【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、塩浴中で鋼部品を熱処理する際に生じる、硝酸塩・亜硝酸塩・水酸化物含有廃塩から塩成分を選択的に回収するため、廃塩を水に溶解し、不溶性残留物を分離し、アルカリ硝酸塩を分別晶出させる方法に関する。 【0002】 【従来の技術】鋼の硬度ないしは耐磨耗性を高めるために、久しく熱処理法が使用される。 その際、加工片を塩溶融液中で処理する塩浴技術が磨耗保護工業のおいて重要な位置を占める。 殊に加炭浴中での処理後部品の冷却のために、亜硝酸塩・硝酸塩・水酸化物含有塩浴が使用される。 これら塩浴の主成分は、アルカリ金属ナトリウムおよびカリウムの亜硝酸塩、硝酸塩および水酸化物である。 さらに、これら塩浴は通常なお少量のバリウムおよび塩化物および大量の炭酸塩を含有する。 塩溶融液中で、鋼部品に付着するシアン化物塩が酸化され、鋼の腐食抵抗が著しく増加する。 これらの浴中でのとくに有利な冷却速度により、殊に高い強度および高い硬度が得られる。 塩溶融液は加工片表面からスケール粒子が剥落することにより汚染され、化学反応のために活性塩浴成分が消費されるので、浴は規則的間隔でスラッジ除去し、 新しい塩を補充しなければならない。 このスラッジはなお50〜99%が塩成分からなり、廃塩として地下廃棄物処理所に投棄しなければならない。 【0003】従来、これらの廃塩は経済的に回収できないものとされていたので、廃塩問題を緩和するための努力は堆積可能性の改善および部分的除毒に集中する。 【0004】焼入れ部廃塩から塩成分を部分的に回収するための解決発端は、たとえば雑誌CAV45(197 3)、69〜75ページおよびChemie−Ing. −Technik45(1973)、1285〜128 9ページに記載されている。 これらの方法は、硝酸塩含有廃塩およびシアン化物含有廃塩の同時処理を意図する。 その際、塩溶融液中でシアン化物は亜硝酸塩および硝酸塩との反応により除毒され、過剰の亜硝酸塩および硝酸塩の分解は下等コークスの添加によって達成される。 次の溶解工程において、炭酸バリウムを他の可溶性塩から分離することができる。 この方法の決定的な欠点は、殊にシアン化物含量が、いくつかの浴タイプにおけるように、5%の限界値を越える時に、塩溶融液中でのシアン化物除毒の際に爆発様反応が惹起することである。 従って、反応経過の制御は大きい分析費用なしでは殆ど不可能である。 さらに、この反応において有毒な排ガス(NO xおよびCO)が生じ、これをたとえば接触的に燃焼しなければならない。 他の工程、炭酸バリウムの沈殿工程において、高い塩含量を有する排水が生じ、 これに対する回収の記載はされていない。 【0005】焼入れ部廃塩からの塩成分の部分的回収は、ドイツ国特許(DE−OS)2400318号およびドイツ国特許(DE−OS)2400319号に開示されている。 溶融液中450〜550℃で実施されるシアン化物除毒後、廃塩は熱水で浸出される。 大部分炭酸バリウムからなる残留物が分離され、たとえば塩化バリウムへの処理に供給される。 溶解した炭酸塩は、硝酸の添加により二酸化炭素に変換され、塩化物量は水の蒸発により10〜15重量%に減少し、その際塩化ナトリウムは結晶化物として得ることができる。 残溶液は160 ℃で乾燥され、硝酸塩および亜硝酸塩ならびに2%の塩化ナトリウムおよび塩化カリウムからなる塩混合物は、 直接再び焼入れ部において使用することができる。 しかしこの方法も欠点を有し、大工業的反応は阻止された。 それで、硝酸の添加の際にNO xガスが大量に遊離し、 接触的に燃焼しなければならない。 溶液中へ硝酸バリウムを投入することによる酸添加の回避も、付加的工程を必要とする。 殊に、得られる塩の純度は、焼入れ塩製造のための原料に対する要求に合致せず、強く変動する使用した廃塩の組成に強く依存する。 得られた硝酸塩. 亜硝酸塩. 塩も、変動する組成に基づき直接に再使用できず、とくに残留する塩化物濃度が工業的要求に合致しない。 さらに過去においては、蓄熱装置の使用により生じる廃塩の組成はシアン化物および炭酸塩含量が小さくなり、塩化物含量が大きくなる方向に変化する。 記載した方法は、付加的工程なしにはこれらの変化した基本条件を考慮することができない。 【0006】アルカリ塩化物の分離方法は自体公知であるが、これらの方法は直接に焼入れ部廃塩からのアルカリ硝酸塩の回収には転用できない、それというのもここでは異なる原料の組成を考慮しなければならずかつ他の方法条件を配慮しなければならないからである。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】従って本発明の課題は、簡単に実施できかつ直接再利用可能な塩が高い収率で得られる、塩浴中で鋼部品の熱処理の際に生じる亜硝酸塩・硝酸塩・水酸化物含有廃塩から、廃塩を水に溶解し、不溶性残留物を分離し、アルカリ硝酸塩を分別晶出させることにより塩成分を選択的に回収する方法を見出すことであった。 【0008】 【課題を解決するための手段】この課題は本発明により、固体廃塩を1〜50mmの粒度に粉砕し、硝酸酸性の過酸化水素含有溶液に溶解し、不溶性残留物を濾別した後に中和した濃塩溶液を−10〜+20℃に冷却することにより硝酸カリウムを沈殿させ、溶液を60〜12 0℃でさらに濃縮することにより塩化ナトリウムを晶出させ、残溶液から濃硝酸の添加により硝酸ナトリウムを晶出させることにより解決される。 【0009】有利に、廃塩を溶解した後、炭酸塩およびアルカリの添加により微弱アルカリ性媒体中に場合により存在するバリウムを炭酸バリウムとして沈殿させ、分離する。 【0010】とくに、廃塩は5〜10mmの粒度に粉砕される。 【0011】固体亜硝酸塩. 硝酸塩. 水酸化物含有焼入れ部廃塩を1mm〜50mm、有利には5mmから10 mmの粒度に粉砕した後、硝酸酸性過酸化水素含有出発混合物中で浸出することにより塩成分は完全に溶解することが見出された。 その際、同時に亜硝酸塩イオンは硝酸塩に酸化され、ならびに炭酸塩および水酸化物は硝酸塩の生成下に中和される。 出発混合物中に過酸化水素の存在により、期待に反して、亜硝酸塩を粗大粒状で投入すれば硝酸酸性出発混合物と接触する際にNO xガスは遊離しない。 これは、比較的少ない反応表面積および生成するNO xガスが溶液中で過酸化水素と直ちにさらに反応することによって説明できる。 さらに、溶液中でのこの試薬の組合せにより、場合により不正確に表示されるシアン化物含有塩を亜硝酸塩および過酸化水素との反応により問題なく除毒することが保証される。 方法の制御は、pH値の調節およびレドックス電位の測定によって行うことができる。 他の利点は、酸化および中和の際に遊離する反応熱が吸熱溶解過程を補償することである。 これにより、50℃〜80℃の溶解温度が生じ、これにより非常に高い塩濃度の達成が可能になる。 それで、65%の硝酸50kgおよび50%の過酸化水素溶液50kgからなる出発混合物に、硝酸塩含有廃塩10 0kg〜200kgを溶解することができる。 【0012】炭酸カリウムの添加により、場合により存在するバリウムは炭酸バリウムとして沈殿させ、こうして他の不溶性汚染物と一緒に濾過により分離することができる。 【0013】そこで、塩溶液から個々の塩種類を選択的晶出によって得ることができる。 その際、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、引き続き硝酸ナトリウムの順序での目指す晶出により、塩を実際完全に高い純度で回収することが達成される。 その際、方法パラメーターはイオン選択性電極によって監視できる。 【0014】硝酸カリウムは、溶液を−10℃と+20 ℃の間の温度に冷却することにより純粋な形で晶出させることができる、それというのもナトリウム塩の溶解度は温度により殆ど影響されず、ナトリウム塩は溶液中にとどまるからである。 たとえば硝酸カリウム30重量%、硝酸ナトリウム30重量%および塩化ナトリウム5 重量%を有する溶液から溶液を0℃に冷却することにより、溶解した硝酸カリウムの66%を晶出させることができる。 硝酸カリウム溶液で簡単に洗浄することにより、結晶から付着溶液が除去される。 それで、溶液組成に最適な晶出温度を選択すれば96%以上の純度を有する硝酸カリウムが得られる。 【0015】次の工程において、とくに晶析装置中で溶液を60℃と120℃の間の温度で濃縮する場合、硝酸および過酸化水素溶液により供給された水が蒸発し、塩化ナトリウムは濃度約3重量%になるまで晶出する。 【0016】最後の工程で、濃硝酸の添加により、硝酸ナトリウムが分離される。 その際意外にも双方の硝酸塩は異なる挙動をするので、硝酸ナトリウムを98%以上の非常に高い純度で得ることができ、洗浄することにより純度はむしろ99%以上に上げることができる。 溶液中の硝酸ナトリウムの濃度を5〜15重量%に下げるためには、10重量%と30重量%の間の硝酸濃度が必要であり、その際より高い硝酸濃度は硝酸ナトリウム濃度の強い低下を惹起する。 付着する硝酸を有する塩を加熱することにより、塩中のなお少量の塩化物分量は完全にガス状の塩化水素に変換することができるので、軽微に水酸化物を含有する硝酸ナトリウム溶液中で中和した後に最高の純度の要求を満足する生成物が得られる。 【0017】図は、記載した工程の経過が表されている本発明による方法の流れ図を示す。 廃塩の粉砕後、硝酸酸性の過酸化水素含有出発混合物中での浸出が行なわれる。 炭酸バリウムおよび他の不溶性固体が分離される。 溶液から個々の塩が、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、 硝酸ナトリウムの順序で選択的晶出により分離される。 残留する硝酸酸性溶液は、他の廃塩の浸出のために戻される。 【0018】 【実施例】次の例は本発明を詳説するものである: 1. 硝酸塩含有廃塩混合物100kgを、10mmの粒度に粉砕した。 廃塩を10kgずつの部分量で処理した。 このために廃塩を55℃で、65%の硝酸2.7k gならびに50%の過酸化水素溶液4kgを含有する出発混合物中で浸出した。 ポリマーの凝集剤を用いて、溶液から不溶性汚染物を除去した。 炭酸カリウム0.1k gを添加し、pH値を水酸化カリウムの添加により9に調節し、バリウムを炭酸塩として沈殿させた。 その後、 硝酸でpH7に中和した溶液を−5℃に冷却し、晶出した硝酸カリウムを分離した。 その都度水4.1lを蒸発させることにより、塩化ナトリウムが温度105℃で晶出した。 濃溶液に上述量の硝酸を加え、これにより晶出した硝酸ナトリウムを−10℃で分離しならびに100 ℃に加熱することにより付着塩化物を除去した。 硝酸酸性溶液に、上記に記載した量の過酸化水素を加え、次のバッチの浸出のために戻した。 【0019】処理の物質収支は次の結果を生じた: 【0020】 【表1】 【0021】2. 亜硝酸塩の少ない、硝酸塩含有廃塩100kgを10mmの粒度に粉砕した。 廃塩を10k gずつの部分量で処理した。 このため、廃塩を65℃ で、65%の硝酸15.1kgならびに50%の過酸化水素溶液1.7kgを含有する出発混合物中で浸出した。 ポリマーの凝集剤を用いて、不溶性汚染物を除去した。 炭酸カリウム3gを添加し、水酸化カリウムを約9 のpH値に達するまで添加することにより、溶液からバリウムを炭酸塩として沈殿させた。 その後、硝酸でpH 7に中和した溶液を10℃に冷却し、晶出した硝酸カリウムを分離した。 水3.4lを蒸発させることにより、 温度90℃で塩化ナトリウムを晶出させた。 濃溶液に、 30℃で上述量の硝酸を加え、これにより晶出した硝酸ナトリウムを濾別した後、100℃に加熱することにより付着塩化物を除去した。 硝酸酸性溶液に、上記に記載した量の過酸化水素を加え、浸出のために戻した。 【0022】処理の物質収支は次の結果を生じた: 【0023】 【表2】 【0024】3. カリウムの多い、硝酸塩含有廃塩10 0kgを10mmの粒度に粉砕した。 廃塩を、10kg ずつの部分量で処理した。 このため廃塩を65℃で、6 5%の硝酸2.8kgならびに50%の過酸化水素溶液5.2kgを含有する出発混合物中で浸出した。 ポリマーの凝集剤を用い、不溶性汚染物を分離した。 炭酸カリウム0.08kgを添加し、水酸化カリウムを約9のp H値に達するまで加えることにより、バリウムを炭酸塩として沈殿させ、分離した。 その後、硝酸でpH9に中和した溶液を−10℃に冷却し、晶出した硝酸カリウムを分離した。 水3.4lを蒸発させることにより、温度105℃で塩化ナトリウムを晶出させた。 濃溶液に、上記に記載した量の硝酸を加え、温度10℃で晶出した硝酸ナトリウムを分離した。 引き続き、100℃に加熱することにより、付着塩化物を除去した。 硝酸酸性溶液に、上記に記載した量の過酸化水素を加え、浸出のために戻した。 【0025】処理の物質収支は次の結果を生じた: 【0026】 【表3】 【0027】4. ナトリウムの多い、硝酸塩含有廃塩1 00kgを10mmの粒度に粉砕した。 廃塩を10kg ずつの部分量で処理した。 このため廃塩を50℃で、6 5%の硝酸6.8kgならびに50%の過酸化水素溶液0.05kgを含有する出発混合物中で浸出した。 ポリマーの凝集剤を用い、溶液から不溶性汚染物を除去した。 炭酸カリウム0.03kgを添加し、水酸化カリウムを約9のpH値に達するまで加えることにより、バリウムを炭酸塩として沈殿させた。 その後、硝酸でpH7 に中和した溶液を15℃に冷却し、晶出した硝酸カリウムを分離した。 水2.4lを蒸発させることにより、温度100℃で塩化ナトリウムを晶出させた。 濃溶液に、 上述量の硝酸を加え、これにより晶出した硝酸ナトリウムを−5℃で分離しならびに100℃に加熱することにより付着塩を除去した。 硝酸酸性溶液に上記に記載した量の過酸化水素を加え、浸出のために戻した。 【0028】処理の物質収支は次の結果を生じた: 【0029】 【表4】 【0030】5. 例1からの硝酸塩含有廃塩混合物10 0kgを、見出されたパラメーターから逸脱して処理した。 塩を、0.5mm以下の粒度に粉砕し、10kgずつの部分量で65℃で、65%の硝酸2.7kgならびに50%の過酸化水素溶液4kgを含有する出発混合物中で浸出した。 その際、若干のニトロ−ゼガス(N O x )が遊離した。 ポリマーの凝集剤を用い、溶液から不溶性汚染物を除去した。 炭酸カリウム1kgを添加し、水酸化カリウムを約9のpHに達するまで加えることにより、バリウムを炭酸塩として沈殿させた。 その後、硝酸でpH7に中和した溶液を30℃に冷却し、晶出した硝酸カリウムを分離した。 水4.1lを蒸発させた後、温度50℃で塩化ナトリウムを晶出させた。 濃溶液に、上述量の硝酸を加え、これにより晶出した硝酸ナトリウムを0℃で分離した。 硝酸酸性溶液を、上記に記載した量の過酸化水素を加え、浸出のために戻した。 【0031】処理の物質収支は次の結果を生じた: 【0032】 【表5】 【0033】この例は、本発明によるパラメーターから逸脱する場合、回収される塩は不純になり、廃塩を溶解する際に窒素酸化物が出現することを示す。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明による方法の流れ図 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 シュテファン ヴィッガー ドイツ連邦共和国 クラウスタール−ツェ ラーフェルト ロルシュトラーセ 38 (72)発明者 エーベルハルト ゴック ドイツ連邦共和国 ゴスラー キーフェル ンブリンク 16 (72)発明者 イェルク ケーラー ドイツ連邦共和国 クラウスタール−ツェ ラーフェルト ズィーベンシュテルンヴェ ーク 9 |