フィルムの製造方法、フィルム製造装置および治具

申请号 JP2014549889 申请日 2013-11-28 公开(公告)号 JP5766890B2 公开(公告)日 2015-08-19
申请人 株式会社カネカ; 发明人 占部 高志; 金城 永泰; 花田 功治;
摘要
权利要求

樹脂を供給するための供給口部および供給された樹脂をフィルム状に排出するリップ開口部を有する押出ダイと、 上記押出ダイにおける上記リップ開口部の長手方向の両端部に配置され、上記リップ開口部の側壁となるエンドプレートと、 上記押出ダイとエンドプレートとの間に挿設されるシール部とを備えるフィルム製造装置を用いたフィルムの製造方法であって、 上記リップ開口部を覆わず、かつ、上記リップ開口部の長手方向の両端に隣接する位置において上記シール部を覆う治具が上記エンドプレートに取り付けられた状態で、上記リップ開口部から樹脂を押し出してフィルムを形成する押出工程を含むことを特徴とするフィルムの製造方法。上記治具のリップ開口部側の先端部が上記リップ開口部の端部に位置していることを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。上記治具における上記エンドプレート側の第1外面の反対側の第2外面は、上記リップ開口部に近づくように丸みを帯びており、当該丸みの曲率半径Rが、0を超え、10mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。上記治具のリップ開口部側の先端部の幅が、上記リップ開口部の短手方向の長さ以上、10mm以下であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。上記樹脂は、ポリイミド溶液、ポリアミドイミド溶液、およびポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。上記樹脂は、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液であり、 上記ポリアミド酸溶液は、化学イミド化剤を含むことを特徴とする請求項5に記載のフィルムの製造方法。上記押出ダイは、上記供給口部から上記リップ開口部までの樹脂流路を複数有し、 上記押出工程において、上記複数の樹脂流路の各々に樹脂を供給し、供給した樹脂を合流させて上記リップ開口部から排出することで多層樹脂フィルムを形成することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。上記押出ダイは、上記供給口部から上記リップ開口部までの樹脂流路を3つ有し、 上記押出工程において、内側の樹脂流路に非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を供給し、外側の2つの樹脂流路に熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を供給することで三層構造の樹脂フィルムを形成することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。樹脂を供給するための供給口部および供給された樹脂をフィルム状に排出するリップ開口部を有する押出ダイと、 上記押出ダイにおける上記リップ開口部の長手方向の両端部に配置され、上記リップ開口部の側壁となるエンドプレートと、 上記押出ダイとエンドプレートとの間に挿設されるシール部と、 上記リップ開口部を覆わず、かつ、上記リップ開口部の長手方向の両端に隣接する位置において上記シール部を覆うように、上記エンドプレートに取り付けられた治具とを備えることを特徴とするフィルム製造装置。上記治具は、上記リップ開口部の長手方向に沿って移動可能に上記エンドプレートに取り付けられることを特徴とする請求項9に記載のフィルム製造装置。上記治具のリップ開口部側の先端部が上記リップ開口部の端部に位置していることを特徴とする請求項9に記載のフィルム製造装置。上記治具における上記エンドプレート側の第1外面の反対側の第2外面は、上記リップ開口部に近づくように丸みを帯びており、当該丸みの曲率半径Rが、0を超え、10mm以下であることを特徴とする請求項9から11の何れか1項に記載のフィルム製造装置。上記治具のリップ開口部側の先端部の幅が、上記リップ開口部の短手方向の長さ以上、10mm以下であることを特徴とする請求項9から12の何れか1項に記載のフィルム製造装置。樹脂を供給するための供給口部および供給された樹脂をフィルム状に排出するリップ開口部を有する押出ダイと、 上記押出ダイにおける上記リップ開口部の長手方向の両端部に配置され、上記リップ開口部の側壁となるエンドプレートと、 上記押出ダイとエンドプレートとの間に挿設されるシール部とを備えるフィルム製造装置に取り付けられる治具であって、 上記リップ開口部の短手方向の長さ以上、10mm以下の線分を外周の一部とし、当該線分に垂直な方向の長さが上記シール部の厚み以上である第1外面と、 上記第1外面の反対側の第2外面とを備え、 上記第2外面は、上記線分に近づくように丸みを帯びており、当該丸みの曲率半径Rが、0を超え、10mm以下であり、 上記第1外面が、上記リップ開口部を覆わず、かつ、上記リップ開口部の長手方向の両端に隣接する位置において上記シール部を覆うように、上記フィルム製造装置に取り付けられることを特徴とする治具。

说明书全文

本発明は、例えば、多層ポリイミドフィルム等のフィルムを製造する製造方法、フィルム製造装置および治具に関するものである。

多層ポリイミドフィルム等のフィルムを製造する製造装置では、フィルムとなる例えばポリアミド酸等の樹脂液膜を、所定の幅および厚さで連続的に押し出す押出ダイが用いられている。当該押出ダイにおいては、リップ開口部における、フィルムの幅方向に対応する幅方向の端部(以下、「リップエッジ」と記す)とエンドプレートとの間に、樹脂液が漏れないようにシール部(パッキング)を挿設することがある。

ところが、シール部の大きさや厚さ、形状には僅かにばらつき(個体差)があり、また、挿設時の取り付け誤差もあるため、リップエッジとエンドプレートとの間に、隙間や段差(溝)が生じる場合がある。つまり、リップエッジとシール部とエンドプレートとが面一にならない場合がある。リップエッジとエンドプレートとの間に隙間や段差が生じると、その部分に樹脂液溜まりが発生し易くなるので、樹脂液の流れが不安定になり、樹脂液膜の両端部の形状や厚さが不安定となる。また、溜まった樹脂液が硬化して塊状物となり、これがリップ開口部から押し出される樹脂液膜に異物として付着するおそれがある。

リップエッジとエンドプレートとの間に隙間や段差が生じた状態でフィルムの製造を行うと、フィルムの安定的な連続生産を継続することが困難となり、フィルムの品質を低下させてしまうおそれがある。それゆえ、樹脂液膜の両端部の形状や厚さを安定化させる方法が求められている。

ところで、押出ダイのリップエッジに、当該リップエッジの一部を塞ぐようにしてアウターディッケル等の吐出幅変更手段を設置して、連続生産時に、熱可塑性樹脂フィルムとなる樹脂液膜の吐出幅を変更する技術が種々提案されている(特許文献1〜8)。

日本国公開特許公報「特開平10−119114号公報(1998年5月12日公開)」

日本国公開特許公報「特開平06−198707号公報(1994年7月19日公開)」

日本国公開特許公報「特開平03−284926号公報(1991年12月16日公開)」

日本国特許公報「特公昭52−033658号公報(1977年8月30日公開)」

日本国公開特許公報「特開平08−052783号公報(1996年2月27日公開)」

日本国公開特許公報「特開平11−077796号公報(1999年3月23日公開)」

日本国公開実用新案公報「実開昭62−114717号公報(1987年7月21日公開)」

米国特許第3,293,689号公報(1966年12月27日公開)

上記各特許文献に記載されている技術内容は、押出フィルム成形用ダイのリップ開口部の片端または両端に、アウターディッケル(閉止板)を設置することで、樹脂液膜の幅を変更することが可能な技術内容である。しかしながら、当該技術では、押出フィルム成形用ダイのリップ開口部の一部を塞いでいるため、この部分において樹脂液が滞留し、フィルム両端部の形状や厚さが不安定になるおそれが高い。

それゆえ、フィルムを製造する製造方法において、樹脂液膜の両端部の形状や厚さを安定化させることにより、品質を維持した状態でフィルムの安定的な連続生産を行うことが可能な方法が求められている。

本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、樹脂液膜の両端部の形状や厚さを安定化させることにより、品質を維持した状態でフィルムの安定的な連続生産を行うことが可能なフィルムの製造方法、フィルム製造装置および治具を提供することにある。

本発明に係るフィルムの製造方法は、(1)樹脂を供給するための供給口部および供給された樹脂をフィルム状に排出するリップ開口部を有する押出ダイと、(2)上記押出ダイにおける上記リップ開口部の長手方向の両端部に配置され、上記リップ開口部の側壁となるエンドプレートと、(3)上記押出ダイとエンドプレートとの間に挿設されるシール部と、を備えるフィルム製造装置を用いたフィルムの製造方法である。そして、本発明に係るフィルムの製造方法は、上記リップ開口部を覆わず、かつ、上記リップ開口部の長手方向の両端に隣接する位置において上記シール部を覆う治具が上記エンドプレートに取り付けられた状態で、上記リップ開口部から樹脂を押し出してフィルムを形成する押出工程を含むことを特徴としている。

上記の構成によれば、エンドプレートに取り付けられた治具は、リップ開口部を覆わず、かつ、上記リップ開口部の長手方向の両端に隣接する位置において上記シール部を覆う。そのため、リップ開口部の一部を塞ぐことによる樹脂液の滞留が生じない。また、リップ開口部の長手方向の両端に隣接する位置においてシール部を治具が覆うため、治具によって例えばシール部に生じる隙間や段差を埋めることができる。従って、押出ダイから押し出される樹脂液膜の両端部の挙動を安定化することができる。即ち、樹脂液膜の両端部の形状や厚さを安定化させることができる。

それゆえ、上記構成によれば、品質を維持した状態でフィルムの安定的な連続生産を行うことが可能なフィルムの製造方法を提供することができる。

さらに、上記製造方法において、上記治具のリップ開口部側の先端部が上記リップ開口部の端部に位置していることが好ましい。また、上記治具のリップ開口部側の先端部の幅が、上記リップ開口部の短手方向の長さ以上、10mm以下であることが好ましい。これにより、治具によりシール部を確実に覆うことができる。

さらに、上記製造方法において、上記治具における上記エンドプレート側の第1外面の反対側の第2外面は、上記リップ開口部に近づくように丸みを帯びており、当該丸みの曲率半径Rが、0を超え、10mm以下であることが好ましい。これにより、押出ダイから吐出された樹脂液膜は、リップ開口部からの吐出距離が大きくなるにつれ治具の外面から徐々に離れることになる。その結果、樹脂液膜の両端部の挙動をより安定化することができる。

さらに、上記製造方法において、上記樹脂は、ポリイミド溶液、ポリアミドイミド溶液、またはポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液からなる群から選択される1つ以上であることが好ましい。さらに、上記樹脂は、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液であり、上記ポリアミド酸溶液は、化学イミド化剤を含むことが好ましい。

さらに、上記製造方法において、上記押出ダイは、上記供給口部から上記リップ開口部までの樹脂流路を複数有し、上記押出工程において、上記複数の樹脂流路の各々に樹脂を供給し、供給した樹脂を合流させて上記リップ開口部から排出することで多層樹脂フィルムを形成してもよい。

もしくは、上記製造方法において、上記押出ダイは、上記供給口部から上記リップ開口部までの樹脂流路を3つ有し、上記押出工程において、内側の樹脂流路に非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を供給し、外側の2つの樹脂流路に熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を供給することで三層構造の樹脂フィルムを形成してもよい。

また、本発明に係るフィルム製造装置は、上記課題を解決するために、樹脂を供給するための供給口部および供給された樹脂をフィルム状に排出するリップ開口部を有する押出ダイと、上記押出ダイにおける上記リップ開口部の長手方向の両端部に配置され、上記リップ開口部の側壁となるエンドプレートと、上記押出ダイとエンドプレートとの間に挿設されるシール部と、上記リップ開口部を覆わず、かつ、上記リップ開口部の長手方向の両端に隣接する位置において上記シール部を覆うように、上記エンドプレートに取り付けられた治具とを備えることを特徴としている。

さらに、上記フィルム製造装置において、上記治具は、上記リップ開口部の長手方向に沿って移動可能に上記エンドプレートに取り付けられることが好ましい。もしくは、上記フィルム製造装置において、上記治具のリップ開口部側の先端部が上記リップ開口部の端部に位置していてもよい。また、上記治具における上記エンドプレート側の第1外面の反対側の第2外面は、上記リップ開口部に近づくように丸みを帯びており、当該丸みの曲率半径Rが、0を超え、10mm以下であることが好ましい。また、上記治具のリップ開口部側の先端部の幅が、上記リップ開口部の短手方向の長さ以上、10mm以下であることが好ましい。

また、本発明に係る治具は、(1)樹脂を供給するための供給口部および供給された樹脂をフィルム状に排出するリップ開口部を有する押出ダイと、(2)上記押出ダイにおける上記リップ開口部の長手方向の両端部に配置され、上記リップ開口部の側壁となるエンドプレートと、(3)上記押出ダイとエンドプレートとの間に挿設されるシール部とを備えるフィルム製造装置に取り付けられる治具である。そして、本発明に係る治具は、上記リップ開口部の短手方向の長さ以上、10mm以下の線分を外周の一部とし、当該線分に垂直な方向の長さが上記シール部の厚み以上である第1外面と、上記第1外面の反対側の第2外面とを備え、上記第2外面は、上記線分に近づくように丸みを帯びており、当該丸みの曲率半径Rが、0を超え、10mm以下であることを特徴としている。

上記構成によれば、安定的に連続生産された品質が良好なフィルムを提供することができる。

本発明に係る製造方法等によれば、品質を維持した状態でフィルムの安定的な連続生産を行うことが可能なフィルムの製造方法、フィルム製造装置および治具を提供することができるという効果を奏する。

本発明に係るフィルム製造装置の一例を示す斜視図である。

上記フィルム製造装置が備える多層押出ダイのリップ開口部における、フィルムの幅方向に対応する幅方向の端部とエンドプレートとの間に段差(溝)が生じている状態を示す概略の正面図である。

上記フィルム製造装置が備える整流治具を示す斜視図であり、整流治具の下面の丸みの曲率半径が異なる4つの例を示す図である。

上記フィルム製造装置が備えるエンドプレートへの整流治具の取り付け方法を示す分解斜視図である。

整流治具を多層押出ダイのリップ開口部における、フィルムの幅方向に対応する幅方向の端部に取り付けた(位置調節を行う前の)状態を示す概略の正面図である。

整流治具を多層押出ダイのリップ開口部における、フィルムの幅方向に対応する幅方向の端部に取り付け、位置調節を行った後の状態を示す概略の正面図である。

本発明に係るフィルム製造装置の他の例を示す斜視図である。

本発明に係るフィルムの製造方法は、樹脂を供給するための供給口部および供給された樹脂をフィルム状に排出するリップ開口部を有する押出ダイと、上記押出ダイにおける上記リップ開口部の長手方向の両端部に配置され、上記リップ開口部の側壁となるエンドプレートと、上記押出ダイとエンドプレートとの間に挿設されるシール部とを備えるフィルム製造装置を用いる方法であり、上記リップ開口部を覆わず、かつ、上記リップ開口部の長手方向の両端に隣接する位置おいて上記シール部を覆う治具が上記エンドプレートに取り付けられた状態で、上記リップ開口部から樹脂を押し出してフィルムを形成する押出工程を含む構成である。

また、本発明に係る製造方法は、押出ダイを用いた多層フィルムの製造方法であって、上記押出ダイのリップ開口部における、多層フィルムの幅方向に対応する幅方向の両端部に、多層フィルムの整流治具を設ける構成であり、より好ましくは、上記整流治具は、上記端部に対する位置調節が可能であり、上記整流治具のリップ開口部側の先端部を、上記リップ開口部の端部に一致させる構成であるともいえる。

なお、本発明において「整流治具」とは、押出ダイのリップ開口部における、多層フィルムの幅方向に対応する幅方向の端部の外側に設けられ、押出ダイから押し出される樹脂液の流れを調節して樹脂液膜の端部の挙動を安定化する治具を指す。

本発明における実施の一形態について、図1ないし図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。

〔フィルム製造装置、整流治具〕 先ず、フィルム製造装置について、図1ないし図7を参照しながら説明する。本発明に係るフィルム製造装置は、樹脂を供給するための供給口部および供給された樹脂をフィルム状に排出するリップ開口部を有する押出ダイを用いる装置である。本発明に係る押出ダイは、供給口部からリップ開口部までの樹脂流路の数には限定されず、1つの樹脂流路を備えて単層フィルムを製膜するものであっても、複数の樹脂流路を備えて多層フィルムを製膜するものであってもよい。例えば、表面と内側との特性を異ならせる樹脂フィルムを製膜する場合には、供給口部からリップ開口部までの樹脂流路を複数有する押出ダイを用いて、当該複数の樹脂流路の各々に樹脂を供給し、供給した樹脂を合流させてリップ開口部から排出することが好ましい。以下の説明では、フィルムが三層構造の多層フィルムである場合を例に挙げて説明する。

図1は、本実施の形態に係るフィルム製造装置を示す外観斜視図である。図1に示すように、フィルム製造装置は、多層押出ダイ1と、エンドプレート5と、整流治具10とを備えている。

多層押出ダイ1は、一対のアウタープレートと、当該一対のアウタープレートの間に配置された一対のインナープレートと、これらアウタープレートおよびインナープレートを固定するための固定部材とを含む。一対のインナープレート間の隙間、一方のインナープレートと一方のアウタープレートとの間の隙間、および、他方のインナープレートと他方のアウタープレートとの間の隙間が、樹脂が通る流路(樹脂流路)となる。また、多層押出ダイ1は、図示しない反応機から複数種類の樹脂液が連続的に供給される供給口部2を備えている。供給口部2は、一対のアウタープレート間の隙間の上部の開放端である。そして、多層押出ダイ1は、複数種類の樹脂液を合流させて所定の幅および厚さで連続的に押し出すためのスリット状のリップ開口部3を備えている。リップ開口部3は、一対のアウタープレート間の隙間の下部の開放端である。

供給口部2には、例えば熱硬化性樹脂(非熱可塑性樹脂)フィルムとなる樹脂液aと、例えば熱可塑性樹脂フィルムとなる樹脂液bとが供給されるようになっている。供給された樹脂液aは、一対のインナープレート間に形成された樹脂流路を通ってリップ開口部3に移動する。また、供給された樹脂液bは、インナープレートおよびアウタープレート間に形成された樹脂流路を通ってリップ開口部3に移動する。それゆえ、樹脂液a,bは、多層押出ダイ1内部を供給口部2からリップ開口部3の方向(図1において矢印A方向)に向かって連続的に流れることになる。

尚、多層押出ダイ1は、その内部に、供給された樹脂液a,bの温度を調節する温度調節機構を備えている。また、多層押出ダイ1は、スリット状のリップ開口部3の短手方向の長さ(つまり、リップ開口部3の厚さであり、図1において矢印C方向の幅)を調節する、つまり、製造する多層フィルムの厚さを調節するリップ厚さ調節機構を備えている。

リップ開口部3の厚さ(図1において矢印C方向の幅)は、製造する多層フィルムの厚さに応じて適宜設定され、通常、500μm〜2000μm程度である。また、上記リップ開口部3における、多層フィルムの幅方向に対応する幅(図1において矢印B方向の長さ、つまり、スリット状のリップ開口部3の長手方向の長さ)は、製造する多層フィルムの幅に応じて適宜設定され、通常、300mm〜3000mm程度である。従って、多層押出ダイ1は、例えば上記樹脂液aからなる樹脂液膜を上記樹脂液bからなる樹脂液膜で挟んでなる三層構造の樹脂液膜を、設定された所定の幅および厚さでリップ開口部3から連続的に押し出すようになっている。

多層押出ダイ1の両端部、つまり、多層押出ダイ1における、多層フィルムの幅方向に対応する幅方向(図1において矢印B方向:つまり、スリット状のリップ開口部3の長手方向)の両端部には、リップ開口部3の側壁となる一対のエンドプレート5が取り付けられている。すなわち、エンドプレート5は、多層押出ダイ1における樹脂流路の側壁となる。そして、多層押出ダイ1とエンドプレート5との間には、図2に示すように、多層押出ダイ1の両端部から樹脂液a,bが漏れないように当該両端部外側から押さえるシール部(パッキング)6が挿設されている。シール部6は、樹脂液a,bに対して不活性で、樹脂液a,bが付着し難い材質であればよく、例えばフッ素樹脂が好適である。尚、シール部6は、一種類の材質だけで構成されていてもよく、複数種類の材質を組み合わせた(積層した)構成であってもよい。

但し、上記構成のフィルム製造装置においては、シール部6の大きさや厚さ、形状に僅かにばらつき(個体差)があり、また、挿設時の取り付け誤差もあるため、シール部6が多層押出ダイ1およびエンドプレート5の表面から突出しないように挿設しようとすると、図2に示すように、多層押出ダイ1とエンドプレート5との間に、隙間(或いは段差(溝))6aが生じる。つまり、上記構成のフィルム製造装置においては、多層押出ダイ1の表面、エンドプレート5の表面、およびシール部6の端面が面一になっていない。

そこで、上記構成のフィルム製造装置においては、図1に示すように、エンドプレート5に整流治具10が取り付けられている。

図3の(a)〜(d)は、整流治具10を示す斜視図である。整流治具10は、ステンレス等の金属で構成されており、エンドプレート5の表面と密接可能な上面10bと、当該上面(第1外面)10bの反対側の下面(第2外面)10cとを表面(外面)の一部として有している。なお、本実施の形態では、上面10bは平らな面であるが、これに限定されるものではなく、エンドプレート5の表面と密接可能な形状であればよい。

下面10cは、所定の一方向(図3における矢印D方向)に沿って上面10b側に近づくように丸みを帯びており、上面10bと交わっている。上面10bと下面10cとが交わる先端部10aは、矢印D方向に直交する線分となっている。先端部10aの幅(上面10bに平行であり、かつ、矢印D方向に垂直な方向の長さ)は、多層フィルムの厚さ方向に対応する上記リップ開口部3の厚さ(つまり、リップ開口部3の短手方向の長さ)以上、10mm以下となるように形成されている。また、整流治具10の長さ(図3において矢印D方向の長さ)は、シール部6の厚みより大きければよく、例えば5mm〜25mm程度とすればよい。すなわち、整流治具10の上面10bは、リップ開口部3の短手方向の長さ以上、10mm以下の線分(先端部10a)を外周の一部とし、当該線分に垂直な方向の長さがシール部6の厚さ以上である。なお、整流治具10の高さ(上面10bと下面10cとの上下方向の最大距離、図3において整流治具10の左端の高さ)は、特に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。

また、整流治具10の下面10cは、丸みの曲率半径Rが、0を超え、10mm以下となるように形成されている。図3の(a)〜(d)は、異なる曲率半径Rの丸みを帯びた下面10cを有する整流治具10の例を示している。図3では、(d)、(c)、(b)、(a)の順で曲率半径Rが大きくなっている。

また、整流治具10には、下面10cから上面10bに向けて貫通し、矢印D方向を長手方向とする長孔10dが形成されている。

次に、エンドプレート5への整流治具10の取り付けについて説明する。図4は、エンドプレート5への整流治具10の取付け方法を示す分解斜視図である。

図4に示されるように、エンドプレート5は、整流治具10を取り付けるための治具取付面5aを表面の一部として有している。治具取付面5aは、エンドプレート5の下面であり、エンドプレート5が多層押出ダイ1に取り付けられたときに、多層押出ダイ1のリップ開口部3と同じ高さとなり、リップ開口部3と同一平面上になるように、エンドプレート5に形成されている。また、治具取付面5aは、整流治具10の上面10bと密接可能なように平面になっている。治具取付面5aには、ボルト7を差し込むためのボルト穴5bが形成されている。

そして、整流治具10の長孔10dに下方からボルト7を挿入し、当該ボルト7をボルト穴5bに螺合することで整流治具10をエンドプレート5に取り付ける。このとき、整流治具10の下面10cが曲率を示す方向(矢印D方向)とリップ開口部3の長手方向とが平行となり、かつ、整流治具10の先端部10aがリップ開口部3に向くように取り付ける。図5は、整流治具10をエンドプレート5に取り付けたときの正面図である。このとき、ボルト7が挿入される長孔10dの長手方向は、スリット状のリップ開口部3の長手方向(図5の矢印B方向)と平行になる。そのため、ボルト7を締め付ける前において、整流治具10は、リップ開口部3の長手方向(図5の矢印B方向であり、フィルムの幅方向に対応する幅方向)に沿ってスライド可能(移動可能)となる。すなわち、整流治具10の先端部10aは、リップ開口部の端部(リップエッジ3a)に対して位置調節を行うことができる。そして、整流治具10は、例えば、シール部6を挿設してフィルム製造装置を形成した後、スライドさせてリップ開口部3に対する位置調節が行われる。ここでは、リップ開口部3を覆わず、かつ、リップ開口部3の長手方向の両端のリップエッジ3aに隣接する位置においてシール部6を覆うように整流治具10の位置が調節される。先端部10aがリップ開口部3の端部(リップエッジ3a)に位置するように位置調節が行われた後の整流治具10は、例えば上記ボルト7を締めることにより、当該位置で固定される。ここで、「先端部10aがリップ開口部の端部(リップエッジ3a)に位置する」とは、「先端部10aとリップエッジ3aとが一致する」ことを意味し、整流治具10の先端部10aを幅方向(図1において矢印C方向)から見たときに、図6に示すように、目視にて先端部10aとリップエッジ3aとが一致していると判断することができる程度に一致していることを指す。尚、目視の替わりに測定装置を用いて、一致(所定の範囲内の誤差で一致)しているか否かを確認することもできる。

具体的には、整流治具10の取り付け位置は、シール部6の大きさや厚さ、形状の違い、或いは挿設時の取り付け誤差に応じて位置調節が必要であり、従って、当該位置調節は、整流治具10の取り付け時に行われる。ここで、「整流治具10の取り付け時」とは、最初に多層フィルムの製造装置を組み立てて整流治具10を取り付けるときに限らず、多層押出ダイ1等を洗浄した後やシール部6を取り替えた後、多層フィルムの製造装置を再度組み立てて整流治具10を取り付けるとき等も含まれる。一旦位置調節が行われて取り付けられた整流治具10は、リップ開口部3から樹脂液a,bが押し出されている間(製造装置が稼働している間)、再度位置調節する必要は無い。

上述したように、整流治具10の上面10bは、リップ開口部3の短手方向の長さ以上、10mm以下の線分(先端部10a)を外周の一部とし、当該線分に垂直な方向の長さがシール部6の厚さ以上である。そのため、図5に示す取り付け位置(位置調節を行う前の位置)から、位置調節が行われて図6に示す取り付け位置(位置調節を行った後の位置)に移動した整流治具10は、多層押出ダイ1とエンドプレート5との間に挿設されたシール部6を覆い隠す。つまり、整流治具10は、上記隙間6aを埋める。

このように、本発明に係るフィルム製造装置は、リップ開口部3を覆わず、かつ、リップ開口部3の長手方向の両端(リップエッジ3a)に隣接する位置においてシール部6を覆うように、エンドプレート5に取り付けられた整流治具10を備える。これにより、リップ開口部3を整流治具10が覆うことがないので、整流治具10がリップ開口部3の一部を塞ぐことによる樹脂液の滞留が生じない。さらに、リップエッジ3aに対する位置調節が可能な整流治具10によって、リップエッジ3aに隣接する位置において、シール部6(多層押出ダイ1とエンドプレート5との間に挿設されたシール部6)を覆う。このため、シール部6の下方に形成される隙間6aを埋めることができるので、多層押出ダイ1から押し出される樹脂液膜の両端部の挙動を安定化することができる。即ち、樹脂液膜の両端部の形状や厚さを安定化させることができる。

また、本発明に係る整流治具10は、リップ開口部3の短手方向の長さ以上、10mm以下の線分(先端部10a)を外周の一部とし、当該線分に垂直な方向の長さがシール部6の厚み以上である上面(第1外面)10bと、上面10bの反対側の下面(第2外面)10cとを備える。そのため、先端部10aがリップ開口部3の端部であるリップエッジ3aに位置し、上面10bとエンドプレート5の治具取付面5aとが密接するように整流治具10をエンドプレート5に取り付けると、整流治具10の上面10bは、リップエッジ3aに隣接する位置において、多層押出ダイ1とエンドプレート5との間のシール部6を覆うことができる。

さらに、下面10cは、先端部10aに近づくように丸みを帯びており、当該丸みの曲率半径Rが、0を超え、10mm以下である。そのため、先端部10aをリップ開口部3の端部であるリップエッジ3aに位置するように整流治具10をエンドプレート5に取り付けると、整流治具10の下面10cは、リップ開口部3に近づくように丸みを帯びることとなる。そして、その丸みの曲率半径Rが0を超え、10mm以下である。これにより、多層押出ダイ1から吐出された樹脂液膜は、リップ開口部3からの吐出距離が大きくなるにつれ整流治具10から徐々に離れることになる。その結果、樹脂液膜の両端部の挙動をより安定化することができる。

従って、上記構成によれば、安定的に連続生産された品質が良好なフィルムを提供することができる。

なお、上記の説明では、エンドプレート5の治具取付面5aおよび整流治具10の上面10bの両面が平面であるとした。しかしながら、これら両面は、互いに密接可能な面であればよく平面に限定されるものではない。例えば、図7に示されるように、エンドプレート5の治具取付面を、多層押出ダイ1と略同様の形状(断面V字状)としてもよい。この場合、整流治具10の下面は、エンドプレート5の治具取付面と密接する楔形の形状に形成すればよい。

〔フィルムの製造方法〕 次に、上記構成のフィルム製造装置を用いた本発明に係るフィルムの製造方法について説明する。但し、本発明に係るフィルムの製造方法は、上記構成のフィルム製造装置を用いた方法に限定されるものではなく、押出ダイのリップ開口部における、フィルムの幅方向に対応する幅方向の両端部に、整流治具が設けられているフィルム製造装置を用いた方法であればよい。また、本実施の形態においては、フィルムが三層構造の多層フィルムである場合を例に挙げて説明することとする。

位置調節が行われて取り付けられた整流治具10を備えたフィルム製造装置における多層押出ダイ1の供給口部2に、図示しない反応機から複数種類の樹脂液、例えば樹脂液a,bを連続的に供給する。多層押出ダイ1に供給される樹脂液a,bの単位時間当たりの供給量は、リップ開口部3の幅および厚さに応じて、供給量とリップ開口部3からの押出量とが一致するように、適宜設定すればよい。

供給された樹脂液a,bは、例えば樹脂液aからなる樹脂液膜を樹脂液bからなる樹脂液膜で挟んでなる三層構造の樹脂液膜として、所定の幅および厚さでリップ開口部3から連続的に押し出される。このとき、本発明に係るフィルムの製造方法においては、上記リップ開口部3における、フィルムの幅方向に対応する幅方向の両端部、つまりリップエッジ3aに、当該リップエッジ3aに対する位置調節が可能な整流治具10が設けられ、当該整流治具10の先端部10aがリップエッジ3aに位置するように位置調節されている。すなわち、整流治具10は、リップ開口部3を覆わず、かつ、リップ開口部3の長手方向の両端(リップエッジ3a)に隣接する位置においてシール部6を覆うように位置調節されている。従って、リップ開口部の一部を塞ぐことによる樹脂液の滞留が生じない。さらに、上記整流治具10によってエンドプレート5と多層押出ダイ1との間に挿設されたシール部6が覆われ、多層押出ダイ1から押し出される樹脂液膜の両端部の挙動が安定化する。即ち、隙間6aによる樹脂液溜まりが発生しないので、樹脂液膜の両端部の形状や厚さを安定化させることができる。

多層押出ダイ1から押し出された三層構造の樹脂液膜は、必要に応じて乾燥および焼成(例えばアミド酸のイミド化)等の処理がなされることにより、三層構造の多層フィルムとされる。

上記方法によれば、整流治具10によってエンドプレート5と多層押出ダイ1との間に挿設されたシール部6を覆う(つまり、隙間6aを埋める)ことができるので、多層押出ダイ1から押し出される樹脂液膜の両端部の挙動を安定化することができる。即ち、樹脂液膜の両端部の形状や厚さを安定化させることができる。それゆえ、上記方法によれば、品質を維持した状態で多層フィルムの安定的な連続生産を行うことが可能なフィルムの製造方法を提供することができる。

また、本発明に係るフィルムは、多層押出ダイ1のリップ開口部3における、多層フィルムの幅方向に対応する幅方向の両端部、つまりリップエッジ3aに、当該リップエッジ3aに対する位置調節が可能な整流治具10が設けられ、当該整流治具10のリップ開口部側の先端部10aが上記リップエッジ3aに一致している上記多層押出ダイ1を用いて製造されている。それゆえ、より安定的に連続生産された品質が良好な多層フィルムを提供することができる。

次に、本実施形態において製膜される樹脂について説明する。多層押出ダイ1の供給口部2に供給される樹脂液には、様々な種類の従来公知の樹脂を用いることができる。本発明においては、樹脂溶液を用いて、当該樹脂溶液を押し出してキャストする溶液キャスト法により製膜することが好ましい。溶液キャスト法にて製膜される樹脂溶液としては、ポリアミドイミド溶液、ポリイミド溶液、およびポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液からなる群から選択される1つ以上であることが好ましい。特に、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を用いることが好ましく、この場合、ポリアミド酸溶液を多層押出ダイ1の供給口部2に供給すればよい。また、ポリアミド酸溶液には、硬化剤として化学イミド化剤を含んでいてもよい。

また、表面にめっき銅が形成されるプリント配線板用のフィルムや、表面に銅箔を貼り合わせて使用されるプリント配線板用のフィルムを形成する場合、金属めっき層や銅箔との接着性に優れるという点から、熱可塑性ポリイミド樹脂が好ましい。しかし、熱可塑性ポリイミド樹脂のみでは高温で軟化し自己支持性を有さなくなるため非熱可塑性のポリイミドを支持体として組み合わせる必要がある。そのため、熱可塑性ポリイミド樹脂/非熱可塑性ポリイミド樹脂/熱可塑性ポリイミド樹脂で構成された三層構造のフィルムを製造することが好ましい。この場合、一対のインナープレート間に形成された内側の樹脂流路に、非熱可塑性ポリイミドの前駆体となるポリアミド酸溶液を供給し、インナープレートおよびアウタープレート間に形成された外側の2つの樹脂流路に、熱可塑性ポリイミドの前駆体となるポリアミド酸溶液を供給すればよい。

ここで、熱可塑性ポリイミド樹脂とは、圧縮モード(プローブ径3mmφ、荷重5g)の熱機械分析測定(TMA)において、10〜400℃(昇温速度:10℃/min)の温度範囲で永久圧縮変形を起こすものをいう。一方、同じ条件の熱機械分析測定(TMA)において、10〜400℃(昇温速度:10℃/min)の温度範囲で永久圧縮変形を起こさないポリイミド樹脂を非熱可塑性ポリイミド樹脂という。なお、組成を調整することにより、ポリイミド樹脂を熱可塑性とするか非熱可塑性とするかを選択することができる。

以下、ポリイミドフィルムの製造方法について説明する。ポリイミドフィルムは、ポリアミド酸溶液を前駆体として用いて製造される(以下、本明細書において、用語「ポリアミド酸」は、ポリイミド前駆体と同義で使用する場合もある)。ポリアミド酸の製造方法としては、公知のあらゆる方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、通常、酸二無物成分とジアミン成分とを、実質的等モル量で有機溶媒中に溶解させ、ポリアミド酸有機溶媒溶液を得る。その後、得られたポリアミド酸有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物成分とジアミン成分との重合が完了するまで攪拌することによって製造できる。これらのポリアミド酸溶液は通常5〜35wt%、好ましくは10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得ることができる。

上記酸二無水物成分とジアミン成分との重合方法は、あらゆる公知の方法及びそれらを組み合わせた方法を用いることができ、特に限定されない。なお、ポリアミド酸の重合における重合方法の特徴の一つとして、モノマーの添加順序があり、モノマーの添加順序を調整することにより得られるポリイミドの諸物性を制御することができる。

本発明においては、ポリアミド酸の重合にはいかなるモノマーの添加方法を用いてもよく、特に限定されないが、代表的な重合方法として次のような方法が挙げられる。 1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。 2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。 3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。 4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び/又は分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。 5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。 などの方法である。これら方法を単独で用いてもよいし、部分的に組み合わせて用いることもできる。

ジアミン成分の例としては、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−オキシジアニリン、3,3’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニル、4,4’−オキシジアニリン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,4’−オキシジアニリン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンが挙げられる。

また、酸二無水物成分として好適に用い得る例としては、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、などが挙げられ、これらを単独又は複数併用することができる。

ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、ポリアミド酸を溶解させ得る溶媒であればいかなるものも用いることができ、特に限定されない。例えば、アミド系溶媒、すなわちN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどを挙げることができる。なかでも、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましく用い得る。

また、ポリイミドフィルムには、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、ループスティフネス等のフィルムの諸特性を改善する目的でフィラーを添加することもできる。フィラーとしてはいかなるものを用いてもよいが、好ましい例としてはシリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。

ポリアミド酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法については、種々の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、熱イミド化法と化学イミド化法が挙げられ、どちらの方法を用いてフィルムを製造してもかまわない。

また、本発明において特に好ましいポリイミドフィルムの製造工程は、 i)有機溶剤中で芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させてポリアミド酸溶液を得る工程、 ii)上記ポリアミド酸溶液を含む製膜ドープをエンドレスベルト上に流延する工程、 iii)エンドレスベルト上で加熱した後、エンドレスベルトからゲルフィルムを引き剥がす工程、 iv)さらに加熱して、残ったアミド酸をイミド化し、かつ乾燥させる工程、 を含むことが好ましい。ここで、(ii)の工程が、多層押出ダイ1のリップ開口部3からポリアミド酸溶液を押し出してフィルムを形成する押出工程に対応する。

上記工程において無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤と、イソキノリン、キノリン、β−ピコリン、ピリジン、ジエチルピリジン等の第三級アミン類等に代表されるイミド化触媒とを含む硬化剤を用いてもよい。

上述したように、本実施形態に係るフィルム製造装置は、リップ開口部3を覆わず、かつ、リップ開口部3の長手方向の両端(リップエッジ3a)に隣接する位置においてシール部6を覆うように、エンドプレート5に取り付けられた整流治具10を備える。これにより、整流治具10がリップ開口部3の一部を塞ぐことによる樹脂溶液の滞留が生じない。さらに、シール部6の下方に形成される隙間6aを埋めることができるので、隙間6aに樹脂溶液が滞留することなく、多層押出ダイ1から押し出される樹脂液膜の両端部の挙動を安定化することができる。このように樹脂溶液の滞留を抑制できるので、本実施形態に係るフィルム製造装置を用いた製造方法は、連続生産において端部の形状が安定した状態でキャスト、乾燥でき、端部の形状変化による搬送治具(ピンなど)からの外れ等を回避し安定して生産することができる。さらに、樹脂を硬化させるための硬化剤が添加された樹脂溶液を押し出して製膜する方法に特に好適である。このような樹脂溶液としては、例えば、ポリアミド酸溶液に硬化剤として化学イミド化剤を添加した樹脂溶液がある。このような樹脂溶液は、時間の経過とともに硬化するので、仮に多層押出ダイ1の両端部で滞留すると塊となって少しずつ固着し、樹脂液膜の両端部の膜厚を不均一にしたり、フィルム形状を不規則にして、連続生産を困難にする可能性がある。しかしながら、本実施形態に係るフィルムの製造方法によれば樹脂溶液の滞留を抑制できるので、硬化剤が添加された樹脂溶液を押し出して製膜する場合であっても、連続生産を行うことができる。

また、多層構造(例えば3層構造)の樹脂フィルム(例えば、ポリイミドフィルム)を製膜する場合、端部に滞留が発生すると多層の膜厚構成比が周期的に変化しながらキャストされることがあり、これにより端部の形状変化が発生しやすくなり搬送治具(ピンなど)から外れるなどの問題を起こすことがある。しかし、本実施形態に係るフィルムの製造方法によれば樹脂溶液の滞留を抑制できるので、端部の形状を安定化させ、安定して搬送できるようになる。さらに、多層構造(例えば3層構造)の樹脂フィルム(例えば、ポリイミドフィルム)を製膜する場合、硬化剤(例えば、化学イミド化剤)を添加する層と添加しない層とが存在することがある。このとき、仮に多層押出ダイ1の両端部で樹脂溶液が滞留すると、樹脂フィルムの端部において膜厚構成比が変化し、キャストした基材からの剥離のしやすさが不均一となることで部分的に基材に樹脂が残り、連続生産を困難にする可能性がある。しかしながら、本実施形態に係るフィルムの製造方法によれば樹脂溶液の滞留を抑制できるので、端部の形状を安定化させ、安定して搬送できるようになることに加え、硬化剤が添加された層と硬化剤が添加されていない層とを含む多層構造の樹脂フィルムを製膜する場合であっても、安定して連続生産を行うことができる。

〔その他〕 本発明は、次のようにも表現できる。すなわち、本発明に係る多層フィルムの製造方法は、多層押出ダイを用いた多層フィルムの製造方法であって、上記多層押出ダイのリップ開口部における、多層フィルムの幅方向に対応する幅方向の両端部に、多層フィルムの整流治具を設ける。

上記製造方法において、上記整流治具は、上記端部に対する位置調節が可能であり、上記整流治具のリップ開口部側の先端部を、上記リップ開口部の端部に一致させることがより好ましい。また、上記整流治具は、上記先端部のRが、0を超え、10mm以下であることがより好ましい。また、上記整流治具は、上記先端部の幅が、多層フィルムの厚さ方向に対応する上記リップ開口部の厚さ以上、10mm以下であることがより好ましい。ここで、「先端部の幅」とは、リップエッジに一致させる先端部の寸法を指す。

上記構成によれば、多層押出ダイのリップ開口部における、多層フィルムの幅方向に対応する幅方向の両端部に、多層フィルムの整流治具を設けているので、より好ましくは、上記整流治具は、上記端部に対する位置調節が可能であり、上記整流治具のリップ開口部側の先端部を、上記リップ開口部の端部に一致させるので、整流治具によって例えば端部に生じる隙間や段差を埋めることができる。従って、多層押出ダイから押し出される樹脂液膜の両端部の挙動を安定化することができる。即ち、樹脂液膜の両端部の形状や厚さを安定化させることができる。

それゆえ、上記構成によれば、品質を維持した状態で多層フィルムの安定的な連続生産を行うことが可能な多層フィルムの製造方法を提供することができる。

また、本発明に係る多層フィルムは、多層押出ダイのリップ開口部における、多層フィルムの幅方向に対応する幅方向の両端部に、当該端部に対する位置調節が可能な多層フィルムの整流治具が設けられ、当該整流治具のリップ開口部側の先端部が、上記リップ開口部の端部に一致している上記多層押出ダイを用いて製造されている。

さらに、本発明に係る多層フィルムの整流治具は、多層押出ダイに設けられる多層フィルムの整流治具であって、上記多層押出ダイのリップ開口部における、多層フィルムの幅方向に対応する幅方向の端部に対する位置調節が行われるリップ開口部側の先端部のRが、0を超え、10mm以下である。

上記整流治具は、上記先端部の幅が、上記リップ開口部の厚さ以上、10mm以下であることがより好ましい。

上記構成によれば、安定的に連続生産された品質が良好な多層フィルムを提供することができる。

以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例の構成に限定されるものではない。

<合成例1> N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)582kgに、4,4’−オキシジアニリン(ODA)9.2kg、および2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)28.3kgを溶解させた。この溶液に、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二水物(BTDA)14.8kgを添加して溶解させた後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)12.6kgを添加し、一時間攪拌して溶解させた。続いて、この溶液に、パラフェニレンジアミン(PDA)12.44kgを添加して溶解させた後、PMDA26.6kgをさらに添加し、一時間攪拌して溶解させた。

そして、得られた溶液に、別途調製したPMDAのDMF溶液(PMDA:DMF=1.5kg:19.4kg)を徐々に添加し、粘度が2500ポイズ程度に達したところで、DMF溶液の添加を止めた。その後、一時間攪拌を行って、固形分濃度が18重量%、23℃での粘度が2500ポイズのポリアミド酸溶液(1)(非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液)を得た。

<合成例2> DMF642kgに、BAPP62.1kgを溶解させた後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)58.5kgを徐々に添加して溶解させた。続いて、この溶液に、BAPP17.0kgを添加し、一時間攪拌して溶解させた。

そして、得られた溶液に、別途調製したBAPPのDMF溶液(BAPP:DMF=4.1kg:54.2kg)を徐々に添加し、粘度が1000ポイズ程度に達したところで、DMF溶液の添加を止めた。その後、一時間攪拌を行って、固形分濃度が17重量%、23℃での粘度が1000ポイズのポリアミド酸溶液(2)(熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液)を得た。

<合成例3> DMF737kgに、ODA68.4kgを溶解させた後、PMDA99.3kgを徐々に添加して溶解させた。続いて、この溶液に、PDA11.3kgを添加し、一時間攪拌して溶解させた。

そして、得られた溶液に、別途調製したPDAのDMF溶液(PDA:DMF=1.97kg:37.4kg)を徐々に添加し、粘度が2500ポイズ程度に達したところで、DMF溶液の添加を止めた。その後、一時間攪拌を行って、固形分濃度が18重量%、23℃での粘度が2500ポイズのポリアミド酸溶液(3)(非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液)を得た。

〔実施例1〕 非熱可塑性樹脂フィルムを熱可塑性樹脂フィルムで挟んでなる三層構造の多層フィルムを製造する製造装置の三層共押出ダイに、整流治具を取り付けた。当該整流治具の形状は、先端部のRが5mm、幅7mm、高さ5mmとし、図6に示すように、その先端部とリップエッジとが一致するように位置調節を行った。

合成例1で得られたポリアミド酸溶液(1)に、DMF54kg、イソキノリン43kg、無水酢酸403kgの割合で混合して調製した硬化剤を、上記ポリアミド酸溶液(1)に対して重量比40%で連続的に添加し、ミキサーにより攪拌した後、得られた樹脂液を三層共押出ダイの中央層に供給した。一方、合成例2で得られたポリアミド酸溶液(2)に、DMFを添加して、固形分濃度を14重量%に調節した後、得られた樹脂液を三層共押出ダイの中央層の両面に供給した。

次いで、三層共押出ダイの厚さ1.3mmに調節されたリップ開口部(すなわち、短手方向の長さが1.3mmのリップ開口部)から上記両樹脂液を押出し、この樹脂液膜を130℃のステンレス製エンドレスベルト上にて100秒間、乾燥させることにより、自己支持性のあるゲルフィルムを得た。このゲルフィルムを、エンドレスベルトから引き剥がした後、両端をピンにより固定し、300℃×20秒間、450℃×20秒間、500℃×20秒間の加熱条件で乾燥およびイミド化させることにより、三層構造のポリイミドフィルムを得た。

そして、上記三層構造のフィルムを7日間以上、連続生産した。製造開始から7日間が経過した時点において、リップエッジとエンドプレートとの間に樹脂液溜まりは発生していなかった。また、生産された三層構造のフィルムは厚さが均一であり、品質も良好であった。

〔実施例2〕 合成例3で得られたポリアミド酸溶液(3)に、DMF293kg、イソキノリン42kg、無水酢酸163kgの割合で混合して調製した硬化剤を、上記ポリアミド酸溶液(3)に対して重量比50%で連続的に添加し、ミキサーにより攪拌した後、得られた樹脂液を三層共押出ダイの中央層に供給した。一方、合成例2で得られたポリアミド酸溶液(2)に、DMFを添加して、固形分濃度を14重量%に調節した後、得られた樹脂液を三層共押出ダイの中央層の両面に供給した。

次いで、実施例1と同様の製造装置を用い、実施例1と同様にして三層構造のポリイミドフィルムを得た。

そして、上記三層構造のフィルムを7日間以上、連続生産した。製造開始から7日間が経過した時点において、リップエッジとエンドプレートとの間に樹脂液溜まりは発生していなかった。また、生産された三層構造のフィルムは厚さが均一であり、品質も良好であった。

実施例1,2の結果から明らかなように、本発明に係る製造方法によって、多層フィルムの安定的な連続生産を行うことができた。

〔比較例1〕 図2に示すように、整流治具を取り付けなかった以外は実施例1と同様の製造装置を用い、実施例1と同様にして三層構造の多層フィルムを連続生産した。

ところが、製造開始から2日間が経過した時点において、リップエッジとエンドプレートとの間に樹脂液溜まりが発生し、その一部は硬化して塊状物となっていた。そして、当該塊状物は三層共押出ダイから押し出される樹脂液膜の端部に接触し、樹脂液の流れを不安定にしていた。従って、樹脂液膜の両端部の形状や厚さが不安定となった。さらに、塊状物の一部が樹脂液膜に異物として付着し、生産された三層構造のフィルムは品質が不良であった。

従って、整流治具を取り付けなかった場合には、多層フィルムの安定的な連続生産を行うことができなかった。

本発明に係る製造方法等によれば、品質を維持した状態でフィルムの安定的な連続生産を行うことが可能なフィルムの製造方法、フィルム製造装置および治具を提供することができるという効果を奏する。

それゆえ、本発明に係る製造方法等は、多層ポリイミドフィルム等のフィルムを製造する製造方法等を用いる各種産業において広範に利用され得る。

1 多層押出ダイ 2 供給口部 3 リップ開口部 3a リップエッジ 5 エンドプレート 6 シール部 6a 隙間 10 整流治具(治具) 10a 先端部 10b 上面(第1外面) 10c 下面(第2外面)

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