呈味改善剤

申请号 JP2013536151 申请日 2012-09-12 公开(公告)号 JPWO2013047201A1 公开(公告)日 2015-03-26
申请人 理研ビタミン株式会社; キッコーマン株式会社; 发明人 泰行 小林; 泰行 小林; 毅彦 渡邊; 毅彦 渡邊; 仲原 丈晴; 丈晴 仲原; 良知 遠藤; 良知 遠藤;
摘要 カリウム含有飲食品が持つ塩味を阻害することなく、カリウムが有するエグ味、刺激味、苦味などの不快味を抑制する呈味改善剤を提供することである。 酵母 エキスを乳酸菌で発酵させて得られる、酵母エキス固形分あたり7.5(w/w)%以上の乳酸を含む乳酸発酵酵母エキスを含有することを特徴とするカリウム含有飲食品の呈味改善剤。
权利要求
  • 酵母エキスを乳酸菌で発酵させて得られる、酵母エキス固形分あたり7.5(w/w)%以上の乳酸を含む乳酸発酵酵母エキスを含有することを特徴とするカリウム含有飲食品の呈味改善剤。
  • さらに、糖アルコールおよび/またはグルコン酸塩を含有することを特徴とする請求項1に記載のカリウム含有飲食品の呈味改善剤。
  • 請求項1または2に記載の呈味改善剤を含有することを特徴とするカリウム含有飲食品。
  • 請求項1または2に記載の呈味改善剤をカリウム含有飲食品に添加することを特徴とする呈味改善方法。
  • 说明书全文

    本発明は、カリウム含有飲食品の塩味を阻害することなく、カリウムが有するエグ味、刺激味、苦味などの不快味を抑制する呈味改善剤に関する。

    従来、食塩(塩化ナトリウム)は、人間にとって必要不可欠な栄養成分であるが、過剰摂取することにより高血圧、腎臓病、心臓病などの疾病を引き起こす原因になると考えられ、食塩摂取量、特にナトリウム摂取量を低減することが望まれている。 食塩摂取量を低減させるためには、飲食品の調味や加工において食塩の使用量を減らす方法が考えられるが、単に食塩の使用量を減らした飲食品は、塩味が減少して風味を損ない味気ないものとなる。 そこで、食塩を低減しても飲食品の塩味や風味を損なわない食塩代替品として、現在塩化カリウムが最も多く使用されている。 しかし、塩化カリウムなどのカリウムは独特の呈味性、具体的には、エグ味、刺激味、後に残る苦味などの不快味があり、その使用量、使用分野は大きく制限されている。

    カリウム特有の呈味を改善する従来技術としては、塩化カリウムおよび、塩化カリウムに起因する苦味を減ずるために有効な量の自己分解した酵母エキスを含む食塩代替物(特許文献1)、食用固形脂100重量部、酵母エキス加工調味料1〜10重量部及び0.3〜5重量部を加熱して得られる固形又は半固形の香味油を有効成分とする、食品の減塩化用調味料(特許文献2)、動物蛋白質の酵素分解物と植物蛋白質の酵素分解物の混合物、塩化カリウム、塩基性アミノ酸、グルコン酸ナトリウムを含有することを特徴とする塩味増強剤(特許文献3)、キナ酸を除くカルボン酸又はそのカリウム塩以外の塩を含有することを特徴とするカリウム塩又はカリウム塩含有飲食品の呈味改善剤(特許文献4)、カリウムイオン及び還元麦芽糖水あめを特定比率で含有することを特徴とするカリウム含有食品又は調味料(特許文献5)、酵母エキスを添加することによる塩化カリウムのエグ味抑制(非特許文献1)などが開示されている。 しかし、上記従来技術では一長一短があり、必ずしも満足できるものではなく、さらに良い方法が求められていた。

    特開昭56−055177号公報

    特開2007―259836号公報

    特開2011−062171号公報

    特開2011−130669号公報

    特開昭62−032856号公報

    ジャパンフードサイエンス、2011−50.1号、p39−43

    本発明の目的は、カリウム含有飲食品が持つ塩味を阻害することなく、カリウムが有するエグ味、刺激味、苦味などの不快味を抑制する呈味改善剤を提供することである。

    本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、カリウム含有飲食品に乳酸発酵酵母エキスを添加することにより上記課題が解決されることを見出した。 本発明者らは、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。

    すなわち、本発明は、
    [1]酵母エキスを乳酸菌で発酵させて得られる、酵母エキス固形分あたり7.5(w/w)%以上の乳酸を含む乳酸発酵酵母エキスを含有することを特徴とするカリウム含有飲食品の呈味改善剤、
    [2]さらに、糖アルコールおよび/またはグルコン酸塩を含有することを特徴とする前記[1]に記載のカリウム含有飲食品の呈味改善剤、
    [3]前記[1]または[2]に記載の呈味改善剤を含有することを特徴とするカリウム含有飲食品、および[4]前記[1]または[2]に記載の呈味改善剤をカリウム含有飲食品に添加することを特徴とする呈味改善方法に関する。

    本発明の呈味改善剤は、カリウム含有飲食品が持つ塩味を阻害することなく、カリウムが有するエグ味、刺激味、苦味などの不快味を抑制することができる。

    本発明の呈味改善剤に含有される乳酸発酵酵母エキスに用いられる酵母エキスとしては、ビール酵母、パン酵母またはトルラ酵母などの公知の酵母を原料として、公知の方法によりエキスを抽出して製造されたものなどが用いられ、食用、薬用または培地などに用いられるものであっても良い。 本発明では、市販品の酵母エキスを用いてもよいし、上記の酵母を原料として公知の方法で製造した酵母エキスを用いてもよい。 市販品の酵母エキスとしては、バーテックス(富士食品工業社製)、アロマイルド(興人社製)、ミーストS(アサヒフードアンドヘルスケア社製)、コクベース(大日本明治製糖社製)、SK酵母エキス(日本製紙ケミカル社製)、ギステックス(DSM社製)、KAV(Ohly社製)などを使用することができる。 とりわけパン酵母を原料とする酵母エキスは、安価かつ安定的に入手できるので好ましい。 酵母エキスの形状は特に限定されず、液状、ペースト状、粉体など、いずれも使用することができる。

    酵母エキスの製造方法としては、一般に、自己消化法(酵母菌体内に本来あるタンパク質分解酵素などを利用して菌体を可溶化する方法)、酵素分解法(生物や植物由来の酵素を添加して酵母菌体を可溶化する方法)、熱水抽出法(酵母菌体を熱水中に一定時間浸漬して可溶化する方法)、酸またはアルカリ分解法(酵母菌体に種々の酸またはアルカリを添加して可溶化する方法)、物理的破砕法(酵母菌体に超音波処理や、高圧ホモジェナイズ法、グラスビーズなどの固形物と混合して混合・磨砕することにより酵母菌体を破砕する方法)、凍結融解法(酵母菌体に凍結・融解を1回以上行うことにより酵母菌体を破砕する方法)などが知られているが、これらに限定されず、いずれの方法を用いて製造された酵母エキスも用いることができる。

    本発明の呈味改善剤に含有される乳酸発酵酵母エキスに用いられる酵母エキスを発酵する乳酸菌としては、酵母エキスを発酵して乳酸を生産する能を有する限り特に限定されないが、例えばLactobacillus属またはLeuconostoc属に属する微生物であり、飲食品の添加に適した風味を有するという観点から、具体的にはLactobacillus plantarum、Lactobacillus pentosus、Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus delbrueckii subsp. lactisなどが好ましく、Lactobacillus plantarumが特に好ましい。 これらの乳酸菌は単独または任意の組み合わせで用いることができる。

    本発明の呈味改善剤に含有される乳酸発酵酵母エキスは、酵母エキスを乳酸菌で発酵して乳酸が生産され、酵母エキス固形分あたりの乳酸含有量が約7.5(w/w)%以上となるまで十分に発酵することにより得られる。 得られた乳酸発酵酵母エキスの乳酸含有量は、酵母エキス固形分あたり約7.5(w/w)%以上、好ましくは約15(w/w)%以上、例えば約20(w/w)%である。 なお、酵母エキスの濃縮度にもよるが、通常酵母エキス固形分あたりの乳酸含有量が約40(w/w)%を超えると、乳酸由来の酸味によって味のバランスが悪い乳酸発酵酵母エキスとなるため、乳酸含有量は酵母エキス固形分あたり約40(w/w)%以下であることが好ましい。 例えば、乳酸発酵酵母エキスは、酵母エキス固形分あたり、約7.5〜40(w/w)%、好ましくは約15〜30(w/w)%の乳酸を含有する。

    乳酸量は、定法に従って、例えば、乳酸オキシダーゼまたは乳酸デヒドロゲナーゼを用いた酵素電極法や、液体クロマトグラフ法により定量することができる。 乳酸の定量方法として知られているいずれかの方法で測定して本発明の範囲に属するものは、全て本発明の技術範囲に属するものと解釈される。 具体的には、例えば、バイオセンサーBF5(王子計測社製 酵素電極法)を用いて、水で溶解・希釈した試料中のL乳酸およびD乳酸の量を測定し、その和をとることによって前記乳酸量が得られる。

    ここで酵母エキス固形分とは、酵母エキスを乳酸菌で乳酸発酵した後の乳酸発酵酵母エキスの固形分を意味する。 そして酵母エキス固形分あたりの乳酸含有量とは、乳酸発酵によって生産された乳酸と、酵母エキス中にもともと含まれる乳酸をも含めた量をいう。 また、例えば粉末状の乳酸発酵酵母エキスにおいては、粉化助剤としてデキストリンや乳糖などを配合することがあるが、この場合、本発明における酵母エキス固形分とは、粉化助剤など乳酸発酵酵母エキス以外の成分に由来する固形分を含まない酵母エキス固形分のことを指す。 例えば、粉化助剤が全体の20(w/w)%配合された粉末乳酸発酵酵母エキスの乳酸含量が粉末乳酸発酵酵母エキス全量に対し10(w/w)%、水分含量が0(w/w)%の場合、酵母エキス固形分あたりの乳酸含量は12.5(w/w)%である。

    酵母エキス固形分量は、蒸発乾固法により求めることができる。 具体的には、乳酸発酵酵母エキスに海砂を適量(例えば、約20(w/w)%)混合し、約110℃で水分が完全に蒸発するまで加熱し、残った固形物の質量%を測定する。 より簡便には、示差屈折計を用いたBrix値で代用することが可能である。 いずれの方法であるにしろ、下記数値範囲に属するものは、本発明の技術範囲に属するものと解釈される。 一般的には、液状の乳酸発酵酵母エキスの酵母エキス固形分は約45〜65(w/w)%、ペースト状の乳酸発酵酵母エキスの酵母エキス固形分は約70〜95(w/w)%、粉末状の乳酸発酵酵母エキスの酵母エキス固形分は約50〜99(w/w)%である。

    酵母エキスを乳酸菌で発酵させる際、酵母エキスを含有する培養液(発酵前液ともいう)に乳酸菌を接種して乳酸発酵を行うことが好ましい。 酵母エキスを含有する培養液としては、酵母エキスと水を主成分として含有する発酵前液、または酵母エキス、糖源および水を主成分として含有する発酵前液などを使用することが好ましい。 上記のような簡易な構成からなる発酵前液を使用すればよいので、安価かつ簡便に乳酸含有酵母エキスを得ることができる。 また、上記の培養液には、窒素源、糖以外の炭素源、各種無機イオン、ビタミン類、抗生物質など、通常乳酸菌の発酵の際に培養液に添加され得る各種成分を添加してもよい。 なお、乳酸菌の種類などにもよるが、生育を良好に行わせるために、塩の含量が少ない培養液を使用してもよい。

    具体的には、例えば、原料となる酵母エキスを固形分として約5〜40質量%、好ましくは約20〜30質量%含むよう、酵母エキスを水などで希釈して発酵前液を調製してもよい。 発酵前液に糖源を添加する場合、乳酸菌が資化可能な糖源を、例えば、培養開始時の濃度が約2〜6質量%、好ましくは約3〜4質量%となるように添加してもよい。

    なお、前記発酵前液に添加される糖源は、乳酸菌が資化できるものであれば特に限定されず、例えば、グルコース、スクロース、フルクトース、ラクトース、ガラクトース、マルトースなどが挙げられ、これらを含有する液糖類、果汁類、野菜類、蜂蜜などであってもよい。 これらの中でも、乳酸菌の発酵性からみて、グルコースまたはグルコースを含む液糖類が好ましい。 これら糖源は、単独または組み合わせて添加することができる。

    前記発酵前液の各成分を均一に溶解した後、該発酵前液を加熱殺菌し、次いで冷却後、乳酸菌を接種してもよい。 加熱殺菌は通常約70〜130℃で行われ、冷却は通常約25〜35℃になるまで行われる。 殺菌前にpH調整剤を用いて、発酵に適したpH、好ましくはpHを約5.0〜7.0に調整することもできる。 pH調整剤としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。

    発酵は、例えば、スターターを発酵前液に対し約0.0001〜1質量%を接種し、定法に従って行う。 スターターは、発酵に用いる乳酸菌を、公知の培地を用いて定法に従って培養して調製することができる。 発酵温度は、菌種によっても多少異なるが、約20〜40℃であり、乳酸を効率よく生産させるという観点から好ましくは約25〜35℃であり、特に好ましくは約30℃付近で培養する。 通常、静置発酵で行われるが、発酵液の温度分布を均一化する目的や菌体の沈殿を制御する目的で緩慢な攪拌を行ってもよい。 発酵中、乳酸生産に伴ってpHが低下するため、上記のpH調整剤を用いてpHを約5.0〜7.0に維持しながら培養してもよい。 培養は好気培養、嫌気培養のいずれでもよい。

    発酵時間は酵母エキスの濃度やその他配合成分に応じて適宜設定することができ、所望の量の乳酸が生産される限り特に限定されないが、通常約18〜150時間、好ましくは約96〜144時間、さらに好ましくは約120〜144時間である。 生成する乳酸量を目安に、最終的に得ようとする乳酸含有酵母エキスとして適した発酵液となるように、発酵の終点を適宜定めることができる。 一例において、培養液中の酵母エキス固形分量が約25(w/w)%の場合、生産される乳酸により、培養液のpHが約3.5〜4.5となった時点で発酵を終了することができる。 発酵の終点の決定に際しては、乳酸菌の発酵によって生成される乳酸以外の成分の量も考慮することができる。

    上記のように、乳酸菌の発酵によって得られた乳酸発酵酵母エキスを、食品製造に使用可能な任意のpH調整剤でpH調整することができる。 調整後のpHは約4.5〜7.0が好ましく、pHは約4.5〜6.0がより好ましい。 pHが低すぎると、酸味が強くなり、逆に高すぎると苦味が感じられるようになり、乳酸発酵酵母エキスの品質が低下する。

    本発明の呈味改善剤に含まれる乳酸発酵酵母エキスは、所望により、酵母エキス固形分濃度を高めるために濃縮してもよい。 濃縮方法は特に限定されるものではなく、例えば、常圧加熱濃縮、減圧加熱濃縮、冷凍濃縮などの公知の濃縮方法が採用できる。 さらに、乾燥処理することにより、取り扱いの容易な粉末状の乳酸発酵酵母エキスを得ることもできる。 乾燥処理する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、凍結乾燥法、スプレードライ法、ドラムドライ法などの公知の方法が採用できる。

    上述のように濃縮または粉末化した乳酸発酵酵母エキスのpHは、濃縮または粉末化前の液体の状態で測定したpHで判断することができる。 また、濃縮または粉末化した乳酸発酵酵母エキスを、例えば酵母エキス固形分が約25(w/w)%になるよう蒸留水に溶解して測定したpHで判断することもできる。

    本発明の呈味改善剤に含まれる乳酸発酵酵母エキスの配合量に特に制限はなく、例えば、酵母エキス固形分が約5〜100質量部、好ましくは約30〜70質量部である。

    糖アルコールおよび/またはグルコン酸塩を含有する呈味改善剤も本発明の形態の1つである。 糖アルコールおよび/またはグルコン酸塩を含有することにより、エグ味、刺激味、苦味などがより一層抑制されるため、好ましい。 糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、還元水飴などが挙げられ、好ましくは還元水飴である。 グルコン酸塩としては、例えば、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸カルシウムなどが挙げられ、好ましくはグルコン酸ナトリウムである。 糖アルコールの配合量は、乳酸発酵酵母エキスに含まれる酵母エキス固形分100質量部に対して好ましくは約200〜800質量部、より好ましくは約300〜700質量部である。 グルコン酸塩の配合量は、乳酸発酵酵母エキスに含まれる酵母エキス固形分100質量部に対して好ましくは約50〜400質量部、より好ましくは、約100〜300質量部である。

    本発明の呈味改善剤の形状に特に制限はなく、固体、液体などいずれの形態でもよいが、ハンドリング性、保存性を考慮すると固体、特に粉末状のものが好ましい。

    本発明の呈味改善剤は、本発明の効果を阻害しない範囲でその他の物質、例えば、賦形剤(デキストリン、乳糖など)、旨味調味料(L−グルタミン酸ナトリウムなど)、本発明の呈味改善剤以外の酵母エキス、動植物油脂、リン酸カリウムなどのリン酸塩、クエン酸ナトリウムなどのクエン酸塩などを配合しても良い。

    本発明の呈味改善剤の使用方法に特に限定はなく、例えば、呈味改善剤をカリウム含有飲食品に添加してもよく、また、該呈味改善剤とカリウム塩およびその含有物とを混合して、必要によって乾燥後、飲食品に添加してもよい。 更に、食塩や自然塩、にがりと混合することも可能である。

    ここで、カリウム塩としては、例えば、塩化カリウム、グルタミン酸カリウム、クエン酸カリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム、グルコン酸カリウムなどが挙げられ、好ましくは塩化カリウムである。

    本発明の呈味改善剤の添加量は、カリウムの濃度、飲食品中に含まれる食品原材料などによって異なるが、例えばカリウムが塩化カリウムの場合、塩化カリウム100質量部に対して、乳酸発酵酵母エキスは、酵母エキス固形分として、好ましくは約0.1〜300質量部、より好ましくは約0.3〜200質量部である。

    本発明の呈味改善剤を添加する対象飲食品は、カリウムを含有する飲食品であれば特に限定はなく、呈味改善を必要とするすべての飲食品に添加することができる。 例えば、減塩の目的で食塩の塩化カリウムによる置換率を高めたいにも関わらず、塩化カリウムのエグ味などの呈味性の点で置換率が制限されているような飲食品には特に好適である。 対象飲食品にもよるが、塩化ナトリウムを塩化カリウムに30質量%前後置換することで、エグ味が顕著に発生してくる。 ここで減塩とは、食品中のナトリウムを減らしたことをいい、例えば、ナトリウムを1000mg/100g含む食品を、食塩などを減らすことによりナトリウムを700mg/100g含む食品とした場合、前記食品は30%減塩していることとなる。 減塩目的で食塩を塩化カリウムなどのカリウム塩に置換する場合、食品の組成によっても異なるが、食品中に含まれる食塩100質量部中、好ましくは約10〜60質量部、より好ましくは約20〜50質量部を塩化カリウムなどのカリウム塩に置換することができる。

    以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に代表例として説明するものであって、本発明を限定するものではない。

    <呈味改善剤(乳酸発酵酵母エキス)の作製>
    [実施例1]
    蒸留水に、酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)が固形分として25(w/w)%、およびブドウ糖果糖液糖(商品名:NF42 ニューフラクトR−O:昭和産業社製)が4(w/w)%となるように加え、溶解して発酵前液を作製した。 その発酵前液にLactobacillus plantarum(FERM P−21349)を発酵初発の菌数が1.0×10 cfu/mLとなるように添加し、30℃、144時間発酵して発酵液を得た。 次いで、発酵液を水酸化カリウムでpH6.0になるように調整した後、乾燥後の酵母エキス固形分が60(w/w)%になる様に粉末化助剤(商品名:パインデックス#2;松谷化学工業社製、デキストリン)を添加してスプレードライ法で粉末化して乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤(実施例品1)を得た。
    呈味改善剤(実施例品1)1.25g(酵母エキス固形分:0.75g)を蒸留水に溶解・分散して250mLとした後に遠心分離(3000rpm、15分間)により不溶成分を除き、バイオセンサーBF5(型式;王子計測社製、酵素電極法)を用いて、L乳酸およびD乳酸の量を測定した。 L乳酸、D乳酸の合計量を酵母エキス固形分で除して酵母エキス固形分あたりの乳酸の比率を求めたところ、酵母エキス固形分あたりの乳酸含有量は20.9(w/w)%であった。
    呈味改善剤(実施例品1)の使用乳酸菌、発酵条件、酵母エキス固形分あたりの乳酸含有量を表1に示す。

    [実施例2〜4]
    実施例1において、Lactobacillus plantarum(FERM P−21349)をLactobacillus brevis(NRIC1038)、Lactobacillus bulgaricus(NRIC1041)、またはLactobacillus casei(NRIC0644)に替えた以外は同様の操作を行い、乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤(実施例品2〜4)を得た。 呈味改善剤(実施例品2〜4)の使用乳酸菌、発酵条件、酵母エキス固形分あたりの乳酸含有量をまとめて表1に示す。

    [実施例5〜7]
    実施例1において、発酵時間を144時間から48時間、24時間、または18時間に替えた以外は同様の操作を行い、乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤(実施例品5〜7)を得た。 呈味改善剤(実施例品5〜7)の使用乳酸菌、発酵条件、酵母エキス固形分あたりの乳酸含有量をまとめて表1に示す。

    <カリウム含有飲食品:粉末即席ラーメンスープ>
    (1)粉末即席麺ラーメンスープの調整 下記表2の原材料1倍量をビニール袋に入れ、1分間撹拌混合した後、20メッシュで篩い粉末即席ラーメンスープを得た。

    (2)ラーメンスープの調整[試験区1〜8]
    200mLビーカーに表2の粉末即席ラーメンスープ5g、各呈味改善剤(実施例品1〜7)0.3g、熱湯95gを加えてラーメンスープを作製し試験区1〜7とした。 また、呈味改善剤(実施例品1)0.3gを0.1gに替えてラーメンスープを作製し試験区8とした。

    [試験区9〜13]
    比較例として、試験区1の呈味改善剤(実施例品1)0.3gに替えて、酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.08g、0.24g、乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.04g、または酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.24gと乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.04gをそれぞれ加えてラーメンスープを作製し試験区9〜12とした。 また、試験区1の呈味改善剤(実施例品1)を加えないラーメンスープを作製し試験区13とした。

    (3)評価方法および結果 得られたラーメンスープについて、エグ味、刺激味、および後に残る苦味の抑制効果を官能にて評価した。 官能評価は、下記表3に示す評価基準に従い10名のパネラーでおこなった。 結果はそれぞれ10名の評点の平均値として求め、下記基準にて記号化した。 結果、用いた呈味改善剤、酵母エキス、乳酸およびその添加量を表4に示す。
    記号化◎: 3.5以上○: 2.5以上〜3.5未満△: 1.5以上〜2.5未満×: 1.5未満

    結果より、乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤を添加した塩化カリウムを含有するラーメンスープは、エグ味、刺激味、後に残る苦味は改善された。 一方、乳酸発酵酵母エキスでない酵母エキスおよび/または乳酸を添加した塩化カリウムを含有するラーメンスープは、エグ味、刺激味、後に残る苦味いずれも改善することができなかった。
    また、上記官能評価をおこなう際、塩味の感じ方についても評価を行ったところ、いずれの試験区においても、塩味の感じ方を阻害することはなかった。

    <カリウム含有飲食品:減塩味噌>
    (1)減塩味噌溶液の調整[試験区14〜21]
    200mLビーカーに減塩味噌(商品名:おいしい低塩みそ;マルコメ社製、塩分の一部を塩化カリウムに置き換えた味噌、塩化カリウムを1(w/w)%含有)10g、各呈味改善剤(実施例品1〜7)0.3g、熱湯90gを加えて減塩味噌溶液を作製し試験区14〜20とした。 また、呈味改善剤(実施例品1)0.3gを0.1gに替えて減塩味噌溶液を作製し試験区21とした。

    [試験区22〜26]
    比較例として、試験区14の呈味改善剤(実施例品1)0.3gを酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.08g、0.24g、乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.04g、または酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.24gと乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.04gにそれぞれ替えて減塩味噌溶液を作製し、試験区22〜25とした。 さらに試験区14の呈味改善剤(実施例品1)を加えない減塩味噌溶液を作製し試験区26とした。

    (2)評価方法および結果 得られた減塩味噌溶液について、エグ味、刺激臭、および後に残る苦味の抑制効果を官能にて評価した。 官能評価は、「<カリウム含有飲食品:粉末即席ラーメンスープ>の(3)評価方法」と同じ方法で行なった。 結果、用いた呈味改善剤、酵母エキス、乳酸およびその添加量を表5に示す。

    結果より、乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤を添加した減塩味噌溶液は、エグ味、刺激味、後に残る苦味は改善された。 一方、乳酸発酵酵母エキスでない酵母エキスおよび/または乳酸を添加した減塩味噌溶液は、エグ味、刺激味、後に残る苦味いずれも改善することができなかった。
    また、上記官能評価をおこなう際、塩味の感じ方についても評価を行ったところ、いずれの試験区においても、塩味の感じ方を阻害することはなかった。

    <カリウム含有飲食品:粉末ミネストローネスープ>
    (1)粉末ミネストローネスープの調整 下記表6の原材料1倍量をビニール袋に入れ、1分間撹拌混合した後、20メッシュで篩い、粉末ミネストローネスープを得た。 得られた粉末ミネストローネスープは、塩化ナトリウムの34.8質量%を塩化カリウムで置換し、喫食時のナトリウム含量(計算値)を塩化カリウムで置換前の300mg/100gから210mg/100gに減塩した粉末ミネストローネスープである。

    (2)ミネストローネスープの調整
    [試験区27〜34]
    200mLビーカーに表6の粉末ミネストローネスープ2.4g、各呈味改善剤(実施例品1〜7)0.4g、熱湯97.2gを加えミネストローネスープを作成し試験区27〜33とした。 また、呈味改善剤(実施例品1)0.4gを0.2gに替えてミネストローネスープを作製し、試験区34とした。
    [試験区35〜39]
    比較例として、試験区27の呈味改善剤(実施例品1)0.4gに替えて、酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.16g、0.32g、乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.05g、酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.32gと乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.05gをそれぞれ加えてミネストローネスープを作製し、試験区35〜38とした。 また、試験区1の呈味改善剤(実施例1)を加えないミネストローネスープを作製し、試験区39とした。

    (3)評価方法および結果 得られた減塩ミネストローネスープについて、エグ味、刺激味、および後に残る苦味の抑制効果を官能にて評価した。
    官能評価は、「<カリウム含有飲食品:粉末即席ラーメンスープ>の(3)評価方法」と同じ方法で行った。 結果、用いた呈味改善剤、酵母エキス、乳酸およびその添加量を表7に示す。

    結果より、乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤を添加した粉末ミネストローネスープは、エグ味、刺激味、後に残る苦味は改善された。 一方、乳酸発酵酵母エキスでない酵母エキスおよび/または乳酸を添加したミネストローネスープは、エグ味、刺激味、後に残る苦味いずれも改善することができなかった。 また、上記官能評価をおこなう際、塩味の感じ方についても評価を行ったところ、いずれの試験区においても、塩味の感じ方を阻害することはなかった。 よって、本発明品を添加した粉末ミネストローネスープは、塩味を損なうことなくカリウムのエグ味、刺激味、後に残る苦味が改善された減塩ミネストローネスープとして非常に品質の高いものとなった。

    <呈味改善剤(乳酸発酵酵母エキス)の作製2>
    乳酸発酵酵母エキス(実施例品1)、粉末還元麦芽糖水飴(商品名:アマルティMR−50;三菱商事フードテック社製)、グルコン酸ナトリウム(商品名:ヘルシャスA;扶桑化学工業社製)を下記表8の1倍量をビニール袋に入れ、1分間撹拌混合した後、20メッシュで篩い実施例品8〜14、比較例品1および2を得た。

    塩化ナトリウム、カリウム塩含有水溶液での評価 塩化ナトリウム(商品名:新精塩;日本海水社製)、塩化カリウム(商品名:塩化カリウム(微粒);富田製薬社製)、乳酸カリウム(商品名:乳酸カリウム溶液;関東化学社製 乳酸カリウム80%含有)、呈味改善剤(実施例品1、8〜14、比較例品1および2)、水を下記表9の通りに配合し、撹拌して溶解して塩化ナトリウム、カリウム塩含有水溶液(試験区40〜55)を作製した。 塩化ナトリウム、カリウム塩含有水溶液は、塩化ナトリウムの20〜60%をカリウム塩に置き換えて減塩した塩化ナトリウム含有水溶液である。

    得られた塩化ナトリウム、カリウム塩含有水溶液について、エグ味、刺激味、後に残る苦味の抑制効果および臭いを官能にて評価した。 官能評価は、下記表10に示す評価基準に従い10名のパネラーでおこなった。 結果は、それぞれ10名の評点の平均値として求め、下記評価基準で記号化した。 結果を表9に示す。
    ◎◎:4.5以上 ◎ :3.5以上〜4.5未満 ○ :2.5以上〜3.5未満 △ :1.5以上〜2.5未満 × :1.5未満

    結果より、比較例品1、2を添加した試験区54、55では、塩化ナトリウム、カリウム塩含有水溶液は、エグ味は改善されたが、54は刺激味を改善できず、55は後に残る苦味を改善できなかった。 それに対し、実施例品1を加えた試験区40、50、51、52はいずれもエグ味、刺激味、後に残る苦味は一層改善された。 実施例品1を1.3%加えた試験区41ではエグ味、刺激味、後に残る苦味は一層改善されたが、酵母臭が感じ取られた。 実施例品1を0.003%加えた試験区42および実施例品1を0.001%加えた試験区53ではエグ味、刺激味、後に残る苦味は改善された。 実施例品8を加えた試験区43は刺激味を一層改善させ、エグ味と後に残る苦味を飛躍的に改善させた。 実施例品9を添加した試験区44では後に残る苦味を一層改善させ、エグ味と刺激味を飛躍的に改善させた。 実施例品11、12を加えた試験区46、47はエグ味、刺激味を一層改善させ、後に残る苦味を飛躍的に改善させた。 実施例品13、14を添加した試験区48、49はエグ味、後に残る苦味を一層改善させ、刺激味を飛躍的に改善させた。 実施例品10を添加した試験区45はエグ味、刺激味、後に残る苦味を飛躍的に改善させた。
    また、上記官能評価をおこなう際、塩味の感じ方についても評価を行ったところ、いずれの試験区塩味の感じ方を阻害することはなかった。

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