【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、自由に回転する頭部を載せた本体を備えるような、とくに精密ねじ回し用の工具取手に関する。 【0002】 【従来の技術】精密ねじ回しは主に、次のような異なる三通りの使用方法で使われる。 (1) 「時計製造者」の場合では、人さし指の先端で頭部を軸線方向に押し、本体に同時に作用する親指及び中指によりトルクを加える。 (2) 「人さし指のくぼみ」の場合では、頭部を人さし指の根元で又は人さし指と中指との間に形成した二又で保持する。 親指、人さし指及び中指で本体をつかむ。 人さし指で細かい制御を行いながら親指又は中指によりトルクを加える。 (3) 「手のひら全体」の場合では、ねじ回しを手に保持し、小指又は薬指により工具の頭部を手のひらに押付け、親指、人さし指及び中指で本体を回す。 【0003】前記工具取手を持つねじ回しは、自由に回転する頭部の存在によって回転運動から軸線方向の力を分離できる利点がある。 しかし、公知のねじ回しでは前記3つの場合に使用快適感と精度との間に満足の得られる妥協点はない。 【0004】 【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】本発明の目的はこのギャップを満たすことにある。 このために本発明は、本体が中間ふくらみ部を持ち、頭部は丸みのある輪郭の経線断面(軸断面)を有する球体を形成する拡大自由端部部分を備え、前記頭部の高さはその最大直径にほぼ等しいことを特徴とする。 【0005】本発明の他の特徴によれば、頭部の自由端は平坦であるか又は基本的には凹状であり、本体に隣接する頭部部分は、球体の半径より大きい半径を持ちこの球体に接する丸みのあるくぼみにより経線断面において少なくとも部分的に界されており、前記丸みのあるくぼみの下端は本体の上端の延長上にあり、本体の直径は頭部に隣接する末端からふくらみ部のピーク部まで徐々に増し、本体の直径はふくらみ部から頭部に対し最も遠い端部まで徐々に減少し、頭部から最も遠い部分で本体は、とくに丸みのある底部を持つ浅くいくぶん広い長手方向みぞを持ち、軸線方向の穴は、頭部の全体を貫通し本体に固定の中実の栓に差込むことのできる肩部を持ち、頭部はその底部の少なくとも8〜9mmの外径と、少なくとも13〜15mmの最大直径と、少なくとも15〜 16mmの高さとを備えている。 【0006】本発明のさらに他の主題は、前記したような工具取手を取付けた工具とくに精密ねじ回しである。 【0007】 【実施例】本発明の実施例を添付図面について詳細に説明する。 【0008】図示の精密ねじ回しは、上下方向に仮想した軸線X−Xを持つ細長い形状の取手1を備えている。 取手1の下端(図1)にはねじ回し刃先2が同軸に取付けられている。 取手1自体は、自由に回転する頭部5を載せて環4を上端に取付けた本体3を備えている。 【0009】一体の成形品として形成された本体3は、 底部から上向きに次のものを具備する。 頂部に向かいわずかに広がり本体3の高さの約半部にわたって延びる円すい台形状の細い下部部分6。 この部分6はその高さの大部分にわたってみぞ7を持つ。 各みぞ7は、部分6を仕切る円すい体と軸線X−Xに平行な軸線を持つ円筒体との交差により画定された凹入底部を持つ浅くいくぶん広いくぼみである。 この形状により、各みぞの深さ及び幅は底部から上方に徐々に増す。 曲線8により画定された各みぞ上端において、各みぞの幅はこれ等のみぞの間隔距離にほぼ等しい。 引き延ばされたS字状の経線断面を有する中間ふくらみ部9。 この中間ふくらみ部9は、 部分6の上端に接してつながる下方凹状円弧10とこの円弧10に接してつながる上方凸状円弧11とから成る。 上方に狭ばまる円すい台形状の太い上部部分12。 この部分12は円弧11の上端に接してつながる。 この部分12の最小直径は部分6の最大直径よりも大きい。 円柱形環状支持体13。 この支持体13は半径方向にわずかな遊びを置いてまわりに当てがわれた環4と同じ高さを持ち、部分12の上端の平らな面から突出している。 中実円柱形栓14。 この栓14は環状支持体13の上端の平らな面から突出しわずかに拡大した頭部15を持ち下方に向く差込み取付けの肩部16を凸形上面17 とを画定する。 【0010】ねじ回しの頭部5は、底部から上方に増大する直径を持つ三つの部分を備える軸線方向の貫通穴1 8を有している。 すなわち、栓14と同じ直径を持ち肩部16まで栓14より高さがわずかに短い底部部分と、 栓14の頭部15と同じ直径を持ち頭部15より高さがわずかに高い中間部分と、このすぐ下方の部分の直径よりわずかに大きい直径を持つ頂部部分である。 【0011】頭部5の半分の経線断面の外部は2つの円弧により画定されている。 すなわち、比較的大きい半径を持ち軸線X−Xに平行な短い直線セグメントだけ下方に適宜に延びる下方凹状円弧19と、極めて小さい半径を持ち接線方向に第1の半径部につながり頭部5の最上面Pのわずかに下方おいて穴18の上部開口で終る上方凸状円弧20である。 頭部5は丸みをつけた輪郭20を持つ球体を形成する拡大された上端を備えている。 頭部5の高さはその最大直径にほぼ等しい。 【0012】頭部5を取付けるために、本体3の上部部分12の最小直径とほぼ同じ外径を持つ環4は先ず環支持体13にはめこまれる。 次いで、頭部5は、これが肩部16の外側ではまり込むまで栓14に押し付けられる。 このようにして頭部5は、本体3に軸線方向及び半径方向にわずかな遊びを置いて自由に回転するように取付けられる。 最後に、工具を完成するために穴18の上部部分と同じ高さを持つ円板21が穴18に押付けられる。 【0013】以上述べたねじ回しは前記した3つの場合のうちの任意の場合で高い精度及び快適感のもとに使用できる。 【0014】「時計製造者」の場合には人さし指の末節骨は頭部5の広い凹状頂部に安定して快適に当たる。 親指及び中指は、本体3に沿うそれぞれの位置に従って互いに異なる速度で又互いに異なるトルクで本体3を回すことができる。 この回転中に工具の動く部分は、円板2 1が頭部5に固定して接合してあるから、人さし指に接触しない。 【0015】「人さし指のくぼみ」の場合には、ふたたび広い凹状頭部5は安定した快適な位置を持つ。 ふくらみ部9は、親指、人さし指及び中指に対し輪郭のはっきりした受け座となり、この場合本体の回転中に、本体は人さし指又は中指の基節骨に決してこすれることがなく、動く部分は人さし指のくぼみに接触しなくて、湾曲した輪郭20によって、鋭い又はその他の縁部によりきず付けられることがない。 このことはなお、ねじ込み又はねじ戻しのトルク或は速度を変えるように使用者がその親指、人さし指及び中指を本体3に沿って動かす場合にもいえることである。 【0016】「手のひら全体」の場合には小指又は薬指は、丸みをつけたくぼみ19内にはまることにより頭部5を確実安定につかむことができる。 このくぼみによってねじ回しは手のひらに確実に当てがわれ、小指又は薬指と動く本体3との間には接触が起らない。 この場合3 本の駆動指(親指、人さし指及び中指)にふくらみ部9 により得られる各別の後向きの受け座を与える。 又これ等の指は、ねじ込み及びねじ戻しの速度及びトルクを調整するようにふくらみ部9の前方又は後方で自由に動く。 【0017】みぞ7の形状は、運動精度をあまり低下させないで、六角形の構造又は鋭いみぞ付きの構造よりも取扱いに一層高い快適感の得られることが又認められる。 【0018】中実栓14及び貫通穴18に関しては、これ等の組合せにより狭いが十分に制御された遊びによる頭部5の高精度の取付けと共に頭部5の引離しに対する高い抵抗が得られる。 さらにこの組合せを完成するために円板21を使用することにより、工具の頂部に回転部分がないという前記の利点が得られるだけでなく、一層優美な外観のほかに工具を識別するのにこの円板に記号たとえば色を付けることができる。 このことは、一連の工具をその下部部分を隠す棚に並べるときに極めて有用である。 【0019】環4は次の機能、すなわち外観形成、印付け、工具識別及び頭部5の回転のための環のこすりのうち1つ又は複数を行う。 【0020】「人さし指のくぼみ」及び「手のひら全体」の場合の最適の快適感のために、又取手に十分な強さを与えるために、頭部5に作用する寸法は次のように底部の外径を少なくとも8〜9mmとし、最大直径を少なくとも13〜15mmとし、高さを15〜16mmとするのがよい。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明による取手を持つ精密ねじ回しの一例の一部を縦断面で示す側面図である。 【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。 【符号の説明】 1 工具取手 3 本体 5 頭部 9 ふくらみ部 20 丸みつき輪郭 |