Process for producing a seal ring using the same for the sliding member porous sintered ceramic and obtained by this sliding member for a porous ceramic sintered body

申请号 JP2003420163 申请日 2003-12-17 公开(公告)号 JP4429004B2 公开(公告)日 2010-03-10
申请人 京セラ株式会社; 发明人 毅 原; 伸一郎 益山;
摘要 A porous ceramic sintered body for slidable member, which has a mean pore diameter of 20 to 39 mum, and a porosity over 13.0 volume % and not more than 18.0 volume %, can be obtained by: forming bubbles by removing organic matter from a ceramic green body containing ceramic powder, forming aid, and pore forming material which is resin beads selected from suspension-polymerized non-cross-linked polystyrene and suspension-polymerized non-cross-linked styrene-acryl copolymer; followed by heating and sintering. The porous ceramic sintered body is used as a slidable member such as a seal ring.
权利要求
  • セラミック粉末 である炭化珪素質粉末と、 上記セラミック粉末に対して3〜10重量%のグリセリン,アクリル樹脂及びソルビタン脂肪酸エステルからなる成形助剤と、 上記セラミック粉末に対して1〜15重量%のアルミニウム酸化物,希土類酸化物及び珪素酸化物のうち少なくとも1種からなる焼結助剤と、上記セラミック粉末と成形助剤とを合わせた100重量%に対して7〜11重量%の懸濁重合された非架橋性のポリスチレ ン又はスチレン−アクリル共重合体から る樹脂ビーズ である造孔剤とを混合して粉末原料を得る工程と、該粉末原料を成形することで所望形状のセラミック成形体を得る工程と、該セラミック成形体を脱脂、加熱焼結させることで 、気孔率が13〜18体積%であるとともに平均気孔径が20〜40μmのセラミック焼結体を得る工程とを具備することを特徴とする摺動部材用多孔質セラミック焼結体の製造方法。
  • 上記セラミック成形体の弾性回復率 及び熱膨張係数が0.7%以下であることを特徴とする請求項 1に記載の摺動部材用多孔質セラミック焼結体の製造方法。
  • 請求項 1に記載の製造方法を用いて得られる セラミック焼結体を構成する結晶の平均アスペクト比が3未満であり、4点曲げ強度が200MPa以上であることを特徴とする摺動部材用多孔質セラミック焼結体。
  • 請求項 に記載の摺動部材用多孔質セラミック焼結体を用いたメカニカルシールにおけるシールリング。
  • 自動車の冷却水ポンプに用いることを特徴とする請求項 4に記載のシールリング。
  • 说明书全文

    本発明は主に自動車冷却ポンプ、冷凍機等の軸封装置として用いられるメカニカルシールにおけるシールリング等の摺動部材用多孔質セラミック焼結体に関するものである。

    摺動部材用多孔質セラミック焼結体の一例として、メカニカルシールに用いられるシールリングが用いられている。

    メカニカルシールとは、各種機械の回転部の流体完全密封を目的とした流体機器の軸封装置の一つであり、密封端面の摩耗に従い軸方向に動くことができる従動リングと動かないシートリングからなり、振動を緩衝する機構を有し、相対的に回転する軸にほぼ垂直な密封端面において、流体の漏れを制限する働きをするものである。

    図1にその基本構造を示すように、シールリングは、回転軸1とケーシング2との間に取り付けられ、シール作用のおよぶ密封端面3は静止部材であるシートリング5と回転部材である従動リング6との対接面で回転軸1に対して垂直面を形成してシール作用をしている。 従動リング6はパッキング7によって緩衝的に支持されており、回転軸1には接触していない。

    カラー9 は、セットスクリュー10によって回転軸1に固定してあり、このカラー9とパッキング7との間にはコイルスプリング8が介在している。 回転軸1が回転すると、カラー9がともに回転し、コイルスプリング8の弾発でパッキング7に緩衝的に支持されている従動リング6が押圧されていることによって 、従動リング6の軸方向の動きが可能になる。

    シートリング5の側端面と従動リング6の側端面とはいずれも回転軸1の軸線に対して、ほぼ垂直なものとし、これらの面はラッピングによって表面粗さを小さくし、平面度を高度に保たせて密封端面3を構成している。

    密封流体はこの密封端面3の外周に、大気は内周に接している。 この密封端面3はコイルスプリング8の弾発力によって接触圧力の強さを強められている。 緩衝ゴム4はシートリング5を緩衝的に支持するとともに、この従動リング6と回転軸1との間の漏れを防止する。 密封端面3はシートリング5と従動リング6との各端面の漏れを防止する。 回転軸1が回転すると、カラー9 ,パッキング7,コイルスプリング8はこれとともに回転し、従動リング6を回転させる

    シートリング5は回転しないので、密封端面3は相対的に回転する面の会合面となって回転軸1の回転中も密封流体の漏れを防止する。 密封端面3が摩擦によって摩耗するに従い、従動リング6はシートリング5の方へ押し進められ密封端面3の密着は保たれる。 密封端面3に対する回転軸1の振動の伝達の緩和は緩衝ゴム4とパッキング5とが行う。

    以上の構造によりメカニカルシールが成り立っているが、一般的に上記のシートリング5と従動リング6がシールリングと呼ばれている。

    ここで使用されているシールリング用部材としては、カーボン材、超硬合金、炭化珪素質焼結体、アルミナ質焼結体が主として用いられ、近年では高硬度で高耐食性を有し、摺動時の摩擦係数が小さく平滑性も優れた炭化珪素質焼結体を用いるケースが増加している。

    また、この炭化珪素質焼結体の中でも更に摺動特性を向上させる目的で、緻密質炭化珪素質焼結体の製造工程中に造孔剤を用いて気孔を形成させた多孔質炭化珪素質焼結体が注目されており、以下の従来技術が用いられている。

    特許文献1では、造孔剤として架橋性ポリスチレンビーズを用いて、気孔率2〜12体積%の範囲で平均気孔径50〜500μmの独立気孔を形成した炭化珪素質焼結体のシールリングが開示されている(特許文献1参照)。

    特許文献2では、造孔剤として乳化重合させたポリスチレンビーズを用いて、気孔率3〜13体積%の範囲で平均気孔径10〜40μmの独立気孔を形成した炭化珪素質のシールリングが開示されている(特許文献2参照)。

    さらに、特許文献1や特許文献2で開示されたシールリングの焼結は、主として固相焼結を利用するものであり、その焼結助剤としては炭化ホウ素及びカーボンを用いたものであった(特許文献1及び特許文献2参照)。

    また、上記の様なセラミック焼結体を作る為の製造方法として用いられる成形助剤としては、ポリビニルアルコールやポリエチレングリコール等が多く使われている。

    米国特許第5395807号明細書

    特公平05−69066号公報

    従来の技術として知られている上記の摺動部材用多孔質セラミック焼結体は、摺動部材としての必要強度を確保する意味で、実製品としてはセラミック焼結体中の気孔率が13体積%以下に設定されているものが殆どであるが、摺動部材として更に摺動特性を向上させるには、セラミック焼結体中の気孔率を高く設定することが望まれる。

    この場合、気孔を形成させる為に造孔剤を用いるとすると、当然、造孔剤の添加量を増やすことになる。

    しかしながら、特許文献1及び特許文献2で開示されているように、造孔剤として架橋性ポリスチレンビーズや乳化重合させたポリスチレンビーズを用いるという方法では、セラミック粉末と成形助剤と造孔剤を混合した粉末原料を成形する際に、成形体の弾性回復が非常に大きくなったり、成形体を焼成する段階で成形体の熱膨張率が高くなることにより、造孔剤に接しているセラミック成形体にクラックが生じる為、焼成後の製品にもクラックが残り、強度劣化につながることから、実質的に製品価値がなくなるという問題があった。

    更には製造コストを下げる目的で、上記混合粉末原料から得られた成形体は、歩留り低下を防ぐ為に成形体の強度が高く、長期連続成形が可能である為に離型性に優れていること等が望まれる。

    本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであってその目的は、シールリング等の摺動部材としての必要強度を確保し、且つ摺動特性に優れ、クラックやカケの無い高品位の摺動部材用多孔質セラミック焼結体を容易で安価に提供することにある。

    本発明は、セラミック粉末である炭化珪素質粉末と、 上記セラミック粉末に対して3〜10重量%のグリセリン,アクリル樹脂及びソルビタン脂肪酸エステルからなる成形助剤と、 上記セラミック粉末に対して1〜15重量%のアルミニウム酸化物,希土類酸化物及び珪素酸化物のうち少なくとも1種からなる焼結助剤と、上記セラミック粉末と成形助剤とを合わせた100重量%に対して7〜11重量%の懸濁重合された非架橋性のポリスチレン又はスチレン−アクリル共重合体からる樹脂ビーズである造孔剤とを混合して粉末原料を得る工程と、該粉末原料を成形することで所望形状のセラミック成形体を得る工程と、該セラミック成形体を脱脂、加熱焼結させることで、気孔率が13〜18体積%であるとともに平均気孔径が20〜40μmのセラミック焼結体を得る工程とを具備することを特徴とする。

    また、上記セラミック成形体の弾性回復率及び熱膨張率が0.7%以下であることが好ましい

    また上記製造方法を用いて得られるセラミック焼結体を構成する結晶の平均アスペクト比が3未満であり、4点曲げ強度が200MP 以上であることが好ましい

    以上のことにより、シールリング等の摺動部材としての必要強度を確保しつつ、摺動特性に優れたものであり、且つ、カケやクラックの無い高品位の摺動部材用多孔質セラミック焼結体を容易で安価に供給することができる。

    以上のように、本発明によれば、セラミック粉末である炭化珪素質粉末と、 上記セラミック粉末に対して3〜10重量%のグリセリン,アクリル樹脂及びソルビタン脂肪酸エステルからなる成形助剤と、 上記セラミック粉末に対して1〜15重量%のアルミニウム酸化物,希土類酸化物及び珪素酸化物の少なくとも1種からなる焼結助剤と、上記セラミック粉末と成形助剤とを合わせた100重量%に対して7〜11重量%の懸濁重合された非架橋性のポリスチレン又はスチレン−アクリル共重合体からる樹脂ビーズである造孔剤とを混合して粉末原料を得る工程と、該粉末原料を成形することで所望形状のセラミック成形体を得る工程と、該セラミック成形体を脱脂、加熱焼結させることで気孔率が13〜18体積%であるとともに平均気孔径が20〜40μmのセラミック焼結体を得る工程とを具備することにより、摺動特性の向上を目的に気孔率を高く設定しても、クラック等の無い高強度で高品位の多孔質セラミック焼結体を得ることができる。

    また、上記効果は、セラミック成形体の弾性回復率及び熱膨張率を0.7%以下に制御することで、更に有効となる。

    また 、上記製造方法を用いて得られるセラミック焼結体を構成する結晶の平均アスペクト比が3未満であり、4点曲げ強度が200MP 以上であるときには 、更に優れた摺動特性と高強度を保持できる。

    また、上記製造方法を用いることにより、優れた摺動特性と高強度を保持するのに加え、更に生産性にも優れ、クラック等の無い高品位の摺動部材用多孔質セラミック焼結体を容易で安価に供給すること可能となり、これら多孔質セラミック焼結体をメカニカルシールにおけるシールリングとして、更には自動車冷却水ポンプ用シールリングとして製品化することにより、高信頼性、長寿命の摺動部材となる。

    以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。

    図1は各種機械の回転部の流体完全密封を目的とした流体機器の軸封装置の一つであるメカニカルシールの基本構造を示したものであり、このメカニカルシールの心臓部は、従来技術で説明したシートリング5と従動リング6で構成され、両者を併せてシールリングと呼んでいる。

    本発明では、このシールリングの様な摺動部材における上記の課題を解決すべく種々検討を行った結果、気孔を形成させる為に用いる造孔剤として、懸濁重合された非架橋性のポリスチレン又はスチレン−アクリル共重合体からる樹脂ビーズを使用することによって、気孔率を高く設定した場合においてもクラック等が無く、摺動特性に優れた高強度の摺動部材用多孔質セラミックを提供できることを見出した。

    これは、造孔剤として用いる懸濁重合された非架橋性のポリスチレン又はスチレン−アクリル共重合体からる樹脂ビーズの弾性回復率が低く、これらが分解するまでの温度範囲で熱膨張率が低いといった特徴を利用したものであり、結果として、これら造孔剤とセラミック粉末と成形助剤と焼結助剤とを混合した原料粉末を成形した成形体の弾性回復率及び熱膨張率も低くなっており、クラック等の無い高強度の多孔質セラミック焼結体が得られることになる。

    孔剤の添加量として 、セラミック粉末と成形助剤を合せた100重量%に対し、7〜11重量%の範囲であることにより 、上記の効果を得ることができる。 また 、成形体の弾性回復率が0.7%をえた場合や成形体の熱膨張率が0.7%をえた場合は、セラミック部分にクラックが発生し、強度劣化につながることになる。

    例えば、上記の特許文献1や特許文献2で開示されているように、造孔剤として架橋性ポリスチレンビーズや乳化重合させたポリスチレンビーズを用いた場合、気孔率を高く設定する目的で多量の造孔剤を投入すると、成形体の弾性回復率が0.7%をえ、熱膨張率も0.7%をえるため、セラミック部分にクラックが発生し、強度が低くなるという問題が生じることになる。

    従って、クラック等が無く、摺動特性に優れた摺動部材用多孔質セラミック焼結体を得る為に用いる造孔剤としては、懸濁重合された非架橋性のポリスチレン又はスチレン−アクリル共重合体から成る樹脂ビーズを用いることが非常に有効となる。

    尚、ここで説明した成形体の弾性回復率は、1ton/cm の圧力で成形したものの圧力解放直後の寸法と、十分に時間が経過した後の寸法との割合で定義し、熱膨張率は、JIS−R−1618−1994に準拠し、常温〜600℃までの成形体伸び量を測定することにより確認した。

    また、摺動部材用多孔質セラミック焼結体摺動特性を向上させる目的でセラミック粉末として炭化珪素質粉末を用いる また、炭化珪素粉末を焼結させるための焼結助剤としては、強度向上の目的で、アルミニウム酸化物希土類酸化物珪素酸化物とを用い これら焼結助剤の添加量は、 セラミック粉末に対して 1〜15重量%である。

    例えば、焼結助剤の添加量が15重量%をえる場合は、焼結段階で液相の生成が多く、分解蒸発が激しくなるため、微細気孔の発生による焼結体強度低下や成形された形状を保つことができなくなるという問題が発生し、焼結助剤の添加量が1重量%未満の場合は、液相の生成が十分でなく、緻密化が損なわれるため、強度低下へつながることになる。

    これら問題を十分に回避するためには、更に、アルミニウム酸化物が1.0〜6.0重量%、希土類酸化物が0.1〜5.0重量%、珪素酸化物が0.1〜4.0重量%の範囲とすることが好ましい。

    次にセラミック焼結体を得るための成形助剤としては、グリセリンアクリル樹脂及びソルビタン脂肪酸エステルを併用して使用する。

    グリセリンは成形体の可塑性を向上させ、微小気孔の発生による焼結体強度低下を防ぐ効果が有り、アクリル樹脂は成形体の強度を向上させつつも靱性を兼ね備えることから成形体のクラック防止効果が有り、ソルビタン脂肪酸エステルは、成形時に成形体と金型との離型性を向上させてくれる効果が有るため、これらを併用することで、微小気孔の発生による焼結体強度低下や成形体強度不足による歩留り低下が無く、成形時の離型性向上により生産性に優れたセラミック焼結体を得ることが可能となる。

    従来の技術として知られているポリビニルアルコールやポリエチレングリコール等を使用する場合では、上記の効果はあまり期待できない。

    また、成形助剤の添加量としては、3重量%未満であると、成形体強度不足による歩留り低下のおそれがあり、10重量%を超えると、脱脂工程において、成形助剤成分のガス化による急激な体積膨張により、焼結体にクラックを発生させる可能性があるので、セラミック粉末に対して3〜10重量%の範囲とする。 グリセリンとアクリル樹脂とソルビタン脂肪酸エステルの比は製品形状により、自由に設定することが有効である。

    続いてセラミック焼結体の気孔については、摺動特性向上と強度低下防止の目的で、気孔の気孔率が13〜18体積%であるとともに、該気孔の平均気孔径が20〜40μmの範囲であることが重要である

    例えば、気孔率が13体積%以下となると、その摺動特性は劣っていく方向となり、18体積%をえると強度低下を招くことになる。

    また、平均気孔径が20μm未満となると、潤滑液の潤滑効果が小さくなってしまい、40μmを超えると、シールリング等の必要強度を保持できなくなる。

    ここで説明した平均気孔径は、焼結体鏡面加工面の金属顕微鏡写真又はSEM写真を撮影後、その写真上で造孔剤添加により形成した気孔を特定後、各気孔の直径を測定し平均値を算出したものであり、気孔率は焼結体組成における理論密度と得られた焼結体の嵩密度の割合を算出することにより求めたものである。

    続いてセラミック焼結体を構成する結晶の平均アスペクト比については、3未満であることが望ましい。

    例えば、平均アスペクト比が3以上となると、結晶の形は板状となり、三次元網目構造となってくることから、セラミック焼結体中には、造孔剤添加により形成される気孔以外の微小気孔が多数存在することになり、焼結体強度の低下につながることになる。

    ここで説明した結晶の平均アスペクト比は、焼結体鏡面加工面をケミカルエッチング後、金属顕微鏡写真又はSEM写真を撮影し、結晶の長辺とその長辺を2分割した位置に直に交わる短辺との比を測定後、平均値を算出したものである。

    以下、本発明の摺動部材用多孔質セラミック焼結体の製造方法について、多孔質炭化珪素質焼結体を例にとり、説明する。

    まず、出発原料として微量のシリカを含んだ炭化珪素粉末にアルミナ粉末及びイットリア粉末と水とを混合してスラリー化し、このスラリーに成形助剤としてグリセリンアクリル樹脂及びソルビタン脂肪酸エステルを添加、混合後、噴霧乾燥することで造粒粉を作製し、この造粒粉と造孔剤として懸濁重合された非架橋性のポリスチレン又はスチレン−アクリル共重合体からる樹脂ビーズとを混合して原料粉末を作製する。

    この原料粉末を所定形状に成形し、真空脱脂炉に入炉後、窒素雰囲気下で450〜650℃までを10〜40時間で昇温し、450〜650℃で2〜10時間保持後、自然冷却する。

    この脱脂された粉末成形体を更に真空炉内アルゴン雰囲気にて1800〜1900℃の温度で焼成し、得られた焼結体を所定形状に加工することで、シールリング等の摺動部材を作製する。

    以上の製造方法により作製された焼結体は、高い気孔率を有し、シールリング等の摺動部材としての必要強度目安である200MPa以上を確保し、且つ、製品にクラックやカケも無く、摺動特性に優れた高品位のもので、生産性にも優れたものとなる。

    従って、得られた焼結体を、高強度で摺動特性に優れることが要求される自動車冷却水ポンプに用いることは、非常に好適であるといえる。

    更に、上記焼結体はシールリング以外の、例えば、ベアリング部材やフォーセット部材、ポンプ部材等の摺動部材としても有効に使用できる。

    (実例1)
    0.5重量%のシリカを含んだ炭化珪素粉末100重量%に対し、焼結助剤として3.7重量%のアルミナ粉末及び 0.6重量%のイットリア粉末と、122重量%の水 、分散剤として0.3重量%のアンモニア水及び84重量%のウレタンボールとをボールミルに投入後、48時間混合してスラリー化した。

    このスラリーに成形助剤として、2.0重量%のグリセリンと4.0重量%のアクリル樹脂と1.8重量%のソルビタン脂肪酸エステルを添加、混合後、噴霧乾燥することにより造粒粉を作製した。

    次に、この造粒粉100重量%に対して、表1に示す造孔剤の種類と添加割合で造孔剤を添加、混合し、混合原料を作製後、この混合原料を1ton/cm の圧力で所定形状に成形した。

    得られた粉末成形体については、成形直後の寸法と300時間経過後の寸法から算出した弾性回復率とJIS−R−1618−1994に準拠した測定方法にて常温〜600℃までの熱膨張率を測定し、成形体のクラックについても確認した。

    結果は表1に示す。

    その後、得られた粉末成形体を真空脱脂炉内窒素雰囲気下にて450〜650℃までを10〜40時間で昇温後、450〜650℃で2〜10時間保持し、その後、自然冷却とする条件で脱脂し、脱脂された粉末成形体を真空炉内アルゴン雰囲気にて1800〜1900℃の温度で焼成することにより焼結体を得た。

    得られた焼結体は、気孔率、4点曲げ強度及びクラックを評価し、結果は表1へ示す。

    表1より、まず、造孔剤として、懸濁重合された非架橋性ポリスチレン又は非架橋性スチレン−アクリル共重合体を用いて、造孔剤添加量が7〜11重量%の範囲内である本発明の試料No. 2,3,5,6は 、成形体の弾性回復率及び熱膨張率ともに0.7%以下の低い値とシールリング等の摺動部材としての必要強度である200MPa以上の値を示しており、成形体、焼結体ともにクラックも確認されていない。

    これに対し、試料No. 1及び試料No. 4については、造孔剤の添加量が5重量%であり、焼結体の気孔率が13 体積 %以下となっているため、摺動特性劣る結果となった

    また 、造孔剤として乳化重合された架橋性ポリスチレンを用い、その造孔剤添加量が5重量%のものでは、成形体の弾性回復率及び熱膨張率ともに0.7%以下の低い値をしており、成形体焼結体ともにクラック無く、4点曲げ強度も200MPaを超えているものの 、気孔率が13 体積 %以下となっているため、摺動特性劣る結果となった

    また、造孔剤添加量が8重量%を超えると、成形体の弾性回復率及び熱膨張率が大きな値を示しており、クラックが発生し、強度劣化していることが確認され

    尚、試料No. 8は成形体の弾性回復率が0.7%以下であるため成形体においてクラックは確認されていないが、焼結体ではクラックが確認され

    これは成形体の熱膨張率が1.9%と高い値を示しているため、焼結過程の低温段階でクラックが発生していることを意味する。

    従って、クラックに対しては、成形体の弾性回復率とともに熱膨張率を0.7%以下に制御することが有効な手法であることが確認された

    以上の通り、摺動特性に優れ、200MPa以上の強度を保持し、且つ、クラック等の無い高品位の摺動部材用多孔質セラミック焼結体を得るためには、造孔剤として、懸濁重合された非架橋性のポリスチレン又はスチレン−アクリル共重合体を用い、 造孔剤の添加量を7〜11重量%の範囲とし、成形体の弾性回復率及び熱膨張率を0.7%以下に制御することが有効な製造方法となることが確認できた。

    (実例2)
    0.5重量%のシリカを含んだ炭化珪素粉末100重量%に対し、焼結助剤として3.7重量%のアルミナ粉末及び 0.6重量%のイットリア粉末と、122重量%の水、分散剤として0.3重量%のアンモニア水及び84重量%のウレタンボールとをボールミルに投入後、48時間混合してスラリー化した。

    このスラリーに、表2に示す種類と添加割合で成形助剤を添加して混合後、噴霧乾燥することにより造粒粉を作製した。

    次に、この造粒粉100重量%に対して、造孔剤として平均粒径39μmの懸濁重合された非架橋性スチレン−アクリル共重合体からる樹脂ビーズを8重量%添加して混合し、混合原料を作製した。

    この混合原料を1ton/cm の圧力で所定形状に成形し、金型への原料付着が始まる成形ショット数と成形体強度とクラックを評価した。 結果は表2に示す。

    その後、得られた粉末成形体を真空脱脂炉内窒素雰囲気下にて450〜650℃までを10〜40時間で昇温後、450〜650℃で2〜10時間保持し、その後、自然冷却とする条件で脱脂し、脱脂された粉末成形体を真空炉内アルゴン雰囲気にて1800〜1900℃の温度で焼成することにより焼結体を得た。

    得られた焼結体は、気孔率、4点曲げ強度及びクラックを評価し、結果は表2へ示す。

    表2より、まず、成形助剤として、グリセリンアクリル樹脂及びソルビタン脂肪酸エステルを併用し、 成形助剤の総添加量が3〜10重量%の範囲内である本発明の試料No. 2〜4は、全て成形体及び焼結体のクラックも無く、シールリング等の摺動部材としての必要強度である200MPaを超えていることが確認された。 これに対し 、試料No. 1については、成形助剤総量不足により成形体強度が低いため、クラックやカケ等による歩留り低下の可能性が有ることと、原料付着が始まる成形ショット数が少ないことで生産性に劣ることが予想できる。 また 、試料No. 5は成形助剤総量が10重量%をえているため、焼結段階で成形助剤成分のガス化による急激な体積膨張により、クラックを発生させ、焼結体の強度が低くなっている。

    また、試料No. 2〜試料No. 4においては、歩留り低下を招くことがない十分な成形体強度の値を示しており、金型への原料付着が始まる成形ショット数も10000パンチ以上であり 、金型の掃除は殆んど必要無く、生産性にも優れていることが判った

    一方、成形助剤としてポリビニルアルコールやポリエチレングリコールを用いたものは、成形前の粉末顆粒が硬く、潰れ性が悪いため、焼結後に微小気孔が多数存在することにより強度低下を招いていることや、逆に成形前の粉末顆粒が柔らかすぎて成形体強度が低くなり、クラックが生じるという不具合が確認され

    また、原料付着が始まる成形ショット数も少ないため、成形工程の生産性も期待できない。

    以上の通り、摺動特性に優れ、200MPa以上の強度を保持し、生産性にも優れ、且つ、クラックやカケ等の無い高品位の摺動部材用多孔質セラミック焼結体を得るためには、成形助剤として、グリセリンアクリル樹脂及びソルビタン脂肪酸エステルを併用し、それらの総添加量を3〜10重量%の範囲とすることが有効な製造方法となることが確認できた。

    (実例3)
    0.5重量%のシリカを含んだ炭化珪素粉末100重量%に対し、焼結助剤として表3に示す割合のアルミナ粉末及びイットリア粉末と、122重量%の水 、分散剤として0.3重量%のアンモニア水及び84重量%のウレタンボールとをボールミルに投入後、48時間混合してスラリー化した。

    このスラリーに成形助剤として、2.0重量%のグリセリンと4.0重量%のアクリル樹脂と1.8重量%のソルビタン脂肪酸エステルを添加、混合後、噴霧乾燥することにより造粒粉を作製した。

    次に、この造粒粉100重量%に対して、造孔剤として懸濁重合された非架橋性のスチレン−アクリル共重合体からる樹脂ビーズを表3に示す粒径と割合で添加して混合後し、混合原料を作製した。

    この混合原料を1ton/cm の圧力で所定形状に成形し、真空脱脂炉内窒素雰囲気下にて450〜650℃までを10〜40時間で昇温後、450〜650℃で2〜10時間保持し、その後、自然冷却とする条件で脱脂した。

    脱脂された粉末成形体を真空炉内アルゴン雰囲気にて1800〜1900℃の温度で焼成することにより得られた焼結体の気孔率、平均気孔径、4点曲げ強度、結晶の平均アスペクト比及びクラックや変形等の外観を評価した。

    結果は表3に示し、焼結助剤として炭化ホウ素とカーボンを用いた固相焼結体の比較例も同時に表3へ示す。

    表3より、まず、摺動特性を向上させる目的で13体積%を超える気孔率を得るためには、造孔剤を7重量%以上添加する必要があることが判った。 また造孔剤の添加量が11重量%以下の範囲であることにより 、シールリング等の摺動部材としての必要強度である200MPaを超えていることが判った

    これに対し、造孔剤の添加量が12重量% では 、気孔率の増加とともに強度低下が顕著に確認され、比較例で示している試料No. 10の固相焼結体同様に、シールリング等の摺動部材としての必要強度を保持できなくなることが判る。

    平均気孔径においても上記同様 、40μmを超える範囲では強度低下が確認され、 20μm未満では、200MPa以上の強度を保持しているものの摺動特性が劣っていることが確認され

    また、焼結助剤成分であるアルミニウム化合物希土類元素化合物及び珪素酸化物の総添加量が1.0重量%未満である場合は、緻密化不足による強度低下が確認され、総添加量が15.0重量%を超えると、液相成分の分解蒸発に伴う変形と微細気孔の発生による強度低下が確認され、シールリング等の摺動部材としての実用価値が無くなっていることが判る。

    以上の通り、摺動特性に優れ、200MPa以上の強度を保持し、且つ、クラックや変形等の無い高品位の摺動部材用多孔質セラミック焼結体を得るためには、セラミック粉末として炭化珪素粉末を用い、焼結助剤としてアルミニウム化合物希土類元素化合物及び珪素酸化物を1〜15重量%含み、気孔を形成させるための造孔剤は7〜11重量%の範囲で添加することにより 、得られた焼体の気孔率は13〜18体積%であるとともに平均気孔径が20〜40μm となり、 本発明の製造方法が有効であることが確認できた。

    本発明の摺動部材用多孔質セラミック焼結体を用いたメカニカルシールの基本構造を示した断面図である。

    符号の説明

    1:回転軸 2:ケーシング 3:密封端面 4:緩衝ゴム 5:シートリング 6:従動リング 7:パッキング 8:コイルスプリング 9:カラー 10:セットスクリュー

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