Brazing structure brazing material was brazed using the brazing composites and their

申请号 JP2006520495 申请日 2006-03-24 公开(公告)号 JP5084260B2 公开(公告)日 2012-11-28
申请人 株式会社Neomaxマテリアル; 发明人 剛 長谷川; 雅昭 石尾; 喜光 織田;
摘要
权利要求
  • Ni−Cr合金層からなるNi−Crろう付け 層と
    Ti層 または 、Al、Sn、V、SiおよびZrの少なくともいずれか1つの添加元素とTiとを含有する Ti合金層からなるTiろう付け 層と
    前記Ni−Crろう付け層と、前記Tiろう付け層との間に配置されるNi 層からなるNiろう付け 層との少なくとも3層構造からな り、
    前記Tiろう付け層中のTi量と、前記Niろう付け層中のNi量との合計を100質量%とした場合に、前記Niろう付け層中のNi量が21.5質量%以上37.5質量%以下である、ろう材。
  • 前記Ni−Cr合金層からなるNi−Crろう付け層のCrの含有率は、20質量%以上40質量%以下である、請求項1に記載のろう材
  • 前記Tiろう付け層の厚みt1と、前記Niろう付け層の厚みt2との比t2/t1は、1/8以上2/7以下である、請求項1 または2に記載のろう材。
  • 前記Tiろう付け層の厚みt1と、前記Niろう付け層の厚みt2との比t2/t1は、実質的に1/5である、請求項 に記載のろう材。
  • 前記Tiろう付け層は、第1Ti層 または 、Al、Sn、V、SiおよびZrの少なくともいずれか1つの添加元素とTiとを含有する第1Ti合金層からなる第1Tiろう付け 層と 、第2Ti層 または 、Al、Sn、V、SiおよびZrの少なくともいずれか1つの添加元素とTiとを含有する第2Ti合金層からなる第2Tiろう付け 層とを含み、
    前記Niろう付け層は、第1Ni 層からなる第1Niろう付け 層と 、第2Ni 層からなる第2Niろう付け 層とを含み、
    前記Ni−Crろう付け層と、前記第1Tiろう付け層との間に、前記第1Niろう付け層が配置されるとともに、前記Ni−Crろう付け層と、前記第2Tiろう付け層との間に、前記第2Niろう付け層が配置される5層構造からなる、請求項1〜 のいずれか1項に記載のろう材。
  • 前記Ni−Crろう付け層と、前記Tiろう付け層と、前記Niろう付け層とのうちの少なくともいずれか1つの層は、MoまたはCoのうちの少なくとも一方を含有する、請求項1〜 5のいずれか1項に記載のろう材。
  • 前記Ni−Crろう付け層と、前記Tiろう付け層と、前記Niろう付け層とのうちの少なくともいずれか1つの層に含有される全体のMoの含有量は、2.0質量%以上4.5質量%以下である、請求項 に記載のろう材。
  • 前記Ni−Crろう付け層と、前記Tiろう付け層と、前記Niろう付け層とのうちの少なくともいずれか1つの層に含有される全体のCoの含有量は、2.0質量%以上10.0質量%以下である、請求項 または に記載のろう材。
  • 鉄鋼により形成された基 板と
    前記基板の表面に圧延接合され、Ni−Cr合金層からなるNi−Crろう付け 層と 、Ti層 または 、Al、Sn、V、SiおよびZrの少なくともいずれか1つの添加元素とTiとを含有する Ti合金層からなるTiろう付け 層と 、前記Ni−Crろう付け層と前記Tiろう付け層との間に配置されるNi 層からなるNiろう付け 層との少なくとも3層構造からな り、前記Tiろう付け層中のTi量と、前記Niろう付け層中のNi量との合計を100質量%とした場合に、前記Niろう付け層中のNi量が21.5質量%以上37.5質量%以下であるろう 材とを備えた、ろう付け用複合材。
  • 前記Ni−Cr合金層からなるNi−Crろう付け層のCrの含有率は、20質量%以上40質量%以下である、請求項 に記載のろう付け用複合材
  • 前記Tiろう付け層の厚みt1と、前記Niろう付け層の厚みt2との比t2/t1は、1/8以上2/7以下である、請求項 9または10に記載のろう付け用複合材。
  • 前記Tiろう付け層の厚みt1と、前記Niろう付け層の厚みt2との比t2/t1は、実質的に1/5である、請求項 11に記載のろう付け用複合材。
  • 前記Ni−Crろう付け層と、前記Tiろう付け層と、前記Niろう付け層とのうちの少なくともいずれか1つの層は、MoまたはCoのうちの少なくとも一方を含有する、請求項 12のいずれか1項に記載のろう付け用複合材。
  • 前記ろう材は、2.0質量%以上4.5質量%以下のMoを含有する、請求項 13に記載のろう付け用複合材。
  • 前記ろう材は、2.0質量%以上10.0質量%以下のCoを含有する、請求項 13または 14に記載のろう付け用複合材。
  • 鉄鋼により形成された基 板と 、前記基板の表面に圧延接合され、Ni−Cr合金層からなるNi−Crろう付け 層、 Ti層 または 、Al、Sn、V、SiおよびZrの少なくともいずれか1つの添加元素とTiとを含有する Ti合金層からなるTiろう付け 層、および、前記Ni−Crろう付け層と前記Tiろう付け層との間に配置されるNi 層からなるNiろう付け 層の少なくとも3層構造からな り、前記Tiろう付け層中のTi量と、前記Niろう付け層中のNi量との合計を100質量%とした場合に、前記Niろう付け層中のNi量が21.5質量%以上37.5質量%以下であるろう 材とを備えたろう付け用複合 材を用いてろう付け接合されることにより形成された、ろう付け構造。
  • 少なくともろう付け接合された部分にTi−Ni−Cr合 金を含む、請求項 16に記載のろう付け構造。
  • 前記Ti−Ni−Cr合金中のTi量とNi量との合計を100質量%とした場合に、前記Ti−Ni−Cr合金中のNi量が59.5質量%以上70.0質量%以下である、請求項 17に記載のろう付け構造
  • 前記Ti−Ni−Cr合金のCrの含有率は、11質量%以上である、請求項 17または18に記載のろう付け構造。
  • ろう付け接合された部分は、MoまたはCoのうちの少なくとも一方を含有する、請求項 1619のいずれか1項に記載のろう付け構造。
  • 前記ろう付け接合された部分は、2.0質量%以上4.5質量%以下のMoを含有する、請求項 20に記載のろう付け構造。
  • 前記ろう付け接合された部分は、2.0質量%以上10.0質量%以下のCoを含有する、請求項 20または 21に記載のろう付け構造。
  • 说明书全文

    本発明は、ろう材、ろう付け用複合材およびそれらを用いてろう付け接合されたろう付け構造に関し、特に、ラジエータやガスクーラなどの熱交換器の流路を構成するろう材、ろう付け用複合材およびそれらを用いてろう付け接合されたろう付け構造に関する。

    近年、国際的に環境問題への関心が高まっており、その一環として燃料電池やマイクロガスタービンを用いたコージェネレーションシステムが開発され、広く普及している。 このコージェネレーションシステムを構成する熱交換器の内部には高温のガスが流れており、このガスの温度は発熱効率を向上させる目的から高温化する傾向にある。 このような高温下での厳しい使用環境に耐えることのできる熱交換器用材料として、従来、基材にステンレス鋼を用いるとともに、ろう材にニッケルろう(JIS BNi−1〜7)を用いた材料が知られている。 ニッケルろうは、耐酸化性および耐食性に優れている反面、塑性加工し難い材料であるので、一般的に液体急冷凝固法により粉末の状態で製造される。 このため、高価であるという不都合があった。 また、粉末状のニッケルろうにバインダを混合してペースト状にしたものを熱交換器の製造工程で基材であるステンレス鋼に塗布するので、ろう付け後に脱バインダの工程が必要であり、製造工程が複雑になるという不都合があった。

    ところで、従来、上記した液体急冷凝固法を用いることなく圧延接合を用いることによってMn−Ni−Cu合金からなるMn系金属層とNi系金属層との積層構造からなるろう材を製造するとともに、そのろう材を用いてステンレス鋼のろう付け接合を行う技術が提案されている。 このような技術は、たとえば、国際公開番号WO00/18537号公報に開示されている。 この国際公開番号WO00/18537号公報では、Mn−Ni−Cu合金に、CrやTiなどを合計量で5質量%以下となるように含有させることにより、耐酸化性を向上させている。

    また、従来、上記した液体急冷凝固法を用いることなく圧延接合により形成されたろう付け用複合材として、高い耐食性を有するTiまたはTi系合金層およびNiまたはNi系合金層の2層からなるTi−Ni系ろう材を用いる技術が知られている。 このような技術は、たとえば、特開2003−117678号公報に開示されている。 この特開2003−117678号公報では、Ni合金として、Ni−Cr−Fe系耐食耐熱超合金が挙げられている。

    しかしながら、上記国際公開番号WO00/18537号公報に開示された従来のろう材の一部を構成するMn−Ni−Cu合金は、合金中に耐食性の低いMnおよびCuが含まれているので、ろう付け接合による接合部の耐食性を向上させるのが困難であるという問題点がある。

    また、上記特開2003−117678号公報に開示された従来のTi−Ni系ろう材は、高い耐食性を有する一方、ろう付け接合による接合部の表面にCr の酸化皮膜(不働態膜)が生成されないので、高い耐酸化性を得るのが困難であるという問題点がある。 また、Ni合金として特開2003−117678号公報の中で挙げられているNi−Cr−Fe系耐食耐熱超合金を用いる場合にも、Ni−Cr−Fe系耐食耐熱超合金の融点温度が高い(約1800℃〜約2000℃)ため、ろう付け時のろう材とNi−Cr−Fe系耐食耐熱超合金との反応速度が遅くなる。 これにより、Ni−Cr−Fe系耐食耐熱超合金からろう付け接合部へのCrの拡散速度が遅くなるので、ろう付け接合部にCrが十分に供給されないという不都合がある。 これにより、ろう付け接合による接合部の表面に十分な量のCr の酸化皮膜(不働態膜)が生成されないので、高い耐酸化性を得るのが困難であるという問題点がある。

    この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、耐酸化性および耐食性の両方を向上させることが可能なろう材、ろう付け用複合材およびそれらを用いてろう付け接合されたろう付け構造を提供することを目的とする。

    上記目的を達成するために、この発明の第1の局面によるろう材は、Ni−Cr合金層からなるNi−Crろう付け層と、Ti層または、Al、Sn、V、SiおよびZrの少なくともいずれか1つの添加元素とTiとを含有する Ti合金層からなるTiろう付け層と、Ni−Crろう付け層と、Tiろう付け層との間に配置されるNi 層からなるNiろう付け層との少なくとも3層構造からなり、Tiろう付け層中のTi量と、Niろう付け層中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Niろう付け層中のNi量が21.5質量%以上37.5質量%以下である。

    この第1の局面によるろう材では、上記のように、Ni−Crろう付け層と、Tiろう付け層と、Niろう付け層とによりろう材を構成することによって、ろう付け接合による接合部にTi−Ni−Cr系合金が形成されるので、接合部の表面に容易にCr の酸化皮膜(不働態膜)を形成することができる。 これにより、ろう付け接合による接合部の耐酸化性を向上させることができる。 また、Ni−Crろう付け層と、Tiろう付け層と、Niろう付け層とによりろう材を構成することによって、ろう付け接合による接合部に高い耐食性を有するTi、NiおよびCrが含まれるので、ろう付け接合による接合部の耐食性を向上させることができる。 また、Niろう付け層をNi−Crろう付け層とTiろう付け層との間に配置することによって、ろう付け接合をする過程において、Tiろう付け層に含まれるTiと、Ni−Cr合金層に含まれるCrとが混ざり合う時間を短くすることができる。 これにより、Tiろう付け層に含まれるTiとNi−Cr合金層に含まれるCrとが反応することにより脆いTiCr が生成されるのを抑制することができるので、ろう付け接合による接合部が脆弱になるのを抑制することができる。 また、Ni−Crろう付け層と、Tiろう付け層と、Niろう付け層とによりろう材を構成することによって、ろう材が層状になるので、粉末状のろう材と異なり、ろう材の製造工程が複雑化するのを抑制することができる。 また、ろう材が層状になるので、粉末状のろう材を用いる場合に混合するバインダが不要となる。 これにより、層状のろう材を用いてろう付け接合を行った場合には、ろう付け接合した後に脱バインダを行う必要がないので、製造工程を簡略化することができる。 また、Niろう付け層中のNi量を21.5質量%以上にすることによって、約1220℃以下の温度でTiろう付け層中のTiとNiろう付け層中のNiとを溶融することができる。 これにより、約1220℃以上の高温を出させる特別な炉を用いることなく、Tiろう付け層中のTiとNiろう付け層中のNiとを溶融させることができる。 また、Niろう付け層中のNi量を37.5質量%以下にすることによって、Ni量を37.5質量%より大きくする場合と異なり、ろう付け接合による接合部にTi Niからなる金属間化合物が生成されるのを抑制することができる。 その結果、脆いTi Niがろう付け接合部に形成されるのを抑制することができるので、ろう付け接合による接合部が脆弱になるのを抑制することができる。

    上記第1の局面によるろう材において、好ましくは、Ni−Cr合金層からなるNi−Crろう付け層のCrの含有率は、20質量%以上40質量%以下である。 このように構成すれば、Ni−Cr合金層のCrの含有率を20質量%以上にすることによって、ろう付け接合による接合部の表面に十分な厚みのCr からなる酸化皮膜(不働態膜)を形成することができるので、高い耐酸化性を得ることができる。 また、Ni−Cr合金層のCrの含有率を40質量%以下にすることによって、Ni−Cr合金の延性が低下するのを抑制することができるので、冷間圧接などによる基板との接合を容易に行うことができる。

    上記第1の局面によるろう材において、Tiろう付け層の厚みt1と、Niろう付け層の厚みt2との比t2/t1は、1/8以上2/7以下にしてもよい。 このように構成すれば、Tiろう付け層中のTi量と、Niろう付け層中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Tiろう付け層中のTi量に対するNiろう付け層中のNi量を21.5質量%以上37.5質量%以下にすることができる。 その結果、Tiろう付け層と、Niろう付け層との厚みの比を1/8以上2/7以下に設定するだけで、特別な炉を必要としない約1220℃以下の温度でTiろう付け層中のTiとNiろう付け層中のNiとを溶融させることができ、かつ、ろう付け接合による接合部に脆いTi Niからなる金属間化合物が生成されるのを抑制することができるTiとNiとの組成(質量%)比にすることができる。

    この場合、Tiろう付け層の厚みt1と、Niろう付け層の厚みt2との比t2/t1を、実質的に1/5にしてもよい。 このように構成すれば、Tiろう付け層中のTi量と、Niろう付け層中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Niろう付け層中のNi量をろう付け時の初期段階の共晶組成である28.3質量%近傍の量にすることができる。 その結果、Tiろう付け層と、Niろう付け層との厚みの比を1/5に設定するだけで、容易に、ろう付け時の初期に共晶組成のTi−Ni合金を得ることができる。

    上記第1の局面によるろう材において、Tiろう付け層は、第1Ti層または、Al、Sn、V、SiおよびZrの少なくともいずれか1つの添加元素とTiとを含有する第1Ti合金層からなる第1Tiろう付け層と、第2Ti層または、Al、Sn、V、SiおよびZrの少なくともいずれか1つの添加元素とTiとを含有する第2Ti合金層からなる第2Tiろう付け層とを含み、Niろう付け層は、第1Ni 層からなる第1Niろう付け層と、第2Ni 層からなる第2Niろう付け層とを含み、Ni−Crろう付け層と、第1Tiろう付け層との間に、第1Niろう付け層が配置されるとともに、Ni−Crろう付け層と、第2Tiろう付け層との間に、第2Niろう付け層が配置される5層構造からなるようにしてもよい。 このように構成すれば、5層構造からなるろう材を用いてろう付け接合する場合に、ろう付けされる部材に接触する部分が第1Ti層(第2Ti層)または第1Ti合金層(第2Ti合金層)にすることができる。 これにより、ろう付け接合する過程において、Ni−Cr合金層の外側の層から溶融するので、容易に、ろう付け接合することができる。

    上記第1の局面によるろう材において、好ましくは、Ni−Crろう付け層と、Tiろう付け層と、Niろう付け層とのうちの少なくともいずれか1つの層は、MoまたはCoのうちの少なくとも一方を含有する。 このように構成すれば、ろう付け時に、ろう付け接合による接合部でCrとMoまたはCoとが合金を形成し、接合部の表面のCr濃度を増加するとともに、接合部の表面にCr の酸化皮膜をより十分に形成することができるので、ろう付け接合による接合部の耐酸化性をより向上させることができる。

    上記MoまたはCoのうちの少なくとも一方を含有するろう材において、好ましくは、Ni−Crろう付け層と、Tiろう付け層と、Niろう付け層とのうちの少なくともいずれか1つの層に含有される全体のMoの含有量は、2.0質量%以上4.5質量%以下である。 このように構成すれば、接合部の耐酸化性を、十分かつ効果的に向上させることができる。

    上記MoまたはCoのうちの少なくとも一方を含有するろう材において、好ましくは、Ni−Crろう付け層と、Tiろう付け層と、Niろう付け層とのうちの少なくともいずれか1つの層に含有される全体のCoの含有量は、2.0質量%以上10.0質量%以下である。 このように構成すれば、接合部の耐酸化性を、十分かつ効果的に向上させることができる。

    この発明の第2の局面によるろう付け用複合材は、鉄鋼により形成された基板と、基板の表面に圧延接合され、Ni−Cr合金層からなるNi−Crろう付け層と、Ti層または、Al、Sn、V、SiおよびZrの少なくともいずれか1つの添加元素とTiとを含有する Ti合金層からなるTiろう付け層と、Ni−Crろう付け層とTiろう付け層との間に配置されるNi 層からなるNiろう付け層との少なくとも3層構造からなり、Tiろう付け層中のTi量と、Niろう付け層中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Niろう付け層中のNi量が21.5質量%以上37.5質量%以下であるろう材とを備えている。

    この第2の局面によるろう付け用複合材では、上記のように、Ni−Crろう付け層と、Tiろう付け層と、Niろう付け層とから構成されるろう材を備えることによって、ろう付け接合による接合部にTi−Ni−Cr系合金が形成されるので、接合部の表面に容易にCr の酸化皮膜(不働態膜)を形成することができる。 これにより、ろう付け接合による接合部の耐酸化性を向上させることができる。 また、Ni−Crろう付け層と、Tiろう付け層と、Niろう付け層とから構成されるろう材を備えることによって、ろう付け接合による接合部に高い耐食性を有するTi、NiおよびCrが含まれるので、ろう付け接合による接合部の耐食性を向上させることができる。 また、Niろう付け層をNi−Crろう付け層とTiろう付け層との間に配置することによって、ろう付け接合をする過程において、Tiろう付け層に含まれるTiと、Ni−Cr合金層に含まれるCrとが混ざり合う時間を短くすることができる。 これにより、Tiろう付け層に含まれるTiとNi−Cr合金層に含まれるCrとが反応することにより脆いTiCr が生成されるのを抑制することができるので、ろう付け接合による接合部が脆弱になるのを抑制することができる。 また、Ni−Crろう付け層と、Tiろう付け層と、Niろう付け層との少なくとも3層構造からなる層状のろう材を基板に圧延接合することによりろう付け用複合材を形成することによって、液体急冷凝固法により形成した粉末状のろう材を用いる場合と異なり、ろう材の製造工程が複雑化するのを抑制することができる。 これにより、ろう付け用複合材の製造工程が複雑化するのを抑制することができる。 また、ろう材が層状になるので、粉末状のろう材を用いる場合に混合するバインダが不要となる。 これにより、層状のろう材を用いてろう付け接合を行った場合には、ろう付け接合した後に脱バインダを行う必要がないので、製造工程を簡略化することができる。 また、Niろう付け層中のNi量を21.5質量%以上にすることによって、約1220℃以下の温度でTiろう付け層中のTiとNiろう付け層中のNiとを溶融することができる。 これにより、約1220℃以上の高温を出力させる特別な炉を用いることなく、Tiろう付け層中のTiとNiろう付け層中のNiとを溶融させることができる。 また、Niろう付け層中のNi量を37.5質量%以下にすることによって、Ni量を37.5質量%より大きくする場合と異なり、ろう付け接合による接合部にTi Niからなる金属間化合物が生成されるのを抑制することができる。 その結果、脆いTi Niがろう付け接合部に形成されるのを抑制することができる。

    上記第2の局面によるろう付け用複合材において、好ましくは、Ni−Cr合金層からなるNi−Crろう付け層のCrの含有率は、20質量%以上40質量%以下である。 このように構成すれば、Ni−Cr合金層のCrの含有率を20質量%以上にすることによって、ろう付け接合による接合部の表面に十分な厚みのCr からなる酸化皮膜(不働態膜)を形成することができるので、高い耐酸化性を得ることができる。 また、Ni−Cr合金層のCrの含有率を40質量%以下にすることによって、Ni−Cr合金の延性が低下するのを抑制することができるので、冷間圧接などによる基板との接合を容易に行うことができる。

    上記第2の局面によるろう付け用複合材において、Tiろう付け層の厚みt1と、Niろう付け層の厚みt2との比t2/t1は、1/8以上2/7以下である。 このように構成すれば、Tiろう付け層中のTi量と、Niろう付け層中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Tiろう付け層中のTi量に対するNiろう付け層中のNi量を21.5質量%以上37.5質量%以下にすることができる。 その結果、Tiろう付け層と、Niろう付け層との厚みの比を1/8以上2/7以下に設定するだけで、特別な炉を必要としない約1220℃以下の温度でTiろう付け層中のTiとNiろう付け層中のNiとを溶融させることができ、かつ、ろう付け接合による接合部に脆いTi Niからなる金属間化合物が生成されるのを抑制することができるTiとNiとの組成(質量%)比にすることができる。

    この場合、Tiろう付け層の厚みt1と、Niろう付け層の厚みt2との比t2/t1を、実質的に1/5にしてもよい。 このように構成すれば、Tiろう付け層中のTi量と、Niろう付け層中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Niろう付け層中のNi量をろう付け時の初期段階の共晶組成である28.3質量%近傍の量にすることができる。 その結果、Tiろう付け層と、Niろう付け層との厚みの比を1/5に設定するだけで、容易に、ろう付け時の初期に共晶組成のTi−Ni合金を得ることができる。

    上記第2の局面によるろう付け用複合材において、好ましくは、Ni−Crろう付け層と、Tiろう付け層と、Niろう付け層とのうちの少なくともいずれか1つの層は、MoまたはCoのうちの少なくとも一方を含有する。 このように構成すれば、ろう付け時に、ろう付け接合による接合部でCrとMoまたはCoとが合金を形成し、接合部の表面のCr濃度を増加するとともに、接合部の表面にCr の酸化皮膜をより十分に形成することができるので、ろう付け接合による接合部の耐酸化性をより向上させることができる。

    上記MoまたはCoのうちの少なくとも一方を含有するろう付け用複合材において、好ましくは、ろう材は、2.0質量%以上4.5質量%以下のMoを含有する。 このように構成すれば、接合部の耐酸化性を、十分かつ効果的に向上させることができる。

    上記MoまたはCoのうちの少なくとも一方を含有するろう付け用複合材において、好ましくは、ろう材は、2.0質量%以上10.0質量%以下のCoを含有する。 このように構成すれば、接合部の耐酸化性を、十分かつ効果的に向上させることができる。

    この発明の第3の局面によるろう付け構造は、鉄鋼により形成された基板と、基板の表面に圧延接合され、Ni−Cr合金層からなるNi−Crろう付け層、Ti層または、Al、Sn、V、SiおよびZrの少なくともいずれか1つの添加元素とTiとを含有する Ti合金層からなるTiろう付け層、および、Ni−Crろう付け層とTiろう付け層との間に配置されるNi 層からなるNiろう付け層の少なくとも3層構造からなり、Tiろう付け層中のTi量と、Niろう付け層中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Niろう付け層中のNi量が21.5質量%以上37.5質量%以下であるろう材とを備えたろう付け用複合材を用いてろう付け接合されることにより形成されるのが好ましい。

    この第3の局面によるろう付け構造において、好ましくは、少なくともろう付け接合された部分にTi−Ni−Cr合金を含む。 このように構成すれば、ろう付け接合された部分の表面に容易にCr の酸化皮膜(不働態膜)を形成することができるので、ろう付け接合された部分の耐酸化性を向上させることができる。 また、ろう付け接合された部分にTi−Ni−Cr合金を含むことによって、ろう付け接合された部分に高い耐食性を有するTi、NiおよびCrが含まれるので、ろう付け接合された部分の耐食性を向上させることができる。

    上記Ti−Ni−Cr合金を含むろう付け構造において、好ましくは、Ti−Ni−Cr合金中のTi量とNi量との合計を100質量%とした場合に、Ti−Ni−Cr合金中のNi量が59.5質量%以上70.0質量%以下である。 このように構成すれば、第3の局面のろう付け構造を形成する際に、約1220℃以下の温度でTi−Ni−Cr合金を溶融することができる。 これにより、約1220℃以上の高温を出力させる特別な炉を用いることなく、第3の局面のろう付け構造を形成することができる。

    上記Ti−Ni−Cr合金を含むろう付け構造において、好ましくは、Ti−Ni−Cr合金のCrの含有率は、11質量%以上である。 このように構成すれば、Ti−Ni−Cr合金に十分な量のCrが含まれるので、ろう付け接合された部分の表面に十分な厚みを有するCr の酸化皮膜(不働態膜)を生成することができる。 これにより、ろう付け接合された部分の耐酸化性をより向上させることができる。

    上記第3の局面によるろう付け構造において、好ましくは、ろう付け接合された部分は、MoまたはCoのうちの少なくとも一方を含有する。 このように構成すれば、接合部の表面のCr濃度を増加するとともに、接合部の表面にCr の酸化皮膜をより十分に形成することができるので、ろう付け接合による接合部の耐酸化性をより向上させることができる。

    上記ろう付け接合された部分がMoまたはCoのうちの少なくとも一方を含有するろう付け構造において、好ましくは、ろう付け接合された部分は、2.0質量%以上4.5質量%以下のMoを含有する。 このように構成すれば、接合部の耐酸化性を、十分かつ効果的に向上させることができる。

    上記ろう付け接合された部分がMoまたはCoのうちの少なくとも一方を含有するろう付け構造において、好ましくは、ろう付け接合された部分は、2.0質量%以上10.0質量%以下のCoを含有する。 このように構成すれば、接合部の耐酸化性を、十分かつ効果的に向上させることができる。

    本発明の第1実施形態によるろう材の構成を示した断面図である。

    図1に示した第1実施形態によるろう材を用いて形成された熱交換器を部分的に示した断面図である。

    図2に示した第1実施形態による熱交換器の接合部を示した拡大断面図である。

    Ni−Ti系合金の状態図である。

    図1に示した第1実施形態によるろう材の共晶反応を説明するための模式図である。

    図1に示した第1実施形態によるろう材の共晶反応を説明するための模式図である。

    図1に示した第1実施形態によるろう材の共晶反応を説明するための模式図である。

    図2に示した第1実施形態による熱交換器を形成する際のろう付け接合の工程を説明するための断面図である。

    図2に示した第1実施形態による熱交換器を形成する際のろう付け接合の工程を説明するための断面図である。

    本発明の第2実施形態によるろう付け用複合材の構成を示した断面図である。

    図10に示した第2実施形態による熱交換器を形成する際のろう付け接合の工程を説明するための断面図である。

    図10に示した第2実施形態による熱交換器を形成する際のろう付け接合の工程を説明するための断面図である。

    本発明の第3実施形態によるろう材の構成を示した断面図である。

    図13に示した第3実施形態によるろう材を用いて形成された熱交換器を部分的に示した断面図である。

    本発明の第4実施形態によるろう付け用複合材の構成を示した断面図である。

    本発明の変形例によるろう付け用複合材の構成を示した断面図である。

    以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。

    (第1実施形態)
    まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態によるろう材1の構成について説明する。

    第1実施形態によるろう材1は、図1に示すように、Ni−Cr合金層2と、Ni−Cr合金層2の一方面側に配置されるTi層3aと、Ni−Cr合金層2の他方面側に配置されるTi層3bと、Ni−Cr合金層2とTi層3aとの間に配置されるNi層4aと、Ni−Cr合金層2とTi層3bとの間に配置されるNi層4bとを有している。 また、Ni層4aおよび4bは、Ni−Cr合金層2に圧延接合されている。 また、Ti層3aおよび3bは、Ni−Cr合金層2に圧延接合されたNi層4aおよび4bに圧延接合されている。 また、圧延接合として、たとえば、熱間圧接、冷間圧接および真空圧接などを用いることが可能である。 なお、Ni−Cr合金層2は、本発明の「Ni−Crろう付け層」の一例である。 また、Ti層3aは、本発明の「Tiろう付け層」および「第1Tiろう付け層」の一例であり、Ti層3bは、本発明の「Tiろう付け層」および「第2Tiろう付け層」の一例である。 また、Ni層4aは、本発明の「Niろう付け層」および「第1Niろう付け層」の一例であり、Ni層4bは、本発明の「Niろう付け層」および「第2Niろう付け層」の一例である。

    また、Ni−Cr合金層2は、NiとCrとのみから構成されている。 このNi−Cr合金層2のCrの含有率は、約20質量%以上約40質量%以下である。 また、Ti層3aおよび3bは、純Tiのみから構成されている。 また、Ti層3aおよび3bは、それぞれ、t1の厚みを有している。 また、Ni層4aおよび4bは、純Niのみから構成されている。 また、Ni層4aおよび4bは、それぞれ、t2の厚みを有している。

    ここで、第1実施形態では、Ti層3a中のTi量と、Ni層4a中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Ni層4a中のNi量が21.5質量%以上37.5質量%以下であり、好ましくは、ろう付け時の初期段階でのTi−Ni合金の共晶組成となる約28.3質量%である。 また、Ti層3b中のTi量と、Ni層4b中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Ni層4b中のNi量が21.5質量%以上37.5質量%以下であり、好ましくは、ろう付け時の初期段階でのTi−Ni合金の共晶組成となる約28.3質量%である。 また、Ti層3aおよび3bの厚みt1と、Ni層4aおよび4bの厚みt2との比t2/t1は、1/8以上2/7以下であり、好ましくは、約1/5である。

    次に、図2および図3を参照して、本発明の第1実施形態によるろう材1を用いて形成された熱交換器100の構成について説明する。 なお、第1実施形態では、本発明のろう付け構造を、熱交換器100に適用した例について説明する。

    第1実施形態によるろう材1を用いて形成された熱交換器100は、図2に示すように、ステンレス鋼により形成された一対のプレート11と、ステンレス鋼により形成された6つの波形状のフィン12と、ステンレス鋼により形成された5つのプレート13とを備えている。 なお、プレート13は、本発明の「基板」の一例である。 また、ステンレス鋼として、フェライト系ステンレス鋼であるSUS410およびSUS430やオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304およびSUS316などを用いることが可能である。 一対のプレート11は、熱交換器100の外枠を構成している。 また、6つのフィン12および5つのプレート13は、一対のプレート11の間に交互に積層するように配置されている。 熱交換器100の内部は、5つのプレート13により6つの層に分割されており、6つの層の中を排ガスととが一層おきに交互に流れるように構成されている。 また、フィン12は、6つの層の中を流れる排ガスおよび水の流速を遅くするために設けられている。

    ここで、第1実施形態では、熱交換器100は、フィン12とプレート13および11との間に、後述するろう付け接合により形成されたTi−Ni−Cr合金1aを含んでいる。 つまり、隣り合うフィン12の間には、プレート13および一対のTi−Ni−Cr合金1aが形成されるとともに、プレート11とフィン12との間には、Ti−Ni−Cr合金1aが形成されている。 このTi−Ni−Cr合金1aは、図3に示すように、フィン12の屈曲部の外周面と、プレート13および11(図2参照)とを接合するための機能を有している。 なお、Ti−Ni−Cr合金1aのCrの含有率は、約11質量%以上である。 また、Ti−Ni−Cr合金1a中のTi量とNi量との合計を100質量%とした場合に、Ti−Ni−Cr合金1a中のNi量は、59.5%質量%以上70.0質量%以下であり、好ましくは、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金1a中のTi−Ni合金の共晶組成となる約64.4質量%である。 また、第1実施形態では、熱交換器100(図2参照)の内部を流れる排ガスの温度は約700℃である。 そして、熱交換器100の内部に形成された6つの層の中を一層おきに交互に流れる排ガスと水とが、プレート13および一対のTi−Ni−Cr合金1aを介して熱交換を行うことにより、排ガスの熱が水に伝達されるので、水が暖められて温水になる。

    図2〜図7を参照して、第1実施形態のろう材1により熱交換器100を形成する際に、利用される共晶反応について説明する。 なお、共晶反応とは、2種類以上の合金を溶融状態から冷却する場合、または、固体状態から溶融する場合、2種類以上の固相が同時に析出凝固、または、溶融する反応である。

    ここで、Ni−Ti系合金の状態について説明する。 ろう付け時の初期段階およびろう付け後のNi−Ti系合金の共晶点の温度は、それぞれ、図4に示すように、約955℃および約1110℃である。 また、ろう付けの初期段階の約955℃でのNi−Ti系合金の共晶組成e1は、約28.3質量%Ni−約71.7質量%Tiであり、ろう付け後の約1110℃でのNi−Ti系合金の共晶組成e2は、約64.4質量%Ni−約35.6質量%Tiである。 また、ろう付けの初期段階において、約1220℃以下の状態で溶融し、かつ、Ti Niからなる金属間化合物が生じない組成範囲は、約21.5質量%Ni−約78.5質量%Ti(be1)〜約37.5質量%Ni−約62.5質量%(ae1)であることが示されている。 また、ろう付け後において、約1220℃以下の状態で溶融する組成範囲は、約59.5質量%Ni−約40.5質量%Ti(be2)〜約70.0質量%Ni−約30.0質量%(ae2)であることが示されている。 つまり、第1実施形態では、ろう付けの初期段階でのTi−Ni合金の共晶組成e1を含むbe1〜ae1の範囲に基づいて、Ti層3a(3b)中のTi量とNi層4a(4b)中のNi量との合計を100質量%とした場合のNi層4a(4b)中のNi量を、上記した約21.5質量%以上37.5質量%としている。 また、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金1a(図2および図3参照)中のTi−Ni合金の共晶組成e2を含むbe2〜ae2の範囲に基づいて、Ti−Ni−Cr合金1a中のTi量とTi−Ni−Cr合金1a中のNi量との合計を100質量%とした場合のTi−Ni−Cr合金1a中のNi量を、上記した約59.5質量%以上70.0質量%以下としている。

    第1実施形態によるろう付けの原理としては、図5に示すNi−Cr合金層2と、Ni−Cr合金層2の一方面側および他方面側にそれぞれ配置されたNi層4aおよび4bと、Ni層4aおよび4bの外表面にそれぞれ配置されたTi層3aおよび3bとからなるろう材を、約1220℃以下に加熱する。 これにより、まず、ろう付けの初期段階では、図5に示したろう材の表面側に位置するbe1〜ae1(図4参照)の組成範囲にあるTi層3a(3b)とNi層4a(4b)とが反応するとともに溶融することによって、図6に示すようなTi−Ni液相1bが形成される。 次に、溶融状態であるTi−Ni液相1bが、Ni−Cr合金層2と反応して、図7に示すようなTi−Ni−Cr液相1cが形成される。 この際、Ti−Ni液相1bには、Ni−Cr合金層2のNiが溶融する。 このため、Ti−Ni液相1b中のNi量が増大するので、ろう付け後のTi−Ni−Cr液相1cのNi量とTi量との組成比が、be2〜ae2(図4参照)の組成範囲となる。 その後、溶融状態のTi−Ni−Cr液相1cの温度を1110℃まで低下させることにより、図7に示したTi−Ni−Cr液相1cが、Ti−Ni−Cr合金1a(図2および図3参照)に変化する。

    図1〜図9を参照して、本発明の第1実施形態によるろう材1を用いて行われるろう付け接合について説明する。

    まず、プレート11(図2参照)とフィン12(図2参照)との間にろう材1(図1参照)を配置するとともに、図8に示すように、フィン12とプレート13との間にろう材1を配置する。 このとき、フィン12の屈曲部の外周面と、ろう材1を構成するTi層3aとが接触しているとともに、プレート13と、ろう材1を構成するTi層3bとが接触している。 この状態から、不活性ガス中または真空中で約1110℃以上約1220℃以下の温度で約10分間加熱される。

    この際、ろう付けの初期段階では、まず、図9に示すように、ろう材1(図1および図5参照)を構成するTi層3a(Ti層3b)とNi層4a(Ni層4b)とが固相状態から液相状態に変化してTi−Ni液相1b(図6参照)(組成範囲:be1〜ae1(図4参照))が形成される。 この後、液相状態であるTi−Ni液相1bが、Ni−Cr合金層2と反応して、be2〜ae2(図4参照)の組成範囲にあるTi−Ni−Cr液相1c(図7参照)を形成する。 そして、ろう付け後に温度が低下することによって、Ti−Ni−Cr液相1cの温度が低下すると、Ti−Ni−Cr液相1cが液相状態から固相状態であるbe2〜ae2(図4参照)の組成範囲にあるTi−Ni−Cr合金1a(図2および図3参照)に変化する。 その結果、フィン12の屈曲部の外周面とプレート13および11とが、Ti−Ni−Cr合金1aによりろう付け接合されるので、図2に示した熱交換器100が形成される。

    第1実施形態では、上記のように、Ni−Cr合金層2と、Ti層3aおよび3bと、Ni層4aおよび4bとによりろう材を構成することによって、ろう付け接合による接合部にTi−Ni−Cr合金1aが形成されるので、接合部の表面に容易にCr の酸化皮膜(不働態膜)を形成することができる。 これにより、ろう付け接合による接合部の耐酸化性を向上させることができる。

    また、第1実施形態では、Ni−Cr合金層2と、Ti層3aおよび3bと、Ni層4aおよび4bとによりろう材を構成することによって、ろう付け接合による接合部に高い耐食性を有するTi、NiおよびCrが含まれるので、ろう付け接合による接合部の耐食性を向上させることができる。

    また、第1実施形態では、Ni層4a(Ni層4b)をNi−Cr合金層2とTi層3a(Ti層3b)との間に配置することによって、ろう付け接合をする過程において、Ti層3aおよび3bに含まれるTiと、Ni−Cr合金層2に含まれるCrとが混ざり合う時間を短くすることができる。 これにより、Ti層3aおよび3bに含まれるTiとNi−Cr合金層2に含まれるCrとが反応することにより脆いTiCr が生成されるのを抑制することができるので、ろう付け接合による接合部が脆弱になるのを抑制することができる。

    また、第1実施形態では、Ti層3aおよび3b中のTi量と、Ni層4aおよび4b中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Ni層4aおよび4b中のNi量を21.5質量%以上にすることによって、約1220℃以下の温度でTi層3aおよび3bとNi層4aおよび4bとを溶融することができる。 これにより、約1220℃以上の高温を出力させる特別な炉を用いることなく、Ti層3aおよび3b中のTiとNi層4aおよび4b中のNiとを溶融させることができる。

    また、第1実施形態では、Ti層3aおよび3b中のTi量と、Ni層4aおよび4b中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Ni層4aおよび4b中のNi量を37.5質量%以下にすることによって、Ni量を37.5質量%より大きくする場合と異なり、ろう付け接合による接合部にTi Niからなる金属間化合物が生成されるのを抑制することができる。 その結果、脆いTi Niがろう付け接合部に形成されるのを抑制することができるので、ろう付け接合による接合部の強度が低下するのを抑制することができる。

    また、第1実施形態では、Ti−Ni−Cr合金1a中のTi量とTi−Ni−Cr合金1a中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Ti−Ni−Cr合金1a中のNi量を約64.4質量%にすることによって、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金1a中で共晶組成e2のTi−Ni合金を得ることができるので、Ti−Ni合金の共晶温度である約1110℃(図4参照)において、液相状態であるTi−Ni−Cr液相1c(図7参照)を、固液共存の状態を介さず、固相状態のTi−Ni−Cr合金1a(図2および図3参照)に変化させることができる。 このため、Ti−Ni−Cr液相1cの温度を共晶温度である約1110℃より低下させることにより、均一に固体化させることができる。 また、ろう付け接合する過程において、Ti−Ni−Cr液相1cに固液共存の状態が存在しないので、Ti−Ni−Cr液相1cが固液共存状態の場合と異なり、Ti−Ni−Cr液相1cの流動性(濡れ性)が低下するのを抑制することができる。 その結果、Ti−Ni−Cr液相1cからなるろう材1を、容易に、接合部に流動させることができる。

    (第2実施形態)
    図2〜図4および図10〜図12を参照して、この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、3層構造からなるろう材51が基板13に圧延接合されたろう付け用複合材50について説明する。

    本発明の第2実施形態によるろう付け用複合材50は、図10に示すように、ステンレス鋼により形成されたプレート13と、プレート13の一方面および他方面に圧延接合された一対のろう材51とを備えている。

    ここで、第2実施形態では、一対のろう材51は、それぞれ、プレート13に圧延接合されたNi−Cr合金層2と、Ti層3と、Ni−Cr合金層2とTi層3との間に配置されるNi層4との3層構造により構成されている。 また、Ti層3中のTi量と、Ni層4中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Ni層4中のNi量が21.5質量%以上37.5質量%以下であり、好ましくは、ろう付け時の初期のTi−Ni合金の共晶組成となる約28.3質量%である。 このため、Ni−Cr合金層2と、Ti層3と、Ni層4との3層構造により構成されるろう材51をプレート13に圧延接合する際に、Ti層3とNi層4とが約955℃(図4参照)付近で共晶反応を起こす場合があるので、ろう材51をプレート13に圧延接合する条件が約955℃未満となる。 また、オーステナイト系のステンレス鋼であるSUS304やSUS316の基板13にろう材51を圧延接合する場合には、オーステナイト系ステンレス鋼にシグマ脆性(脆化現象)が生じないように、約1050℃以上で焼鈍する必要がある。 この場合、Ti層3とNi層4とが共晶反応を起こさないようにするとともに、オーステナイト系ステンレス鋼にシグマ脆性が生じないようにすることは困難であるので、この第2実施形態では、オーステナイト系ステンレス鋼を基板13として用いることは好ましくない。 したがって、この第2実施形態では、SUS430やSUS410などのフェライト系ステンレス鋼からなる基板13を用いるのが好ましい。

    そして、第2実施形態によるろう材51を用いて熱交換器100(図2参照)を形成するには、図11に示すように、フィン12の屈曲部に接するようにろう付け用複合材50を配置する。 そして、上記第1実施形態で行われたろう付け接合と同様の条件(不活性ガス中または真空中で約1110℃以上約1220℃以下の温度で約10分間加熱)下でろう付け接合を行う。 この際、図11および図12に示すように、ろう材51を構成するTi層3とNi層4とが固相状態から液相状態に変化してbe1〜ae1(図4参照)の組成範囲にあるTi−Ni液相51aが形成される。 この後、Ti−Ni液相51aが、Ni−Cr合金層2と反応して、be2〜ae2(図4参照)の組成範囲にあるTi−Ni−Cr合金1a(図2および図3参照)が形成される。 そして、このTi−Ni−Cr合金1aの温度が、共晶点である約1110℃(図4参照)付近に達すると、Ti−Ni−Cr合金1aが溶融状態から固体状態に変化する。 その結果、フィン12の屈曲部の外周面とプレート11および13とが、Ti−Ni−Cr合金1aによりろう付け接合されて熱交換器が形成される。

    なお、第2実施形態の効果は、上記した第1実施形態と同様である。

    (実施例1〜9)
    次に、上記した本発明の第1実施形態の効果(ろう付け接合による接合部の耐酸化性向上効果)を確認するために行った比較実験について説明する。 この比較実験では、Ni−Cr合金層と、Ni−Cr合金層の一方面および他方面に圧延接合された純Ni層と、純Ni層に圧延接合された純Tiとからなる5層構造のろう材を用いて形成した上記第1実施形態に対応する実施例1〜9によるクラッド材の反応層(ろう付け接合による接合部)と、上記実施例1〜9とは異なる板厚を有するろう材を用いて形成した比較例1〜4によるクラッド材の反応層(ろう付け接合による接合部)との組成を比較した。 また、実施例1〜9および比較例1〜4によるクラッド材の反応層(ろう付け接合による接合部)の酸化増量を算出して比較することにより、実施例1〜9および比較例1〜4によるクラッド材の反応層(ろう付け接合による接合部)の耐酸化性を評価した。 以下、詳細に説明する。

    [ろう材の作製]
    (実施例1)
    ろう材の原料として、Niを60質量%とCrを40質量%とを含むNi−Cr合金層と、純Ni層と、純Ti層とを用いた。 そして、Ni−Cr合金層の一方面および他方面にそれぞれ純Ni層を圧延接合した後、アルゴン雰囲気下で800℃の温度で1分間拡散焼鈍を施した。 そして、仕上げ圧延および焼鈍を行って、Ni−Cr合金層および純Ni層の板厚をそれぞれ25.0μmおよび2.1μmに調整した。 さらに、Ni−Cr合金層の両面に圧延接合された純Ni層にそれぞれ純Ti層を圧延接合した後、アルゴン雰囲気下で800℃の温度で1分間拡散焼鈍を施した。 そして、仕上げ圧延および焼鈍を行って、純Ti層の板厚をそれぞれ10.4μmに調整することにより、純Ti層/純Ni層/Ni−Cr合金層/純Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例1によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、純Ni層中のNiとの合計に対する純Ni層中のNiの含有率(質量%)が共晶組成e1(約28.3質量%)になるとともに、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金中のTiおよびNiの合計に対するTi−Ni−Cr合金中のNiの含有率(質量%)が共晶組成e2(約64.4質量%)になるようにした。

    (実施例2)
    仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、純Ni層および純Ti層のそれぞれの板厚を、23.4μm、1.6μmおよび11.7μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/純Ni層/Ni−Cr合金層/純Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例2によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、純Ni層中のNiとの合計に対する純Ni層中のNiの含有率(質量%)がbe1(約21.5質量%)になるとともに、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金中のTiおよびNiの合計に対するTi−Ni−Cr合金中のNiの含有率(質量%)がbe2(約59.5質量%)になるようにした。

    (実施例3)
    仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、純Ni層および純Ti層のそれぞれの板厚を、30.2μm、1.2μmおよび8.7μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/純Ni層/Ni−Cr合金層/純Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例3によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、純Ni層中のNiとの合計に対する純Ni層中のNiの含有率(質量%)がbe1(約21.5質量%)になるとともに、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金中のTiおよびNiの合計に対するTi−Ni−Cr合金中のNiの含有率(質量%)がae2(約70.0質量%)になるようにした。

    (実施例4)
    仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、純Ni層および純Ti層のそれぞれの板厚を、19.2μm、3.4μmおよび12.0μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/純Ni層/Ni−Cr合金層/純Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例4によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、純Ni層中のNiとの合計に対する純Ni層中のNiの含有率(質量%)がae1(約37.5質量%)になるとともに、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金中のTiおよびNiの合計に対するTi−Ni−Cr合金中のNiの含有率(質量%)がbe2(約59.5質量%)になるようにした。

    (実施例5)
    仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、純Ni層および純Ti層のそれぞれの板厚を、26.8μm、2.5μmおよび9.1μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/純Ni層/Ni−Cr合金層/純Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例5によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、純Ni層中のNiとの合計に対する純Ni層中のNiの含有率(質量%)がae1(約37.5質量%)になるとともに、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金中のTiおよびNiの合計に対するTi−Ni−Cr合金中のNiの含有率(質量%)がae2(約70.0質量%)になるようにした。

    (実施例6)
    ろう材の原料として、Niを80質量%とCrを20質量%とを含むNi−Cr合金層を用いるとともに、仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、純Ni層および純Ti層のそれぞれの板厚を、21.6μm、2.4μmおよび11.8μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/純Ni層/Ni−Cr合金層/純Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例6によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、純Ni層中のNiとの合計に対する純Ni層中のNiの含有率(質量%)が共晶組成e1(約28.3質量%)になるとともに、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金中のTiおよびNiの合計に対するTi−Ni−Cr合金中のNiの含有率(質量%)が共晶組成e2(約64.4質量%)になるようにした。

    (実施例7)
    ろう材の原料として、Niを80質量%とCrを20質量%とを含むNi−Cr合金層を用いるとともに、仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、純Ni層および純Ti層のそれぞれの板厚を、20.6μm、1.8μmおよび12.9μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/純Ni層/Ni−Cr合金層/純Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例7によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、純Ni層中のNiとの合計に対する純Ni層中のNiの含有率(質量%)がbe1(約21.5質量%)になるとともに、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金中のTiおよびNiの合計に対するTi−Ni−Cr合金中のNiの含有率(質量%)がbe2(約59.5質量%)になるようにした。

    (実施例8)
    ろう材の原料として、Niを80質量%とCrを20質量%とを含むNi−Cr合金層を用いるとともに、仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、純Ni層および純Ti層のそれぞれの板厚を、26.6μm、1.4μmおよび10.3μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/純Ni層/Ni−Cr合金層/純Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例8によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、純Ni層中のNiとの合計に対する純Ni層中のNiの含有率(質量%)がbe1(約21.5質量%)になるとともに、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金中のTiおよびNiの合計に対するTi−Ni−Cr合金中のNiの含有率(質量%)がae2(約70.0質量%)になるようにした。

    (実施例9)
    ろう材の原料として、Niを80質量%とCrを20質量%とを含むNi−Cr合金層を用いるとともに、仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、純Ni層および純Ti層のそれぞれの板厚を、23.2μm、2.9μmおよび10.5μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/純Ni層/Ni−Cr合金層/純Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例9によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、純Ni層中のNiとの合計に対する純Ni層中のNiの含有率(質量%)がae1(約37.5質量%)になるとともに、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金中のTiおよびNiの合計に対するTi−Ni−Cr合金中のNiの含有率(質量%)がae2(約70.0質量%)になるようにした。

    (比較例1)
    ろう材の原料として、Niを80質量%とCrを20質量%とを含むNi−Cr合金層を用いるとともに、仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、Ni層およびTi層のそれぞれの板厚を、16.4μm、3.7μmおよび13.1μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/純Ni層/Ni−Cr合金層/純Ni層/純Ti層の5層構造を有する比較例1によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、純Ni層中のNiとの合計に対する純Ni層中のNiの含有率(質量%)がae1(約37.5質量%)になるとともに、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金中のTiおよびNiの合計に対するTi−Ni−Cr合金中のNiの含有率(質量%)がbe2(約59.5質量%)になるようにした。

    (比較例2)
    ろう材の原料として、Niを60質量%とCrを40質量%とを含むNi−Cr合金層を用いるとともに、仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、Ni層およびTi層のそれぞれの板厚を、27.4μm、1.2μmおよび10.1μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/純Ni層/Ni−Cr合金層/純Ni層/純Ti層の5層構造を有する比較例2によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、純Ni層中のNiとの合計に対する純Ni層中のNiの含有率(質量%)がbe1(約21.5質量%)未満になるとともに、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金中のTiおよびNiの合計に対するTi−Ni−Cr合金中のNiの含有率(質量%)が共晶組成e2(約64.4質量%)になるようにした。

    (比較例3)
    ろう材の原料として、Niを60質量%とCrを40質量%とを含むNi−Cr合金層を用いるとともに、仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、Ni層およびTi層のそれぞれの板厚を、30.8μm、1.6μmおよび8.0μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/純Ni層/Ni−Cr合金層/純Ni層/純Ti層の5層構造を有する比較例3によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、純Ni層中のNiとの合計に対する純Ni層中のNiの含有率(質量%)が共晶組成e1(約28.3質量%)になるとともに、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金中のTiおよびNiの合計に対するTi−Ni−Cr合金中のNiの含有率(質量%)がae2(約70.0質量%)より大きくなるようにした。

    (比較例4)
    ろう材の原料として、Niを60質量%とCrを40質量%とを含むNi−Cr合金層を用いるとともに、仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、Ni層およびTi層のそれぞれの板厚を、18.8μm、2.6μmおよび13.0μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/純Ni層/Ni−Cr合金層/純Ni層/純Ti層の5層構造を有する比較例2によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、純Ni層中のNiとの合計に対する純Ni層中のNiの含有率(質量%)が共晶組成e1(約28.3質量%)になるとともに、ろう付け後のTi−Ni−Cr合金中のTiおよびNiの合計に対するTi−Ni−Cr合金中のNiの含有率(質量%)がbe2(約59.5質量%)未満になるようにした。

    ここで、上記したろう材の各層の板厚(μm)と、ろう材の各層の板厚に基づいて計算された純Ti層と純Ni層との組成(質量%)比との対応関係を以下の表1〜表3に示す。 なお、表1に示す実施例1〜5では、40%Cr−Ni合金層を用いる一方、表2に示す実施例6〜9では、20%Cr−Ni合金層を用いた。 また、表3中の比較例1では、20%Cr−Ni合金層を用いるとともに、比較例2〜4では、40%Cr−Ni合金層を用いた。

    [クラッド材の反応層の組成分析]
    (実施例1〜9および比較例1〜4に共通)
    次に、上記のようにして作製した実施例1〜9および比較例1〜4によるろう材を反応させて得られたクラッド材の反応層の組成を分析した。 具体的には、実施例1〜9および比較例1〜4によるろう材を所定の条件(温度:約1220℃、時間:10分)で反応させた。 そして、上記反応により得られたクラッド材の反応層を上記第1実施形態によるろう付け接合による接合部と見なし、その反応層の断面を樹脂で埋め込んだ後、研磨を行った。 そして、反応層の断面におけるNi、CrおよびTiの含有率(質量%)を、EPMA(電子線マイクロアナリシス)を用いて分析した。 さらに、実験によって得られたクラッド材の反応層のTiとNiとの組成(質量%)比を分析した。 その結果を以下の表4〜表6に示す。

    表4を参照して、実施例1によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが26.7質量%、Crが25.0質量%、Niが48.3質量%であった。 また、実施例1による反応層のTiとNiとの組成比は、35.6質量%:64.4質量%であり、共晶組成e2(図4参照)となった。 また、実施例2によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが31.0質量%、Crが24.3質量%、Niが44.7質量%であった。 また、実施例2による反応層のTiとNiとの組成比は、40.9質量%:59.1質量%であり、ほぼbe2(図4参照)の組成となった。 また、実施例3によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが21.4質量%、Crが29.1質量%、Niが49.5質量%であった。 また、実施例3による反応層のTiとNiとの組成比は、30.2質量%:69.8質量%であり、ほぼae2(図4参照)の組成となった。 また、実施例4によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが32.0質量%、Crが20.0質量%、Niが48.0質量%であった。 また、実施例4による反応層のTiとNiとの組成比は、40.0質量%:60.0質量%であり、ほぼbe2(図4参照)の組成となった。 また、実施例5によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが22.6質量%、Crが26.0質量%、Niが51.4質量%であった。 また、実施例5による反応層のTiとNiとの組成比は、30.6質量%:69.4質量%であり、ほぼae2(図4参照)の組成となった。

    また、上記表5を参照して、実施例6によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが31.3質量%、Crが11.2質量%、Niが57.5質量%であった。 また、実施例6による反応層のTiとNiとの組成比は、35.3質量%:64.7質量%であり、ほぼ共晶組成e2(図4参照)となった。 また、実施例7によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが35.2質量%、Crが11.0質量%、Niが53.8質量%であった。 また、実施例7による反応層のTiとNiとの組成比は、39.6質量%:60.4質量%であり、ほぼbe2(図4参照)の組成となった。 また、実施例8によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが26.5質量%、Crが13.3質量%、Niが60.2質量%であった。 また、実施例8による反応層のTiとNiとの組成比は、30.5質量%:69.5質量%であり、ほぼae2(図4参照)の組成となった。 また、実施例9によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが27.0質量%、Crが11.7質量%、Niが61.3質量%であった。 また、実施例9による反応層のTiとNiとの組成比は、30.5質量%:69.5質量%であり、ほぼae2(図4参照)の組成となった。 これにより、実施例1〜9によるろう材を反応させて得られた反応層の組成から、反応層はTi−Ni−Cr合金からなることが判明した。

    また、上記表6を参照して、比較例1によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが35.9質量%、Crが8.8質量%、Niが55.3質量%であった。 これにより、比較例1によるろう材を反応させて得られた反応層の組成から、反応層はCrを8.8質量%含むTi−Ni−Cr合金からなることが判明した。 なお、比較例1による反応層のTiとNiとの組成比は、39.4質量%:60.6質量%であり、ほぼbe2(図4参照)の組成となった。 また、比較例2によるろう材を反応させて得られた反応層は、約1220℃以下(図4参照)では、溶融しないことが判明した。 また、比較例3によるろう材を反応させて得られた反応層は、約1220℃以下(図4参照)では、Ni−Cr合金層が融け残ることが判明した。 また、比較例4によるろう材を反応させて得られた反応層には、Ti Niからなる金属間化合物が析出していることが判明した。

    [耐酸化性評価試験]
    (実施例1〜9および比較例1〜4に共通)
    また、上記実施例1〜9および比較例1によるろう材を反応させて得られた反応層(ろう付け接合による接合部)の耐酸化性を評価するための酸化試験を行った。 具体的には、実施例1〜9および比較例1によるろう材を反応させて得られた反応層を50mm×50mmに切り出し、酸化試験前の反応層の重量を測定した後、大気中で700℃の温度で100時間加熱した。 そして、酸化試験後の反応層の重量を測定し、酸化試験前後における反応層の重量の変化から反応層の酸化増量を算出するとともに、反応層の耐酸化性を評価した。 また、比較例5および6として、上記実施例1〜9および比較例1によるろう材を反応させて得られた反応層に対して行った酸化試験をSUS316LおよびSUS304に対しても行った。 すなわち、比較例5によるSUS316Lおよび比較例6によるSUS304を50mm×50mm角に切り出し、酸化試験前の重量を測定した後、大気中で700℃の温度で100時間加熱した。 そして、酸化試験後の重量を測定し、酸化試験前後の重量の変化から酸化増量を算出した。 以上の結果を表7に示す。 なお、比較例2〜4については、反応層が均一に混ざらなかったため、酸化試験を行っていない。

    上記表7を参照して、実施例1によるろう材を反応させて得られたTiを26.7質量%、Crを25.0質量%、Niを48.3質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.042mg/cm であった。 また、実施例2によるろう材を反応させて得られたTiを31.0質量%、Crを24.3質量%、Niを44.7質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.050mg/cm であった。 また、実施例3によるろう材を反応させて得られたTiを21.4質量%、Crを29.1質量%、Niを49.5質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.031mg/cm であった。 また、実施例4によるろう材を反応させて得られたTiを32.0質量%、Crを20.0質量%、Niを48.0質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.063mg/cm であった。 また、実施例5によるろう材を反応させて得られたTiを22.6質量%、Crを26.0質量%、Niを51.4質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.049mg/cm であった。

    また、実施例6によるろう材を反応させて得られたTiを31.3質量%、Crを11.2質量%、Niを57.5質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.213mg/cm であった。 また、実施例7によるろう材を反応させて得られたTiを35.2質量%、Crを11.0質量%、Niを53.8質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.228mg/cm であった。 また、実施例8によるろう材を反応させて得られたTiを26.5質量%、Crを13.3質量%、Niを60.2質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.201mg/cm であった。 また、実施例9によるろう材を反応させて得られたTiを27.0質量%、Crを11.7質量%、Niを61.3質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.211mg/cm であった。

    また、比較例1によるろう材を反応させて得られたTiを35.9質量%、Crを8.8質量%、Niを55.3質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.451mg/cm であった。 また、比較例5によるSUS316Lの酸化試験前後における酸化増量は、0.139mg/cm であった。 また、比較例6によるSUS304の酸化試験前後における酸化増量は、0.230mg/cm であった。

    以上の結果から、実施例1〜9および比較例1によるろう材を反応させて得られた反応層の酸化増量を比較すると、実施例1〜9によるろう材を反応させて得られた反応層の酸化増量(0.042mg/cm 、0.050mg/cm 、0.031mg/cm 、0.063mg/cm 、0.049mg/cm 、0.213mg/cm 、0.228mg/cm 、0.201mg/cm および0.211mg/cm )は、比較例1によるろう材を反応させて得られた反応層の酸化増量(0.451mg/cm )よりも小さく、耐酸化性が高いことが判明した。 これは、比較例1によるろう材を反応させて得られた反応層にはCrが8.8質量%しか含有されていないのに対して、実施例1〜9によるろう材を反応させて得られた反応層にはCrが11.0質量%以上含有されているので、実施例1〜9によるろう材を反応させて得られた反応層の表面にCr の酸化皮膜が十分に形成されたためであると考えられる。

    また、実施例1〜9によるろう材を反応させて得られた反応層と、比較例5および6によるSUS316LおよびSUS304との酸化増量を比較すると、40%Cr−Ni合金層を含む実施例1〜5によるろう材を反応させて得られた反応層の酸化増量(0.042mg/cm 、0.050mg/cm 、0.031mg/cm 、0.063mg/cm および0.049mg/cm )は、比較例5および6によるSUS316LおよびSUS304の酸化増量(0.319mg/cm および0.230mg/cm )よりも小さいことが判明した。 これにより、40%Cr−Ni合金層を含む実施例1〜5によるろう材を用いてろう付け接合した接合部は、SUS316LおよびSUS304などのステンレス鋼よりも高い耐酸化性を有するので、ステンレス鋼よりも早く酸化しないと考えられる。 その結果、40%Cr−Ni合金層を含む実施例1〜5によるろう材は、ステンレス鋼などに対するろう材としてより好ましいと考えられる。 これに対して、20%Cr−Ni合金層を含む実施例6〜9によるろう材を反応させて得られた反応層の酸化増量(0.213mg/cm 、0.228mg/cm 、0.201mg/cm および0.211mg/cm )は、比較例5によるSUS316Lの酸化増量(0.139mg/cm )よりも大きいことが判明した。 これは、実施例6〜9では、実施例1〜5に比べて、Cr−Ni合金層中のCrの含有率が少ないために、反応層中のCrの含有率も少なくなったためであると考えられる。 すなわち、表4および表5に示すように、実施例1〜5では、ろう付け後の反応層中にCrが20質量%以上含有されているのに対して、実施例6〜9では、ろう付け後の反応層中にCrが11.0〜13.3質量%しか含有されていないので、耐酸化性が低下したと考えられる。 これにより、20%Cr−Ni合金層を含む実施例6〜9によるろう材を用いてろう付け接合した接合部は、SUS316Lよりも低い耐酸化性を有するので、ステンレス鋼SUS316Lよりも早く酸化すると考えられる。 その結果、実施例6〜9によるろう材は、ステンレス鋼SUS316Lに対するろう材としてはあまり好ましくないことが判明した。

    その一方、実施例1〜9によるろう材を反応させて得られた反応層の酸化増量は、いずれも、比較例6によるSUS304の酸化増量よりも小さいことが判明した。 これにより、実施例1〜9によるろう材を用いてろう付け接合した接合部は、SUS304よりも高い耐酸化性を有するので、ステンレス鋼SUS304よりも高い耐酸化性を有すると考えられる。 その結果、実施例1〜9によるろう材は、ステンレス鋼SUS304に対するろう材として好ましいと考えられる。

    (第3実施形態)
    まず、図13を参照して、この第3実施形態では、上記第1実施形態と異なり、ろう材1dにMoまたはCoを添加する場合について説明する。

    第3実施形態によるろう材1dは、図13に示すように、Ni−Cr合金層2aと、Ni−Cr合金層2aの一方面側に配置されるTi層3cと、Ni−Cr合金層2aの他方面側に配置されるTi層3dと、Ni−Cr合金層2aとTi層3cとの間に配置されるNi層4cと、Ni−Cr合金層2aとTi層3dとの間に配置されるNi層4dとを有している。

    ここで、第3実施形態では、Ni−Cr合金層2aと、Ti層3cおよび3dと、Ni層4cおよび4dとのうちの少なくとも1つの層には、MoまたはCoが添加されている。

    また、第3実施形態では、MoまたはCoは、ろう材1dに対する含有率が約10質量%以下となるように含有されている。 なお、Ti−Ni−Cr合金1eにMoが含有される場合には、約2.0質量%〜約4.5質量%の含有率が好ましく、Ti−Ni−Cr合金1eにCoが含有される場合には、約2.0質量%〜約10質量%の含有率が好ましい。 また、Ni層4cおよび4dは、Ni−Cr合金層2aに圧延接合されている。 また、Ti層3cおよび3dは、Ni−Cr合金層2aに圧延接合されたNi層4cおよび4dに圧延接合されている。 また、圧延接合として、たとえば、熱間圧接、冷間圧接および真空圧接などを用いることが可能である。 なお、Ni−Cr合金層2aは、本発明の「Ni−Crろう付け層」の一例である。 また、Ti層3cは、本発明の「Tiろう付け層」および「第1Tiろう付け層」の一例であり、Ti層3dは、本発明の「Tiろう付け層」および「第2Tiろう付け層」の一例である。 また、Ni層4cは、本発明の「Niろう付け層」および「第1Niろう付け層」の一例であり、Ni層4dは、本発明の「Niろう付け層」および「第2Niろう付け層」の一例である。

    また、Ni−Cr合金層2aは、NiとCrとから構成されている。 なお、第3実施形態では、Ni−Cr合金層2aは、MoまたはCoが添加されていてもよい。 また、Ni−Cr合金層2aのCrの含有率は、約20質量%以上約40質量%以下である。 また、Ti層3cおよび3dは、Tiから構成されている。 なお、第3実施形態では、Ti層3cおよび3dは、MoまたはCoが添加されていてもよい。 また、Ti層3cおよび3dは、それぞれ、t3の厚みを有している。 また、Ni層4cおよび4dは、Niから構成されている。 なお、第3実施形態では、Ni層4cおよび4dは、MoまたはCoが添加されていてもよい。 また、Ni層4cおよび4dは、それぞれ、t4の厚みを有している。

    また、第3実施形態では、Ti層3c中のTi量と、Ni層4c中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Ni層4c中のNi量が21.5質量%以上37.5質量%以下であり、好ましくは、ろう付け時の初期段階でのTi−Ni合金の共晶組成となる約28.3質量%である。 また、Ti層3d中のTi量と、Ni層4d中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Ni層4d中のNi量が21.5質量%以上37.5質量%以下であり、好ましくは、ろう付け時の初期段階でのTi−Ni合金の共晶組成となる約28.3質量%である。 また、Ti層3cおよび3dの厚みt3と、Ni層4cおよび4dの厚みt4との比t4/t3は、1/8以上2/7以下であり、好ましくは、約1/5である。

    次に、図13および図14を参照して、第3実施形態によるろう材1dを用いて形成された熱交換器100aの構成について説明する。

    第3実施形態によるろう材1d(図13参照)を用いて形成された熱交換器100aは、図14に示すように、フィン12とプレート13および11との間に、ろう付け接合により形成されたTi−Ni−Cr合金1eを含んでいる。

    第3実施形態によるろう材1dを用いて形成された熱交換器100aのその他の構成は、上記第1実施形態によるろう材1を用いて形成された熱交換器100と同様である。

    図13および図14を参照して、本発明の第3実施形態によるろう材1dを用いて行われるろう付け接合について説明する。

    まず、図14に示すように、プレート11とフィン12との間にろう材1d(図13参照)を配置するとともに、フィン12とプレート13との間にろう材1dを配置する。 そして、第3実施形態では、不活性ガス中または真空中で、上記第1実施形態と異なり、約1110℃以上約1150℃以下の温度で約10分間加熱される。 第3実施形態によるろう材1dを用いたろう付け接合のその他のプロセスは、上記第1実施形態によるろう材1を用いたろう付け接合のプロセスと同様である。

    第3実施形態では、上記のように、ろう材1dにMoまたはCoを添加することによって、ろう付け時に、ろう付け接合による接合部でCrとMoまたはCoとが合金を形成し、接合部の表面のCr濃度を増加するとともに、接合部の表面にCr の酸化皮膜をより十分に形成することができるので、ろう付け接合による接合部の耐酸化性をより向上させることができる。 また、ろう材1dにMoまたはCoを添加することによって、ろう材1dの融点を約1150℃よりも低くすることができる。 この場合、約1150℃以下の温度でろう付けを行うことができるので、ろう付け時の熱によりSUS304およびSUS316などからなるプレート11および13やフィン12の結晶が粗大化するのを抑制することができる。 これにより、プレート11および13やフィン12の強度を向上させることができるので、プレート11および13やフィン12の厚みを小さくすることができる。 その結果、熱交換器100aを軽量化することができるとともに、熱交換器100aの中を流れる排ガスの熱を水に伝達させやすくして熱交換器100aの熱交換効率を向上させることができる。

    第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。

    (第4実施形態)
    図14および図15を参照して、この第4実施形態では、上記第3実施形態と異なり、3層構造からなるろう材51aが基板13に圧延接合されたろう付け用複合材50aについて説明する。

    本発明の第4実施形態によるろう付け用複合材50aは、図15に示すように、ステンレス鋼により形成されたプレート13と、プレート13の一方面および他方面に圧延接合された一対のろう材51aとを備えている。

    ここで、第4実施形態では、一対のろう材51aは、それぞれ、プレート13に圧延接合されたNi−Cr合金層2aと、Ti層3eと、Ni−Cr合金層2aとTi層3eとの間に配置されるNi層4eとの3層構造により構成されている。 また、Ti層3e中のTi量と、Ni層4e中のNi量との合計を100質量%とした場合に、Ni層4e中のNi量が21.5質量%以上37.5質量%以下であり、好ましくは、ろう付け時の初期のTi−Ni合金の共晶組成となる約28.3質量%である。 また、第4実施形態では、Ni−Cr合金層2aと、Ti層3eと、Ni層4eとのうちの少なくとも1つの層には、MoまたはCoが添加されている。 また、第4実施形態では、MoまたはCoは、ろう材51aに対する含有率が約10質量%以下となるように含有されている。 なお、ろう材51aにMoが含有される場合には、約2.0質量%〜約4.5質量%の含有率が好ましく、ろう材51aにCoが含有される場合には、約2.0質量%〜約10質量%の含有率が好ましい。

    そして、第4実施形態によるろう材51aを用いて熱交換器100aを形成するには、図14に示すように、フィン12の屈曲部に接するようにろう付け用複合材50a(図15参照)を配置する。 そして、上記第3実施形態で行われたろう付け接合と同様の条件(不活性ガス中または真空中で約1110℃以上約1150℃以下の温度で約10分間加熱)下でろう付け接合を行う。

    なお、上記第4実施形態によるろう付け用複合材50aの構成、および、それを用いたろう付け接合のその他のプロセスは、上記第2および第3実施形態と同様である。

    また、第4実施形態の効果は、上記した第3実施形態と同様である。

    (実施例1、10〜15)
    次に、上記した本発明の第3実施形態の効果(ろう付け接合による接合部の耐酸化性向上効果)を確認するために行った比較実験について説明する。 この比較実験では、MoまたはCoのいずれも含有しないろう材を用いて形成した上記第1実施形態に対応する実施例1によるクラッド材の反応層(ろう付け接合による接合部)と、MoまたはCoのいずれかを含有するろう材を用いて形成した実施例10〜15によるクラッド材の反応層(ろう付け接合による接合部)との組成を比較した。 また、実施例1および10〜15によるクラッド材の反応層(ろう付け接合による接合部)の酸化増量を算出して比較することにより、実施例1および10〜15によるクラッド材の反応層(ろう付け接合による接合部)の耐酸化性を評価した。 以下、詳細に説明する。

    [ろう材の作製]
    (実施例1)
    上記した第1実施形態の効果を確認するために行った比較実験と同様にして、実施例1によるろう材を作製した。

    (実施例10)
    ろう材の原料として、Niを60質量%とCrを40質量%とを含むNi−Cr合金層と、Moが5質量%添加されたNi層と、純Ti層とを用いた。 そして、Ni−Cr合金層の一方面および他方面にそれぞれNi層を圧延接合した後、アルゴン雰囲気下で800℃の温度で1分間拡散焼鈍を施した。 そして、仕上げ圧延および焼鈍を行って、Ni−Cr合金層およびNi層の板厚をそれぞれ24.2μmおよび1.9μmに調整した。 さらに、Ni−Cr合金層の両面に圧延接合されたNi層にそれぞれ純Ti層を圧延接合した後、アルゴン雰囲気下で800℃の温度で1分間拡散焼鈍を施した。 そして、仕上げ圧延および焼鈍を行って、純Ti層の板厚をそれぞれ11.0μmに調整することにより、純Ti層/Ni層/Ni−Cr合金層/Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例10によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、Ni層中のNiとの合計に対するNi層中のNiの含有率(質量%)が24.5質量%になるようにした。

    (実施例11)
    ろう材の原料として、Niを60質量%とCrを40質量%とを含むNi−Cr合金層と、Moが10質量%添加されたNi層と、純Ti層とを用いた。 そして、仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、Ni層および純Ti層のそれぞれの板厚を、23.6μm、2.0μmおよび11.2μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/Ni層/Ni−Cr合金層/Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例11によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、Ni層中のNiとの合計に対するNi層中のNiの含有率(質量%)が24.1質量%になるようにした。

    (実施例12)
    ろう材の原料として、Niを60質量%とCrを40質量%とを含むNi−Cr合金層と、Moが20質量%添加されたNi層と、純Ti層とを用いた。 そして、仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、Ni層および純Ti層のそれぞれの板厚を、24.2μm、2.0μmおよび10.9μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/Ni層/Ni−Cr合金層/Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例12によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、Ni層中のNiとの合計に対するNi層中のNiの含有率(質量%)が22.5質量%になるようにした。

    (実施例13)
    ろう材の原料として、Niを60質量%とCrを40質量%とを含むNi−Cr合金層と、Moが35質量%添加されたNi層と、純Ti層とを用いた。 そして、仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、Ni層および純Ti層のそれぞれの板厚を、24.4μm、2.4μmおよび10.4μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/Ni層/Ni−Cr合金層/Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例13によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、Ni層中のNiとの合計に対するNi層中のNiの含有率(質量%)が22.9質量%になるようにした。

    (実施例14)
    ろう材の原料として、Niを60質量%とCrを40質量%とを含むとともに、Moが5質量%添加されたNi−Cr合金層と、Moが35質量%添加されたNi層と、純Ti層とを用いた。 そして、仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、Ni層および純Ti層のそれぞれの板厚を、24.8μm、2.5μmおよび10.1μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/Ni層/Ni−Cr合金層/Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例14によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、Ni層中のNiとの合計に対するNi層中のNiの含有率(質量%)が24.1質量%になるようにした。

    (実施例15)
    ろう材の原料として、Niを60質量%とCrを40質量%とを含むNi−Cr合金層と、Coが12質量%添加されたNi層と、純Ti層とを用いた。 そして、仕上げ圧延および焼鈍を行うことにより、Ni−Cr合金層、Ni層および純Ti層のそれぞれの板厚を、23.6μm、2.1μmおよび11.1μmに調整したこと以外は、上記実施例1と同様にして純Ti層/Ni層/Ni−Cr合金層/Ni層/純Ti層の5層構造を有する実施例15によるろう材を作製した。 このようにして、ろう付け前の純Ti層中のTiと、Ni層中のNiとの合計に対するNi層中のNiの含有率(質量%)が24.8質量%になるようにした。

    なお、ろう材の原料として、Niを60質量%とCrを40質量%とを含むNi−Cr合金層と、40質量%以上のMoが添加されたNi層と、純Ti層とを用いると、圧延時に、ろう材にひび割れが発生するので、この実験では、MoのNi層への添加量を35質量%までとして実験を行った。

    ここで、上記したろう材の各層の板厚(μm)と、ろう材の各層の板厚に基づいて計算された純Ti層とNi層との組成(質量%)比との対応関係を以下の表8に示す。

    [クラッド材の反応層の組成分析]
    (実施例1および10〜15に共通)
    次に、上記のようにして作製した実施例1および10〜15によるろう材を反応させて得られたクラッド材の反応層の組成を分析した。 具体的には、実施例1および10〜15によるろう材を所定の条件(温度:約1150℃、時間:10分)で反応させた。 そして、上記反応により得られたクラッド材の反応層を上記第3実施形態によるろう付け接合による接合部と見なし、その反応層の断面を樹脂で埋め込んだ後、研磨を行った。 そして、反応層の断面におけるTi、Cr、Ni、MoおよびCoの含有率(質量%)を、EPMAを用いて分析した。 さらに、実験によって得られたクラッド材の反応層のTiとNiとの組成(質量%)比を分析した。 その結果を以下の表9に示す。

    表9を参照して、実施例1によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが26.7質量%、Crが25.0質量%、Niが48.3質量%、MoおよびCoが0質量%であった。 また、実施例1による反応層のTiとNiとの組成比は、35.6質量%:64.4質量%であり、共晶組成e2(図4参照)となった。 また、実施例10によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが28.6質量%、Crが24.6質量%、Niが46.2質量%、Moが0.5質量%、Coが0質量%であった。 また、実施例10による反応層のTiとNiとの組成比は、38.2質量%:61.8質量%となった。 また、実施例11によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが29.3質量%、Crが24.1質量%、Niが45.5質量%、Moが1.0質量%、Coが0質量%であった。 また、実施例11による反応層のTiとNiとの組成比は、39.2質量%:60.8質量%となった。 また、実施例12によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが28.3質量%、Crが24.6質量%、Niが45.1質量%、Moが2.1質量%、Coが0質量%であった。 また、実施例12による反応層のTiとNiとの組成比は、38.6質量%:61.4質量%となった。 また、実施例13によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが26.7質量%、Crが24.5質量%、Niが44.6質量%、Moが4.3質量%、Coが0質量%であった。 また、実施例13による反応層のTiとNiとの組成比は、37.4質量%:62.6質量%となった。 また、実施例14によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが25.7質量%、Crが24.7質量%、Niが42.1質量%、Moが7.5質量%、Coが0質量%であった。 また、実施例14による反応層のTiとNiとの組成比は、37.9質量%:62.1質量%となった。 また、実施例15によるろう材を反応させて得られた反応層の組成(質量%)比は、Tiが29.0質量%、Crが24.1質量%、Niが45.7質量%、Moが0質量%、Coが1.3質量%であった。 また、実施例15による反応層のTiとNiとの組成比は、38.8質量%:61.2質量%となった。 これにより、実施例1および10〜15によるろう材を反応させて得られた反応層の組成から、反応層はTi−Ni−Cr合金からなることが判明した。

    [耐酸化性評価試験]
    (実施例1および10〜15に共通)
    また、上記実施例1および10〜15によるろう材を反応させて得られた反応層(ろう付け接合による接合部)の耐酸化性を評価するための酸化試験を行った。 具体的には、実施例1および10〜15によるろう材を反応させて得られた反応層を50mm×50mm角に切り出し、酸化試験前の反応層の重量を測定した後、大気中で700℃の温度で100時間加熱した。 そして、酸化試験後の反応層の重量を測定し、酸化試験前後における反応層の重量の変化から反応層の酸化増量を算出するとともに、反応層の耐酸化性を評価した。 その結果を表10に示す。

    上記表10を参照して、実施例1によるろう材を反応させて得られたTiを26.7質量%、Crを25.0質量%、Niを48.3質量%、MoおよびCoを0質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.042mg/cm であった。 また、実施例10によるろう材を反応させて得られたTiを28.6質量%、Crを24.6質量%、Niを46.2質量%、Moを0.5質量%、Coを0質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.026mg/cm であった。 また、実施例11によるろう材を反応させて得られたTiを29.3質量%、Crを24.1質量%、Niを45.5質量%、Moを1.0質量%、Coを0質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.015mg/cm であった。 また、実施例12によるろう材を反応させて得られたTiを28.3質量%、Crを24.6質量%、Niを45.1質量%、Moを2.1質量%、Coを0質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.004mg/cm であった。 また、実施例13によるろう材を反応させて得られたTiを26.7質量%、Crを24.5質量%、Niを44.6質量%、Moを4.3質量%、Coを0質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.003mg/cm であった。 また、実施例14によるろう材を反応させて得られたTiを25.7質量%、Crを24.7質量%、Niを42.1質量%、Moを7.5質量%、Coを0質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.002mg/cm であった。 また、実施例15によるろう材を反応させて得られたTiを29.0質量%、Crを24.1質量%、Niを45.7質量%、Moを0質量%、Coを1.3質量%の割合で含有する反応層の酸化試験前後における酸化増量は、0.022mg/cm であった。

    以上の結果から、実施例1および10〜15によるろう材を反応させて得られた反応層の酸化増量を比較すると、実施例10〜15によるろう材を反応させて得られた反応層の酸化増量(0.026mg/cm 、0.015mg/cm 、0.004mg/cm 、0.003mg/cm 、0.002mg/cm および0.022mg/cm )は、実施例1によるろう材を反応させて得られた反応層の酸化増量(0.042mg/cm )よりも小さく、耐酸化性が高いことが判明した。 これは、実施例1によるろう材を反応させて得られた反応層にはMoまたはCoが添加されていないのに対して、実施例10〜15によるろう材を反応させて得られた反応層にはMoまたはCoが0.5質量%以上添加されているので、CrとMoまたはCoとが合金を形成することにより反応層の表面に、Cr の酸化皮膜がより十分に形成されたためであると考えられる。

    また、実施例10〜14によるろう材を反応させて得られた反応層の酸化増量を比較すると、反応層へのMoの添加量を増加させるにしたがって、反応層の酸化増量が減少することが判明した。 すなわち、反応層へのMoの添加量を増加させるにしたがって、反応層の耐酸化性を向上させることが可能であることが判明した。

    また、実施例1および10〜14によるろう材を反応させて得られた反応層の酸化増量を比較すると、反応層へのMoの添加量が約2.0質量%以上(実施例12〜14)になると、反応層にMoを添加しない場合に比べて、酸化増量が約1/10以下になることが判明した。 また、反応層へのMoの添加量が約2.0質量%以上約4.5質量%以下では、反応層の酸化増量が効果的に減少するとともに、反応層へのMoの添加量が約7.5質量%では、Moの添加量が約2.0質量%以上約4.5質量%以下の場合と比べて、Moの添加量が増加する割りには反応層の酸化増量が効果的に減少しないことが判明した。 すなわち、約2.0質量%以上約4.5質量%以下のMoを反応層に添加することによって、耐酸化性を十分かつ効果的に向上させることが可能である。

    なお、上記実験とは別に行った実験では、反応層へのCoの添加量が約2.0質量%以上になると、反応層にCoを添加しない場合に比べて、酸化増量を十分減少することが可能であるとともに、反応層へのCoの添加量が約10.0質量%以上になると、反応層の耐酸化性の改善効率が小さくなることが判明した。 すなわち、反応層にCoを添加する場合は、約2.0質量%以上約10.0質量%以下のCoを反応層に添加すれば耐酸化性を十分かつ効果的に向上させることが可能である。

    なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。 本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。

    たとえば、上記実施形態では、本発明のろう付け構造を熱交換器に適用する例について説明したが、本発明はこれに限らず、本発明のろう付け構造を高温の排ガスが流れることにより高い耐酸化性が求められる熱交換器以外のろう付け構造物にも適用可能である。

    また、上記第2実施形態では、ろう付け用複合材を構成するプレートとしてステンレス鋼を用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、ろう付け用複合材を構成するプレートとして、ステンレス鋼以外のハステロイ(登録商標)やインコネル(登録商標)などのNi基耐熱合金を含む鉄鋼を用いてもよい。

    また、上記第1および第2実施形態では、ろう材として純TiのみからなるTi層を用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、ろう材として純Tiを85%以上の割合で含有するTi合金層を用いてもよい。 このような純Tiを主成分とするTi合金として、たとえば、Ti−5Al−2.5Snなどのα相(最密六方相)を有するα合金や、Ti−6Al−4Vなどのα相(最密六方相)およびβ相(体心立方相)を有するα+β合金が挙げられる。

    また、上記第2実施形態では、図1に示したように、Ni層4aおよび4bがNi−Cr合金層2の表面に圧延接合されるとともに、Ni層4aおよび4bにそれぞれTi層3aおよび3bが圧延接合される状態の5層構造のろう材1がプレート13に圧延接合されたろう付け用複合材を用いてろう付け接合を行う例を示したが、本発明はこれに限らず、図16に示すように、プレート13の一方面にNi−Cr合金層20aを圧延接合したクラッド材と、プレート13の他方面にNi−Cr合金層20bを圧延接合したクラッド材と、Ti層30を挟み込むように配置される一対のNi層40aおよび40bとを個別に用意するようにしてもよい。 このように構成した場合にも、ろう付け接合部にTi−Ni−Cr合金層を形成することができる。 この場合、Ni−Cr合金層20aの厚みを大きくすることによって、プレート13に含有されるFeがろう付け接合部に拡散するのを抑制することができる。

    また、上記実施形態では、Ti層にAl、V、SiおよびZrなどの酸化物を形成しやすい元素を添加しないでろう材を形成した例について説明したが、本発明はこれに限らず、Ti層にAl、V、SiおよびZrなどの酸化物を形成しやすい元素を添加したろう材を用いてもよい。 このようにTi層にAl、V、SiおよびZrなどの酸化物を形成しやすい元素を添加すれば、反応層の表面に形成される酸化層の密着性が向上するので、酸化層が剥離するのを抑制することができる。 これにより、酸化反応が進行するのを抑制することができるので、反応層の酸化増量を減少することができる。 なお、酸化層が剥離すると、反応層の露出した部分が新たに酸化されるので、反応層の酸化増量が増加する。

    また、上記実施形態では、ろう材をTi層/Ni層/Ni−Cr合金層/Ni層/Ti層により構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、ろう材をNi−Cr合金層/Ni層/Ti層/Ni層/Ni−Cr合金層により構成した場合にも、同様の効果を得ることができる。

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