Object levitating device and object carrying device having same device and object levitating method

申请号 JP34781793 申请日 1993-12-24 公开(公告)号 JPH07187388A 公开(公告)日 1995-07-25
申请人 Kaijo Corp; 株式会社カイジョー; 发明人 HASHIMOTO YOSHIKI;
摘要 PURPOSE: To provide an object levitating device and an object carrying device having the device and an object levitating method by which a restriction such as a construction material of an object to be handled is not imposed and an object having comparatively large weight and dimension can be also handled and the devices are downsized and cost is reduced and which are ideal in the aspect of safety or the like and whose control is easy.
CONSTITUTION: A vibratory body is excited, and an object 7 is levitated and carried on a surface of the vibratory body by radiation pressure of a sound wade of the vibratory body, and an effect is obtained. Since a vibrational node does not particularly exist in in-phase piston mode vibration, levitation and a carry of a small object also become possible.
COPYRIGHT: (C)1995,JPO
权利要求 【特許請求の範囲】
  • 【請求項1】 振動体と、該振動体を励振する超音波励振手段とを備え、振動体の音波の放射圧により該振動体の表面上において物体を浮揚させる物体浮揚装置であって、前記振動体はその全体が前記表面に対して略垂直な縦振動を行うことを特徴とする物体浮揚装置。
  • 【請求項2】 振動体と、該振動体を励振する超音波励振手段と、物体を走行させる走行手段とを備え、該振動体の音波の放射圧により該振動体の表面上において物体を浮揚させ、走行させる物体搬送装置であって、前記振動体はその全体が前記表面に対して略垂直な縦振動を行うことを特徴とする物体搬送装置。
  • 【請求項3】 前記走行手段は、前記物体に対して気体を噴射する気体噴射手段を有することを特徴とする請求項2記載の物体搬送装置。
  • 【請求項4】 前記走行手段は、前記物体に対して超音波を放射する超音波放射手段を有することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の物体搬送装置。
  • 【請求項5】 前記走行手段は、前記振動体より放射された超音波を前記物体に向けて反射する反射部材を有することを特徴とする請求項2乃至請求項4のうちいずれか1記載の物体搬送装置。
  • 【請求項6】 前記走行手段は、前記超音波励振手段が発する超音波エネルギーを電気エネルギーに変換することにより該超音波を前記物体が移動すべき方向に進む進行波とするエネルギー変換手段を有することを特徴とする請求項2乃至請求項5のうちいずれか1記載の物体搬送装置。
  • 【請求項7】 前記物体は該物体の走行方向側とその反対方向側とで重量配分が異なるようにし、前記振動体より放射されて該物体の下面にて反射した反射波による推進力を以て該物体を走行させることを特徴とする請求項2乃至請求項6のうちいずれか1記載の物体搬送装置。
  • 【請求項8】 前記物体の下面に凹凸を形成し、前記振動体より放射されて該凹凸にて反射した反射波による推進力を以て該物体を走行させることを特徴とする請求項2乃至請求項7のうちいずれか1記載の物体搬送装置。
  • 【請求項9】 物体の搬送路が連続するように複数台並設されたことを特徴とする請求項2乃至請求項8のうちいずれか1記載の物体搬送装置。
  • 【請求項10】 振動体にその表面に対して略垂直な縦振動を生じさせ、該振動体の音波の放射圧により該表面上において物体を浮揚させることを特徴とする物体浮揚方法。
  • 【請求項11】 振動体と、該振動体を励振する超音波励振手段とを備え、振動体の音波の放射圧により該振動体の表面上において物体を浮揚させる物体浮揚装置であって、前記超音波励振手段は前記振動体をして縞モード振動を行わせるべく励振することを特徴とする物体浮揚装置。
  • 【請求項12】 前記振動体は平板状に形成されていることを特徴とする請求項11記載の物体浮揚装置。
  • 【請求項13】 振動体と、該振動体を励振する超音波励振手段と、物体を走行させる走行手段とを備え、該振動体の音波の放射圧により該振動体の表面上において物体を浮揚させ、走行させる物体搬送装置であって、前記超音波励振手段は前記振動体をして縞モード振動を行わせるべく励振することを特徴とする物体搬送装置。
  • 【請求項14】 振動体に縞モード振動を生じさせ、該振動体の音波の放射圧により該振動体の表面上において物体を浮揚させることを特徴とする物体浮揚方法。
  • 说明书全文

    【発明の詳細な説明】

    【0001】

    【産業上の利用分野】本発明は物体を空中に浮揚させる物体浮揚装置及びその方法と、該装置を具備した物体搬送装置とに関する。

    【0002】

    【従来の技術】従来、この種の装置として、下記の各方式のものが知られている。

    【0003】(1)コイルを流れる交流磁界を用いて物体を磁気的に浮揚、搬送させる方式。 (2)超電導マイスナー効果を利用して浮揚、搬送させる方式。 (3)圧搾空気等の加圧気体を用いて浮揚、搬送させる方式。

    【0004】

    【発明が解決しようとする課題】これら各装置のうち(1)及び(2)に記載したものにおいては、浮揚、搬送の対象とする物体が強磁性体や半導体に限られると共に、磁気を受ける条件下に置くことが好ましくない物体に関しては適用できないという欠点がある。 また、超電動マイスナー効果を利用する装置についてはコイルを極低温まで冷却するために高価な冷却液が必要であり且つその消耗の問題などからもコストの増大を招来すると共に、冷却液の安全性についても配慮しなければならず、
    しかも、長時間安定した状態で浮揚させ、搬送するためには装置の規模を極めて大きくしなければならないという問題がある。

    【0005】一方、上記(3)に記載した方式の装置においては、物体の搬送路全面に加圧気体を供給する必要があり、このために大掛かりな加圧気体供給手段が設けられ、装置全体としての小型化を図ることが困難であると共に、供給気体の圧を広範囲にわたって均一化するための制御が容易ではないという問題を擁している。 また、該装置においては、いわゆるクリーンルームなど、
    雰囲気を清浄に保つべき条件下にて使用される場合、上記加圧気体供給手段より噴出せられる気体の拡散を防ぐためにこれを吸引回収する手段も必要となり、装置の小型化を図る上で更なる障害となっていると同時に、気体の回収を完全に行うことは難しいという問題もある。

    【0006】ところで、最近、図37に示す如き装置が開発されている。 なおこの装置は、1983年10月3
    日に発行された『日本音響学会講演論文集』の第745
    頁及び第746頁において開示されている。

    【0007】すなわち、図37において、励振手段10
    1により励振される段つき円形振動板102と、これに対応して配置された反射板103との間に定在波(図示せず)を生じさせ、発泡スチロールからなる球104
    (重さ1.2mg、直径4mm)を複数、音場により浮揚させている。 なお、図37において、重力方向を矢印gにて示している。 この場合、各球104は空中超音波の波長の1/2間隔で静止し、その位置は音圧の谷であることが判明したとされている。 また、浮揚可能な球の大きさは1/2波長以下がよく、その重さは音圧に関係するとされている。

    【0008】しかしながら、このように定在波を用い、
    その節の位置に物体を静止させる構成の装置においては、現在、供試体としての球104は極めて軽量なものに限られ、重量の大きな物体を浮揚させるには振動板1
    02の振動振幅を極めて大きくしなければならない。 従って、振動板102やホーン101a(図37参照)の応力的な破壊に鑑みれば、重量物を長時間安定して浮揚させることは困難であり、実用化には遠いものと考えられる。 また、かかる構成において、音波を集束させて強力音波にする方法を採用し、比較的重い物体でも浮揚を可能にすることも考えられるが、これでは振動板102
    の直径に比べ小さな面積に音波が作用することなり、結果として小径の物体しか扱うことができない。

    【0009】そこで本発明は、上記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであって、扱う物体の材質等の制約がないと同時に比較的大きな重量及び寸法の物体を取り扱え、且つ、小型にしてコストが安く、しかも安全性等の面からも好適であり、制御も容易な物体浮揚装置及び該装置を具備した物体搬送装置並びに物体浮揚方法を提供することを目的とする。

    【0010】

    【課題を解決するための手段】本発明は、振動体と、該振動体を励振する超音波励振手段とを備え、該振動体の音波の放射圧により該振動体の表面上において物体を浮揚させる物体浮揚装置において、該振動体がその全体が該表面に対して略垂直な縦振動を行うように構成したものである。 また、本発明は、振動体と、該振動体を励振する超音波励振手段と、物体を走行させる走行手段とを備え、該振動体の音波の放射圧により該振動体の表面上において物体を浮揚させ、走行させる物体搬送装置において、該振動体がその全体が該表面に対して略垂直な縦振動を行うように構成したものである。 また、本発明による物体浮揚方法は、振動体にその表面に対して略垂直な縦振動を生じさせ、該振動体の音波の放射圧により該表面上において物体を浮揚させるようにしたものである。 更に、本発明は、振動体と、該振動体を励振する超音波励振手段とを備え、振動体の音波の放射圧により該振動体の表面上において物体を浮揚させる物体浮揚装置において、前記超音波励振手段が前記振動体をして縞モード振動を行わせるべく励振するように構成したものである。 また、本発明は、振動体と、該振動体を励振する超音波励振手段と、物体を走行させる走行手段とを備え、該振動体の音波の放射圧により該振動体の表面上において物体を浮揚させ、走行させる物体搬送装置において、前記超音波励振手段は前記振動体をして縞モード振動を行わせるべく励振するように構成したものである。
    また、本発明による物体浮揚方法は、振動体に縞モード振動を生じさせ、該振動体の音波の放射圧により該表面上において物体を浮揚させるようにしたものである。

    【0011】

    【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。

    【0012】図1乃至図3は、本発明の第1実施例としての物体搬送装置を示すものである。

    【0013】図示のように、当該物体搬送装置は、矩形板状に形成された振動体1を有している。 この振動体1
    は例えばその中心部にてホーン2の先端に螺子3(図2
    に図示)により締結されている。 ただし、振動体1の形状に関しては、平板状に限らず、その用途等に応じて適宣可変である。 また、ホーン2に対する振動体1の取付けについても、ロウ付けや溶接など、他の種々の手段を用いてよく、取付位置も可変である。 なお、図1において、ホーン2による超音波振動の振動方向を矢印Uにて示す。 このように、ホーン2は縦振動を行う。 振動体1
    の長さL(図2参照)及び幅Bは、ホーン2から伝達される振動に基づく撓み振動の共振長に定められ、図1に示す撓み曲線Aのような撓み振動をする。

    【0014】因に、本実施例の振動体1は、その長さL
    が434mm、幅Bが154mm、厚みt(図1に図示)が3mmとなされ、素材としてジュラルミンが用いられている。 また、ホーン2については、約19.4k
    Hzで励振され、先端には振幅が32μmp−p程度の振動がのせられる。 これらの設定により、振動体1の振動の節はその長さ方向において約54.25mm、幅方向においては約19.25mmの間隔で現れ、格子状の振動モードにて振動する。 なお、振動体1の各寸法、共振周波数及びその振幅並びに振動モードの形態については、適宣設定することができ、例えば長さLに関しては1000mm以上とすることが可能である。

    【0015】図1に示すように、ホーン2は、振動体1
    に対する結合部とは反対側において振動子4と結合されている。 この振動子4の電極4aと発振器5とが接続されており、振動子4は該発振器5によって励振されて超音波振動を発生する。 ホーン2は、この振動子4が発する振動を機械的に増幅するものである。 なお、ホーン2
    にはフランジ部2bが形成されており、振動子4及び該ホーン2を内蔵するケース6に対して該フランジ部2b
    がパッキン2cを介して締結されている。

    【0016】上述したホーン2と、振動子4と、発振器5と、これらに関連する周辺の部材を、超音波励振手段と総称する。

    【0017】図2及び図3に示すように、搬送されるべき物体7の搬送路両側に沿って板状の音波反射部材8が配置されており、且つ、ケース6に取り付けられている。

    【0018】次に、以上のような構成よりなる物体搬送装置の作用について説明する。

    【0019】まず、当該物体搬送装置が含む物体浮揚装置としての作用について説明する。

    【0020】まず、装置の作動に際し、図1に示すように、振動体1が仮想平面10に対して平行となるように装置の姿勢が調整される。 この状態で給電がなされ、
    発振器5により振動子4が励振され、ホーン2が縦振動して該ホーンを通じて振動体1が励振されて撓み振動を行う。 振動体1が撓み振動を行うことにより、該振動体1より音波(図示せず)が放射される。

    【0021】上記のように振動体1が振動を開始した後、物体7を振動体1上に持ち来し、静かに手を離す。
    但し、物体7は、振動体1の振動開始以前に予め振動体1上に載置しておいてもよい。

    【0022】図4は図1における部分Eを拡大したものであるが、該図から明らかなように、振動体1より発せられる音波の放射圧によって、物体7は該振動体1の表面から距離e 1を隔てた状態で浮揚する。 ここで、この浮揚距離e 1は、未だ音波を発することなく静止した状態の振動体1の表面を0(ゼロ)とし、これを基準とした距離である。 また、振動体1の面積が小さければ、振動体1は撓み振動をせずにホーン2より付与される縦振動そのものの振動モードで振動するが、この場合も物体7は同様に浮揚する。 なお、超音波励振手段への給電を断てば振動体1よりの音波は直ちに停止し、物体7は振動体1に接触する。

    【0023】図1乃至図4に示した物体7は、単に平板状で比較的軽量のもの、例えば名刺や、合成樹脂製あるいは金属製の薄板等を想定している。 これらの物体は、
    本実施例で示した装置を試作し、供試体として浮揚させてみたものであるが、この他、図5に示すような形態の物体7についても実験を行った。 すなわち、平板状のキャリア7aと、該キャリア7a上に担持された重量物7
    bとからなるものである。 図5において、この場合のキャリア7aと振動体1との距離をe 2にて示している。
    なお、このようなキャリア7aを必要とする重量物7b
    としては、球形に近いものあるいは凹凸を有するものなど自体のみにては浮揚し得ない物体や、容器に収容した状態の粉体又は液体等が挙げられる。 但し、自体の底面が平坦であればキャリア7aを外して該重量物7bのみにても浮揚する故、そのような重量物7bについては自体のみの浮揚実験をも行った他、種々の物体についても実験を行った。 この実験の実際及び該実験により得られた諸データ等については後述する。

    【0024】上記の実験の結果、浮揚に供する供試体の材質には何等制約されることがなく、どのような物体でも浮揚することが判明した。 また、軽量なものから重いものに亘り幅広く実験を行ったが、軽量物については勿論浮揚し、重量物に関しては実験中最大のもので直径が約140mm、重量が約3.26Kgの金属製の物体が浮揚し、これから、振動体1よりの音波の放射圧によって物体が受ける最大浮力を計算すると21.4g/cm
    2となった。 よって、振動体1の表面積よりこの数値を換算すると、仮に振動体1の全面に亘って延在するような物体であれば、その物体の重量が14.3Kgでも浮揚可能となる。 ただし、比較的軽量の物体を浮揚させる際は装置に加える振動系への入力電力は130Wで済んだが、上記のように重い物体を浮揚させる場合には16
    0Wを要した。

    【0025】また、前述したように、浮揚実験にはさまざまな材質の物体が供されたが、振動体1の表面と対向する底面の平面精度が高いものほど、重量が大きくとも浮揚することが判明した。 ただし、振動体1の表面の平面精度が高いこと、また、装置全体の安定性が重要であることも確認された。

    【0026】上記から明らかなように、本発明に係る装置においては、磁性体であるや否やなど、扱う物体の材質等の制約を受けることがなく、また、磁界中におくことができないもの等、あらゆる物体を浮揚させ、後述のように搬送することができる。 また、扱う物体の重量及び寸法が比較的大きくとも、浮揚させ、搬送することができるものである。

    【0027】続いて、上述した物体浮揚装置を含む物体搬送装置の作用について説明する。 この物体搬送装置は、前述した物体浮揚装置の構成に、浮揚した状態の物体7を走行させる走行手段を付加させたものである。

    【0028】この走行のための手段の一例として、図6
    に示すような構成を採用している。 すなわち、振動体1
    の表面が仮想水平面10に対して度θ 1だけ傾斜するようになされる。 この傾斜θ 1により、物体7に重力に基づく加速度が生じ、走行する訳である。 但し、角度θ
    1については実験では1〜5°に設定された。 かかる構成の場合、物体7を走行させるための駆動源を特に必要とせず、単に装置を傾けるだけでよいため、装置全体としての小型化及びコストの低減が図り易くなっている。
    なお、前述したように、超音波励振手段への給電を断てば物体7は瞬時に振動体1に接触し、摩擦抵抗により停止する。

    【0029】ところで、上記のようにして物体7が搬送される際、下記の作用によって搬送路からの逸脱が防止される。

    【0030】すなわち、図2及び図3に示すように、該搬送路の両側に沿って音波反射部材8が配設されている。 図3から明らかなように、これらの音波反射部材8
    は振動体1とは非接触の状態であり、図において矢印にて示すように振動体1の下面より放射される音波を反射しつつ上記搬送路の側方へと導く。 搬送路の側方にはこのように導かれた音波が存在することとなるため、これが壁となり、物体7が搬送路から逸脱しようとするとこれを押し戻す作用をなす。 よって物体7が搬送路から逸脱することがない。 また、かかる構成によれば、物体7
    は音波反射部材8と接触することがない。 但し、このような音波反射部材8を設けずとも、振動体1の縁からはみ出そうとした物体7が、該振動体1自体が放射する音波の作用によって内側に引き戻される作用があることが確認されている。

    【0031】次に、上述のように重力を利用して物体7
    を走行させる形式とは異なる走行手段を夫々備えた他の物体搬送装置について説明する。 なお、これら各物体搬送装置は、以下に説明する部分以外は図1乃至図3並びに図6に示した第1実施例としての物体搬送装置と同様に構成されているので、装置全体としての説明は重複する故に省略し、要部のみの説明に留める。 また、以下の説明において。 図1乃至図3並びに図6に示した物体搬送装置の構成部分と同一の構成部分については同じ参照符号を用いて示している。

    【0032】図7に、本発明の第2実施例としての物体搬送装置の要部を示す。

    【0033】図示のように、当該物体搬送装置においては、振動体1が、仮想水平面10に対して平行となされている。 そして、物体7を走行させる走行手段が、該物体7が走行すべき方向に沿って互いに所定間隔を隔てて並設された複数のノズル15を有している。 これらのノズル15は例えば振動体1の上方に配設され、斜め後方より物体7に向けて圧搾空気を噴出する。 物体7はこの噴出する圧搾空気によって加速され、搬送される。 これらのノズル15と、該ノズル15に圧搾空気を供給するコンプレッサ(図示せず)等とによって、上記走行手段として作用する気体噴射手段が構成されている。 なお、
    加圧して噴射される気体は、空気に限らず、用途に応じて、また、雰囲気等の環境に及ぼす影響が許容されるならば、種々のものが使用可能である。

    【0034】図8は、本発明の第3実施例としての物体搬送装置の要部を示すものである。 上記第2実施例としての物体搬送装置においては気体の噴射によって物体7
    を走行させているが、当該装置においては物体7に対して超音波を放射し、これを推進力として走行させる。

    【0035】すなわち、図示のように、振動体1の上方に、物体7が走行すべき方向に沿って複数の超音波放射器20が等間隔にて並べて設けられている。 そしてこれらの超音波放射器20は、各々が具備した振動板20a
    より放射する超音波21が斜め前下方に指向するように傾斜した状態に設置されている。

    【0036】かかる構成においては、物体7は各超音波放射器20より発せられる音波の放射圧により加速され、搬送される。

    【0037】図9に、本発明の第4実施例としての物体搬送装置の要部を示す。 図8に示した第3実施例としての物体搬送装置においては物体7の推進のために超音波放射器20を設けているが、本実施例においては振動体1自体が発する音波を物体推進用として活用している。

    【0038】図示のように、本実施例においては、振動体1の上方に、物体7が走行すべき方向に沿って複数の平板状の反射部材25が並べて設けられている。 各反射部材25は振動体1の表面に対してθ 2の角度をなすように、且つ前方が高くなるように傾けて設置されている。 よって、振動体1より上方に向けて放射された音波26aはこれら反射部材25にて反射し、斜め前下方向に向って進む。 物体7はこの反射波26bにより加速され、搬送される。

    【0039】なお、本実施例においては複数の反射部材25を個別に設けたが、この他、複数の傾斜部を波状に形成した長尺の反射部材(図示せず)を1つのみ設ける構成としてもよい。

    【0040】また、図7乃至図9に夫々示した第2乃至第4実施例においては、ノズル15、超音波放射器20
    及び反射部材25を物体搬送路に沿って各々複数並べて設けているが、これらを単一として、搬送すべき物体7
    を追うように移動させる構成とすることも可能である。

    【0041】図10は、本発明の第5実施例としての物体搬送装置を示すものである。 当該物体搬送装置においては、物体7を走行させる走行手段が下記のように構成されている。

    【0042】図示のように、振動体1を励振する超音波励振手段30が該振動体1の右端側に設置され、左端側に、該超音波励振手段30とほぼ同様の構成を有するエネルギー変換手段31が配置されている。 このエネルギー変換手段31は、超音波励振手段30により励振された振動体1が発する超音波のエネルギーを再び電気エネルギーに戻すべく変換するものである。 具体的には、該エネルギー変換手段31が具備する振動子4の電極4a
    に、抵抗R及びコイルLからなる回路が接続されており、機械的エネルギーとしての超音波エネルギーより変換された電気エネルギーはこの回路を経ることにより更にジュール熱に変換され、放散される。

    【0043】かかる構成においては、超音波励振手段と同時にこのエネルギー変換手段31を作用させれば、矢印Sにて示すように、振動体1に生ずる撓み振動の波が進行波となる。 物体7は、この進行波に載る状態にて走行する。

    【0044】図11に、本発明の第6実施例としての物体搬送装置の要部を示す。

    【0045】図示のように、当該物体搬送装置においては、物体7の走行のための手段として、物体1の走行方向側に重り32を搭載させることが行われる。 このように重りを載せると、物体7は該物体の走行方向側とその反対方向側とで重量配分が異なり浮揚した状態にて傾斜する。 すると、振動体1より上方に向けて放射された音波(図示せず)は物体7の下面にて反射し、その反射波(図示せず)が斜め後下方向に向かって進む。 物体7はこの反射波による推進力によって加速され、走行する。
    なお、このような重り32を用いず、物体7自体について走行方向側とその反対方向側との厚さを変えるなどして重量配分を異ならしめて傾斜させてもよい。

    【0046】図12は、本発明の第7実施例としての物体搬送装置の要部を示すものである。

    【0047】図示するように、この物体搬送装置においては、物体7を走行させるための手段として、物体7の後部下面に凹凸7dが形成されている。 図13から明らかなように、この凹凸7dは例えば、該物体7が走行すべき方向において鉛直面7e及び傾斜面7fとを交互に且つ連続的に形成することによりなる。 そして、該傾斜面7fは、振動体1の表面に対してθ 3の角度をなすように、且つ前方が低くなるように形成されている。 よって、振動体1より上方に向けて放射された音波26aはこれら傾斜面7fにて反射し、斜め後下方向に向って進む。 物体7はこの反射波26bによる推進力によって加速され、走行する。

    【0048】ところで、図2及び図3に示すように、前述した各実施例の物体搬送装置においては、物体7の搬送路からの逸脱を防止するために、搬送路に沿って音波反射部材8を設け、振動体1の下面側より発せられて該音波反射部材8に沿って反射された音波を壁として作用させている。 かかる構成により、ある程度の質量までの物体に対処し得るのであるが、物体7の質量がかなり大きくなると搬送路外に逸脱しようとする時の慣性も大きく、音波の壁のみにてはこれを規制することは困難である。 そこで図14に示す構成を付加することが行われる。

    【0049】図14に示すように、重量が大きい物体7
    (例えば重量物7bのみからなる)の搬送路の両側に、
    平板状の逸脱防止部材35を配設している。 よって、物体7は搬送路から逸脱しようとするとこの逸脱防止部材35の内側面に極く軽く接触し、逸脱が回避される。

    【0050】前述した各実施例においては、1台の物体搬送装置について示したが、図15に示すように、2台またはそれ以上の物体搬送装置を、その各々の搬送路が連続するように直列に並べて設置することができる。 このように、搬送路の長さを自在に設定することができ、
    自由度が大きく、汎用性に優れている。

    【0051】ところで、前述した各実施例の物体搬送装置によって搬送される被搬送側の実用化の一例として図16に示す構成を考えた。

    【0052】この構成において搬送されるべき物体は、
    半導体(ICチップ)を製造する際の一次製品としてのシリコンウェハー40であり、該シリコンウェハー40
    を例えば矩形板状に形成したキャリア41上に搭載させた状態で前述の物体搬送装置により浮揚させ、搬送することを行う。

    【0053】図から明らかなように、キャリア41には、略円形のシリコンウェハー40が挿通されるべき円形の凹部41aが設けられている。 この凹部41aの内周面には例えば4つの突起41bが等間隔にて形成されており、シリコンウェハー40は凹部41a内においてこれら突起41b上に載置されるようになされている。
    そして、キャリア41の両側には、凹部41aに連通する切欠部41cが形成されている。 この切欠部41c
    は、シリコンウェハー40を上記突起41b上に載置した状態において該切欠部41cの底面とシリコンウェハー40の下面との間に所定の間隙が生ずる程度の深さを有している。 すなわち、図示しないロボットハンド等がこのシリコンウェハー40を凹部41a内に挿入したり取り出す際に、上記切欠部41cを通じてシリコンウェハー40を保持するようになされている。

    【0054】なお、かかるキャリア41を使用せずに、
    直接シリコンウェハー40を搬送することも可能である。

    【0055】ここで、前述した各実施例の物体搬送装置(物体浮揚装置を含む)に関し、搬送(浮揚)に供される物体7の大きさによる浮揚状態を確認すべく行った実験について述べる。

    【0056】すなわち、前述した各実施例におけるように格子モード音源の場合、振動体1が撓み振動しているため、放射される音波の放射圧が放射面上での位置により異なる。 そのためクラードニの砂図で得られる格子の四角形の寸法より小さなものは、振動体1の表面と水平に安定して浮揚せずに、斜めに傾いて浮揚したり、振動の節の部分に物体7の一辺が接触してしまう場合がある。 そこで、撓み振動の波長と物体7の大きさについて実験的に検討した。 なお、物体7として浮揚に供される供試体は、ベークライトを素材として図17に示す各種寸法のものを製作した。 但し、この図17において、符合λは撓み振動の1波長を示す。 また、この実験においては、振動体1として、長さLが434mm、幅Bが1
    78mm、厚みtが3mmのジェラルミン製の矩形状板を用いた。 駆動周波数、すなわち、ホーン2(図1、図2等参照)の励振周波数は19.11kHzで、格子状の振動モードの格子の寸法は約32×23mmである。
    振動体1の中心、すなわち図2に示す螺子3の頭部での振動振幅は30μmp−p一定にして測定した。 そのときの振動系の入力電圧は70Wである。

    【0057】浮揚状態を測定した結果を図17の右側部分に示している。

    【0058】上述した格子モードの節の寸法、約32×
    23mmは半波長の寸法である。 これに対して安定に浮揚する供試体の寸法は、60×60mm(厚さ1mm)
    以上であることが測定された。 このことから、ほぼ3/
    2波長以上の寸法であれば振動体と水平に安定して浮揚することが判明した。 その概念図を図18に示す。

    【0059】次に、本発明の第8実施例としての物体浮揚装置について図19及び図20に基づいて説明する。
    なお、当該物体浮揚装置は、以下に説明する部分以外は前述の第1実施例としての物体搬送装置に含まれる物体浮揚装置(図1乃至図3に図示)と同様に構成されているので、装置全体としての説明は省略し、要部のみの説明に留める。 また、以下の説明において、この図1乃至図3に示した物体浮揚装置の構成部分と同一の構成部分については同じ参照符合を用いて示している。 また、これらのことは、後述する他の実施例の説明に関しても同様である。

    【0060】当該物体浮揚装置においては、物体7を表面上にて浮揚させるための振動体として、直径60m
    m、共振長126mmのステンレス製のストレートホーン45を用いた。 このストレートホーン45は振幅拡大率2.5倍のホーン2の先端にM14のねじ(図示せず)で結合されており、振動振幅を数箇所測定した結果、全体として均一に同相に、すなわち、物体7を浮揚させるための表面に対して垂直若しくは略垂直に縦振動していることが確認された。 この「同相」とは、ストレートホーン45の振動方向Vが、これが結合されたホーン2の振動方向Uと同方向であることを表わすものである。 なお、クラードニの砂図では、振動面上に振動の節がないためパターンが得られないので、図は省略する。
    また、このようなストレートホーン45は、1955年6月27日に発行された『超音波加工に使用する固体ホーンの設計(電気通信学会報)』の第1頁乃至第21頁などにおいて開示されている。

    【0061】上記した構成によっても、物体7はストレートホーン45の表面上において浮揚する。 なお、前述したように、かかる構成においては、ストレートホーン45はこれを励振するためのホーン2と同相にてピストンのように振動することから、以下、該ストレートホーン45の振動モードについて同相ピストンモードと称する。

    【0062】図21は、本発明の第9実施例としての物体浮揚装置を示すものである。 図示のように、本実施例においては、物体7を表面上に浮揚させるための振動体として、比較的厚肉の円板状部材48が使用されている。 この円板状部材48の素材としては例えばジュラルミン等が挙げられる。 また、このような円板状の振動体は、1981年2月23日に発行された『厚い円板形超音波放射体(電子通信学会報US80−63)』の第7
    頁乃至第12頁などにおいて開示されている。

    【0063】かかる構成においても、上記円板状部材4
    8はホーン2と同相のピストンモードにて全体が縦振動し、物体7が円板状部材48の表面上において浮揚する。

    【0064】次いで、本発明の第10実施例としての物体浮揚装置を、図22及び図23を参照して説明する。
    図示のように、本実施例においては、物体7を表面上に浮揚させるための振動体として、前述した円板状部材4
    8と同様の肉厚を有する矩形板状部材51が使用されている。 この矩形板状部材51の素材としては例えばジュラルミン等が挙げられる。 また、このような矩形板状の振動体は、1981年2月23日に発行された『厚い角板形超音波放射体(電子通信学会報US80−64)』
    の第13頁乃至第18頁などにおいて開示されている。

    【0065】かかる構成においても、上記矩形板状部材51はホーン2と同相のピストンモードにて全体が縦振動を行い、物体7が矩形板状部材51の表面上において浮揚する。

    【0066】また、この構成の物体浮揚装置に対し、図6乃至図13に示したような走行手段を付加することにより、物体7の搬送をなし得る物体搬送装置が構成される。 この搬送を行う場合、図23に示すように、2台またはそれ以上の物体搬送装置を、その各々の搬送路が連続するように直列に並べて設置すれば、搬送路の長さを自在に設定することができ、自由度が大きく汎用性に優れる。

    【0067】図24に、本発明の第11実施例としての物体浮揚装置を示す。 図示のように、本実施例においては、物体7を表面上に浮揚させる振動体55が、略直方体状に形成されている。 この振動体55は例えばアルミニウムなどを素材として形成される。 このような振動体55は、1986年2月24日に発行された『超音波プラスチックウエルダ用大型工具の設計法の検討(電子通信学会報US85−64)』の第13頁乃至第26頁などにおいて開示されている。

    【0068】この構成の物体浮揚装置においても、上記振動体55はホーン2と同相のピストンモードにて全体が縦振動を行い、物体7が振動体55の表面上において浮揚する。 なお、図24に示すように、振動体55にはその振動方向において伸長する複数、この場合3条のスリット55aが互いに平行に形成されているが、これらのスリット55aは、Poisson比の影響による横方向の振動を抑圧し、放射面で均一な変位分布を得るためのものである。

    【0069】図24に示した構成の物体浮揚装置に対し、図6乃至図13に示したような走行手段を付加することにより、物体7の搬送をなし得る物体搬送装置が構成される。 この搬送を行う場合、図24に示すように、
    2台またはそれ以上の物体搬送装置を、その各々の搬送路が連続するように直列に並べて設置すれば、搬送路の長さを自在に設定することができ、自由度が大きく汎用性に優れる。

    【0070】図25は、本発明の第12実施例としての物体浮揚装置を示すものである。 当該物体浮揚装置は、
    上記した第11実施例としての物体浮揚装置が具備する振動体55の両端部近傍下面側に対して、トラップホーンと称される付加振動体57を垂下状態にて装着した点を除き、該第11実施例たる物体浮揚装置と同様に構成されている。 よって、当該物体浮揚装置においても振動体55はホーン2と同相のピストンモードにて全体が縦振動を行い、物体7が振動体55の表面上において浮揚する。

    【0071】上記付加振動体57は、これを装着することによって、振動体55の放射面上で平坦な鉛直方向の振動変位分布を実現できるものである。 なお、このような付加振動体は、1988年2月23日に発行された『ウェーブトラップトホーンによる超音波大型工具の振動モード制御(電子通信情報学会報US87−65)』
    の第9頁乃至第16頁などにおいて開示されている。

    【0072】次に、本発明の第13実施例としての物体浮揚装置を図26及び図27に基づいて説明する。

    【0073】図示のように、当該物体浮揚装置においては、物体7をその表面上にて浮揚させるための主振動体61と、該主振動体61と励振用のホーン2との間に介在する副振動体62とを備えている。 主振動体61は、
    ジュラルミン製であり、その長さLが695mm、幅B
    が220mm、厚みtが3mmとなされている。 また、
    副振動体62としては、有限要素法解析で先端面を均一な振動分布になるように設計されたプレート状のホーンが用いられ、上記ホーン2の先端に下端部にて締結されると共に、上記主振動体61の片側に対して、M6の六角穴付きボルト18ケを用いて結合してある。

    【0074】上記した構成の物体浮揚装置においては、
    ホーン2を通じて伝達される縦振動に基づき、主振動体61が縞状の振動モードにて振動する。 その振動モードをクラードニの砂図により測定したところ、図27に示すような結果が得られた。 この構成によっても、物体7
    は主振動体61の表面上において浮揚する。

    【0075】図26に示した構成の物体浮揚装置に対し、図6乃至図13に示したような走行手段を付加することにより、物体7の搬送をなし得る物体搬送装置が構成される。 この搬送を行う場合、図26に示すように、
    2台またはそれ以上の物体搬送装置を、その各々の搬送路が連続するように直列に並べて設置すれば、搬送路の長さを自在に設定することができ、自由度が大きく汎用性に優れる。

    【0076】前述した各実施例の物体浮揚装置について、物体浮揚状態の実際を確認すべく実験を行った。 具体的には、振動体の振動モードを変えて、振動振幅と浮揚距離の関係、被浮揚物体の質量と浮揚距離の関係などの基本的な実験を行った。 以下、この実験について説明する。

    【0077】この実験のため、図28に示すような測定装置を用意した。 この測定装置は前述したような各種振動体(例えば格子モード振動をする振動体1を示す)上における各種物体7の浮揚距離eを測定するものである。 図示のように、レーザ変位計67と、該レーザ変位計67による測定値を表示するオシロスコープ68と、
    該レーザ変位計67より発せられる信号の増幅等を行ってオシロスコープ68に表示させるべく両者間に介在する変位計本体69とを有している。

    【0078】上記レーザ変位計68は、物体7の直上から該物体の上面に向けてレーザ67aを照射し、その反射光等を利用して距離を測定するためのものであるが、
    種々ある公知の測定原理のものが採用され得る。 測定は、具体的には下記のように行われる。

    【0079】まず、振動体1を振動させることなく静止状態とし、該振動体1上に物体7を載置する。 この状態で上記測定装置を作動させ、静止状態の物体7の上面までの距離を浮揚距離測定の基準すなわち0(ゼロ)とすべくリセットさせる。 次いで、振動体1を励振させて物体7を浮揚させる。 この浮揚状態にて再び測定装置を作動させ、測定を行う。 ここで得られる測定値は上記基準よりの距離であるから、該測定値がすなわち浮揚距離e
    となる。 なお、物体7が金属の場合、非浮揚状態において物体7と振動体1とに通電して相互の導通状態を得ておき、この導通状態が消えて非導通状態となったことを以て物体7が浮揚したことを確認することも行われた。

    【0080】本実験においては、被浮揚物体として図2
    9及び図30に示す各種形態の供試体を用意し、これらの供試体につき浮揚距離等の測定を行った。 今回の実験で浮揚させた供試体は、シリコンウェハー、ベーク(ベークライト)板、アルミ製の金属ブロックの3種類であり、音波の放射圧を利用して浮揚するため、供試体の底面は、平坦なものを選んだ。

    【0081】図29は、格子状の振動モードの浮揚実験に用いた各種供試体を示すものであり、供試体としては格子モード振動にて水平に安定して浮揚する大きさのものを選んだ。 また、縞モード振動の浮揚実験に関してもこの図29に示す供試体を用いた。 また、同相ピストンモード(縦振動)の浮揚実験については、図30に示す各種供試体を用いた。 この同相ピストンモード振動の場合は、小さな供試体でも浮揚する。 また、後述もするが、音源の直径が60mmであるので、それより小さな寸法のものを選んだ。

    【0082】一方、上記各供試体を浮揚させるべき物体浮揚装置として、下記のものが選定された。

    【0083】まず、格子モード振動の浮揚実験については、図1乃至図3に第1実施例として示した物体浮揚装置を選んだ。 但し、当該物体浮揚装置に装備される振動体1として、長さLが434mm、幅Bが178mm、
    厚みtが3mmのジュラルミン製の矩形状板を用いた。
    この振動体1は、その中心で、ジュラルミン製のエキスポネンシャルホーン2に対してM6の六角穴付ボルト(図示せず)で結合された。 そして、同一の振動体1で振動モードの異なる3の共振周波数にて励振させて浮揚特性を測定した。 共振周波数は次の通りである。 f1=18.48kHz f2=19.11kHz f3=19.98kHz 入力電力は、駆動周波数f2=19.11kHz、ボルト頭部の振動振幅が20μmp−pの時27.5Wである。

    【0084】次に、縞モード振動の浮揚実験に関しては、図26及び図27に第13実施例として示した物体浮揚装置を用いた。 なお、この場合、装備される主振動体61及び副振動体62について、その寸法、材質等は当該物体浮揚装置の説明において示した通りのものを採用した。 また、共振周波数は、19.04kHzで、振動子の入力電力はボルト頭部の振動振幅が20μmp−
    pの時102Wである。 前述したように、その振動モードをクラードニの砂図(図27参照)により測定したところ、節と節すなわち1/2波長の距離は約19mmであった。

    【0085】そして、同相ピストンモード振動(縦振動)の浮揚実験には、図19及び図20に第8実施例として示した物体浮揚装置を採用した。 なお、共振周波数は19.36kHzである。

    【0086】第1の実験として、図29及び図30に示した各供試体を各音源に乗せ、振動振幅を一定に保ち、
    そのときの供試体の質量に対する浮揚距離を測定した。
    その結果を図31乃至図33に示す。 該各図において、
    横軸の質量は供試体の底面の面積、すなわち音波を直接受ける面の面積で規格化した。 従って、単位当たりの質量で、単位は(g/cm 2 )である。

    【0087】以上の結果から、振動振幅に対する浮揚距離は異なるものの、単位面積当たりの質量と浮揚距離との関係は、音源の振動モードの種類に関わらず、ほぼ−
    1/2乗に比例することが確認された。 また、音源の振動モードが異なると供試体の浮揚距離も異なる。 これは振動体に振動振幅の分布があるため、位置により放射される音波の放射圧も変わるからと考えられる。 尚、振動系への入力電力は、定振幅制御の発信器を用いているため、供試体の質量により若干異なる。 質量の大きいものを振動体に乗せると振動子端から見たインピーダンスが大きくなり、振幅を一定に制御する発信器を用いているので発信器の出力が大きくなるからである。

    【0088】次に、第2の実験として、振動振幅を変化させ、浮揚距離を測定した。 ここで、各振動モードに於ける振動振幅測定位置は、次の通りである。 (1)格子モード振動:振動体の中心の締結用ボルトの頭部 (2)縞モード振動:プレート状ホーン62との接続ボルトの頭部 (3)同相ピストンモード振動:直径60mmのストレートホーン45の先端面のほぼ中央

    【0089】格子モード振動に関しては、前述したように一つの振動体1(434×178×厚さ3mmのジュラルミン製)を用い、その3つの共振点において、それぞれ振動振幅を変化させて測定した。 前述の通り各周波数は低い方から、f1、f2、f3とし、次の値を持つ。 それぞれの振動モードは異なっている。 f1=18.48kHz f2=19.11kHz f3=19.98kHz 結果を図34に示す。

    【0090】また、縞モード振動に関しても、同様に、
    695×220×厚さ3mmのジュラルミン製の縞モード振動体を用いて、振動振幅を変化させて測定した。 駆動周波数は19.04kHzである。 結果を図35に示す。

    【0091】そして、同相ピストンモード振動についても、同じく、直径60mmのステンレス製ストレートホーンを用いて、同様に振動振幅を変化させて測定した。
    結果を図36に示す。

    【0092】以上の結果から、いずれのモードも振動振幅に比例して浮揚距離が大きくなることが確認された。
    しかしながら、その比例の傾きは振動モードにより異なることが判明した。 格子モード振動では、約0.75乗〜約1.14乗 縞モード振動では、約1.04乗〜約1.22乗 同相ピストンモード振動では約0.99乗 である。

    【0093】また、供試体の質量によっても浮揚距離の傾きが異なることが判明した。 図34の格子モード音源の実験結果から、6インチのシリコンウェハー(26.
    7g)(供試体No.71)では、比例の傾きは約0.
    75乗であるが、アルミ製の金属ブロック(900g)
    (供試体No.74)では、約1.14乗に比例している。

    【0094】これは次の点が原因しているものと考えられる。 浮揚中のシリコンウェハーや板厚の薄いベーク板上に砂をのせると、振動体と同様な振動パターンが確認され、板厚の大きい金属ブロック(900g)では砂図パターンは全く現れなかった。 このことから、板厚が薄い供試体では音波の反射と透過が行われることが分かる。
    ところが、板厚の大きい金属ブロックでは透過は極めて少なく境界面(供試体の底面)で音波が全反射しているものとみなせる。 従って、浮揚距離と振幅の関係の比例の傾きが異なるものと推定される。 単位面積当たりの質量が増加するに従い、供試体から受ける反抗力も大きくなり、振動体が静的にたわんでしまったために測定上誤差が出て、比例の傾きが変わってしまったものと推定される。

    【0095】以上のように、今回、撓み振動の波長と供試体すなわち浮揚物質の大きさ及び、振動モードの異なる音源を用いて、振動モードと浮揚特性の関係を実験的に検討した。 これらの実験結果から次のことが明らかになった。 1)浮揚物質が振動体と平行に安定に浮上するためには、浮揚物質の大きさが撓み振動の波長の長さに対して約3/2波長以上必要である。 2)浮揚距離と浮揚物質の単位底面積当たりの質量の関係は、振動モードに関わらず、ほぼ−1/2乗に比例している。 3)浮揚距離と振動振幅との関係は、比例関係にあるが、音源の振動モードによりその比例の傾きが異なる。 4) 浮揚距離と振動振幅との関係は、浮揚させる物質の質量によっても比例の傾きが異なる。 すなわち、質量の大きいものほど傾きが大きくなる。 これは上述した通り、音波の透過及び、放射圧の反抗力により振動体が静的にたわんでしまったため測定上比例の傾きが異なってしまったものと推定される。

    【0096】なお、本発明は、前述した各実施例の構成に限らず、これら各実施例のいずれか2以上の構成をその一部ずつでも互いに組み合わせることなどにより、多岐に亘る構成を実現できることは勿論である。

    【0097】また、前述の各実施例においては、振動体の素材としてジュラルミン等が使用されているが、他に、炭素鋼及びその合金鋼であるステンレス鋼や、チタン合金等、種々の材質が採用可能である。

    【0098】

    【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
    磁性体であるや否やなど、扱う物体の材質等の制約を受けることがなく、また、磁界中におくことができないもの等、あらゆる物体を浮揚させ、搬送することができ、
    しかも、物体の重量及び寸法が比較的大きくとも対処可能であるという効果がある。 また、装置に関しては、実質的に、振動体とこれを励振する超音波励振手段のみを最小限設けるだけでよいから、小型化及びコストの低減が達成されるという効果が得られると共に、消費電力も極めて少なくて済み、省エネルギー化に寄与するものである。 更に、電気エネルギーを変換した音波の放射圧による浮揚作用であるため、作業者の安全性についても容易に確保し得ると共に、給電及びその断をなすことにより簡単に制御できる利点を有する。 そして、用途に応じて振動体の形状を適宜変更し得、また、物体を長距離搬送するためには装置を並べればよいなど、その自由度が非常に大きく、且つ汎用性に優れている。 また特に、同相ピストンモード振動によれば、振動の節が存在しないので、浮揚、搬送されるべき物体の寸法が小さくとも可能である。

    【図面の簡単な説明】

    【図1】図1は、本発明の第1実施例としての物体搬送装置の要部の、一部断面を含む正面図である。

    【図2】図2は、図1に示した物体搬送装置の要部の平面図である。

    【図3】図3は、図1に関するD−D矢視図である。

    【図4】図4は、図1における部分Eの拡大図である。

    【図5】図5は、図1乃至図3に示した物体搬送装置によって搬送されるべき物体の他の構成を示す図である。

    【図6】図6は、図1乃至図3に示した物体搬送装置の動作説明図である。

    【図7】図7は、本発明の第2実施例としての物体搬送装置の要部の正面図である。

    【図8】図8は、本発明の第3実施例としての物体搬送装置の要部の正面図である。

    【図9】図9は、本発明の第4実施例としての物体搬送装置の要部の正面図である。

    【図10】図10は、本発明の第5実施例としての物体搬送装置の、一部断面を含む正面図である。

    【図11】図11は、本発明の第6実施例としての物体搬送装置の要部の正面図である。

    【図12】図12は、本発明の第7実施例としての物体搬送装置の要部の正面図である。

    【図13】図13は、図12における部分Gの拡大図である。

    【図14】図14は、図1乃至図13に示した各実施例の物体搬送装置に関し、その一部の変形例を示す側面図である。

    【図15】図15は、物体搬送装置を複数台並べた状態を示す、一部断面を含む正面図である。

    【図16】図16は、図1乃至図13に示した各実施例の物体搬送装置により搬送されるべきシリコンウェハーと、該シリコンウェハーを搭載するキャリアの斜視図である。

    【図17】図17は、本発明に係る物体浮揚装置に関する浮揚実験に供されるべき各種供試体の形態を示す図である。

    【図18】図18は、本発明に係る物体浮揚装置上における供試体の浮揚状態を示す概念図である。

    【図19】図19は、本発明の第8実施例としての物体浮揚装置の一部断面を含む正面図である。

    【図20】図20は、図19に示した物体浮揚装置の一部の斜視図である。

    【図21】図21は、本発明の第9実施例としての物体浮揚装置の要部の斜視図である。

    【図22】図22は、本発明の第10実施例としての物体浮揚装置の一部断面を含む正面図である。

    【図23】図23は、図22に示した物体浮揚装置の一部の斜視図である。

    【図24】図24は、本発明の第11実施例としての物体浮揚装置の要部の斜視図である。

    【図25】図25は、本発明の第12実施例としての物体浮揚装置の要部の斜視図である。

    【図26】図26は、本発明の第13実施例としての物体浮揚装置の要部の斜視図である。

    【図27】図27は、図26に示した物体浮揚装置が具備する振動体の平面図である。

    【図28】図28は、本発明に係る物体浮揚装置の要部と該装置に関する測定を行う測定装置の概略を示す正面図である。

    【図29】図29は、図28に示した測定装置による測定に供される供試体の形態を示す図である。

    【図30】図30は、図28に示した測定装置による測定に供される供試体の形態を示す図である。

    【図31】図31は、図28に示した測定装置により得られた測定値をまとめた結果を示すグラフである。

    【図32】図32は、図28に示した測定装置により得られた測定値をまとめた結果を示すグラフである。

    【図33】図33は、図28に示した測定装置により得られた測定値をまとめた結果を示すグラフである。

    【図34】図34は、図28に示した測定装置により得られた測定値をまとめた結果を示すグラフである。

    【図35】図35は、図28に示した測定装置により得られた測定値をまとめた結果を示すグラフである。

    【図36】図36は、図28に示した測定装置により得られた測定値をまとめた結果を示すグラフである。

    【図37】図37は、従来の物体浮揚装置の概略を示す正面図である。

    【符号の説明】

    1 振動体 2 ホーン 4 振動子 5 発振器 6 ケース 7 物体 8 音波反射部材 10 仮想水平面 20 超音波放射器 25 反射部材 30 超音波励振手段 31 エネルギー変換手段 35 逸脱防止部材 40 シリコンウェハー 41 キャリア 45 ストレートホーン(振動体) 48 円板状部材(振動体) 51 矩形板状部材(振動体) 55 振動体 57 付加振動体 61 主振動体 62 副振動体 67 レーザ変位計 68 オシロスコープ 69 変位計本体 71、72a〜72f、73、74、75、77a〜7
    7j 供試体(被浮揚物体)

    QQ群二维码
    意见反馈