ハニカムフィルタ

申请号 JP2007537619 申请日 2006-09-26 公开(公告)号 JPWO2007037222A1 公开(公告)日 2009-04-09
申请人 イビデン株式会社; 发明人 修平 早川; 修平 早川;
摘要 封止体(30)を形成する材料はハニカム構造体(23)を形成する材料よりも、Al元素、Fe元素、B元素、Si元素及び遊離炭素を多く含有する。各封止体(30)は、関連するセル(28)の中心軸線(X)に対応する中央 位置 に凸部(31)を有する。凸部(31)の形成により、封止体(30)の熱膨張は中央位置に集中し、凸部(31)よりも外側位置の熱膨張は低減される。
权利要求
  • 隔壁によって区画された複数のセルを有する少なくとも1つの柱状のハニカム構造体と、前記複数のセルのうち、複数の第1のセルの上流開口と、複数の第2のセルの下流開口とを封止する封止体とを備えるハニカムフィルタであって、
    各封止体を形成する材料は、前記ハニカム構造体を形成する材料よりも、Al元素、Fe元素、B元素、Si元素及び遊離炭素の含有量の合計が多いことを特徴とするハニカムフィルタ。
  • 各封止体は、関連するセルの開口に隣接する第1端面と、前記第1端面の反対側の第2端面とを有し、前記第1端面から前記第2端面までの長さが前記セルの軸線と直交する方向において不均一となるように、前記第2端面は形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハニカムフィルタ。
  • 各封止体は、関連するセルの開口に隣接する第1端面と、前記第1端面の反対側の第2端面とを有し、前記第2端面は、前記セルの中心軸線に対応する中央位置に凹部を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハニカムフィルタ。
  • 各封止体は、前記凹部よりも外側において、前記隔壁に対して1〜50°の接触角で接触していることを特徴とする請求項3に記載のハニカムフィルタ。
  • 各封止体は、関連するセルの開口に隣接する第1端面と、前記第1端面の反対側の第2端面とを有し、前記第2端面は、前記セルの中心軸線に対応する中央位置に凸部を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハニカムフィルタ。
  • 各封止体は、前記凸部よりも外側において、前記隔壁に対して91〜179°の接触角で接触していることを特徴とする請求項5に記載のハニカムフィルタ。
  • 各封止体の前記第1端面から前記第2端面までの長さは前記セルの軸線からの距離によって異なり、前記第1端面から前記第2端面までの長さの最大値と最小値との差は、前記隔壁の厚みの15倍以下であることを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
  • 前記ハニカム構造体は、コージェライト、リン酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、炭化珪素及び金属珪素−炭化珪素複合体よりなる群より選択される少なくとも一種の材料から形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
  • 前記隔壁の少なくとも一部には、触媒が担持されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
  • 前記ハニカム構造体は、外周壁と、前記外周壁の内側に設けられた隔壁と、前記隔壁により区画されて流体の流路となる複数のセルとを有するハニカム部材を、接合材により複数個結束させたものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
  • 前記ハニカム構造体の外周に設けられた塗布層を更に備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
  • 说明书全文

    本発明は、例えば、内燃機関、ボイラー等の排気ガス中に含まれる粒子状物質等を捕集及び除去するために用いられるハニカムフィルタに関するものである。

    近年においては、環境への影響を考慮し、内燃機関やボイラー等の燃焼装置の排気ガスに含まれる粒子状物質を排気ガス中から除去する必要性が高まっている。 特にディーゼルエンジンから排出される黒鉛微粒子等の粒子状物質(以下PMという)の除去に関する規制は欧米、日本国内ともに強化されつつある。 PM等を除去するための捕集フィルタとして、DPF(Diesel Particulate Filter)と呼ばれるハニカム構造体が使用されている。 ハニカム構造体は、燃焼装置の排気通路に設けられたケーシング内に収容されている。 ハニカム構造体は、その長手方向に延びるとともに隔壁により区画された多数のセルを有している。 隣接する一対のセルにおいて、一方のセルの開口端と、その開口端と反対側にある他方のセルの開口端が封止体で封止される。 複数の封止体はハニカム構造体の各端面(流入口側端面及び流出口側端面)に市松模様状に配置される。 排気ガスは、ハニカム構造体の流入口側端面において、開放されているセルに流入し、多孔質の隔壁を通って、流出口側端面において開放されている隣のセルから排出される。 例えばディーゼルエンジンから排出されるPMは濾過フィルタとして機能する隔壁に捕集され隔壁上に堆積する。 隔壁に堆積したPMは、バーナやヒータ等の加熱手段、又は排気ガスの熱により、燃焼されて除去される。

    特開平1−258715は、ハニカム状成形体と、その所定のセルの端部を目封止する封止体とを一体に備える従来のハニカムフィルタを開示している。 このハニカム状成形体は、Al元素、B元素及びFe元素の合計含有量が1重量%以下でかつ遊離炭素の含有量が5重量%以下である多孔質炭化ケイ素焼結体より形成されている。 封止体は、Al元素、B元素及びFe元素の合計含有量が上記ハニカム状成形体の含有量よりも少なく、遊離炭素の含有量が5重量%以下である多孔質炭化ケイ素焼結体より形成されている。

    ここで、ハニカムフィルタ及び封止体を形成する多孔質炭化ケイ素焼結体に含有されるAl元素、B元素、Fe元素及び遊離炭素等の不純物元素は、焼成後もそのまま残存し、成形体焼成時に炭化ケイ素粒子の成長を促進させる。 上記各元素は、成形体を形成する粒子の表面に付着する、或いは、成形体を焼成する過程において溶融することで粒子間の空隙を埋めることにより、得られる焼成体の耐熱性及び強度を高める性質がある。

    ハニカム状成形体及び封止体が組成の異なる材料から形成された場合には、ハニカム状成形体と封止体との間で熱膨張係数が異なることがある。 この場合、PMの燃焼時における熱衝撃による応は、ハニカム状成形体と封止体との境界に集中しやすくなり、ハニカム状成形体よりも封止体にクラックが生じる可能性が高い。 なぜならば、成形体の耐熱性及び強度に影響を与える不純物元素(Al元素、B元素、Fe元素、遊離炭素等)の含有量の合計が、ハニカム状成形体よりも少なくされた封止体が採用されているからである。 加えて、排気ガスの加熱によるPMの燃焼時において生じ得る、封止体自体の過度の熱膨張も、その封止体にクラックを生じさせる要因となっている。 仮に、封止体にクラックが生じてしまうと、そのクラックから充分に浄化されていない排気ガスが漏れ、フィルタ機能の低下、つまり排気ガスの浄化効率の低下が生じる。

    この発明の目的は、封止体におけるクラックの発生を抑制することができるハニカムフィルタを提供することにある。

    上記の目的を達成するために、本発明のハニカムフィルタは、隔壁によって区画された複数のセルを有する少なくとも1つの柱状のハニカム構造体と、前記複数のセルのうち、複数の第1のセルの上流開口と、複数の第2のセルの下流開口とを封止する封止体とを備えたハニカムフィルタであって、各封止体を形成する材料は、前記ハニカム構造体を形成する材料よりも、Al元素、Fe元素、B元素、Si元素及び遊離炭素の含有量の合計が多いことを要旨とする。

    通常、PMの燃焼時においてフィルタの内部に生じる熱衝撃の応力は封止体と隔壁との接触面すなわち境界に集中しやすい。 この応力集中は、封止体と隔壁との境界、特に封止体の表面にクラックを引き起こしやすい。 そのクラックは封止体と隔壁との間の隙間となり、排気ガスの浄化効率を低下させる。 通常、隔壁の厚みに比べて封止体の厚みは大きいことから、封止体の熱容量は隔壁のものよりも大きい。 このため、仮に隔壁と封止体とを同一材料で構成すると、隔壁に対して封止体の熱膨張が大きくなり、ひいては封止体の内部に生じる過度の熱応力により、その封止体の表面に沿ってクラックが生じやすくなる。

    そこで、本発明では、ハニカム構造体を形成する材料よりも、封止体を形成する材料に多くの不純物元素(例えば、Al元素、Fe元素、B元素、Si元素及び遊離炭素)を含有させている。 このような不純物元素は、ハニカム構造体又は封止体を形成する粒子間に介在し、焼成過程で液相化及び結合しやすいものとなる。 このため、その不純物元素は、フィルタ成形体を焼成して所望のハニカムフィルタを得る過程で、上記粒子間において粒子同士を結合させる。 さらに、その不純物元素は、ハニカム構造体又は封止体を形成する粒子間において容易に液相化し、各粒子間に存在する微細な空隙や、フィルタ成形体を焼成する過程で封止体の内部に生じる熱応力に伴って形成される新たな空隙に関しても、これを埋めることがあり得る。 上述したように、本発明においては、封止体を形成する材料中に、ハニカム構造体よりも多くの不純物元素が含有されていることから、ハニカム構造体よりも封止体において上記不純物元素の作用効果が充分に発揮される。 従って、本発明によれば、封止体を形成する粒子同士が、液相化した不純物元素を介して強固に接合されているため、封止体の耐熱性及び強度の向上が充分に図られている。 これにより、PMの燃焼時における熱衝撃に際しての応力が封止体と隔壁との境界に集中した場合や、封止体が過度に熱膨張した場合においても、その封止体におけるクラック、特に境界部分に沿うクラックの発生が抑制される。

    各封止体は、関連するセルの開口に隣接する第1端面と、前記第1端面の反対側にある第2端面とを有し、第1端面から第2端面までの長さが前記セルの軸線と直交する方向において不均一となるように、第2端面が形成されていることが好ましい。 この構成によれば、セルの第1端面から第2端面までの長さが均一である封止体、すなわち第1及び第2端面が平坦な封止体に比べ、上記熱衝撃による応力やPMの燃焼時における熱膨張を低減することが容易となる封止体が得られる。 従って、封止体におけるクラックの発生が効果的に抑制される。

    各封止体は、関連するセルの開口に隣接する第1端面と、前記第1端面の反対側の第2端面とを有し、前記第2端面は前記セルの中心軸線に対応する中央位置に凹部を有していることが好ましい。 この構成によれば、PMの燃焼時においてハニカムフィルタの内部に熱衝撃が生じたときの応力は、封止体の第2端面に設けられた凹部の中央に集中し、その結果、封止体と隔壁との境界に対する応力の集中が低減される。 仮に、封止体と隔壁との境界付近における応力集中に起因してクラックが発生すると、そのクラックは成長が著しく、封止体としての機能が損なわれる可能性すらある。 しかしながら、この構成においては、封止体の中央部分に応力を集中させることから、クラックが発生しにくく、仮にクラックが発生したとしても成長し難いため、封止体としての機能が長期にわたって保持される。

    各封止体は、前記凹部よりも外側において、前記隔壁と1〜50°の接触で接触するであることが好ましい。 この構成によれば、封止体と隔壁との境界で生じる応力を低減させつつ、封止体の中央部分に好適に集中させて、封止体としての機能の維持を最適化することが可能となる。

    前記封止体は、関連するセルの開口に隣接する第1端面と、前記第1端面の反対側の第2端面とを有し、前記第2端面は、前記セルの中心軸線に対応する中央位置に凸部を有していることが好ましい。 この構成によれば、PMの燃焼時における封止体の熱膨張は、封止体の第2端面に設けられた凸部の中央に集中し、その結果、封止体と隔壁との境界における熱膨張が低減される。 仮に、封止体と隔壁との境界付近における過度の熱膨張に起因してクラックが発生すると、そのクラックは成長が著しく、封止体としての機能が損なわれる可能性すらある。 しかしながら、この構成においては、封止体の中央部分に熱膨張を集中させることから、クラックが発生しにくく、仮にクラックが発生したとしても成長し難いため、封止体としての機能が長期にわたって保持される。

    各封止体は、前記凸部よりも外側において、前記隔壁と91〜179°の接触角で接触するであることが好ましい。 この構成によれば、封止体と隔壁との境界に生じる熱膨張を低減させつつ、封止体の中央部分に好適に集中させて、封止体としての機能の維持を最適化することが可能となる。

    前記封止体の前記第1端面から前記第2端面までの長さは前記セルの軸線からの距離によって異なり、前記第1端面から前記第2端面までの長さの最大値と最小値との差は、前記隔壁の厚みの15倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましい。 この構成によれば、封止体の第2端面の表面形状が欠陥サイズと認定すべき範囲外であることから、封止体の表面部分に対して過度の応力が集中することがなく、応力を適度に緩和することができる。 従って、封止体の表面部分に対してクラックが生じることがほとんどない。

    前記ハニカム構造体は、コージェライト、リン酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、炭化珪素及び金属珪素−炭化珪素複合体よりなる群より選択される少なくとも一種の材料から形成されていることが好ましい。 コージェライト、リン酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム及び炭化珪素及び金属珪素−炭化珪素複合体は熱膨脹率が低いため、これらよりなる群から選ばれた一種の材料、又はこれらの材料を二種以上混合した複合材料をハニカム構造体の構成材料として用いることにより、耐熱衝撃性に優れたハニカムフィルタが得られる。 また、これらの材料の中でも、リン酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム及び炭化珪素の少なくとも一種をハニカム構造体の構成材料として使用した場合は、融点が高くなることから、耐熱性に優れたハニカムフィルタが得られる。

    前記隔壁の少なくとも一部には、触媒が担持されていることが好ましい。 この構成によれば、隔壁の表面及び内部に捕集されたPMがその触媒の作用により容易に燃焼され、除去される。

    前記ハニカム構造体は、外周壁と、前記外周壁の内側に設けられた隔壁と、前記隔壁により区画されて流体の流路となる複数のセルとを有するハニカム部材を、接合材により複数個結束されたものであることが好ましい。 この構成によれば、一つのハニカム部材から形成された別のハニカム構造体に比べ、複数のハニカム部材を結束させてハニカム構造体を形成することで、例えば、フィルタ内部においてPMの燃焼により発生する熱衝撃が各部材間で低減されるようになる。 従って、ハニカム構造体におけるクラックの発生が極力抑制される。

    前記ハニカム構造体の外周には、塗布層が設けられていることが好ましい。 この構成によれば、ハニカムフィルタの位置ずれが抑制される。

    排気ガス浄化装置の概略図。

    ハニカムフィルタの一端面の平面図。

    ハニカム部材の斜視図。

    本発明の第1実施形態に従うハニカムフィルタの断面図。

    図4のハニカムフィルタの封止体の部分拡大断面図。

    図5の封止体の断面図。

    (a)〜(d)は、別例の封止体の断面図。

    (a)、(b)はそれぞれ封止体形成装置の概略断面図、部分拡大図。

    本発明の第2実施形態に従うハニカムフィルタの断面図。

    図9のハニカムフィルタの封止体の部分拡大断面図。

    図10の封止体の断面図。

    (a)〜(d)は、別例の封止体の断面図。

    図10の封止体の形成を説明するための図。

    以下、車両の排気ガス浄化装置に適用した本発明の実施形態に従うハニカムフィルタについて説明する。 はじめに排気ガス浄化装置について概略的に説明する。 排気ガス浄化装置は、例えば、排気ガスの熱のみにより、捕集されたPMを燃焼して除去する自然着火方式である。 本発明のハニカムフィルタは他の方式の排気ガス浄化装置にも適用可能である。

    図1に示すように、排気ガス浄化装置10は、例えば、ディーゼルエンジン11から排出される排気ガスを浄化するための装置である。 ディーゼルエンジン11は、図示しない複数の気筒を備えている。 各気筒には、金属材料からなる排気マニホールド12の分岐部13がそれぞれ連結されている。

    排気マニホールド12の下流側には、金属材料からなる第1排気管15及び第2排気管16が配設されている。 第1排気管15の上流端は、マニホールド12に連結されている。 第1排気管15と第2排気管16との間には、同じく金属材料からなる筒状のケーシング18が配設されている。 ケーシング18の上流側端は第1排気管15の下流側端に連結され、ケーシング18の下流側端は第2排気管16の上流側端に連結されている。 その結果、第1排気管15、ケーシング18及び第2排気管16の内部は互いに連通し、その中を排気ガスが流れる。

    ケーシング18の中央部は排気管15,16よりも大径でありケーシング18は、排気管15,16の途中に比較的太い内部空間を有するフィルタ室を提供する。 このケーシング18内にハニカムフィルタ21が収容されている。 ハニカムフィルタ21の外周面とケーシング18の内周面との間には、ハニカムフィルタ21とは別体で構成された断熱材19が配設されている。 ケーシング18内においてハニカムフィルタ21より上流には、触媒担体71が収容されている。 触媒担体71には従来公知の酸化触媒が担持されている。 触媒担体71の内部において排気ガスが酸化処理される。 この酸化熱がハニカムフィルタ21の内部に伝導され、ハニカムフィルタ21の内部におけるPMが燃焼されて除去される。 本明細書では、PMを燃焼して及び除去することを、「PMの除去」または「ハニカムフィルタの再生」ということがある。

    以下、本発明の第1実施形態に従うハニカムフィルタ21について説明する。

    図2に示すハニカムフィルタ21は、柱状をなす複数個(本実施形態では16個)のハニカム部材22よりなるハニカム構造体23を有する。 各ハニカム部材22は複数のセル28を有し、いくつかのセル28は封止体30によって封止されている。 各ハニカム部材22は例えば四角柱のような多角柱状であり得る。

    ハニカムフィルタ21の製造を説明する。 まず、押出成形によりハニカム部材22と同形状をなすハニカム成形体すなわち未焼成のハニカム構造体を形成する。 複数のハニカム成形体を接合材24により結束させて集合体を形成する。 その集合体の所定箇所に後述の封止体ペーストを充填してフィルタ成形体を得る。 そのフィルタ成形体を所定条件で焼成する。 焼成したフィルタ成形体を切削して、断面を円形状に整える。 このようにしてハニカムフィルタ21が得られる。 図2の例では、周面の切削により、いくつかの隔壁27は部分的に欠けており、いくつかのセル28が周面に露出している。 露出したセル27は塗布層41を形成するときに、塗布層41の材料によって充填されている。 本明細書で使用する用語「断面」は、ハニカムフィルタ21の軸線Qに対して垂直な断面を意味する(図1参照)。 接合材24は、無機バインダ、有機バインダ、無機繊維等を含有する。

    図3に示すように、ハニカム部材22は、外周壁26と、その外周壁26の内側に配置された隔壁27とを有し、断面形状が正方形状に形成されている。 そのハニカム部材22の外周壁26及び隔壁27を形成する材料、すなわちハニカム構造体23を形成する主な材料(主成分)としては、多孔質セラミックが挙げられる。 「主成分」とは、ハニカム構造体23を形成する全成分中に50質量%以上含まれる成分をいう。

    この種の多孔質セラミックとしては、例えば、コージェライト、リン酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、炭化珪素及び金属珪素−炭化珪素複合体等の、熱膨脹率の低いセラミックが挙げられる。 これらは単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。 これらの中でも、耐熱性に優れるとともに高融点を有するという観点から、炭化珪素、金属珪素−炭化珪素複合体、リン酸ジルコニウム及びチタン酸アルミニウムのいずれか一種を採用するのが好ましい。

    ハニカム構造体23を形成する材料中には、Al元素、Fe元素、B元素、Si元素及び遊離炭素よりなる不純物が含有されている。 一般的にハニカム構造体23を形成する材料中には、上記不純物元素が合計で0.3質量%程度含まれている。 Al元素、Fe元素、B元素、Si元素及び遊離炭素は、上記フィルタ成形体を焼成する過程で容易に液相化し、ハニカム構造体23を形成する主成分粒子(例えば、炭化珪素粒子)の表面に付着する、或いはその粒子間の空隙を埋めることで、ハニカム構造体23の耐熱性や強度を高める性質を有する。

    また、本実施形態の隔壁27には、白金族元素(例えばPt等)や、その他の金属元素及びその酸化物等からなる酸化触媒が担持されていてもよい。 このような酸化触媒を隔壁27に担持した場合には、隔壁27の表面及び内部に捕集されたPMの燃焼が、酸化触媒の触媒作用により促進される。

    ハニカム部材22は、隔壁27により区画された複数のセル28を有している。 図4に示すように、各セル28は、一方の端面(上流側端面29A)から他方の端面(下流側端面29B)にかけて軸線Qに沿って延び、流体としての排気ガスの流路として機能する。 各セル28は端面29Aと端面29Bに開口を有する。 各セル28の1つの開口は、封止体30により封止されている。 従って、複数の封止体30は各端面29A、29Bに市松模様状に配置される。 すなわち、約半数のセル28は上流側端面29Aにおいて開口し、残りの約半数のセル28は下流側端面29Bにおいて開口している。

    封止体30を形成する主な材料(主成分)としては、上記ハニカム構造体23と同一の特性(例えば、熱膨張率)を確保するといった観点から、ハニカム構造体23と同一の多孔質セラミック(コージェライト、リン酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、炭化珪素及び金属珪素−炭化珪素複合体等)が好ましい。 「主成分」とは、封止体30を形成する材料中に50質量%以上含まれる成分をいう。

    この封止体30を形成する材料中には、上記ハニカム構造体23と同様、Al元素、Fe元素、B元素、Si元素及び遊離炭素よりなる不純物が含有されている。 本実施形態の封止体30を形成する材料中には、上記ハニカム構造体23よりも多くの不純物が含有されている。 すなわち、封止体30を形成する材料中における不純物元素の含有量の合計は、0.35質量%超であり、好ましくは1.5質量%以下である。

    この不純物の含有量が0.35質量%以下の場合には、封止体30の耐熱性及び強度が十分に確保されない可能性が高い。 すなわち、封止体30と隔壁27との境界部分に生じる応力や、排気ガスの加熱によるPMの燃焼時において生じ得る、封止体30の過度の熱膨張等により、その封止体30にクラックが生じやすくなる。 一方、上記不純物の含有量が1.5質量%を超える場合には、封止体30中における熱膨張差によってクラックが生じやすくなる可能性がある。 又は、不純物が焼結助剤として作用し、焼結が進行しすぎて封止体30の強度が低下する可能性がある。

    図5に示すように、封止体30の奥側の表面33において、セル28の中心軸線Xに対応する中央位置に凸部31が設けられている。 凸部31は、封止体30の熱膨張を中央位置に集中させて、封止体30において凸部31よりも外側位置が熱膨張するのを低減させる機能を有する。 この凸部31は、セル28の中心軸線Xに対応する封止体30の中央部分をセル28の開口すなわち封止体30の反対側に向けて突出する。 封止体30は、セル28の外方側に位置する平坦な第1端面32と、セル28の内方側に位置する第2端面33とを有し、第1端面32から第2端面33までの長さLが、封止体30の外周位置から中央に向かうに連れて連続的に変化しており、セル28の中心軸線Xと直交する方向Yにおいて不均一である。 より詳しくは、封止体30は、上記長さLが、外周側から中央部分に向かうに連れて次第に大きくなるように形成されている。

    図6に示すように、凸部31の外周側において、凸部31の外面と隔壁27とのなす接触角θは、91〜179°であり、好ましくは91〜135°である。 接触角θが91°未満の場合には、例えば図7(d)に示すように、封止体30の外周側が切欠きKとして作用するため、上記熱衝撃が発生したとき、隔壁27と封止体30との境界に対する応力集中が著しくなる。 この結果、封止体30の外周側の表面境界に沿ってクラックが生じたり、封止体30が剥離しやすくなる。 一方、接触角θが179°を超える場合には、凸部31がほとんど生じず、結果的に封止体30の外周側にクラックが生じやすくなる。

    第1端面32から第2端面33までの長さLの最大値L1と最小値L2との差は、隔壁27の厚みTの15倍以下であり、好ましくは10倍以下である。 この差が15倍を超える場合には、封止体30の第2端面33の表面形状が欠陥サイズとして無視できなくなる。 その結果、ハニカムフィルタ21の内部において上記熱衝撃が生じた際には、そのときの応力が凸部31と隔壁27との境界部分に対して集中しやすくなり、凸部31の外周側にクラックが生じやすくなる。

    図2に示すように、ハニカム構造体23の外周全面に塗布層41が設けられている。 この塗布層41は、ケーシング18内におけるハニカムフィルタ21の位置ずれを抑制するために設けられる。 塗布層41は、無機粒子、無機繊維、無機バインダ、有機バインダを含有する。 塗布層41に含有される無機粒子としては、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、アルミナ、ムライト、ジルコニア、リン酸ジルコニウム、アルミニウムチタネート、チタニア及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれるセラミックス、鉄−クロム−アルミニウム系金属、ニッケル系金属、金属珪素−炭化珪素複合材等が挙げられる。 無機繊維としては、シリカ−アルミナセラミックファイバー、ムライトファイバー、シリカファイバー、アルミナファイバー、ジルコニアファイバー等が挙げられる。 また、無機バインダとしては、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル等が挙げられ、有機バインダとしては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース等の親性有機高分子が挙げられる。

    次に、本第1実施形態のハニカムフィルタ21の製造方法について説明する。 ここでは、まず、ハニカム部材22と同一の形状をなすハニカム成形体の製造方法について説明する。 多孔質セラミック粉末(例えば、α型炭化珪素粉末及びβ型炭化珪素粉末)、アルミニウム、ホウ素、鉄、炭素等の助剤、有機バインダ(例えば、メチルセルロース)及び水を含有する原料ペーストを押出成形することによりハニカム成形体が得られる。 ちなみに、ここで用いられる多孔質セラミック粉末に所望量の不純物元素(Al元素、Fe元素、B元素、Si元素及び遊離炭素)が含有されているのであれば、助剤として上記各成分を添加する必要はない。 多孔質セラミック粉末に所望量の不純物元素が不足している場合、必要に応じて不足分の不純物元素を追加してもよい。 「原料ペースト」とは、本明細書における「ハニカム構造体23を形成する材料」を意味する。 そして、ここで得られたハニカム成形体を接合剤ペーストを介して複数個結束させることで集合体Sが得られる。

    続いて、集合体Sにおける所定のセル28の開口端部に封止体30を配設する。 その際、本実施形態では、図8に示す封口装置または封止体形成装置51を用いる。 まず封口装置51に設けられた2つの吐出槽52内に、多孔質セラミック粉末(例えば、α型炭化珪素粉末及びβ型炭化珪素粉末)、アルミニウム、ホウ素、鉄、炭素等の助剤、潤滑剤(例えば、ポリオキシエチレンモノブチルエーテル)、溶剤(例えば、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル)、分散剤(例えば、リン酸エステル系化合物)、バインダ(例えば、メタクリル酸n−ブチルをOX−20で溶解したもの)等を含有する封止体ペーストPを充填した後、吐出槽52間に上記集合体Sを配設する。 ちなみに、封止体ペースト中における、アルミニウム、ホウ素、鉄、炭素等の助剤の添加量は、上記ハニカム部材22の原料ペーストよりも多い。 多孔質セラミック粉末に所望量の不純物元素(Al元素、Fe元素、B元素、Si元素及び遊離炭素)が含有されているのであれば、助剤として上記各成分を添加する必要はない。 多孔質セラミック粉末に所望量の不純物元素が不足している場合、必要に応じて不足分の不純物元素を追加してもよい。 また、前記「封止体ペースト」とは、本明細書における「封止体30を形成する材料」を意味する。

    次いで、吐出槽52の内壁において格子状をなすマスク53を所定のセル28Aの開口端部に当接させるとともに、所定のセル28Aを除く残余のセル28Bの開口端部にマスク53の開口部54を対向させる。 このとき、残余のセル28Bと、吐出槽52の内部とは連通している。 この状態で、モノポンプ(図示略)を用いて各吐出槽52の内部に所定の圧力を印加することで、封止体ペーストPをマスク53の開口部54より吐出させ、セル28Bの開口端部に封止体ペーストPを充填する。 その際、封止体ペーストPの粘度を調整することにより、得られる封止体30(凸部31)の形状を適宜変化させることができる。

    次いで、この封止体ペーストが集合体Sの所定箇所に充填されたフィルタ成形体を、所定条件で乾燥、脱脂及び焼成した後に断面円形状に切削加工することで、所望のハニカムフィルタ21が得られる。

    集合体Sを所定形状に切削加工した後に、封止体を集合体Sに配設してもよい。

    集合体Sに封止体を配設してハニカムフィルタ21を製造する例を説明したが、封止体ペーストの充填は、集合体Sの完成前に行ってもよい。 例えば、未乾燥のハニカム成形体の所定箇所に封止体ペーストを充填し、乾燥、脱脂、及び焼成して、ハニカム構造体23を形成する。 その後、複数のハニカム構造体23を接合剤ペーストを介して結束させて集合体Sを形成し、集合体Sを所定形状に切削加工してハニカムフィルタ21を製造してもよい。

    フィルタ成形体を焼成する場合、その成形体中に含有されている上記不純物元素(Al元素、Fe元素、B元素、Si元素及び遊離炭素)は、フィルタ成形体を形成する主成分粒子(例えば、炭化珪素粒子)間において容易に液相化し、その粒子同士を結合させる。 さらに、各粒子間に存在する微細な空隙や、フィルタ成形体を焼成する過程でその成形体の内部に生じる熱応力に伴って形成される新たな空隙が、液相化した不純物元素により埋められることもあり得る。 その結果、耐熱性及び強度が確保されたハニカムフィルタ21が得られるのである。

    封止体30を形成する材料中における、上記不純物元素の含有量の合計が、ハニカム構造体23(隔壁27)を形成する材料よりも多いことから、ハニカム構造体23(隔壁27)と比較して封止体30の耐熱性及び強度が確保されやすい。 そのため、本実施形態のハニカムフィルタ21を用いて排気ガスの浄化を行う場合には、PMの燃焼時における熱衝撃に際しての応力が封止体30と隔壁27との境界に集中した場合や、封止体30が過度に熱膨張した場合においても、封止体30におけるクラック、特に境界部分に沿うクラックの発生が極力抑制される。

    封止体30が過度に熱膨張する場合、そうした熱膨張が主に凸部31に集中する。 これにより、封止体30と隔壁27との境界付近においては熱膨張が低減される。 ひいては、封止体30の外周側において上記境界部分に沿うクラックの発生や、封止体30の剥離が好適に抑制される。 その結果、封止体30と隔壁27との境界部分に隙間が生じることはなく、充分に浄化されていない排気ガスが排出されるといった不具合が解消されることとなり、その排気ガスの浄化効率が低下することはない。 すなわち、封止体30としての機能を長期にわたって保持することができる。

    第1実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。

    (1) 封止体30を形成する材料中に、ハニカム構造体23よりも多くの不純物元素が含有されていることから、ハニカム構造体23よりも封止体30において上記不純物元素の作用効果が充分に発揮されることとなる。 従って、封止体30を形成する粒子同士が、液相化した不純物元素を介して強固に接合されている。 また、これにより、封止体30の耐熱性及び強度の向上が充分に図られている。 その結果、PMの燃焼時における熱衝撃に際しての応力が封止体30と隔壁27との境界に集中した場合や、封止体30が過度に熱膨張した場合においても、封止体30におけるクラックの発生を抑制することができる。

    (2) 封止体30の中央部分には凸部31が設けられている。 そのため、封止体30が過度に熱膨張する場合、そうした熱膨張が主に凸部31に集中する。 これにより、封止体30の外周側においては熱膨張が低減される。 ひいては、封止体30の外周側において上記境界部分に沿うクラックの発生や、封止体30の剥離を好適に抑制することができる。

    (3) 凸部31の外周側外面と隔壁27とのなす接触角θを91〜179°とすることで、封止体30と隔壁27との境界付近における熱膨張を低減させつつ、封止体30の中央部分にそうした熱膨張を集中させることが可能となる。 すなわち、封止体30の外周側と比較してクラックの発生及び成長が抑制されやすい、封止体30の中央部分に上記熱膨張を集中させることが可能となる。 これにより、封止体30自体におけるクラックの発生が好適に抑制されるようになり、封止体30としての機能の維持を最適化することが可能となる。

    (4) 封止体30において、第1端面32から第2端面33までの長さLの最大値L1と最小値L2との差は、隔壁27の厚みTの15倍以下であり、好ましくは10倍以下である。 このため、ハニカムフィルタ21の内部において上記熱衝撃が生じた際には、そのときの応力が凸部31と隔壁27との境界部分に対して集中することがなく、凸部31におけるクラックの発生を好適に抑制することができる。

    (5) ハニカム構造体23は、コージェライト、リン酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、炭化珪素及び金属珪素−炭化珪素複合体よりなる群より選択される少なくとも一種の材料から形成されている。 すなわち、ハニカム構造体23は、熱膨脹率の低い多孔質セラミックより形成されている。 そのため、耐熱衝撃性に優れたハニカムフィルタ21を得ることができる。

    (6) 隔壁27には酸化触媒が担持されていることが好ましい。 この場合、隔壁27の表面及び内部に捕集されたPMをその酸化触媒の作用により容易に燃焼及び除去することができる。

    (7) ハニカム構造体23は、ハニカム部材22を接合材24により複数個結束させて形成されている。 このため、ハニカム構造体23においては、一つのハニカム部材22から形成された別のハニカム構造体と比べ、例えば、PMの燃焼により発生する熱衝撃が各部材間で低減されるようになる。 従って、ハニカム構造体23におけるクラックの発生を効果的に抑制することができる。

    (8) ハニカム構造体23の外周には塗布層41が設けられているため、ケーシング18内におけるハニカムフィルタ21の位置ずれを容易に抑制することができる。

    次に、本発明の第2実施形態に従うハニカムフィルタ21について説明する。 第2実施形態のハニカムフィルタ21は、封止体30の形状においてのみ第1実施形態のものと異なる。 その差異について以下に説明する。

    図9及び図10に示すように、第2実施形態の封止体30の奥側の表面33は、セル28の中心軸線Xに対応する中央位置に凹部61を有している。 この凹部61は、上記熱衝撃による応力を封止体30の中央位置に集中させて、封止体30において凹部61よりも外側位置に集中する応力を緩和させる機能を有する。 封止体30は、セル28の開口に隣接する平坦な第1端面32と、第1端面32と反対側の第2端面33とを有し、第1端面32から第2端面33までの長さLが、封止体30の外周位置から中央に向かうに連れて連続的に変化しており、セル28の中心軸線Xと直交する方向Yにおいて不均一であるより詳しくは、封止体30は、上記長さLが、外周側から中央部分に向かうに連れて次第に小さくなるように形成されている。

    図11に示すように、凹部61の外周側において、凹部61の内面と隔壁27とのなす接触角θは、1〜50°であり、好ましくは1〜45°であり、最も好ましくは1〜30°である。 接触角θが1°未満の場合には、封止体30と隔壁27との接触長さが実質的に長くなるため、隔壁27の表面積が減少し、PMの捕集効率が低下するおそれがある。 また、封止体30の外周側の厚みが薄くなり、剥離しやすくなる。 一方、接触角θが50°を超える場合には、凹部61の作用効果がほとんど発揮されず、ハニカムフィルタ21内部において上記熱衝撃が発生したときには、隔壁27と封止体30との境界に対する応力集中が著しくなり、封止体30の外周側において上記境界部分に沿うクラックが生じやすくなる。

    また、第1端面32から第2端面33までの長さLの最大値L1と最小値L2との差は、隔壁27の厚みTの15倍以下であり、好ましくは10倍以下である。 この差が15倍を超える場合には、封止体30の第2端面33の表面形状が欠陥サイズとして無視できなくなる。 その結果、排気ガスの浄化を行う過程で、凹部61内に過剰のPMが堆積しやすくなる。 仮に、そうしたPMが燃焼されずに燃え残った場合には、局部的なPMの自己着火が生じ、そのときの熱衝撃に伴って封止体30の中央部分に大きなクラックを生じさせる可能性がある。

    次に、第2実施形態のハニカムフィルタ21の製造方法について第1実施形態との差異について説明する。

    図13に示すように、まず、ハニカム成形体を複数個結束させた集合体Sの所定のセル28Aにおける一端側(上流側)の開口端部、及びこの所定のセル28Aを除く残余のセル28Bにおける他端側(下流側)の開口端部をそれぞれ樹脂製マスク53により閉塞し、集合体Sの一端部を封止体ペーストPに浸漬させる。 すると、封止体ペーストPがセル28Bの内部に流れ込み、セル28Bの開口を塞ぐ。 その際、封止体ペーストPの粘度を調整することにより、得られる封止体30(凹部61)の形状を適宜変化させることができる。 続いて、集合体Sの他端部を、同様に封止体ペーストPに浸漬させる。 そして、この封止体ペーストPが所定箇所に充填されたフィルタ成形体を所定条件で乾燥、脱脂及び焼成した後に、これを断面円形状に切削加工することで、所望のハニカムフィルタ21が得られる。

    さて、第2実施形態のハニカムフィルタ21を用いて排気ガスの浄化を行う場合には、ハニカムフィルタ21内部に生じる熱衝撃に際しての応力は、封止体30において上記凹部61(中央部分)に集中する。 これにより、封止体30の外周側においてはそうした応力が低減される。 ひいては、封止体30の外周側において上記境界部分に沿うクラックの発生や、封止体30の剥離を好適に抑制することができる。 その結果、封止体30と隔壁27との境界部分に隙間が生じることはなく、充分に浄化されていない排気ガスが排出されるといった不具合が解消されることとなり、排気ガスの浄化効率が低下することはない。 すなわち、封止体30としての機能を長期にわたって保持することができる。

    また、凹部61の外周側内面と隔壁27とのなす接触角θを1〜50°とすることで、封止体30と隔壁27との境界部分で生じる応力を低減させつつ、封止体30の中央部分に集中させることが可能となる。 すなわち、封止体30の外周側と比較してクラックの発生及び成長が抑制されやすい、封止体30の中央部分に上記応力を集中させることが可能となる。 従って、封止体30自体におけるクラックの発生が好適に抑制され、封止体30としての機能の維持を最適化することが可能となる。

    各実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。

    ・ハニカムフィルタ21は、接合剤ペーストによって結束された複数のハニカム構造体23からなる集合型ハニカム構造体に限られず、1つのハニカム構造体23からなり、接合剤ペーストを用いないあるいは接合層のないモノリシックハニカム構造体であってもよい。 集合型ハニカム構造体の場合、各ハニカム構造体は炭化珪素又は金属珪素−炭化珪素複合体からなる材料で形成されていることが望ましい。 モノリシックハニカム構造体は、コージェライト、リン酸ジルコニウム、又はチタン酸アルミニウムからなる材料で形成されていることが望ましい。

    ・ 第1実施形態において、接触角θが上記所定範囲内(91〜179°)であれば、図7(a)、(b)に示すように、封止体30の凸部31の形状を適宜変更してもよい。

    ・ 第1実施形態において、仮に、封止体ペーストの粘度調整の手間を軽減することができるのであれば、接触角θが上記所定範囲以外(90°以下)である封止体30を採用してもよい。 例えば、図7(c)に示すように、接触角θが90°である封止体30を採用してもよい。 この場合、封止体30の第2端面33の外周側は平坦状に形成される。 また、例えば、図7(d)に示すように、接触角θが90°未満である封止体30を採用してもよい。

    ・ 第2実施形態において、接触角θが上記所定範囲内(1〜50°)であれば、図12(a)に示すように、封止体30の凹部61の形状を適宜変更してもよい。

    ・ 第2実施形態において、仮に、封止体ペーストの粘度調整の手間を軽減することができるのであれば、図12(b)〜(d)に示すように接触角θが上記所定範囲以外(50°超)である封止体30を採用してもよい。 ちなみに、図12(b)は、接触角θが50°超〜90°未満である封止体30を示し、図12(c)は、接触角θが90°である封止体30を示す。 また、図12(d)は、接触角θが90°を超える封止体30を示す。

    ・ 仮に、封止体ペーストの粘度調整の手間を軽減することができるのであれば、第1実施形態における凸部31、第2実施形態における凹部61を省略してもよい。 この場合、封止体30の第2端面33は、全面に亘って平坦状に形成される。

    ・ 各実施形態において、塗布層41を省略してもよい。

    ・ 各実施形態では、複数個のハニカム部材22を結束させたハニカムフィルタ21を採用したが、これを一つのハニカム部材から形成してもよい。 この場合、複数個のハニカム部材22を接合材24によって結束させる作業が省略されるため、製造の簡略化を図ることができる。

    ・ 各実施形態においては、断面形状が円形状を呈するハニカムフィルタ21を採用したが、その断面形状はこれに限定されるものではない。 すなわち、例えば、断面形状が楕円形状、略三角形状、又は正六角形、正八角形等の多角形状を呈するハニカムフィルタを採用してもよい。

    ・ 各実施形態では、排気ガスの熱によってPMの燃焼及び除去を行うものとしたが、排気ガス浄化装置10の内部に設けられたヒータやバーナ等の加熱手段によってPMの燃焼及び除去を行う構成を採用してもよい。

    実施例 次に、本発明の試験例と比較例を説明する。
    <ハニカムフィルタの製造>
    まず、平均粒径10μmのα型炭化珪素粉末7000重量部と、平均粒径0.5μmのα型炭化珪素粉末3000重量部とを湿式混合し、得られた混合物10000重量部に対して有機バインダ(メチルセルロース)570重量部と、水1770重量部とを加え、混錬して混合組成物を得た。 その混合組成物に可塑剤(日本油脂社製、ユニルーブ(登録商標))330重量部と、潤滑剤(グリセリン)150重量部とを加え、更に混錬した後、押出成形し、図3に示す角柱状の生成形体を作製した。

    次に、マイクロ波乾燥機等を用いて、生成形体を乾燥して、セラミック乾燥体を得た。 封止体ペーストを所定のセルの開口に充填した。 乾燥機で乾燥させた後、セラミック乾燥体を400℃で脱脂し、常圧、2200℃、アルゴン雰囲気下で3時間焼成し、封止体30付きの、炭化珪素焼結体からなるハニカム部材22(図3)を製造した。 このハニカム部材22の寸法は34.3mm×34.3mm×150mm(H×W×L)、気孔率は42%、平均気孔径は11μm、セル密度は240セル/平方インチ(cpsi)、セル隔壁の厚さは0.3mmである。

    別途、耐熱性の接合材ペーストを調整した。 この接合材ペーストの組成は、平均繊維長20μmで平均繊維径6μmのアルミナファイバー30重量%、平均粒径0.6μmの炭化珪素粒子21重量%、シリカゾル15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び水28.4重量%である。 接合材ペーストの粘度は30Pa・s(室温)である。
    4個×4個の四角柱状の多孔質ハニカム部材22を接合剤ペーストを用いて積層し、100℃で1時間乾燥し、接合材ペーストを硬化させ、厚さ1mmの接合材24により一体化された集合体Sが得られた。 集合体Sの外周をダイヤモンドカッターを用いて切削加工し、その外周部に塗布層ペーストを塗布して、厚さ1.0mmの塗布層ペースト層を形成した。 120℃で塗布層を乾燥して、直径140mm、長さ150mmの円柱形状のハニカムフィルタ21を製造した。 塗布層ペーストは、無機繊維としてアルミナシリケートからなるセラミックファイバ(ショット含有率3%、平均繊維長100μm)23.3重量%、無機粒子として炭化珪素粉末(平均粒径0.3μm)30.2重量%、無機バインダとしてシリカゾル(ゾル中のSiO 2の含有率30重量%)7重量%、有機バインダとしてカルボキシメチルセルロース0.5重量%、及び水39重量%からなる組成物を混錬したものを用いた。

    ここで、ハニカム構造体23を形成する材料中の不純物の合計含有量を一定に維持しつつ、封止体30を形成する材料中の不純物の合計含有量を変化させて表1のA〜Gのハニカムフィルタ21を製造した。 表1に、ハニカム構造体23及び封止体30を形成する材料中における、不純物の合計含有量を示す。 各元素の含有量は、蛍光X線分析により測定した。 表1中における数値の単位は質量%である。

    封止体30を形成する材料は、上記生成形体を形成する材料と同一の組成で、材料中の不純物の合計含有量が表1の値になるように、材料の配合比を変化させたり、Al元素、Fe元素、B元素、Si元素及び遊離炭素を含有する物質(助剤)を添加することによって調製した。

    セル28に充填される封止体30の奥側の表面構造には、中央凸部31を有するもの(図5、7)と、中央凹部61を有するもの(図10、12)との2種類がある。 図8の封口装置51を用いれば、中央凸部31を有する封止体30を形成することができる。 図13に示す浸漬法を利用すれば、中央凹部61を有する封止体30を形成することができる。

    <ハニカムフィルタの評価試験>


    [評価1]


    (試験例1〜30及び比較例1〜5)


    表2に示すハニカム構造体23及び封止体30を有するハニカムフィルタ21を製造した後、各例のハニカムフィルタ21に関し、ハニカム構造体23及び封止体30を形成する材料中における不純物含有量と、「封止体の耐久性」との相関関係について下記に示す評価を行った。 その結果を表2に示す。 中央部分に凸部31を有する封止体30において、そうした凸部31が「封止体の耐久性」に与える影響に関しても評価した。


    (封止体の耐久性)


    各例のハニカムフィルタ21を排気ガス浄化装置10に設置し、エンジンを回転数3000min

    −1 、トルク50Nmで所定時間運転させて排気ガスの浄化試験を行い、PMを捕集した。 次に、エンジンを回転数4000min

    −1でフルロード状態とし、ハニカムフィルタ21の温度が700℃付近で一定になったところで、エンジンを回転数1050min

    −1 、トルク30Nmに変更してPMを強制的に燃焼させた。 この操作を、上記PM捕集量が0.1g/L増加する毎に繰り返し行った。 そして、封止体30と隔壁27との境界部分、すなわち封止体30の外周側にクラックが生じない範囲での、PMの最大捕集量を求めた。 この耐久性試験においては、PMの最大捕集量の値が大きいほど、クラックが生じにくく、封止体30の耐久性が優れていることを意味する。

    「接触角θの測定」:光学顕微鏡を用いて封止体30の断面を撮影し、そのときの写真から接触角θを算出した。 断面とは、セル28の中心軸線Xに対して平行な断面をいう。

    表2に示すように、試験例1〜30においては、比較例1〜5に比べ、封止体30の耐久性が向上していることが確認された。 これは、各試験例のハニカムフィルタ21の封止体30においては、ハニカム構造体23と比較して不純物含有量の合計が多いことから、封止体30の耐熱性及び強度が十分に確保されていることに起因するものと思われる。 このように、封止体30中の不純物含有量の合計が多い例(試験例26〜30)ほど、封止体30の耐熱性及び強度が顕著に向上した。

    また、試験例1と試験例2〜5とを比較した場合、試験例2〜5においては、試験例1に対して封止体30の耐久性が顕著に向上した。 これは、封止体30の外周側における熱膨張の緩和に寄与する凸部31の有無に起因するものと考えられる。 さらに、例えば、試験例13及び14から明らかなように、接触角θが91〜135°の場合に、封止体30の耐久性が顕著に向上した。 これは、接触角θが91〜135°の場合に、封止体30と隔壁27との境界部分に生じる熱膨張が特に軽減されやすくなることを意味する。
    [評価2]
    (試験例31〜66及び比較例6〜11)
    表3に示すハニカム構造体23及び封止体30を有するハニカムフィルタ21を製造した後、各例のハニカムフィルタ21に関し、ハニカム構造体23及び封止体30を形成する材料中における不純物含有量と、「封止体の耐久性」との相関関係について評価した。 すなわち、各例のハニカムフィルタ21について、上記に示す「封止体の耐久性」についての評価を行った。 その結果を表3に示す。 中央部分に凹部61を有する封止体30において、そうした凹部61が「封止体の耐久性」に与える影響に関しても評価した。

    表3に示すように、試験例31〜66においては、比較例6〜11に比べ、封止体30の耐久性が向上しているのが確認された。 これは、各試験例のハニカムフィルタ21の封止体30においては、ハニカム構造体23と比較して不純物含有量の合計が多いことから、封止体30の耐熱性及び強度が十分に確保されていることに起因するものと思われる。 このように、封止体30中の不純物含有量の合計が多い例(試験例61〜66)ほど、封止体30の耐熱性及び強度は顕著に向上した。

    また、試験例31と試験例32〜36とを比較した場合、試験例32〜36においては、試験例31に対して封止体30の耐久性が顕著に向上した。 これは、封止体30の熱衝撃に伴う応力の緩和に寄与する凹部61の有無に起因するものと考えられる。 さらに、例えば、試験例45及び46から明らかなように、接触角θが1〜30°の場合に、封止体30の耐久性が顕著に向上した。 これは、接触角θが1〜30°の場合に、封止体30と隔壁27との境界部分に生じる応力が特に軽減されやすくなることを意味する。

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