【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本願は、1995年4月13日に出願され、1998年7月14日付けの米国特許第5,779,560号として発行された、米国特許出願第08/420, 966号の一部継続出願である。 上記特許に触れたことにより、その特許に開示されている内容は本明細書中に組入れたものとする。 【0002】 【従来の技術】 ゴルフクラブは、歴史的に、ヘッドを形成するのに使用された材料の組成に応じてウッド又はアイアンのいずれかにカテゴリー分けされてきた。 ウッド及びアイアンはカテゴリー分けされ続けているけれども、材料は劇的に変化した。 プレイヤーにとってのアクティブフィールド(active field)により、 ゴルフクラブヘッド製造技術は元来の設計から大幅に異なっている。 【0003】 これに伴って、ウッドの製造に金属を使用し、「メタルウッド」という用語が使用されるようになってきている。 ウッド及びアイアンは、両方とも、モノリシックな金属でなく複合材料から製造され始めたときから長距離ショットが改善されている。 一つの形態又は他の形態では、これらの変化は、ゴルフクラブヘッドのボール打撃面の寿命を伸ばし、重心の調節自在性を提供し、最大可能な「スイートスポット」を得ることができるようにゴルフクラブヘッドの周囲に重量を選択的に分配し、ゴルフクラブがボールに当たったときに所望の音響特性を提供し、スイング中のゴルフクラブヘッドの慣性モーメントを増大し、及び/又はクラブをスイングしてボールを打ったときにしっかりとした打撃感及び制御感を提供するように設計される。 理想的には、プレイヤーがクラブをウッド又はアイアンのいずれかとして認識するようにゴルフクラブヘッドの基本的な外観を変えることなく、これらの目的を達成する。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、ボール打撃面の強度及び剛性を最大にし、更にゴルフクラブヘッドがボールに当たったときの変形に対する抵抗を最大にする、ゴルフクラブ打撃面が必要とされている。 【0005】 【課題を解決するための手段】 本発明は、ファイバ強化金属母材を含むゴルフクラブヘッド挿入体に関する。 本発明は、更に、主本体部材、ファイバ強化金属母材挿入体でできた打撃面、及びファイバ強化金属母材複合挿入体を前記主本体部材に接合するための手段を含むゴルフクラブに関する。 【0006】 本発明の利点は、このような複合構造により、ファイバ強化体を含まない等価の金属でできた等価の打撃面に対し、剛性を最大20%高め且つ打撃面の重量を最大30%減少することを特徴とする打撃面が提供されるということである。 これにより、周囲に重量を追加に加えること、重心を追加に制御すること、軽量のヘッド、及び改善された感じ及び/又は更に望ましい音の特徴を可能にする軽量の打撃面が提供される。 【0007】 【発明の実施の形態】 本発明の特徴及び他の詳細を添付図面を参照して以下に詳細に説明し、特許請求の範囲で指摘する。 異なる図面に記載された同じ番号は同じものを表す。 本発明の特定的な実施例は例示として示してあり、本発明を限定するものではないということは理解されよう。 本発明の主な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施例で使用できる。 【0008】 図1を参照すると、複合挿入体1は金属母材2を含み、この母材の内部には、 高弾性率で高強度の強化ファイバ3が一対又はそれ以上の対をなした平らなアレイ4をなして配置されている。 好ましくは、金属母材は、チタニウム又はチタニウム合金で形成されている。 【0009】 別の態様では、本発明で使用するのに適した他の金属母材2には、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ベリリウム、ベリリウム合金、又はチタニウム又はチタニウム合金との組み合わせを含むこれらの材料の組み合わせが含まれる。 【0010】 平らなアレイ4内では、各強化ファイバ3は、代表的には、アレイ4内の他の強化ファイバ3と平行に配向されている。 適当な強化ファイバ3の例には、硼素、炭素、グラファイト、又はセラミックスを含有するファイバが含まれる。 好ましくは、強化ファイバ3は、シリコンカーバイド含有ファイバである。 【0011】 別の態様では、平らなアレイ4内で様々な種類のファイバの組み合わせを使用できる。 更に、強化ファイバ3は、少なくとも約20.684×10 4 MPa( 約30Mpsi)の弾性率を有し、各ファイバ3が一つの連続した長さのファイバであるのが好ましい。 対内の強化ファイバ3の各平らなアレイ4は、(a)複合挿入体1の打撃面5に対して実質的に垂直方向に、(b)挿入体の中心線6の平面から等距離にこの平面の両側に、及び(c)打撃面5及び挿入体の反対側の表面から、打撃面5に大きく切り込んだ溝の深さ以上に配置されている。 【0012】 挿入体中心線6の平面は、打撃面5と実質的に平行である。 強化ファイバ3が打撃面5に沿って設けられていないため、図2及び図4に示すように打撃面5に溝8を機械加工できる。 【0013】 好ましい実施例では、強化ファイバ3の平らなアレイ4を、打撃面5又は反対側の表面7のできるだけ近くに置き、中心線6からできるだけ離す。 更に好ましくは、打撃面5と強化ファイバ3の平らなアレイ4との間の距離は、約0.12 7mm乃至約1.016mm(約0.005インチ乃至約0.04インチ)である。 【0014】 更に、打撃面5の強度及び剛性を最大にするのに適した強度ファイバ3の配向が好ましく、実施者によって選択される。 例えば、シリコンカーバイド強化ファイバについては、打撃面5の長さ方向(トウからヒールまで)から900の配向が最も好ましい。 別の態様では、打撃面5の長さ方向から450乃至1350の配向も好ましい。 【0015】 更に好ましい実施例では、シリコンカーバイドファイバ強化チタニウム複合材料がメタルウッド又はアイアンのゴルフクラブのクラブ打撃面として役立つ。 チタニウム複合積層挿入体は、高い強度及び剛性を比較的低い材料密度で提供する。 更に、高強度で軽量のチタニウム複合挿入体により、現存のクラブヘッド重量を周囲及びソールプレート位置に選択的に再分配でき、これによりクラブヘッドの重心を変えることができる。 【0016】 図2及び図3を参照すると、これらの図には「ウッド」型ドライバー10の実施例が示してある。 主本体部材11は、ステンレス鋼、アルミニウム、チタニウム、銅、又は他の延性材料、好ましくは金属又は金属合金等の金属から鋳造で形成できる。 打撃面挿入体1は、本明細書中に説明したように、ファイバ強化金属母材複合材料から製造され、主本体部材鋳造体の前面に当接しており且つこの鋳造体に好ましくは鑞付け又は溶接によって接合部13に沿って接合されている。 接合部13は、打撃面挿入体及び主本体部材11の前開口部の周囲に沿って延びており、これによって、打撃面挿入体1を主本体部材11と一体化させることができる。 主本体部材は、打撃面挿入体1の周囲が嵌入され且つ接合される凹所部分14を有する。 接合部13は、全体に台形又は長円形形状をなしており、細長い頂部及び底部及び湾曲した表面を持ち、湾曲した上面が上方に凸状になっており、湾曲した下面は下方に凸状になっている。 【0017】 挿入体1は、ウッドで使用する場合には、好ましくは、トウからヒールまで( バルジとして周知)及び頂部から底部まで(ロールとして周知)複合湾曲設計エレメントを有する。 【0018】 図4及び図5を参照すると、これらの図には、本発明のゴルフクラブヘッドのアイアン実施例が示してある。 図4では、主本体部材11は、例えばステンレス鋼、アルミニウム、鋳鉄、又は真鍮で形成されており、実質的に三角形の横断輪郭を有し、その結果、ボール打撃面5は所定のロフト角を有する。 図5に示すように、ソール面17はヘッドの頂部18よりも厚い。 ファイバ強化金属複合材料でできた挿入体1を挿入し、アイアンのボール打撃面5を形成する。 挿入体1は、挿入体1の内部表面(反対側の表面)7がアイアンの内部表面21に取り付けられるように、鑞付け、溶接、又は何等かの他のファスニング手段によって主本体部材11に固定される。 【0019】 金属母材複合材料について現在使用されているか或いは周知の何等かのファイバ/母材予備成形法は、挿入体の用途で技術的に可能である。 費用を考慮すると、ファイバアレイ予備成形体は、好ましくは、ファイバを平行なアレイをなして置いた後、ファイバを金属母材粉体のスラリー及び一時的(fugitive) バインダーシステムで取り囲むことによって製造される。 【0020】 好ましい挿入体形成方法は、二層又は四層のファイバアレイ予備成形体を金属又は金属合金製の上下のシート間に置く工程を含む。 これらの金属シート層は、 ファイバ又はファイバ母材インターフェースに損傷を加えずに層を形成するのに十分な最小厚さを備えている。 次いで、ソリッドステート拡散結合プロセスによってこのレイアップ(layup)を団結し、一体的な金属母材を形成する。 この団結を行うための好ましい製造方法は、表面積が大きな数枚のレイアップを真空ホットプレス内で重ねる工程、及び100%複合密度を得る上で適当な熱及び圧力を加える(例えば6.89476×10 2 kPa乃至6.89476×10 4 kPaで500℃乃至2000℃に5分間乃至10時間置く)工程を含む。 【0021】 個々のクラブフェース挿入体は、ウォータージェット研磨加工され、大きな複合パネルから打抜かれ、又は切り出され、随意であるが、機械加工又はエンボス加工により溝を一方の面に形成でき、これに続いてメタルウッド用の所望の湾曲を形成するための簡単な形成作業を行う(例えば熱間又は冷間ダイ圧力を加える)。 【0022】 挿入体は、好ましくは、溶接、接着剤(エポキシ)結合、又は鑞付け(例えば真空鑞付け)によってクラブヘッドの主本体部材内のシェルフに取り付けられるが、当該技術分野で周知の任意の手段によって固定できる。 【0023】 このファイバ強化チタニウム複合挿入体について、クラブフェースの剛性が1 5%乃至10%向上し、打撃面の重量が20%乃至30%軽減したことが観察された。 これにより打撃面の重量を再分配して慣性モーメントの中心を変えることができ、これによって、鋳造又は鍛造による金属製打撃面構造に対して所望のヒッティングゾーンを増大(即ち、大きな「スイートスポット」を得ることができ)する。 【0024】 好ましい実施例では、挿入体の外面は二層のチタニウムシートである。 これらのシートを、アルミニウムシートでできた内部構造に、アルミニウム/シリコンカーバイドファイバ複合予備成形体が設けられた各側で積層する。 この構造を団結し、真空ホットプレス内でモノリシックな複合材料にする。 【0025】 個々の挿入体の成形工程を含む他の複合材料製造方法は、この製造方法がファイバの強度又は複合材料の一体性を損なわない場合には、使用できる。 挿入体の製造では、ファイバは、好ましくは、打撃面挿入体の表面にできるだけ近付けて、及びクラブヘッドの中心線(即ち中央軸線)(挿入体の長さ方向に延びる)からできるだけ遠ざけて配置される。 ファイバをこのように位置決めすることにより、打撃面の剛性(弾性率)が最大になり、ゴルフクラブの性能が最適になる。 ファイバ予備成形体及び金属の多数の層を使用できる。 費用の理由により、2枚及び4枚のファイバ予備成形体/金属シートが好ましいが、強度及び剛性は、平らなファイバ層の数を増やすに連れて向上する。 更に、ファイバ複合材料を挿入体に接合する上で低温結合プロセス又は鑞付けプロセスを使用する場合、一枚の複合材料を挿入体の後面に取り付けることができる。 【0026】 次に、本発明を以下の例によって詳細に且つ特定的に説明する。 例1シリコンカーバイドファイバ強化チタニウム挿入体を、(a)厚さが0.88 9mm(0.035インチ)のチタニウム箔(Ti−6−4)、(b)チタニウム粉体でできた予備成形テープ内のシリコンカーバイドファイバの平行なアレイでできた単一の層からなる厚さが0.254mm(0.010インチ)の4枚のテープ予備成形体、及び(c)厚さが0.889mm(0.035インチ)のチタニウム(Ti−6−4)を積層することにより、形成する。 【0027】 不活性エレメントを真空ホットプレス内で拡散結合し、ファイバ強化チタニウム複合材料を形成する。 次いで、打撃面挿入体を研磨ウォータージェットで複合材料から機械加工する。 溝(最大USGA打撃面溝深さが0.508mm(0.02インチ))を機械加工により表面に形成する。 個々の挿入体を冷間ダイ及び圧力で湾曲し、トウからヒールまで及び頂部から底部まで所望の湾曲を形成する。 打撃面挿入体は、長さ方向で約63.5mm(約2.5インチ)、頂部から底部まで約38.1mm (約1.5インチ)、厚さが2.794mm(0.110インチ)であり、これを表面変形について試験した。 【0028】 試験を行うため、軟鋼から製造した試験ジグの面に機械加工によって形成した賦形シェルフ(contoured shelf)に挿入体をねじで取り付ける。 試験ジグは、全体にウッド(ドライバー)用のゴルフクラブヘッドの形状で製作される。 試験ジグヘッドは、ホルダに取り付けられたゴルフクラブシャフトに取り付けられる。 ホルダは、エアキャノンが打ち出したゴルフボールが打撃面挿入体で挿入体に制御された速度でぶつかるように位置決めされる。 【0029】 深さゲージを使用し、225.26km/h(毎時140マイル)の速度でゴルフボールを衝突させる試験の前後の挿入体表面の変形を6個の固定位置で計測する。 【0030】 厚さが僅か2.667mm(0.105インチ)の同じ挿入体について比較試験を行う。 結果を以下の表1に示す。 【0031】 【表1】 【0032】 これらの結果は、挿入体がゴルフクラブヘッドで使用するのに適しているということを示す。 ゴルフボールが225.26km/h(毎時140マイル)の速度で衝突することによる変形に対する抵抗は、ファイバ強化金属複合材料製の厚さが2.794mm(0.110インチ)の挿入体が優れている。 厚さが3.0 48mm(0.120インチ)乃至2.921mm(0.115インチ)のファイバ強化挿入体で同様の変形に対する抵抗の性能が得られる。 これは、当該技術の非強化金属打撃挿入体を上回る改良であり、従来技術の挿入体は、同じ性能を得るためには、厚さを厚くしたり重量を重くしなければならない。 【0033】 更に、結果は、ウッド型クラブに取り付けたチタニウム/シリコンカーバイドファイバ打撃面挿入体について、2.667mm(0.105インチ)を越える厚さが好ましいということを示す。 【0034】 例2ファイバ層及び挿入体厚さの様々な組み合わせを準備することを除き、例1に説明したように打撃面挿入体を形成し、これらの挿入体をアイアンクラブで試験する。 挿入体には湾曲は形成されない。 【0035】 形成された挿入体形体には、(a)ファイバ強化チタニウムテープ鋳造予備成形体及びチタニウム箔(Ti−6−4)を各々二枚づつ含む、厚さが3.048 mm(0.120インチ)の挿入体形体、(b)厚さが2.794mm(0.1 10インチ)であることを除き、(a)と同様の挿入体形体、及び(c)厚さが2.54mm(0.100インチ)であることを除き、(a)と同様の挿入体形体が含まれる。 各挿入体の中央軸線はファイバ強化体にはなく、チタニウムだけにある。 【0036】 各挿入体をアイアンクラブで試験すると、モノリシックなアイアンクラブと同様の又はそれ以上の性能を示した。 例3ドライバーゴルフクラブを例1で製造した挿入体(厚さが2.54mm(0. 100インチ))から組み立てた。 この挿入体をドライバーヘッドの主本体部材の鋳造金属のフェースの深さが0.254mm乃至0.127mm(0.010 インチ乃至0.005インチ)のシェルフに溶接した。 挿入体をシェルフの形状に適合し、ドライバーの主本体部材と打撃面挿入体との間に連続した接合部を形成する。 【0037】 アッセンブリは、エアキャノン装置で、225.26km/h(毎時140マイル)の速度でゴルフボールを衝突させたとき、良好な性能を示した。 等価物本明細書中に特定的に説明した本発明の特定の実施例には多くの等価物があるということは、通常の実験を使用する当業者には理解されよう、或いは気付かれることであろう。 このような等価物は、特許請求の範囲の範疇に含まれる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の例示のファイバ強化金属複合打撃面挿入体の断面図である。 【図2】 ファイバ強化金属打撃面挿入体とともに形成したメタルウッドゴルフクラブヘッドを示す本発明の実施例の側面図である。 【図3】 図2に示すメタルウッドの底面図である。 【図4】 本発明のファイバ強化金属打撃面挿入体を組み込んだアイアンゴルフクラブヘッドを示す正面図である。 【図5】 図4の5a−5a線に沿った断面図である。 【符号の説明】 1 複合挿入体 2 金属母材 3 強化ファイバ 4 平らなアレイ 5 打撃面 6 挿入体中心線 7 反対側の表面 8 溝 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ,BA ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CU, CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GD,G E,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS ,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK, LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,M N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU ,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM, TR,TT,UA,UG,UZ,VN,YU,ZA,Z W (72)発明者 クラウス,スティーヴン・エイ アメリカ合衆国カリフォルニア州92131, サン・ディエゴ,ミスティーブルー・コー ト 12285 (72)発明者 シャフッド,トーマス・ダブリュー,ジュ ニアー アメリカ合衆国マサチューセッツ州01827, ダンステイブル,プレザント・ストリート 338 Fターム(参考) 2C002 AA02 CH01 MM02 MM07 PP02 PP03 |