【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、成形後においてボルトのねじ部に樹脂バリが絡み付かないようにしたボルトをインサートした部品の射出成形方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ボルトをインサートした部品は、以下のようにして射出成形していた。 互いに密着・分離される1組の成形型A 1, A 2は、図9に示されるように、これらを密着させることにより両者の間にキャビティ1が形成されて、このキャビティ1内に溶融樹脂を高圧にて射出することにより、成形品が得られる。 図8に示されるように、一方の成形型A 2の成形面には、ボルトBの基部(この例では、基部は鍔状となっている)2がインサートされる厚肉部を成形するための凹部3が形成されて、ボルトBのねじ部5を挿入するためのねじ部挿入孔4が前記凹部3に臨んで成形型A 2に形成されている。 成形型A 2のねじ部挿入孔4にボルトBのねじ部5を挿入して固定手段(図示せず)により固定して、その基部2をキャビティ1内に臨ませ、この状態でキャビティ1 内に溶融樹脂を高圧で射出すると、図10に示されるように、ボルトBの基部2及びねじ部5の一部がインサートされた成形品W'が得られる。 【0003】ここで、鍔状となっている基部2を成形品に完全にインサートするために、成形型A 2の凹部3の底面と、鍔状の基部2との間に所定の隙間が形成された状態にして射出成形される。 この成形圧によって、ボルトBのねじ部5の谷の部分に溶融樹脂が浸入して、成形後においては、この樹脂はバリ状となってねじ部5に絡み付く。 このため、成形後において、ボルトのねじ部に絡み付いたバリを取り除くバリ取り作業が不可避となり、この余分なバリ取り作業が、ボルトをインサートした成形品の生産性を低下させていた。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、ボルトをインサートした部品の射出成形において、ボルトのねじ部に樹脂バリが絡み付かないようにして、成形後におけるボルトのねじ部のバリ取り作業を不要にすることを課題としてなされたものである。 【0005】 【課題を解決するための手段】この課題を解決するために本発明の採用した手段は、1組の成形型の一方にねじ部挿入孔が形成されていて、このねじ部挿入孔にボルトのねじ部を挿入して、その基部をキャビティ内に臨ませた状態で溶融樹脂を射出させて、ボルトをインサートした部品を射出成形する方法において、前記成形型のねじ部挿入孔の部分に短円筒状の当接体を該ねじ部挿入孔と同心にして設けて、該ねじ部挿入孔にねじ部を挿入したボルトの基部の端面を前記当接体の端面に当接させた状態で射出成形を行うことである。 【0006】 【発明の作用】成形圧によってボルトの基部の端面が前記当接体の端面に押圧されるので、成形時においてねじ部挿入孔に溶融樹脂が浸入できなくなる。 このため、成形後においても、基部が成形品にインサートされたボルトのねじ部には、樹脂バリが絡み付かなくなる。 【0007】 【実施例】以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。 なお、「従来の技術」の項目で説明した部分と同一部分には同一符号を付し、重複説明を避けて本発明の特徴的部分についてのみ説明する。 図1は、1組の成形型A 1, A 2を分離させた非成形状態の部分断面図であり、図2は、同じく密着させた成形状態の部分断面図であり、図3は、ボルトBがインサートされた部分の成形品の部分断面図であり、図4は、同じく部分斜視図である。 成形型A 2のねじ部挿入孔4の部分には、短円筒状の当接体6が凹部3に臨んで該ねじ部挿入孔4と同心にして設けられている。 そして、ボルトBのねじ部5を成形型A 2のねじ部挿入孔4に挿入して、その基部2の端面を前記当接体6の端面に当接させる。 この状態で、 1組の成形型A 1, A 2を密着させて、両者の間に形成されたキャビティ1に溶融樹脂を高圧で射出させると、樹脂の成形圧によってボルトBの基部2は当接体6に押圧されるために、成形時において成形型A 2のねじ部挿入孔4に溶融樹脂が浸入できなくなる。 【0008】上記したようにして成形された部品Wは、 図3及び図4に示されるように、ボルトBの基部2とねじ部5の一部とが厚肉部Waにインサートされて、ねじ部5におけるインサート部位の周辺には、環状の空隙部7が形成されて、そのねじ部5には、樹脂バリは絡み付いていない。 【0009】図5は、本発明に係る成形方法により成形されたバンパーを装着した水上スキーの斜視図であり、 図6は、バンパーの部分の平面図であり、図7は、図6 のX−X線拡大断面図である。 水上スキーの本体フレーム8の周縁部には、それぞれフロントバンパー11、サイドバンパー12、及びリアーバンパー13が装着されている。 各バンパー11,12,13の内周面側には、 それぞれ本体フレーム8に装着するためのボルトBがインサート成形されている。 例えば、フロントバンパー1 1には、その両端部の内周面側には、本発明に係る成形方法によってボルトBがインサート成形されていて、このフロントバンパー11を本体フレーム8の外側に当てがうと共に、この本体フレーム8のフランジ部8aに形成されたボルト挿通孔14に前記ボルトBを挿通させて、このボルトBにナット15を螺合させて、本体フレーム8にフロントバンパー11を固定している。 【0010】上記実施例においては、水上スキーの周縁部に装着されるバンパーを本発明に係る方法により成形した例を示したが、ボルトをインサートした成形品であれば、いかなる部品であっても本発明の成形方法の対象となり得る。 【0011】 【発明の効果】本発明は、1組の成形型の一方にねじ部挿入孔が形成されていて、このねじ部挿入孔にボルトのねじ部を挿入して、その基部をキャビティ内に臨ませた状態で溶融樹脂を射出させて、ボルトをインサートした部品を射出成形する方法において、前記成形型のねじ部挿入孔の部分に短円筒状の当接体を該ねじ部挿入孔と同心にして設けて、該ねじ部挿入孔にねじ部を挿入したボルトの基部の端面を前記当接体の端面に当接させた状態で射出成形を行うので、成形圧によってボルトの基部の端面が前記当接体の端面に押圧されて、成形時においてねじ部挿入孔に溶融樹脂が浸入できなくなる。 このため、成形後においても、基部が成形品にインサートされたボルトのねじ部には、樹脂バリが絡み付かなくなって、従来の成形方法では不可避であったバリ取り作業が不要となり、ボルトをインサートした部品の生産性が高まる。 【図面の簡単な説明】 【図1】成形型A 1, A 2を分離させた非成形状態の部分断面図である。 【図2】成形型A 1, A 2を密着させた成形状態の部分断面図である。 【図3】ボルトBがインサートされた部分の成形品の部分断面図である。 【図4】同じく部分斜視図である。 【図5】本発明に係る方法により成形されたバンパーを装着した水上スキーの斜視図である。 【図6】バンパーの部分の平面図である。 【図7】図6のX−X線拡大断面図である。 【図8】従来の成形方法において、成形型A 1, A 2を分離させた非成形状態の部分断面図である。 【図9】従来の成形方法において、成形型A 1, A 2を密着させた成形状態の部分断面図である。 【図10】ボルトをインサートした従来の部品の部分断面図である。 【符号の説明】 A 1, A 2 :成形型 B:ボルト W:成形された部品 1:キャビティ 2:ボルトの基部 4:成形型に形成したねじ部挿入孔 5:ボルトのねじ部 6:成形型に形成した当接体 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 5識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B29L 31:06 4F |