【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、コンクリート系成形体及びその製造方法並びに前記成形体の用途に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来から、軽量気泡コンクリート原料スラリーを半硬化して得た生成物を高温高圧蒸気養生した多孔性軽量気泡コンクリート(以下、ALCという)成形体を特定形状かつ一定の大きさに切出して加工することにより水処理材を製造する方法は公知である(特開平3−275194号公報)。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記水処理材を汚水と接触させると、その水処理材に微生物が棲息するので、 その微生物の作用により汚水を浄化したり、その汚水にリンが含まれている場合は、そのリンを前記水処理材に捕捉させて脱リン作用を発揮させたりすることは公知である。 【0004】ところが、前記方法で得た水処理材には次のような問題がある。 (1)前記水処理材は軽量で、かつ吸水速度が遅いため、既に汚水が張られた汚水処理槽や生活排水等で汚染された水路や河川にそれを投入した場合、同処理材は前記汚水槽の汚水や前記生活排水の上層に浮遊する。 (2)前記上層に水処理材が浮遊すると汚水や排水との接触効率が低下し、水処理材が有する本来の水処理効果を十分に発揮し得ない。 (3)また、水を張った槽内に水処理材を充填する場合、水処理材が浮き所定量の水処理材を充填することができない。 (4)更に、水路や河川では水処理材が浮遊したまま流出する。 そのため水処理材を所定の場所に止どめて流下する排水と接触させる必要がある。 従って、本発明は汚水処理槽に投入しても、または水路や河川に投入しても浮遊しない軽量気泡コンクリート系水処理材の提供を目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本請求項1の発明は、前記の課題を解決するために、多孔性軽量気泡コンクリートからなる粒状体同士を接合材で固めておこし状にしてなるコンクリート成形体とする。 本請求項2の発明は、 前記の成形体を得るために、軽量気泡コンクリート原料スラリーを半硬化して得た未養生物の水スラリーと、多孔性軽量気泡コンクリートからなる粒状体とを混合して一旦非流動物を得、その非流動物からの成形体を高温高圧蒸気養生するという手段を採用する。 本請求項3の発明は前記成形体のかさ比重を1以下にしても水浸没性を発揮して本発明が意図している水処理材の用途に利用しようというものである。 【0006】 【作用】本発明においては次の作用が発揮される。 請求項1の発明にあっては、粒子同士が接合材で接合していると同時に、粒子同士の間に空間部も形成される。 請求項3の発明にあっては、この成形体を水処理材として使用する場合、当然その水処理材が汚水と接触するが、そのとき、前記空間部に汚水が迅速に侵入し、汚水に一旦浮いた塊状の水処理材が下方に浸没し、水と接触する機会が増大する。 【0007】請求項2の発明においては、まず軽量気泡コンクリート原料スラリーを半硬化して得た未養生物の水スラリーと、多孔性軽量気泡コンクリートからなる粒状体とを混合して一旦非流動物を得ているので、この非流動物中において前記粒状体の周面には未養生物が付着する。 次に、この非流動物を成形すると、前記未養生物が粒状体全体を所定の形状に保持する作用をする。 このようにして得られた成形体を高温高圧蒸気養生すると、 前記未養生物が前記粒状体と化学構造的に同等のものになるとともに粒状体同士を接合する作用をする。 【0008】 【実施例1】次に本発明を具体化した一実施例を図面も参照しながら説明する。 まず2種の原料を用意する。 約60重量部の珪酸質原料、約15重量部の石灰質原料、 約20重量部のセメント及び約5重量部の石膏からなる軽量気泡コンクリート原料と微量のアルミニウム粉とからなる水スラリーを半硬化して未養生物を得た。 この未養生物100重量部に対して水を約30重量部混合して未養生物の水スラリーを得た。 【0009】他方周知の方法で得たALCを粉砕して得た網目間隔が5mmの篩を通過した粒状体(従ってこれには粉体も含まれる)を準備した。 次に前記未養生物の水スラリー100重量部に対して約100重量部の前記粒状体を混合して非流動物を調整した。 【0010】内径5cmの円筒形の形枠であってその中心部に直径2cmの中子が配設された形枠にこの非流動物を充填して上下方向から圧力をかけてリング状成形体を得た。 この成形体をオートクレーブに入れて180 ℃、10気圧下で5時間、水蒸気養生した(以上請求項2の発明)。 【0011】図1に示すように得られた成形体1は中抜き円柱形状をなし、その表面の一部分を観察したら図2 に示すように成形体1における粒状体2同士はおこし状に固まっているとともに、粒状体2同士が接合していない部分には空間部4が形成されていた(以上、請求項1 の発明)。 【0012】また、この成形体1のうち中子が占めていた中空部3を除く部分の絶乾かさ比重を測定したら約0.7であった。 【0013】このようにして得られた外径50mm、内径25mm、高さ50mmの中抜き円柱状成形体1の吸水試験を次のように行なった。 まず、前記成形体1を1 05℃の恒温室に約48時間放置し、絶乾状態にした。 その成形体1を浄水が張られた水槽に入れ、経時的に吸水量を測定した。 その結果図3の曲線aに示す結果を得た。 なお前記成形体1は水槽に投入後、数秒で浄水に浸没した。 【0014】 【比較例】比較のため、前記した従来技術で得た成形体について、前記実施例1に準じて吸水試験を行なった。 そして、図3の曲線bに示す結果を得た。 またこの成形体は水槽に投入後10分経過するも水に完全には浸没しなかった。 【0015】曲線a、bから明白な通り、本発明に係る実施例1の成形体は従来技術のそれに比較して、吸水速度が大きいだけでなく、水に対する浸没開始時間が非常に早いということが分かる。 【0016】 【実施例2】図4に示す汚水処理装置10を使用して豚尿汚水の処理実験を行なった。 前記汚水処理装置10は基本的には200mm×150mm×310mmの直方形の第1次処理槽11と、その処理槽11で処理された汚水を続いて処理する200mm×150mm×290 mmの第2処理槽12とから構成されていた。 各処理槽11、12のそれぞれには、汚水中に500mmリットル/分の空気を供給できる曝気管13、14が備えられていた。 汚水は第1供給管15から10リットル/分の流量で第1処理槽11の下方に供給されその上方から1 次処理された処理水が溢流し、次いで、第2供給管16 を通じて前記処理水が第2処理槽12の下方に供給され、最後に前記同様にして第2処理槽12で処理されて放出管17を通じて外部に放出されるようになっていた。 【0017】前記各処理槽には実施例1で製造された多数個の成形体が水処理材18として各処理槽中汚水が張られる容積を基準して約90%の容積を占めるように充填されていた。 なお、水処理材の18を汚水が張られた処理槽に投入したとき、前記水処理材は直ちに浸没し下方に沈降していった。 この実験において第1次処理槽1 1に対して第1供給管15から供給される汚水のpH、 BOD及びトータルリン濃度(T−P)を測定するとともに、第2次処理装置12の放出管から放出される処理水の前記同様の特性を測定した。 その結果を表に示す。 【0018】 【表】 【0019】 【比較例2】前記従来技術の水処理材を使用して実施例3と同様の実験を行なった。 なお従来技術の水処理材を処理槽に投入したとき、その処理材はなかなか浸没しないので、水処理材を汚水面下は勿論汚水面上の空間部にまで強制的に充填した。 そのため実施例3の場合より多くの水処理材を必要とした。 この実験結果も併せて前記表に示す。 【0020】上記表から明白なとおり、実施例3の汚水処理性能は従来技術より良好であるだけでなく、水処理材の使用量も少なくて済む。 【0021】本発明はその根本的技術思想を踏襲して発明の効果を著しく損なわない限度において、前記実施の態様を一部変更して実施することができる。 例えば、前記未養生物に対して養生前の成形体の強度発現のためにセメントを加えたり、粘度を調整するためにメチルセルロース等の増粘剤を加えたりすることができる。 軽量気泡コンクリート粒状体の一部を活性炭やゼオライト等に置換できる。 【0022】成形体の空隙率を調整するために、2種の原料の混合比は変更することもできる。 例えば、空隙率を高めるために未養生物の混合比を実施例の値よりも低くすることができる。 逆に成形体の強度を高めるために、未養生物の混合比を高くすることができる。 本発明の粒状体はALC製造工程又はALC建物の建設時に発生するALCの破砕物を利用することもできる。 【0023】 【発明の効果】以上詳述したように、本発明にかかる成形体を水処理材に使用した場合は、水処理槽内の汚水上層に浮遊することなく、浸没する。 そのため本発明に係る水処理材は汚水との接触効率を高め、ひいては水処理効率を高めることができるという優れた効果を発揮する。 また、発明は前記の成形体を製造するのに最適の方法を提供する。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に係る実施例で製造された成形体の斜視図である。 【図2】図1の一部を拡大して示す部分拡大図である。 【図3】水処理材の吸水特性を示す線図である。 【図4】実施例3の水処理装置の概略図である。 【記号の説明】1 成形体 2 粒状体 3 中空部 4 空間部 |