【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、低熱膨張のハニカム構造体を得ることができる低熱膨張コーディエライトセラミックスハニカム及びその製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来から、低熱膨張のコーディエライトセラミックスハニカム構造体を得るための技術として、種々の技術が知られている。 例えば、特公平5−82343号公報には、平均粒径5−100μmのタルク、平均粒径2μm以下のアルミナ、平均粒径15μm以下の高純度非晶質シリカを使用し、気孔率:30−42%、A軸熱膨張係数:0.3×10 −6 /℃以下、B軸:0.5×10 −6 /℃以下のコーディエライトセラミックスハニカムが記載されている。 また、特公平4−70053号公報には、気孔率が30%以下で、A軸熱膨張係数:0.8×10 −6 /℃以下、B軸:1.0×10 −6 /℃以下、コージェライト結晶量が90%以上、他の結晶としてのムライト、及びスピネル(サフィリンを含む)はそれぞれ2.5%以下のコーディエライトセラミックスハニカムが記載されている。 また、特開昭50−75611号公報には、熱膨張係数が25−1000℃の温度範囲で1.1×10 −6 /℃より小さい、主結晶相として斜方晶系コーディエライト(またはインディアライトとして知られる六方晶系コーディエライト)からなる多結晶質焼結セラミックスが記載されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 近年要望の高いハニカムのリブ厚が100μm以下の薄壁ハニカムを製造する場合、触媒の易担持性のため、気孔率は30%以上であることが好ましく、リブ欠損防止のため、原料粉体は口金のスリット幅以上の粗粒を含まない必要があり、耐熱衝撃性の確保のため低熱膨張であることが望まれている。 しかしながら、上述した従来の技術では、以下のような問題があった。 すなわち、平均粒径2μm以下の微粒アルミナは、熱膨張を下げるという長所がある。 しかしながら一方で、粒子の凝集性が強くなり、分級が困難となるために、粗粒物を除去できない。 そのため、ハニカム成形時にアルミナ粗粒が口金のスリットに詰まり、ハニカムのリブ欠陥の原因となる。 また、微粒であるため、コーディエライトセラミックスハニカムの気孔率を下げるという欠点があった。 また、高純度非晶質シリカは、熱膨張を下げるという長所がある一方、石英シリカに比して、コーディエライトセラミックスハニカムの気孔率を下げ、また、高価格であるという欠点があった。 【0004】 本発明の目的は上述した課題を解消して、低熱膨張のハニカム構造体を得ることができる低熱膨張コーディエライトセラミックスハニカム及びその製造方法を提供しようとするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明の低熱膨張コーディエライトセラミックスハニカムの製造方法は、原料に成形助剤を添加混合して原料バッチとした後、この原料バッチを押し出し成形、乾燥、次いで焼成する、コーディエライト結晶相が60%以上、インディアライト結晶相が30%以下、さらに、コーディエライト相とインディアライト相の和が85%以上であり、ハニカムの押出方向であるA軸熱膨張係数が0.4×10 −6 /℃以下であるとともに、押出方向に垂直で、且つハニカム格子線に平行な方向であるB軸熱膨張係数が0.61×10 −6 /℃以下である低熱膨張コーディエライトセラミックスハニカムの製造方法であって、焼成工程において、少なくとも最高温度から1300℃までの降温速度が、100℃/時間以下であることを特徴とするものである。 【0007】 従来の低熱膨張セラミックスの開発において、コーディエライトの配向や反応を良化するために原料を変更することを行ってきたが、本発明では結晶形成時の温度(すなわち最高温度からの降温速度)を制御することで生成する結晶を制御し、低熱膨張化を可能とした。 コーディエライトは、斜方晶系のコーディエライトと、六方晶系コーディエライト、すなわちインディアライトとの異相が存在する。 本発明では、コーディエライトの含有率を高め、インディアライトの含有率を低くすることで熱膨張を低下させることに成功し、また、コーディエライトとインディアライトの含有率を焼成工程における最高温度から特定の温度までの間の降温速度によって制御できることを見出した。 【0008】 【発明の実施の形態】 本発明の低熱膨張コーディエライトセラミックスハニカムでは、焼成後の結晶相が、コーディエライト結晶相が60%以上で、インディアライト結晶相が30%以下で、さらに、コーディエライト相とインディアライト相の和が85%以上である。 このような結晶相を有する低熱膨張コーディエライトセラミックスハニカムは、以下の製造方法に従って得ることができる。 【0009】 図1は本発明のコーディエライトセラミックスハニカムの製造方法の一例を示すフローチャートである。 図1に従って本発明のコーディエライトセラミックスハニカムの製造方法を説明すると、まず、コーディエライト化原料バッチを準備する。 原料バッチは、例えば、タルク、カオリン、仮焼カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、石英からなるコーディエライト化原料に、水溶性セルロース誘導体、界面活性剤、水等の成形助剤を添加混合して得る。 次に、得られた原料バッチを口金を利用して押し出し成形して、コーディエライト組成のハニカム成形体を得る。 その後、得られたハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を得る。 最後に、ハニカム乾燥体を焼成してコーディエライトセラミックスハニカムを得ている。 【0010】 上述した製造方法の特徴は、焼成工程において、少なくとも最高温度から1300℃までの降温速度を、100℃/時間以下とする点である。 本発明では、焼成工程における最高温度からの降温速度を100℃/時間以下と緩やかに制御することにより、コーディエライト結晶相を増し、インディアライト結晶相を減少させた低い熱膨張係数を有するコーディエライトセラミックスハニカムを製造することができる。 【0011】 上述した例において、コーディエライト化原料バッチ中に石英を使用し、且つ、2μmより大きい平均粒径のアルミナを使用することが好ましい。 本発明では、従来の高純度非晶質シリカの代わりに石英シリカを使用でき、その場合は高純度非晶質シリカを使用した場合と比較して気孔率の上昇と低価格化を達成できるため好ましい。 また、2μmより大きい平均粒径のアルミナを使用するのは、気孔率を30%以上にするとともに、分級が困難な粗粒分の混入を防止できるためである。 さらにまた、最高温度から1250℃までの降温速度が50℃/時間以下、および、最高保持温度が6時間以上であると、さらに本発明を好適に実施できるため好ましい。 【0012】 上述した製造方法に従って得られた本発明のコーディエライトセラミックスハニカムは、コーディエライトセラミックスハニカムの40℃から800℃の間のA軸熱膨張係数が0.4×10 −6 /℃以下、B軸熱膨張係数が0.6×10 −6 /℃以下、さらに、コーディエライトセラミックスハニカムのA軸熱膨張係数が0.3×10 −6 /℃以下、B軸熱膨張係数が0.5×10 −6 /℃以下であると、良好な低熱膨張係数を得ることができる。 また、気孔率も30%以上とでき、易担持性を達成することができる。 そのため、セルの隔壁厚が100μm以下のハニカム構造体を得るのに好適に応用することができる。 【0013】 以下、実際の例について説明する。 上述した製造方法に従って、以下の表1記載の原料を所定の割合に混合し、水溶性セルロース誘導体、界面活性剤、水を加え、公知の製法で混練、土練、押出成形、乾燥し、コーディエライト組成のハニカム乾燥体を得た。 【0014】 【表1】
【0015】 次に、得られたハニカム乾燥体を焼成した。 ハニカム乾燥体の焼成は、最高温度1425℃で、以下の表2に示す焼成条件に基づき市販のプログラム機能付きカンタル炉を用いて実施し、本発明例の実施例1〜8と比較例21〜24のハニカム焼成体を得た。 得られた各ハニカム焼成体に対して気孔率と熱膨張係数を測定するとともに、各ハニカム焼成体の結晶相を定量した。 ハニカム焼成体の気孔率は、水銀圧入法により全細孔容積を求め、気孔率を算出した。 コーディエライトの真密度は2.52g/cm
3とした。 マイクロメリティックス社製オートポア9405を測定に使用した。 また、ハニカム焼成体の熱膨張係数は、ハニカムの押出方向をA軸方向、押出方向に垂直で、且つハニカム格子線に平行な方向をB軸方向として、それそれの方向における40−800℃間の線熱膨張係数を測定した。 ハニカム焼成体の結晶相定量は、リードベルト法により行った。 内部標準物質としてU. C. 社製コランダム粉を用い、コーディエライト、インディアライトの定量分析を行った。 微量成分であるサフィリン、スピネル、ムライトは、ハニカム焼結体粉末を弗酸で溶解し、残存物をリードベルト法により定量分析した。 ガラスは、100%からコーディエライト、インディアライト、サフィリン、スピネル、ムライトを差し引いてガラス量とした。 結果を以下の表2に示す。 【0016】
【表2】
【0017】
最高温度からの冷却は緩やかであるほどコーディエライト結晶相の含有率は高くなると同時に熱膨張係数は低くなった(実施例1−4)。 一方、降温速度を150℃以上と速くするほどコーディエライト結晶相の含有率は低く、同時に熱膨張係数は高くなった(比較例21−23)。 最高温度からの緩やかな冷却は、最高温度から1300℃までの間行えば効果はあった(実施例9)。 さらに、1200℃まで緩やかに冷却すれば、さらに高い効果があった(実施例5)。 それ以下の温度まで緩やかに冷却しても効果は緩慢であった(実施例6)。 一方、1350℃までしか緩やかに冷却した場合、コーディエライト結晶相の含有率は低く、効果は見られなかった(比較例24)。 最高温度保持時間は長いほどコーディエライト結晶相の含有率は高くなると同時に熱膨張係数は低くなり、少なくとも4時間以上保持すれば、60%以上のコーディエライト結晶相含有量を得、同時に低い熱膨張係数が得られた(実施例2、5、7、8を参照)。 比較例21のように最高温度保持時間を短く、降温速度を速くすると、60%未満のコーディエライト結晶相含有量であると同時に非常に高い熱膨張係数を得た。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、コーディエライトの含有率を高め、インディアライトの含有率を低くしているため、熱膨張を低下させた低熱膨張コーディエライトセラミックスハニカムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明のコーディエライトセラミックスハニカムの製造方法の一例を示すフローチャートである。
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