Method of manufacturing a heat-resistant metal fiber sintered body

申请号 JP24109496 申请日 1996-08-23 公开(公告)号 JP3687215B2 公开(公告)日 2005-08-24
申请人 新東工業株式会社; 发明人 紀一 中島; 正人 今村; 正生 兼子; 章 柳沢;
摘要
权利要求
  • 次の工程からなることを特徴とする耐熱金属繊維焼結体 の製造方法
    (1)Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の薄板を巻いたコイル材の端面を旋削することによってFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束を作る。
    (2)Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束をロール式切断アッセンブリにより幅方向に展張しつつ切断することによりFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維を作る。
    (3)ロール式切断アッセンブリを通過直後のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維に落下方向と交差する方向から気流を作用させることによりコンベア上に分散落下させてシート状繊維堆積物を作り、このシート状繊維堆積物をコンベアで移送し、コンベア出口側に設けた加圧ロールにより圧縮してウエブを作る。
    (4)前記ウエブを焼結する。
  • 次の工程からなることを特徴とする耐熱金属繊維焼結体 の製造方法
    (1)Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の薄板を巻いたコイル材の端面を旋削することによってFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束を作る。
    (2)Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束をロール式切断アッセンブリにより幅方向に展張しつつ切断することによりFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維を作る。
    (3)ロール式切断アッセンブリを通過直後のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維に落下方向と交差する方向から気流を作用させることによりコンベア上に分散落下させてシート状繊維堆積物を作り、このシート状繊維堆積物をコンベアで移送し、コンベア出口側に設けた加圧ロールにより圧縮してウエブを作る。
    (4)前記ウエブを焼結して平坦状の焼結体を作り、ついで、この平坦状の焼結体を一対の歯形ロール間に通すことにより波状の凹凸を成形する。
  • ロール式切断アッセンブリが、少なくとも2基、コンベアの進行方向で直列状に配置され、それら各ロール式切断アッセンブリA,Aに所要本数ずつFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束が送りこまれて引ちぎり切断され、最上流のシート状繊維堆積物の上に、それより下流のロール式切断アッセンブリからのFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維が分散堆積されるものを含む 請求項1または請求項2に記載の耐熱金属繊維焼結体 の製造方法
  • ロール式切断アッセンブリが、連続繊維束の束軸方向と交差し連続繊維束を前後から挟む対ロールからなる少なくとも3段のロールを備え、第2段ロール 第1段ロールよりも相対的に早い回転速度で回転さ ることにより連続繊維束 引き伸ば 、その下流で第3段ロール 第2段ロールよりも相対的に早い回転速度で回転さ ることにより連続繊維束 強制的に引きちぎり切断 して多数のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の長繊維 同時製造され、そのFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の長繊維群 最下流のロールとコンベアの間に設けられている送風手段によ 落下方向と交差する方向からの気流 分散さ 、コンベア上に分散落下 させる請求項1または請求項2に記載の耐熱金属繊維焼結体 の製造方法
  • 少なくとも第2段ロールと第3段ロールが表面に歯のついた歯形ロールからなっている 請求項4に記載の耐熱金属繊維焼結体 の製造方法
  • Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束をロール式切断アッセンブリにより幅方向に展張しつつ切断することにより作られるFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維が、重量比でCr:17〜21%、Al:2.5〜6.5%、REM:0.02〜0.25%残部鉄および不可避的不純物の組成を有し、幅10〜170μm、厚さ7.5〜180μmの長繊維である 請求項1または請求項2に記載の耐熱金属繊維焼結体 の製造方法
  • Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維の組成が、重量比でC:0.008%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Cr:19.0〜21.0%、Al:4.5〜6.0%、REM:0.06〜0.12%残部鉄および不可避的不純物である 請求項1または請求項2に記載の耐熱金属繊維焼結体 の製造方法。
  • Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の薄板を巻いたコイル材の端面を5μm/revを超える工具送り量で旋削する 請求項1または請求項2のいずれかに記載の耐熱金属繊維焼結体の製造方法
  • 10〜40μm/revの工具送り量で旋削する 請求項8に記載の耐熱金属繊維焼結体 の製造方法
  • 说明书全文

    【0001】
    【発明の属する技術分野】
    本発明は金属繊維焼結体とりわけ高温耐久性を備えた金属繊維焼結体の製造方法に関するものである。
    【0002】
    【従来の技術】
    金属繊維焼結体は、所定の長さの金属繊維(工業的には伸線法により製造されることが多い)を集積したウエブを、加熱焼結することで作られている。
    こうした金属繊維焼結体は種々の用途に使用されているが、なかでも、ステンレス鋼繊維焼結体はすぐれた耐食性を備えているため、フィルタなど多くの用途に使用されている。 特に最近では、環境保全の要求に加えて、省エネルギー対策(熱効率の向上)として高温領域での多孔体の利用が要求されてきており、この分野でもステンレス鋼繊維焼結体が用いられつつある。
    しかし、従来のステンレス鋼繊維焼結体は材質的にSUS304やSUS316であったため、使用可能温度はせいぜい約500℃が限界であり、いまだ耐熱性に劣るという問題があった。
    この対策として、セラミック圧粉焼結体が用いられているが、耐熱性は優れているものの機械的強度が低く、脆く、しかもコストが高いなどの欠点があるため、実用性が乏しかった。
    【0003】
    【発明が解決しようとする課題】
    本発明は前記のような問題点を解消するために創案されたもので、その第1の目的は、500℃〜1000℃の高温大気雰囲気条件下で良好かつ安定した機械的性質を備えた耐熱金属繊維焼結体を安価に量産することができる方法を提供することにある。
    また、本発明の第2の目的は、第1の目的に加え、曲げ加工による損傷が少なく、用途に適した所望の形状に加工することができ、しかも表面積が大きく、また、外によく耐え、高温加熱時の変形が少ない耐熱金属繊維焼結体を安価に量産することができる方法を提供することにある。
    【0004】
    【課題を解決するための手段】
    上記第1の目的を達成するための本発明による耐熱金属繊維焼結体の製造方法は、次の工程からなることを特徴としている。
    (1)Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の薄板を巻いたコイル材の端面を旋削することによってFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束を作る。
    (2)Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束をロール式切断アッセンブリにより幅方向に展張しつつ切断することによりFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維を作る。
    (3)ロール式切断アッセンブリを通過直後のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維に落下方向と交差する方向から気流を作用させることによりコンベア上に分散落下させてシート状繊維堆積物を作り、このシート状繊維堆積物をコンベアで移送し、コンベア出口側に設けた加圧ロールにより圧縮してウエブを作る。
    (4)前記ウエブを焼結する。
    【0005】
    また、第2の目的を達成するための繊維焼結体の製造法は、ウエブを焼結して平坦状の焼結体を作り、ついで、さらにこの平坦状の焼結体を一対の歯形ロール間に通すことにより波状の凹凸を成形する工程を付加したことを特徴としている。
    【0006】
    本発明におけるFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の繊維は、好ましくは、成分組成が重量比でCr:17〜21%、Al:2.5〜6.5%、REM:0.02〜0.25%を有している。
    より好ましい組成は、C:0.008%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Cr:19.0〜21.0%、Al:4.5〜6.0%、REM:0.06〜0.12%残部鉄および不可避的不純物である。
    【0007】
    さらに、上記Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維は、5μm/revを越える工具送り量、好適には10〜40μm/revの工具送り量でFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の薄板を巻いたコイル材の端面を旋削して作られたもので、長手方向と直の断面が矩形状ないしこれに類する形状を有し、幅10〜170μm、厚さ7.5〜180μmの箔状のものが好適である。
    【0008】
    本発明による耐熱金属繊維焼結体はFe−Cr−Al系ステンレス鋼の繊維からなつているため、高温大気中において表面がクロム酸化物Cr やアルミナAl によりコーティングされる。
    すなわち、700℃以下の温度では2(Fe,Cr,Al)+4.5O →Fe +Cr +Al
    の反応により、
    また700℃以上の温度では、
    Fe +2Al→Al +2Fe
    の反応によりそれぞれ耐久性被膜が生成する。
    しかも、組成としてREM(La,Y,Ceなどの希土類元素)が添加されているため、繊維幅(コイル材の板厚に対応)が1mm以下という微小なものであっても、高温でのアルミナ皮膜の安定性が向上させられる。 しかも繊維は厚さ一定のコイル材の端面を旋削して作られていることから、形状、寸法も揃っており、個体差の少ない金属繊維焼結体とすることができる。
    したがって、本発明の耐熱金属繊維焼結体によれば、500℃以上、約1000℃までの高温大気雰囲気で良好な多孔性と構機械的特性を発揮することができる。
    【0009】
    しかも、本発明の耐熱金属繊維焼結体は、優れた導電性を有しているため、高温保持のための特別な熱源を要さず、直接通電するだけでそれ自体の発熱により高温保持を行うことができる利点がある。
    特に成分組成を上記のような範囲にした場合には、耐熱皮膜を確実、安定なものとすることができる。 さらに、5μm/revを超える工具送り量で端面旋削した場合には、工具送り量に対する繊維幅の増加比を小さくすることができるため、引張り強度のすぐれたFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維となり、これを使用することにより強度のすぐれた耐熱金属繊維焼結体とすることができる。
    【0010】
    本発明による耐熱金属繊維焼結体は、上記のような高温でのすぐれた各種特性から下記のような用途に使用することができる。
    1)濾過(フィルタ)用の材料や製品すなわち、圧縮空気や各種ガスの濾過用部材、蒸気の濾過用部材、液体(たとえば、水溶液、電解液、油類、合成樹脂溶解物、金属溶融物)の濾過用部材など。
    2)分離、濃縮用の材料や製品すなわち、気体(たとえば混合気体やガス同位体)の分離・濃縮用部材、たとえば逆浸透法等による液体の分離・濃縮用部材など。
    3)通気用の材料や製品すなわち、粉粒体輸送基盤、エアレーション(散気管)、エアロール、エアベアリングで代表される気体の吹込用部材、通気材、ベント材、真空リーク弁、真空チャック、通気性金型、耐久鋳型で代表される気体の逃がし用部材、流体噴射電極、砥粒混合スラリー噴出用定盤で代表される液体の噴出用部材など。
    4)衝撃吸収用の材料や製品、すなわち空圧機械の消音・吸音材用部材、圧縮ガスの脈動防止のための干渉材用部材、防振材、圧縮弾性体、反応触媒のパック材やシール材、ショックアブソーバなど。
    5)高比表面積を利用した材料や製品すなわち、触媒や触媒担体で代表される化学反応用部材、センサ、もしくは電池電極材、吸着材、消炎材などの熱伝導材、熱交換機エレメント、発熱体など。
    6)毛細管現象を利用する材料や製品、すなわち、炎芯、吸水ローラなどの液体の移送用部材、発汗冷却材あるいは加湿機などで代表される液体の供給用部材、ミストオイラー、インクローラ、軸受など。
    7)流れ制御用の材料や製品すなわち、分流板、分散板など、あるいは気体境界層の制御用部材など。
    なお、以下に本発明の代表的な実施態様を説明するが、当業者は本発明の範囲から逸脱することなしに種々の変更ならびに修正が可能となることは明らかである。
    【0011】
    【発明の実施の形態】
    図1ないし図3は本発明による耐熱金属繊維焼結体の例を示しており、図4と図5は本発明による耐熱金属繊維焼結体を部分的に拡大したものを示している。
    符号1は耐熱金属繊維焼結体である。 図1は平板状ないしブロック状としたもの、図2は厚さ方向で波状の凹凸1a,1bを連続形成して波板としたものを示している。
    図3は筒状としたものを示している。 これはウエブの状態で筒とし焼結したものと、図1や図2の形状の焼結板を丸めて端部を接合したもののいずれをも含んでいる。
    もとよりこれら耐熱金属繊維焼結体1の形状はあくまでも例であってこれらに限定されるものではない。 符号10は耐熱金属繊維焼結体を構成するFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10であり、各繊維は接触部が接合されている。
    図4は後述する直線状のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10を用いた場合を示しており、図5は後述する異形状のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10を用いた場合を示している。 後者の場合は、繊維同士の立体的な絡み合いが強くなっている。
    【0012】
    いずれのFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10も、前述のような耐熱皮膜の生成による耐熱メカニズムを発揮させるため、成分組成として、Cr:17.0〜21.0wt%、Al:2.5〜6.0wt%を含有し、さらにREM:0.02〜0.25wt%を含有している。
    CrとAlが下限を下回る含有量では耐熱皮膜の形成が不十分となり、上限を超えた含有量ではステンレス鋼組織の結晶構造が不安定になる。 REMとしてはLa,Y,Ceの1種または2種以上が用いられる。 下限を下回る添加量では酸化皮膜の安定性を向上することができず、上限を超える添加量は経済性を損なうため不適当である。
    代表的なそして好ましい成分組成例としては、重量比で、C:0.008%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Cr:19.0〜21.0%、Al:4.5〜6.0%、REM:0.06〜0.12%残部鉄および不可避的不純物である。
    【0013】
    図6は本発明のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10の一例を示しており、図7は本発明のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10の他の好適な例を示している。 図6においては、Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10はほぼ直線状となっており、図7においては、Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10は繊維厚さ方向で凹凸10a,10bが繰り返された波状となっている。 波は台形状とは限られず、円弧状となっていてもよい。 また場合によっては波は繊維幅方向に形成されていてもよい。 このような波状のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10は、表面積が大きくなる利点のほか、凹凸10a,10bの存在により繊維同士が絡みやすくなるため、目付密度が高く、目付分布のバラツキの少ないウエブを形成できる利点がある。
    【0014】
    いずれの繊維形状の場合も、繊維軸方向と直角の断面形状は、図8のように四角形に類した断面形状となっており、厚さ方向の一面(後述する自由生成面)101は比較的凹凸の激しい粗面となつており、これにより表面積が増加されている。
    Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10は高温での良好な機械的特性を得るため、幅W:10〜170μm、厚さt:7.5〜180μmの範囲(円換算直径では10〜100μm)にある。 また、長さは繊維の絡み合いをよくするため、20〜200mmのいわゆる長繊維が適している。 アスペクト比が50〜100の短繊維では繊維の絡み合いが乏しいため適当とは言えないからである。
    【0015】
    本発明の耐熱金属繊維焼結体1は、かかるFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10をランダム、多層クロスなど所望の配向で集積させて目付量150〜4000g/m のウエブとし、そのこのウェブを真空あるいは不活性雰囲気中で最高温度900〜1300℃にて10分〜10時間加熱することで造られたものである。 なお、焼結時に密度向上のため荷重を負荷してもよい。 本発明はさらに、焼結後、大気雰囲気中で温度600〜1100℃で2〜10時間加熱処理して最終製品としたものを含んでいる。
    【0016】
    本発明の耐熱金属繊維焼結体1の製造工程を説明する。
    図9はFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10の第1の製造工程を示しており、板厚がたとえば10〜150μmから選ばれたFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の薄板(箔)110を旋削主軸12にコイル状にタイトに巻回し、得られたコイル材11の端面に切削工具13の刃先を接触させ、その切削工具13に旋削主軸12と平行な送りを与えつつ旋削主軸12を回転させるものである。
    これにより、多層に巻かれているFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼薄板110の各板厚分の層が切削工具13により同時旋削される。 このため、三次元的に適度にカールしたFe−Cr−Al−REM系ステンレスの連続繊維束10'が工具すくい面に沿って後方にとぎれなく流出する。 この連続繊維束10'を幅方向に展張し、所要長さに切断することで図6のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10が得られる。
    【0017】
    一般に金属材料の繊維化には、引抜き法、溶融紡糸法がある。 引抜き法は直径が小さく寸法の揃った繊維が製造できるが、コストが高いのが致命的な問題である。 また、溶融紡糸法は適応材料が限定され、しかも設備コストと製造コストが高くなる。 また、切削法として線材を切削する方法では繊維形状は特定ができないし歩留りも悪い。 びびり振動切削法も知られているが、短繊維しか製造することができないため適切ではない。 本発明で採用したコイル材端面切削法はこうした繊維化方法に対して生産性、繊維の均一性、コストの面などから優れている。
    【0018】
    前記図9の工程において、Fe−Cr−Al−REM系ステンレス薄板110の厚さと切込み(工具送り量)を変化させることで様々な寸法の繊維を製造することができる。 すなわち、本発明のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10は、図8に示す繊維幅WがFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼薄板110の板厚に一致し、繊維厚さtが工具送り量sによって決定されるからである。
    上記繊維製造条件は、具体的には、工具すくい角:150〜45°、切削速度:30〜95m/min、工具送り量(s):5〜40μm/minから選択すればよい。 このうち最も重要なパラメータは工具送り量sである。 これは工具送り量sが繊維の厚さそしてひいては強度に影響を及ぼすからである。
    すなわち、工具送り量sに対する繊維厚さtの割合(t/s)を繊維厚さ増加比というが、工具送り量が一定以下、ことに5μm以下と小さい場合には繊維厚さ増加比が極端に大きくなる傾向を示す。 この繊維厚さ増加比が大きいことは、加工時の素材変形が大きいことであり、このため繊維の自由生成面101に切欠きが発生して繊維の強度低下を招きやすい。 また、繊維厚さを薄くできないため気孔率および表面積の大きな繊維焼結体が得られなくなる。 したがって、工具送り量sは5μm/revを超える値とすべきであり、工業的には8μm/rev以上である。
    【0019】
    なお、Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10は一本一本が独立していることが好ましい。 この対策としては、前記旋削時に繊維同士の凝着を防止することが適当である。 この方法としては、旋削主軸へ巻き付ける以前に、Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼薄板110の表面にポリビニールアルコール、ポリアクリル酸などで代表される水溶性樹脂により皮膜を施し、その皮膜を乾燥固化させて複合薄板としたものを使用することが好適である。 この場合には、端面旋削により得られたFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束10'を溶解液に浸漬して水溶性樹脂皮膜を溶解除去し、その後、所要長さに切断し、ウェブ化すればよい。
    【0020】
    次の工程として、Fe−Cr−Al−REM系ステンレスの連続繊維束10'を切断してFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10を作り、それを集積してシート状ないしブロック状のウエブを得る。 このウエブの作成は、従来採用されている乾式法や湿式法では、長繊維を刃物で切断する工程と、その切断した繊維を分散し堆積させる工程が分離独立していること、刃物の摩耗がつきまとうこと、しかも繊維を分散する工程が大掛りであることなどにより、設備コストおよび金属繊維シート製造コストが高くなり、また装置も大型となるという問題がある。
    そこで本発明においてはロール切断とエアブローを併用した新方式を用いて繊維切断−ウエブ化の連続化を図っている。
    【0021】
    図10と図11はこの方式を示しており、連続繊維束10'の束軸方向と交差する方向にロール式切断アッセンブリAを配している。 ロール式切断アッセンブリAの下方にはこれと交差する方向にコンベア5が配置されており、そのコンベア5の出口側の端にはウエブ化手段6が配置されている。 ウエブ化手段6はこの例では上下一対の加圧ロールが用いられている。 そして、コンベア5と第3ロール4の間にはブロワで代表される送風手段7が配置されている。
    送風手段7は送風口がコンベア5の進行方向と同じ方向に向いている。 8は気流が効果的に作用するように送風手段7に対峙させた衝突板であり、ステンレス鋼長繊維10を挟んで反対側に配されている。
    この例では、ロール式切断アッセンブリAを2基並列状に配置し、さらに、コンベア5の移動方向の前後でも2基ずつ配している。
    【0022】
    ロール式切断アッセンブリAは、少なくとも3段のロール群からなっている。
    たとえば第1段ロール2と、これより下流に配した第2段ロール3および第3段ロール4からなっている。 それら各段ロールは連続繊維束10'を束軸と交差する方向で前後から挟持するように対峙する少なくともひと組の対ロールから構成されている。 それら各ロールは端部が図示しないが架台に支持されている。
    第1段ロール2は第2段ロール3と協働して繊維束を展張するためのものであり、この例では、対をなす駆動ロール2aと従動ロール2bの2組からなっている。 第1段ロール2は繊維幅の小さい場合にも繊維束の展張をよくするため、さらに1組以上の駆動ロール2aと従動ロール2bが追加されていてもよい。 しかし繊維幅が広いものである場合には第1段ロール2は逆に1組の駆動ロール2aと従動ロール2bだけで構成されていてもよい。 この場合、従動ロールは駆動ロール2aの円弧の異なる部分に当接可能な2本のロールであってもよい。
    【0023】
    第2段ロール3と第3段ロール4は、協働して繊維束を切断するためのもので、それぞれ1本の駆動ロール3a,4aとこれと対をなす1本の従動ロール3b,4bからなっている。
    前記駆動ロール2a,3a,4aと従動ロール2b,3b,4bは表面が滑らかな円柱状のものでもよい。 しかし、好ましくは、少なくとも第2段ロール3と第3段ロール4の駆動ロール3a,4aと従動ロール3b,4bは、図12のように相互に噛みあい可能な歯部30,40が形成されている歯車ロールないし歯形ロールが好適である。
    それは、連続繊維束10'を確実にグリップし、後述するロール軸間距離で切断するためである。 さらにこれに加え、切断時に歯部30,40の噛みあい隙間にステンレス鋼長繊維10が挟まれることにより凹凸10a,10bが連続して加工され、図7のような波状のステンレス鋼長繊維10を得ることができるからである。 歯部30,40はあまり過度に大きな凹凸を付けると繊維を損傷するおそれがあるため、モジュールは適当な範囲たとえば、1〜3程度から適宜選択される。 なお、図示するものでは第1段ロール2は平滑なロールであるが、繊維幅が小さい場合には第1段ロール2も表面に歯部を有する歯形ロールとしてもよいことはもちろんである。
    【0024】
    繊維束切断−ウエブ化にあたっては、図9の装置で製造されたFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束10'は、図示しない巻取りロールから、あるいは図9の繊維製造装置から直接複数束が平行状に第1段ロール2に導かれ、順次下流のロール間に通される。 この状態で、第2段ロール3の回転速度を第1段ロール2の回転速度よりも相対的に早くする。 これによりFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束10'は引き伸ばされる。 その下流では、第3段ロール4を第2段ロール3の回転速度よりも相対的に早い回転速度で回転させる。 これにより展張されたFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束10'は強制的に引きちぎり切断され、所定長さのFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10が同時に多量にかつ連続的に作られる。 それらFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維群は第3段ロール4の下方で移動しているコンベア5上に分散落下させられる。
    そして、そのコンベア5に落下中のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10には、その流れ方向と直角方向から図11のように送風手段7から気流が吹き付けられる。 送風手段7の風量は一般に0.5〜2.0Nm /secから選択すればよい。 これによりFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10は分散してコンベア5に堆積されながら移動される。 そしてコンベア前方のウエブ化手段6によって圧縮される。
    【0025】
    上記第1段ロール2と第2段ロール3と第3段ロール4の回転速度は、第1段ロール2の回転速度V 、第2段ロール3の回転速度V 、第3段ロールの回転速度V の関係が、V :V を1:(1.5〜5)とし、V :V を1:(5〜25)とすることが好ましい。
    第2段ロール3の回転速度比の下限を1.5としたのは、これを下回る速度比ではFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束10'を十分に引き伸ばし、あるいはさらに部分的に切断する効果が得られないからであり、速度比の上限を5にしたのは、これ以上の回転速度差があるとFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束10'がほとんど引きちぎられてしまい、第3段ロール4に受け渡されなくなってしまうからである。
    また、第2段ロール3に対する第3段ロール4の速度比の下限を5としたのは、これ以下では完全な引きちぎり切断を行えないからであり、速度比の上限を25としたのは、あまり引きちぎり速度が大きいと、切断されたFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維10が飛散し過ぎてコンベア5に所期する目付量で堆積しなくなったり、ロールに巻き付いてしまったりするからである。
    なお、第1段ロール2が複数組からなっている場合、それら各組のロールは同等の回転速度であってもよいし、下流側のロールほど適度に速度が早くなっていてもよい。 たとえば、上流のロールの回転速度に対して下流のロールの回転速度を適宜5〜30%程度増加すればよい。 前記第1段ロールの回転速度V は下流のロールのそれを基準としたものである。
    【0026】
    第1段ロール2と第2段ロール3との回転速度比により第1段ロール2がピンチロールとして作用するためFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束10'は第1段ロール2でクランプされ、第2段ロール3の相対的に早い回転により第1段ロール2と第2段ロール3間で軸方向に適度に引き延ばされる。
    第1段ロール2が複数組からなっていて相対的に速度差がある場合、連続繊維束10'はここでも徐々に少しずつ引き延ばされる。
    次いでFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束10'は第2段ロール3から第3段ロール4に送られるが、第2段ロール3と第3段ロール4の回転速度比は著しく異なる。 このため、この段階では第2段ロール3がピンチロールとして働いてFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼連続繊維束10'をクランプし、回転の早い第3段ロール4が前記連続繊維束10'を強力に引っ張る。 このため、第1段で引き延ばされた状態のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼連続繊維束10'は衝撃的な引張りを受けて強制的に引きちぎられる。
    第1段ロール2と第2段ロール3との回転速度比は比較的小さいため、Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼連続繊維束10'はカールが伸ばされたり、脆弱部分にクラックが入れられなど強度低下が促進されるため、第3段ロール4により確実に、均一的切断が図られる。
    切断繊維長さは、基本的には第2段ロール3と第3段ロール4の軸間距離Lであり、この距離Lを設定することにより、Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維は、20mm程度の比較的短い寸法のものから100mmを越える比較的長い寸法のものまで自在に得ることができる。
    【0027】
    前記のように切断されたFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維群は第3段ロール4の早い回転による遠心力で分散されつつ自由落下するため、ランダムな配向でシート状繊維堆積物100としてコンベア5にばらまかれる。
    しかも、前記第3段ロール4とコンベア5の間に設けられている送風手段7を作動させれば、Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10は落下方向と交差する方向からの気流を受けて分散され、かつ前方に飛ばされて衝突板8に当たったのち自由落下するため、均一分散される。
    ロールとして図12のような歯車ロールを使用したときには、図7のような連続した凹凸10a,10bを持つFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10が第3段ロール4から落下してエアブローによりコンベア5にばらまかれる。 このため凹凸10a,10bにより繊維同士がよく絡み合い、密度の高いシート状繊維堆積物100となる。 それとともにシート状繊維堆積物100の両サイドの薄層化が抑制される。 このため、表面の平滑なロールを用いた場合に比べて目付分布のバラツキをすくなくとも±5%以上さらには±10%程度も少なくすることができる。 たとえば、平滑なロールを使用した場合に20%の目付バラツキがあったときには、歯形ロールの使用によりバラツキを10%にすることができ、目付分布の精度を高いものとすることができる。
    【0028】
    前記シート状繊維堆積物100の厚さはコンベア5の移動速度により任意に調整され、コンベア5の出口に到ったところでウエブ化手段6としての加圧ロールで厚さ方向で圧縮されてウエブ1'となる。 このウエブ1'は適宜巻取りロールに巻かれ、これから繰り出されて切断され、あるいは切断加工後所望形状に加工される。 そして焼結炉に装入され無荷重でまたは荷重を負荷されながら加熱焼結される。 あるいはまた、ウエブ化手段6の下流に直結した連続焼結装置たとえばトンネル焼結炉あるいは直接通電式抵抗加熱装置に装入されることで長い連続ウエブとして焼結される。 直接通電式抵抗加熱装置はFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10が導電性を有している利点を生かすことができる。
    【0029】
    なお、図11のように、前記ロール式切断アッセンブリA,Aをコンベア送り方向で少なくとも2基直列状に配置したときには、各切断アッセンブリA,Aに所要本数ずつFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束10',10'が送りこまれて引ちぎり切断され、コンベア5上に分散落下させられる。 それにより、最上流のシート状繊維堆積物100の上に、それよりも下流の切断アッセンブリAで造られたFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維群が分散堆積されるため、目付量の多いウエブを能率よく得ることができる。
    上記のような繊維製造法とウエブ化法を採用したときには、Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の薄板から一貫連続して能率よく、また安価にランダム配向のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維ウェブを作成することができ、このウエブをそのままあるいは切断して焼結炉に装入することにより高温特性の優れた耐熱金属繊維焼結体を安価に量産することができる。
    【0030】
    なお、図2のような厚さ方向で波状の凹凸1a,1bが連続して形成されたコルゲート状の耐熱金属繊維焼結体1を得るには、図13のように一対の歯車状成形ロール9,9を用い、図1のような平板状の耐熱金属繊維焼結体1を前記歯車状成形ロール9,9に通せばよく、これにより凹凸1a,1bが形成される。 歯車の歯はインボリュート歯車のような歯にエッジがあるものでなく、曲率のある丸歯が好ましい。 前記加工は冷間で行なってもよいし、温間で行なってもよい。
    いずれにしても、本発明の耐熱金属繊維焼結体1は、Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の薄板110のコイル材11を端面切削して長繊維とし、これをウエブにし焼結したものであるから、大気雰囲気下で高温加熱することにより安定な耐久性酸化被膜が生成され、1000℃以下の高温度範囲で十分に耐久性が維持される。
    【0031】
    【実施例】
    実施例1.
    1)本発明を適用して幅300mm×長さ500mmのフィルタ用繊維焼結体を得た。 厚さは0.7mm〜2.0mmの範囲のものを各種作った。
    該焼結体の材料としては下記の成分組成(wt%)のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼薄板を使用した。
    C:0.004%、Si:0.14%、Mn:0.13%、Cr:20.02%、Al:4.9%、La:0.08%残部鉄及び不可避的不純物。
    【0032】
    2)Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼薄板は板厚が10μm、15μm、20μm、25μm、35μm、50μmと135μmの7種を使用した。 板厚50μmの薄板は未焼鈍材である。 母材の引張り強度は、板厚50μmの場合、これが未焼鈍材であるため、クロスヘッド速度に応じて875〜1056MPaとなり、板厚135μmの場合には600Mpaと略一定であった。
    薄板はそれぞれ旋削主軸にタイトに巻き付けてコイル材とし、その端面をバイト(カッター)で連続旋削して繊維化を行なった。
    得られたFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束を切断してFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維を得しめ、これを集積して目付量1200g/m のウエブを作成し、不活性ガスにより分圧を制御した真空雰囲気中で、1120〜1160℃、2時間の条件で焼結してステンレス鋼繊維焼結体を得た。
    2)Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束の切断と目付およびウエブ化は、ロール切断エアレーション方式で行なった。 Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼連続繊維束は2本とし、ロール間隔を80mmとした。
    【0033】
    板厚50μmと135μmの薄板を原料として作ったFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束の切断−ウエブ化には、ロール式切断アッセンブリとして、それぞれ径が70mmで表面が平滑な駆動および従動ロールを使用した。 第1段ロールは2組のロールを上流と下流に配し、上流のロールの回転数を23rpm、下流のロールの回転数を28rpmとした。 第2段ロールは回転数を56rpm、第3段ロールは回転数を580rpmとし、第2段ロールと第3段ロールの距離Lを80mmに設定し、ベルトコンベアの速度を1〜6m/minの範囲で調整し、ベルトコンベアの出口側に加圧ロールを設置した。 エアは吹出し口面積33cm のブロワーから風量0.9Nm /secで吹き付けた。
    その結果、繊維長がほぼ90mmのFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維が第3ロールからランダムな配向に分散され、幅方向で目付量のほぼ均一なウエブが得られた。 一定厚さ(結果として、繊維幅に相当する)の薄板コイル材を一定の送り(結果として、繊維厚さに相当する)で削るため、ステンレス鋼長繊維は、図8に示された長手方向と直角の断面が長方形に類する形状をもち、全体形状が図6に示す直線状のものであった。
    【0034】
    3)また、板厚10μm、15μm、20μm、25μmおよび35μmの薄板を原料として作ったFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束の切断−ウエブ化には、ロール式切断アッセンブリとして、それぞれ駆動および従動ロールとしてそれぞれロール径が30mmのものを使用した。 第1段ロールは2組の対ロールを上流と下流に配した。 それら第1段ロールと第2段ロールおよび第3段ロールには外周にモジュール2の歯形を設けた歯形ロールを使用し、第2ロールと第3ロールの軸間距離を45mmに設定した。
    回転数とコンベア速度は上記条件で行なった。
    その結果、繊維長が40mm以下の、断面が長方形状で、かつ図7のように高さ2mmの台形に類する凹凸が交互に繰り返された形状のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維が第3段ロールからランダムな配向に分散され、目付分布が非常に均一なウエブが得られた。 これはステンレス鋼長繊維の凹凸により絡みやすくなったためである。
    【0035】
    4)製造した繊維の寸法を測定後、引張強度測定を行った。
    図14は薄板板厚が50μmの場合に、工具送り量を変化させて製造した繊維厚さの変化を測定した結果を示す。 図15は同じく薄板板厚135μmの場合において、工具送り量を変化させて製造した繊維厚さの変化を測定した結果を示す。 工具送り量に対する繊維厚さの割合(繊維厚さt/工具送り量s)を増加比とし、50μm未満の繊維を含めて実験値をまとめて図16に示す。
    繊維厚さは工具送り量に比例していると考えられたが、工具送り量が一定以下になると増加する傾向を示した。 すなわち、図16から明らかなように、工具送り量が15μm/rev以上の時には、増加比は2.0〜1.0と安定した値を示しているが、工具送り量がそれより小さくなると増加比が急激に大きくなり、工具送り量が5μm/revと小さい場合には、増加比が極端に大きくなっている。
    このように工具送り量が小さくなると増加比が大きくなった理由としては、工具送り量により被削材に接する工具の接触部分が変化するため、工具刃先の丸み(刃先角)の影響が大きく現われ、刃先に対する接触面積が多くなり、実せん断角が小さくなったためと考えられる。
    【0036】
    製造されたFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維は、薄板板厚50μm、工具送り量10μm/revの場合、繊維厚さは平均で16μm(円換算直径34μm)であった。 また同様に薄板板厚135μm、工具送り量10μm/revの場合には、繊維厚さは平均で24μm(円換算直径70μm)であった。 また、薄板板厚15μm、工具送り量10μm/revの場合、繊維厚さは平均で13μm(円換算直径16μm)であった。
    【0037】
    5)次に、板厚50μmの薄板を工具送り量10μm/rev,20μm/rev,30μm/revで端面旋削して製造した三種のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維の伸びと引張り強度を図17と図18に示す。
    クロスヘッド速度すなわち引張り試験時のホルダーの移動速度が5mm/minの場合、工具送り量20μm/revで製造したFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維は引張強度が995MPa,工具送り量30μm/revの場合には942MPaであり、母材なみの引張強度が得られた。 工具送り量10μm/revで製造したFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維は引張強度759MPaであり、母材に比べ約300MPa低くなったが、この強度でも十分使用可能である。
    【0038】
    6)次に本発明によるFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維焼結体の伸びと引張り強度を測定した結果を図19と図20に示す。 このステンレス鋼繊維焼結体の厚さは0.7mmである。
    図19は薄板板厚50μm,工具送り量10μmの条件で製造したFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維を用いた場合を示しており、図20は薄板板厚135μm、工具送り量10μmの条件で製造したFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維を用いた場合を示している。
    前者の焼結体の場合、空孔率が約78%であるため、母材の引張り強度1056MPa(クロスヘッド速度5mm/minの場合)に対して焼結体の引張り強度は27MPaであり、後者の場合、空孔率が約84%であるため引張り強度は6〜7MPaである。
    これは、本発明のステンレス鋼繊維焼結体も多孔質焼結体と同様に強度が空孔率に依存されるため、見掛け上、低い値を示したものと考えられる。 これは測定値を空孔率ゼロに延長した基地の引張り強度データがSUS316、SUS304などと比較してほぼ同一範囲内にあったことにより確認された。
    【0039】
    7)次に、本発明によるステンレス鋼繊維焼結体の使用可能温度範囲を確認する実験を行なった。 これは、薄板板厚50μm、送り10μm/revの条件で製造したFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維を用いて製造したステンレス鋼繊維焼結体を大気雰囲気中で600〜1300℃、2〜10時間加熱処理した場合の重量変化を測定することで行なった。 この結果を図21に示す。
    図中の温度は保持温度を示し、保持温度が600℃と900℃の場合、重量増加量は0.01g以下であり、焼結繊維の酸化は小さく安定している。 保持温度が1000℃,1100℃と上昇すると、保持時間が長くなるにつれて急激に重量が増加し、約8h保持でほぼ一定状態を示すことが確認された。 保持温度が1300℃の場合、1100℃や1000℃とは異なり、急激な重量増加が認められ、その値も1100℃と比較して約6倍と大きい値を示し、短時間で一定値を示すことが確認された。
    【0040】
    8)熱処理後に試験片を採取し、引張り強度試験を行った結果(クロスヘッド速度5mm/min)を図22に示す。
    この結果から、保持温度を600℃,900℃及び1000℃とした場合の焼結体の引張り強度は約23MPa〜19MPaの範囲であり、熱処理前の焼結体の引張り強度すなわち約26MPaと比べ約3MPa〜6MPaの低下で済んでおり、十分な強度を有していることがわかる。
    しかし、保持温度1100℃の試験片の引張り強度は熱処理前の焼結体のそれに対して1/2以下まで低下している。 なお、保持温度1300℃も試みたが、この場合には試験片が著しく脆くなり、引張り強度の測定は不可能であった。 これは、高温での基地組織の酸化が著しいことによるもので、母材は本来1100℃での耐熱性がある材料であるが、切削により肉厚が小さくなることによって特性が変化したものと考えられる。
    【0041】
    9)熱処理後の試験片をX線回析した結果、焼結体のまま及び保持温度600℃、900℃の処理材には、基地材料(FeとCr)のピークが確認できたものの、処理温度が上昇して1100℃になると基地材料(FeとCr)のピークが小さくなっていた。 1100℃ではFeとAlの酸化物らしきものが若干認められ、1300℃では基地材料(FeとCr)のピークは認められず、Feの酸化物が確認できた。
    10)1000℃熱処理した試験片の色が白色を帯びていることから、アルミナが表面に均一に薄く生成していることが考えられた。 そこで、試料表面の酸化物の生成状況をEPRM(Electron Probe Mico Analizer)分析した結果を図23(a)ないし(e)に示す。
    図23(a)に示す熱処理しない焼結体の場合、Alは母材中に平均的に存在している。 保持温度600℃(図23(b))でも母材中にAlを確認でき、試験片表面にはアルミナ被膜の生成は認められなかった。 保持温度900℃(図23(c))では、母材中のAlは若干減少し、試験片表面にアルミナが生成しはじめている。 保持温度1100℃(図23(d))では、母材中のAlはほとんどなくなり、試験片表面にアルミナが生成され、その内側にCrの化物が生成されて複合酸化皮膜となり、アルミナ皮膜の安定性が変化していることが認められた。 保持温度1300℃(図23(e))では、試験片全体が均一に酸化して金属部分は全く残っていないことが確認できた。 このことから、このFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維焼結体は1000℃まで大気雰囲気中での安定性が示されると考えられる。
    【0042】
    11)薄板板厚15μm、工具送り量10μm/revの条件で製造したFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維(繊維幅15μm)を用いて製造した厚さ1.3mmのステンレス鋼繊維焼結体を大気雰囲気中で600〜1300℃、2〜10時間で高温酸化処理したときの処理温度と重量変化の関係を測定した結果を図24に示す。
    この図24から明らかなように、温度が上がると重量増加が大きくなり、この寸法の繊維焼結体では著しい重量増加が生ずる温度は1100℃であった。 これは、繊維幅50μmの繊維を用いた焼結体の場合が1300℃であったことと比較すると約200℃低下している。 その理由は繊維が微細化することにより試験片中の単位面積当りの繊維の本数および表面積が増加したためと考えられる。
    なお、引張り強さについては、繊維幅15μmの繊維焼結体は常温において18MPaであり、繊維幅50μmの場合よりも低下していた。 これは気孔が増加したため見掛け上での強度の低下が現われたためである。
    したがって、以上を総合すると、本発明によるFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維焼結体は1000℃までの高温大気雰囲気で安定した強度を保持できることが明らかである。
    【0043】
    実施例2
    実施例1のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維(繊維幅15μm)を用いて厚さ1.3mmの平坦シート状ステンレス鋼繊維焼結体を製造した。 この平坦シート状ステンレス鋼繊維焼結体を、直径70mmで表面にモジュール1.5の丸歯を施した一対の歯形ロールに通して成形し、図2のような波状の凹凸が連続したコルゲート状の繊維焼結体を得た。 該繊維焼結体は波高さ約4mm、波ピッチ約2mmであった。
    このコルゲート状の繊維焼結体と平坦な繊維焼結体を曲率半径10mmに曲げ加工したところ、後者の繊維焼結体はクラックが発生したが、前者は全くクラックが発生していなかつた。 また、曲げ加工しないまま、長手方向の一端面(波に垂直な方向)を下にして直立させ、上下を拘束して大気雰囲気条件で800℃で4分間×1000回(約70時間)繰り返し加熱した。 その結果、コルゲート状の繊維焼結体は全く変形が生じなかった。 これに対して平坦な繊維焼結体は中央部分が大きく膨れ変形した。
    この結果から、繊維の凹凸と焼結体の凹凸が非常に有効であることがわかる。
    【0044】
    【発明の効果】
    Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼はフェライト系であるため加工性が悪く、オーステナイト系ステンレス鋼の場合のような連続引抜きによる細線化は困難で、このため、従来ではFe−Cr−Al−REM系ステンレスの繊維は実際上存在せず、したがってまた、この繊維を原料とする繊維焼結体は製造が不可能視されていたのであったが、本発明の請求項1と2によるときには、Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の薄板を巻いたコイル材の端面を旋削することによってFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束を作り、このFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続繊維束をロール式切断アッセンブリにより幅方向に展張しつつ切断することによりFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維を作り、ロール式切断アッセンブリを通過直後のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維に落下方向と交差する方向から気流を作用させることによりコンベア上に分散落下させてシート状繊維堆積物を作り、このシート状繊維堆積物をコンベアで移送し、コンベア出口側に設けた加圧ロールにより圧縮してウエブを作る方法を採用したので、Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の薄板から一貫連続して能率よく、また安価にランダム配向のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維ウェブを作成することができ、前記ウエブを焼結することにより、1000℃までの高温大気雰囲気で良好かつ安定した機械的性質を備えた耐熱金属繊維焼結体を安価に量産することができる。
    得られた焼結体は、高温大気雰囲気において焼結繊維表面がクロム酸化物やアルミナでコーティングされ、したがって1000℃までの高温大気雰囲気で良好かつ安定した機械的性質を備えた個体差の少ない焼結体とすることができ、しかも直接通電して高温保持を行なえるので、高温フィルタなど高温条件での使用に好適なものとすることができる。
    【0045】
    請求項2によれば、平坦状の焼結体を一対の歯形ロール間に通すことにより波状の凹凸を成形するので、厚さ方向で波状の凹凸を有しているFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維焼結体を得ることができ、かかるFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維焼結体は、曲げ加工したときに繊維が折れにくく、小さな半径にクルクルと巻いたり、厳しい角度に屈曲して使用することができ、さらに、凹凸によつて見かけ長さで表面積をかせぐことができ、また高温に加熱されたときに凹凸によって伸びが細かく分散されるため、膨れなどの変形の発生を低減することができ、そして、この高温加熱時に凹凸に垂直な方向から繊維焼結体に外力が作用したときにも、凹凸により単位平面当りの接触面積が増すため、その外力に耐え得る良好な強度が得られるというすぐれた効果が得られる。
    【0046】
    請求項3によれば、最上流のシート状繊維堆積物の上に、それよりも下流の切断アッセンブリで造られたFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維群が分散堆積されるため、目付量の多いウエブを能率よく得ることができるというすぐれた効果が得られる。
    請求項4によれば、所定長さのFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10を同時に多量にかつ連続的に作ることができるというすぐれた効果が得られる。
    請求項5によれば、連続した凹凸を持つFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維が第3段ロールから落下してエアブローによりコンベアにばらまかれる。 このため凹凸により繊維同士がよく絡み合い、密度の高いシート状繊維堆積物となる。 それとともにシート状繊維堆積物の両サイドの薄層化が抑制される。 このため、目付分布のバラツキを少なくすることができ、目付分布の精度を高いものとすることができる。 したがって、繊維同士の絡み合い性がよく、目付分布(密度)の均一化した耐熱金属繊維焼結体を安価に量産することができるすぐれた効果が得られる。
    請求項6と7によれば、耐熱皮膜を確実で安定したものにすることができるというすぐれた効果が得られる。
    請求項8及び9によれば、工具送り量に対する繊維厚さの増加比が少ないため繊維の強度が良好で、引張り強度のよい耐熱金属繊維焼結体とすることができるというすぐれた効果が得られる。
    【図面の簡単な説明】
    【図1】本発明による耐熱金属繊維焼結体の一例を示す斜視図である。
    【図2】本発明による耐熱金属繊維焼結体の他の例を示す斜視図である。
    【図3】本発明による耐熱金属繊維焼結体のさらに他の例を示す斜視図である。
    【図4】本発明による耐熱金属繊維焼結体の部分的拡大図である。
    【図5】本発明による耐熱金属繊維焼結体の部分的拡大図である。
    【図6】本発明に用いられる耐熱金属繊維の一例を示す拡大斜視図である。
    【図7】本発明に用いられる耐熱金属繊維の他の例を示す斜視図である。
    【図8】図6と図7の耐熱金属繊維の拡大断面図である。
    【図9】本発明に用いられる耐熱金属繊維の製造状態を示す説明図である。
    【図10】本発明の耐熱金属繊維の製造に用いられるウエブ化手段とウエブ化方法の一例を示す部分切欠正面図である。
    【図11】本発明の耐熱金属繊維の製造に用いられるウエブ化手段とウエブ化方法の一例を示す側面図である。
    【図12】図11の一部拡大図である。
    【図13】図2に示す耐熱金属繊維焼結体の製作方法を示す斜視図である。
    【図14】原料として板厚50μmのFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼薄板を用いた場合の、工具送り量と繊維厚さの関係を示す線図である。
    【図15】原料として板厚135μmのFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼薄板を用いた場合の、工具送り量と繊維厚さの関係を示す線図である。
    【図16】原料として各種板厚のFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼薄板を用いた場合の工具送り量と繊維厚さの増加比の関係を示す線図である。
    【図17】各種工具送り量で製造したFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維の引張り試験時のクロスヘッド速度と伸びの関係を示す線図である。
    【図18】各種工具送り量で製造したFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維の引張り試験時のクロスヘッド速度と引張り強度との関係を示す線図である。
    【図19】繊維幅50μmのFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維のクロスヘッド速度と引張り強さの関係を示す線図である。
    【図20】繊維幅135μmのFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維のクロスヘッド速度と引張り強さの関係を示す線図である。
    【図21】繊維幅50μmのFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維を用いた焼結体の高温保持時間と重量増加量との関係を示す線図である。
    【図22】繊維幅135μmのステンレス鋼繊維焼結体の高温保持時間と引張り強さの関係を示す線図である。
    【図23】(a)は繊維幅50μmのFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維焼結体の熱処理前のEPMA分析線図、(b)は前記ステンレス鋼繊維焼結体を600℃で熱処理したときのEPMA分析線図、(c)は同じく900℃で熱処理したときのEPMA分析線図、(d)は1100℃で熱処理したときのEPMA分析線図、(e)は1300℃で熱処理したときのEPMA分析線図である。
    【図24】 繊維幅15μmのFe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼繊維を用いた焼結体の高温保持時間と重量増加量との関係を示す線図である。
    【符号の説明】
    1 耐熱金属繊維焼結体1' ウエブ1a 凹部1b 凸部2 第1ロール3 第2ロール4 第3ロール7 送風手段9 歯形成形ロール10 Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼長繊維10' Fe−Cr−Al−REM系ステンレス鋼の連続束10a 凹部10b 凸部11 コイル材13 工具20,30,40 歯部A ロール式切断アッセンブリ

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