接着性樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体

申请号 JP2013507411 申请日 2012-03-21 公开(公告)号 JPWO2012133008A1 公开(公告)日 2014-07-28
申请人 三井化学株式会社; 发明人 真也 大政; 真也 大政; 孝 佐久間; 孝 佐久間;
摘要 本発明の課題は、ガソリンや軽油と 接触 しても十分な接着強度を保ち、長期の耐久性及び高温 燃料 に対する耐久性に優れ、また高温時の接着強度も優れた、多層構造体に適した接着性樹脂組成物を提供することであり、本発明は、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体でグラフト変性され、且つ 密度 が930〜980kg/m3の範囲の変性エチレン重合体(A1)と密度が910〜929kg/m3の範囲の未変性エチレン重合体(A2)からなり、且つ、ASTM D 1238(190℃、2160g荷重)に準じて測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜3g/10分、密度が920〜930kg/m3、クロス分別クロマトグラフィー測定において85℃以下での溶出量が60重量%以下であることを特徴とする接着性樹脂組成物、および、当該接着性樹脂組成物を用いてなる多層構造体に関する。
权利要求
  • 不飽和カルボン酸もしくはその誘導体でグラフト変性され、且つ密度が930〜980kg/m 3の範囲の変性エチレン重合体(A1)2〜40重量%と密度が910〜929kg/m 3の範囲の未変性エチレン重合体(A2)60〜98重量%〔但し、(A1)+(A2)=100重量%とする〕を含有する接着性樹脂組成物であって、当該接着性樹脂組成物が、メルトフローレート(MFR)〔ASTM D 1238(温度:190℃、2160g荷重)〕が0.1〜3g/10分であり、密度が920〜930kg/m 3であり、クロス分別クロマトグラフィー測定において85℃以下での溶出量が60重量%以下であることを特徴とする接着性樹脂組成物。
  • 前記接着性樹脂組成物がさらに密度930〜980kg/m 3の範囲の未変性エチレン重合体(A3)0〜30重量%〔但し、(A1)+(A2)+(A3)=100重量%とする〕を含有する請求項1の接着性樹脂組成物。
  • 不飽和カルボン酸もしくはその誘導体のグラフト量が0.1〜5重量%の範囲内にある請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
  • ASTM D 256に準じて測定した−40℃雰囲気下におけるIzod衝撃強度が10kJ/m 2以上であることを特徴とする請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
  • 請求項1〜4のいずれかに記載の接着性樹脂組成物からなる接着層(A)、ポリエチレン樹脂層(B)、並びに、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物およびポリアミドよりなる群から選ばれる重合体層(C)を有することを特徴とする多層構造体。
  • エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物が、エチレン含有率15〜70モル%のエチレン・酢酸ビニル共重合体をケン化して得られるケン化度90〜100%の重合体である、請求項5に記載の多層構造体。
  • ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン11、MXDナイロン、アモルファスナイロン、若しくは共重合ナイロンの少なくとも何れかである請求項5に記載の多層構造体。
  • 層(B)と層(A)との間に、リグラインド層(D)を有してなる請求項5に記載の多層構造体。
  • 請求項5〜8のいずれかに記載の多層構造体からなる自動車燃料タンク。
  • 说明书全文

    本発明は、高温で溶出量が少なく、且つ、高温で溶出する重合体の分子量が高い変性エチレン重合体組成物からなる接着性樹脂組成物に関する。 さらに詳しくは、ガソリンや軽油と接触しても十分な層間接着強度を保ち、高温下の層間接着性にも優れ、耐衝撃性に優れ、さらには長期の耐久性及び高温燃料に対する耐久性に優れる接着樹脂組成物、および高温のガソリンや軽油に対して、長期の耐久性に優れ、低温落下衝撃強度に優れた自動車燃料タンクとして好適に用いられる多層構造体に関する。

    自動車用燃料タンクとして好適な多層構造体として、ポリエチレン樹脂層/接着剤層/エチレン・酢酸ビニル共重合ケン化物層(以下、「EVOH」と略記することがある)あるいはポリエチレン樹脂/接着剤およびエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物の混合物層からなる多層構造体が提案されている(例えば、特許文献1)。

    かかる多層構造体の接着剤層としては、一部もしくは全体が酸無物でグラフト変性されたエチレン重合体からなる組成物が使用されている。 しかしながら、密度が低い変性エチレン重合体を用いた場合は、燃料油浸漬時に接着剤層に膨潤が発生する虞があり、また、高温時の接着強度が低くなる虞がある。 一方、密度が高い変性エチレン重合体を用いた場合は、得られる多層構造体の低温落下衝撃強度が低下する虞がある。

    また、自動車用燃料タンクに対する要求性能はより厳しくなっており、例えば、ディーゼル車のコモンレール方式の採用により、これまでの要求性能に加えて、高温燃料接触下における長期の耐久性維持が要求されている。 そして、具体的な要求としては、高温燃料接触下においても長期間多層積層構造の各層に剥離などが生じないこと、ピンチオフ部の剥離がないことなどが挙げられる。

    特開平10−156978号公報

    本発明の目的は、ガソリンや軽油と接触しても十分な接着強度を保ち、長期の耐久性及び高温燃料に対する耐久性に優れ、また高温時の接着強度も優れた、多層構造体に適した接着性樹脂組成物を提供することにある。

    さらに本発明の他の目的は、ガソリンや軽油と接触しても十分な接着強度を保ち、長期の耐久性に優れ、また高温時の接着強度も優れた、自動車燃料タンク用として好適な多層構造体を提供することにある。

    本発明者らは鋭意検討した結果、特定の物性を有する接着性樹脂組成物、および当該接着性樹脂組成物から得られる多層構造体が、前記課題を解決する優れた効果を奏することを見出し、本発明を完成させた。

    すなわち、本発明は、
    [1]不飽和カルボン酸もしくはその誘導体でグラフト変性され、且つ密度が930〜980kg/m 3の範囲の変性エチレン重合体(A1)2〜40重量%と密度が910〜929kg/m 3の範囲の未変性エチレン重合体(A2)60〜98重量%〔但し、(A1)+(A2)=100重量%とする〕を含有する接着性樹脂組成物であって、当該接着性樹脂組成物が、メルトフローレート(MFR)〔ASTM D 1238(温度:190℃、2160g荷重)〕が0.1〜3g/10分であり、密度が920〜930kg/m 3であり、クロス分別クロマトグラフィー測定において85℃以下での溶出量が60重量%以下であることを特徴とする接着性樹脂組成物。
    であり、好ましくは以下のいずれかである。
    [2]接着性樹脂組成物がさらに密度930〜980kg/m 3の範囲の未変性エチレン重合体(A3)0〜30重量%〔但し、(A1)+(A2)+(A3)=100重量%とする〕を含有する前記の接着性樹脂組成物。
    [3]不飽和カルボン酸もしくはその誘導体のグラフト量が0.1〜5重量%の範囲内にある前記の接着性樹脂組成物。
    [4]ASTM D 256に準じて測定した−40℃雰囲気下におけるIzod衝撃強度が10kJ/m 2以上である前記の接着性樹脂組成物。
    [5]前記の接着性樹脂組成物からなる接着層(A)、ポリエチレン樹脂層(B)、並びに、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物およびポリアミドよりなる群から選ばれる重合体層(C)を有することを特徴とする多層構造体。
    [6]エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物が、エチレン含有率15〜70モル%のエチレン・酢酸ビニル共重合体をケン化して得られるケン化度90〜100%の重合体である、前記の多層構造体。
    [7]ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン11、MXDナイロン、アモルファスナイロン、若しくは共重合ナイロンの少なくとも何れかである前記の多層構造体。
    [8]層(B)と層(A)との間に、リグラインド層(D)を有してなる前記の多層構造体。
    [9]前記の多層構造体からなる自動車燃料タンク。

    本発明の接着性樹脂組成物は、多層構造体の接着層に用いた場合に、初期接着強度及びガソリンや軽油と接触後の接着強度が高く、高温時の接着強度に優れ、長期の耐久性及び高温燃料に対する耐久性に優れる多層構造体が得られる。

    また、本発明の接着性樹脂組成物を用いることで、高温のガソリンや軽油と接触しても十分な接着強度を保ち、長期の耐久性に優れ、低温落下衝撃強度に優れた自動車燃料タンクとして好適に用いられる多層構造体が提供される。

    <変性エチレン重合体(A1)>
    本発明の接着性樹脂組成物を構成する成分の一つである変性エチレン重合体(A1)は、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体でグラフト変性された重合体であり、密度が930〜980kg/m 3 、好ましくは940〜970kg/m 3の範囲にある。 かかる範囲の密度の変性エチレン重合体(A1)を用いることにより耐熱接着性の優れた組成物が得られやすい。 密度が930kg/m 3未満の変性エチレン重合体を用いた場合は、未変性エチレン重合体と配合して得られる接着性樹脂組成物は、クロス分別クロマトグラフィー測定において85℃以下での溶出量が60重量%を超える虞がある。

    本発明に係る変性エチレン重合体(A1)のメルトフローレート(MFR)〔ASTM D 1238(190℃、2160g荷重)〕は、通常、0.01〜3.0g/10分、より好ましくは0.05〜1.5g/10分である。 MFRが0.01g/10分未満の重合体は、得られる接着性樹脂組成物の押出成形が困難になる場合があり、圧が上昇して成形機械の限界圧力を超える虞がある。 一方、MFRが3g/10分を越える重合体は、得られる接着性樹脂組成物を成形した場合に、成形品の厚薄の均一性が不良になり易く、また分子量が低下して多層構造体の落下衝撃強度が低下する虞がある。

    不飽和カルボン酸もしくはその誘導体のグラフト量は、通常、0.01〜10重量%、好ましくは0.02〜5重量%の範囲にある。 グラフト量が低すぎると、接着力が十分でない虞があり、高すぎると架橋反応が起こりやすくなり得られる変性エチレン重合体の品質が安定し難くなる。

    本発明に係る不飽和カルボン酸もしくはその誘導体としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸(エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−ジカルボン酸)等の不飽和カルボン酸;またはその誘導体、例えば酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等が挙げられる。 かかる誘導体の具体例としては、例えば塩化マレイル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられる。 これらの中では、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸、ナジック酸またはこれらの酸無水物が好ましく用いられる。

    本発明に係る変性エチレン重合体(A1)は、種々公知の方法、例えば、エチレン重合体を有機溶媒に溶解し、次いで得られた溶液に不飽和カルボン酸またはその誘導体及び必要に応じて有機過酸化物などのラジカル開始剤を加え、通常、60〜350℃、好ましくは80〜190℃の温度で、0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間反応させる方法、あるいは、押出機などを使用して、無溶媒で、エチレン重合体と、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体及び必要に応じて有機過酸化物などのラジカル開始剤を加え、通常、エチレン重合体の融点以上、好ましくは120〜350℃、0.5〜10分間反応させる方法を採り得る。

    本発明に係る変性エチレン重合体(A1)の元となる変性前のエチレン重合体は、エチレンの単独重合体あるいはエチレンとα−オレフィンとの共重合体である。 エチレンと共重合させるα−オレフィンは、炭素数3以上、好ましくは3〜10のα−オレフィンであり、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンおよびこれらの2つ以上の組み合わせ等を挙げることができる。 α−オレフィンの共重合量は、得られる密度が下記範囲にある限り、特に限定はされないが、通常、10モル%以下である。

    本発明に係る変性前のエチレン重合体は、得られる変性エチレン重合体(A1)の密度が上記範囲内にある限り特に限定はされないが、通常、密度が930〜980kg/m 3の範囲にあり、又、MFRは通常、0.1〜50g/10分の範囲にある。

    このようなエチレン重合体は、それ自体公知の方法、例えば高圧法あるいはチーグラー型のTi系触媒、Co系触媒、あるいはメタロセン系触媒等を用いる低圧法によって製造することができる。

    <未変性エチレン重合体(A2)>
    本発明の接着性樹脂組成物を構成する他の成分の一つである未変性エチレン重合体(A2)は、密度が、910〜940kg/m 3 、好ましくは915〜935kg/m 3の範囲にある。 密度が910kg/m 3未満の未変性エチレン重合体を用いた場合は、前記変性エチレン重合体と配合して得られる接着性樹脂組成物は、クロス分別クロマトグラフィー測定において85℃以下での溶出量が60重量%を超える虞がある。

    未変性エチレン重合体(A2)のMFR〔ASTM D 1238(190℃、2160g荷重)〕は、通常、0.01〜10g/10分の範囲であり、好ましくは0.10〜5g/10分の範囲である。 MFRが0.01g/10分未満の重合体は、得られる接着性樹脂組成物の押出成形が困難になる場合があり、圧力が上昇して成形機械の限界圧力を超える虞がある。 一方、MFRが10g/10分を超える重合体は、得られる接着性樹脂組成物を成形した場合に、成形品の厚薄の均一性が不良になり易く、また分子量が低下して多層構造体の落下衝撃強度が低下する虞がある。

    <接着性樹脂組成物>
    本発明の接着性樹脂組成物は、前記変性エチレン重合体(A1)を2〜40重量%、好ましくは10〜35重量%、及び前記未変性エチレン重合体(A2)を60〜98重量%、好ましくは65〜90重量%〔但し、(A1)+(A2)=100重量%とする〕含み、メルトフローレート(MFR)〔ASTM D 1238(190℃、2160g荷重)〕が0.1〜3g/10分、好ましくは0.5〜2.0g/10分の範囲、密度が920〜930kg/m 3 、好ましくは925〜929kg/m 3の範囲にあり、クロス分別クロマトグラフィー(以下、「CFC」と略記することがある。)測定において85℃以下での溶出量が60重量%以下、好ましくは55重量%以下であり、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)測定において 85℃以下での溶出量が好ましくは10重量%以上、より好ましくは40重量%以上であり、85℃を超える温度で溶出する成分の重量平均分子量(Mw)が好ましくは100,000以上、より好ましくは、120,000以上である。

    本発明の接着剤樹脂組成物は、好ましくは、グラフト変性された不飽和カルボン酸もしくはその誘導体の含有量が0.001〜10重量%であり、より好ましくは0.002〜1重量%である。 グラフト変性された不飽和カルボン酸もしくはその誘導体の含有量が低すぎると、接着力が十分でなく、高すぎると架橋反応が起こりやすくなり品質が安定し難くなる。

    MFRが上記範囲内あることにより、成形性が良好な接着性樹脂組成物となる。 又、MFRが3.0g/10分を超える接着性樹脂組成物は、CFC測定において、85℃を超える温度で溶出する成分のMwが100,000未満となる虞がある。

    密度が920kg/m 3未満の接着性樹脂組成物は、例えば、ガソリンタンクに用いた場合に、ガソリンにより膨潤し、機械的強度が低下する虞があり、又、80℃以上の高温での層間接着力が低下する傾向がある。 一方、密度が930kg/m 3を超える接着性樹脂組成物は、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物などとの多層構造体に用いた場合に、層間接着力が不安定となり易く、多層構造体の低温落下衝撃強度が低下する傾向がある。 又、密度が920kg/m 3未満の接着性樹脂組成物は、CFC測定において、85℃以下での溶出量が60重量%を超える虞がある。

    CFC測定における85℃以下での溶出量が60重量%を超える接着性樹脂組成物は、多層構造体に用いた場合に、ガソリンなどの燃料油に対しての膨潤量が多くなり、機械強度を失い易く、また高温時の接着強度も悪くなり易い。

    また、CFC測定における85℃を超える温度で溶出する成分のMwが100,000未満の接着性樹脂組成物は、多層構造体に用いた場合に、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物などとの高温時の接着強度が悪くなり易い。

    CFC測定において85℃以下での溶出量は、当業者であれば適宜調整できるが、例えば、密度が高くても組成分布が広い変性エチレン重合体を用いて得られた接着性樹脂組成物は、CFC測定において85℃以下での溶出量が60重量%を超える虞がある。

    本発明の接着性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D 256に準じて−40℃雰囲気下で測定したIzod衝撃強度が10kJ/m 2以上、好ましくは12kJ/m 2以上である。 −40℃雰囲気下におけるIzod衝撃強度が低いと多層構造体に用いた場合に、低温落下衝撃強度が低下する傾向がある。

    本発明の接着性樹脂組成物は、種々公知の方法、例えば、前記変性エチレン重合体(A1)と前記未変性エチレン重合体(A2)を上記範囲で、ヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダー、V−ブレンダー等によりドライブレンドする方法またはドライブレンドした後、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等により溶融混練する方法、若しくは、溶媒の存在下で、攪拌混合することによって調製することができる。

    本発明の接着性樹脂組成物は、前記変性エチレン重合体(A1)及び前記未変性エチレン重合体(A2)に加え、密度が、930〜980kg/m 3の未変性エチレン重合体(A3)を含んでいても良い。 未変性エチレン重合体(A3)を含む場合は、変性エチレン重合体(A1)、未変性エチレン重合体(A2)及び未変性エチレン重合体(A3)の合計量100重量%に対し、未変性エチレン重合体(A3)の量は30重量%以下であることが好ましい。 未変性エチレン重合体(A3)を加える場合は、前述の調整方法を同様に適用できる。

    本発明の接着性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加剤或いは他の重合体、ゴムなどを必要に応じて配合することができる。

    <多層構造体>
    本発明の多層構造体は、前記接着性樹脂組成物から形成される接着層(A)と、少なくとも当該接着層(A)の片側に形成されたポリエチレン樹脂層(B)と、当該接着層(A)の他の片側に形成されたバリア性樹脂層(C)とを有する。

    本発明の多層構造体は、ポリエチレン樹脂層(B)と接着剤層(A)との間に、リグラインド層(D)をさらに存在させることができる。 本発明に係るリグラインド層(D)とは、多層構造体を成形する場合に生じるバリ部分(不要部分)、多層構造体の回収品(スクラップ)、成形の際に生じる不良品などを粉砕、あるいは必要であれば、当該粉砕物を押出機等で溶融混練してなるもの(リグラインド)である。 又、リグラインド層(D)には、上記回収品のみからなる必要はなく、それに、例えば(B)層に用いたポリエチレン樹脂をブレンドして機械物性を向上させることもできる。

    本発明の多層構造体を構成する上記(A)、(B)、(C)および(D)には、本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤、安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等の自体公知の添加剤を配合することができる。

    〈ポリエチレン樹脂〉
    本発明の多層構造体のポリエチレン樹脂層(B)を構成するポリエチレン樹脂は、エチレンの単独重合体、あるいはエチレンとα−オレフィンとのランダム共重合体である。 α−オレフィンの共重合量は、ポリエチレン樹脂の密度が下記範囲内にある限り、特に限定はされないが、通常、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。 α−オレフィンとしては、炭素数3〜10のα−オレフィンが好ましく、具体的には、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等を挙げることができる。

    本発明に係るポリエチレン樹脂のメルトフローレート(MFR)〔ASTM D 1238(温度:190℃、荷重:2160g荷重)〕は、好ましくは、0.01〜3.0g/10分、より好ましくは0.05〜1.5g/10分の範囲であり、密度は、好ましくは0.940〜0.980g/cm 3 、より好ましくは0.950〜0.970g/cm 3の範囲にある。 MFRが上記範囲より大きいポリエチレン樹脂を用いた場合は、大型の多層構造体にした場合の衝撃強度が十分でなくなる虞があり、又、ブロー成形性に劣り、大型ブロー成形品からなる多層構造体を成形できにくくなる虞がある。 一方、MFRが上記範囲より小さいポリエチレン樹脂は押出し成形が難しい傾向にある。 密度が上記範囲より低いポリエチレン樹脂を用いた場合は、得られる多層構造体の燃料透過性が劣る虞がある。

    〈バリア性樹脂〉
    本発明の多層構造体のガスバリア樹脂層(C)を構成するバリア性樹脂は、バリア性を有する種々公知の樹脂、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリアミド樹脂、あるいは、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリルなどのバリア性に優れる樹脂を用い得るが、中でも、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリアミド樹脂が好ましい。

    〈エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物〉
    本発明に係るエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物〔エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)とも言う。 〕は、好ましくは、エチレン含有率15〜70モル%のエチレン・酢酸ビニル共重合体をケン化して得られるケン化度90〜100%の重合体である。 エチレン含有率が15モル%未満のケン化物は、融点と分解温度が接近しており、エチレン重合体中に細かく分散させることが困難になる虞がある。 また、エチレン含有率が大きくなりすぎると、バリア性が低下し本発明の目的に沿わなくなる虞がある。

    〈ポリアミド〉
    本発明に係るポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン11、MXDナイロン、アモルファスナイロン、共重合ナイロン等を例示することができる。

    〈多層構造体の具体例〉
    本発明の多層構造体の層構成としては、ポリエチレン樹脂層(B)〔以下、「PE層(B)」と略す。 〕/接着性樹脂組成物からなる接着層(A)〔以下、「接着層(A)」と略す。 〕/エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物層〔以下、「EVOH層」と略す。 〕(C−1)、PE層(B)/接着層(A)/ポリアミド樹脂層〔以下、「NY層」と略す。 〕(C−2)の3層構造のみならず;
    PE層(B)/リグラインド層(D)/接着層(A)/EVOH層(C−1)、PE層(B)/リグラインド層(D)/接着層(A)/ポリアミド樹脂の層(C)、PE層(B)/接着層(A)/EVOH層(C−1)/接着層(A)、PE層(B)/接着層(A)/NY層(C−2)/接着層(A)の4層構造。

    PE層(B)/リグラインド層(D)/接着層(A)/EVOH層(C−1)/接着層(A)、PE層(B)/リグラインド層(D)/接着層(A)/NY層(C−2)/接着層(A)、PE層(B)/接着層(A)/EVOH層(C−1)/接着層(A)/PE(B)、PE層(B)/接着層(A)/NY層(C−2)/接着層(A)/PE層(B)の5層構造。

    PE層(B)/リグラインド層(D)/接着層(A)/EVOH層(C−1)/接着層(A)/PE層(B)、PE層(B)/リグラインド層(D)/接着層(A)/NY層(C−2)/接着層(A)/PE層(B)の6層構造。

    PE層(B)/リグラインド層(D)/接着層(A)/EVOH層(C−1)/接着層(A)/リグラインド層(D)/PE層(B)、PE層(B)/リグラインド層(D)/接着層(A)/NY層(C−2)/接着層(A)/リグラインド層(D)/PE層(B)の7層構造等の層構造を取り得る。

    本発明の多層構造体は、例えば、前記(B)層に用いるポリエチレン樹脂、前記接着層(A)に用いる接着性樹脂組成物、前記(C)層に用いるバリア性樹脂、及び、必要に応じて、リグラインド層(D)に用いるリグラインド物をそれぞれ溶融しうる複数の押出機を用いて、各重合体等を溶融積層した後に押出機の先端から溶融パリソンとして共押出し、そして該パリソンを金型で囲繞した後にパリソン内部に加圧流体を注入して所定の形状に成形し、次いで冷却固化した後に取り出す、公知の共押出ブロー成形法で製造することができる。

    本発明の多層構造体は、燃料バリア性が優れ、耐衝撃強度が高く、かつ優れた層間接着力と耐久性、耐熱接着性を示すので、特に自動車等の燃料タンクとして好適に使用できる。

    次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれら実施例になんら制約されるものではない。

    なお、実施例および比較例における物性は以下の測定方法で行った。
    (1)MFR(g/10分)
    ASTM D 1238に準拠し、温度:190℃、2160g荷重で測定した。
    (2)密度(kg/m 3
    ASTM D 1505に準拠して測定した。
    (3)85℃以下での溶出量(g)
    クロス分別クロマトグラフィー(CFC)にて測定した。
    (4)85℃を超える温度で溶出する成分の重量平均分子量(Mw)
    クロス分別クロマトグラフィーにより、85℃、90℃、95℃、100℃での溶出成分を取り出し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により定法に従い溶出成分の重量平均分子量を測定した。
    (5)Izod衝撃強度(kJ/m 2
    ASTM D 256に準拠し、−40℃雰囲気下で測定した。
    (6)初期接着強度(N/10mm)
    多層構造体の初期接着強度は、4種6層の多層構造体の側面から10mm幅でサンプルを切り出し、内層側の接着性樹脂組成物〔(A)層〕とエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物層〔(C−1)層〕との間の接着強度を室温(23℃)及び80℃の恒温槽内で測定した。 剥離試験の測定方法はT−剥離法、剥離速度50mm/分とした。 この測定は5回行い、それらを平均した。
    (7)燃料浸漬後の接着強度(N/10mm)
    燃料浸漬後の接着強度は、初期接着強度と同様、4種6層の多層構造体の側面から10mm幅でサンプルを切り出し、65℃のFuel−C、65℃のCE50及び80℃の軽油中にそれぞれ2000時間浸漬した後、内層側の接着性樹脂組成物〔(A)層〕とエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物層〔(C−1)層〕との間の接着強度を室温(23℃)の恒温槽内で測定した。 剥離試験の測定方法はT−剥離法、剥離速度50mm/分とした。 この測定は5回行い、それらを平均した。
    (8)低温落下衝撃強度 低温落下衝撃強度は、4種6層の多層構造体にエチレングリコールを封入し、−40℃に冷却し、6mの高さから落下させた際に多層構造体に割れが発生するかどうかを評価した。 この測定は2回行い、目視にて割れの発生の有無を観察した。 低温落下衝撃強度の評価結果を表−2に示す。 観察による判定は次の通りである。

    ○:2回とも割れが観察されなかった。

    ×:少なくとも1回割れが観察された。

    実施例及び比較例の接着性樹脂組成物に用いた変性エチレン重合体(A1)〔以下、「変性PE」と記す。 〕及び未変性エチレン重合体(A2)〔以下、「PE」と記す。 〕を表1に示す。 また、表中MAH量とは、不飽和カルボン酸またはその誘導体である無水マレイン酸のグラフト量を表す。

    〔実施例1〕


    表1に記載の変性PE−1:30重量%と、PE−1:70重量%とを単軸押出機を用いて230℃で溶融混練し、接着性樹脂組成物(接着樹脂−1)を得た。 次いで、(A)層用の重合体として、接着樹脂−1、(B)層用の重合体として、密度が950kg/m

    3 、2160g荷重における190℃のMFRが6g/10分の高密度ポリエチレン、(C)層用の重合体として、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(株式会社クラレ製、商品名:エバールF101B)を使用し、且つ、(D)層には、(A)層、(B)層及び(C)層を含む層が混在している該多層構造体を粉砕したリグラインド材を使用し、(B)層/(D)層/(A)層/(C)層/(A)層/(B)層をこの順序で共押出ブローダイ(ダイ温度230℃に設定)よりパリソンとして押出し、金型で挟んだ後に圧縮空気をパリソン内に吹き込み、冷却後取り出すことにより、厚み比率が13/40/2/3/2/40%、総� ��みが6mm、容積が40Lである4種6層からなる多層構造体を得た。

    得られた多層構造体の物性を上記方法で測定した。 結果を表2に示す。

    〔実施例2〕
    実施例1で用いた接着樹脂−1に替えて、表2に記載の接着性樹脂組成物(接着樹脂−2)を用いる以外は、実施例1と同様に行い、4種6層からなる多層構造体を得た。

    得られた多層構造体の物性を上記方法で測定した。 結果を表2に示す。

    〔実施例3〕
    実施例1で用いた接着樹脂−1に替えて、表2に記載の接着性樹脂組成物(接着樹脂−3)を用いる以外は、実施例1と同様に行い、4種6層からなる多層構造体を得た。

    得られた多層構造体の物性を上記方法で測定した。 結果を表2に示す。

    〔比較例1〕
    実施例1で用いた接着樹脂−1に替えて、表2に記載の接着性樹脂組成物(接着樹脂−4)を用いる以外は、実施例1と同様に行い、4種6層からなる多層構造体を得た。

    得られた多層構造体の物性を上記方法で測定した。 結果を表2に示す。

    〔比較例2〕
    実施例1で用いた接着樹脂−1に替えて、表2に記載の接着性樹脂組成物(接着樹脂−5)を用いる以外は、実施例1と同様に行い、4種6層からなる多層構造体を得た。

    得られた多層構造体の物性を上記方法で測定した。 結果を表2に示す。

    〔比較例3〕
    実施例1で用いた接着樹脂−1に替えて、表2に記載の接着性樹脂組成物(接着樹脂−6)を用いる以外は、実施例1と同様に行い、4種6層からなる多層構造体を得た。

    得られた多層構造体の物性を上記方法で測定した。 結果を表2に示す。

    〔比較例4〕
    実施例1で用いた接着樹脂−1に替えて、表2に記載の接着性樹脂組成物(接着樹脂−7)を用いる以外は、実施例1と同様に行い、4種6層からなる多層構造体を得た。

    得られた多層構造体の物性を上記方法で測定した。 結果を表2に示す。

    [評価結果]


    表2に示すように、実施例1及び実施例2で得られた多層構造体は、すべての評価において良好な結果を示した。 また、CFC測定において85℃以下での溶出量が59重量%である実施例3は、CFC測定において85℃以下での溶出量が少ない実施例1及び実施例2に比べて接着強度が若干低くなったが、十分に使用できるレベルを維持している。

    一方、高密度の変性エチレン重合体と低密度の未変性エチレン重合体からなる組成物であっても、CFC測定において85℃以下での溶出量を調整せず、85℃以下の溶出量が60重量%を超えている比較例1および比較例2は、初期接着強度、燃料浸漬後の接着強度が低かった。 また、密度が930kg/m 3より大きく、−40℃雰囲気下でのIzod衝撃強度が10kJ/m 2以下であった比較例3および比較例4では低温落下衝撃強度が低かった。

    例えば、ディーゼル車のコモンレール方式の採用による高温燃料接触下における長期の耐久性維持、高温燃料接触下における長期間多層積層構造の各層剥離防止、ピンチオフ部の剥離防止など、自動車用燃料タンクにおいて、より高度な要求特性に対応可能であり、自動車の軽量化等に大いに寄与しうる接着性樹脂組成物である。

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