Ceramic ball for ballpoint pen, manufacturing method for the same and ballpoint pen

申请号 JP2000106225 申请日 2000-04-07 公开(公告)号 JP2001287490A 公开(公告)日 2001-10-16
申请人 Ngk Spark Plug Co Ltd; 日本特殊陶業株式会社; 发明人 NIWA TOMONORI; YOGO TETSUJI;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a ceramic ball for a ballpoint pen capable of obtaining further better writing performance by optimizing a balance of the presences between rough air gaps and fine air gaps. SOLUTION: The air gaps of 3 to 30 pieces in size of 2 to 10 μm and the air gaps of 20 to 200 pieces in size of 0.5 to 2 μm are formed per a region of 50 μm×50 μm of a surface of a ceramic ball. The relatively rough air gaps 93 in size of 0.5 to 2 μm and the relatively fine air gaps 94 in size of 0.5 to 2 7 μm are formed in a good balance in a specifically forming density as described above. Thus, smooth writing satisfactoriness is simultaneously assured while ensuring a necessary sufficient ink flow-out amount so as to clearly express a distinct line or particularly a character or a fine line, and a wear of a ball sheet part can be effectively suppressed. In order to manufacture the ball for satisfying such conditions, it is effective to manufacture a spherically formed material by a tumbling granulating method. Simultaneously, a manufacturing efficiency and a material yield are dramatically improved.
权利要求 【特許請求の範囲】
  • 【請求項1】 少なくとも表層部がセラミックにて構成されるとともに、ボール表面の50μm×50μmの領域当たりに、寸法2μm以上10μm以下の空隙が5〜
    30個、寸法0.5μm以上2μm未満の空隙が20〜
    200個形成されていることを特徴とするボールペン用セラミックボール。
  • 【請求項2】 前記セラミックは、窒化珪素含有率が8
    5重量%以上の窒化珪素質セラミックである請求項1記載のボールペン用セラミックボール。
  • 【請求項3】 少なくとも表層部が、窒化珪素含有率が85重量%以上の窒化珪素質セラミックにて構成されていることを特徴とするボールペン用セラミックボール。
  • 【請求項4】 少なくとも一部のものの寸法が1μm以上である閉気孔が内部に分散形成された多孔質窒化珪素質セラミックにて構成されたことを特徴とするボールペン用セラミックボール。
  • 【請求項5】 相対密度が80〜98%である多孔質窒化珪素質セラミックにて構成されたことを特徴とするボールペン用セラミックボール。
  • 【請求項6】 ボール表面の50μm×50μmの領域当たりに、寸法2μm以上10μm以下の空隙が5〜3
    0個、寸法0.5μm以上2μm未満の空隙が20〜2
    00個形成されている請求項4又は5に記載のボールペン用セラミックボール。
  • 【請求項7】 外層部が少なくともセラミックにて構成され、かつ略中心を通る断面にて、その中心部に、外層部と識別可能な核部が形成されていることを特徴とするボールペン用セラミックボール。
  • 【請求項8】 造粒容器内にセラミック原料粉末を含有する成形用素地粉末を入れ、該容器内にて前記成形用素地粉末の凝集物を転がしながらこれを球状に成長させることにより球状成形体を得る転動造粒成形工程と、 その球状成形体を焼成することによりボールペン用セラミックボールを得る焼成工程と、 を含むことを特徴とするボールペン用セラミックボールの製造方法。
  • 【請求項9】 前記造粒容器内にてセラミックの原料粉末を含む成形用素地粉末と成形核体とを共存させ、その状態で前記成型核体を転がしながら、該成形核体の周囲に前記成形用素地粉末を球状に付着・凝集させて前記球状成形体を得る請求項8記載のボールペン用セラミックボールの製造方法。
  • 【請求項10】 前記転動造粒成形工程にて相対密度が61%以上の球状成形体を得る請求8又は9に記載のボールペン用セラミックボールの製造方法。
  • 【請求項11】 前記球状成形体を、相対密度が80〜
    98%となるように焼成する請求項8ないし10のいずれかに記載のボールペン用セラミックボールの製造方法。
  • 【請求項12】 前記セラミックは窒化珪素含有量が8
    5重量%以上の窒化珪素質セラミックであり、前記焼成は、窒素を含む10気圧以下の雰囲気にて一段階のみの焼成にて行う請求項11記載のボールペン用セラミックボールの製造方法。
  • 【請求項13】 請求項1ないし7のいずれかに記載のボールペン用セラミックボールと、 そのボールペン用セラミックボールをペン先位置に回転可能に支持するボールシート部と、 そのボールシート部を経て前記ボールペン用セラミックボールにインクを供給するインク供給機構とを備えたことを特徴とするボールペン。
  • 【請求項14】 前記ボールペン用セラミックボールは窒化珪素質セラミックにて構成され、前記ボールシート部は、少なくとも前記ボールペン用セラミックボールと接する部分がFe系材料にて構成されている請求項13
    記載のボールペン。
  • 说明书全文

    【発明の詳細な説明】

    【0001】

    【発明の属する技術分野】本発明は、ボールペン用セラミックボール、ボールペン用セラミックボールの製造方法及びボールペンに関する。

    【0002】

    【従来の技術】従来、ボールペン用のボールとしては金属製のものが使用されることが多かったが、近年、摩耗しにくく又はインキによる腐食も受けにくいセラミック製ボールを使用したボールペンが実用化されている。 例えば特開昭56−145000号、特開昭59−135
    195号あるいは特公平3−23356号の各公報には、炭化珪素を始めとして、窒化珪素、サイアロン、ジルコニア、アルミナ、窒化アルミニウムなど、各種セラミックにて構成したボールペン用セラミックボールが開示されている。

    【0003】ところで、ボールペン用セラミックボールの表面は、ベアリングボールのような極めて平滑な仕上り状態になっていると、インクを弾いてスムーズな書き味が損なわれるので、インク保持・転写性を確保するために、適度に空隙が分散形成された表面状態としておく必要がある。 例えば、特公平3−23356号公報には、炭化珪素質セラミックにて構成されたボールペン用セラミックボールの表面部の平均孔径を1〜30μmとする発明が開示されている。 このように平均孔径を調整する理由として、ボールシート部の削り取りを抑制し、
    いわゆる球下がりを抑制することが記載されている。

    【0004】

    【課題を解決するための手段】しかしながら、ボールペン用セラミックボールにおいてはボールシート部の削り取り抑制のみでなく、滑らかで鮮明な書き味が保証されるための、適度なインク流出性能が当然に両立されていなければならない。 例えば粗大な空隙ばかりが多数形成されている場合には、ボール表面のインク保持量が増大し、インク流出量を増大させることができるが、ボールシート部の削り取りが進行しやすくなる上、筆記対象物(例えば紙等)上でのボールの滑りが悪くなり、書き味がざらざらとした心地の悪いものになってしまう問題がある。 また、インク流出量が多いため、ボール径を相当小さくしても鮮明な細字の表現が困難になる。 他方、微細な空隙のみが主体となる場合には、インク流出量が不足して、特にボール径が小さかったり、筆記速度が早くなったりしたときにかすれ等が生じ易くなる。

    【0005】このような問題を解決するためには、表面空隙の寸法分布、つまり粗い空隙と微細な空隙との存在バランスを考慮しなければならないが、特公平3−23
    356号公報では単に空隙の平均寸法が規定されているに過ぎず、空隙の寸法分布については全く関心が払われていない。 他方、該公報においては、ボールの製造方法として、状あるいは円柱状の成形体をプレス成形により作り、これを焼成した後にバレル研磨及び精密研磨を施して最終的な形状に仕上げる方法が採用されている。
    しかしながら、プレス成形では成形すべき粉末とパンチあるいはダイとの摩擦が大きいため、密度の不均一な成形体しか得られず、結果的に焼結体の密度分布も不均一化しやすくなるので、研磨されたボール表面の空隙分布を精密に制御することは非常に困難である。 従って、鮮明で滑らかな書き味性能を実現するために粗い空隙と微細な空隙とを最適のバランスにて形成することは不可能に近い。 また、角状あるいは円柱状の焼結体を最終的なボールに仕上げるためには、多段階の研磨工程を経なければならないから、製造能率が極めて悪い上、材料歩留まりの大幅な低下が避けがたい欠点がある。

    【0006】また、特公平3−23356号にて採用されている材質は炭化珪素であるが、炭化珪素製のボールは、ボールシート(具体的にはステンレス鋼等のFe系金属で構成される)に組み付けて実際にボールペンとして使用したときに、長期間の使用に伴い面荒れを起こしやすく、また、該面荒れに伴い当然に表面空隙分布も影響を受けやすいことから、書き味等がやや損なわれやすい難点がある。 さらに、長期間の使用により、ボールシート部が摩耗しやすく、これも書き味を損ねる一因となる。

    【0007】他方、特開昭56−145000号公報には、窒化珪素焼結体にて構成したボールペンボールが開示されているが、実施例によるとその窒化珪素含有率は74%と低く、強度や耐摩耗性も十分に確保されないことから、書き味や鮮明度等の筆記性能の持続性に欠ける欠点がある。 また、焼結助剤含有量が高く焼結時に相当緻密化することが予想されることから、研磨等による表面空隙量あるいは寸法分布の調整が困難な上、耐化学薬品性も損なわれるために、インクとの長期接触により腐食摩耗しやすい欠点がある。

    【0008】本発明の、第一の課題は、粗い空隙と微細な空隙との存在バランスを最適化することにより、一層良好な筆記性能が得られるボールペン用セラミックボールを提供することにある。 また、第二の課題は、従来の窒化珪素質セラミックの欠点を解消し、より長寿命で筆記性能に優れた窒化珪素質セラミック製ボールペン用セラミックボールを提供することにある。 さらに、第三の課題は、長期間使用しても表面空隙分布が影響を受けにくく、ボールシート部の摩耗も抑制することができ、筆記性能の持続性に優れたボールペン用セラミックボールを提供することにある。 そして、第四の課題は、製造能率と材料歩留まりに極めて優れたボールペン用セラミックボールの製造方法と、それにより製造されるボールペン用セラミックボールを提供することにある。

    【0009】

    【課題を解決するための手段及び作用・効果】上記の課題を解決するために、本発明のボールペン用セラミックボールの第一の構成は、少なくとも表層部がセラミックにて構成されるとともに、ボール表面の50μm×50
    μmの領域当たりに、寸法2μm以上10μm以下の空隙が5〜30個、寸法0.5μm以上2μm未満の空隙が20〜200個形成されていることを特徴とする。 また、本発明のボールペンは、本発明のボールペン用セラミックボール(上記第一の構成のほか、後に説明する第二あるいは第三の構成であってもよい)と、そのボールペン用セラミックボールをペン先位置に回転可能に支持するボールシート部と、そのボールシート部を経て前記ボールペン用セラミックボールにインクを供給するインク供給機構とを備えたことを特徴とする。

    【0010】本発明者らは、鋭意検討の結果、寸法2μ
    m以上10μm以下の比較的粗い空隙と、寸法0.5μ
    m以上2μm未満の比較的微細な空隙とを、上記のような特定の形成密度にてバランスよく形成することが、鮮明な線、特に文字や細線を明瞭に表現するために必要十分なインク流出量を確保しつつ、滑らかな書き味も同時に確保し、かつボールシート部分の摩耗も有効に抑えることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。 このようなボールペン用セラミックボールは、特にボール径が0.5〜1.4mm程度の文字筆記用あるいは細線用のボールペンに好適に使用できる。 かくして本発明の第一の課題が解決される。

    【0011】なお、空隙の寸法(後述の結晶粒子の寸法等についても同じ)とは、図20に示すように、観察面上において空隙(結晶粒子)に対し、それらの内部を横切らない外接平行線を、該結晶粒子あるいは欠陥との位置関係を変えながら各種引いたときに、その平行線の最小間隔dmin と、最大間隔dmaxとの平均値(すなわち、d=(dmin+dmax)/2)にて表すものとする。

    【0012】50μm×50μmの領域当たりの、寸法2μm以上10μm以下の空隙(以下、大寸法空隙という)の個数が5個未満になると、ボール表面のインク保持量が不足し、線のかすれ等が生じ易くなる。 他方、その個数が30個を超えると、滑らかな書き味が失われ易くなるほか、ボールシート部の摩耗も進行しやすくなり、長期間使用するうちにボールの沈みによるインクの過度の流出(いわゆるインクボテ)等が避けがたくなる。 他方、インク保持の主役を担う大寸法空隙の個数の上限を、上記のように書き味保持やボールシート部の摩滅防止のために、比較的小さく押さえている関係上、寸法0.5μm以上2μm未満の空隙(以下、小寸法空隙という)は、それを補ってインク保持量を確保する役割を果たすが、その個数が20個未満になると、ボール表面のインク保持量が不足し、線のかすれ等が生じ易くなる。 他方、小寸法空隙の個数が200個を超えると、ボール表面のインク保持量が逆に過剰となり、描かれる文字や線の鮮明度が損なわれたり、細かい文字や細線の筆記が困難となったりする問題を生ずる。

    【0013】次に、本発明のボールペン用セラミックボールの第二の構成は、少なくとも表層部が、窒化珪素含有率が85重量%以上の窒化珪素質セラミックにて構成されていることを特徴とする。 このように、窒化珪素含有率の高いセラミックを使用することで強度や耐摩耗性が格段に向上し、従来の窒化珪素質セラミック製ボールペン用ボールと比較して、書き味性能の持続性を大幅に改善することができる。 また、ボールの耐化学薬品性も向上するので、インクとの長期接触による腐食摩耗も起こりにくい。

    【0014】そして、さらに本発明者らが鋭意検討した結果、上記のように窒化珪素含有率の高い窒化珪素質セラミックをボールペン用セラミックボールに採用した場合、従来見出されていなかった、以下のような新たな効果が発現することが判明した。 すなわち、ボールシート部の少なくとも前記ボールペン用セラミックボールと接する部分(もちろん全体でもよい)がFe系材料にて構成されている場合に、窒化珪素質セラミック製のセラミックボールは、継続使用により表面が適度に平滑化し、
    例えば、ボール表面にインク保持用の空隙が形成されている場合には、隣接する空隙間のボール表面部分を平滑に維持することができるので、滑らかな書き味を長く持続させることができる。 この理由としては、窒化珪素とボールシート部の金属鉄成分とが化学反応してボール表層面部にごく薄い複合化合物層が形成され、これがボールの回転に伴う摩擦により剥ぎ取られる現象が、ボールペンの継続使用に伴い繰り返され、ボール表面が次第に研磨(琢磨)されてゆく、いわゆる機械的化学的研磨作用が働いていることが推測される。 なお、この機械的化学的研磨作用には、インクの成分が関与することも考えられる。

    【0015】いずれにせよ、このような現象は、窒化珪素質セラミックにおいて特有に認められることであり、
    例えば炭化珪素質セラミックなどでは顕著ではない。 特に、高純度の窒化珪素セラミックでは低純度のものと比較して、焼結助剤に由来する粒界相が少なく、窒化珪素主相による均質な組織が形成されやすいため、前記した化学的機械的研磨によるセラミックボール表面の平滑化効果が著しい。 また、腐食に比較的弱い粒界相の量が少なくなることも、面が平滑化する上で有利に作用しているものと考えられる。 かくして本発明の第二の課題を解決することが可能となる。 すなわち、ボールの材質として窒化珪素質セラミックを採用することにより、少なくとも炭化珪素質セラミックを採用した場合よりも書き味の滑らかさを長期間持続させることが可能となる。 また、このような滑らかな書き味の確保は、当然に文字や細線等の筆記にも有利に作用する。 なお、当該第二の構成を前記した第一の構成と組み合わせることにより、筆記性能及びその持続性をさらに良好なものとすることができる。

    【0016】また、本発明のボールペン用セラミックボールの第三の構成は、少なくとも一部のものの寸法が0.5μm以上である閉気孔が内部に分散形成された多孔質窒化珪素質セラミックにて構成されたことを特徴とする。

    【0017】上記のような多孔質窒化珪素質セラミックにより構成されたボールペン用セラミックボールは、筆記使用により表層部が摩耗しても、内部に存在する閉気孔が表面に開放し、表面空隙を新たに生ずるので、長期間使用しても表面空隙分布が影響を受けにくく、ひいては、筆記性能の持続性に優れたボールペン用セラミックボールを実現できる。 また、窒化珪素質セラミックの採用により、ボールシート部がFe系材料で構成されている場合には、継続使用に伴う空隙間表面の平滑化も進行するので、滑らかな書き味の持続性にも優れる。 このような効果は、前記した第二の構成を組み合わせることで一層顕著なものとすることができる。

    【0018】なお、ボール表面におけるインク保持性を確保するため、形成されている閉気孔の少なくとも一部のものの寸法を0.5μm以上としておく必要がある。
    この場合、前記した第一の構成と組合せを図ること、すなわち表面にて開気孔化することにより空隙となった場合に、その空隙の寸法が前記した第一の構成を満たす寸法分布となるように、閉気孔の寸法分布を調整しておくことがさらに有効である。

    【0019】上記のような窒化珪素質多孔質セラミックは、例えば相対密度を80〜98%絶対密度は材料組成によっても異なるが、おおむね3.0〜3.5g/cm
    程度である)とすることができる。 相対密度が80%
    未満であるとボール強度の確保が困難となり、98%を超えると緻密化しすぎて、ボール表面におけるインク保持に適した空隙の形成量を十分に確保できなくなる。 なお、相対密度の値は、より望ましくは85〜95%とするのがよい。

    【0020】また、上記のようなセラミックボールは、
    例えば原料粉末を成形した成形体を焼成する際に、完全に緻密化する前の段階にて焼成を停止する方法、あるいは産業上採用可能な常識的な焼成時間の範囲(例えば1
    0時間程度まで)にて完全に緻密化しない温度にて焼結を行う方法等により製造できる。 また、セラミック原料粉末中に、焼成時に消失する空隙形成体(例えばカーボン粒子や高分子材料粒子)を配合して焼成する方法も採用可能である。 例えば窒化珪素質セラミックの場合、窒化珪素含有量が85重量%以上として、焼結助剤成分含有量を比較的少なく留めた材質の場合、緻密化を図るためには熱間静圧プレス法や、あるいは常圧雰囲気による一次焼成を行ってから、ガス圧雰囲気で二次焼成を行う等の2段階焼成が用いられるのが一般的である。 しかしながら、多孔質窒化珪素質セラミックを製造する場合は、10気圧以下の雰囲気にて一段階のみの焼成にて行う方法、すなわち、緻密化を図るための2段焼成工程をいわば一次焼成が終わった段階で中断させる方法が有効である。 この場合、より望ましくは、1atm以下の少なくとも窒素を含有する雰囲気下で焼成を行う常圧焼成により行うのがよい。 また、焼成温度は例えば1400
    〜1700℃の範囲で設定するのがよい。 焼成温度が1
    400℃未満では、焼結体の強度が不十分となり、逆に1700℃を超えると緻密化が著しくなって、所期の相対密度の焼結体が得られなくなる。

    【0021】なお、窒化珪素質セラミックは、窒化珪素を主体とするものであるが、その残余の成分としては焼結助剤成分があり、周期律表の3A、4A、5A、3B
    (例えばAl(アルミナなど))及び4B(例えばSi
    (シリカなど))の各族の元素群及びMgから選ばれる少なくとも1種を、酸化物換算で1〜15重量%含有させることができる。 これらは焼結体中では主に酸化物状態にて存在する。

    【0022】焼結助剤成分が1重量%未満では焼成そのものが困難となり、高強度のボールが得にくくなる。 他方、15重量%を超えると強度や靭性あるいは耐摩耗性の不足を招くほか、前述の多孔質セラミックを構成したい場合には焼結体の緻密化が進行しすぎ、適度な量の閉気孔(すなわち、表面における空隙)を形成することが困難となる。 焼結助剤成分の含有量は、望ましくは2〜
    10重量%とするのがよい。 なお、本発明において、
    「主成分」(「主体」あるいは「主に」等も同義)とは、特に断りがない限り、着目している物質においてその成分の含有率が50重量%以上であることを意味する。

    【0023】なお、3A族の焼結助剤成分としては、S
    c、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、
    Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luが一般的に用いられる。 これらの元素Rの含有量は、CeのみRO
    、他はR 型酸化物にて換算する。 これらのうちでもY、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybの各重希土類元素の酸化物は、窒化珪素質焼結体の強度、靭性及び耐摩耗性を向上させる効果があるので好適に使用される。 また、このほかに、マグネシアスピネル、ジルコニア等も焼結助剤として使用が可能である。

    【0024】また、窒化珪素質焼結部材の組織は、窒化珪素を主成分とする主相結晶粒子が、ガラス質及び/又は結晶質の結合相にて結合された形態のものとなる。 なお、主相は、β化率が70体積%以上(望ましくは90
    体積%以上)のSi 相を主体とするものであるのがよい。 この場合、Si 相は、SiあるいはNの一部が、Alあるいは酸素で置換されたもの、さらには、相中にLi、Ca、Mg、Y等の金属原子が固溶したものであってもよい。 例えば、次の一般式にて表されるサイアロンを例示することができる; β−サイアロン:Si 6−z Al 8−z (z=
    0〜4.2) α−サイアロン:M (Si,Al) 12 (O,N)
    16 (x=0〜2) M:Li,Mg,Ca,Y,R(RはLa,Ceを除く希土類元素)。

    【0025】また、前記した焼結助剤成分は、主に結合相を構成するが、一部が主相中に取り込まれることもありえる。 なお、結合相中には、焼結助剤として意図的に添加した成分のほか、不可避不純物、例えば窒化珪素原料粉末に含有されている酸化珪素などが含有されることがある。

    【0026】原料となる窒化珪素粉末はα化率(全窒化珪素中に占めるα窒化珪素の比率)が70%以上のものを使用することが望ましく、これに焼結助剤として、希土類元素、3A、4A、5A、3Bおよび4B族の元素群から選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で1〜15
    重量%、好ましくは2〜10重量%の割合で混合する。
    なお、原料配合時においては、これらの元素の酸化物のほか、焼結により酸化物に転化しうる化合物、例えば炭酸塩や水酸化物等の形で配合してもよい。

    【0027】なお、上記3つの構成のうち、材質を窒化珪素質セラミックに限定していない第一の構成については、窒化珪素質セラミック以外にも、炭化珪素質、アルミナ(酸化アルミニウム)質、ジルコニア(酸化ジルコニウム)質等のセラミックが採用可能であるが、この場合も、前述のように窒化珪素質セラミックを他の材料よりもより好適に採用することができる。

    【0028】次に、以下、本発明のセラミックボールを製造する上で好適に採用可能な方法について、さらに詳しく説明する。 本発明の第一の構成においては、ボール表面の大寸法空隙と小寸法空隙とを特有の比率に調整して形成することが求められる。 特に第三の構成のように空隙形成のための気孔が焼結体内部にまで分散形成された多孔質セラミックを製造する場合には、成形体状態で形成されている空孔の寸法分布を精密に制御し、その分散状態もなるべく一様なものにしなければならない。 そして、さらに検討を重ねた結果、成形体状態でその密度をなるべく高く、かつ一様なものとすることが、上記のような空隙あるいは気孔の分布状態を実現する上で必須であることが判明した。 しかしながら、直径わずか0.
    5〜1.4mm程度のボールペンボールを製造する場合には、上記のような空隙あるいは気孔の分布状態を得ることは、密度不均一を生じやすい従来の金型プレス成形や押出成形では非常に困難であり、冷間静水圧プレス(CIP)法を併用しても十分ではない。 また、このように小径のボールは、プレス成形により直接球状に成形することは事実上不可能であり、角状あるいは円柱状の成形体を焼成してその焼結体を研磨する方法を採用せざるを得ないが、これが製造能率や歩留まりの甚だしい低下につながることは既に説明した通りである。

    【0029】そして、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、小径の成形体の高密度及び空孔分布の均一化を図ることが可能である上、直接球状の成形体を得ることができ、焼成後の研磨等の後加工も不要化できる、また、仮に必要であっても簡略なものに留めることができるという画期的な方法、すなわち転動造粒法を創出することに成功したのである。 この方法は、造粒容器内にセラミック原料粉末を含有する成形用素地粉末を入れ、該容器内にて前記成形用素地粉末の凝集物を転がしながらこれを球状に成長させることにより球状成形体を得る転動造粒成形工程と、その球状成形体を焼成することによりボールペン用セラミックボールを得る焼成工程とを含むことを特徴とする。 この方法は、従来のプレス成形等では球形度の高い成形体を得るのがほとんど不可能であったボールペン用ボールの成形体につき、高密度かつ均質なものを極めて容易に製造することができる。 また、球状成形体を得る上での製造能率が高く、プレス成形等のように成形体に不要部分も発生しないので焼結体の研磨代も劇的に削減でき、場合によっては焼結体をそのままボールペンボールとして使用することも可能となる。

    【0030】上記のような転動造粒により、相対密度が61%以上の球状成形体を得ることが可能となる。 そして、このように密度の高い球状成形体を製造することが、第一の構成あるいは第三の構成において求められる空隙あるいは気孔の均一な分布状態を実現する上で極めて有効である。 相対密度が61%未満では、成形体中の気孔分散状態を一様なものとするのが困難となり、また、気孔寸法のばらつきも大きくなって、焼結後のボールに良好な筆記性能を付与することが困難となる。

    【0031】この場合、高密度でより均一な成形体を得るには、成形核体に液状成形媒体を主体とする液体を供給しつつ、これに成形用素地粉末を付着させることにより球状成形体を得るようにする手法を採用することが、
    成形体の高密度化を図る上で有効である。 液状成形媒体は、具体的には水あるいは水に適宜添加物を配合した水溶液などの、水系溶媒を使用することができるが、これに限られるものではなく、例えば有機溶媒を使用してもよい。 該方法によれば、成形体の表面に存在する凹凸部分に液状成形媒体と成形用素地粉末とが付着したときに、その液状成形媒体の浸透圧によって粉末粒子が密に再配列しながら付着するので、成形体の密度を上昇させることができると考えられる。 なお、このような効果を高めるには、成形体に液状成形媒体を直接吹きかけることが望ましい。 また、液状成形媒体を吹きかける工程は、成形工程(例えば転動造粒工程)の全期間にわたって行うようにしてもよいし、成形工程の一部期間(例えば最終段階のみ)にのみ行うようにしてもよい。 また、
    液状成形媒体は連続的に供給しても断続的に供給してもいずれでもよい。

    【0032】なお、転動造粒法を採用する場合、成形用素地粉末として以下のようなものを使用するとさらに効果的である。 すなわち、レーザ回折式粒度計にて測定された平均粒子径が0.3〜2μm、同じく90%粒子径が0.7〜3.5μm、さらにBET比表面積値が5〜
    13m /gである成形用素地粉末を使用する。 なお、
    本明細書では、粒子の小粒径側からの相対累積度数は、
    図12に示すように、評価対象となる粒子を粒径の大小順に配列し、その配列上にて小粒径側から粒子の度数を計数したときに、着目している粒径までの累積度数をN
    c、評価対象となる粒子の総度数をN0として、nrc=
    (Nc/N0)×100(%)にて表される相対度数nrc
    をいう。 そして、X%粒子径とは、前記した配列においてnrc=X(%)に対応する粒径をいう。 例えば、90
    %粒子径とは、nrc=90(%)に対応する粒径をいう。

    【0033】レーザ回折式粒度計にて測定した平均粒子径及び90%粒子径が上記の範囲に属し、かつBET比表面積値が上記範囲となる成形用素地粉末を使用することにより、粉末の偏り等による密度不均一や不連続境界部などの欠陥が生じにくく、結果として焼結体の不均一収縮による変形や、割れあるいは欠けによる不良発生率を大幅に減少させることができる。 レーザ回折式粒度計の測定原理は公知であるが、簡単に説明すれば、試料粉末に対しレーザ光を照射し、粉末粒子による回折光をフォトディテクタにより検出するとともに、その検出情報から求められる回折光の散乱角度と強度とから粒径を知ることができる。

    【0034】ここで、セラミック原料からなる成形用素地粉末は、図11に模式的に示すように、添加された有機結合材の働きや静電気の作用など種々の要因により、複数の一次粒子が凝集して二次粒子を形成していることが多い。 この場合、レーザ回折式粒度計による測定では、入射レーザ光の凝集粒子による回折挙動と孤立した一次粒子による回折挙動とで大きな差異を生じないため、測定された粒径が、一次粒子単体で存在するものの粒径なのか、あるいはこれが凝集した二次粒子の粒径なのかが互いに区別されない。 すなわち、該方法で測定した粒子径は、図11における二次粒子径Dを反映した値となる(この場合、凝集を起こしていない孤立した一次粒子も広義の二次粒子とみなす)。 また、これに基づいて算出される平均粒子径あるいは90%粒子径とは、いずれも二次粒子の平均粒子径あるいは90%粒子径の値を反映したものとなる。

    【0035】他方、成形用素地粉末の比表面積値は吸着法により測定され、具体的には、粉末表面に吸着するガスの吸着量から比表面積値を求めることができる。 一般には、測定ガスの圧力と吸着量との関係を示す吸着曲線を測定し、多分子吸着に関する公知のBET式(発案者であるBrunauer、Emett、Tellerの頭文字を集めたもの)をこれに適用して、単分子層が完成されたときの吸着量vmを求め、その吸着量vmから算出されるBET比表面積値が用いられる。 ただし、近似的に略同等の結果が得られる場合は、BET式を使用しない簡便な方法、
    例えば吸着曲線から単分子層吸着量vmを直読する方法を採用してもよい。 例えば、ガス圧に吸着量が略比例する区間が吸着曲線に現われる場合は、その区間の低圧側の端点に対応する吸着量をvmとして読み取る方法がある(The Journal of American Chemical Society、57
    巻(1935年)1754頁に掲載の、BrunauerとEmet
    tの論文を参照)。 いずれにしろ、吸着法による比表面積値測定においては、吸着する気体分子は二次粒子中にも浸透して、これを構成する個々の一次粒子の表面を覆うので、結果として比表面積値は、一次粒子の比表面積、ひいては図11の一次粒子径dの平均値を反映したものとなる。

    【0036】そして、上記の成形用素地粉末は、セラミック焼結体の緻密化が十分に促進され、かつ欠陥が少なく十分な強度の焼結体が得られるよう、一次粒子径を反映したBET比表面積値を5〜13m /gとある程度小さく設定する。 そして、重要な点は、二次粒子径を反映したレーザ回折式粒度計による平均粒子径あるいは9
    0%粒子径が、それぞれ、0.3〜2μmあるいは0.
    7〜3.5μmと、スプレードライ法等により得られる成形用素地粉末と比較して、1/10程度以下の小さな値に設定していることである。 これは、成形用素地粉末における二次粒子としての凝集状態ひいては局所的な粒子充填の粗密をなるべく解消することを意味し、このような粒子径の範囲の採用により、最終的に得られる成形体に粉末の偏り等が生じにくくなるのである。

    【0037】なお、成形用素地粉末の上記平均粒子径が2μmを超えるか、あるいは90%粒子径が3.5μm
    を超えると、成形体に粉末の偏り等が生じやすくなり、
    不均一収縮による焼結体の変形や、割れあるいは欠けといった不良が発生しやすくなる。 他方、上記平均粒子径が0.3μm未満、もしくは90%粒子径が0.7μm
    未満の微粉末は、調製(例えば粉砕時間)に相当の長時間を要するので、製造能力低下によるコスト高を招く。
    なお、成形用素地粉末の平均粒子径は、望ましくは0.
    3〜1μmとするのがよく、90%粒子径は、望ましくは0.7〜2μmとするのがよい。

    【0038】一方、成形用素地粉末のBET比表面積値が5m /g未満になると、一次粒子径が粗大化し過ぎて焼結の均一性が損なわれ、得られる球状焼結体に欠陥が発生して強度が低下する。 一方、BET比表面積値が13m /gを超える成形用素地粉末は、調製(例えば粉砕時間)に相当の長時間を要するので、製造能力低下によるコスト高を招く。 なお、成形用素地粉末のBET
    比表面積値は、望ましくは5〜10m /gとするのがよい。

    【0039】上記のような成形用素地粉末の調製工程は、例えば、セラミック粉末と焼結助剤粉末とを溶媒とともに混合して泥奬を調製する泥奬調製工程と、熱風流通路の中間に、セラミック又は金属にて粒状又は塊状に形成された乾燥メディアの集積体を、予め定められた空間範囲内にて流動あるいは振動可能な状態で配置し、その乾燥メディア集積体に対し熱風を通じてこれを空間範囲内で流動ないし振動させ、その流動ないし振動する乾燥メディア集積体に対して泥奬を供給することにより、
    該泥奬を乾燥メディアと混合しつつ溶媒を蒸発させる乾燥工程と、その乾燥により得られる成形用素地粉末を熱風とともに乾燥メディア集積体の下流側に導いてこれを回収する回収工程とを含むものとすることができる。

    【0040】上記方法では、乾燥メディアの集積体に泥漿が供給され、該泥奬が熱風により乾燥されて粉末となりメディアの表面に付着して粉末凝集層を形成する。 そして、熱風の流通により粉末凝集層が形成された乾燥メディアは振動ないし流動して、相互にぶつかり合い、あるいは擦れ合いを起こす。 このとき、メディア表面に付着した粉末凝集層は解砕され、凝集状態が緩和されつつ吹き飛ばされて回収される。 これにより、前記した粒子径範囲の成形用素地粉末を容易にかつ高能率で得ることができる。 なお、乾燥メディアとしては、なるべく摩耗しにくいセラミックメディアを使用するのがよく、例えばアルミナ、ジルコニア、及びそれらの混合セラミックのいずれかを主体とするものを使用すれば、仮に摩耗して成形用素地粉末中に混入しても、焼結助剤成分として機能することから混入の影響を小さくすることができる。

    【0041】上記成形用素地粉末調製工程における乾燥工程では、熱風流通路は縦に配置された熱風ダクトを含んで形成することができ、その熱風ダクトの中間に熱風の通過を許容し、乾燥メディアの通過は許容しない網等の気体流通体で構成されたメディア保持部を形成することができる。 この場合、メディア保持部上に保持された乾燥メディア集積体に対し、泥奬を上方から落下供給することができる。 また、熱風は熱風ダクト内において該乾燥メディア集積体の下側から乾燥メディアを躍動させつつ上側に抜けるように流通させることができ、乾燥後の粉末は該熱風とともに該熱風ダクトを通って下流側に配置された回収部に回収することができる。

    【0042】この方式によると、下側から吹き上げられる熱風により乾燥メディアが吹き上げられて躍動し、さらに集積体上に落下させられるというサイクルが繰り返されるので、乾燥メディア上の粉末凝集層に衝撃を効率的かつ比較的均一に加えることができる。 また、解砕された凝集粒子のうち粗大なものは熱風により吹き飛ばされず、再び乾燥メディア集積体上に戻されて引き続き解砕を受けるので、その後の成形工程で粉末偏り等の原因となる粗大な二次粒子の発生を一層生じにくくすることができる。

    【0043】なお、転動造粒においては、造粒容器内に成形用素地粉末と成形核体とを投入し、造粒容器内にて成形核体を転がしながら、該成形核体の周囲に成形用素地粉末を球状に付着・凝集させて球状成形体を得るようにすることが望ましい。 すなわち、造粒容器内にて、例えば成形用素地粉末層の上で成形核体を転がしながら、
    該成形核体の周囲に成形用素地粉末を球状に付着・凝集させて球状成形体を得るようにすることで、成形核体の周囲に成長する成形用素地粉末の凝集層の密度を格段に高めることができる上、形成される凝集層には粉末粒子のブリッジング等によるポアや、クラックといった欠陥も少なくなる。 なお、成形核体(あるいは成長中の成形体)を造粒容器内で転がす方法としては、造粒容器を回転させる方法が簡便であるが、例えば振動式バレル研磨装置と類似の原理により、造粒容器に振動を加え、その振動に基づいて成形核体を転がすようにしてもよい。

    【0044】この場合、焼成により得られるセラミックボールは、略中心を通る断面において、その中心部に、
    外層部と識別可能な核部が形成されたものとなる。 ここでいう「識別可能」とは、単に視覚的に識別可能であることのみを意味するものではなく、核部と外層部との間に差異を生じている特定の物性値(例えば密度や硬さなど)の測定により、識別を行う場合をも含む。

    【0045】こうした組織の現われる焼結体構造とすることで、ベアリング等の性能向上の鍵を握る表層部の欠陥形成割合が小さく、高密度で強度の高い球状セラミック焼結体が実現される。 具体的には、本発明の方法により製造された上記の球状成形体を焼成すれば、得られる球状セラミック焼結体は、例えば略中心を通る断面を研磨してこれを拡大観察したときに、その中心部に、成形核体に由来する核部が、高密度で欠陥の少ない凝集層に由来する外層部との間で識別可能に形成されることとなる。

    【0046】

    【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、窒化珪素質セラミックを素材とした場合を例に取り説明する。 まず、原料となる窒化珪素粉末はα率が70%以上のものを使用することが望ましく、これに焼結助剤として、希土類元素、3A、4A、5A、3Bおよび4B族の元素群から選ばれる少なくとも1種を酸化物換算で1
    〜15重量%、好ましくは2〜8重量%の割合で混合する。 なお、原料配合時においては、これら元素の酸化物のほか、焼結により酸化物に転化しうる化合物、例えば炭酸塩や水酸化物等の形で配合してもよい。

    【0047】以下、成形用素地粉末の調製方法と成形方法との一例について説明するが、前述の通りこれに限られるものではない。 図8は成形用素地粉末調製工程に使用される装置の一実施例である。 該装置において、熱風流通路1は縦に配置された熱風ダクト4を含んで形成され、その熱風ダクト4の中間には、熱風の通過を許容し乾燥メディア2の通過は許容しない気体流通体、例えば網や穴開き板等の構成されたメディア保持部5が形成されている。 そして、そのメディア保持部5上には、アルミナ、ジルコニア、及びそれらの混合セラミックのいずれかを主体とするセラミック球からなる乾燥メディア2
    が集積され、層状の乾燥メディア集積体3が形成されている。

    【0048】他方、原料は、窒化珪素粉末と焼結助剤粉末との配合物に、水系溶媒を加えてボールミルやアトライターにより湿式混合(あるいは湿式混合・粉砕)して得られる泥漿の形で準備される。 この場合、その一次粒子の大きさは、BET比表面積値が5〜13m /gとなるように調整される。

    【0049】図9に示すように、乾燥メディア集積体3
    に対し、熱風が熱風ダクト4内においてメディア保持部5の下側から乾燥メディア2を躍動させつつ上側に抜けるように流通される。 他方、図8に示すように、泥漿6
    は泥漿タンク20からポンプPにより汲み上げられ、該乾燥メディア集積体3に対して上方から落下供給される。 これにより、図10に示すように、泥漿が熱風により乾燥されて乾燥メディア2の表面に粉末凝集層PLの形で付着する。

    【0050】そして、熱風の流通により、乾燥メディア2は躍動・落下を繰り返して相互に打撃を加え合い、さらにその打撃による擦れ合いにより、粉末凝集層PLは成形用素地粉末粒子9に解砕される。 この解砕された成形用素地粉末粒子9は、孤立した一次粒子形態のものも含んでいるが、多くは一次粒子が凝集した二次粒子となっている。 該成形用素地粉末粒子9は、一定以下の粒径のものが熱風とともに下流側に流れていく(図8)。 他方、ある程度以上に大きい解砕粒子は、熱風で飛ばされずに再び乾燥メディア集積体3に落下して、メディア間でさらに粉砕される。

    【0051】こうして、熱風とともに下流側に流された成形用素地粉末粒子9は、サイクロンSを経て回収部2
    1に成形用素地粉末10として回収されている。 回収される成形用素地粉末10は、レーザ回折式粒度計にて測定された平均粒子径が0.3〜2μm、同じく90%粒子径が0.7〜3.5μm、さらにBET比表面積値が5〜13m /gのものとされる。

    【0052】図8において、乾燥メディア2の直径は、
    熱風ダクト4の流通断面積に応じて適宜設定する。 該直径が不足すると、メディア上に形成される粉末凝集層への打撃力が不足し、所期の範囲の粒子径の成形用素地粉末が得られない場合がある。 他方、直径が大きくなり過ぎると、熱風を流通しても乾燥メディア2の躍動が起こりにくくなるので同様に打撃力が不足し、所期の粒子径の成形用素地粉末が得られない場合がある。 なお、乾燥メディア2は、なるべく大きさの揃ったものを使用することが、メディア間に適度な隙間を形成して、熱風流通時のメディアの運動を促進する上で望ましい。

    【0053】また、乾燥メディア集積体3における乾燥メディア2の充填深さt1は、熱風の流速に応じて、メディア2の流動が過不足なく生ずる範囲にて適宜設定される。 充填深さt1が大きくなり過ぎると、乾燥メディア2の流動が困難となり、打撃力が不足して所期の範囲の粒子径の成形用素地粉末が得られない場合がある。 また、充填深さt1が小さくなり過ぎると、乾燥メディア2が少なすぎて打撃頻度が低下し、処理能率低下につながる。

    【0054】次に、熱風の温度は、泥漿の乾燥が十分に進み、かつ粉末に熱変質等の不具合が生じない範囲にて適宜設定される。 例えば泥漿の溶媒が水を主体とするものである場合、熱風温度が100℃未満になると、供給される泥漿の乾燥が十分進まず、得られる成形用素地粉末の水分含有量が高くなり過ぎて凝集を起こしやすくなり、所期の粒子径の粉末が得られなくなる場合がある。

    【0055】さらに、熱風の流速は、乾燥メディア2を回収部21へ飛ばさない範囲にて適宜設定する。 流速が小さくなり過ぎると、乾燥メディア2の流動が困難となり、打撃力が不足して所期の粒子径の成形用素地粉末が得られない場合がある。 また、流速が大きくなり過ぎると、乾燥メディア2が高く舞い上がり過ぎて却って衝突頻度が低下し、処理能率の低下につながる。

    【0056】こうして得られた成形用素地粉末10は、
    転動造粒成形法により球状に成形することができる。 すなわち、図1に示すように、成形用素地粉末10を造粒容器132内に投入し、図2に示すように、その造粒容器132を一定の周速にて回転駆動する。 なお、造粒容器132内の成形用素地粉末10には、例えばスプレー噴霧等により水分Wを供給する。 図5に示すように、投入された成形用素地粉末は、回転する造粒容器内に形成される傾斜した粉末層10kの上を転がりながら球状に凝集して成形体Gとなる。 転動造粒装置130の運転条件は、得られる成形体Gの相対密度が61%以上となるように調整される。 具体的には、造粒容器132の回転速度は10〜200rpmにて調整され、水分供給量は、最終的に得られる成形体中の含水率が10〜20重量%となるように調整される。 前記した種類の焼結助剤粉末を1〜15重量%の範囲内にて配合した成形用素地粉末を使用すれば、上記の条件により、成形体の密度を2.0〜2.5g/cm 程度に確保できる。

    【0057】転動造粒を行うに際しては、成形体成長を促すため、図1に示すように、成形核体50を造粒容器132内に投入しておくことが望ましい。 こうすれば、
    図5(a)に示すように、成形核体50が成形用素地粉末層10k上を転がりながら、同図(b)に示すように、該成形核体50の周囲に成形用素地粉末10が球状に付着・凝集して球状成形体80となる(転動造粒工程)。 そして、成形体の寸法が適当な大きさとなったところで、成形を停止し、その成形体80を焼結することにより、図6に示すように、セラミックボール90(例えば0.5〜2mm)が得られる。

    【0058】成形核体50は、図3(a)に示す成形核体50aのように、セラミック粉末を主体に構成すること、例えば成形用素地粉末10と類似の組成の材質にて構成することが、最終的に得られるセラミックボール9
    0に対し核体が不純物源として作用しにくいので望ましい。 しかしながら、核体成分の拡散が得られるセラミックボール90の表層部にまで及ぶ懸念のない場合は、成形核体を、成形用素地粉末の主体をなすセラミック粉末(無機材料粉末)とは別材質のセラミック粉末により構成したり、あるいは、図3(d)に示すように金属核体50dを用いたり、同図(e)に示すように、ガラス核体50e等としたりすることも可能である。 また、焼成時に熱分解あるいは蒸発により消滅する材質、例えばワックスや樹脂等の高分子材料にて核体を形成することも可能である。 この場合、得られる焼結体には、核体に対応する空隙部が形成されることがある。

    【0059】成形核体は、例えば図3(b)あるいは(c)に示すように球状以外の形状としてもよいが、
    (a)に示すように、球状のものを使用することが、得られる成形体の球形度を高める上で望ましいことはいうまでもない。

    【0060】成形核体の製造方法は特に限定されないが、セラミック粉末を主体に構成する場合は、例えば図4に示すような種々の方式を例示できる。 まず、(a)
    に示す方法では、セラミック粉末60を、ダイ51a及びプレスパンチ51b,51b(もちろん、他の圧縮方法でもよい)により圧縮成形して核体を得る方法である。 また、(b)では、原料粉末を溶融した熱可塑性バインダに分散させて溶融コンパウンド63とし、これを噴霧凝固させて球状の核体50を得る。 図示の例では、
    例えば、同軸的に配置された内ノズル61と外ノズル6
    2からなる噴霧ノズルに対し、内ノズル61内に溶融コンパウンド63を供給し、先端側の開口部から流出させながら、両ノズル61,62間の隙間65を経て不活性ガスあるいは水等の噴霧媒体を開口部から噴射することにより、溶融コンパウンド63を噴霧・凝固させるようにしている。 また、(c)は、溶融コンパウンド63を射出金型の球状のキャビティ70に射出して、球状の核体を成形する方法を示している。 さらに、(e)では、
    溶融コンパウンド63をノズルから自由落下させて表面張力により球状とし、空気中で冷却・固化させることにより核体50を得る。 また、原料粉末とモノマー(あるいはプレポリマー)及び分散溶媒からなるスラリーを、
    該スラリー混和しない液体中に液滴として分散させ、その状態でモノマーあるいはプレポリマーを重合させることにより球状成形体を得る方法もある。 なお形態は球状ではなく不定形となるが、簡便な方法として、プレス等による粉末成形体72を破砕して、その破片を核体50
    として用いることも可能である。

    【0061】一方、図2において成形用素地粉末10のみを造粒容器132内に投入して、成形体成長時よりも低速にて容器を回転させることにより粉末の凝集体を生成させ、十分な量及び大きさの凝集体が生じたら、その後容器132の回転速度を上げて、その凝集体を核体5
    0として利用する形で成形体80の成長を行ってもよい。 この場合は、上記のように別工程にて製造した核体を、敢えて成形用素地粉末10とともに容器132内に投入する必要はなくなる。

    【0062】前記のようにして得られる成形核体50
    は、多少の外力が作用しても崩壊せずに安定して形状を保つことができる。 その結果、図5(a)に示すように成形用素地粉末層10k上で転がった際にも、自重による反作用を確実に受けとめることができる。 また、図5
    (e)に示すように、転がった時に巻き込んだ粉末粒子を表面にしっかりと押し付けることができるので、粉末が適度に圧縮されて密度の高い凝集層10aを成長できるものと考えられる。 これに対し、図5(d)に示すように、核体を使用しない場合は、核体に相当する凝集体100は偶発的な要因でしか発生せず、しかも凝集度が低く軟弱なため、成形用素地粉末層10k上で転がったときに変形したり、最悪の場合は解砕されたりして、粉末の付着・凝集を起こさせるのに十分な力を発生させることができないことが多い。 その結果、成形体の成長に時間がかかるうえ、仮に成長したとしてもクラックや粉末粒子のブリッジングによる空隙など、欠陥の多いものしか得られなくなってしまう場合がある。

    【0063】なお、核体50の寸法は最小限40μm程度(望ましくは80μm程度)確保されているのがよい。 核体50があまりに小さすぎると、凝集層10aの成長が不完全となる場合がある。 また、核体が大きすぎると、形成される凝集層の厚さが不足し、焼結体に欠陥等が生じやすくなる場合があるので、その寸法を例えば0.3mm以下に設定するのがよい。

    【0064】成形核体はセラミック粉末を、成形用素地粉末のかさ密度(例えば、JIS−Z2504(197
    9)に規定された見かけ密度)よりは高密度に凝集させた凝集体を使用することが、粉末粒子の押し付け力を確実に受けとめて、凝集層10aの成長を促す上で望ましい。 具体的には、成形用素地粉末のかさ密度の1.5倍以上に凝集させたものを使用するのがよい。 この場合、
    成形用素地粉末層10k上での転がり衝撃により崩壊しない程度に凝集していれば十分である。

    【0065】なお、より安定した成形体の成長を行うためには、核体50の寸法は得るべき成形体の寸法に応じて次のように設定することが望ましい。 すなわち、図5
    (b)に示すように、成形核体50の寸法を、これと同体積の球体の直径dcにて表す一方、(もちろん、核体50が球状である場合には、その直径がここでいう寸法そのものに相当する)、最終的に得られる球状成形体の直径をdgとして、dc/dgが1/100〜1/2を満足するようにdcが設定される。 dc/dgが1/100
    未満では、核体が小さすぎて凝集層10aの成長が不完全となったり、欠陥の多いものしか得られなくなったりする懸念が生ずる。 他方、1/2を超えると、例えば核体50の密度がそれほど高くない場合には、得られる焼結体の強度が不足する場合がある。 なお、dc/dgは、
    望ましくは1/50〜1/5、より望ましくは1/20
    〜1/10の範囲にて調整するのがよい。

    【0066】例えば、成形体Gを後述の方法により焼成すれば、窒化珪素質セラミックからなる(ただし、窒化珪素質セラミック以外の材質以外の核体を用いた場合に、その核体対応領域が窒化珪素質セラミック以外の材質となることはいうまでもない)ボールを得ることができる。 そして多孔質セラミックボールを得たい場合に、
    焼成は、窒素を含む10気圧以下の常圧又はガス圧により、非酸化性雰囲気下にて1400〜1700℃で行い、焼結体相対密度が80〜98%となるように行う。

    【0067】転動造粒法により作られた成形体は、相対密度が61%以上に高められており、しかも転がりながら全面が略均等に圧縮されていることから、気孔の分布が一様で、かつ比較的大寸法の気孔と同じく小寸法の気孔とがバランスよく形成されたものとなる。 そして、この成形体を上記のように完全に緻密化しない条件にて焼成することにより、図13に示すように、成形体中に形成されていた気孔に由来する閉気孔91,92が内部に分散形成された多孔質のセラミックボール90が得られる。 これらの気孔91,92の一部はボール90の表面に開放して表面空隙を形成するとともに、その寸法分布として、ボール表面の50μm×50μmの領域当たりに、2〜10μmの比較的大きな空隙93が5〜30
    個、また、0.5〜2μmの比較的小さな空隙94が2
    0〜200個という特有の比率を有したものが得られる。

    【0068】なお、転動造粒法により得られた球状成形体80を焼成して得られるセラミックボール90は、図6に示すように、略中心を通る断面を研磨してこれを拡大観察したときに、その中心部に、成形核体に由来する核部91が、凝集層に由来する高密度で欠陥の少ない外層部92との間で識別可能に形成されることとなる。 研磨された断面において、この核部91は、外側部との間に明るさ及び色調の少なくともいずれかにおいて目視識別可能なコントラストを呈する場合がある。 これは、外層部92を構成するセラミックの密度ρeが、核部91
    を構成するセラミックの密度ρcと異なるためであると推測される。

    【0069】なお、図5(b)に示すように、成形核体50の直径dcが、球状焼結体90の直径をdgとして、
    dc/dgが1/100〜1/2(望ましくは1/50〜
    1/5、より望ましくは1/20〜1/5)の範囲にて調整される場合、図6において焼結体90の断面組織はたとえば以下のようなものとなる。 すなわち、核部91
    (核体として、焼成時に熱分解あるいは蒸発により消滅する材質、例えばワックスや樹脂、高分子材料にて構成されたものを使用した場合には、核部91は中空部となる)の寸法をこれと同面積の円の直径Dcにて表す一方、セラミック焼結体の直径をDgとしたときに、Dc/
    Dgが1/100〜1/2(望ましくは1/50〜1/
    5、より望ましくは1/20〜1/10)を満足する組織を呈するようになる。 Dc/Dgが1/50未満では、
    外層部92のもととなる凝集層10a(図11)に欠陥が生じやすくなり、強度不足等につながる場合がある。
    他方、1/5を超えると、例えば核体50の密度がそれほど高くない場合には、焼結体90の強度が不足する場合がある。 なお、Dc/Dgは、より望ましくは1/20
    〜1/10の範囲にて調整するのがよい。

    【0070】セラミックボール90において核部91と外層部92との間に目視識別可能なコントラストが生ずる状態として、例えば、明るさあるいは色調の差異が球の半径方向に形成され、周方向には形成されていない状態を例示できる。 具体的な態様として、研磨された断面において外側部に、核部91を取り囲む層状パターン9
    3が同心的に形成されている場合がある。

    【0071】これは、転動造粒法を採用した場合に生じうる特徴的な組織(当然に、研磨後のセラミックボールにも引き継がれる)の一つであるが、形成原因は以下のように推測できる。 すなわち、図5(a)に示すように成形体80は、成形用素地粉末層10k上を転がりながら凝集層10aを成長させてゆくが、転動造粒の継続中において、成形体80は常に成形用素地粉末層10k上に存在するのではない。 すなわち、造粒容器の回転に伴う粉末の崩的な流動により、成形用素地粉末層10k
    の下側までくると成形用素地粉末層10k内に潜り込み、造粒容器の壁面に連れ上げられて成形用素地粉末層10kの上側へ運ばれ、再び成形用素地粉末層10k上で転がり落ちる。 成形用素地粉末層10k内へ潜り込んだときは、周囲を粉末にて押さえ込まれ、転がり落下による衝撃が比較的加わりにくくなって、粉末粒子は比較的ゆるく付着する。 これに対し、成形用素地粉末層10
    k上で転がる際には、転がり落下による衝撃が加わるほか、水分等の液状噴霧媒体Wの噴霧も受けやすく、粉末は堅く締まり易くなる。 そして、成形用素地粉末層10
    k上での転がりと、成形用素地粉末層10k内への潜り込みとが周期的に繰り返されることにより粉末の付着形態も周期的に変化するので、付着する粒子による凝集層10aには半径方向の疏密が生じ、これが焼成後にも微妙な密度等の差となって表れる結果、層状パターンが形成されるものと考えられる。 例えば、上記の層状パターンは、同心円弧状部分と、それよりも高密度の残余部分とが半径方向に交互に積層することにより形成されたものになると考えられる。

    【0072】なお、図7は、窒化珪素粉末を用いてスプレードライ法により球状の成形核体50を作り、転動造粒法によりその周囲に凝集層を形成して成形体とした後、これを1200℃の常圧窒素雰囲気中にて焼成して得られたセラミックボールの破断面の光学顕微鏡観察画像である。 成形体の相対密度は70%であり、セラミックボール(焼結体)の相対密度は約90%である(観察面は酸化鉄により着色を施している)。 中心部に、成形核体50に対応する円形の領域が明瞭に観察される。 また、その周囲には同心円的な層状パターンが観察され、
    さらに、その層状パターンの領域を拡大観察したところ、寸法1μm以上のものを相当する含む多数の閉気孔が内部に分散形成された多孔質窒化珪素質セラミックとなっていることが確認できた。

    【0073】さて、以上のような工程により得られた球状焼結体90は、寸法調整のための研磨を施して、ボールペン用ボールとして使用できる。 以下、ボールペンの製造工程について説明する。 まず、図14に示すように素材となる線材100、例えばステンレス鋼(加工性を考慮すれば、SUS430等のフェライト系、あるいはSUS304等のオーステナイト系のもの)、あるいはその他の耐食性Fe系材料からなる線材100を、鍛造型101により、ホルダ概略形状を有した一次加工体1
    02に加工する。 一次加工体102は先端側にボールシート部形成用のテーパ部102bが形成されるとともに、軸線方向中間部にはインク軸を係止するための鍔部102aが形成されている。

    【0074】図15に示すように、その一次加工体10
    2の後端側からドリルDRによりインク誘導孔103を軸線方向に形成する。 このインク誘導孔103は、先端に向かうほど段階的に縮径する形状とされる。 また、テーパ部102aが形成された先端側にもドリルDRにより、インク誘導孔103に連通する座繰り部102e
    (底面102dがテーパ面とされる)を形成する。 そして、図16に示すように、座繰り部102eの底面10
    2dに、放射状のインク溝106を、刃Bを用いたブローチ加工により形成する。 こうして、図17(a)に示すように、座繰り部102eがインク溝106を有するボールシート部107となり、一次加工体102はホルダ105となる。 なお、ボールシート部107の内面は、ロッド状の治具Rによりバリ取り等の仕上げ加工が施される。 なお、ホルダ105は、金属粉末をバインダとともに混練したコンパウンドを射出成形し、これを脱バインダ後焼結する金属射出成形法により製造してもよい。

    【0075】次に、図17(b)に示すように、ホルダ105のボールシート部107内に、先のセラミックボール90に基づくボールペン用セラミックボール95を圧入パンチIPにより圧入し、さらに同図(c)に示すように加締めパンチJPによりホルダ外周面先端部に抜け止め用の加締め部102hを形成することで、図18
    (a)に示すように、ボールペン用ペン先部110が完成する。 このペン先部110の後端部にインク軸IJを挿し込み、さらにペン軸ケース111を組み付けてボールペン120が完成する。

    【0076】ボール95を紙等に押し付けて転がすと、
    インク誘導孔103を介してインク溝106に導かれたインクINKがボール表面に導き出される。 このとき、
    図13に示す空隙93,94はインク保持孔として機能する。 ボールペン用セラミックボール95は、内部にまで閉気孔91,92が一様に分散形成されていることから、使用に伴い摩耗しても内部の閉気孔が新たに表面に開放して新たなインク保持用の空隙を生ずるので、空隙の形成密度や寸法分布が影響を受けにくく、良好な筆記性能を長期間維持できる。 また、空隙の寸法分布が、ボール95の表面の50μm×50μmの領域当たりに、
    2〜10μmの空隙93が5〜30個、また、0.5〜
    2μmの空隙が20〜200個という特有の比率に調整されていることで、文字や細線等を明瞭に表現するために必要十分なインク流出量と滑らかな書き味とが両立され、かつボールシート部107の摩耗も有効に抑えることができる。

    【0077】本発明の効果を確認するために、以下の実験を行った。 素材粉末として、窒化珪素粉末(窒化珪素純度98重量%、平均粒子径0.5μm、90%粒子径1.0μm、BET比表面積値10m /g)と、焼結助剤成分として、イットリア粉末(平均粒子径0.6μ
    m、90%粒子径1.0μm、BET比表面積値10m
    /g)を用意した。 なお、平均粒子径はレーザ回折式粒度計(堀場製作所(株)製、品番:LA−500)
    で、BET比表面積値はBET比表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)製、マルチソープ12)でそれぞれ測定した。

    【0078】上記の素材粉末を組成比が、窒化珪素粉末が100重量部、イットリア粉末が4重量部、アルミナ粉末が4重量部となるように配合し、その配合物100
    重量部に溶媒としての純水50重量部と、適量の有機結合剤とを加えてアトライターミルにより30時間混合を行い、成形用素地粉末の泥漿を得た。 泥漿は、図8に示す装置により成形用素地粉末とした。 具体的には乾燥メディアとしては直径2mmのアルミナ球を用い、その他の条件を以下の通り設定した: ・乾燥メディア保持部5が形成されている熱風ダクト4
    の内径R2:約200mm; ・乾燥メディア2の充填深さt1:約150mm; ・熱風の温度:160℃ ・熱風の流速:3m/s。 なお、得られた成形用素地粉末の50%粒子径は0.6
    μm、同じく90%粒子径は1.0μm、BET比表面積値は10m /gであった。

    【0079】次に、この成形用素地粉末を転動造粒することにより、直径約1.5mmの球状成形体を作製した。 得られた球状成形体は、常圧窒素雰囲気下にて14
    00℃、1500℃、1600℃及び1700℃で3時間焼成した後、研磨を施すことにより直径約1mmのボールを得た。

    【0080】得られたボールの直径から体積を算出する一方、その重量W(単位:g)を体積にて除することにより密度を求め、前記した真密度にて除することにより相対密度を求めた。 また、球体研磨面の組織を走査型電子顕微鏡(SEM:倍率1000倍)にて観察するとともに、その観察画像から、50μm×50μmの視野内における、寸法2μm以上10μm以下の空隙及び寸法0.5μm以上2μm未満の空隙の個数を測定した。 なお、図19は、各ボール表面の光学顕微鏡観察画像である((a)1400℃、(b)1500℃、(c)16
    00℃,(d)1730℃)。 画像中の枠線は、50μ
    m×50μmの視野を表す。

    【0081】また、得られたボールは図18に示すボールペンに組み込んで、水性インクによる直線線描による筆記試験を行った。 試験は、1000mを筆記した後での、描いた線の状態を目視観察することにより行った。
    なお、判定は、 「○」:線のかすれ等もほとんどなく、良好な線描状態; 「×」:線にかすれが発生; により行った。 以上の結果を表1に示す。

    【0082】

    【表1】

    【0083】以上の結果から、寸法2μm以上10μm
    以下の空隙が5〜30個、寸法0.5μm以上2μm未満の空隙が20〜200個のボールを使用したものは、
    良好な結果が得られていることがわかる。

    【図面の簡単な説明】

    【図1】転動造粒の工程説明図。

    【図2】図2に続く工程説明図。

    【図3】成形核体をいくつか例示して示す説明図。

    【図4】成形核体の製造方法をいくつか例示して示す説明図。

    【図5】転動造粒成形工程の進行過程を説明する図。

    【図6】転動造粒法により製造されたボールの断面構造を示す模式図。

    【図7】ボールの断面組織の一例を示す光学顕微鏡観察画像。

    【図8】成形用素地粉末の製造装置の一例を概念的に示す縦断面図。

    【図9】図1の装置の作用説明図

    【図10】図2に続く作用説明図。

    【図11】一次粒子径と二次粒子径との概念を説明する図。

    【図12】相対累積度数の概念を示す説明図。

    【図13】セラミックボールにおける気孔あるいは空隙の形成形態の一例を示す模式図。

    【図14】ボールペンの製造工程の一例を示す説明図。

    【図15】図14に続く説明図。

    【図16】図15に続く説明図。

    【図17】図16に続く説明図。

    【図18】本発明のボールペンの一例を示す説明図。

    【図19】本発明の効果確認実験に使用したボール表面の光学顕微鏡観察画像。

    【図20】空隙寸法の定義を説明する図。

    【符号の説明】

    10k 成形用素地粉末 50 成形核体 90 ボール(球状焼結体) 91,92 閉気孔 93,94 空隙 95 ボールペン用セラミックボール 107ボールシート部 120 ボールペン

    フロントページの続き (51)Int.Cl. 7識別記号 FI テーマコート゛(参考) C04B 35/58 102Y Fターム(参考) 2C350 GA03 HA09 HA12 NC01 NC02 NC14 NE01 4G001 BA03 BA09 BA32 BB03 BB09 BB32 BC11 BC13 BC22 BC71 BD12 BE15 BE34 4G019 FA11 FA13 4G030 AA12 AA36 AA52 CA07 CA09 GA04 GA19 GA32

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