The novel poly-ion complex

申请号 JP2009189665 申请日 2009-08-19 公开(公告)号 JP5424168B2 公开(公告)日 2014-02-26
申请人 紀之 熊沢; 達弥 沼尾; ユーテック株式会社; 发明人 紀之 熊沢; 達弥 沼尾;
摘要
权利要求
  • 式(I):
    〔式中、R 1 〜R 3は、同じまたは異なってもよく炭素数1〜3のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。 〕
    で示される反復単位および分子量1万〜10万を有するカチオン性セルロースポリマーと、式(II):
    〔式中、Yは水素またはアルカリ金属原子である。 〕
    で示される反復単位および分子量50万〜100万を有するアニオン性セルロースポリマーとを、水性溶媒中、これら両物質が解離状態となるpH 5.5〜8.5の条件下に、 (カチオン性セルロースポリマー)対(アニオン性セルロースポリマー)の重量比が、(2.5〜3.5):1となるように混合することによって不均一性溶液を得、得られた不均一性溶液の混合を継続することによって沈殿物として得られることを特徴とするポリイオンコンプレックス。
  • 式(I):
    〔式中、R 1 〜R 3 は、同じまたは異なってもよく炭素数1〜3のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。
    で示される反復単位および分子量1万〜10万を有するカチオン性セルロースポリマーと、式(II):
    〔式中、Yは水素またはアルカリ金属原子である。
    で示される反復単位および分子量50万〜100万を有するアニオン性セルロースポリマーとを、水性溶媒中、これら両物質が解離状態となるpH5.5〜8.5の条件下に、混合することによって不均一性溶液を得、得られた不均一性溶液の混合を継続することによって沈殿物として得られるポリイオンコンプレックスを含むことを特徴とする水硬性組成物用の強度増強組成物。
  • 請求項 記載の強度増強組成物を含むことを特徴とするセメント水硬性組成物。
  • 当該水硬性組成物は、水中不分離型の水硬性組成物である請求項 記載のセメント水硬性組成物。
  • 請求項 記載のセメント水硬性組成物を凍結させてなることを特徴とする冷凍水硬性組成物。
  • 式(I):
    〔式中、R 1 〜R 3 は、同じまたは異なってもよく炭素数1〜3のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。
    で示される反復単位および分子量1万〜10万を有するカチオン性セルロースポリマーと、式(II):
    〔式中、Yは水素またはアルカリ金属原子である。
    で示される反復単位および分子量50万〜100万を有するアニオン性セルロースポリマーとを、水性溶媒中、これら両物質が解離状態となるpH5.5〜8.5の条件下に、混合することによって不均一性溶液を得、得られた不均一性溶液の混合を継続することによって沈殿物として得られるポリイオンコンプレックスを含むことを特徴とする水硬性組成物用の吸水性増強組成物。
  • 請求項 記載の吸水性増強組成物を含むことを特徴とする漆喰水硬性組成物。
  • 说明书全文

    本発明は、出発原料としてセルロース系ポリマーを用いたポリイオンコンプレックスに関する。 更に本発明は、かかるポリイオンコンプレックスを含む硬性組成物用の強度増強組成物、この強度増強組成物を含むセメント水硬性組成物、およびこのセメント水硬性組成物を凍結させてなる凍結水硬性組成物に関する。 加えて本発明は、かかるポリイオンコンプレックスを含む水硬性組成物用の吸水性増強組成物、この吸水性増強組成物を含む漆喰水硬性組成物に関する。

    ポリイオンコンプレックスは、ポリアニオンとポリカチオンとが静電気的相互作用によって結合する複合体であって、親水性領域と、疎水性領域とを有する特有な作用を示すため、従来から、種々のポリイオンを用い、種々のタイプのポリイオンコンプレックスが提案されている。
    例えば、以下の特許文献1は、その実施例13において、ポリアニオンとしてヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル(以下、この段落番号において前者)を用い、ポリカチオンとしてカルボキシメチルセルロース(以下、この段落番号において後者)を用いて、微粒子状のポリイオンコンプレックスを製造する旨、開示する。 この特許文献1の実施例13によれば、前者の塩酸溶液と、後者の水溶液とを混合して透明な相溶溶液を得、この透明な相溶溶液から、pH変動などの処理を経て、微粒子状のポリイオンコンプレックスを得ている。 すなわち、この既知の製法では、「相溶溶液の形成」並びに「形成した相溶溶液のpH変動」が必須の要件である。

    しかしながら、かかる既知コンプレックスは、微粒子状であるため、例えば、水硬性組成物としてのセメントに添加した場合、水と接触させて膨潤させても、塊状にならずに小さい固まりとして点在するはずであり、したがって、セメントの強度が低下するという、問題がある。

    特開2005−36190号公報

    前記問題に鑑み、本発明の課題は、所定構造のセルロース系ポリマーを用い、有用なポリイオンコンプレックスを提供することである。

    本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定構造のカチオン性セルロースポリマーとアニオン性セルロースポリマーとを、両方の物質が解離状態となるpH条件下に混合すると、塊状のポリイオンコンプレックスが沈殿物として得られ、例えば、セメントの強度増加に有用であって前記課題を解決できることを見出し、この知見に基づき、本発明が完成するに至ったのである。
    すなわち、本発明は、式(I):

    〔式中、R

    1 〜R

    3は、同じまたは異なってもよく炭素数1〜3のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。 〕


    で示される反復単位および分子量1万〜10万を有するカチオン性セルロースポリマーと、式(II):


    〔式中、Yは水素またはアルカリ金属原子である。 〕


    で示される反復単位および分子量50万〜100万を有するアニオン性セルロースポリマーとを、水性溶媒中、これら両物質が解離状態となるpH

    5.5〜8.5の条件下に、

    (カチオン性セルロースポリマー)対(アニオン性セルロースポリマー)の重量比が、(2.5〜3.5):1となるように混合することによって不均一性溶液を得、得られた不均一性溶液の混合を継続することによって沈殿物として得られることを特徴とするポリイオンコンプレックスを提供する。


    さらに本発明は、その第2の態様として、

    式(I):


    〔式中、R

    1

    〜R

    3

    は、同じまたは異なってもよく炭素数1〜3のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。


    で示される反復単位および分子量1万〜10万を有するカチオン性セルロースポリマーと、式(II):


    〔式中、Yは水素またはアルカリ金属原子である。


    で示される反復単位および分子量50万〜100万を有するアニオン性セルロースポリマーとを、水性溶媒中、これら両物質が解離状態となるpH条件下に、混合することによって不均一性溶液を得、得られた不均一性溶液の混合を継続することによって沈殿物として得られるポリイオンコンプレックスを含む水硬性組成物用の強度増強組成物を提供し、その第3の態様として、本発明の強度増強組成物を含むセメント水硬性組成物を提供し、その第4の態様として、セメント水硬性組成物(第3態様)を凍結させてなる冷凍水硬性組成物を提供し、その第5の態様として、

    式(I):


    〔式中、R

    1

    〜R

    3

    は、同じまたは異なってもよく炭素数1〜3のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。


    で示される反復単位および分子量1万〜10万を有するカチオン性セルロースポリマーと、式(II):


    〔式中、Yは水素またはアルカリ金属原子である。


    で示される反復単位および分子量50万〜100万を有するアニオン性セルロースポリマーとを、水性溶媒中、これら両物質が解離状態となるpH条件下に、混合することによって不均一性溶液を得、得られた不均一性溶液の混合を継続することによって沈殿物として得られるポリイオンコンプレックスを含む水硬性組成物用の吸水性増強組成物を提供し、その第6の態様として、本発明の吸水性増強組成物を含む漆喰水硬性組成物を提供する。

    本発明のポリイオンコンプレックスによれば、カチオン性セルロース/アニオン性セルロースの両物質が解離状態となるpH条件下に混合することにより、不均一性の溶液を経て、有用な塊状のポリイオンコンプレックスが得られる技術的効果を奏することができる。 例えば、本発明のポリイオンコンプレックスをセメント中に添加した場合、無機材料であるセメントの無機構造と、カチオン性セルロースポリマー/アニオン性セルロースポリマーの有機構造(セルロース相互の絡み合い構造)との間に、有機的なネットワークが構築され、著しい強度増加が得られたのである。

    本発明のセメント水硬性組成物および比較例(水セメント比40%)に関し、強度と、濃度との関係を示すグラフである。

    本発明のセメント水硬性組成物および比較例(水セメント比60%)に関し、強度と、濃度との関係を示すグラフである。

    比較例のセメント水硬性組成物に関し、凍結比較例と、非凍結コントロールとの強度比較を示すグラフである。

    本発明のセメント水硬性組成物に関し、凍結実施例と、非凍結コントロールとの強度比較を示すグラフである。

    本発明の漆喰水硬性組成物および比較例に関し、測定期間と、漆喰水硬性組成物の重量との関係を示すグラフである。

    本発明の漆喰水硬性組成物および比較例に関し、IPEC 1添加率(消石灰基準)と、吸水量との関係を示すグラフである。

    −ポリイオンコンプレックス−
    前記したように、本発明は、式(I)で示される反復単位および分子量1万〜10万を有するカチオン性セルロースポリマーと、式(II)で示される反復単位および分子量50万〜100万を有するアニオン性セルロースポリマーとを、水性溶媒中、これら両物質が解離状態となるpH条件下に、混合することによって不均一性溶液を得、得られた不均一性溶液の混合を継続することによって沈殿物として得られることを特徴とするポリイオンコンプレッスを提供する。

    <カチオン性セルロース/アニオン性セルロース>
    本発明の出発原料であるカチオン性セルロースポリマー(以下、単にカチオン性セルロースともいう。)は、以下の式(I)で示される反復単位を有する。

    式(I)において、R

    1 〜R

    3は、同じまたは異なってもよく、炭素数1〜3のアルキル基であってメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル基である。 また、Xはハロゲン原子であって、クロル、ブロム原子を例示することができる。 また、カチオン性セルロースの平均分子量は、1万〜10万、好適には3万〜7万、有利には1万〜3.5万、3万〜6万、5万〜10万である。


    現時点で好適なカチオン性セルロースは、R

    1 〜R

    3が同じであってメチル基で、Xがクロル原子である式(I)の反復単位を有する。

    また本発明の出発原料であるアニオン性セルロースポリマー(以下、単にアニオン性セルロースともいう。)は、以下の式(II)で示される反復単位を有する。

    式(II)において、Yは水素またはアルカリ金属原子であり、ナトリウム、カリウムを例示することができる。 また、アニオン性セルロースの平均分子量は、50万〜100万、好適には60万〜90万、より好適には70万〜80万、有利には、例えば、50万〜65万、60万〜75万、70万〜85万、80万〜95万、85万〜100万である。 現時点で好適なアニオン性セルロースは、Yがナトリウムである式(II)の反復単位を有する。


    カチオン性セルロース/アニオン性セルロースの平均分子量に関し、一方の平均分子量が比較的大きい場合には、他方の平均分子量は比較的小さいことが好適であることが現時点で判明している。 したがって、両者の平均分子量の合計は、好適には110万以下、より好適には95万以下、特に好適には85万以下である。

    <水性溶媒中での混合>
    カチオン性セルロースとアニオン性セルロースとは、水性溶媒、要すれば少量の界面活性剤を含む水性溶媒、好適には水溶液中で混合される。 予め水性溶媒を準備し、この水性溶媒中に、カチオン性セルロースとアニオン性セルロースとを添加してもよいが、好適には、カチオン性セルロースの水性溶液と、アニオン性セルロースの水溶液とを混合する。 特に好適には、いずれか一方の溶液を少量ずつ滴下することができる。
    なお、カチオン性およびアニオン性セルロースの水溶液濃度は、これらセルロースの分量(粘度)に依存し、少なくとも一方の水溶液は、滴下可能な粘度となるような水溶液濃度である。

    <解離状態となるpH条件下での混合>
    カチオン性セルロースおよびアニオン性セルロースは、これらの物質が解離状態となるpH条件下、好適にはpH5.5〜pH8.5の条件下、例えばpH5.5〜pH6.5、pH6.0〜pH7.0、pH6.5〜7.5、pH7.0〜8.0、pH7.5〜8.5の条件下、より好適にはpH6.0〜8.0の条件下、特に好適にはpH6.5〜pH7.5の条件下に混合される。 前記と同様に、これらの上限および下限を逸脱すると、不均一性溶液を形成できない。 このようなpH条件下に混合すると、不均一性の溶液、例えば不透明な溶液を得ることができる。
    <2種のポリマーの混合比>
    カチオン性セルロースと、アニオン性セルロースは、不均一性の混合溶液が得られる限り、任意の混合比で混合することができる。 好適な混合比を決定すべく、一方の水溶液に対し、他方の水溶液の添加量を変化させながら混合すると、まず、混合溶液は、粘度上昇して、極大値を示すと共に、この極大値付近で混合溶液の濁度が観察される〔以上、I段階〕。 さらに、添加量を増加させると、混合溶液は、濁度の増加並びに混合溶液の下部における沈殿の形成およびその沈殿量の極大値が観察されると共に、混合溶液の粘度は、低下して沈殿量の極大値付近で極小値を示し、混合溶液の上相は透明になる〔以上、II段階〕。 さらに加えて、添加量を増加させると、混合溶液は、その濁度が再び増加すると共に、沈殿量が低下し、溶液粘度は上昇する〔以上、III段階〕。
    以上の実験結果から、好適な混合比は、混合溶液の粘度が極小を示すようなII段階における割合である。
    特に、好適な混合比を重量比で規定すると、(カチオン性セルロースポリマー)対(アニオン性セルロースポリマー)の重量比は、前者のカチオン化度並びに後者のアニオン化度に応じて変化するが、例えば、(2.5〜3.5)対1、好適には(2.7〜3.3)対1である。 これらの上限および下限を逸脱すると、不均一性溶液の形成が困難となる。
    <不均一性溶液の混合>
    不均一性溶液は、好適にはpHを同じ状態(例えば、pHを±1.0、好ましくは±0.5の範囲内)に維持しつつ、その混合を継続して沈殿物が得られる。 なお、混合に要する時間は、カチオン性セルロース/アニオン性セルロースの種類、水溶液濃度、配合割合等に依存するが、好適には約10分〜約60分、より好適には約30分〜約50分である。 なおまた、混合終了後、好適には常温で1日程度静置すれば、沈殿物の形成に好適である。 沈殿物の形成後、上澄液を除去して水性媒体中の沈殿物を分離することにより、ポリイオンコンプレックスが得られる。 得られたポリイオンコンプレックスは、好適には、分離した沈殿物を水洗、乾燥し、さらに粉砕して粉末として得ることができる。

    −水硬性組成物用の強度増強組成物/吸水性増強組成物−
    本発明の水硬性組成物用の強度増強組成物は、本発明のポリイオンコンプレックスを必須成分として含み、所望により収縮低減剤として使用される界面活性剤や膨張剤として用いられるカルシウムサルホアルミネートや生石灰さらには混和材として用いられる高炉スラグやシリカヒュームのような、通常の添加剤を含むことができる。 前記したように、本発明のポリイオンコンプレックスは、水硬性組成物としてのセメント中に添加した場合、無機材料であるセメントの無機構造と、カチオン性セルロースポリマー/アニオン性セルロースポリマーの有機構造と間に、有機的なネットワークが構築され、著しい強度増加が得られるのである。
    また、本発明の水硬性組成物用の吸水性増強組成物は、同様に本発明のポリイオンコンプレックスを必須成分として含み、所望により各種添加剤を含むことができる。
    本発明の強度または吸水性増強組成物は、好適には粉末状のポリイオンコンプレックスを、前記した添加剤、好適には粉末状の添加剤を添加、混合して製造することができる。

    −水硬性組成物−
    本発明の水硬性組成物は、必須成分として、本発明の水硬性組成物用の強度増強組成物または水硬性組成物用の吸水性増強組成物のいずれかを含む。 水硬性組成物は、水分の存在下に水和反応により硬化しうる組成物として、セメント水硬性組成物および漆喰水硬性組成物を含み、前者の例示として、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超速強セメント、高ビーライト含有セメント、高炉セメントフライアッシュセメント、アルミナセメント、シリカフュームセメントのようなセメントを含み、所望により骨材、例えば砂や砂利を含む組成物(モルタル、コンクリート)を挙げることができる。 後者の漆喰水硬性組成物は、消石灰を含み、所望により麻の繊維や、草本や海藻由来の接着剤を含む。
    <強度/吸水性増強組成物の添加割合>
    本発明の水硬性組成物は、任意の添加割合で、本発明の強度/吸水性増強組成物を含有することができる。 セメント水硬性組成物に関し、好適な添加割合は、当該組成物中のセメント1000gに対し、ポリイオンコンプレックスが10g〜70g、より好適には12g〜50g、特に好適には15〜35gとなるように含有する。 漆喰水硬性組成物に関し、好適な添加割合は、当該組成物中の消石灰200gに対し、ポリイオンコンプレックスが1g〜20g、より好適には3〜10gとなるように含有することができる。
    なお、強度/吸水性増強組成物の添加方法は、水硬性組成物の混練時に粉末または塊状の状態で添加してもよいが、好適には、予め水を加えて膨潤状態で添加することができる。
    <水中不分離型水硬性組成物>
    本発明のセメント水硬性組成物は、その必須成分としての強度増強組成物が強な接着性を示すと共に、水中での強度増強作用が実験的に証明されたため、特に、水中不分離型水硬性組成物として有用である。

    −冷凍水硬性組成物−
    一般に、水硬性組成物は、未硬化の状態で、水分の存在下であっても冷却すると、その硬化速度は低下する。 更に凍結状態に至ると硬化速度は著しく低下する一方、凍結状態に至った水硬性組成物を解凍し再び硬化せしめた場合は、未凍結の場合と比べて強度の著しい低下がおこることも一般的に知られており、問題となっていた。 そこで、本発明の強度増強組成物を添加した水硬性組成物を、冷凍および解凍しても、強度低下が著しく小さいことを見出し、この問題を解決することができた。 この事実は、実験的に証明されている。 すなわち、本発明は、冷凍状態の冷凍水硬性組成物を提供する。 本発明の冷凍水硬性組成物は、常温への解凍によって通常の水硬性組成物として使用できるため、非常に有用である。
    本発明の冷凍水硬性組成物を製造するには、例えば、本発明の水硬性組成物を常法に従って水共に混練して未硬化状態の混練物を形成し、この未硬化混練物をレンガ状やコンクリートブロック状のような所望の形状および大きさを有する型枠に注入し、水を含んだ状態のまま凍結可能な温度、例えば−198〜0℃、好適には−100〜−20℃に冷却して凍結させることにより実施することができる。
    以上のように製造した冷凍水硬性組成物は、凍結後、型枠から取り出し、好適には水不透過性のフィルムで包装して、凍結状態を維持できる温度以下の低温、例えば−198〜0℃、好適には−100〜−20℃で保存し、その使用に際し、冷凍状態の冷凍水硬性組成物を、常温または要すれば加温して、解凍し、通常の混練物と同様に使用することができる。
    −本発明のポリイオンコンプレックスの他の用途−
    上記のようにして得られるポリイオンコンプレックスは、水硬性組成物用の強度増強組成物や吸水性増強組成物としての用途のほかに、接着剤としての用途も期待される。

    −実施例−
    次に、実施例、比較例、調製例、試験例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例等に制限されるものではない。 なお、実施例等において、特に断らない限り、「%」は、重量%を意味する。
    <調製例1:セルロースポリマー水溶液の調製>
    以下の式(Ia)で示される反復単位および平均分子量51000を有するカチオン性セルロースポリマー(ダイセル化学工業株式会社製、商品名:ジェルナーQH−200)40gを水1Lに溶解して、カチオン性セルロースの水溶液を調製した。 調製した水溶液のpHは、7.6である。

    また、以下の式(IIa)で示される反復単位および平均分子量750000のアニオン性セルロースポリマー(ダイセル化学工業株式会社製、商品名:CMC1350)20gを水1Lに溶解して、アニオン性セルロースの水溶液を調製した。 調製した水溶液のpHは、6.0である。

    <実施例1:ポリイオンコンプレックス>
    調製例1で調製したアニオン性セルロース水溶液1Lに対し、同様に調製例1で調製したカチオン性セルロース水溶液1.5Lを室温で滴下し、滴下終了後、室温で40分間撹拌し、得られた不均一性溶液を室温で24時間静置した。 不均一性溶液の上澄み液のpHは、7.6である。 次いで、上澄み液を除去し、得られた沈殿物を水0.5Lで3回水洗し、乾燥機内、50℃で乾燥した。 これをミキサーで粉砕して、ポリイオンコンプレックス64gを得た。 得られたポリイオンコンプレックスに関し、(カチオン性セルロースポリマー)対(アニオン性セルロースポリマー)の重量比は、3:1である。
    <実施例2:水硬性組成物用の強度/吸水性増強組成物>
    実施例1で製造した粉末状のポリイオンコンプレックスを原末の状態で、強度/吸水性増強組成物として使用し、この強度/吸水性増強組成物を、以下「IPEC 1」と呼ぶ。

    <実施例3:セメント水硬性組成物>
    実施例2(粉末状のIPEC 1)を、水に対し、1%、2%、5%および10%となるように水に加え、膨潤状態のIPEC 1を形成した。 別に、セメント(日立セメント株式会社製 普通ポルトランドセメント)と砂を混合し、1分間空練りして、容器に小分けし、各容器内に、水と共に膨潤状態のIPEC 1を添加し、40分間ミキサー(愛工舎製作所製 AM−20)で撹拌して水硬性組成物を製造した。
    なお、水硬性組成物は、次のように水セメント比を変化させて2つのタイプの組成物を製造し、合計8つのサンプルを形成した。
    水セメント比40%:セメント400g+砂800g+水160g
    水セメント比60%:セメント400g+砂800g+水240g
    なお、前記した水に対するIPEC 1の添加割合は、セメント1000 gに対する添加割合で示すと、水セメント比40%では、順に、4g、8g、20gおよび40gである一方、水セメント比60%では、順に、2.4g、4.8g、12gおよび60gである。
    <比較例1〜2:セルロースポリマー単独添加のセメント水硬性組成物>
    実施例3と同様な方法に従い、比較例1および2を形成した。 ただし、IPEC 1に代えて、これと同じ重量で、前記カチオン性セルロースポリマー(比較例1)または前記アニオン性セルロースポリマー(比較例2)を各々単独で用いた。

    <試験例1:セメント水硬性組成物の圧縮強度試験>
    次のようにして試験片を作成し、強度試験した。
    実施例3並びに比較例1〜2で形成した各水硬性組成物を、別々に、円形型枠(ダイヤリフォーム株式会社製 ヒットワン:φ50mm×100mm)3本にそれぞれ打ち込んだ。 打ち込みは3層に分けて詰め、突き棒で20回突き、表面を金ごてで均し、蓋をして養生室(温度約20℃、湿度約80%)に入れた。 2日経過後に型枠を外し、養生室でさらに28日間養生した。 養生終了後、万能試験機(島津製作所製 計測制御装置UH−500KNI型)を用いて、圧縮強度を測定した。
    <<試験結果および考察>>
    水セメント比40%の試験結果は図1に示し、水セメント比60%の試験結果は図2に示す。 これらの図において、「−◆− IPEC 1」は、実施例3の実験結果を示し、「−■−cation」は比較例1の実験結果を示し、「−▲−CMC」は比較例2の実験結果を示す。 なお、両図面において、濃度0%は実施例1等の無添加を意味する。
    図1および図2からわかるように、水セメント比40%および水セメント比60%のいずれの場合も、実施例3(IPEC 1)を水に対して5%添加したときに、強度が最も増強された。
    また、水セメント比40%(図1)は、本発明の実施例3(IPEC 1)だけでなく、比較例1および2でも強度の増加が見られる。 一方、水セメント比60%(図2)では、実施例3(IPEC 1)以外は、全て強度の低下が起こっている。 即ち、比較例1および2は、水セメント比の増加で強度の著しい低下が起こった。 この結果から、外部から水分が流入することにより、水中への投入前に調整した水セメント比が増加することが想定される。 すなわち、比較例1および2が、水セメント比の増加につれて強度が低下するのに対し、実施例3(IPEC 1)は、水セメント比が増加しても強度が低下することがない。 この事実により、本発明の水硬性組成物は、水中不分離型の水硬性組成物として、水中で使用されるセメントに特に適していることが判明した。 これは、水硬性組成物中に添加された、本発明の強度増加組成物(IPEC 1)に起因する特有の技術的効果である。

    <比較例3:無添加・セメント水硬性組成物>
    前記実施例3と同様な方法に従い、比較例3として水硬性組成物を形成した。 ただし、比較例3は、実施例2(粉末状のIPEC 1)を添加していない。

    <試験例2:セメント水硬性組成物の凍結による強度試験>
    次のようにして試験片を作成し、凍結に付して強度試験した。 なお、凍結による効果と比較すべく、同じサンプルにつき、非凍結状態で強度試験した。
    実施例3(粉末状のIPEC 1を水に対し10%となるように添加した組成物であって水セメント比40%)および比較例3を、別々に円形型枠3本にそれぞれ打ち込んだ。 打ち込みは3層に分けて詰め、突き棒で20回突き、表面を金ごてで均し、蓋をして冷凍室(温度:−18℃、に入れた。2日経過後に型枠を外し、養生室(温度:約20℃、湿度:約80%)で28日間養生した。養生終了後、万能試験機を用いて、圧縮強度を測定した。
    なお、前記したように凍結による効果と比較すべく、コントロールとして、実施例3および比較例3に関し、冷凍室での2日間の保管に代えて、養生室での2日間の養生を用いた。
    <<試験結果および考察>>
    実施例3に関し、凍結による試験結果と、非凍結によるコントロール試験結果を、図4に示し、また、比較例3に関し、凍結による試験結果と、非凍結法によるコントロール試験結果を、図3に示す。
    これらの図からわかるように、比較例3は、冷凍によって57.7%もの著しい強度低下を示すのに対し(図3)、実施例3は、冷凍しても僅か18.6%しか強度低下しない(図4)。 したがって、本発明の水硬性組成物は、冷凍保存により長期間の強度安定性を示すと共に、かかる水硬性組成物を冷凍した本発明の冷凍水硬性組成物は、長期間の保存後でも、強度低下が小さく、有用であることが判明した。

    <実施例4:漆喰水硬性組成物>
    水100gを含む各容器に対し、実施例2(粉末状のIPEC 1)を1g、3gおよび10g加えて、IPEC 1を膨潤状態にさせ、次いで、各容器に、消石灰200gを添加し、ミキサー(愛工舎製作所製 AM−20)で撹拌して水硬性組成物を製造した。 なお、IPEC 1の添加率は、消石灰を基準とすると、0.5%、0.15%および5.0%となる。

    <比較例4:無添加・漆喰水硬性組成物>
    前記実施例4と同様な方法に従い、比較例4として水硬性組成物を形成した。 ただし、比較例4は、実施例2(粉末状のIPEC 1)を添加していない。

    <試験例3:漆喰水硬性組成物の吸水性試験>
    次のようにして試験サンプルを作製し、吸水性試験した。
    実施例4並びに比較例4で形成した各水硬性組成物を、50℃で乾燥して重量が一定になった後、下部に水を張ったデシケータ内において20℃で保存し、それらの重量変化を6日間、毎日調べた。
    <<試験結果および考察>>
    実施例4および比較例4に関し、漆喰水硬性組成物の実質重量の経時変化を下記の表1に示し、この表データに基づき、測定期間に対する前記変化を図5に示し、次いで、IPEC 1の添加率(消石灰基準)に対する、6日乾燥後の漆喰水硬性組成物1g当たりの吸水量(g)を図6に示した。
    図6からわかるように、吸水量に関し、比較例4は、0.011 gしか吸水しなかったのに対し、本発明の5%添加の漆喰組成物は、0.035 gも吸水することができ、本発明の漆喰水硬性組成物は、約3.5倍も吸水能力が増大しており、本発明の有用性が証明された。

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