【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の背景】本発明は、低い溶解性を示す、一般式M (x) (OH) x [式中、M=Co、Zn、Niおよび/またはCuであり、そしてxはこの金属の原子価である] で表される金属水酸化物の製造方法に関するものである。 【0002】コバルト、亜鉛、ニッケルおよび銅の金属水酸化物は、上記金属の無機または有機塩の製造、並びに相当する酸化物または純粋な金属自身の製造を行うにとって価値ある中間体である。 例えばバリスター製造の電子工学または蓄電池の用途のための、限定された組成を有する酸化コバルトは、水酸化コバルトから出発してこれの焼成を行うことによって製造され得る。 また、限定された粒子サイズ分布を示すコバルト金属粉末は還元で製造され得る。 ニッケル水酸化物は顔料として用いられるか、或はバッテリー用途の目的で種々のドーピング剤(dopings)および粒子構造物と一緒に用いられる。 亜鉛水酸化物は顔料の前駆体として用いられ、そして銅化合物は、触媒活性を示す材料に変換され得る。 【0003】種々の用途で水酸化物を製造する時、これのさらなる加工を行うには、できるだけコンパクトであり流動性を示す材料を製造することが最重要目標となっている。 水酸化コバルトから製造されたコバルト金属粉末は、それが示す粒子サイズ分布および粒子構造の結果として、これを炭化タングステンと一緒に焼結させると、例えば特に堅い金属工具を生じる。 【0004】特に水素化ニッケル蓄電池内で用いられる、新しく開発されたフォーム(foam)陽極では、 この用途目的および用いる加工操作の両方に関して最適な物性を示す水酸化ニッケルが必要とされている。 高性能蓄電池用途では、その活性材料の充填密度が高いことが要求されている一方、フォーム陽極で用いられるペースト化方法では、流動性が高く、粒子形状がコンパクトであり、粒子サイズ分布が狭く、そして品質が一定である材料を用いることが必要とされている。 【0005】更に、この生成物は、通常用いられている添加剤、例えばコバルト金属粉末または酸化コバルトなどとよく混合し得るものでなくてはならない。 【0006】この製造方法に適切な材料および基本的特徴が特開平4−80513号の中に開示されている。 この方法では、ニッケル塩溶液と固体または液体形態のアルカリ金属水酸化物を反応槽の中に激しく撹拌しながら一定のpHおよび一定の温度で連続供給することによって、直径が1から100μmの水酸化ニッケル粒子の結晶化を生じさせる。 好適な実験条件として、pHが11 であることと温度が48℃であることが明記されている。 【0007】更に、アンモニアまたはアンモニウム塩の存在下で沈澱を生じさせることによって充分にコンパクトな水酸化ニッケルを製造することができることも知られている。 このように、Trans. Faraday Soc. 51(1955)、961に従い、硝酸ニッケルとアンモニア水溶液からニッケルアミン錯体溶液が製造されている。 常圧または減圧下で沸騰させるか或は蒸気処理を行うことによって、上記錯体溶液から水酸化ニッケルが得られており、この水酸化ニッケルは、アンモニアを存在させないで沈澱させた水酸化ニッケルに比較して本質的に低い比表面積(13から20m 2 / g)を有している。 特開昭53−6119号および特開昭61−18107号の中に、アンモニアまたはアンモニウム塩の存在下でコンパクトな水酸化ニッケルを製造することが公開されている。 この最初に示した特許出願には、pHが少なくとも3.0である適切な溶液にアルカリ金属水酸化物の溶液を加えることによって水酸化ニッケルの沈澱を生じさせることが開示されている。 この方法で製造された材料を電気化学的に調査した結果、市販の水酸化ニッケルに比較して特に高い比充電容量(s pecific charging capaciti es)がもたらされた。 【0008】しかしながら、この種類の生成物もまだ粒子形状、粒子サイズ分布および流動性に関する上記要求を満足させるものでない。 【0009】コンパクトな水酸化ニッケルを製造する方法およびそれをアルカリ電池で用いるに必須な特徴がヨーロッパ特許出願公開第353 837号の中に開示されている。 希アンモニア溶液の中に硝酸ニッケルまたは硫酸ニッケルを溶解させた後、水酸化ナトリウム溶液を調節して加えることにより、下記の反応: (I) NI(NH 3 ) 4 SO 4 + 2 NaOH => Ni(OH) 2 + Na 2 SO 4 + 4 NH 3に従う分解を生じさせることで、ニッケル(II)のテトラミン塩溶液が製造されている。 【0010】この反応は11から13のpH範囲において40から50℃の温度で進行する。 この方法では、p Hを下げると孔容積が小さくなる。 孔を含んでいない生成物を結晶化させることが可能なのは反応速度を本質的に低くした時のみであることは、明白に確かめられている。 更に、この方法で製造される水酸化ニッケルは、高い結晶度、低い比表面積および低い孔容積を示し、従って高い物理的密度を示す。 この密度が高いことに起因する、この生成物が示す欠点もまた記述されている。 この比表面積が低いことから、プロトン伝導性が比較的低くなると共に電流密度が比較的高くなり、これによって、 望ましくないγ−NiOOHの生成が助長され、このことから、この電極の膨潤がもたらされる。 低いpHで結晶化させた水酸化ニッケルは高い密度を有しているが、 これがγ−NiOOHをもたらす傾向はより大きくなる。 密度を高くする必要があることと、多孔度を特定度合に止めることの必要性との間の妥協点は、中間的pH を選択することに見いだされ得る。 この方法を用いると、固溶体内に亜鉛が3から10%またはマグネシウムが1から3%入っている水酸化ニッケルが製造される。 これらのドーピング処理がγ−NiOOHの生成を妨げている。 【0011】特開平4−68249号には、球粒子形状を有する水酸化ニッケルの晶析を行う連続方法が開示されている。 この方法では、オーバーフローパイプが備わっている加熱されている筒状容器の中に、激しく撹拌しながら、ニッケル塩溶液(0.5から3.5モル/ L)、希アルカリ金属水酸化物溶液(1.25から10 モル/L)およびアンモニアおよび/またはアンモニウム塩溶液が計量ポンプで連続的にポンプ輸送されているが、この方法ではまた、このアンモニアを気体形態で供給することも可能である。 このアンモニアの濃度は10 から28重量%であると明記されており、そしてこのアンモニア塩の濃度は3から7.5モル/Lであると明記されている。 このニッケルの錯体を生じさせる目的で、 このニッケル塩溶液1モル当たり0.1から1.5モル量でアンモニアが加えられている。 約10から30時間後、この系は安定した状態に到達し、そしてその後、一定した品質を示す生成物を連続的に取り出すことができる。 この容器内の滞留時間は0.5から5時間である。 【0012】この方法の必須となる特徴は、この反応を限定したpHで実施することであり、ここでは、20から80℃の範囲内の一定した温度(これに関連して、この温度の偏差は±2K以内でなくてはならない)において、pHを調節するアルカリ金属水酸化物の溶液を添加することによってこのpHを9から12の範囲内で± 0.1pH幅内になるように一定に維持する。 このような条件下、粒子サイズが2から50μmのコンパクトな球形粒子が得られる。 特に、NH 3の供給率、滞留時間および撹拌速度を変化させることによって、この粒子サイズを調整することができる。 撹拌速度を低くするか或はNH 3の供給率を高くすると、その粒子サイズが増大する。 この容器内の滞留時間を長くすると、その生成物がより粗くなると共に、粒子サイズ分布が狭くなる。 次に、この結晶性生成物を濾過し、水で洗浄した後、乾燥を行う。 この方法で製造される生成物は、冒頭で述べた特性を示し、これの粉砕を行う必要はない。 【0013】ヨーロッパ特許出願公開第462 889 号には、水酸化ニッケルの製造方法が開示されている。 この場合の結晶化温度範囲は80℃以上である。 コバルト、カドミウムおよび/または亜鉛でドープ処理した硝酸塩または硫酸塩溶液が用いられている。 このコバルト含有量は1から8重量%であり、そしてカドミウムおよび/または亜鉛の含有量は3から10重量%である。 アンモニウム塩を用いて錯体形成が行われており、ここでのNH 3 /Niのモル比は0.3から0.6である。 この方法でのpHは9.2±0.1に維持されている。 更に、容器直径の半分の直径を有する3枚羽根撹拌機が用いられており、その速度は300から1000分-1である。 【0014】既に記述した方法と同様、この生成物を濾過し、洗浄した後、乾燥させる。 【0015】これらの方法の欠点は、一方では、不可避的に生じる中性塩が多量に存在していることであり、この量はその水酸化ニッケルの化学量論的量の少なくとも2倍量であり、これは廃水の形態を取ることになる。 他方において、上記廃水には、複合的に(complex ly)溶解しているニッケルが少量含まれていることに加えてまた、処分する必要のあるアンモニアが多量に含まれている。 【0016】本発明の目的は、これらの記述した方法が示す欠点を有していない方法を提供することにある。 【0017】 【発明の要約】低い溶解性を示す、一般式M (x) (O H) x [式中、M=Co、Zn、Niおよび/またはC uであり、そしてxはこの金属の原子価である]で表される金属水酸化物を製造する方法を用いることで、上記要求を満たすが、この方法では、第一段階で、反応性を示す金属水酸化物と錯化剤Lとをアルカリ金属塩AY (例えばNaCl、KCl、NaBr、KBr)の存在下で反応させることで一般式ML n Y mで表される金属錯体塩とアルカリ金属水酸化物の溶液を生じさせた後、第二段階で、>7のpHでアルカリ金属水酸化物の溶液と反応させることによって該金属錯体塩の分解を生じさせることにより、難溶性の金属水酸化物と錯化剤とアルカリ金属塩を生じさせる。 【0018】本発明に従う方法では、好適には、アンモニアおよび/または鎖長が1から6の有機モノ−および/またはジアミン類を錯化剤(L)として用いる。 【0019】本発明に従う方法では、上記金属の反応性水酸化物を出発材料として用いそしてこれらを今度は可溶形態に変化させることで、廃水問題を回避することができる。 適切な錯化剤、例えばアンモニアまたはアミン類との錯体を生じさせることによってこれを行う。 従って、例えば、下記の方程式: (II) Ni(OH) 2 + 6 NH 3 + 2 NaCl => [Ni(NH 3 ) 6 Cl 2 + 2 NaOH に従い、中性塩の存在下でアンモニアを用いることにより、水酸化ニッケルをほとんど完全に反応させてヘキサミン錯体を生じさせることができる。 濾過またはデカンテーションを行うことでこの固体状の塩化ニッケルヘキサミンを容易に分離することができる。 【0020】本発明に従う方法を30から85℃、好適には45から80℃の範囲の温度で実施すると特に良好な結果が得られる。 【0021】本発明に従う方法の必須となる特徴は、この用いる金属水酸化物が反応性を示す形態である点である、と言うのは、この錯体を生じさせている間にそれが完全に溶解するのはそのような場合のみであるからである。 特に適切な反応性を示す金属水酸化物は、新しく沈澱させた金属水酸化物である。 金属の陽極酸化で入手した反応性を示す金属水酸化物を用いるのもまた有利である。 【0022】適切な反応性を示すニッケル水酸化物の製造方法がドイツ特許出願公開第P4 239 295. 0号の中に開示されている。 これは、硫酸塩イオン存在下の電解質水溶液内で金属ニッケルの陽極酸化を行った後その生じさせた水酸化ニッケルの分離を行うことで純粋な水酸化ニッケルを製造する方法であり、この方法では、塩化物および硫酸塩を含有している水酸化ニッケルを製造した後、これを次にアルカリ金属水酸化物溶液で処理する結果として、これを純粋な水酸化ニッケルに変化させる。 【0023】もし、本発明に従う方法において、この反応性を示す金属水酸化物に、例えばバッテリーを製造するための水酸化ニッケルに関して時には必要とされている如きドーピング元素(doping element s)を含有させる必要がある場合、カドミウム、コバルト、マグネシウム、カルシウムおよび/または亜鉛塩(これらを好適には硫酸塩および/または塩化物塩類として用いる)の存在下で本発明に従う方法を実施することも可能である。 【0024】カドミウム、コバルト、マグネシウム、カルシウムおよび/または亜鉛の存在下で陽極酸化を行う場合、上記元素を金属陽極として連結させてこの反応性を示す金属水酸化物の製造を実施するのも有利に可能である。 【0025】 【好適な態様の詳細な説明】図1を用いて本発明のさらなる説明を行う。 【0026】本発明に従う方法の好適な態様において、 元素Co、Zn、Mg、CaおよびCdの1種以上を全体で10重量%以下の量で用いて該金属水酸化物のドープ処理を行う(doped)。 【0027】本発明に従う方法で生じる母液には、コンパクトな球形の金属水酸化物を生じさせる反応に必要とされる水酸化ナトリウム溶液が正確に化学量論的量で含んでいる。 従って、この方法は連続的に実施するのが好適である。 この場合、有利には、この錯化剤とアルカリ金属塩を第一段階にフィードバック(feed bac k)することができる。 この金属錯体塩の分解に関しては、その第一段階で生じさせたアルカリ金属水酸化物の溶液を用いてこれを実施することができる。 【0028】この初期段階の反応は、これらの成分を激しく混合するならば、高収率および高反応率で進行する。 【0029】特に有利には、受動もしくは能動混合素子またはフローノズルで激しく撹拌することによって生じさせた強力な乱流内でこれらの金属錯体塩の分解を生じさせる。 0.5から20時間、好適には1から4時間から成る限定した滞留時間でこの分解を反応槽内で実施する。 【0030】ループ反応槽が反応槽として特に有利であることを確認した。 金属水酸化物を生じる反応でもたらされる生成物であるアンモニアと食塩を第一段階にフィードバックしてそこで再び用いることにより、金属アミン錯体を生じさせ、その結果として、廃水を生じさせることなくこの工程全体を行うことができる。 【0031】ループ反応槽の一般的態様に関してはUl lmann、B4巻、172−179頁の中に記述されている。 本図の中にこれを図式的に示すが、これには反応槽容器R、熱交換器H、ノズルNおよびフローパイプ配管Fが備わっている。 ここで、Aは反応体供給を表し、そしてBは生成物取り出しを表す。 この反応槽をループとして設計すると、連続運転を行うことが可能になると共に、種々の金属に関して循環速度を選択する結果として固体状アミン錯体とアルカリ性母液との反応を調整することが可能になることで、滞留時間、温度およびpH手段を用いてこの生成物に必要とされる物性を調整することができる。 他方では、指定された撹拌装置が備わっている一定容積の撹拌タンク反応槽を用いたのでは、異なる形態を示す種々の金属水酸化物を1つの反応槽内で生じさせ得るに充分な柔軟性を持たせるようにこの反応槽を適合させるのは不可能である。 上記ループ反応槽における循環速度を選択しそしてスタティックミキサー、アクティブインライン(active in−l ine)ミキサーまたはノズルなどの如き種々のミキサーを組み込むことにより(品目ノズル図面に加えるか、 或はその代わりに)、その必要とされる該反応体と反応媒体との混合を非常に短い時間内に生じさせることを確実に行うが、これは、所望柔軟性を示す反応システムに関する他の態様で混合を激しくするのでは達成不可能である。 【0032】本発明に従う方法で入手可能な水酸化ニッケルは、特にフォーム陽極で用いるに適切である。 これの典型的な特徴的データは下記の通りである: − タップ密度(ASTM B 212):>2.0g /cm 3 − BET比表面積(DIN 66232):10から20m 2 /g − 平均粒子サイズD50:10から20μm − 多孔度:47から53% − 3モル規定KOH溶液内の膨潤:<10% − フォーム陽極(AA電池)における比充電容量:> 250mAh/g − 水含有量:<1%。 【0033】以下の実施例を用いて本発明の説明を行うが、制限するものとして解釈されるべきではない。 【0034】 【実施例】 1. 反応性を示す水酸化ニッケルの製造 a) 電解 電解セル(70L)が備わっている電解反応槽に食塩溶液(50gのNaCl/L)を200L仕込み、そして遠心分離ポンプを用いて、この電解溶液を2つの容器間で循環させた。 Ni団鉱を充填した、側表面がふるい状のタンタル製バスケット2個を、上記電解セルの中に吊した。 電極の全面積が0.5m 2になるように、陽極として上記タンタル製バスケットを連結しそしてその側表面の反対側に配置させる陰極として純ニッケルシートを連結した。 1000A/m 2の電流密度を用いて電解を4.2Vおよび500Aで実施した。 この電解を行っている間連続的に硫酸ニッケルと硫酸コバルトの溶液(2 50gのNiSO 4・7H 2 O/L;250g/LのCo SO 4・7H 2 O)を1時間当たり200mLの量で上記電解セルに供給した。 【0035】5時間後、生じた懸濁液を40L/時の量で連続的にこの循環容器から排出されると同時に、この電解反応槽内の液体体積が一定のままであるように、この電解セルに新しい食塩溶液をポンプ輸送した。 次に、 バッチ式でこの懸濁液を濾過し、そしてさらなる電解過程では、この濾液をその新鮮な食塩溶液の代わりにこの電解セルの中にフィードバックした。 その結果として、 この用いる追加的食塩溶液は、この連続操作の初期段階で用いたもののみであり、その後、この反応槽を一定状態で運転している間、密封回路が確立された。 この懸濁液は良好な濾過性を示し、水含有量が平均で90%のゲル様一次生成物が得られた。 それに連行される水を、このゲル様一次生成物のための洗浄水としてこのシステムの中に再びフィードバックした。 化学分析を行った結果、その乾燥させたゲル内の硫酸塩含有量は平均で1. 8%でありそして塩化物含有量は2%であった。 この実験期間は全体で105時間であった。 この連続運転を行っている間、この期間中に得られたゲル様一次生成物は全体で870kgであった。 【0036】b) NaOH内の条件付け この電解反応槽から得られる湿ったゲル様一次生成物の200kgを、水が200L入っている加熱されている二重ジャケット付き反応槽の中に、激しく撹拌しながら入れることによって、これらを細かく分散させた。 次に、NaOHを用いて13.7のpHを確立した後、この懸濁液を撹拌しながら80℃にまで加熱し、この温度で6時間保持した。 【0037】次に、ヌッチェフィルターを用いて濾過を実施した後、このヌッチェフィルターから得られる生成物を水で洗浄した。 乾燥オーブン内で乾燥を行った後、 Co含有量が1%の水酸化ニッケルが19.7kg得られた。 アニオン系汚染物量は500ppm未満であった。 このバルク密度は1.3g/cm 3であり、そしてタップ密度は1.8g/cm 3であった。 この比BET 表面積(N 2ワンポイン方法で測定)は非常に高い値を示し、88m 2 /gであった。 (101)反射の半幅は2.0であった。 【0038】2. 塩化ニッケルヘキサミンの製造 a) NH 3 (25%濃度)を不連続使用 実施例1に従って電解製造した高活性の水酸化ニッケルゲルが100g/Lそして食塩が280g/L入っている懸濁液の1リットルにアンモニア(25%濃度)を1 kg加えた後、冷却しながら1時間撹拌した。 実験室用ヌッチェを通して吸引することによって、この反応混合物を濾過で取り出した後、分割して少量の濃NH 3を用いてそれの洗浄を行った。 [Ni(NH 3 ) 6 ]Cl 2が90.5%の収率で226g得られた。 【0039】この母液には、複合的に結合している水酸化ニッケルが9.5gそしてNaOHが78g含まれていると共に、過剰のアンモニアが含まれていた。 短い充填カラムを用い、その過剰量のアンモニアを25%濃度の水溶液として蒸留除去した。 【0040】この方法では、良好に沈降する濾過可能生成物として、複合的に結合した水酸化ニッケルが9.5 g沈澱してきた。 濾過を行いそして少量の水で洗浄を行った後、NaClが280g(3.2モル/L)およびNaOHが78g(1.3モル/L)含まれている濾液が1.5リットル得られた。 【0041】b) NH 3 (25%濃度)を連続使用 撹拌および冷却しながら、オーバーフローが備わっている2リットルビーカーの中に、高活性の水酸化ニッケルゲルが100g/LそしてNaClが280g/L入っている懸濁液を0.5リットル/時で連続的にポンプ輸送すると共に、0.5リットルのアンモニア(25%濃度)もまた連続ポンプ輸送した。 ディップパイプにより、そのオーバーフロー物をエルトリエータの中に供給し、この中で、その生じた塩化ニッケルヘキサミンの沈澱を生じさせた。 このエルトリエータから取り出した濾液には、複合的に結合している水酸化ニッケルが2g/ Lそして水酸化ナトリウムが40g/L含まれていると共に、またNaClが140g/Lと過剰のアンモニアが含まれていた。 平均滞留時間を4時間にすると、これは、その高活性水酸化ニッケルゲルが塩化ニッケルヘキサミンに変化する変換率が92%であることに相当している。 NaClが190g/LそしてNH 3が40g/ L入っているこの濾液の1リットルを、パラグラフa 1)と同様に短い充填カラムを用いて処理した。 凝縮物として25%濃度のアンモニアが得られ、そしてその沈澱してきた水酸化ニッケルを分離した後、NaClが1 40g(3.4モル/L)およびNaOHが40g (1.4モル/L)含まれている工程液が700mL得られた。 【0042】c) 蒸気としてNH 3 (50%濃度)を連続使用 冷却されている10リットルの推進用ジェット反応槽内で連続的に、高活性の水酸化ニッケルゲルと食塩とアンモニアとの反応を実施した。 【0043】充填カラムを通して蒸発させることにより、希釈工程溶液からアンモニアを入手し、これを前以て凝縮させることなく直接、50%濃度のNH 3 /H 2 O 蒸気混合物としてこの推進用ジェット反応槽に供給した。 高活性水酸化ニッケルゲルが100g/L入っている懸濁液を3リットル/時で連続的にこの推進用ジェット反応槽の中に供給すると共に、食塩を280g/Lで供給し、そして蒸気混合物としてNH 3を600g/時そしてH 2 Oを600g/時で供給した。 この推進用ジェット反応槽のオーバーフロー物を、ディップパイプを通してエルトリエータの中に導き、この中で、その生じた塩化ニッケルヘキサミンの沈澱を生じさせた。 この取り出される透明な濾液(4リットル/時)には、複合的に結合している水酸化ニッケルが3g/L、NaClが210g、NaOHが49gそしてNH 3が70g/L 含まれていた。 これは96%の変換率に相当している。 【0044】3. コンパクトな水酸化ニッケルの製造 a) 5リットルの連続流れ撹拌タンク反応槽内における連続製造 塩化ニッケルヘキサミンが入っている粘性を示す懸濁液(400gから600gのNH 3 、7%濃度)を撹拌することによって、原料容器の中にポンプ輸送可能な状態のままにした。 この懸濁液を500g/時で連続的に、 70℃に加熱されている5リットルの連続流れ撹拌タンク反応槽の中にポンプ輸送した。 第二成分として、Na OHが60g/LそしてNaClが140g/L含まれているpH調整した工程液を約1.2リットル/時で加えた。 【0045】この反応槽内の平均滞留時間は約3時間であった。 21時間後、その取り出した懸濁液から、濾過を行いそしてH 2 Oを用いた洗浄を行った後、1.6g /cm 3の充填密度を示す、コンパクトな、非常に濾過が容易な水酸化ニッケルが得られた。 【0046】b) 100リットルの推進用ジェット反応槽内における連続製造 混合用ノズルと高容量の循環ポンプを用いることで反応槽の混合を最適にしそして高せん断力の発生を保証する、推進用ジェット反応槽を用いて、塩化ニッケルヘキサミンと水酸化ナトリウムとを反応させることで、コンパクトな水酸化ニッケルを生じさせた。 600gのNH 3 (7%濃度)の中に400gの塩化ニッケルヘキサミンが入っている懸濁液を原料容器内で撹拌することによって、ポンプ輸送可能な状態のままにした。 ホースポンプを用いてこの懸濁液を20g/時で、73℃の温度に保持されているその推進用ジェット反応槽の中に供給した。 反応成分として連続的に、NaOHが65g/LそしてNaClが200g/L含まれている工程液を約4 3リットル/時で供給した。 この工程液のpHを11. 4から11.6に維持するpH調節様式で、これの添加を行った。 この平均滞留時間は平均で約1.6時間であった。 【0047】16時間後、この推進用ジェット反応槽のオーバーフローから、非常に急速に沈降するコンパクトな水酸化ニッケルが得られ、これは、極めて容易に濾過可能であると共に、約7リットル/kgの温水を用いることでその塩化物含有量が<500ppmに到達するところまで洗浄可能であった。 この水酸化ニッケルの充填密度は平均で1.9g/cm 3であり、そのタップ密度は2.1g/cm 3であった。 この球形粒子の平均粒子サイズは平均で12μmであった。 【0048】本発明の特徴および態様は以下のとおりである。 【0049】1. 低い溶解性を示す、一般式M (x) (OH) x [式中、M=Co、Zn、NiおよびCu から成る群から選択される金属であり、そしてxはこの金属の原子価である]で表される金属水酸化物の製造方法において、第一段階で、反応性を示す金属水酸化物と錯化剤(L)とをアルカリ金属塩(AY)の存在下で反応させることで一般式ML n Y mで表される金属錯体塩とアルカリ金属水酸化物の溶液を生じさせた後、第二段階で、約7以上のpHでアルカリ金属水酸化物の溶液と反応させることによって該金属錯体塩の分解を生じさせることにより、低い溶解性を示す金属水酸化物と錯化剤とアルカリ金属塩を生じさせることを特徴とする方法。 【0050】2. アンモニア、並びに鎖長が1から6 の有機モノアミン類および有機ジアミン類から成る群から選択される1種以上の薬剤を錯化剤として用いることを特徴とする第1項記載の方法。 【0051】3. Co、Zn、Mg、CaおよびCd から成る群から選択される元素の1種以上を全体で10 重量%以下の量で用いて該金属水酸化物のドープ処理を行うことを特徴とする第1または2項いずれか記載の方法。 【0052】4. 30から85℃の範囲の温度で実施することを特徴とする第1または2項の1項記載の方法。 【0053】5. 温度範囲が45から80℃である第4項記載の方法。 【0054】6. 新しく沈澱させた金属水酸化物を反応性を示す金属水酸化物として用いることを特徴とする第1または2項の1項記載の方法。 【0055】7. 金属の陽極酸化で入手した金属水酸化物を反応性を示す金属水酸化物として用いることを特徴とする第1または2項の1項記載の方法。 【0056】8. この方法を連続的に実施することを特徴とする第1または2項の1項記載の方法。 【0057】9. 該錯化剤とアルカリ金属塩を第一段階にフィードバックすることを特徴とする第1または2 項の1項記載の方法。 【0058】10. 該第一段階で生じさせたアルカリ金属水酸化物の溶液を用いて該金属錯体塩の分解を生じさせることを特徴とする第1または2項の1項記載の方法。 【0059】11. 受動もしくは能動混合素子またはフロージェットで激しく撹拌することによって生じさせた強力な乱流内で該金属錯体塩の分解を生じさせることを特徴とする第1または2項の1項記載の方法。 【0060】12. 0.5から10時間から成る限定した滞留時間で該分解を反応槽内で生じさせることを特徴とする第1または2項の1項記載の方法。 【0061】13. 1から4時間から成る限定した滞留時間で該分解を反応槽内で生じさせることを特徴とする第1または2項の1項記載の方法。 【0062】14. この製造をループ反応槽内で行うことを特徴とする第1または2項の1項記載の方法。 【0063】15. (a)Co、Zn、Mg、CaおよびCdから成る群から選択される元素の1種以上を全体で10重量%以下の量で用いて該金属水酸化物のドープ処理を行うこと、(b)30から85℃の範囲の温度で実施すること、(c)新しく沈澱させた金属水酸化物を反応性を示す金属水酸化物として用いること、(d) 錯化剤とアルカリ金属塩を第一段階にフィードバックしながらこの方法をループ反応槽内で連続的に実施すること、そして(e)受動もしくは能動混合素子またはフロージェットで激しく撹拌することによって生じさせた強力な乱流内で該金属錯体塩の分解を生じさせること、を特徴とする第1または2項の1項記載の方法。 【図面の簡単な説明】 【図1】図1は本発明の金属水酸化物の製造方法を示す図である。 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ビルフリート・グトクネヒト ドイツ38642ゴスラー・ビルヘルム−ゼフ ゲ−ベーク10 (72)発明者 デイルク・ナウマン ドイツ38667バトハルツブルク・ゲーテシ ユトラーセ14アー (72)発明者 アルミン・オルブリヒ ドイツ38723ゼーゼン・アルテドルフシユ トラーセ20 (72)発明者 トマス・リヒター ドイツ38640ゴスラー・オベラートリフト ベーク25 (72)発明者 ヨゼフ・シユモル ドイツ38642ゴスラー・ルドルフ−ニツケ ル−ベーク3 |