ハニカム構造体

申请号 JP2014041373 申请日 2014-03-04 公开(公告)号 JP6320798B2 公开(公告)日 2018-05-09
申请人 日本碍子株式会社; 发明人 伊藤 光宏;
摘要
权利要求

流体の流路となる一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有する複数個のハニカムセグメントと、 前記複数個のハニカムセグメントの側面同士を接合する接合層と、を有する柱状のハニカム接合体を備え、 前記ハニカム接合体は、25〜800℃における、前記接合層の熱膨張率が、前記ハニカムセグメントの熱膨張率に比して大きく、 前記ハニカム接合体の外周に外周コート層を更に備え、 25〜800℃における、前記外周コート層の熱膨張率が、前記ハニカム接合体の前記ハニカムセグメントの熱膨張率に比して大きく、 25〜800℃における、前記ハニカム接合体の前記接合層の熱膨張率と前記外周コート層の熱膨張率とが、式:0.7<(外周コート層の熱膨張率/接合層の熱膨張率)の関係を満たし、 25〜800℃における、前記ハニカム接合体の前記接合層の熱膨張率と前記ハニカムセグメントの熱膨張率とが、式:1.4≦(接合層の熱膨張率/ハニカムセグメントの熱膨張率)<40の関係を満たすハニカム構造体。前記接合層が、マイカを含むか、或いは、アルミナファイバー、仮焼したマイカ、及び、生体溶解性ファイバーからなる群より選択される少なくとも一種とアルミナとを含む請求項1に記載のハニカム構造体。前記ハニカムセグメントが、炭化珪素、アルミナチタネート、窒化珪素、及び、コージェライトよりなる群から選択される少なくとも一種を含む請求項1または2に記載のハニカム構造体。

说明书全文

本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、ハニカムセグメントにクラックが発生することを抑制することができるハニカム構造体に関する。

従来、ディーゼルエンジン等から排出される排ガスに含まれている粒子状物質(パティキュレート)を捕捉して除去したり、触媒によって浄化したりするためにフィルタが用いられている。

このフィルタは、排ガスの流路となり一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状のハニカム構造体から構成されている。つまり、一方の端面からハニカム構造体内に流入した排ガスは、隔壁内を通過することなどにより、浄化される。

このハニカム構造体としては、複数のハニカムセグメントを接合層によって一体的に接合されたものなどが知られている(例えば、特許文献1〜4を参照)。

国際公開第2003/067041号

国際公開第2007/069674号

国際公開第2007/116665号

国際公開第2008/126485号

特許文献1〜4に記載のハニカム構造体は、再生処理などにおいて加熱と冷却が繰り返して行われると、ハニカム構造体を構成するハニカムセグメントにクラックが生じるという不具合が生じることがある。

より具体的には、従来、複数個のハニカムセグメントとこれらを接合する接合層とを備えるハニカム構造体では、接合層の熱膨張率とハニカムセグメントの熱膨張率との関係について以下のように設定されていた。即ち、接合層の熱膨張率は、ハニカムセグメントの熱膨張率と同じにするか、或いは、ハニカムセグメントの熱膨張率に比して小さくするように設定されていた。このように設定することで、耐熱衝撃性が高くなると考えられていた。

しかしながら、上記のように接合層の熱膨張率とハニカムセグメントの熱膨張率とを設定したとしても、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)再生時に、ハニカムセグメントにクラックが発生してしまうことがあった。つまり、再生処理などにおいて加熱と冷却が繰り返して行われると、ハニカム構造体を構成するハニカムセグメントにクラックが生じることがあった。そのため、DPF再生時においてハニカムセグメントにクラックが発生することが抑制されたハニカム構造体の開発が切望されていた。

本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、ハニカムセグメントにクラックが発生することを抑制することができるハニカム構造体を提供することを目的とする。

上述の課題を解決するため、本発明は、以下のハニカム構造体を提供する。

[1] 流体の流路となる一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有する複数個のハニカムセグメントと、前記複数個のハニカムセグメントの側面同士を接合する接合層と、を有する柱状のハニカム接合体を備え、前記ハニカム接合体は、25〜800℃における、前記接合層の熱膨張率が、前記ハニカムセグメントの熱膨張率に比して大きく、前記ハニカム接合体の外周に外周コート層を更に備え、25〜800℃における、前記外周コート層の熱膨張率が、前記ハニカム接合体の前記ハニカムセグメントの熱膨張率に比して大きく、25〜800℃における、前記ハニカム接合体の前記接合層の熱膨張率と前記外周コート層の熱膨張率とが、式:0.7<(外周コート層の熱膨張率/接合層の熱膨張率)の関係を満たし、25〜800℃における、前記ハニカム接合体の前記接合層の熱膨張率と前記ハニカムセグメントの熱膨張率とが、式:1.4≦(接合層の熱膨張率/ハニカムセグメントの熱膨張率)<40の関係を満たすハニカム構造体。

[2] 前記接合層が、マイカを含むか、或いは、アルミナファイバー、仮焼したマイカ、及び、生体溶解性ファイバーからなる群より選択される少なくとも一種とアルミナとを含む前記[1]に記載のハニカム構造体。

[3] 前記ハニカムセグメントが、炭化珪素、アルミナチタネート、窒化珪素、及び、コージェライトよりなる群から選択される少なくとも一種を含む前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体。

本発明のハニカム構造体は、25〜800℃における、ハニカム接合体における接合層の熱膨張率が、ハニカムセグメントの熱膨張率に比して大きいため、ハニカム接合体を構成するハニカムセグメントにクラックが発生することを抑制することができる。

本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。

本発明のハニカム構造体の一の実施形態におけるセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。

次に本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。

(1)ハニカム構造体: 本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、図1、図2に示すような柱状のハニカム構造体100である。つまり、ハニカム構造体100は、複数個の柱状のハニカムセグメント22と、複数個のハニカムセグメント22の側面同士を接合する接合層24と、を有する柱状のハニカム接合体10を備えている。ハニカムセグメント22は、流体の流路となる一方の端面である流入端面11から他方の端面である流出端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有している。ハニカム接合体10は、25〜800℃における、接合層24の熱膨張率が、ハニカムセグメント22の熱膨張率に比して大きいものである。

図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態におけるセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。

このようなハニカム構造体100は、25〜800℃における、ハニカム接合体10における接合層24の熱膨張率が、ハニカムセグメント22の熱膨張率に比して大きい。そのため、ハニカム構造体100は、ハニカム接合体10を構成するハニカムセグメント22にクラックが発生することを抑制することができる。即ち、接合層24の熱膨張率を、ハニカムセグメント22の熱膨張率に比して大きくすると、DPF再生時には、接合層の熱膨張率の値からハニカムセグメントの熱膨張率の値を差し引いた分の圧(差引圧力)のみがハニカムセグメントに加わることになる。なお、上記差引圧力は、ハニカム構造体が缶体内にキャニングされている状態では、ハニカムセグメントを締め付ける方向で発生する。このように、ハニカムセグメントに生じる応力は、上記差引圧力のみになるので、ハニカムセグメントに生じる応力が緩和されることになる。その結果、ハニカム構造体100は、ハニカムセグメントにクラックが発生することを抑制できる。

別言すれば、ハニカム構造体100は、25〜800℃における、ハニカム接合体10における接合層24の熱膨張率が、ハニカムセグメント22の熱膨張率に比して大きいため、DPF再生時にハニカムセグメント22に発生する応力が緩和されることになる。即ち、過熱時において、接合層24がハニカムセグメント22を締め付けることにより、「ハニカムセグメント22内に発生した熱応力」と「接合層24がハニカムセグメント22を締め付ける応力」とが打ち消しあう方向に作用する。なお、ハニカム構造体100は、缶体内に収納されて(キャニングされて)固定された状態で使用されるので、接合層24が膨張する力は、ハニカムセグメント22を締め付ける力となる。上記熱応力と上記「締め付ける応力」とが打ち消しあう方向に作用するため、DPF再生時にハニカムセグメント22にクラックが発生することを抑制できる。

更には、DPF再生時にハニカムセグメント22にクラックが発生することを抑制できることに起因して、フィルタとして機能するハニカム構造体において、捕集可能なスート量を増やすことができる。このように、本発明のハニカム構造体は、接合層24の熱膨張率とハニカムセグメント22の熱膨張率とに着目して捕集可能なスート量を増やすことを達成している。そのため、ハニカムセグメントの特性を改善して捕集可能なスート量を増やす従来公知の技術と併用することにより、捕集可能なスート量を更に増やすことが可能になる。

本発明のハニカム構造体は、上記のように捕集可能なスート量を増やすことが可能であるので、ディーゼルエンジンなどにおけるフィルタの再生のタイミングを延長することが可能である。その結果、本発明のハニカム構造体を用いることにより、燃費が向上する。

「25〜800℃における接合層の熱膨張率」は、以下のようにして測定した値である。即ち、まず、接合層を、縦1.5mm×横15mm×厚さ0.5mmとなるように切り出して試料を作製し、この試料について熱膨張計を用いて測定を行う。上記試料を25〜800℃まで加熱し、試料と標準試料との熱膨張率の差(Δl)を算出する。但し、25℃及び800℃における温度上昇の速度は10℃/分以下とする。その後、熱膨張率(CTE)を以下の式(1)から求める。このようにして接合層の熱膨張率を算出する。なお、「標準試料」は石英を用いる。また、熱膨張計としては、例えば、マックサイエンス社製の熱膨張率測定装置(TD5000S)を用いることができる。また、切り出した試料には、ハニカム基材の一部が残ることを許容するが、この残った「ハニカム基材の一部」が熱膨張計と触れないように、試料を調整する。なお、接合層が0.5mm未満の厚さの場合は、取り出せる最大の厚さで試料を切り出す。

式(1)中、CTE(/℃)は「熱膨脹率」である。Δl(mm)は「試料と標準試料の熱膨張率の差」である。Δtは、「測定開始時と終了時の温度差」であり、具体的には、800℃−25℃=775℃である。Lは、「試料の全長」であり、具体的には15mmである。Cs(/℃)は、「標準試料の熱膨張率」である。

また、「25〜800℃におけるハニカムセグメントの熱膨張率」は、以下のようにして測定した値である。即ち、まず、上記「25〜800℃における接合層の熱膨張率」と同様にして、ハニカムセグメントから縦3.5mm×横15mm×厚さ3.5mmの試料を切り出す。次に、接合層の熱膨張率の測定と同様にして測定を行う。このようにしてハニカムセグメントの熱膨張率を算出する。

ハニカム構造体100は、25〜800℃における、ハニカム接合体10の接合層24の熱膨張率とハニカムセグメント22の熱膨張率とが、式:1.4≦(接合層24の熱膨張率/ハニカムセグメント22の熱膨張率)<40の関係を満たすことが好ましい。上記関係式の上限値以上であると、ハニカム構造体に触媒を担持する工程やフィルタとして用いる際に、接合層の熱膨張率が大き過ぎるためにハニカムセグメントが破損してしまう懸念が高くなる。

また、ハニカム構造体100は、25〜800℃における、ハニカム接合体10の接合層24の熱膨張率とハニカムセグメント22の熱膨張率とが、式:1.4≦(接合層24の熱膨張率/ハニカムセグメント22の熱膨張率)<6の関係を満たすことが更に好ましい。このような関係を満たすことにより、フィルタ(ハニカム構造体)の生産工程やハニカム構造体に触媒を担持させる工程(触媒担持工程)における温度制御が容易となる。つまり、上記工程において熱膨張率の差により応力が発生して接合層にクラックが発生することを回避することにより、加熱・冷却を速くすることができ、工程数を減らすことができる。

(1−1)ハニカム接合体: ハニカム接合体10は、複数個の柱状のハニカムセグメント22と、複数個のハニカムセグメント22の側面同士を接合する接合層24と、を備えている。そして、ハニカムセグメント22は、複数のセル2のうちの所定のセルの流入端面11側の端部に配設されるとともに、残余のセルの流出端面12側の端部に配設された目封止部25を備えている。そして、この目封止部25は、流入端面11及び流出端面12のそれぞれにおいて、所定のセルと残余のセルとが交互に、いわゆる市松模様を形成するように配置されている。

ハニカムセグメント22の数は、適宜設定することができるが、例えば、4〜100個とすることができる。ハニカムセグメント22を組み合わせる構成としては、例えば、縦4個×横4個、縦5個×横5個などを採用することができる。

ハニカム接合体10の形状は、特に限定されず、例えば、底面が円形の筒状(円筒形状)、底面がオーバル形状の筒状(楕円筒形状)、底面が多形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の筒状(角柱状)等の形状とすることができる。

また、ハニカム接合体10の大きさは、底面の面積が2000〜100000mm2であることが好ましく、4000〜10000mm2であることが更に好ましい。また、ハニカム接合体10(ハニカム構造体100)のセルの延びる方向の長さは、50〜400mmであることが好ましく、75〜255mmであることが更に好ましい。

(1−1−1)接合層: 接合層は、マイカを含むか、或いは、アルミナファイバー、仮焼したマイカ、及び、生体溶解性ファイバーからなる群より選択される少なくとも一種とアルミナとを含むことが好ましい。

より具体的には、再生時のフィルタの最高温度が1200℃以下である場合には、接合層はマイカを含むものであることが好ましい。その理由としては、マイカは、耐熱性に優れ、耐化学性に優れている異方性をもつ鉱物であり、接合層が耐熱性及び耐化学性に優れるものになるためである。

また、再生時のフィルタの最高温度が1200℃超である場合には、接合層は、アルミナファイバー、仮焼したマイカ、及び、生体溶解性ファイバーからなる群より選択される少なくとも一種とアルミナとを含むものであることが好ましい。その理由は、熱膨張率をより高くするためである。

「生体溶解性ファイバー」とは、生体内で溶解する性質を有するファイバーのことであり、具体的には、カルシウムシリケートファイバー、マグネシアシリケートファイバーなどを挙げることができる。

接合層の厚さは、100〜3000μmであることが好ましく、500〜1500μmであることが更に好ましい。接合層の厚さを上記範囲とすることにより、ハニカムセグメント22にクラックが発生することをより良好に抑制することができる。なお、接合層の厚さは、その層における最も厚い部分の厚さのことである。

ハニカム構造体のセルの延びる方向に直する断面における、接合層の総面積は、ハニカム接合体の総面積の0.5〜15%であることが好ましく、2〜8%であることが更に好ましい。接合層の総面積を上記範囲とすることにより、ハニカムセグメント22にクラックが発生することをより良好に抑制することができる。

(1−1−2)ハニカムセグメント: ハニカムセグメントは、炭化珪素、アルミナチタネート、窒化珪素、及び、コージェライトよりなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。耐熱性に優れ、耐化学性に優れている鉱物であり、接合層が耐熱性及び耐化学性に優れるものになるためである。

なお、ハニカムセグメントが目封止部を備える場合、目封止部の材質もハニカムセグメントと同じ材質であることが好ましい。

ハニカムセグメント22の隔壁1の気孔率は、35〜65%であることが好ましく、40〜60%であることが更に好ましい。気孔率が35%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうことがある。気孔率が65%超であると、ハニカム構造体の強度が低下することがある。気孔率は、銀ポロシメータにより測定した値である。

ハニカムセグメント22の隔壁1の平均細孔径は、2〜15μmであることが好ましく、4〜8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μm未満であると、触媒をコート(塗布)した後に圧力損失が高くなるおそれがある。平均細孔径が15μm超であると、ハニカムセグメントの強度が低下するおそれがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。

ハニカムセグメント22の隔壁1の厚さは、100〜450μmであることが好ましく、150〜320μmであることが更に好ましい。隔壁1の厚さが100μm未満であると、構造体としての強度が不足するおそれがある。隔壁1の厚さが450μm超であると、圧力損失が高くなるおそれがある。

ハニカムセグメント22のセル密度は、15〜60個/cm2であることが好ましく、30〜50個/cm2であることが更に好ましい。セル密度が15個/cm2未満であると、構造体としての強度が不足するおそれがある。セル密度が60個/cm2超であると、圧力損失が高くなるおそれがある。

ハニカムセグメント22は、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状が、四角形、六角形、八角形、またはこれらの組み合わせであることが好ましい。セルの形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体100に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなる。

ハニカムセグメント22の形状は、特に限定されず、複数個のハニカムセグメントの側面同士を接合層により接合できる形状であればよい。そして、ハニカムセグメント22の形状は、一のハニカムセグメントと、他のハニカムセグメントとで異なっていてもよいし、同じであってもよい。ハニカムセグメント22の形状としては、具体的には、セルの延びる方向に直する断面の形状が、多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状とすることができる。

(1−2)外周コート層: 本発明のハニカム構造体は、ハニカム接合体が、その外周に外周コート層を更に備える。そして、ハニカム接合体が外周コート層を備える場合、以下の条件を満たすことが好ましい。つまり、25〜800℃において、外周コート層の熱膨張率が、ハニカムセグメントの熱膨張率に比して大きく、25〜800℃における、ハニカム接合体の接合層の熱膨張率と外周コート層の熱膨張率とが、以下の式を満たす。 式:0.7<(外周コート層の熱膨張率/接合層の熱膨張率)

接合層と外周コート層とが上記式を満たす関係であると、外周コート材の加熱工程や触媒を担持する工程において、外周コート層にクラックが発生し難い。上記式の下限値以下であると、外周コート層にクラックが発生して、塗布した触媒が洩れ出るおそれがある。

また、本発明のハニカム構造体は、25〜800℃における、ハニカム接合体の接合層の熱膨張率と外周コート層の熱膨張率とが、以下の式を満たすことが更に好ましい。そして、接合層と外周コート層とが下記式を満たす関係であると、外周コート材の加熱工程や触媒を担持する工程において、外周コート層にクラックが発生し難い。 式:0.7<(外周コート層の熱膨張率/接合層の熱膨張率)<1.5

外周コート層は、マイカを含むか、或いは、アルミナファイバー、仮焼したマイカ、及び、生体溶解性ファイバーからなる群より選択される少なくとも一種とアルミナとを含むことが好ましい。

より具体的には、再生時のフィルタの最高温度が1200℃以下である場合には、外周コート層はマイカを含むものであることが好ましい。その理由としては、マイカは、耐熱性に優れ、耐化学性に優れている異方性をもつ鉱物であり、外周コート層が耐熱性及び耐化学性に優れるものになるためである。

また、再生時のフィルタの最高温度が1200℃超である場合には、外周コート層は、アルミナファイバー、仮焼したマイカ、及び、生体溶解性ファイバーからなる群より選択される少なくとも一種とアルミナとを含むものであることが好ましい。その理由は、熱膨張率をより高くするためである。

外周コート層の厚さは、0.0〜6000μmであることが好ましく、200〜1000μmあることが更に好ましい。外周コート層の厚さを上記範囲とすることにより、ハニカムセグメント22にクラックが発生することをより良好に抑制することができる。なお、外周コート層の厚さは、ノギスまたは光ゲージを用いて外周コート層の形成前後におけるハニカム構造体の外径の差の平均値に1/2を掛けたときの値(厚さ)のことである。

ハニカム構造体100のアイソスタティック強度は、1MPa以上であることが好ましく、3MPa以上であることが更に好ましい。アイソスタティック強度は、値が大きいほど好ましいが、ハニカム構造体100の材質、構造等を考慮すると、15MPa程度が上限となる。アイソスタティック強度が1MPa未満であると、ハニカム構造体を触媒担体等として使用する際に、破損し易くなることがある。なお、アイソスタティック強度は、水中においてハニカム構造体に静水圧をかけて測定した値である。

(2)ハニカム構造体の製造方法: 次に、本発明のハニカム構造体の製造方法について以下に説明する。

(2−1)ハニカム成形体の作製: まず、以下の方法で、ハニカム成形体を作製する。ハニカム成形原料、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合してハニカム成形原料を作製する。このハニカム成形原料には、炭化珪素、アルミナチタネート、窒化珪素、及び、コージェライトよりなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。なお、このハニカム成形原料は、焼成後にコージェライトとなるコージェライト化原料を含むことも好ましい。

次に、ハニカム成形原料を混練して坏土を形成する。ハニカム成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。

次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する構造である。

次に、得られたハニカム成形体について乾燥を行うことが好ましい。乾燥後のハニカム成形体を「ハニカム乾燥体」と称することがある。乾燥の方法は特に限定されない。乾燥後、脱脂してもよい。

ハニカム成形体(乾燥を行う際には、ハニカム乾燥体)は、焼成する(ハニカム焼成体を得る)ことが好ましい。焼成条件は、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後に更に、1200〜1350℃で、1〜10時間、酸素化処理を行うことが好ましい。このように酸素化処理を行うことで、得られるハニカム構造体の耐久性が向上する。

このようにしてハニカム成形体(ハニカム乾燥体、ハニカム焼成体)を複数個作製して、これらを「ハニカムセグメント」とする。

(2−2)ハニカムセグメントの接合: 次に、ハニカム接合体を作製する。まず、ハニカムセグメントを接合する接合層を形成するための接合材を作製する。

接合材は、無機粒子、バインダ、分散剤を混練して調製することができる。接合材は、マイカを含むか、或いは、アルミナファイバー、仮焼したマイカ、及び、生体溶解性ファイバーからなる群より選択される少なくとも一種とアルミナとを含むことが好ましい。

作製した接合材を複数個のハニカムセグメントの側面にそれぞれ塗布した後、これらのハニカムセグメントを接合させて、ハニカム接合体を作製する。

接合材を塗布した後にはハニカム接合体を乾燥させることが好ましい。このときの乾燥条件は、50〜200℃とすることが好ましい。

次に、乾燥後のハニカム接合体について、接合材中のバインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は、大気雰囲気において、400〜500℃で0.5〜20時間行うことが好ましい。

なお、得られたハニカム接合体の外周部分を、ハニカム接合体の外周形状が所定の形状となるように研削加工してもよい。

(2−3)外周コート層の形成: 次に、ハニカム接合体の外周に外周コート層を形成する。まず、外周コート層を形成する外周コート材を調製する。外周コート材は、無機粒子、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して、混練することで作製することができる。外周コート材は、マイカを含むか、或いは、アルミナファイバー、仮焼したマイカ、及び、生体溶解性ファイバーからなる群より選択される少なくとも一種とアルミナとを含むことが好ましい。

バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、無機粒子100質量部に対して、3〜20質量部であることが好ましい。

水の含有量は、無機粒子100質量部に対して、10〜45質量部であることが好ましい。

界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、無機粒子100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。

造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、無機粒子100質量部に対して、0〜20質量部であることが好ましい。

その後、上記のようにして調製した外周コート材を、ハニカム接合体(または、研削加工したハニカム接合体)の外周面に塗布する。外周コート材の塗布方法は、特に限定されず、例えば、ヘラで塗布することができる。

以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。

(実施例1) SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これに造孔剤として澱粉、発泡樹脂を加え、更にメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して可塑性の坏土を作製した。

次に、得られた坏土を、ハニカム状に押出成形して、ハニカム成形体を得た。次に、得られたハニカム成形体を120℃で乾燥させ、ハニカム乾燥体(ハニカムセグメント成形体)を得た。

このハニカムセグメント成形体を、両端面がそれぞれ市松模様状を呈するように、所定のセルの一方の端部及び残余のセルの他方の端部を目封止して目封止部を形成した。即ち、隣接するセルが、互いに反対側の端部で封じられるように目封止を行った。目封止部を形成する目封材としては、ハニカムセグメント原料と同様の材料を用いた。その後、乾燥させた後(ハニカム乾燥体を得た後)、大気雰囲気中400℃で脱脂し、その後、Ar不活性雰囲気中1450℃で焼成して、SiC結晶粒子をSiで結合させた。このようにして、多孔質構造を有するハニカムセグメント(ハニカム焼成体)を得た。このハニカムセグメントを500個作製した。

次に、20質量部のマイカ、45質量部のSiC、35質量部のコロイダルシリカ、外配として1質量部のカルボキシメチルセルロース、1質量部のポリノン、1質量部の発樹脂、及び25質量部の水をミキサーで混練して、ペースト状の接合材を調製した。

次に、接合材を、各ハニカム焼成体の側面に塗布して、作製した500個のハニカム焼成体のうちの16個のハニカム焼成体を互いに接合させて、縦4個×横4個の四角柱状の柱状体とした。その後、140℃で2時間乾燥させて四角柱状のハニカム接合体を得た。

その後、得られた四角柱状のハニカム接合体の外周部分を、ハニカム接合体が円柱状となるように研削加工した。

次に、20質量部のマイカ、45質量部のSiC、35質量部のコロイダルシリカ、外配として1質量部のカルボキシメチルセルロース、1質量部のポリノン、1質量部の発樹脂、及び25質量部の水をミキサーで混練して、ペースト状の外周コート材を調製した。調製した外周コート材を、「研削加工したハニカム接合体」の外周面にヘラを用いて塗布した。その後、500℃を2時間確保するように乾燥させてハニカム構造体を得た。

得られたハニカム構造体は、接合層の熱膨張率が7.8×10−6K−1であり、ハニカムセグメントの熱膨張率が4.4×10−6K−1であった。つまり、25〜800℃において、接合層の熱膨張率は、ハニカムセグメントの熱膨張率に比して大きく、(接合層の熱膨張率/ハニカムセグメントの熱膨張率)の値は、1.77であった。また、ハニカム構造体は、ハニカムセグメントのサイズが、縦36mm×横36mm×長さ152mmであり、接合層の厚さが1.0mmであった。また、ハニカム構造体は、外周コート層の熱膨張率が7.8×10−6K−1であり、25〜800℃において、外周コート層の熱膨張率は、ハニカムセグメントの熱膨張率に比して大きかった。そして、25〜800℃において、(外周コート層の熱膨張率/接合層の熱膨張率)の値は、1.0であった。結果を表1に示す。なお、表1中、「CTE」は、熱膨張率を意味する。

また、ハニカム構造体の隔壁の気孔径は11μmであり、気孔率は41%であった。平均細孔径及び気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。また、ハニカム構造体の、隔壁の厚さは300μmであり、セル密度は46セル/cm2であった。また、ハニカム構造体の底面は直径(外径)144mmの円形であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さは152mmであった。また、ハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、セルの形状は四角形と八角形の組み合わせであった。つまり、本実施例のハニカム構造体は、四角形のセルと八角形のセルとが交互に配置されていた。

得られたハニカム構造体について、以下に示す方法で、「熱膨張率」の測定を行った。また、得られたハニカム構造体について、「耐熱衝撃性」、「最大スス堆積温度(℃)」、及び「最大スス堆積温度改善率(%)」の各評価を行った。

(熱膨張率) 接合層の熱膨張率は、以下のよう測定した。まず、接合層を、縦1.5mm×横15mm×厚さ0.5mmとなるように切り出して試料を作製し、マックサイエンス社製の熱膨張率測定装置(TD5000S)を用いて測定を行う。具体的には、上記試料を25〜800℃まで加熱し、試料と標準試料との熱膨張率の差(Δl)を算出する。但し、25℃及び800℃における温度上昇の速度は10℃/分以下とする。その後、熱膨張率(CTE)を以下の式(1)から求める。なお、「標準試料」は石英を用いる。このようにして、接合層の熱膨張率を測定する。

式(1)中、CTE(/℃)は「熱膨脹率」である。Δl(mm)は「試料と標準試料の熱膨張率の差」である。Δtは、「測定開始時と終了時の温度差」であり、具体的には、800℃−25℃=775℃である。Lは、「試料の全長」であり、具体的には15mmである。Cs(/℃)は、「標準試料の熱膨張率」である。

また、ハニカムセグメントの熱膨張率は、以下のよう測定した。まず、接合層の熱膨張率の測定と同様に、ハニカムセグメントから縦3.5mm×横15mm×厚さ3.5mmの試料を切り出す。その後、接合層の熱膨張率の測定と同様にして測定を行い、ハニカムセグメントの熱膨張率を測定する。

また、外周コート層の熱膨張率は、以下のよう測定した。まず、外周コート層を、縦1.5mm×横15mm×厚さ0.5mmとなるように切り出して試料を作製し、マックサイエンス社製の熱膨張率測定装置(TD5000S)を用いて測定を行う。具体的には、上記試料を25〜800℃まで加熱し、試料と標準試料との熱膨張率の差(Δl)を算出する。但し、25℃及び800℃における温度上昇の速度は10℃/分以下とする。その後、熱膨張率(CTE)を上記式(1)から求める。なお、「標準試料」は、石英を用いる。このようにして、外周コート層の熱膨張率を測定する。

(耐熱衝撃性) JASO規格M−505−87に規定された方法にて「耐熱衝撃性」の試験を実施した際の外周コート層におけるクラック発生の有無を確認して行った。電気炉スポーリング試験において温度差350℃以上であっても外周コート層にクラックが発生しなかった場合を「無」とする。耐熱衝撃性の試験において温度差350℃以上で外周コート層にクラックが発生した場合を「有」とする。なお、「有」は、触媒の漏れ出しの対策をする限りにおいては使用可能であることを示す。なお、各評価において、クラック発生の有無の確認は、目視にて行った。

(最大スス堆積温度(℃)) 「最大スス堆積温度」の測定については、以下のように行った。2.2Lディーゼルエンジンを搭載するエンジンベンチにて運転し、所定量のPM(パティキュレートマター)を、作製したハニカムフィルタ(ハニカム構造体)に堆積させた。その後、再生処理(ポストインジェクションによりPMを燃焼させる処理)を行い、ハニカムフィルタに流入するガス(入口ガス)の温度を上昇させた。その後、ハニカムフィルタ前後の圧力損失(ガスの入口側と出口側における圧力損失)が低下し始めたところで、ポストインジェクションを止め、エンジンをアイドル状態に切り替えた。その後、再生処理前のPM堆積量を徐々に増加させ、ハニカムフィルタにクラックが生じるまで同じ試験を繰り返し行った。このとき、DPFの排ガスの出口側の端面付近における中央セグメントの温度を熱電対で測定した。中央セグメントは、ハニカムフィルタの外周面を構成するハニカムセグメントである外周セグメント以外のハニカムセグメントのことである。そして、ハニカムフィルタにクラックが生じない場合におけるハニカムフィルタ内の最高の温度を「最大スス堆積温度」とした。

(最大スス堆積温度改善率(%)) 「最大スス堆積温度改善率」の算出を行った。なお、「最大スス堆積温度改善率」とは、ハニカム基材が同じで「接合層CTE/ハニカム基材CTE」が1.0以下であり且つその値が最も小さい比較例のハニカム構造体を100%(基準)とした時の改善率を意味する。接合層の熱膨張率は、従来、ハニカムセグメントの熱膨張率と同じにするか、或いは、ハニカムセグメントの熱膨張率に比して小さくするように設定されていたためである。「最大スス堆積温度改善率」の算出については、比較例2、3、実施例1〜7については、比較例1を基準に計算した。実施例8、9については、比較例4を基準に計算した。実施例10については、比較例5を基準に計算した。実施例11については、比較例6を基準に計算した。そして、「最大スス堆積温度改善率」が0%以下である場合には、ハニカム接合体を構成するハニカムセグメントにクラックが発生する。「最大スス堆積温度改善率」が0%超で1%未満のある場合には、ハニカム接合体を構成するハニカムセグメントにクラックが発生することを抑制する効果が、顕著ではないがわずかに確認できる。「最大スス堆積温度改善率」が1%以上で5%未満の場合には、「ハニカム接合体を構成するハニカムセグメントにクラックが発生することを良好に抑制することができる」と判断することができる。更に5%以上の場合には、「ハニカム接合体を構成するハニカムセグメントにクラックが発生することを更に良好に抑制することができる」と判断することができる。

表1中、「アルミナシリケートファイバー」は、代表寸法がアルミナシリケート製の長さ300μm程度、太さ3μm以下の繊維状物質を示す。また、「アルミナ太径ファイバー」は、代表寸法がアルミナ製の長さ300μm程度、太さが3μm超で6μm以下の繊維状物質を示す。また、「生体溶解性ファイバー」は、カルシアシリケート製の長さ300μm程度、太さ3μm以下の繊維状物質を示す。「Cd」は、コージェライトを示す。「AT」は、アルミナチタネートを示す。「Re−SiC」は、再結晶SiCを示す。

(実施例2、11〜15、比較例1〜6、参考例3〜10) 各条件を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様にして、「熱膨張率」の測定を行った。結果を表1、2に示す。また、作製したハニカム構造体について、「耐熱衝撃性」、「最大スス堆積温度(℃)」、及び「最大スス堆積温度改善率(%)」の各評価を行った。結果を表2に示す。

表1、表2より、実施例1、2、11〜15のハニカム構造体は、「最大スス堆積温度(℃)」、及び「最大スス堆積温度改善率(%)」が高く、ハニカム接合体(ハニカム構造体)を構成するハニカムセグメントにクラックが発生することが抑制されていることが分かる。

本発明のハニカム構造体は、自動車等の排ガスを浄化するフィルタとして好適に利用することができる。

1:隔壁、2:セル、10:ハニカム接合体、11:流入端面、12:流出端面、22:ハニカムセグメント、24:接合層、25:目封止部、26:外周コート層、100:ハニカム構造体。

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