セメント材料の製造方法

申请号 JP2017501224 申请日 2015-07-17 公开(公告)号 JP2017522256A 公开(公告)日 2017-08-10
申请人 テクニシュ ユニベルシテイト デルフトTechnische Universiteit Delft; テクニシュ ユニベルシテイト デルフトTechnische Universiteit Delft; 发明人 ヘンドリク マリウス ヨンケルス; ヘンドリク マリウス ヨンケルス; レネー マリア モース; レネー マリア モース;
摘要 本発明は、セメント出発原料、修復剤及び繊維状補強材料を混合するステップを含むセメント材料の製造方法であって、修復剤が細菌材料を含み、繊維状補強材料が10〜1500kg/molの範囲から選択される平均分子量を有する生分解性ポリマーを含み、繊維状材料が、5〜750μmの範囲から選択される直径を有し、かつ50μm〜150mmの範囲から選択される長さを有する繊維を含む、製造方法を提供する。
权利要求

セメント出発原料、修復剤及び繊維状補強材料を混合するステップを含む、セメント材料の製造方法であって、前記修復剤が細菌材料を含み、前記繊維状補強材料が10〜1500kg/molの範囲から選択される平均分子量を有する生分解性ポリマーを含み、前記繊維状材料が、5〜750μmの範囲から選択される直径を有し、かつ50μm〜150mmの範囲から選択される長さを有する繊維を含む、製造方法。生分解性ポリマーがポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、及びポリ乳酸(PLA)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。繊維状材料が、10〜100μmの範囲から選択される直径を有し、かつ0.5mm〜150mmの範囲から選択される長さを有する繊維を含む、請求項1又は2に記載の方法。繊維状材料が50μm〜500μmの範囲から選択される長さを有する繊維を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。細菌材料が細菌、凍結乾燥された細菌及び細菌の細菌胞子からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。細菌が好気性細菌からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。細菌が嫌気性細菌からなる群から選択される、請求項5又は6に記載の方法。細菌がアルカリ性媒体中でリン酸塩又は炭酸塩の沈殿物を形成し得る細菌からなる群から選択される、請求項5〜7のいずれかに記載の方法。細菌がプラノコッカス、バチルス及びスポロサルシナからなる属の群から選択される、請求項5〜8のいずれかに記載の方法。細菌が脱窒細菌の群から選択される、請求項5〜9のいずれかに記載の方法。修復剤が(1)ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、硝酸カルシウム、炭化物、脂肪酸、アミノ酸、乳酸塩、マレイン酸塩、ギ酸塩、糖、ピルビン酸塩及びフィチン酸塩からなる群から選択される1又は2以上の化合物並びに(2)酵母抽出物、ペプトン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩及び微量元素からなる群から選択される細菌増殖因子を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。繊維が繊維のテキスタイルとして提供される、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。請求項1〜12のいずれかに記載の方法によって得られるセメント材料。(a)セメント、(b)スラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1又は2以上、(c)任意に高可塑剤、(d)修復剤、並びに(e)繊維状補強材料を含むセメント材料であって、前記修復剤が細菌材料を含み、前記繊維状補強材料が10〜1500kg/molの範囲から選択される平均分子量を有する生分解性ポリマーを含み、前記繊維状材料が、5〜750μmの範囲から選択される直径を有し、かつ50μm〜150mmの範囲から選択される長さを有する繊維を含み、前記修復剤の(a)セメント、並びに(b)スラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1又は2以上に対する重量比が0.2:100〜10:100の範囲から選択され、繊維状補強材料の(a)セメント、並びに(b)スラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1又は2以上に対する重量比が0.1:100〜10:100の範囲から選択される、セメント材料。水をさらに含み、水とバインダーの比が15:100〜65:100の範囲から選択される、請求項14に記載のセメント材料。建築要素の製造方法であって、請求項13〜15のいずれかに定義されるセメント材料を準備するステップと、所定の場所において又は所定の型内で前記セメント材料を硬化させるステップとを含む、製造方法。硬化したセメント材料を含む建築要素であって、前記セメント材料が細菌材料並びに、(i)生分解性ポリマーを含む繊維状補強材料及び(ii)生分解性ポリマーを含む前記繊維状補強材料の細菌変換の変換生成物の1又は2以上をさらに含む、建築要素。

说明书全文

本発明は、セメント材料の製造方法、並びにそのようなセメント材料をベースとする(硬化した)建築要素に関する。本発明はまた、そのような建築要素の製造方法に関する。

コンクリートの自己亀裂修復は当技術分野において認知されてきた。主として、典型的には0.05〜0.1mmの範囲の幅のミクロ亀裂は、特に乾燥/湿潤サイクルを繰り返した場合に完全にシールされることが観察されている。この自己修復の機構は、主としてコンクリートマトリックス中に存在する反応しなかった、又は部分的に反応したセメント粒子の二次和による。入れ替わる湿潤及び乾燥のサイクルのもとに、毛管によって水がミクロ亀裂の中に繰り返し引き込まれ、そのため、ケイ酸カルシウム水和物及び水酸化カルシウム(ポートランダイト)の形成による水和されたセメント粒子が膨張する。亀裂の幅が小さければ、これらの反応生成物は亀裂を完全にシールすることができる。より大きな亀裂は、通常は限定された量で存在する未反応のセメント粒子によって部分的にのみ満たすことができる。後者の場合には、亀裂の表面に水和生成物の薄い層が形成されるのみであるので、修復活性は不十分である。二次水和の他に、一般に用いられるコンクリートの亀裂シーリング能には炭酸化のプロセスも寄与することがある。大気中の二酸化炭素(CO2)が侵入してコンクリートマトリックス中に存在する水酸化カルシウム(ポートランダイト)粒子と反応し、カルサイト(calcite)、アラゴナイト(aragonite)及びバテライト(vaterite)等の種々の炭酸カルシウム鉱物を生じるので、この反応も膨張的である。

耐久性の視点から、特に新たに形成された表面亀裂を迅速にシールすることは重要である。それは、このプロセスによって、水及びその他の浸食性化学物質がコンクリートマトリックス中に浸入することを実質的に遅らせ、それにより材料の早期劣化を防止することができるからである。硫酸塩、塩化物及び酸等のいくつかの化学物質がコンクリートマトリックスの劣化及び埋め込まれた鉄筋の腐食を顕著に促進し、材料の性能及び耐久性に深刻な脅威を生じることが知られている。セメント材料の自己修復能を改善する1つの可能性は、出発混合物の水/セメント比を低下させることによる。混合物中のセメント又はバインダーの相対量を実質的に増加させることによって、自己修復性バッファーが形成される。即ち材料マトリックス中に存在する反応しなかった又は部分的にのみ反応した大量のバインダー粒子が存在するようになる。そのような水とバインダーの比が低いコンクリートの種類の典型的な例は、高強度又は高性能コンクリートである。最近の研究が示すように、そのようなコンクリートはまさに、水とセメントの比が高いという特徴を有する通常のコンクリートに比べて、優れた亀裂シーリング能を有している。

しかし、環境の観点からは、後者のコンクリートの種類(即ち通常の種類)の方が、コンクリート体積あたりに用いるセメントが少ないので好ましい。コンクリート中のセメント量が少ないほど、大気中へのCO2の放出に関する環境への影響が小さい。高強度コンクリートによって通常のコンクリートよりも細い構造物を建築することができ、それにより必要なコンクリートの体積は少なくなるが、材料マトリックス中の水和していない又は部分的に水和したセメント粒子の割合がもともと高いので、用いるセメントの全量は通常のコンクリートよりも依然としてかなり多い。したがって、セメントよりも潜在的に安価で持続可能性のある材料をベースとするコンクリートにおける自己修復機構の開発は、経済及び環境の両方にとって有益であろう。

細菌、特に酸産生細菌は、コンクリートにとっては有害な生物であると従来考えられてきたが、最近の研究によって、尿素分解性細菌及びその他の種類のカルサイト産生細菌等の特定の菌種が、コンクリートの表面亀裂を修復するためのツールとして実際に有用であり得ることが示された。ある研究において、細菌が外部から人手によってコンクリートの表面に適用された。バチルス(Bacillus)属の菌種は、その胞子、即ち特化した厚壁の休眠細胞が乾燥条件下で200年を超えて生存していることが示されたので、有望な内在性因子であると考えられる。そのような細菌は、想定される自己修復システムの2つの成分のうちの1つを含むことになろう。

亀裂の修復のためにはフィラー材料が必要であり、細菌は適切な有機成分を代謝変換することによってそれを産生することができる。代謝によって産生されたフィラー材料の本質はカルサイト等のバイオ鉱物であろう。以前報告されたように、これらの炭酸カルシウム系鉱物は比較的密度が高く、亀裂をブロックすることができ、それにより水の浸入を効果的に阻害することができる。自己修復性材料の開発における1つの特別の困難は、材料マトリックス中に十分な修復剤を組み込む必要があることである。修復能、即ち潜在的に充填され得る亀裂の体積は存在する前駆体材料の量に直接関連する可能性があるので、有意な修復の可能性を得るためには大量の材料を用意する必要がある。マトリックスに組み込まれる細菌は触媒として機能し、したがって必要量は限られているが、有意な修復能が必要な場合に実質的な体積を占めるものは、典型的には、修復システムの第2の成分である鉱物前駆体化合物である。特に大きな亀裂を完全にシールするには、嵩高い内部貯留部又はその代わりに固有の輸送機構が必要である。コンクリートにおいては、後者は通常存在する水で満たされた連続毛管(capillary)細孔系によって提供され得る。鉱物前駆体化合物はマトリックス細孔水中に溶解した状態で存在し、特定の内部修復剤を含有する貯留部が必要な場合に起こると思われる材料の強度特性への影響はない。しかしいずれにせよ、組み込まれる細菌及び鉱物前駆体化合物は許容できる程度にまでしかコンクリートの強度特性を低下させるべきではない。

欧州特許出願公開第2082999号明細書にはセメント系材料及び構造における修復剤が記載されている。該特許において前記修復剤は有機化合物及び/又は細菌担持多孔性粒子を含み、該多孔性粒子は膨張粘土又は焼結フライアッシュを含む。さらに、前記多孔性粒子は未処理の球、前記未処理の球から誘導された破壊され又は破砕された粒子であり、0.4〜2gcm−3の比密度(specific density)を有する。

欧州特許出願公開第2082999号明細書

従来技術のセメント材料には亀裂の形成という問題がある。したがって、本発明の一態様は、好ましくは亀裂の形成の問題がなく、及び/又は亀裂を自己修復するセメント材料を製造する代替の方法及び/又は(そのようなセメント材料からの)代替の建築要素を提供することである。

強度及び/又はその他の所望の特性(液体不透過性等)を維持するために考えられることは、より小さな亀裂を修復し得る細菌を修復剤の形態等でセメント材料に添加することである。したがって、本発明の一態様は、セメント材料の出発原料に細菌材料を提供することである。さらに驚くべきことに、生分解性ポリマー材料を添加した場合、この生分解性材料は細菌が基質として使用できると思われる。例えば個別の繊維として(本明細書においては繊維粒子としても表される)又はテキスタイル(textile)(例えばヤーン(yarn)、ファブリック(fabric))として生分解性繊維状補強材を添加することによって、驚くべきことに、硬化の第1段階における繊維は強固なセメント材料を得るための補助となるようである場合がある。セメント材料の形成又は固化の後、例えばセメント材料を製造し、これを硬化し始めてから数週間以内に、繊維は強度及び/又はその他の所望の特性の実質的な損失なしに分解することができるようである。亀裂の形成は経時的に起こるプロセスであるので、生分解性ポリマー材料は細菌によって亀裂の修復のために消費されるであろう。したがって有利なことに、繊維の形態の生分解性ポリマーは、最初は硬化を補助し、次いでセメント材料の維持をも補助する。したがって、1つの実施形態においては、繊維は繊維のテキスタイルとして提供される。さらに別の実施形態においては、繊維は(本明細書に示す大きさを有する)繊維粒子として提供される。繊維のテキスタイルは、例えばヤーン又はファブリックを意味する場合がある。テキスタイルは織布又は不織布であってよい。本明細書において、「テキスタイル」という用語は、特に複数の個別の繊維を含む凝集した、又は織られた単位を意味する(この個別の繊維は5〜750μmの範囲から選択される(平均)直径を有し、50μm〜150mmの範囲から選択される(平均)長さを有する)。1つの実施形態においては、テキスタイルはテキスタイルパッチとして提供される。

したがって、第1の態様において本発明はセメント出発原料、修復剤及び繊維状補強材料を混合するステップを含むセメント材料の製造方法であって、修復剤が細菌材料を含み、繊維状補強材料が特に10〜1500kg/molの範囲から選択される平均分子量を有する生分解性ポリマーを含み、繊維状材料が特に5〜750μmの範囲から選択される(平均)直径を有し、50μm〜150mmの範囲から選択される(平均)長さを有する繊維を含む、方法を提供する。

さらにさらなる態様においては、本発明はまた、(a)セメント、(b)スラグ(slag)、アッシュ(ash)、石灰石(limestone)石灰石及び砂の1又は2以上、(c)任意に高可塑剤(super plastisizer)、(d)修復剤、並びに(e)繊維状補強材料を含むセメント材料であって、前記修復剤が細菌材料を含み、繊維状補強材料が10〜1500kg/molの範囲から選択される平均分子量を有する生分解性ポリマーを含み、前記繊維状材料が5〜750μmの範囲から選択される直径を有し、50μm〜150mmの範囲から選択される長さを有する繊維を含み、前記修復剤の(a)セメント、並びに(b)スラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1若しくは2以上に対する重量比が0.2:100〜10:100の範囲から選択され、並びに/又は繊維状補強材料の(a)セメント、並びに(b)スラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1若しくは2以上に対する重量比が0.1:100〜10:100の範囲から選択される、セメント材料を提供する。さらに、本発明は特に本明細書に記載した方法によって得られるセメント材料を提供する。

別の態様においては、本発明は建築要素の製造方法であって、本明細書に定義されるセメント材料を準備するステップと、所定の場所において又は所定の型内でセメント材料を硬化させるステップとを含む、方法を提供する。

さらに、本発明は硬化したセメント材料を含む建築要素であって、セメント材料が細菌材料並びに、(i)生分解性ポリマーを含む繊維状補強材料、及び(ii)生分解性ポリマーを含む繊維状補強材料の細菌変換の変換生成物の1又は2以上をさらに含む、建築要素を提供する。

本発明は、モルタル及びコンクリート等のセメント材料中において二重の機能性を特徴とする分解性繊維状ポリマーを用いる。さらなる実施形態においては、本発明は二重の機能を特徴とする生分解性ポリマーを含む繊維状補強材料を用いる。第1の機能性は補強によって得られる構造一体性に寄与し、初期の抑制された収縮状況における亀裂の幅を制御する。第2の機能性は経時的なポリマーの分解によって提供され、それにより分解生成物は亀裂シール材料への細菌の代謝変換のための前駆体化合物として作用することができる。このようにして、液密性等の機能性を回復することができる。応力は剥離又はクラッキングの原因となる。繊維状補強材を組み込むことによって、制限された幅を有する多くのクラックが生じるが、これらはより容易に閉鎖される。提案した分解性繊維状補強材料が二重の機能を発揮し、特性を最適に利用することを可能にすることが顕著な利点である。これは初期には現行の繊維として構造的に用いられる。その構造的な目的を果たした後には、この材料は第2の機能目的、即ち細菌変換のための化合物として利用可能になる。このプロセスにおいて亀裂の壁に鉱物が沈着し、水又は有害物質の浸入を防止する。

本発明は1つの方法で2つの課題を解決し、その結果、コストを低下させ、セメントエレメントの使用期間における維持及び修復を減少させる。提案した分解性繊維状補強材が生物由来であることもさらなる利点である。それは、現在一般に用いられている材料が合成品であり、それゆえ持続可能性が低いためである。本発明はシステムを改変することなく2つの機能を結合し、生物学的な選択肢を提供しているので、本材料は現在用いられている繊維状補強材の一部を直接置き換えることができる。提案した分解性繊維状補強材はセメント修復製品に応用することができる。さらに、これは現在鉄で作られている亀裂幅制限補強材を(部分的に)置き換えることができる。

好適な生分解性ポリマーとしては、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロキシブチレート、キトサン、ヒアルロン酸、及びヒドロゲルの1又は2以上が挙げられる。別の好適な生分解性ポリマーとしては、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)及びポリ(エチレングリコール)の1又は2以上が挙げられる。一般に、大部分の脂肪族ポリエステルは、潜在的に加水分解可能なエステル結合を有しているので、生分解性である。したがって、好適な生分解性ポリマーとしては、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA,polyhydroxyalkanoate)(ポリ−3−ヒドロキシブチレート(PHB,poly-3-hydroxybutyrate)等)、ポリヒドロキシバレレート(PHV,polyhydroxyvalerate)、ポリヒドロキシヘキサノエート(PHH,polyhydroxyhexanoate)、ポリ乳酸(PLA,polylactic acid)、ポリブチレンスクシネート(PBS,polybutylene succinate)、ポリカプロラクトン(PCL,polycaprolactone)、ポリ無水物、ポリビニルアルコール、デンプン又はデンプン誘導体、セルロース又はセルロースエステル(セルロースアセテート及びニトロセルロース等)及びセルロース誘導体(セルロイド)、海藻、木材、大豆及びミルク等からのタンパク質又はセルロース誘導ポリマーの1又は2以上も挙げられる。特定の実施形態においては、生分解性ポリマーはポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、及びポリ乳酸(PLA)からなる群から選択される。別の実施形態においては、繊維は天然の海藻セルロース系繊維(SeaCell(商標)等)、大豆タンパク質繊維(「Soy Silk」)、木材セルロース繊維(Tencel(登録商標)等)、及びミルクタンパク質繊維(「Milk Wool」)の1又は2以上等の、天然羊毛の代替繊維の群から選択される。さらに別の特定の実施形態においては、生分解性ポリマーはアルギン酸塩、キチン及びキトサンの1又は2以上等の多糖類からなる群から選択される。特に、生分解性ポリマーはアルギン酸塩を含んでよい。生分解性材料はそれ自体で、例えばなかんずくアルカリ性条件の影響下で分解する場合があり、及び/又は細菌によっても分解され得る。生分解性ポリマー、特にその分解生成物(ラクテート、スクシネート、ヒドロキシブチレート等のモノマー等)は、細菌が亀裂の中の構造物を成長させるための基質として使用できる。したがって、生分解性ポリマーは特にアルカリ性条件下で生分解性である。

もちろん、2又は3以上の異なった生分解性ポリマーの組合せを応用することができる。さらに、一般の生分解性ポリマーは分子量分布を有する。上記のように、生分解性ポリマーは特に10〜1500kg/mol(即ち10〜1500kDa)の範囲から選択され、さらには特に100〜1000kg/mol(即ち100〜1000kDa)の範囲の(重量)平均分子量を有する。平均分子量が小さいと分解が速すぎる生成物をもたらし、十分な強度が得られない場合があり、一方平均分子量が大きすぎると繊維の分解が遅くなりすぎる場合がある。さらに、繊維状材料は例えば粘土、ゼオライト、モンモリロナイト、フラックス等で補強することができる。特に、繊維状補強材料は少なくとも10wt%、少なくとも20wt%等、少なくとも40wt%等、50〜100wt%等の生分解性ポリマーを含み得る。1つの実施形態においては、繊維状補強材料は生分解性繊維を含む。さらなる実施形態においては、繊維状補強材料は生分解性コーティングを含む。特に、1つの実施形態においては、繊維状補強材料は100%の生分解性ポリマーを含む。したがって、1つの実施形態においては、繊維は生分解性ポリマーでコーティングされた繊維のように非生分解性材料と生分解性ポリマーとを含んでよく、別の実施形態においては、繊維は実質的に生分解性ポリマーからなる。後者の実施形態においては、繊維は細菌によって全体に消費され得る。

さらに上記のように、繊維状材料は特に5〜750μmの範囲から選択される(平均)直径を有し、50μm〜150mmの範囲から選択される(平均)長さを有する繊維を含む。繊維は単分散の寸法分布を有する必要はない。寸法は(幅広い)分布を有してよい。しかし、特に(数)平均寸法は本明細書に示す大きさに適合する。特定の実施形態においては、繊維状材料は10〜100μmの範囲から選択される(平均)直径を有し、0.5mm〜150mmの範囲から選択される(平均)長さを有する繊維を含む。本明細書に示したものより大きな寸法では製造プロセス及び/若しくは硬化プロセスにおいて問題が生じる場合があり、並びに/又は分解が遅すぎるようになる場合がある。寸法が小さすぎると初期の硬化への影響が小さすぎ、及び/又は分解が速すぎるようになる場合がある。1つの実施形態においては、アスペクト比(繊維の長さ/繊維の直径)は30〜250の範囲から選択される。

さらにさらなる特定の実施形態においては、繊維状材料は50μm〜500μmの範囲から選択される(平均)長さを有する繊維を含む。そのようなミクロ繊維は、セメントペースト等の微細なフィラー材料(125μm以下)を特徴とするセメント混合物に特に有利であり得る。しかし4mm以下の凝集物を特徴とするモルタル(例えば砂をも含む)については、繊維は0.5〜20mmの範囲から選択される典型的な(平均)長さを有する。4mm超の凝集物を特徴とするコンクリート(例えば砂利をも含む)については、繊維は15〜150mmの範囲から選択される典型的な(平均)長さを有する。特に、繊維の寸法は最大の凝集物(粒子)の寸法と少なくとも同じである。特に、繊維は(セメント混合物のうちのどの化合物が最大の寸法を有するとしても、最大の砂粒子の(典型的な)寸法、又は最大の砂利粒子の(典型的な)寸法、又は最大の修復剤エレメントの(典型的な)寸法等の)最大(の種類)の凝集物の(典型的な)寸法の1〜100倍、特に2〜10倍の範囲から選択される長さを有する。

凝集物(及び異なった化合物)は、単分散の寸法分布を有しなくてよい。寸法は(幅広い)分布を有してよい。最大の凝集物の典型的な寸法は、特に絶対的に最も大きな凝集物の寸法でなくてよい。典型的な寸法は、特に凝集物の最も大きな10重量%の部分である凝集物の寸法によって決まる。特に繊維の長さはセメント混合物中の凝集物の最も大きな10(重量)%の重量平均寸法より大きくなるように、例えばセメント混合物中の凝集物の最も大きな10(重量)%の重量平均寸法よりも2〜30倍大きくなるように選択される。

繊維状補強材料の出発乾燥原料(下記も参照されたい)に対する、特にセメント並びにスラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1又は2以上に対する重量比は、0.1:100〜10:100(0.1%〜10%)の範囲から選択される。

1つの実施形態においては、繊維は特に被覆されていないか、又は分解性若しくは分散性コーティングによって被覆される。特に、(アルカリ性)条件下においては、そのようなコーティングは生分解性ポリマー繊維よりも(実質的に)速く分解するという特徴を有する等、犠牲的な性質を有している。さらに別の実施形態においては、繊維は生分解性ポリマーによって被覆され、特に繊維は実質的に完全に生分解性から実質的に完全に非生分解性までの範囲から選択される。特に、繊維は(また)(完全に)生分解性であってよい。

したがって、本発明はまた、セメント出発原料、修復剤及び繊維状補強材料を混合するステップを含むセメント材料の製造のための方法(process)であって、修復剤が細菌材料を含み、繊維状補強材料が特にアルカリ性条件下で生分解性である生分解性ポリマーを含み、生分解性ポリマーが100,000〜1,000,000g/molの範囲の(重量)平均分子量を有する、方法を提供する。

硬化したセメント材料の寿命の間に、硬化プロセスの間でさえも、亀裂が形成されることがある。そのためエレメント内に空洞が生じる。本明細書において「空洞」という用語は特に「亀裂」に関する。例えば、動的及び静的応力によってコンクリート構造要素に生じる亀裂の形成は、使用荷重及び不変荷重による。コンクリートの細孔システムにおける熱及び化学的な衝撃並びに着霜除氷ストレスも重要である。恒久的な風化、水平な表面、黒ずんだ表面及び鋭い端部は、建築部材において熱歪み及び望ましくないストレスを増大させるので、亀裂の形成及び/又は剥離のリスクを増大させる。亀裂は例えば例として長さ0.1cm〜1m及び幅0.01〜10mmといった大きさを有し得るが、他の大きさも可能である場合がある。しかし、空洞という用語は細孔にも関する場合がある。細孔は一般に0.1〜5mmの範囲の長さ、幅及び深さ等の大きさを有する。

修復剤は(また)ケイ酸(ナトリウム)等のケイ酸塩源、硝酸カルシウム等のカルシウム源、及び細菌のための栄養素の1又は2以上を含み得る。カルシウム源は空洞中に新規な構造を構築するために、即ち亀裂を修復するために適用される。カルシウム源は例えばリン酸塩及び/又は炭酸塩を形成させるために用いられ得る。特に、カルシウム源はアルカリ性媒体中にリン酸塩及び炭酸塩の1又は2以上を形成させるために用いられ得る。この新規な構造は細菌とともに構築される。したがって、特に細菌はアルカリ性媒体中でリン酸塩又は炭酸塩の沈殿を形成し得る細菌からなる群から選択される。ケイ酸(ナトリウム)(又はその他の材料)が存在するので、−細菌によって−空洞内に構築される構造はケイ酸塩(又はその他の材料)も含み得る。(例えば炭酸カルシウム及び/又はリン酸カルシウム等のカルシウム構造を構築することによって)亀裂を修復するために細菌を用いるので、本プロセスは本明細書において「バイオ系修復」と称される。カルシウム源は特に硝酸カルシウム等のカルシウム塩を含み得る。さらに、修復剤は酵母抽出物若しくはフィチン酸塩又はその他の生分解性リン酸塩含有有機化合物等のリン酸塩源を含んでもよい。

空洞内に新規な(カルシウム)構造を得るために、修復剤は少なくとも構築材料、細菌、及び細菌のための栄養素を含んでよい。上記のように、構築材料はカルシウム源からのカルシウムを少なくとも含む。構築材料、細菌、及び細菌のための栄養素の組合せは、本明細書において「修復剤」又は「バイオ系修復剤」とも称する場合がある。コンクリートに組み込まれた場合、修復剤は水で活性化されれば材料中に形成された亀裂を自己修復することができる。修復剤は細菌材料及び好ましくは添加剤(栄養素等)をも含む。

細菌は特に乾燥(粉末)形態で提供され、特に凍結乾燥された栄養細胞又は乾燥された細菌胞子のいずれかであり得る。したがって、細菌材料は細菌、凍結乾燥された細菌及び細菌の細菌胞子からなる群から選択される。液体中では、細菌材料は特に細菌及び細菌の細菌胞子からなる群から選択される。

「細菌材料」という用語は、細菌、凍結乾燥された細菌及び細菌の細菌胞子の2又は3以上の組合せ等の、細菌材料の組合せをも意味する場合がある。「細菌材料」という用語は、その代わりに、又はそれに加えて、プラノコッカス(Planococcus)、バチルス(Bacillus)及びスポロサルシナ(Sporosarcina)の2若しくは3以上等の、又は嫌気性細菌と好気性細菌の組合せ等の異なった種類の細菌の組合せをも意味する場合がある。

したがって、1つの実施形態においては、細菌はアルカリ性媒体中でリン酸塩又は炭酸塩の沈殿(炭酸カルシウム又はアパタイト等のリン酸カルシウム系鉱物等)を形成し得る細菌からなる群から選択される。1つの実施形態においては、細菌は好気性細菌からなる群から選択される。好気性細菌を用いることの利点は、好気性細菌の細菌材料を含む修復剤が、硬化したセメント材料が好気性条件に曝される用途に用いられ得るということであり得る。別の実施形態においては、細菌は嫌気性細菌からなる群から選択される。嫌気性細菌を用いることの利点は、嫌気性細菌の細菌材料を含む修復剤が、硬化したセメント材料が地下の用途等の嫌気性条件に曝される用途に用いられ得るということであり得る。好ましい細菌はプラノコッカス、バチルス及びスポロサルシナ、特にバチルス(等の属の通性好気性細菌)の群から選択される。特に嫌気的発酵及び/又は嫌気的硝酸塩還元によって増殖できる細菌が選択される。使用できる(その他の)酵素の例としては、プロテアーゼ、エステラーゼ、グリコシダーゼ、及びマンガンペルオキシダーゼ等の1又は2以上が挙げられる。

したがって、まとめると細菌は好気性細菌からなる群から選択されてよく、又は細菌は嫌気性細菌からなる群から選択される。組合せも用いることができる。さらに、細菌はプラノコッカス、バチルス及びスポロサルシナからなる属の群から選択され得る。また、細菌は脱窒細菌の群から選択され得る。組合せも用いることができる。

さらに、細菌材料に加えて、修復剤は栄養素及びカルシウム源を含んでよい。修復剤は、アルカリ性環境中で活性細菌によって炭酸カルシウム又はリン酸カルシウム等のバイオ鉱物に代謝変換され得る1又は2以上の有機及び/又はカルシウム含有化合物を含んでよい。有機及び/又はカルシウム含有化合物は、(アルカリ性環境中で)細菌によって代謝変換された後にリン酸イオン及び/又は炭酸イオン、並びにカルシウムイオンを産生することができ、これらが炭酸カルシウム系鉱物(カルサイト、アラゴナイト、バテライト等)及び/又はリン酸カルシウム系鉱物(例えばアパタイト)等の実質的に水不溶性の沈殿を形成する。有機及び/又はカルシウム含有化合物の例としては、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、硝酸カルシウム、炭水化物、脂肪酸、アミノ酸、乳酸塩、マレイン酸塩、ギ酸塩、糖、ピルビン酸塩等の有機カルシウム塩、及びフィチン酸塩等の有機リン酸塩含有化合物が挙げられる。カルシウム系前駆体は本明細書において「バイオ鉱物前駆体」又は「カルシウムバイオ鉱物前駆体」とも称される。

さらにさらなる実施形態においては、修復剤は酵母抽出物、ペプトン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩及び微量元素からなる群から選択される細菌増殖因子を含む。好ましくは、細菌増殖因子は微量元素並びに酵母抽出物、ペプトン、アスパラギン酸塩、及びグルタミン酸塩からなる群から選択される1又は2以上を含む。微量元素は特にZn、Co、Cu、Fe、Mn、Ni、B、P及びMoを含む群から選択される1又は2以上の元素を含む。

特に、修復剤は有機化合物からなる群から選択され、好ましくは酵母抽出物、ペプトン、炭水化物、脂肪酸、アミノ酸、乳酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、マレイン酸塩、ギ酸塩、糖、及びピルビン酸塩からなる群から選択される1又は2以上の化合物を含み得る。

したがって、好ましい実施形態においては、修復剤は(1)ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、硝酸カルシウム、炭水化物、脂肪酸、アミノ酸、乳酸塩、マレイン酸塩、ギ酸塩、糖、ピルビン酸塩及びフィチン酸塩からなる群から選択される1又は2以上の化合物並びに(2)好ましくは酵母抽出物、ペプトン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩及び微量元素からなる群から選択される細菌増殖因子を含む。好ましくは、添加剤はカルシウム化合物及び有機化合物(炭水化物、脂肪酸、アミノ酸、乳酸塩、マレイン酸塩、ギ酸塩、糖、及びピルビン酸塩等)並びに微量元素並びに酵母抽出物、ペプトン、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩の1又は2以上を含む。有機化合物の代わりに、又はそれに加えて、添加剤はフィチン酸塩を含んでもよい。特に好ましい実施形態においては、添加剤は(a)カルシウム化合物、(b)有機化合物及びリン化合物(フィチン酸塩等)の1又は2以上、(c)微量元素並びに(d)酵母抽出物、ペプトン、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩の1又は2以上を含む。特に、修復剤はギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、硝酸カルシウム及びグルコン酸カルシウムを含む群から選択されるカルシウム化合物を含む。

したがって、特定の実施形態においては、栄養素は有機化合物、リン化合物、及び硝酸塩化合物からなる群から選択される1又は2以上の化合物を含む。特に、栄養素は硝酸塩化合物を含む。したがって、1つの実施形態においては、栄養素は硝酸塩化合物及び1又は2以上の他の化合物を含む。硝酸塩化合物は、例えば硝酸カルシウムとして供給してよい(下記も参照されたい)。さらに、栄養素は硝酸塩の代わりに、又は硝酸塩に加えて、乳酸塩及びグルコン酸塩の1又は2以上を含む。特に、栄養素は酵母抽出物を含む。これは細菌が空洞内で構造物を産生するために必要であり得る。

本明細書において、「セメント材料」という用語は、セメントとして用いられ得る混合物、又はコンクリートとして用いられ得る混合物、又はモルタルとして用いられ得る混合物等を意味する場合がある。したがって、「セメント材料」という用語は、特に建築物又は建築要素を製造するために用いられ得る流動性混合物を意味し、コンクリート、ペースト、グラウト、モルタル、プラスター等を含む。セメント材料はバインダーであり、セメントが反応する際に固定され、硬化して、例えば他の材料を一緒に結合することができる物質である。例えば、セメント材料は煉瓦建築におけるモルタルとして、又はコンクリート(これはセメントと凝集物の組合せである)として、建築要素を形成するために用いられ得る。したがって、セメント材料は建造物に用いられる要素として等、建築要素を製造するためにも用いることができる(下記も参照されたい)。セメント材料は1つの実施形態においては水硬性であってよく、別の実施形態においては非水硬性であってよい。

特に、セメント出発原料はポルトランドセメントと水とを含んでよい。さらに、出発原料は砂利及び/又は砂等の凝集物を含んでよい。出発原料はCaO(ライム)及びシリカ(SiO2)を含んでよい。さらに、出発原料はアルミナ(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3)及び酸化マグネシウム(MgO)の1又は2以上を含んでよい。さらに、出発原料は酸化ナトリウム(Na2O)及び三酸化硫黄(SO3)の1又は2以上を含んでよい。出発原料はスラグ(例えば粉砕顆粒化した高炉スラグ)、(フライ)アッシュ及び石灰石等のさらなるバインダー材料を含んでよい。出発原料は高可塑剤又は広範囲減水剤をさらに含んでよい。特に、高可塑剤はコンクリートへの応用の場合等に粒子の分離を防止し、流動特性を改善するために含ませてよい。したがって、「バインダー」という用語は、セメント並びにスラグ、アッシュ、及び石灰石(利用可能な場合)の1又は2以上を意味する場合がある。「スラグ」及び「アッシュ」という用語は、それぞれ独立に、1又は2以上の異なった種類のそのような材料を意味する場合がある。スラグ及びアッシュの例は本明細書に提供されている。異なった種類の石灰石も用いてよい。

しかし、セメント出発原料中には他の、又は追加的な成分が存在してもよい。

好適な修復剤は国際公開第2011126361号パンフレット及び欧州特許出願公開第2082999号明細書、特に国際公開第2011126361号パンフレットにも定義されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。したがって、特に修復剤は特にセメント材料のための粒子状修復剤を含んでよく、1つの実施形態においては、修復剤は被覆された粒子を含み、粒子は細菌材料及び添加剤を含み、細菌材料は細菌、凍結乾燥された細菌及び細菌の細菌胞子からなる群から選択され、細菌は特に、その2又は3以上の組合せを含む、プラノコッカス、バチルス及びスポロサルシナ並びに他の関連細菌からなる属の群から選択され、添加剤は(1)ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭水化物、脂肪酸、アミノ酸、乳酸塩、マレイン酸塩、ギ酸塩、糖、ピルビン酸塩及びフィチン酸塩からなる群から選択される1又は2以上の化合物並びに(2)酵母抽出物、ペプトン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩及び微量元素からなる群から選択される細菌増殖因子を含む。修復剤の必要量は修復すべき亀裂又は空洞の予想される数及び寸法によって決まり得る。修復剤の量は用いる修復剤(寸法、組成等)によってさらに決まり得る。特に、修復剤の重量はセメント並びにスラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1又は2以上の全重量の少なくとも2%である。特に、修復剤の重量はセメント並びにスラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1又は2以上の全重量の最大で10%を占める。

本発明はさらに、(a)セメント、(b)スラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1又は2以上、(c)任意に高可塑剤、(d)修復剤、並びに(e)繊維状補強材料を含むセメント材料であって、修復剤が細菌材料を含み、繊維状補強材料が10〜1500kg/molの範囲から選択される平均分子量を有する生分解性ポリマーを含む、セメント材料を提供する。さらに、特に繊維状材料は5〜750μmの範囲から選択される直径を有する繊維を含む。さらにその上、特に繊維状材料は50μm〜150mmの範囲から選択される長さを有する繊維を含む。さらにその上、特に繊維状材料は、0.2:100〜10:100の範囲から選択される修復剤の(a)セメント、並びに(b)スラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1又は2以上に対する重量比を有する。さらにその上、特に繊維状材料は、0.1:100〜10:100の範囲から選択される繊維状補強材料の(a)セメント、並びに(b)スラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1又は2以上に対する重量比を有する。セメント材料はさらに水を含んでよい。セメント材料は建築要素のための流動性混合物、ペースト、モルタル、プラスター等を含んでよい。したがってセメント材料は異なった流動性及び異なった水とバインダーの比を必要とする場合がある。特に水の量は、例えばセメント、スラグ、アッシュ、及び石灰石等のバインダーの量に関連する。1つの実施形態においては、セメント材料は高性能コンクリートのためのセメント材料を含んでよい。特にそのような実施形態は、水とバインダーの比が低くてよい。1つの実施形態においては、水とバインダーの比は15:100である。別の実施形態においては、水とバインダーの比は40:100より大きい。さらにさらなる実施形態においては、比は60:100である。したがって特にセメント材料は水をさらに含んでよく、水とバインダーの比は15:100〜65:100の範囲から選択される。特にセメント材料は本明細書に記載した方法によって得られる。

「繊維状材料は、0.2:100〜10:100の範囲から選択される修復剤の(a)セメント、並びに(b)スラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1又は2以上に対する重量比を有する。」という語句は、修復剤と、第1のグループ(セメント)及び第2のグループ(スラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1又は2以上)の材料の組合せがこの比を有するということを意味している。同様に、「繊維状材料は、0.1:100〜10:100の範囲から選択される繊維状補強材料の(a)セメント、並びに(b)スラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1又は2以上に対する重量比を有する。」という語句は、繊維状補強材料と、第1のグループ(セメント)及び第2のグループ(スラグ、アッシュ、石灰石及び砂の1又は2以上)の材料の組合せがこの比を有するということを意味している。

上記のように、本発明は、硬化したセメント材料を含む建築要素であって、セメント材料が細菌材料並びに、(i)生分解性ポリマーを含む繊維状補強材料及び(ii)生分解性ポリマーを含む繊維状補強材料の細菌変換の変換生成物の1又は2以上をさらに含む、建築要素を提供する。建築要素には例えば百貨店、オフィスビル、橋、駐車場のフロア、陸橋、高架橋、道路、ダム、堤防、トンネル、導管(conduit)等のビル又は土木構造物が含まれ得る。建築要素には、モルタルによって互いに連結された煉瓦造りの壁も含まれ得る。建築要素は、煉瓦又はその他の要素の間のみにあるモルタル、即ち(硬化した)モルタルジョイントそれ自体をも意味する場合がある。

したがって、本発明はまた、建築要素の製造方法であって、上記の請求項のいずれかに定義されるセメント材料を準備するステップと、所定の場所において又は所定の型内でセメント材料を硬化させるステップとを含む、方法を提供する。本方法は、1又は2以上のビルディング要素(building element)を準備するステップ及びこれらをセメント材料で接合するステップを含んでよい。そのような実施形態においては、セメント材料は所定の場所において、第2のビルディング要素を第1のビルディング要素の近傍に配置する前に、第1のビルディング要素の上に、及び/又はその傍に、セメント材料が第1のビルディング要素と第2のビルディング要素との間にあるように配置されてよい。その代わりに、又はそれに加えて、2つのビルディング要素は互いに隣接して、又は互いの上に配置され、セメント材料は第1のビルディング要素と第2のビルディング要素との間に配置されてよい。さらに別の実施形態においては、(例えばコンクリートを堆積することによって)セメント材料が配置される型を準備してよい。硬化の後、建築要素が提供される。家屋、橋、百貨店のビル等の大きな構造物は複数の建築要素からなり得るが、全体として建築要素とみなされる場合もあることに注意されたい。型は建設技術において既知のもの等、一時的な型であってよい。建築要素は水中で建設(製造)していてもよい。

本明細書において「実質的に〜なる(substantially consists)」等における「実質的に(substantially)」という用語は、当業者には理解されよう。「実質的に(substantially)」という用語はまた、「全体に(entirely)」、「完全に(completely)」、「全ての(all)」等を含む実施形態を含み得る。したがって、実施形態においては、実質的にという形容詞は除外してもよい。適用できる場合には、「実質的に(substantially)」という用語はまた、90%以上、例えば95%以上、特に99%以上、さらには特に99.5%以上に関連し、100%を含む場合がある。「含む(comprise)」という用語はまた、「含む(comprises)」という用語が「〜からなる(consists of)」を意味する実施形態をも含む。「及び/又は(and/or)」という用語は、特に「及び/又は(and/or)」の前及び後に述べられた項目の1又は2以上に関連する。例えば、「項目1及び/又は項目2」という語句並びに同様の語句は、項目1及び項目2の1又は2以上に関連する場合がある。「含む(comprising)」という用語は、ある実施形態においては「〜からなる(consisting of)」を意味し得るが、別の実施形態においては「少なくとも定義された種及び任意に1又は2以上の他の種を含有する(containing at least the defined species and optionally one or more other species)」も意味し得る。

さらに、明細書及び特許請求の範囲における第1、第2、第3等の用語は、同様の要素を区別するために用いられ、必ずしも逐次的又は時間的な順序を記述するためのものではない。そのように用いられる用語は適当な状況において相互交換可能であり、本明細書に記載した発明の実施形態は、本明細書に記載し又は説明した順序と異なる順序で操作することができることを理解されたい。

上記の実施形態は本発明を限定するよりむしろ説明するものであり、当業者であれば添付した特許請求の範囲から逸脱することなく多くの代替の実施形態を設計することができることに注意されたい。特許請求の範囲において、括弧の間に挿入されたいかなる引用符号も、請求項を限定するとみなすべきではない。動詞「含む(to comprise)」及びその活用形の使用は、請求項に記載したもの以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。要素の前の冠詞「1つの(a)又は(an)」は、そのような要素の複数の存在を排除するものではない。いくつかの手段を列挙したデバイスの請求項において、これらの手段のいくつかはハードウェアの同一のアイテムによって具現化することができる。ある手段が相互に異なった従属請求項に列挙されているという事実だけでは、これらの手段の組合せを都合よく用いることができないということを示すものではない。

本発明はさらに、明細書に記載し、及び/又は添付した図面に示した特徴的な特徴の1又は2以上を含む方法又はプロセスに関する。本特許において議論した種々の態様は、追加的な利点を提供するために組み合わせることができる。さらに、当業者であれば実施形態を組み合わせることができること、及び3つ以上の実施形態も組み合わせることもできることが理解される。さらに、特徴のいくつかは1又は2以上の分割出願のための基礎を形成することができる。

本発明はさらに、繊維状補強材料及び修復剤を含む部品のキットを提供する。例えば、2又は3以上の容器の組合せが提供され、1つは繊維状補強材料を含み、もう1つは修復剤を含む。部品のキットは(水を含まない)セメント出発原料を加えて拡張していてもよい。したがって、部品のキットはまた、(i)別々の容器に入れられていてもよい繊維状補強材料及び修復剤の1又は2以上(但し両方が提供される場合には単一の容器で提供されていてもよい)並びに(ii)(水を含まない)セメント出発原料を含んで供給され得る。本発明はまた、(i)繊維状補強材料の1又は2以上並びに(ii)修復剤及び(水を含まない)セメント出発原料を含む混合物を提供する。全ての成分が水を含んで組み合わされる場合には、本明細書に記載したセメント材料がまた提供され得る。

実験 下記に、第1の系列が実質的に非生分解性(PE、PVA及びPP)であり、後者の系列(PBS、PHB及びPLA)が生分解性であるいくつかの繊維を示す。特性値は以下の通りである。

従来のセメント出発原料からセメント混合物を作製した。細菌材料を加え、PLAポリマー材料及びカルシウム源も加えた。セメント混合物から作製したモルタル要素(粒状物4mm以下)が特性(特に液密性)を改善し、細菌材料が分解したポリマー材料を用いて亀裂を充填する炭酸カルシウムの形成を促進することが分かった。セメント要素を水に浸漬することによって水の透過が経時的に減少することから、液密性の回復が示された。アルカリ性環境における酸素の消費によって、分解したポリマーが細菌によって好気的に変換されていることが示された。分解するポリマー及び亀裂の表面における鉱物の堆積により、炭酸カルシウムの形成及び亀裂の封鎖が促進されていることが示された。

アルカリ性環境におけるポリマー繊維の微生物分解性についての証拠を得るさらなる実験を行った。実験的試験において、アルカリ性溶液(APS:人工コンクリート細孔溶液、コンクリート細孔溶液の実験的モデル)中に懸濁したポリマー繊維上での細菌の好気的呼吸(酸素の消費)を測定した。結果を次の表に示す。

その結果、ある種のポリマー繊維、例えば繊維タイプS16cont PVA/alg(アルギン酸塩で被覆されたPVA主鎖を含むポリビニルアルコール/アルギン酸塩系繊維)、繊維タイプS15cont PVA/alg(ポリビニルアルコール/アルギン酸塩系繊維)、S14cont APIPLA(ポリ乳酸系繊維)、タイプS13cont APIPLA(ポリ乳酸系繊維)の上での細菌の酸素呼吸(酸素の消費)は高い(経時的に酸素の減少が比較的速い)ことが示される。他の種類のポリマー繊維、例えば繊維S7-Ingeo及びS11-SCの上では細菌の酸素呼吸(酸素の消費)は中程度である(経時的に酸素の減少が遅い)という結果も示される。これらの繊維は基本的に生分解性である。しかしおそらく、これらがセメント材料中の細菌材料のための基質として用いられることは比較的少ないであろう。

したがって、この実験的証拠から、特にポリビニルアルコール/アルギン酸塩並びにポリ乳酸及び海藻タンパク質系ポリマー繊維の上において細菌による分解(代謝的酸素消費)が高いか中程度であることが結論できる。

亀裂を有するコンクリート試験片における修復剤としての微生物分解性ポリマー繊維の機能性についての証拠を得るさらなる実験を行った。

実験的試験において、海藻由来タンパク質ポリマー系繊維(SeaCell)を組み込んだコンクリート試験片に亀裂を生じさせ、引き続いて細菌を加えた水懸濁液に浸漬し、その後、28日のインキュベーション期間の後に、組み込まれたポリマー繊維の代謝変換による鉱物の形成を検討した。海藻由来タンパク質ポリマー系繊維で強化された亀裂を有するコンクリート試験片の画像を得た。画像は亀裂形成の直後(第1の画像)及び細菌を加えた水懸濁液に28日間浸漬した後(第2の画像)に得た。

同様に、海藻由来タンパク質ポリマー系繊維で強化された亀裂を有するコンクリート試験片の画像(第3の画像)を作成した。画像は細菌を添加しない水に28日間浸漬した後に得た。

海藻由来タンパク質ポリマー系繊維で強化された亀裂を有するコンクリート試験片について亀裂形成直後に得た第1の画像においては、亀裂の内部に亀裂を架橋するポリマー繊維が見られた。細菌を含有する水に28日間浸漬した後の第2の画像は、画像1に示したものと同じ亀裂を有するコンクリート試験片を示した。コンクリート試験片の亀裂内及び表面上に多量の鉱物の堆積が見られ、繊維の細菌分解によって鉱物の堆積が起こることを示した。しかし、細菌を添加しなかった水に28日間浸漬した後の第3の画像は、海藻由来タンパク質ポリマー繊維も含有する亀裂を有するコンクリート試験片を示した。コンクリート試験片の亀裂内及び表面上の両方で鉱物の堆積は顕著でなく、鉱物の産生に関連する繊維の分解のために細菌が必要であることが示された。

したがって、この実験的証拠から、細菌分解性ポリマー繊維の細菌分解によって多量の鉱物の堆積が形成すること、及びこれらの鉱物の沈殿がコンクリートの亀裂修復(シーリング)能に寄与し得ることが結論できる。海藻由来タンパク質ポリマー系繊維で強化された亀裂を有するコンクリート試験片において、細菌が存在しなければ鉱物の顕著な沈殿は起こらないこともさらに結論できる。

下記に、セメント材料のための好適な基本混合物の例を示す。ここで、コンクリートの混合凝集寸法と関連して、セメント系(コンクリート)混合物におけるいくつかの典型的な繊維長を示す。

これらの基本混合物に、((表には示さない)細菌及びビルディング材料を含む)修復剤がさらに加えられる。例えば、修復剤は有機化合物及び/又は細菌担持多孔性粒子を含んでよい。特にバインダー(セメント、高炉スラグ、フライアッシュ)及び砂の1又は2以上の量を低減した修復剤を加えてもよい。セメント、高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石粉末及び砂の合計100kgを含む混合物に合計で0.2〜10kgの範囲の修復剤を加えることによって、最良の結果が得られた。

(篩い分けによって得られる)混合物2及び3における最大の粒子寸法は、砂の最大粒子寸法に対応する500μmである。混合物1においては、最大の粒子寸法はセメント及び石灰石粉末の最大粒子寸法に対応する150μmである。混合物4における最大の粒子寸法は、フライアッシュに対応する200μmである。しかし最大の粒子寸法は混合物に加えられる修復剤の種類によって増大し得る。例えば最大の粒子寸法が1000μmの多孔質粒子を用いた場合には、混合物中の最大の粒子寸法も1000μmに増大する。

繊維状補強材料の繊維は、39μmの直径及び8mmの長さを有する。特にアスペクト比(長さ/直径)は30〜250の範囲から選択され得る。繊維は歪み硬化性能に必要な値に合致する引っ張り強さ(1620MPa)、弾性係数(42.8GPa)、及び最大伸び(6.0%)を有するように目的をもって製造され、1.2質量%の有標オイリング剤によって被覆された。繊維長と凝集寸法との比は特に1〜100の範囲で、さらに特に2〜10の範囲で選択され得る。繊維の体積は特にセメント材料の0.1〜5%の範囲から選択され得る。

天然のアバカ繊維を含むコンクリート混合物のさらに別の例を次の表に示す。

ここでも、セメント、高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石粉末及び砂の合計100kgを含むそのような混合物に合計で0.2〜10kgの範囲の修復剤を加えてよい。

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