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熱線遮蔽微粒子、熱線遮蔽微粒子分散液、熱線遮蔽膜用塗布液、およびこれらを用いた熱線遮蔽膜、熱線遮蔽樹脂フィルム、熱線遮蔽微粒子分散体

申请号 JP2017037539 申请日 2017-02-28 公开(公告)号 JP2018141114A 公开(公告)日 2018-09-13
申请人 住友金属鉱山株式会社; 发明人 足立 健治; 吉尾 里司;
摘要 【課題】可視透過性が高く、同時に優れた熱線遮蔽効果と安定した耐侯性とを有する熱線遮蔽微粒子、当該熱線遮蔽微粒子を用いた熱線遮蔽微粒子分散液、熱線遮蔽膜用塗布液、およびこれらを用いた熱線遮蔽膜、熱線遮蔽樹脂フィルム、熱線遮蔽微粒子分散体を提供する。 【解決手段】一般式Ca x La 1−x B m で表記されるカルシウムランタンホウ化物微粒子を含有する熱線遮蔽微粒子であって、前記カルシウムランタンホウ化物微粒子の微粒子形状が、1)X線小 角 散乱法を用いて得られる、直線の傾きの値Veが−3.8≦Ve≦−1.5である、2)平板状円柱形状、または、回転楕円体形状であって、アスペクト比d/hの値が1.5≦d/h≦20である、から選択される少なくとも一つの形状である熱線遮蔽微粒子、および、当該微粒子を用いた熱線遮蔽微粒子分散液、熱線遮蔽膜用塗布液、およびこれらを用いた熱線遮蔽膜、熱線遮蔽樹脂フィルム、熱線遮蔽微粒子分散体を提供する。 【選択図】図1
权利要求

一般式CaxLa1−xBmで表記されるカルシウムランタンホウ化物微粒子を含有する熱線遮蔽微粒子であって、 前記一般式におけるxの値が0.001≦x≦0.800、かつ、mの値が5.0≦m<6.3であり、 前記カルシウムランタンホウ化物微粒子の平均分散粒子径が1nm以上800nm以下であり、 前記カルシウムランタンホウ化物微粒子の微粒子形状が、 1)X線小散乱法を用いて、溶媒中に希釈分散させた前記カルシウムランタンホウ化物微粒子の散乱強度を測定したとき、散乱ベクトルq=4πsinθ/λと、散乱強度I(q)との関係を、両対数プロットして得られる直線の傾きの値Veが−3.8≦Ve≦−1.5である、 2)平板状円柱(但し、底面円の直径をd、円柱の高さをhとする。)形状、または、回転楕円体(但し、長軸の長さをd、短軸の長さをhとする。)形状であって、アスペクト比d/hの値が1.5≦d/h≦20である、 から選択される少なくとも一つの形状である、 ことを特徴とする熱線遮蔽微粒子。前記一般式におけるxの値が0.100≦x≦0.625、かつ、mの値が5.0≦m<6.3であることを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽微粒子。請求項1または2に記載のカルシウムランタンホウ化物微粒子であって、前記一般式におけるxの値が異なる2種以上のカルシウムランタンホウ化物微粒子の混合物を含有することを特徴とする熱線遮蔽微粒子。請求項1から3のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子が、液状媒体中に分散して含有されている分散液であって、 前記液状媒体が、、有機溶媒、油脂、液状樹脂、プラスチック用液状可塑剤から選択される1種以上であることを特徴とする熱線遮蔽微粒子分散液。前記熱線遮蔽微粒子を0.02質量%以上20質量%以下含有していることを特徴とする請求項4に記載の熱線遮蔽微粒子分散液。請求項4または5に記載の熱線遮蔽微粒子分散液に、さらに、紫外線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑性樹脂、または、アルコキシドの部分加水分解重合物から選択される1種以上を含有するバインダーが添加されており、 前記熱線遮蔽微粒子の含有量が0.8質量%以上10.0質量%以下であることを特徴とする熱線遮蔽膜用塗布液。基材の片面または両面に、請求項6に記載の熱線遮蔽膜用塗布液を塗布してなることを特徴とする熱線遮蔽膜。請求項7に記載の熱線遮蔽膜が、基材の片面または両面に形成された熱線遮蔽樹脂フィルムであって、 前記基材が樹脂フィルムであり、 前記樹脂フィルムの樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、環状オレフィン系樹脂から選択される1種以上であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂フィルム。前記樹脂フィルムの少なくとも片面に、接着用粘着層を備えることを特徴とする請求項8に記載の熱線遮蔽樹脂フィルム。前記接着用粘着層が、請求項1から3のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子を含有することを特徴とする請求項9に記載の熱線遮蔽樹脂フィルム。請求項8から10のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂フィルムであって、 前記熱線遮蔽膜、または、前記熱線遮蔽微粒子を含有する接着用粘着層の表面抵抗値が、106Ω/□以上であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂フィルム。請求項1から3のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子が、熱可塑性樹脂またはUV硬化性樹脂中に分散していることを特徴とする熱線遮蔽微粒子分散体。前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂の樹脂群から選択される1種の樹脂、 または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、 または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、のいずれかであることを特徴とする請求項12に記載の熱線遮蔽微粒子分散体。前記熱線遮蔽微粒子を0.001質量%以上80.0質量%以下含有することを特徴とする請求項12または13に記載の熱線遮蔽微粒子分散体。前記熱線遮蔽微粒子分散体がシート形状、ボード形状またはフィルム形状となっていることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子分散体。前記熱線遮蔽微粒子分散体に含まれる単位投影面積当たりにおける、前記熱線遮蔽微粒子の含有量が0.01g/m2以上0.5g/m2以下であることを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子分散体。

说明书全文

本発明は、可視光透過性が良好で、且つ、熱線遮蔽性に優れる熱線遮蔽層を形成できる熱線遮蔽微粒子、当該熱線遮蔽微粒子を用いた熱線遮蔽微粒子分散液、熱線遮蔽膜用塗布液、およびこれらを用いて得られる熱線遮蔽膜、熱線遮蔽樹脂フィルム、熱線遮蔽微粒子分散体に関する。

良好な可視光透過率を有し透明性を保ちながら、熱線を吸収する熱線遮蔽技術として、さまざまな技術が提案されてきた。なかでも、導電性微粒子の分散体を用いた熱線遮蔽技術は、その他の技術と比較して熱線遮蔽特性に優れ、低コストであり電波透過性があり、さらに耐候性が高い等のメリットがある。

例えば、特許文献1には、酸化錫微粉末を分散状態で含有させた透明樹脂を、シートまたはフィルム状に成型し、これを透明、半透明合成樹脂基材に積層一体としてなる赤外線吸収性合成樹脂成型品が提案されている。上記構成の赤外線吸収性合成樹脂成型品は、厚み内に分散状態で含有されたSnO2微粉末の作用により、太陽光線中の赤外領域より長波長側の光が吸収されて、その透過が阻止される。そこで、これを採光材料として供した場合、室内の温度上昇が緩和される。また、SnO2はこれ自体導電性を有するので、表面の電気抵抗が低くなり制電性も付与されることが開示されている。

また、特許文献2には、アンチモン錫酸化物(ATO)粉およびインジウム錫酸化物(ITO)粉が分散した分散液、塗料、ペースト、または、これらによって形成された塗膜、あるいはフィルムといった熱線カット組成物が開示されている。得られる熱線カット組成物は優れた熱線遮蔽効果および耐候性を有し、かつ低ヘイズであるという利点を有していることが開示されている。

また、特許文献3には、LaB6、TiN、FeOOH、RuO2などの微粒子を含む熱線遮蔽液及びコーティング膜が開示されており、特許文献4には、粒径が200nm以下のホウ化物微粒子(一般式XB6、但しXが、Ce、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Eu、Er、Tm、Lu、Sr、Caのうちの1種以上の元素である。)を、バインダーとともに溶液中に混合分散した日射遮蔽膜用塗布液が提案されている。

更に、特許文献5には、タングステン酸化物微粒子、または/及び、複合タングステン酸化物微粒子を含有する赤外線遮蔽材料中に含まれる自由電子量を増加させ、当該微粒子の粒子直径を1nm以上800nm以下に微粒子化して赤外線遮蔽材料微粒子とすること、および、当該赤外線遮蔽材料微粒子を、適宜な媒体中に分散させて製造した膜は、可視透明性と近赤外線吸収能に秀でており、上述したホウ化物やITOを上回る日射遮蔽性能を備えていることが開示されている。

特開平2−136230号公報

特開2007−154152号公報

特許4058822号

特許4096277号

特許4096205号

Satoshi Yoshio, Koichiro Maki and Kenji Adachi, “Optical properties of group-3 metal hexaboride nanoparticles by first-principles calculations”, J. Chem. Phys., Vol.144, 234702 (2016)

K. Machida and K. Adachi, “Particle shape inhomogeneity and plasmon band broadening of solar-control LaB6 nanoparticles”, J. Appl. Phys., 118, 013103 (2015)

西川洋、セラミックス、22巻、1987、pp40−45

土井、粉体と工業、21(5)1989

しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献1に提案されている赤外線吸収性合成樹脂成型品は、SnO2微粉末を分散状態で含有させた透明合成樹脂を各種形状に成型してなるものである。そしてSnO2は、粒径0.02〜0.2μmの青色微粉末である。この為、SnO2微粉末を、透明、半透明合成樹脂中に多く添加するほど赤外領域より長波長側の光の遮蔽効果は大となるが、可視領域の光の透過率が低くなる。このため、当該赤外線吸収性合成樹脂成型品は、高い可視光透過率が求められた時の熱線遮蔽性能が十分でないという問題点が存在した。

また、特許文献2に開示されているITO材料はInを含んでいるため高価である。また、太陽光の中で強度が最も大きい波長1000nm以下の近赤外線領域にある光の遮蔽に関して、必ずしも大きな吸収効果を持っていないという問題点が存在した。

一方、特許文献3、4に提案されている窒素化合物やホウ化物微粒子分散物は、熱線遮蔽材料として用いた場合の遮蔽性能が大きく改善されている。中でも六ホウ化ランタンは、波長1000nm以下の近赤外域の太陽光の遮蔽に関して強い吸収力を持っている。しかしながら、これら窒素化合物やホウ化物微粒子分散物は、可視波長に少なからぬ吸収を持っており、熱線遮蔽膜とした場合、概ね緑色に着色した透明膜となる問題点がある。

特許文献5に提案されている、タングステン酸化物微粒子、または/及び、複合タングステン酸化物微粒子は、僅かな青みを残すものの、可視に隣接する近赤外の波長の光をカットしつつ、可視波長の光の透過性が大きく改善されており、吸収型の熱線遮蔽膜としては理想に近いプロファイルを持っている。しかしながら短波長の光の照射で青色に着色するという、弱いフォトクロミック特性を示すことや、分に反応して遮蔽機能が劣化するなどの耐環境不安定性を有する。この為、これらを防止する方策にコストを要するなどのという問題点があった。

本発明は上述の状況の下でなされたものであり、その解決しようとする課題は、可視透過性が高く、同時に優れた熱線遮蔽効果と安定した耐侯性とを有する熱線遮蔽微粒子、当該熱線遮蔽微粒子を用いた熱線遮蔽微粒子分散液、熱線遮蔽膜用塗布液、およびこれらを用いた熱線遮蔽膜、熱線遮蔽樹脂フィルム、熱線遮蔽微粒子分散体を提供することである。

上述の課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を行った。そして、一般式CaxLa1−xBm(但し、0.001≦x≦0.800、5.0≦m<6.3)で表記されるカルシウムランタンホウ化物であって、所定の形状を有する微粒子が、強い熱線吸収作用を有すると同時に、幅広い可視透過性、および安定した耐侯性を有することを知見し、本発明を完成したものである。

すなわち、本発明の第1の発明は、 一般式CaxLa1−xBmで表記されるカルシウムランタンホウ化物微粒子を含有する熱線遮蔽微粒子であって、 前記一般式におけるxの値が0.001≦x≦0.800、かつ、mの値が5.0≦m<6.3であり、 前記カルシウムランタンホウ化物微粒子の平均分散粒子径が1nm以上800nm以下であり、 前記カルシウムランタンホウ化物微粒子の微粒子形状が、 1)X線小散乱法を用いて、溶媒中に希釈分散させた前記カルシウムランタンホウ化物微粒子の散乱強度を測定したとき、散乱ベクトルq=4πsinθ/λと、散乱強度I(q)との関係を、両対数プロットして得られる直線の傾きの値Veが−3.8≦Ve≦−1.5である、 2)平板状円柱(但し、底面円の直径をd、円柱の高さをhとする。)形状、または、回転楕円体(但し、長軸の長さをd、短軸の長さをhとする。)形状であって、アスペクト比d/hの値が1.5≦d/h≦20である、 から選択される少なくとも一つの形状である、 ことを特徴とする熱線遮蔽微粒子を提供する。 第2の発明は、 前記一般式におけるxの値が0.100≦x≦0.625、かつ、mの値が5.0≦m<6.3であることを特徴とする第1の発明に記載の熱線遮蔽微粒子を提供する。 第3の発明は、 第1または第2の発明に記載のカルシウムランタンホウ化物微粒子であって、前記一般式におけるxの値が異なる2種以上のカルシウムランタンホウ化物微粒子の混合物を含有することを特徴とする熱線遮蔽微粒子を提供する。 第4の発明は、 第1から第3の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子が、液状媒体中に分散して含有されている分散液であって、 前記液状媒体が、水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、プラスチック用液状可塑剤から選択される1種以上であることを特徴とする熱線遮蔽微粒子分散液を提供する。 第5の発明は、 前記熱線遮蔽微粒子を0.02質量%以上20質量%以下含有していることを特徴とする第4の発明に記載の熱線遮蔽微粒子分散液を提供する。 第6の発明は、 第4または第5の発明に記載の熱線遮蔽微粒子分散液に、さらに、紫外線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑性樹脂、または、アルコキシドの部分加水分解重合物から選択される1種以上を含有するバインダーが添加されており、 前記熱線遮蔽微粒子の含有量が0.8質量%以上10.0質量%以下であることを特徴とする熱線遮蔽膜用塗布液を提供する。 第7の発明は、 基材の片面または両面に、第6の発明に記載の熱線遮蔽膜用塗布液を塗布してなることを特徴とする熱線遮蔽膜を提供する。 第8の発明は、 第7の発明に記載の熱線遮蔽膜が、基材の片面または両面に形成された熱線遮蔽樹脂フィルムであって、 前記基材が樹脂フィルムであり、 前記樹脂フィルムの樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、環状オレフィン系樹脂から選択される1種以上であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂フィルムを提供する。 第9の発明は、 前記樹脂フィルムの少なくとも片面に、接着用粘着層を備えることを特徴とする第8の発明に記載の熱線遮蔽樹脂フィルムを提供する。 第10の発明は、 前記接着用粘着層が、第1から第3の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子を含有することを特徴とする請求項9に記載の熱線遮蔽樹脂フィルムを提供する。 第11の発明は、 第8から第10の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂フィルムであって、 前記熱線遮蔽膜、または、前記熱線遮蔽微粒子を含有する接着用粘着層の表面抵抗値が、106Ω/□以上であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂フィルムを提供する。 第12の発明は、 第1から第3の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子が、熱可塑性樹脂またはUV硬化性樹脂中に分散していることを特徴とする熱線遮蔽微粒子分散体を提供する。 第13の発明は、 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂の樹脂群から選択される1種の樹脂、 または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、 または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、のいずれかであることを特徴とする第12の発明に記載の熱線遮蔽微粒子分散体を提供する。 第14の発明は、 前記熱線遮蔽微粒子を0.001質量%以上80.0質量%以下含有することを特徴とする第12または第13の発明に記載の熱線遮蔽微粒子分散体を提供する。 第15の発明は、 前記熱線遮蔽微粒子分散体がシート形状、ボード形状またはフィルム形状となっていることを特徴とする第12から第14の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子分散体を提供する。 第16の発明は、 前記熱線遮蔽微粒子分散体に含まれる単位投影面積当たりにおける、前記熱線遮蔽微粒子の含有量が0.01g/m2以上0.5g/m2以下であることを特徴とする第12から第15の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子分散体を提供する。

本発明に係る熱線遮蔽微粒子、当該熱線遮蔽微粒子を用いた熱線遮蔽微粒子分散液、熱線遮蔽膜用塗布液、およびこれらを用いた熱線遮蔽膜、熱線遮蔽樹脂フィルム、熱線遮蔽微粒子分散体は、太陽光に含まれる熱線成分を幅広く遮蔽する熱線遮蔽材料としての十分な特性を有するとともに、可視光透過率が高く、安定した耐候性(耐酸化性、耐水性、耐湿性、耐紫外線性)を有していた。

六ホウ化物の結晶構造を示す模式図である。

本発明に用いられる高周波熱プラズマ反応装置の一実施態様の装置概念図である。

本発明に係る熱線遮蔽微粒子、熱線遮蔽微粒子分散液、熱線遮蔽膜用塗布液、およびこれらを用いた熱線遮蔽膜、熱線遮蔽樹脂フィルム、熱線遮蔽微粒子分散体の実施の形態について、[a]カルシウムランタンホウ化物微粒子、[b]カルシウムランタンホウ化物微粒子の製造方法、[c]熱線遮蔽微粒子分散液とその製造方法、[d]熱線遮蔽膜用塗布液および熱線遮蔽膜、熱線遮蔽樹脂フィルムとそれらの製造方法、[e]熱線遮蔽微粒子分散体とその製造方法、の順で説明する。

[a]カルシウムランタンホウ化物微粒子 六ホウ化物(一般式MB6)の結晶構造を図1に示す。 図1に示すように六ホウ化物は立方晶系で単純立方構造を有しており、立方体の各頂点にホウ素原子11が6個集合して形成された八面体が配置されている。そして、ホウ素原子11で構成された八面体8個に囲まれた中央の空間に、元素M12が配置される。 本発明に係るカルシウムランタンホウ化物は、一般式CaxLa1−xBm(但し、0.001≦x≦0.800、5.0≦m<6.3である。)で表記され、当該CaxLa1−xBm微粒子は、その終端組成であるCaB6(但し、x=1、m=6である。)およびLaB6(但し、x=0、m=6である。)と同様に、空間群Pm(−3)m、Bravais格子が単純立方構造の結晶構造を持ち、体心位置にCaまたはLaが配置し、角位置にホウ素6個が集合した八面体が配置している。

従来知られているLaB6は自由電子を多量にもつ金属的な化合物であり、ナノ微粒子の状態に微細化すると、自由電子の局在表面プラズモン共鳴により外界の電磁波を共鳴吸収することが可能となる。そして、LaB6の熱線遮蔽効果はこの原理を応用している。 一方、本発明者等は種々研究する中で、La位置を2族グループ元素のアルカリ土類元素で置換する効果について想到し、研究を深めた。そして、中でもCaでLaを一部置換した一般式CaxLa1−xBm(但し、0.001≦x≦0.800、5.0≦m<6.3である。)で表記されるカルシウムランタンホウ化物微粒子には、高い赤外線の吸収効果を保持しつつCa添加量に応じて可視光透過性を画期的に向上させる効果があることを見出した。

本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子において、その表面が酸化していないことが好ましいが、通常は僅かに酸化していることが多い。その酸化している表面の詳細な組成は定かではないが、アモルファスのホウ酸B2O3にLaおよびCa元素が僅かに含有された相が最表面性状であると考えられる。

また、後述するカルシウムランタンホウ化物微粒子の分散工程において、微粒子表面の酸化が起こることはある程度避けられない。しかし、その場合でも微粒子内部ではプラズモン共鳴を起こす能力を維持しているので、近赤外線遮蔽効果を発現する有効性に変わりはない。従って、例えば表面が酸化されたカルシウムランタンホウ化物微粒子であっても、本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子として使用することが可能である。

また、本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子は、結晶としての完全性が高いほど大きい熱線遮蔽効果が得られる。尤も、結晶性が低くX線回折でブロードな回折ピークを生じるようなものであっても、微粒子内部の基本的な結合が六ホウ化物の骨格に各金属元素が結合して成り立っているものであるならば熱線遮蔽効果を発現する。この為、本発明において使用することが可能である。

以下、本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子の組成、形状、粒径等について、(1)Caの含有量[x:0.001≦x≦0.800]、(2)B(ホウ素)の含有量[5.0≦m<6.3]、(3)形状、(4)平均分散粒子径、その他、の順で詳細に説明する。

(1)Caの含有量[x:0.001≦x≦0.800] 本発明に係るカルシウムランタンホウ化物[CaxLa1−xBm]微粒子において、CaはLa位置に全率固溶するが、Caの含有量xは、0.001≦x≦0.800の範囲にあることが肝要である。Caの含有量xが0.001よりも大きい場合は、可視光透過率の改善効果が明らかになる。一方、xが0.800以下であれば、実質的にCaB6と異なる、可視光透過率の改善効果が明らかな特性となり、本発明の効果を享受できる。

本発明の効果である可視光透過性の高さを十分維持するためのより好ましい組成は、Caの含有量xが0.100≦x≦0.625の範囲である。この組成範囲においては、当該カルシウムランタンホウ化物微粒子を含有分散させた塗布膜において、緑色着色が抑制される改善効果が顕著であり、同時に十分な赤外吸収特性を奏することができるからである。

本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子は、Caの含有量の値xが異なる組成のカルシウムランタンホウ化物微粒子を、2種以上混合して用いることも好ましい構成である。Caの含有量の値xが異なる値を有するカルシウムランタンホウ化物微粒子は、夫々異なる吸収波長をもつ。従って異なるxの値をもつ微粒子を混合すると、実質的に、吸収ピーク波長の幅を広げる効果がある。

理由は定かではないが、実験が示すところによれば、特にCa:La=1:3に置換された微粒子(即ち、x=0.25である)と、Ca:La=3:1に置換された微粒子(即ち、x=0.75である。)とを種々の割合で混合する時、可視域の透過性と赤外線の吸収性とがバランスよく満たされた熱線遮蔽膜が形成される。

本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子は、通常工業的に実施される範囲において多少の不可避的不純物を含んでいても良い。例えば、La位置に置換する不純物として、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、およびSrといった元素を少量含有しても良い。また、B位置に置換する不純物として、C、N、Oといった元素を少量含有しても良い。さらに、その他の通常の工業的製造過程において、少量導入される程度の不純物を含有しても良い。

CaB6微粒子分散体を作製して光学吸収測定を行った結果によると、CaB6は、自由電子濃度は非常に低いが、中赤外線領域に表面プラズモン共鳴吸収を有し、セミメタル的性質を有している。

またカルシウムランタンホウ化物において、CaはLa位置に全率固溶するが、Ca添加に伴う吸収波長の変化を調べた。すると、平均的に球状で近似される粒子形状を持つ微粒子集団の場合、吸収波長はCaの増加に伴って、LaB6微粒子の場合の約600nmからCaB6微粒子の約3200nmへと、徐々に長波長側へ伸長されるものであった。そしてその変化は一様ではなく、La−rich側では変化が少なく、Ca−rich側では変化が急激に大きくなることが判明した。 すなわち、カルシウムランタンホウ化物微粒子を球状粒子で近似した時、Ca含有量の値xが0.0≦x≦0.5の組成範囲では、プラズマ吸収波長は600nm付近から800nm付近まで200nm程度長くなる程度である。一方、Ca含有量の値xが0.5≦x≦1.0の組成範囲ではプラズマ吸収波長の変化率は急激に大きくなり、波長800nm付近から波長3200nm付近まで、2400nm程度も変化することが判明した。

また、これらのCaが添加されたカルシウムランタンホウ化物という中間組成においては、上述したLaB6の強い緑色着色の一因ともいえる青色側の透過率の低下が改善される。特に、Ca含有量の値xが0.5≦x≦0.8の組成においては、緑色の色調がより薄くなり、ニュートラルな色調方向へと変化するので、実用上極めて有用であるとの知見を得た。

ここで、LaB6へのCa添加による可視透過性の向上効果の機構について説明する。 本発明者等は最近、非特許文献1において、LaB6の可視透過性と着色の原因が、その電子構造から理解することができることを明らかにした。 すなわち、LaB6を含む3族元素をベースとしたMB6材料(但し、Mは、Sc,Y,La、Acから選択される元素である。)においては、そのブリルアンゾーン内のΓ点とX点以外ではワイドギャップの電子構造を持つため、基本的に透過性は高いはずである。一方、Γ点ではギャップが狭く、またX点では伝導帯下部と価電子帯上部とを結んで自由電子様のバンドが交叉しており、低エネルギーでの電子遷移、即ち濃着色の原因となる可能性がある。しかし、当該価電子帯上部は主にホウ素の2p軌道、当該伝導帯下部は主にLaの5d軌道とホウ素2p軌道のハイブリッド軌道となっている。この為、Fermiの黄金律により電子の遷移確率が大きく減少し、可視透過性を生む原因となっていることを知見した。

本発明者等は上記知見をもとに、さらにLaB6への他元素添加による可視透過性の向上効果について検討を行った。 その結果、添加元素として2族元素をベースとした、SrB6やBaB6では、各々3d、4d電子がホウ素2p電子とハイブリッド軌道を形成して、同様に可視透過性を生むことを知見した。ところが、同じ2族元素でもCaの場合にはd電子が存在せず、d電子と同じように軌道方位性の強い3p電子がホウ素2p電子とハイブリッド軌道を形成することを知見した。そして当該ハイブリッド軌道は、d−p型とはやや異なるp−p型であり、d−p型とはやや異なった電子遷移の分布形態を持つことを新たに明らかにしたのである。 以上の新たな知見から、本発明に係るカルシウムランタンホウ化物における、LaB6へのCa添加による特別な可視透過性の向上は、X点周辺におけるCa−3p軌道とB−2p軌道とのハイブリッドバンドに起因するとの考察に想到した。

次に、本発明に係るカルシウムランタンホウ化物における、プラズマ吸収による赤外吸収と可視透過性の関係について説明する。 一般的にプラズマ吸収の大きさは自由電子密度の減少に伴って小さくなるが、カルシウムランタンホウ化物においては、自由電子量がLaの減少に伴って減少するため、Ca含有量の値xが大きいほど吸収ピークが小さくなる傾向が見られる。一方で、Ca含有量の値xが大きいほど可視光の透過率が大きくなるため、より多量のカルシウムランタンホウ化物微粒子を膜中に導入できる。つまり、実際のカルシウムランタンホウ化物微粒子分散膜においては、プラズマ吸収の大きさの減少を、微粒子存在量の増加で補える効果がある。すなわち、カルシウムランタンホウ化物微粒子を透明熱線遮蔽材料として考えた場合、その特性は、プラズマ吸収の強さと可視透過率の大きさとのバランスで決定される。従って、Ca含有量が多いカルシウムランタンホウ化物微粒子であっても、可視波長で透過率が大きく、かつ強い熱線遮蔽効果を発揮することができる。

(2)B(ホウ素)の含有量[5.0≦m<6.3] 本発明に係るカルシウムランタンホウ化物CaxLa1−xBm(但し、0.001≦x≦0.800)微粒子において、CaとLa原子とをまとめてM元素と表記したとき、当該ホウ化物微粒子を含む粉体を化学分析して得られる、M元素の1原子に対するB(ホウ素)の原子数比mの値は5.0≦m<6.3であることが肝要である。

一般式MBmで表されるホウ化物微粒子としては、MB4,MB6,MB12等で表されるホウ化物が挙げられるが、熱線遮蔽用のホウ化物微粒子としては、Bの原子数比mの値は5.0≦m<6.3であることが肝要である。ここで、m≧5.0となる場合は、XB、XB2などの生成が抑制されており、熱線遮蔽特性が向上する。一方、m<6.3となる場合は、ホウ化物微粒子以外に酸化ホウ素粒子が発生することが抑制される。酸化ホウ素粒子は吸湿性があるため、ホウ化物粉体中に酸化ホウ素粒子が混入すると、ホウ化物粉体の耐湿性が低下し、日射遮蔽特性の経時劣化が大きくなってしまう。そこで、m<6.3として、酸化ホウ素粒子の発生を抑制することが好ましい。 すなわち、熱線遮蔽用のホウ化物微粒子としては、上記ホウ化物のうちMB6が主体となっていることが肝要であるが、一部にMB4、MB12を含んでいても良い。

上記ホウ化物微粒子を製造した場合、湿式分析を行なうと、実際にはBの原子数比値mの値が6から若干上下し、微量に他相を含む場合がある。X線回折やTEM観察によれば、それらの相はLaBO3やB2O3であり、原料が空気中の水分を吸収した場合の反応生成物として生成されたものと考えられる。いずれにしても熱線遮蔽効果の主体はMB6微粒子であり、ホウ化物微粒子自体の組成揺らぎも含めて、5.0≦m<6.3であることが肝要である。

(3)形状 本発明に係る熱線遮蔽微粒子は、一般式CaxLa1−xBm(但し、0.001≦x≦0.800、5.0≦m<6.3)で表記されるカルシウムランタンホウ化物微粒子を含有する熱線遮蔽微粒子であって、前記カルシウムランタンホウ化物微粒子の形状は、近似的に、ディスク状、平板状円柱、扁平状、パンケーキ状、または平らな円盤状の回転楕円体であることを特徴とする。 具体的には、本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子の微粒子形状は、 1)X線小角散乱法を用いて、溶媒中に希釈分散させた前記カルシウムランタンホウ化物微粒子の散乱強度を測定したとき、散乱ベクトルq=4πsinθ/λと、散乱強度I(q)との関係を、両対数プロットして得られる直線の傾きの値Veが−3.8≦Ve≦−1.5である、 2)平板状円柱(但し、底面円の直径をd、円柱の高さをhとする。)形状、または、回転楕円体(但し、長軸の長さをd、短軸の長さをhとする。)形状であって、アスペクト比d/hの値が1.5≦d/h≦20である、 から選択される少なくとも一つの形状である、ことを特徴とする。

以下、前記カルシウムランタンホウ化物微粒子の好ましい形状について、より具体的に説明する。 まず、前記カルシウムランタンホウ化物微粒子についてX線小角散乱法を用いて、溶媒中に希釈分散させた当該微粒子の散乱強度を測定する時、散乱強度I(q)と散乱ベクトルq=4πsinθ/λとの関係を、両対数プロットして、得られる直線の傾きVeが、−3.8≦Ve≦−1.5であることが肝要である。さらに好ましくは、−3.8≦Ve≦−2.0であることが良い。ここで、上記X線小角散乱法による測定は、当該微粒子に入射した入射X線から角度2θの位置で散乱X線を観測した場合である。当該微粒子内のrだけ離れた2点を通った散乱X線には光路差があり、その位相差は、散乱ベクトルq(入射X線と散乱X線の波数ベクトルの差で定義される。)を用いてr・qと示される。

また、前記カルシウムランタンホウ化物微粒子の、他の好ましい形状は、平板状円柱(但し、底面円の直径をd、円柱の高さをhとする。)、または、回転楕円体(但し、長軸の長さをd、短軸の長さをhとする。)である。尚、これらの形状において、アスペクト比d/hが1≦d/h≦20であることが肝要である。

ここで、本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子の形状を定義する為に用いているX線小角散乱について説明する。 X線小角散乱法は、散乱角が数度以下の散乱X線を測定する手法である。 X線の波長をλ、散乱角を2θとすると、Braggの法則λ=2dsinθから、より小さな散乱角の散乱X線を測定することは、実空間では大きな構造を測定することに対応する。

そしてX線小角散乱法によって、異なる散乱角の散乱X線を測定することは、異なる空間分解能で物質を観察することに対応する。即ち、小さな散乱角の散乱X線からは粗視化した構造情報が、大きな散乱角の散乱X線からはより高い空間分解能の構造情報を得ることができる。 具体的には、散乱体が粒子状である場合、散乱角2θまたは散乱ベクトル(q=4πsinθ/λ)が小さくなるに従って、粒子内の原子・分子の構造、粒子表面の構造(平滑度や密度プロファイル)、粒子の形状、粒子の大きさと言うように、より大きなスケールで観察した構造情報に対応した散乱が観測される。

一方、散乱強度I(q)が電子密度分布の自己相関関数のフーリエ変換であることから、任意の形状をもった散乱体の散乱関数を具体的に計算できる。この散乱関数の散乱振幅の2乗が散乱強度となる。

ここで、散乱体の形状が極端な場合、例えば、球、無限に細く長い棒、無限に薄い円盤、などの場合について散乱強度を計算すると、散乱強度I(q)と散乱ベクトルqには指数則が成り立っている。従って、散乱強度I(q)と散乱ベクトルqとの両対数プロットをとり、当該プロットの傾きを求めることで、当該散乱体の大まかな形状情報が得られる。具体的には、上記極端な形状の場合において当該プロットの傾きは、球の場合:傾きは−4、無限に細く長い棒の場合:傾きは−1、無限に薄い円盤の場合:傾きは−2、となることが知られている。

以上のことから、本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子の粒子形状について、上記X線小角散乱法を用いて、IPA中に希釈分散させた当該微粒子の散乱強度を測定し、散乱強度I(q)と散乱ベクトルqとの関係を両対数プロットし、当該プロットの傾きを算出することで、当該カルシウムランタンホウ化物微粒子の粒子形状を評価することができる。

一方、良く知られているように、局在表面プラズモン共鳴効果は、粒子の形状に応じて共鳴波長が変化する。一般的に、粒子の形状が球形状の場合には最も短い波長で吸収波長が得られる。一方、粒子の形状がディスク状になった場合には、吸収波長が長波長側へずれると同時に、吸収波長は短軸での共鳴に相当する短波長ピークと、長軸での共鳴に相当する長波長ピークとにスプリットする。

さらに、ディスク状微粒子の場合には、短軸での共鳴に相当する短波長ピークは、長軸での共鳴に相当する長波長ピークに比べて、相対的に小さくなる。この効果がアボガドロ数に近い数の微粒子集団について足し合わさると、短波長ピークは消え、長波長ピークは一つの大きくブロードなピークとなる。したがって、近赤外吸収性能から言えば、ディスク状微粒子であると、球状微粒子の場合に比べて、プラズモン共鳴波長が長波長側にずれ、大きな近赤外吸収が得られるようになり好ましい。

一方、ロッド状(細く長い棒状)微粒子の場合には、短軸での共鳴に相当する短波長ピークが相対的に強くなるため、当該短波長ピークと、長軸での共鳴に相当する長波長ピークとにスプリットする。この効果をアボガドロ数に近い数の微粒子集団についてみると、スプリット状態が残るため、光学応答性を可視透過性と近赤外吸収性とに明確に分離して制御することによって、現状の課題を克服しようとする本発明に係る熱線遮蔽膜にとっては、特に望まれないものである。

以上説明したように、本発明者らは、カルシウムランタンホウ化物微粒子と、その局在表面プラズモン共鳴の共鳴波長との関係から、本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子の好ましい形状について想到した。具体的には、X線小角散乱法を用いて、溶媒中に希釈分散させた当該微粒子の散乱強度を測定する時、散乱強度I(q)と散乱ベクトルq=4πsinθ/λとの関係を、両対数プロットして、得られる直線の傾きVeが、−3.8≦Ve≦−1.5であることが肝要であることに想到したものである。尚、−3.8≦Ve≦−2.0であることがさらに好ましい。

上述した傾きVeが−3.8未満になると、カルシウムランタンホウ化物微粒子の粒子形状はほぼ球状になってしまい、形状異方性の集団効果が減少する。この為プラズモン吸収のバンド幅が狭くなって、近赤外吸収効果が減ぜられる。 一方、傾きVeが−1.5を超えて大きくなると、カルシウムランタンホウ化物微粒子の粒子形状はロッド状(針状、棒状)に近付く。この為、その長軸方向の共鳴が弱くなり、短軸方向の共鳴が強くなると共に、共鳴波長のスプリットがより顕著になり、近赤外吸収効果が減ぜられる。また短軸方向の共鳴波長が可視光領域に入る為、可視透過率を減少させて色付き(膜の着色)の原因となるからである。

また、前記カルシウムランタンホウ化物微粒子の他の好ましい形状は、平板状円柱(但し、底面円の直径をd、円柱の高さをhとする。)、または、回転楕円体(但し、長軸の長さをd、短軸の長さをhとする。)である。尚、当該平板状円柱や回転楕円体において、アスペクト比d/hが1≦d/h≦20であることが肝要である。

本発明者らは、非特許文献2において、LaB6ナノ微粒子が、さまざまのd/h値(但し、長軸長をd、短軸長をhとする。)を持つディスク状の粒子を含む集団であるとき、そのプラズモン吸収バンド幅は、均一に球状なLaB6ナノ微粒子の集団のプラズモン吸収バンド幅に比べて、実際に7倍以上に広がることを知見している。

以上の結果、本発明に係るCaの含有量xの組成を有するカルシウムランタンホウ化物微粒子がディスク形状になると、その吸収波長のピークは当該ディスク形状のd/h(長軸長をd、短軸長をhとする)比に応じて、球形状の微粒子の場合より数100nm長波長へずれるという特徴がある。従って、ディスク形状のカルシウムランタンホウ化物微粒子に関しては、上述した最適な元素組成へ形状因子を考慮した修正を加えることが肝要である。

具体的には、本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子はディスク状の粒子であって、平板状円柱(但し、底面円の直径をd、円柱の高さをhとする。)、または、回転楕円体(但し、長軸の長さをd、短軸の長さをhとする。)において、アスペクト比d/hが、1≦d/h≦20であることが好ましい。 本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子の粒子形状について、上記の範囲にあるとき、太陽光に含まれる熱線成分を幅広く遮蔽する熱線遮蔽材料として十分な特性を有すると伴に、従来知られている熱線遮蔽材料よりも可視光透過率を向上させることができる。

これに対し、アスペクト比d/hが1未満の場合、カルシウムランタンホウ化物微粒子の粒子形状は細い円柱状(ロッド状、棒状に近い)になるので、上記Ve>—1.5の場合と同様の理由で、好ましくない。 一方、アスペクト比d/hが20を超える場合、近赤外域に大きな吸収は得られるが、大きなdのため粒子サイズが非常に大きくなり、ヘイズや可視透過性の低下が問題となる。ここで、逆にdを固定してhを小さくしようとしても粒子の薄さには限度があり、0.1nmのような薄さは実現できないからである。

(4)平均分散粒子径、その他 本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子の平均分散粒子径は、800nm以下であることが好ましい。当該平均分散粒子径が800nm以下であれば、当該カルシウムランタンホウ化物微粒子を、後述するカルシウムランタンホウ化物微粒子分散体とした時、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光領域の視認性を担保し、同時に透明性を担保することができるからである。尚、本発明においてカルシウムランタンホウ化物微粒子の平均分散粒子径とは、当該カルシウムランタンホウ化物微粒子の分散液中における平均分散粒子径を、動的光散乱法(FFT−パワースペクトル法)にて測定した値のことである。本明細書中においては、平均分散粒子径を単に「平均粒子径」と記載することがある。

本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子において、特に、可視光領域の透明性を重視する場合には、さらに、カルシウムランタンホウ化物微粒子による散乱の低減をも考慮することが好ましい。 当該カルシウムランタンホウ化物微粒子による散乱の低減を考慮するのであれば、その平均分散粒子径は100nm以下がよい。この理由は、後述するカルシウムランタンホウ化物微粒子分散液やカルシウムランタンホウ化物微粒子分散体において、微粒子の平均分散粒子径が小さければ、幾何学散乱、または、ミー散乱による波長400nmから780nmの範囲の可視光線領域における光の散乱が低減されるからである。当該光の散乱が低減される結果、微粒子分散体が曇りガラスのようになって、鮮明な透明性が得られなくなるのを回避することが出来る。

これは、カルシウムランタンホウ化物微粒子の平均分散粒子径が100nm以下になると、上記幾何学散乱またはミー散乱が低減し、レイリー散乱が強い領域になるからである。当該レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、微粒子の平均分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し、透明性が向上する。さらに、カルシウムランタンホウ化物微粒子の平均分散粒子径が50nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり、特に好ましい。光の散乱を回避する観点からは、カルシウムランタンホウ化物微粒子の平均分散粒子径が小さい方が好ましく、平均分散粒子径が1nm以上であれば工業的な製造は困難ではない。

カルシウムランタンホウ化物微粒子は無機材料の特性として、基本的に紫外線や日光の照射に対して非常に安定な性質を持っている。即ち、紫外線や日光の照射に対して材料特性が変化することはほとんどなく、色や諸機能の劣化はほとんど生じない。また、強固に共有結合したB6八面体の基本骨格にLaやCaイオンが囲まれた結晶構造は非常に安定であり、ナノサイズの微粒子であっても、水分や、紫外線と水分の共アタックに対して、十分な実用耐性を持っている。したがって、基本的に非常に安定した耐候性(耐酸化性、耐水性、耐湿性、耐紫外線性)を有していると言える。 さらに、適切なアルコキシドを用いるなどして、カルシウムランタンホウ化物微粒子の表面をSi、Ti、Zr、Alのいずれか1種類以上の元素を含有する酸化物や窒化物で被覆すれば、微粒子の耐候性や耐薬品性をより向上させることが出来る。

[b]カルシウムランタンホウ化物微粒子の製造方法 本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子を製造するには、様々の方法がある。 以下、本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子の製造方法について、(1)固相反応法、(2)CVD法、(3)元素同士の直接反応法、(4)熱プラズマ法、(5)溶融塩電解法、その他の方法、の順で詳細に説明する。

(1)固相反応法 例えば、非特許文献3、非特許文献4に記載の、B4C還元による固相反応法を改良して用いることができる。この方法によれば、酸化物原料であるLa2O3およびCaOを、B4Cと混合して、真空中または不活性ガス中にて高温で反応させる。そして、B4Cの還元作用でCaxLa1−xB6を得ることができる。 しかしながら、当該反応において焼成温度が1500℃〜2200℃と高温であることから、得られるCaxLa1−xB6粒子は粗大化する。一方、上述したようにカルシウムランタンホウ化物微粒子を熱線遮蔽用途で使用するためには、粒子径が可視光波長に比べて十分小さいことが求められる。そこで、この粗大化したカルシウムランタンホウ化物微粒子は、ジェットミル、ボールミル、アトライター、ビーズミル等を用いたメカニカルな方法により強力な粉砕を行なってナノ微粒子化することが肝要である。

さらに、CaxLa1−xB6の製造においては、均質化が比較的難しく、例えば、単にCaB6またはLaB6を製造する場合に比べて、CaxLa1−xB6の製造においてはCaB6とLaB6が局所的に分離することがあり、価数の異なるCaとLaが均一にB6六面体の作る単純立方格子の体心位置を占めることはかなり困難があることを知見した。従って、固相反応法を用いる場合は、なるべく高温で長時間保持することが好ましい。

そこで、固相反応法を用いる場合における一方法として、B原料に水素化ホウ素ナトリウムNaBH4を用いることも好ましい構成であることに想到した。即ち、NaBH4はホウ素源を提供するだけでなく、 460℃で、NaBH4(s)→NaH(s)+BH3(s)と分解し、 506℃で、BH3(s)→B(s)+H2(g)となって気相を生成する。 この結果、元素拡散が著しく促進されてBの拡散も促進され、CaとLaとが均一にB6六面体の作る単純立方格子の体心位置を占めるCaxLa1−xB6を形成することができることを知見したものである。当該構成により焼成温度を1300℃、あるいはそれ以下にすることも可能である。 また、固相反応法において還元を促進するため、Mgなどの金属粉を添加するのも好ましい構成である。当該構成に係る還元反応で生成される大きな反応熱も、CaxLa1−xB6の生成反応を促進する効果がある。

(2)CVD法 本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって得ることもできる。この方法は金属ハロゲン化物の水素還元によりホウ化物を得る方法である。 LaやCaを含む化合物としては、例えばLaCl3(塩化ランタン)やCaCl2(塩化カルシウム)を好適に用いることができる。ホウ素を含む化合物としては、例えばBCl3(三塩化ホウ素)を好適に用いることができる。 反応炉内に上記原料及び水素ガスと窒素ガスを導入し、高温に加熱後、三塩化ホウ素ガスを導入して反応させる。 反応基板としてLaB6単結晶またはCaB6単結晶を用いても良い。析出したCaxLa1−xB6反応物を基板から剥離させ、洗浄して、カルシウムランタンホウ化物微粒子を得る。得られたカルシウムランタンホウ化物微粒子は、ジェットミル、ボールミル、アトライター、ビーズミル等を用いたメカニカルな方法により強力な粉砕を行なってナノ微粒子化することが肝要である。 またCVD反応条件を調整すれば、直接にナノサイズのカルシウムランタンホウ化物微粒子を得ることも可能である。

(3)元素同士の直接反応法 本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子は、元素同士の直接反応によって得ることもできる。すなわち金属カルシウムと金属ランタンを1700℃以上の高温でホウ素と反応させれば、高純度のホウ化物が得られる。ただし原料が非常に高価であり、一般的には工業的ではない。

(4)熱プラズマ法 本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子は、熱プラズマ法によっても作製できる。この方法によれば、熱プラズマ反応炉の中で原料を反応させることにより、微小なナノサイズの微粒子を直接製造することが可能である。熱プラズマ法の場合は、上述の方法の最終工程で必要とされたメカニカルな粉砕工程を省略できるために、微粒子に格子欠陥がほとんど導入されないことが特徴となる。格子欠陥が少ない場合には、自由電子の緩和時間が増加するため、近赤外吸収波長を短波長側へずらす効果がある。

上記熱プラズマ法では、例えば、直流アークプラズマ、高周波プラズマ、マイクロ波プラズマ、低周波交流プラズマ、のいずれか、または、これらのプラズマの重畳したもの、または、直流プラズマに磁場を印加した電気的な方法により生成するプラズマ、大出力レーザーの照射により生成するプラズマ、大出力電子ビームやイオンビームにより生成するプラズマが適用出来る。いずれの熱プラズマ法を用いるにしても、10000〜15000Kの高温部を有する熱プラズマであり、特に、超微粒子の生成時間を制御できるプラズマであることが好ましい。

当該高温部を有する熱プラズマ中に供給された原料は、当該高温部において瞬時に蒸発する。そして、当該蒸発した原料は、プラズマ尾炎部に至る過程で凝縮し、プラズマ火炎外で急冷凝固されて、カルシウムランタンホウ化物微粒子を生成する。高周波熱プラズマ反応装置を用いる場合を例として、図2を参照しながら合成方法について説明する。

図2に示す高周波熱プラズマ反応装置では、まず真空排気装置により、水冷石英二重管内と反応容器26内で構成される反応系内を真空引きした後、当該反応系内をアルゴンガスで満たす。その後、反応容器内にプラズマガスとして、アルゴンガス、アルゴンとヘリウムの混合ガス(Ar−He混合ガス)、またはアルゴンと窒素の混合ガス(Ar−N2混合ガス)から選択されるいずれかのガスを導入する。一方、プラズマ領域のすぐ外側に流すシースガスとして、Ar−He混合ガスを導入する。そして、高周波コイル22に交流電流をかけて、高周波電磁場(例えば周波数4MHz)により熱プラズマを発生させる。

ここで、原料粉末供給ノズル25より、原料となる混合粉体を、ガス供給装置(図示せず)から供給するアルゴンガスをキャリアガスとして熱プラズマ中に導入して所定時間反応を行う。反応後、生成したカルシウムランタンホウ化物微粒子は,フィルター28に堆積するので、これを回収する。

プラズマガスは10000〜15000Kの高温部を有する熱プラズマ領域を保つ機能があり、シースガスは反応容器内における石英トーチの内壁面を冷やし、石英トーチの溶融を防止する機能がある。また、プラズマガスとシースガスはプラズマ領域の形状に影響を及ぼすため、それらのガスの流量を調整することによりプラズマ領域の形状制御を行うことが出来る。また、キャリアガス流量と原料供給速度を調整することにより、生成微粒子の生成時間を制御することが肝要である。

(5)溶融塩電解法、その他の方法 カルシウムランタンホウ化物微粒子は、溶融塩電解法、燃焼合成法、ソルボサーマル法、オートクレーブ法、湿式法などでも合成可能である。 カルシウムランタンホウ化物微粒子の製造方法は、当該例に限定される訳ではなく、本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子を製造出来る方法であれば良い。

上記(1)〜(5)で説明した製造方法にて製造されるカルシウムランタンホウ化物微粒子の粒子形状やサイズは、当該微粒子の各種製造段階において制御することができる。 粉砕によってナノ微粒子化する工程を採る場合には、粉砕方法に応じて制御される。カルシウムランタンホウ化物は、Bの強固な共有結合の骨格のために非常に硬く、粉砕には特別な方法が必要である。例えば、媒体メディア撹拌ミルを用いる場合は、ビーズ種やビーズサイズによって粉砕モードが異なり、また粉砕の初期段階と後期段階によっても粉砕モードの緩やかな転換が起こることが知られている。 非常に硬いカルシウムランタンホウ化物の場合は、粉砕の初期では、表面は関係せず、固体が大きく割れて段々に小さくなっていく体積粉砕のモードにある。そして、粉砕の後期になると、材料に力が加えられても全体的な破壊が起こらず、表面が削られて小さな粒子が発生する表面粉砕のモードになる。そこで粉砕条件を調節することによって、粉砕微粒子の形状やサイズを制御し、表面粉砕が起こるモードが主となるよう状態に導くことにより、近似的に、ディスク状、平板状円柱、扁平状、パンケーキ状、または平らな円盤状の回転楕円体である本発明のカルシウムランタンホウ化物微粒子が得ることが可能である。

また、ビルドアッププロセスによって微粒子を製造する場合には、各々の反応条件を制御するパラメータを適切に組み合わせることによって粒子形状の制御が可能である。 例えば、湿式法においては、塩化ランタンと塩化カルシウムおよびホウ水素化ナトリウムとを、中性雰囲気下で300〜500℃に加熱することで、カルシウムランタンホウ化物微粒子が作製されるが、イソフタル酸を少量加えることによりカルシウムランタンホウ化物微粒子のサイズや形状が変化する。 また、オートクレーブ法においても、反応温度や圧力に加えて、修飾的に作用する薬剤の少量添加が粒子サイズや形状制御のポイントとなる。

[c]熱線遮蔽微粒子分散液とその製造方法 上記の製造方法で得られたカルシウムランタンホウ化物微粒子を含有する熱線遮蔽微粒子を、液状媒体中に分散させることで、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液を得ることが出来る。

以下、カルシウムランタンホウ化物微粒子を含有する熱線遮蔽微粒子分散液の製造方法を説明する。なお、本発明において、熱線遮蔽微粒子分散液を単に「分散液」と記載する場合がある。

本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子を含有する熱線遮蔽微粒子、および所望により適量の分散剤、カップリング剤、界面活性剤等を、液状媒体中に添加し分散処理を行うことで、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液を得ることができる。当該分散液の媒体には、本発明に係る熱線遮蔽微粒子の分散性を保つための機能と、熱線遮蔽微粒子分散液を用いて膜を形成する時に欠陥を生じさせないための機能が要求される。

(1)媒体 液状媒体としては、水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、プラスチック用液状可塑剤から選択される1種以上であることが好ましい。 上記の要求を満たす有機溶媒としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系、水系など、種々のものを選択することが可能である。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;3−メチル−メトキシ−プロピオネートなどのエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;フォルムアミド、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エチレンクロライド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などを挙げることができる。これらの中でも極性の低い有機溶剤が好ましく、特に、イソプロピルアルコール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチルなどがより好ましい。これらの溶媒は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。

液状樹脂としては、メタクリル酸メチル等が好ましい。プラスチック用液状可塑剤としては、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤や、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系可塑剤などが好ましい例として挙げられる。なかでもトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサオネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサオネートは、加水分解性が低いため、さらに好ましい。

(2)分散剤、カップリング剤、界面活性剤 上記したように、熱線遮蔽微粒子を液状媒体中に添加し分散処理を行い本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液を得るときに、所望により適量の分散剤、カップリング剤、界面活性剤を用途に合わせて選定添加可能である。添加する分散剤、カップリング剤、界面活性剤にあっては、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として有していることが好ましい。これらの官能基は、熱線遮蔽微粒子の表面に吸着し、熱線遮蔽微粒子の凝集を防ぎ、後述する熱線遮蔽膜用塗布液や熱線遮蔽膜等でも熱線遮蔽微粒子を均一に分散させる効果を持つ。

好適に用いることのできる分散剤としては、リン酸エステル化合物、高分子系分散剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、等があるが、これらに限定されるものではない。高分子系分散剤としては、アクリル系高分子分散剤、ウレタン系高分子分散剤、アクリル・ブロックコポリマー系高分子分散剤、ポリエーテル類分散剤、ポリエステル系高分子分散剤などが挙げられる。

当該分散剤の添加量は、熱線遮蔽微粒子100質量部に対し10質量部以上1000質量部以下の範囲であることが望ましく、より好ましくは20質量部以上200質量部以下の範囲である。分散剤添加量が上記範囲にあれば、熱線遮蔽微粒子が液中で凝集を起こすことがなく、分散安定性が保たれる。

また、各種の界面活性剤、カップリング剤などを添加することも可能である。そのときの添加量は、熱線遮蔽微粒子100質量部に対して30質量部以下であることが望ましく、好ましくは5質量部 以下である。

分散処理の方法は熱線遮蔽微粒子が均一に液状媒体中へ分散する方法であれば公知の方法から任意に選択でき、たとえば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などを用いて分散させる方法を用いることができる。 均一分散した熱線遮蔽微粒子分散液を得るために、用途に合わせて上記以外の各種添加剤や分散剤を添加したり、pH調整を行っても良い。

(3)熱線遮蔽微粒子分散液 上述した製造方法で得られる熱線遮蔽微粒子分散液中における熱線遮蔽微粒子の含有量は0.02質量%以上20質量%以下であることが好ましい。熱線遮蔽微粒子の含有量が、0.02質量%以上であれば熱線遮蔽性能に優れるコーティング膜やプラスチック成型体などの製造に好適に用いることができ、20質量%以下であれば工業的な生産が容易である。さらに好ましくは0.5質量%以上20質量%以下であることがよい。

上記のようなカルシウムランタン六ホウ化物微粒子を含有する熱線遮蔽微粒子を液体媒体中に分散させた本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液は、適当な透明容器に入れ、分光光度計を用いて、光の透過率を波長の関数として測定することができる。 本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液は、おおむね波長850nmから5000nm近辺の範囲において主要な吸収ピークを持つが、分光光度計では機種によって波長2600nm程度まで測定することができ、さらにこれを超える波長での透過率は、フーリエ変換赤外分光計(FTIR)などを用いて測定することができる。 尚、当該測定において、熱線遮蔽微粒子分散液の透過率の調整は、その分散溶媒または分散溶媒と相溶性を有する適宜な溶媒で希釈することにより、容易になされる。

[d]熱線遮蔽膜用塗布液および熱線遮蔽膜、熱線遮蔽樹脂フィルムとそれらの製造方法 上述した本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液へ、さらに、紫外線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑性樹脂、若しくは、アルコキシドの部分加水分解重合物から選ばれる1種以上を含有するバインダーを加えることで、本発明に係る熱線遮蔽膜用塗布液を製造することができる。当該熱線遮蔽膜用塗布液においては、前記熱線遮蔽微粒子を0.8質量%以上10.0質量%以下含有することが好ましい。熱線遮蔽微粒子を0.8質量%以上10.0質量%以下含有することによって、熱線遮蔽膜の形成が容易に行えるとともに、得られる熱線遮蔽膜の熱線遮蔽効果も十分なものが得られる。

本発明に係る熱線遮蔽膜用塗布液のバインダーとして紫外線硬化樹脂を用いる場合には、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等の光重合性オリゴマーと、単官能アクリレート、多官能アクリレート等の光重合性モノマーの混合物を主成分とし、これにベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサンソン系、パーオキシド系等の光開始剤や、アミン系、キノン系等の光開始助剤を添加したものを用いることができる。さらに、熱重合禁止剤や、接着付与剤、チクソ付与剤、可塑剤、比反応性ポリマーや、着色剤を添加してもよい。 また、バインダーである紫外線硬化樹脂へ、SiO2、TiO2、ZrO2、Al2O3、MgOといった微粒子を添加することで、さらに膜強度を向上させることもできる。 また、バインダーである紫外線硬化樹脂の主成分へ、SiO2、TiO2、ZrO2、Al2O3、MgO等の無機物を化学的に結合させることでも、膜強度の向上効果が得られる。 上述の方法により得られた耐摩耗性等の特性に優れた紫外線硬化樹脂を用いた熱線遮蔽膜用塗布液を使用することで、樹脂フィルムや樹脂基材に日射遮蔽特性とハードコート機能を同時に付与することができる。

また、バインダーに常温硬化樹脂を使用した熱線遮蔽膜用塗布液であれば、既存の住宅、ビル、乗り物等の窓にコーティングして、そのまま硬化させることができる。

また、バインダーに熱可塑性樹脂を用いる場合は、可視光領域の光線透過率が高い透明な熱可塑性樹脂であれば特に制限はなく、例えば、3mm厚の板状成形体としたときのJIS R 3106記載の可視光透過率が50%以上で、JIS K 7105記載のヘイズが30%以下のものが挙げられる。具体的には、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、飽和ポリエステル樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができる。

また、バインダーにアルコキシドの部分加水分解重合物を用いる場合には、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウムのアルコキシド、もしくは、アルミニウムのアルコキシドの部分加水分解重合物が挙げられる。

上述した、バインダーに熱可塑性樹脂やアルコキシドの部分加水分解重合物を用いた熱線遮蔽膜用塗布液を、基材の片面若しくは両面に塗布することによって、熱線遮蔽膜を形成することができる。

以上説明した熱線遮蔽膜用塗布液を用いて得られる熱線遮蔽膜の導電性は、熱線遮蔽微粒子の接触箇所を経由した導電パスに沿って行われる。この為、例えば、添加する界面活性剤やカップリング剤の量を加減することで導電パスを部分的に切断することができ、表面抵抗値106Ω/□(オーム・パー・スクエアと読む)以上へ、熱線遮蔽膜の導電性を容易に低下させることができる。また熱線遮蔽膜中における、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムの各金属のアルコキシド、もしくはこれらの部分加水分解重合物、または合成樹脂バインダーの含有量を加減することによっても導電性の制御が可能である。

また、本発明に係る熱線遮蔽膜では、熱線遮蔽材料として、カルシウムランタンホウ化物の無機材料を用いるので、膜の耐候性は、熱線遮蔽材料として有機材料を用いた場合に比べて優れ、太陽光線の当たる場所で使用しても、色や諸機能の劣化はほとんど生じない。

上記熱線遮蔽膜用塗布液の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、ロールコート法、フローコート法、スクリーン印刷法、ブレードコート法など、処理液を平坦且つ薄く均一に塗布できる方法であれば如何なる方法でも適宜採用することができる。

樹脂バインダーを加えた本発明に係る熱線遮蔽膜用塗布液を用いて熱線遮蔽膜を製造する場合は、それぞれの硬化方法に従って塗布膜を硬化させればよい。 紫外線硬化樹脂であればそれぞれの光開始剤の共鳴波長や、目的の硬化速度に併せて紫外線ランプを選択すればよい。代表的なランプとしては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、パルスキセノンランプ、無電極放電ランプ等が挙げられる。 光開始剤を使用しない電子線硬化タイプの樹脂バインダーの場合は、走査型、エレクトロンカーテン型等の電子線照射装置を使用して硬化させればよい。 加熱硬化型樹脂バインダーの場合は、目的の温度で加熱すればよく、また常温硬化樹脂の場合は、塗布後そのまま放置しておけばよい。

上記基材として樹脂フィルムを用いて、当該基材上に熱線遮蔽膜を形成して得られる熱線遮蔽樹脂フィルムにおいて、上記基材として用いる樹脂フィルムとしては、用途に適した樹脂フィルムを適宜選択すればよい。樹脂フィルム基材は、一般的に、光透過性があり散乱の少ない、無色透明の樹脂が適しており、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、飽和ポリエステル樹脂、環状オレフィン系樹脂のいずれか一種以上の樹脂から選択される樹脂フィルムが挙げられる。

これらの樹脂フィルムは表面に傷がつきづらい硬質の材料が好適に用いられる。また、自動車のバックウィンドウのような局面に貼り付け易いように、ドライヤーの加熱で簡単に軟化する樹脂フィルムを使用してもよい。 さらに、樹脂フィルム基材の表面は、樹脂バインダーとの結着性向上を目的とした表面処理を施すとよい。例えば、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー層コート処理等である。 また、樹脂フィルムの意匠性を重視する場合は、あらかじめ着色された基材、もしくは型取りされた基材を使用することもできる。また、塗布液中に着色顔料や染料を添加してもよい。

また、上述した熱線遮蔽樹脂フィルムにおいて、フィルムの片面に接着用粘着層を備えることよって、当該熱線遮蔽樹脂フィルムをガラス等に貼り付けることができる。当該熱線遮蔽樹脂フィルムの接着面に、接着用粘着層と離型フィルム層とを積層する構成とすることで取り扱いが容易となり好ましい。 さらに、上述した接着用粘着層中へ、上述した本発明に係る熱線遮蔽微粒子を分散させることも好ましい構成である。当該接着用粘着層を製造するためには、当該接着用粘着層を形成するためのバインダー中へ、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液を添加して混合すればよい。

上述した粘着層に使用される粘着剤は用途に応じて各種選択可能である。一般的な粘着剤として、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニル系粘着剤、ウレタン系粘着剤等を挙げることができる。また、透明性、ガラス等への粘着性及び耐候性を考慮すると、アクリル共重合体系粘着剤が好ましい。アクリル共重合体としては、例えば、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、及び必要により配合される他の単量体との共重合体を挙げることができる。

また、上述したメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エキルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルのようなメタクリル酸アルキルエステル、シクロヘキシルメタクリレートのようなメタクリル酸の脂環族アルコールとのエステル、メタクリル酸フェニルやメタクリル酸ベンジルのようなメタクリル酸アリールエステル等が挙げられる。

また、上述したアクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸N−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシルのようなアクリル酸アルキルエステル、シクロヘキシルアクリレートのようなアクリル酸の脂環族アルコールとのエステル、アクリル酸フェニルやアクリル酸ベンジルのようなアクリル酸アリールエステル等が挙げられる。

本発明にて使用する粘着剤は、上述したような単量体を反応させて得られる共重合体であるが、共重合体の粘着特性を損なわない程度に、さらに他の単量体が共重合していてもよい。共重合可能な単量体としては、例えば、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、アクリルアマイド等が挙げられる。

また、本発明にて使用する粘着剤は架橋剤を含有することが好ましい。例えば、架橋剤としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミン化合物、ポリイソシアネート化合物、金属キレート等が挙げられる。更に、粘着剤の性能を損なわない範囲内で、目的に応じて、粘着付与剤、耐候安定剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、濡れ性調整剤、レベリング剤、充填剤等を使用することができる。

また、本発明にて使用する粘着剤には、紫外線吸収剤を添加することもできる。紫外線吸収剤のうち無機紫外線吸収成分としては、酸化セリウム(CeO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)などの微粒子を、その代表的な例として挙げることができる。これらの酸化物微粒子は、光の吸収端が紫外から可視域にあり、紫外線を吸収する。また、無機物であるため光や水分による劣化が少なく、経時安定性がある。しかし、塗布液の粘度の増加を抑制し、液のレベリング性を担保する観点から、20質量%以下の添加が好ましく、さらに好ましくは7質量%以下である。

一方、本発明にて使用する紫外線吸収剤において有機紫外線吸収成分としては、吸収効果の大きいベンゾフェノン系、又はベンゾトリアゾール系が好ましい。また、トリアジン系、蓚酸アニリド系、シアノアクリレート系、サリシレート系など、他の市販の材料も使用することが可能である。これらの有機系紫外線吸収成分は、無機紫外線吸収成分に比べて吸収能率は格段に優れているが、熱や空気中の水分の影響によって滲みだしや析出が起こり易い。そこで、これらを回避する観点から約5質量%以下の添加量が好ましい。また、これらの有機紫外線吸収成分は、紫外線や空気中の酸素により劣化するため、同時に光安定剤(HALS)、過酸化物分解剤、消光剤などを適宜添加することも好ましい。

本発明に係る熱線遮蔽微粒子を含有する接着用粘着層を備える熱線遮蔽樹脂フィルムにおいても、当該熱線遮蔽微粒子を含有する接着用粘着層の導電性は、熱線遮蔽微粒子の接触箇所を経由した導電パスに沿って行われる。この為、例えば、添加する界面活性剤やカップリング剤の量を加減することで導電パスを部分的に切断することができ、106Ω/□以上の表面抵抗値へ膜の導電性を容易に低下させることができる。

[e]熱線遮蔽微粒子分散体とその製造方法 本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散体は、熱可塑性樹脂またはUV硬化性樹脂中に、上述した本発明に係る熱線遮蔽微粒子を分散含有させることで得ることができる。 当該熱可塑性樹脂としては特に制限はないが、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂という樹脂群から選択される1種の樹脂、または、上記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、 または、上記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、 のいずれかであることが好ましい。

また、上記熱線遮蔽微粒子分散体中に含まれる熱線遮蔽微粒子の量は、0.001質量%以上80.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。熱線遮蔽微粒子が0.001質量%以上あれば必要な熱線遮蔽効果を容易に得ることが出来る。また、熱線遮蔽微粒子が80質量%以下であれば、熱可塑性樹脂成分量が担保され、熱線遮蔽微粒子分散体の強度が担保される。

上述したように、本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子の単位重量あたりの熱線遮蔽能力は非常に高いことから、従来の熱線遮蔽微粒子として使用されているITOやATOと比較すると、10分の1〜100分の1以下の使用量でその効果を発揮する。従って、高価なITOの使用と比較すればコストも削減できる。また、熱線遮蔽微粒子分散体における全微粒子の使用量を大幅に削減できるので、当該微粒子は熱線遮蔽微粒子分散体を構成する樹脂成分等によって十分に被覆されることから、摩耗強度や耐候性(耐酸化性、耐水性、耐湿性、耐紫外線性)を向上させることができる。

本発明に係るカルシウムランタンホウ化物微粒子を含有する熱線遮蔽微粒子が分散含有されている熱線遮蔽微粒子分散体に十分な赤外線遮蔽効果を発揮させる観点から、熱線遮蔽微粒子分散体に含まれる、単位投影面積当たりの熱線遮蔽微粒子の含有量は0.01g/m2以上0.5g/m2以下であることが好ましい。尚、「単位投影面積当たりの含有量」とは、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散体において、光が通過する単位面積(m2)あたり、その厚み方向に含有されている熱線遮蔽微粒子の質量(g)である。 分散体中の熱線遮蔽微粒子含有量が0.01g/m2以上である場合、熱線遮蔽微粒子分散体中の熱線遮蔽微粒子含有量が担保され所定の光学効果が得られる。一方、0.5g/m2以下であれば、可視域光の吸収が強くなり過ぎて膜が暗くなってしまう事態を回避出来る。 一方、カルシウムランタンホウ化物微粒子の添加量を制御することで、可視光領域の吸収を自由に制御することも出来、明るさ調整や、プライバシー保護等への応用もできる。 さらに、当該熱線遮蔽微粒子分散体は、シート形状、ボード形状またはフィルム形状に加工することで様々な用途に適用することができる。

以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるわけではない。 本実施例に係る分散液や膜の光学特性は、分光光度計(日立ハイテック(株)製U−4100)を用いて、波長300nmから2600nmの範囲における透過率(5nm刻み)をJIS R 3106に準拠して測定した。尚、一部の分散液試料は波長2600nmを超える波長領域に吸収ピークを持つので、波長20μmまでの光の透過率を、フーリエ変換赤外分光計(FTIR)を用いて、KBr法で測定した。

平均分散粒子径は、粒度分布計(日機装(株)製ナノトラックUPA)を用いて測定を行った。 製造された熱線遮蔽微粒子の粒子形状については、ブルーカーAXS社製NANOSTAR2次元SAXS測定システムを用い、X線小角散乱法を用いて、溶媒IPA中に希釈分散させた熱線遮蔽微粒子の散乱強度を測定した。そして、散乱ベクトルq=4πsinθ/λと散乱強度I(q)との関係を、両対数プロットして、直線の傾きVeを求め評価した。 そして、熱線遮蔽微粒子の形状が、平板円柱状、平板状回転楕円体である場合は、透過電子顕微鏡で当該微粒子形状を観察し、50個の粒子の観察結果から、アスペクト比(長軸と短軸比d/h)を評価した。

(実施例1) 酸化カルシウムCaO、二酸化ランタンLa2O3、炭化ホウ素B4Cを、Ca:La=1:3、(Ca+La):B=1:6(原子比)となるように秤量し、小型真空擂潰機で十分混合して混合粉を得た。得られた混合粉を、炭酸ガスや水分などの生成ガスを脱気することができる蓋つきのカーボンルツボに入れて縦型真空焼成炉に配置し、真空中で毎時300℃の速度で昇温し、1650℃で18時間保持した後、炉の電源を切って自然降温させて粉体を得た。

得られた粉体の外観は濃紺紫色であり、XRD測定の結果、LaB6と同じ体心立方晶単相の回折パターンが得られた。SEM−EDXで組成分析を行なったところ、粒子間でほぼ一様にCa:La:B=1:3:24(原子比)付近の分析結果が得られた。従ってCa0.25La0.75B6の組成の粒子が製造できたことを確認した。

得られたCa0.25La0.75B6微粒子2質量%、高分子系分散剤4質量%、トルエン94質量%との混合物と、0.3mmφZrO2ビーズとを、ペイントシェーカーに充填し、24時間粉砕・分散処理することによってCa0.25La0.75B6分散液を製造した。このCa0.25La0.75B6分散液の平均分散粒子径を測定したところ、43nmであった。

一方、得られたCa0.25La0.75B6微粒子2質量%と、IPA溶媒98質量%とを、ペイントシェーカーに充填し、24時間分散した後、少量のカップリング剤で分散安定化させた。そして、X線小角散乱法でq=4πsinθ/λと散乱強度I(q)との関係を両対数プロットして粒子形状を評価したところ、Ve=−3.3が得られ、形状はディスク傾向が強いことが分かった。

さらに、得られたCa0.25La0.75B6組成の粒子形状を透過電子顕微鏡によって観察し、50個の粒子における長軸と短軸とを測定した結果から、平均形状はアスペクト比d/h=4.4のディスク状円柱または回転楕円体と判断された。

次に、Ca0.25La0.75B6分散液の光学的特性を測定した。具体的には以下の手続きによった。 上述したCa0.25La0.75B6分散液において、微粒子の濃度が0.002質量%となるようにトルエンを添加して希釈混合し、よく振盪して希釈液を得た。そののち、光路長1cmのガラスセルに当該希釈液を入れ、その透過率曲線を日立ハイテク株式会社のU−4000分光器で測定し、吸収による透過率のボトム波長、及びJIS R 3106に基づいて可視光透過率と日射透過率を求めた。この際、分光器のベースラインは、同一のガラスセルにトルエンを満たした試料を用いて求めた。 一方、当該希釈液のヘイズを、村上色彩技術研究所製のヘイズメータを用いて測定した。 その結果、可視光領域での透過率が高く、近赤外領域の波長1239nmに強い吸収による谷を持つ透過プロファイルが得られた。そして、ヘイズ値1.5%の時に、可視光透過率(VLT)72.3%、日射透過率(ST)44.6%と測定された。 当該測定結果より、同等のVLTに対するSTの減少度合いで比較した場合、本発明に係るCa0.25La0.75B6の熱線遮蔽特性は、従来の技術に係るLaB6の熱線遮蔽特性(下記、比較例1参照)を上回る特性であることが判明した。

(実施例2) 酸化カルシウムCaO、二酸化ランタンLa2O3、水素化ホウ素ナトリウムNaBH4を、Ca:La=3:5、(Ca+La):B=1:6(原子比)となるように秤量し、小型真空擂潰機で十分混合して混合粉を得た。得られた混合粉を蓋付きカーボンルツボに入れて縦型真空焼成炉内に配置し、真空中で毎時300℃の速度で昇温し、1250℃で4時間保持した後、炉の電源を切って自然降温させて粉体を得た。

得られた粉体の外観は紺紫色であり、XRD測定の結果、LaB6と同じ体心立方晶単相の回折パターンが得られた。SEM−EDXで組成分析を行なったところ、粒子間でほぼ一様にCa:La:B=3:5:48(原子比)付近の分析結果が得られた。従ってCa0.375La0.625B6の組成の粒子が製造できたことを確認した。

得られたCa0.375La0.625B6微粒子2質量%、高分子系分散剤4質量%、トルエン94質量%の混合物と、0.3mmφZrO2ビーズとを、ペイントシェーカーに充填し、24時間粉砕、分散処理することによってCa0.375La0.625B6分散液を製造した。このCa0.375La0.625B6分散液の平均分散粒子径を測定したところ、39nmであった。

また、実施例1と同様に、この微粒子の粒子形状を評価したところ、Ve=−3.1が得られ、形状はディスク傾向が強いことが分かった。 次に、実施例1と同様にCa0.375La0.625B6分散液の光学的特性を測定した。その結果、可視光領域で透過率が高く、近赤外領域の波長1360nmに強い吸収の谷を持つ透過プロファイルが得られた。また、ヘイズ値1.4%の時に、可視光透過率(VLT)71.6%、日射透過率(ST)44.3%と測定された。 当該測定結果より、同等のVLTに対するSTの減少度合いで比較した場合、本発明に係るCa0.375La0.625B6の熱線遮蔽特性は、従来の技術に係るLaB6の熱線遮蔽特性(下記、比較例1参照)を上回る特性であることが判明した。

(比較例1) 二酸化ランタンLa2O3と炭化ホウ素B4Cを、La:B=1:6(原子比)となるように秤量し、小型真空擂潰機で十分混合して混合粉を得た。得られた混合粉を真空炉中において、毎時300℃の速度で昇温し、1500℃で8時間保持した後、炉の電源を切って自然降温させて粉体を得た。

得られた粉体の外観は濃紫色であり、XRD測定の結果、体心立方晶単相の回折パターンが得られ格子定数もLaB6と一致した。さらにSEM−EDXで組成分析を行なったところ、粒子間でほぼ一様にLa:B=1:6付近の分析結果が得られ、LaB6組成の粒子が製造できたことを確認した。

得られたLaB6微粒子2質量%、高分子系分散剤4質量%、トルエン94質量%との混合物と、0.3mmφZrO2ビーズとを、ペイントシェーカーに充填し、24時間粉砕・分散処理することによってLaB6分散液を製造した。このLaB6分散液の平均分散粒子径を測定したところ、28nmであった。

また、実施例1と同様に、この微粒子の粒子形状を評価したところ、Ve=−3.1が得られ、形状はディスク傾向が強いことが分かった。 次に、実施例1と同様にLaB6分散液の光学的特性を測定した。その結果、可視光領域で透過率が高く、近赤外領域の波長1004nmに強い吸収の谷を持つ透過プロファイルが得られた。 また、ヘイズ値0.9%の時に、可視光透過率(VLT)68.6%、日射透過率(ST)47.9%と測定された。

当該測定結果より、比較例1に係るLaB6は、実施例1に係るCa0.25La0.75B6、実施例2に係るCa0.375La0.625B6に比べて、VLTは低く、STは大きい値となり、実施例1、2の材料よりも熱線遮蔽材料として劣る特性であることが判明した。

(比較例2) 酸化カルシウムCaOと炭化ホウ素B4Cを、Ca:B=1:6(原子比)となるように秤量し、小型真空擂潰機で十分混合して混合粉を得た。得られた混合粉を真空炉中において、毎時300℃の速度で昇温し、1500℃で8時間保持した後、炉の電源を切って自然降温させて粉体を得た。

得られた粉体の外観は灰色であり、XRD測定の結果、体心立方晶単相の回折パターンが得られ格子定数もCaB6と一致した。さらにSEM−EDXで組成分析を行なったところ、粒子間でほぼ一様にCa:B=1:6付近の分析結果が得られ、CaB6組成の粒子が製造できたことを確認した。

得られたCaB6微粒子2質量%、高分子系分散剤4質量%、トルエン94質量%との混合物と、0.3mmφZrO2ビーズとを、ペイントシェーカーに充填し、24時間粉砕・分散処理することによってCaB6分散液を製造した。このCaB6分散液の平均分散粒子径を測定したところ、82nmであった。

また、実施例1と同様に、この微粒子の粒子形状を評価したところ、Ve=−3.2が得られ、形状はディスク傾向が強いことが分かった。 次に、実施例1と同様にCaB6分散液の光学的特性を測定した。その結果、可視光領域で幅広く透過率が高く、赤外線領域に弱い吸収が見られた。吸収による透過率のボトムは長波長側にあり、波長2600nmでも吸収のボトムに達していなかったので、FTIRで透過率を測定した結果、吸収によるボトムは中赤外線領域の波長5126nmにあることが判明した。 また、ヘイズ値2.5%の時に、可視光透過率(VLT)73.7%、日射透過率(ST)62.8%と測定された。

当該測定結果より、比較例2に係るCaB6は、実施例1に係るCa0.25La0.75B6、実施例2に係るCa0.375La0.625B6に比べて、VLTは高いが、STははるかに大きい値となり、実施例1、2の材料よりも熱線遮蔽効果が非常に弱い材料であることが判明した。

(実施例3) 酸化カルシウムCaO、二酸化ランタンLa2O3、炭化ホウ素B4Cを、Ca:La=1:1、(Ca+La):B=1:6(原子比)となるように秤量した以外は、実施例1と同様の操作を行ってカルシウムランタンホウ化物粒子を製造した。

得られた粉体の外観は灰紺色であり、XRD測定の結果、LaB6と同じ体心立方晶単相の回折パターンが得られた。SEM−EDXで組成分析を行なったところ、粒子間でほぼ一様にCa:La:B=1:1:12(原子比)付近の分析結果が得られた。従ってCa0.5La0.5B6の組成の粒子が製造できたことを確認した。

実施例1と同様に操作して、Ca0.5La0.5B6分散液を作製し、分散粒子径を測定したところ61nmであった。 また実施例1と同様に、この微粒子の粒子形状を評価したところ、Ve=−3.1が得られ、形状はディスク傾向が強いことが分かった。

次に、実施例1と同様にCa0.5La0.5B6分散液の光学的特性を測定した。その結果、可視光領域で透過率が高く、近赤外領域の波長1508nmに強い吸収の谷を持つ透過プロファイルが得られた。また、ヘイズ値1.9%の時に、可視光透過率(VLT)72.8%、日射透過率(ST)48.2%と測定された。 当該測定結果より、同等のVLTに対するSTの減少度合いで比較した場合、本発明に係るCa0.5La0.5B6の熱線遮蔽特性は、従来の技術に係るLaB6の熱線遮蔽特性(上記、比較例1参照)を若干上回る特性であることが判明した。

(実施例4) 酸化カルシウムCaO、二酸化ランタンLa2O3、炭化ホウ素B4Cを、Ca:La=3:1、(Ca+La):B=1:6(原子比)となるように秤量した以外は、実施例1と同様の操作を行ってカルシウムランタンホウ化物粒子を製造した。

得られた粉体の外観は青灰色であり、XRD測定の結果、LaB6と同じ体心立方晶単相の回折パターンが得られた。SEM−EDXで組成分析を行なったところ、粒子間でほぼ一様にCa:La:B=3:1:24(原子比)付近の分析結果が得られた。従ってCa0.75La0.25B6の組成の粒子が製造できたことを確認した。

実施例1と同様に操作して、Ca0.75La0.25B6分散液を作製し、分散粒子径を測定したところ68nmであった。 また実施例1と同様に、この微粒子の粒子形状を評価したところ、Ve=−3.2が得られ、形状はディスク傾向が強いことが分かった。

次に、実施例1と同様にCa0.75La0.25B6分散液の光学的特性を測定した。その結果、可視光領域で透過率が高く、吸収波長はかなり長波長側へシフトして近赤外の波長1818nmに吸収による透過率のボトムを持つ透過プロファイルが得られ、吸収の強さは実施例1の場合よりも弱かった。また、ヘイズ値1.8%の時に、可視光透過率(VLT)74.5%、日射透過率(ST)56.0%と測定された。 当該測定結果より、同等のVLTに対するSTの減少度合いで比較した場合、本発明に係るCa0.75La0.25B6の可視光透過性能は、従来の技術に係るLaB6の可視光透過性能(上記、比較例1参照)を上回る特性であることが判明した。

(比較例3) 実施例2で得られたCa0.375La0.625B6粉95質量%と、B粉5質量%と、図2に構造を示す高周波熱プラズマ装置とを準備した。当該Ca0.375La0.625B6粉とB粉とを、キャリアガスにより高周波熱プラズマ装置に導入し、カルシウムランタンホウ化物微粒子を製造した。このとき雰囲気はAr1気圧、高周波プラズマは4MHz、25kWで発生させた。 フィルターで回収されたナノ微粒子をEDX組成分析したところ、原子比でCa/La=0.61であり、実施例2とほぼ類似組成のCa0.379La0.621B6ナノ粒子が製造できたことを確認した。

実施例1と同様に操作して、Ca0.379La0.621B6分散液を製造し、分散粒子径を測定したところ28nmであった。 また実施例1と同様に、この微粒子の粒子形状を評価したところ、Ve=−3.9が得られ、形状はほぼ球状に近いことが分かった。 さらに、製造されたCa0.379La0.621B6組成の粒子形状を評価するため、透過電子顕微鏡で粒子形状を観察し、50個の粒子の長軸と短軸を測定した結果から、平均形状はアスペクト比d/h=1.2の球体と判断された。

次に、実施例1と同様にCa0.379La0.621B6分散液の光学的特性を測定した。その結果、この分散液は実施例2と類似の組成を持つにもかかわらず、吸収波長がかなり短波長側へシフトしており、近赤外領域限度の波長818nmに吸収による透過率のボトムを持ち、しかも吸収の波長幅が狭く非常にシャープなバンドであった。従って、吸収の強さは実施例2の場合よりもはるかに弱く、ヘイズ値1.3%の時に、可視光透過率(VLT)71.5%、日射透過率(ST)52.6%と測定された。 当該測定結果より、日射透過率が高く日射遮蔽性能が不十分であることが判明した。

(比較例4) 実施例3で得られたCa0.5La0.5B6粉95質量%と、B粉5質量%と、図2に構造を示す高周波熱プラズマ装置とを準備した。そして比較例3と同様にカルシウムランタンホウ化物微粒子を作製した。 フィルターで回収されたナノ微粒子をEDX組成分析したところ原子比でCa/La=1.02であり、実施例3とほぼ類似組成のCa0.495La0.505B6ナノ粒子が製造できたことを確認した。

実施例1と同様に操作して、Ca0.495La0.505B6分散液を製造し、分散粒子径を測定したところ33nmであった。 また実施例1と同様に、この微粒子の粒子形状を評価したところ、Ve=−3.9が得られ、形状はほぼ球状に近いことが分かった。

次に、実施例1と同様にCa0.495La0.505B6分散液の光学的特性を測定した。その結果、この分散液は実施例3と類似の組成を持つにもかかわらず、吸収波長がかなり短波長側へシフトしており、近赤外領域限度の波長878nmに吸収による透過率のボトムを持ち、しかも吸収の波長幅が狭く非常にシャープなバンドであった。従って、吸収の強さは実施例3の場合よりもはるかに弱く、ヘイズ値1.6%の時に、可視光透過率(VLT)69.4%、日射透過率(ST)52.4%と測定された。 当該測定結果より、日射透過率が高く日射遮蔽性能が不十分であることが判明した。

(比較例5) 実施例4で得られたCa0.75La0.25B6粉95質量%と、B粉5質量%と、図2に構造を示す高周波熱プラズマ装置とを準備した。そして比較例3と同様にカルシウムランタンホウ化物微粒子を作製した。 フィルターで回収されたナノ微粒子をEDX組成分析したところ原子比でCa/La=3.03であり、実施例4とほぼ類似組成のCa0.75La0.25B6ナノ粒子が製造できたことを確認した。

実施例1と同様に操作して、Ca0.75La0.25B6分散液を製造し、分散粒子径を測定したところ25nmであった。 また実施例1と同様に、この微粒子の粒子形状を評価したところ、Ve=−3.9が得られ、形状はほぼ球状に近いことが分かった。

次に、実施例1と同様にCa0.75La0.25B6分散液の光学的特性を測定した。その結果、この分散液は実施例4と類似の組成を持つにもかかわらず、近赤外領域の波長1117nmに吸収による透過率のボトムを持ち、しかも吸収の波長幅が狭く非常にシャープなバンドであった。従って、吸収の強さは実施例4の場合よりもはるかに弱く、ヘイズ値1.3%の時に、可視光透過率(VLT)70.5%、日射透過率(ST)56.7%と測定された。 当該測定結果より、日射透過率が高く日射遮蔽性能が不十分であることが判明した。

(実施例5) 実施例1で得られたCa0.25La0.75B6粉と、実施例3で得られたCa0.5La0.5B6粉とを原子比3:1の割合で十分混合して混合粉を得た。得られた混合粉を2質量%、高分子系分散剤4質量%、トルエン94質量%の割合で混合し、0.3mmφZrO2ビ−ズと共に、ペイントシェーカー用のガラス瓶に充填し、24時間粉砕・分散処理することによって混合粉の分散液を調製した。この分散液の分散粒子径を測定したところ47nmであった。

次に、実施例1と同様にこの分散液の光学的特性を測定した。 その結果、この分散液は、可視光で透過率が高いことに加え、近赤外領域の1406nmをボトム波長とする、幅広く強い吸収による透過率のボトムを持ち、熱線遮蔽材料としては非常に良好な透過プロファイルが得られた。 また、ヘイズ値1.6%の時に、可視光透過率(VLT)73.1%、日射透過率(ST)39.2%と測定された。 当該測定結果より、実施例5に係る分散液は、従来の技術に係るLaB6の熱線遮蔽特性(上記、比較例1参照)をはるかに上回る特性であることが判明した。

(実施例6) 実施例1で得られたCa0.25La0.75B6粉と、実施例3で得られたCa0.5La0.5B6粉とを原子比2:3の割合で十分混合して混合粉を得た。得られた混合粉を2質量%、高分子系分散剤4質量%、トルエン94質量%の割合で混合し、0.3mmφZrO2ビ−ズと共に、ペイントシェーカー用のガラス瓶に充填し、24時間粉砕・分散処理することによって混合粉の分散液を調製した。この分散液の分散粒子径を測定したところ53nmであった。

次に、実施例1と同様にこの分散液の光学的特性を測定した。 その結果、この分散液の透過プロファイルは、吸収による透過率のボトム波長が近赤外領域の波長1598nmへと長波長側へシフトしたが、可視光での透過率は高かった。 また、ヘイズ値1.7%の時に、可視光透過率(VLT)75.2%、日射透過率(ST)51.6%と測定された。 当該測定結果より、実施例6に係る分散液は、従来の技術に係るLaB6の熱線遮蔽特性(上記、比較例1参照)と比較すると、日射透過率が若干高めであるが、可視光透過性能に優れ良好な熱線遮蔽特性を有していることが判明した。

(実施例7) 実施例1で製造したCa0.25La0.75B6粉末を5質量%、トルエン90質量%、ポリアクリレート系分散剤5質量%を混合し、0.3mmφZrO2ビーズと共に、ペイントシェーカーで24時間粉砕・分散処理することによって、平均分散粒子径56nmの分散液(A液)を得た。 当該A液10質量部と、ハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)100質量部とを混合して熱線遮蔽膜用塗布液を得た。この熱線遮蔽膜用塗布液を、PET樹脂フィルム(帝人製HPE−50)上へ、バーコーターを用いて塗布、成膜した。得られた塗布膜を60℃で30秒乾燥して溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ熱線遮蔽樹脂フィルムを得た。

得られた熱線遮蔽樹脂フィルムは透過色調が薄い緑色であった。 得られた熱線遮蔽樹脂フィルムの光学特性を測定したところ、可視光透過率は71.3%で可視光領域の光を十分透過している事が判明した。日射透過率は45.1%であり、太陽光線の直接入射光を約55%遮蔽しており断熱効果が高い事が判明した。さらにヘイズは1.5%であり、透明性が高く、当該熱線遮蔽樹脂フィルムを通して、内部の状況が外部からもはっきり確認できた。 一方、得られた熱線遮蔽樹脂フィルムの表面抵抗値をハイレスタ(三菱油化製)で測定したところ、7×109Ω/□以上であって、電波透過性において問題の無いことが確かめられた。

(実施例8) 実施例4で作製したCa0.75La0.25B6粉末を9質量%、トルエン86質量%、ポリアクリレート系分散剤5質量%を混合し、0.3mmφZrO2ビーズと共に、ペイントシェーカーで24時間粉砕・分散処理することによって、平均分散粒子径71nmの分散液(B液)を得た。 当該B液10質量部と、ハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)100質量部とを混合して熱線遮蔽膜用塗布液を得た。この熱線遮蔽膜用塗布液を、PET樹脂フィルム(帝人製HPE−50)上にバーコーターを用いて塗布、成膜した。得られた塗布膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ熱線遮蔽樹脂フィルムを得た。

得られた熱線遮蔽樹脂フィルムは透過色調が薄い水色であった。 得られた熱線遮蔽樹脂フィルムの光学特性を測定したところ、可視光透過率は74.2%で可視光領域の光を十分透過している事が判明した。日射透過率は52.7%であり、太陽光線の直接入射光を約47%遮蔽しており、断熱効果が高い事が判明した。さらにヘイズは1.8%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。 一方、得られた熱線遮蔽樹脂フィルムの表面抵抗値をハイレスタ(三菱油化製)で測定したところ、5×1010Ω/□以上であって、電波透過性において問題の無いことが確かめられた。

11 ホウ素原子 12 元素M 21 熱プラズマ 22 高周波コイル 23 シースガス供給ノズル 24 プラズマガス供給ノズル 25 原料粉末供給ノズル 26 反応容器 27 吸引管 28 フィルター

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