半導体装置用ボンディングワイヤ

申请号 JP2017228996 申请日 2017-11-29 公开(公告)号 JP2018078297A 公开(公告)日 2018-05-17
申请人 日鉄住金マイクロメタル株式会社; 新日鉄住金マテリアルズ株式会社; 发明人 山田 隆; 小田 大造; 榛原 照男; 大石 良; 齋藤 和之; 宇野 智裕;
摘要 【課題】Cu 合金 芯材とその表面に形成されたPd被覆層とを有する半導体装置用ボンディングワイヤにおいて、高温におけるボール接合部の接合信頼性向上と、耐 力 比(=最大耐力/0.2%耐力):1.1〜1.6の両立を図る。 【解決手段】ワイヤ中に高温環境下における接続信頼性を付与する元素を含むことによって高温におけるボール接合部の接合信頼性を向上し、さらにボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面に対して結晶方位を測定した結果において、ワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して 角 度差が15度以下である結晶方位 の方位比率を30%以上とし、ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径を0.9〜1.5μmとすることにより、耐力比を1.6以下とする。 【選択図】なし
权利要求

Cu合金芯材と、前記Cu合金芯材の表面に形成されたPd被覆層とを有する半導体装置用ボンディングワイヤにおいて、 前記ボンディングワイヤが、高温環境下における接続信頼性を付与する元素を含み、 前記ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面に対して結晶方位を測定した結果において、ワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率が30%以上であり、 前記ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径が、0.9〜1.5μmであることを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。下記(1)式で定義する耐比が1.1〜1.6であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。 耐力比=最大耐力/0.2%耐力 (1)前記Pd被覆層の厚さが0.015〜0.150μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。前記Pd被覆層上にさらにAuとPdを含む合金表皮層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。前記AuとPdを含む合金表皮層の厚さが0.050μm以下であることを特徴とする請求項4記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。前記ボンディングワイヤがNi、Zn、Rh、In、Ir、Ptから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が総計で0.011〜2質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。前記ボンディングワイヤがGa、Geから選ばれる1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が合計で0.011〜1.5質量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。前記ボンディングワイヤがAs、Te、Sn、Sb、Bi、Seから選ばれる1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が合計で0.1〜100質量ppmであり、Sn≦10質量ppm、Sb≦10質量ppm、Bi≦1質量ppmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。前記ボンディングワイヤがさらにB、P、Mg、Ca、Laから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度がそれぞれ1〜200質量ppmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。前記ボンディングワイヤの最表面にCuが存在することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。Cu合金芯材が、元素周期表第10族の金属元素を総計で0.1〜3.0質量%含有し、ワイヤ最表面におけるCu濃度が1原子%以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。

说明书全文

本発明は、半導体素子上の電極と外部リード等の回路配線基板の配線とを接続するために利用される半導体装置用ボンディングワイヤに関する。

現在、半導体素子上の電極と外部リードとの間を接合する半導体装置用ボンディングワイヤ(以下、「ボンディングワイヤ」という)として、線径15〜50μm程度の細線が主として使用されている。ボンディングワイヤの接合方法は超音波併用熱圧着方式が一般的であり、汎用ボンディング装置、ボンディングワイヤをその内部に通して接続に用いるキャピラリ冶具等が用いられる。ボンディングワイヤの接合プロセスは、ワイヤ先端をアーク入熱で加熱溶融し、表面張によりボール(FAB:Free Air Ball)を形成した後に、150〜300℃の範囲内で加熱した半導体素子の電極上にこのボール部を圧着接合(以下、「ボール接合」という)し、次にループを形成した後、外部リード側の電極にワイヤ部を圧着接合(以下、「ウェッジ接合」という)することで完了する。ボンディングワイヤの接合相手である半導体素子上の電極にはSi基板上にAlを主体とする合金を成膜した電極構造、外部リード側の電極にはAgめっきやPdめっきを施した電極構造等が用いられる。

これまでボンディングワイヤの材料はAuが主流であったが、LSI用途を中心にCuへの代替が進んでいる。一方、近年の電気自動車やハイブリッド自動車の普及を背景に、車載用デバイス用途においてもAuからCuへの代替に対するニーズが高まっている。

Cuボンディングワイヤについては、高純度Cu(純度:99.99質量%以上)を使用したものが提案されている(例えば、特許文献1)。CuはAuに比べて酸化され易い欠点があり、接合信頼性、ボール形成性、ウェッジ接合性等が劣る課題があった。Cuボンディングワイヤの表面酸化を防ぐ方法として、Cu芯材の表面をAu,Ag,Pt,Pd,Ni,Co,Cr,Tiなどの金属で被覆した構造が提案されている(特許文献2)。また、Cu芯材の表面にPdを被覆し、その表面をAu、Ag、Cu又はこれらの合金で被覆した構造が提案されている(特許文献3)。

特開昭61−48543号公報

特開2005−167020号公報

特開2012−36490号公報

車載用デバイスは一般的な電子機器に比べて、過酷な高温高湿環境下での接合信頼性が求められる。特に、ワイヤのボール部を電極に接合したボール接合部の接合寿命が最大の問題となる。

高温高湿環境下でのボール接合部の接合信頼性を評価する代表的な評価法として、HAST(Highly Accelerated Temperature and Humidity Stress Test)(高温高湿環境暴露試験)がある。HASTによってボール接合部の接合信頼性を評価する場合、評価用のボール接合部を温度が130℃、相対湿度が85%の高温高湿環境に暴露し、接合部の抵抗値の経時変化を測定したり、ボール接合部のシェア強度の経時変化を測定したりすることで、ボール接合部の接合寿命を評価する。

また、170℃以上の高温環境でのボール接合部の接合信頼性を評価する手段として、HTS(High Temperature Storage Test)(高温放置試験)が用いられる。HTSによりボール接合部の接合信頼性を評価する場合、高温環境に暴露した評価用のサンプルについて、ボール接合部の抵抗値の経時変化を測定したり、ボール接合部のシェア強度の経時変化を測定したりすることで、ボール接合部の接合寿命を評価する。

本発明者らの検討により、ボンディングワイヤが、例えば、Ni、Zn、Rh、In、Ir、Pt等の高温環境下における接続信頼性を付与する元素を含む場合に、該元素を含まないものよりも、130℃以上の高温環境下におけるボール接合部の接合信頼性が向上することが判明した。

ここで、下記(1)式で耐力比を定義する。 耐力比=最大耐力/0.2%耐力 (1) ウェッジ接合において、ボンディングワイヤは激しく変形する。変形の際にワイヤが加工硬化すると、接合後のワイヤが硬くなり、その結果としてウェッジ接合の接合強度が低下することとなる。ウェッジ接合強度を維持するためには、上記(1)式で定義した耐力比が1.6以下であると好ましい。ところが、高温環境下におけるボール接合部の接合信頼性向上のためにワイヤ中に上記元素を含有させたところ、耐力比が増大して1.6を超えることとなった。そのため、ウェッジ接合の接合強度低下を来すこととなった。

本発明は、Cu合金芯材とその表面に形成されたPd被覆層とを有する半導体装置用ボンディングワイヤにおいて、高温におけるボール接合部の接合信頼性を向上しつつ、(1)式で定義する耐力比を1.1〜1.6とすることのできる半導体装置用ボンディングワイヤを提供することを目的とする。

即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。 [1]Cu合金芯材と、前記Cu合金芯材の表面に形成されたPd被覆層とを有する半導体装置用ボンディングワイヤにおいて、前記ボンディングワイヤが、高温環境下における接続信頼性を付与する元素を含み、前記ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面に対して結晶方位を測定した結果において、ワイヤ長手方向(ワイヤ軸方向)の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率が30%以上であり、前記ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径が、0.9〜1.5μmであることを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。 [2]下記(1)式で定義する耐力比が1.1〜1.6であることを特徴とする上記[1]記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。 耐力比=最大耐力/0.2%耐力 (1) [3]前記Pd被覆層の厚さが0.015〜0.150μmであることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。 [4]前記Pd被覆層上にさらにAuとPdを含む合金表皮層を有することを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか1項記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。 [5]前記AuとPdを含む合金表皮層の厚さが0.050μm以下であることを特徴とする上記[4]記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。 [6]前記ボンディングワイヤがNi、Zn、Rh、In、Ir、Ptから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が総計で0.011〜2質量%であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか1項記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。 [7]前記ボンディングワイヤがGa、Geから選ばれる1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が合計で0.011〜1.5質量%であることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれか1項記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。 [8]前記ボンディングワイヤがAs、Te、Sn、Sb、Bi、Seから選ばれる1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が合計で0.1〜100質量ppmであり、Sn≦10質量ppm、Sb≦10質量ppm、Bi≦1質量ppmであることを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。 [9]前記ボンディングワイヤがさらにB、P、Mg、Ca、Laから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度がそれぞれ1〜200質量ppmであることを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれか1項記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。 [10]前記ボンディングワイヤの最表面にCuが存在することを特徴とする上記[1]〜[9]のいずれか1項記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。 [11]Cu合金芯材が、元素周期表第10族の金属元素を総計で0.1〜3.0質量%含有し、ワイヤ最表面におけるCu濃度が1原子%以上であることを特徴とする上記[1]〜[10]のいずれか1項記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。

本発明によれば、高温環境下におけるボール接合部の接合信頼性を向上し、(1)式で定義する耐力比を1.1〜1.6とすることができる。

本発明の半導体装置用ボンディングワイヤは、Cu合金芯材と、前記Cu合金芯材の表面に形成されたPd被覆層とを有する。本発明において、ボンディングワイヤは、高温環境下における接続信頼性を付与する元素を含み、ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面に対して結晶方位を測定した結果において、ワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して角度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率が30%以上であり、ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径が、0.9〜1.5μmである。

半導体装置のパッケージであるモールド樹脂(エポキシ樹脂)には、分子骨格に塩素(Cl)が含まれている。HAST評価条件である130℃、相対湿度が85%の高温高湿環境下では、分子骨格中のClが加分解して塩化物イオン(Cl)として溶出する。Pd被覆層を有していないCuボンディングワイヤをAl電極に接合した場合、Cu/Al接合界面が高温下に置かれると、CuとAlが相互拡散し、最終的に金属間化合物であるCu9Al4が形成される。Cu9Al4はClなどのハロゲンによる腐食を受けやすく、モールド樹脂から溶出したClによって腐食が進行し、接合信頼性の低下につながる。CuワイヤがPd被覆層を有する場合には、Pd被覆CuワイヤとAl電極の接合界面はCu/Pd濃化層/Alという構造になるため、Pd被覆層を有していないCuワイヤに比較するとCu9Al4金属間化合物の生成は抑制されるものの、車載用デバイスで要求される高温高湿環境での接合信頼性は不十分であった。

それに対し、本発明のように、高温環境下における接続信頼性を付与する元素を含有していると、接合部におけるCu9Al4金属間化合物の生成がさらに抑制される傾向にあると考えられる。

ボール接合部の高温環境での接合信頼性(特に175℃以上でのHTSでの成績)を改善する観点から、ワイヤ全体に対する高温環境下における接続信頼性を付与する元素の濃度は総計で、好ましくは0.011質量%以上、より好ましくは0.030質量%以上、さらに好ましくは0.050質量%以上、0.070質量%以上、0.09質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、又は0.20質量%以上である。高温環境下における接続信頼性を付与する元素についての詳細な説明は後述する。

前記のように、下記(1)式で耐力比を定義する。 耐力比=最大耐力/0.2%耐力 (1) ウェッジ接合において、ボンディングワイヤは激しく変形する。変形の際にワイヤが加工硬化すると、接合後のワイヤが硬くなり、その結果としてウェッジ接合の接合強度が低下することとなる。良好なウェッジ接合強度を維持するためには、上記(1)式で定義した耐力比が1.6以下であると好ましい。ところが、高温環境下でのボール接合部の接合信頼性向上のため、効果を充分に発揮できる量の高温環境下における接続信頼性を付与する元素を含有させたところ、耐力比が増大して1.6を超えることとなった。芯材のCu中に上記元素を含有させた結果、耐力比の増大、即ち硬度の増加が発生したと考えられる。そのため、ウェッジ接合の接合強度低下を来すこととなった。他方において、従来の製造方法の範囲内で耐力比を低減しようとしたところ、耐力比が1.1未満となり、ウェッジ接合性が劣る結果となった。

そこで、ボンディングワイヤが上記高温環境下における接続信頼性を付与する元素を含有しても(1)式の耐力比を1.1〜1.6の好適範囲に保持できる結晶組織について検討した。その結果、(1)式の耐力比を好適範囲に保持するに際しては、ボンディングワイヤにおける芯材の結晶構造、特に、(i)ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面に対して結晶方位を測定した結果における、ワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して角度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率(以下、単に「<100>方位比率」ともいう。)と、(ii)ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径(以下、単に「平均結晶粒径」ともいう。)とを制御することが重要であることを見出した。詳細には、ボンディングワイヤを通常の製造方法で製造すると、<100>方位比率が30%以上であることと、平均結晶粒径が0.9μm以上1.5μm以下であることを両立することができず、その結果として耐力比が1.1未満または1.6超となることがわかった。それに対して、後述のように製造方法を工夫することにより、ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面におけるワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して角度差が15度以内までを含む<100>の方位比率を30%以上とし、ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径を0.9〜1.5μmとすることができ、その結果、(1)式の耐力比を1.1〜1.6とすることができることが明らかになった。

<100>方位比率が30%以上のときは、ウェッジ接合時の変形に伴うワイヤの加工硬化が小さいため、耐力比を1.6以下にできる。しかしながら、この場合であっても平均結晶粒径が0.9μm未満のときは0.2%耐力が高い(延性の乏しい)ため、耐力比が1.1未満となりウェッジ接合性が劣る。平均結晶粒径が1.5μmを超える場合は<100>方位比率が30%未満となり、更に0.2%耐力が低いため、耐力比が1.6超となりウェッジ接合性が劣るものと推定される。

なお、ワイヤの結晶構造について上記条件を満たす場合においても、ワイヤ中の高温環境下における接続信頼性を付与する元素の含有量が多すぎると耐力比が増大することがある。耐力比1.6以下を実現し、ボンディングワイヤの硬質化を抑制してウェッジ接合性の低下を抑制する観点から、ワイヤ全体に対する高温環境下における接続信頼性を付与する元素の濃度は総計で、好ましくは2.0質量%以下、1.8質量%以下、又は1.6質量%以下である。

ボンディングワイヤ中に高温環境下における接続信頼性を付与する元素を含有させるに際し、これら元素をCu芯材中に含有させる方法、Cu芯材あるいはワイヤ表面に被着させて含有させる方法のいずれを採用しても、上記本発明の効果を発揮することができる。これら成分の添加量は極微量なので、添加方法のバリエーションは広く、どのような方法で添加しても該成分が含まれていれば効果が現れる。

本発明のボンディングワイヤにおいて、Pd被覆層の厚さは、良好なFAB形状を得る観点及び、車載用デバイスで要求される高温高湿環境でのボール接合部の接合信頼性をより一層改善する観点から、好ましくは0.015μm以上、より好ましくは0.02μm以上、さらに好ましくは0.025μm以上、0.03μm以上、0.035μm以上、0.04μm以上、0.045μm以上、又は0.05μm以上である。一方、Pd被覆層の厚さが厚すぎてもFAB形状が低下するので、Pd被覆層の厚さは、好ましくは0.150μm以下、より好ましくは0.140μm以下、0.130μm以下、0.120μm以下、0.110μm以下、又は0.100μm以下である。

上記ボンディングワイヤのCu合金芯材、Pd被覆層の定義を説明する。Cu合金芯材とPd被覆層の境界は、Pd濃度を基準に判定した。Pd濃度が50原子%の位置を境界とし、Pd濃度が50原子%以上の領域をPd被覆層、Pd濃度が50原子%未満の領域をCu合金芯材と判定した。この根拠は、Pd被覆層においてPd濃度が50原子%以上であればPd被覆層の構造から特性の改善効果が得られるためである。Pd被覆層は、Pd単層の領域、PdとCuがワイヤの深さ方向に濃度勾配を有する領域を含んでいても良い。Pd被覆層において、該濃度勾配を有する領域が形成される理由は、製造工程での熱処理等によってPdとCuの原子が拡散する場合があるためである。本発明において、濃度勾配とは、深さ方向への濃度変化の程度が0.1μm当たり10mol%以上であることをいう。さらに、Pd被覆層は不可避不純物を含んでいても良い。

本発明のボンディングワイヤにおいて、Pd被覆層におけるPdの最大濃度は、本発明の効果をより享受し得る観点から、好ましくは60原子%以上、より好ましくは70原子%以上、80原子%以上、又は90原子%以上である。Pd被覆層におけるPdの最大濃度は100原子%であることが好ましいが、本発明のボンディングワイヤでは、Pd被覆層におけるPdの最大濃度が100原子%未満、例えば、99.9原子%以下、99.8原子%以下、99.7原子%以下、99.6原子%以下、99.5原子%以下、99.0原子%以下、98.5原子%以下、98原子%以下、97原子%以下、96原子%以下、又は95原子%以下の場合でも、所期の効果を達成することができる。

本発明のボンディングワイヤにおいて、Pd被覆層中のPd濃度が99.0原子%以上である領域の厚さは、40nm以下であってよく、例えば、35nm以下、30nm以下、25nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下、又は5nm以下であってもよい。

本発明のボンディングワイヤは、Pd被覆層の表面にさらにAuとPdを含む合金表皮層を有していてもよい。これにより本発明のボンディングワイヤは、接合信頼性をより向上できると共にウェッジ接合性をさらに改善することができる。

上記ボンディングワイヤのAuとPdを含む合金表皮層の定義を説明する。AuとPdを含む合金表皮層とPd被覆層の境界は、Au濃度を基準に判定した。Au濃度が10原子%の位置を境界とし、Au濃度が10原子%以上の領域をAuとPdを含む合金表皮層、10原子%未満の領域をPd被覆層と判定した。また、Pd濃度が50原子%以上の領域であっても、Auが10原子%以上存在すればAuとPdを含む合金表皮層と判定した。これらの根拠は、Au濃度が上記の濃度範囲であれば、Au表皮層の構造から特性の改善効果が期待できるためである。AuとPdを含む合金表皮層は、Au−Pd合金であって、AuとPdがワイヤの深さ方向に濃度勾配を有する領域を含む領域とする。AuとPdを含む合金表皮層において、該濃度勾配を有する領域が形成される理由は、製造工程での熱処理等によってAuとPdの原子が拡散するためである。さらに、AuとPdを含む合金表皮層は不可避不純物とCuを含んでいても良い。

本発明のボンディングワイヤにおいて、AuとPdを含む合金表皮層は、Pd被覆層と反応して、AuとPdを含む合金表皮層、Pd被覆層、Cu合金芯材間の密着強度を高め、ウェッジ接合時のPd被覆層やAuとPdを含む合金表皮層の剥離を抑制することができる。これにより本発明のボンディングワイヤは、ウェッジ接合性をさらに改善することができる。良好なウェッジ接合性を得る観点から、AuとPdを含む合金表皮層の厚さは、好ましくは0.0005μm以上、より好ましくは0.001μm以上、0.002μm以上、又は0.003μm以上である。偏芯を抑制し良好なFAB形状を得る観点から、AuとPdを含む合金表皮層の厚さは、好ましくは0.050μm以下、より好ましくは0.045μm以下、0.040μm以下、0.035μm以下、又は0.030μm以下である。なおAuとPdを含む合金表皮層は、Pd被覆層と同様の方法により形成することができる。

本発明において、高温環境下における接続信頼性を付与する元素としては、例えば、元素周期表第9族の元素(Co、Rh、Ir)、元素周期表第10族の元素(Ni、Pd、Pt)、元素周期表第11族の元素(Ag、Au等)、元素周期表第12族の元素(Zn等)、元素周期表第13族の元素(Al、Ga、In等)、元素周期表第14族の元素(Ge、Sn等)、元素周期表第15族の元素(P、As、Sb、Bi等)、元素周期表第16族の元素(Se、Te等)などが挙げられる。これらの元素は一種単独で、又は二種以上を組み合わせてボンディングワイヤに含ませることができる。

本発明において、ボンディングワイヤは、高温環境下における接続信頼性を付与する元素として、Ni、Zn、Rh、In、Ir、Ptから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含むのが好ましい。ワイヤ全体に対するこれらの元素の濃度は、総計で0.011〜2質量%であるのが好ましい。

半導体装置のパッケージであるモールド樹脂(エポキシ樹脂)には、シランカップリング剤が含まれている。シランカップリング剤は有機物(樹脂)と無機物(シリコンや金属)の密着性を高める働きを有しているため、シリコン基板や金属との密着性を向上させることができる。さらに、より高温での信頼性が求められる車載向け半導体など、高い密着性が求められる場合には「イオウ含有シランカップリング剤」が添加される。モールド樹脂に含まれるイオウは、175℃以上(例えば、175℃〜200℃)の条件で使用すると遊離してくる。そして、175℃以上の高温で遊離したイオウがCuと接触すると、Cuの腐食が激しくなり、硫化物(Cu2S)や酸化物(CuO)が生成する。Cuボンディングワイヤを用いた半導体装置でCuの腐食が生成すると、特にボール接合部の接合信頼性が低下することとなる。

そこで、ボンディングワイヤがNi、Zn、Rh、In、Ir、Ptから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度を総計で0.011〜2質量%とすることにより、高温環境での接合信頼性(特に175℃以上でのHTSでの成績)を向上させることができる。ボール接合部の高温環境での接合信頼性(特に175℃以上でのHTSでの成績)を改善する観点から、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度は総計で、好ましくは0.011質量%以上、より好ましくは0.050質量%以上、さらに好ましくは0.070質量%以上、0.090質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、又は0.20質量%以上である。以下の説明において、Ni、Zn、Rh、In、Ir、Ptから選ばれる少なくとも1種以上の元素を「元素MA」ともいう。

本発明において、ボンディングワイヤは、高温環境下における接続信頼性を付与する元素として、Ga、Geから選ばれる1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が合計で0.011〜1.5質量%であるのが好ましい。なお、ワイヤには、Ga、Geから選ばれる1種以上の元素が、元素MAに代えてあるいは元素MAとともに含まれていてもよい。以下の説明において、Ga、Geから選ばれる1種以上の元素を「元素MB」ともいう。

ボール接合部のFAB形成時に、ワイヤ中のGa、GeはPd被覆層にも拡散する。ボール接合部におけるCuとAl界面のPd濃化層に存在するGa、Geが、Pd濃化層によるCuとAlの相互拡散抑制効果をさらに高め、結果として、高温高湿環境下で腐食し易いCu9Al4の生成を抑制するものと思われる。また、ワイヤに含まれるGa、GeがCu9Al4の形成を直接阻害する効果がある可能性もある。

さらに、Ga、Geから選ばれる少なくとも1種以上を所定量含有したPd被覆Cuボンディングワイヤを用いてボール部を形成し、FABを走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察したところ、FABの表面に直径数十nmφ程度の析出物が多数見られた。析出物をエネルギー分散型X線分析(EDS:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)で分析するとGa、Geが濃化していることが確認された。以上のような状況から、詳細なメカニズムは不明だが、FABに観察されるこの析出物がボール部と電極との接合界面に存在することで、温度が130℃、相対湿度が85%の高温高湿環境でのボール接合部の接合信頼性が格段に向上しているものと思われる。

Ga、Geの存在部位としてはCu合金芯材中が好ましいが、Pd被覆層や、後述するAuとPdを含む合金表皮層に含まれることでも十分な作用効果が得られる。Cu合金芯材中にGa、Geを添加する方法は正確な濃度管理が容易であり、ワイヤ生産性、品質安定性が向上する。また、熱処理による拡散等でGa、Geの一部がPd被覆層や合金表皮層にも含有することで、各層界面の密着性が良化して、ワイヤ生産性をさらに向上させることも可能である。

一方で、良好なFAB形状を得る観点、ボンディングワイヤの硬質化を抑制して良好なウェッジ接合性を得る観点から、ワイヤ全体に対するGa、Geの濃度は合計で1.5質量%以下であり、好ましくは1.4質量%以下、より好ましくは1.3質量%以下、又は1.2質量%以下である。

本発明において、ボンディングワイヤは、As、Te、Sn、Sb、Bi、Seから選ばれる1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が合計で0.1〜100質量ppmであり、Sn≦10質量ppm、Sb≦10質量ppm、Bi≦1質量ppmであるのが好ましい。なお、ワイヤには、As、Te、Sn、Sb、Bi、Seから選ばれる1種以上の元素が、元素MA及び/又は元素MBに代えて、もしくは、元素MA及び/又は元素MBとともに含まれていてもよい。以下の説明において、As、Te、Sn、Sb、Bi、Seから選ばれる1種以上の元素を「元素MC」ともいう。

ボンディングワイヤが、As、Te、Sn、Sb、Bi、Seから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が合計で0.1〜100質量ppmであり、Sn≦10質量ppm、Sb≦10質量ppm、Bi≦1質量ppmであると、車載用デバイスで要求される高温高湿環境でのボール接合部の接合信頼性をさらに改善することができる。特に温度が130℃、相対湿度が85%の高温高湿環境下でのボール接合部の接合寿命を向上させ、接合信頼性を改善するので好ましい。ワイヤ全体に対する前記元素の濃度は合計で好ましくは0.1質量ppm以上、より好ましくは0.5質量ppm以上、さらに好ましくは1質量ppm以上、さらにより好ましくは1.5質量ppm以上、2質量ppm以上、2.5質量ppm以上、又は3質量ppm以上である。一方で、良好なFAB形状を得る観点から、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度は合計で好ましくは100質量ppm以下、より好ましくは95質量ppm以下、90質量ppm以下、85質量ppm以下、又は80質量ppm以下である。また、Sn濃度、Sb濃度が10質量ppmを超えた場合、または、Bi濃度が1質量ppmを超えた場合には、FAB形状が不良となることから、Sn≦10質量ppm、Sb≦10質量ppm、Bi≦1質量ppmとすることにより、FAB形状をより改善することができるので好ましい。

本発明のボンディングワイヤはさらにB、P、Mg、Ca、Laから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度がそれぞれ1〜200質量ppmであると好ましい。これにより、高密度実装に要求されるボール接合部のつぶれ形状を改善、すなわちボール接合部形状の真円性を改善することができる。ワイヤ全体に対する前記元素の濃度はそれぞれ、好ましくは1質量ppm以上、より好ましくは2質量ppm以上、3質量ppm以上、4質量ppm以上、又は5質量ppm以上である。ボールの硬質化を抑制してボール接合時のチップダメージを抑制する観点から、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度はそれぞれ、好ましくは200質量ppm以下、より好ましくは150質量ppm以下、120質量ppm以下、100質量ppm以下、95質量ppm以下、90質量ppm以下、85質量ppm以下、又は80質量ppm以下である。

本発明のようにPd被覆Cuボンディングワイヤが高温環境下における接続信頼性を向上する元素を含有している場合、さらにボンディングワイヤの最表面にCuが存在すると、接合部におけるCu9Al4金属間化合物の生成がさらに抑制される傾向にある。Pd被覆Cuボンディングワイヤが高温環境下における接続信頼性を向上する元素を含有している場合、さらにボンディングワイヤの最表面にCuが存在すると、ボンディングワイヤに含まれる前記元素とCuとの相互作用により、FAB形成時にFAB表面のPd濃化が促進され、ボール接合界面のPd濃化がより顕著に現れる。これにより、Pd濃化層によるCuとAlの相互拡散抑制効果がさらに強くなり、Clの作用で腐食しやすいCu9Al4の生成量が少なくなり、ボール接合部の高温高湿環境での接合信頼性がより一層向上するものと推定される。

Pd被覆層の最表面にCuが存在する場合、Cuの濃度が30原子%以上になると、ワイヤ表面の耐硫化性が低下し、ボンディングワイヤの使用寿命が低下するため実用に適さない場合がある。したがって、Pd被覆層の最表面にCuが存在する場合、Cuの濃度は30原子%未満であることが好ましい。

また、Au表皮層の最表面にCuが存在する場合、Cuの濃度が35原子%以上になると、ワイヤ表面の耐硫化性が低下し、ボンディングワイヤの使用寿命が低下するため実用に適さない場合がある。したがって、Au表皮層の最表面にCuが存在する場合、Cuの濃度は35原子%未満であることが好ましい。

ここで、最表面とは、スパッタ等を実施しない状態で、ボンディングワイヤの表面をオージェ電子分光装置によって測定した領域をいう。

本発明において、Cu合金芯材が、元素周期表第10族の金属元素を総計で0.1〜3.0質量%含有し、ワイヤ最表面におけるCu濃度が1〜10原子%であるのが好ましい。このような構成とすると、PdめっきされたリードフレームあるいはPdめっきの上にAuめっきを施したリードフレームに対するウェッジ接合性をさらに改善することができる。また、Cu合金芯材中に元素周期表第10族の金属元素を所定量含有させることにより、ボンディングワイヤと電極との間のボール接合部について、高湿加熱条件においても優れたボール接合性を実現することができる。

Cu合金芯材中の元素周期表第10族の金属元素としては、Ni、Pd及びPtからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。好適な一実施形態において、Cu合金芯材は、元素周期表第10族の金属元素としてNiを含む。例えば、Cu合金芯材は、元素周期表第10族の金属元素として、Niを単独で含有してもよく、Niと、Pd、Ptの一方又は両方とを組み合わせて含有してもよい。他の好適な一実施形態において、Cu合金芯材は、元素周期表第10族の金属元素としてPd、Ptの一方又は両方を含む。

Cu合金芯材中の元素周期表第10族の金属元素の濃度が総計で0.1質量%以上であれば、接合界面におけるCu、Alの相互拡散を十分に制御することができ、過酷な高湿加熱評価試験であるHAST試験においても接合部の寿命が380時間以上まで向上する。ここでの接合部の評価としては、HAST試験後に樹脂を開封して除去し、その後にプル試験により接合部の破断状況を評価する。上記のHAST試験信頼性の改善効果を十分に得る観点から、Cu合金芯材中の元素周期表第10族の金属元素の濃度は総計で、0.1質量%以上であり、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、又は0.6質量%以上である。また、低温接合でのAl電極との初期の接合強度が良好であり、HAST試験での長期信頼性や、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)等の基板、テープ等への接合の量産マージンに優れるボンディングワイヤを得る観点、チップダメージを低減する観点から、Cu合金芯材中の元素周期表第10族の金属元素の濃度は総計で、3.0質量%以下であり、好ましくは2.5質量%以下、又は2.0質量%以下である。Cu合金芯材中の元素周期表第10族の金属元素の濃度が総計で3.0質量%を超えると、チップダメージを発生させないように低荷重でボールボンディングを行う必要があり、電極との初期の接合強度が低下し、結果としてHAST試験信頼性が悪化する場合がある。本発明のボンディングワイヤでは、Cu合金芯材中の元素周期表第10族の金属元素の濃度の総計を上記好適な範囲とすることにより、HAST試験での信頼性がさらに向上する。例えば、HAST試験の不良発生までの寿命が450時間を超えるボンディングワイヤを実現することが可能である。これは、従来のCuボンディングワイヤの1.5倍以上の長寿命化に相当する場合もあり、過酷な環境での使用にも対応可能となる。

なお、ボンディングワイヤ製品からCu合金芯材に含まれる前記元素の濃度を求める方法としては、例えば、ボンディングワイヤの断面を露出させて、Cu合金芯材の領域について濃度分析する方法、ボンディングワイヤの表面から深さ方向に向かってスパッタ等で削りながら、Cu合金芯材の領域について濃度分析する方法が挙げられる。例えば、Cu合金芯材がPdの濃度勾配を有する領域を含む場合には、ボンディングワイヤの断面をライン分析し、Pdの濃度勾配を有しない領域(例えば、深さ方向へのPdの濃度変化の程度が0.1μm当たり10mol%未満の領域、Cu合金芯材の軸心部)について濃度分析すればよい。

本発明のボンディングワイヤにおいて、元素周期表第10族の金属元素を所定量含有するCu合金芯材を使用し、ワイヤ最表面におけるCu濃度を1原子%以上とすることにより、Pdめっきされたリードフレームに対するウェッジ接合性、特にピーリング性を大幅に改善できるとともに、良好なウェッジ接合性とFAB形状を実現し、ワイヤ表面の酸化を抑えて品質の経時劣化を抑制することができる。ウェッジ接合性をより一層改善し得る観点から、本発明のボンディングワイヤにおいて、ワイヤ最表面におけるCu濃度は、好ましくは1.5原子%以上、より好ましくは2原子%以上、2.5原子%以上、又は3原子%以上である。ワイヤ最表面におけるCu濃度の上限は先述のとおりであるが、良好なウェッジ接合性とFAB形状を実現する観点、ワイヤ表面の酸化を抑えて品質の経時劣化を抑制する観点から、元素周期表第10族の金属元素を所定量含有するCu合金芯材を含む本発明のボンディングワイヤにおいて、ワイヤ最表面におけるCu濃度は、好ましくは10原子%以下、より好ましくは9.5原子%以下、又は9原子%以下である。

Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の濃度分析には、ボンディングワイヤの表面から深さ方向に向かってスパッタ等で削りながら分析を行う方法、あるいはワイヤ断面を露出させて線分析、点分析等を行う方法が有効である。これらの濃度分析に用いる解析装置は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡に備え付けたオージェ電子分光分析装置、エネルギー分散型X線分析装置、電子線マイクロアナライザ等を利用することができる。ワイヤ断面を露出させる方法としては、機械研磨、イオンエッチング法等を利用することができる。ボンディングワイヤ中のNi、Zn、Rh、In、Ir、Ptなどの微量元素の分析については、ボンディングワイヤを強酸で溶解した液をICP発光分光分析装置やICP質量分析装置を利用して分析し、ボンディングワイヤ全体に含まれる元素の濃度として検出することができる。

(製造方法) 次に本発明の実施形態に係るボンディングワイヤの製造方法を説明する。ボンディングワイヤは、芯材に用いるCu合金を製造した後、ワイヤ状に細く加工し、Pd被覆層、Au層を形成して、熱処理することで得られる。Pd被覆層、Au層を形成後、再度伸線と熱処理を行う場合もある。Cu合金芯材の製造方法、Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の形成方法、熱処理方法について詳しく説明する。

芯材に用いるCu合金は、原料となるCuと添加する元素を共に溶解し、凝固させることによって得られる。溶解には、アーク加熱炉、高周波加熱炉、抵抗加熱炉等を利用することができる。大気中からのO2、H2等のガスの混入を防ぐために、真空雰囲気あるいはArやN2等の不活性雰囲気中で溶解を行うことが好ましい。

Pd被覆層、Au層をCu合金芯材の表面に形成する方法は、めっき法、蒸着法、溶融法等がある。めっき法は、電解めっき法、無電解めっき法のどちらも適用可能である。ストライクめっき、フラッシュめっきと呼ばれる電解めっきでは、めっき速度が速く、下地との密着性も良好である。無電解めっきに使用する溶液は、置換型と還元型に分類され、厚さが薄い場合には置換型めっきのみでも十分であるが、厚さが厚い場合には置換型めっきの後に還元型めっきを段階的に施すことが有効である。

蒸着法では、スパッタ法、イオンプレーティング法、真空蒸着等の物理吸着と、プラズマCVD等の化学吸着を利用することができる。いずれも乾式であり、Pd被覆層、Au層形成後の洗浄が不要であり、洗浄時の表面汚染等の心配がない。

Pd被覆層、Au層形成後に熱処理を行うことにより、Pd被覆層のPdがAu層中に拡散し、AuとPdを含む合金表皮層が形成される。Au層を形成した後に熱処理によってAuとPdを含む合金表皮層を形成するのではなく、最初からAuとPdを含む合金表皮層を被着することとしても良い。

Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の形成に対しては、最終線径まで伸線後に形成する手法と、太径のCu合金芯材に形成してから狙いの線径まで複数回伸線する手法とのどちらも有効である。前者の最終径でPd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層を形成する場合には、製造、品質管理等が簡便である。後者のPd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層と伸線を組み合わせる場合には、Cu合金芯材との密着性が向上する点で有利である。それぞれの形成法の具体例として、最終線径のCu合金芯材に、電解めっき溶液の中にワイヤを連続的に掃引しながらPd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層を形成する手法、あるいは、電解又は無電解のめっき浴中に太いCu合金芯材を浸漬してPd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層を形成した後に、ワイヤを伸線して最終線径に到達する手法等が挙げられる。

Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層を形成した後は、熱処理を行う場合がある。熱処理を行うことでAuとPdを含む合金表皮層、Pd被覆層、Cu合金芯材の間で原子が拡散して密着強度が向上するため、加工中のAuとPdを含む合金表皮層やPd被覆層の剥離を抑制でき、生産性が向上する点で有効である。大気中からのO2の混入を防ぐために、真空雰囲気あるいはArやN2等の不活性雰囲気中で熱処理を行うことが好ましい。

前述のように、ボンディングワイヤに施す拡散熱処理や焼鈍熱処理の条件を調整することにより、芯材のCuがPd被覆層やAuとPdを含む表皮合金層中を粒界拡散、粒内拡散等により拡散し、ボンディングワイヤの最表面にCuを到達させ、最表面にCuを存在させることができる。最表面にCuを存在させるための熱処理として、上記のように、AuとPdを含む合金表皮層を形成するための熱処理を用いることができる。合金表皮層を形成するための熱処理を行うに際し、熱処理温度と時間を選択することにより、最表面にCuを存在させ、あるいはCuを存在させないことができる。さらに、最表面のCu濃度を所定の範囲(例えば、1〜50原子%の範囲)に調整することもできる。合金表皮層形成時以外に行う熱処理によってCuを最表面に拡散させることとしても良い。

前述のとおり、ボンディングワイヤ中に高温環境下における接続信頼性を付与する元素を含有させるに際し、これら元素をCu芯材中に含有させる方法、Cu芯材あるいはワイヤ表面に被着させて含有させる方法のいずれを採用しても、上記本発明の効果を発揮することができる。B、P、Mg、Ca、Laについても同様である。

上記成分の添加方法として、最も簡便なのはCu合金芯材の出発材料に添加しておく方法である。たとえば、高純度の銅と上記成分元素原料を出発原料として秤量したのち、これを高真空下もしくは窒素やアルゴン等の不活性雰囲気下で加熱して溶解することで目的の濃度範囲の上記成分が添加されたインゴットを作成し、目的濃度の上記成分元素を含む出発材料とする。したがって好適な一実施形態において、本発明のボンディングワイヤのCu合金芯材は、Ni、Zn、Rh、In、Ir、Ptから選ばれる少なくとも1種以上の元素を、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が総計で0.011〜2質量%となるように含む。該濃度の合計の好適な数値範囲は、先述のとおりである。他の好適な一実施形態において、本発明のボンディングワイヤのCu合金芯材は、Ga、Geから選ばれる1種以上の元素を、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が総計で0.011〜1.5質量%となるように含む。該濃度の合計の好適な数値範囲は、先述のとおりである。他の好適な一実施形態において、本発明のボンディングワイヤのCu合金芯材は、As、Te、Sn、Sb、Bi、Seから選ばれる少なくとも1種以上の元素を、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が合計で0.1〜100質量ppm、Sn≦10質量ppm、Sb≦10質量ppm、Bi≦1質量ppmとなるように含む。該濃度の好適な数値範囲は、先述のとおりである。好適な一実施形態において、Cu合金芯材のCuの純度は3N以下(好ましくは2N以下)である。従来のPd被覆Cuボンディングワイヤでは、ボンダビリティの観点から、高純度(4N以上)のCu芯材が使用され、低純度のCu芯材の使用は避けられる傾向にあった。特定元素を含有する本発明のボンディングワイヤでは、上記のようにCuの純度の低いCu合金芯材を使用した場合に特に好適に、車載用デバイスで要求される高温高湿環境でのボール接合部の接合信頼性を実現するに至ったものである。他の好適な一実施形態において、本発明のボンディングワイヤのCu合金芯材は、B、P、Mg、Ca、Laから選ばれる少なくとも1種以上の元素を、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度がそれぞれ1〜200質量ppmとなるように含む。該濃度の好適な数値範囲は、先述のとおりである。他の好適な一実施形態において、本発明のボンディングワイヤのCu合金芯材は、元素周期表第10族の金属元素を総計で0.1〜3.0質量%となるように含む。該濃度の好適な数値範囲は、先述のとおりである。

ワイヤ製造工程の途中で、ワイヤ表面に上記成分を被着させることによって含有させることもできる。この場合、ワイヤ製造工程のどこに組み込んでも良いし、複数回繰り返しても良い。複数の工程に組み込んでも良い。Pd被覆前のCu表面に添加しても良いし、Pd被覆後のPd表面に添加しても良いし、Au被覆後のAu表面に添加しても良いし、各被覆工程に組み込んでも良い。被着方法としては、(1)水溶液の塗布⇒乾燥⇒熱処理、(2)めっき法(湿式)、(3)蒸着法(乾式)、から選択することができる。

水溶液の塗布⇒乾燥⇒熱処理の方法を採用する場合、まず上記成分元素を含む水溶性の化合物で適当な濃度の水溶液を調製する。これにより、上記成分をワイヤ材料に取り込むことができる。ワイヤ製造工程のどこに組み込んでも良いし、複数回繰り返しても良い。複数の工程に組み込んでも良い。Pd被覆前のCu表面に添加しても良いし、Pd被覆後のPd表面に添加しても良いし、Au被覆後のAu表面に添加しても良いし、各被覆工程に組み込んでも良い。

めっき法(湿式)を用いる場合、めっき法は、電解めっき法、無電解めっき法のどちらでも適用可能である。電解めっき法では、通常の電解めっきのほかにフラッシュめっきと呼ばれるめっき速度が速く下地との密着性も良好なめっき法も適用可能である。無電解めっきに使用する溶液は、置換型と還元型がある。一般的にめっき厚が薄い場合は置換型めっき、厚い場合は還元型めっきが適用されるが、どちらでも適用可能であり、添加したい濃度にしたがって選択し、めっき液濃度、時間を調整すればよい。電解めっき法、無電解めっき法ともに、ワイヤ製造工程のどこに組み込んでも良いし、複数回繰り返しても良い。複数の工程に組み込んでも良い。Pd被覆前のCu表面に添加しても良いし、Pd被覆後のPd表面に添加しても良いし、Au被覆後のAu表面に添加しても良いし、各被覆工程に組み込んでも良い。

蒸着法(乾式)には、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、プラズマCVDなどがある。乾式のため前処理後処理が不要で、汚染の心配もないのが特長である。一般に蒸着法は、目的とする元素の添加速度が遅いことが問題であるが、上記成分元素は添加濃度が比較的低いので、本発明の目的としては適した方法のひとつである。

各蒸着法は、ワイヤ製造工程のどこに組み込んでも良いし、複数回繰り返しても良い。複数の工程に組み込んでも良い。Pd被覆前のCu表面に添加しても良いし、Pd被覆後のPd表面に添加しても良いし、Au被覆後のAu表面に添加しても良いし、各被覆工程に組み込んでも良い。

ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面に対して結晶方位を測定した結果において、ワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して角度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率を30%以上とし、ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径を0.9〜1.5μmとするための製造方法について説明する。

ボンディングワイヤに、Cu合金芯材中に高温環境下における接続信頼性を付与する元素を含有させると、ワイヤの材料強度(硬度)が高くなる。そのため、Cu芯線のボンディングワイヤを伸線加工するに際しては、伸線時の減面率を5〜8%と低い減面率としていた。また、伸線後の熱処理において、やはり硬度が高いため、ボンディングワイヤとして使用できるレベルまで軟質化するために600℃以上の温度で熱処理を行っていた。高い熱処理温度のため、ワイヤ長手方向の<100>方位比率が30%未満となり、同時に芯材断面における平均結晶粒径が1.5μm超となり、耐力比が1.6を超えることとなった。一方、耐力比を低減しようとして熱処理温度を低下すると、芯材断面における平均結晶粒径が0.9μm未満となり、耐力比が1.1未満となりウェッジ接合性が劣ることとなった。

これに対して本発明においては、ダイスを用いた伸線時において、全ダイス数のうちの半分以上のダイスにおいて減面率を10%以上とし、さらに伸線後の熱処理における熱処理温度を500℃以下と低い温度とした。その結果、ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面に対して結晶方位を測定した結果において、ワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して角度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率を30%以上とし、ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径を0.9〜1.5μmとすることができた。最新の伸線加工技術を適用し、潤滑液として、潤滑液に含まれる非イオン系界面活性剤の濃度を従来より高めに設計し、ダイス形状として、ダイスのアプローチ角度を従来のものよりも緩やかに設計し、ダイスの冷却水温度を従来よりも低めに設定することなどの相乗効果により、Cu合金芯材中にNi等の成分を総計で0.03質量%以上含有して硬質化しているにもかかわらず、減面率10%以上の伸線加工が可能となった。

ワイヤ断面の結晶方位を測定するに際しては、後方散乱電子線回折法(EBSD、Electron Backscattered Diffraction)を用いると好ましい。EBSD法は観察面の結晶方位を観察し、隣り合う測定点間での結晶方位の角度差を図示できるという特徴を有し、ボンディングワイヤのような細線であっても、比較的簡便ながら精度よく結晶方位を観察できる。粒径測定については、EBSD法による測定結果に対して、装置に装備されている解析ソフトを利用することで求めることができる。本発明で規定する結晶粒径は、測定領域内に含まれる結晶粒の相当直径(結晶粒の面積に相当する円の直径;円相当直径)を算術平均したものである。

本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。

以下では、実施例を示しながら、本発明の実施形態に係るボンディングワイヤについて、具体的に説明する。

<本発明例1〜59及び比較例1〜16> (サンプルの作製) まずサンプルの作製方法について説明する。芯材の原材料となるCuは純度が99.99質量%以上で残部が不可避不純物から構成されるものを用いた。Au、Pd、Ni、Zn、Rh、In、Ir、Ptは純度が99質量%以上で残部が不可避不純物から構成されるものを用いた。ワイヤ又は芯材の組成が目的のものとなるように、芯材に添加される元素(Ni、Zn、Rh、In、Ir、Pt)を調合する。Ni、Zn、Rh、In、Ir、Ptの添加に関しては、単体での調合も可能であるが、単体で高融点の元素や添加量が極微量である場合には、添加元素を含むCu母合金をあらかじめ作製しておいて目的の添加量となるように調合しても良い。本発明例27〜47では、さらにGa、Ge、As、Te、Sn、Sb、Bi、Se、B、P、Mg、Ca、Laのうちの1種以上を含有させている。

芯材のCu合金は、連続鋳造により数mmの線径になるように製造した。得られた数mmの合金に対して、引抜加工を行ってφ0.3〜1.4mmのワイヤを作製した。伸線には市販の潤滑液を用い、伸線速度は20〜150m/分とした。ワイヤ表面の酸化膜を除去するために、塩酸等による酸洗処理を行った後、芯材のCu合金の表面全体を覆うようにPd被覆層を1〜15μm形成した。さらに、一部のワイヤはPd被覆層の上にAuとPdを含む合金表皮層を0.05〜1.5μm形成した。Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の形成には電解めっき法を用いた。めっき液は市販の半導体用めっき液を用いた。その後、減面率10〜21%のダイスを主に使用して伸線加工を行い、更には途中に1乃至3回の熱処理を200〜500℃で行うことによって直径20μmまで加工した。加工後は最終的に破断伸びが約5〜15%になるように熱処理をした。熱処理方法はワイヤを連続的に掃引しながら行い、N2もしくはArガスを流しながら行った。ワイヤの送り速度は10〜90m/分、熱処理温度は350〜500℃で熱処理時間は1〜10秒とした。

(評価方法) ワイヤ中のNi、Zn、Rh、In、Ir、Pt、Ga、Ge、As、Te、Sn、Sb、Bi、Se、B、P、Mg、Ca、La含有量については、ICP発光分光分析装置を利用して、ボンディングワイヤ全体に含まれる元素の濃度として分析した。

Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の濃度分析には、ボンディングワイヤの表面から深さ方向に向かってスパッタ等で削りながらオージェ電子分光分析を実施した。得られた深さ方向の濃度プロファイルから、Pd被覆層の厚み、Pdの最大濃度、AuとPdを含む合金表皮層の厚みを求めた。

ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面におけるワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して角度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率については、EBSD法で観察面(すなわち、ワイヤ軸に垂直方向の芯材断面)の結晶方位を観察した上で算出した。EBSD測定データの解析には専用ソフト(TSLソリューションズ製 OIM analisis等)を利用した。ワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径については、EBSD法で観察面の結晶方位を観察した上で算出した。EBSD測定データの解析には専用ソフト(TSLソリューションズ製 OIM analisis等)を利用した。結晶粒径は、測定領域内に含まれる結晶粒の相当直径(結晶粒の面積に相当する円の直径;円相当直径)を算術平均したものである。

0.2%耐力と最大耐力については、標点間距離を100mmとして引張試験を行うことにより評価した。引張試験装置としては、インストロン社製万能材料試験機5542型を使用した。0.2%耐力は装置に装備された専用のソフトを用いて算出した。また、破断した時の荷重を最大耐力とした。下記(1)式から耐力比を算出した。 耐力比=最大耐力/0.2%耐力 (1)

ワイヤ接合部におけるウェッジ接合性の評価は、BGA基板のウェッジ接合部に1000本のボンディングを行い、接合部の剥離の発生頻度によって判定した。使用したBGA基板はNiおよびAuのめっきを施したものである。本評価では、通常よりも厳しい接合条件を想定して、ステージ温度を一般的な設定温度域よりも低い150℃に設定した。上記の評価において、不良が11個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が6〜10個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜5個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表1〜表4の「ウェッジ接合性」の欄に表記した。

高温高湿環境又は高温環境でのボール接合部の接合信頼性は、接合信頼性評価用のサンプルを作製し、HTS評価を行い、ボール接合部の接合寿命によって判定した。接合信頼性評価用のサンプルは、一般的な金属フレーム上のSi基板に厚さ0.8μmのAl−1.0%Si−0.5%Cuの合金を成膜して形成した電極に、市販のワイヤーボンダーを用いてボール接合を行い、市販のエポキシ樹脂によって封止して作製した。ボールはN2+5%H2ガスを流量0.4〜0.6L/minで流しながら形成させ、その大きさはφ33〜34μmの範囲とした。

HTS評価については、作製した接合信頼性評価用のサンプルを、高温恒温器を使用し、温度200℃の高温環境に暴露した。ボール接合部の接合寿命は500時間毎にボール接合部のシェア試験を実施し、シェア強度の値が初期に得られたシェア強度の1/2となる時間とした。高温高湿試験後のシェア試験は、酸処理によって樹脂を除去して、ボール接合部を露出させてから行った。

HTS評価のシェア試験機はDAGE社製の試験機を用いた。シェア強度の値は無作為に選択したボール接合部の10か所の測定値の平均値を用いた。上記の評価において、接合寿命が500時間未満であれば実用不可能であると判断し×印、500時間以上1000時間未満であれば実用可能であるが改善の要望ありと判断し△印、1000時間以上3000時間未満であれば実用上問題ないと判断し○印、3000時間以上であれば特に優れていると判断し◎印とし、表1〜表4の「HTS」の欄に表記した。

ボール形成性(FAB形状)の評価は、接合を行う前のボールを採取して観察し、ボール表面の気泡の有無、本来真球であるボールの変形の有無を判定した。上記のいずれかが発生した場合は不良と判断した。ボールの形成は溶融工程での酸化を抑制するために、N2ガスを流量0.5L/minで吹き付けながら行った。ボールの大きさは34μmとした。1条件に対して50個のボールを観察した。観察にはSEMを用いた。ボール形成性の評価において、不良が5個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が3〜4個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜2個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表1〜表4の「FAB形状」の欄に表記した。

温度が130℃、相対湿度が85%の高温高湿環境下でのボール接合部の接合寿命については、以下のHAST評価で評価することができる。HAST評価については、作製した接合信頼性評価用のサンプルを、不飽和型プレッシャークッカー試験機を使用し、温度130℃、相対湿度85%の高温高湿環境に暴露し、5Vのバイアスをかけた。ボール接合部の接合寿命は48時間毎にボール接合部のシェア試験を実施し、シェア強度の値が初期に得られたシェア強度の1/2となる時間とした。高温高湿試験後のシェア試験は、酸処理によって樹脂を除去して、ボール接合部を露出させてから行った。

HAST評価のシェア試験機はDAGE社製の試験機を用いた。シェア強度の値は無作為に選択したボール接合部の10か所の測定値の平均値を用いた。上記の評価において、接合寿命が144時間未満であれば実用不可能であると判断し×印、144時間以上288時間未満であれば実用上問題ないと判断し○印、288時間以上384時間未満であれば優れていると判断し◎印、384時間以上であれば特に優れていると判断し◎◎印とし、表1〜表4の「HAST」の欄に表記した。

ボール接合部のつぶれ形状の評価は、ボンディングを行ったボール接合部を直上から観察して、その真円性によって判定した。接合相手はSi基板上に厚さ1.0μmのAl−0.5%Cuの合金を成膜した電極を用いた。観察は光学顕微鏡を用い、1条件に対して200箇所を観察した。真円からのずれが大きい楕円状であるもの、変形に異方性を有するものはボール接合部のつぶれ形状が不良であると判断した。上記の評価において、不良が1〜3個の場合は問題ないと判断し○印、全て良好な真円性が得られた場合は、特に優れていると判断し◎印とし、表1〜表4の「つぶれ形状」の欄に表記した。

(評価結果) 本発明例1〜59に係るボンディングワイヤは、Cu合金芯材と、Cu合金芯材の表面に形成されたPd被覆層とを有し、Pd被覆層の厚さが好適範囲である0.015〜0.150μmの範囲にあり、FAB形状がいずれも良好であった。また、これらのボンディングワイヤはNi、Zn、Rh、In、Ir、Ptから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が合計で0.011〜2質量%であることから、HTS評価によるボール接合部高温信頼性も良好であった。

また、本発明例については、伸線時の減面率を10%以上とし、伸線後の熱処理における熱処理温度を500℃以下と低い温度としているので、ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面に対して結晶方位を測定した結果において、ワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して角度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率を30%以上とし、ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径を0.9〜1.5μmとすることができた。その結果、ワイヤ中にNi、Zn、Rh、In、Ir、Ptを含有しているにもかかわらず、耐力比(=最大耐力/0.2%耐力)はいずれも1.1〜1.6の範囲内に入っている。そのため、ウェッジ接合性はいずれも良好な結果となった。

一方、比較例4〜7、12〜14は、熱処理温度を600℃以上と高い温度としたことから、ワイヤ長手方向の<100>方位比率が30%未満となった。また比較例2、6、8、9、14は、熱処理温度を620℃以上と高い温度としたことから、ワイヤ長手方向の<100>方位比率が30%未満となるとともに、芯材断面における平均結晶粒径が1.5μm超となった。そのため、比較例2、4〜9、12〜14のいずれも、耐力比が1.6を超え、ウェッジ接合性が不良あるいは問題ありであった。

また比較例1、3は、ダイスの減面率を10%未満としたことから、芯材断面における平均結晶粒径が0.9μm未満となり、耐力比が1.1未満となり、ウェッジ接合性がいずれも不良であった。比較例10及び11では、ワイヤ長手方向の<100>方位比率が30%未満となるとともに、芯材断面における平均結晶粒径が0.9μm未満であり、ウェッジ接合性がいずれも不良であった。比較例15では、平均結晶粒径は0.9〜1.5μmであるとともに、ワイヤ長手方向の<100>方位比率が30%以上ではあるが、高温環境下における接続信頼性を付与する元素を含まないため、HTS、HAST、及びウェッジ接続性のいずれもが不良であった。比較例16では、高温環境下における接続信頼性を付与する元素が含まれていないため、HTS及びHASTが不良であった。

<本発明例2−1〜2−44> (サンプル) まずサンプルの作製方法について説明する。芯材の原材料となるCuは純度が99.99質量%以上で残部が不可避不純物から構成されるものを用いた。Ga、Ge、Ni、Ir、Pt、Pd、B、P、Mgは純度が99質量%以上で残部が不可避不純物から構成されるものを用いた。ワイヤ又は芯材の組成が目的のものとなるように、芯材への添加元素であるGa、Ge、Ni、Ir、Pt、Pd、B、P、Mgを調合する。Ga、Ge、Ni、Ir、Pt、Pd、B、P、Mgの添加に関しては、単体での調合も可能であるが、単体で高融点の元素や添加量が極微量である場合には、添加元素を含むCu母合金をあらかじめ作製しておいて目的の添加量となるように調合しても良い。

芯材のCu合金は、直径がφ3〜6mmの円柱型に加工したカーボンるつぼに原料を装填し、高周波炉を用いて、真空中もしくはN2やArガス等の不活性雰囲気で1090〜1300℃まで加熱して溶解させた後、炉冷を行うことで製造した。得られたφ3〜6mmの合金に対して、引抜加工を行ってφ0.9〜1.2mmまで加工した後、ダイスを用いて連続的に伸線加工等を行うことによって、φ300〜600μmのワイヤを作製した。伸線には市販の潤滑液を用い、伸線速度は20〜150m/分とした。ワイヤ表面の酸化膜を除去するために、塩酸による酸洗処理を行った後、芯材のCu合金の表面全体を覆うようにPd被覆層を1〜15μm形成した。さらに、一部のワイヤはPd被覆層の上にAuとPdを含む合金表皮層を0.05〜1.5μm形成した。Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の形成には電解めっき法を用いた。めっき液は市販の半導体用めっき液を用いた。その後、200〜500℃の熱処理と伸線加工を繰返し行うことによって直径20μmまで加工した。加工後は最終的に破断伸びが約5〜15%になるようN2もしくはArガスを流しながら熱処理をした。熱処理方法はワイヤを連続的に掃引しながら行い、N2もしくはArガスを流しながら行った。ワイヤの送り速度は20〜200m/分、熱処理温度は200〜600℃で熱処理時間は0.2〜1.0秒とした。

Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の濃度分析は、ボンディングワイヤの表面から深さ方向に向かってArイオンでスパッタしながらオージェ電子分光分析装置を用いて分析した。被覆層及び表皮合金層の厚みは、得られた深さ方向の濃度プロファイル(深さの単位はSiO2換算)から求めた。Pdの濃度が50原子%以上で、かつ、Auの濃度が10原子%未満であった領域をPd被覆層とし、Pd被覆層の表面にあるAu濃度が10原子%以上の範囲であった領域を合金表皮層とした。被覆層及び合金表皮層の厚み及びPd最大濃度をそれぞれ表5及び表6に記載した。Cu合金芯材におけるPdの濃度は、ワイヤ断面を露出させて、走査型電子顕微鏡に備え付けた電子線マイクロアナライザにより線分析、点分析等を行う方法により測定した。ワイヤ断面を露出させる方法としては、機械研磨、イオンエッチング法等を利用した。ボンディングワイヤ中のGa、Ge、Ni、Ir、Pt、B、P、Mgの濃度は、ボンディングワイヤを強酸で溶解した液をICP発光分光分析装置、ICP質量分析装置を利用して分析し、ボンディングワイヤ全体に含まれる元素の濃度として検出した。

上記の手順で作製した各サンプルの構成を下記表5及び表6に示す。

(評価方法) ワイヤ表面を観察面として、結晶組織の評価を行った。評価手法として、後方散乱電子線回折法(EBSD、Electron Backscattered Diffraction)を用いた。EBSD法は観察面の結晶方位を観察し、隣り合う測定点間での結晶方位の角度差を図示できるという特徴を有し、ボンディングワイヤのような細線であっても、比較的簡便ながら精度よく結晶方位を観察できる。

ワイヤ表面のような曲面を対象として、EBSD法を実施する場合には注意が必要である。曲率の大きい部位を測定すると、精度の高い測定が困難になる。しかしながら、測定に供するボンディングワイヤを平面に直線上に固定し、そのボンディングワイヤの中心近傍の平坦部を測定することで、精度の高い測定をすることが可能である。具体的には、次のような測定領域にすると良い。円周方向のサイズはワイヤ長手方向の中心を軸として線径の50%以下とし、ワイヤ長手方向のサイズは100μm以下とする。好ましくは、円周方向のサイズは線径の40%以下とし、ワイヤ長手方向のサイズは40μm以下とすれば、測定時間の短縮により測定効率を高められる。更に精度を高めるには、3箇所以上測定し、ばらつきを考慮した平均情報を得ることが望ましい。測定場所は近接しないように、1mm以上離すと良い。

ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面におけるワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して角度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率、及び、ワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径(μm)については本発明例1〜59と同様の方法で求めた。また、0.2%耐力及び最大耐力については本発明例1〜59と同様の方法で評価を行い上記(1)式から耐力比を算出した。

高温高湿環境又は高温環境でのボール接合部の接合信頼性は、接合信頼性評価用のサンプルを作製し、HAST及びHTS評価を行い、それぞれの試験におけるボール接合部の接合寿命によって判定した。接合信頼性評価用のサンプルは、一般的な金属フレーム上のSi基板に厚さ0.8μmのAl−1.0%Si−0.5%Cuの合金を成膜して形成した電極に、市販のワイヤーボンダーを用いてボール接合を行い、市販のエポキシ樹脂によって封止して作製した。ボールはN2+5%H2ガスを流量0.4〜0.6L/minで流しながら形成させ、その大きさはφ33〜34μmの範囲とした。

HAST評価については、作製した接合信頼性評価用のサンプルを、不飽和型プレッシャークッカー試験機を使用し、温度130℃、相対湿度85%の高温高湿環境に暴露し、7Vのバイアスをかけた。ボール接合部の接合寿命は48時間毎にボール接合部のシェア試験を実施し、シェア強度の値が初期に得られたシェア強度の1/2となる時間とした。高温高湿試験後のシェア試験は、酸処理によって樹脂を除去して、ボール接合部を露出させてから行った。

HAST評価のシェア試験機はDAGE社製の試験機を用いた。シェア強度の値は無作為に選択したボール接合部の10か所の測定値の平均値を用いた。上記の評価において、接合寿命が96時間未満であれば実用上問題があると判断し×印、96時間以上144時間未満であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、144時間以上288時間未満であれば実用上問題ないと判断し○印、288時間以上であれば特に優れていると判断し◎印とし、表5及び表6の「HAST」の欄に表記した。

HTS評価については、作製した接合信頼性評価用のサンプルを、高温恒温器を使用し、温度200℃の高温環境に暴露した。ボール接合部の接合寿命は500時間毎にボール接合部のシェア試験を実施し、シェア強度の値が初期に得られたシェア強度の1/2となる時間とした。高温高湿試験後のシェア試験は、酸処理によって樹脂を除去して、ボール接合部を露出させてから行った。

HTS評価のシェア試験機はDAGE社製の試験機を用いた。シェア強度の値は無作為に選択したボール接合部の10か所の測定値の平均値を用いた。上記の評価において、接合寿命が500時間以上1000時間未満であれば実用可能であるが改善の要望ありと判断し△印、1000時間以上3000時間未満であれば実用上問題ないと判断し○印、3000時間以上であれば特に優れていると判断し◎印とした。

ボール形成性(FAB形状)の評価は、接合を行う前のボールを採取して観察し、ボール表面の気泡の有無、本来真球であるボールの変形の有無を判定した。上記のいずれかが発生した場合は不良と判断した。ボールの形成は溶融工程での酸化を抑制するために、N2ガスを流量0.5L/minで吹き付けながら行った。ボールの大きさは34μmとした。1条件に対して50個のボールを観察した。観察にはSEMを用いた。ボール形成性の評価において、不良が5個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が3〜4個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜2個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表5及び表6の「FAB形状」の欄に表記した。

ワイヤ接合部におけるウェッジ接合性の評価は、リードフレームのリード部分に1000本のボンディングを行い、接合部の剥離の発生頻度によって判定した。リードフレームは1〜3μmのAgめっきを施したFe−42原子%Ni合金リードフレームを用いた。本評価では、通常よりも厳しい接合条件を想定して、ステージ温度を一般的な設定温度域よりも低い150℃に設定した。上記の評価において、不良が11個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が6〜10個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜5個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表5及び表6の「ウェッジ接合性」の欄に表記した。

ボール接合部のつぶれ形状の評価は、ボンディングを行ったボール接合部を直上から観察して、その真円性によって判定した。接合相手はSi基板上に厚さ1.0μmのAl−0.5%Cuの合金を成膜した電極を用いた。観察は光学顕微鏡を用い、1条件に対して200箇所を観察した。真円からのずれが大きい楕円状であるもの、変形に異方性を有するものはボール接合部のつぶれ形状が不良であると判断した。上記の評価において、不良が6個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が4〜5個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、1〜3個の場合は問題ないと判断し○印、全て良好な真円性が得られた場合は、特に優れていると判断し◎印とし、表5及び表6の「つぶれ形状」の欄に表記した。

[リーニング] 評価用のリードフレームに、ループ長5mm、ループ高さ0.5mmで100本ボンディングした。評価方法として、チップ水平方向からワイヤ直立部を観察し、ボール接合部の中心を通る垂線とワイヤ直立部との間隔が最大であるときの間隔(リーニング間隔)で評価した。リーニング間隔がワイヤ径よりも小さい場合にはリーニングは良好、大きい場合には直立部が傾斜しているためリーニングは不良であると判断した。100本のボンディングしたワイヤを光学顕微鏡で観察し、リーニング不良の本数を数えた。不良が7個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が4〜6個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜3個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表5及び表6の「リーニング」の欄に表記した。

(評価結果) 表5及び表6に示すように、本発明例2−1〜2−44に係るボンディングワイヤは、Cu合金芯材と、Cu合金芯材の表面に形成されたPd被覆層とを有し、ボンディングワイヤがGa、Geから選ばれる1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が合計で0.011〜1.5質量%である。これにより本発明例2−1〜2−44に係るボンディングワイヤは、温度が130℃、相対湿度が85%の高温高湿環境下でのHAST試験でボール接合部信頼性が得られることを確認した。

Pd被覆層上にさらにAuとPdを含む合金表皮層を有する本発明例については、AuとPdを含む合金表皮層の厚みが0.0005〜0.050μmであることにより、優れたウェッジ接合性が得られることを確認した。

ボンディングワイヤがさらにNi、Ir、Pt、Pdから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含む本発明例では、HTS評価によるボール接合部高温信頼性がより良好であることを確認した。

ボンディングワイヤがさらにB、P、Mgから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含む本発明例は、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度がそれぞれ1〜200質量ppmであることにより、ボール接合部のつぶれ形状が良好であった。

<本発明例3−1〜3−50> (サンプル) まずサンプルの作製方法について説明する。芯材の原材料となるCuは純度が99.99質量%以上で残部が不可避不純物から構成されるものを用いた。As、Te、Sn、Sb、Bi、Se、Ni、Zn、Rh、In、Ir、Pt、Ga、Ge、Pd、B、P、Mg、Ca、Laは純度が99質量%以上で残部が不可避不純物から構成されるものを用いた。ワイヤ又は芯材の組成が目的のものとなるように、芯材への添加元素であるAs、Te、Sn、Sb、Bi、Se、Ni、Zn、Rh、In、Ir、Pt、Ga、Ge、Pd、B、P、Mg、Ca、Laを調合する。As、Te、Sn、Sb、Bi、Se、Ni、Zn、Rh、In、Ir、Pt、Ga、Ge、Pd、B、P、Mg、Ca、Laの添加に関しては、単体での調合も可能であるが、単体で高融点の元素や添加量が極微量である場合には、添加元素を含むCu母合金をあらかじめ作製しておいて目的の添加量となるように調合しても良い。

芯材のCu合金は、直径がφ3〜6mmの円柱型に加工したカーボンるつぼに原料を装填し、高周波炉を用いて、真空中もしくはN2やArガス等の不活性雰囲気で1090〜1300℃まで加熱して溶解させた後、炉冷を行うことで製造した。得られたφ3〜6mmの合金に対して、引抜加工を行ってφ0.9〜1.2mmまで加工した後、ダイスを用いて連続的に伸線加工等を行うことによって、φ300〜600μmのワイヤを作製した。伸線には市販の潤滑液を用い、伸線速度は20〜150m/分とした。ワイヤ表面の酸化膜を除去するために、塩酸による酸洗処理を行った後、芯材のCu合金の表面全体を覆うようにPd被覆層を1〜15μm形成した。さらに、一部のワイヤはPd被覆層の上にAuとPdを含む合金表皮層を0.05〜1.5μm形成した。Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の形成には電解めっき法を用いた。めっき液は市販の半導体用めっき液を用いた。その後、200〜500℃の熱処理と伸線加工を繰返し行うことによって直径20μmまで加工した。加工後は最終的に破断伸びが約5〜15%になるようN2もしくはArガスを流しながら熱処理をした。熱処理方法はワイヤを連続的に掃引しながら行い、N2もしくはArガスを流しながら行った。ワイヤの送り速度は20〜200m/分、熱処理温度は200〜600℃で熱処理時間は0.2〜1.0秒とした。

Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の濃度分析には、ボンディングワイヤの表面から深さ方向に向かってスパッタ等で削りながらオージェ電子分光分析を実施した。得られた深さ方向の濃度プロファイルから、Pd被覆層の厚み、AuとPdを含む合金表皮層の厚見及びPd最大濃度を求めた。

本発明例3−1〜3−50については、As、Te、Sn、Sb、Bi、Seから選ばれる元素を芯材中に含有させている。

本発明例3−34〜3−44については、ボンディングワイヤの最表面にCuを存在させている。そこで表7には「ワイヤ表面Cu濃度」の欄を設け、ボンディングワイヤの表面をオージェ電子分光装置によって測定した結果を記載した。ボンディングワイヤの熱処理温度と時間を選択することにより最表面に所定濃度のCuを含有させた。本発明例3−1〜3−33、3−45〜3−50については、最表面にCuを存在させない熱処理条件とし、オージェ電子分光装置でもCuが検出されなかった。

上記の手順で作製した各サンプルの構成を表7及び表8に示す。

(評価方法) ワイヤ表面を観察面として、結晶組織の評価を行った。評価手法として、後方散乱電子線回折法(EBSD、Electron Backscattered Diffraction)を用いた。EBSD法は観察面の結晶方位を観察し、隣り合う測定点間での結晶方位の角度差を図示できるという特徴を有し、ボンディングワイヤのような細線であっても、比較的簡便ながら精度よく結晶方位を観察できる。

ワイヤ表面のような曲面を対象として、EBSD法を実施する場合には注意が必要である。曲率の大きい部位を測定すると、精度の高い測定が困難になる。しかしながら、測定に供するボンディングワイヤを平面に直線上に固定し、そのボンディングワイヤの中心近傍の平坦部を測定することで、精度の高い測定をすることが可能である。具体的には、次のような測定領域にすると良い。円周方向のサイズはワイヤ長手方向の中心を軸として線径の50%以下とし、ワイヤ長手方向のサイズは100μm以下とする。好ましくは、円周方向のサイズは線径の40%以下とし、ワイヤ長手方向のサイズは40μm以下とすれば、測定時間の短縮により測定効率を高められる。更に精度を高めるには、3箇所以上測定し、ばらつきを考慮した平均情報を得ることが望ましい。測定場所は近接しないように、1mm以上離すと良い。

ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面におけるワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して角度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率、及び、ワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径(μm)については本発明例1〜59と同様の方法で求めた。また、0.2%耐力及び最大耐力については本発明例1〜59と同様の方法で評価を行い上記(1)式から耐力比を算出した。

高温高湿環境又は高温環境でのボール接合部の接合信頼性は、接合信頼性評価用のサンプルを作製し、HAST及びHTS評価を行い、それぞれの試験におけるボール接合部の接合寿命によって判定した。接合信頼性評価用のサンプルは、一般的な金属フレーム上のSi基板に厚さ0.8μmのAl−1.0%Si−0.5%Cuの合金を成膜して形成した電極に、市販のワイヤーボンダーを用いてボール接合を行い、市販のエポキシ樹脂によって封止して作製した。ボールはN2+5%H2ガスを流量0.4〜0.6L/minで流しながら形成させ、その大きさはφ33〜34μmの範囲とした。

HAST評価については、作製した接合信頼性評価用のサンプルを、不飽和型プレッシャークッカー試験機を使用し、温度130℃、相対湿度85%の高温高湿環境に暴露し、5Vのバイアスをかけた。ボール接合部の接合寿命は48時間毎にボール接合部のシェア試験を実施し、シェア強度の値が初期に得られたシェア強度の1/2となる時間とした。高温高湿試験後のシェア試験は、酸処理によって樹脂を除去して、ボール接合部を露出させてから行った。

HAST評価のシェア試験機はDAGE社製の試験機を用いた。シェア強度の値は無作為に選択したボール接合部の10か所の測定値の平均値を用いた。上記の評価において、接合寿命が96時間未満であれば実用上問題があると判断し×印、96時間以上144時間未満であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、144時間以上288時間未満であれば実用上問題ないと判断し○印、288時間以上384時間未満であれば優れていると判断し◎印、384時間以上であれば特に優れていると判断し◎◎印とし、表7及び表8の「HAST」の欄に表記した。

HTS評価については、作製した接合信頼性評価用のサンプルを、高温恒温器を使用し、温度200℃の高温環境に暴露した。ボール接合部の接合寿命は500時間毎にボール接合部のシェア試験を実施し、シェア強度の値が初期に得られたシェア強度の1/2となる時間とした。高温高湿試験後のシェア試験は、酸処理によって樹脂を除去して、ボール接合部を露出させてから行った。

HTS評価のシェア試験機はDAGE社製の試験機を用いた。シェア強度の値は無作為に選択したボール接合部の10か所の測定値の平均値を用いた。上記の評価において、接合寿命が500時間以上1000時間未満であれば実用可能であるが改善の要望ありと判断し△印、1000時間以上3000時間未満であれば実用上問題ないと判断し○印、3000時間以上であれば特に優れていると判断し◎印とし、表7及び表8の「HTS」の欄に表記した。

ボール形成性(FAB形状)の評価は、接合を行う前のボールを採取して観察し、ボール表面の気泡の有無、本来真球であるボールの変形の有無を判定した。上記のいずれかが発生した場合は不良と判断した。ボールの形成は溶融工程での酸化を抑制するために、N2ガスを流量0.5L/minで吹き付けながら行った。ボールの大きさは34μmとした。1条件に対して50個のボールを観察した。観察にはSEMを用いた。ボール形成性の評価において、不良が5個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が3〜4個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜2個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表7及び表8の「FAB形状」の欄に表記した。

ワイヤ接合部におけるウェッジ接合性の評価は、リードフレームのリード部分に1000本のボンディングを行い、接合部の剥離の発生頻度によって判定した。リードフレームは1〜3μmのAgめっきを施したFe−42原子%Ni合金リードフレームを用いた。本評価では、通常よりも厳しい接合条件を想定して、ステージ温度を一般的な設定温度域よりも低い150℃に設定した。上記の評価において、不良が11個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が6〜10個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜5個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表7及び表8の「ウェッジ接合性」の欄に表記した。

ボール接合部のつぶれ形状の評価は、ボンディングを行ったボール接合部を直上から観察して、その真円性によって判定した。接合相手はSi基板上に厚さ1.0μmのAl−0.5%Cuの合金を成膜した電極を用いた。観察は光学顕微鏡を用い、1条件に対して200箇所を観察した。真円からのずれが大きい楕円状であるもの、変形に異方性を有するものはボール接合部のつぶれ形状が不良であると判断した。上記の評価において、不良が6個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が4〜5個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、1〜3個の場合は問題ないと判断し○印、全て良好な真円性が得られた場合は、特に優れていると判断し◎印とし、表7及び表8の「つぶれ形状」の欄に表記した。

[リーニング] 評価用のリードフレームに、ループ長5mm、ループ高さ0.5mmで100本ボンディングした。評価方法として、チップ水平方向からワイヤ直立部を観察し、ボール接合部の中心を通る垂線とワイヤ直立部との間隔が最大であるときの間隔(リーニング間隔)で評価した。リーニング間隔がワイヤ径よりも小さい場合にはリーニングは良好、大きい場合には直立部が傾斜しているためリーニングは不良であると判断した。100本のボンディングしたワイヤを光学顕微鏡で観察し、リーニング不良の本数を数えた。不良が7個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が4〜6個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜3個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表7及び表8の「リーニング」の欄に表記した。

(評価結果) 本発明例3−1〜3−50に係るボンディングワイヤは、Cu合金芯材と、Cu合金芯材の表面に形成されたPd被覆層とを有し、ボンディングワイヤがAs、Te、Sn、Sb、Bi、Seから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が合計で0.1〜100質量ppmである。これにより本発明例3−1〜3−50に係るボンディングワイヤは、温度が130℃、相対湿度が85%の高温高湿環境下でのHAST試験でボール接合部信頼性が得られることを確認した。

Pd被覆層上にさらにAuとPdを含む合金表皮層を有する本発明例については、AuとPdを含む合金表皮層の層厚が0.0005〜0.050μmであることにより、優れたウェッジ接合性が得られることを確認した。

本発明例3−21〜3−33、3−35、3−37、3−39〜3−44は、ボンディングワイヤがさらにNi、Zn、Rh、In、Ir、Pt、Ga、Geから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度がそれぞれ0.011〜1.2質量%、Cu合金芯材に含まれるPdの濃度が0.05〜1.2質量%であることにより、HTS評価によるボール接合部高温信頼性が良好であることを確認した。

本発明例3−22〜3−26、3−29〜3−32はボンディングワイヤがさらにB、P、Mg、Ca、Laから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度がそれぞれ1〜100質量ppmであることにより、FAB形状が良好であると共に、ウェッジ接合性が良好であった。

本発明例3−34〜3−44は、ワイヤがAs、Te、Sn、Sb、Bi、Seを含有するとともに、ワイヤの最表面にCuが存在している。これにより本発明例3−34〜3−44は、HAST評価結果が◎◎又は◎であって、最表面にCuを存在させる効果が見られた。

<本発明例4−1〜4−15> ボンディングワイヤの原材料として、Cu合金芯材を製造するために純度が99.99質量%以上のCu、添加元素としてNi、Pd、Pt、Au、P、B、Be、Fe、Mg、Ti、Zn、Ag、Siを用意し、被覆層形成用に純度が99.99質量%以上のPdを用意し、表皮合金層形成用に純度が99.99質量%以上のAuをそれぞれ用意した。Cuと添加元素原料を出発原料として秤量した後、これを高真空下で加熱して溶解することで直径10mm程度の銅合金インゴットを得た。その後、該インゴットを鍛造、圧延、伸線して直径500μmのCu合金ワイヤを作製した。次にCu合金ワイヤ表面にPd被覆層を1〜3μm厚、被覆層の表面にAu表皮層を0.05〜0.2μm厚になるように電解めっきで施し、複層ワイヤを得た。Pd被覆層、AuPd表皮合金層の最終的な厚みを表8に記載した。ここで、芯材と被覆層との境界はPd濃度が50原子%の位置とし、被覆層と表皮合金層との境界はAu濃度が10原子%の位置とした。その後、伸線速度が100〜700m/min、ダイス減面率が8〜30%で連続伸線加工を行い表8に記載した最終線径とした。表皮合金層の厚み、Au最大濃度、表面Cu濃度、被覆層の厚みは、伸線加工の間に熱処理を2回乃至3回実施することにより制御した。その時の条件は、ワイヤ直径が200〜250μmにおいて温度500〜700℃、速度10〜70m/min、ワイヤ直径が70〜100μmにおいて温度450〜650℃、速度20〜90m/min、最終線径が細い場合には、更にワイヤ直径が40〜70μmにおいて温度300〜500℃、速度30〜100m/minであった。その後、最終線径で、表8の温度、速度30〜120m/minで熱処理を実施した。また、表面までCuを拡散させるために1回の熱処理だけは、熱処理炉中の酸素濃度を0.2〜0.7%と通常より高めに設定した。この熱処理はできれば最後の方に行ったほうが良く、その理由はCuが表面に出てから伸線加工を繰り返すとCuの酸化が起こり易くなるからである。それ以外の熱処理では、熱処理炉中の酸素濃度を0.2%未満にすることで、表皮合金層の過剰な酸化を抑えつつ、安定した厚さ、組成などを制御した。このようにして直径が15〜25μmのボンディングワイヤを得た。

被覆層、表皮合金層の濃度分析、Cu合金芯材におけるNi、Pd、Pt、Auの濃度分析は、ボンディングワイヤの表面から深さ方向に向かってArイオンでスパッタしながらAES装置を用いて分析した。被覆層及び表皮合金層の厚みは、得られた深さ方向の濃度プロファイル(深さの単位はSiO2換算)から求めた。元素分布の観察には、EPMA、EDX装置などによる分析も行った。Pdの濃度が50原子%以上で、かつ、Auの濃度が10原子%未満であった領域を被覆層とし、被覆層の表面にあるAu濃度が10原子%以上の範囲であった領域を表皮合金層とした。被覆層及び表皮合金層の厚み及び組成を表8に記載した。ボンディングワイヤ中のP、B、Be、Fe、Mg、Ti、Zn、Ag、Siの濃度は、ICP発光分光分析装置、ICP質量分析装置等により測定した。ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面におけるワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して角度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率、及び、ワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径(μm)については本発明例1〜59と同様の方法で求めた。また、0.2%耐力及び最大耐力については本発明例1〜59と同様の方法で評価を行い上記(1)式から耐力比を算出した。

ボンディングワイヤの接続には、市販の自動ワイヤボンダーを使用した。ボンディングの直前にアーク放電によりボンディングワイヤの先端にボール部を作製したが、その直径はボンディングワイヤの直径の1.7倍となるように選択した。ボール部作製時の雰囲気は窒素とした。

ボンディングワイヤの接合の相手としては、Siチップ上に形成された厚さ1μmのAl電極と、表面がPdめっきリードフレームのリードをそれぞれ用いた。作製したボール部を260℃に加熱した前記電極とボール接合した後、ボンディングワイヤの母線部を260℃に加熱した前記リードとウェッジ接合し、再びボール部を作製することで、連続的にボンディングを繰り返した。ループ長は3mmと5mmの2種類とし、ループ高さは0.3mmと0.5mmの2種類とした。

ボンディングワイヤのウェッジ接合性については、接合性、フィッシュテイル対称性について評価を行った。接合性については、ウェッジ接合された状態のボンディングワイヤの接合部を100本観察し、接合部が剥がれているものをNGとカウントした。フィッシュテイル対称性については、ウェッジ接合された状態のボンディングワイヤの接合部を100本観察し、その対称性を評価した。フィッシュテイル状圧着部の中央から左端までの長さ、右端まで長さを計測し、その差が10%以上のものをNGとカウントした。接合性とフィッシュテイル対称性は、NGが0個を◎、1〜10個を○、11個以上を×とした。

ボンディングワイヤの1st接合性(ボールボンディング性)に関しては、HTS試験、HAST試験、FAB形状について評価を行った。HTS試験については本発明例1〜59と同様の方法で評価を行った。HAST試験におけるボールボンディング部の健全性を評価するため、ボンディングを行った半導体装置について、温度130℃、相対湿度85%RH(Relative Humidity)、5Vという高温高湿炉中に放置し、48時間おきに取り出して評価した。評価方法として、電気抵抗を測定し、抵抗が上昇したものをNGとした。NGとなるまでの時間が480時間以上を◎、384時間以上480時間未満を○、384時間未満を×とした。

FAB形状については、リードフレームにFABを100本作製し、SEMで観察した。真球状のものをOK、偏芯、引け巣をNGとし、その数をカウントした。FAB形状は、NGが0個を◎、1〜5個を○、6〜10個を△、11個以上を×とした。◎と○は合格であり、△は合格であるがやや品質不良である。表9中のNi、Pd及びPtの濃度(質量%*)はCu合金芯材中の濃度を示す。

本発明例4−1〜4−15については、Cu合金芯材が、Ni,PdおよびRtから選ばれる一種以上の元素(元素周期表第10族の金属元素)を総計で0.1〜3.0質量%含有し、ボンディングワイヤ最表面におけるCu濃度が1〜10原子%である。これにより本発明例4−1〜4−15については、ウェッジ接合部における接合性及びフィッシュテイル対称性に優れ、HTS、FAB形状及びHASTにおいても良好であった。

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