【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、鉄鋼製造プロセスで発生するスラグおよび/またはCaO分含有廃材を主原料とする建築・土木用機能性石材に関するもので、この機能性石材は優れた吸水・透水性能及び植生基盤としての機能を有するため、例えば、石材そのものが植生基盤となる緑化ブロック、景観ブロックまたは土壌被覆ブロック等、さらには、路面被覆用ブロックまたはパネル等として好適に利用できる。 【0002】 【従来の技術】従来、河川や湖沼等の護岸或いは道路側面の傾斜部、崖等を被覆し、これら被覆部の崩壊や土壌流失を防止することを目的として、自然石やコンクリート製のブロック、或いはコンクリート製や金属製などの板状部材が広く使用されている。 【0003】このような自然災害防止のための環境整備や改善等のために行われる土木改修には膨大な量の資材(石材)が必要となる。 この膨大な資材のために自然石を他所から調達することは新たな自然破壊を引き起こす恐れがあり、また、自然石も決して安価ではないため施工コストも嵩む。 そのため多くの場合、資材としてはコンクリート製ブロックあるいは板形状体が使われることが多い。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】近年、こうした土木改修に際し、自然環境の保全や回復のために緑化の推進、 景観の美化が同時に求められるようになってきた。 しかし、従来用いられているコンクリート製等の資材は表面が比較的平滑で凹凸も少なく、吸水性も乏しいため、これ自体を植物の植生基盤とすることは困難である。 また、コンクリートはpHが高い(通常、pH12〜1 2.5程度)ために雨水等の付着水やその周辺のpHを上昇させ、このため仮に発泡コンクリート等を用いて植生基盤に出来たとしても、高いpHのために植物の生育が阻害されるという問題がある。 【0005】また、近年では、雨水を地中に浸透させて緑化の促進や下水道への負担軽減を図るため、歩行者の歩く路面(歩道や公園等の路面)に透水性ないしは吸水性のあるレンガやブロック等を敷設することが行われるようになってきたが、このようなレンガやブロックは高価であり、また、長期的にはコンクリート中のCaが溶出し、耐用性が低下するという問題がある。 【0006】したがって本発明の目的は、従来のコンクリート製資材やレンガ等の代替となり得る新規な土木・ 建築用材料であって、コンクリートに較べてpHが低く、陸生植物の植生基盤として優れた機能を有するとともに、透水性及び吸水性にも優れ、しかも安価に製造することができる土木・建築用材料を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題を解決すべく実験と検討を重ねた結果、粉状および/または粗状のスラグを、主としてスラグ中に含まれるCa Oの炭酸化反応で生成させたCaCO 3をバインダーとして固結させて得られた硬化体であって、且つ全体に微細な開気孔を有するブロック状またはパネル状の硬化体が、上記の目的に叶う土木・建築用材料となり得ることを見い出した。 【0008】本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。 [1] 鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする石材であって、主原料である粉状および/または粒状のスラグを、主としてスラグ中に含まれるCaOの炭酸化反応で生成させたCaCO 3をバインダーとして固結させたブロック状またはパネル状の石材であり、且つ全体に微細な開気孔を有することを特徴とする土木・建築用機能性石材。 [2] CaO分含有廃材および/または鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする石材であって、主原料である粉状および/または粒状のスラグ、粉状および/ または粒状のCaO分含有廃材の中から選ばれる1種以上の石材原料を、主として主原料中に含まれるCaOの炭酸化反応で生成させたCaCO 3をバインダーとして固結させた石材であり、且つ全体に微細な開気孔を有することを特徴とする土木・建築用機能性石材。 【0009】[3] 上記[1]または[2]の機能性石材において、開気孔率が20〜50%であって、気孔径500μ m以上の開気孔が石材中の全開気孔に占める割合が20 容積%以上であることを特徴とする土木・建築用機能性石材。 [4] 上記[1]〜[3]のいずれかの機能性石材において、石材が緑化ブロックまたは景観ブロックであることを特徴とする土木・建築用機能性石材。 [5] 上記[1]〜[3]のいずれかの機能性石材において、石材が護岸用ブロックまたは傾斜地被覆用ブロックであることを特徴とする土木・建築用機能性石材。 【0010】[6] 上記[1]〜[3]のいずれかの機能性石材において、石材が路面被覆用のブロックまたはパネルであることを特徴とする土木・建築用機能性石材。 [7] 上記[1]〜[6]のいずれかの機能性石材において、石材が植物の肥料成分を含有していることを特徴とする土木・建築用機能性石材。 [8] 上記[1]〜[7]のいずれかの機能性石材において、植生基盤とすべき面からその裏面側に向けて形成された、 土壌保持用の凹部または貫通孔を有することを特徴とする土木・建築用機能性石材。 【0011】 【発明の実施の形態】本発明の土木・建築用機能性石材は、粉状および/または粒状のスラグを、主としてスラグ中に含まれるCaO(但し、このCaOが変化したC a(OH) 2の場合も含む)の炭酸化反応で生成させたCaCO 3をバインダーとして固結させ、塊状化した石材であって、且つ全体に微細な開気孔を有する石材であり、本発明はこのような人工石材が陸生植物の植生基盤として優れた機能を有していること、また、その優れた透水性および吸水性により路面等に敷設される石材等としても優れた機能を有していることを見い出し、なされたものである。 【0012】また、本発明で使用する石材の主原料としては、上記スラグとともに或いはスラグに代えて廃コンクリート材のようなCaO含有廃材を用いてもよい。 このようなCaO含有廃材としては、廃コンクリート材のほかに、モルタルや耐火物の廃材があり、これらの材料もスラグと同様に、含有されるCaOの炭酸化反応でC aCO 3が生成し、このCaCO 3をバインダーとして固結する。 したがって、石材の主原料としては、スラグおよびCaO含有廃材の中から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。 なお、以下の発明の説明においてはすべてスラグを主原料として用いる場合を例に説明を行う。 【0013】粒状物をCaOとCO 2との反応、すなわち炭酸化反応により生じるCaCO 3を利用して固結させこと自体は古くから知られた技術であり、CaOを含む粒状物を炭酸ガス雰囲気下に置くと、下記反応式によってCaCO 3が生成し、このCaCO 3をバインダーとして粒子間に固結現象を生じる。 CaO+CO 2 → CaCO 3 【0014】従来、このような炭酸化反応を利用した技術としては、例えば製鋼風砕スラグと水との混練物を原料として建材用途等の硬化体製品を製造する方法(例えば、特開昭58−74559号)や非焼成ペレットの製造法(例えば、特開昭57−92143号、特開昭58 −48642号、特開昭58−133334号)等が提案されている。 しかしこれらの従来技術は、いずれも所要の強度を有する硬化体製品や非焼成ペレットを短時間で製造することのみを目的としたものであり、粉状または粒状のスラグを炭酸化反応により固結させて得られた石材であって、且つ全体に微細な開気孔を有する石材が陸生植物の植生基盤として優れた機能を有していることや、優れた透水性および吸水性により路面等に敷設される石材として優れた機能を有していることについては、 何も示していない。 ここで、開気孔とは石材内部に存在する気孔のうち石材表面に通じている気孔(連続空間) のことである。 【0015】従来から用いられているコンクリート製資材は表面の凹凸が比較的少なく(表面粗さRaで20μ m程度)、また開気孔の生成率も極めて低く、このため透水性や吸水性も乏しい。 加えて、付着水等のpHを上昇させるため植物の成育が阻害されるという問題がある。 したがって、仮にコンクリートブロック等のコンクリート製資材に対して人為的に陸生植物を植生させたとしても、植物の適切な成育は殆ど見込めない。 【0016】これに対して本発明の機能性石材は、主原料であるスラグ中に含まれるCaOの大部分を炭酸化反応によってCaCO 3に変化させ、且つこのCaCO 3をバインダーとしてスラグ粒子を固結させたものであるため、pHがコンクリート製資材のように高くない(石材のpHは高々9程度である)。 このため多孔質の内部や周囲の水のpHを上昇させるおそれは殆どなく、植物の成育環境がpH上昇によって阻害されることはない。 加えて、本発明の機能性石材は、スラグ粒子を炭酸化反応で固結させて得られたものであるため、その表面全体がポーラス状で粗く(通常、表面粗さRaで50μm程度)、植物の着生に適した表面性状を有している。 【0017】さらに、本発明の機能性石材は全体に微細な開気孔を有することにより、上記の点と相俟って陸生植物の植生基盤として高い機能を有する。 その理由は、 全体に微細な開気孔を有することにより植物が根を張るのに適した形態であること、開気孔により吸水性が付与されるため、付着水等が保持され易いこと、また、特に大きな要因として、植物の栄養塩成分である燐や鉄分等(その多くは石材の主原料であるスラグに含まれている)が石材から溶出し、これが植物の着床や成育に有効に作用すること、等により植生基盤として高い機能を有するものと考えられる。 特に、最後に述べた要因については、植物の栄養源となる石材溶出成分が開気孔内に張り巡らされた植物の根に直に供給されるため、植物の成育に極めて有効である。 【0018】また、本発明の石材は、微細な開気孔の一部によって透水性が付与されるため、雨水等を石材下方の土中に浸透させることができ、路面敷設用の石材としても優れた機能を有している。 また、上述した機能をより高めるためには、石材の開気孔の生成条件をより厳密に規定することが好ましい。 すなわち、本発明の石材は、石材中の開気孔率が20〜50%であって、気孔径500μm以上の開気孔が石材中の全開気孔に占める割合が20容積%以上であることが好ましい。 【0019】ここで、開気孔率が20%未満では、植物が根を張ったり或いは石材中の栄養成分を植物の根に供給するための開気孔の数が少なく、また、当然に吸水性、透水性も低下するため、植生基盤として機能や路面敷設用としての機能が低下してしまう。 一方、開気孔率が50%を超えると石材の強度が低下するため好ましくない。 また、気孔径500μm未満の開気孔だけでは植物の細い根が浸入しにくいため、根張りが悪い。 また、 目詰りしやすく、浸透性を維持しにくい。 【0020】石材中の気孔径500μm以上の開気孔が全開気孔に占める割合が20容積%未満では、植物を支えるための根張りが十分な効果を果せない。 また、透水性に関しても、気孔径500μm以上のある程度の細孔量がないと透水速度が悪く、水はけが悪い。 上記のように開気孔率が20〜50%であって、気孔径500μm 以上の開気孔が石材中の全開気孔に占める割合が20容積%以上であることにより、略7〜25%の吸水率が得られる。 【0021】なお、開気孔の気孔径は、水銀圧入法で求めた細孔径あるいは石材表面または表面と平行な切断面の顕微鏡像の画像解析により求めた空隙の相当直径として求めることができる。 全開気孔率はJIS R 220 5(いわゆるアルキメデス法)の見掛気孔率で求めることができる。 気孔径500μm以上の開気孔による開気孔率は、全開気孔率(JIS R 2205の見掛気孔率)から、水銀圧入法を用いて測定した開気孔率(気孔径200〜300μm以下)を差し引き、さらに、画像処理で求めた気孔径200〜500μmの開気孔の開気孔率を差し引いて、求めらることができる。 【0022】機能性石材中には必要に応じて種々の成分を含有させることができ、例えば、植物の肥料成分を含有させれば、この成分が開気孔を通じて溶出し、植物の根に供給される。 この肥料成分としては、例えば、ケイ酸カリ、尿素、ウレアホルム、過リン酸石灰、熔成リン肥などを挙げることができる。 まら、これら肥料成分の中でも、特に緩効性の肥料成分が好ましい。 また、石材中に含まれる鉄分は開気孔を通じて溶出することにより、植物の栄養源として根に供給される。 このため石材中に適量の鉄分が含まれてもよい。 【0023】後述するように鉄鋼製造プロセスで発生するスラグには相当量の鉄分が含まれており、このスラグから地金(鉄分)を回収する工程を経た後でも、スラグ中にはある程度の鉄分が残存している。 したがって、通常、石材中にはある程度の鉄分が含まれることになるが、石材に鉄分を含有させる場合、そのような元々含まれる鉄分を利用してもよいし、或いは別途添加材として鉄分(金属鉄または酸化鉄)を添加してもよい。 この添加材としては、例えば、鉄鋼製造プロセスで発生する含鉄ダスト(製鉄ダスト等)、ミルスケールを用いてもよい。 【0024】また、本発明の石材中には上記成分以外にも、必要に応じて任意の成分を適量、すなわち石材の強度低下等を招かない限度で適宜含有させることができる。 また、バインダーとなる成分として、例えば、セメントや水砕スラグ微粉末等を少量添加してもよい。 【0025】本発明の石材は、土木・建築用材料のあらゆる用途に適用することができるが、特に、陸生植物を直に植生させる緑化ブロック、景観ブロック、土壌被覆ブロック(護岸構築用ブロック、傾斜地被覆用ブロック、斜面安定ブロック等)として最適である。 また、本発明の石材には透水性があり、また、圧縮強度100k g/cm 2以上、吸水率10%以上のレベルも容易に実現できるため、庭園、公園、歩道等の路面に敷設するブロックまたはパネルとしても好適である。 【0026】ブロック体やパネル体としての石材の形状に特別な制約はなく、任意の形状に構成できる。 また、 石材に土壌を組み合わせるため、植生基盤とすべき面からその裏面側に向けて、土壌保持用の凹部または貫通孔を設けることもできる。 また、石材の大きさにも特別な制約はない。 本発明のように粉状または粒状のスラグを炭酸固化させた石材は、炭酸固化させる際の形状の選択或いは炭酸固化後の切り出し形状の選択等によりその大きさを任意に調整することができ、大塊の石材も容易に得ることができる。 【0027】なお、本発明の石材は、粒径の小さいスラグが炭酸化反応で生成したCaCO 3をバインダーとして緊密に固結したものであるため、十分な強度を有しており、このため運搬や水中への沈設の際に衝撃が加わっても割れや崩壊を生じる恐れはないが、必要に応じて内部に鉄筋を配してもよい。 【0028】以下、本発明の石材の主原料となるスラグについて、より詳細に説明する。 本発明の機能性石材の主原料となる鉄鋼プロセスで発生するスラグとしては、 高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグ等の高炉系スラグ、予備処理、転炉、鋳造等の工程で発生する脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、鋳造スラグ等の製鋼系スラグ、鉱石還元スラグ、電気炉スラグ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、また、2種以上のスラグを混合して用いることもできる。 【0029】これらのスラグのうち、代表的なスラグの組成の一例を以下に示す。 (1) 脱炭スラグ … T. Fe:17.5%,CaO:4 6.2%、SiO 2 :11.7%、Al 2 O 3 :1.4 %、MgO:8.3%、MnO:6.2%、P:0.7 6%、S:0.04% (2) 脱燐スラグ … T. Fe:5.8%,CaO:5 4.9%、SiO 2 :18.4%、Al 2 O 3 :2.8 %、MgO:2.3%、MnO:1.9%、P:2.8 %、S:0.03% 【0030】(3) 脱硫スラグ … T. Fe:10.5 %,CaO:50.3%、SiO 2 :10.0%、Al 2 O 3 :5.4%、MgO:1.1%、MnO:0.4 %、P:0.13%、S:1.8% (4) 脱珪スラグ … T. Fe:10.5%,CaO:1 3.6%、SiO 2 :43.7%、Al 2 O 3 :3.8 %、MgO:0.4%、MnO:15.8%、P:0. 10%、S:0.19% (5) 高炉水砕スラグ … FeO:0.3%、CaO:4 2.0%、SiO 2 :33.8%、MnO:0.3%、 MgO:6.7%、Al 2 O 3 :14.4% 【0031】なお、鉄鋼製造プロセスで発生するスラグのうち、脱燐スラグはP含有量が高いために、また脱珪スラグはMnOの含有量が高いために、それぞれセメント原料として使用するには難があるが、本発明ではこれらのスラグについても問題なく石材の主原料として利用することができる。 【0032】使用するスラグは粉状および/または粒状であればよく、その粒径は特に限定されない。 上記のような鉄鋼製造プロセスで発生するスラグは、程度の差はあるものの比較的多量(通常、数重量%〜30重量%程度)の地金(粒鉄等の鉄分)を含んでおり、一般には、 このような鉄分を鉄鋼製造プロセスにリサイクルするために、スラグ中の地金回収が行われる。 通常、この地金回収を行うためにスラグは粉砕処理され、したがって、 元々粉化した状態にあるスラグを含め、地金回収工程を経たスラグは必然的に粉状若しくは粒状通常、cmオーダーまたはそれ以下のものとなる。 【0033】本発明の石材の主原料とするスラグは、このような地金回収工程を経たスラグをそのまま用いてもよいし、また必要に応じて、これをさらに粉砕処理したものを用いてもよい。 また、地金回収工程を経ないスラグを必要に応じて粉砕処理したもの、或いは地金回収工程よりもさらに鉄分を除去したものをそれぞれ主原料として用いてもよい。 【0034】また、これら主原料となるスラグには、先に述べた石材含有成分(肥料成分、鉄分)となるべき添加材を必要に応じて添加することができる。 また、大部分のスラグにはCaOとともにある程度の量のMgOが含まれており、このMgO(このMgOが変化したMg (OH) 2を含む)も上記炭酸化反応によりMgCO 3に変化し、バインダーの一部となる。 【0035】本発明の石材を製造するには、適度な水分が添加された粉状または粒状のスラグ(必要に応じて添加材が添加されたスラグ)を、例えば型枠等の容器内に適当な嵩密度で充填して原料充填層を形成し、この容器内に炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガス(以下、単に炭酸ガスという)を流すことにより、主としてスラグ中に含まれるCaOの炭酸化反応により生成するCaCO 3をバインダーとしてスラグ粒子を固結させ、原料充填層全体を炭酸固化させる。 【0036】スラグをCaOと炭酸ガスとの反応を利用して効率的に炭酸固化させるには水分が必要である。 これは水にCaOと炭酸ガスが溶解することにより炭酸化反応が促進されるためである。 したがって、スラグには適量の水が添加される必要がある。 また、型枠等の容器内に供給された炭酸ガスのうちの未反応ガスは、適当な排気口から排気される。 【0037】製造される石材の性状(開気孔のサイズ、 開気孔率等)は、主原料となるスラグの粒度、炭酸化反応させる際の原料層の充填度(嵩密度)、水分量等により変わるので、これらを適宜調整することにより所望の大きさの開気孔と開気孔率を有する石材を得ることができる。 【0038】原料となるスラグの粒度、原料充填層の充填度、水分量等は、例えば、下記の条件の範囲内で選択されることが好ましい。 (1) 主原料であるスラグの粒度分布に関しては、20〜 1mm>70%、0.3mm以下<30%、より好ましくは、10〜3mm>70%、0.3mm以下<30% とすることが好ましい。 (2) 原料中の水分に関しては、水分含有量3%以上であって、且つ水分添加された原料充填を形成した時に、原料充填層内に炭酸ガスが流れる通路が確保されるとともに、ガス吹き込みにより原料充填層が崩壊(流動化)するようなことがない程度の水分含有量とすることが好ましい。 (3) 原料充填層の嵩密度は、嵩比重/真比重が0.3〜 0.9の範囲となるようにすることが好ましい。 【0039】原料層を所定の充填度にするために行う締め固めは、原料層の上部から加圧する方法、原料層に振動を与える方法、これら両者を併用する方法等を採用できる。 原料充填層内に炭酸ガスを供給する方法に特別な制限はないが、原料充填層の底部にガス吹き込み手段を設け、このガス吹き込み手段を通じてガスを吹き込むことが最も効果的である。 また、場合によっては、原料充填層を気密性の空間(容器等を含む)内に置き、この空間内を炭酸ガス含有雰囲気にすることもできる。 【0040】使用される炭酸ガス含有ガスとしては、例えば一貫製鉄所内で排出される石灰焼成工場排ガス(通常、CO 2 :25%前後)や加熱炉排ガス(通常、C O 2 :6.5%前後)等が好適であるが、これらに限定されるものではない。 また、炭酸ガス含有ガス中の炭酸ガス濃度が低すぎると処理効率が低下するという問題を生じるが、それ以外の問題は格別ない。 したがって、炭酸ガス濃度は特に限定しないが、効率的な処理を行うには3%以上の炭酸ガス濃度とすることが好ましい。 【0041】また、炭酸ガスのガス吹込量にも特別な制限はなく、原料充填層が流動しない程度にガス吹き込みを行えばよいが、一般的な目安としては0.004〜 0.5m 3 /min・t程度のガス吹き込み量が確保できればよい。 また、ガス吹き込み時間(炭酸化処理時間)にも特別な制約はないが、目安としては炭酸ガス(CO 2 )の吹込量がスラグの重量の3%以上となる時点、すなわち、ガス量に換算すると材料1t当たり15 m 3以上の炭酸ガス(CO 2 )が供給されるまでガス吹き込みを行うことが好ましい。 【0042】原料充填層に吹き込まれる炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスは常温でよいが、ガスが常温よりも高温であればそれだけ反応性が高まるため有利である。 但し、ガスの温度が過剰に高いとCaCO 3がCaOとC O 2に分解し、またMgCO 3もMgOとCO 2に分解してしまうため、高温ガスを用いる場合でもこのような分解を生じない程度の温度のガスを用いる必要がある。 また、原料充填層内に炭酸ガスを供給するに当たっては、 炭酸ガスを一旦水中に吹き込んでH 2 Oを飽和させた後、積み山または充填層に吹き込むようにすることにより、スラグの乾燥を防止して炭酸化反応を促進させることができる。 【0043】 【実施例】製鋼スラグ(粒度;10〜3mm:90%, 0.1mm以下:10%)を110℃で乾燥後、水分を5%添加した。 この原料スラグを底面にガス吹込用凸部のついた25cm×50cm×25cmの型枠に乾燥密度で1.95〜2.05g/cm 2になるように突き固めて充填し、厚さ10cmの原料充填層を形成した。 この型枠の上部を密閉した後、加湿したCO 2をゲージ圧1kgf/cm 2 、1L/minで型枠の下方から原料充填層内に6日間供給して、緑化用石材を製造した。 この石材は、全開気孔率が36.4%、気孔径500μm 以上の開気孔が19.0%で全気孔に占める割合が52 %であった。 【0044】固化後の石材は、サイズが25cm×25 cm×10cmであって、片面(25cm×25cm) に幅3cm、深さ2cm、長さ50cmの溝が等間隔に3本形成されている。 この石材を河川敷の傾斜地に置き、野芝を少量の土壌とともに植えたところ、石材内にも根が張り、緑化ブロックを形成できた。 また、少量の土壌を溝部に入れたブロックを放置したところ、稲科の雑草が繁茂した。 いずれも石材と植物の付着力は強く、 簡単には剥がせない状態となった。 【0045】 【発明の効果】以上述べたように本発明の土木・建築用機能性石材は、従来のコンクリート製資材のようにpH 上昇により植物の成育を阻害することがなく、しかも陸生植物の植生基盤として優れた機能を有するとともに、 透水性や吸水性にも優れている。 また、入手が容易で安価なスラグを炭酸固化させるだけで経済的に製造できるという大きな利点がある。 したがって、本発明の土木・ 建築用機能性石材は従来のコンクリート製資材やレンガ等に代る全く新たな土木・建築用材料として極めて有用なものである。 【0046】また、本発明は、従来では路盤材等としての利用価値しかなかったようなスラグを付加価値の高い製品として利材化できるという大きな利点があり、また、特にスラグの中には冷却時に生成するγ−ダイカルシウムシリケートの変態膨張や、遊離CaOの水和により生じる膨張等により粉化する性質を持つものがあり、 従来、このような粉化スラグは一部がセメント原料等として利用される以外は利材化の途がなく、大部分が廃棄されていたものであるが、本発明ではこのような粉化スラグについても原料として利用でき、さらに組成上の制約からセメント原料等として利用するのに難があり、有効利用が難しかったスラグ(例えば、脱燐スラグや脱珪スラグ等)についても原料として利用できることから、 鉄鋼製造プロセスで発生するほとんどのスラグを有効利用でき、それも付加価値の高い製品として利材化できる点でも非常に有用な発明である。 フロントページの続き (72)発明者 磯尾 典男 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 高橋 達人 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4D004 AA43 AC04 BA02 CA34 CC03 CC11 |