円管の内壁への被覆部材の取付方法

申请号 JP2013249847 申请日 2013-12-03 公开(公告)号 JP2015105564A 公开(公告)日 2015-06-08
申请人 関東天然瓦斯開発株式会社; 发明人 伊木 利一;
摘要 【課題】施工時間を短縮し、被覆部材の強度を確保する。 【解決手段】第1の樹脂を含浸させた第1のシートを所定の 曲率 半径で保持しながら第1の樹脂を硬化させることで、第1のシートに所定の 曲率半径 で湾曲した形状を記憶(S1)。第1のシートを、所定の曲率半径よりも小さい半径を有し径方向に拡径可能な円筒状のパッカーに巻き付けて仮固定(S3)。複数のシートを第2の樹脂で貼り合わせてシート積層体を形成(S2)。第1のシートの外面に第3の樹脂を介してシート積層体を巻き付けて被覆部材を形成し、シート積層体をパッカーに仮固定(S4)。被覆部材のシート積層体の外面に第4の樹脂を塗布し、パッカーを円管に挿入(S5)。パッカーを拡径し、第1のシート及びシート積層体の仮固定を解除し、被覆部材を第4の樹脂を介して円管の内壁に押し付ける(S6)。パッカーを円管から引出し(S7)、樹脂を硬化(S8)。 【選択図】図1
权利要求

第1のシートとシート積層体とを有する被覆部材の円管の側壁への固定方法であって、 第1の樹脂を含浸させた第1のシートを所定の曲率半径で保持しながら前記第1の樹脂を硬化させることで、前記第1のシートに前記所定の曲率半径で湾曲した形状を記憶させることと、 湾曲した形状が記憶された前記第1のシートを、前記所定の曲率半径よりも小さい半径を有し径方向に拡径可能な円筒状のパッカーに巻き付けて仮固定することと、 複数のシートを第2の樹脂で貼り合わせてシート積層体を形成することと、 前記パッカーに巻き付けられた前記第1のシートの外面に、第3の樹脂を介して前記シート積層体を巻き付けて前記被覆部材を形成し、前記シート積層体を仮固定することと、 前記被覆部材の前記シート積層体の外面に第4の樹脂を塗布することと、 前記パッカーを、前記所定の曲率半径より小さく前記第4の樹脂の外面の半径よりも大きい半径を有する円管に挿入することと、 前記パッカーを前記円管内で拡径し、前記第1のシート及び前記シート積層体の仮固定を解除し、前記被覆部材を前記第4の樹脂を介して前記円管の内壁に押し付けることと、 前記パッカーを前記円管から引き出すことと、 前記第2、第3、第4の樹脂を硬化させて、前記被覆部材を前記円管の側壁に固定することと、 を有する、円管の内壁への被覆部材の取付方法。前記第1のシートと前記シート積層体の各シートは、前記円管の軸方向における2つの軸方向端部と、前記円管の前記軸方向に測った軸方向長さと、前記円管の前記軸方向と直交する向きに測った幅とを有し、 前記第1のシートの2つの前記軸方向端部の幅は実質的に前記円管の内側周長に等しく、 前記第1のシートは、前記第1のシートの前記軸方向端部の幅よりも小さい一定の幅を有する一定幅部と、前記一定幅部を前記軸方向に挟んで位置し、前記第1のシートのそれぞれの前記軸方向端部に向けて幅が漸増する2つの幅漸増部と、を有し、 前記シート積層体の各シートの前記軸方向長さは、前記第1のシートに巻き付けられたときに外側に位置するシートほど大きく、 前記シート積層体の各シートは、前記第1のシートに巻き付けられたときに外側に位置するシートほど、その2つの軸方向端部が前記第1のシートの対応する前記軸方向端部に近接するように、かつ前記各シートの2つの前記軸方向端部が前記第1のシートの対応する前記幅漸増部に位置するように積層され、前記被覆部材の軸方向両側端部に、前記第1のシートのそれぞれの前記軸方向端部に向けて径方向厚さが減少するテーパ部が形成される、請求項1に記載の取付方法。複数の前記被覆部材を順次前記円管の側壁に固定することを含み、隣接して形成される各被覆部材は、先に設置される前記被覆部材と後に形成される前記被覆部材の対向する前記テーパ部同士が重なり合って、後に設置される前記被覆部材の前記テーパ部が先に設置される前記被覆部材の前記テーパ部の内面上に乗り上げるように設置される、請求項2に記載の取付方法。前記先に設置される被覆部材と前記後に形成される被覆部材の対向する前記テーパ部同士は前記軸方向に完全に重なり合わせられる、請求項3に記載の取付方法。前記シート積層体の各シートは、前記円管の前記軸方向と平行な辺を幅方向に順次ずらして貼り合される、請求項1から6のいずれか1項に記載の取付方法。前記シート積層体の最外周のシートを除く各シートは、前記円管の側壁に固定されたときに、周方向に重なる部分を生じる、請求項1から5のいずれか1項に記載の取付方法。前記パッカーの軸方向中央領域が前記軸方向中央領域を挟んだ両側の端部領域より先に拡径されるように、前記第1のシートを前記パッカーに巻き付ける前に前記パッカーの前記両側の端部領域が仮固定される、請求項1から6のいずれか1項に記載の取付方法。前記第1のシートと前記シート積層体の前記仮固定は、それぞれ前記第1のシートと前記シート積層体の外面に紙テープを巻き付けることによって行われ、前記仮固定の解除は、前記パッカーを拡径し、それによって前記紙テープを破断させることによって行われる、請求項1から7のいずれか1項に記載の取付方法。前記シート積層体はガラスクロスと、チョップドストランドマットと、ロービングクロスと、を含んでいる、請求項1から8のいずれか1項に記載の取付方法。前記シート積層体は鉛シートを含んでいる、請求項1から9のいずれか1項に記載の取付方法。前記第1から第4の樹脂の少なくともいずれかは硫酸バリウムを含んでいる、請求項1から10のいずれか1項に記載の取付方法。前記円管は裸坑、石油坑井管、ガス坑井管、井戸、温泉井、還元井、または高レベル放射性廃棄物貯蔵用の岩盤内空洞を含む、内面が円筒形の円管である、請求項1から11のいずれか1項に記載の取付方法。

说明书全文

本発明は円管の内壁への被覆部材の取付方法に関し、特に裸坑、石油井戸、ガス井戸、温泉井、井戸、還元井等の内壁への被覆部材の取付方法に関する。

裸坑、石油井戸、ガス井戸、温泉井、水井戸、還元井等の地中に設置される円管を補修する方法が知られている。特許文献1によれば、径方向に拡張可能なパッカーにポリエチレンフィルムが巻き付けられ、その上に樹脂を含浸させた被覆部材が巻き付けられる。パッカーは次に円管内に吊り降ろされ、径方向に拡張される。被覆部材は円管の内壁に押し付けられ、樹脂が硬化するまでその状態が維持される。その後、パッカーを引き上げることにより、円管の補修が終了する。

特許文献2によれば、長手方向に一端から他端まで延びるスリットを備えた被覆部材がパッカーに巻き付けられる。被覆部材はあらかじめ円管の内径よりも小さな外径となるように縮径される。具体的には、被覆部材は径方向に拡張可能なパッカーに巻き付けられ、スリットの周方向両端が重なり合うように径方向に収縮させられる。被覆部材の外面に接着剤が塗布され、パッカーが円管内に吊り降ろされ、径方向に拡張される。被覆部材の弾性反発によって被覆部材は円管の内壁に押し付けられる。この方法によれば、被覆部材は自らの弾性反発力によって円筒内で保持されるため、パッカーを早期に引き上げることができる。

特開2001−20653号公報

特開2010−77767号公報

特許文献1に記載の方法では、樹脂が硬化するまでパッカーを引き上げることができない。円筒の内壁に付着する樹脂が硬化しなければならないのは勿論、ポリエチレンフィルムに付着した樹脂が硬化しないと、パッカーを収縮させることすらできない。同文献によれば約24時間パッカーを円管内に保持することが必要であり、施工時間の短縮が困難である。特許文献2に記載の方法は、被覆部材の径方向への収縮を容易に行うために被覆部材の厚みが制限され、被覆部材の強度の確保が困難である。

本発明は、施工時間が短く、被覆部材の強度の確保が容易な、円管の内壁への被覆部材の取付方法を提供することを目的とする。

本発明に係る円管の内壁への被覆部材の取付方法は、第1のシートとシート積層体とを有する被覆部材の円管の側壁への固定方法に関する。本取付方法は、第1の樹脂を含浸させた第1のシートを所定の曲率半径で保持しながら第1の樹脂を硬化させることで、第1のシートに所定の曲率半径で湾曲した形状を記憶させることと、湾曲した形状が記憶された第1のシートを、所定の曲率半径よりも小さい半径を有し径方向に拡径可能な円筒状のパッカーに巻き付けて仮固定することと、複数のシートを第2の樹脂で貼り合わせてシート積層体を形成することと、パッカーに巻き付けられた第1のシートの外面に、第3の樹脂を介してシート積層体を巻き付けて被覆部材を形成し、シート積層体を仮固定することと、被覆部材のシート積層体の外面に第4の樹脂を塗布することと、パッカーを、所定の曲率半径より小さく第4の樹脂の外面の半径よりも大きい半径を有する円管に挿入することと、パッカーを円管内で拡径し、第1のシート及びシート積層体の仮固定を解除し、被覆部材を第4の樹脂を介して円管の内壁に押し付けることと、パッカーを円管から引き出すことと、第2、第3、第4の樹脂を硬化させて、被覆部材を円管の側壁に固定することと、を有している。

第1のシートは所定の曲率半径で湾曲した形状を記憶している。第1のシートは所定の曲率半径よりも小さい半径を有するパッカーに巻き付けられるため、円管に挿入後、パッカーが拡径され仮固定が解除されることによって弾性反発力を生ずる。これによって第1のシートに巻き付けられたシート積層体は円管の内壁に押し付けられ、第4の樹脂によって円管の内壁に固定される。パッカーは第2〜第4の樹脂の硬化まで円管内に留まる必要がなく、直ちに円管から引き上げることができるので、施工時間の短縮が可能である。被覆部材は第1のシートとシート積層体からなっているので、必要な強度を確保することが容易である。このように、本発明によれば、施工時間が短く、被覆部材の強度の確保が容易な、円管の内壁への被覆部材の取付方法を提供することができる。

本発明の一実施形態に係る被覆部材の取付方法を示すステップ図である。

芯金の断面図である。

芯金に巻き付けられた第1のシートを示す斜視図である。

第1のシートの平面図である。

シート積層体の構成を示す模式図である。

パッカーの側方図である。

パッカーに巻き付けられた第1のシートを示す側方図である。

パッカーに巻き付けられたシート積層体を示す側方図である。

被覆部材の円管内部への挿入及び取付方法を示す概念図である。

円管内の所定の位置まで吊り降ろされたパッカーを示す側方図である。

円管内の所定の位置で拡径されたパッカーを示す側方図である。

第2の被覆部材の円管の側壁への固定方法を示す模式図である。

高レベル放射性廃棄物の地層処分への本発明の適用を示す概念図である。

以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明は、石油坑井管、ガス坑井管、水井戸、温泉井、還元井などの開口が地表面に露出し鉛直方向に延びる円管や、裸坑などの、内面が円筒形のあらゆる種類の円管に好適に適用できる。本発明は、開口が地表面に露出し、水平または斜めに直線状に延びる円管や裸坑、内部に地下水等の液体が存在する円管や裸坑、高レベル放射性廃棄物の地層処分用の岩盤内空洞にも好適に適用できる。本発明は、円管や裸坑の補修に好適に適用できるほか、新規の井戸の円管や裸坑にも適用することができる。

図1に、本発明の一実施形態に係るステップ図を示している。以下、同図に示すステップに従い、円管の内壁への被覆部材の取付方法を説明する。以下に記載される実施例は内径70mmの円管に被覆部材を固定する場合の一例である。

(ステップS1:第1のシートの作成) 本発明では、第1のシートとシート積層体とで構成される被覆部材が円管の側壁に固定される。第1のシートとシート積層体は別々に作成され、その後パッカー上で一体化される。本実施形態ではまず第1のシートが作成されるが、先にシート積層体を作成することも可能である。

まず、ガラスクロスを最終仕上がり形状より大きく裁断し、第1のシート5を切り出す。ガラスクロスはガラス繊維をフェルト状に加工したクロスであり、実施例ではJIS規格WF230−100BS6(厚さ0.25mm)のクロス(日東紡績株式会社製)が用いられる。次に、第1のシート5に第1の樹脂21を含浸させる。第1の樹脂21は好ましくはエポキシ樹脂であり、実施例では主剤にビスフェノール系A型エポキシ樹脂を、硬化剤に変形ポリアミンまたは変性芳香族ポリアミンを用いている。

次に、第1のシート5を専用の芯金7に巻き付ける。図2に芯金の断面図を示す。芯金7は、外径の小さい部分7aと、外径の大きい部分7bと、外径の小さい部分7aと大きい部分7bとを接続し外径が漸増する部分7cと、を有している。実施例では、外径150mmの鉄製パイプの外面を、長さ1900mmに渡って外径140mmまで削り、その両側の長さ100mmの範囲に、外径が140mmから150mmまで漸増する部分7cを設けている。このようにして製作された芯金7の外面にプラスチックテープを貼り、その上に、図3に示すように、第1の樹脂21が含浸された第1のシート5を巻き付ける。プラスチックテープを貼ることで、第1の樹脂21の硬化後に第1のシート5を芯金7から取り外しやすくなる。

第1のシート5は、第1の樹脂21の粘着力により芯金7に巻き付けられている。その状態が一定時間維持されることにより、第1のシート5が芯金7に巻き付けられたまま第1の樹脂21が硬化する。すなわち、第1のシート5を所定の曲率半径Rで保持しながら第1の樹脂21を硬化させることで、第1のシート5に所定の曲率半径Rで湾曲した形状が記憶させられる。実施例では、第1のシート5は両端部を除き所定の曲率半径R=70mmの湾曲形状を記憶する。その後、第1のシート5を取り外し、以下に述べる所定の形状に裁断する。第1のシート5は、好ましくは再び芯金7に巻き付けられ、湾曲した形状が保持される。

裁断後の第1のシート5の形状を説明するために、いくつかの用語について説明する。図4を参照すると、第1のシート5の「軸方向端部5a」は、円管の軸方向Pにおける2つの端部ないし端辺5aを意味する。円管の「軸方向長さ5L」は、円管の軸方向Pに測った第1のシート5の長さ5Lを意味する。円管の「幅5W」は、円管の軸方向Pと直交する向きに測った第1のシート5の横方向幅5Wを意味し、以下に述べるように円管の軸方向位置によって異なる値をとる。

第1のシート5の2つの軸方向端部5aの幅5Wは、円管の内側周長よりわずかに短くされている。これは、第1のシート5が円管の側壁に接触することを防止するためである。第1のシート5が円管の側壁に接触すると、第1のシート5がシート積層体6と円管の側壁との間に巻き込まれて、シート積層体6の円管の内壁への密着を阻害する可能性がある。実施例では、第1のシート5の軸方向端部5aの幅5Wは216mmである。これは周長に換算して約69mmである。第1のシート5は、軸方向端部5aの幅5Wよりも小さい一定の幅5Wを有する一定幅部5bと、一定幅部5bを軸方向Pに挟んで位置し、第1のシート5のそれぞれの軸方向端部5aに向けて幅5Wが漸増する2つの幅漸増部5cと、を有している。この形状は後述する被覆部材4のテーパ部を形成するために極めて重要である。一定幅部5bの幅は円管への取付後の被覆部材4の内径より僅かに短くされている。従って、被覆部材4の円管の側壁への取付後に第1のシート5が周方向に重なり合うことが防止される。実施例では取付後の被覆部材4の内径が61mmであり、一定幅部5bの幅は周長約60mmに相当する188mmである。図4には、実施例における第1のシート5の形状及び寸法を示している。

本実施形態ではあらかじめガラスクロスに形状を記憶させた後に所定の形状に裁断しているが、あらかじめガラスクロスを所定の形状に裁断し、第1の樹脂21を含浸させ、芯金7に巻き付けることもできる。

(ステップ2:シート積層体の作成) 複数のシートを第2の樹脂22で貼り合わせてシート積層体6を形成する。シート積層体6はガラスクロスと、チョップドストランドマットと、ロービングクロスと、から構成されている。チョップドストランドマットは、所定の長さに切断したストランドをランダムな方向に分散させて均一な厚みに積層し、マット状に形成したものである。チョップドストランドマットを用いることにより、全ての方向でシート積層体6の強度を高めることができる。ロービングクロスは、直径10〜15μmのフィラメント数百本を集束してストランドとし、これを所定の番手になるよう均一に引きそろえて束にしたものである。ロービングクロスを用いることにより、円管の軸方向Pにおけるシート積層体6の強度を高めることができる。

図5にシート積層体6の構成を示す。シート積層体6は7枚のシート、すなわち第1のガラスクロス1C、第1のチョップドストランドマット1G、第1のロービングクロス1R、第2のチョップドストランドマット2G、第2のガラスクロス2C、第3のチョップドストランドマット3G、第3のガラスクロス3Cがこの順で積層されて形成されている。実施例では、ガラスクロスにJIS規格WF230−100BS6、厚さ0.25mmのクロス(日東紡績株式会社製)を、チョップドストランドマットにJIS規格MC−380A−104SS、厚さ0.5mmのマット(日東紡績株式会社製)を、ロービングクロスにJIS規格WR−570C−100CS、厚さ0.5mmのクロス(日東紡績株式会社製)を用いている。

シート積層体6の各シートの「軸方向端部6a」、「軸方向長さ6L」及び「幅6W」も第1のシート5と同様に定義される。但し、シート積層体6の各シートは第1のシート5と異なり長方形の形状を有している。シート積層体6の各シートの軸方向長さ6Lは、第1のシート5に巻き付けられたときに外側に位置するシートほど大きい。後述するように、第1のシート5に巻き付けられたときに第1のガラスクロス1Cが最も外側に位置し、第3のガラスクロス3Cが最も内側に位置する。実施例では、第1のガラスクロス1Cの軸方向長さ6Lは2040mmであり、順次60mmずつ小さくなり、第3のガラスクロス3Cの軸方向長さ6Lは1680mmである。これに対し、各シートの幅6Wは同じであり、実施例では220mmである。

シート積層体6を作成するには、まず作業台の上に塩ビシートを引き、その上にポリエチレンビニールシートを貼り付ける。ポリエチレンビニールシートの上に第2の樹脂22を塗布し、第1のガラスクロス1Cを置き、第2の樹脂22を含浸させる。同様にして第1のチョップドストランドマット1Gから第3のガラスクロス3Cまでのシートを第2の樹脂22で含浸させながら重ね合わせていく。この際、各シートの円管の軸方向Pにおける中心位置を一致させることで、各シートの2つの軸方向端部6aは直下のシートの2つの軸方向端部6aに対して内側に同じ距離だけずれる。実施例では各シートの軸方向端部6aは直下のシートの軸方向端部6aに対して30mm内側に位置している。一方、各シートの幅方向位置は直下のシートに対して同じ方向に順次ずらしていく。実施例では5mmずつ幅方向にずらされ、その結果図5に示すような位置関係で各シートが貼り合わされる。第2の樹脂22は好ましくはエポキシ樹脂であり、第1の樹脂21と同じ主剤と硬化剤を用いることができる。主剤と硬化剤の比率は第1の樹脂21に対し変更することができる。

(ステップ3:第1のシートのパッカーへの仮固定) 湾曲した形状が記憶された第1のシート5を円筒状のパッカー11に巻き付ける。図6に示すように、パッカー11は径方向に拡張可能な膨張ゴムエレメント11aを備え、窒素ガスなどの気体を高圧で供給することにより、膨張ゴムエレメント11aを径方向に拡張させることができる。実施例ではGeopro社(ベルギー)製のパッカーを用いている。パッカー11、すなわち膨張ゴムエレメント11aは、第1のシート5の形状記憶された所定の半径Rよりも小さな半径R1を有しており、実施例では42mmである。

まず、第1のシート5をパッカー11に巻き付ける前にパッカー11の両側の端部領域11bを仮固定する。具体的には、パッカー11の膨張ゴムエレメント11aの軸方向中央領域11cを挟んだ両側の端部領域11bに、プラスチックテープを巻き付ける。被覆部材4は軸方向中央領域11cの全域と、両側の端部領域11bのそれぞれの一部の領域に渡る領域4eに取り付けられる。実施例では軸方向中央領域11cの長さが1600mm、端部領域11bの長さが700mmである。プラスチックテープの種類、巻き方は膨張ゴムエレメント11aの拡張時にプラスチックテープが破断されるように選択する。これによって、膨張ゴムエレメント11aが拡張する際、まずプラスチックテープで固定されていない軸方向中央領域11cが先に拡径され、その後プラスチックテープで固定されている両側の端部領域11bが拡径される。両側の端部領域11bが先に拡径されると、軸方向中央領域11cと円管の内壁との間に閉じた空間ができ、この空間にある空気が残留する。このような残留空気(エア溜り)は被覆部材4の円管への密着性を著しく阻害する。軸方向中央領域11cが先に拡径されることにより、軸方向中央領域11cと円管の内壁との間に存在する空気が端部領域11bから排出され、有害なエア溜りが発生しにくくなる。

次に、図7に示すように、パッカー11の膨張ゴムエレメント11aの外面に第1のシート5を巻き付けて仮固定する。具体的には、まず膨張ゴムエレメント11a及びプラスチックテープの上に適度な伸縮性のあるプラスチックフィルムを巻き付ける。その上から第1のシート5をできるだけきつく巻き付け、紙テープで仮固定する。この際、第1のシート5は第1のシート5の凹面がパッカー11の外面と対向するように、すなわち第1のシート5の形状記憶された反りと同じ向きの反りでパッカー11に巻き付けられる。仮固定に用いられる紙テープの種類、巻き方は膨張ゴムエレメント11aの拡径時に紙テープが破断されるように選択する。

(ステップ4:シート積層体のパッカーへの仮固定) パッカー11に巻き付けられた第1のシート5の外面に、第3の樹脂23を介してシート積層体6を巻き付けて、シート積層体6を仮固定する。これによって、第1のシート5とシート積層体6とからなる被覆部材4が、パッカー11上に形成される。具体的には、仮固定されている第1のシート5の外面及び仮固定用の紙テープの外面に第3の樹脂23を塗布する。第3の樹脂23は第1の樹脂21と同じ組成のものであってよい。次に、図8に示すように、シート積層体6を、第3のガラスクロス3Cが第1のシート5と接する位置関係で第1のシート5の外面に巻き付ける。図8は、第1のガラスクロス1Cが最も手前に、第3のガラスクロス3Cが最も奥にあることを示している。シート積層体6は好ましくは、第3のガラスクロス3Cが張り出している辺8(図5参照)から巻き付けられる。シート積層体6の各シートは、外側に位置するシートほど、その2つの軸方向端部6aが第1のシート5の対応する軸方向端部5aに近接しており、かつ各シートの2つの軸方向端部6aは、第1のシート5の対応する幅漸増部5cに位置している。この結果、被覆部材4は、厚さ一定部4aと、その軸方向P両側端部に位置し、第1のシート5のそれぞれの軸方向端部5aに向けて径方向厚さが減少するテーパ部4bと、を備える(図10参照)。

シート積層体6は、シート積層体6の軸方向中心と第1のシート5の軸方向中心とが一致するように位置決めされる。従って、一番上にくる第1のガラスクロス1Cの2つの軸方向端部6aは第1のシート5の軸方向端部5aに対し、内側に同じ距離だけ離れている。実施例ではこの間隔は30mmである。シート積層体6の巻き付け完了後、シート積層体6を紙テープで仮固定する。仮固定に用いられる紙テープの種類、巻き方は膨張ゴムエレメント11aの拡径時に紙テープが破断されるように選択する。

(ステップ5:パッカーの円管への挿入) 被覆部材4のシート積層体6の外面に第4の樹脂24を塗布する。第4の樹脂24は第1の樹脂21と同じ組成のものであってよい。図9は、被覆部材の円管内部への挿入及び取付方法を示す概念図である。図9(a)に示すように、パッカー11は高圧ホース12を介して、制御ユニット13に設けられた高圧ガス供給部(図示せず)に接続されている。パッカー11は、高圧ガス供給部からの高圧ガス(例えば、窒素ガス)がその内部に導入されることによって、径方向に膨張可能となっている。

次に、図9(b)に示すように、高圧ホース12を介してパッカー11を円管16の内部の所定の位置17まで挿入する。図9(b),(c)では図9(a)に示した地上部の設備の図示は省略している。高圧ホース12はパッカー11を懸架する機能も有しており、三脚15で支持された幾つかの滑車14a,14bを介して、制御ユニット13に設けられた電動ウインチや油圧ウインチ等の駆動機構(図示せず)に接続されている。このため、駆動機構を作動させることによって、パッカー11に支持された被覆部材4を円管16の内部で昇降させることができる。

図10に、パッカー11が所定の位置まで吊り降ろされたときの状況を示す。円管16の半径R3は、所定の曲率半径Rより小さく第4の樹脂24の外面の半径R2よりも大きい。この時点で第1の樹脂21は硬化しているが、第2〜第4の樹脂22〜24は硬化しておらず、第1のシート5とシート積層体6の間、及びシート積層体6の隣接するシート間の相対移動は紙テープで拘束されているだけである。第1のシート5とシート積層体6をパッカー11にきつく巻いているため、被覆部材4の上下端のテーパ部4bはパッカー11に沿っており、テーパ部4bの外径は端部に向けて減少している。

(ステップ6:被覆部材の円管の側壁への固定) 次に、図9(c)に示すようにパッカー11を円管16内で拡径する。具体的には、高圧ガス供給部からパッカー11に高圧ガスをさらに供給して、パッカー11を膨張させる。図11にパッカー11が拡径されたときの状況を示す。パッカー11の拡径に伴い第1のシート5及びシート積層体6の各シートも拡径され、それによって第1のシート5及びシート積層体6をそれぞれ仮固定していた紙テープが破断され、第1のシート5及びシート積層体6の仮固定が解除される。第1のシート5及びシート積層体6の各シートは周方向に相対移動できるため、スムーズな拡径が可能である。被覆部材4は最終的に第4の樹脂24を介して円管16の内壁に押し付けられる。実施例ではステップ6を約30秒で実行することができる。被覆部材4のテーパ部4bはパッカー11に押し付けられるために円管16の内壁に沿っており、テーパ部4bの内径は端部に向けて増加している。

第1のシート5は形状記憶された所定の曲率半径Rよりも小さな半径R1でパッカー11に巻き付けられているため、仮固定が解除されると径を拡大させようとする弾性反発力を生じる。この弾性反発力は、第1のシート5自身だけでなく、シート積層体6をも円管16の内壁に沿って押し付ける。シート積層体6が円管16の内壁に押し付けられた後も、第1のシート5はさらに弾性反発力をシート積層体6にかけ続ける。従って、パッカー11の押し付け力がなくても、シート積層体6は第1のシート5によって円管16の内壁に保持される。

シート積層体6の最外周に位置する第1のガラスクロス1Cはほぼ円管16の周長に等しい幅を有している。実施例では、第1のガラスクロス1Cの幅は220mmであり、円管16の周長(70mm×π)とほぼ等しい。このため、第1のガラスクロス1Cは円管16の内壁に隙間なく、かつ重なり合うこともなく密着し、円管16の内部を円管16の外部から効果的にシールする。これに対し、シート積層体6の最外周のシートを除く各シートは、円管16の側壁に固定されたときに、周方向に重なる部分が生じる。実施例では、これらのシートの幅は全て220mmであり、被覆部材の4の円管16への固定時の半径方向位置における周長よりも大きい。周方向の重なり部分はシール性能を高める。上述のようにシート積層体6の各シートは幅方向にずらして貼り合わされているので、重なり位置は周方向に互いにずれている。このため、シート積層体6の厚さが局所的に大きく変動することはない。

(ステップ7:パッカーの円管からの引き出し) パッカー11を縮径して、円管16から引き出す。上述のように被覆部材4は第1のシート5の弾性反発力によって円管16の内壁に押さえつけられているため、ステップ6の終了後直ちにパッカー11を円管16から引き出すことができる。第1のシート5に含浸された第1の樹脂21は既に硬化しているため、第1のシート5とパッカー11の表面を覆うプラスチックフィルムとの間で大きな摩擦力や抵抗力が発生することもなく、パッカー11をスムーズに縮径することができる。

(ステップ8:被覆部材の円管への固定) 第2、第3、第4の樹脂22〜24を硬化させて、被覆部材4を円管16の側壁に固定する。樹脂は24時間程度で硬化し、被覆部材4が円管16の内壁にしっかりと固定される。本ステップは特別な作業を必要とせず、所定時間の経過を待つだけで終了する。

(ステップ9:第2の被覆部材の円管の側壁への固定) 被覆部材の長さはパッカーの長さで制限されるため、円管が長い場合、複数の被覆部材を順次円管の側壁に固定することが必要になる。2番目以降の被覆部材も上述のステップ1〜8に従い円圏の側壁に固定することができる。これらのステップのうち、ステップ1は現場でその都度実施することもできるし、あらかじめ工場などで複数の第1のシート5を製作しておくこともできる。複数のパッカーを利用できる場合、ステップ2〜4を現場で実施しておき、他のパッカーが円管から引き出された後に直ちにステップ5以降の工程を実施することができる。ここでは2つの被覆部材が円管の側壁に順次固定される場合を説明する。以下の説明で、先に設置される被覆部材を第1の被覆部材41とし、後に設置される被覆部材を第2の被覆部材42とする。

図12に、第2の被覆部材42の取付方法を示している。第1の被覆部材41は、上述のステップ1〜8に従い円管16に固定される。第2の被覆部材42も上述のステップ1〜8に従い円管16に固定されるが、ステップ5,6は以下のように実施される。まず、ステップ5では、図12(a)に示すように、第2の被覆部材42を保持するパッカー11の位置が、第1の被覆部材41と第2の被覆部材42の対向するテーパ部41b,42b同士が重なり合うように調整される。第2の被覆部材42のテーパ部42bと厚さ一定部42aとの境界42cが、第1の被覆部材41のテーパ部41bの先端41dと一致する位置まで、パッカー11が吊り降ろされる。第2の被覆部材42のテーパ部42bは、第1の被覆部材41のテーパ部41bに対し円管の軸方向Pに部分的に重なっていてもよいが、好ましくは軸方向Pに完全に重なり合わせられ、かつ第1の被覆部材41のテーパ部41bだけに重ね合される。

ステップ6では、図12(b)に示すように、パッカー11が拡径させられる。第2の被覆部材42のテーパ部41bが第1の被覆部材41のテーパ部41bの内面に当接し、第1の被覆部材41のテーパ部41bの内面を押し付ける。第2の被覆部材42のテーパ部42bは、第1の被覆部材41のテーパ部41bの内面上に乗り上げるように設置される。この結果、第1の被覆部材41と第2の被覆部材42の境界部でも、厚さ一定部41a,42aと同程度のほぼ平坦な内面形状が得られる。また、前述した弾性反発力により、第2の被覆部材42の第1のシートは第2の被覆部材42を介して、第1の被覆部材41のテーパ部41bを径方向外側に押し付けるため、第1の被覆部材41と第2の被覆部材42の境界部においても高いシール性が得られる。3つ以上の被覆部材がある場合、ステップ9を必要な回数繰り返すことができる。

実施例では第1のシート5の軸方向長さが2100mm、テーパ部41bの軸方向長さが210mmであるため、第1の被覆部材41におけるパッカー11の鉛直方向深さよりも1890mm(2100mm−210mm)浅い位置にパッカー11をセットし、第1の被覆部材41と第2の被覆部材42が210mmの長さで重複するようにした。

本発明は、高レベル放射性廃棄物の地層処分に適用することもできる。図13は高レベル放射性廃棄物の地層処分の概念を示す図である。図13(a)に示すように、地上に設置された高レベル放射性廃棄物の受け入れ設備51から地下の岩盤52まで立坑53が延びており、岩盤52内には立坑53と接続する横坑54が延びている。横坑54からは岩盤内空洞である多数の処分坑55が鉛直方向に延びている。処分坑55にはガラス固化体56を収容した金属製の容器であるオーバーパック57が設置される。収容坑56とオーバーパック57の間には、地下水を遮るための粘土からなる緩衝材58が充填される。収容坑55の底面にはFRP製の底部蓋59が設けられ、本発明に従い収容坑55の側壁に被覆部材4が設けられ、底部蓋59の周縁部と被覆部材4の下端が接着剤60で接着されている。さらに処分坑55の上端にFRP製の頂部蓋61が設けられ、頂部蓋61の周縁部と被覆部材4の頂部が接着剤62で接着されている。このようにしてオーバーパック57を密閉することで、地下水の浸透をより一層効果的に防止することができる。この際、シート積層体と底部蓋59、頂部蓋61に鉛シートを含めることで、処分坑55の遮蔽性能を高めることができる。鉛シートは例えば第1のシート5と第1のガラスクロス1Cとの間に設けることができる。あるいは、第1〜第4の樹脂21〜24の少なくともいずれかに硫酸バリウムを含めることによっても同様の効果を奏することができる。高レベル放射性廃棄物の地層処分では、ガラス固化体、オーバーパック、緩衝材及び岩盤が放射性廃棄物に対する多重バリアとして機能するが、鉛シート及び硫酸バリウムを含む樹脂は、追加のバリアとして機能する。

本発明はさらに新規の井戸に適用することもできる。新規の井戸を設置する場合、裸坑に中空のケーシングを挿入し、裸坑とケーシングの間の環状の空間部(アニュラス部)にセメントスラリーを流し込み、固める方法が一般的にとられる。裸坑の側壁は通常岩石であるため、裸坑の側壁に本発明に従い被覆部材4を形成することで、井戸を完成させることができる。従来より、セメントスラリーがアニュラス部に十分に行き渡らない現象(チャネリング)や、セメントボンディング不良などの不具合が知られているが、本発明では被覆部材4を直接裸坑の側壁(岩石)に貼り付けるため、施工不良のリスクが低減する。また、裸坑の内部にセメントを介してケーシングを取り付ける工法では、完成時の井戸の内径が裸坑の内径に対して著しく縮小してしまうが、本発明では被覆部材の厚さは数mmに抑えることができるため、ほぼ裸坑の内径に等しい井戸を施工することができる。

1C 第1のガラスクロス 1G 第1のチョップドストランドマット 1R 第1のロービングクロス 2G 第2のチョップドストランドマット 2C 第2のガラスクロス 3G 第3のチョップドストランドマット 3C 第3のガラスクロス 4 被覆部材 4b テーパ部 5 第1のシート 6 シート積層体 7 芯金 11 パッカー 21〜24 第1〜第4の樹脂 41 第1の被覆部材 42 第2の被覆部材

QQ群二维码
意见反馈