Prepreg and carbon fiber reinforced composite material

申请号 JP2011142642 申请日 2011-06-28 公开(公告)号 JP5013008B2 公开(公告)日 2012-08-29
申请人 東レ株式会社; 发明人 健一 吉岡; 憲光 夏目; 順子 川崎; 宏 竹崎; 信之 荒井;
摘要
权利要求
  • [A]炭素繊維、[B]熱硬化性樹脂、[C]熱可塑性樹脂の粒子、および[D]導電性の粒子を含み、 [A]からなる層の表面に[C]および[D]が配されたプリプレグであって、 [[C]の配合量(重量部)]/[[D]の配合量(重量部)]で表される重量比が1〜1000 、かつ、[C]および[D]の総量が前記プリプレグに対して1〜20重量%であり、 [C]熱可塑性樹脂の粒子、および[D]導電性の粒子はいずれも、その90〜100重量%が、前記プリプレグの両表面から厚さ方向の20%の深さの範囲内に局在しているプリプレグ。
  • 前記[C]および[D]はいずれも、その90〜100重量%が、前記プリプレグの片側表面から厚さ方向の20%の深さの範囲内に局在している、請求項1に記載のプリプレグ。
  • 前記[C]および[D]はいずれも、その90〜100重量%が、前記プリプレグの上面と下面から20%の深さの範囲内に局在している、請求項1に記載のプリプレグ。
  • 前記[C]がポリアミド粒子である、請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグ。
  • 前記[B]に溶解する熱可塑性樹脂を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のプリプレグ。
  • 前記[B]に溶解する熱可塑性樹脂がポリエーテルスルホンである、請求項5に記載のプリプレグ。
  • 前記[B]としてグリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の少なくとも1種を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のプリプレグ。
  • 前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノールの少なくとも1種である、請求項7に記載のプリプレグ。
  • 前記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の少なくとも1種である、請求項7に記載のプリプレグ。
  • 前記[B]の硬化剤としてジアミノジフェニルスルホンを含む、請求項7〜9のいずれかに記載のプリプレグ。
  • 前記[D]導電性の粒子が、体積固有抵抗が10〜10 −9 Ωcmである、請求項1 〜10のいずれかに記載のプリプレグ。
  • 炭素繊維が、260〜400GPaの引張弾性率を有する、請求項1〜 11のいずれかに記載のプリプレグ。
  • 請求項1〜 12のいずれかに記載のプリプレグから得られる、炭素繊維強化複合材料。
  • 说明书全文

    本発明は、優れた耐衝撃性と導電性とを兼ね備えたプリプレグおよび炭素繊維強化複合材料に関するものである。

    炭素繊維強化複合材料は、強度、剛性および導電性等に優れていることから有用であり、航空機構造部材、風車の羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途等に広く展開され、その需要は年々増加しつつある。

    炭素繊維強化複合材料は、一般に、強化繊維である炭素繊維とマトリックス樹脂を必須の構成要素とするプリプレグを成形してなる不均一材料であり、そのため強化繊維の配列方向の物性とそれ以外の方向の物性に大きな差が存在する。 例えば、落錘衝撃に対する抵抗性で示される耐衝撃性は、層間の板端剥離強度等で定量される層間剥離強度によって支配されるため、強化繊維の強度を向上させるのみでは、抜本的な改良に結びつかないことが知られている。 特に、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする炭素繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂の低い靭性を反映し、強化繊維の配列方向以外からの応に対し、破壊され易い性質を持っている。 そのため、強化繊維の配列方向以外からの応力に対応することができる複合材料物性を改良することを目的として、種々の技術が提案されている。

    その中の一つとして、プリプレグの表面領域に樹脂粒子を分散させた樹脂層を設けたプリプレグが提案されている。 例えば、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる粒子をプリプレグの表面領域に分散させた樹脂層を設けたプリプレグを用いて、耐熱性の良好な高靭性複合材料を与える技術が提案されている(特許文献1参照)。 また、それとは別に、ポリスルフォンオリゴマー添加により靭性が改良されたマトリックス樹脂と熱硬化性樹脂からなる粒子との組み合わせによって、複合材料に高度の靭性を発現させる技術が提案されている(特許文献2参照)。 ところが、このような技術は、炭素繊維強化複合材料に高度な耐衝撃性を与える一方で層間に絶縁層となる樹脂層を生じることになる。 そのため、炭素繊維強化複合材料の特徴の一つである導電性のうち、厚み方向の導電性が著しく低下するという欠点があり、炭素繊維強化複合材料において優れた耐衝撃性と導電性を両立することは困難であった。

    また、層間の導電性を向上させる方法として、炭素繊維強化複合材料のマトリックス樹脂に金属粒子を配合する方法(特許文献3参照。)や、カーボン粒子を配合する方法(特許文献4参照。)が考えられるが、これらの文献においては、高度な耐衝撃性と導電性との両立についてなんら触れられていない。

    米国特許第5,028,478号明細書

    特開平3−26750号公報

    特開平6−344519号公報

    特開平8−34864号公報

    そこで本発明の目的は、優れた耐衝撃性と厚み方向の導電性とを兼ね備えたプリプレグおよび炭素繊維強化複合材料を提供することにある。

    本発明のプリプレグは、上記目的を達成するために次の構成を有する。 すなわち、[A]炭素繊維、[B]熱硬化性樹脂、[C]熱可塑性樹脂の粒子、および[D]導電性の粒子を含み、 [A]からなる層の表面に[C]および[D]が配されたプリプレグであって、 [[C]の配合量(重量部)]/[[D]の配合量(重量部)]で表される重量比が1〜1000 、かつ、[C]および[D]の総量が前記プリプレグに対して1〜20重量%であり、 [C]熱可塑性樹脂の粒子、および[D]導電性の粒子はいずれも、その90〜100重量%が、前記プリプレグの両表面から厚さ方向の20%の深さの範囲内に局在しているプリプレグである。

    また、本発明の炭素繊維強化複合材料は、上記プリプレグから得られるものである

    本発明によれば、優れた耐衝撃性と導電性とを兼ね備えた炭素繊維強化複合材料を製造できるプリプレグを得ることができる。 従来技術では、耐衝撃性が高いと導電性が低く、また、導電性が高いものは耐衝撃性に劣る炭素繊維強化複合材料を得るプリプレグしか得られなかったが、本発明により耐衝撃性と導電性とを同時に満たす炭素繊維強化複合材料を製造できるプリプレグを提供することが可能になった。

    代表的なプリプレグの断面図の一例である。

    [[C]の配合量(重量部)]/[[D]の配合量(重量部)]で示される重量比に対する衝撃後圧縮強度と体積固有抵抗の関係を示したグラフである。

    本発明者らは、炭素繊維、熱硬化性樹脂からなる炭素繊維強化複合材料の厚み方向の導電性メカニズムを鋭意検討した結果、積層層間部に高度な耐衝撃性を与える一方で層間に絶縁層となる樹脂層が生じることとなる熱可塑性樹脂の粒子に加えて、さらに導電性の粒子をある特定の重量比で配置し、または、積層層間部に熱可塑性樹脂の核導電性物質で被覆されてなる導電性の粒子を配置することにより、驚くべきことに炭素繊維含有率を減らすことなく、優れた耐衝撃性と導電性とを高度に兼ね備えた炭素繊維強化複合材料を得られることを見出し、かかる炭素繊維強化複合材料を得られるプリプレグを想到したものである。

    プリプレグとは、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸した成形中間基材であり、本発明においては、強化繊維として炭素繊維が用いられ、マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂が用いられる。 かかるプリプレグにおいては、熱硬化性樹脂は未硬化の状態にあり、プリプレグを積層、硬化することで炭素繊維強化複合材料が得られる。 もちろん、プリプレグ単層を硬化させても炭素繊維強化複合材料が得られる。 複数枚のプリプレグを積層、硬化させてなる炭素繊維強化複合材料は、プリプレグの表面部が、炭素繊維強化複合材料の積層層間部となり、プリプレグの内部が、炭素繊維強化複合材料の積層層内部となる。

    本発明のプリプレグは、[A]炭素繊維、[B]熱硬化性樹脂、[C]熱可塑性樹脂の粒子、および[D]導電性の粒子を含み、 [A]からなる層の表面に[C]および[D]が配されたプリプレグであって、 [[C]の配合量(重量部)]/[[D]の配合量(重量部)]で表される重量比が1〜1000 、かつ、[C]および[D]の総量が前記プリプレグに対して1〜20重量%であり、 [C]熱可塑性樹脂の粒子、および[D]導電性の粒子はいずれも、その90〜100重量%が、前記プリプレグの両表面から厚さ方向の20%の深さの範囲内に局在しているプリプレグである。

    本発明においては、プリプレグやそれから得られる炭素繊維強化複合材料は、[A]炭素繊維、[B]熱硬化性樹脂、[C]熱可塑性樹脂の粒子 、および、[D]導電性の粒子を含む [C]と[D]を、いずれも粒子形態とする方が、いずれか一方が繊維形態、または、両方が繊維形態の場合に比較して、熱硬化性樹脂の流動特性が良好であり炭素繊維への含浸性が優れる また、熱可塑性樹脂粒子および導電性の粒子組み合わせて用いることにより、炭素繊維強化複合材料への落錘衝撃(または局所的な衝撃)時、局所的な衝撃により生じる層間剥離が低減されるため、かかる衝撃後の炭素繊維強化複合材料に応力がかかった場合において応力集中による破壊の起点となる前記局所的な衝撃に起因して生じた層間剥離部分が少ないことや、導電性粒子が積層層内の炭素繊維との接触確率が高く、導電パスを形成し易いことから、高い耐衝撃性と導電性とを発現する炭素繊維強化複合材料が得られる。

    本発明は、積層層間部の[D]熱可塑性樹脂の粒子による優れた靭性の効果で、炭素繊維強化複合材料への落錘衝撃時、層間剥離強度が高く、耐衝撃性がより高いという点で優れている

    本発明で用いられる[A]炭素繊維は、より高い導電性を発現することから、少なくとも260GPaの引張弾性率を有する炭素繊維であることが好ましいが、耐衝撃性との両立の点からは、高くとも440GPaの引張弾性率を有する炭素繊維であることが好ましい。 かかる観点から、引張弾性率が280〜400GPaの範囲が導電性と耐衝撃性とを高い次元で両立可能なことから特に好ましい。

    また、耐衝撃性の観点からは耐衝撃性に優れ、高い剛性および機械強度を有する複合材料が得られることから、引張強度が4 . 4〜6.5GPaであり、引張伸度が1 . 7〜2.3%の高強度高伸度炭素繊維であることが好ましい。 従って、高い導電性および耐衝撃性を両立する点から、引張弾性率が少なくとも280GPaであり、引張強度が少なくとも4 . 4GPaであり 、引張伸度が少なくとも1 . 7%であるという特性を兼ね備えた炭素繊維が最も適している。 引張弾性率、引張強度および引張伸度は、JIS R7601−1986に記載されるストランド引張試験により測定することができる。

    本発明で用いられる[B]熱硬化性樹脂は、熱により架橋反応が進行して、少なくとも部分的に三次元架橋構造を形成する樹脂であれば特に限定されない。 かかる熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられ、これらの変性体および2種類以上ブレンドした樹脂なども用いることができる。 また、これらの熱硬化性樹脂は、加熱により自己硬化するものであっても良いし、硬化剤や硬化促進剤などを配合するものであっても良い。

    これらの熱硬化性樹脂の中でも、耐熱性、力学特性および炭素繊維との接着性のバランスに優れているエポキシ樹脂が好ましく用いられる。 特に、アミン類、フェノール類、炭素−炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましく用いられる。 具体的には、アミン類を前駆体とするグリシジルアミン型エポキシ樹脂として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノールおよびトリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体が挙げられる。 テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンは、耐熱性に優れているため航空機構造材としての複合材料用樹脂として好ましい。

    また、熱硬化性樹脂として、フェノールを前駆体とするグリシジルエーテル型エポキシ樹脂も好ましく用いられる。 このようなエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびレゾルシノール型エポキシ樹脂が挙げられる。

    液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂およびレゾルシノール型エポキシ樹脂は、低粘度であるために、他のエポキシ樹脂と組み合わせて使うことが好ましい。

    また、室温(25℃程度)で固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、室温(25℃程度)で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂に比較し、硬化樹脂において、架橋密度の低い構造を与えるため、その硬化樹脂は耐熱性については、より低いものとなるが、靭性については、より高いものとなるため、グリシジルアミン型エポキシ樹脂や液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂と組み合わせて好ましく用いられる。

    ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂は、低吸率かつ高耐熱性の硬化樹脂を与える。 また、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂およびジフェニルフルオレン型エポキシ樹脂も、低吸水率の硬化樹脂を与えるため好適に用いられる。

    ウレタン変性エポキシ樹脂およびイソシアネート変性エポキシ樹脂は、破壊靱性と伸度の高い硬化樹脂を与えるため好適に用いられる。

    これらエポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし適宜配合して用いてもよい。 少なくとも2官能のエポキシ樹脂および3官能以上のエポキシ樹脂を配合して用いると、樹脂の流動性と硬化後の耐熱性を兼ね備えるものとすることができるので好ましい。 特に、グリシジルアミン型エポキシとグリシジルエーテル型エポキシの組み合わせは、耐熱性および耐水性とプロセス性の両立を可能にする。 また、少なくとも室温で液状のエポキシ樹脂と室温で固形状のエポキシ樹脂とを配合することは、プリプレグのタック性とドレープ性を適切なものとするために有効である。

    フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、耐熱性が高く吸水率が小さいため、耐熱耐水性の高い硬化樹脂を与える。 これらのフェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることによって、耐熱耐水性を高めつつプリプレグのタック性とドレープ性を調節することができる。

    エポキシ樹脂の硬化剤としては、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物であればこれを用いることができる。 硬化剤としては、アミノ基、酸無水物基およびアジド基を有する化合物が適している。 硬化剤としては、より具体的には、例えば、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタンやジアミノジフェニルスルホンの各種異性体、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタンおよび三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。 これらの硬化剤は、単独で使用しても併用してもよい。

    芳香族ジアミンを硬化剤として用いることにより、耐熱性の良好な硬化樹脂が得られる。 特に、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体は、耐熱性の良好な硬化樹脂を得るため最も適している。 芳香族ジアミンを硬化剤の添加量は、化学量論的に当量となるように添加することが好ましいが、場合によって、例えば、当量比0.7〜0.8附近を用いることにより高弾性率の硬化樹脂が得られる。

    また、ジシアンジアミドと尿素化合物、例えば、3,4−ジクロロフェニル−1,1−ジメチルウレアとの組合せ、あるいはイミダゾール類を硬化剤として用いることにより、比較的低温で硬化しながら高い耐熱耐水性が得られる。 酸無水物を用いて硬化することは、アミン化合物硬化に比べ吸水率の低い硬化樹脂を与える。 その他、これらの硬化剤を潜在化したもの、例えば、マイクロカプセル化したものを用いることにより、プリプレグの保存安定性が良くなり、特にタック性やドレープ性が室温放置しても変化しにくい。

    また、これらエポキシ樹脂と硬化剤、あるいはそれらの一部を予備反応させた物を組成物中に配合することもできる。 この方法は、粘度調節や保存安定性向上に有効である場合がある。

    上記熱硬化性樹脂に、熱可塑性樹脂溶解して用いることも好適である。 このような熱可塑性樹脂としては、一般に、主鎖に、炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合およびカルボニル結合から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂であることが好ましいが、部分的に架橋構造を有していても差し支えない。 また、結晶性を有していても非晶性であってもよい。 特に、ポリアミド、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリルおよびポリベンズイミダゾールからなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂が、熱硬化性樹脂溶解していることが好適である。

    これらの熱可塑性樹脂は、市販のポリマーを用いてもよく、また市販のポリマーより分子量の低い、いわゆるオリゴマーを用いても良い。 オリゴマーとしては、熱硬化性樹脂と反応し得る官能基を末端または分子鎖中に有するオリゴマーが好ましい。

    熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを用いた場合は、それらを単独で用いた場合より良好な結果を与える。 熱硬化性樹脂の脆さを熱可塑性樹脂の強靱さでカバーし、かつ熱可塑性樹脂の成形困難性を熱硬化性樹脂でカバーし、バランスのとれたベース樹脂となる。 熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂と使用割合(重量部)は、バランスの点で好ましくは100:2〜100:50の範囲であり、より好ましくは100:5〜100:35の範囲である。

    また、上記熱硬化性樹脂に、炭素繊維同士の接触確率を高め炭素繊維強化複合材料の導電性を向上させる目的で、導電性フィラーを混合して用いることも好適である。 このような導電性フィラーとしては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、気相成長法炭素繊維(VGCF)、フラーレン、金属ナノ粒子などが挙げられ、単独で使用しても併用してもよい。 なかでも安価で効果の高いカーボンブラックが好ましく用いられ、かかるカーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなどを使用することができ、これらを2種類以上ブレンドしたカーボンブラックも好適に用いられる。 ここでいう、導電性フィラーとは、[D]導電性の粒子の平均径よりも小さい平均径(通常0.1倍以下)を有する導電性の粒子のことである。

    本発明は、[C]熱可塑性樹脂の粒子を必須成分として用いているため、優れた耐衝撃性を実現することができる。 本発明で用いられる[C]熱可塑性樹脂の粒子の素材としては、熱硬化性樹脂溶解して用いる熱可塑性樹脂として先に例示した各種の熱可塑性樹脂と同様のものを用いることができる。 なかでも、優れた靭性のため耐衝撃性を大きく向上できる、ポリアミドは最も好ましい。 ポリアミドの中でも、ナイロン12、ナイロン11やナイロン6/12共重合体は、[B]熱硬化性樹脂との接着強度が特に良好であることから、落錘衝撃時の炭素繊維強化複合材料の層間剥離強度が高く、耐衝撃性の向上効果が高いため好ましい。

    [C] 可塑性樹脂粒子の形状としては、球状でも非球状でも多孔質でも針状でもウイスカー状でも、またはフレーク状でもよいが、球状の方が、熱硬化性樹脂の流動特性を低下させないため炭素繊維への含浸性が優れることや、炭素繊維強化複合材料への落錘衝撃(または局所的な衝撃)時、局所的な衝撃により生じる層間剥離がより低減されるため、かかる衝撃後の炭素繊維強化複合材料に応力がかかった場合において応力集中による破壊の起点となる前記局所的な衝撃に起因して生じた層間剥離部分がより少ないことから、高い耐衝撃性を発現する炭素繊維強化複合材料が得られることから好ましい

    D] 電性の粒子は、電気的に良好な導体として振る舞う粒子であれば良く、導体のみからなるものに限定されない。 好ましくは体積固有抵抗が10〜10 −9 Ωcmであり、より好ましくは1〜10 −9 Ωcmであり、さらに好ましくは10 −1 〜10 −9 Ω cmである粒子である。 体積固有抵抗が高すぎると、炭素繊維強化複合材料において十分な導電性が得られない場合がある。 導電性の粒子は、例えば、金属粒子、ポリアセチレン粒子、ポリアニリン粒子、ポリピロール粒子、ポリチオフェン粒子、ポリイソチアナフテン粒子、ポリエチレンジオキシチオフェン粒子等の導電性ポリマー粒子、カーボン粒子の他、無機材料の核が導電性物質で被覆されてなる粒子、有機材料の核が導電性物質で被覆されてなる粒子を使用することができる。 これらの中でも、高い導電性および安定性を示すことから、カーボン粒子、無機材料の核が導電性物質で被覆されてなる粒子、有機材料の核が導電性物質で被覆されてなる粒子が特に好ましく用いられる。

    特に有機材料として熱可塑性樹脂を用い、熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆されてなる粒子を採用すれば、得られる炭素繊維強化複合材料においてさらに優れた耐衝撃性を実現出来るため好ましい

    ここでいう、体積固有抵抗とは、サンプルを4探針電極を有する円筒型セルにセットし、試料に60MPaの圧力を加えた状態で試料の厚さと抵抗値を測定し、その値から算出した体積固有抵抗とする。

    本発明において、 [D] 導電性の粒子として、無機材料の核が導電性物質で被覆された粒子、 または有機材料の核が導電性物質で被覆された粒子が用いられる場合 、核である無機材料や有機材料と導電性物質からなる導電性層とから構成され、必要に応じてその核と導電性層の間に後述するような接着層を設けてもよい。

    本発明において、 [D] 導電性の粒子として、無機材料の核が導電性物質で被覆された粒子が用いられる場合 、核として用いる無機材料としては、無機酸化物、無機有機複合物、および炭素などを挙げることができる。

    無機酸化物としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア等、単一の無機酸化物、および2種以上の複合無機酸化物が挙げられる。

    無機有機複合物としては、例えば、金属アルコキシドおよび/または金属アルキルアルコキシドを加水分解して得られるポリオルガノシロキサン等が挙げられる。

    また、炭素としては、結晶質炭素、非晶質炭素が好ましく用いられる。 非晶質炭素としては、例えば、“ベルパール”(登録商標)C−600、C−800、C−2000(鐘紡(株)製)、“NICABEADS”(登録商標)ICB、PC、MC(日本カーボン(株)製)などが具体的に挙げられる。

    本発明において、 [D] 導電性の粒子として、有機材料の核が導電性物質で被覆された粒子が用いられる場合、核として用いる有機材料としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、および、ジビニルベンゼン樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。 また、ここで挙げた材料を2種類以上複合して用いても良い。 なかでも、優れた耐熱性を有するアクリル樹脂やジビニルベンゼン樹脂、および優れた耐衝撃性を有するポリアミド樹脂が好ましく用いられる

    本発明において、 [D] 導電性の粒子として、無機材料の核が導電性物質で被覆された粒子、 または有機材料の核が導電性物質で被覆された粒子が用いられる場合、導電性層を構成する導電性物質としては、電気的に良好な導体として振る舞う物質であれば良く、導体のみからなるものに限定されない。 好ましくは体積固有抵抗が10〜10 −9 Ωcmであり、より好ましくは1〜10 −9 Ωcmであり、さらに好ましくは10 −1 〜10 −9 Ω cmである物質である。 体積固有抵抗が高すぎると、炭素繊維強化複合材料において十分な導電性が得られない場合がある。 例えば、炭素、または、金属が挙げられ、かかる導電性層は炭素や金属の連続した膜状であっても良いし、繊維状または粒子状の導電性物質が集合したものであっても良い。

    導電性物質として、炭素を用いる場合、チャネルブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、中空カーボンファイバー等が好ましく用いられる。 なかでも、中空カーボンファイバーが好ましく用いられ、その外形は、好ましくは0.1〜1000nmであり、より好ましくは1〜100nmのものである。 中空カーボンファイバーの外径が小さすぎても、大きすぎても、そのような中空カーボンファイバーを製造することが困難であることが多い。

    上記の中空カーボンファイバーは、表面にグラファイト層を形成したものでもよい。 その際、構成するグラファイト層の総数は、好ましくは1〜100層であり、より好ましくは1〜10層であり、さらに好ましくは、1〜4層であり、特に好ましいものは、1〜2層のものである。

    導電性物質として、金属を用いる場合、何れの金属でも良いが、好ましくは標準電極電位が−2.0〜2.0Vであり、より好ましくは−1.8〜1.8Vである。 標準電極電位が低すぎても、不安定であり安全上好ましくない場合があり、高すぎても加工性、生産性が低下する場合がある。 ここで、標準電極電位とは、金属をその金属イオンを含む溶液中に浸した際の電極電位と、標準水素電極(1気圧で水素ガスと接触している1規定のHCl溶液に浸した白金よりなる電極)電位との差で表される。 例えばTi:−1.74V、Ni:−0.26V、Cu:0.34V、Ag:0.80V、Au:1.52Vである。

    上記金属を用いる場合、メッキして使用される金属であることが好ましい。 好ましい金属としては、炭素繊維との電位差による金属の腐蝕を防止できることから、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、チタン、コバルト、亜鉛、鉄、クロム、アルミニウム等が用いられ、これらの中でも、体積固有抵抗が10〜10 −9 Ωcmという高い導電性および安定性を示すことから、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、またはチタンが特に好ましく用いられる。 なお、これら金属は単独で用いられても良いし、これら金属を主成分とする合金として用いられても良い。

    上記の金属を用いて金属メッキを施す方法としては、湿式メッキと乾式メッキが好ましく用いられる。 湿式メッキとしては、無電解メッキ、置換メッキおよび電気メッキ等の方法を採用することができるが、なかでも不導体にもメッキを施すことが可能であることから、無電解メッキによる方法が好ましく用いられる。 乾式メッキとしては、真空蒸着、プラズマCVD(chemical vapor deposition)、光CVD、イオンプレーティング、スパッタリング等の方法を採用することができるが、低温においても優れた密着性が得られることからスパッタリングによる方法が好ましく用いられる。

    また、金属メッキは、単一の金属の被膜であっても複数の金属からなる複数層の被膜であってもよい。 金属メッキをする場合は、最表面を金、ニッケル、銅、またはチタンからなる層とするメッキ被膜が形成されてなることが好ましい。 最表面を上記の金属とすることにより、接続抵抗値の低減化や表面の安定化を図ることができる。 例えば、金層を形成する際は、無電解ニッケルメッキによりニッケル層を形成し、その後、置換金メッキにより金層を形成する方法が好ましく用いられる。

    また、導電性層を構成する導電性物質として金属微粒子を用いることも好ましい。 この場合、金属微粒子として使用される金属は、炭素繊維との電位差による腐食を防ぐことから、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、チタン、コバルト、亜鉛、鉄、クロム、アルミニウム、またはこれらを主成分とする合金、若しくは酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウム・錫(ITO)等が好ましく用いられる。 これらの中でも、高い導電性および安定性を示すことから、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、チタンまたはこれらを主成分とする合金が特に好ましく用いられる。 なお、ここで、微粒子とは、[D]導電性の粒子の平均径よりも小さい(通常、0.1倍以下であることを言う)平均径を有する粒子のことをいう。

    上記の金属微粒子で核被覆する方法として、メカノケミカルボンディング方法が好ましく用いられる。 メカノケミカルボンディングとは、複数の異なる素材粒子を、機械的エネルギーを加えて、メカノケミカル的に分子レベルで結合させ、その界面で強固なナノ結合を創成し、複合微粒子を創出する方法であり、本発明では、無機材料や有機材料の核金属微粒子を結合させ、かかる核金属微粒子で被覆する。

    無機材料や有機材料(熱可塑性樹脂を含む)の核に金属微粒子を被覆する場合、この金属微粒子の粒径は、好ましくは核の平均粒径の1/1000〜1/10倍であり、より好ましくは1/500〜1/100倍のものである。 粒径があまりに小さい金属微粒子を製造することは困難な場合があり、逆に金属微粒子の粒径が大きすぎると被覆ムラが発生する場合がある

    本発明において、 [D] 導電性の粒子として、無機材料の核が導電性物質で被覆された粒子、 または有機材料の核が導電性物質で被覆された粒子が用いられる場合、導電性層の間に接着剤層は存在してもしなくとも良いが、核導電性層が剥離しやすい場合は存在させても良い。 この場合の接着剤層の主成分としては、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エチレン−アクリル樹脂、ポリアミド、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、SBR、再生ゴム、ブチルゴム、水性ビニルウレタン、α−オレフィン、シアノアクリレート、変成アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−フェノール、ブチラール−フェノール、ニトリル−フェノールなどが好ましく、中でも酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−アクリル樹脂およびエポキシ樹脂等が挙げられる。

    本発明において、 [D] 導電性の粒子として、無機材料の核が導電性物質で被覆された粒子、 または有機材料の核が導電性物質で被覆された粒子が用いられる場合、導電性物質で被覆されてなる導電性の粒子としては、[核体積]/[導電性層の体積]で表される体積比が、好ましくは0.1〜500、より好ましくは1〜300、さらに好ましくは5〜100であるものを用いるのが良い。 かかる体積比が0.1に満たないと得られる炭素繊維強化複合材料の重量が増加するだけでなく、樹脂調合中に均一に分散できない場合があり、逆に500を超えると得られる炭素繊維強化複合材料において十分な導電性が得られない場合がある。

    本発明で用いられる D]導電性の粒子の比重は大きくとも3.2であることが好ましい。 導電性の粒子の比重が3.2を超えると得られる炭素繊維強化複合材料の重量が増加するだけでなく、樹脂調合中に均一に分散できない場合がある。 かかる観点から、導電性の粒子の比重は、好ましくは、0.8〜2.2である。 導電性の粒子の比重が0.8に満たないと、樹脂調合中に均一に分散できない場合がある。

    [D]導電性の粒子の形状は、球状でも非球状でも多孔質でも針状でもウイスカー状でも、またはフレーク状でもよいが、球状の方が、熱硬化性樹脂の流動特性を低下させないため炭素繊維への含浸性が優れる。 また、炭素繊維強化複合材料への落錘衝撃(または局所的な衝撃)時、局所的な衝撃により生じる層間剥離がより低減されるため、かかる衝撃後の炭素繊維強化複合材料に応力がかかった場合において応力集中による破壊の起点となる前記局所的な衝撃に起因して生じた層間剥離部分がより少なくなることや、積層層内の炭素繊維との接触確率が高く、導電パスを形成し易いことから、高い耐衝撃性と導電性とを発現する炭素繊維強化複合材料が得られる点で好ましい

    本発明おいては、[熱可塑性樹脂の粒子の配合量(重量部)]/[導電性の粒子の配合量(重量部)]で表される重量比を1〜1000、好ましくは10〜500、より好ましくは10〜100とする。 かかる重量比が1よりも小さくなると、得られる炭素繊維強化複合材料において十分な耐衝撃性を得ることができず、かかる重量比が1000よりも大きくなると、得られる炭素繊維強化複合材料において十分な導電性が得られなくなるためである。

    本発明おいては、[D]導電性の粒子の平均径(平均粒径が[C]熱可塑性樹脂の粒子の平均径(平均粒径と同じかもしくは大きく、その平均径は大きくとも150μmが好ましい。 [D]導電性の粒子の平均径が[C]熱可塑性樹脂の粒子の平均径よりも小さい場合、絶縁性である[C]熱可塑性樹脂の粒子に[D]導電性の粒子が層間に埋もれてしまい、層内の炭素繊維と[D]導電性の粒子との導電パスが形成されにくく、十分な導電性向上効果をもたらさないことがある。

    また、本発明においては、[C]熱可塑性樹脂粒子および [D]導電性粒子の平均径は、大きくとも150μmであることが好ましい。 かかる平均径が150μmを超えると、強化繊維の配列を乱したり、後述するように粒子層がプリプレグの表面付近部分に形成するようにした場合、得られる複合材料の層間を必要以上に厚くするため、複合材料に形成されたとき、その物性を低下させる場合がある。 平均径は、好ましくは1〜150μmであり、さらに好ましくは3〜60μmであり、特に好ましくは5〜30μmである。 かかる平均径が小さすぎると、強化繊維の繊維間に粒子が潜り込み、プリプレグ積層体の層間部分に局在化せず、粒子の存在効果が十分に得られず、耐衝撃性が低くなる場合がある。

    ここで、平均径の測定法を、以下に説明する。

    粒子の平均径(平均粒径)については、例えば、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡にて粒子を1000倍以上に拡大し写真撮影し、無作為に粒子を選び、その粒子の外接する円の直径を粒径とし、その粒径の平均値(n=50)として求めることができる。 また、導電性物質で被覆されてなる導電性粒子の[核の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比を求める際は、まず導電性粒子の核の平均粒径を前記手法にて測定する、あるいは導電性粒子の平均径(平均粒径)を前記手法にて測定する。 その後、導電性物質で被覆されてなる導電性粒子の断面を走査型顕微鏡にて1万倍に拡大し写真撮影し、導電性層の厚さを測定(n=10)し、その平均値を計算する。 かかる測定は、上記無作為に選んだ導電性粒子(n=50)について実施する。 導電性粒子の核の平均粒径と導電性層の厚さの平均値の2倍を足し合わせることで導電性粒子の平均径(平均粒径)とする、あるいは導電性粒子の平均径(平均粒径)と導電性層の厚さの平均値の2倍を引くことで導電性粒子の核の平均径(平均粒径)とする。 そして、導電性粒子の核の平均径(平均粒径)と導電性粒子の平均径(平均粒径)を用いて、[核の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比を計算することができる

    本発明によるプリプレグは、その炭素繊維重量分率が好ましくは40〜90%であり、より好ましくは50〜80%である。 炭素繊維重量分率が低すぎると、得られる複合材料の重量が過大となり、比強度および比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が損なわれることがあり、また、炭素繊維重量分率が高すぎると、樹脂の含浸不良が生じ、得られる複合材料がボイドの多いものとなり易く、その力学特性が大きく低下することがある。

    本発明のプリプレグは、 [C]熱可塑性樹脂の粒子および [D]導電性の粒子はいずれもプリプレグの表面部分に局在しているものである 。 言い換えれば、前記[C]、 および [D] の粒子に富む層、すなわち、その断面を観察したときに、前記[C]、 および [D] の粒子が局在している状態が明瞭に確認しうる層(以下、層間形成層と記すことがある。)が、プリプレグの表面部分に形成されているものといえる 。 これにより、プリプレグを積層してマトリックス樹脂を硬化させて炭素繊維強化複合材料とした場合に、炭素繊維層の間に前記[C]、 および [D] の粒子が局在した層間が形成され、それにより、炭素繊維層間の靱性が高められると共に、層間形成層に含まれる前記[D] の粒子が炭素繊維層間に導電パスを形成することが出来るので、得られる炭素繊維強化複合材料に高度の耐衝撃性と導電性とが発現されるようになる。

    図1は本発明の代表的なプリプレグの断面図の一例である。 図1を用いて、さらに具体的に説明する。

    図1に示す本発明のプリプレグは、炭素繊維5と熱硬化性樹脂6から構成される2つの炭素繊維層1との間に、熱硬化性樹脂6、熱可塑性樹脂の粒子3および導電性の粒子4を含む層間形成層2を有している。 層間形成層2の形成により、炭素繊維層間の靭性が高められると共に、層間形成層2に含まれる導電性の粒子4が炭素繊維層間に導電パスを形成することが出来るので、得られる炭素繊維強化複合材料に高度の耐衝撃性と導電性とが発現される。

    このような観点から、前記の層間形成層は、プリプレグの厚さ100%に対して、プリプレグの少なくとも片側表面か 20% 好ましくは10%の深さの範囲に存在している また、前記の層間形成層は、炭素繊維強化複合材料製造時の利便性向上の観点から、プリプレグの表裏両面に存在することが好ましい。

    前記[C]、 および [D] の粒子は、それぞれの全量に対して90〜100重量%、好ましくは95〜100重量%が、前記層間形成層に局在している

    前記の層間形成層のプリプレグに対する厚さおよび、該層間形成層に含まれる前記[C]、 および [D] の粒子の存在率は、例えば、下記の方法で評価することができる。

    層間形成層のプリプレグに対する厚さは、複数枚積層したプリプレグを2枚の表面の平滑なポリ四フッ化エチレン樹脂板の間に挟持して密着させ、7日間かけて徐々に硬化温度まで温度を上昇させてゲル化、硬化させて板状のプリプレグ硬化物を作製する。 この硬化したプリプレグを用いてその断面を拡大して写真を撮る。 この断面写真を用い、層間形成層のプリプレグに対する厚さを測定する。 具体的には、図1に示すような写真上で炭素繊維層1との間の層間形成層2の任意に選んだ少なくとも10カ所で測り、その平均を層間形成層の厚さとする。

    層間形成層に含まれる前記[C]、 および [D] の粒子の存在率は、プリプレグ単層を2枚の表面の平滑なポリ四フッ化エチレン樹脂板の間に挟持して密着させ、7日間かけて徐々に硬化温度まで温度を上昇させてゲル化、硬化させて板状のプリプレグ硬化物を作製する。 このプリプレグ硬化物の両面に、プリプレグ硬化物の表面から、厚さの20%深さ位置にプリプレグの表面と平行な線を2本引く。 次に、プリプレグの表面と上記線との間に存在する前記の粒子の合計面積と、プリプレグの厚みに渡って存在する粒子の合計面積を求め、プリプレグの厚さ100%に対して、プリプレグの表面から20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率を計算する。 ここで、前記の粒子の合計面積は、断面写真から粒子部分を刳り抜き、その重量から換算して求める。 樹脂中に分散する粒子の写真撮影後の判別が困難な場合は、粒子を染色する手段も採用できる。

    また、本発明において[C]熱可塑性樹脂の粒子、および[D]導電性の粒子の総量は、プリプレグに対して20重量%以下の範囲であることが好ましい。 前記[C]、および[D]の粒子の総量が、プリプレグに対して20重量%を超えると、ベース樹脂との混合が困難になる上、プリプレグのタックとドレープ性が低下することがある。 すなわち、ベース樹脂の特性を維持しつつ、耐衝撃性を付与するには、前記[C]、および[D]の粒子の総量は、プリプレグに対して20重量%以下とする 、より好ましくは15重量%以下である。 プリプレグのハンドリングを一層優れたものにするためには、10重量%以下であることがさらに好ましい。 前記[C]、および[D]の粒子の総量は、高い耐衝撃性と導電性を得るために、プリプレグに対し1重量%以上とし、好ましくは2重量%以上である。

    本発明において、[D]導電性の粒子の中には、[B]熱硬化性樹脂との接着性が低いものもあるが、これらに表面処理を施したものを用いれば、熱硬化性樹脂との強い接着を実現することができ、耐衝撃性のさらなる向上が可能となる。 かかる観点から、カップリング処理、酸化処理、オゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、およびブラスト処理からなる群から選ばれた少なくとも一種の処理を施したものを適用することが好ましい。 なかでも熱硬化性樹脂と化学結合、水素結合を形成しうるカップリング処理、酸化処理、プラズマ処理による表面処理を施したものは、熱硬化性樹脂との強い接着が実現できることからより好ましく用いられる。

    また、上記表面処理に当たっては、表面処理時間の短縮や[D]導電性の粒子の分散を助けるため、加熱および超音波を用いながら表面処理を行うことができる。 加熱温度は、高くとも200℃、好ましくは30〜120℃がよい。 すなわち温度が高すぎると臭気が強くなり環境が悪化したり、運転コストが高くなったりする場合がある。

    カップリング処理に用いるカップリング剤としては、シラン系、チタン系、アルミニウム系のものが用いられ、これらカップリング剤は、単独で使用しても併用してもよい。 カップリング剤が適当でないと、処理を施した粒子と熱硬化性樹脂との接着が不十分となるため、耐衝撃性が低下する場合がある。 このような問題を避けるためには、用いる熱硬化性樹脂と強い親和性をもつか、化学結合し、強い接着を実現できるカップリング剤を用いるのが良い。 熱硬化性樹脂との親和性を高めるためには、分子構造や極性が、用いる熱硬化性樹脂の分子構造や極性と近い置換基をもつカップリング剤を選択するのが良い。

    さらに確実に接着性を高めるためには、マトリックス樹脂である熱硬化性樹脂と化学結合を形成し得るカップリング剤を用いることが好ましい。 不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂の如くラジカル重合を行う樹脂がマトリックス樹脂である場合には、二重結合を有するビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクロイル基、シクロヘキセニル基などの置換基を有するカップリング剤、エポキシ樹脂がマトリックス樹脂である場合には、エポキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基あるいは一置換アミノ基を有するカップリング剤、フェノール樹脂がマトリックス樹脂である場合には、エポキシ基、フェノール性水酸基を有するカップリング剤、ウレタン樹脂がマトリックス樹脂である場合には、水酸基、アミノ基あるいは一置換アミノ基を有するカップリング剤、メラミン樹脂や尿素樹脂がマトリックス樹脂である場合には、アミド基、ウレイド基、アミノ基あるいは一置換アミノ基を有するカップリング剤、マレイミド樹脂がマトリックス樹脂である場合には、2重結合を有するカップリング剤の他にアミノ基あるいは一置換アミノ基を有するカップリング剤、シアネート樹脂がマトリックス樹脂である場合には、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、アミノ基あるいは一置換アミノ基を有するカップリング剤を好ましく用いることができる。

    カップリング処理としては、シランカップリング処理が各種官能基を有するカップリング剤を入手しやすいため好ましい。 シランカップリング剤の具体例としては、アミノシランは3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−( フェニルアミノ) プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等であり、エポキシシランは3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等であり、ビニルシランはビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等を挙げることができる。 特に分子内にエポキシ基、アミノ基あるいは一置換アミノ基を有するシランカップリング剤は、広範囲な樹脂に適用可能で、反応性も高いため、特に好ましく用いられる。

    本発明において、[D]導電性の粒子 (以下、被処理物と記すこともある) カップリング処理する場合、 粒子 100重量部に対して、カップリング剤を、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.1〜10重量部配合するのが良い。 カップリング剤の配合量が少なすぎると熱硬化性樹脂との接着性が十分発揮しない場合があり、逆に多すぎると硬化物の機械物性が低下する場合がある。

    本発明において、被処理物にカップリング剤を付着させ直接熱処理して、カップリング処理しても良いし、あらかじめ熱硬化性樹脂にカップリング剤、被処理物を加えておき、プリプレグを硬化させる際の熱処理によって、カップリング処理しても良い。

    酸化処理としては、被処理物の表面を酸化することができれば特に制限はないが、薬液酸化処理および電解酸化処理を用いることができる。 なかでも、薬液酸化処理が好ましく用いられる。

    薬液酸化処理とは、酸性水溶液中で酸化処理する方法である。 酸性水溶液としては、例えば、硫酸、発煙硫酸、硝酸、発煙硝酸、塩酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、シュウ酸、フッ酸、蟻酸、酪酸、酢酸、ホウ硫酸、クロロ硫酸、クロロ酢酸、スルホサリチル酸、スルホ酢酸、マレイン酸、無水クロム酸、次亜塩素酸、アクリル酸、スルホン酸、フルオロ硫酸、トリフルオロメタン硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸アンモニウム、蟻酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム等を含む水溶液を単独で使用しても併用してもよい。 酸化処理することで、水酸基やカルボキシル基等の官能基を被処理物上に化学生成させ、かかる官能基がマトリックス樹脂と化学結合および/あるいは水素結合することで強い接着が実現できる。 なかでも、強酸性を示す硫酸、硝酸、あるいはそれらの混酸が好ましく用いられる。

    酸性水溶液の濃度としては、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%以上がよい。 濃度が高いほど処理時間が短時間となったり、被処理物の凝集をほぐす効果がある。 酸性水溶液中に、オゾン、過酸化水素、二酸化鉛等の酸化剤を加えれば、より酸化力が増し好ましい。

    オゾンによる表面処理は、一般に加熱器を有するチャンバー内にオゾンを導入し、被処理物を加熱処理する方法が好ましく用いられる。 この場合、前記の粒子の表面が活性化された表面へと改質し、マトリックス樹脂との表面濡れ性が大きく向上し、強い接着が実現できる。 さらに、被処理物をオゾン雰囲気下に紫外線照射して光酸化処理する方法も好ましく用いられる。

    プラズマによる表面処理としては、チャンバー内に反応性ガスを導入し、減圧下でプラズマ処理を施す方法が好ましく用いられる。 反応性ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素、アンモニア、酸素、亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、シアン化臭素、シアン化水素、水素、水蒸気、空気、亜硫酸ガス、硫化水素等を単独で使用しても併用してもよい。 被処理物にプラズマ処理を施すことで、活性化された表面に改質され、マトリックス樹脂との表面濡れ性が大きく向上し、強い接着が実現できる。

    プラズマの放電周波数(交流)は、高周波、低周波、マイクロ波を用いることができ、また直流を用いることもできる。 処理装置としては、電極を真空装置内に設置する内部電極方式と真空装置の外側に設置する外部電極方式があるが、本発明ではどちらの方式でも使用することができる。 電極の形状は、平板状、棒状、シリンダー状などを目的に応じて組み合わせて使用することができるが、放電電極として金属棒の表面にガラスを被覆したもの、アース電極として金属、例えばステンレス製の板あるいはドラム状のものを、好ましくは0.5〜30cm、さらに好ましくは2〜10cmの電極間距離で用いると、放電に斑がなく、均一な処理ができるので好ましい。 電極は必要に応じて水などで冷却するのが好ましい。

    コロナ処理による表面処理としては、例えば特公昭48−5043号公報、特公昭47−51905号公報、特開昭47−28067号公報、特開昭49−83767号公報、特開昭51−41770号公報、特開昭51−131576号公報等に開示された方法を用いることができる。 被処理物にコロナ処理を施すことで、活性化された表面に改質され、マトリックス樹脂との表面濡れ性が大きく向上し、強い接着が実現できる。

    ブラスト処理による表面処理としては、湿式法と乾式法があり、水または圧縮空気流に混入させた細粒状の投射材を[D]導電性の粒子の表面に吹付けることで行われ 。 これにより、その表面に細かい凹凸を形成することで表面積が拡張され、マトリックス樹脂と被処理物との接着力を増加させることができる。 投射材の種類としては、例えば、ガラスビーズ、無水ケイ酸、アルミナ、ダイヤモンド、ベンガラ等が挙げられる。 また、投射材の粒径としては、100〜5000μm程度で用いられることが多い。 一般的には、投射材の種類、粒径、投射材の噴射圧を目的に応じて設定する事で、最適な表面粗さに表面処理することが可能である。

    本発明のプリプレグは、特開平1−26651号公報、特開昭63−170427号公報または特開昭63−170428号公報に開示されているような公知の方法を適用して製造することができる。

    具体的には、以下の3通りの方法が例示できる。

    第一の方法は、[B]熱硬化性樹脂を離型紙などの上にコーティングした樹脂フィルムを、シート状に引き揃えた[A]炭素繊維の両面あるいは片面に当て圧力を加えることにより、[B]熱硬化性樹脂を含浸させて一次プリプレグを作製し、下記(1) [B]熱硬化性樹脂に含んだ別の樹脂フィルムをその両側、または片面貼着する方法である。
    (1)[C]熱可塑性樹脂の粒子 、および[D]導電性の粒子。

    ここで、(1) [B]熱硬化性樹脂に含んだ別の樹脂フィルムを貼着することに代えて、(1) 前記一次プリプレグ上に散布または貼着することも可能である。

    第二の方法は、第の方法で作製した一次プリプレグに、[B]熱硬化性樹脂を離型紙などの上にコーティングした別の樹脂フィルムの表面に前記(1) 散布または貼り付けしたものを前記一次プリプレグの両面または片面に貼着する方法である。

    第三の方法は、前記(1) 含んだ[B]熱硬化性樹脂を離型紙などの上にコーティングした樹脂フィルムを、シート状に引き揃えた[A]炭素繊維の両面あるいは片面に当て圧力を加えることにより、前記(1) 含んだ[B]熱硬化性樹脂を含浸させてプリプレグを作製する方法である。

    本発明の炭素繊維強化複合材料は、上述した本発明のプリプレグを積層し、加圧・加熱して[B]熱硬化樹脂を硬化させて、製造することができる。 ここで加圧・加熱を付与する方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法および内圧成形法等が採用され、特にオートクレーブ成形法が好ましく用いられる。

    本発明の炭素繊維強化複合材料は、強度、剛性、耐衝撃性および導電性等に優れていることから航空宇宙用途、一般産業用途等に広く用いられる。 より具体的には、航空宇宙用途では、主翼、尾翼およびフロアビーム等の航空機一次構造部材用途、フラップ、エルロン、カウル、フェアリングおよび内装材等の航空機二次構造部材用途、ロケットモーターケースおよび人工衛星構造材用途等に好ましく用いられる。 このような航空宇宙用途の中でも、特に耐衝撃性および耐雷性が必要な航空機一次構造材用途、特に胴体スキン、主翼スキン、および尾翼スキンにおいて、本発明による炭素繊維強化複合材料が特に好ましく用いられる。 また、一般産業用途では、自動車、船舶および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車の羽根、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、補強筋、ICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途および補修補強材料等の土木・建築材料用途等に好ましく用いられる。 これらの中でも、自動車外板、船舶外板、鉄道外板、風車の羽根、および、ICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)において、本発明による炭素繊維強化複合材料が特に好ましく用いられる。

    以下、実施例により、本発明について、さらに具体的に説明する。 各実施例のプリプレグを得るために、下記の原料を用いた。

    <炭素繊維>
    ・“トレカ(登録商標)”T800S−24K−10E(繊維数24,000本、引張強度5.9GPa、引張弾性率290GPa、引張伸度2.0%の炭素繊維、東レ(株)製)
    ・“トレカ(登録商標)”T700S−24K−50C(繊維数24,000本、引張強度4.9GPa、引張弾性率230GPa、引張伸度2.1%の炭素繊維、東レ(株)製)。

    <熱硬化性樹脂>
    ・ビスフェノールA型エポキシ樹脂、“エピコート(登録商標)”825(ジャパンエポキシレジン(株)製)
    ・テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ELM434(住友化学(株)製)
    ・末端に水酸基を有するポリエーテルスルホン“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(住友化学(株)製)
    ・4,4'−ジアミノジフェニルスルホン(三井化学ファイン(株)製)。

    <熱可塑性樹脂粒子>
    ・ナイロン12粒子SP−10(東レ(株)製、形状:真球)
    ・下記の製造方法で得られたエポキシ変性ナイロン粒子A
    透明ポリアミド(商品名“グリルアミド(登録商標)”−TR55、エムザベルケ社製)90重量部、エポキシ樹脂(商品名“エピコート(登録商標)”828、油化シェル(株)社製)7.5重量部および硬化剤(商品名“トーマイド(登録商標)”#296、富士化成工業(株)社製)2.5重量部を、クロロホルム300重量部とメタノール100重量部の混合溶媒中に添加して均一溶液を得た。 次に、得られた均一溶液を塗装用のスプレーガンを用いて霧状にして、良く撹拌して3000重量部のn−ヘキサンの液面に向かって吹き付けて溶質を析出させた。 析出した固体を濾別し、n−ヘキサンで良く洗浄した後に、100℃の温度で24時間の真空乾燥を行い、真球状のエポキシ変性ナイロン粒子Aを得た。

    エポキシ変性ナイロン粒子Aをプレス成形し樹脂板としたのち、ASTM D 5045−96に基づき、コンパクトテンション法によるG 1c値を測定した所、4420J/m であった。

    <導電性粒子>
    ・ジビニルベンゼンポリマー粒子にニッケルをメッキし、さらにその上に金をメッキした粒子“ミクロパール(登録商標)”AU215(積水化学(株)製、形状:真球、比重:1.8g/cm 、導電性層の厚さ:110nm、[核の体積]/[導電性層の体積]:22.8)。

    ・ジビニルベンゼンポリマー粒子にニッケルをメッキし、さらにその上に金をメッキした粒子“ミクロパール(登録商標)”AU225(積水化学(株)製、形状:真球、比重:2.4g/cm 、導電性層の厚さ:200nm、[核の体積]/[導電性層の体積]:20.2)。

    ・ガラス状カーボン粒子“ベルパール(登録商標)”C−2000(エア・ウォーター(株)製、形状:真球、比重:1.5g/cm )。

    ・下記の製造方法で得られた導電性粒子B(形状:真球、比重:1.3g/cm
    酢酸第1鉄(アルドリッチ社製)0.01gと酢酸コバルト4水和物(ナカライテスク社製)0.21gとをエタノール(ナカライテスク社製)40mLに加え、超音波洗浄機で10分間懸濁した。 この懸濁液に、結晶性チタノシリケート粉末(エヌイーケムキャット社製“チタノシリケート(登録商標)”)(TS−1)2.0gを加え、超音波洗浄機で10分間処理し、60℃の恒温下でメタノールを除去することにより、TS−1の結晶表面に上記酢酸金属塩を担持した固体触媒を得た。

    内径32mmの石英管中央部の石英ボート上に、上記で調製した固体触媒1.0gをとり、アルゴンガスを600cc/分で供給した。 石英管を電気炉中に設置して、中心温度を800℃の温度に加熱した(昇温時間30分)。 温度が800℃になったところで、高純度アセチレンガス(高圧ガス工業(株)製)を5cc/分で30分間供給した後、アセチレンガスの供給をやめ、温度を室温まで冷却し、中空カーボンナノファイバーを含有する組成物を取り出した。 得られた中空カーボンナノファイバーを含有する組成物0.4gを電気炉に入れ大気雰囲気で400℃(昇温時間40分)に加熱した。 400℃の温度で60分保持した後、室温まで冷却した。 さらに、この中空カーボンナノファイバーを含有する組成物を濃度2.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液200mL中に投入後、80℃の温度に保持しながら5時間撹拌した。 その後、孔径10μmのメンブレンフィルターで吸引濾過し、固液分離した。 得られた固形物を蒸留水1Lで洗浄後、濃度5.1mol/Lの硫酸50mL中に投入し、80℃の温度に保持しながら2時間撹拌した。 その後、濾紙(東洋濾紙(株)製)、フィルターペーパー2号、125mmを用いて固形物を分離した。 濾紙上の固形物を、蒸留水500mLで洗浄後、60℃の温度で乾燥して中空カーボンナノファイバーを回収率90%で得た。

    エタノール100ml中に、上記で得られた中空カーボンファイバー5gおよび上記熱可塑性樹脂粒子の項で得られたエポキシ変性ナイロン粒子A23g入れ、1時間撹拌を行ない懸濁液を得た。 得られた懸濁液を、減圧下濃縮した。 引き続き、アルゴン雰囲気下200℃の温度で加熱し、硬化させることにより、導電性粒子Bを25gを得た。 この導電性粒子Bの断面を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、導電性層が300nmの厚さで被覆されていた。 [核の体積]/[導電性層の体積]は7.0であった。

    ・下記の製造方法で得られた導電性粒子C
    スパッタリング装置CFS−4ES−231(芝浦メカトロニクス(株)製)にエポキシ変成ナイロン粒子Aを10g基板に乗せ、ターゲットが銅、ガス成分がアルゴン、ガス圧が2.0×10 −1 Pa、基板の温度が80℃、電力が500Wの条件にて行い、導電性層の厚さが、110nmの導電性粒子Cを作製した。 導電性粒子の形状は真球、比重は、1.4g/cm 、[核の体積]/[導電性層の体積]は18.6であった。

    ・下記の製造方法で得られた導電性粒子D
    スパッタリング装置CFS−4ES−231(芝浦メカトロニクス(株)製)にエポキシ変成ナイロン粒子Aを10g基板に乗せ、ターゲットがチタン、ガス成分がアルゴン、ガス圧が3.0×10 −1 Pa、基板の温度が80℃、電力が500Wの条件にて行い、導電性層の厚さが、130nmの導電性粒子Dを作製した。 導電性粒子の形状は真球、比重は、1.3g/cm 、[核の体積]/[導電性層の体積]は15.7であった。

    ・下記の製造方法で得られた導電性粒子E
    1000mlの無電解銅メッキ液MK−430(室町ケミカル(株)製)にエポキシ変性ナイロン粒子Aを100g添加し、次いで50℃で45分間メッキ処理を行い、導電性粒子Eを作製した。 導電性粒子Eの形状は真球、比重は1.4g/cm 、導電性層の厚さは120nm、[核の体積]/[導電性層の体積]は17.0であった。

    ・下記の製造方法で得られた導電性粒子F
    1000mlの無電解ニッケルメッキ液NLT−PLA(日鉱メタルプレーティング(株)製)にエポキシ変性ナイロン粒子Aを100g添加し、次いで50℃で60分間メッキ処理を行い、導電性粒子Fを作製した。 導電性粒子Fの形状は真球、比重は1.4g/cm 、導電性層の厚さは180nm、[核の体積]/[導電性層の体積]は11.2であった。

    ・下記の製造方法で得られた導電性粒子G
    透明ポリアミド(商品名“グリルアミド(登録商標)”−TR55、エムザベルケ社製)60重量部、エポキシ樹脂(商品名“エピコート(登録商標)”828、油化シェル(株)社製)30重量部および硬化剤(商品名“トーマイド(登録商標)”#296、富士化成工業(株)社製)10重量部を、クロロホルム300重量部とメタノール100重量部の混合溶媒中に添加して均一溶液を得た。 次に、得られた均一溶液を塗装用のスプレーガンを用いて霧状にして、良く撹拌して3000重量部のn−ヘキサンの液面に向かって吹き付けて溶質を析出させた。 析出した固体を濾別し、n−ヘキサンで良く洗浄した後に、100℃の温度で24時間の真空乾燥を行い、真球状のエポキシ変性ナイロン粒子Hを得た。

    1000mlの無電解銅メッキ液MK−430(室町ケミカル(株)製)にエポキシ変性ナイロン粒子Hを100g添加し、次いで50℃で45分間メッキ処理を行い、導電性粒子Gを作製した。 導電性粒子Gの形状は真球、比重は2.2g/cm 、導電性層の厚さは320nm、[核の体積]/[導電性層の体積]は6.2であった。

    エポキシ変性ナイロン粒子Hをプレス成形し樹脂板としたのち、ASTM D 5045−96に基づき、コンパクトテンション法によるG 1c値を測定した所、1210J/m であった。

    ・下記の製造方法で得られた“ミクロパール(登録商標)”AU215の表面処理品I
    “ミクロパール(登録商標)”AU215 100重量部に、3−(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン 2重量部をミキサーで攪拌しながら噴霧し、次いで100℃で12時間熱処理し、“ミクロパール(登録商標)”AU215の表面処理品Iを得た。

    ・下記の製造方法で得られた“ベルパール(登録商標)”C−2000の表面処理品J
    150mlの98重量%硫酸溶液および50mlの60重量%硝酸溶液に“ベルパール(登録商標)”C−2000 100g添加し、次いで120℃で20分間攪拌し、フィルターで分離した後、水で充分洗浄し、“ベルパール(登録商標)”C−2000の表面処理品Jを得た

    また、[C]熱可塑性樹脂の粒子および [D]導電性の粒子の平均径、プリプレグの厚さ20%の深さの範囲に存在する前記[C]、 および [D] の粒子の存在率、繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度および導電性の測定は、次のような条件で行った。 特に断りのない限り、温度23℃、相対湿度50%の環境で測定を行った。

    (1)[C]、 および [D] 粒子の平均径および導電性物質で被覆されてなる導電性粒子の[核の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比の測定 粒子の平均粒径については、例えば、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡にて粒子を1000倍以上に拡大し写真撮影し、無作為に粒子を選び、その粒子の外接する円の直径を粒径とし、その粒径の平均値(n=50)として求めた。 また、導電性物質で被覆されてなる導電性粒子の[核の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比を求める際は、まず導電性粒子の核の平均径(平均粒径)を前記手法にて測定し、その後、導電性物質で被覆されてなる導電性粒子の断面を走査型顕微鏡にて1万倍に拡大し写真撮影し、導電性層の厚さを測定(n=10)し、その平均値を計算した。 かかる測定は、上記無作為に選んだ導電性粒子(n=50)について実施した。 導電性粒子の核の平均粒径と導電性層の厚さの平均値の2倍を足し合わせることで導電性粒子の平均径(平均粒径)とした。 そして、導電性粒子の核の平均径(平均粒径)と導電性粒子の平均径(平均粒径)を用いて、[核の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比を計算した。 なお、粒子が非球状の場合は、核の外接球を仮定し、その上に上記方法にて測定した導電性層が被覆された球を仮定して計算した計算値を体積比に用いた。

    熱可塑性樹脂粒子と導電性粒子の各粒子の平均粒径測定結果は、下記のとおりであった。

    <熱可塑性樹脂粒子>
    ・ナイロン12粒子SP−10(東レ(株)製)・・・10.2μm
    ・エポキシ変性ナイロン粒子A・・・12.5μm。

    <導電性粒子>
    ・“ミクロパール”AU215・・・15.5μm
    ・“ミクロパール”AU225・・・25.0μm
    ・“ベルパール”C−2000・・・15.3μm
    ・導電性粒子B・・・13.8μm
    ・導電性粒子C・・・12.7μm
    ・導電性粒子D・・・12.9μm
    ・導電性粒子E・・・12.7μm
    ・導電性粒子F・・・13.0μm
    ・導電性粒子G・・・13.1μm
    ・“ミクロパール”AU215の表面処理品I・・・15.5μm
    ・“ベルパール”C−2000の表面処理品J・・・15.3μm

    )プリプレグの厚さ20%の深さの範囲に存在する[C]、 および [D] の粒子の存在率 プリプレグを、2枚の表面の平滑なポリ四フッ化エチレン樹脂板間に挟持して密着させ、7日間かけて徐々に150℃迄温度を上昇させてゲル化、硬化させて板状の樹脂硬化物を作製した。 硬化後、密着面と垂直な方向から切断し、その断面を研磨後、光学顕微鏡で200倍以上に拡大しプリプレグの上下面が視野内に納まるようにして写真撮影した。 同様な操作により、断面写真の横方向の5ヵ所でポリ四フッ化エチレン樹脂板間の間隔を測定し、その平均値(n=10)をプリプレグの厚さとした。

    このプリプレグ硬化物の写真の両面側に、プリプレグ硬化物の表面から、厚さの20%深さ位置にプリプレグの表面と平行な線を2本引き、次に、プリプレグの表面と上記線との間に存在する前記の粒子の合計面積と、プリプレグの厚みに渡って存在する粒子の合計面積を求め、プリプレグの厚さ100%に対して、プリプレグの表面から20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率を計算した。 ここで、前記の粒子の合計面積は、断面写真から粒子部分を刳り抜き、その重量から換算して求めた。 樹脂中に分散する粒子の写真撮影後の判別が困難な場合は、適宜、粒子を染色し写真撮影を行った。

    )導電性の粒子の体積固有抵抗測定 ダイアインスツルメンツ(株)製MCP−PD51型粉体抵抗測定システムを用いて、4探針電極を有する円筒型セルにサンプルをセットし、試料に60MPaの圧力を加えた状態で試料の厚さと抵抗値を測定し、その値から体積固有抵抗を計算した。

    なお、導電性の粒子の体積固有抵抗測定結果は、下記のとおりであった。

    <導電性粒子>
    ・“ミクロパール”AU215・・・1.4×10 −3 Ωcm
    ・“ミクロパール”AU225・・・1.6×10 −3 Ωcm
    ・“ベルパール”C−2000・・・2.0×10 −2 Ωcm
    ・導電性粒子B・・・5.0×10 −2 Ωcm
    ・導電性粒子C・・・3.5×10 −2 Ωcm
    ・導電性粒子D・・・5.2×10 −2 Ωcm
    ・導電性粒子E・・・4.5×10 −4 Ωcm
    ・導電性粒子F・・・4.0×10 −2 Ωcm
    ・導電性粒子G・・・6.1×10 −4 Ωcm
    ・“ミクロパール”AU215表面処理品I・・・1.4×10 −3 Ωcm
    ・“ベルパール”C−2000表面処理品J・・・2.0×10 −2 Ωcm

    )繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度測定 一方向プリプレグを、[+45°/0°/−45°/90°] 3s構成で、擬似等方的に24プライ積層し、オートクレーブにて、180℃の温度で2時間、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で成形して25個の積層体を作製した。 これらの各積層体から、縦150mm×横100mmのサンプルを切り出し、SACMA SRM 2R−94に従い、サンプルの中心部に6.7J/mmの落錘衝撃を与え、衝撃後圧縮強度を求めた。

    )繊維強化複合材料の導電性測定 一方向プリプレグを、それぞれ[+45°/0°/−45°/90°] 3s構成で、擬似等方的に24プライ積層し、オートクレーブにて、180℃の温度で2時間、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で成形して25個の積層体を作製した。 これらの各積層体から、縦50mm×横50mmのサンプルを切り出し、両面に導電性ペースト“ドータイト”(登録商標)D−550(藤倉化成(株)製)を塗布したサンプルを作製した。 これらのサンプルを、アドバンテスト(株)製R6581デジタルマルチメーターを用いて、四端子法で積層方向の抵抗を測定し、体積固有抵抗を求めた。

    (実施例1)
    混練装置で、50重量部の“エピコート(登録商標)”825と50重量部のELM434に、10重量部のPES5003Pを配合して溶解した後、19.98重量部のエポキシ変性ナイロン粒子Aと0.02重量部の“ミクロパール(登録商標)”AU215を混練し、さらに硬化剤である4,4'−ジアミノジフェニルスルホンを40重量部混練して、熱硬化性樹脂組成物を調製した。

    調製した熱硬化性樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して52g/m の樹脂フィルムを、2枚作製した。 次に、シート状に一方向に配列させた炭素繊維(T800S−24K−10E)に、上記で作製した樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱加圧により樹脂を含浸させ、炭素繊維の目付が190g/m で、マトリックス樹脂の重量分率が35.4%の一方向プリプレグを作製した。

    作製した一方向プリプレグを用いて、プリプレグの厚み20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率、繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度および導電性を測定した。 得られた結果を表1に示す。

    (実施例2〜 22 、比較例1〜7)
    炭素繊維、熱可塑性樹脂粒子または導電性粒子の種類や配合量を表1〜4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。 作製した一方向プリプレグを用いて、プリプレグの厚み20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率、繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度および導電性を測定した。

    (実施例23
    混練装置で、50重量部の“エピコート(登録商標)”825と50重量部のELM434に、10重量部のPES5003Pを配合して溶解した後、さらに硬化剤である4,4'−ジアミノジフェニルスルホンを40重量部混練して、熱硬化性樹脂組成物を調製した。 このマトリックス樹脂を一次樹脂とした。

    混練装置で、50重量部の“エピコート(登録商標)”825と50重量部のELM434に、10重量部のPES5003Pを配合して溶解した後、62.5重量部のエポキシ変性ナイロン粒子Aと1.3重量部の“ミクロパール(登録商標)”AU215を混練し、さらに硬化剤である4,4'−ジアミノジフェニルスルホンを40重量部混練して、熱硬化性樹脂組成物を調製した。 このマトリックス樹脂を二次樹脂とした。

    調製した一次樹脂を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して31.5g/m の樹脂フィルムを、2枚作製した。 次に、シート状に一方向に配列させた炭素繊維(T800S−24K−10E)に、上記で作製した樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱加圧により樹脂を含浸させ、炭素繊維の目付が190g/m で、マトリックス樹脂の重量分率が24.9%の一次プリプレグを作製した。

    次に、調製した二次樹脂を、ナイフコーターを用いた離型紙上に塗布して20.5g/m の樹脂フィルムを、2枚作製した。 この二次樹脂フィルムを向かい合わせにした間に、さきほどの一次プリプレグを通し、一次プリプレグと同じように加熱加圧により樹脂を含浸させ、二次プリプレグを作製した。 このプリプレグは炭素繊維目付190g/m 、マトリックス樹脂の重量分率が35.4%の二次プリプレグを作製した。 この二次プリプレグのマトリックス樹脂組成を表4に示す。

    作製した二次プリプレグを用いて、プリプレグの厚み20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率、繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度および導電性を測定した。 得られた結果を表4に示す

    得られた結果を表1〜 にまとめて示す。

    実施例1〜6と比較例1〜4との対比により、本発明の炭素繊維強化複合材料は、特異的に高い衝撃後圧縮強度と低い体積固有抵抗を実現し、高度な耐衝撃性と導電性を両立していることが分かる。 また、これらの結果と本発明の特許の請求の範囲の関係を、図2に纏めた。 図2では、[熱可塑性樹脂粒子の配合量(重量部)]/[導電性粒子の配合量(重量部)]で示される重量比を横軸にとり、「○」は左縦軸に示される衝撃後圧縮強度の値を、また、「▲」は右縦軸に示される体積固有抵抗の値を表す。 通常、[熱可塑性樹脂粒子の配合量(重量部)]/[導電性粒子の配合量(重量部)]で示される重量比が大きいと、耐衝撃性は優れるが体積固有抵抗も大きくなり、また、[熱可塑性樹脂粒子の配合量(重量部)]/[導電性粒子の配合量(重量部)]で示される重量比が小さいと、体積固有抵抗は小さいものの、耐衝撃性に劣る。 本発明において請求項1の範囲は、低い体積固有抵抗と高い衝撃後圧縮強度を達成することができ、導電性と耐衝撃性が両立できる範囲であることが分かる。

    これらの結果は、実施例7〜 23と比較例5〜 との対比によっても同じことが言える。 さらに、実施例3と実施例7との比較により、引張弾性率が290GPaの炭素繊維であるT800S−24K−10Eを用いた実施例3の方が、引張弾性率が230GPaの炭素繊維であるT700S−24K−50Cを用いた実施例7に比べ、優れていることが分かる。 また、実施例14〜 23に示すように、本発明では、様々な熱可塑性樹脂の粒子と導電性の粒子との組み合わせを用いることができる。

    実施例3、14と比較して、実施例20、21に示すような導電性粒子の表面処理品は、熱硬化性樹脂との強い接着を実現することができ、より高い衝撃後圧縮強度を達成していることが分かる

    二次プリプレグを用いた実施例23では、実施例3と比較して20%深さに存在する粒子の存在率が高く、より高い導電性と耐衝撃性が得られることが分かる。

    本発明のプリプレグおよび炭素繊維強化複合材料は、優れた耐衝撃性と導電性とを兼ね備えおり、航空機構造部材、風車の羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途等に広く展開でき、有用である。

    1:炭素繊維層(層内)
    2:層間形成層(層間)
    3:熱可塑性樹脂の粒子4:導電性の粒子5:炭素繊維6:熱硬化性樹脂

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