艶消し被覆組成物、化粧材及びその製造方法

申请号 JP2016156582 申请日 2016-08-09 公开(公告)号 JP6131517B1 公开(公告)日 2017-05-24
申请人 東洋インキSCホールディングス株式会社; 東洋インキ株式会社; 发明人 増淵 紗矢加; 深山 勇夫; 三根 茂樹; 植木 克行;
摘要 【課題】低艶でありながら、高い透明性及び各種耐性を有する、艶消し被覆組成物を提供すること。また、上記艶消し被覆組成物を使用して、意匠性の高い化粧材及びその製造方法を提供すること。 【解決手段】艶差によって凹凸感を立体的に表現する表面保護層を形成するために使用する艶消し被覆組成物であって、シリカと、バインダー成分とを含有し、かつ熱硬化型及び電離放射線硬化型の少なくとも一方であり、上記シリカのレーザー回折法による平均粒子径が1〜10μmであり、かつ比表面積から算出される一次粒子径が10〜50nmであり、上記シリカの含有量が、上記艶消し被覆組成物の樹脂固形分を基準として、20〜30重量%であることを特徴とする。 【選択図】図1
权利要求

基材と、印刷インキ層と、艶消し被覆組成物の硬化塗膜から形成される第1表面保護層と、前記第1表面保護層の上に部分的に設けられ、前記第1表面保護層よりも高艶の第2表面保護層とを順次有する化粧材に用いられる、艶消し被覆組成物であって、 前記艶消し被覆組成物が、シリカと、バインダー成分とを含有し、かつ熱硬化型及び電離放射線硬化型の少なくとも一方であり、 前記シリカのレーザー回折法による平均粒子径が3〜10μmであり、かつ比表面積から算出される一次粒子径が10〜50nmであり、 前記シリカの含有量が、前記艶消し被覆組成物の樹脂固形分を基準として、20〜30重量%である、艶消し被覆組成物。前記バインダー成分が、アクリルポリオール及びポリエステルポリオールを含む熱硬化性樹脂と、イソシアネート硬化剤とを含有する、請求項1に記載の艶消し被覆組成物。前記アクリルポリオールが、10000〜50000の重量平均分子量を有し、及び酸基価が50〜200mgKOH/gである、請求項2に記載の艶消し被覆組成物。前記イソシアネート硬化剤が、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項2又は3に記載の艶消し被覆組成物。前記バインダー成分が、多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の艶消し被覆組成物。基材と、印刷インキ層と、第1表面保護層と、前記第1表面保護層の上に部分的に設けられた第2表面保護層とを順次有する化粧材であって、 前記第1表面保護層が艶消し被覆組成物の硬化塗膜から形成され、前記第2表面保護層が前記第1表面保護層よりも高艶の被覆組成物の硬化塗膜から形成され、 前記艶消し被覆組成物が、シリカと、バインダー成分とを含有し、かつ熱硬化型及び電離放射線硬化型の少なくとも一方であり、 前記シリカのレーザー回折法による平均粒子径が3〜10μmであり、かつ比表面積から算出される一次粒子径が10〜50nmであり、 前記シリカの含有量が、前記艶消し被覆組成物の樹脂固形分を基準として、20〜30重量%であり、及び 前記第1表面保護層の入射60°での光沢度が5以下である、化粧材。前記基材が紙である、請求項6に記載の化粧材。前記第1表面保護層が、2〜10μmの膜厚を有する、請求項6又は7に記載の化粧材。前記第2表面保護層を形成するために使用される前記被覆組成物が、熱硬化型及び電離放射線硬化型の少なくとも一方である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の化粧材。前記被覆組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂を含有する、請求項9に記載の化粧材。前記第2表面保護層の入射角60°での光沢度が、前記第1表面保護層の入射角60°での光沢度に対して2倍以上である、請求項6〜10のいずれか1項に記載の化粧材。基材と、印刷インキ層と、艶消し被覆組成物の硬化塗膜から形成される第1表面保護層と、前記第1表面保護層の上に部分的に設けられ、前記第1表面保護層よりも高艶の第2表面保護層とを順次有する化粧材の製造方法であって、 (a)基材上に、インキ組成物を塗布し、印刷インキ層を形成する工程と、 (b)前記印刷インキ層の上面全体に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の艶消し被覆組成物を塗布し、及び硬化することによって、第1表面保護層を形成する工程と、 (c)前記第1の表面保護層の上面に、熱硬化型及び電離放射線硬化型の少なくとも一方である被覆組成物を部分的に塗布し、及び硬化することによって、第2表面保護層を形成する工程と を有する、化粧材の製造方法。前記工程(b)において、前記艶消し被覆組成物が、熱硬化型であり、かつ電離放射線硬化型であり、前記硬化が加熱により実施され、 前記工程(c)において、前記被覆組成物が電離放射線硬化型であり、前記硬化が電離放射線照射によって実施される、請求項12に記載の化粧材の製造方法。前記工程(b)において、前記艶消し被覆組成物が熱硬化型であり、前記硬化が加熱により実施され、 前記工程(c)において、前記被覆組成物が熱硬化型であり、前記硬化が加熱により実施される、請求項12に記載の化粧材の製造方法。

说明书全文

本発明の実施形態は、化粧材の表面保護層を形成するために使用される艶消し被覆組成物に関し、特に、高艶の被覆組成物との艶差によって、凹凸形状の立体感のある表面保護層を形成することができる艶消し被覆組成物に関する。本発明の他の実施形態は、上記艶消し被覆組成物の硬化塗膜を用いた化粧材、及びその製造方法に関する。

一般的に、基材の表面には、耐汚染性及び耐薬品性等の各種耐性、並びに意匠性を付与するために、硬化性を有する被覆材からなる表面保護層が設けられる。上記被覆材は、パッケージ用、光学製品用、及び建装材用などの様々な用途に応じて設計される。代表的に、パッケージ及び建装材では、意匠性を付与するために基材表面に印刷層が設けられている。例えば、商品等の物品を収容する紙器では、購入者の注意をひく目的で、様々な色彩を使用した模様が印刷され、その表面に表面保護層が設けられている。近年では、上記模様に立体感を与えることによって意匠性をさらに高め、他の商品との差別化を図る傾向がある。化粧材の分野においても、意匠性を高めるために、表面に立体的な凹凸模様を形成する種々な方法が提案されている。しかし、実際に化粧材の表面に凹凸形状を有する印刷層を形成することは実施面での制約がある。

一方、所望とする凹凸形状を有する印刷層を、実際に化粧材の表面に形成する方法の代わりに、人の目の錯覚を利用した視覚効果によって凹凸形状を表現する方法が知られている。具体的には、表面保護層において高艶部分と低艶部分とを設け、その艶差による視覚効果で凹凸形状の立体感を表現する方法がある(特許文献1を参照)。上記方法に従い凹凸形状の立体感を表現するためには、表面保護層における高艶部分と低艶部分との艶差が重要である。上記艶差を大きくすることで凹凸形状の立体感を高めることが容易となる。

被覆材に含まれる代表的な樹脂は、透明であり、高い艶性を有する。そのため、代表的な透明被覆材よりも低艶の被覆材を構成し、両者に艶差を生み出すことによって凹凸形状の立体的な表現が可能となる。一般的に、透明被覆材に対してフィラー等の艶調整剤を添加することによって、艶消し効果を有する低艶被覆材を得ることができる。

特開2000−043223号公報

しかし、上記低艶被覆材は、フィラーの添加量の増加に伴い、塗膜が白化しやすく、また塗膜の透明性が低下する傾向がある。塗膜の透明性が低下すると、印刷層の絵柄が不鮮明になり化粧材全体としての意匠性が低下する。また、フィラーの添加量は、塗膜特性にも影響し、耐汚染性及び耐薬品性等の耐性の低下を招く場合もある。したがって、表面保護層を形成するために使用する艶消し被覆組成物は、低艶であるだけでなく、各種耐性及び透明性の点でも十分に満足できるものでなければならない。

したがって、このような状況に鑑み、本発明の一実施形態は、低艶でありながら、高い透明性及び各種耐性を有する、艶消し被覆組成物を提供することを目的とする。また、本発明の他の実施形態は、上記艶消し被覆組成物を使用して、意匠性の高い化粧材及びその製造方法を提供することを目的とする。

本発明の一実施形態は、艶消し被覆組成物に関し、基材と、印刷インキ層と、艶消し被覆組成物の硬化塗膜から形成される第1表面保護層と、上記第1表面保護層の上に部分的に設けられ、上記第1表面保護層よりも高艶の第2表面保護層とを順次有する化粧材に好適に用いることができる。上記艶消し被覆組成物は、シリカと、バインダー成分とを含有し、かつ熱硬化型及び電離放射線硬化型の少なくとも一方であり、 上記シリカのレーザー回折法による平均粒子径が1〜10μmであり、かつ比表面積から算出される一次粒子径が10〜50nmであり、及び 上記シリカの含有量が、上記艶消し被覆組成物の樹脂固形分を基準として、20〜30重量%であることを特徴とする。

上記艶消し被覆組成物において、上記バインダー成分は、アクリルポリオール及びポリエステルポリオールを含む熱硬化性樹脂と、イソシアネート硬化剤とを含有することが好ましい。 上記アクリルポリオールは、10000〜50000の重量平均分子量を有し、及び酸基価が50〜200mgKOH/gであることが好ましい。 上記イソシアネート硬化剤は、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上を含有することが好ましい。

上記艶消し被覆組成物において、上記バインダー成分は、多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂を含有することが好ましい。

本発明の他の実施形態は、印刷インキ層と、第1表面保護層と、上記第1表面保護層の上に部分的に設けられた第2表面保護層とを順次有する化粧材に関する。上記化粧材において、上記第1表面保護層が艶消し被覆組成物の硬化塗膜から形成され、上記第2表面保護層が上記第1表面保護層よりも高艶の被覆組成物の硬化塗膜から形成され、 上記艶消し被覆組成物が、シリカと、バインダー成分とを含有し、かつ熱硬化型及び電離放射線硬化型の少なくとも一方であり、 上記シリカのレーザー回折法による平均粒子径が1〜10μmであり、かつ比表面積から算出される一次粒子径が10〜50nmであり、 上記シリカの含有量が、上記艶消し被覆組成物の樹脂固形分を基準として、20〜30重量%であり、及び 上記第1表面保護層の入射60°での光沢度が5以下であることを特徴とする。

上記化粧材において、上記基材は紙であることが好ましい。上記第1表面保護層は、2〜10μmの膜厚を有することが好ましい。

上記化粧材において、上記第2表面保護層を形成するために使用される上記被覆組成物は、熱硬化型及び電離放射線硬化型の少なくとも一方であることが好ましい。また、上記被覆組成物は、多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂を含有することが好ましい。

上記化粧材において、上記第2表面保護層の入射角60°での光沢度は、上記第1表面保護層の入射角60°での光沢度に対して2倍以上であることが好ましい。

本発明のさらに他の実施形態は、基材と、印刷インキ層と、艶消し被覆組成物の硬化塗膜から形成される第1表面保護層と、上記第1表面保護層の上に部分的に設けられ、上記第1表面保護層よりも高艶の第2表面保護層とを順次有する化粧材の製造方法に関し、 (a)基材上に、インキ組成物を塗布し、印刷インキ層を形成する工程と、 (b)上記印刷インキ層の上面全体に、本発明の実施形態である艶消し被覆組成物を塗布し、及び硬化することによって、第1表面保護層を形成する工程と、 (c)上記第1の表面保護層の上面に、熱硬化型及び電離放射線硬化型の少なくとも一方である被覆組成物を部分的に塗布し、及び硬化することによって、第2表面保護層を形成する工程と を有することを特徴とする。

上記工程(b)において、上記艶消し被覆組成物は、熱硬化型であり、かつ電離放射線硬化型であり、上記硬化は加熱により実施され、及び上記工程(c)において、上記被覆組成物は電離放射線硬化型であり、上記硬化は電離放射線照射によって実施されることが好ましい。

上記工程(b)において、上記艶消し被覆組成物は熱硬化型であり、上記硬化は加熱により実施され、上記工程(c)において、上記被覆組成物は熱硬化型であり、上記硬化は加熱により実施されることが好ましい。

本発明の実施形態によれば、低艶でありながら、高い透明性及び各種耐性を有する、艶消し被覆組成物を提供することができる。また他の実施形態によれば、上記艶消し被覆組成物を使用して、意匠性の高い化粧材及びその製造方法を提供することができる。

本発明の実施形態である化粧材の構造例を示す模式的断面図である。

以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。 (艶消し被覆組成物) 本発明の実施形態である艶消し被覆組成物は、シリカと、バインダー成分とを含有し、かつ熱硬化型及び電離放射線硬化型の少なくとも一方であり、上記シリカのレーザー回折法による平均粒子径が1〜10μmであり、かつ比表面積から算出される一次粒子径が10〜50nmであり、上記シリカの含有量が上記艶消し被覆組成物の樹脂固形分を基準として、20〜30重量%であることを特徴とする。

本発明の実施形態である艶消し被覆組成物は、低艶であり、かつ優れた透明性を有する。そのため、上記艶消し被覆組成物を使用して化粧材の表面保護層を形成した場合、化粧材の表面に対して、艶消し効果によってマット感を付与することができる。

より好ましい実施形態として、基材と、印刷インキ層と、第1表面保護層と、上記第1表面保護層の上に部分的に設けられ、上記第1表面保護層よりも高艶の第2表面保護層とを順次有する化粧材において、上記第1表面保護層を形成するために上記艶消し被覆組成物を使用することができる。この実施形態において、上記艶消し被覆組成物は、より高艶の被覆組成物との組合せによって、低艶部分と高艶部分とを有する意匠性の高い表面保護層を提供することができる。

ここで、「低艶部分」とは、上記艶消し被覆組成物の硬化塗膜から形成され、「高艶部分」とは上記艶性の高い被覆組成物の硬化塗膜から形成されることを意図する。また、艶性に関する「高い」及び「低い」の用語は、艶消し被覆組成物又は被覆組成物を基準として、他方の被覆組成物と互いに相対的な関係にあることを意味する。

低艶部分と高艶部分とを有する表面保護層において、凹凸形状を立体的に表現するためには、低艶部分と高艶部分との艶差はより大きいことが望ましい。これに対し、上記表面保護層の低艶部分を形成するために上記艶消し被覆組成物を使用した場合、高艶部分との艶差を大きくすることが容易である。したがって、上記実施形態によれば、上記艶消し被覆組成物によって化粧材に凹凸形状の立体感を付与することができ、意匠性をさらに高めることができる。

(シリカ) 上記艶消し被覆組成物は、レーザー回折法による平均粒子径が1〜10μmであり、かつ比表面積から算出される一次粒子径が10〜50nmであるシリカを含むことを特徴とする。シリカのレーザー回折法による平均粒子径は、より好ましくは2〜7μm、さらに好ましくは3〜6μmである。また、シリカの一次粒子径は、より好ましくは10〜30nm、さらに好ましくは15〜25nmである。

ここで、上記「レーザー回折法による平均粒子径」とは、分散処理されたシリカ粒子の溶液試料に対してレーザー光を照射し、そのレーザー光が溶液中を通過する際に散乱する光の強度の角度変化を測定することによって粒度分布を得て、さらにその値から算出される平均粒子径を意味する。

また、上記「一次粒子径」とは、下記計算式[式1]に従い、シリカの比表面積から算出された値を意味する。 [式1] 粒子径d(nm)=6000/比表面積S(m2/g)・密度ρ(g/cm3)

上記艶消し被覆組成物において、平均粒子径が1μmを超えるシリカを使用した場合、硬化塗膜表面に凹凸を形成することによって、硬化塗膜表面の艶を低下することが容易である。上記平均粒子径が10μm以下のシリカを使用した場合、硬化塗膜内にシリカを保持することが容易となる。また、上記一次粒子径が10nmを超えるシリカを使用した場合、硬化塗膜表面に微細な凹凸を形成することによって、硬化塗膜表面の艶を低下することが容易である。

上記一次粒子径が50nm以下のシリカを使用した場合、散乱を抑制し、透明性を向上させることが容易となる。このように、シリカの平均粒子径は艶消し効果に影響し、シリカの一次粒子径は塗膜の透明性に影響する傾向がある。そのため、本発明では、特定範囲の平均粒子径を有し、かつ特定範囲の一次粒子径を有するシリカ(以下、シリカ(A)と称し、他のシリカと区別する)を使用することによって、低い艶性を有する一方で、優れた透明性を有する艶消し被覆組成物を得ることができると考えられる。

艶調整剤として、多種多様なシリカが知られており、一般的に、被覆組成物の艶性を低下させるためにシリカ含有量を増加させると、塗膜の透明性は低下する傾向がある。透明性の低下は、シリカ含有量の増加に伴い塗膜表面に凹凸が形成され、その凹凸によって光が散乱することによると考えられる。すなわち、通常、低艶と透明性とは、トレードオフの関係にある。これに対し、本発明者らは、上記特定の粒子径の組合せを有するシリカ(A)を使用した場合、一定領域において、低艶と透明性とを両立できることを見出した。理論によって拘束するものではないが、上記一定領域では、塗膜表面にシリカの一次粒子径に起因する微細な凹凸が形成され、この微細な凹凸面では、光の散乱ではなく、レイリー散乱が主体となることで透明性が維持されるのではないかと推測される。

上記艶消し樹脂組成物に使用するシリカ(A)は、上記特定の粒子径の組合せを有するものであればよく、その形状などは特に限定されない。周知の方法で製造され市販されているシリカ粒子粉末を使用することができる。また、艶消し樹脂組成物が、水又は有機溶媒等の溶剤を含む場合、各種溶剤等を分散媒として使用してシリカ粒子を分散処理して得られるコロイダルシリカを使用することができる。

コロイダルシリカの分散媒は、極性溶媒及び非極性溶媒のいずれであってもよい。極性溶媒の一例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びn−ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコールなどの多価アルコール類とその誘導体、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びジメチルアセトアミドなどのケトン類、並びに酢酸エチルなどのエステル類が挙げられる。非極性溶媒の一例として、トルエン、及びキシレンなどが挙げられる。

シリカ(A)は、表面処理されたシリカ及び未処理のシリカのいずれであってもよい。上記表面処理に使用される処理剤は、シランカップリング剤、マイクロクリスタリン、及びアルミナ等の有機物及び/又は無機物であってよい。特に限定するものではないが、コストの点から、未処理のシリカが好ましい。シリカ(A)は、上記特定の平均粒子径と、上記特定の一次粒子径とを有することを前提として、その形状は特に限定されない。

シリカ(A)の含有量は、艶消し被覆組成物の樹脂固形分に対して、20〜30重量%である。上記含有量は、より好ましくは23〜30重量%であり、さらに好ましくは25〜28重量%である。シリカ(A)の含有量が20重量%以上である場合、満足できる意匠感、光学特性、及び耐摩擦性等の耐性を容易に得ることができる。一方、シリカ(A)の含有量が30重量%以下である場合、艶消し樹脂組成物の流動性の低下を抑制することができるため、良好な塗工適性を得ることが容易である。ここで、「樹脂固形分」とは、後述するバインダー成分を構成する成分の合計を意味し、より具体的には、熱硬化型樹脂及び/又は電離放射線硬化型樹脂等の樹脂成分と、必要に応じて使用される硬化剤成分との合計を意味する。

シリカに対する樹脂の濡れ性(被覆)は、塗膜の透明性、さらには全体的な意匠性に影響する。例えば、濡れ性が不十分なシリカを使用した場合、シリカ表面で光が散乱することになり、塗膜の透明性が低下する傾向がある。この様な透明性が不十分な塗膜を第1表面保護層とし、その上に第2表面保護層を形成することによって全体的な透明性を改善することは可能である。しかし、本発明で想定される表面保護層の実施形態では、必ず第1表面保護層が露出する箇所がある。そのため、意匠性の観点から、シリカ(A)は、樹脂による濡れ性(被覆)が十分であることが好ましい。これに対し、シリカ(A)の含有量を30重量%以下とした場合、良好な濡れ性を得ることが容易である。

艶消し被覆組成物は、艶調整剤として、上記シリカ(A)を含有する。一実施形態において艶消し被覆組成物は、光沢を適宜調整するために、透明性を低下させない範囲で、上記シリカ(A)以外のシリカ、及びその他の周知の艶調整剤をさらに含んでもよい。使用可能な艶調整剤の一例として、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、及び樹脂ビーズが挙げられる。

(バインダー成分) 艶消し被覆組成物は、使用するバインダーの成分によって分類され、熱硬化型及び電離放射線硬化型の少なくとも一方である。化粧材の表面保護層を形成するために艶消し被覆組成物を使用した場合、艶消し被覆組成物の塗膜の少なくとも一部が化粧材の最表面層を構成することになる。バインダー成分は塗膜の主成分となる。そのため、バインダー成分は、硬化性樹脂を含むことが好ましく、必要とされる耐磨耗性、耐擦傷性、耐溶剤性、及び耐汚染性等の表面物性を有する塗膜を形成することができる硬化性樹脂を必要に応じて組合せて使用することがより好ましい。バインダー成分は、使用する硬化性樹脂に応じて、硬化剤をさらに含んでもよい。

バインダー成分として熱硬化型樹脂を使用した場合、熱硬化型の艶消し樹脂組成物を構成することができる。例えば、熱硬化性樹脂は、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂(アクリルポリマーとも称す)、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びシリコーン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む。 また、バインダー成分として電離放射線硬化型樹脂を使用した場合、電離放射線硬化型の艶消し樹脂組成物を構成することができる。電離放射線硬化型樹脂とは、紫外線、及び電子線といった電離放射線の照射によって硬化する樹脂を意味する。一実施形態において、紫外線硬化型樹脂が好ましい。例えば、電離放射線硬化型樹脂は、アクリル系樹脂、及びアクリルウレタン系樹脂であってよい。これら樹脂を単独で使用しても、又は組合せて使用してもよい。 さらに、必要に応じて、バインダー成分として熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂とを併用してもよい。この場合、熱硬化と電離放射線硬化との複合型(ハイブリッド)の艶消し被覆組成物を構成することができる。

以下、バインダー成分についてより具体的に説明する。 (熱硬化型) 熱硬化型の艶消し樹脂組成物の一実施形態において、バインダー成分は、ポリオール化合物を含む熱硬化性樹脂と、イソシアネート硬化剤とを含有することが好ましい。このような実施形態によれば、ポリオール化合物とイソシアネート硬化剤との反応によって、ポリウレタンポリオール系樹脂が形成される。

本発明で使用可能なポリオール化合物は、分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であれば良い。特に限定するものではないが、具体例として、水酸基含有アクリル樹脂、多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アルキド樹脂等が挙げられる。

水酸基含有アクリル樹脂(以下、アクリルポリオールとも称す)は、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーの重合体、又は水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーとその他の(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体であってよい。 水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。

また、アクリルポリオールを製造するために使用可能な、上記その他の(メタ)アクリル系モノマーは、例えば、アルキル(メタ)アクリレートであってよい。アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びラウリル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。 また、必要に応じて、上記共重合体の製造時に、モノマー化合物として芳香族ビニル単量体を追加してもよい。芳香族ビニル単量体の具体例として、スチレン、メチルスチレン、及びエチルスチレン等が挙げられる。

上記その他の(メタ)アクリル系モノマーの他の例として、水酸基以外の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。例えば、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、N−アルコキシアルキル基、及びN−メチロール基からなる群から選択される少なくとも官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを使用することができる。

上記アクリルポリオールは、周知の方法に従い調製することができる。例えば、溶液中で、または水中で、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを必須モノマーとして使用し、さらに必要に応じて、その他のモノマーを使用して、各種モノマーをラジカル重合又はイオン重合することによって得ることができる。

一実施形態において、アクリルポリオールは、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(I)と、その他のエチレン性不飽和モノマーとして、メタクリル酸メチルを含むアルキル(メタ)アクリレート(II)とを含む原料モノマーから得られる共重合体であることが好ましい。原料モノマーは、スチレン系モノマー、及び/又はカルボン酸を有するエチレン性不飽和モノマーを含むその他のモノマー(III)を含んでもよい。上記共重合体を構成する原料モノマーにおいて、モノマー(I)〜(III)の合計量を基準として、モノマー(I)の割合は10〜35重量%であることが好ましく、モノマー(II)の割合は30〜65重量%であることが好ましい。

アクリルポリオールの重量平均分子量は、好ましくは10000〜50000であり、より好ましくは10000〜40000であり、さらに好ましくは15000〜35000である。 また、アクリルポリオールの水酸基価は、200mgKOH/g以下であることが好ましく、0であってもよい。より具体的には、一実施形態において、上記水酸価は、好ましくは50〜200mgKOH/gであり、より好ましくは50〜150mgKOH/gであり、さらに好ましくは80〜120mgKOH/gである。他の実施形態において、上記水酸価が0であることが好ましい。 また、アクリルポリオールの酸価は、20mgKOH/g以下であることが好ましく、0であってもよい。より具体的には、一実施形態において、上記酸価は、好ましくは2〜20mgKOH/gであり、より好ましくは5〜15mgKOH/gであり、さらに好ましくは10〜15mgKOH/gである。他の実施形態において、アクリルポリオールの酸価は0であることが好ましい。この場合、バインダー成分中の熱硬化性樹脂はアクリルポリオールではないアクリルポリマーを含むことになる。

特に限定するものではないが、一実施形態において、バインダー成分は、重量平均分子量が10000〜40000であり、水酸基価が50〜200mgKOH/gであり、酸価が5〜15mgKOH/gであるアクリルポリオールを含むことが好ましい。他の実施形態において、バインダー成分は、重量平均分子量が10000〜40000であり、水酸基価が50〜200mgKOH/gであり、酸価が0であるアクリルポリマーを含むことが好ましい。上記アクリルポリオール及び/又は上記アクリルポリマーを使用した場合、艶消し被覆組成物の印刷及びコーティング適性、硬化塗膜の強度、並びに印刷インキ層との密着性が良好となる点で好ましい。上記アクリルポリオールを使用する実施形態が特に好ましい。

多価アルコール化合物の例として、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール、4−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールプロパンエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトール等が挙げられる。

ポリエーテルポリオール化合物として、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、及び末端の水酸基をアミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、N−メチロール基またはN−アルコキシメチル基に変性したエーテル化合物が挙げられる。

ポリエステルポリオールとして、例えば、多塩基酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラクロルフタル酸、テトラブロムフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ハイミック酸、ヘット酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデセニルコハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸)またはその無水物と、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA)との縮合反応により得られるポリエステルポリオール、上記多価アルコールとエポキシ化合物(例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル)と上記多塩基酸との反応によって得られるポリエステルポリオール、上記エポキシ化合物と上記多塩基酸との反応によって得られるポリエステルポリオール、高級脂肪酸(例えば、大豆油、アマニ油、サフラワー油、ヤシ油、脱水ヒマシ油、キリ油、ロジン)と上記多塩基酸と上記多価アルコールとの反応により得られるアルキド型ポリオール、ε−カプロラクタムと上記多価アルコールとを開環重合させて得られる重合型ポリエステルポリオール等を好ましく用いることができる。

本発明で使用可能なポリエステルポリオールは市販品として入手することもできる。具体例として、株式会社クラレ製のクラレポリオールP−510、P−1010、P−1510、P−2010、P−3010、P−4010、P−5010、P−6010、P−2011、P−2013、P−520、P−1020、P−2020、P−1012、P−2012、P−530、P−1030、P−2030、PMHC−2050、PMHC−2050R、PMHC−2070、PMHC−2090、PMSA−1000、PMSA−2000、PMSA−3000、PMSA−4000、F−2010、F−3010、N−2010、PNOA−1010、PNOA−2014、及びO−2010が挙げられる。また、住友バイエルウレタン株式会社製のデスモフェン650MPA、651MPA/X、670、670BA、680X、680MPA、800、800MPA、850、1100、1140、1145、1150、1155、1200、1300X、1652、1700、1800、RD181、RD181X、及びC200が挙げられる。また、東洋紡績株式会社製のバイロン200、560、600、GK130、GK860、GK870、290、GK590、GK780、及びGK790等が挙げられる。さらに、住友バイエルウレタン株式会社製のデスモフェン250U、550U、1600U、1900U、1915U、及び1920D等が挙げられる。

ポリエステルポリオールとして、ビニル変性ポリエステルポリオール、及びエポキシ変性ポリエステル等の変性物を使用してもよい。これらは市販品として入手することができる。例えば、東ソー株式会社製のニッポラン134、800、及び1100、住化バイエルウレタン株式会社製のデスモフェン670,800、1100、1200、 及び1700、DIC株式会社製のバーノック11−408、D−210−80、D161、J517、D−128−65BA等が挙げられる。

一実施形態において、ポリエステルポリオールの中でも、特に、分岐型のポリエステルポリオールが好ましい。ポリエステルポリオールの重量平均分子量は、好ましくは400〜1000、より好ましくは400〜800であり、さらに好ましくは400〜600である。酸価は、好ましくは1〜10mgKOH/g、より好ましくは1〜8mgKOH/gであり、さらに好ましくは1〜5mgKOH/gである。他の実施形態において酸価は0であってもよい。また、水酸基価は、好ましくは100〜300mgKOH/gであり、より好ましくは180〜250mgKOH/gであり、さらに好ましくは180〜250mgKOH/gである。

ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、株式会社クラレ製のクラレポリオールPMHC−590、PMHC−1050、PMHC−1050R、PMHC−1090、PMHC−2050、PMHC−2050R、PMHC−2070、PMHC−2070R、PMHC−2090、PMHC−2090R、PMHC−5090が挙げられる。また、旭化成ケミカルズ株式会社製のT4691、T5692、T4671、T4672、T5650E、T5650J、T5651、T5652等が挙げられる。

アルキド樹脂は、ポリオールと、脂肪酸及び/又は多塩基酸との反応物である。アルキド樹脂を構成するために使用可能なポリオールとして、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、及びジトリメチロールプロパンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。使用可能な脂肪酸として、例えば、ヤシ油、パーム油、オリーブ油、及び、ひまし油からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。使用可能な多塩基酸として、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、及びフマル酸からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。

一実施形態において、アルキド樹脂の重量平均分子量は、好ましくは6000〜12000であり、より好ましくは7000〜10000であり、さらに好ましくは8000〜10000である。酸価は、好ましくは1〜10mgKOH/g、より好ましくは1〜8mgKOH/gであり、さらに好ましくは1〜5mgKOH/gである。他の実施形態において酸価は0であってもよい。また、水酸基価は、好ましくは40〜200mgKOH/gであり、より好ましくは50〜180mgKOH/gであり、さらに好ましくは60〜150mgKOH/gである。

一実施形態において、バインダー成分を構成するために使用可能な上記ポリオール化合物のなかでも、硬化塗膜の耐久性の観点から、少なくともアクリルポリオールを使用することが好ましい。ポリオール化合物として、さらに、ポリエステルポリオールを使用することがより好ましい。上記ポリオール化合物として、アクリルポリオールと、ポリエステルポリオールとを併用した場合、硬化塗膜の耐溶剤性、及び透明性の向上が容易になる。

したがって、熱硬化型の艶消し樹脂組成物の一実施形態において、バインダー成分は、アクリルポリオールとポリエステルポリオールとを含む熱硬化性樹脂と、イソシアネート硬化剤とを含有することが好ましい。他の実施形態において、バインダー成分は、上記実施形態の各成分に加えて、アルキド樹脂をさらに含むことが好ましい。このように、アクリルポリオールと、好ましくはポリエステルポリオール及びアルキド樹脂といった2種以上の他のポリオール(アクリルポリオールを除くポリオール)とを併用する実施形態は、ポットライフのような印刷適性や耐溶剤性、光沢値等の硬化塗膜の物性の調整が容易となる点で好ましい。

(イソシアネート硬化剤) バインダー成分において、上記ポリオール化合物と併用されるイソシアネート硬化剤の種類は、特に限定されない。脂肪族イソシアネート及び芳香族イソシアネートのいずれでもよい。一実施形態において、イソシアネート硬化剤は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、及びこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。

上記各ジイソシアネートは、置換基を有するものであってもよい。イソシアネート硬化剤は、脂肪族及び/又は芳香族ポリイソシアネートであってもよい。これらのビウレット体、又はイソシアヌレート体を使用することもできる。また、上記脂肪族及び/又は芳香族ポリイソシアネートをトリメチロールプロパン変性したアダクト体などを使用することもできる。これらの実施形態は、上記誘導体の範囲に含まれることを意図するが、上記誘導体は、好ましくは、先に例示した化合物のイソシアヌレート体及び/又はアダクト体である。

一実施形態において、イソシアネート硬化剤として、HDI系のイソシアヌレート体、TDI系のアダクト体、又はXDIのアダクト体を使用することが好ましい。このような化合物は、市販品として入手することも可能である。例えば、BASF Chemicals社製の商品名「Basonat HI100」(HDI系のイソシアヌレート体)、住友バイエルウレタン社製の商品名「デスモジュールL75」(TDI系のアダクト体)、及び三井武田ケミカル社製の商品名「タケネート D−110N」(XDI系のアダクト体)が挙げられる。

イソシアネート硬化剤の添加量は、ポリオール化合物における反応性官能基の総数を考慮して、適切に調整することが好ましい。一実施形態において、バインダー成分中のポリオール化合物は、アクリルポリオールとポリエステルポリオールとを含む。この場合、イソシアネート硬化剤の添加量は、アクリルポリオール及びポリエステルポリオールにおける反応性官能基の総数を1モルとした時に、イソシアネート硬化剤が0.5〜3モルの割合となるように調整することが好ましい。 ここで、上記反応性官能基の総数とは、イソシアネート硬化剤におけるイソシアネート基と反応可能な、水酸基、及びカルボキシル基などの基の合計を意味する。アクリルポリオールの水酸基価及び/又は酸価が0である場合、イソシアネート硬化剤はポリエステルポリオールとの硬化反応が主となる。一実施形態において、アクリルポリオールとポリエステルポリオールとの固形分重量比率は、アクリルポリオール/ポリエステルポリオール=2/8〜8/2であることが好ましく、5/5〜8/2であることがより好ましく、5/5〜8/2であることがさらに好ましい。

他の実施形態において、バインダー成分中のポリオール化合物は、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、及びアルキド樹脂の3種を含む。この場合、イソシアネート硬化剤の添加量は、上記3種のポリオール化合物における応性官能基の総数を1モルとした時に、イソシアネート硬化剤が0.5〜3モルの割合となるように調整することが好ましい。一実施形態において、アクリルポリオール/ポリエステルポリオール/アルキドの固形分重量比率は、2〜8/1〜4/1〜4であることが好ましく、2〜8/1〜4/1〜4であることがより好ましく、2〜8/1〜4/1〜4であることがさらに好ましい。

(電離放射線硬化型) 電離放射線硬化型とは、電離作用を及ぼす放射線によって硬化可能であることを意味する。電離放射線の具体例として、電子線(EB)、及び紫外線(UV)が挙げられる。すなわち、一実施形態において、バインダー成分は、電子線硬化型樹脂及び/又は紫外線硬化型樹脂を含み、紫外線硬化型樹脂を含むことがより好ましい。 したがって、電離放射線の艶消し被覆組成物の一実施形態において、バインダー成分は、紫外線硬化型樹脂と、光重合開始剤を含み、必要に応じて、イナート樹脂等のその他成分を含んでもよい。例えば、紫外線硬化型樹脂として、重合性オリゴマー、及び/又は重合性モノマーを使用することができる。

上記重合性オリゴマーは、硬化塗膜に対して耐性及び柔軟性を付与することができる。一実施形態において、重合性オリゴマーの数平均分子量は、耐性及び柔軟性の観点から、600以上が好ましく、700以上がより好ましく、800以上がさらに好ましい。一般的に、樹脂の粘度が高いと取扱いが困難となるため、樹脂は、低粘度のモノマーや溶剤で希釈して使用される。しかし、硬化膜形成の観点からは、低粘度のモノマーは物性不良の原因になる。また、樹脂の粘度を調整するために溶剤の含有量を増加した場合、ワニス中の樹脂固形分が低下することによって印刷適性が悪化することになる。したがって、このような粘度調整、及びハンドリング性の観点から、上記重合性オリゴマーの数平均分子量は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、1500以下がさらに好ましい。

ここで、上記数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値を意図する。本発明で使用可能な重合性オリゴマーの具体例として、それぞれ(メタ)アクリレート基を有する、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルアクリレート、及びエポキシアクリレート等が挙げられる。これら多官能(メタ)アクリレートのうち、下地への密着性の付与と共に柔軟性の付与が期待される点で、(メタ)アクリレート基を有するウレタンアクリレートが好ましい。また、上記ウレタンアクリレートは、2官能性以上であることがより好ましい。ここで、2官能性以上とは、電離線によって硬化が生じる反応点(例えば、エチレン性不飽和結合部位)が分子内に2個以上存在することを意味する。

上記重合性モノマーは、硬化塗膜の物性向上、及び艶消し樹脂組成物の粘度調整を可能とする。重合性モノマーは、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。

多官能性(メタ)アクリレートは、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよい。特に限定するものではないが、具体例として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びエチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレートなどが挙げられる。これら多官能性(メタ)アクリレートの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

一実施形態において、上記多官能性(メタ)アクリレートのなかでも、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの少なくとも一方を使用することが好ましい。これら化合物を使用した場合、架橋後の皮膜(硬化塗膜)の物性が向上する点で好ましい。

バインダー成分は、上記多官能性(メタ)アクリレートとともに、単官能性(メタ)アクリレートを含んでもよい。単官能性(メタ)アクリレートを併用した場合、バインダー成分の粘度を低下させることができる。単官能性(メタ)アクリレートの添加量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜調整することが好ましい。

単官能性(メタ)アクリレートの具体例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

バインダー成分として、紫外線硬化型樹脂を使用した場合、樹脂の種類に応じて、適切な光重合開始剤を選択することが好ましい。

先に例示した重合性オリゴマー、及び重合性モノマーは、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する。このようなラジカル重合性の化合物を重合させるために使用可能な光重合開始剤の一例として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、芳香族ジアゾニウム塩、メタロセンなどの化合物が挙げられる。重合反応では、光重合開始剤と、必要に応じて、重合促進剤及び/又は増感剤とを併用してもよい。重合促進剤として、例えば、アミン類、ホスフィン類を使用することができる。また、増感剤として、例えば、p−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、及びチオール系の増感剤などを使用することができる光重合開始剤の添加量は、官能基の数や反応性を考慮して調整することが好ましい。一実施形態において、光重合開始剤の添加量は、紫外線硬化型樹脂100重量部に対して、0.5〜5重量部が好ましい。

上記実施形態において使用可能な光重合開始剤の具体例として、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、及びアセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。

電離放射線の艶消し被覆組成物の他の実施形態において、バインダー成分は、電子線硬化型樹脂を含み、必要に応じて、イナート樹脂等のその他成分をさらに含んでもよい。バインダー成分として、電子線硬化型樹脂を使用した場合、光重合開始剤は不要であり、光重合用開始剤を使用せずに安定な硬化特性を得ることができる。また、電子線硬化性樹脂は無溶剤化が容易であるため、環境及び健康の観点からより好ましく使用できる。

バインダー成分は、さらに、下層との密着や硬化塗膜の柔軟性を維持するために、イナート樹脂を含んでもよい。イナート樹脂の一例として、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、繊維系樹脂、及びシリコーン系樹脂が挙げられる。

以上のように、熱硬化型及び電離放射線硬化型の被覆組成物を構成するバインダー成分について各々例示したが、これらのバインダー成分を組合せて使用することによって、熱硬化と電離放射線硬化との複合型(ハイブリッド)の艶消し被覆組成物を構成することもできる。硬化性樹脂の複合によって、硬化膜の強度、及びシリカの表面偏析を容易に調整することができる。

艶消し被覆組成物は、必要に応じて、溶剤を含んでもよい。溶剤として、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及び水からなる群から選択される少なくとも1種と使用することができる。

表面保護層を形成するために艶消し被覆組成物を使用する場合、その硬化塗膜は、少なくとも印刷インキ層を透視可能な程度の透明性を有する必要がある。そのため、艶消し被覆組成物は、基本的に顔料等の着色剤を含有しない。しかし、一実施形態において、艶消し被覆組成物は、必要とされる透明性を損なわない程度に、少量の着色剤を含んでもよい。その他、艶消し被覆組成物は、必要に応じて、1種以上の各種添加剤を含んでもよい。使用可能な添加剤の一例として、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、流動調整剤、耐摩耗性向上剤、紫外線吸収剤、光安定剤、赤外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、充填剤、架橋剤、及び重合禁止剤等が挙げられる。

艶消し樹脂組成物は、各種熱硬化性樹脂及び硬化剤、重合性モノマー及び/又はオリゴマー、重合開始剤の任意の組合せを含むバインダー成分と、シリカ(A)と、その他、各種添加剤等の任意成分とを、それぞれ所定の割合で均質に混合、及び分散することによって調製することができる。基材上に艶消し樹脂組成物を塗工し、加熱乾燥又は電離放射線照射を行うことによって、硬化塗膜を形成することができる。

本発明の第2の態様は化粧材に関する。図1に示すように、本発明の実施形態である化粧材1は、基材2と、印刷インキ層3と、第1表面保護層4と、上記第1表面保護層4の上に部分的に設けられた第2表面保護層5とを順次有し、上記第1表面保護層4が本発明の第1の態様である艶消し被覆組成物の硬化塗膜から形成されることを特徴とする。上記第2表面保護層5は、上記第1表面保護層よりも高艶の被覆組成物の硬化塗膜から形成される。

本発明の実施形態によれば、第1表面保護層4が低艶部分を形成し、第2表面保護層5が高艶部分を形成することによって、両者の艶差を大きくすることができる。その結果、凹凸形状の立体感のある意匠性を付与することが可能となる。特に、図1に示すように、印刷インキ層3の印刷パターン3aの位置に同調して低艶の第1表面保護層4が露出するように、第1表面保護層上に第2表面保護層が部分的に設けられていることが好ましい。例えば、印刷インキ層が、木目の印刷パターンを有する場合、木目に沿って立体感のある意匠性を提供することができる。

(基材) 上記基材の材料は、特に限定されない。例えば、紙、及び/又は樹脂から構成される基材であってよい。一実施形態において、紙基材が好ましい。紙基材は、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、コート紙、樹脂含浸紙、難燃紙、及び無機質紙からなる群から選択される少なくとも1種を含む。

その他、基材は、各種熱可塑性樹脂からなるフィルム又はシートであってもよい。具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、又はトリアセチルアセテートから形成されたフィルムが挙げられる。その他、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びアクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等のABS樹脂からなる群から選択される樹脂製シートが挙げられる。

基材の厚さについては特に制限はないが、紙基材の場合、その坪量は、例えば20〜150g/m2の範囲であり、30〜100g/m2の範囲が好ましい。一方、樹脂製のシートを使用する場合、その厚さは、例えば、20〜200μmの範囲であり、30〜180μmの範囲が好ましい。

(印刷インキ層) 印刷インキ層は基材に装飾性を与えるものであり、基材上にインキを印刷することで形成される。一般的に、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、及び転写シートからの転写印刷等の印刷方法を適用することができる。インキの構成材料は特に制限されない。代表的に、使用可能なインキは、適当な樹脂バインダー、顔料及び/又は染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、及び各種添加剤等を含み、これら成分を均一に混合した後に使用される。

インク中の樹脂バインダーは、例えば、各種合成樹脂であってよい。具体例として、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、石油系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、及び繊維系樹脂が挙げられる。これらを単独して使用しても、又は2種以上を組合せて使用してもよい。2種以上を組合せて使用する場合、混合物であっても、又は共重合体等であってもよい。

一実施形態において、印刷インキ層は、繊維系樹脂を含むインキから構成され、グラビア印刷法に従い形成されることが好ましい。繊維系樹脂の具体例としては、ニトロセルロース系樹脂、及び酢酸セルロース系樹脂等が挙げられる。

着色剤は、顔料及び/又は染料であってよい。具体例として、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、黄鉛、紺青、及びカドミウムレッド等の無機顔料、並びにアゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、及びジオキサジン顔料等の有機顔料又は染料等が挙げられる。これらを単独で使用しても、または2種以上を組合せた混合物の形態で使用することもできる。

溶剤の具体例として、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及び水等が挙げられる。これらを単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用することもできる。

インキは、その他、必要に応じて、炭酸カルシウム、及び硫酸バリウム等の体質顔料を含んでもよい。また、インキは、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、及び硬化促進剤等の各種添加剤を含んでもよい。

(第1表面保護層) 本発明の実施形態において、第1表面保護層は、本発明の第1の態様の艶消し樹脂組成物の硬化塗膜から形成され、低艶であり、高い透明性を有することを特徴とする。 低艶の程度は、例えば、光沢値(入射角60°)を指標とすることができる。第1表面保護層の光沢値が低いほど、第1表面保護層から形成される低艶部分と、第2表面保護層から形成される高艶部分との艶差を大きくすることができ、効果的な立体感のある表現が容易となる。

このような観点から、一実施形態において、第1表面保護層の光沢値は5以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。ここで、光沢度は、JIS8741(1997)の規定に準じ、例えば、東洋精機社製BYKガードナー・マイクロ−グロスを使用して測定することができる。光沢値は、主に硬化塗膜の組成に依存するが、基材及び印刷インキの種類、及び硬化塗膜の厚みなどによっても変化する。そのため、これらを適切に設計することで、所望とする光沢値を容易に得ることができる。例えば、印刷インキは、明色よりも、黒色等の暗色であることが好ましい。また、基材については、樹脂製よりも紙製の基材方が低い光沢値を得ることが容易である。

透明性の程度は、例えば、明度を指標とすることができる。ここで、明度とは、艶消し樹脂組成物を黒色インキ上に塗工し、及び硬化して得られる硬化塗膜を、L*a*b*表色系で測定したL*の値を意味する。明度の測定は、JIS8781−4(2013)に準じ、例えば、エックスライト社製の分光濃度計を使用して測定することができる。一実施形態において、第1表面保護層の明度(L*値)は、26以下が好ましく、23以下がより好ましく、20以下がさらに好ましい。第1表面保護層を形成するために、硬化塗膜の明度(L*値)が26以下の艶消し樹脂組成物を使用した場合、印刷インキ層における印刷パターン鮮映性が高くなり、より良い意匠性が得られる。

本発明の実施形態において、シリカ(A)は1〜10μmの平均粒子径を有する。そのため、第1表面保護層の塗膜厚はシリカ(A)の平均粒子径を大きく越えないよう調整することが好ましい。塗膜厚がシリカ(A)の平均粒子径に対して厚すぎるとシリカ(A)が塗膜中に埋没し易く、艶消し効果が低下する傾向である。逆に塗膜厚がシリカ(A)の平均粒子径に対して薄すぎると、硬化後の塗膜中でシリカ(A)を安定に固定できず、耐摩擦性が低下しやすい傾向である。このような観点から、一実施形態において、第1表面保護層の膜厚は、1〜15μmが好ましく、1〜10μmがより好ましく、3〜8μmがさらに好ましい。

(第2表面保護層) 第2表面保護層は被覆組成物の硬化塗膜から形成される。第2表面保護層は、第1表面保護層上に部分的に形成されることが必要であり、第1表面保護層と第2表面保護層との艶差から、意匠性、立体感が生じる。被覆組成物は、前述した第1表面保護層を形成する艶消し樹脂層と同様の印刷、コーティング方法で塗工される。また、被覆組成物の構成材料においても前述した艶消し被覆組成物と同様の透明性と表面物性とを有することが好ましい。そのため、一実施形態において、被覆組成物は、艶消し被覆組成物を構成するバインダー成分と同様の熱硬化型樹脂、および/または電離放射線硬化型樹脂を含むことが好ましい。

一実施形態において、被覆組成物は、バインダー成分として、ポリオール化合物を含む熱硬化性樹脂と、イソシアネート硬化剤とを含むことが好ましい。他の実施形態において、被覆組成物は、バインダー成分として、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。

一実施形態において、被覆組成物は、必要に応じてシリカ(B)を含んでもよい。第2表面保護層の光沢は、化粧材全体の光沢に影響する。そのため、化粧材のデザイン(印刷パターン)に応じて、被覆組成物にシリカ(B)を添加し、第2表面保護層の光沢を調整することが好ましい。被覆組成物にシリカ(B)を添加した場合、硬化塗膜の光沢の調整のみならず、耐摩擦性及び耐傷性などの耐性の向上が容易となる。

使用可能なシリカ(B)は特に制限されないが、第1表面保護層よりも高艶となるように選択する。一実施形態において、第1表面保護層を形成する艶消し被覆組成物に使用したシリカ(A)と同様のシリカを使用してもよい。すなわち、耐摩擦性及び艶消し効果の点から、シリカのレーザー回折法による平均粒子径が1〜10μmであるシリカを使用することができるが、このシリカの一次粒子径、及び形状については特に制限されない。シリカ(A)とシリカ(B)は、表面処理、平均粒子径、一次粒子径が同じものを用いることも可能である。ここで、シリカ(B)の平均粒子径はシリカ(A)と同様の方法で測定された値を意図する。このような実施形態の場合、シリカの添加量や各層の膜厚を変えることで艶差を出すことが可能である。

被覆組成物にシリカ(B)を添加する場合、その添加量は、被覆組成物の樹脂固形分に対して、20重量%以下が好ましく、より好ましくは1〜15重量%である。シリカ(B)の添加量が20重量%より多いと、艶消し被覆組成物の硬化塗膜(第1表面保護層)の組成と近くなり、塗膜厚を調整した場合であっても、積層によって艶差を出すことが困難となる傾向がある。このような観点から、被覆組成物中のシリカ(B)は艶消し被覆組成物中のシリカ(A)の含有量よりも少ないことが好ましい。そのため塗膜透明性への影響は少なく、一次粒子径まで制限しなくても十分な透明性が得られる。一方、第1表面保護層を形成する艶消し被覆組成物において、シリカ(A)の添加によって、第2表面保護層との間に十分な艶差が生じる場合、被覆組成物は、必ずしもシリカ(B)を含まなくてもよい。

第2表面保護層は第1表面保護層上に部分的に塗工されてなるが、塗布量が多いほど高艶の表現が可能である。そのため、一実施形態において、第2表面保護層の膜厚を調整することによって、艶差を高めることも可能である。例えば、特に、第1表面保護層を形成する艶消し被覆組成物と、第2表面保護層を形成する被覆組成物の組成が互いに類似する場合には、第2表面保護層を形成する被覆組成物の塗布量を多くして、第1表面保護層よりも第2表面保護層の膜厚を厚くすることによって、効果的に艶差を生み出すことが可能である。更に、より効果的な立体表現を行うために、印刷インキ層の絵柄(印刷パターン)と同調させて被覆組成物の塗布量を変化させることによって、立体的な意匠性を高めることが容易となる。

第2表面保護層を形成する被覆組成物は前述した第1表面保護層を形成する艶消し被覆組成物と同様に、バインダー成分、シリカ(B)、及び必要に応じて各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合、及び分散することによって調製することができる。得られた被覆組成物を、前述の方法で塗工された第1表面保護層上に部分的に塗工し、加熱乾燥、加熱硬化もしくは電離放射線照射によって硬化し、第2表面保護層を得ることができる。

立体的、及び視覚的効果を高め、化粧材に優れた意匠性を付与する観点から、第1表面保護層と第2表面保護層との艶差を大きくすることが望ましい。そのため、第2表面保護層は第1表面保護層よりも十分に高艶であることが好ましい。 一実施形態において、第1表面保護層の光沢値に対して、第2表面保護層の光沢値は、2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましい。より具体的には、第2表面保護層は、光沢計を用い、入射角60°で測定した光沢値が、好ましくは5以上であり、より好ましくは7以上である。第2表面保護層の光沢値が5以上である場合、第1表面保護層上に部分的に第2表面保護層を形成した際の低艶部分と高艶部分との艶差が顕著になり、視覚的立体効果を得ることが容易である。

立体的、視覚的効果は、第1表面保護層の下地となる印刷インキ層の絵柄(印刷パターン)、印刷濃度、色調、及び印刷インキ層と表面保護層との同調性にも関係する。そのため、第1表面保護層を形成する艶消し被覆組成物、及び第2表面保護層を形成する被覆組成物におけるシリカ添加量、及び各々の被覆組成物から形成する表面保護層の膜厚等は、印刷インキ層の特性を加味して、適切に調整、及び同調させることが好ましい。 好ましい一実施形態において、化粧材は、紙製基材と、暗色の印刷インキ層と、本発明の実施形態である艶消し被覆組成物の硬化塗膜からなる第1表面保護層と、第2表面保護層とを有し、第1表面保護層の光沢値が1以下である。

ここで、暗色の印刷インキ層は、好ましくは黒色インキを用いて形成される。また、艶消し被覆組成物は、平均粒子径が3〜6μmであり、一次粒子径が15〜25nmであるシリカを含む。また、上記艶消し被覆組成物は、重量平均分子量が10000〜50000、及び水酸基価が50〜200mgKOH/gのアクリルポリオール、重量平均分子量が400〜1000のポリエステルポリオール、重量平均分子量が6000〜12000のアルキド樹脂、及び2官能以上のイソシアネート硬化剤から構成されるバインダー成分を含む。バインダー樹脂の構成成分の割合は、アクリルポリオール/ポリエステルポリオール/アルキド樹脂=2〜8/1〜4/1〜4である。艶消し樹脂組成物におけるシリカの含有量は、艶消し被覆組成物の樹脂固形分に対して、20〜30重量%である。

上記実施形態において、上記第1表面保護層の膜厚は、3〜8μmである。一方、第2表面保護層を形成する被覆組成物は、アクリルポリオールと、イソシアネート硬化剤とから構成されるバインダー成分、及び平均粒子径が1〜10μmであるシリカを含む。被覆組成物における上記シリカの含有量は、1〜15重量%である。第2表面保護層の膜厚は、2〜15μmである。

(化粧材の製造方法) 本発明の第3の態様は、化粧材の製造方法に関する。本発明の実施形態である化粧材の製造方法は、基材と、印刷インキ層と、艶消し被覆組成物の硬化塗膜から形成される第1表面保護層と、上記第1表面保護層の上に部分的に設けられ、上記第1表面保護層よりも高艶の第2表面保護層とを順次有する化粧材を製造するための方法であり、以下の工程(a)〜(c)を含む。 工程(a):基材上に、インキ組成物を塗布し、印刷インキ層を形成する。 工程(b):上記工程(a)で得た印刷インキ層の上面全体に、本発明の第1の態様である艶消し被覆組成物を塗布し、及び硬化することによって、第1表面保護層を形成する。 工程(c):工程(b)で得た第1の表面保護層の上面に、熱硬化型及び電離放射線硬化型の少なくとも一方である被覆組成物を部分的に塗布し、及び硬化することによって、第2表面保護層を形成する。

工程(a)〜工程(c)において、インキ組成物及び各被覆組成物を塗布する方法は特に限定されない。例えば、代表的に、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、及びインクジェット印刷法等の周知の印刷方法を適用することができる。その他、ロールコート法、ナイフコート法、及びダイコート法等の方法、並びにその他の従来公知のコーティング法を提供することができる。一実施形態において、グラビア印刷機を使用して工程(b)及び工程(c)を実施する場合、艶消し被覆組成物、及び被覆組成物の印刷速度は、それぞれ、30〜120m/分が好ましく、60〜100m/分がより好ましい。艶消し被覆組成物及び/又は被覆組成物は熱硬化型である場合、乾燥温度は、80〜200℃が好ましく、130〜180℃がより好ましい。

第1表面保護層を形成する艶消し被覆組成物と、第2表面保護層を形成する被覆組成物との組合せは任意である。例えば、以下のような構成が挙げられる。 <構成1> 基材/印刷インキ層/第1表面保護層(電離放射線硬化型)/第2表面保護層(電離放射線硬化型) <構成2> 基材/印刷インキ層/第1表面保護層(熱硬化型)/第2表面保護層(電離放射線硬化型) <構成3> 基材/印刷インキ層/第1表面保護層(熱硬化型)/第2表面保護層(熱硬化型) <構成4> 基材/印刷インキ層/第1表面保護層(電離放射線硬化型)/第2表面保護層(熱硬化型)

その他、第1表面保護層、第2表面保護層の各々を熱硬化型と電離放射線硬化型とを併せ持つ複合型(ハイブリッド)とする構成も可能である。このような複合型にすることによって、硬化塗膜の強度を向上し、及びシリカの表面偏析を制御することができる。特に限定するものではないが、好ましい実施形態として、上記構成1〜構成3、及び第1表面保護層を熱硬化型/電離放射線硬化型の複合型、第2表面保護層を電離放射線硬化型にした構成が挙げられる。なかでも、後者の構成がより好ましい。

このような観点から、一実施形態において、工程(b)で使用する艶消し被覆組成物は、熱硬化型であり、かつ電離放射線硬化型である、すなわち複合型であることが好ましい。一方、工程(c)で使用する被覆組成物は電離放射線硬化型であることが好ましい。このような実施形態において、工程(b)における硬化は加熱により実施され、工程(c)における硬化は、電離放射線照射によって実施されることが好ましい。ここで、電離放射線とは紫外線(UV)及び/又は電子線(EB)であってよい。紫外線による硬化では、例えば、高圧水銀ランプ、又はメタルハライドランプを使用することができる。代表的に、露光量は100〜250mJ/cm2であってよい。また、電子線による硬化は、電子線照射装置を使用し、例えば、加速電圧80〜150kV、照射線量20〜50kGyの条件で電子線を照射することで達成できる。これらの方法によれば、基材の劣化を最小限にとどめ、かつ、樹脂を十分に架橋させることが容易となる。

他の実施形態において、工程(b)で使用する艶消し被覆組成物は熱硬化型であることが好ましい。一方、工程(c)で使用する被覆組成物は熱硬化型であることが好ましい。このような実施形態において、工程(b)における硬化は加熱により実施され、工程(c)における硬化は加熱により実施されることが好ましい。加熱による硬化では、代表的に、80〜180℃で加熱乾燥した後に、40〜70℃で1〜2日間にわたって養生する。

以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は、「重量部」を表す。

1.バインダー成分(アクリルポリマー)の調製 以下のようにして、実施例で使用するアクリルポリマーを調製した。 (合成例1) 冷却管、攪拌装置、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、アクリル酸1.6部、メチルメタクリレート14.4部、スチレン20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4部、ブチルメタクリレート60部、及びメチルエチルケトン(MEK)200部を仕込んだ。フラスコ内の各成分を窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した後、アゾビスイソブチロニトリル2.0部を加え、3時間にわたって重合反応を行った。このようにして、水酸基価が17.2mgKOH/g、酸価が12.5mgKOH/g、重量平均分子量が約30,000、固形分が33%のアクリルポリマー(1)を得た。

(合成例2〜9) 合成例1における各成分の配合比を表1に示す配合比に変更したことを除き、全て合成例1と同様にして、各アクリルポリマーを調製した。合成例2〜9で得られたアクリルポリマー(2)〜(9)の水酸基価、酸価、重量平均分子量、および固形分を表1に示す。なお、アクリルポリマー(2)〜(8)は、アクリルポリオールに相当する。

合成例1〜9で調製した各アクリルポリマーの重量平均分子量、酸価、及び水酸基価は、以下のようにして測定した。

<重量平均分子量> 重量平均分子量の測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPC System−21」を用いた。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。

<酸価> 共栓三角フラスコ中に約1gの試料を精密に量り採り、トルエン/エタノール(容積比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。乾燥状態の樹脂の値として、酸価(mgKOH/g)を次式により求めた。 酸価(mgKOH/g)={(5.611×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100) ただし、S:試料の採取量(g) a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml) F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の

<水酸基価> 共栓三角フラスコ中に約1gの試料を精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。 次式により水酸基価を求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。 水酸基価(mgKOH/g)=[{(b−a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D ただし、S:試料の採取量(g) a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml) b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml) F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価 D:酸価(mgKOH/g)

2.艶消し被覆組成物及び化粧材の作製 以下の実施例及び比較例で使用したシリカ(A1)〜(A7)、シリカ(B1)〜(B3)、イソシアネート硬化剤1〜3、その他の樹脂成分は、以下のとおりである。 (艶消し被覆組成物で使用したシリカ) シリカ(A1):平均粒子径4μm、比表面積130m2/g、及び一次粒子径23nm、商品名「Hi−Sil T−152」(PPG Industries社製) シリカ(A2):平均粒子径8.3μm、比表面積100m2/g、一次粒子径27nm、商品名「ニップシールE150J」(東ソー・シリカ社製)。 シリカ(A3):平均粒子径4.2μm、比表面積150m2/g、一次粒子径18nm、商品名「ニップシールE220A」(東ソー・シリカ社製)。 シリカ(A4):平均粒子径3.9μm、比表面積500m2/g、一次粒子径5.5nm、商品名「サイリシア550」(富士シリシア化学社製)。 シリカ(A5):平均粒子径3μm、比表面積40m2/g、一次粒子径68nm、商品名「ミズカシルP−603」(水澤化学工業社製)。 シリカ(A6):平均粒子径6.4μm、比表面積300m2/g、一次粒子径9nm、商品名 「サイリシア550」(富士シリシア化学社製)。 シリカ(A7):平均粒子径15μm、比表面積240m2/g、一次粒子径11.4nm 商品名「カープレックス#30」(エボニック社製)。

(被覆組成物で使用したシリカ) シリカ(B1):上記シリカ(A6)と同じ。 シリカ(B2):平均粒子径5μm、比表面積180m2/g、一次粒子径17nm、商品名「ミズカシルP−803」(水澤化学工業社製) シリカ(B3):シリカ(A7)と同じ。

なお、各シリカに関する平均粒子径、比表面積、及び一次粒子径は、それぞれ以下の方法に従って得た値である。 <平均粒子径> 酢酸エチルでシリカを分散処理することにより溶液試料を調製した。得られた溶液試料に対して日機装社製粒度分布計マイクロトラックHRAを用い、レーザー光を照射し、そのレーザー光が溶液中を通過する際に散乱する光の強度の分布パターンを測定することによって粒度分布を得た。さらに、上記粒度分布の値から、体積基準での中位径(50%径)を求め、平均粒子径とした。

<比表面積> Micromeritics社製のFlowSorbIII2310を用い、流動法にてシリカへの窒素ガス吸着量を測定後、BET法に従い比表面積を算出した。

<一次粒子径> 先に測定して得たシリカの比表面積を使用し、下記[式1]に従い算出した。 [式1] 粒子径d(nm)=6000/比表面積S(m2/g)・密度ρ(g/cm3)

(バインダー成分) (樹脂成分) アクリルポリマー(1)〜(9):合成例1〜9で得たアクリルポリマーであり、アクリルポリマー(1)〜(8)は、アクリルポリオールに相当する。 ポリエステルポリオール:水酸基価=213、固形分100%、東ソー社製の商品名「ニッポラン1100」。 アルキド樹脂:水酸基価=60、固形分70%、荒川化学工業社製の商品名「アラキード7053」。酢酸ブチルで希釈して使用した。 ウレタン樹脂:固形分25%、東洋インキ社製の商品名「リオウレタンJRU500A」 セルロース樹脂:固形分30重量%、イーストマンケミカル社製の商品名「CAB381−20」。メチルエチルケトンに溶解して使用した。

(硬化剤) イソシネート硬化剤(1):HDI系のイソシアヌレート体、固形分100%、NCO含有量22%、商品名「Basonat HI100」(BASF Chemicals社製)。 イソシネート硬化剤(2):TDI系のアダクト体、固形分75%、NCO含有量13%。商品名「デスモジュールL75」(住友バイエルウレタン社製)。 イソシネート硬化剤(3): XDI系のアダクト体、固形分75%、NCO含有量11.5%。商品名「タケネート D−110N」(三井武田ケミカル社製)。

(重合性オリゴマー、モノマー) ペンタエリスリトールトリアクリレート:商品名「Miramer M340」(MIWON社製)。 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:商品名「Miramer M600」(MIWON社製)。 ウレタンアクリレート:商品名「UA−306H」(共栄社化学社製)。

(実施例1) <艶消し被覆組成物> 表2に示した配合比に従い、艶消し被覆組成物を調製した。より詳細には、以下のとおりである。攪拌羽根を有する混合機に、合成例3で得たアクリルポリオール(3)を50部、ポリエステルポリオールを10部、シリカ(A1)を10部、アルキド樹脂を5部(固形分換算で3.5部)、及び溶剤(酢酸エチル/メチルエチルケトン=1/1)を添加し、撹拌混合した。これらの混合物に、更に、イソシアネート硬化剤1を12.1部添加し、撹拌混合した。このようにして、最終固形分40%の熱硬化型の艶消し被覆組成物(1)を得た。

<被覆組成物> 表4に示した配合比に従い、被覆組成物を調製した。より詳細には、以下のとおりである。攪拌羽根を有する混合機に、合成例1で得たアクリルポリオール(5)を50部、シリカ(B1)(シリカ(A6)と同じ)を5.5部、溶剤(酢酸エチル/メチルエチルケトン=1/1)を添加し、更に、イソシアネート硬化剤1を8.2部添加し、撹拌混合した。このようにして、最終固形分が40%の熱硬化型の被覆組成物(1)を得た。

<化粧材の作製> (第1表面保護層の形成) 秤量30g/m2の薄葉紙の表面に、グラビア印刷機を用いて、東洋インキ(株)社製の油性グラビアインキPCNT921墨を塗工した。得られた塗工物の印刷インキ層表面に、先に調製した艶消し樹脂組成物(1)を熱乾燥後の塗布量が4g/m2になるように塗布した。次いで、160℃で加熱乾燥することによって、硬化塗膜を形成し、第1表面保護層を有する塗工物(1a)を得た。第1表面保護層(硬化塗膜)の塗膜厚は4μmであった。

(第2表面保護層の形成) 上述のようにして作製した塗工物(1a)の第1表面保護層の上に、更に、先に調製した被覆組成物(1)を熱乾燥後の平均塗布量が6g/m2になるように、部分的に塗布した。次いで、160℃で加熱乾燥することによって、塗膜を硬化し、第2表面保護層を形成した。第2表面保護層(硬化塗膜)の塗膜厚は6μmであった。

上述のようにして、印刷インキ層の上に、第1表面保護層、及び部分的に第2表面保護層を有する化粧材を得た。得られた化粧材は、40℃で2日間にわたってエージングを行なった後に、後述する各種評価で使用した。

(実施例2〜23、及び比較例1〜6) 実施例1における艶消し被覆組成物(1)及び被覆組成物(1)の配合比を、それぞれ表2〜表4に示した配合比に変更したことを除き、全て、実施例1と同様にして、艶消し樹脂組成物(2)〜(29)、及び被覆組成物(2)〜(7)を得た。得られた艶消し被覆組成物及び被覆組成物は、いずれも溶剤(酢酸エチル/メチルエチルケトン=1/1)を用いて固形分40%に調整した。 次いで、表5〜7に示すように、上記艶消し被覆組成物を用いて、実施例1と同様にして第1表面保護層を形成し、塗工物(2a)〜(23a)、及び(33a)〜(38a)を得た。さらに、上記被覆組成物を用いて、実施例1と同様にして第1表面保護層の上に第2表面保護層を形成し、実施例2〜23の化粧材、比較例1〜6の化粧材を得た。得られた各化粧材は、40℃で2日間にわたってエージングを行なった後に、後述する各種評価で使用した。

ここで、表2〜4において記載した樹脂の硬化タイプは、可能な硬化型を示している。一方、表5〜7において記載した硬化タイプは、実際に硬化時に適用した硬化方法を示している。

表2〜4に示すように、艶消し被覆組成物(2)〜(20)、(24)〜(29)及び被覆組成物(1)〜(5)は、バインダー成分として熱硬化型樹脂を含むことによって、加熱による硬化が可能である。これに対し、表5及び6に示すように、実施例2〜20における第1表面保護層の形成では、艶消し被覆組成物(2)〜(20)を塗工し、実施例1と同様に、160℃で加熱乾燥することによって、硬化塗膜を得た。なお、イソシアネート硬化剤の添加量は、アクリルポリオール、及びポリエステルポリオールの総量に対して、イソシアネート硬化剤が1.0当量になるように調整した。一方、第2表面保護層の形成では、被覆組成物(1)を塗工し、実施例1と同様に、160℃の加熱乾燥を行うことによって、硬化塗膜を得た。

一方、艶消し被覆組成物(21)及び(22)のように、バインダー成分が電離放射線型樹脂を含む場合、組成物は、紫外線(UV)及び/又は電子線(EB)の照射によって硬化することができる。 これに対し、実施例21における第1表面保護層の形成は、紫外線の照射によって硬化を行う実施形態に関する。実施例21では、艶消し被覆組成物(21)に、光重合開始剤(長瀬産業社製の商品名「ダロキュア1173」、アルキルフェノン系の開始剤)をさらに加えて使用した。光重合開始剤の添加量は、被覆組成物中の紫外線硬化型樹脂100部に対して4部の割合とした。このような光重合開始剤を含む艶消し被覆組成物を塗工し、120W−200mJ/cm2の条件で、塗膜に紫外線を照射することによって、硬化塗膜を形成し、化粧材を得た。紫外線の照射には、ウシオ電機社製の装置名「UVC2515」を使用した。

また、実施例22における第1表面保護層の形成は、電子線の照射によって硬化を行う実施形態に関する。艶消し被覆組成物を電子線硬化(EB硬化)型とする場合、光重合開始剤は不要である。そのため、実施例22では、艶消し被覆組成物(22)を塗工した後、125kV−30kGyの条件で塗膜に電子線を照射することによって硬化塗膜を得た。電子線の照射には、アイ・エレクトロンビーム社製の装置名「CB250/30/180L」を使用した。

また、艶消し被覆組成物(23)は、バインダー成分が熱硬化性樹脂と電離放射線型樹脂とを含むことから、組成物は、熱硬化(熱)、紫外線(UV)、及び電子線(EB)からなる群から選択される少なくも1つの方法に従い硬化することができる。これに対し、実施例23における第1表面保護層の形成は、加熱と紫外線の照射によって硬化を行う実施形態に関する。実施例23では、艶消し被覆組成物(23)に、光重合開始剤(長瀬産業社製の商品名「ダロキュア1173」)をさらに加えて使用した。光重合開始剤の添加量は、被覆組成物中の紫外線硬化型樹脂100部に対して4部の割合とした。硬化塗膜を形成する工程として、先ず、160℃の加熱乾燥条件下で、第1表面保護層を構成する塗膜を半硬化させた。次いで、第2表面保護層の形成と併せて、120W−200mJ/cm2の条件で、紫外線を照射することによって、第1及び第2表面保護層を構成する硬化塗膜をそれぞれ形成し、化粧材を得た。得られた化粧材は40℃で2日間にわたってエージングを行なった後に、後述する各種評価で使用した。

(実施例24〜32) 表6に示すように、実施例1で作製した化粧材における第1表面保護層、第2表面保護層の構成を一部変更したことを除き、実施例1と同様にして化粧材をそれぞれ作製した。なお、実施例24〜27、30、及び32については、被覆組成物(2)〜(5)が熱硬化型であり、160℃の加熱乾燥を行うことによって、硬化塗膜を形成し、化粧材を得た。また、実施例28、29及び31については、被覆組成物(6)、(7)及び(1)が、紫外線硬化型である。そのため、実施例1と同様に、被覆組成物に光重合開始剤を添加した。この光重合開始剤を含む被覆組成物に120W−200mJ/cm2の条件下で紫外線を照射することによって、硬化塗膜を形成し、化粧材を得た。 このようにして得られた実施例24〜32の化粧材に対し、40℃で2日間にわたってエージングを行なった後に、後述する各種評価で使用した。

3.艶消し樹脂組成物及び化粧材の評価 艶消し被覆組成物、及び化粧材について、以下に説明するようにして各種評価を行った。評価結果を表5〜7に示す。艶消し被覆組成物及び被覆組成物の液安定性については、表2〜4に示す。 なお、各実施例及び各比較例で実際に作製した化粧材は、低艶の第1表面保護層の露出部分(高艶の第2表面保護層が存在しない部分)の面積が小さく、光沢度を測定し難い。そのため、光沢度等の評価については、各実施例及び各比較例に対応する測定用サンプルを作製して、評価を行った。 (サンプルの作製) 各実施例及び各比較例と同様に、印刷インキ層を有する基材を準備し、印刷インキ層の上に、艶消し被覆組成物を10cm幅で塗工し、及び硬化処理を行うことによって、硬化塗膜(第1表面保護層)を得た。次に、第1表面保護層の上に、高艶の被覆組成物を5cm幅で重ねて塗工し、及び硬化処理を行うことによって、硬化塗膜(第2の表面保護層)を形成し、さらにエージングを行った。このようにして、表面において、第1表面保護層が5cmの幅で露出する構造を有する化粧材の測定用サンプルを得た。各硬化塗膜の膜厚を表5〜7に示す。 <評価項目> (60°光沢度) 上記測定用サンプルの第1表面保護層及び第2表面保護層について、それぞれ、東洋精機社製BYKガードナー・マイクロ−グロスを使用し、JIS8741(1997)に沿って、60°で光沢度を測定した。

(明度) 上述の測定サンプルを用い、JIS8781−4(2013)に準じ、エックスライト社製の分光濃度計を用いてL*の値を測定した。

(耐溶剤性) イソプロピルアルコールを含浸させた脱脂綿を用いて、上記測定用サンプルの第1表面保護層の表面を100往復して擦り、表面の変化を目視によって評価した。評価基準は以下のとおりであり、実用レベルはB以上である。 評価基準 A:変化なし B:僅かに外観及び光沢の変化あり C:明らかに外観及び光沢の変化あり D:塗膜面に穴があく

(耐傷性) 金巾を使用し、上記測定用サンプルの第1表面保護層の表面を1000往復して擦り、塗膜面の変化を目視によって評価した。評価基準は以下のとおりであり、実用レベルはB以上である。 評価基準 A:変化なし B:僅かに傷がつく C:明らかに傷がつく

(意匠性) 各実施例及び各比較例で得た化粧材の意匠性について、化粧材全体の立体感及び透明感を目視によって評価した。評価基準は以下のとおりであり、実用レベルはC以上である 評価基準 A:立体感が特に際立っており、透明性にも優れる。 B:立体感が、際立っており、透明性にも優れる。 C:立体感があり、透明性にも優れる。 D:立体感がやや劣るが、透明性には優れる。 E:立体感がやや劣り、透明性もやや劣る。 F:立体感が劣り、透明性もやや劣る。

(液安定性) 各実施例及び各比較例の艶消し樹脂組成物を調製した直後から、40℃で1日放置後の25℃での粘度をザーンカップで測定し、粘度変化を評価した。評価結果は以下のとおりであり、実用レベルはB以上である。 評価基準 A:変化なし B:変化幅が5秒以内 C:変化幅が6〜10秒 D:変化幅が11秒以上

表5〜7に示した結果から明らかなように、艶消し被覆組成物に添加するシリカについて、その平均粒子径、添加量、一次粒子径を特定の範囲にした場合(実施例1〜32)、耐溶剤性及び耐傷性に優れるとともに、上記範囲外のシリカをして構成される艶消し被覆組成物(比較例1〜6)と比較して、明度を維持しながら、低艶の表面保護層を形成できることが分かる。さらに、そのような艶消し被覆組成物の硬化塗膜からなる第1表面保護層と、高艶の被覆組成物の硬化塗膜からなる第2表面保護層との組合せにおいて、艶差による凹凸形状の立体的な表現が可能となり、意匠性の高い化粧材を提供できることが分かる。 より具体的には、実施例1〜32と、比較例1及び2との対比から、上記特定の粒径特性を有するシリカを特定量使用することによって、透明性を維持できることが分かる。また、実施例1〜32と、比較例2〜6との対比から、シリカの平均粒子径と一次粒子径との要件の組合せが重要であることが分かる。特に、実施例1と、比較例3との対比から、一次粒子径の違いによって、光沢、明度、及び意匠性において顕著な違いが生じることが分かる。

1:化粧材、2:基材、3:印刷インキ層、3a:印刷パターン、4:第1表面保護層、5:第2表面保護層

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