乳酸菌の培養法および発酵乳の製造法

申请号 JP2011507162 申请日 2010-03-26 公开(公告)号 JP5660629B2 公开(公告)日 2015-01-28
申请人 株式会社明治; 发明人 政幸 上條; 政幸 上條;
摘要
权利要求
  • 乳酸菌の培養法であって、
    タンパク質分解酵素により分解された乳清を含む培養液を調製する培養液調製工程と、
    バクテリオシンを生産する乳酸菌を前記培養液に接種し、前記乳酸菌が接種された培養液のpHを4以上5未満に維持しながら前記乳酸菌を培養する培養工程と、
    を備え、
    前記培養液調製工程は、
    前記培養液に乳化剤を添加する乳化剤添加工程、
    を含み、
    前記乳化剤は、モノオレイン酸プロピレングリコールおよびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンのいずれかを含む 、乳酸菌の培養法
  • 請求項1に記載の乳酸菌の培養法において、さらに、
    前記乳酸菌が培養された培養液から前記乳酸菌が濃縮された濃縮菌液を分離する分離工程と、
    を備える 、乳酸菌の培養法
  • 請求項1に記載の乳酸菌の培養法において、
    前記培養工程は、前記乳酸菌が接種された培養液のpHを4.7以上5未満に維持する 、乳酸菌の培養法
  • 請求項1に記載の乳酸菌の培養法において、
    前記培養工程は、前記乳酸菌が接種された培養液にアルカリ溶液を加えることにより、前記乳酸菌が接種された培養液のpHを調節する 、乳酸菌の培養法
  • 発酵乳の製造法であって、
    ヨーグルトミックスを生成する原料乳生成工程と、
    バクテリオシンを生産する乳酸菌であるバクテリオシン生産菌を培養し、前記バクテリオシン生産菌の培養物を生成する培養物生成工程と、
    前記培養物を前記ヨーグルトミックスに添加する添加工程と、
    前記培養物が添加されたヨーグルトミックスを発酵させる発酵工程と、
    を備え、
    前記培養物生成工程は、
    タンパク質分解酵素により分解された乳清を含む培養液を調製する培養液調製工程と、
    前記バクテリオシン生産菌を前記培養液に接種し、前記バクテリオシン生産菌が接種された培養液のpHを4以上5未満に維持しながら、前記バクテリオシン生産菌を培養することにより、前記培養物を生成する培養工程と、
    を含み、
    前記培養液調製工程は、
    前記培養液に乳化剤を添加する乳化剤添加工程、
    を含み、
    前記乳化剤は、モノオレイン酸プロピレングリコールおよびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンのいずれかを含む 、発酵乳の製造法
  • 請求項5に記載の発酵乳の製造法において、
    前記培養物生成工程は、
    前記バクテリオシン生産菌が培養された培養液から前記バクテリオシン生産菌が濃縮された濃縮菌液を分離する分離工程、
    を含み、
    前記添加工程は、前記培養物として前記濃縮菌液を前記ヨーグルトミックスに添加する 、発酵乳の製造法
  • 請求項5に記載の発酵乳の製造法において、
    前記培養工程は、前記バクテリオシン生産菌が接種された培養液のpHを、4.7以上5未満に維持する 、発酵乳の製造法
  • 請求項5に記載の発酵乳の製造法において、
    前記培養工程は、前記バクテリオシン生産菌が接種された培養液にアルカリ溶液を加えることにより、前記バクテリオシン生産菌が接種された培養液のpHを調節する 、発酵乳の製造法
  • 说明书全文

    本発明は、バクテリオシンを生産する乳酸菌の培養法、およびバクテリオシンを生産する乳酸菌を含む発酵乳の製造法に関する。

    ヨーグルトなどの発酵乳は、生乳、脱脂粉乳、ホエイ(乳清)タンパク質などが混合された原料乳(ヨーグルトミックス)にスターターを添加し、ヨーグルトミックスを発酵させることにより製造される。 スターターには、ブルガリア菌およびサーモフィラス菌などの乳酸菌が用いられる。

    一部の乳酸菌が、バクテリオシンと呼ばれる抗菌性のタンパク質またはペプチドを生産することが知られている。 下記特許文献1、2に示すように、バクテリオシンを生産する乳酸菌を利用して、食品の保存性を向上させたり、食品に旨味を付与したりすることができる。

    特許文献1に係る発明では、乳および乳成分を主成分とする液体培地を用いてビフィズス菌とラクティス菌とを共生培養している。 ラクティス菌は、バクテリオシンを生産する乳酸菌である。 共生培養後の培養液を食品の保存剤として、食品(食パン、うどんなど)に添加することにより、食品の保存性を向上させるとともに、食品に良好な風味を付与することができる。

    特許文献2には、酵母エキスなどが添加されたホエイ培地を用いて、ラクティス菌を培養し、培養後のホエイ培地からラクティス菌を除去した風味改良剤が記載されている。 この風味改良剤を用いることにより、魚介類の生臭さを消したり、食品に旨味などを付与したりすることができる。

    また、体内に摂取することで、人体に有益な作用をもたらすプロバイオティクスの機能を有する乳酸菌が存在しており、これらの乳酸菌を利用したヨーグルトなどが実用化されている。

    特開平8−187071号公報

    特開2004−283109号公報

    プロバイオティクスの機能を有する乳酸菌の中には、バクテリオシンを生産するものがある。 このため、プロバイオティクスとしての利用を目的として、バクテリオシンを生産する乳酸菌を含むヨーグルトを製造するときに、ヨーグルトミックスの発酵において遅延の現象が発生することがある。

    バクテリオシンを生産する乳酸菌を含むヨーグルトを製造する場合、乳酸菌の培養物をヨーグルトミックスに接種する。 培養物には乳酸菌が生産したバクテリオシンが含まれるため、ヨーグルトの製造時には、プロバイオティクスとしての利用に必要な乳酸菌だけでなく、バクテリオシンがヨーグルトミックスに添加されることになる。

    ヨーグルトミックスに添加されたバクテリオシンによりスターターの活動が阻害され、カードの形成が遅れるなどして発酵遅延が生じる。 したがって、プロバイオティクスとしての利用を目的として、バクテリオシンを生産する乳酸菌の培養物をヨーグルトミックスに添加する際には、培養物の抗菌活性を可能な限り低くすることが望ましい。

    本発明の乳酸菌の培養法は、タンパク質分解酵素により分解された乳清を含む培養液を調製する培養液調製工程と、バクテリオシンを生産する乳酸菌を前記培養液に接種し、前記乳酸菌が接種された培養液のpHを4以上5未満に維持しながら前記乳酸菌を培養する培養工程と、を備える。

    本発明に係る乳酸菌の培養法は、バクテリオシンを生産する乳酸菌の培養物の抗菌活性を、非常に低くすることができる。

    本発明の発酵乳の製造法は、ヨーグルトミックスを生成する原料乳生成工程と、バクテリオシンを生産する乳酸菌であるバクテリオシン生産菌を培養し、前記バクテリオシン生産菌の培養物を生成する培養物生成工程と、前記培養物を前記ヨーグルトミックスに添加する添加工程と、前記培養物が添加されたヨーグルトミックスを発酵させる発酵工程と、を備え、前記培養物生成工程は、タンパク質分解酵素により分解された乳清を含む培養液を調製する培養液調製工程と、前記バクテリオシン生産菌を前記培養液に接種し、前記バクテリオシン生産菌が接種された培養液のpHを4以上5未満に維持しながら、前記バクテリオシン生産菌を培養することにより、前記培養物を生成する培養工程と、を含む。

    本発明に係る発酵乳の製造法は、ヨーグルトミックス中のスターターの活動がバクテリオシンにより阻害されることを防止することができる。 したがって、バクテリオシン生産菌を含む発酵乳を効率よく製造することができる。

    それゆえに、この発明の目的は、抗菌活性の低い培養物を得ることができる乳酸菌の培養法と、発酵遅延を防ぐことができる発酵乳の製造法とを提供することである。

    この発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面によって、明白となる。

    実施例1で使用するホエイ分解培地の組成を示す図である。

    実施例1におけるガセリ菌の培養結果を示す図である。

    実施例2で使用するホエイ分解培地の組成を示す図である。

    実施例2におけるガセリ菌の培養結果を示す図である。

    実施例3で使用するヨーグルトミックスの組成を示す図である。

    以下、本発明の実施の形態について説明する。 本実施の形態に係る乳酸菌の培養法は、培地のpHが一定の範囲(pHが4以上5未満)内となるように、アルカリ溶液を培地に加えながら乳酸菌を培養する。 これにより、生菌数あたりの抗菌活性が非常に低い乳酸菌の培養物を得ることができる。

    本実施の形態に係る乳酸菌の培養法において、培養の対象となる乳酸菌は、バクテリオシンを生産することができる乳酸菌(以下、「バクテリオシン生産菌」と呼ぶ)である。 ガセリ菌などのラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する乳酸菌、ラクティス菌などのラクトコッカス(Lactococcus)属に属する乳酸菌などを、本実施の形態に係る乳酸菌の培養法を用いて培養することができる。 具体的には、ガセリ菌OLL2959(Lactobacillus gasseri OLL2959,NITE BP-224,特許生物寄託センター)、ラクティス菌OLS3311(Lactococcus lactis subsp. lactis OLS3311,FERM
    BP-10966,特許生物寄託センター)、クレモリス菌OLS3312(Lactococcus lactis
    subsp. cremoris OLS3312,FERM BP-10967,特許生物寄託センター)などを例示できる。

    本実施の形態に係る乳酸菌の培養法について具体的に説明する。 まず、ホエイ(乳清)を含むホエイ溶液に、プロテアーゼなどのタンパク質分解酵素を添加して、ホエイ水溶液中のホエイタンパク質を分解させる。 タンパク質分解酵素の添加前に、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質単離物(WPI)などのホエイタンパク質をホエイ水溶液に添加してもよい。

    次に、ビール酵母エキスなどの酵母エキスをホエイ水溶液に添加して、バクテリオシン生産菌の培養に用いるホエイ分解培地を調製する。 ホエイ分解培地に、窒素源として、ホエイタンパク質の他に、肉エキス、魚肉エキスなどを添加してもよい。 また、ホエイ分解培地に、アスコルビン酸ナトリウムなどのビタミンと、硫酸鉄および硫酸マグネシウムなどの無機栄養物とを添加してもよい。

    そして、好ましくは、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸プロピレングリコールなどの乳化剤をホエイ分解培地に添加する。 これにより、バクテリオシン生産菌の培養物の抗菌活性を確実に抑制することができる。

    ホエイ分解培地にバクテリオシン生産菌を接種し、バクテリオシン生産菌を培養する。 好ましくは、ホエイ分解培地のpHが5未満になるまでバクテリオシン生産菌を培養させた後に、バクテリオシン生産菌を培養中のホエイ分解培地のpHを4以上5未満の範囲に調整しながら、バクテリオシン生産菌を培養する。 pHの調整は、ホエイ分解培地にアルカリ溶液を添加することにより行うことができる。 アルカリ溶液として、炭酸カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液などを用いることができる。 より好ましくは、ホエイ分解培地のpHを4.7以上5未満の範囲に調整しながら、バクテリオシン生産菌を培養する。 ホエイ分解培地の培養中のpHを4.7以上5未満とした場合、ホエイ分解培地の培養中のpHを4.7未満とした場合と比べ、バクテリオシン生産菌の増殖を促進して効率よく培養することができる。

    バクテリオシン生産菌の培養後に、バクテリオシン生産菌を培養したホエイ分解培地(培養液)からバクテリオシン生産菌が濃縮された濃縮菌液を分離する。 濃縮菌液の分離には、遠心分離または膜分離を用いることができる。

    このようにして得られたバクテリオシン生産菌の濃縮菌液は、培養中にホエイ分解培地のpHが5以上に維持されながら調製された濃縮菌液と比べて、非常に低い抗菌活性を示す。 すなわち、ホエイ分解培地のpHを4〜5に維持しながら、バクテリオシン生産菌を培養することにより、バクテリオシン生産菌の培養物の抗菌活性を低い状態に制御することができる。

    次に、本実施の形態に係る発酵乳(ヨーグルト)の製造法について具体的に説明する。 まず、原料乳であるヨーグルトミックスを調製する。 ヨーグルトミックスは、生乳に脱脂粉乳、ホエイタンパク質、および水などを混合することにより調製される。 なお、ヨーグルトミックスに砂糖、果肉、果汁などを添加してもよい。

    ヨーグルトミックスを従来と同様に均質化および殺菌した後で、ヨーグルトミックスに、スターターと、上記乳酸菌の培養法で得たバクテリオシン生産菌やその濃縮菌液とを接種する。 バクテリオシン生産菌やその濃縮菌液の接種量は、特に限定されない。

    なお、スターターとして用いられる乳酸菌は、バクテリオシン生産菌と同一の乳酸菌であってもよいし、異なる乳酸菌であってもよい。

    バクテリオシン生産菌やその濃縮菌液が接種されたヨーグルトミックスを発酵させることにより、ヨーグルトが製造される。 上記発酵乳の製造法により調製された濃縮菌液などの抗菌活性は非常に低いため、ヨーグルトミックスの発酵中にスターター(乳酸菌)の活動が阻害されることがない。 したがって、バクテリオシン生産菌を含むヨーグルトを従来と同程度の発酵時間で効率的に製造することができる。

    以下、図面を参照しつつ、本発明に係る乳酸菌の培養法の実施例について説明する。

    {実施例1}
    図1は、実施例1で使用するホエイ分解培地の組成を示す図である。 まず、配合A、Bのホエイ分解培地の調製について説明する。 具体的には、配合A、Bのホエイ分解培地の総重量を基準として、8.70重量%のホエイパウダー(明治乳業社製)と、1.50重量%のホエイタンパク質濃縮物(WPC80、NZMP社製)と、88.80重量%の水とを混合して、ホエイ水溶液を調製する。 0.10重量%のタンパク質分解酵素(プロテアーゼA「アマノ」G、天野エンザイム社製)をホエイ水溶液に添加して、ホエイ水溶液中のホエイタンパク質を分解させた。

    ホエイタンパク質が分解されたホエイ水溶液に、0.20重量%のビール酵母エキス(アサヒビール社製)と、0.50重量%の魚肉エキス(マルハニチロ食品社製)と、0.10重量%のアスコルビン酸ナトリウムと、0.05重量%の硫酸鉄(FeSO )とを添加した。

    さらに、乳化剤として0.05重量%のポリソルベート80(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、日油社製)をホエイ水溶液に添加することにより、配合Aのホエイ分解培地を調製した。 同様に、乳化剤として0.05重量%のサンソフト81S(モノオレイン酸ソルビタン、太陽化学社製)をホエイ水溶液に添加することにより、配合Bのホエイ分解培地を調製した。

    次に、生菌数が2〜4×10 cfu/mlとなるように、ガセリ菌OLL2959(Lactobacillus gasseri OLL2959,NITE BP-224,特許微生物寄託センター)を配合A、Bのホエイ分解培地にそれぞれ接種した。 ガセリ菌OLL2959は、体内に摂取することで、血中尿酸値を低減させる作用を有しており、プロバイオティクスに利用することができるバクテリオシン生産菌である。

    ホエイ分解培地のpHが4.7になるまでガセリ菌OLL2959を培養させた後で、ガセリ菌OLL2959を中和培養した。 具体的には、配合Aのホエイ分解培地のpHが常に4.7〜5となるように、炭酸カリウム水溶液(40重量%)を配合Aのホエイ分解培地に添加し、攪拌しながら、ガセリ菌OLL2959を35℃、21時間の条件で培養した(中和培養)。 同様に、配合Bのホエイ分解培地のpHが常に5.5以上となるように、炭酸カリウム水溶液を配合Bのホエイ分解培地に添加し、攪拌しながら、ガセリ菌OLL2959を中和培養した。 なお、中和培養は、炭酸ガスを吹き込んだ嫌気条件の下で行われている。

    中和培養の後に、配合A、Bのホエイ分解培地(培養液)中のガセリ菌OLL2959の生菌数を、BCP培地を用いた混釈培養法により測定した。 図2に、実施例1におけるガセリ菌OLL2959の培養結果を示す。 配合Aのホエイ分解培地(培養液)中の生菌数は、1.1×10 10 cfu/mlであり、配合Bのホエイ分解培地(培養液)中の生菌数は、1.6×10 10 cfu/mlであった。 配合A、Bのホエイ分解培地(培養液)中のガセリ菌OLL2959の生菌数は、中和培養の後でも大きな差異は認められなかった。

    配合A、Bのホエイ分解培地(培養液)をそれぞれ遠心分離(重加速度:6000G)することにより、濃縮菌液を得た。 配合Aのホエイ分解培地(培養液)から得られた濃縮菌液(以下、「濃縮菌液A」という)の抗菌活性と、配合Bのホエイ分解培地(培養液)から得られた濃縮菌液(以下、「濃縮菌液B」という)の抗菌活性とを、後述する方法を用いて測定した。

    図2に示すように、濃縮菌液Aの1mlあたりの抗菌活性は、200AU(Arbitrary Unit)未満であった。 濃縮菌液Aの1×10 cfuあたりの抗菌活性は、約20AU未満であった。 一方、濃縮菌液Bの1mlあたりの抗菌活性は、18000AUであった。 濃縮菌液Bの1×10 cfuあたりの抗菌活性は、約1100AUであった。 つまり、pHが4.7〜5の条件で得られた濃縮菌液Aの生菌数あたりの抗菌活性は、pHが5.5以上の条件で得られた濃縮菌液Bの生菌数あたりの抗菌活性の60分の1程度となった。

    また、配合Aのホエイ分解培地を用いてpHが5以上となるように調整しながら、ガセリ菌OLL2959を中和培養した。 この結果、pH5以上の条件で中和培養したときの生菌数はpHが4.7〜5の条件で中和培養したときの生菌数と同程度であった。 pH5以上の条件で中和培養したときの1mlあたりの抗菌活性は、濃縮菌液Aの1mlあたりの抗菌活性より一桁以上で大きくなった。 さらに、乳化剤が添加されていないホエイ分解培地を用いて、ガセリ菌OLL2959を培養した。 この結果、pHが4.7〜5の条件でガセリ菌OLL2959を中和培養したときの1mlあたりの抗菌活性が、pHが5以上の条件で中和培養したときの1mlあたりの抗菌活性より一桁以上で低くなった。

    これらのことから、ホエイ分解培地のpHを4.7〜5に調整して、ガセリ菌OLL2959を中和培養することにより、ガセリ菌OLL2959を効率よく培養でき、培養物の抗菌活性を非常に低い状態に制御することができた。

    また、配合Aのホエイ分解培地を用いてpHが4〜4.7の条件でガセリ菌OLL2959を中和培養することにより、濃縮菌液を得た。 pHが4〜4.7の条件で中和培養したときの生菌数は、pHが4.7〜5の条件で中和培養したときの生菌数よりやや低くなった。 pHが4〜4.7の条件で中和培養することにより得られた濃縮菌液の抗菌活性は、濃縮菌液Aの抗菌活性と同程度であった。 このように、pHが4〜4.7の条件で中和培養しても、抗菌活性の非常に低いガセリ菌OLL2959の濃縮菌液を得ることができた。

    {実施例2}
    図3は、実施例2で使用する配合C、Dのホエイ分解培地の組成を示す図である。 まず、配合C、Dのホエイ分解培地の調製について説明する。 実施例1と同様の手順で、ホエイタンパク質が分解されたホエイ水溶液を調製した。 そして、図3に示す配合比で、ホエイ水溶液に、ビール酵母エキス、魚肉エキス、アスコルビン酸ナトリウム、および硫酸鉄を添加した。

    ビール酵母エキスなどが添加されたホエイ水溶液に、乳化剤として0.025重量%のポリソルベート80(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、日油社製)と、0.025重量%のサンソフト81S(モノオレイン酸ソルビタン、太陽化学社製)とを添加して、配合Cのホエイ分解培地を調製した。 また、ビール酵母エキスなどが添加されたホエイ水溶液に、乳化剤として0.05重量%のサンソフトNo. 25(モノオレイン酸ポリプロピレングリコール、太陽化学社製)を添加して、配合Dのホエイ分解培地を調製した。

    次に、生菌数が2〜4×10 cfu/mlとなるように、ガセリ菌OLL2959を配合C、Dのホエイ分解培地にそれぞれ接種した。 実施例1と同様に、ホエイ分解培地のpHが4.7になるまでガセリ菌OLL2959を培養させた後で、ガセリ菌OLL2959を中和培養した。 具体的には、配合C、Dのホエイ分解培地のpHがそれぞれ4.7〜5となるように、炭酸カリウム水溶液(40重量%)を配合C、Dのホエイ分解培地に添加し、攪拌しながら、ガセリ菌OLL2959を35℃、21時間の条件で中和培養した。 なお、中和培養は、炭酸ガスを吹き込んだ嫌気条件の下で行われている。

    中和培養の後に、配合C、Dのホエイ分解培地(培養液)中のガセリ菌OLL2959の生菌数を、実施例1と同じ方法を用いて測定した。 図4に、実施例2におけるガセリ菌OLL2959の培養結果を示す。 配合Cのホエイ分解培地(培養液)中のガセリ菌OLL2959の生菌数は、1.6×10 10 cfu/mlであった。 配合Dのホエイ分解培地(培養液)中のガセリ菌OLL2959の生菌数は、1.7×10 10 cfu/mlであった。 ホエイ分解培地(培養液)に使用する乳化剤によって、ガセリ菌OLL2959の生菌数に差異は生じなかった。

    遠心分離により、配合C、Dのホエイ分解培地(培養液)から濃縮菌液をそれぞれ分離した。 配合Cのホエイ分解培地(培養液)から得られた濃縮菌液(以下、「濃縮菌液C」という)の抗菌活性と、配合Dのホエイ分解培地(培養液)から得られた濃縮菌液(以下、「濃縮菌液D」という)の抗菌活性とを、実施例1と同一の方法を用いて測定した。 この結果、濃縮菌液Cおよび濃縮菌液Dの1mlあたりの抗菌活性は、ともに200AU未満であった。 濃縮菌液Cおよび濃縮菌液Dの1×10 cfuあたりの抗菌活性は、ともに約15AU未満であった。

    配合C、Dのホエイ分解培地(培養液)をpHが4〜4.7の範囲で中和培養して得られた濃縮菌液の抗菌活性は、濃縮菌液C、Dの抗菌活性と同程度であった。 配合C、Dのホエイ分解培地(培養液)をpHが4〜4.7の範囲で中和培養したときの生菌数は、pHが4.7〜5の条件で中和培養したときの生菌数より、やや低くなった。

    また、乳化剤としてサンソフトNo. 25とサンソフト81Sとを0.025重量%ずつ添加したホエイ分解培地を用いて中和培養した結果、配合Cと同様の結果が得られた。

    実施例1および実施例2における試験結果から、ポリソルベート80、サンソフトNo. 25を乳化剤として使用することで、抗菌活性の非常に低い濃縮菌液を得ることができた。 また、乳化剤としてポリソルベート80およびサンソフトNo. 25を使用する場合、これらの乳化剤と他の乳化剤とを併用しても、抗菌活性の非常に低い濃縮菌液を得ることができた。

    {抗菌活性の測定方法}
    次に、濃縮菌液の抗菌活性の測定方法について、濃縮菌液Aを例にして説明する。 なお、濃縮菌液B、C、Dの抗菌活性も、同じ方法により測定している。

    市販のMRS培地(ベクトン・ディッキンソン社製)に、MRS培地を基準として0.1%(v/v)の指標菌を添加することにより、試験培地を調製した。 指標菌には、ブルガリア菌(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)ATCC11842(基準株)を用いた。

    凍結保存された濃縮菌液Aを熱水浴中に5分間保持した上で、濃縮菌液Aの1%(v/v)水溶液を調製した。 濃縮菌液Aの水溶液を2倍ずつ段階的に希釈して、希釈率の段数の異なる複数の希釈液を得た。 希釈率の段数は、8〜12段である。 これにより、濃縮菌液Aの水溶液を2 〜2 12倍に希釈された希釈液を調製した。 各段数の希釈液を試験培地にそれぞれ添加し、アネロパック・ケンキ(三菱ガス化学社製)を用いて、各段数の希釈液が添加された試験培地を37℃、24時間の条件で嫌気培養した。

    嫌気培養の後に、指標菌が生育しない希釈率の最高段数(n)を確認した。 そして、希釈率の最高段数(n)と濃縮菌液の水溶液の濃度(0.01:1%)とに基づいて、濃縮菌液Aの抗菌活性(AU)を求めた。 抗菌活性は、以下の式に基づいて求めることができる。
    抗菌活性(AU)=希釈率の最高段数(n)/濃縮菌液の水溶液の濃度(0.01)

    以下、本発明に係る発酵乳の製造法の実施例として、濃縮菌液A〜Cをそれぞれ添加したヨーグルトの製造について説明する。

    {実施例3}
    図5は、実施例3で使用した4種類のヨーグルトミックスの組成を示す図である。 まず、配合E〜Hのヨーグルトミックスの調製について説明する。 ヨーグルトミックスの総重量を基準として、14.10重量%の脱脂粉乳および0.93重量%の無塩バター(ともに明治乳業社製)と、水とを混合して、配合E〜Hのヨーグルトミックスを調製した。 水の配合比は、配合Eで82.97重量%、配合F〜Hで82.87重量%である。

    配合E〜Hのヨーグルトミックスの均質化および殺菌を従来と同様に行い、配合E〜Hのヨーグルトミックスを約40℃に冷却した。 冷却後、2.00重量%の乳酸菌スターターを配合E〜Hのヨーグルトミックスに接種した。 乳酸菌スターターには、明治ブルガリアヨーグルト(明治乳業社製)から分離した乳酸菌を用いた。

    配合Fのヨーグルトミックスに、0.10重量%の濃縮菌液Aを接種した。 配合Gのヨーグルトミックスに、0.10重量%の濃縮菌液Bを接種した。 配合Hのヨーグルトミックスに、0.10重量%の濃縮菌液Cを接種した。 配合Eのヨーグルトミックスには、濃縮菌液を接種しなかった。 そして、それぞれのヨーグルトミックスを40℃の条件で乳酸濃度が1.20%になるまで発酵させることにより、ヨーグルトを製造した。 このとき、ヨーグルトミックスの乳酸濃度が1.20%になるまでの時間(発酵時間)を測定した。

    濃縮菌液が接種されていない配合Eのヨーグルトミックスと、濃縮菌液A、Cが接種された配合F、Hのヨーグルトミックスとは、発酵時間が約5時間であった。 このことから、抗菌活性の低い濃縮菌液A、Cが接種されたヨーグルトミックス(配合F、H)では、発酵遅延が生じなかった。

    一方、抗菌活性の高い濃縮菌液Bが接種されたヨーグルトミックス(配合G)の発酵時間は7時間であった。 つまり、配合Gのヨーグルトミックスで発酵遅延が発生した。 抗菌活性の高い濃縮菌液Bをヨーグルトミックスに添加することにより、配合Gのヨーグルトミックス中の乳酸菌スターターの活動が、濃縮菌液Bに含まれるバクテリオシンにより阻害されたと推測される。

    このように、ホエイ分解培地のpHを4.7以上5未満に維持しながら中和培養して得た培養物(濃縮菌液A、C)をヨーグルトミックスに添加することで、バクテリオシン生産菌が添加されたヨーグルトを、従来のヨーグルトと同程度の発酵時間で効率よく製造することができた。 したがって、バクテリオシン生産菌をプロバイオティクスの用途で使用する場合においても、通常のヨーグルトの製造工程をそのまま使用することができる。

    この発明を添付図面に示す実施態様について説明したが、この発明は、その詳細な説明の記載をもって制約しようとするものではなく、特許請求の範囲に記載する範囲において広く構成される。

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