ナトリウムとカリウムの分別抽出装置および分別抽出方法

申请号 JP2011523680 申请日 2010-07-22 公开(公告)号 JPWO2011010681A1 公开(公告)日 2013-01-07
申请人 日立造船株式会社; 发明人 浜野 修史; 修史 浜野; 常平 山本; 常平 山本; 諭 奥村; 諭 奥村; 加津也 佐々木; 加津也 佐々木;
摘要 ナトリウムとカリウムと塩素とを含有する焼却灰を用いて60℃程度の 水 溶液を作り出す灰反応装置12と、水溶液の 温度 を30℃に低下させて塩化カリウムを生成分離させる冷却晶析装置16と、水溶液と二 酸化 炭素含有ガスとを反応させて炭酸水素ナトリウムを生成分離させる吸収塔11と、冷却晶析装置16及び吸収塔11で塩化カリウム及び炭酸水素ナトリウムを生成分離させた後の液を灰反応装置12に戻すための循環経路13とを有する分別抽出装置である。
权利要求
  • ナトリウムとカリウムと塩素とを含有する原料を用いて、ナトリウムとカリウムと塩素とを含有する第1の温度の水溶液を作り出す水溶液作成手段と、
    前記水溶液の温度を第1の温度よりも低温の第2の温度に低下させて塩化カリウムを生成分離させる冷却晶析装置と、
    前記水溶液と二酸化炭素含有ガスとを反応させて炭酸水素ナトリウムを生成分離させる吸収塔と、
    前記冷却晶析装置および吸収塔で塩化カリウムおよび炭酸水素ナトリウムを生成分離させた後の液を前記水溶液作成手段に戻すための戻し手段とを有することを特徴とするナトリウムとカリウムの分別抽出装置。
  • 冷却晶析装置と吸収塔とがこの順で直列に配置されていることを特徴とする請求項1記載のナトリウムとカリウムの分別抽出装置。
  • 水溶液作成手段は灰反応装置であり、原料はさらにマグネシウムおよびカルシウムを含み、灰反応装置に戻される液は吸収塔で水溶液と二酸化炭素とが反応することにより生成された炭酸イオンを含み、前記灰反応装置は、この灰反応装置に戻される液に含まれる炭酸イオンと前記原料中のマグネシウムおよびカルシウムとを反応させて炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウムを生成分離させることが可能であることを特徴とする請求項1または2記載のナトリウムとカリウムの分別抽出装置。
  • ナトリウムとカリウムと塩素とを含有する原料を用いて、ナトリウムとカリウムと塩素とを含有する第1の温度の水溶液を生成させ、
    前記水溶液の温度を第1の温度よりも低温の第2の温度に低下させることで、前記水溶液から塩化カリウムを生成分離させ、
    前記水溶液と二酸化炭素含有ガスとを反応させることで、前記水溶液から炭酸水素ナトリウムを生成分離させ、
    前記塩化カリウムおよび炭酸水素ナトリウムを生成分離させた後の液を前記第1の温度の水溶液の生成に供することを特徴とするナトリウムとカリウムの分別抽出方法。
  • 水溶液から塩化カリウムを生成分離させた後に、水溶液から炭酸水素ナトリウムを生成分離させることを特徴とする請求項4記載のナトリウムとカリウムの分別抽出方法。
  • 原料としてさらにマグネシウムおよびカルシウムを含む原料を用い、水溶液と二酸化炭素含有ガスとを反応させることで生成された炭酸イオンを含む液を第1の温度の水溶液の生成に供し、この液に含まれる炭酸イオンと前記原料中のマグネシウムおよびカルシウムとを反応させて炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウムを生成分離させることを特徴とする請求項4または5記載のナトリウムとカリウムの分別抽出方法。
  • 说明书全文

    本発明は、ナトリウムとカリウムと塩素とを含む原料からナトリウムとカリウムとを分別して抽出するための分別抽出装置および分別抽出方法に関する。

    家庭から排出されたごみや産業廃棄物などは、焼却炉において焼却処理されるのが通例となっている。 焼却処理の結果、焼却灰が発生するが、この焼却灰は埋め立てなどの処理に供されている。 しかし、家庭から排出されるごみにはナトリウムやカリウムが含まれていることが多く、特にナトリウムは塩化物すなわち食塩の形で含まれていることが多い。 このため、ナトリウムやカリウムや塩素は、焼却灰中にも一定量以上含まれており、焼却灰を埋設処理してしまったのでは、これらの資源が回収されず、再利用ができなくなる。

    ところで、生活排などの排水からナトリウムやカリウムを回収するための方法が既に提案されている(例えば、日本国の特開2001−26418号公報参照)。 この回収方法は、排水を1価イオン選択性イオン交換膜を具備した電気透析装置によって1価イオンを含む濃縮水として分離回収する電気透析工程と、その回収水から晶析操作によって塩化ナトリウムや塩化カリウムを分離回収する工程とを具備している。

    本発明は、家庭から排出されたごみや産業廃棄物などの、ナトリウムとカリウムと塩素とを含む原料から、そのナトリウムとカリウムとを、互いに分別して塩の形で効果的に回収することができる新たな装置および方法を提供することを目的とする。

    上記課題を解決するため、本発明の第1の側面は、ナトリウムとカリウムと塩素とを含有する原料を用いて、ナトリウムとカリウムと塩素とを含有する第1の温度の水溶液を作り出す水溶液作成手段と、前記水溶液の温度を第1の温度よりも低温の第2の温度に低下させて塩化カリウムを生成分離させる冷却晶析装置と、前記水溶液と二酸化炭素含有ガスとを反応させて炭酸水素ナトリウムを生成分離させる吸収塔と、前記冷却晶析装置および吸収塔で塩化カリウムおよび炭酸水素ナトリウムを生成分離させた後の液を前記水溶液作成手段に戻すための戻し手段とを有することを特徴とするナトリウムとカリウムの分別抽出装置であり、
    また前記分別抽出装置において、冷却晶析装置と吸収塔とがこの順で直列に配置されたものであり、
    さらに前記分別抽出装置において、水溶液作成手段が灰反応装置であり、原料はさらにマグネシウムおよびカルシウムを含み、灰反応装置に戻される液は吸収塔で水溶液と二酸化炭素とが反応することにより生成された炭酸イオンを含み、前記灰反応装置は、この灰反応装置に戻される液に含まれる炭酸イオンと前記原料中のマグネシウムおよびカルシウムとを反応させて炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウムを生成分離させ得るようにしたものである。

    また、本発明の他の側面は、ナトリウムとカリウムと塩素とを含有する原料を用いて、ナトリウムとカリウムと塩素とを含有する第1の温度の水溶液を生成させ、前記水溶液の温度を第1の温度よりも低温の第2の温度に低下させることで、前記水溶液から塩化カリウムを生成分離させ、前記水溶液と二酸化炭素含有ガスとを反応させることで、前記水溶液から炭酸水素ナトリウムを生成分離させ、前記塩化カリウムおよび炭酸水素ナトリウムを生成分離させた後の液を前記第1の温度の水溶液の生成に供することを特徴とするナトリウムとカリウムの分別抽出方法であり、
    また前記分別抽出方法において、水溶液から塩化カリウムを生成分離させた後に、水溶液から炭酸水素ナトリウムを生成分離させる方法であり、
    さらに前記分別抽出方法において、原料としてさらにマグネシウムおよびカルシウムを含む原料を用い、水溶液と二酸化炭素含有ガスとを反応させることで生成された炭酸イオンを含む液を第1の温度の水溶液の生成に供し、この液に含まれる炭酸イオンと前記原料中のマグネシウムおよびカルシウムとを反応させて炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウムを生成分離させる方法である。

    本発明によると、ナトリウムとカリウムと塩素とを含有する原料から、カリウムを塩化カリウムの形で分別抽出することができるとともに、ナトリウムを炭酸水素ナトリウムの形で分別抽出することができる。

    カリウムとナトリウムとを抽出した後の残りの液は、第1の温度の水溶液の生成に供するものであるため、系内にこれを循環させて再利用することが可能である。

    炭酸水素ナトリウムを生成する際に二酸化炭素含有ガスを用いるものであり、このガスはたとえば燃焼装置の排ガスを利用することができるため、本発明によれば、ナトリウムおよびカリウムの抽出と同時に二酸化炭素の固定化を図ることもできる。

    本発明の実施の形態に係るナトリウムとカリウムの分別抽出装置の概略構成を示す図である。

    塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの各水溶液の溶解度を示すグラフである。

    炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムの各水溶液の溶解度を示すグラフである。

    図1に示す装置の各部位における各イオン活量を示すグラフである。

    図1に示す装置の各部位における各イオン活量およびpHを示すグラフである。

    水溶液の循環可能範囲を示すグラフである。

    水溶液の循環可能範囲を示すグラフである。

    水溶液の循環可能範囲を示すグラフである。

    水溶液の循環可能範囲を示すグラフである。

    本発明の装置の性能例であって、図1に示す装置の各部位における各イオン活量およびpHを示すグラフである。

    本発明の装置の性能例であって、図1に示す装置の各部位における、各種塩の飽和溶解度に対する実濃度の割合を示すグラフである。

    図1において、11はCO 吸収塔、12は灰反応装置(水溶液作成手段)である。 灰反応装置12は、沈殿槽の形態をとることができる。 CO 吸収塔11と灰反応装置12との間には、水溶液を循環させるための循環経路13が設けられている。 この循環経路13において、14は灰反応装置12からCO 吸収塔11への水溶液供給経路、15はCO 吸収塔11から灰反応装置12への戻り経路(戻し手段)である。 循環経路13の水溶液供給経路14には、冷却晶析装置16が設けられている。

    17は粉砕機で、図外の焼却炉からの焼却灰を粉砕したうえで灰反応装置12へ供給可能である。 焼却炉としては、たとえば家庭から排出されるごみや産業廃棄物などを焼却させるものを挙げることができる。 このような焼却炉にて生成される焼却灰は、ナトリウムとカリウムと塩素とを含むとともに、カルシウムやマグネシウムを含むことが通例である。 ナトリウムと塩素とは、一般的には食塩の形態をとっている。 カリウムと塩素とは、一般的には塩化カリウムの形態をとっている。 灰反応装置12は撹拌装置18を備えている。

    CO 吸収塔11は、図外の焼却炉の煙道からの炭酸ガス(CO )を含む排ガスをその内部に通過させることでCO を吸収(処理)し、吸収後のガスを煙道に戻すことができるように構成されている。 19は煙道からの排ガスの供給口、20は煙道へ戻す排ガスの排出口である。 21はシャワーノズルで、CO 吸収塔11の内部を通過する排ガスに対して循環経路13からの水溶液を噴射させることが可能である。

    このような構成において、循環経路13には最初は水が循環されている。 図外の焼却炉で発生した焼却灰は、上述のようにナトリウムとカリウムと塩素とカルシウムとマグネシウムとを、たとえば食塩などの塩化物の形で含んでいる。 この焼却灰は粉砕機17に供給されて微細に粉砕され、そのうえで灰反応装置12に送り込まれる。

    灰反応装置12では、塩化物の形のナトリウムやカリウムやカルシウムやマグネシウムは水に溶け、そのうちのカルシウムおよびマグネシウムは、後述のように水中の炭酸イオンと反応して炭酸塩を形成し、その内部で沈殿して除去される。 詳細は後述するが、灰反応装置12は60℃程度(第1の温度)で処理を行うように温度設定される。

    このようにカルシウムやマグネシウムが除去された60℃の塩水溶液は、たとえば塩化ナトリウムと塩化カリウムとが混在した塩水溶液の形態となったうえで、水溶液供給路14を経て冷却晶析装置16に供給される。

    冷却晶析装置16では、供給された水溶液が30℃程度(第2の温度)に冷却される。 すると、塩化カリウムは、60℃における飽和濃度に比べて30℃における飽和濃度が大幅に低いという特性を有するため、液中に溶解していた塩化カリウムは、冷却晶析装置16の内部に塩として析出し、その底部に沈殿していく。 これにより、水溶液からカリウムを塩化カリウム(KCl)として分別抽出することができる。

    冷却晶析装置16は、水溶液を強制冷却する構成のものであっても良いし、場合によっては自然放熱の形態の単なるサイクロンによって装置を構成することも可能である。

    冷却晶析装置16において塩化カリウムを分別抽出した後の水溶液は、CO 吸収塔11に供給され、シャワーノズル21から塔内に散水される。

    CO 吸収塔11には、図外の焼却炉の煙道からのCO を含む排ガスが供給されている。 この排ガスは、塔内に散水された水溶液に接触される。 すると、CO は炭酸イオンの形で水溶液中に溶け込み、この炭酸イオンと水溶液中のナトリウムとが反応して、炭酸水素ナトリウム(NaHCO )が形成される。 この炭酸水素ナトリウムは、CO 吸収塔11の内部の水溶液中で析出し沈殿することで、系外に排出除去される。 これによって、焼却灰に含まれていたナトリウムが選択的に分別抽出されて分離除去される。

    ナトリウムを除去した後の水溶液は、余剰の炭酸イオンを含んだものとなっているが、その状態で灰反応装置12に送られる。 灰反応装置12では、上述のようにカルシウムやマグネシウムが水中の炭酸イオンと即座に反応し、炭酸カルシウム(CaCO )や炭酸マグネシウム(MgCO )となって、残灰とともに沈殿する。 沈殿した炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムや残灰は、系外に排出され、埋め立てに供されたり、またセメント原料などとして再利用される。

    より詳細には、図1に示す系においては、水溶液が循環経路13に沿って循環することで、ナトリウムイオンとカリウムイオンと塩素イオンとが次第に濃縮していき、飽和状態に達した後に塩化カリウムや炭酸水素ナトリウムといった塩の形で析出し沈殿していく。

    CO 吸収塔11に供給される排ガスについて説明する。 たとえばごみ焼却炉の排ガスはCO 濃度が10%程度であるが、全排ガスのうちの適当量が、CO 吸収塔11に供給されて水溶液に溶解することにより、ナトリウムの抽出に用いられるとともに、灰反応装置12における炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムの沈殿分離のために用いられる。 これによって排ガス中のCO の固定化が行われる。

    CO が固定化されて除去された後のガスは、CO 吸収塔11の排出口20から煙道に戻される。

    ここで、カリウムとナトリウムとを分別して抽出するための析出メカニズムについて説明する。

    図2は、塩化カリウム(KCl)および塩化ナトリウム(NaCl)の各水溶液の溶解度の温度依存性を示すグラフである。 横軸は温度、縦軸は溶解度を示す。 このグラフから分かるように、塩化ナトリウムの溶解度の温度依存性はあまり高くないが、塩化カリウムの溶解度の温度依存性は、塩化ナトリウムに比べて高い。 すなわち、水溶液の温度が低下すると、それにつれて塩化カリウムの溶解度が大きく低下するため、溶解度を超えた分の塩化カリウムが塩の形で析出する。 たとえば、塩化ナトリウムの濃度を26質量%未満に制御しておけば、冷却晶析装置16で析出することはない。

    図3は、炭酸水素ナトリウム(NaHCO )および炭酸水素カリウム(KHCO )の各水溶液の溶解度の温度依存性を示すグラフである。 図2のグラフと同様に、横軸は温度、縦軸は溶解度を示す。 このグラフから分かるように、0℃〜60℃の範囲では、炭酸水素ナトリウムの方が、炭酸水素カリウムよりも溶解度が低い。 したがって、吸収塔11へのCO の供給量を制御することによって、炭酸水素カリウムをその溶解度未満にした状態で且つ炭酸水素ナトリウムをその溶解度を超えた状態にすることで、CO 吸収塔11にて炭酸水素ナトリウムを選択的に析出させることができる。

    次に、系内のイオン挙動について説明する。 図4は、図1に示す装置の各部位における、Na 、K 、Cl 、トータルCO (HCO +CO 2− )の各イオンの活量を示したグラフである。 また図5は、図1に示す装置の各部位における、HCO 、CO 2−の各イオンの活量と、pHとを示したグラフである。

    図4のグラフに示すように、系内を流れる水溶液は、カリウムリッチの塩溶液である。 その基本イオンバランスは下記の式にて表わされる。

    [K +Na ]=[Cl +HCO +2CO 2−
    ところで、CO 2−は、その量が多い方が、灰反応装置12における炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムの固定化に有利である。 すなわち、Cl 濃度をあまり高くすることができない。 よって、塩化カリウムが析出する条件下では、必然的にK 濃度が上昇することになる。 ただ、CO 吸収塔11で炭酸水素ナトリウムを選択的に析出させるため、K 濃度は適当な上限が設定されることになる。

    CO 吸収塔11の運転温度について説明する。 CO をナトリウムと反応させるためには、CO 吸収塔11の設定温度が低い方が有利である。 しかし、CO 吸収塔11で炭酸水素ナトリウムが析出し過ぎると、灰反応装置12に供給される炭酸イオンの量が減少してしまう。 また灰反応装置12は、設定温度が高温である方が、反応時間が短く有利である。 このためCO 吸収塔11ではあまり温度を下げ過ぎないようにすることが好ましい。 しかし、CO 吸収塔11に供給されるCO 含有ガスが焼却炉からの排ガスである場合は、この排ガスはたとえば160℃以上の高温であり、またCO の吸収反応は発熱反応であるため、温度を下げるための工夫をすることが望ましい。 またCO 吸収塔11の設定温度が60℃を超えると、炭酸水素ナトリウムに分解が起こりやすくなるため、炭酸水素ナトリウムの析出に障害が出てくる可能性がある。

    これらのことを考慮しつつ循環経路13における水溶液の適正条件、つまり循環可能条件について説明すると以下のようになる。

    まず、循環経路13を循環する水溶液のpHについて説明する。

    このpHは、吸収CO 量や焼却灰量によって、他の薬品を使用せずに、制御することができる。 吸収CO 量によってpHを制御する場合は、CO 吸収塔11に導入するガス量を調節したり、循環経路13を循環する水溶液をバイパスさせたりすることで、そのpH制御を達成することができる。 図5に示すように、CO 吸収塔11では、水溶液にCO を吸収させると、下記反応式に示すように、CO 2−の活量低下よりもHCO の活量上昇の方が顕著となり、これに伴ってpHも変化する。

    CO 2− +CO (g)+H O=2HCO 3−
    ただし、pHの制御に際しては、上述のCO 吸収塔11の温度制御に及ぼす影響を考慮する必要がある。

    ここで、循環させる水溶液の条件について詳しく説明する。

    この循環させる水溶液については、適切な制御を行わないと、望まない化合物の析出により、循環の継続が困難になったり、また経済性を損ねたりする。 そこで、この分別抽出装置では、冷却晶析装置16における水溶液の温度、吸収塔11における水容液の温度(炭酸水素塩の析出温度)、吸収塔11の出口における水溶液のpH(CO の吸収量)に着目して、それぞれの適正な範囲を実験およびシミュレーションにより調べた。 この調査結果を図6〜図9のグラフにて示す。

    これらのグラフは、吸収塔11の出口における水溶液のpHをパラメータとし、横軸を吸収塔温度、縦軸を冷却晶析装置温度とし、各化合物の析出曲線つまり溶解度曲線を表わしたもので、斜線で示す範囲が水溶液の循環を継続し得る範囲を示している。

    これらのグラフから、各析出曲線から離れている方が安全であることから、適正範囲は、冷却晶析装置16での水溶液の温度範囲が30〜35℃、CO 吸収塔11での水溶液の温度範囲が35〜60℃(好ましくは、40〜45℃)、CO 吸収塔11出口での水溶液のpHが9.5〜10.0となる。

    なお、循環経路13を循環する水溶液がCO 吸収塔11において排ガスで加熱されることによって、スケールの発生が効果的に防止される。

    次に、循環経路13を循環する水溶液の水量について説明する。 CO 含有ガスが焼却炉からの排ガスである場合は、この排ガスは水分を含むため、これによって水量が増加する。 一方、灰反応装置12に供給される灰は水分を吸収して排出されるので、これによって水量が減少する。 水溶液、特に濃縮によって飽和状態となった水溶液は、排出残灰のリンスに使用することが可能である。 また、導入排ガスの冷却時に発生する凝縮水も、排出残灰のリンスに使用することが可能である。

    CO 吸収塔11は、その内部で炭酸水素ナトリウムの析出が起こるため、充填材を使用することは困難である。 CO 吸収塔11の壁面は、相対的に温度が低くなるため、析出が発生しやすい。 これに対し、壁面を加温してスケールの発生を防止することは難しいので、低濃度の塩水などを用いて壁面にシャワー散布することが効果的である。

    ところで、炭酸水素ナトリウムは、析出粒径が小さくならないようにうまく結晶成長させることが好ましい。 析出粒径が小さくなると、沈降性やろ過性が低下するばかりか、CO 吸収塔11へのガス吹き込みの際に煙道への付着が発生するおそれがある。 また炭酸水素ナトリウムは、純度が高すぎると、劣化しやすく再利用に適さなくなるため、保存性の良い成分となるようにプロセスを操作することが必要である。

    ここで、灰反応装置12の運転温度について説明する。 図1に示す系の性能上、灰反応装置12は、上述したように、35〜60℃の範囲、例えば60℃程度の設定温度で運転することが好ましい。 灰反応装置12は、一般的に、その運転温度が高いほど、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムの抽出率が高い。 すなわち抽出速度が高い。 そして、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムともに生成反応は発熱反応であるため、灰反応装置12を加熱するための外部からのエネルギは、ほとんど必要ない。

    粉砕機17にて生成される粉砕灰は、細かく粉砕した方が抽出率が高い。 その細かさの程度は、粉砕のために必要なエネルギとの兼ね合いによって決定することができる。

    灰反応装置12において、焼却灰からカルシウムなどが溶け出すときには、粒子表面で瞬時に炭酸塩となり、その粒子自身をコーティングしてしまうため、内部に残っているカルシウムなどが抽出されず反応が進みにくくなる。 そのコーティングを除去するため、撹拌装置18による強めの撹拌を行うことが好ましい。 あるいは、緩めのメカノケミカル研磨を施すことも好ましい。

    灰反応装置12に供給される原料について説明する。

    この原料は、モル濃度で下記の式を満足する必要がある。

    [K+Na]>Cl
    上記の式を満足しないと、系内の循環が機能しない。

    また、カリウムが塩素より少ない場合(K<Cl)には、塩化ナトリウムが析出してくるため、炭酸水素ナトリウムの生産にとってマイナスの要因となる。

    これらの関係は、基本的には灰反応装置12に供給される原料である焼却灰の成分によって決まる。 これに対し、塩廃液、飛灰、薬剤などを添加することによって、良好な結果をもたらす可能性もある。

    図10および図11は、性能例を示す。 装置の運転条件は、トータルCO が3.1mol/L、CO 吸収塔11および灰反応装置12の設定温度が60℃、冷却晶析装置16の設定温度が30℃、水溶液のpHが10.3〜11.35の範囲である。 ここで、図10は、図1に示す装置の各部位における各イオンの活量と実際のpHとを示したものである。 図11は、図1に示す装置の各部位における各種塩の飽和溶解度に対する実濃度の割合(実濃度/飽和溶解度の値)を示す。 この値が1を超える部位で、塩の析出が起こる。

    ところで、上記実施の形態においては、各種成分を含む原料として、焼却炉にて生成される焼却灰を例示したが、他の原料を用いることもできる。 たとえば、飛灰を用いることができる。 この場合、Clの含有量が多いため、カリウムKが塩素Clより同量以上に必要とされる条件上、カリウムを外部から加える必要がある。

    そして、カリウムが塩素より多い場合(K>Cl)には、過剰のカリウムが炭酸水素カリウムとして炭酸水素ナトリウムとともにCO 吸収塔11で析出する。 なお、炭酸水素カリウムが混入した炭酸水素ナトリウムは、溶解度の差を利用して分離することが可能である。 あるいは、炭酸水素ナトリウムと分離せず、たとえば焼却炉の酸性ガス除去剤などの用途にこのまま使用することも可能である。

    また、上記実施の形態においては、二酸化炭素含有ガスとして焼却炉の煙道からのCO を含む排ガスを例示したが、他のガスを用いることもできる。

    以上のように本発明によれば、ナトリウムとカリウムと塩素とを含有する原料から、カリウムを塩化カリウムの形で分別抽出することができるとともに、ナトリウムを炭酸水素ナトリウムの形で分別抽出することができる。

    また、カリウムとナトリウムとを抽出した後の残りの液は、60℃程度(第1の温度)の水溶液の生成に供するものであるため、系内にこれを循環させて再利用することが可能である。

    さらに、炭酸水素ナトリウムを生成する際に二酸化炭素含有ガスを用いるものであり、このガスはたとえば燃焼装置の排ガスを利用することができるため、本発明によれば、ナトリウムおよびカリウムの抽出と同時に二酸化炭素の固定化を図ることもできる。

    本発明の分別抽出装置は、ナトリウムとカリウムと塩素とを含有する原料から、カリウムを塩化カリウムの形で分別抽出することができるとともにナトリウムを炭酸水素ナトリウムの形で分別抽出することができるので、例えば焼却炉から排出される家庭ごみや産業廃棄物の焼却残渣に含まれている資源を回収するのに適している。

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