【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は各種物品を運搬するのに使用される運搬用台車に関する。 【0002】 【従来の技術】商品の運搬などに使用される運搬用台車は、デッキが金属製のものが主であったが、近年ポリプロピレンなどの合成樹脂からなるものが多用されている。 ポリプロピレンなどのプラスチック製品は、寸法安定性、耐腐食性、衛生性などに優れるが、一般に表面は木に比べて滑りやすいため、例えば、ポリプロピレン製運搬用台車は運搬、搬送時などに荷崩れを起こしやすいという問題を有している。 【0003】このため、防滑性能を必要とする運搬用台車には、上面に滑り止めを取り付けることが従来から行われている。 プラスチック台車の滑り止めとしては、 デッキ上面にリブ加工やシボ加工により凹凸形状を設ける方法 グロメットを装着する方法 摩擦抵抗の大きい滑り止めのテープを接着したり、両面テープを貼り付けたりする方法 などが知られている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところで、プラスチック台車のデッキ面を滑り難くするの方法では、滑り防止効果が未だ充分でなく、物品の運搬途中で、荷崩れを発生させてしまうことがあった。 また、の方法では、 グロメットの取付位置が部分的になることから、積載物が小さい場合には、グロメットに接触しないことがあり、数カ所程度のグロメットでは滑り止めの作用を充分に発揮することができない。 グロメットで充分な効果を発揮させるには、多数のグロメットを取付れば良いが、 その場合には作業工数が多くなり、コスト高になってしまうという問題があった。 【0005】また、のようにテープを貼り付ける場合は、使用中に剥がれてしまうという問題があるばかりか、テープを部分的に貼り付けた場合には、滑り止め効果を充分に発揮することができず、荷崩れの原因になってしまう。 また、全面にテープを貼り付けた場合には、 滑り止め効果は充分であっても、コスト高になり、しかも荷物を積み下ろす場合には、ある程度の滑りが要求されるため、全く滑らないのも好ましくない。 【0006】本発明は上記実情に鑑み、防滑性能に優れ、かつ、防滑材がデッキ面に強固に固着されて剥がれることがなく、適度な滑り性も兼ね備えた運搬用台車を提供することを目的としている。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明に係る運搬用台車は、デッキの下面に取り付けられたキャスターにより、走行可能に構成された運搬用台車において、前記デッキの上面に、帯状あるいはシート状の防滑材が融着されていることを特徴としている。 【0008】係る構成による本発明によれば、防滑材が不用意に剥がれることがなく、またこの防滑材の作用で積載物とデッキ面との摩擦力が大きくなり、積載物が落下するような荷崩れを可及的に防止することができる。 また、本発明は、前記帯状あるいはシート状の防滑材が所定間隔離間して複数配置されていることを特徴としている。 【0009】このような構成であれば、防滑材を任意の直線に配置することができ、これにより多量の防滑材を用いなくても適宜な摩擦力を得ることができる。 また、 本発明は、前記防滑材が、少なくとも前記キャスターの取付部周辺に配置されていることを特徴としている。 このようにすれば、振動が特に伝わり箇所から発生する騒音を防止することがでいる。 【0010】ここで、 前記防滑材は、融着層と滑り止め層とからなる積層構造を有することを特徴としている。 また、前記融着層は、(A)非架橋オレフィン系共重合体ゴム10〜90重量%と、ポリプロピレン樹脂9 0〜10重量%との配合物であり、前記滑り止め層は、 (B)非架橋オレフィン系共重合ゴム10〜90重量% と、エチレン-酢酸ビニル共重合体90〜10重量%との配合物からなることを特徴としている。 【0011】このような構成であれば、融着層を融着して台車のデッキ面に一体化することができる。 【0012】 【発明の実施の形態】以下、本発明に係る運搬用台車について具体的に説明する。 図1は本発明の一実施例による運搬用台車を示したもので、図2はそのデッキ面を示したものである。 運搬用台車1は、略矩形のデッキ2がポリプロピレン成形体からなり、デッキ2の下面にキャスター3が取付られている。 また、デッキ2の上面2a に、帯状の防滑材4が融着され、この防滑材4により積載物の移動および落下が防止されている。 【0013】本実施例で用いる防滑材は、台車1のデッキ面2aへの融着層(A)と、滑り止め層(B)とからなる積層構造を有している。 防滑材を形成する各層のうち、融着層(A)は、非架橋オレフィン系共重合体ゴムとポリプロピレン樹脂との配合物から形成されるものであって、その配合割合は、非架橋オレフィン系重合体ゴム10〜90重量%と、ポリプロピレン樹脂90〜10 重量%であるのがよく、好ましくは、非架橋オレフィン系共重合体ゴム15〜40重量%と、ポリエチレン樹脂85〜60重量%であるのが望ましい。 非架橋オレフィン系重合体ゴムとポリプロピレン樹脂との配合割合が、 この範囲内であれば、融着層(A)自体が充分な強度を持ち、また、ポリプロピレン成形品であるデッキ2との接着性がよいため好ましい。 【0014】融着層(A)を形成する非架橋オレフィン系共重合体ゴムとしては、例えばエチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-ブテン-1共重合体ゴム、エチレン-ペンテン-1共重合体ゴムなどの2元共重合体や、 エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体ゴムなどの3元共重合体ゴムなどのα-オレフィン共重合体を特に好適に用いることができる。 【0015】また、融着層(A)を形成するポリプロピレン樹脂は特に限定はされないが、ポリプロピレン成形体に使用されるポリプロピレン樹脂のメルトインデックス(MI)に近いメルトインデックスを有するポリプロピレン樹脂を使用するのが好ましい。 このメルトインデックス値は、0.3〜30g/10分(230℃)程度であるのが好ましく、特にポリプロピレン樹脂に結晶性がない、プロピレン−エチレンランダム共重合体のような、低結晶型または非結晶型のポリプロピレン樹脂が好ましい。 【0016】一方、滑り止め層(B)は、非架橋オレフィン系共重合ゴムと、エチレン-酢酸ビニル共重合体との配合物から形成されるものであって、その配合割合は、非架橋オレフィン系共重合体ゴムが10〜90重量%であって、エチレン-酢酸ビニル共重合体が10〜9 0重量%であるのがよく、好ましくは非架橋オレフィン系共重合ゴムが10〜30重量%であって、エチレン- 酢酸ビニル共重合体が70〜90重量%であるのが望ましい。 【0017】滑り止め層(B)を形成する非架橋オレフィン系共重合ゴムは、ポリプロピレン成形体への融着層(A)を形成するものとして使用できる上述の非架橋オレフィン系共重合体ゴムをいずれも好適に使用することができる。 また、この層(B)を形成するエチレン-酢酸ビニル共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体であって、酢酸ビニル含有率が、5〜35重量%、好ましくは10〜25重量%であるのが望ましく、 共重合体のメルトフローインデックスが1〜30g/分(190℃)、好ましくは2〜10g/分であるのが望ましい。 【0018】このような滑り止め層(B)は、ポリプロピレン成形体すなわちデッキ2への融着層(A)との接着性、滑り止め性能および耐磨耗性のバランスがよいため好ましい。 なお、このような融着層(A)および滑り止め層(B)は、それぞれ性能を損なわない範囲で、適宜少量の他成分を含んでいてもよい。 【0019】本実施例で用いる防滑材4は、上記ポリプロピレン成形体への融着層(A)と、滑り止め層(B) との二層構造であることが好ましいが、(A)層と(B)層との間に他の樹脂成分からなる層が設けられていてもよい。 防滑材を形成するこれらの各層は配合方法および成形方法に特に制限はなく、それぞれ単軸押出成形機、2軸押出成形機などを用いた通常の方法で適宜配合および成形をすることができ、このような成形機を用いて一括して成形するのが特に好ましい。 このようにして得られた防滑材は、厚さが1〜3mm程度であり、融着層(A)の厚さが0.1〜1mm程度であることが好ましい。 【0020】このような防滑材は、ポリプロピレン樹脂と一括して溶融することができるものであり、デッキ2 に融着した場合にも、一括して溶融再生することができる。 以下、融着について説明する。 ポリプロピレンからなる台車1のデッキ2と防滑材4との融着は、台車のデッキ2および防滑材4がそれぞれ成形された後に、防滑材4の融着層(A)をデッキ2に融着する。 このような融着は、デッキ2の融着面、防滑材4の融着面の少なくともいずれか一方を加熱融着して行うが、双方の面を加熱溶融して圧着することが特に好ましい。 【0021】台車のデッキ2に融着される防滑材4の形態は、防滑性能を有する形態であれば帯状に特に限定されない。 例えば、シート状に形成してデッキ2の全面に融着することができる。 またはデッキ2の一部に融着することができる。 防滑材を一部に融着する場合は、防滑材4の形状は特に限定されず、線状、帯状(幅10〜4 0mm程度)、矩形、円形などであってもよい。 また、 図2に示したように、長手方向に複数本、平行に融着してもよい。 または格子状になるように融着しても良い。 さらには、円形、矩形などの形状をした防滑材の小片を、千鳥状のように規則的に、または不規則に配置して融着してもよい。 【0022】また、図3に示したように、キャスター3 の取付部に対応するデッキ面2aに融着しても良い。 この部分は、騒音が最も発生し易い箇所なので、騒音の発生を有効に抑えることができる。 【0023】 【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0024】 【実施例1】ポリプロピレンを射出成形法により低発泡成形し、110cm×90cmの発泡ポリプロピレン製のデッキ2を得た。 次に、ポリプロピレン樹脂70重量%と、非架橋オレフィン系共重合体ゴムを30重量%配合してなる、 ポリプロピレン成形体への融着層(A)と、エチレン− 酢酸ビニル共重合体ゴム90重量%に非架橋オレフィン系重合体ゴムを10重量%配合してなる、滑り止め層(B) とからなる帯状積層構造防滑材を押出成形により成形し、防滑材4を得た。 【0025】得られた防滑材4は、幅20mmであって、ポリプロピレン成形体への融着層(A)の厚さが0.5mm、 滑り止め層(B)の厚さが2mmであった。 続いて、発泡ポリプロピレン製のデッキ2と、防滑材4のデッキ2への融着層とをそれぞれ図4(A)〜(C)に示す形態で融着した。 融着は、両者の融着面に600〜800℃の熱風をそれぞれ吹き付けて上面を溶融し、ローラーで押圧して行った。 このようにして両者が融着された、防滑性能を有するポリプロピレン製のデッキを得た。 【0026】得られた台車のデッキについて、滑り試験の測定を行った。 滑り試験は、図5に示すように、防滑性能を有するデッキ2を長辺方向で傾け、デッキ2に置かれたポリプロピレン製の箱10が滑り始めた傾斜角度を測定した。 また、比較例として、デッキ上面にリブ加工やシボ加工により凹凸形状を設けた滑り止めを全く用いない場合についても同様に測定した。 【0027】滑り試験の結果を表1に示す。 【0028】 【表1】 【0029】以上の実施例および比較例に示されるように、ポリプロピレンからなるデッキ2と、特定の積層構造を有する防滑材4とを融着して得られる本願発明の運搬用台車は、充分な防滑性を有することがわかった。 また、防滑材は融着されているため、接着されているものに比べて剥離し難かった。 なお、上記実施例では、防滑材をデッキ面に融着したが、これに代え、予めシート状などの防滑材を形成し、この防滑材を、デッキ面素材を射出成形、または押出成形などで成形する際に、一体化することもできる。 【0030】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の運搬用台車は、高い滑り止め性能を有し、かつ、デッキ面と防滑材との固着強度に優れ、また融着により一体化されているため、剥離を生じにくいという効果がある。 また、防滑材層とデッキとが一括して溶融可能であるため、溶融して再生利用する際にも、デッキと防滑材層とを剥離させる必要がなく、再生時の工程を簡略化することができる。 【0031】また、任意の部分に必要な箇所に防滑材を融着するので、少ない量で積載物に対して確実に滑り止め効果を発揮させることができる。 これにより、運搬時などの荷崩れを防止することができる。 また、水漏れなどによる滑りを有効に防止することができるので、例えば、牛乳などの溶液収容体を運搬する場合に、溶液が一部漏れていても滑りによる荷崩れを防止することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】図1は本発明の一実施例によるプラスチック台車の斜視図である。 【図2】図2は同実施例によるプラスチック台車のデッキ面の平面図である。 【図3】図3は本発明の他実施例によるプラスチック台車のデッキ面の平面図である。 【図4】図4は本発明のさらに他実施例によるプラスチック台車のデッキ面の平面図である。 【図5】図5は傾斜角度を調べる実験方法を説明する図である。 【符号の説明】 1 運搬用台車 2 デッキ 3 キャスター 4 防滑材 |