複合ガスバリア積層体及びその製造方法、並びに複合電極

申请号 JP2014538467 申请日 2013-09-20 公开(公告)号 JP6086123B2 公开(公告)日 2017-03-01
申请人 日本ゼオン株式会社; 发明人 井上 弘康; 石黒 淳; 小出 洋平;
摘要
权利要求

脂環式ポリオレフィン樹脂のフィルム(a)、及び、前記フィルム(a)の少なくとも一面に形成された無機層(a)を備えるガスバリア積層体(A)と、 脂環式ポリオレフィン樹脂のフィルム(b)、及び、前記フィルム(b)の少なくとも一面に形成された無機層(b)を備えるガスバリア積層体(B)とが、 前記無機層(a)と前記無機層(b)とが対向するように、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層を介して接着され、 前記スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂が、アルコキシシランで変性された、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体又はその素化物を含有する、複合ガスバリア積層体。前記芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素化物が、前記芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化したものである、請求項1記載の複合ガスバリア積層体。前記熱可塑性エラストマー樹脂の層の厚みが、10μm〜150μmであり、 前記熱可塑性エラストマー樹脂が、アルコキシシランで変性されたスチレン−共役ジエンブロック共重合体水素化物を含む、請求項1又は2記載の複合ガスバリア積層体。前記無機層(a)及び前記無機層(b)が、化学気相成長法によって形成された、少なくともSiを含有する層であり、 前記無機層(a)及び前記無機層(b)の厚みが、300nm〜2000nmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合ガスバリア積層体。前記無機層(a)と前記無機層(b)とが、同一の材料で形成され、且つ、同一の厚みを有し、 前記フィルム(a)と前記フィルム(b)とが、同一の材料で形成され、且つ、同一の厚みを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合ガスバリア積層体。前記請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合ガスバリア積層体と、前記複合ガスバリア積層体の一方の外側面に物理気相成長法によって形成された透明電極とを備える、有機EL素子用の複合電極。脂環式ポリオレフィン樹脂のフィルム(a)の少なくとも一面に、無機層(a)を形成して、ガスバリア積層体(A)を得る工程と、 脂環式ポリオレフィン樹脂のフィルム(b)の少なくとも一面に、無機層(b)を形成して、ガスバリア積層体(B)を得る工程と、 前記ガスバリア積層体(A)、前記ガスバリア積層体(B)、及び、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂のフィルム(c)を、前記フィルム(a)、前記無機層(a)、前記フィルム(c)、前記無機層(b)及び前記フィルム(b)がこの順になるように重ね、加熱圧着させる工程と を含み、 前記スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂が、アルコキシシランで変性された、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体又はその水素化物を含有する、複合ガスバリア積層体の製造方法。前記芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素化物が、前記芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化したものである、請求項7記載の複合ガスバリア積層体の製造方法。

说明书全文

本発明は、複合ガスバリア積層体及びその製造方法、並びにそれを備えた複合電極に関する。

太陽電池、エレクトロルミネッセンス素子(以下、適宜「EL素子」ということがある。)等の光電変換素子には、素子内部への蒸気及び酸素の浸入を防止するために、ガスバリア性を有する部材が設けられることがある。中でも有機太陽電池及び有機EL素子等の有機光電変換素子については、素子内部の有機材料が水蒸気及び酸素により劣化すると性能が大きく低下することがあるので、ガスバリア性に優れた部材が特に求められる。

このような部材として、例えば、無機層を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。一般に無機層は、水蒸気及び酸素を遮断する能に優れるので、無機層によりガスバリア性を得ることができる。また、無機層の厚みが厚いほど高いガスバリア性が期待できるため、例えば特許文献2には珪素酸化物を形成したフィルムを貼り合わせたハイバリアプラスチックが提案され、また、特許文献3には、複数の無機層を備えたガスバリア積層体が提案されている。

特開2005−327687号公報

特開平03−063127号公報

特開2009−190186号公報

しかしながら、無機層を備えたガスバリア積層体は、無機層の厚みが厚いとカール(反り)を生じる。これは、ガスバリア積層体が有する無機層と無機層以外の層との熱膨張係数の相違によるものと考えられる。すなわち、ガスバリア積層体の製造時又は使用時において温度の変化が生じると、無機層と無機層以外の層との間に膨張又は収縮の程度の差が生じ、この差によってガスバリア積層体が反ると考えられる。これについて、具体例を挙げて説明する。例えば、樹脂フィルム上に無機層を備えるガスバリア積層体においては、通常、樹脂フィルム上に無機層を形成する工程が高温環境において行われ、その後、得られるガスバリア積層体は冷却される。この際、通常は無機層と樹脂フィルムとは熱膨張係数が相違するので、冷却により樹脂フィルムが無機層よりも大きく収縮する。そのため、前記のガスバリア積層体は、無機層を外側、樹脂フィルムを内側にしてカールを生じることが多い。特に1×10−2g/m2・day以下の水蒸気バリア性を実現するためには十分な厚さの無機層が望ましく、結果として大きなカールが生じる。ガスバリア積層体に大きなカールを生じると、ガスバリア積層体の取り扱い性が低下して、そのガスバリア積層体を光電変換素子に取り付ける操作が難しくなる。そこで、カールを改善するガスバリア積層体構成の開発が求められていた。

また、特許文献2のような構成によりカールは改善できるものの、接着剤から発生するガス成分の増加、エネルギー硬化型の接着剤使用による可撓性の喪失が課題になる。さらに、ガスバリア積層体には、高温環境においてガスバリア性が低下したり、容易にクラックが生じてガスバリア性が損なわれたりすることを防止することが望まれる。これは、例えば使用時、保存時、運搬時においてガスバリア積層体のガスバリア性が低下することを抑制して、ガスバリア性を良好に維持するためである。

本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、ガスバリア性を良好に維持でき、柔軟で可撓性に優れたカールの小さい複合ガスバリア積層体及びその製造方法、並びにそれを備えた複合電極を提供することを目的とする。

本発明者は、上述の課題を解決するべく鋭意検討した結果、脂環式ポリオレフィン樹脂のフィルム及び無機層を備える2枚のガスバリア積層体を、無機層同士が対向するように、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層を介して接着することにより、ガスバリア性を良好に維持し易く、柔軟で可撓性に優れたカールの小さい複合ガスバリア積層体が実現できることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は以下の通りである。

〔1〕 脂環式ポリオレフィン樹脂のフィルム(a)、及び、前記フィルム(a)の少なくとも一面に形成された無機層(a)を備えるガスバリア積層体(A)と、 脂環式ポリオレフィン樹脂のフィルム(b)、及び、前記フィルム(b)の少なくとも一面に形成された無機層(b)を備えるガスバリア積層体(B)とが、 前記無機層(a)と前記無機層(b)とが対向するように、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層を介して接着された、複合ガスバリア積層体。 〔2〕 前記熱可塑性エラストマー樹脂の厚みが、10μm〜150μmであり、 前記熱可塑性エラストマー樹脂が、スチレン−共役ジエンブロック共重合体水素化物を含む、〔1〕記載の複合ガスバリア積層体。 〔3〕 前記無機層(a)及び前記無機層(b)が、化学気相成長法によって形成された、少なくともSiを含有する層であり、 前記無機層(a)及び前記無機層(b)の厚みが、300nm〜2000nmである、〔1〕又は〔2〕に記載の複合ガスバリア積層体。 〔4〕 前記無機層(a)と前記無機層(b)とが、同一の材料で形成され、且つ、同一の厚みを有し、 前記フィルム(a)と前記フィルム(b)とが、同一の材料で形成され、且つ、同一の厚みを有する、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の複合ガスバリア積層体。 〔5〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の複合ガスバリア積層体と、前記複合ガスバリア積層体の一方の外側面に物理気相成長法によって形成された透明電極とを備える、有機EL素子用の複合電極。 〔6〕 脂環式ポリオレフィン樹脂のフィルム(a)の少なくとも一面に、無機層(a)を形成して、ガスバリア積層体(A)を得る工程と、 脂環式ポリオレフィン樹脂のフィルム(b)の少なくとも一面に、無機層(b)を形成して、ガスバリア積層体(B)を得る工程と、 前記ガスバリア積層体(A)、前記ガスバリア積層体(B)、及び、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂のフィルム(c)を、前記フィルム(a)、前記無機層(a)、前記フィルム(c)、前記無機層(b)及び前記フィルム(b)がこの順になるように重ね、加熱圧着させる工程と を含む、複合ガスバリア積層体の製造方法。

本発明によれば、ガスバリア性を良好に維持でき、柔軟で可撓性に優れた、カールの小さい複合ガスバリア積層体及びその製造方法、並びにそれを備えた複合電極を提供できる。

図1は、本発明の一実施形態に係る複合ガスバリア積層体をその主面に垂直な平面で切った断面を模式的に示す図である。

図2は、本発明の一実施形態に係る複合ガスバリア積層体の製造方法において、ガスバリア積層体(A)、ガスバリア積層体(B)及びスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂のフィルム(c)を加熱圧着させる工程を模式的に示す図である。

図3は、本発明の一実施形態に係る複合電極をその主面に垂直な平面で切った断面を模式的に示す図である。

以下、実施形態及び例示物等を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。

[1.複合ガスバリア積層体の概要] 図1は、本発明の一実施形態に係る複合ガスバリア積層体100をその主面に垂直な平面で切った断面を模式的に示す図である。図1に示すように、複合ガスバリア積層体100は、フィルム(a)11及び無機層(a)12を備えるガスバリア積層体(A)10と、フィルム(b)21及び無機層(b)22を備えるガスバリア積層体(B)20とが、無機層(a)12と無機層(b)22とが対向するようにスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層30を介して接着された積層体である。したがって、複合ガスバリア積層体100は、フィルム(a)11、無機層(a)12、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層30、無機層(b)22及びフィルム(b)を、この順に備える。

[2.ガスバリア積層体(A)] 図1に示すように、ガスバリア積層体(A)10は、フィルム(a)11と、フィルム(a)11の少なくとも一面11Dに形成された無機層(a)12とを備える。したがって、通常、フィルム(a)11と無機層(a)12とは、直接に接している。

[2.1.フィルム(a)] フィルム(a)は、脂環式ポリオレフィン樹脂で形成されている。ここで、脂環式ポリオレフィン樹脂とは、脂環式オレフィン重合体と、必要に応じてその他の任意の成分とを含有する樹脂である。脂環式ポリオレフェン樹脂は、水蒸気透過率が低く、且つ、ガスバリア積層体(A)に含まれる他の層を形成する工程(例えば、蒸着、スパッタリング等)におけるアウトガスの放出量が少ない。そのため、脂環式ポリオレフィン樹脂でフィルム(a)を形成することにより、複合ガスバリア積層体のガスバリア性を高めることができる。さらに、脂環式ポリオレフィン樹脂を溶融押し出しして製造したフィルムは、表面の平滑性が良好で、無機層のクラックの原因となる表面の凸が小さいため、結果として表面平滑性の悪いフィルムに比べて薄い無機層で水蒸気透過率を小さくすることができるため、生産性および可撓性に優れている。また、フィルム(a)は、通常、無機層(a)を支持する基材となり、ガスバリア積層体(A)の強度を維持する効果も奏する。

脂環式オレフィン重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環構造を有する非晶性の熱可塑性重合体である。脂環式オレフィン重合体中の脂環構造としては、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。脂環構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4個以上、好ましくは5個以上であり、また、通常30個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは15個以下である。脂環構造を構成する炭素原子数が前記範囲にあるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。

脂環式オレフィン重合体において、脂環構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、また、通常100重量%以下である。脂環式オレフィン重合体において脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、透明性および耐熱性の観点から好ましい。

脂環式オレフィン重合体としては、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。

ノルボルネン重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物等が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体水素化物及び開環共重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。

脂環式オレフィン重合体としては、これらの重合体のうち1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、フィルム(a)は、複数種類の脂環式オレフィン樹脂のそれぞれが層をなした構成であってもよい。

脂環式オレフィン樹脂に含まれる脂環式オレフィン重合体の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、その重量平均分子量(Mw)は、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、脂環式オレフィン重合体の前記の重量平均分子量は、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあることにより、フィルム(a)の機械的強度及び成型加工性などが高度にバランスされるため、好ましい。ここで、重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いて、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで、ポリイソプレン換算の値として測定しうる。また、重合体がシクロヘキサンに溶解しない場合には、溶媒としてトルエンを用いてもよい。さらに、溶媒がトルエンのときは、重量平均分子量はポリスチレン換算の値として測定しうる。

脂環式オレフィン樹脂が含有しうる任意の成分としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、強化剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどの添加剤を挙げることができる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、任意の成分の量は、脂環式オレフィン樹脂に含まれる重合体100重量部に対して、通常0〜50重量部、好ましくは0〜30重量部である。

脂環式オレフィン樹脂は、高い透明性を有するものに必ずしも限られない。ただし、複合ガスバリア積層体を、例えば表示装置、光源装置又は太陽電池において光を透過することが求められる部分に用いうる有用なものとするという観点から、脂環式オレフィン樹脂は、高い透明性を有するものが好ましい。例えば、脂環式オレフィン樹脂を厚み1mmの試験片として測定した全光線透過率が、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であり、また、通常100%以下であるものが好ましい。

フィルム(a)の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは250μm以下である。フィルム(a)の厚みは、接触式膜厚計により測定しうる。具体的には、TD方向に平行な線状において等間隔で厚みを10点測定し、その平均値を求め、これを厚みの測定値としうる。

フィルム(a)は、熱膨張率が、70ppm/K以下であることが好ましく、50ppm/K以下であることがより好ましく、40ppm/K以下であることが更に好ましい。かかる熱膨張率は、フィルム(a)を20mm×5mmの試料片とし、荷重5.0g、窒素100cc/分、昇温速度0.5℃/分の条件で、30℃から130℃にわたり昇温した際の試料片の長さの伸びを測定することにより測定しうる。 また、フィルム(a)は、湿度膨張率が、30ppm/%RH以下であることが好ましく、10ppm/%RH以下であることがより好ましく、1.0ppm/%RH以下であることが更に好ましい。かかる湿度膨張率は、フィルムを20mm×5mmの試料片とし、荷重5.0g、窒素100cc/分、温度25℃、速度5.0%RH/分の条件で、30%RHから80%RHにわたり湿度を上昇した際の試料片の長さの伸びを測定することにより測定しうる。 また、フィルム(a)のガラス転移温度は110℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがさらに好ましく、160℃以上であることが特に好ましい。高いガラス転移温度により、高温環境などの熱履歴前後におけるフィルム(a)の熱収縮を抑えることができる。 かかる好ましい熱膨張率、湿度膨張率及びガラス転移温度を得ることにより、高温高湿の環境下におけるガスバリア性の低下が抑制された複合ガスバリア積層体を得ることができる。 また、フィルム(a)の熱膨張率の下限値は通常0.1ppm/K以上、フィルム(a)の湿度膨張率の下限値は通常0.001ppm/%RH以上、フィルム(a)のガラス転移温度の上限値は通常250℃以下である。

また、フィルム(a)の無機層(a)とは反対側の表面(図1では、面11U)には、凹凸構造を形成してもよい。凹凸構造を有することにより、フィルム(a)はブロッキングを生じにくくなる。そのため、例えば長尺のフィルム(a)を用いてロールトゥロール法により複合ガスバリア積層体を製造する場合に、フィルム(a)をロールから容易に引き出すことができるようになるので、製造を容易にすることができる。また、フィルム(a)の無機層(a)とは反対側の表面は、通常、複合ガスバリア積層体の最表面となる。そのため、フィルム(a)の無機層(a)とは反対側の表面に凹凸構造を形成すると、複合ガスバリア積層体の最表面が凹凸構造を有することになるので、複合ガスバリア積層体のブロッキングを抑制することも可能になる。

凹凸構造を形成した表面の算術平均粗さRa(JIS B601−2001)は、好ましくは0.02μm以上、より好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは3μm以上である。算術平均粗さRaを前記範囲の下限値以上にすることにより、凹凸構造を形成された表面の滑り性を良好にして、ブロッキングを安定して防止できる。また、前記算術平均粗さの上限値に特に制限は無いが、好ましくは50μm以下、より好ましくは25μm以下、特に好ましくは10μm以下である。

フィルム(a)の製造方法に特に制限は無く、例えば、溶融成形法、溶液流延法のいずれを用いてもよい。溶融成形法は、さらに詳細には、例えば、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの方法の中でも、機械強度、表面精度等に優れたフィルム(a)を得るために、押出成形法、インフレーション成形法又はプレス成形法が好ましく、中でも効率よく簡単にフィルム(a)を製造できる観点から、押出成形法が特に好ましい。

さらに、フィルム(a)の製造方法においては、フィルムを延伸する延伸工程などを行ってもよい。これにより、フィルム(a)として延伸フィルムを得ることができる。フィルム(a)として延伸フィルムを用いた場合には、フィルム(a)の熱膨張率を抑制することができ、高温高湿の環境下におけるガスバリア性能の劣化を更に低減することができる。かかる延伸フィルムは、例えば、上述した方法により脂環式オレフィン樹脂を原反フィルムに成形し、かかる原反フィルムを延伸することにより得ることができる。

原反フィルムの形状は、所望の延伸倍率により所望の寸法のフィルム(a)が得られるよう、適宜、設定しうる。好ましくは、長尺のフィルム状の形状とする。ここで「長尺」とは、幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬されうる程度の長さを有するものをいう。

延伸の態様は、好ましくは二軸延伸としうる。かかる二軸延伸は、原反フィルムを、その面に平行であって且つ互いに垂直な2つの方向に延伸することにより行ってもよい。ここで、「垂直な」方向とは、90°の度をなすことが好ましいが、加えて、±10°程度の誤差を含む場合をも含みうる。 通常、垂直な2つの方向は、それぞれ、長尺の原反フィルムのMD方向(原反フィルムの流れ方向、即ち長尺の原反フィルムの長さ方向)及びTD方向(MD方向に垂直な、原反フィルムの幅方向)とされるが、これに限られず、MD方向及びTD方向に対して斜めの、互いに垂直な2方向であってもよい。

二軸延伸の態様は、逐次二軸延伸であってもよく、同時二軸延伸であってもよい。ここで、逐次二軸延伸とは、2方向の延伸のそれぞれを別々の工程として行う延伸をいう。また、同時二軸延伸とは、2方向の延伸の工程の少なくとも一部を同時に行う延伸をいう。製造の効率の点からは同時二軸延伸が好ましいが、フィルム(a)の位相差の値をなるべく少ない値とすることが求められる場合など、2方向の延伸を独立して精密に制御したい場合には、かかる制御が容易という点から、逐次二軸延伸が好ましい場合もある。

二軸延伸における延伸倍率は、2方向それぞれにおいて、好ましくは1.05倍以上、より好ましくは1.5倍以上であり、好ましくは4.5倍以下、より好ましくは3.5倍以下である。また、2方向の倍率の比は、1:1〜2:1の範囲内であることが、高温高湿環境下での透湿度変化を最小とするため、及び複合ガスバリア積層体を透過する光を均質なものとするために、好ましい。

二軸延伸を行う際の温度は、原反フィルムを形成する脂環式ポリオレフィン樹脂のガラス転移温度Tgを基準に設定しうる。二軸延伸の際の温度範囲は、例えば、好ましくはTg以上であり、好ましくはTg+30℃以下、より好ましくはTg+20℃以下である。ここで、原反フィルムが複数種類の異なるガラス転移温度を有する脂環式オレフィン樹脂の層を有する場合は、それらの脂環式オレフィン樹脂のうち最も低いガラス転移温度を基準として、二軸延伸の際の温度範囲を設定しうる。

二軸延伸を行うのに用いる装置として、例えば、テンター延伸機、及びその他の、ガイドレールと当該ガイドレールに沿って移動する把持子を有する延伸機を好ましく挙げることができる。またその他に、縦一軸延伸機、バブル延伸機、ローラ延伸機等の任意延伸機を使用してもよい。

さらに、フィルム(a)の表面に凹凸構造を形成する場合、凹凸構造の形成方法に制限は無い。凹凸構造の形成方法としては、例えば、表面に凹凸構造を有する賦型ロールを用いてフィルム(a)を押圧することにより、フィルム(a)の表面に凹凸構造を転写するニップ成形法;表面に凹凸構造を有する離型フィルムでフィルム(a)を挟圧して、離型フィルムの凹凸構造をフィルム(a)に転写した後、フィルム(a)から離型フィルムを剥離する方法;フィルム(a)の表面に粒子を噴射してフィルム(a)の表面を切削する方法;フィルム(a)の表面に電子線硬化型樹脂を配置し硬化させることで凹凸構造を形成する方法;などが挙げられる。さらに、フィルム(a)の組成を調整することで凹凸構造を形成することも可能である。例えば、フィルム(a)を形成する脂環式ポリオレフィン樹脂に所定の粒径の粒子を含有させて凹凸構造を形成させる方法;フィルム(a)を形成する脂環式ポリオレフィン樹脂に含まれる成分の配合比を調整して凹凸構造を形成させる方法;などが挙げられる。

通常、フィルム(a)のブロッキングはフィルム(a)の表面に無機層(a)を形成するよりも前の時点で生じやすい。そのため、ブロッキングを防止する観点では、フィルム(a)の表面に凹凸構造を形成する工程は、フィルム(a)の表面に無機層(a)を形成する工程よりも前に行うことが好ましい。

[2.2.無機層(a)] 無機層(a)は、無機材料で形成された層であり、例えば水分及び酸素等の、外気中に存在する成分であって表示装置及び発光装置等の装置の内部の構成要素(例えば、有機EL素子の発光層等)を劣化させうる成分をバリアする能力を有する層である。この無機層(a)は、ガスバリア積層体(A)の表裏の一方の面から他方の面への、水分及び酸素等の成分の透過をバリアする効果を発揮する。

また、無機層(a)はフィルム(a)の内側に位置するので、外力による無機層(a)の傷付きは防止される。したがって、無機層(a)にはクラックが発生し難く、ガスバリア性が損なわれ難い。

さらに、一般に、脂環式ポリオレフィン樹脂は他の材料との親和性が低いことが多いところ、無機層(a)は脂環式ポリオレフィン樹脂とも熱可塑性エラストマーとも高い親和性を有しうる。そのため、無機層(a)が脂環式ポリオレフィン樹脂からなるフィルム(a)と熱可塑性エラストマーとの間に設けられることにより、フィルム(a)と熱可塑性エラストマーとの密着性を良好にできる。

無機層を形成しうる無機材料の好ましい例を挙げると、金属;珪素の酸化物、窒化物、窒化酸化物;アルミニウムの酸化物、窒化物、窒化酸化物;DLC(ダイヤモンドライクカーボン);及びこれらの2以上が混合した材料などが挙げられる。中でも、透明性の点では、珪素の酸化物又は窒化酸化物等の、少なくとも珪素を含有する材料が特に好ましい。また、フィルム(a)の材料である脂環式オレフィン樹脂との親和性の点では、DLCが特に好ましい。

珪素の酸化物としては、例えば、SiOxが挙げられる。ここでxは、無機層(a)の透明性及び水蒸気バリア性を両立させる観点から、1.4

珪素の窒化物としては、例えば、SiNyが挙げられる。ここでyは、無機層(a)の透明性及び水蒸気バリア性を両立させる観点から、0.5

珪素の窒化酸化物としては、例えば、SiOpNqが挙げられる。ここで、無機層(a)の密着性の向上を重視する場合には、1

アルミニウムの酸化物、窒化物及び窒化酸化物としては、例えば、AlOx、AlNy、及びAlOpNqを挙げることができる。 中でも、無機バリア性の観点からは、SiOpNq及びAlOx、並びにそれらの混合物を、より好ましい材料として用いることができる。

無機層(a)の厚みは、好ましくは100nm以上、より好ましくは300nm以上、特に好ましくは500nm以上であり、好ましくは2500nm以下、より好ましくは2000nm以下、特に好ましくは1500nm以下である。無機層(a)の厚みを前記範囲の下限値以上とすることにより、良好なガスバリア性を得ることができる。また、上限値以下とすることにより、十分なガスバリア性を維持しながら複合ガスバリア積層体が黄色く着色されるのを抑えることができる。

無機層(a)を形成したフィルム(a)、すなわちガスバリア積層体(A)の水蒸気透過率は、2×10−2g/m2・day以下であることが好ましく、1×10−2g/m2・day以下であることがより好ましい。一方、水蒸気透過率の下限は、0g/m2・dayであることが望ましいが、それ以上の値であっても、上記上限以下の範囲内であれば好適に使用しうる。

無機層(a)は、例えば、基材となるフィルム(a)の表面に、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト蒸着法、アーク放電プラズマ蒸着法、熱CVD法、プラズマCVD法等の成膜方法により形成しうる。中でも、熱CVD法、プラズマCVD法等の化学気相成長法を用いることが好ましい。化学気相成長法によれば、製膜に用いるガス成分を調整することにより可撓性のある無機層(a)を形成できる。また、可撓性のある無機層(a)を得ることで、フィルム(a)の変形や高温高湿環境下でのフィルム(a)の寸法変化に無機層(a)が追随することが可能になり、低い真空度の環境で高い製膜レートで製膜可能であり、良好なガスバリア性を実現できる。無機層(a)が、このように化学気相成長法によって形成される場合、厚み下限は300nm以上であることが好ましく、より好ましくは500nm以上であり、上限は2000nm以下であることが好ましく、1500nm以下であることがより好ましい。

[3.ガスバリア積層体(B)] 図1に示すように、ガスバリア積層体(B)20は、フィルム(b)21と、フィルム(b)21の少なくとも一面21Uに形成された無機層(b)22とを備える。したがって、通常、フィルム(b)21と無機層(b)22とは、直接に接している。

フィルム(b)としては、フィルム(a)と同様のフィルムを用いうる。したがって、例えばフィルム(b)の材料、形状、厚み、物性、製造方法などは、フィルム(a)の項において説明したものと同様にしうる。フィルム(b)は、ガスバリア積層体(B)において、ガスバリア積層体(A)においてフィルム(a)が発揮したのと同様の効果を発現しうる。

また、無機層(b)としては、無機層(a)と同様の層を用いうる。したがって、例えば無機層(b)の材料、形状、厚み、物性、製造方法などは、無機層(a)の項において説明したものと同様にしうる。無機層(b)は、ガスバリア積層体(B)において、ガスバリア積層体(A)において無機層(a)が発揮したのと同様の効果を発現しうる。すなわち、ガスバリア積層体(A)と(B)の水蒸気透過率をそれぞれ2×10−2g/m2・day以下にすることができるので、複合ガスバリア積層体としておよそ1×10−2g/m2・day以下にすることが可能になり、良好なガスバリア性を実現できる。

複合ガスバリア積層体では、ガスバリア積層体(A)のカールを生じさせる応力とガスバリア積層体(B)のカールを生じさせる応力とが互いに打ち消されるような向きでガスバリア積層体(A)とガスバリア積層体(B)とが貼り合せられている。したがって、ガスバリア積層体(A)及びガスバリア積層体(B)のカールを生じさせる応力が同じであると、複合ガスバリア積層体のカールを安定して防止することができる。そこで、複合ガスバリア積層体のカールを安定して防止する観点から、フィルム(b)がフィルム(a)と同一の材料で形成され且つ同一の厚みを有し、更に、無機層(b)が無機層(a)と同一の材料で形成され且つ同一の厚みを有することが好ましい。ここで、同一とは、ガスバリア積層体(A)及びガスバリア積層体(B)のカールの大きさが同じになる範囲で同一であることを意味する。したがって、ガスバリア積層体(A)及びガスバリア積層体(B)のカールの大きさが同じになる範囲であれば、例えば厚み及び材料の成分比率などは、フィルム(a)とフィルム(b)、並びに、無機層(a)と無機層(b)で異なっていてもよい。

[4.スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層] 図1に示すように、複合ガスバリア積層体100においては、ガスバリア積層体(A)10とガスバリア積層体(B)20とが、無機層(a)12と無機層(b)22とが対向するように、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層30を介して接着されている。この際、無機層(a)12と無機層(b)22とが対向するようにガスバリア積層体(A)10とガスバリア積層体(B)20とが接着されているので、ガスバリア積層体(A)10のカールしようとする応力とガスバリア積層体(B)20のカールしようとする応力とは互いに打ち消される。そのため、複合ガスバリア積層体100はカールを生じないようになっている。

通常、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂は、応力を与えられた場合にその応力に応じて変形しうる。したがって、例えば複合ガスバリア積層体100を折り曲げた場合又はヒートショックが与えられた場合などのように、ガスバリア積層体(A)10又はガスバリア積層体(B)20に応力が生じた場合でも、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層30は変形によりその応力を吸収できる。したがって、無機層(a)12及び無機層(b)22の一部に大きな応力が集中することを抑制できるので、無機層(a)12及び無機層(b)22でのクラックの発生を防止できる。そのため、複合ガスバリア積層体100のガスバリア性を良好に維持することができる。これは、例えばUV硬化樹脂を接着剤として用いて接着を行った場合には、硬化後のUV硬化樹脂の硬度が高く応力により変形できないので、無機層(a)及び無機層(b)で容易にクラックが生じることに比べ、優れた効果である。

また、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂は、一般に残留溶媒を含まないか、含むとしてもその量は少ないので、アウトガスが少ない。したがって、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂は、低圧環境下においてガスを発生し難いので、複合ガスバリア積層体自体がガスの発生源となってガスバリア性が損なわれることが無いようになっている。これは、例えば粘着剤を用いてガスバリア積層体(A)とガスバリア積層体(B)とを貼り合わせた場合には、粘着剤が溶媒を含むためにアウトガスの量が多くなることに比べ、優れた効果である。

前記の利点は、複合ガスバリア積層体を有機EL素子及び有機太陽電池等の有機光電変換素子に設ける場合に、特に有用である。例えば有機光電変換素子を製造する場合には、複合ガスバリア積層体を基材として用い、この基材上に有機材料の層を形成する工程を行うことがある。ここで、有機材料の層を形成する工程では、大きな温度変化を生じたり、基材を低圧環境に置いたりすることがある。この際、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層によりガスバリア積層体(A)とガスバリア積層体(B)とを接着しておけば、クラック及びアウトガスの発生を抑制して、ガスバリア性を高く維持することができる。

スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂とは、スチレン系熱可塑性エラストマーと、必要に応じてその他の任意の成分とを含有する樹脂である。また、スチレン系熱可塑性エラストマーとは、その分子の構造単位として、芳香族ビニル化合物単位を有する熱可塑性エラストマーである。ここで芳香族ビニル化合物単位とは、スチレン等の芳香族ビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位のことをいう。また、熱可塑性エラストマーとは、加硫処理をしなくても室温でゴム弾性を有する重合体であり、高温では通常の熱可塑性樹脂と同じく、既存の成形機を使用して成形可能な重合体である。熱可塑性エラストマーは、一般に、分子中に弾性を有するゴム成分(即ちソフトセグメント)と、塑性変形を防止するための分子拘束成分(即ちハードセグメント)とを有している。スチレン系熱可塑性エラストマーは、通常、ハードセグメントとして前記の芳香族ビニル化合物単位を有している。

スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体及びその水素化物が好ましい。ここで、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体とは、芳香族ビニル化合物単位を含む重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物単位を含む重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体のことをいう。また、鎖状共役ジエン化合物単位とは、鎖状共役ジエン化合物を重合して形成される構造を有する構造単位のことをいう。これらのブロック共重合体及びその水素化物は、例えばアルコキシシラン、カルボン酸、カルボン酸無水物等で変性されていていてもよい。中でも、芳香族ビニル化合物としてスチレンを用いた芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体(以下、適宜「スチレン−共役ジエンブロック共重合体」ということがある。)及びその水素化物が好ましく、スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素化物が特に好ましい。以下、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体及びその水素化物について、具体的に説明する。

前記のように、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物単位を含む。この芳香族ビニル化合物単位に対応する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレンなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましい。更に、工業的入手のし易さ、耐衝撃性の観点から、スチレンが特に好ましい。

重合体ブロック[A]において、芳香族ビニル化合物単位は通常は主成分となっている。具体的には、重合体ブロック[A]における芳香族ビニル化合物単位の含有率は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上であり、通常100重量%以下である。重合体ブロック[A]において芳香族ビニル化合物単位の量を前記のように多くすることにより、複合ガスバリア積層体の耐熱性を高めることができる。

また、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物単位以外の成分を含んでいてもよい。芳香族ビニル化合物単位以外の成分としては、例えば、鎖状共役ジエン化合物単位、芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位、などが挙げられる。

鎖状共役ジエン化合物単位に対応する鎖状共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく、具体的には1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。

芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物としては、例えば、鎖状ビニル化合物;環状ビニル化合物;ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、又はハロゲン基を有するビニル化合物;不飽和の環状酸無水物;不飽和イミド化合物などが挙げられる。好ましい例を挙げると、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の環状オレフィン;などの、極性基を含有しないものが吸湿性の面で好ましい。中でも、鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

重合体ブロック[A]における芳香族ビニル化合物単位以外の成分の含有率は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下であり、通常0重量%以上である。

芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体1分子当たりにおける重合体ブロック[A]の数は、通常2個以上であり、通常5個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下である。複数個ある重合体ブロック[A]は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。

前記のように、重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物単位を含む。この鎖状共役ジエン化合物単位としては、例えば、重合体ブロック[A]に含まれていてもよいものとして例示したものが、同様に挙げられる。

重合体ブロック[B]において、鎖状共役ジエン化合物単位は通常は主成分となっている。具体的には、重合体ブロック[B]における鎖状共役ジエン化合物単位の含有率は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上であり、通常100重量%以下である。重合体ブロック[B]において鎖状共役ジエン化合物単位の量を前記のように多くすることにより、複合ガスバリア積層体の低温での耐衝撃性を向上させることができる。

また、重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物単位以外の成分を含んでいてもよい。鎖状共役ジエン化合物単位以外の成分としては、例えば、芳香族ビニル化合物単位、並びに、芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位などが挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物単位、並びに、芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位は、例えば、重合体ブロック[A]に含まれていてもよいものとして例示したものが、同様に挙げられる。

重合体ブロック[B]における鎖状共役ジエン化合物単位以外の成分の含有率は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下であり、通常0重量%以上である。特に、重合体ブロック[B]における芳香族ビニル化合物単位の含有率を低くすることにより、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の低温での柔軟性を向上させて、複合ガスバリア積層体の低温での耐衝撃性を向上させることができる。

芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体1分子当たりにおける重合体ブロック[B]の数は、通常1個以上であるが、2個以上であってもよい。芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体における重合体ブロック[B]の数が2個以上である場合、重合体ブロック[B]は、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。

芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもよく、ラジアル型ブロックでもよい。中でも、鎖状型ブロックが、機械的強度に優れ、好ましい。芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の特に好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体;重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体である。

芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体において、全重合体ブロック[A]が芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]が芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとする。このとき、wAとwBとの比(wA/wB)は、好ましくは20/80以上、より好ましくは35/65以上、特に好ましくは40/60以上であり、好ましくは80/20以下、より好ましくは65/35以下、特に好ましくは60/40以下である。wA/wBを前記範囲の下限値以上とすることにより、複合ガスバリア積層体の耐熱性を向上させることができる。また、上限値以下とすることにより、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の柔軟性を高めて、複合ガスバリア積層体100のガスバリア性を安定して良好に維持することができる。

重合体ブロック[A]又は重合体ブロック[B]が1分子当たり複数存在する場合、重合体ブロック[A]の中で重量平均分子量が最大の重合体ブロック及び最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(A1)及びMw(A2)とし、重合体ブロック[B]の中で重量平均分子量が最大の重合体ブロック及び最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(B1)及びMw(B2)とする。このとき、Mw(A1)とMw(A2)との比「Mw(A1)/Mw(A2)」は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.2以下であり、通常1以上である。また、Mw(B1)とMw(B2)との比「Mw(B1)/Mw(B2)」は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.2以下であり、通常1以上である。これにより、各種物性値のばらつきを小さく抑えることができる。

芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常30,000以上、好ましくは40,000以上、より好ましくは50,000以上であり、通常200,000以下、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下である。また、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。

芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の製造方法としては、例えば3つの重合体ブロックを有するブロック共重合体を製造する場合、以下のような製造方法が挙げられる。 (i)重合体ブロック[A]を形成させるモノマー成分として、芳香族ビニル化合物を含有するモノマー混合物(a1)を重合させる第1工程と、重合体ブロック[B]を形成させるモノマー成分として、鎖状共役ジエン化合物を含有するモノマー混合物(b1)を重合させる第2工程と、重合体ブロック[A]を形成させるモノマー成分として、芳香族ビニル化合物を含有するモノマー混合物(a2)(ただし、モノマー混合物(a1)とモノマー混合物(a2)は同一でも異なっていてもよい。)を重合させる第3工程とを有する製造方法。 (ii)重合体ブロック[A]を形成させるモノマー成分として、芳香族ビニル化合物を含有するモノマー混合物(a1)を重合させる第1工程と、重合体ブロック[B]を形成させるモノマー成分として、鎖状共役ジエン化合物を含有するモノマー混合物(b1)を重合させる第2工程と、重合体ブロック[B]の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせる製造方法。

上記モノマー混合物を重合してそれぞれの重合体ブロックを得る方法としては、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位アニオン重合、配位カチオン重合などを用いうる。重合操作及び後工程での水素化反応を容易にする観点では、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などを、リビング重合により行う方法が好ましく、リビングアニオン重合により行う方法が特に好ましい。

前記のモノマー混合物の重合は、重合開始剤の存在下で、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下の温度範囲において行う。 リビングアニオン重合の場合は、重合開始剤として、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム等のモノ有機リチウム;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物;などが使用可能である。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

重合反応の形態は、溶液重合、スラリー重合などのいずれでも構わない。中でも、溶液重合を用いると、反応熱の除去が容易である。 溶液重合を行う場合、溶媒としては、各工程で得られる重合体が溶解しうる不活性溶媒を用いる。不活性溶媒としては、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、溶媒として脂環式炭化水素類を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用でき、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の溶解性も良好であるため、好ましい。溶媒の使用量は、全使用モノマー100重量部に対して、通常200重量部〜2000重量部である。

それぞれのモノマー混合物が2種以上のモノマーを含む場合、ある1成分の連鎖だけが長くなるのを防止するために、例えばランダマイザーを使用しうる。特に重合反応をアニオン重合により行う場合には、例えばルイス塩基化合物等をランダマイザーとして使用することが好ましい。ルイス塩基化合物としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

前記の芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体は、水素化して使用することが、好ましい。芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素化物をスチレン系熱可塑性エラストマーとして用いることにより、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂からのアウトガスの発生量を更に小さくできる。

芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素化物は、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化したものである。その水素化率は、通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上であり、通常100%以下である。水素化率が高いほど、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の耐熱性及び耐光性を良好にできる。ここで、水素化物の水素化率は、1H−NMRによる測定により求めることができる。

特に、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上であり、通常100%以下である。主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の耐光性及び耐酸化性を更に高くできる。 また、芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上であり、通常100%以下である。芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、重合体ブロック[A]を水素化して得られる重合体ブロックのガラス転移温度が高くなるので、複合ガスバリア積層体の耐熱性を効果的に高めることができる。

具体的な水素化方法は、所望の水素化物が得られる限り制限は無いが、水素化率を高くでき、ブロック共重合体の鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような好ましい水素化方法としては、例えば、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む水素化触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒は、不均一系触媒、均一系触媒のいずれも使用可能である。また、水素化反応は、有機溶媒中で行うのが好ましい。

不均一系触媒は、例えば、金属又は金属化合物のままで用いてもよく、適切な担体に担持して用いてもよい。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素、フッ化カルシウムなどが挙げられる。触媒の担持量は、触媒及び担体の合計量に対して、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上であり、通常60重量%以下、好ましくは50重量%以下である。また、担持型触媒の比表面積は、好ましくは100m2/g〜500m2/gである。さらに、担持型触媒の平均細孔径は、好ましくは100Å以上、より好ましくは200Å以上であり、好ましくは1000Å以下、好ましくは500Å以下である。ここで、比表面積は、窒素吸着量を測定しBET式を用いて求められる。また、平均細孔径は、水銀圧入法により測定しうる。

均一系触媒としては、例えば、ニッケル、コバルト、チタン又は鉄の化合物と有機金属化合物とを組み合わせた触媒;ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等の有機金属錯体触媒;などを用いることができる。 ニッケル、コバルト、チタン又は鉄の化合物としては、例えば、各金属のアセチルアセトナト化合物、カルボン酸塩、シクロペンタジエニル化合物等が挙げられる。 また、有機金属化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物;並びに有機リチウム化合物などが挙げられる。 有機金属錯体触媒としては、例えば、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)鉄、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル等の遷移金属錯体が挙げられる。

これらの水素化触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。 水素化触媒の使用量は、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体100重量部に対して、通常0.01重量部以上、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、通常100重量部以下、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。

水素化反応の温度は、通常10℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。温度がこの範囲にあるときに、水素化率が高くなり、分子切断も減少する。また、水素化反応時の水素圧力は、通常0.1MPa以上、好ましくは1MPa以上、より好ましくは2MPa以上であり、通常30MPa以下、好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下である。水素圧力がこの範囲にあるときに、水素化率が高くなり、分子鎖切断も減少し、操作性にも優れる。

上記した方法で得られる芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素化物は、水素化触媒及び重合触媒を、水素化物を含む反応溶液から例えば濾過、遠心分離などの方法により除去した後、反応溶液から回収される。反応溶液から水素化物を回収する方法としては、例えば、水素化物が溶解した溶液からスチームストリッピングにより溶媒を除去するスチーム凝固法;減圧加熱下で溶媒を除去する直接脱溶媒法;水素化物の貧溶媒中に溶液を注いで析出及び凝固させる凝固法などが挙げられる。

回収された芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素化物の形態は限定されるものではないが、その後の成形加工又は変性反応に供し易いように、ペレット形状とするのが通常である。直接脱溶媒法により反応溶液から水素化物を回収した場合、例えば、溶融状態の水素化物をダイスからストランド状に押し出し、冷却後、ペレタイザーでカッティングしてペレット状にして、各種の成形に供してもよい。また、凝固法を用いる場合は、例えば、得られた凝固物を乾燥した後、押出機により溶融状態で押し出し、上記と同様にペレット状にして各種の成形又は変性反応に供してもよい。

芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素化物の分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常30,000以上、好ましくは40,000以上、より好ましくは45,000以上であり、通常200,000以下、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下である。また、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素化物の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。水素化物の分子量及び分子量分布を前記の範囲に収めることにより、複合ガスバリア積層体の機械強度及び耐熱性を向上させることができる。

スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂が含有しうる任意の成分としては、例えば、耐候性や耐熱性などを向上させるための光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、無機フィラーなどが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、構造中に例えば3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基、又は、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基などを有している化合物が特に好ましい。

光安定剤の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物、1,6−ヘキサンジアミン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(1−ベンジル−2−フェニルエチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(2−(1−ピロリジル)エチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(2−(4−モルホリニル)エチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−(2−(4−モルホリニル)エチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(2−(ジイソプロピルアミノ)エチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(2,4,6−トリメチルベンジル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(3−(2−エチルヘキソキシ)プロピル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(3,4−(メチレンジオキシ)ベンジル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(ビシクロ〔2.2.1〕ヘプチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−1,2,2−トリメチルプロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−1、3−ジメチルブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−1−ベンジルエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−2,2−ジメチルプロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−2−エチルヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−3−メチルブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−4−ヒドロキシブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−4−ヒドロキシブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−i−プロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−i−プロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−t−ブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−イソプロピルベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−エトキシエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−エトキシプロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−オクタデシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−オクチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−オクチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−クロロベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ジエチルアミノエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−シクロドデシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−シクロヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルカルボニルピペリジン、4−(N−シクロヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピリジン、4−(N−シクロヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、4−(N−シクロペンチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−シクロペンチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ジメチルアミノプロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−デシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−デシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ドデシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ピリジニルメチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−フェニルエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピリジン、4−(N−フェニルエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、4−(N−ブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−ブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−フルオロベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−ヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ペンチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−ペンチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−メチルシクロヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、4−(N−メチルベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−メトキシベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−〔N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N−ホルミルアミノ〕−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピリジン、4−〔N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N−ホルミルアミノ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−アミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4ーN−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−1,4−キシリレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−N−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−トリメチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4ーN−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−N−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−エチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミル−1,4−キシリレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルエチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミル−トリメチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンアクリル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンアラキン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンアンゲリカ酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンウンデシル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンウンデシレン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンオレイン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンガドレイン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンカプリル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンカプリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンカプロン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンクロトン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンシトロネル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンステアリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンゾマーリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレントリデシル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンノナデシル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンパルチミン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンブレンツテレビン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンプロピオン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンヘプタン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンベヘン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンペラルゴン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンペンタデシル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンマルガリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンミリスチン酸ア ミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンラウリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンリンデル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレン吉草酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレン酢酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレン抹香酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレン酪酸アミド、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重合体とN−ブチル−1−ブタンアミンとN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物などが挙げられる。

これらの中でも、耐候性に優れる点で、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−N−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−アルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルアルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスアルキレン脂肪酸アミド類、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕が好ましく、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルアルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重合体とN−ブチル−1−ブタンアミンとN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物が特に好ましい。

光安定剤の量は、スチレン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、通常0.01重量部以上、好ましくは0.02重量部以上、より好ましくは0.03重量部以上であり、通常5重量部以下、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。光安定剤の量を前記範囲の下限値以上とすることにより耐候性を高くできる。また、上限値以下とすることにより、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂をフィルム状に成形する溶融成形加工時に、押出し機のTダイや冷却ロールの汚れを防止でき、加工性を高めることができる。

紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。 ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸3水和物、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデカロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。

また、サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサルチレート、4−t−ブチルフェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、フェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。

また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]]などが挙げられる。

紫外線吸収剤の量は、スチレン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、通常0.01重量部以上、好ましくは0.02重量部以上、より好ましくは0.04重量部以上であり、通常1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、より好ましくは0.3重量部以下である。紫外線吸収剤を前記範囲の下限値以上用いることにより耐光性を改善することができるが、上限を超えて過剰に用いても、更なる改善は得られ難い。

酸化防止剤としては、例えば、リン系酸化防止剤、フェノ−ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられ、着色がより少ないリン系酸化防止剤が好ましい。 リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物;6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン、6−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピンなどの化合物を挙げることができる。

フェノ−ル系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなど化合物を挙げることができる。

硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどなど化合物を挙げることができる。

酸化防止剤の量は、スチレン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、通常0.01重量部以上、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、通常1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、より好ましくは0.3重量部以下である。酸化防止剤を前記範囲の下限値以上用いることにより熱安定性を改善することができるが、上限を超えて過剰に用いても、更なる改善は得られ難い。

スチレン系熱可塑性エラストマーと前記任意の成分とを混合する方法は、例えば、任意の成分を適切な溶媒に溶解してスチレン系熱可塑性エラストマーの溶液と混合した後、溶媒を除去して任意の成分を含むスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂を回収する方法;例えば二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出機などでスチレン系熱可塑性エラストマーを溶融状態にして任意の成分を混練する方法;などが挙げられる。

スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂は、高い透明性を有するものに必ずしも限られない。ただし、複合ガスバリア積層体を、例えば表示装置、光源装置又は太陽電池において光を透過することが求められる部分に用いうる有用なものとするという観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂は、高い透明性を有するものが好ましい。例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂を厚み1mmの試験片として測定した全光線透過率が、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であり、また、通常100%以下であるものが好ましい。

スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは120μm以下、特に好ましくは100μm以下である。スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層の厚みを前記範囲の下限値以上とするとことにより、押出成形法によるスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂のフィルムの製造が可能となる。また、この程度の厚みがあれば、仮にスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂に小さい異物が混入しても、その異物によりスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層の厚みが不均一となることを防止できる。また、上限値以下とすることにより、貼り合せ後の撓みが抑えられて均一な複合ガスバリア積層体が形成でき、また、複合ガスバリア積層体の厚みを薄くできる。

スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層は、通常は長尺のフィルムとして用意され、このフィルムを用いて複合ガスバリア積層体の製造が行われる。スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂のフィルムの製造方法に特に制限は無く、例えば、溶融成形法、溶液流延法のいずれを用いてもよい。溶融成形法は、さらに詳細に、押出成形法、例えばプレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの方法の中でも、機械強度、表面精度等に優れたフィルムを得るために、押出成形法、インフレーション成形法又はプレス成形法が好ましく、中でも効率よく簡単にフィルムを製造できる観点から、押出成形法が特に好ましい。

[5.任意の層] 複合ガスバリア積層体は、上述した以外にも、必要に応じて任意の構成要素を備えていてもよい。 例えば、複合ガスバリア積層体の一方の外側面に、ブロッキング防止層が形成されていてもよい。ブロッキング防止層を形成することにより、複合ガスバリア積層体のブロッキングを防止することができる。また、複合ガスバリア積層体の保存時及び運搬時に、複合ガスバリア積層体の表面を保護することもできる。ブロッキング防止層は、例えば、シリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、フッ素系剥離剤、硫化モリブデン等の剥離剤をコートする方法;不活性粒子等の滑剤を含む樹脂層を形成する方法;などにより、形成しうる。

複合ガスバリア積層体の外側面は、通常、フィルム(a)又はフィルム(b)の無機層(a)又は無機層(b)とは反対側の表面に相当する。そのため、ブロッキング防止層は、通常、前記のフィルム(a)又はフィルム(b)の無機層(a)又は無機層(b)とは反対側の表面に形成する。ここで、ブロッキングはフィルム(a)又はフィルム(b)の表面に無機層(a)又は無機層(b)を形成するよりも前の時点で生じやすいので、ブロッキング防止層を形成する工程は、フィルム(a)又はフィルム(b)の表面に無機層(a)又は無機層(b)を形成する工程よりも前に行うことが好ましい。

また、複合ガスバリア積層体は、例えば、帯電防止層、ハードコート層、導電性付与層、汚染防止層、凹凸構造層などを備えていてもよい。このうち導電性付与層は、印刷あるいはエッチングによりパターニングされたものであってもよい。かかる任意の層は、例えば、フィルム(a)又はフィルム(b)上にかかる任意の層の材料を塗布し硬化させる方法;熱圧着により貼り付けする方法により形成しうる。

[6.複合ガスバリア積層体の物性] 複合ガスバリア積層体の全体としての水蒸気透過率は、好ましくは1×10−2g/m2・day以下であり、より好ましくは1×10−3g/m2・day以下である。また、下限は理想的にはゼロであるが、現実的には1×10−6g/m2・day以上である。このような水蒸気透過率は、無機層及びその他の層の材質及び厚みを適切に選択することにより、達成しうる。

また、複合ガスバリア積層体は、高温環境に置かれた場合でも、そのガスバリア性が損なわれ難い。具体的には、150℃の環境に1時間放置した場合であっても、通常、その水蒸気透過率を前記のように低い範囲に収めることができる。さらに、複合ガスバリア積層体は、通常、低圧環境に置いた場合でもアウトガスの発生量が少ない。このように、複合ガスバリア積層体は、高いガスバリア性を有し、高温又は低圧の環境においてもそのガスバリア性を良好に維持することができるので、優れた耐候性を有する。

複合ガスバリア積層体は、カールを生じ難い。そのため、下記の測定方法により求められるカール量を、通常1mm以下と小さくすることができる。 ここで、カール量は、次の方法により測定しうる。まず、サンプルを5cm角に打ち抜く。打ち抜かれたサンプル片を水平な台の上に配置する。この際、鉛直上方に凹状のカールが生じる向きで、サンプル片を配置する。配置されたサンプル片のコーナー部4点の、台からの距離を測定する。測定された4点における距離の平均値を計算し、この平均値をカール量とする。

複合ガスバリア積層体において、ガスバリア積層体(A)とガスバリア積層体(B)との接着力は、作製直後の接着力で、好ましくは1.0N/cm以上、より好ましくは2.0N/cm以上である。また、作製直後の接着力と、高温高湿下に曝した後の接着力との差が0%以上10%以下であることが好ましい。

複合ガスバリア積層体は、柔軟で可撓性に優れる。そのため、複合ガスバリア積層体を折り曲げても、容易には亀裂を生じない。したがって、外力によるガスバリア性の低下を生じ難い。

複合ガスバリア積層体の透明性は、特に限定されない。ただし、複合ガスバリア積層体を、例えば表示装置、光源装置又は太陽電池において光を透過することが求められる部分に用いうる有用なものとするという観点から、複合ガスバリア積層体の全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上であり、通常100%以下である。

複合ガスバリア積層体全体のヘイズは、特に限定されないが、光を拡散させることを特段意図しない光学的用途に用いる場合、ヘイズは一般的には低い方が好ましく、好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%以下であり、通常0%以上である。

[7.複合ガスバリア積層体の製造方法] 複合ガスバリア積層体は、例えば、フィルム(a)の少なくとも一面に無機層(a)を形成してガスバリア積層体(A)を得る工程と、フィルム(b)の少なくとも一面に無機層(b)を形成してガスバリア積層体(B)を得る工程と、ガスバリア積層体(A)、ガスバリア積層体(B)及びスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂のフィルム(c)を、フィルム(a)、無機層(a)、フィルム(c)、無機層(b)及びフィルム(b)がこの順になるように重ね、加熱圧着させる工程とを含む方法により、製造しうる。

このように、無機層(a)を備えるガスバリア積層体(A)と無機層(b)を備えるガスバリア積層体(B)とを貼り合せる方法によれば、ガスバリア性能が高く、カールを生じ難い複合ガスバリア積層体を、容易に製造することができる。例えば、複数の無機層を備える複合ガスバリア積層体を製造しようとする場合、フィルムにスパッタリング等の方法を繰り返し行って、複数の無機層を形成する方法が考えられる。しかし、このように一枚のフィルムにスパッタリング等の方法で複数の無機層を形成することは、製造工程上困難である。これに対し、無機層を備える複数のガスバリア積層体を貼り合せる前記の方法であれば、複数の無機層を有する複合ガスバリア積層体を製造することが容易である。特に、スパッタリング等の低圧の工程を行う回数を少なくできることは、製造効率を高める点で効果的である。

また、ガスバリア積層体(A)とガスバリア積層体(B)とを、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂のフィルム(c)で接着するようにしたので、貼り合せが容易である。例えば、ガスバリア積層体(A)とガスバリア積層体(B)とを流体状の接着剤で接着する場合、ガスバリア積層体(A)及びガスバリア積層体(B)はそれぞれ単独ではカールを生じ易いので、均一な貼り合せが難しい。これに対し、フィルム状に成形したスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂で接着を行うようにすれば、前記の貼り合せが容易になり、複合ガスバリア積層体の安定した製造が可能となる。

フィルム(a)及びフィルム(b)の表面に無機層(a)及び無機層(b)を形成する方法は、無機層(a)の項において説明したとおりである。通常、得られるガスバリア積層体(A)及びガスバリア積層体(B)は長尺のフィルムとして得られ、これらはロール状に巻回されて次の工程に供される。

図2は、本発明の一実施形態に係る複合ガスバリア積層体100の製造方法において、ガスバリア積層体(A)10、ガスバリア積層体(B)20及びスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂のフィルム(c)を加熱圧着させる工程を模式的に示す図である。ここで、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂のフィルム(c)は、前記のスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層30と同じ部材に当たるので、同じ符号「30」を付して説明する。

図2に示すように、ガスバリア積層体(A)10、ガスバリア積層体(B)20及びスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂のフィルム(c)30は、それぞれロールから引き出され、例えば温度制御可能な加圧ロール210,220等により、加熱圧着される。この際、ガスバリア積層体(A)10及びガスバリア積層体(B)20は、無機層(a)及び無機層(b)がフィルム(c)30に対向するような向きにする。スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂が接着剤となることにより、ガスバリア積層体(A)10とガスバリア積層体(B)20とが接着されて、複合ガスバリア積層体100が得られる。得られた複合ガスバリア積層体100は巻き取られ、ロールの状態で保存される。このように、複合ガスバリア積層体100をロールトゥロール法により製造すれば、生産性を更に高めることができる。

加熱圧着を行う際の温度は、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂のフィルム(c)が流動性を示す温度によるが、通常70℃以上、好ましくは80℃以上である。これにより、ガスバリア積層体(A)とガスバリア積層体(B)とを安定して接着することができる。また、温度の上限は、通常250℃以下、好ましくは、フィルム(a)及びフィルム(b)を形成する脂環式ポリオレフィン樹脂のガラス転移温度Tg℃以下である。特に、前記スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂のフィルム(c)が流動性を示す温度を、脂環式ポリオレフィン樹脂のガラス転移温度Tg以下とし、Tg以下の温度で加熱圧着を行うことで、フィルム(a)及びフィルム(b)の熱による変形、加圧圧着プロセス前後の熱収縮、劣化を防止できる。

加熱圧着を行う際に加圧ロールから加える圧力は、通常0.1MPa以上である。これにより、ガスバリア積層体(A)とガスバリア積層体(B)とを安定して接着することができる。また、圧力の上限は、通常1.5MPa以下、好ましくは1.0MPa以下である。これにより、過剰な圧力により無機層(a)又は無機層(b)にクラックが生じることを防止できる。

ガスバリア積層体(A)、ガスバリア積層体(B)及びスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂のフィルム(c)を長尺のフィルムとして用意し、これらの長尺のフィルムをラインで搬送しながら加熱圧着を行う場合、搬送時のラインスピードは、通常0.1m/分以上、好ましくは0.2m/分以上、より好ましくは0.3m/分以上であり、5m/分以下、好ましくは3m/分以下、より好ましくは2m/分以下である。ラインスピードを前記範囲の下限以上とすることにより、効率的な製造が可能となる。また、上限以下とすることにより、ガスバリア積層体(A)とガスバリア積層体(B)との接着を安定して行うことができる。

[8.複合ガスバリア積層体の用途] 上述した複合ガスバリア積層体の用途は特に限定されないが、例えば、液晶表示装置並びに有機EL素子を有する表示装置及び光源装置、並びに太陽電池等の装置の構成要素として用いうる。具体的には、装置を構成する他の構成要素を、水分及び酸素から保護するために封止するためのフィルムとして用いることができる。 特に好ましい用途としては、有機EL素子用の複合ガスバリア積層体として用いることができる。

[9.複合電極] 図3は、本発明の一実施形態に係る複合電極300をその主面に垂直な平面で切った断面を模式的に示す図である。図3に示すように、複合電極300は、複合ガスバリア積層体100と、複合ガスバリア積層体100の一方の外側面11Uに形成された透明電極40とを備える。また、図3において、図1に示したものと同様の部位については、図1と同様の符号で示す。 このように、複合ガスバリア積層体100を透明電極40と組み合わせた複合電極300は、電極として機能可能であり、また、優れたガスバリア性を有する。そのため、例えば有機EL素子及び有機太陽電池等の有機光電変換素子に好適に用いられる。

透明電極の材料としては、例えば、金属薄膜、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、SnO2などを挙げることができる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。 また、透明電極の厚みは、通常10nm〜1000nmとしうる。

前記の透明電極は、例えば、物理気相成長法により形成しうる。物理気相成長法は、材料を蒸発又はイオン化し、複合ガスバリア積層体の表面に前記材料の被膜を形成させる方法である。物理気相成長法の具体例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング(イオンめっき)法、イオンビームデポジション法等が挙げられる。

物理気相成長法により透明電極を形成する工程は、一般に、高温又は低圧の環境において行われる。この際、前記の複合ガスバリア積層体は、高温環境において無機層(a)及び無機層(b)にクラックが生じ難く、ガスバリア性が損なわれ難い。また、前記の複合ガスバリア積層体は、低圧環境においてもスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層からのアウトガスが生じ難い。そのため、前記の複合ガスバリア積層体を用いれば、通常、透明電極の形成の条件を自由に選択することができるので、その結果、透明電極の抵抗値を低減することができる。また、透明電極を容易に製造することが可能となる。

ただし、無機層(a)及び無機層(b)のクラックを安定して防止する観点では、無機層(a)及び無機層(b)の形成を行う工程の前に、透明電極を形成する工程を行うことが好ましい。透明電極の種類によっては、透明電極を形成する工程において過酷な環境が要求されることがあるためである。例えば、図3に示すようにフィルム(a)11の表面11UにITOの透明電極40を備える複合電極300を製造する場合は、フィルム(a)11に無機層(a)12を形成する工程の前に、フィルム(a)の面11Uに透明電極40を形成することが好ましい。

以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。 以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。

[測定方法] (1.カール量の測定方法) サンプルを5cm角に打ち抜く。打ち抜かれたサンプル片を水平な台の上に配置する。この際、鉛直上方に凹状のカールが生じる向きで、サンプル片を配置する。配置されたサンプル片のコーナー部4点の、台からの距離を測定する。測定された4点における距離の平均値を計算し、この平均値をカール量とする。

(2.水蒸気透過率の測定方法) 8cm直径の円形の測定領域を有する差圧式測定装置を用い、40℃90%RH相当の水蒸気による圧力をサンプルの両側で形成して、水蒸気透過率を測定する。

[実施例1] ロール状の脂環式ポリオレフィン樹脂フィルム(ノルボルネン重合体を含むフィルム、日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム ZF16」、厚み100μm)を引き出し、その一方の表面に、スパッタ装置にて、厚み100nmのSiN膜を形成し、ガスバリア積層体(A)を得た。得られたガスバリア積層体(A)は、カール量4mmのカールを有していた。 さらに、前記のガスバリア積層体(A)と同様にして、ガスバリア積層体(B)を製造した。

また、厚み100μmのスチレンイソプレンスチレン共重合体からなるフィルムを、熱可塑性エラストマーフィルムとして用意した。前記のスチレンイソプレンスチレン共重合体は、芳香族ビニル化合物としてスチレンを用い、鎖状共役ジエン化合物としてイソプレンを用いて製造した芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体を水素化し、更にアルコキシシランで変性した重合体であり、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック構造を有する。また、このスチレンイソプレンスチレン共重合体は、重量平均分子量(Mw)が48,000であり、重合体ブロックの重量分率の比「wA/wB」が50/50であり、重合体ブロック[A]の重量平均分子量の比「Mw(A1)/Mw(A2)」が1.1あり、水素化率が99.9%であった。

ガスバリア積層体(A)及びガスバリア積層体(B)を、SiN膜が対向するよう配置し、その間隙に熱可塑性エラストマーフィルムを挟持させた。こうして重なったガスバリア積層体(A)、熱可塑性エラストマーフィルム及びガスバリア積層体(B)を、対向した一対の樹脂ロールで両側から加圧しながら長尺方向に搬送した。この際、樹脂ロールの温度は150℃に調節した。また、搬送時のラインスピードは0.3m/minにした。また、樹脂ロールによる加圧の強さは0.1MPaにした。これにより、ガスバリア積層体(A)、熱可塑性エラストマーフィルム及びガスバリア積層体(B)は加熱圧着されて、脂環式ポリオレフィン樹脂フィルム−SiN膜−熱可塑性エラストマーフィルム−SiN膜−脂環式ポリオレフィン樹脂フィルムの構成を有する複合ガスバリア積層体が得られた。

得られた複合ガスバリア積層体のカール量及び水蒸気透過率を測定したところ、カール量は1mm以下、水蒸気透過率は8×10−3g/m2・dayであった。

また、複合ガスバリア積層体を150℃の環境に1時間放置した後、常温環境下に取り出し外観を観察し、更に水蒸気透過率を測定したところ、外観上の変化は無く、また、水蒸気透過率も8×10−3g/m2・dayの水蒸気透過率のままであった。

さらに、得られた複合ガスバリア積層体をチャンバ中に配置し、真空ポンプ(ULVAC社製「GHD−030」)によりチャンバから空気を排気したところ、約20時間後にはチャンバ内圧力が1×10−4torrに到達した。

また、複合ガスバリア積層体を折り曲げたが、亀裂等は生じなかった。

[実施例2] ロール状の脂環式ポリオレフィン樹脂フィルム(ノルボルネン重合体を含むフィルム、日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム ZF16」、厚み100μm)を引き出し、その一方の表面に、プラズマCVD装置にて、厚み1μmのSiOC膜を形成し、ガスバリア積層体(A)を得た。得られたガスバリア積層体(A)は、カール量15mmのカールを有していた。 さらに、前記のガスバリア積層体(A)と同様にして、ガスバリア積層体(B)を製造した。 また、実施例1と同様の熱可塑性エラストマーフィルムを用意した。

ガスバリア積層体(A)及びガスバリア積層体(B)を、SiOC膜が対向するよう配置し、その間隙に熱可塑性エラストマーフィルムを挟持させた。こうして重なったガスバリア積層体(A)、熱可塑性エラストマーフィルム及びガスバリア積層体(B)を、実施例1と同様の条件で、対向した一対の樹脂ロールで両側から加圧しながら長尺方向に搬送した。これにより、ガスバリア積層体(A)、熱可塑性エラストマーフィルム及びガスバリア積層体(B)は加熱圧着されて、脂環式ポリオレフィン樹脂フィルム−SiOC膜−熱可塑性エラストマーフィルム−SiOC膜−脂環式ポリオレフィン樹脂フィルムの構成を有する複合ガスバリア積層体が得られた。

得られた複合ガスバリア積層体のカール量及び水蒸気透過率を測定したところ、カール量は1mm以下、水蒸気透過率は5×10−4g/m2・dayであった。 また、複合ガスバリア積層体を150℃の環境に1時間放置した後、外観を観察し、更に水蒸気透過率を測定したところ、外観上の変化はなく、水蒸気透過率も5×10−4g/m2・dayのままであった。 また、実施例1と同様に複合ガスバリア積層体を折り曲げたが、亀裂等は生じなかった。

[比較例1] 脂環式ポリオレフィン樹脂フィルムの代わりにポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、複合ガスバリア積層体を製造した。 得られた複合ガスバリア積層体のカール量及び水蒸気透過率を測定したところ、カール量は1mm以下、水蒸気透過率は1×10−2g/m2・dayであった。 しかし、この複合ガスバリア積層体を150℃の環境に1時間放置した後、常温環境下に取り出し、水蒸気透過率を測定したところ、水蒸気透過率は5×10−2g/m2・dayに悪化した。

[比較例2] 熱可塑性エラストマーフィルムの代わりに、無溶媒のアクリル系UV硬化樹脂(大同化成社製「ダイオレットPS3A」)を厚み100μmで用いてガスバリア積層体(A)とガスバリア積層体(B)とを接着したこと以外は実施例1と同様にして、複合ガスバリア積層体を製造した。 得られた複合ガスバリア積層体のカール量及び水蒸気透過率を測定したところ、カール量は1mm以下、水蒸気透過率は8×10−3g/m2・dayであった。しかし、この複合ガスバリア積層体を実施例1と同様に折り曲げることで、容易に亀裂が生じた。

[比較例3] 熱可塑性エラストマーフィルムの代わりに、アクリル系粘着剤のシート(日東電工社製「CS9621」、厚み25μm)を4層重ねて100μmとしたものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、複合ガスバリア積層体を製造した。 得られた複合ガスバリア積層体のカール量及び水蒸気透過率を測定したところ、カール量は1mm以下、水蒸気透過率は8×10−3g/m2・dayであった。しかし、この複合ガスバリア積層体をチャンバ中に配置し、実施例1と同様に真空ポンプによりチャンバから空気を排気したところ、約20時間後でもチャンバ内圧力は6×10−4torrであり、30時間後で2×10−4torrであり、真空排気に時間がかかった。

[検討] 実施例1及び2で得られた複合ガスバリア積層体は、カール量が小さい。このことから、本発明により、カールを生じ難い複合ガスバリア積層体を実現できることが分かる。

また、比較例1では、ガスバリア性が高温環境において低下した。さらに、比較例2では、折り曲げにより容易にクラックが生じてガスバリア性が損なわれた。また、比較例3では、低圧環境においては複合ガスバリア積層体からガスが生じ、結果的にガスバリア性が低くなった。これに対し、実施例1及び2で得られた複合ガスバリア積層体は、高温環境でのガスバリア性の低下、折り曲げによるクラックの発生、及び複合ガスバリア積層体自体からのガスの発生が抑制されている。このことから、本発明により、柔軟で可撓性に優れ、ガスバリア性を良好に維持し易い複合ガスバリア積層体を実現できることが分かる。

10 ガスバリア積層体(A) 11 フィルム(a) 12 無機層(a) 20 ガスバリア積層体(B) 21 フィルム(b) 22 無機層(b) 30 スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂の層(フィルム(c)) 40 透明電極 100 複合ガスバリア積層体 210,220 加圧ロール 300 複合電極

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