の薄型磁器製タイルを用いた。 タイルの誘電率はSパラメーター法による測定で5.1であった。
    セメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、152mm×152mm×15mmの型枠の中に混合体を充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出しさらにオートクレープで養生した。 オートクレープの条件は10気圧180℃24時間とした。 セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は31.4%で厚みは約15mmであった。 表面に152mm×152mmの磁器タイルをタイル用接着剤ではりつけ反対側の面にアルミ製粘着シートをまず貼り付けずに、次に貼り付けて電波吸収特性を測定した。

    これらの条件及び測定結果を表18、図20に示す。

    吸収特性としては周波数5.8GHzで吸収量60dBの極めて良好な吸収特性が得られた。 また裏面アルミ反射層がある場合(比較例5)とない場合(本実施例)で電波反射特性にほとんど差がなく、バックマテリアルによらない安定した電波吸収特性を示す電波吸収体が得られていることがわかる。
    (実施例16)
    (バックメタルあり単層材の特性、薄型表面誘電体層あり、ETC用、表面誘電体層が厚み4.95mmのアルミナ)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルありで、表面に誘電体層を設けた吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は77.8%であった。 また誘電体層としては厚み4.95mmのアルミナ系磁器板を用いた。 用いた磁器板の誘電率はSパラメーター法による測定で7.8であった。

    セメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、152mm×152mm×6mmの型枠の中に混合体を充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出しさらにオートクレープで養生した。 オートクレープの条件は10気圧180℃24時間とした。 セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は9.7%で厚みは5.9mmであった。 表面に152mm×152mmのアルミナ系磁器板をタイル用接着剤ではりつけ反対側の面にアルミ製粘着シートをまず貼り付けて電波吸収特性を測定した。

    これらの条件及び測定結果を表19、図21に示す。
    吸収特性としては周波数5.8GHzで吸収量30dBの良好な吸収特性が得られた。
    (比較例4)
    (バックメタルありなし単層材の特性、 薄型表面誘電体層あり、ETC用、表面誘電体層が厚み5.2mmのアルミナ)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルあり、なしで、表面に誘電体層を設けた吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は77.8%であった。 また誘電体層としてはその屈折率が2.79である厚み5.2mmのアルミナ系磁器板を用いた。 アルミナ系磁器板の誘電率はSパラメーター法による測定で7.8であった。

    セメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、152mm×152mm×3mmの型枠の中に混合体を充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出しさらにオートクレープで養生したのち乾式で研削加工して厚み2.5mmに仕上げた。 オートクレープの条件は10気圧180℃24時間とした。 セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は9.7%であった。 表面に152mm×152mmのアルミナ系磁器板をタイル用接着剤ではりつけ反対側の面にアルミ製粘着シートをまず貼り付けず、次に貼り付けて電波吸収特性を測定した。

    これらの条件及び測定結果を表20、図22に示す。

    バックメタルなしの場合、吸収特性としては周波数5.8GHzで吸収量30dBの良好な吸収特性が得られた。 一方バックメタルありの場合には、吸収周波数は大幅に上昇し、約9GHzで20dB程度の吸収量を示した。 この例では、アルミナ系磁器板の誘電率が大きく、5.8GHZでは 4nt/λの値は1.12であり、バックメタルがない場合ETC用5.8GHz吸収体とすることができたが、バックメタルの有無で電波吸収特性の等しい吸収体を得ることはできなかった。
    (比較例5)
    (バックメタルありなし単層材の特性、 薄型表面誘電体層あり、ETC用、表面誘電体層が厚み5.2mmのアルミナ、実施例17と吸収層の厚みが異なる以外同じ)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルあり、なしで、表面に誘電体層を設けた吸収体を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は77.8%であった。 また誘電体層としてはその屈折率が2.79である厚み5.2mmのアルミナ系磁器板を用いた。 アルミナ系磁器板の誘電率はSパラメーター法による測定で7.8であった。

    セメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、152mm×152mm×6mmの型枠の中に混合体を充填して固化させ、24時間後に型枠から取り出しさらにオートクレープで養生したのち乾式で研削加工して厚み5.7mmに仕上げた。 オートクレープの条件は10気圧180℃24時間とした。 セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は9.7%であった。 表面に152mm×152mmのアルミナ系磁器板をタイル用接着剤ではりつけ反対側の面にアルミ製粘着シートをまず貼り付けず、次に貼り付けて電波吸収特性を測定した。

    これらの条件および測定結果を表21、図23に示す。
    バックメタルありの場合、吸収特性としては周波数5.8GHzで吸収量28dBの良好な吸収特性が得られた。 一方バックメタルなしの場合には、吸収周波数は大幅に低下し、約4GHzで20dB程度の吸収量を示した。 この例では、アルミナ系磁器板の誘電率が大きく、5.8GHZでは4nt/λの値は1.12であり、バックメタルがある場合ETC用5.8GHz吸収体とすることができたが、バックメタルの有無で電波吸収特性の等しい吸収体を得ることはできなかった。
    (実施例17)
    バックメタルあり、なし、モルタル+表面磁器タイル貼り付け壁材の特性、ETC用、表面誘電体層が厚み5.7mmの磁器タイル)
    セメントに偏平酸化鉄粉を含有させ、バックメタルありなしで、表面に誘電体タイルを設けた吸収壁を作製した。 使用した偏平酸化鉄粉原料の最短部サイズが25μ以上の重量%は87.3%であった。 また誘電体層としてはその屈折率が2.26である厚み5.7mmの市販の磁器タイルを用いた。 タイルの誘電率はSパラメーター法による測定で5.1であった。

    セメント、偏平酸化鉄粉、水を表の配合で混合し、40cm×40cm×厚み5cmのコンクリート板の上に、およびバックメタルありとして40cm×40cm×厚み5mmの鉄板の上に厚み14〜15mmの厚さでモルタル塗りし、その上から磁器タイルを貼り付け、室温で30日間養生し電波吸収壁を模擬したパネルを作製した。 セメント中の偏平酸化鉄粉の体積率は別途小型の型枠へ流し込んだサンプルを作製し評価した結果、体積充填率が17.2%だった。

    これらの条件および測定結果を表22、図24に示す。 吸収特性としては周波数5.6GHzで吸収量30dBの良好な吸収特性が得られた。

    次に5.8GHz円偏波で斜め入射での吸収特性を評価した。 評価結果を図25に示す。

    これらの結果より、表面保護層の厚みが5.7mmで 4nt/λが0.995の表面誘電体層を用いることで、バックメタル有り無しにかかわらず吸収量が対象周波数で20dB以上を実現し、また斜入射特性も入射角全域で20dB以上の値を示すことがわかった。

    本発明実施例1に係る扁平酸化鉄粉の面内最短部サイズ25μm以上の重量比とセメント型電波吸収体の圧縮強度との関係を示すグラフ。

    本発明実施例1に係る扁平酸化鉄粉の面内最短部サイズ25μm以上の重量比とセメント型電波吸収体の曲げ強度との関係を示すグラフ。

    本発明実施例2に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    比較例1に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例3に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    比較例2に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例4に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例5に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例6に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例7に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例8に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例9に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例10に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例11に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例12に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例13に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例14に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例14に係るセメント型電波吸収体の円偏波角度から見た電波吸収特性を示すグラフ。

    比較例3に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例15に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例16に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    比較例4に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    比較例5に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例17に係るセメント型電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフ。

    本発明実施例17に係る5.8GHz円偏波で斜め入射での吸収特性を評価したグラフ。

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