【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、塩化カリウム水溶液を電解する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】塩化カリウムの電解では、高純度の塩化カリウム水溶液が使用される。 塩化カリウム溶液を製造するためには、塩化カリウム塩を水中に溶解させて、いわゆる粗製ブラインが得られ、引続き精製する。 使用した塩化カリウム塩により粗製ブライン中に導入された不純物、例えばカルシウム−、マグネシウム−、鉄−及び硫酸イオンを沈殿−及び濾過工程で除去する。 その際、 溶液としての沈殿反応薬を粗製ブラインの主流又は分流に、飽和工程の前又は直後に加える。 マグネシウム及び鉄は水酸化物として苛性カリ液を添加することにより、 カルシウムは炭酸カルシウムとして炭酸カリウムを添加することにより沈殿させる。 【0003】電解処理において硫酸イオン濃度が上昇すると(SO 4 2 ~/リットル>10g)、塩素中の酸素濃度が上昇するので、硫酸イオンを粗製ブラインから除去することは特に重要である。 【0004】硫酸イオンを粗製ブラインから、例えばC aSO 4ないしはCaSO 4 ×2H 2 Oとして沈殿させることにより除去することは公知である。 ドイツ国特許第1209562号明細書によれば、アルカリ金属塩化物ブラインから、CaOないしはCa(OH) 2及びソーダを添加することにより2工程処理でマグネシウムを水酸化マグネシウムとして、硫酸イオンをCaSO 4として及び残りの不純物を炭酸塩として沈殿させる。 【0005】ドイツ国特許第3805266号明細書には、アルカリ金属塩化物ブラインから硫酸を除去する方法が開示されており、その際、硫酸イオンを、分流中でCaO懸濁液を添加することにより、2〜9のpH値で、CaSO 4 ×2H 2 Oとして沈殿させる。 【0006】もちろん硫酸イオンをCaSO 4ないしはCaSO 4 ×2H 2 Oとして除去する際に、沈殿化学薬品(CaCl 2 、Ca(OH) 2 )の付加的な添加が必要である。 というのも利用できずに廃棄処理すべきスラッジの量が増加するからである。 電解処理を妨害するCa ++ イオンの濃度も上昇させる。 【0007】硫酸イオンを粗製ブラインから除去するために非常にしばしば使用される方法は、沈殿剤として塩化バリウム又は炭酸バリウムを用いた硫酸バリウムとしての沈殿である(Ullmanns Encyklopaedia der technis hcen Chemie, 第 9 巻、第 4版、p.339 参照)。 しかしながら、該方法は以下の欠点を有する。 【0008】バリウム塩、BaCl 2ないしはBaCO 3 は有毒なので、これらの塩に関連して特別の保護措置が必要である。 【0009】バリウム塩は高価である。 【0010】濾別したフィルタースラッジは、硫酸バリウムの他になお不溶の塩化バリウムないしは炭酸バリウムの残留分を含有する。 【0011】濾過工程による回避できないバリウムイオンの通過の際に、BaSO 4沈殿物が活性化チタンアノード上に形成される。 該沈殿物は電池電圧を高め、ひいては高い電気コストを生ぜしめる。 更に、チタンアノードの寿命を短縮させ、このことが高い反応コストを惹起する。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題は、硫酸イオンを塩化カリウム溶液から特に経済的にかつ環境を保護する方法で除去することによる塩化カリウム水溶液の電解方法を開発することであった。 【0013】 【課題を解決するための手段】ところで、驚異的にも硫酸イオンを塩化カリウム水溶液から硫酸カリウムとして及び/又は硫酸カリウムを含有する塩混合物として及び/又は硫酸カリウムを含有する化合物として沈殿させることにより特に経済的にかつ環境を保護する方法で除去することができることを見出した。 【0014】従って、本発明の対象は、硫酸イオンを塩化カリウム水溶液から、硫酸カリウムとして及び/又は硫酸カリウムを含有する塩混合物及び/又は硫酸カリウムを含有する化合物として沈殿させることにより除去することを特徴とする、塩化カリウム水溶液を電解する方法である。 【0015】硫酸イオンは、塩化カリウム水溶液から水酸化物イオン−及び/又は炭酸イオン濃度を高めることにより、硫酸カリウムとして及び/又は硫酸カリウムを含有する塩混合物として及び/又は硫酸カリウムを含有する化合物として沈殿させることにより除去することができる。 【0016】その際、硫酸イオンを塩化カリウム水溶液から、有利には水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムを添加することにより除去する。 水酸化カリウム及び炭酸カリウムは、固体の形でも水溶液でも塩化カリウム水溶液に添加することができるが、水溶液として添加するのが有利である。 溶液中に含有される塩化カリウムの添加すべき水酸化カリウムに対する量比は8:1〜2: 1、特に有利には4:1〜2.5:1である。 【0017】炭酸カリウムを添加するには、有利には溶液中に含有される塩化カリウムの添加すべき炭酸カリウムに対する量比は2.5:1〜5:1、特に有利には3:1〜4.5:1である。 【0018】別の変法では、硫酸イオンを塩化カリウム水溶液から、炭酸水素イオン濃度又は炭酸水素イオン濃度と炭酸イオン濃度を高めることにより、硫酸カリウムとして及び/又は硫酸カリウムを含有する塩混合物として及び/又は硫酸カリウムを含有する化合物として沈殿させることにより除去する。 その際、硫酸イオンを塩化カリウム水溶液から、有利には炭酸水素カリウム又は炭酸水素カリウムと炭酸カリウムの混合物を添加することにより除去する。 炭酸水素カリウムないしは炭酸カリウムとの混合物は、固体の形でも水溶液でも塩化カリウム水溶液に加えることができるが、固体の形で加えるのが有利である。 【0019】硫酸カリウムム及び/又は硫酸カリウムを含有する塩混合物及び/又は硫酸カリウムを含有する化合物の沈殿は、なお付加的な沈殿剤の添加によっても補助することができる。 好適には、なお付加的な沈殿剤として塩化カルシウムを添加することができる。 【0020】沈殿の際に、硫酸カリウム種結晶を添加するのが有利である。 沈殿した硫酸カリウム及び/又は硫酸カリウムを含有する塩混合物及び/又は硫酸カリウムを含有する化合物は一般的には結晶した形で析出し、かつ良好に濾別することができる。 過剰の塩化カリウムを共沈させないために、好適には硫酸カリウム及び/又は硫酸カリウムを含有する塩混合物及び/又は硫酸カリウムを含有する化合物の沈殿の際に、塩化カリウム水溶液の温度が塩化カリウムの飽和温度を上回るべきであった。 【0021】溶液中に含有される塩化カリウムが添加すべき水酸化カリウムに対して同じ量比の場合には、沈殿温度が上昇するにつれて沈殿した硫酸カリウムの純度が高まる、すなわち塩化カリウムの共沈は低下する。 もちろん、排出される硫酸カリウムの収率は極僅かに低下する。 沈殿した塩化カリウムの良好な収率を達成するためには、沈殿温度を高く設定するほど、塩化カリウムの水酸化カリウムに対する量比を低く選択すべきであった。 【0022】本発明による方法では、塩化カリウムの電解をアマルガム法又はダイヤフラム法もしくは隔膜法により実施することができる。 【0023】図1には、例として従来技術のアマルガム法による塩化カリウム電解の塩化カリウムブラインの循環が示されている。 【0024】塩溶解槽1中で、不純物としてカルシウム−、マグネシウム−、鉄−及び硫酸イオンを有する固体塩化カリウム(X)を稀薄ブライン又は水に溶解させて、いわゆる粗製ブライン(a)が得られる。 次いで、 該粗製ブライン(a)に塩化バリウムないしは炭酸バリウム(b)を加え、次いで沈殿容器2内で、不純物を沈殿させる。 次いでフィルター3を用いて、沈殿した沈殿物(c)から水酸化鉄、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム及び硫酸バリウムを濾別し、濾液、精製された塩化カリウムブラインに塩酸(d)を加え、電解槽4に供給する。 電解槽4の後で、いわゆる稀薄ブライン(e) が得られ、これを塩酸(f)で酸性にし、次いで脱塩素化槽5に供給する。 脱塩素化した稀薄ブラインに、引続きなお水酸化カリウム(g)及び炭酸カリウム(h)を加え、次いで塩溶解槽に戻して、塩化カリウムブラインの循環が完了する。 水酸化カリウム(g)及び炭酸カリウム(h)を塩溶解槽1の後に粗製ブライン(a)に加えることも可能である。 【0025】本発明による方法の有利な変法は、硫酸イオンを稀薄ブラインから硫酸カリウムとして及び/又は硫酸カリウムを含有する塩混合物として及び/又は硫酸カリウムを含有する化合物として沈殿させることにより除去する方法である。 稀薄ブラインとは、電解により得られる、塩化カリウムを減少させた塩化カリウムブラインであると解される。 【0026】硫酸イオンを稀薄ブラインの分流から除去するのが特に有利である。 本発明による方法では、水酸化物として沈殿可能なイオン、例えばMg−及びFe− イオンを沈殿させるのに必要な水酸化カリウムの量を完全に又は部分的に稀薄ブラインの分流に加えることができ、該分流から硫酸カリウムを分離する。 【0027】例えば、塩化カリウム約20〜25重量% 及び硫酸カリウム約1.5〜2重量%を含有する稀薄ブラインの分流に、水酸化カリウムを固体又は溶解した形で、場合により炭酸カリウムを付加的に添加して30〜 50℃の沈殿温度で加える、その際、塩化カリウムの添加すべき水酸化カリウムに対する量比は8:1〜2:1 である。 緩慢に撹拌しながら、場合により種結晶として硫酸カリウム結晶を添加しながら硫酸カリウムを沈殿させ、濾過する。 アルカリ性にした稀薄ブラインに相当する該濾液は、稀薄ブラインの主流に再度規則的に計量供給することができる。 引続き、必要の場合には稀薄ブラインの主流のpH値を、更に水酸化カリウムを添加することにより必要とされる値8〜12.5に調整することができる。 【0028】図2には、例としてアマルガム法による塩化カリウム電解の塩化カリウムブラインの循環が示されており、本発明により硫酸イオンを稀薄ブラインの分流から硫酸カリウムとして沈殿させることにより除去する。 【0029】従来技術による方法とは異なり、粗製ブライン(a)に塩化バリウムも炭酸バリウム(b)も加えないので、従ってフィルター3を用いて濾別した沈殿物(c)もまた硫酸バリウムを含有しない。 本発明による方法では、脱塩素化槽5の後で稀薄ブライン(e)の分流を主流から分岐させ、沈殿容器6内で、水酸化物として沈殿可能なイオン、例えばMg−及びFeイオンを沈殿させるために必要な量の水酸化カリウム(i)の部分量Y(Y≦1)を加える。 引続き、沈殿した硫酸カリウム(k)をフィルター7を用いて濾別し、該濾液(l) を再度稀薄ブライン(e)の主流に加える。 次いで、該稀薄ブライン(e)を水酸化物の沈殿に必要な水酸化カリウム(m)の残量(1−Y)並びに炭酸カリウム(h)を加え、再度塩溶解槽1に戻して、塩化カリウムブラインの循環を完了する。 水酸化カリウム(m)の残量(1−Y)並びに炭酸カリウム(h)を塩溶解槽1の後で粗製ブラインに加えることも可能である。 【0030】本発明による方法を用いて、容易に、本来稀薄ブラインの分流中に含有される硫酸カリウムの約8 0%までを排出することができる。 いずれにせよ該粗製物により硫酸カリウムが塩化カリウム電解の塩化カリウムブラインの循環に導入されるほど大量の硫酸カリウムを排出することができる。 【0031】本発明による方法は、従来技術による方法とは異なり以下の利点を有する。 【0032】高価な沈殿剤(例えばバリウム塩)を節約する。 【0033】有毒なバリウム塩との関わりを回避する。 【0034】平均的な電池電圧を低下させ、ひいては電気コストを節約する。 【0035】アノードの寿命を延長させる。 【0036】硫酸カリウムの分離された排出物を経済的に利用することが可能である。 沈殿した結晶化硫酸カリウムは、例えば肥料工業で使用される有価物質である。 【0037】沈殿するフィルタースラッジの量は減少し、このことが廃棄処理コストの節約を生ぜしめる。 【0038】フィルタースラッジはバリウム塩不含であり、このことが環境保護に非常に貢献する。 【0039】 【実施例】次に、本発明を以下の実施例につき詳細に説明する。 【0040】例1 pH値10.5〜11を有し、かつKCl 23.3重量%及びK 2 SO 4 1.78重量%を含有する塩化カリウム稀薄ブライン1.5m 3 (1741.9kgに相当)を、分流として塩化カリウム電解からの稀薄ブラインの主流から分岐させ、次いで沈殿容器内で49.6重量%の苛性カリ液242.8kgを50℃の温度で加えた。 KClのKOHに対する量比は3.36:1であった。 K 2 SO 4種結晶を添加した後、撹拌しながら35℃ の沈殿温度に冷却し、沈殿したK 2 SO 4結晶を濾別し、 29℃の温度に冷却される濾液中の後沈殿物を最初のK 2 SO 4結晶と一緒にした。 得られた濾液中で使用した苛性カリ液は実際に完全に再確認された。 該濾液を稀薄ブラインの主流に再度戻した。 【0041】K 2 SO 4結晶体の量は9.97kgであった。 該結晶体は、以下のように組成されていた。 【0042】K 2 SO 4 95.8重量%、KCl 1. 3重量%、残り水。 K 2 SO 4 9.55kgの収量は、 本来稀薄ブラインの分流中に含有されるK 2 SO 4の量の30.8%に相当する。 【0043】例1は、K 2 SO 4を非常に純粋な形で稀薄ブラインから排出することができることを示している。 【0044】例2 pH値10.5〜11を有し、かつKCl 23.8重量%及びK 2 SO 4 1.69重量%を含有する塩化カリウム稀薄ブライン1.5m 3 (1753.3kgに相当)を、分流として塩化カリウム電解からの稀薄ブラインの主流から分岐させ、次いで沈殿容器内で50重量% の苛性カリ液310.7kgを50℃の温度で加えた。 KClのKOHに対する量比は2.68:1であった。 K 2 SO 4種結晶を添加した後、撹拌しながら32℃の沈殿温度に冷却し、沈殿したK 2 SO 4結晶体を濾別し、2 9℃の温度に冷却される濾液中の後沈殿物を最初のK 2 SO 4結晶体と一緒にした。 得られた濾液中で使用した苛性カリ液は実際に完全に再確認された。 該濾液を稀薄ブラインの主流に再度戻した。 【0045】K 2 SO 4結晶の量は54.8kgであった。 該結晶は以下のように組成されていた。 【0046】K 2 SO 4 27.94重量%、KCl 6 7.07重量%、残り水。 K 2 SO 4 15.31kgの収量は、本来稀薄ブラインの分流中に含有されるK 2 SO 4 の量の51.7%に相当する。 【0047】例2は、K 2 SO 4を高い収率で稀薄ブラインから排出することができることを示している。 【0048】例3 pH値10.5〜11を有し、かつKCl 23.2重量%及びK 2 SO 4 1.74重量%を有する塩化カリウム稀薄ブライン1.5m 3 (1740.6kgに相当) を、分流として塩化カリウム電解からの稀薄ブラインの主流から分岐させ、次いで沈殿容器内で49.6重量% の苛性カリ液303.1kgを50℃の温度で加えた。 KClのKOHに対する量比は2.68:1であった。 K 2 SO 4種結晶を添加した後、撹拌しながら37℃の沈殿温度に冷却し、沈殿したK 2 SO 4結晶を濾別した。 約38℃の温度に維持された濾液中では、僅少量の第2の結晶が晶出したにすぎなかった。 これを最初のK 2 SO 4 結晶と一緒にした。 使用された苛性カリ液の量は、得られた濾液中で実際に完全に再確認された。 該濾液を稀薄ブラインの主流に再度戻した。 【0049】K 2 SO 4結晶の量は12.1kgであった。 該結晶は、以下のように組成されていた。 【0050】K 2 SO 4 98.84重量%、KCl 0.99重量%、残り水。 K 2 SO 4 11.96kgの収量は、本来稀薄ブラインの分流中に含有されるK 2 SO 4 量の39.4%に相当する。 【0051】例3は、K 2 SO 4を非常に純粋な形で、かつ同時に高い収率で稀薄ブラインから排出することができることを示している。 【図面の簡単な説明】 【図1】従来技術による塩化カリウム水溶液電解を実施する方法のフローチャートである。 【図2】本発明による塩化カリウム水溶液電解を実施する方法のフローチャートである。 【符号の説明】 1 塩溶解槽、 2,6 沈殿容器、 3,7 フィルター、 4 電解槽、5 脱塩素化槽 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 インゴ シュタール ドイツ連邦共和国 フェルマー シュタウ フェンベルクシュトラーセ 31 (72)発明者 カール ライナー ヴァムバッハ−ゾンマ ーホフ ドイツ連邦共和国 バート ヘルスフェル ト ベルベリッツェンヴェーク 44アー |