高いZ方向電気伝導率をもつ複合材料

申请号 JP2017515720 申请日 2015-09-21 公开(公告)号 JP2017535447A 公开(公告)日 2017-11-30
申请人 サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド; サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド; 发明人 カルメロ ルカ レストゥッシア,; カルメロ ルカ レストゥッシア,; フィオレンツォ レンツィ,; フィオレンツォ レンツィ,; マーク ボノー,; マーク ボノー,; ジョサンレット ビジェガス,; ジョサンレット ビジェガス,; エミリアーノ フルッローニ,; エミリアーノ フルッローニ,;
摘要 高いz方向電気伝導率を有する硬化性複合材料。硬化性複合材料には、硬化性マトリックス樹脂を注入又は含浸させた強化用炭素繊維の2つ以上の層と、少なくとも伝導性ナノサイズ粒子、例えばカーボンナノチューブ、及び軽量の炭素ベールを含有する層間領域が含まれる。別の実施態様によれば、層間領域は、ポリマー強化粒子をさらに含有する。複合材料及び構造を製作するための方法も開示される。【選択図】図3
权利要求

少なくとも二層の、硬化性マトリックス樹脂を含浸させた強化用炭素繊維と (i)その中に分散された伝導性ナノサイズ粒子、及び(ii)不織炭素ベールを含む、強化用炭素繊維の隣接する層の間に形成された層間領域と を含み、 伝導性ナノサイズ粒子のそれぞれが、約100nmよりも小さい少なくとも1つの寸法を有する 硬化性複合材料。層間領域が、ポリマー粒子をさらに含む、請求項1に記載の硬化性複合材料。不織炭素ベールが、1gsmから30gsm、又は2gsmから10gsmの面積重量を有する、請求項1又は2に記載の硬化性複合材料。不織炭素ベールが、層間領域で硬化性マトリックス樹脂に包埋されている、請求項1から3の何れか一項に記載の硬化性複合材料。伝導性ナノサイズ粒子が、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノ繊維、カーボンナノロープ、カーボンナノリボン、カーボンナノフィブリル、カーボンナノニードル、カーボンナノシート、カーボンナノロッド、カーボンナノコーン、スクロール様形状を有するカーボンナノスクロール、カーボンナノオーム、カーボンブラック粒子、グラファイトナノ小板、グラファイトナノドット、グラフェン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、炭素系ナノサイズ構造体である、請求項1から4の何れか一項に記載の硬化性複合材料。炭素系ナノサイズ構造体が、カーボンナノチューブ(CNT)である、請求項5に記載の硬化性複合材料。カーボンナノチューブが、50:1から5000:1のアスペクト比を有する、請求項6に記載の硬化性複合材料。伝導性ナノサイズ粒子が、複合材料中のマトリックス樹脂の全重量に対して約0.1重量%から約10重量%の範囲内の量で存在する、請求項1から7の何れか一項に記載の硬化性複合材料。不織炭素ベールが、ランダムに配置された炭素繊維を含む、請求項1から8の何れか一項に記載の硬化性複合材料。不織炭素ベールが、ランダムに配置された金属被覆炭素繊維を含む、請求項1から9の何れか一項に記載の硬化性複合材料。不織炭素ベールが、金属又は金属合金の層で被覆されている、請求項1から10の何れか一項に記載の硬化性複合材料。層間領域が、強化用炭素繊維に含浸している硬化性マトリックス樹脂と実質的に同じ又は異なる硬化性マトリックス樹脂を含む、請求項1から11の何れか一項に記載の硬化性複合材料。少なくともいくつかのポリマー粒子が、不織炭素ベールを貫通している、請求項2に記載の硬化性複合材料。ポリマー粒子が、複合材料中のマトリックス樹脂の全重量に対して約2重量%から約20重量%の含有量で存在する、請求項2又は13に記載の硬化性複合材料。ポリマー粒子が、不溶性熱可塑性又はエラストマー粒子であり、且つ 前記不溶性粒子が、複合材料の硬化の際に層間領域で離散粒子として残存する、 請求項2、13及び14の何れか一項に記載の硬化性複合材料。ポリマー粒子が、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリフタルアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリ硫化フェニレン、液晶ポリマー、及びそれらの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性材料を含む、不溶性熱可塑性粒子である、請求項15に記載の硬化性複合材料。ポリマー粒子が、架橋ポリブタジエン、ポリアクリル、ポリアクリロニトリル、及びポリスチレンからなる群から選択される少なくとも1種のポリマー材料を含む、不溶性エラストマー粒子である、請求項15に記載の硬化性複合材料。ポリマー粒子が架橋粒子であり、各粒子が、 (a)反応性基に対して化学的に反応性である架橋結合剤を用いて1種又は複数種の反応性基を有する架橋性の熱可塑性ポリマーを架橋させることによって作成される架橋ネットワークと、 (b)1種又は複数種の反応性基を有する少なくとも1種の化合物、反応性基に対して化学的に反応性である架橋剤、及び熱可塑性ポリマーを反応させることによって作成される、独立した架橋ネットワークと絡み合った熱可塑性ポリマー鎖を含む相互侵入ポリマーネットワーク(IPN) のうちの1つを含む、請求項2、13及び14の何れか一項に記載の硬化性複合材料。ポリマー粒子のそれぞれが、約5:1から約1:1の範囲内のアスペクト比を有する、請求項13から18の何れか一項に記載の硬化性複合材料。強化用繊維を含浸している硬化性マトリックス樹脂及び層間領域内の硬化性マトリックス樹脂が、両方のマトリックスに共通している1種又は複数種の熱硬化性樹脂を含む、請求項1から19の何れか一項に記載の硬化性複合材料。強化用繊維を含浸している硬化性マトリックス樹脂が、全体にわたって分散されている伝導性ナノサイズ粒子をさらに含む、請求項1から20の何れか一項に記載の硬化性複合材料。強化用繊維を含浸しているマトリックス樹脂が、1種又は複数種の熱硬化性樹脂を含む、請求項1から21の何れか一項に記載の硬化性複合材料。熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、イミド、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン、ホルムアルデヒド縮合樹脂、不飽和ポリエステル、及びそれらの組合せから選択される、請求項22に記載の硬化性複合材料。強化用繊維を含浸している硬化性マトリックス樹脂が、層間領域における硬化性マトリックス樹脂と同じである、請求項1から23の何れか一項に記載の硬化性複合材料。強化用炭素繊維の層が不織層ではない、請求項1から24の何れか一項に記載の硬化性複合材料。強化用炭素繊維の少なくとも1つの層が、連続一方向繊維又は織布の形態である、請求項1から25の何れか一項に記載の硬化性複合材料。複合材構造体を製作する方法であって: (a)各プリプレグプライが、硬化性マトリックス樹脂中に包埋されている強化用炭素繊維の繊維層、及びマトリックス樹脂全体にわたって分散された伝導性ナノサイズ粒子を含む、複数のプリプレグプライを形成すること; (b)少なくとも1つの不織炭素ベールが2本の隣接するプリプレグプライの間に配置されるように、少なくとも1つの不織炭素ベールと一緒にプリプレグプライを積み重ね配置にレイアップし、ラミネートを形成すること; (c)圧を加えてラミネートを一体化すること;並びに (d)ラミネートを硬化すること; を含み、 伝導性ナノサイズ粒子のそれぞれが、100nmよりも小さい少なくとも1つの寸法を有する、 方法。(a)の各プリプレグプライが、強化用炭素繊維の層の少なくとも一面に隣接して配置されたポリマー粒子をさらに含み、且つ (c)の一体化の後、少なくともいくつかのポリマー粒子が、不織炭素ベールを貫通する、 請求項27に記載の方法。複合材料を製作する方法であって: (a)その中に分散された伝導性ナノサイズ粒子を含む少なくとも1つの硬化性樹脂フィルムを形成すること; (c)不織炭素ベールが樹脂フィルムと繊維層の間に配置されるように、少なくとも1つの硬化性樹脂フィルムを少なくとも1つの不織炭素ベール及び強化用炭素繊維の繊維層と混合すること; (e)硬化性樹脂フィルム、不織炭素ベール及び繊維層に熱及び圧力を加えて、樹脂含浸炭素繊維及び樹脂含浸炭素ベールを含むプリプレグプライを形成すること を含み、 伝導性ナノサイズ粒子が、100nmよりも小さい少なくとも1つの寸法を有する、 方法。(a)の少なくとも1つの硬化性樹脂フィルムが、ポリマー粒子をさらに含み、且つ (e)で熱及び圧力を加えた後、少なくともいくつかのポリマー粒子が不織炭素ベールを貫通する、 請求項29に記載の方法。繊維層が2つの不織炭素ベールの間に配置され、各樹脂フィルムが不織炭素ベールの1つと接触するように、2つの硬化性樹脂フィルムが(a)で形成され、且つ2つの不織炭素ベールが2つの樹脂フィルム及び繊維層と(c)で混合される、請求項29又は30に記載の方法。(a)請求項29から31の何れか一項に記載の方法によって複数のプリプレグプライを形成すること; (b)前記プリプレグプライを一緒にラミネートすること;及び (c)得られたラミネートを硬化すること を含む、複合材構造体を製作する方法。不織炭素ベールが、約1gsmから約30gsm、又は約2gsmから約10gsmの面積重量を有する、請求項27から32の何れか一項に記載の方法。伝導性ナノサイズ粒子が、カーボンナノチューブである、請求項27から33の何れか一項に記載の方法。強化用炭素繊維の繊維層が、連続一方向繊維又は織布の形態である、請求項27から34の何れか一項に記載の方法。

说明书全文

本出願は、その開示がその全体を参照により組み込まれる、2014年9月22日出願の米国仮特許出願第62/053469号の優先権を主張する。

航空宇宙産業では、航空機の一次及び二次構造における繊維強化ポリマー複合材の使用がより広く認められてきている。複合材構造体は、樹脂含浸繊維強化材(プリプレグとして公知である)の複数の層(又はプライ)を金型表面にレイアップし、続いて一体化及び/又は硬化させることによって、従来作製されている。繊維強化ポリマー複合材の利点には、構成部品の著しい削減を可能にし、ファスナー及び継手の必要性を低減させる、高い比強度、優れた疲れ耐久度、耐食性及び柔軟性が含まれる。しかしながら、現代の航空機の一次及び二次構造へのこれらの材料の適用には、マトリックス樹脂の誘電性に起因する特別な課題が提示される。複合材料中の強化用繊維としての炭素繊維の使用は、それらの黒鉛性のためにそれらの縦方向に沿ってある程度の電気伝導率をもたらし得るが、複合材料中のマトリックス樹脂の誘電特性は、複合材料の全体の電気伝導率を低下させる。

複合材主翼ボックスに対する落雷事象時の、「エッジグロー」現象を生じさせる典型的な電流路を示す図である。

複合材主翼の典型的な構造のスパーキャップエッジに塗布されたシーラントを示す図である。

本開示の実施態様による、ポリマー強化粒子、伝導性ナノ粒子及び炭素ベールを含有する層間領域を有する硬化性複合材料の概略図である。

本開示の実施態様による、炭素繊維層の両面にラミネートされている粒子含有樹脂フィルム及び炭素ベールの概略図である。

強化粒子を含まない多層カーボンナノチューブ(MWCNT)と炭素ベールの相乗効果を示す、種々の複合材ラミネートの電気伝導率データの概要図である。

強化粒子を含むMWCNTと炭素ベールの相乗効果を示す、種々の複合材ラミネートの電気伝導率データの概要図である。

カーボンブラックと炭素ベールの相乗効果を示す、種々の複合材ラミネートの電気伝導率データの概要図である。

炭素ベールと伝導性ナノ粒子の効果を示す、種々の複合材ラミネートの衝撃後残留圧縮強度(CAI)データの概要図である。

航空機の落雷保護のための要求を満たすため、及び特に複合材主翼アセンブリーのために「エッジグロー」と呼ばれる現象を回避するためには、繊維強化ポリマー複合材の電気伝導率を増大させることが望ましい。エッジグロー現象は、燃料蒸気の潜在的発火源になるのに十分なエネルギーを有する複合材スキン/スパーアセンブリーにおける明るいグロー又はスパークとして現れる。

このエッジグロー現象は、落雷事象時に、特に低いz方向電気伝導率を有する複合材ラミネート上に現れることがある。2つの複合材部品を連結しているファスナーのため、落雷事象時に、高輝度電流を伴う一過性の電荷がスキンを通って伝わり、次いで主翼部分構造(例えば構造用のスパー又はリブ)に入る。そのため通常、複合材スキン/スパーアセンブリーでは、電流は、一部がスキン上を、一部が燃料タンクの壁の1つとなっているスパーを通って伝わる。

電流は、ファスナーから隣接するスパーの複合材プライを通って横方向に通過し、樹脂マトリックスと比較してより高い電気伝導率のため、繊維に沿って伝わる傾向がある。この経路は、スパー/リブキャップエッジで典型的な明るいグロー又はスパークを生じさせることがあり、これは当業者によって「エッジグロー」現象と呼ばれている。

図1は、複合材主翼ボックスに対する落雷事象時の潜在的な臨界電流路を示す。繊維補強プライの間の樹脂の抵抗性が高く、その結果、電流が隣接するプライの間を流れない傾向がある場合、エッジグロー現象はより危機的に表れる。z方向電気伝導率が低すぎる場合、落雷時にプライ間で著しい電圧降下が生じることがあり、したがってエッジグローのリスクが増大する。

エッジグロー現象は、複合材端部における電子の表面放出又はプラズマ生成と関係があり、しばしば1種の樹脂爆発として現れる。この現象の本質に関する不確実性により、落雷事象時の燃料蒸気の発火可能性に関連して複数の注意が提起されてきた。

従来の解決策は、燃料タンクにシーラントを塗布することである(図2参照)。このような燃料タンクシーラントの例は、Le Joint Francais、FR製のPR 1776 Class Bシーラントである。しかし、このような方法は、重量を追加することになり、標準化の不足及びシーラント塗布の難しさによって必ずしも効果的であるとは限らない。時間が経つにつれて、シーラントは、経時変化のために効果がなくなり、又はタンク内の燃料によって完全に洗い流される可能性がある。さらに、落雷は、エッジシールを粉砕し得るカットエッジで高圧ガスの発生をもたらす可能性がある。衝撃及びデラミネーションに対する耐性などの優れた機械的性質を備えながら、上で論じたエッジグロー問題に対処できる多機能性複合材料の必要性が依然として残っている。

航空宇宙産業では、航空機複合材構造体のための主要設計ドライバーのうちの2つが、特定の衝撃及びこのような事象後の損傷の拡大に対するそれらの耐性であることが広く受け入れられている。

デラミネーションは、複合材料における重要な破損モードである。デラミネーションは、2つのラミネート層が互いから剥離する場合に生じる。重要な設計制限要因には、デラミネーションが始まるために必要とされるエネルギー及びそれを拡大するために必要なエネルギーが含まれる。

複合材構造体、特に航空機の一次構造体に関する耐衝撃性能を改善する必要性が、しばしば「第三世代の複合材料」と定義される、層間強化粒子で強化された新世代の複合材料の開発のきっかけとなった。このような技術的な解決策により、炭素繊維強化複合材に高い耐衝撃性がもたらされるが、隣接するプライの間に電気絶縁層間領域も作成され、複合材構造体全体の電気伝導率が特にz方向で著しく低下することになる。「z方向」は、強化用繊維が複合材構造体中に配置された平面に直行する方向、又は複合材構造体の厚みを通る軸を意味する。

複合材料の電気伝導率は、伝導性粒子などの異なる伝導性材料を、繊維強化ポリマー複合材のマトリックス樹脂中、又は例えばプリプレグレイアップなどの多層複合材構造体の層間領域中に取り込むことによって、改善することができる。例えば、金属充填剤は、樹脂の電気伝導率を増大させるために高い添加量で加えてもいいが、これは、著しい重量増加と衝撃後残留圧縮強度(CSAI又はCAI)及び層間破壊靭性などの耐衝撃性関連特性の低下をもたらす。そのため、最新式の解決策は、複合材のz方向電気伝導率は改善できるが、同時に、その機械的性能は改善できないようなものである。改善された衝撃性能を有する硬化複合材は、改善されたCAI及び破壊靭性を有するものである。CAIは、複合材料の損傷に耐える能を測定する。CAIを測定するための試験では、硬化複合材には、所与のエネルギーの衝撃を施し、その後圧縮荷重をかける。衝撃後、及び圧縮試験の前に、損傷面積及び圧痕深さが測定される。この試験の間、複合材料は、弾性の不安定性が確実に生じないように拘束され、複合材料の強度が記録される。

破壊靭性は、クラックを含有する材料の破壊を回避する能力を説明する特性であり、航空宇宙用途の材料の最も重要な特性の一つである。破壊靭性は、クラックが存在する場合の材料の脆性破壊に対する耐性を表す定量的な方法である。

破壊靭性は、歪みエネルギー解放率(Gc)として定量化でき、これは、新たに作成された破壊表面積の単位当たりの破壊の際に散逸するエネルギーである。Gcには、GIc(モードI−開口モード)又はGIIc(モードII−面内剪断)が含まれる。下付き「Ic」は、モードIクラック開口を表し、これはクラックに垂直の通常の引張り応力の下で形成され、下付き「IIc」は、クラックの面と平行及びクラック前部と垂直に作用する剪断応力によって生じるモードIIクラックを表す。デラミネーションの開始及び成長は、モードI破壊靭性を調べることによって決定することができる。

いくつかの実施態様では、多層複合材料の層間領域での伝導性ナノ粒子と軽量の炭素ベールの組合せが、z方向電気伝導率の改善をもたらす相乗効果を生む。その上、特定のポリマー強化粒子を添加すると、CAI及びGIcの改善も得られる。場合によっては、伝導性ナノ粒子と炭素ベールの組合せは、CAI及びモードI(GIc)におけるデラミネーション耐性を含む機械的性能を低下させることなく、また材料製造能力及び加工性に悪影響を与えることなく、同じ複合材料の非修飾バージョンと比較して2桁以上高いz方向電気伝導率をもたらすことが発見された。さらに、伝導性ナノ粒子と炭素ベールの組合せを有することから得られた伝導率効果は、それら個々の伝導率効果の合計よりもはるかに大きい。

本開示の一実施態様は、硬化性又は熱硬化可能な樹脂を注入又は予備含浸させた強化繊維の2つ以上の層から構成される硬化性複合材料を対象とする。強化繊維の隣接する層の間の層間領域には、硬化性マトリックス樹脂全体にわたって分散された伝導性ナノ粒子、ポリマー強化粒子及び同じマトリックス樹脂中に包埋された炭素ベールが含有される。伝導性ナノ粒子は、ポリマー強化粒子と比較してサイズが著しく小さい。ポリマー強化粒子は、複合材料の硬化に際しマトリックス樹脂に実質的に不溶性であってよく、硬化後に層間領域で離散粒子として残存する(本明細書では「不溶性」粒子と呼ばれる)。いくつかの実施態様では、ポリマー強化粒子は、膨潤性粒子であり、これは周囲の樹脂が加熱されるとサイズが増大する。いくつかの実施態様では、ポリマー強化粒子には、不溶性粒子と「可溶性」熱可塑性粒子の両方が含まれる。「可溶性」熱可塑性粒子は、その混合物が加熱されているとき又はマトリックス樹脂の硬化サイクルの間に周囲のマトリックス樹脂中に溶解し、硬化樹脂マトリックス中で離散粒子として残存しない固体粒子を意味する。

層間領域の樹脂(伝導性ナノ粒子、炭素ベール又は強化粒子を含まない)は、強化繊維を含浸するマトリックス樹脂と同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施態様では、強化繊維を含浸するマトリックス樹脂は、その中に分散された伝導性ナノ粒子も含有する。

図3は、本開示の実施態様による硬化性複合材料20を概略的に図示している。複合材料20は、硬化性マトリックス樹脂を注入又は含浸させた強化繊維の層22、23、24の間に形成された、層間領域21a及び21bを含有している。それぞれの層間領域21a及び21bは、その中に分散された伝導性ナノ粒子25を有する硬化性マトリックス樹脂、ポリマー強化粒子26及び同じマトリックス樹脂中に包埋された炭素ベール27を含有する。層間樹脂の組成物(伝導性ナノ粒子25、強化粒子26、及び炭素ベール27を含まない)は、繊維層22、23、24を含浸しているマトリックス樹脂と同様であっても異なっていてもよい。層間樹脂が繊維層22、23、24を含浸しているマトリックス樹脂と同様のものである場合、樹脂マトリックスは共通の1種又は複数種の熱硬化性樹脂を含有する。ポリマー強化粒子26は、並んで配置されていても一緒に粒子の単層を形成していてもよい。この場合、層間領域の深さは、粒子のサイズによって決定される。いくつかの実施態様では、強化粒子26は、同様のサイズ(例えば、ほぼ同じ直径を有する球状粒子)であり、層間領域の深さは、強化粒子26の平均直径とほぼ同じ又はわずかに大きい。

いくつかの実施態様では、層間領域内に伝導性ナノ粒子、ポリマー強化粒子及び炭素ベールの組合せを含有する硬化複合材料は、以下の特性を有する:4プローブ試験法に従ったDC条件で測定したz方向の電気伝導率が、少なくとも約10S/m(ジーメンス毎メートル)、例えば、約10S/mから約100S/mであり、ASTM−D7137に従って測定した270in−lbs(又は30.5J)におけるCAIが少なくとも約35ksi、例えば、約35ksi(又は約241MPa)から約55ksi(又は約379MPa)であり、ASTM−D5528に従って測定したモードI(GIc)下の層間破壊靭性が少なくとも約1.7in−lb/in2、例えば、約1.7in−lb/in2(又は約296J/m2)から約5in−lb/in2(又は約870J/m2)である。

代替の実施態様では、強化繊維の隣接する層の間の層間領域には、マトリックス樹脂全体にわたって分散された伝導性ナノ粒子と同じマトリックス樹脂中に包埋された炭素ベールの組合せが含有されているが、ポリマー強化粒子は存在しない。例として、図3に図示されている硬化性複合材料は、層間領域21a及び21bが分散された伝導性ナノ粒子25を有する硬化性マトリックス樹脂及び炭素ベール27を含有するが、ポリマー強化粒子26を含有しないように改変されてもよい。この実施態様では、層間領域の深さは、炭素ベールの厚さによって決定される。

いくつかの実施態様では、多層複合材料の層間領域での伝導性ナノ粒子と軽量の炭素ベールの組合せが、z方向電気伝導率の改善をもたらす相乗効果を生む。場合によっては、伝導性ナノ粒子と炭素ベールの組合せは、同じ複合材料の非修飾バージョンと比較して1桁以上高いz方向電気伝導率をもたらすが、CAI及びモードI(GIc)におけるデラミネーション耐性を含む機械的性能を低下させないことが発見された。さらに、伝導性ナノ粒子と炭素ベールの組合せを有することから得られた伝導率効果は、それら個々の伝導率効果の合計よりもはるかに大きい。

いくつかの実施態様では、層間領域で伝導性ナノ粒子と炭素ベールの組合せを含有するが、ポリマー粒子を含有しない硬化複合材料は、以下の特性を有する:4プローブ試験法に従ったDC条件で測定したz方向の電気伝導率が、少なくとも約10S/m(ジーメンス毎メートル)、例えば、約10S/mから約100S/mであり、ASTM−D7137に従って測定した270in−lbs(又は30.5J)におけるCAIが少なくとも約25ksi、例えば、約25ksi(又は約172MPa)から約45ksi(又は約310MPa)であり、ASTM−D5528に従って測定したモードI(GIc)下の層間破壊靭性が少なくとも約1.2in−lb/in2、例えば、約1.2in−lb/in2(又は約210J/m2)から約3in−lb/in2(又は約522J/m2)である。

本明細書に開示された複合材料は、高い機械的性能及び高い電気伝導率が必要とされる航空機用途で首尾よく使用され得る多機能性材料である。硬化した状態では、複合材料の改善された電気伝導率が、落雷によって発生したものなどの電流を、複合材料から製造された複合材構造体のより広い面積にわたって分散又は散逸させるために機能でき、それによって複合材構造体の局在化部分への破局的損傷の可能性が低減される。そのように、この多機能性複合材料を使用することは、落雷の直接的な影響を軽減するため、且つ上で論じた複合材におけるエッジグロー現象を防ぐための、有効な解決策になり得る。その上、硬化複合材料は、電磁遮蔽という追加的な利益をもたらす。

伝導性ナノ粒子 本明細書では、用語「ナノ粒子」は、少なくとも1つの寸法が約0.1マイクロメートルよりも小さく(<100ナノメートル)、アスペクト比が約50:1から約5000:1である材料を意味する。ナノ粒子の寸法は、動的光散乱(DSL)技術によって決定することができる。例えば、Horiba製のSZ−100などのナノ粒子アナライザーを使用してもよい。

ナノ粒子は、例えば、球状、楕円状、長球状、円盤状、樹状、棒状、円盤、立方形又は多面体を含む、任意の適当な三次元形状のものであってよい。

本明細書では、用語「アスペクト比」は、三次元物体の最長寸法と最短寸法との比を意味する。この用語を球状又は実質的に球状の粒子に関して使用する場合、関連がある比は、球状物体の最大断面直径と最小断面直径との比となる。例として、完全に球状の粒子は、1:1のアスペクト比を有するはずである。

一実施態様では、ナノ粒子は、完全に又は主に、分子スケールで五形又は六角形、又は両方に配置された炭素原子から構成されたカーボンナノ粒子である。本明細書における使用目的のための適当なカーボンナノサイズ構造体には、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、カーボンナノロープ、カーボンナノリボン、カーボンナノフィブリル、カーボンナノニードル、カーボンナノシート、カーボンナノロッド、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール(スクロール様形状)及びカーボンナノオーム、カーボンブラック、グラファイトナノ小板又はナノドット、グラフェン、並びに他のタイプのフラーレン材料が含まれるが、それだけには限定されない。これらのフラーレン材料のどれでも部分又は全金属被覆されていてよい。

好ましいカーボンナノ粒子は、カーボンナノチューブ(CNT)である。通常、CNTは、約0.4nmから約100nmの範囲の外径を有する、チューブ状のストランド様構造体であり、例えば、外径は、約50nm未満又は約25nm未満であってよい。

CNTは、任意のキラリティーのものであってもよい。アームチェアナノチューブが企図されている。さらに、CNTは、半導体ナノチューブ又は電気伝導率を示す任意の他のタイプであってもよい。適当なCNTには、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)及び多層カーボンナノチューブ(MWCNT)が含まれていてよい。一実施態様では、カーボンナノ材料は、MWCNTである。

別の実施態様では、伝導性ナノ粒子には、約5×103S/mよりも高い電気伝導率を有する、金属ナノ粒子、金属又は炭素被覆ナノ粒子及びそれらの組合せが含まれていてよい。適当な金属ナノ粒子には、それだけには限らないが、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、鉛、スズ、アルミニウム、チタン、合金及びその混合物を含む任意の公知の金属の粒子が含まれる。いくつかの実施態様では、金属材料は、約1×107S/m以上、又は約3×107S/m以上、例えば、約1×107S/mから約7×107S/mの範囲の電気伝導率を有する。炭素又は金属固体材料の電気伝導率は、四点法を用いて、又はDIN EN 2004−1及びASTM E 1004に従う渦電流法を用いて決定することができる。

金属被覆されていてもよい適当な有機又は無機ナノ粒子には、ナノクレイ、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、フラーレン、カーボンナノロープ、カーボンナノリボン、カーボンナノフィブリル、カーボンナノニードル、カーボンナノシート、カーボンナノロッド、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール及びカーボンナノオーム、並びに対応する窒化ホウ素成分、無機ナノ粒子又はナノ繊維、例えば、ガラスナノ球体、シリカナノ球体、シリカナノチューブ、ナノチタニア、中空ナノ粒子、ポリマーナノ粒子又はナノ繊維、例えばポリエーテルスルホンナノ繊維、ポリエーテルスルホンナノ球体、ポリエーテルエーテルスルホンナノ繊維、ポリエーテルエーテルスルホンナノ球体、ポリエーテルイミドナノ繊維、ポリイミドナノ球体、ポリイミドナノ繊維、ポリイミドナノ繊維、ポリアミドナノ繊維、ポリアミドナノ球体、エラストマーナノ球体、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)ナノ繊維、ポリアリールエーテルケトンナノ球体、ポリ硫化フェニレンナノ繊維、ポリアミドイミドナノ繊維、液晶ポリマーナノ繊維が含まれるが、それだけには限定されない。

伝導性ナノ粒子は、単独又は組合せで、フレーク、粉末、繊維、球体、樹枝状結晶、円盤又はナノメートル寸法の任意の他の三次元物体など、任意の適当な形状及び形態のものであってよく、且つ高い比表面積を有していてよい。いくつかの実施態様では、伝導性ナノ粒子は、標準的なブルナウアー−エメット−テラー(BET)測定法によって測定した、少なくとも0.1m2/g、好ましくは10m2/g以上、例えば約10m2/gから約500m2/gの比表面積(SSA)を有していてよい。例えば、標準的な窒素系を用いたMicro−meritics TriStar IIを用いたBET測定法を使用してもよい。

本明細書における使用目的のための伝導性ナノ粒子は、複合材料中の全樹脂含有量の約0.1wt%から約10wt%の範囲で存在していてよい。一実施態様では、伝導性ナノ粒子は、カーボンナノチューブ(CNT)であり、それらは全樹脂含有量の約0.5wt%から約2.0wt%の範囲の量で存在する。別の実施態様では、伝導性ナノ粒子は、カーボンブラック(CB)であり、それらは全樹脂含有量の約1.0wt%から約6.0wt%の範囲の量で存在する。本明細書では、「wt%」は、重量パーセントを意味する。

炭素ベール 炭素ベールは、約2gsmから約10gsm、いくつかの実施態様では約2gsmから約6gsmを含む、約1gsm(g/m2)から約30gsmの面積重量を有する、ランダムに配置された繊維の軽量な不織ベールである。

ベールの繊維は、炭素繊維であり、金属で被覆されていてよい。金属被覆は、それだけには限らないが、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、鉛、スズ、アルミニウム、チタン、合金及びその混合物を含む、任意の適当な金属のものであってよい。

不織ベールは、混ざり合ったランダムに配置された繊維と、繊維を一緒に保持するための少量の高分子結合剤から構成されている。繊維を一緒に保持するのに十分な量の結合剤を有する不織ベールを提供することが望ましいが、結合剤の量は、得られたベールを液状樹脂などの流体に対して浸透性/多孔性のままにするのに十分小さい。そのために、結合剤の量は、ベールの全重量に対して30wt%未満である。代表的な結合剤には、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエステル、ポリエステル、スチレンアクリル、ビニル−アクリル、エポキシ、フェノキシ、ポリウレタン、ポリアミド、アクリレート、そのハイブリッド及び共重合体が含まれる。適当な炭素ベールの例は、Technical Fiber Products Ltd.(TFP、U.K.)によって供給されているOptiveil(商標)である。

いくつかの実施態様では、不織ベールは、柔軟であり、自立しており、支持担体を必要としないことを意味する。その上、不織ベールは、別の繊維の層に付着していない単層材料である。不織ベールの繊維は、細断若しくは連続した繊維フィラメント又その組合せであってよい。

ベール中の不織繊維の大部分は、約0.01から約15ミクロンの範囲の断面直径を有していてよい。いくつかの実施態様では、繊維の大部分は、直径が約4から約7ミクロンの範囲である。

上記の不織炭素ベールは、例として、従来の湿式堆積法によって生成することができる。湿式堆積法では、湿式の細断した繊維を、結合剤(複数可)、及び他の化学薬剤、例えば界面活性剤(複数可)、粘度調整剤(複数可)、脱泡剤(複数可)などを含有するスラリー中に分散する。細断した繊維をスラリー中に導入した後、繊維が分散するようなるように、スラリーを激しく撹拌する。繊維を含有するスラリーを、実質的な部分の水が除去されてウェブが形成される可動スクリーン上に被着させる。任意選択的に、次いで液体結合剤をウェブに塗布する。得られたベールは、任意の残水を除去するために、且つ必要に応じて、結合剤(複数可)を硬化させるために乾燥させる。得られた不織ベールは、ランダム配向に配置された分散した個々の繊維フィラメントの集合である。湿式堆積法は通常、繊維及び/又は重量の均一な分布が望まれる場合に使用される。

一実施態様では、炭素ベールは、参照により本明細書に組み込まれる、米国公開番号2011/10159764で公開された米国特許出願に記載されたように、少なくとも一面が金属の薄層で金属化されている。あるいは、金属被覆ベールを生成するために、スパッタリング、焼結、及び電着などの物理的堆積法を含む任意の他の最新技術の金属化プロセスも使用してもよい。一実施態様では、金属被覆炭素ベールは、約2gsmから約30gsm、又は約2gsmから約15gsmの面積重量、及びベールの全重量に対して約5重量%から約50重量%又は約10重量%から約70重量%の金属含有量を有する。

ポリマー強化粒子 本明細書の目的に適したポリマー強化粒子には、熱可塑性又はエラストマー粒子が含まれる。これらのポリマー強化粒子は、金属などの伝導性被覆がされていない。

いくつかの実施態様では、ポリマー強化粒子には、その硬化中に複合材料の熱硬化性マトリックス樹脂に実質的に不溶性であり、硬化後に硬化したマトリックス樹脂内に離散粒子として残存する粒子が含まれる。ある特定の実施態様では、不溶性ポリマー粒子は、硬化中に複合材料の熱硬化性マトリックス樹脂に膨潤可能な粒子でもある。上記のように、不溶性ポリマー粒子は、追加の強化剤として可溶性熱可塑性粒子と併せて使用してもよい。

いくつかの実施態様では、強化粒子は、複合材料に含有されているマトリックス樹脂の全重量に対して、約5重量%から約15重量%、及び約8重量%から約12重量%を含む、約2重量%から約20重量%の含有量で、強化用繊維の隣接する層の間に形成された層間領域に均一に分散されている。

ポリマー強化粒子は、任意の三次元形状のものであってよく、いくつかの実施態様では、それらは実質的に球状である。いくつかの実施態様では、強化粒子は、5:1未満のアスペクト比を有しており、例えば、アスペクト比は約1:1であってよい。強化粒子に関して、用語「アスペクト比」は、粒子の最大断面寸法と粒子の最小断面寸法との比を意味する。

球状粒子(約1:1のアスペクト比をもつ)では、平均粒径がその直径を意味する。非球状粒子では、平均粒径は、粒子の最大断面寸法を意味する。

本明細書に開示されている目的では、ポリマー強化粒子は、約100μm未満、例えば、約10μmから約50μmの範囲内、又は約15μmから約30μmの範囲内の平均粒径(d50)を有していてよい。本明細書に開示された平均粒径は、例えば、0.002ナノメートル−2000ミクロンの範囲で動作するMalvern Mastersizer 2000を用いて、レーザー回折技術によって測定することができる。「d50」は、粒径分布の中央値を表し、あるいは粒子の50%がこの値以下の粒径を有するような分布の値である。

いくつかの実施態様では、ポリマー強化粒子は、伝導性ナノ粒子と比較してサイズがより大きい。例えば、ポリマー強化粒子の平均粒径(d50)は、伝導性ナノ粒子の最小寸法より少なくとも100倍大きくてもよい。

例として、伝導性ナノ粒子がカーボンナノチューブの場合、強化粒子の平均粒径(d50)は、カーボンナノチューブの直径の少なくとも100倍大きい、又は1000倍大きい。

ある特定の粒子が不溶性であるか可溶性であるかどうかを決定することは、それらが存在する特定の樹脂系中の粒子の溶解度に関連する。樹脂系は、1種又は複数種の熱硬化性樹脂、硬化剤及び/又は触媒と、未硬化又は硬化したマトリックス樹脂の特性を改変するための微量の任意選択の添加剤を含んでいてもよい。

ホットステージ顕微鏡法は、粒子が、樹脂系に不溶性、部分可溶性、又は膨潤性かどうか決定するために使用することができる。第1に、乾燥ポリマー粒子(樹脂と混合していない)の試料は、顕微鏡法によって特徴を明らかにされ、画像は、平均粒径及び体積を決定するためにNational Institutes of Health(Bethesda、米国メリーランド州)製のImageJソフトウェアを用いて分析される。第2に、粒子の試料は、機械的混合によって所望のマトリックス樹脂中に分散される。第3に、得られた混合物の試料は、顕微鏡スライド上に置かれ、次いでそれが顕微鏡下のホットステージ配置に置かれる。次いで、試料は、所望のランプ率で所望の硬化温度まで加熱され、粒子のサイズ、体積又は形状における任意の変化が毎秒10フレームで連続的に記録される。Image J ソフトウェアを用いてサイズ及び体積の変化を決定するために、球状粒子では、直径が通常測定されるが、非球状のものの場合は、最長辺が測定される。全てのホットステージ試験は、硬化剤又は触媒を含有しないマトリックス樹脂中に10wt%の粒子添加量で実施することができる。

強化粒子は、上記ホットステージ顕微鏡分析を受け、元の「乾燥」粒子と比較して、粒子の直径又は体積の変化がゼロ又は5%未満の場合、粒子は、不溶性であり、膨潤性ではないと考えられる。強化粒子は、上記ホットステージ顕微鏡分析を受け、粒子の直径又は体積が5%より多く増加する場合、粒子は、不溶性であるだけでなく「膨潤性」でもあると考えられる。膨潤は、粒子の外表面への周囲の樹脂の浸出が原因である。

いくつかの実施態様では、不溶性粒子には、ホットステージ顕微鏡分析の間に溶融するが、マトリックス樹脂と不相溶であり、したがって冷却の際に離散粒子に再形成される粒子が含まれる。分析目的のみのために、不溶性粒子は、ホットステージ顕微鏡分析の間に流動することができ、結晶化度も変化することができる。

直径又は体積を決定するのが困難な場合、代わりの分析法を使用することができる。一方向プリプレグテープから作製され、且つ樹脂リッチな層間領域内の全マトリックス樹脂の重量に対して10%添加量の粒子を含有する、16プライ擬似等方性複合パネルは、硬化スケジュールに従って製造でき、次いで硬化パネルは、顕微鏡法による評価のために断面的に切断される。粒子が硬化後に識別可能な離散粒子のままである場合、粒子は、不溶性粒子であると考えられる。粒子が層間領域及び繊維床を囲んでいるマトリックスの両方の中に完全に溶解し、冷却の際に離散粒子として識別可能でない場合、粒子は、不溶性層間粒子と考えられない。

エポキシ系マトリックス樹脂では、不溶性ポリマー粒子の組成物は:脂肪族ポリアミド(PA)、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリフタルアミド(PPA)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリ硫化フェニレン(PPS)、ポリアミドイミド、液晶ポリマー(LCP)、その共重合体、及びその誘導体から選択される少なくとも1種のポリマーを含有していてよい。いくつかの実施態様では、ポリマー粒子の組成物は、少なくとも1種の弾性重合体又は:架橋ポリブタジエン、ポリアクリル酸(polyacrylic)、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、その共重合体、及びその誘導体(例えば、Zeon Chemicals Inc.によって販売されているDuoMod DP5045)から選択される材料を含有する。

いくつかの実施態様では、不溶性粒子は、硬化プロセス中に溶解せず、硬化複合材料の層間領域内に離散粒子として残存する不溶性熱可塑性粒子である。適当な不溶性熱可塑性粒子の例には、ポリアミドイミド(PAI)粒子及びポリアミド(PA)粒子(例えばナイロン)、及びポリフタルアミド(PPA)粒子が含まれ、これらはその硬化サイクルの間、エポキシ樹脂系に不溶である。

ある特定の等級のポリイミド粒子は、不溶性強化粒子として適切であり得る。例えば、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’−メチレンジアニリン(MDA)、及び2,4−トルエンジアミン(TDA)から調製され、90−92パーセントの芳香族炭素を含有する非フタルイミド炭素含有量を有するポリイミドである。

不溶性熱可塑性粒子は、層間強化剤として熱湿性能の損失を回避するのに有効であることが判明している。これらの熱可塑性粒子は、硬化後でもマトリックス樹脂中に不溶性のままであるので、それらは改善された靱性、損傷許容性、熱湿性能、加工、微小亀裂耐性、及び低下した溶媒感受性を硬化樹脂に付与する。

本明細書に記載された不溶性粒子を製造する方法には、任意の順序において、乳化、沈殿、乳化重合、洗浄、乾燥、押出し、磨砕、粉砕、低温粉砕、ジェットミリング及び/又は粒子の篩分けが含まれ得る。当業者には、これらの工程が、当該技術分野で公知の多くの方法の何れかによって達成され得ることが理解されよう。

本明細書の使用目的に使用される不溶性粒子には、架橋熱可塑性粒子が含まれる。一実施態様によれば、架橋熱可塑性粒子は、1種又は複数種の反応性基を有する1種又は複数種の架橋性の熱可塑性ポリマーと、反応性基に対して化学的に反応性である架橋剤とを反応させることによって作成される架橋ネットワークから構成されており、ここで、架橋剤は、反応性基によってポリマー鎖を互いに直接架橋させる。反応性基は、ポリマー骨格上の末端基又はペンダント基であってよい。本実施態様の直接的な架橋反応は、1種又は複数種の反応性基を用いたポリマー鎖の直接的な架橋によって、ポリマー分子を「結び付ける(tying−up)」と説明することができる。

上記の架橋熱可塑性粒子は、参照により本明細書に組み込まれる、2010年12月2日に公開された、公開番号2010/0304118の米国特許出願に記載されたプロセスによって生成することができる。この方法には、反応性官能基、架橋剤、及び触媒と共に熱可塑性ポリマーを、水と不混和性の一般的な溶媒中に溶解させることが含まれる。次いで乳濁液を、非イオン性界面活性剤を使用することによって水中で作成し、それによって乳化した粒子が形成される。ポリマー鎖が化学的に架橋されるように、乳化した粒子を続いて乾燥及び硬化させる。反応条件及び架橋剤のタイプは、粒子の最終特性を決定することになる。温度などの反応条件は、より大きな架橋をもたらす。2個以上の反応部位(すなわち官能基)を有する架橋剤が好ましい。得られた架橋熱可塑性粒子は、硬化性樹脂に加えてもよい離散した、自由に動く粒子である。これらの架橋熱可塑性粒子も、硬化中に硬化性樹脂に膨潤可能である。

架橋を受けやすい反応性基を有している適当な熱可塑性ポリマーの例には、1種又は複数種のポリエーテル、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ酸化フェニレン(PPO)、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリ硫化フェニレン(polyphenyl sulfide)(PPS)、ポリヒドロキシエーテル、スチレン−ブタジエン、ポリアクリル酸エステル、ポリアセタール(polyacetol)、ポリテレフタル酸ブチレン、ポリアミド−イミド、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、そのブレンド、又はその共重合体、PES単独重合体(Sumitomo Chemical Co.製のSUMIKAEXCEL 5003P又はSolvay製のRadel(登録商標) PESなど)、又はPEES単独重合体が含まれるが、それだけには限定されない。PES共重合体の具体例には、種々の繰返し単位比をもつPES/PEES共重合体が含まれる。上記の熱可塑性樹脂は、粒子を形成するための単一成分として使用でき、あるいは、1個を超える熱可塑性ポリマーを使用する場合、ハイブリッド構造体、又はハイブリッド粒子が形成される。

他の実施態様では、架橋熱可塑性粒子は、熱可塑性ポリマーのブレンドから形成される。さらに他の実施態様では、本明細書に記載された架橋粒子は、2個以上の熱可塑性ポリマーが使用されているハイブリッド構造体から形成することができる。

架橋性の熱可塑性ポリマー上の反応性基は、1種又は複数種の以下の:アミン;ヒドロキシル;無水物;グリシジル;カルボン酸;マレイミド;イソシアネート;フェノール;ナジイミド(nadimide);シアン酸エステル;アセチレン;ビニル;ビニルエステル;ジエン;又はその誘導体であってよい。場合によっては、ポリマー鎖上の不飽和は、架橋点(アクリル及びメタクリルファミリー、その上いくつかの不飽和ゴム、ビニルエステル又は不飽和ポリエステルに対して)として働き得る。反応性基の数は、鎖当たり最低1個の反応性基であってよく、いくつかの実施態様では、連結されたポリマー骨格を作成するために必要な最低の画分と考えられ;約1又それ以上の数は、しっかりと架橋したポリマー又は相互侵入ネットワークを生成するのに好ましい。官能価が2より大きいポリマーは、高度に反応したゲルを容易に生成する。

熱可塑性ポリマーの末端基/官能性の化学的性質に応じて、複数の反応部位をもつ適切な多官能性の架橋剤を選択することができる。このような架橋剤の例は:アルキル化メラミン誘導体(例えばCYMEL(登録商標)303)、酸塩化物(例えば三塩化1,3,5ベンゼントリカルボニル)、多官能性エポキシ(例えばARALDITE(登録商標)MY0500、MY721)、カルボン酸(例えばベンゼンテトラカルボン酸)である。

別の実施態様では、架橋熱可塑性粒子は、相互侵入ポリマーネットワーク(IPN)から構成されており、これは、独立した架橋ネットワークと絡み合った熱可塑性ポリマー鎖から構成されている。IPNは、1種又は複数種の反応性基を有する1種又は複数種の化合物(例えば架橋性のモノマー又はポリマー)と、熱可塑性ポリマーの存在下で反応性基に対して化学的に反応性である架橋結合剤とを反応させることによって作成される。反応(ある特定の架橋又は硬化条件下で起こる)によって、化合物が反応性基によって架橋され、それによって独立した架橋ネットワークが形成される。このように、熱可塑性ポリマー鎖は、分子レベルで独立した架橋ネットワークと絡み合って、IPNを形成する。この手法は、別々の及び独立した架橋ネットワークの形成によって熱可塑性ポリマー鎖を「結び付け」、それによって相互侵入ネットワークが作成されると説明することができる。したがって、この実施態様では、熱可塑性ポリマーは、その上に反応性基を有している必要はない。このタイプの架橋粒子は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8846818号に記載されたプロセスによって生成することができる。得られた架橋熱可塑性粒子は、硬化性樹脂に加えることができる離散粒子である。これらの架橋熱可塑性粒子は、硬化中に硬化性樹脂に膨潤可能でもある。

例として、IPNを有する架橋粒子は:(i)熱可塑性ポリマー、多官能性エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂を架橋可能なアミン硬化剤を含有する乳濁液を形成すること;(ii)乳濁液から溶媒を除去し、固体粒子の形態である濃縮物を回収すること;(iii)エポキシ樹脂が架橋されるように、粒子を乾燥、続いて硬化(例えば加熱によって)させることによって作成することができる。硬化の結果として、架橋エポキシは、各粒子中に熱可塑性ポリマーを有するIPNを形成する。

膨潤性の架橋熱可塑性粒子は、硬化中にそれらが存在する周囲のマトリックス樹脂をもつ「勾配接触面」も形成する。用語「勾配接触面」は、本明細書では、それぞれの粒子及び周囲のマトリックス樹脂の間の緩やか及び強い接触面を意味する。勾配接触面は、熱硬化性樹脂、例えばエポキシと熱力学的に相溶性があるエンジニアリングされた架橋熱可塑性粒子を使用することによって得られる。架橋熱可塑性粒子のコアの中の熱可塑性ポリマーの濃度は、マトリックス樹脂が外表面から粒子に入りコアに向かって移動するので、中心において最大であり、粒子の外表面に向かって緩やかに減少する。熱可塑性粒子のコアから外表面への熱可塑性濃度におけるこの緩やかな減少が、それぞれの熱可塑性粒子及び周囲のマトリックス樹脂の間の勾配接触面を形成する。したがって、熱硬化性樹脂及び熱可塑性粒子の間には鋭い描写又は移行はない。鋭い描写又は移行が存在した場合、勾配接触面を含有する複合材料と比較して、複合材料中の熱可塑性及び熱硬化性樹脂の間の接触面は、はるかに弱いであろう。このように、これらの架橋熱可塑性粒子は、樹脂が加熱され、その粘度が低下すると、粒子を囲んでいる樹脂が粒子の外表面を通って粒子内に拡散し、それによって粒径が増大するので、「膨潤性」と考えられている。しかしながら、架橋粒子は、樹脂の硬化後に、離散した、且つ識別可能な粒子のままになる。

本明細書に記載された架橋熱可塑性粒子は、エポキシ系樹脂などの熱硬化可能な樹脂に加えてもよい離散した自由に動く粒子(すなわち分割された状態)であり、それらは、樹脂の硬化サイクルの間の樹脂へのそれらの全溶解を防ぐために、化学的に架橋している。その上、それらは熱硬化性樹脂と熱力学的に相溶性があるように設計されている。

「離散粒子」は、本明細書では、マトリックス樹脂中で識別可能で、走査型電子顕微鏡法(SEM)、光学顕微鏡法、又は微分干渉コントラスト顕微鏡法(DIC)を使用することによって検出できる粒子を意味する。

使用する場合、可溶性熱可塑性粒子には:ポリアリールスルホン、例えばポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリエーテルイミド(PEI)及びポリイミド(PI)から選択される微粒子熱可塑性ポリマーが含まれる。前述したように、これらの可溶性熱可塑性粒子は、その混合物が加熱されているとき又はマトリックス樹脂の硬化サイクルの間に周囲の樹脂マトリックス中に溶解し、硬化したマトリックス樹脂中で離散粒子として残存しない、固体粒子(例えば粉末)である。本明細書では、周囲の樹脂中に「溶解する」は、樹脂と均一又は連続相を形成することを意味する。

マトリックス樹脂 強化繊維を含浸/注入するための硬化性マトリックス樹脂(又は樹脂組成物)は、1種又は複数種の未硬化の熱硬化性樹脂を含有する硬化可能又は熱硬化可能な樹脂であり、これには、エポキシ樹脂、イミド(ポリイミド及びビスマレイミドなど)、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン、ホルムアルデヒド縮合樹脂(尿素、メラミン及びフェノールなど)、不飽和ポリエステル、そのハイブリッド、ブレンド及び組合せが含まれるが、それだけには限定されない。

適当なエポキシ樹脂には、芳香族ジアミン、芳香族モノ第一級アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、ポリカルボン酸のポリグリシジル誘導体が含まれる。適当なエポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びビスフェノールKなどのビスフェノールのポリグリシジルエーテル;並びにクレゾール及びフェノール系ノボラックのポリグリシジルエーテルが含まれる。

具体例は、4,4’−ジアミノジフェニルメタンのテトラグリシジル誘導体(TGDDM)、レゾルシノールジグリシジルエーテル、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、ブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、ジアミノジフェニルメタンのテトラグリシジル誘導体、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、フェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル、o−クレゾールノボラックのポリグリシジルエーテル又はテトラフェニルエタンのテトラグリシジルエーテルである。

マトリックス樹脂に使用するのに適した市販のエポキシ樹脂には、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(例えばHuntsman製のMY 9663、MY 720、及びMY 721);N,N,N’,N’−テトラグリシジル−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソ−プロピルベンゼン(例えばMomentive製のEPON 1071);N,N,N’,N’−テトラグリシジル−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、(例えばMomentive製のEPON 1072);p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えばHuntsman製のMY 0510);m−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えばHuntsman製のMY 0610);ビスフェノールA系材料、例えば2,2−ビス(4,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン(例えばDow製のDER 661、又はMomentive製のEPON 828)、及び好ましくは25℃における粘度が8−20Pa・sであるノボラック樹脂のジグリシジルエーテル;フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル(例えばDow製のDEN 431又はDEN 438);ジ−シクロペンタジエン系フェノールノボラック(例えばHuntsman製のTactix 556);1,2−フタル酸ジグリシジル(例えばGLY CEL A−100);ジヒドロキシジフェニルメタン(ビスフェノールF)(例えばHuntsman製のPY 306)のジグリシジル誘導体が含まれる。他の適当なエポキシ樹脂には、カルボン酸3’,4’−エポキシシクロヘキシル−3,4−エポキシシクロヘキサン(例えばHuntsman製のCY 179)などの脂環族が含まれる。

一般に、硬化性マトリックス樹脂は、1種又は複数種の熱硬化性樹脂を含有し、他の添加剤、例えば硬化剤、硬化触媒、コモノマー、レオロジー制御剤、粘着付与剤、無機又は有機充填剤、強化剤としての熱可塑性及び/又は弾性重合体、安定剤、阻害剤、顔料、染料、難燃剤、反応性希釈剤、並びに硬化の前又は後にマトリックス樹脂の特性を改変するための当業者に周知の他の添加剤と併せてもよい。

硬化性マトリックス樹脂組成物に適した強化剤には、ポリアミド、コポリアミド、ポリイミド、アラミド、ポリケトン、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリスルフィド、ポリ酸化フェニレン(PPO)及び修飾されたPPO、ポリ(酸化エチレン)(PEO)及び酸化ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル、ポリフェニルスルホン、高性能炭化水素ポリマー、液晶ポリマー、エラストマー及びセグメント化エラストマーの単独重合体又は共重合体が単独又は組合せの何れかで含まれるが、それだけには限定されない。

硬化性マトリックス樹脂中の硬化剤(複数可)及び/又は触媒(複数可)の添加は任意であるが、そのようなものの使用は、望むなら、硬化速度を増加させ、且つ/又は硬化温度を低下させ得る。硬化剤は、公知の硬化剤、例えば、芳香族若しくは脂肪族アミン、又はグアニジン誘導体から適切に選択される。芳香族アミン硬化剤が好ましく、好ましくは1分子当たり少なくとも2個のアミノ基を有する芳香族アミン、特に好ましいのは、例えばアミノ基がスルホン基に対してメタ又はパラ位にあるジアミノジフェニルスルホンである。特定の例は、3’,3’−及び4−,4’−ジアミノジフェニルスルホン(DDS);メチレンジアニリン;ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン;ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン;4,4’メチレンビス−(2,6−ジエチル)−アニリン(Lonza製のMDEA);4,4’メチレンビス−(3−クロロ,2,6−ジエチル)−アニリン(Lonza製のMCDEA);4,4’メチレンビス−(2,6−ジイソプロピル)−アニリン(Lonza製のM−DIPA);3,5−ジエチルトルエン−2,4/2,6−ジアミン(Lonza製のD−ETDA 80);4,4’メチレンビス−(2−イソプロピル−6−メチル)−アニリン(Lonza製のM−MIPA);4−クロロフェニル−N,N−ジメチル−尿素(例えばMonuron);3,4−ジクロロフェニル−N,N−ジメチル−尿素(例えばDIURON TM)及びジシアノジアミド(例えばPacific Anchor Chemical製のAMICURE TM CG 1200)である。

適当な硬化剤には、無水物、特に無水ポリカルボン酸、例えば無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチル無水テトラヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、及び無水トリメリット酸も含まれる。

層間領域における硬化性マトリックス樹脂も、上記のタイプの1種若しくは複数種の未硬化熱硬化性樹脂を含有する硬化可能又は熱硬化可能な樹脂である。ある特定の実施態様では、層間領域における硬化性マトリックス樹脂は、強化繊維を含有する領域内のマトリックス樹脂と同じである。他の実施態様では、層間領域における樹脂は、強化繊維を含有する領域内のマトリックス樹脂と異なる。

強化繊維 本明細書の目的のための強化繊維には、高い引張り強さ、例えば、500ksi(又は3447MPa)超を有する炭素又はグラファイト繊維が含まれる。強化繊維は、連続一方向又は多方向繊維として、織布又は多軸織物として、複数のフィラメントからできている連続トウの形態であってよい。一方向繊維は、一方向のみに延びる(又は伸びる)繊維を意味する。多軸織物には、非捲縮織物が含まれる。いくつかの実施態様では、強化繊維は、不織層ではなく、一方向繊維又は織布の形態である。さらに、炭素繊維は、寸法を整えても整えなくてもよい。

構造用途では、プリプレグ又は複合材料中の強化繊維の含有量は、30%から70体積%、いくつかの実施態様では、50%から70体積%の範囲内であってよい。

複合材プリプレグ及びラミネートの製造 用語「プリプレグ」は、本明細書では、繊維の体積の少なくとも一部分内に硬化性樹脂組成物を含浸させた繊維のシート又は層を意味する。航空宇宙構造体を製造するのに使用するプリプレグは通常、一方向強化用繊維、例えば炭素繊維の樹脂含浸シートであり、しばしば「テープ」又は「一方向テープ」と呼ばれる。プリプレグは、完全含浸プリプレグ又は部分含浸プリプレグであってよい。強化繊維に含浸しているマトリックス樹脂は、部分硬化又は未硬化状態であってよい。用語「含浸(impregnated)」は、本明細書では、含浸プロセスを受け、それによって繊維が少なくとも部分的にマトリックス樹脂によって囲まれる、又はマトリックス樹脂に包埋される繊維を意味する。

通常、プリプレグは、レイアップ及び三次元立体構造への成形、それに続く最終複合材部分/構造への硬化の準備ができている曲げやすい又は柔軟な形態である。このタイプのプリプレグは、特に航空機の翼、胴体、隔壁及び操縦面などの耐力構造部品を製造するのに適している。硬化したプリプレグの重要な特性は、軽量で高強度及び剛性である。

複合材構造体を形成するためには、複数のプリプレグプライを、「プリプレグレイアップ」を形成するために、積み重ね順序でツール上にレイアップしてもよい。レイアップ内のプリプレグプライは、互いに対して選択された方向、例えば0°、±45°、90°などに配置してもよい。プリプレグレイアップは、それだけには限定されないが、ハンドレイアップ、自動テープレイアップ(ATL)、先進繊維配置(AFP)、及びフィラメントワインディングが含まれ得る技術によって製造することができる。

一実施態様によれば、炭素強化繊維の含浸の前(すなわちプリプレグ製造の前)に、特定量の伝導性ナノ粒子及びポリマー強化粒子を硬化性樹脂組成物と混合する。この実施態様では、まず粒子含有樹脂組成物を剥離紙上に被覆することによって樹脂フィルムを製造する。次に、熱及び圧力の助けを借りてこのような樹脂フィルム1枚又は2枚を炭素繊維の層の片面又は両面にラミネートして繊維を含浸させ、それによって特定の繊維面積重量及び樹脂含有量の樹脂含浸繊維層(又はプリプレグプライ)を形成する。粒子のサイズが繊維フィラメント間の間隔よりも大きいという事実によって、ラミネートプロセスの間、強化粒子は、ろ過して取り除かれ、繊維層の外側に残存する。続いて、その中に強化粒子を含有している2本以上のプリプレグプライは、一方をもう一方の上にレイアップして、隣接するプリプレグプライの間に不織炭素ベールを配置した複合材レイアップを形成する。レイアッププロセスの結果として、ポリマー強化粒子及び炭素ベールは、2つの隣接する炭素繊維層の間の層間領域に置かれる。レイアップを、圧力を加えて一体化すると、炭素ベールの厚さ及び多孔質特性により、少なくともいくつかのポリマー強化粒子及び少なくともいくつかの伝導性ナノ粒子は、炭素ベールを貫通する。硬化の際、炭素ベールは、層間領域でマトリックス樹脂に包埋される。この実施態様では、層間領域のマトリックス樹脂は、強化繊維に含浸させたマトリックス樹脂と同じであり、伝導性ナノ粒子は、マトリックス樹脂全体にわたって均一に分散されている。

図4に概略的に図示されている、別の実施態様では、ベール42が各樹脂フィルム41及び炭素繊維層43の間に挟まれるように、伝導性ナノ粒子及びポリマー強化粒子を含有する硬化性樹脂フィルム41、及び炭素ベール42は、炭素繊維層43の両面にラミネートされている。ラミネーションは、熱及び圧力の助けを借りて実施して、繊維を含浸させ、それによって特定の繊維面積重量及び樹脂含有量のプリプレグプライを形成する。ラミネートプロセスの間、ポリマー粒子は、ろ過して取り除かれ、炭素繊維層の外側に残存し、少なくともいくつかのポリマー粒子及び少なくともいくつかの伝導性ナノ粒子は、ベールを貫通する。複数のこのようなプリプレグプライは、層間領域に包埋された炭素ベール、伝導性ナノ粒子及びポリマー粒子を有する複合材ラミネートを形成するようにレイアップされる。

代替の実施態様では、図4を参照して説明した方法は、硬化性樹脂フィルム41が分散された伝導性ナノ粒子を含有するが、ポリマー強化粒子を含有しないように改変されている。得られた複合材ラミネートは、その場合、層間領域に包埋された炭素ベール及び伝導性ナノ粒子を含有する。

さらなる実施態様によれば、炭素強化繊維の含浸の前(すなわちプリプレグ製造の前)に、特定量の伝導性ナノ粒子を硬化性樹脂組成物と混合する。この実施態様では、まず粒子含有樹脂組成物を剥離紙上に被覆することによって樹脂フィルムを製造する。次に、熱及び圧力の助けを借りてこのような樹脂フィルム1枚又は2枚を炭素繊維の層の片面又は両面にラミネートして繊維を含浸させ、それによって特定の繊維面積重量及び樹脂含有量の樹脂含浸繊維層(又はプリプレグプライ)を形成する。続いて、2本以上のプリプレグプライは、一方をもう一方の上にレイアップして、隣接するプリプレグプライの間に不織炭素ベールを配置した複合材レイアップを形成する。レイアッププロセスの結果として、炭素ベールは、2つの隣接する炭素繊維層の間の層間領域に置かれる。レイアップを一体化すると、炭素ベールの厚さ及び多孔質特性により、少なくともいくつかの伝導性ナノ粒子は、炭素ベールを貫通する。硬化の際、炭素ベールは、層間領域でマトリックス樹脂に包埋される。この実施態様では、層間領域のマトリックス樹脂は、強化繊維に含浸させたマトリックス樹脂と同じであり、伝導性ナノ粒子は、マトリックス樹脂全体にわたって均一に分散されている。

本明細書に開示された複合材料又はプリプレグレイアップの硬化は、約200℃以下、例えば、約170℃から約190℃の範囲の高温で、且つ任意選択的に、エスケープガスの変形効果を抑制するために、又は空隙形成を抑制するために、高圧を加えて実施することができる。適当な圧力は、10バール(1MPa)以下、例えば、約3バール(0.3MPa)から約7バール(0.7MPa)の範囲であってよい。いくつかの実施態様では、硬化温度は、5℃/分以下、例えば、2℃/分から3℃/分で加熱することによって達成され、9h以下、又は6h以下、例えば、2h−4hの所要時間維持される。マトリックス樹脂中の触媒の使用は、さらに低い硬化温度を可能にし得る。圧力は全体にわたって放出されてもよく、温度は、約5℃/分以下、例えば、3℃/分以下で冷却することによって低下させてもよい。マトリックス樹脂のガラス転移温度を改善するために適当な加熱速度を用いて、190℃から350℃の範囲の温度及び大気圧における後硬化を行うことができる。

用途 本明細書に記載された樹脂組成物は、鋳造又は成形された構造材料を製造するために使用でき、改善された体積電気伝導率を有する繊維強化耐力又は耐衝撃複合材構造体の製作に特に適している。

本明細書に開示された複合材料は、航空宇宙、航空、航海及び陸上車両、自動車、及び鉄道を含む輸送用途のための部材の製造に適用可能である。例えば、複合材料は、一次及び二次航空機構造体、宇宙及び弾道構造体を製作するのに使用することができる。このような構造部材には、複合材翼構造体が含まれる。本明細書に開示された複合材料はまた、建築物及び建築用途、並びに他の商業用途において有用性を見出す。とりわけ、複合材料は、耐力又は耐衝撃構造体の製作に特に適している。

測定法 以下の実施例で製造した複合材試料を、z方向電気伝導率及び機械的性質を測定するための以下の手順に従って試験した。

電気伝導率測定 試験試料の寸法及び許容差を表1で定義する。

試料の表面を研磨して過剰な樹脂を除去し、次いで銀ペーストを使用して反対側の表面上に2つの電極を作成した。試料を2枚の銅板の間に締め付けて、ワイヤーと試料表面の間の接触低抗を低下させた。

Z方向DC電気伝導率は、4プローブ電圧電流測定法に従ってKeithley 6221/2182A DELTA MODEシステムを用いて決定した。

試験試料(1インチ×1インチ)を調製し、10mAの電流を印加することによって試験した。電流を2%以内に安定させた後、電極間の潜在的な電圧値を記録した。以下の式に従って、Z方向抵抗率及び伝導率を計算した: 抵抗率(ρ) [ohm−m]=(V/I)/t・A 伝導率(σ) (S/m)=1/ρ ここで: V=潜在的な電圧(ボルト) I=強制電流(アンペア) T=z寸法である試料の厚さ(m) A=X×Y寸法である断面積(m2)

測定は、標準的な湿度条件において25℃で行った。平均及び対応する標準偏差結果を報告した。

機械的特徴づけ 機械的性能を測定するための試験を、表2で報告した方法に従って行った。

表2のRTは、室温を示す。

実施例1 表3に開示した配合に基づいて4種の異なる樹脂組成物を調製した。コントロール1.1及びコントロール2.1は、層間粒子を含む及び含まない2つのベースライン樹脂系であり、樹脂1.0及び樹脂2.0は、その2つのMWCNT修飾バージョンである。組成物は、重量百分比(w/w)で報告されている。

アラルダイト(登録商標)PY306は、Huntsmanから入手可能なビスフェノールFジグリシジルエーテル樹脂であり、 アラルダイト(登録商標)MY0510は、Huntsmanから入手可能なp−アミノフェノール樹脂のトリグリシジルエーテルであり、 SUMIKAEXCEL 5003Pは、Sumitomo Chemical Co.から入手可能なポリエーテルスルホンポリマーであり、 MWCNTは、15nmの平均直径及び約1mmの平均長さを有する多層カーボンナノチューブを意味し、 TGP3551は、硬化の際に不溶性であるEvonik製のポリアミド粉末Vestasint(登録商標)TGP3551を意味し、 P84粒子は、硬化の際に樹脂に膨潤及び可溶化する、平均粒径分布d50が44ミクロンであるEvonik製の芳香族ポリイミド粒子であり、 架橋TP粒子は、25ミクロンの平均粒径を有するCytec Industries Inc.製の架橋PES−PEESの粒子であり、また 4,4’DDSは、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを意味する。

所定量のMWCNTをエポキシ樹脂混合物中に分散させた。次いで、残りの成分をマスターバッチに加え、均一混合物が得られるまで混合した。

次いで、樹脂組成物を使用して、ホットメルト含浸プロセスを用いて4種の異なる一方向(UD)プリプレグを生成した。樹脂フィルムは、樹脂組成物を剥離紙上に被覆させることによって生成した。次に、熱及び圧力の助けを借りて、このような樹脂フィルム2枚を一方向炭素繊維(Toho Tenax、USA製のIM65E)の連続層の両面上にラミネートして、プリプレグを形成した。プリプレグの特性を表4に示す。示した百分比(%)は、重量パーセント値である。

プリプレグをレイアップして擬似等方性立体構造を有するレイアップ(各レイアップは厚さが約0.110インチ)を形成し、続いてオートクレーブ中177℃で2時間一体化及び硬化することによって、複合材ラミネートを製造した。いくつかのラミネートは、同じ手順に従って生成したが、炭素ベールが2つの隣接するプリプレグの間のインターリーフとなるように、レイアップする前にプリプレグの片面上に単独の4gsm不織炭素ベールを押し付けた。

各不織炭素ベールは、中間弾性率の炭素繊維から構成され、湿式堆積(すなわち製紙)プロセス及び結合剤としてエポキシ−ウレタン共重合体の乳濁液を使用して製造された。炭素ベールは、熱可塑性粒子が、存在する場合、レイアップの一体化中にベールを貫通するように、非常に薄く、多孔質であった。

硬化したラミネートのz方向電気伝導率を測定し、結果を表5に報告する。示した百分比(%)は、重量パーセント値である。

カーボンナノチューブと炭素ベールの組合せは、2つの炭素材料の一方のみによって改変された樹脂系について別々に得られた伝導率値を合計することによって予想されるよりも、硬化したラミネートのz方向伝導率の改善が十分に上回ってもたらされ得ることを、結果は示している。

層間強化粒子を含まないラミネートでは、ラミネート5.3は、z方向伝導率値が65.22S/mであり、これは、MWCNTのみを含むラミネート5.1(15.3S/m)及び炭素ベールのみを含むラミネート5.2(8.01S/m)の伝導率値の合計よりもはるかに大きい。図5は、強化粒子を含まないMWCNTと炭素ベールの相乗効果を示す、表5で報告されたz方向伝導率結果の概要図である。

層間強化粒子を含むラミネートでは、31.46S/mのz方向伝導率値がラミネート6.3で測定された。この値は、MWCNTのみを含むラミネート6.1(5.54S/m)及び炭素ベールのみを含有するラミネート6.2(11.07S/m)の伝導率値の合計よりも大きい。図6は、強化粒子の存在によるMWCNTと炭素ベールの相乗効果を示す、表5で報告されたz方向伝導率結果の概要図である。

ラミネート5.3及び6.3について得られた高い伝導率値は、伝導性ベールとMWCNTの間の結果の相乗効果であると考えられる。このような正の相互作用は、層間強化粒子を含む及び含まない複合材料において明らかである。その上、炭素ベール及びMWCNTの存在は、構造繊維の隣接する層の間に明確な層間領域をもたらした。この効果はまた、電気的測定の変動係数(COV)を減少させた。

実施例2 表6に開示した配合に従って3種の異なる樹脂組成物を調製した。組成物は、重量百分比(w/w)で報告されている。コントロール7.0は、ベースライン粒子強化樹脂系であり、樹脂7.1及び樹脂7.2は、その炭素修飾バージョンである。標準的なプリプレグ製造プロセスに適した流動学的プロファイルをもつ配合をもたらすために、比較的低い濃度の炭素充填剤が選択された。

ベスタミド(登録商標)Z2649は、硬化の際に樹脂系に不溶性であるEvonik製のポリアミド10,10粉末である。使用したカーボンブラックは、Timcal、UKによって供給されたEnsaco 250であった。

所定量の炭素充填剤(MWCNT又はカーボンブラック)を最初にエポキシ成分中に分散させた。次いで、残りの成分をマスターバッチに加え、均一混合物が得られるまで混合した。

次いで、3種の樹脂組成物を使用して、ホットメルト含浸プロセスによって異なる一方向(UD)プリプレグを生成した。プリプレグの特性を表7に示す。

プリプレグをレイアップして擬似等方性立体構造を有する厚さ0.118インチのレイアップを形成し、続いてオートクレーブ中180℃で2時間硬化することによって、複合材ラミネートを製造した。いくつかのラミネートは、2つの隣接するプリプレグの間のインターリーフとして単独の4gsm不織炭素ベール(Technical Fibre Products製のOptiveil(登録商標)を用いて生成した。硬化したラミネートのz方向伝導率を測定し、結果を表8に報告する。

比較的低い濃度のカーボンナノチューブ又はカーボンブラックの添加は、ラミネート10.1(0.57S/m)及びラミネート10.2(0.26S/m)で示されているように、硬化したラミネートのz方向伝導率に中程度の改善しかもたらし得ないことが観察された。粒子強化プリプレグ(コントロール11.0)を改変するために低い面積重量の炭素ベールのみを使用する場合、いくらかの改善を達成することができる(伝導率=7.42S/m)。特に、炭素充填剤と炭素ベールの組合せを使用した場合、炭素充填剤のみによって改変されたラミネートの伝導率値及び炭素ベールのみで改変されたラミネートの伝導率値を合計することによって予想されるよりも、硬化したラミネートのz方向伝導率の改善が十分に上回った。

表8を参照すると、ラミネート11.1(炭素ベール+MWCNT)は、コントロール11.0(ベールのみ)とラミネート10.1(MWCNTのみ)の予想された累積値(7.99S/m)よりも約50%大きい12.17S/mのz方向伝導率をもたらした。

同じ傾向が、カーボンブラックで改変された樹脂系について観察された。ラミネート11.2は、コントロール11.0(ベールのみ)とラミネート10.2(カーボンブラックのみ)の予想された累積値(7.68S/m)の2倍以上である18.09S/mのz方向電気伝導率をもたらした。

図7は、炭素ベールとカーボンブラックの相乗効果を示す、表8で報告されたz方向伝導率結果の概要図である。ラミネート11.1及び11.2について測定された高い伝導率値は、硬化したラミネートの層間領域内の軽量の炭素ベールと伝導性ナノ粒子の間の正の相乗作用の結果であると考えられる。相乗作用は、硬化の際の伝導性炭素繊維マイクロネットワーク内の伝導性ナノネットワークのin situ形成(in−situ formation)の結果であり得る。

硬化したラミネートの機械的試験を実施し、結果を表9に報告する。

結果は、軽量の炭素ベールとナノ粒子の組合せが、複合材の機械的性能に何ら重要な変化をもたらさなかったことを示す。図8は、表9で報告された230in−lbs衝撃におけるCAIの結果の概要図を示す。図8からわかるように、CAI値は、炭素ベール又は伝導性ナノ粒子の存在によって実質的に影響を受けなかった。

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