首页 / 国际专利分类库 / 化学;冶金 / 无机化学 / 碱金属,即锂、钠、钾、铷、铯或钫的化合物 / 钠、钾或一般碱金属的碳酸盐 / 気体二酸化炭素のアルカリ及び/又はアルカリ土類重炭酸塩水溶液への変換

気体二酸化炭素のアルカリ及び/又はアルカリ土類重炭酸塩溶液への変換

申请号 JP2014522150 申请日 2012-07-24 公开(公告)号 JP2014528886A 公开(公告)日 2014-10-30
申请人 シリカ デ パナマ エス.エー.; シリカ デ パナマ エス.エー.; 发明人 ルハノ、フアン; レヴェテ、ハヴィエル; ヴァレンシア、ノルマ; リヴァス、ルイス; ソコロ、ネルソン;
摘要 陽イオン交換体特性を有する材料を、二 酸化 炭素の溶解平衡が生じる 水 性媒体に導入する。陽イオン交換材料x/nMw E,-を用いて、x/nM+nEx−(s) + xH3O+(aq) = xH3O+Ex−(s) + x/nM+n(aq)(式中、「x」は、金属Mのx/nモル量と釣り合う、陽イオン交換材料Ex−の電荷の陰イオン中心のモル量を表し、「n」は、金属 原子 価を表し、かつ「M」は、元素周期表の1A及び/又は2Aからなる群から選択される。)に従い、ヒドロニウム陽イオン(H3O+)を捕捉する。このヒドロニウム陽イオンH3O+の捕捉は、ルシャトリエの原理に従い、特定の反応平衡を右側へと移動させ、別の方法で得られるものよりも多くの重炭酸イオンHCO3−及び/又は炭酸イオンCO32−を生成する。【選択図】図1
权利要求
  • アルカリ重炭酸塩及び/又はアルカリ土類重炭酸塩水溶液の製造方法であって、
    ・任意の供給源由来の気体二酸化炭素を水に溶解して、重炭酸イオンHCO 3 を含み、かつヒドロニウム陽イオンH 3 O をさらに含む水性(aq)溶液を調製する工程;及び・固体(s)陽イオン交換材料x/nM +n E x を導入して、
    x/nM +n E x (s) + xH 3 O (aq) = xH 3 O E x (s) + x/nM +n (aq)
    (式中、
    「x」は、骨格外の金属Mのx/nモル量と釣り合う、陽イオン交換材料E x の電荷の陰イオン中心のモル量を表し、
    「n」は、金属原子価を表し、かつ「M」は、元素周期表の1A及び2Aからなる群から選択される。 )
    に従い、ヒドロニウム陽イオンH 3 O を捕捉する工程を含み、それによって、ヒドロニウム陽イオンH 3 O の捕捉により、ルシャトリエの原理に従って、重炭酸塩の収率が増加する、方法。
  • 使用済み陽イオン交換材料H 3 O E x を金属M +nのイオン性塩の不飽和溶液と、金属M +nの当量がE x の当量の少なくとも0.5倍となるようにイオン交換することにより再生する工程を含む、請求項1記載の方法。
  • 陽イオン交換材料H 3 O E x を、金属M +nのイオン性塩の不飽和溶液とのイオン交換により再生する工程であって、
    xH 3 O E x (s) + x/n(M +nm (A −mn (aq) = x/nM +n E x (s) + xH 3 O (aq)
    (式中、A −mは、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、α−ヒドロキシカルボン酸イオンクラスの有機物、o−ヒドロキシ安息香酸イオン、アミン型腐食防止剤、ポリリン酸イオン及びヘキサメタリン酸イオンからなる群から選択される「m」価の陰イオンを表す。)
    に従い、使用済み陽イオン交換材料H 3 O E x 中のヒドロニウム陽イオンH 3 O を新たなM +n陽イオンと置き換え、使用済み陽イオン交換材料H 3 O E x をリサイクルに適したものとする工程を含む、請求項1記載の方法。
  • 重炭酸塩水溶液を結晶化工程に供して、アルカリ重炭酸塩及び/又はアルカリ炭酸塩の沈殿物を生成する工程を含む、請求項1記載の方法。
  • 沈殿物を洗浄及び乾燥することを含む、請求項4記載の方法。
  • 陽イオン交換材料として、乾燥基準1グラムあたり0.001ミリ当量超のカチオン交換容量を有するか、及び/又は少なくとも0.1 m 2 /gの比表面積を有する物質組成を使用することを含む、請求項1記載の方法。
  • 陽イオン交換材料x/nM +n E x として、物質組成が、一般実験式:
    M n+ (x+w)/n [Al x Z w Si y O 2(x+y+w) ] * mH 2 O
    (式中、
    「M」は、1A族及び/又は2A族の骨格外交換性金属を表し、
    「n」は、金属原子価を表し、
    「x」は、四面体アルミニウムの陰イオン中心のモル比を表し、
    「w」は、四面体陰イオン中心「Z」のモル比を表し、
    「Z」は、第一遷移金属系列のすべての元素、Zr、Nb、並びに周期表の5A族及び3A族の元素を表し、
    「y」は、四面体ケイ素の非陰イオン中心のモル比を表し、
    (x+w)/nは、n価の交換性陽イオン数であり、かつ「m」は、固体の陽イオン交換材料の外部及び内部表面に吸着された水分子数を表し、
    以下:
    x+w≠0;x+w≦y及びy/(x+w)≦100
    となるものである。 )
    で表されるアルミノケイ酸塩又は置換アルミノケイ酸塩であるものを使用することを含む、請求項6記載の方法。
  • 物質組成のX線回折パターンを検出することを含む、請求項7記載の方法。
  • 陽イオン交換材料x/nM +n E x として、合成又は天然のアルカリ及び/又はアルカリ土類LTAゼオライト、並びにフォージャサイト、ゼオライトX及びYのグループの物質、ゼオライトP、クリノプチロライト、モルデナイト、ZSM−5、ムティーナ沸石、長石、ベントナイトなどの膨張性クレイ、モンモリロナイト、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるナトリウムゼオライトを用いることを含む、請求項1記載の方法。
  • シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、それらのオキソ−ヒドロキシド、炭素及び生物学的触媒、並びにそれらの混合物からなる群から選択される固体材料であって、少なくとも0.1 m 2 /gの比表面積を有する固体材料を水溶液に導入することにより、陽イオン交換材料x/nM +n E x の活性を増加させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
  • ・以下の反応:
    CO 2 (g) + H 2 O(l) = H 2 CO 3 (aq) (1)
    H 2 CO 3 (aq) + H 2 O(l) = HCO 3 (aq) + H 3 O (aq) (2)
    HCO 3 (aq) + H 2 O(l) = CO 3 2− (aq) + H 3 O (aq) (3)
    に従って、気体二酸化炭素を水に溶解し、それにより、反応(2)及び(3)の両方で、水性媒体中で交換可能なヒドロニウム陽イオンH 3 O を含む水性媒体を生成する工程、及び・陽イオン交換材料x/nM +n E x を、二酸化炭素の溶解平衡が生じる水性媒体に導入し、陽イオン交換材料x/nM +n E x により、
    x/nM +n E x (s) + xH 3 O (aq) = xH 3 O E x (s) + x/nM +n (aq) (4)
    (式中、
    「x」は、金属Mのx/nモル量と釣り合う、陽イオン交換材料E x の電荷の陰イオン中心のモル量を表し、
    「n」は、金属原子価を表し、かつ「M」は、元素周期表の1A族及び/又は2A族から選択される。 )
    に従い、ヒドロニウム陽イオンH 3 O を捕捉する工程を含む方法であって、
    それによって、ヒドロニウム陽イオンH 3 O の捕捉により、ルシャトリエの原理に従って、反応(2)及び(3)に記載の平衡が右側に移動し、重炭酸イオンHCO 3 の収率が増加する、方法。
  • 重炭酸イオンを水性アルカリ金属種M +nと組み合わせて、
    M +n (aq) + nHCO 3 (aq) = M(HCO 3 ) n (aq) (5)
    に従い、アルカリ重炭酸塩の水溶液を調製する工程を含む、請求項11記載の方法。
  • 陽イオン交換材料からアルカリ金属重炭酸塩及び/又はアルカリ土類金属重炭酸塩水溶液を分離する工程を含む、請求項12記載の方法。
  • 陽イオン交換材料が、摂氏10℃と摂氏90℃の間の温度にて、水流で少なくとも1回ストリップ(stripped)される、請求項12記載の方法。
  • 陽イオン交換材料xH 3 O E x を、金属M +nのイオン性塩の不飽和溶液とのイオン交換により再生する工程であって、
    xH 3 O E x (s) + x/n(M +nm (A −mn (aq) = x/nM +n E x (s) + xH 3 O (aq) (7)
    に従い、使用済み陽イオン交換材料xH 3 O E x 中のヒドロニウム陽イオンH 3 O を新たなM +n陽イオンと置き換える工程を含む、請求項13記載の方法。
  • 陽イオン交換材料が、摂氏10℃と摂氏90℃の間の温度にて、水流で少なくとも1回ストリップされる、請求項15記載の方法。
  • アルカリ金属重炭酸塩及び/又はアルカリ土類金属重炭酸塩の水溶液を結晶化工程に供して、アルカリ重炭酸塩及び/若しくはアルカリ炭酸塩、又はアルカリ土類炭酸塩の沈殿物を生成する工程を含む、請求項13記載の方法。
  • 沈殿物を洗浄及び乾燥する工程を含む、請求項17記載の方法。
  • 固体のアルカリ重炭酸塩及び/又はアルカリ土類炭酸塩の製造方法であって、
    ・陽イオン交換材料の水性懸濁液と二酸化炭素流とを、水性懸濁液に二酸化炭素を溶解させるのに十分な量及び時間で接触させて、ヒドロニウム陽イオン(H 3 O )、並びにアルカリ及び/又はアルカリ土類炭酸陰イオン(HCO 3 )を生成し;
    それにより、陽イオン交換材料が、水性懸濁液からヒドロニウム陽イオン(H 3 O )を取り込み、アルカリ陽イオン及び/又はアルカリ土類陽イオンを水性懸濁液へと放出する工程;
    ・使用済み陽イオン交換材料から液体を分離する工程;及び・該液体から固体のアルカリ重炭酸塩及び/若しくはアルカリ炭酸塩、又はアルカリ土類炭酸塩を沈殿させる工程を含む、方法。
  • 請求項1記載の方法を実施するための装置。
  • 说明书全文

    本発明は、気体二酸化炭素を、固体のアルカリ重炭酸塩、アルカリ炭酸塩及び/又はアルカリ土類炭酸塩の製造に有用なアルカリ及び/又はアルカリ土類重炭酸塩溶液へと変換することに関する。 好ましい実施態様において、本発明は、再生可能な固体の無機陽イオン交換材料、詳細には、結晶性又は非晶性いずれかのアルミノケイ酸塩を用いて、温室効果気体二酸化炭素の供給流をアルカリ及び/又はアルカリ土類重炭酸塩溶液に変換することを伴う。

    固体のアルカリ重炭酸塩及び炭酸塩の大部分は、その水溶液から任意の蒸発又は結晶化プロセスによって得られる。 これらの重炭酸塩及び炭酸塩は日常生活に多数適用される。 言及すべき最も使用される2つは、炭酸ナトリウムと重炭酸ナトリウムである。

    重炭酸ナトリウム(NaHCO 3 )は、世界中で最も広範囲に使用される汎用化学品の一つである。 重炭酸ナトリウムは、膨張剤として料理に;慢性型の代謝性アシドーシスを治療するための制酸薬として医薬に、及び心機能蘇生に;皮膚質除去剤(skin defoliant)、歯磨き粉、洗浄剤、化学消化器及び殺菌剤に;廃水の生物的防除のために;並びに繊維産業における染色剤として使用される。

    重炭酸ナトリウム水溶液から合成的に誘導される別のアルカリ材料は、炭酸ナトリウム(Na 2 CO 3 )又はソーダ灰であり、とりわけ、ガラス、ケイ酸ナトリウム、石鹸及び界面活性剤の製造に大量に使用され、排煙脱硫にも使用される。 炭酸リチウム及び炭酸カリウムは、溶融炭酸塩型燃料電池に使用される。 アルカリ土類金属炭酸塩は、セラッミクスの合成に、カーボンナノチューブを調製するための触媒担体として、製紙産業に、乾風により固体表面を洗浄するために、広く使用される。 これらのアルカリ重炭酸塩、及びアルカリ又はアルカリ土類炭酸塩はいずれも、原料としてその水溶液を用いて調製される。 特に、これらの重炭酸ナトリウム及び炭酸ナトリウム化学物質はすべて、原料としてアルカリ又はアルカリ土類重炭酸塩水溶液を用いて調製される。

    天然に存在する、主要な重炭酸ナトリウムの供給源はナーコライト(NaHCO 3 )であるが、トロナ鉱物−二炭酸一水素三ナトリウム二水和物又はセスキ炭酸ナトリウム(Na 2 CO 3 .NaHCO 3 .2H 2 O)によって生じる場合も多い。 重炭酸ナトリウム溶液を得るための方法の一つは、トロナに存在する不純物を除去する工程を複数行った後、溶解したトロナ鉱物を炭酸化することによる。 しかし、高品質の重炭酸ナトリウム資源は、世界中に均一には分布しておらず、かつその大部分が枯渇しつつある鉱物資源である。 それらは、主に、ユタ州、カリフォルニア州、コロラド州及びワイオミング州で発見され、多くの先進国及び開発途上国にとってこの資源を得ることは困難である。 同様に、重炭酸カリウム溶液は、Ullmann¨s Encyclopedia of Industrial chemistry, Vol A5, fifth edition. Wolfgang Gerhartz(exe Ed), pp 173−174. New York, 1986に記載されるように、炭酸カリウム溶液中、二酸化炭素をバブリングさせることによって得られる。

    重炭酸ナトリウム溶液は、二酸化炭素を用いたソルベー法により得ることができる。 これはアンモニア−ソーダ法とも称され、合成重炭酸ナトリウム溶液を製造するための主要な従来法であり、該合成重炭酸ナトリウム溶液は、精製炭酸ナトリウム、Na 2 CO 3 (ソーダ灰)、精製重炭酸ナトリウム、NaHCO 3を製造するための、時には精製セスキ炭酸ナトリウム、Na 2 CO 3 .NaHCO 3 .2H 2 Oを製造するためのソースである。 ソルベー法では、二酸化炭素(CO 2 )を、アンモニア(NH 3 )及び塩化ナトリウム(NaCl)を含む水に溶解して、重炭酸ナトリウム(NaHCO 3 )を沈殿し、次いで、これをろ過により分離する。

    通常、これは2つの主要な工程で実施される:最初にアンモニアガスを塩化ナトリウム食塩水に導入し、その後、別の装置にて二酸化炭素ガスを導入して、重炭酸ナトリウム飽和溶液を作製し、そこから重炭酸塩を沈殿させる。 関連する化学反応は単純なようであるが、実際には複雑である。 食塩水のアンモニア処理の間にはかなりの熱が発生し、必要程度のアンモニア飽和のために強な冷却が必要とされる。 アンモニア処理した食塩水の炭酸化もかなりの発熱を伴うため、収率を高めるために装置を冷却しなければならず、冷却は、良好な結晶を形成させるために調節しなければならない。 従って、該方法は複雑で、エネルギー使用に集中(intensive)される。

    得られた重炭酸ナトリウム溶液は、アンモニアに起因して、炭酸アンモニウム((NH 42 CO 3 )、重炭酸アンモニウム(NH 4 HCO 3 )、カルバミン酸アンモニウム(NH 4 COONH 2 )などのアンモニウム化合物で汚染されている。 これら不純物の大半は、最終的な固体重炭酸ナトリウムに及び、これにより多くの用途に適合しなくなり、使用される塩化ナトリウムや二酸化炭素の純度に関わらず、純度を調整するための追加の精製工程が必要となる。

    さらに、ソルベー法は環境に配慮したものではない;塩化物含有廃水流の管理及び安全な処分は、主要な問題の一つである。 また、そのコストは非常に高く、開発途上経済にある多くの人々は、この方法により製造された重炭酸ナトリウムを購入することができない。

    天然の炭素サイクルでは、高表面積を有する落下雨水が、大気中を通過する際に、二酸化炭素を捕まえる。 落ちた雨水は、土壌表面から下へと移動する際に、有機物の生物分解によって生成された追加量の二酸化炭素を獲得し得る。 水に溶解したその二酸化炭素はすべて弱酸性の炭酸を生成し、これが炭酸カルシウム堆積物と反応して、炭酸カルシウムよりも水に溶けやすい重炭酸カルシウムを生成し得る。 このメカニズムにより、地下水中のカルシウム含量が増加する。 同じことが炭酸マグネシウム堆積物についても言え、これもまた水溶性である。

    この天然のプロセスにより、河川中の典型的な重炭酸塩含量は30 mg/L〜400 mg/Lの範囲内に確立される(Water Quality and Its Control, James C. Lamb III. Chap 7, pp 131−135, John Wiley & Sons Inc. 1985)。 水を軟水化するための重炭酸カルシウム及びマグネシウムの除去について、長年の慣行では、陽イオン交換特性を有する材料を使用する。 このような材料は、一般には「ゼオライト」と称され、古い分野の用語では、ベントナイトクレイ、合成ゲル型鉱物、褐炭、軟炭、瀝青炭、合成樹脂を含む様々な組成及び構造を有する一連の材料を意味する(「The Chemical Process Industries」 R. Norm Shrive, Chap. 4, pp 47−50, 2 Ed. McGraw−Hill Book Company. 1956)。 下記反応は、重炭酸カルシウムを含む水を軟水化するためのゼオライトの使用を表す:
    Ca(HCO 32 + Na 2 Z → CaZ + 2NaHCO 3
    同様の反応は、水中で見られる他の重炭酸塩、例えば、マグネシウム、カルシウムなどのものについても記載され得る。

    しかし、上記の反応に従うプロセスは、河川水から多量の重炭酸ナトリウムを製造するには効率的でない。 上記の重炭酸塩の濃度が低いことを考慮すれば、相当な濃度の重炭酸ナトリウムを有する溶液を得るためには、膨大な時間が必要となる。 さらに、重炭酸ナトリウムは、マグネシウムなど他の陽イオンの重炭酸塩で非常に汚染されている。 また、これは少なくとも2つの工程手順であり、第一の工程は、自然により行われ(雨による二酸化炭素の捕捉)、第二の工程は、ナトリウムゼオライトを用いた人工的な交換であることを理解しなければならない。

    1946年付の米国特許第2,392,575号において、Tigerらは、正味の反応:
    NaCl + H 2 CO 3 = HCl + NaHCO 3
    を介した、食塩から重炭酸ナトリウム(NaHCO 3 )への2工程の複分解変換を開示する。
    この反応は、金属陽イオンを奪われた不溶性の水素「炭素質ゼオライト」(hydrogen “carbonaceous zeolite”)(酸処理した硫酸塩褐炭又は軟炭)を用いて実施される。 まず、このような水素炭素質ゼオライト層(bed)に塩化ナトリウム溶液を通す。 過剰量の塩化ナトリウムと塩酸が生成され、ナトリウム炭素質ゼオライトが残る。 次に、該ナトリウムを、燃焼生成物として得られた加圧炭酸溶液接触させる。 水素炭素質ゼオライトが再生され、重炭酸ナトリウムの希釈溶液が生成される。

    水素炭素質ゼオライト、塩化ナトリウム溶液及び炭酸溶液をすべて一緒に単純な一工程に置くことができないのは、塩化ナトリウム交換によって塩酸(HCl)が生成され、これが、同じく酸性である水素炭素質ゼオライトと一緒に、加圧炭酸溶液の炭酸ナトリウムを二酸化炭素ガスへと急速に分解するからである(Chemical Characteristics and Structure of Cracking Catalysts, AG Oblad, TH Milliken, Jr., and GA Mills in Advances in Catalysis vol. 3, p 204, Academics Process, 1965)。 酸性レベルが高いと(pH=4未満)、加圧炭酸溶液との接触時間の長さに関わらず、重炭酸塩の形成が妨げられる。

    これらの比較的安価な水素炭素質ゼオライトにはいくつかのデメリットが存在する:陽イオン交換能が低いこと(1 meq/g未満)、機械抵抗が低いこと(加圧、バブリング又は流動床に適さない)、及びアルカリ(重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム溶液)に対する化学安定性が低いことであり、そのため、炭素粒子が重炭酸塩又は炭酸塩溶液中へと入り、解膠する(F. Helfferich. Ion E x change. Chap 2, pp 17−18. Dover Publications Inc. 1995; M Kodama, N. Shimisu, et al. Carbon 28(1): 199−205(1990))。 陽イオン交換樹脂を含む他のタイプの炭素質材料は、良好な特性を有するものの、その初期コスト(現在およそ10,000ドル/m 3 )及び再生コストはともに経済に悪影響を及ぼす。

    非晶性シリカアルミナ及び結晶性ゼオライトは、20世紀中頃から利用可能となった。 そのナトリウム型は安価で、高い陽イオン交換能を有し、米国特許第2,392,575号に開示される手順を実施するために使用できる。 このようなアルミノケイ酸塩の水素型を得るためには、まずナトリウム型をアンモニウム塩溶液とのイオン交換を介してアンモニア型へと変換し、乾燥させなければならない。 次いで、400℃〜500℃範囲の温度で焼成工程を行うことにより、アルミノケイ酸塩の水素型が生成されるが、これは、非常に多くの場合、陽イオン交換能が著しく低下している。 これらの準備工程を実施して初めて、米国特許第2,392,575号の手順を行うことができる。

    この手順では、これらアルミノケイ酸塩の水素型の透過性層に塩化ナトリウム溶液を通過させる。 これにより塩酸が生成され、アルミノケイ酸塩に対して破壊的な酸攻撃が引き起こされ、上述のとおり重炭酸ナトリウムの分解が生じる。 従って、この手順において、これらアルミノケイ酸塩の水素型は、重炭酸ナトリウム溶液の生成を改善しない。

    重炭酸ナトリウム溶液を得るための従来の方法は、明らかに、かなり不十分な点を有する。

    [本発明の目的及び概要]
    本発明の目的は、以下:
    ・重炭酸ナトリウム結晶、
    ・他のアルカリ重炭酸塩、
    ・炭酸ナトリウム、
    ・他のアルカリ炭酸塩、
    ・アルカリ土類炭酸塩のいずれかを含む高品質の化学物質を得ることができる、不純物を含まないアルカリ及び/又はアルカリ土類重炭酸塩溶液を得ることである。

    本発明の他の目的は、
    ・地球上のいかなる場所においても大気から高レベルの温室効果二酸化炭素を捕捉(capture)し、これを重炭酸塩溶液へと変換し、それにより、人間の活動が地球気候に及ぼす影響を改善するため;
    ・サンゴ礁の修復、水の酸性度の是正及び有害物質処理のための新規化学物質ソースを提供するため;
    ・ガス混合物から二酸化炭素を分離するため;かつ・産業市場のために、固体アルカリ重炭酸塩、アルカリ炭酸塩及び/又はアルカリ土類炭酸塩を製造するために、
    単純で経済的かつ安全な手順を提供することを含む。

    本発明の別の目的は、比較的低コストの塩化ナトリウム及び世界的に過剰な気体二酸化炭素を利用して、上記目的を達成するための方法を提供することである。

    さらに、本発明の目的は、本発明の方法を実施するための装置を提供することである。

    上述及びその他の目的は、本発明の好ましい実施態様において、陽イオン交換特性を有する材料(x/nM +n E x )を、二酸化炭素の溶解平衡が起こり、ヒドロニウム陽イオンが生成される水性媒体へと導入することを含む方法によって達成される。 陽イオン交換材料(x/nM +n E x )は、
    x/nM +n E x (s) + xH 3 O (aq) = xH 3 O E x (s) + x/nM +n (aq)
    (式中、
    「x」は、金属Mのx/nモル量と釣り合う、陽イオン交換材料E x の電荷の陰イオン中心のモル量を表し、
    「n」は、金属原子価を表し、かつ「M」は、元素周期表の1A及び/又は2Aの元素からなる群から選択される。 )
    に従って、ヒドロニウム陽イオン(H 3 O )を捕捉する。

    以下で説明するように、これは、ルシャトリエの原理に従って、所望の化学物質の収率を増加させる。

    添付の図面とともに、下記の好ましい実施態様の詳細な説明を考慮することにより、本発明の目的、特徴及び利点をよりよく理解することができる。

    図1は、本発明の方法を実施するための装置の概略図である。

    図2は、フォージャサイトX型ゼオライト陽イオン交換材料のX線回折パターンである。

    図3は、走査型電子顕微鏡により得られた、およそ5 μmと100 μmの間のサイズ範囲にあるXC陽イオン交換材料マイクロスフェアの画像である。

    図4は、図3の画像と同様であるが、よりスケールが小さい走査型電子顕微鏡像である。

    図5は、AC陽イオン交換材料のX線回折パターンを示す。

    図6は、AX陽イオン交換材料のX線回折パターンを示す。

    図7は、LTA陽イオン交換材料のX線回折パターンを示す。

    図8は、AA及びAX陽イオン交換材料のFT−赤外スペクトルを示す。

    図9は、時間の関数として、AA、AX、AC及びXC陽イオン交換材料についての重炭酸ナトリウムの収率を示す。

    図10は、陽イオン交換サイクル数の関数として、AA及びAC材料についての重炭酸ナトリウムの収率を示す。

    図11は、テルモナトライト(Na

    2 CO

    3 .H

    2 O)及び炭酸ナトリウム(Na

    2 CO

    3 )混合物のX線回折パターンを示す。

    [発明の詳細な説明]
    本発明は、二酸化炭素(CO 2 )を水に溶解する場合に生じる、水性媒体中にヒドロニウム陽イオン(H 3 O )と重炭酸陰イオン(HCO 3 )とを生成する一連の反応を介した炭酸イオン(carbonate)ケミストリーを利用する。 ヒドロニウム陽イオン(H 3 O )が、アルカリ陽イオン又はアルカリ土類陽イオンに置き換えられると、アルカリ又はアルカリ土類重炭酸塩が形成される。 本発明は、水性媒体中、骨格外(nonframework)のアルカリ陽イオンをヒドロニウム陽イオン(H 3 O )と交換し、それにより上記置換を可能にする、いくつかの材料の特性を利用する。 水溶液中のこれらアルカリ及び/又はアルカリ土類重炭酸塩、例えば、重炭酸ナトリウム(NaHCO 3 )などは、最も価値のある嵩密度の高いアルカリ炭酸塩への変換に適した固体のアルカリ重炭酸塩若しくはアルカリ土類重炭酸塩、又は炭酸塩と重炭酸塩との混合物を得るために、蒸発、結晶化、固液分離及び乾燥を介して水性媒体から回収できる。

    水性(aq)媒体中、気体(g)二酸化炭素を液体(l)の水に溶解すると、下記反応:
    CO 2 (g) + H 2 O(l) = H 2 CO 3 (aq) (1)
    H 2 CO 3 (aq) + H 2 O(l) = HCO 3 (aq) + H 3 O (aq) (2)
    HCO 3 (aq) + H 2 O(l) = CO 3 2− (aq) + H 3 O (aq) (3)
    に従って、二酸化炭素(CO 2 )、炭酸(H 2 CO 3 )、重炭酸イオン(bicarbonate)(HCO 3 )及び炭酸イオン(carbonate)(CO 3 2− )の間に平衡移動が生じる。
    反応(2)における炭酸(H 2 CO 3 )の解離と、反応(3)における重炭酸陰イオン(HCO 3 )の解離はともに、水性媒体中で交換可能なヒドロニウム陽イオン(H 3 O )を生成することに留意されたい。

    本発明は、陽イオン交換特性を有する材料x/nM +n E x を、二酸化炭素の溶解平衡が生じる水性媒体に導入し、本明細書で開示する固体(s)陽イオン交換材料E x によって、ヒドロニウム陽イオン(H 3 O )が、以下:
    x/nM +n E x (s) + xH 3 O (aq) = xH 3 O E x (s) + x/nM +n (aq) (4)
    (式中、
    「x」は、金属Mのx/nモル量と釣り合う、陽イオン交換E x の電荷の陰イオン中心のモル量を表し、
    「n」は、金属原子価を表し、かつ「M」は、元素周期表の1A族及び/又は2A族の元素から選択される。 )
    に従って捕捉されることを伴う。

    このヒドロニウム陽イオンH 3 O の捕捉によって、反応(2)及び(3)に記載の平衡が、ルシャトリエの原理に従って右側へと移動し、これにより、重炭酸イオン(bicarbonate)HCO 3 及び/又は炭酸イオン(carbonate)CO 3 2−がさらに生成され、これらはともに水性金属種(metal aqueous species)と結合して、以下:
    M +n (aq) + nHCO 3 (aq) = M(HCO 3n (aq) (5)
    に従い、有用な重炭酸塩を生成できる。

    その後、当該分野のいずれかの固液分離法により、金属重炭酸塩水溶液を陽イオン交換材料から分離する。 この水溶液を、当該分野で公知の又は発見される任意の結晶化工程に供して、重炭酸塩及び/又は炭酸塩の沈殿物を生成でき、次いで、これを洗浄及び乾燥する。

    陽イオン交換材料は、金属M +nのイオン性塩の不飽和溶液とのイオン交換により、以下:
    xH 3 O E x (s) + x/n(M +nm (A −mn (aq) = x/nM +n E x (s) + xH 3 O (aq) (7)
    (式中、A −mは、塩化物イオン(chlorides)、硫酸イオン(sulfates)、硝酸イオン(nitrates)、α−ヒドロキシカルボン酸イオン(α−hydroxy carboxilates)、o−ヒドロキシ安息香酸イオン(o−hydroxybenzoates)、カルボン酸イオン(carboxilates)、アミン型腐食防止剤、ポリリン酸イオン(polyphosphate)及びヘキサメタリン酸イオン(hexametaphosphates)からなる群から選択される「m」価の陰イオンを表す。)
    に従い、使用済み(used)陽イオン交換材料xH 3 O E x 中のヒドロニウム陽イオンH 3 O を新たなM +n陽イオンと置き換え、使用済み陽イオン交換材料xH 3 O E x をリサイクルに適したものにすることにより、再生することができる。

    本発明では、陽イオン交換材料x/nM +nに加えて、気相から水相への二酸化炭素の移動を改善できる他の種類の固体材料を提供することも望ましい。 該固体材料は、結晶性及び/又は非晶性に関わらず、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、それらのオキソ−ヒドロキシド、炭素及び生物学的触媒(炭酸脱水酵素など)、並びにそれらの混合物であってよいが、ただし、それらの固体は少なくとも0.1 m 2 /gの比表面積を有する。

    とりわけ、本発明は、結晶性ゼオライト、非晶性シリカアルミナなどの、陽イオン交換特性を有するアルカリ又は/及びアルカリ土類アルミノケイ酸塩材料の使用に関する。 好ましい結晶性アルミノケイ酸塩は、陽イオン交換材料として、アルミニウムに対するケイ素のモル比が100未満のゼオライトであり、特に、ナトリウムLTA(Linde A型)ゼオライト、フォージャサイト(ゼオライトX及びY)、ゼオライトP、クリノプチロライト、モルデナイト、ZSM−5、ムティーナ沸石、及びそれらの混合物からなる群のナトリウムゼオライトであってよい。

    例えば、本発明は、アルカリ型の結晶性及び/又は非晶性アルミノケイ酸塩材料であって、四面体配位において、アルミニウム及びケイ素以外の原子によって、いくつかのアルミニウム(例えば、鉄)及びケイ素(例えば、ゲルマニウム)原子が置換された材料の使用に関する。

    ナトリウムゼオライト材料(Na Z )を用いてなされる場合には、反応(2)及び(3)で見られるような炭酸及び重炭酸イオン(bicarbonate)の解離から生じるヒドロニウム陽イオンH 3 O を、ナトリウムゼオライトによって取り込み、以下:
    Na Z (s) + H 3 O (aq) = H 3 O Z (s) + Na (aq) (8)
    のように、ゼオライト骨格外のナトリウム陽イオンをヒドロニウム陽イオンで置き換え、平衡を移動させる。
    現時点で水性媒体中にあるナトリウム陽イオンは、以下:
    Na (aq) + HCO 3 (aq) = NaHCO 3 (aq) (9)
    2Na (aq) + CO 3 2− (aq) = Na 2 CO 3 (aq) (10)
    に従い、重炭酸イオン(bicarbonate)HCO 3 及び炭酸イオン(carbonate)CO 3 2−と結合でき、同様にこの水性媒体中に存在できる。 次いで、重炭酸ナトリウムNaHCO 3及び/又は炭酸ナトリウムNa 2 CO 3を、当該分野で公知の又は発見される任意の方法を用いて沈殿させる。

    従って、本発明は、固体の重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム及びそれらの混合物を生成するために処理可能な重炭酸ナトリウム水溶液を製造する方法を提供する。 これは、陽イオン交換材料の水性懸濁液と二酸化炭素流とを、水性懸濁液に二酸化炭素を溶解させて、ヒドロニウム陽イオン(H 3 O )及び重炭酸陰イオン(HCO 3 )を生成するのに十分な量及び時間で接触させることにより達成される。 陽イオン交換材料は、ヒドロニウム陽イオン(H 3 O )を水性媒体から取り込み、ナトリウム陽イオンを水性懸濁液中に放出する。 次いで、液体を固体交換材料から分離し、エバポレーター、晶析装置、又は固体の重炭酸ナトリウム(NaHCO 3 )、炭酸ナトリウム又はそれらの混合物が得られる任意の他の装置に移すことができる。

    使用済みの陽イオン交換材料は、この材料と塩化ナトリウム溶液とを十分な時間、100℃未満の温度で接触させて、陽イオン交換材料中、ナトリウム交換させることにより再生される。 最後に、陽イオン交換材料を洗浄し、再利用する。

    液相中の重炭酸イオン(bicarbonate)濃度に対する二酸化炭素圧の重要性が認識される。 二酸化炭素(CO 2 )の溶解は物質移動律速(mass−transfer−limited)であるため、反応(1):
    CO 2 (g) + H 2 O(l) = H 2 CO 3 (aq) (1)
    は遅いものと思われる。

    大半のCO 2は、反応(1)に示すようなH 2 CO 3としてではなく、溶存CO 2として溶液中に存在するが、これは化学反応に影響を及ぼさず、反応(1)は概念的に単純である。

    溶液中のH 2 CO 3濃度は、反応(11):
    [H 2 CO 3 ] = K H P CO2 (11)
    (式中、K Hはヘンリー則定数である。)
    により、溶液上のCO 2分圧(P CO2 )と関連する。

    炭酸は、反応(2)を介して水中でイオン化する。 この反応は、基本的には一瞬で生じる。
    H 2 CO 3 (aq) + H 2 O(l) = HCO 3 (aq) + H 3 O (aq) (2)

    様々な種の濃度は、反応(12)と関係する。 K a1は、炭酸の第一酸性度定数(first acidity constant)である。
    [HCO 3 ][H 3 O ] = K a1 [H 2 CO 3 ] (12)

    反応(12)の[H 2 CO 3 ]についての式を反応(1)に代入し、その結果を再整理すると反応(13)を得ることができる。 反応(13)は、重炭酸イオン(bicarbonate)濃度がpH及びCO 2分圧によって決まることを実証する:
    [HCO 3 ] = K a1 K H P CO2 /[H 3 O ] (13)。

    陽イオン交換特性を有する物質の組成は数多く存在し、例えば、非晶型及び結晶型の4価の金属酸塩などであり、これは一般に単塩(single salt)と称され、下記一般式を有する:
    M(IV)(HXO 42 .NH 2 O
    (式中、Mは、Zr(IV)、Ti(IV)、Sn(IV)などを表し、Xは、P、W、Si、Mo、Se、Asなどを表す。)。 さらに、他の天然のアルミノケイ酸塩材料を使用することもでき、例えば、陽イオンシリカゲル;長石;カオリナイト、ハロイサイト、スメクタイト(ベントナイト、モンモリロナイト)、イライト、バーミキュライト、緑泥石、海泡石、アタパルジャイト、パリゴルスカイト、及びそれらの混合物のグループのクレイなどである。 しかしながら、本発明は、高陽イオン交換能を有する合成アルカリ又はアルカリ土類アルミノケイ酸塩(silicoaluminate)組成物を用いて実施されることが好ましく、というのも、それらは現在の市場で容易かつ安価に入手でき、スケールアップ方法が周知だからである。

    本発明は、交換性陽イオンが周期表の2A族の元素である交換体を用いて実施できる。 しかしながら、溶液中の1価陽イオン、例えば、[H 3 O ]などを、周期表の2A族のいずれかの元素のような多価陽イオンと交換することは、多価陽イオンに対する陽イオン交換材料の親和性に起因して、水相中、高い初期濃度の[H 3 O ]陽イオンを必要とし、かつ比較的長い時間を要する。

    別の問題は、アルカリ土類重炭酸塩は、実質的に不溶性の炭酸塩を生成する可能性があり、二酸化炭素変換工程の間に、陽イオン交換材料上に沈殿し、汚れ(fouling)の問題を生じ得ることである。 他のタイプの交換性陽イオンは、第一遷移金属系列のものであり、その重炭酸塩、例えば重炭酸ニッケルなどを、本発明を用いて得ることができる。 しかしながら、これら陽イオンの大半は、処理問題を引き起こす。

    本発明の多くの利点のうちいくつかを以下に記載する。

    大気中の過剰な二酸化炭素は、本発明が対処することのできる問題である。 大気科学者の間で一致する意見は、人間の活動は、主に温室効果ガスの産生によって、地球の気候に影響を及ぼしているということである。 地球は、いつ新たな氷河期を迎えてもおかしくないと主張する人もいるが、たとえ地質学的なタイムスケールがそうであったとしても、21世紀の残りの期間、さらには今後数世紀程度の期間において、差し迫った脅威は、寒冷化でなく地球温暖化であり、これにより海面が上昇し、結果として気象パターンが変化することが一般的に認められている。 長期にわたって特定の生態的ニッチに適応してきた動植物種は、地球温暖化により、より高い標高及び緯度に避難することになる。 しかし、山脈頂上や地球の極を越えて避難するところはない。 海面の上昇や気象パターンの変化などの二次的影響を考慮することなく、地球温暖化をそのままにすれば、おそらく多くの種が絶滅することになるだろう。

    気候に対する影響の観点から、主要な温室効果ガスは二酸化炭素である;水蒸気は、2番目に重要である。 過剰な大気二酸化炭素に起因する地球温度の上昇は、大気中の水蒸気を増加し、正のフィードバック・ループを引き起こす。

    二酸化炭素は、化石燃料及び他の可燃性物質を燃焼させることにより、並びにセメント、ガラス、シリカ及びシリケート産業において炭酸塩を分解することにより生成される。 2010年12月22日にニューヨークタイムズに報告されたように、ハワイのマウナロア山上のセンサーは、二酸化炭素レベルが絶えず上昇しているだけでなく、その上昇ペースが加速していることを明らかにしている。 今世紀の終わりまでに、大気二酸化炭素レベルは、産業革命以前の2倍となるかもしれない。

    特に二酸化炭素を含む温室効果ガスは、対処しなければならない脅威である。 講じられている措置は、必要とされるものに達していない。 キャップ・アンド・トレード、より厳しいCAFE基準、国際協定及び自主的な保全を含む様々な評価基準は、政府及び一般市民による許容と抵抗の程度の変化に応じている。

    これらの結果は、二酸化炭素排出産業と組み合わせて、二酸化炭素を捕捉し、これを環境にほとんど又は全く悪影響を与えない化合物に変換することのできる低コストの手順の必要性を明示する。 本発明によれば、二酸化炭素の放出を取り込み、重炭酸塩水溶液を用いて二酸化炭素を固定し、当該溶液をサンゴ礁にデリバリーすることができ、そこで石灰質骨格中に炭酸塩として固定することができる。 重炭酸ナトリウム溶液が、サンゴの成長を促進するのに有用であることが証明されており(例えば、Francesca Marubini and Brenda Thake, Limnology and Oceanography, vol. 44, No 3. Part 1, pp 716−720, May 1999)、また、サンゴ礁の水の酸性度を改善するためにも有用であり得る。

    化石燃料の燃焼から二酸化炭素の放出を低下させるために、別の可能性は、硫黄及び窒素を含まないバイオ燃料又はバイオガスを製造する藻類又は菌類の栄養分として、バイオリアクターに重炭酸塩溶液を送ることである。 さらに別の可能性は、この重炭酸塩溶液をいくつかの他の化学化合物に変換することである。 これに関連して、重炭酸ナトリウムをギ酸に触媒転換することに関する初期の研究があり(Bing Wu et al. Catalysis Today. 148: 405−410(2009))これは、生分解性殺菌剤(biodegradable disinfectant)のための重要な基本的化学であり、ここでは、環境への影響が最も低いことが求められ、いずれの残留物も許されない。 それはまた、保存料及び抗菌剤として、天然ゴム製造において、化学及び医薬産業における化学的成分として、及び水素貯蔵のための不燃性溶媒として使用される。 また、重炭酸ナトリウム溶液は、クロロ炭酸エチル、炭酸ジエチル及び尿素を含む他の重要な汎用化学製品の原料である。

    陽イオン交換体の再生において、再生塩の陰イオンは酸となる。 塩が塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウム(Na 2 SO 4 )の場合には、酸はそれぞれ塩酸又は硫酸である。 良質の食塩(NaCl)及び水を陽イオン交換材料の再生に用いる場合、このNaClが、その場合に酸性溶液から分離されるのであれば、価値の高い良質な塩酸を得ることができる。 この酸は、多数の適用、例えば、塩化物の製造や石油坑の酸処理などにおいて重要な化学物質である。 塩酸は、鉄に富んだクレイにより捕捉でき、塩化鉄(III)やポリ塩化アルミニウムなどの水処理化学物質を製造することができる。 前者は、エレクトロニクス産業において、スズ及びタンタルを製造するための鉱石還元(ore reduction)及び精製において、ピクリング及び金属洗浄剤として、pH調整剤として、並びに一般的洗浄において使用される。 また、電気めっき、ボイラースケールの除去、塩基性の系(basic systems)の中和、食品及び医薬産業のための水の脱イオン化、枯渇ガス及びオイルリザーバーにおけるさらなるスペースの確保(making more space)、二酸化炭素隔離、肥料及び色素の製造、並びに種々の食品の調製におけるスターチ及びタンパク質の加水分解のため;種々の有機合成における研究試薬、触媒及び溶媒として;並びに写真及び繊維工業において、使用される。

    本発明によれば、重炭酸塩溶液中に二酸化炭素を隔離するための単純な手順を、二酸化炭素放出設備と合わせることで、大気中への二酸化炭素の放出を軽減し、使用する原材料をリサイクルすることができる。 一例は、ケイ酸ナトリウムからのシリカの沈殿である。 このプロセスでは、炭酸ナトリウム(Na 2 CO 3 )を使用し、かなりの量の二酸化炭素が生成される。 本発明によれば、この二酸化炭素を重炭酸塩溶液として固定でき、その後、固体炭酸ナトリウムに変換できる。 シリカの沈殿により液体ろ液中に存在する硫酸ナトリウム又は塩化ナトリウムを、使用済みの水素型陽イオン交換材料と接触させ、それにより陽イオン交換材料を再生し、塩酸又は硫酸のいずれかをプロセスに戻す。 このように、二酸化炭素放出の減少が、酸及び炭酸ナトリウムのリサイクルを介して達成され得る。

    本発明によれば、使用済みの陽イオン交換材料の再生工程から生じた酸性溶液は、周期表の1A族又は2A族に属する金属の塩基性溶液、好ましくは、陽イオン交換材料の交換金属と同じ金属の塩基性溶液と接触させることができる。 この中和反応により、再生材として使用される塩と水が生じ、これらは、任意の公知の物理的分離法により別々に回収できる。 前記塩基性溶液は、上記族の固体金属水酸化物を、pH=7.5と12の間の都合のいいpHまで水に溶解することにより得ることができる。 しかし、ある種のアルカリアルミノケイ酸塩(アルミニウムが豊富なゼオライト、長石)又は熱水処理したアルカリシリカゲルスラリーは、水を加水分解する特性を有することが知られており、その結果、pH=8と11の間を有するアルカリ塩基性溶液が生成される。 この塩基性溶液は、アルミノケイ酸塩又はアルカリシリカゲル材料から分離でき、これを使用済み陽イオン交換材料の再生工程から生じる酸性溶液と接触させることができる。 次いで、塩基性溶液により酸性溶液が中和され、再生塩の溶液が生じ、これを適切に濃度調整して循環させることができる。 以上のように、本発明の原材料は、大気中の二酸化炭素のように天然に豊富なもの、及び食塩のように安価なものであり得る。

    以下の実施例は、本発明の理解をさらに進めるものである。 すべての実施例で用いた分析手順は以下のとおりである。

    陽イオン交換容量(CEC)は、合成材料及び市販材料サンプルの乾燥基準質量(dry basis mass)(g)に対する水素のミリ当量(miliequivalent)(meq)の比として表し、滴定により評価する。 すべての測定において、0.5 g(乾燥基準)のサンプルサイズを使用する。 250 mLの三角フラスコ中、ある量のサンプルをマグネティックバーとともに入れる。 次いで、50 mLの0.1 N塩酸を添加する。 この系を室温で少なくとも1時間撹拌する。 その後、撹拌を止め、透明な溶液が得られるまで沈殿させる。 25 mLの上清溶液アリコートを別の250 mL 三角フラスコにとり、25 mLの脱塩水を添加する。 pH=7にて青紫色から緑色へと急速に変色する、メチレンブルーとニュートラルレッドの混合指示薬を用いて、0.1 N水酸化ナトリウム溶液でこの溶液を滴定する。 最後に、消費された酸のミリ当量を、最初と最後の酸のミリ当量の差として計算する。 CECは、乾燥基準質量に対するこの差の比である。

    ろ液中のアルカリ重炭酸塩又はアルカリ土類重炭酸塩の測定のために、Hamilton, L. Fらに記載の方法(Calculations of Analytical Chemistry. pp 190−195. McGraw−Hill Book Company, Seventh Edition, 1969)を使用する。 あらかじめ、溶液中の炭酸塩の存在をフェノールフタレイン試験で試験する。 ピンクの場合には炭酸塩陽性であり、無色の場合には陰性である。 アルカリ重炭酸塩又はアルカリ土類重炭酸塩溶液は、メチルオレンジとインジゴカルミンの混合指示薬(緑色からマゼンタ色へと変化し、pH=約4にてニュートラルグレイ色を呈する)を用いて、0.1 N塩酸溶液で滴定する。 加水分解によって、最初の陽イオン交換材料のスラリーは塩基性であり、少量の大気二酸化炭素が取り込まれる。 従って、実施例で報告する結果は、重炭酸塩の正味収率である。

    すべての実施例において、CEC(meq/g)を考慮して、試験する陽イオン交換材料の乾燥基準質量(Mzd)(グラム)は、溶液中で生成されるアルカリ重炭酸塩又はアルカリ土類重炭酸塩の質量が2.5 gとなるものである。 すなわち、この値は、
    Mzd(g) = 1/CEC * 1000 * 2.5 * 1/84.01 (14)
    に従って、陽イオン交換材料の全当量が交換される場合に100%の収率を表す。 陽イオン交換材料の湿潤基準質量(wet basis mass)(Mzw)(グラム)は、以下の反応:
    Mzw(g) = Mzd/ 1−(LOI/100) (15)
    (式中、LOIは、700℃の任意温度で得られた陽イオン交換材料の質量損失パーセントである。)
    に従う。

    図1は、本発明の方法を実施するのに適した装置を示す。 十分に洗浄した(well-cleaned)ガス洗浄フラスコ7に、ある量の陽イオン交換材料11を入れる。 フラスコ7に、予め煮沸し室温に調節した(tempered)脱塩水を添加し、マグネティックスターラープレート10及びマグネティックバー9を用いて撹拌スラリーを得る。 陽イオン交換材料に対する水の体積比は0.5〜10であり、フラスコ7の全体積の50%〜80%を満たす。 オン/オフバルブ4を開け、供給源2から窒素ガス流を、ロータメーター6で測定されるように、50 ml/分〜500 ml/分の速度で流入させ、ガスディフューザー8をフラスコ7に導入する。 窒素流入時間は5分間〜60分間である。 次いで、三方弁3を変化させることにより、供給源1から二酸化炭素ガス流を100 ml/分〜1 L/分の速度で流入させる:二酸化炭素ガス流入時間は5分間〜1時間である。

    この陽イオン交換時間の後、フローコントロールバルブ5を用いて二酸化炭素ガス流を減少させ、ガスディフューザー8をフラスコ7から取り除く。 陽イオン交換材料スラリーは、ブフナーろ過装置に流し、ここで重炭酸ナトリウム溶液の液体ろ液を得る。 陽イオン交換材料は、陽イオン交換材料に対する水の体積比が1と20の間となるように、少なくとも1回、30℃と50℃の間の温度で温めた脱塩水で洗浄する。 全ろ液を蒸発装置に移し、ここで、最終的に、固体のアルカリ重炭酸塩、アルカリ炭酸塩及び/又はアルカリ土類炭酸塩、並びにその混合物を得る。

    使用済み陽イオン交換材料は、可溶性のアルカリ及び/又はアルカリ土類塩の溶液が、使用済み陽イオン交換材料のマス(mass)の1〜10倍の交換ミリ当量を有するように、30℃〜100℃の温度で少なくとも5分間、固体に対する液体の比率が0.5と10の間となるように、該溶液と接触させることにより再生する。 陽イオン交換材料を再生溶液から分離した直後に、固体を少なくとも1回、30℃と100℃の間の温度で温めた脱塩水で洗浄する。 陽イオン交換材料に対する水の体積比は1と20の間である。 任意選択で、固体を少なくとも1時間(1 h)、少なくとも80℃の温度で乾燥する。 この乾燥し再生させた陽イオン交換材料を、炭酸との新たな陽イオン交換のために再度使用する。

    本発明によれば、陽イオン交換材料x/nM +n E x として、その物質組成が、一般実験式:
    M n+ (x+w)/n [Al x Z w Si y O 2(x+y+w) ] * mH 2 O
    (式中、
    「M」は、1A族及び/又は2A族の骨格外交換性金属を表し、
    「n」は、金属原子価を表し、
    「x」は、四面体アルミニウムの陰イオン中心のモル比を表し、
    「w」は、四面体「Z」の陰イオン中心のモル比を表し、
    「Z」は、第一遷移金属系列のすべての元素、Zr、Nb、並びに周期表の5A族及び3A族の元素を表し、
    「y」は、四面体ケイ素の非陰イオン中心のモル比を表し、
    (x+w)/nは、n価の交換性陽イオン数であり、かつ「m」は、固体の陽イオン交換材料の外部及び内部表面に吸着された水分子数を表し、
    以下:
    x+w≠0;x+w≦y及びy/(x+w)≦100
    となるようなものである。 )
    で表されるアルミノケイ酸塩又は置換アルミノケイ酸塩であるものを用いてよい。

    物質組成のX線回折パターンを検出することも本発明の範囲内である。

    以下の実験例は、本方法をより詳細に実証し、本発明の請求の範囲を裏付けるものである。 実験は、例としてのみ引用され、それにより限定するものではなく、本発明の範囲は、これら実施例によって多少なりとも制限又は限定されるものではない。

    [実施例1]
    ブランク又はコントロールランは、いずれの陽イオン交換材料も入れずに行った。 十分に洗浄した250 mLのガス洗浄フラスコ7に、予め煮沸し室温に調節した脱塩水150 mLを添加した。 オン/オフバルブ4を開け、供給源2から14 psigの圧力で生じる窒素ガス流を少なくとも250 mL/分の速度で流入させ、ガスディフューザー(8)をフラスコ7に導入した。 窒素流入時間は少なくとも5分間であった。 次いで、三方弁3を変化させることにより、供給源1から14 psigの二酸化炭素ガス流を少なくとも250 mL/分の速度で流入させる。 二酸化炭素ガス流入時間は、室温で30分間であった。

    形成された重炭酸塩(陰イオンとして)の量は、上記分析手順を用いて、238 mg/Lであった。

    [実施例2]
    本実施例では、XCナトリウム型陽イオン交換材料を検証した。 これは、フォージャサイトX型ゼオライトの市販のマイクロスフェアであり、そのX線回折パターンを図2に示す。 化学分析及びBET比表面積(S)により得られるアルミニウムに対するケイ素(mol/mol)の比率を実施例3の表1に示す。 図3は、およそ5 μmと100 μmの間のサイズ範囲にあるXC材料マイクロスフェアの全体像を示す走査型電子顕微鏡の画像である。 図4は、このXC陽イオン交換材料マイクロスフェアの走査型電子顕微鏡の画像を示す。

    十分に洗浄したガス洗浄フラスコ7に、陽イオン交換材料XCのマスを入れ、実施例1に記載の手順を実施した。 また、二酸化炭素ガス流入時間は30分間であった。

    形成された重炭酸塩(陰イオンとして)の量は、上記分析手順を用いて、427 mg/Lであり、炭酸塩に対するフェノールフタレイン試験は陰性であった。

    本発明に従って使用したこの陽イオン交換材料は、試験した全ての陽イオン交換材料のうち、最も低い重炭酸ナトリウム収率を有するものである;しかし、その収率は、ブランク又はコントロールランのおよそ2倍であり、これは、重炭酸塩の形成へと向かう平衡が、二酸化炭素の溶解が同時に生じている水性媒体への陽イオン交換材料の導入により移動することを示す。

    [実施例3]
    本実施例は、アルミノケイ酸塩タイプの様々なナトリウム型陽イオン交換材料を検証する。 実施例2に記載の陽イオン交換体に加えて、他のものの特性を下記表1に示す。 図5は、典型的なAゼオライトを表すAC材料のX線回折パターンを示す。 AC材料は、図3に示すものと類似のサイズ分布を有する一連のマイクロスフェアを含む。 AA材料及びAX材料はどちらもX線非晶質(X-ray amorphous)材料であり、そのパターンをそれぞれ図6及び7に示す。 これらの材料は、それぞれ、ゼオライトA及びXを合成するための典型的なゲルから得られるが、結晶成長段階前にその合成をクエンチし、小さな核と、それによるより大きな外部表面を得た。 図8は、ゼオライトの骨格範囲380 cm −1 〜1300 cm −1におけるAA材料及びAX材料の赤外スペクトルを示す。 それらは、ゼオライトの典型的IRパターンのいくつかのバンドを示し、両方の材料に短距離秩序(small range ordering)が存在することを示す。 その吸収パターンは、以下の周波数レンジ(cm −1 )により特徴付けられる:1300 cm −1 〜900 cm −1 (very strong);900 cm −1 〜800 cm −1 (medium);750 cm −1 〜650 cm −1 (medium);650 cm −1 〜520 cm −1 (weak);500 cm −1 〜420 cm −1 (medium)。

    これらの各材料を、実施例2で使用した手順に従って検証した。 評価のために使用した陽イオン交換材料の質量は6 gと9 gの間の範囲にあり、CEC及びLOIパラメーターに従って、上述のとおり決定した。 各材料について、ランタイムは5、15及び30分間である。 検証した全てのケースにおいて、炭酸塩に対するフェノールフタレイン試験は陰性であり、これは、これらの材料が重炭酸ナトリウムの生成に選択的であることを示す。 各ケースにおける重炭酸ナトリウム収率を図9に示す。 重炭酸塩の形成へと向かう平衡は、二酸化炭素の溶解が同時に生じている水性媒体における陽イオン交換材料の導入により移動することが留意される。 AA材料が最良の結果をもたらす。 驚くべきことに、非晶性材料AC及びAXは、十分に結晶化された材料が生じるものよりも良好な重炭酸ナトリウム収率を生じ、実施例1に示す水中での二酸化炭素の単なるバブリングが生じるものをはるかに超えている。

    これは確定的な解釈を与えることを意図するものではないが、これらの結晶性材料のナノ細孔の内部表面に、又は非晶性材料のバルク(in the bulk of)中の埋め込まれた交換部位に二酸化炭素ガスが拡散する問題によって、各材料のCECの予測される全変換の達成が妨げられる可能性がある。 重炭酸ナトリウムの収率は、これらの陽イオン交換材料の外部表面積におけるアルミニウムの存在量と関連するようである。 陽イオン交換材料による二酸化炭素ガスから重炭酸塩への平衡移動は紛れもないが、交換部位の利用可能性も重要である。

    [実施例4]
    本実施例では、実施例3から選択される陽イオン交換材料を、炭酸との陽イオン交換と、それに続く塩化ナトリウム溶液を用いた中間再生との連続サイクルに使用する。 開始時に使用する元の母液の量と同じ量を各サイクルで維持しながら、各サイクルについて重炭酸ナトリウムの濃縮を測定することがその狙いである。 選択した材料はAC及びAAである。 これらの材料の特性は実施例3に記載する。 炭酸交換の手順は実施例1と同じである。 炭酸交換のランタイムは、各サイクルについて30分間であった。 再生工程の手順は先に述べている。 再生は、使用済み陽イオン交換材料のマスの2倍のミリ当量を有する塩化ナトリウム溶液を用いて、固体に対する液体の比を2とし、40℃の温度で、再生時間30分間にて実施した。 その後、材料を100℃で2時間乾燥した。 陽イオン交換材料の質量を同一に保つために、わずかな補給(約100 mg)を行った後、新たな炭酸交換サイクルを行った。 各サイクルにおいて、重炭酸ナトリウム分析のために、20 mlのアリコートを母液から除いた。 同量の重炭酸ナトリウム溶液を添加することにより、このアリコートを置き換えた。 置き換えた量は、除去したアリコートと同じ質量の重炭酸ナトリウムを有する。 各サイクルについて重炭酸ナトリウムの濃縮を図10に示す。

    陽イオン交換材料は両方の場合で、各サイクル後に重炭酸ナトリウム量が増加し、これは、使用済み交換部位の再生が各材料の場合に生じることを示す。 重炭酸ナトリウム生成の相対的効率は、図9及び実施例3で観察されたものと同一であり、炭酸との30分間の陽イオン交換において、AA材料の収率の方がAC材料のものよりも優れていた。 図10に示すグラフの傾きは、サイクルによる重炭酸ナトリウム収率の増加パーセンテージを表し、AA材料及びAC材料のそれぞれについて、約9.15及び3.87である。 おそらく、二酸化炭素と重炭酸ナトリウム溶液との平衡状態により収率が制限されるが、陽イオン交換材料による二酸化炭素の重炭酸塩への平衡移動が依然として観察された。 これは、間に再生サイクルを有する連続サイクルを用いることにより、100%の収率が達成できる可能性を示す。

    [実施例5]
    本実施例は、実施例2の手順を使用するが、ただし、新しい脱塩水を使用する代わりに、150 mlの脱塩水中、2.5 gの分析グレードの重炭酸ナトリウムの溶液を調製し、再生AC材料のマスを7サイクル後に導入した。 これは、100%の重炭酸ナトリウム収率を達成するのに必要なサイクル数をシミュレーションするために実施した。 溶液中の重炭酸ナトリウム量よりも3.79%増加した量が得られ、図9及び実施例4におけるAC直線の傾きから予測されるものと十分一致した。 これは、再生された陽イオン交換材料が、数サイクル後、再度使用可能であることを示す。

    [実施例6]
    実施例4(図9)の3サイクル後の再生AA材料のマスを、150 mlの新たな脱塩水を用いて、実施例2の手順に従って評価した。 27%の収率が得られ、これは、最初のサイクルで得られた結果と非常に近似していたことから、非晶性陽イオン交換材料においても再生能力(regenerability)が達成されることが示される。

    [実施例7]
    本実施例では、AA材料に関して実施例4で得られた重炭酸ナトリウム液を、当該液からそれを分離した後、90℃で蒸発乾固した。 粉末X線回折分析は、Cu放射線K−α1[A] 1,54060を用いて実施した。 得られた回折パターンを図11に示す。 ピーク位置の器差補正のために塩化ナトリウム(NaCl)を導入した。 残りのピークは、JCPDS(Join Committee of Powder Diffraction Standards)のベースデータ(テルモナトライトについては8−448、炭酸ナトリウムについては37−451)に従い、炭酸ナトリウムの混合物(テルモナトライト Na 2 CO 3 .H 2 O、及び炭酸ナトリウム Na 2 CO 3 )として同定する。 これにより、二酸化炭素ガス溶解平衡を重炭酸塩へと移動することによる陽イオン交換材料を用いた重炭酸ナトリウム溶液から、固体の炭酸塩を得ることができることが示される。

    [実施例8]
    再生AA材料のマスを150 mlの新たな脱塩水を用いて評価した。 海抜1,700メールの場所で、27℃、絶対圧力0.83 atmにて、図1のガス洗浄フラスコに周囲空気流を0.47 L/分で通した。 24時間の連続ランタイムで実施例2の手順に従った。 収率7%の重炭酸ナトリウムが得られた。 二酸化炭素の理想的なガス挙動を考慮すると、これは、検証したランタイムの間に導入された全二酸化炭素の30%の捕捉を表す。 本実施例によって、ガス混合物から二酸化炭素を取り除くことができること、かつ本発明により、高品質の炭酸塩、重炭酸塩及び酸を含む価値の高い汎用化学品中に大気二酸化炭素を固定できることが示される。 また、本発明は、分離方法して使用でき、さらに、陽イオン交換体のミリ当量が使い果たされることなく、流入ガスの流れが都合よく調整されるならば、二酸化炭素を定量化するための分析方法としても使用できる。 この結果は、この手順をスケールアップすることにより、地球上のいずれの場所においても、単純で経済的かつ安全な方法で、大気二酸化炭素を高レベルで捕捉及び変換することが同時に可能であることを示す。

    [実施例9]
    本実施例は、X型ゼオライトであって、その格子が鉄で部分的に同形置換されている、すなわち、鉄原子とアルミニウム原子が交換部位である、ナトリウム型陽イオン交換材料を検証する。

    この材料を実施例2の手順に従って評価し、3%の収率が得られた。 これにより、アルミノケイ酸塩材料の組成中に他の種類の原子が含まれ得ることが示されたが、ただし、これらの原子は、交換を行うのに適した化学的な四面体配位、すなわち四面体構造を有するものである。

    [実施例10]
    本実施例では、アルミニウム塩、三塩化アルミニウム(AlCl 3 )を、サイズ分布が0.8 mm〜1.2 mmの範囲にあるシリカゲルマイクロスフェアの表面に均一に被着(deposit)させた。 このシリカゲル支持体は、300 m 2 /g、細孔容積1.2 cc/g、及び平均細孔径13 nmを有する。 焼成後、ナトリウムの当量が、アルミニウムの当量の1.5倍となるように、材料を塩化ナトリウム溶液と接触させた。 材料のCECは、3.9 meq/gであった。 この材料の質量7.6 g(乾燥基準)を、実施例2と同一の手順を用いて、重炭酸ナトリウムへの二酸化炭素の変換について評価し、二酸化炭素流は250 ml/分であった。 30分間での重炭酸ナトリウムの収率は57%であった。 実施例2の結晶性材料の結果と比較すると、重炭酸塩の収率が改善しており、この陽イオン交換材料において、交換部位の炭酸への良好な暴露が示される。

    [実施例11]
    本実施例では、実施例8と同じ特性を有する陽イオン交換材料を、実施例10と同じ手順を用いて、重炭酸ナトリウムへの二酸化炭素の変換について評価した。 今回は、以下の組成:
    カルシウム=96 mg/L;ナトリウム= 10.60 mg/L;マグネシウム=6.1 mg/L;カリウム=3.7 mg/L;重炭酸塩=297 mg/L;塩素=22.6 mg/L;硫酸塩=9.3 mg/L;pH=7.2
    を有する150 mLの天然水に材料を懸濁させている。
    重炭酸ナトリウムの正味収率は30%であった。 これは、脱塩水に加えて、少なくともいくつかのミネラル天然水を本発明で使用できることを示す。

    [実施例12]
    本実施例では、表1で特性を示すある量のXC材料を、XC材料のマスでのナトリウムのミリ当量の1.5倍の塩化カリウム溶液とイオン交換する。 イオン交換は、固体に対する液体の比を2とし、40℃の温度で、30分間の交換時間で実施した。 その後、材料を100℃で2時間乾燥した。 このようにして、カリウムXC材料を得る。 この材料を、実施例2に記載の手順に従って、二酸化炭素変換について検証した。 収率4%の重炭酸ナトリウムが得られた。 これにより、陽イオン交換材料において、ナトリウム以外のアルカリ金属が、溶液中、重炭酸塩となり得ることが示される。

    [実施例13]
    本実施例では、表1で特性を示すある量のAC材料を、AC材料のマスでのナトリウムのミリ当量の1倍の塩化カルシウム溶液とイオン交換する。 イオン交換は、固体に対する液体の比を2とし、40℃の温度で、30分間の交換時間で実施した。 その後、材料を100℃で2時間乾燥した。 このようにして、カルシウムAC材料を得る。 この材料を、実施例2に記載の手順に従って、二酸化炭素変換について検証した。 収率10%の重炭酸カルシウムが得られた。 これにより、陽イオン交換材料において、アルカリ土類金属が、溶液中、重炭酸塩となり得ることが示される。 しかし、重炭酸カルシウムは水溶液中にのみ存在し、固相としては知られていないと認識されている。

    [結論]
    合成重炭酸ナトリウムを大量に製造するため、アンモニア−ソーダ法が、19世紀終わり以降よく確立されている。 我々の知る限り、アルカリ重炭酸塩若しくは任意の他のアルカリ炭酸塩及びその混合物、又はアルカリ土類炭酸塩を結晶化するため、適した濃度及び純度を有する合成アルカリ重炭酸塩及び/又はアルカリ土類重炭酸塩溶液を単一の工程で大量に製造する、より急速かつ単純な陽イオン交換メカニズムの利点を活かした方法は何ら知られていない。 おそらく、25℃、1 atmにおける純水中への二酸化炭素の溶解度が低いこと(0.034 mol/L)、炭酸(H 2 CO 3 )の脱水の速度が高いのに対して、二酸化炭素の水和反応の速度が非常に低いこと(反応式1による)はすべて、二酸化炭素の水溶液中、約0.1%しか炭酸の形態で存在しないことを意味しており、比較的小さい値の第一酸性度定数(pK 1 =3.4)は、重炭酸塩−炭酸塩産業が陽イオン交換に基づく他の可能性を検討することを妨げている。 いずれにせよ、これらの見かけ上の物理化学的障害にもかかわらず、本発明は、不溶性のアルカリ金属又はアルカリ土類金属型無機陽イオン交換材料を、二酸化炭素ガスが導入又は生成される水性媒体内で接触させることにより、二酸化炭素溶解平衡が重炭酸塩の生成へと移動することを実証する。

    大気中に放出されている過剰な二酸化炭素、及びアルカリ重炭酸塩又はアルカリ土類重炭酸塩を製造するための環境に配慮した安価な方法の欠如という、上記問題点の両方を、単一の製造方法、まさに本発明が成し遂げたもの、により対処できることは自明なことではない。

    本明細書で開示する方法は、我々の発明の様々な実施態様である。 本開示を考慮することにより、当業者ならば、これらの方法の多くの変更に気付くだろう。 本発明は、開示の方法に限定されず、添付の請求の範囲の範囲内で、このような変更のすべてを含む。

    QQ群二维码
    意见反馈