【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ギアボックスにおける歯型ギア用の精密機械工程および精密機械に関する。 【0002】 【従来の技術】モーター自動車において、ギアボックスの重量を軽減したり、ギアボックスからの騒音を小さくすることが望まれている一方、ギアボックスを注意深く、精密に作ることが望まれている。 そのため、ギアボックスにおけるギアが歯型を有することになるが、今まで、しばしば焼き入れ前の状態で切削され、次いで、焼き入れされて、その後、精密機械研磨することにより作成されていた。 今日の、マニュアルシフト型の伝動装置の従来設計においては、伝動ギア部品である全歯型ギアの70%以上は、ディスク型であり、幅よりも直径が大きく、通常、シリンダー状の中ぐりを有している。 そして、このような典型的なモーター自動車における伝動ギア部品の製造においては、次ぎのような工程が採られていた。 −不要部の研磨による中ぐりの形成工程 −処理前の中ぐりに取り付けられた状態において、焼き入れ前におけるギア(歯型)の概略形成工程 −焼き入れ工程 −概略形成されたギアをクランプした状態での中ぐりの研磨工程 −中ぐりを有するギアをクランプした状態でのギアの研磨工程 【0003】このような焼き入れ工程および精密研磨工程は、いずれも比較的困難、煩雑な作業が多く、したがって、高価な工程とならざる得ないものである。 また、 今日、未だ多くの歯切り加工において、焼き入れ工程および精密研磨工程を行う替わりに、焼き入れ前に切削して最終製品としているのは、このような理由のためである。 したがって、あらゆる対抗策を用いて、焼き入れ工程中に生じる歪みを最小限にしようとしているにもかかわらず、このような歪みを許容せざる得ない状況である。 しかしながら、上述したように、多くの現代の伝動装置において、切削されて形成されたギア部品は、いずれの要求特性を満足するものでなかった。 【0004】ところで、焼き入れ工程および精密研磨工程なしには、中ぐりは存在することができない。 というのは、このようなギア部品のほとんどは、極めて正確かつ精密な中ぐり表面を有するギアシャフトのニードルベアリングによってガイドされているためである。 このような中ぐりを形成するには、ワークピ−スを通常、ギア部品が研磨形成される前の状態において、中ぐりを良好な円形に形成できるようにクランプしている。 しかしながら、ギア部品におけるクランプは、慎重さを要する作業であって、高価である。 すなわち、各ギア部品をクランプするのは、個別に製造するためだけではなく、工程が複雑であり、汚染しやすく、製品劣化を生じやすいためであり、大量生産には不向きであった。 【0005】また、ギア部品におけるギア(歯型)は、 焼き入れ工程および精密研磨工程を経ているかいないにかかわらず、全ての場合に、ギア部品の周囲において、 良好な円形状に形成することが必要である。 しかしながら、ギア(歯型)の焼き入れ工程および精密研磨工程用機械が備わっていたとしても、中ぐりを、極めて精密な高度でクランプするための高価なクランプ手段が必要となる。 このようなクランプ手段は、通常、シリンダー状の取り付け部分を有し、液力的に移動可能な突起部として設計されている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】このような状況下、本発明は、モーター自動車の伝動ギア部品に関して、合理化可能であり、改良され、しかも極めて簡易に操作することができるとともに、安価なクランプ手段を含む、焼き入れ工程および精密研磨工程用の精密機械工程、およびそのような精密機械を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】そして、上述した課題は、請求項1〜10に記載の精密機械工程および精密機械の構成により達成することができる。 具体的に、請求項1には、前処理して焼き入れされており、シリンダー状のボアを有する伝動ギア部品に対して、機能的表面を形成する(研磨する)ための精密機械工程において、一つまたは同様の伝動ギア部品を、焼き入れ後に研磨機械作業を必要としない表面に取りつけることにより、研磨工程を生じる連続作業によるギア(7)の機械工程と、 中ぐり(8)の機械工程とを同時に実施することを特徴とする精密機械工程が開示されている。 また、請求項2 には、研磨工程を生じる連続作業によるギア(7)の機械工程用の精密機械として、シリンダ−状の研磨ウオームを用いることを特徴とする請求項1に記載の精密機械工程が開示されている。 また、請求項3には、研磨工程を生じる連続作業によるギア(7)の機械工程用の精密機械として、球状の研磨ウオームを用いることを特徴とする請求項1に記載の精密機械工程が開示されている。 また、請求項4には、前処理して焼き入れされており、 シリンダー状のボアを有する伝動ギア部品のワークピースに対して、機能的表面を施すための精密機械であって、第1の前面(19,22)にはドライバー(9)が取り付けられているワークピース用のスピンドル(3) と、第2の前面(18,25)には、カウンターホルダー(10,24)が回転可能に取り付けられているテールストック(16)とを有する精密機械において、当該テールストック(16)は、ワークピース用のスピンドル(3)に対応して移動可能としてあり、ギア部品(6)が、二つの前面の間にクランプされるとともに、 前記ドライバー(9)および/またはカウンターホルダー(10,24)の位置において芯出しして配置され、 当該カウンターホルダー(10,24)は、回転軸に対して、同軸となるような通過型の中ぐり(29,35) を有しており、内側用の機械工具(11)は、ギア部品(6)の中ぐり(8)を形成するための機械装置によって、研磨ウオーム(5)を取り付けるための研磨スピンドルと同様にガイドされており、ギア(7)の機械工程が、中ぐり(8)の機械工程と同時に生じるように構成してあることを特徴とする精密機械が開示されている。 また、請求項5には、前記ワークピースとしてのギア部品(6)のベベル(17,18)をグリップするように、前記前面(18,19)の少なくとも一つが、円錐台形であることを特徴とする請求項4に記載の精密機械が開示されている。 また、請求項6には、前記前面(2 2,25)の少なくとも一つが、平面であることを特徴とする請求項4に記載の精密機械が開示されている。 また、請求項7には、前記第1の前面(19,22)に、 硬質材料が積層してあることを特徴とする請求項4に記載の精密機械が開示されている。 また、請求項8には、 前記第1の前面(19,22)に対する摩擦による係合を介して、ギア部品(6)上に配置されるワークピ−ス用のスピンドル(3)から、回転モーメントを選択的に生じさせることを特徴とする請求項4に記載の精密機械が開示されている。 また、請求項9には、前記通過型の中ぐり(29,35)の直径を、ギア部品(6)の中ぐり(8)の直径よりも大きくしてあることを特徴とする請求項4に記載の精密機械が開示されている。 また、請求項10には、前記ドライバー(9)が、ギア部品(6)の中ぐり(8)の直径よりも大きい直径を有する同軸の末端中ぐり(36)を有していることを特徴とする請求項4に記載の精密機械が開示されている。 【0008】すなわち、本発明によれば、ギア部品におけるギア(歯型)の機械作業と、ギア部品における中ぐりの機械作業とを、同一取り付け位置において、同時に行うことが可能である。 なお、このような機械作業を行うにあたり、ワークピ−スの取り付けにおける設計により、他の適当な工具が自由に適用可能なように、作業する表面を残しておくことが好ましい。 このように機械作業を行うと、製造時間の短縮となるばかりか、ギアにおける中ぐりの円形の機械作業をした場合に、欠点を自然と少なくすることが可能である。 さらに、このように構成して機械作業を行うと、ギア部品の機械工程において、ワークピ−スを取り付けるための高価なクランプ工具や、その後の、ギア部品の研磨による中ぐりの円形の機械作業も不要となる。 【0009】また、本発明の精密機械工程によれば、ディスク状のギア部品による特性上、モーター自動車の伝動機部品に使用することが可能であり、それは、機械工程において、ワークピースを素早く、そして連続的に回転させる必要がある連続研磨工程に適用できることが見出されている。 すなわち、このような回転動作を、公知の方法、例えば、内側研磨やホーニング加工により行う中ぐりの機械作業と、ギア部品の機械作業とにおいて、 同時に使用することができる。 【0010】また、上述したように、現在の実務によれば、焼き入れられたワークピ−スは、ほとんどの場合、 中ぐりの研磨のために、概略形成され、研磨前のギア部品としてクランプされることになる。 これは、主として、製造に伴う技術的理由によるものである。 一方、このようなワークピ−スは、研磨機械に対して、異なる仕様で取り付けることが困難であり、一方、焼き入れ後のギア部品の機械的作業は、煩雑な作業が多く、高価である。 したがって、機械の余計な部分を、出来るだけ減らそうとするものである。 このように小さな機械にもかかわらず、当該小さな機械を用いて全てのギア(歯型)をきれいに研磨するために、前処理されたギア部品について、できるだけ正確な円形に中ぐり作業をする必要がある。 しかしながら、中ぐり作業には、ギア部品のクランプの正確さが影響しており、明らかに限界があるものである。 なぜならば、焼き入れによる変形を避けることができないためである。 また、ギア部品における精密研磨のために、中ぐりにワークピースを極めて正確に取り付けることが叫ばれているものの、ギア部品における生産性が明らかに低下するものである。 【0011】したがって、仮に、ワークピースを、ギア(歯型)の形成作業と、中ぐり作業とを同時に実施できるように取り付けることができれば、機能部品が同時に生産できるとともに、完全に円形に作業することができるため、ワークピースを高度に正確に取り付ける必要がなくなるのである。 【0012】このようなワークピースの取り付けは、中ぐりの両方または片方のベベルと、ワークピースにおける平面または外側表面とが使用されて、接触する芯出し手段により芯出しされるものである。 ここで、中ぐり機械工具の側の少なくとも芯出し手段は、貫通した中ぐりを有しているものである。 また、接触する芯出し手段は、各機械工具(5,11,28)の機械作業を施す作業表面(7,8,27)に対して、自由に接近することを阻害しないように設計してあるものである。 【0013】 【発明の実施形態】以下、本発明の実施形態を、図1〜 4を参照しながら、具体的に説明する。 【0014】図1は、本発明の第1の実施形態を示している。 この実施形態においては、ワークピース用スライド1と、ワークピース用のスピンドル3が設けてあるスピンドルヘッド2と、テールストック用スライド4とを用い、ギア(歯型)を研磨して連続的に作るに際して、 ギア(歯型)7を、ウオーム型研磨ディスク5を用いて研磨して作成するとともに、同時に、中ぐり作業するものである。 このようなワークピース6は、ワークピース用のスピンドル3に取り付けてあるドライバーとして作用する駆動芯出し手段9と、空転状態のテールストックの芯出し手段10との間に取り付けてある。 機械工具1 1、あるいは、ワークピース6の中ぐり8を研磨するための内側研磨用のスピンドル12を動かすため、テールストック用スライド4の上に、供給側スライド14と、 前方向移動用スライド15とからなる面方向移動用スライド13が配置されている。 テールストックの芯出し手段10は、ホルダー16に支持された状態で回転可能に取り付けられており、さらに、テールストック用スライド4の上に強固にねじ止めされている。 【0015】図2は、本発明の実施形態における断面をさらに拡大して示している。 ワークピース6は、二つの芯出し手段9、10を用いて、中ぐりの前面のベベル1 7、18を超えた機械の所定場所に取り付けてある状態を示している。 芯出し手段(アイドラー)9におけるベベル17の反対側表面は、精密ダイヤモンドや、他の硬度材料粒子からなる被覆物で被覆されており、第1の前面を含む支持領域19の範囲内に位置している。 このように構成すると、機械力、特に、ギア(歯型)7を形成するための力を提供するために必要な回転モーメントを、過度な負荷がかかった場合には、スリップ可能な状態として伝動しないことができる一方、それ以外にはワークピース6に伝動することができる。 また、必要な回転モーメントを得るための軸方向押圧力は、芯出し手段10によって、ホルダー16におけるベアリング23を介して適用される。 芯出し手段9のみならず、ホルダー16は、研磨ウオーム5の接触軌跡(コンター)20に接触しないように、その外側に位置するように設計されている。 また、芯出し手段10は、中ぐり35に対して同軸をなしており、さらに芯出し手段9は、もう一方の端部の中ぐり36と同軸をなしている。 両方の中ぐり3 5、36は、わずかに仕上げた状態でのギアであるワークピース6における中ぐり8の直径よりもわずかに大きくしてあることが好ましい。 このように構成することにより、両方の中ぐり35、36の作業が可能となり、結果として、機械工具11の中ぐり35、36に対する内部駆動および外部駆動が可能となる。 【0016】図3は、ワークピ−ス6が、芯出し手段1 0、30により、機械装置の所定場所に取り付けられている状態を示す図である。 図2に示す態様と比較すると、この場合、ワークピ−ス6は、中ぐりのベベルではなく、かわりに、通常、使用可能なカップリングギア2 1により芯出しされて、駆動側の芯出し手段30を介してガイドされており、硬度材料粒子からなる被覆物で被覆されているリング状の前面22により、回転されることになる。 図1および図2に示されるワークピ−スにおいて、テールストック側は、ベベル18によって支持されている。 このベベル18を介して、前面22に対抗して押圧し、ワークピ−ス6を回転するのに必要な軸力が得られる。 【0017】図4は、ワークピ−ス6が、硬度材料粒子からなる被覆物で被覆されているキャリアの表面19により、中ぐり8のベベル17の駆動側において、芯出しされており、ワークピ−ス6は、平面25と、ホルダー16を有してなる、キャリアの表面19に対向するカウンターホルダー24のベアリングによって、テールストック側で支持されている。 【0018】図2〜図4に示すように、ワークピ−スの取り付けには、ワークピ−スに対するベベルに対応した最小限の大きさを必要とするため、芯出しを正確に行うことができるようにしてある。 ただし、一般的に言えば、ベベルの大きさをわずかに大きくすることにより機械作業が容易となる。 なぜならば、中ぐりの端部場所において組み込まれたギア部品に対して、ニードルベアリングが設けられたケージが存在するため、中ぐり壁のこれらの部分が不要となり、結果として、ベベルの大きさをわずかに大きくすることができるためである。 また、 芯出し手段9、10の内側直径は、目的に応じて仕上げされたワークピ−スの中ぐりにおける直径よりも、わずかに大きくしておくことが好ましい。 このように構成すると、内側用の機械工具が、露出しているワークピ−スの内側に入り込むことができるためである。 【0019】また、仮に、ワークピ−ス6(図3および4参照。)に、さらに加工すべき作業表面27である平面がある場合であって、同一取り付け位置において加工作業をする場合には、芯出し手段10,24の外径または内径26,29を、平面用の機械工具28が、作業表面27の機械を隠さないような大きさとすることが好ましい。 このように構成すると、例えば、図3に示す他の例では、研磨ウオーム5に対して、機械工具28の位置を、周囲方向において変えることが可能となる。 すなわち、このように構成することにより、さらなる加工作業を、上述した機械作業と同時に行うことが可能となる。 さらに、対応する可能な構成において、例えば、平板状のディスクに対して、付加的な研磨スピンドルを設けることも好ましい。 このように構成すると、他の二つの機械作業と同時に、研磨スピンドルを用いた機械作業を行うことも可能である。 したがって、ワークピ−スにおける機能表面に対して、正確な円方向の機械作業と、平面方向との機械作業がそれぞれ可能となる。 【0020】 【発明の効果】本発明によれば、ギア部品におけるギア(歯型)の機械作業と、ギア部品における中ぐりの機械作業とを、同一取り付け位置において、同時に行うことが可能となった。 したがって、モーター自動車の伝動ギア部品に関して、合理化可能であり、改良され、しかも極めて簡易に操作することができ、安価なクランプ手段を含む精密機械工程、およびそのような精密機械を提供することができるようになった。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の精密機械工程に使用される機械要素の構成例を示す図である。 【図2】図1に示される構成例の拡大図である。 【図3】平面側の支持部によりワークピ−スが取り付けられた状態であって、中ぐりのベベルにより芯出しをした状態を示す図である。 【図4】図3と類似の構成を示す図であるが、芯出し手段を交換した構成の図である。 【符号の説明】 3 スピンドル 5 研磨ウオーム 6 ギア部品 7 ギア(歯型) 8 中ぐり 9 ドライバー 10,24 カウンターホルダー(芯出し手段) 11 内側用の精密機械 16 テールストックまたはテールストック用ホルダー 17,18 ベベル 18,25 第2の前面(ベベルを含む。) 19,22 第1の前面(支持領域) 23 ベアリング 27 作業表面 28 機械工具 29 中ぐり 35 中ぐり |